第1の発明は、高周波磁界を発生し被加熱体を加熱する加熱コイルと、前記加熱コイルを駆動するインバータ回路と、前記被加熱体と前記加熱コイルとの間に設けられ、低電位部に電気的に接続された導電性のシールド体と、前記加熱コイルを支持する加熱コイル保持部材と、前記加熱コイルの周囲に配置し前記加熱コイル保持部材に設けられ、前記低電位部に電気的に接続された導電材料からなる環状のシールドリングとを有し、前記シールドリングと前記低電位部との接続は、前記シールド体を介さず直接接続した誘導加熱装置ものである。
これによって、シールド体及びシールドリングと、グラウンドとの間に、シールド体及びシールドリングの内部抵抗(等価抵抗)と、浮遊容量(等価容量)及び人体の内部抵抗(等価抵抗)とが並列に接続される。シールド体及びシールドリングの内部抵抗(等価抵抗)のインピーダンスは、浮遊容量(等価容量)及びユーザの身体の内部抵抗(等価抵抗)のインピーダンスと比較して非常に小さいので、加熱コイルからの漏洩電流はほとんどシールド体及びシールドリングを通じてグラウンドに流れる(シールド体のみの内部抵抗に比べ、シールド体及びシールドリングの内部抵抗はより小さくなり、漏洩電流防止効果が大きくなる)。
換言すると、シールド体の外周をすり抜けて、被加熱体と加熱コイルの間に生じようとする浮遊容量(等価容量)に対し、加熱コイルの周囲の低電位部と接続されたシールドリングが存在することにより、シールド体とシールドリングが被加熱体と加熱コイルの間に位置することで、被加熱体と加熱コイルの間に生じようとする浮遊容量(等価容量)を低減することができる。
さらに、シールドリングと低電位部との接続は、シールド体を介さないことにより、アース性能はシールド体の影響を受けることがない(シールド体の抵抗成分がアース性能を阻害しない)ので、アース性能が最も効率の良い状態となり、漏洩電流防止効果が最大となる。したがって、より効果的に感電の恐れをなくし安全性を高めることができる。
第2の発明は、特に、第1の発明において、シールド体及びシールドリングに低電位部との接続部を1点以上有し、前記シールド体の接続部と前記シールドリングの接続部を電気的に接続したことにより、共通の低電位部を使用することで、接続を最小限とし、構造的にも簡素化されるので、コストも安くなり、信頼性も向上する。
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、シールド体は、被加熱体と、アルミもしくは銅またはこれらと略同等以上の高導電率かつ低透磁率材料からなる被加熱体を誘導加熱可能な加熱コイルとの間に設けられ、かつシールド体は、前記加熱コイルの発生する磁界により前記被加熱体に与えられる浮力を低減する浮力低減機能を有したことにより、浮力低減機能を有するシールド体は、浮力低減機能を有さないシールド体に比べ、自己発熱が大きく、シールド体の温度が高くなるので、より抵抗成分が大きくなるシールド体を介さない接続はより有効となる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態)
図は、本発明の実施の形態における誘導加熱装置として誘導加熱調理器を例示している。
本実施の形態における誘導加熱装置は、鉄のような高透磁率の(磁性体の)被加熱体(または18−8ステンレスのような低透磁率で高抵抗の被加熱体)と、アルミニウムまたは銅のような低透磁率で(非磁性体で)低抵抗の被加熱体とを加熱することができるものである。
具体的には、図1に示すように、高周波磁界を発生し被加熱体110を加熱する螺旋状に巻かれた加熱コイル101と、加熱コイル101を駆動するインバータ回路102と、被加熱体110と加熱コイル101との間に設けられ、低電位部に電気的に接続された導電性のシールド体112と、加熱コイル101を上面に載置支持する加熱コイル保持部材124と、加熱コイル101の周囲に配置し加熱コイル保持部材124に設けられ、前記低電位部に電気的に接続された導電材料からなる環状のシールドリング131とを有している。
被加熱体110は、鍋、フライパン等の金属製の負荷であり、筐体125の上面に設けられたトッププレート118上に載置される。
シールド体112は、導電性カーボン塗料を塗布して焼き付け形成されており、絶縁層117により被覆され、トッププレート118の下方に設けられている。また、シールド体112にはL型のタブ端子130である接続部129が2個設けられている。
