JP2008149391A - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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亨 長谷川
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Abstract

【課題】 硬質被覆層が高速高送り断続切削加工ですぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具を提供する。
【解決手段】工具基体の表面に、Ti化合物層からなる下部層、Al23層からなる上部層を設けた表面被覆切削工具において、工具すくい面領域のAl23層上には、(Cr1−X−YAl)N(ただし、原子比で、0.30≦X≦0.70、Y=0あるいは0.01≦Y≦0.10。Mは、Si、V、Y、Bから選ばれた1種または2種以上の添加成分を示す)を満足する物理蒸着により形成されたCrとAl(とM)の複合窒化物層からなる最外層を設ける。
【選択図】 なし

Description

この発明は、特に各種の鋼、ステンレス鋼および鋳鉄の切削加工を、高速高送り断続切削の条件で行った場合に、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
従来、一般に、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金で構成された工具基体の切刃稜線部を含むすくい面および逃げ面の全面に、
下部層として、炭化チタン(以下、TiCで示す)層、窒化チタン(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)層、炭酸化チタン(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化チタン(以下、TiCNOで示す)層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの全体平均層厚を有するTi化合物層、
上部層として、1〜15μmの平均層厚を有し、かつ化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有する酸化アルミニウム層(以下、α型Al23層で示す)を設け、
さらに、工具すくい面の上記Al23層の表面に、被覆工具が、未使用であるか使用済みであるかを識別することを目的として、TiN、TiCN等の易摩耗性材料からなる使用状態表示層を化学蒸着で形成しておくことが知られている。
そして、上記被覆工具において、硬質被覆層の構成層は一般に粒状結晶組織を有し、さらに、下部層であるTi化合物層を構成するTiCN層を、層自身の強度向上を目的として、通常の化学蒸着装置にて、反応ガスとして有機炭窒化物を含む混合ガスを使用し、700〜950℃の中温温度域で化学蒸着することにより形成して縦長成長結晶組織をもつようにすることも知られている。
また、上記の被覆工具の硬質被覆層を構成するα型Al23層(上部層)の表面を、切削性能を向上させる目的でウエットブラスト処理等により、平滑化することも知られている。
特開2006−102875号公報 特開平6−8010号公報
近年の切削装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は一段と高速化、また、高送り化の傾向にあるが、上記の従来被覆工具においては、これを鋼や鋳鉄などの通常の加工条件での切削に用いた場合には問題はないが、これを高速高送り断続加工に用いた場合には、切削時に発生する高熱および機械的衝撃によって、特に、工具すくい面の硬質被覆層にクレータ摩耗、チッピング(微少欠け)が発生し易くなり、上記従来被覆工具の如く、工具すくい面にTiN、TiCN等の使用状態表示層が化学蒸着で形成されていたとしても、使用状態表示層が易摩耗性材料から形成され、単に、使用状態識別用の層であるため、耐クレータ摩耗、耐チッピングにはなんらの効果もなく、この結果、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、上記従来被覆工具の硬質被覆層の耐チッピング性向上を図るべく研究を行った結果、
(a)被覆工具すくい面の硬質被覆層の上部層であるα型Al23層の表面に、上記の従来被覆工具における化学蒸着で形成された使用状態表示層にかえて、CrとAlの複合窒化物層あるいはCrとAlとM(但し、Mは、Si、V、Y、Bの1種または2種以上を示す)の複合窒化物層(以下、総称して、(Cr,Al,M)N層で示す)を物理蒸着で形成し、1〜10μmの最外層を形成すると、(Cr,Al,M)N層は耐高温安定性にすぐれており、また、圧縮応力が残留する層であるため、高速高送り断続切削加工という熱的、機械的に厳しい条件の切削加工においてもすぐれた耐クレータ摩耗性および耐チッピング性を示すこと。