シールドリング131は誘導加熱されにくいアルミ、銅等の導電材料で作製されており、円環状の形状になっている。制作上においては、アルミダイカストまたは、アルミ板のプレス部品が一般的である。またシールドリング131から加熱コイル保持部材124を貫通して接続部132が突出して形成されている。接続部132は接続部129の低電位側(信号グラウンド)にシールド体112を介さず直接接続されている。
また、本実施の形態における誘導加熱装置は、筐体125内に操作部109及び制御基板126をも備えている。操作部109は、設定入力部113、設定表示部114、赤色の警告LED116、圧電ブザー(警告ブザー)115を有する。設定入力部113は、使用者が加熱出力設定指令、または加熱開始若しくは停止指令を入力するために操作する複数の入力キースイッチを有する。
制御基板126は、前記のインバータ回路102、検知部103、制御部104aを有するマイクロコンピュータ104、LED駆動回路106、圧電ブザー駆動回路(警告ブザー駆動回路)107、設定表示部駆動回路108、プラグ121を介しての商用交流電源を整流する整流平滑部105、インバータ回路102の駆動回路111を有する。制御基板126上の各ブロックは共通のグラウンド線(グラウンドパターン)を有する。そして、2本の接続線119及び120はインバータ回路102と加熱コイル101とを接続している。
ここで、図2に基づき、シールド体112とシールドリング131について詳細を説明する。
図2(a)に示すように、シールド体112は、加熱コイル101と略同程度の外径を有し、スリット128により分割され、加熱コイル101と同軸で加熱コイル101をほぼ覆う略円板状の形状を有する。シールド体112は、加熱コイル101の中心軸を中に含む閉ループがその上に存在しない形状を有する。つまりシールド体112は、加熱コイル101の発生する磁界により被加熱体110に与えられる浮力を低減する浮力低減機能を有している。
また、図2(a)(b)に示すように、L型のタブ端子130の一端はシールド体112の導電性カーボン塗料と電気的に接続され、もう一端は加熱コイル保持部材124の下方に突出しており、接続線122、123とファストン接続されている。一端が加熱コイル保持部材124の下方に突出しているのは、各種温度検知用のサーミスタなどと接続する配線(図示せず)を、加熱コイル保持部材124の下方に配置することが、組立性や性能上問題が少なく、その配線の一部に接続線122、123をユニットとして含む場合、加熱コイル保持部材124の下方で全ての配線処理が完結することが好ましいからである。接続線122の他端は検知部103(図1)のグラウンドに接続され、接続線123の他端は検知部103の入力端子に接続される。
また、図2(b)に示すように、シールドリング131は、厚肉のアルミダイカストの場合、突出して形成されている接続部132にセルフタップ可能な下穴133が設けられている。また、薄肉のアルミプレスの場合は、接続部132はファストン端子を接続可能とするタブが設けられている。
シールドリング131の接続部132は接続部129の低電位側(信号グラウンド)と接続線135で接続されている。本実施の形態では、接続線122側である。これにより、シールドリング131と低電位部との接続は、シールド体112を介さない構成となる。接続部129のファストン端子136に接続線122または123と接続線135がダブルかしめされており、接続線135の他端に設けられた丸型端子137を接続部132にセルフタップでネジ締結することにより、シールド体112とシールドリング131を電気的に接続するとともに低電位部に接続している。
図3は、本実施の形態における誘導加熱装置の回路構成の詳細を示している。
インバータ回路102と加熱コイル101とを接続する2本の接続線19、20のうち接続線19は、加熱コイル101の外周端と共振コンデンサ102gの一端とを接続し、接続線120は加熱コイル101の内周端とスイッチング素子102cのエミッタ及びスイッチング素子102dのコレクタとを接続する。螺旋状に巻かれた加熱コイル101の外終端の電位は、内周端の電位より低いものである。また、シールド体112と制御基板126は2本の接続線122及び123で接続されている。
また、制御部104aは、駆動回路111、LED駆動回路106、圧電ブザー駆動回路107、設定表示部駆動回路108を駆動する。制御部104aの機能はソフトウエアにより処理される。駆動回路111はインバータ回路102のスイッチング素子102c及び102dを駆動する。設定表示部駆動回路108は設定表示部114(複数の可視LEDを有する)を駆動する。設定表示部114は、設定入力部113を通じて設定された加熱出力設定内容等を使用者に対して表示する。
制御部104aは、設定入力部113から入力された種々の指令、出力検知部(図示しない)の出力信号(インバータ回路102の電源電流に応じた信号)及び検知部103の出力信号に応じて駆動回路111を通じてインバータ回路102の出力を制御する。加熱出力の変動はスイッチング素子102c及び102dの駆動周波数を制御することにより行われる。被加熱体110がアルミニウムまたは銅のような低透磁率で(非磁性体で)低抵抗の材料でできている場合に、鉄のような高透磁率の(磁性体の)材料でできている場合(または18−8ステンレスのような低透磁率で高抵抗の材料でできている場合)と比較して、加熱コイル101は高い周波数で且つ高い電圧で駆動される。被加熱体110が低透磁率で低抵抗の材料でできている場合に、リレー(図示しない)の接点を切り換えて、加熱コイル101の巻数を多くしても良い。
商用電源127は整流平滑部105に入力される。整流平滑部105はブリッジダイオードで構成される全波整流器105aと、その直流出力端間に接続された第1の平滑コンデンサ105bとを有する。第1の平滑コンデンサ105bの両端(整流平滑部105の出力端子)にインバータ回路102の入力端子が接続される。インバータ回路102の出力端子に加熱コイル101が接続される。インバータ回路102と加熱コイル101は高周波インバータを構成する。インバータ回路102には、第1のスイッチング素子102c(IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor))と、第2のスイッチング素子102d(本実施の形態ではIGBT)の直列接続体(直列接続体102c及び102dと呼ぶ)が設けられる。第1のダイオード102eが第1のスイッチング素子102cに逆方向且つ並列に、第2のダイオード102fが第2のスイッチング素子102dに逆方向且つ並列に接続されている。直列接続体102c及び102dの両端には第2の平滑コンデンサ102bが接続される。
第1のスイッチング素子102cと第2のスイッチング素子102dとの接続点(直列接続体102c及び102dの中点と呼ぶ)と、全波整流器105aの正極端間にはチョークコイル102aが接続される。直列接続体102c及び102dの低電位端子は全波整流器105aの負極端子(実施の形態においてはグラウンド端子)に接続される。直列接続体102c及び102dの中点と全波整流器105aの負極端子間には加熱コイル101と共振コンデンサ102gの直列接続体が接続される。制御部104aは、駆動回路111を通じて第1のスイッチング素子102c及び第2のスイッチング素子102dを駆動する。
次に、以上のように構成された誘導加熱装置の動作を説明する。
全波整流器105aは商用電源127を整流する。第1の平滑コンデンサ105bはインバータ回路102と加熱コイル101を有する高周波インバータに電源を供給する。第2のスイッチング素子102dがオンしている場合には、第2のスイッチング素子102d(若しくは第2のダイオード102f)と、加熱コイル101と、共振コンデンサ102gとを含む閉回路に共振電流が流れると共に、チョークコイル102aにエネルギが蓄えられる。蓄えられたエネルギは第2のスイッチング素子102dがオフすると、第1のダイオード102eを介して第2の平滑コンデンサ102bに放出される。
第2のスイッチング素子102dがオフした後、第1のスイッチング素子102cがオンし、第1のスイッチング素子102c及び第1のダイオード102eに電流が流れる。第1のスイッチング素子102c(若しくは第1のダイオード102e)と、加熱コイル101と、共振コンデンサ102gと、第2の平滑コンデンサ102bとを含む閉回路に共振電流が流れる。
第1のスイッチング素子102c及び第2のスイッチング素子102dの駆動周波数は約20kHz近傍で可変される。磁性体の被加熱体110(典型的には鉄製の調理容器)を加熱する場合、加熱コイル101には約20kHzの高周波電流が流れる。第1のスイッチング素子102c及び第2のスイッチング素子102dの駆動時間比率はそれぞれ約1/2近傍で可変される。加熱コイル101と共振コンデンサ102gのインピーダンスは、指定の材質(例えば、アルミニウム等の高導電率の非磁性体)で標準的な大きさ(例えば、直径が加熱コイルの直径以上)の被加熱体110がトッププレート118の指定の場所(例えば、加熱部分として示されている場所)に載置された場合、その共振周波数が駆動周波数の約3倍になるように設定されている。したがって、この場合、共振周波数は約60kHzになるよう設定される。