(b)被覆工具すくい面領域の硬質被覆層の上部層を構成するα型Al層の表面に、最外層である上記(Cr,Al,M)N層を物理蒸着で形成するにあたり、α型Al層上に、0.2〜2μmの合計平均層厚のTi化合物層(Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、酸化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上)を中間層として、予め化学蒸着しておくことにより、その表面に物理蒸着で容易に最外層を形成できるとともに、上部層−最外層間での接合強度が改善されること。
以上(a)、(b)に示される研究結果を得たのである。
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、
「(1)炭化タングステン基超硬合金で構成された工具基体の表面に、
(a)Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ化学蒸着により形成された3〜20μmの全体平均層厚を有するTi化合物層からなる下部層、
(b)上記(a)の下部層上に設けられ、化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有し、かつ化学蒸着により形成された1〜15μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層からなる上部層
上記(a)、(b)からなる硬質被覆層を蒸着形成した表面被覆切削工具において、
上記表面被覆切削工具のすくい面領域の上記酸化アルミニウム層からなる上部層上には、さらに、
(c)1〜10μmの平均層厚を有し、かつ、
組成式:(Cr1−XAl)N(ただし、原子比で、0.30≦X≦0.70)を満足する物理蒸着により形成されたCrとAlの複合窒化物層からなる最外層、を設けたことを特徴とする表面被覆切削工具。
(2)前記(1)記載の表面被覆切削工具において、
前記(c)の最外層が、
組成式:(Cr1−X−YAl)N(ただし、原子比で、0.30≦X≦0.70、0.01≦Y≦0.10であり、また、Mは、Si、V、Y、Bから選ばれた1種または2種以上の添加成分を示す)を満足する物理蒸着により形成されたCrとAlとMの複合窒化物層であること、
を特徴とする前記(1)記載の表面被覆切削工具。
(3)前記(1)、(2)記載の表面被覆切削工具において、
(d)Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、酸化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ化学蒸着により形成された0.2〜2μmの全体平均層厚を有するTi化合物層からなる中間層、
を上部層と最外層の間に介在させたことを特徴とする前記(1)、(2)のいずれかに記載の表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
以下に、この発明の硬質被覆層(下部層、上部層、中間層、最外層)等について、詳細に説明する。
(1)下部層(Ti化合物層)
Ti化合物層は、α型Al層の下部層として存在し、自身の具備するすぐれた高温強度によって硬質被覆層の高温強度向上に寄与するほか、工具基体とα型Al層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する密着性向上に寄与する作用を有するが、その平均層厚が3μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その平均層厚が20μmを越えると、特に高熱発生を伴う高速高送り断続切削加工では熱塑性変形を起し易くなり、これが偏摩耗の原因となることから、その平均層厚を3〜20μmと定めた。
(2)上部層(α型Al層)
化学蒸着で形成したα型Al層からなる上部層は、すぐれた高温硬さと耐熱性を有し、被覆工具の耐摩耗性、耐チッピング性に寄与するが、その平均層厚が1μm未満では、所望のすぐれた切削性能を長期に亘って発揮させることができず、一方、その平均層厚が15μmを越えて厚くなりすぎると、チッピングが発生し易くなることから、その平均層厚は1〜15μmと定めた。
また、最外層が設けられていない逃げ面領域の上部層(α型Al層)に対して、ウエットブラスト、ブラシ、ラップ等による表面平滑化を行うと、上部層中の引張残留応力が低減されるため、逃げ面の硬質被覆層の耐チッピング性、耐摩耗性がさらに向上する。
(3)中間層(Ti化合物層)
工具基体のすくい面領域に化学蒸着で形成された上部層(α型Al23層)の表面に、通常の化学蒸着装置を用い、通常の条件(例えば、表2に示される条件)で、0.2〜2μmの全体平均層厚で中間層(Tiの炭化物(TiC)層、窒化物(TiN)層、炭窒化物(TiCN)層、酸化物(TiO)層、炭酸化物(TiCO)層および炭窒酸化物(TiCNO)層のうちの1層または2層以上からなるTi化合物層)を蒸着形成し、上部層と最外層との間に上記中間層を介在させることにより、上部層と最外層間の密着性・接合強度の改善を図ることができる。
中間層の全体平均層厚が0.2μm未満では、上部層と最外層の密着性・接合強度改善効果を期待することはできず、また、その厚さが2μmを超えると、チッピングがおこりやすくなるので、その全体平均層厚は0.2〜2μmと定めた。
(4)最外層((Cr,Al,M)N層)
(イ)被覆工具すくい面領域の中間層上に、例えば、図1の概略説明図で示される物理蒸着装置により、表4、表5に示される目標組成、目標層厚の(Cr,Al,M)N層を、1〜10μmの平均層厚で物理蒸着により形成するが、該最外層を構成するCrとAl(とM)の複合窒化物層は、耐高温安定性にすぐれかつ残留圧縮応力を有する層であるため、高速高送り断続切削加工すぐれた耐チッピング性を示す。すなわち、(Cr,Al,M)N層の構成成分であるAl成分には硬質被覆層における高温硬さと耐熱性を向上させ、また、同Cr成分には高温強度を向上させる作用があるから、最外層は、被覆工具すくい面領域に形成された硬質被覆層の耐クレータ摩耗性と耐チッピング性を改善する。さらに、上記複合窒化物層に成分Mを含有させた場合、添加成分MとしてのSiは該層の耐熱性および耐熱塑性変形性向上に寄与し、Vは潤滑性向上に寄与し、Yは高温耐酸化性の向上に寄与し、さらに、Bは熱伝導性の向上に寄与し、いずれの添加成分も、最外層の特性を向上させる作用があることから、被覆工具すくい面領域に必要とする所望特性に応じて、添加成分Mとして、Si、V、Y、Bの1種または2種以上を、最外層の構成成分として含有させる。
そして、Alの割合を示すX値がCrとMとの合量に占める割合(原子比、以下同じ)で0.30未満になると、所定の高温硬さおよび耐熱性を確保することができず、これが耐摩耗性低下の原因となり、一方Alの割合を示すX値が同0.70を越えると、相対的にCrの割合が0.30未満となってしまい、高い発熱を伴い、かつ、切刃に対して大きな衝撃的・機械的負荷がかかる高速高送り断続切削加工で必要とされる高温強度を確保することができず、クレータ摩耗、チッピングの発生を防止することが困難になることから、X値を0.30〜0.70と定めた。
また、添加成分MとしてのSi、V、Y、Bは、各成分の合計含有割合が、CrとAlとの合量に占める割合で0.01未満では、各成分元素を含有させたことによる効果が期待できず、一方、各成分の合計含有割合が、CrとAlとの合量に占める割合で0.1を越えると、相対的に、CrとAlの含有割合が低下してしまい、高速高送り断続切削で要求される上部層の高温硬さ、耐熱性、高温強度を維持できなくなるために、添加成分Mの合計含有割合を表すY値を0.01〜0.10と定めた。
そして、最外層は、その平均層厚が1μm未満では、自身のもつすぐれた特性(高温硬さ、高温強度、耐熱性等)を長期に亘って発揮するには不十分であり、一方、その平均層厚が10μmを越えると、高速高送り断続切削加工時にチッピングが発生し易くなることから、上部層の平均層厚を1〜10μmと定めた。
(ロ)最外層が蒸着形成された工具基体の逃げ面領域に、例えば、噴射研磨材として、水との合量に占める割合で15〜60質量%のAl23微粒を配合した研磨液を用いたウエットブラス等により、逃げ面領域に設けられた中間層および最外層を除去することにより、逃げ面のα型Al23層の表面平滑化を行うことができ、この場合、逃げ面領域の硬質被覆層であるα型Al23層の面粗さはきわめて小さくなるとともに、α型Al23層の引張留応力が低減され、その結果として、逃げ面の耐チッピング性、耐摩耗性が向上する。
(ハ)なお、逃げ面の表面平滑化は、最外層および中間層除去とともに行うばかりでなく、逃げ面領域に中間層および最外層を形成せず、直接α型Al23層に対して行うことも勿論可能であり、処理をどの工程で行ったかによって、得られた被覆工具の耐チッピング性、耐クレータ摩耗性等には何らの影響も生じるものではなく、また、逃げ面のα型Al23層に対する表面平滑化処理、引張残留応力低減処理は、砥石、ナイロン製等のブラシ、SiC、ZrO粒子等をメディアとして使用する乾式あるいは湿式ブラスト処理等によって行うこともでき、ウエットブラスト処理のみに限定されるものではない。