被加熱体110がアルミ製であれば加熱コイル101には通常より高い周波数である約60kHzの高周波電流が流れるので、被加熱体110を効率良く加熱できる。本実施の形態の高周波インバータは、第1のダイオード102e、第2のダイオード102fに流れる回生電流が第1の平滑コンデンサ105bに流れず、第2の平滑コンデンサ102bに供給されるので加熱効率が高い。第2の平滑コンデンサ102bにより、加熱コイル101に供給される高周波電流の包絡線(エンベロープ)が実施の誘導加熱装置より平滑化される。これにより、加熱時に被加熱体110などから振動音を発生する原因となる、加熱コイル101に流れる電流ILの商用周波数成分が低減される。
シールド体112とシールドリング131は、加熱コイル101と被加熱体110との間をシールドして、加熱コイル101が誘起した漏洩電流が使用者の身体を流れることを効果的に防止する。すなわち、シールド体112のみのシールド力に比べ、シールド体112とシールドリング131を合成したシールド力はシールド面積としては大きくなり、また、内部抵抗としてはより小さくなり、漏洩電流防止効果も大きくなってくる。
換言すると、シールド体112の外周をすり抜けて、被加熱体110と加熱コイル101の間に生じようとする浮遊容量(等価容量)に対し、加熱コイル101の周囲の低電位部と接続されたシールドリング131が存在することにより、シールド体112とシールドリング131が被加熱体110と加熱コイル101の間に位置することで、被加熱体110と加熱コイル101の間に生じようとする浮遊容量(等価容量)を低減することができる。
さらに、シールドリング131と低電位部との接続は、シールド体112を介さないことにより、アース性能はシールド体112の影響を受けることがない(シールド体112の抵抗成分がアース性能を阻害しない)ので、アース性能が最も効率の良い状態となり、したがって、漏洩電流防止効果が最大となる。
シールドリング131と低電位部との接続を、シールド体112を介する接続にすると、加熱時間とともに漏洩電流は増加傾向となる。つまり、この現象は、シールド体112が多少なりとも温度上昇することによる抵抗増加により、アース性能を阻害するためと考えられる。逆に、本実施の形態の通りに接続すると、加熱時間とともに、漏洩電流は増加することはなく、むしろ、減少傾向となる。
シールド体112の接続部129とシールドリング131の接続部132を電気的に接続することにより、共通の低電位部を使用することで、接続を最小限とし、構造的にも簡素化されるので、コストも安くなり、信頼性も向上する。
また、被加熱体110に与えられる浮力を低減する浮力低減機能を有するシールド体112とした場合には、本実施の形態の効果はより高まる。つまり、浮力低減機能を有するシールド体112は、浮力低減機能を有さないシールド体112に比べ、自己発熱が大きく、シールド体112の温度が高くなるので、シールドリング131と低電位部との接続を、シールド体112を介する接続にすると、漏洩電流はさらに増加傾向となるが、シールドリング131と低電位部との接続においてシールド体112を介さない接続とすることにより、シールド体112の影響を受けないので、アース性能の悪化はない。
浮力低減機能とは、特に、被加熱体110がアルミニウムや銅といった低透磁率かつ高電気伝導率なる材料製である場合に、加熱コイル101の磁界と誘導電流の作用により被加熱体110に加熱コイル101から遠ざかる方向に働く力を低減する機能のことである。
シールド体112及びシールドリング131の接続部129、132各々は加熱コイル保持部材124からみて同方向からの接続とすることにより、結線作業時全て同方向からの作業となり、組立性が向上する。
シールドリング131がアルミダイカスト製などの場合、シールドリング131への接続はシールドリング131に直接ネジ締結することにより、接続部132の信頼性が向上する。
また、シールドリング131がアルミ薄板製などの場合、シールドリングへの接続はシールドリング131にファストン接続することにより、接続部132の信頼性と作業性が向上する。
なお、検知部103は、シールド体112と制御基板126との導通状態を検知する。検知部103は、トランジスタ103a、抵抗103b、103c、103dを有する。検知部103は、接続線122、123を通じて、シールド体112に直流電流(加熱コイル101が発生する電圧と異なる電圧)を流して、その導通状態を検知する。検知部103は、シールド体112を通じて低電位部(実施の形態ではグラウンド)に電流を流す。