この発明の被覆工具は、工具すくい面領域の硬質被覆層の上部層を構成するα型Al23層の上には、必要に応じてTi化合物層からなる中間層を介して、(Cr,Al,M)N層からなる最外層が物理蒸着で形成されているため、耐クレータ摩耗性、耐チッピング性にすぐれ、さらに、工具逃げ面領域の硬質被覆層の上部層を構成するα型Al23層は引張残留応力が低減されているとともにその表面が平滑化されているため、耐チッピング性にすぐれている。したがって、この発明の被覆工具は、各種の鋼や鋳鉄などの高速高送り断続切削加工に用いた場合にも、硬質被覆層が全体としてすぐれた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮し、使用寿命の一層の延命化を可能とするものである。
つぎに、この発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr32粉末、TiN粉末、TaN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にR:0.07のホーニング加工することによりISO・CNMG120408に規定するスローアウエイチップ形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A〜Dを製造し、また、同じく焼結後、切刃部に幅0.15mm、角度20度のチャンフォーホーニング加工することによりISO・SEEN1203AFTN1に規定するスローアウエイチップ形状をもったWC基超硬合金製の工具基体C〜Fをそれぞれ製造した。
ついで、これらの工具基体A〜Fのそれぞれを、通常の化学蒸着装置に装入し、
まず、表2(表2中のl−TiCNは特開平6−8010号公報に記載される縦長成長結晶組織をもつTiCN層の形成条件を示すものであり、これ以外は通常の粒状結晶組織の形成条件を示すものである)に示される条件にて、表3、表4に示される目標層厚のTi化合物層およびα型Al23層を硬質被覆層の下部層および上部層として蒸着形成し、
ついで、同じく表2に示される条件にて、同じく表3、表4に示される目標層厚のTi化合物層を、逃げ面領域およびすくい面領域の全域に中間層として蒸着形成し、
引き続いて、上記工具基体を、図1に概略示されるアークイオンプレーティング装置に装入し、装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して4Paの反応雰囲気とすると共に、工具基体に−100Vの直流バイアス電圧を印加し、かつカソード電極の最外層形成用Cr−Al−M合金とアノード電極との間に120Aの電流を流してアーク放電を発生させ、前記工具基体の逃げ面領域およびすくい面領域の中間層の上に、表3、表4に示される目標組成、目標層厚の(Cr,Al,M)N層からなる最外層を1〜10μmの平均層厚で物理蒸着にて形成し、
引き続いて、工具基体の逃げ面領域のみを、噴射研磨材として水との合量に占める割合で30質量%、粒径30〜60μmのAl23微粒を配合した研磨液を、0.15MPaの圧力でウエットブラスト処理し、Raで0.13μm程度の表面粗さに平滑化し、同時に、逃げ面のα型Al23層の引張残留応力の低減を図ることにより、本発明被覆工具1〜24をそれぞれ製造した。
比較の目的で、表5に示される通り、すくい面領域のα型Al23層の上にTiN層からなる使用状態表示層を化学蒸着で形成する以外は、本発明被覆工具と同一の条件で比較被覆工具1〜12をそれぞれ製造した。TiN層からなる使用状態表示層の形成は、表2に示されるTiN中間層の形成条件と同一とした。
なお、TiN層からなる使用状態表示層を形成後、比較被覆工具1〜12の逃げ面のα型Al23層に対して、本発明被覆工具1〜24の場合と同様な条件でウエットブラスト処理を行い、表面平滑化と引張残留応力の低減を図った。
上記本発明被覆工具1〜24および比較被覆工具1〜12の硬質被覆層の各層の組成を、それぞれ厚さ方向中央部をオージェ分光分析装置で測定したところ、いずれも目標組成と実質的に同じ組成を示し、さらに同各層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて測定(縦断面測定)したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
次に、上記の本発明被覆工具1〜24および比較被覆工具1〜12のうち、本発明被覆工具1〜8、13〜20および比較被覆工具1〜8については、切削条件A、Bにより旋削加工試験を実施し、本発明被覆工具5〜12、17〜24および比較被覆工具5〜12については、切削条件Cによりミーリング加工試験を実施した。
[切削条件A]
被削材:JIS・S45Cの長さ方向等間隔4本縦溝入の丸棒、
切削速度: 350 m/min.、
切り込み: 1.5 mm、
送り: 0.5 mm/rev.、
切削時間: 15 分、
の条件での炭素鋼の乾式高速高送り断続切削加工試験(通常の切削速度および送りは、それぞれ、250m/min.、0.3mm/rev.)、
[切削条件B]
被削材:JIS・FC250の長さ方向等間隔4本縦溝入の丸棒、
切削速度: 300 m/min.、
切り込み: 1.5 mm、
送り: 0.5 mm/rev.、