通常、シールド体112と制御基板126との導通状態は良好である。この場合、+5Vの直流電源電圧から、抵抗103b及びトランジスタ103a、抵抗103c、接続線123、シールド体112、接続線123を通じてグラウンド線に直流電流が流れる。PNPトランジスタ103aのベース電流が流れることにより、トランジスタ103aは導通する。トランジスタ103aのエミッタ及びコレクタ間に電流が流れることにより、トランジスタ103aのコレクタ電位(抵抗103dの両端電圧)はほぼ+5Vになる。
例えば、接続線122の一端の接続が外れたならば(シールド体112と制御基板126との導通状態が悪化したならば)、+5Vの直流電源電圧から、抵抗103b及びトランジスタ103a、抵抗103c、接続線123、シールド体112、接続線123を通じてグラウンド線に直流電流が流れなくなる。PNPトランジスタ103aのベース電流が流れなくなることにより、トランジスタ103aは遮断する。トランジスタ103aのエミッタ及びコレクタ間に電流が流れなくなることにより、トランジスタ103aのコレクタ電位(抵抗103dの両端電圧)は0Vになる。
制御部104a(マイクロコンピュータ104)は、トランジスタ103aのコレクタ電位を入力する。制御部104aは、シールド体112と制御基板126との導通状態が悪化した場合に、加熱コイル101を停止させ、LED駆動回路106を通じて赤色の警告LED116を点灯し、圧電ブザー駆動回路107を通じて圧電ブザー115を鳴らす。使用者は、シールド体112が異常であることを容易に認識することができる。警告LED116に代えて、液晶ディスプレイを使用しても良い。圧電ブザー115に代えて、音声ガイダンス用のスピーカを使用しても良い。
次に、図4に基づき、誘導加熱装置の制御方法について説明する。
最初に、制御部104aは、シールド体112の導通状態が良好か否か(トランジスタ103aのコレクタ電位が+5Vかまたは0Vか)をチェックする(ステップ401)。導通状態が良好であればステップ402に進み、導通状態が悪ければステップ407に進む。ステップ402において、制御部104aは、加熱コイル101をONする指令が出されているか否かをチェックする。加熱コイル101をONする指令が出されていればステップ404に進む。加熱コイル101をONする指令が出されていなければステップ403に進み、インバータ回路102を制御して加熱コイル101を停止させる。その後、ステップ405に進む。
ステップ404において(加熱コイル101をONする指令が出されている)、制御部104aは、インバータ回路102を制御して、指令通りの電力を加熱コイル101に印加する。ステップ405において、警告LED116を消灯する。次に、圧電ブザー(警告ブザー)115をOFF状態にする(ステップ406)。そしてステップ401に戻って上記の処理を繰り返す。ステップ407において(導通状態が悪い)、制御部104aは、インバータ回路102を制御して加熱コイル101を停止させる。次に、ステップ408において、警告LED116を点灯する。次ぎに、圧電ブザー(警告ブザー)115をON状態にする(ステップ409)。ステップ401に戻って上記の処理を繰り返す。
本実施の形態において、シールド体112と加熱コイル101との間の浮遊容量(等価容量)が大きければ、加熱コイル101が通電されている時、検知部103の入力電圧には大きなノイズが乗り、検知部103はシールド体112の導通状態を正しく検知できない場合がある。このような場合、加熱コイル101が通電されていない時にのみ、検知部103はシールド体112の導通状態を検知する。すなわち、加熱コイル101をOFFからONに変化させる指令を入力した時にシールド体112の導通状態が悪ければ、制御部104aは加熱コイル101を導通させない。これにより、検知部103はシールド体112の導通状態を正しく検知できる。一旦加熱コイル101が動作状態(通電状態)になった後は、検知部103はシールド体112の導通状態をチェックしない。
インバータ回路102を駆動して加熱コイル101に高周波電流を流すと、発生する高周波磁界により鍋等の被加熱体110に渦電流が生じる。被加熱体110が発熱し、これにより調理が行われる。被加熱体110が鉄などの高透磁率の鍋であれば、比較的低周波数で低電圧を加熱コイル101に印加することにより被加熱体110を加熱することができる。しかし、アルミニウムや銅等の低透磁率の鍋を加熱するためには、高い周波数で高い電圧を加熱コイル101に印加する必要がある。そのため、例えば、加熱コイル101の巻き数を多くしなければならない。
図1、図2において、加熱コイル101は、12ターン程度の単層コイルとして記載されている。加熱コイル101は複層であっても良く、例えば、総巻数が約30〜60ターン程度の複層であっても良い。このような巻数の加熱コイル101の両端電圧は、1kVを超えるような高電圧になる。この場合の誘導加熱装置においては、使用者が被加熱体110に触れると、加熱コイル101と被加熱体110との間の等価容量により被加熱体110を通じて人体に漏洩電流が流れる恐れがある。そこで、本実施の形態では、シールド体112を設け、これを低電位部に接続することにより、被加熱体110の電位を下げ、漏洩電流が誘起されないようにしている。
本実施の形態は、シールド体112の通電状態を検知することも特徴としている。この検知部103はシールド体112の通電状態を検知することにより、シールド体112が正常な状態か否かを検知する。例えば、シールド体112または接続線122、123が冷熱サイクルなどの熱的な刺激、または腐食などの経年的な劣化に起因して、電流が流れ難くなること、または断線により流れなくなること等の異常状態が発生した場合、これを検知し制御部104a(駆動部の一部)に伝達する。制御部104aはインバータ回路102(駆動部の他の一部)の出力を低減しまたは停止させる。このようにしてシールド体112の異常により、電流漏洩防止機能が失われた場合にも、漏洩電流が被加熱体110を通じて人に漏洩電流が流れるのを防止し、安全を確保できる。
断線などのように異常状態が明確である場合は、通電状態が良好であるか否かの判断は容易である。熱刺激や経年的な劣化などのように通電状態が徐々に悪化する場合がある。この場合は、好ましくは予め実験などにより、通電状態と被加熱体110への漏洩電流との関係を求め、通電状態が安全を保証できる基準値を定める。基準値以下になったときインバータ回路102の出力低減もしくは出力停止を行う。
シールド体112のパターンの大きさを加熱コイル101と略同程度とし、形状をスリット201で分割された略円弧状としている。このパターンの両端の接続部にそれぞれリード線122、123を接続している。これにより、略円形状の加熱コイル101に対して満遍なくシールドを施すことができるとともに加熱コイル101から発生する電界に対しても安定したシールド効果を生むことができる。検知部103が接続部202間の通電状態を検知するので、シールド体自体が損傷等で断線しても的確に異常状態を検出できる。
検知部103は、装置の電源スイッチ(図示せず)を入れると、加熱コイル101に通電していない状態においても常時シールド体112に電流を流して、その導通状態の検知を行っている。加熱コイル101に通電していない状態において検知部103が異常状態を検知した場合は、使用者が加熱を操作する前にインバータ回路102の出力を停止することができ、より高い安全性を維持できる。加熱コイル101からの漏洩電流があっても検知部103がシールド体112の導通状態を検知できる場合は、検知部103は加熱コイル101に通電中も動作する。
なお、本実施の形態ではシールド体112を設け、かつ、シールド体112の導通状態(通電状態)を常に(加熱コイル101の停止時にも)チェックし、導通状態が基準値以下になると、制御部104aはインバータ回路102を制御して、その出力を低減しまたは停止させる。これにより漏洩電流が被加熱体110を通して人体に流れることがなく安全である。
本実施の形態の誘導加熱装置は、シールド体112の導通が悪化したことを表示する表示部(警告LED116)と、そのことを報知する報知部(圧電ブザー(警告ブザー)115)とを有した。表示部及び報知部のいずれか一方のみを有していても良い。
誘導加熱装置は、螺旋状に巻かれた加熱コイル101の外終端の電位が内周端の電位より低い構成を有する。底面が大きな被加熱体110(例えば、大きな直径を有する鍋)を加熱する場合、シールド体112の外周側を経由し、加熱コイル101と被加熱体110とを接続する浮遊容量(等価容量)が発生する。本実施の形態の構成においては、加熱コイル101の外終端の電位が低いので、加熱コイル101と被加熱体110とを接続する浮遊容量(等価容量)に印加される電圧は非常に低い。加熱コイル101から被加熱体110を通じて使用者に漏洩電流がほとんど流れない。