切削時間: 15 分、
の条件での普通鋳鉄の乾式高速高送り断続切削加工試験(通常の切削速度および送りは、それぞれ、200m/min.、0.3mm/rev.)、
[切削条件C]
被削材: JIS・S45C黒皮穴材、
切削速度: 350 m/min.、
切り込み: 2 mm、
一刃送り量: 0.5 mm/刃、
切削時間: 10 分、
の条件での炭素鋼の乾式高速高送り断続切削加工試験(通常の切削速度および送りは、それぞれ、250 m/min.、0.3mm/刃)。
上記の各切削試験における切刃の逃げ面摩耗幅を測定し、この測定結果を表6、7に示した。
Figure 2008149391
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表3〜7に示される結果から、本発明被覆工具1〜24は、そのすくい面領域には、耐クレータ摩耗性、耐チッピング性にすぐれた最外層が設けられ、また、必要に応じて、Ti化合物層からなる中間層を介して最外層を設けることにより上部層と最外層の接合強度が高められ、さらに、必要に応じて、逃げ面領域のα型Al23層を平滑化するとともに引張残留応力を低減することにより、例えば、機械的・熱的負荷が大きい各種の鋼、ステンレス鋼および鋳鉄などの高速高送り断続切削において、硬質被覆層がすぐれた耐クレータ摩耗性と耐チッピング性を示し、長期に亘ってきわめてすぐれた切削性能を発揮するのに対して、すくい面領域のα型Al23層上にTiN層、TiCN層からなる使用状態表示層が化学蒸着で形成された比較被覆工具1〜12では、高速高送り断続切削において、すくい面領域の硬質被覆層のクレータ摩耗、チッピング発生を防止できず、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆工具は、各種の鋼、ステンレス鋼および鋳鉄などの通常の条件での切削加工は勿論のこと、特に、機械的・熱的負荷が大きい高速高送り断続切削条件でも、すぐれた耐チッピング性、耐摩耗性を示し、長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮するものであるから、切削装置の高性能化ならびに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
アークイオンプレーティング装置の概略説明図である。

Claims (3)

  1. 炭化タングステン基超硬合金で構成された工具基体の表面に、
    (a)Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ化学蒸着により形成された3〜20μmの全体平均層厚を有するTi化合物層からなる下部層、
    (b)上記(a)の下部層上に設けられ、化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有し、かつ化学蒸着により形成された1〜15μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層からなる上部層
    上記(a)、(b)からなる硬質被覆層を蒸着形成した表面被覆切削工具において、
    上記表面被覆切削工具のすくい面領域の上記酸化アルミニウム層からなる上部層上に、さらに、
    (c)1〜10μmの平均層厚を有し、かつ、
    組成式:(Cr1−XAl)N(ただし、原子比で、0.30≦X≦0.70)を満足する物理蒸着により形成されたCrとAlの複合窒化物層からなる最外層、を設けたことを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 請求項1記載の表面被覆切削工具において、
    前記(c)の最外層が、
    組成式:(Cr1−X−YAl)N(ただし、原子比で、0.30≦X≦0.70、0.01≦Y≦0.10であり、また、Mは、Si、V、Y、Bから選ばれた1種または2種以上の添加成分を示す)を満足する物理蒸着により形成されたCrとAlとMの複合窒化物層であること、
    を特徴とする請求項1記載の表面被覆切削工具。
  3. 請求項1、2記載の表面被覆切削工具において、
    (d)Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、酸化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ化学蒸着により形成された0.2〜2μmの全体平均層厚を有するTi化合物層からなる中間層、
    を上部層と最外層の間に介在させたことを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の表面被覆切削工具。
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