以下、図面について、本発明の一実施の形態を、第1の実施の形態及び第2の実施の形態とに分けて詳述する。
(1)第1の実施の形態
(1−1)第1の実施の形態におけるイヤースピーカ装置の構成
図1において、1は全体として第1の実施の形態におけるイヤースピーカ装置を示し、ポータブルCD(Compact Disc)プレーヤやDMP(Digital Music Player)の再生処理等により生成されたオーディオ信号を再生音に変換し、これをリスナに聴取させるようになされている。
因みに、イヤースピーカ装置1(図1)ではリスナの左側面から見える部位だけが表示されており、リスナの右側面から見える部位については表示されていないが、双方共に同一の左右対称構造である。
このイヤースピーカ装置1は、一般的な箱形のスピーカ装置とは異なり、ヘッドホン装置と同様にリスナの頭部100に装着されることを前提としており、オーディオ信号を再生音に変換し、その再生音のうち主に中高音を出力する中高音用電気音響変換部2Lと、再生音のうち主に低音を出力する低音用電気音響変換部3Lと、その中高音用電気音響変換部2L及び低音用電気音響変換部3Lをリスナの頭部に装着して固定させるためのバンド部4とにより構成されている。
すなわちイヤースピーカ装置1は、バンド部4を介してリスナの左側に中高音用電気音響変換部2L及び低音用電気音響変換部3Lを配置し、バンド部4を介してリスナの右側に中高音用電気音響変換部2R(図示せず)及び低音用電気音響変換部3R(図示せず)を配置することになるため、左右で2.2chのヘッドホンを構成するようになされている。
バンド部4は、中央部4Aを中心に一般的な人間の頭部100の形状に合わせて上に凸の略アーチ型に形成されていると共に、当該中央部4Aに対して伸縮自在に摺動し得るアジャスト部4BLによりバンド部4全体の長さを調整し得るようになされている。
このバンド部4には、アジャスト部4BLの途中から延設された略L字状でなるアーム4Cの先端に中高音用電気音響変換部2Lが取り付けられていると共に、アジャスト部4BLの先端に低音用電気音響変換部3Lが取り付けられている。
またバンド部4は、一般的な人間の頭部100の形状よりも小さい径のアーチ型に形成されていると共に弾性力を有しており、低音用電気音響変換部3Lを広げながらリスナの頭部100に装着されると、バンド部4の弾性力の作用によって元の形状に戻ろうとするため、中高音用電気音響変換部2L及び低音用電気音響変換部3Lを当該リスナの頭部100に対して当接させた状態で保持させるようになされている。
その結果、イヤースピーカ装置1では、中高音用電気音響変換部2Lをリスナの耳介101Lから前方へ所定距離だけ離れた場所に位置させると共に、低音用電気音響変換部3Lをリスナの耳介101Lの前側上方に位置させるようになされている。
中高音用電気音響変換部2Lは、球体が垂直方向に2等分されたような形状の中高音用筐体部5Lでなり、その中高音用筐体部5Lの平面部分であるバッフル板2ALには、オーディオ信号を再生音に変換する中高音用スピーカユニット7Lが後方のリスナの外耳道入口102Lへ向けて取り付けられている。
この中高音用スピーカユニット7Lは、ポータブルCDプレーヤやDMP等から接続ケーブル(図示せず)を介して供給されるオーディオ信号に応じて、振動板を振動させることにより放音するようになされている。
これによりイヤースピーカ装置1の中高音用電気音響変換部2Lは、中高音用スピーカユニット7Lから放射された中高音をリスナの外耳道入口102Lへ直接到達させると共に、当該リスナの頬や耳介101L等で反射された反射音も外耳道入口102Lへ到達させることができるため、一般的な据置型スピーカを介して聴取した場合と同様の、自然なでかつ立体的な音像定位を与え得るようになされている。
低音用電気音響変換部3Lは、全体がほぼ球形状でなる低音用筐体部6Lでなり、その低音用筐体部6Lの内側に低音用スピーカユニット8Lが設けられている。低音用筐体部6Lは、低音用スピーカユニット8Lを境に、上方に位置する半球状部11Lと、下方に位置するカバー部12Lとに分けられており、半球状部11Lのバッフル板13Lに対して、オーディオ信号を再生音に変換する低音用スピーカユニット8Lが取り付けられている。
この低音用スピーカユニット8Lは、ポータブルCDプレーヤやDMP等から接続ケーブル(図示せず)を介して供給されるオーディオ信号に応じて、振動板を振動させることにより主に低音を放音するようになされている。
カバー部12Lは、半球状部11Lに対して取り付けられ、内側に空間を有する半球形状でなり、低音用スピーカユニット8Lの前方空間を覆い隠すようになされている。またカバー部12Lは、その表面の端部に対して、金属製でなり、所定太さを有する中空の部材を側面略U字状に屈曲させた管状ダクト9Lが貫通した状態で取り付けられている。
この管状ダクト9Lは、その先端のU字状部分がリスナの外耳道入口102Lへ向かって折り曲げられており、さらにU字状部分のほぼ中央に孔部9ALが設けられている。
従ってイヤースピーカ装置1では、リスナに対して正常に装着された際、低音用電気音響変換部3Lの低音用スピーカユニット8Lが外耳道入口102Lのやや前側上方に位置し、管状ダクト9Lの孔部9ALが外耳道入口102Lの極めて近傍に位置するようになされている。
なお管状ダクト9Lでは、孔部9ALが外耳道入口102Lとは逆向きに形成されているが、孔部9ALから放射される低音については指向性を持たないため、その低音がリスナの外耳道入口102Lに対して確実に到達し得る一方、孔部9ALから僅かに放射される中高音については、その孔部9ALが外耳道入口に対して逆方向を向き、かつ中高音が指向性を有しているため、リスナの外耳道入口102Lに殆ど到達することがない。
従ってイヤースピーカ装置1では、再生音声の中高音を中高音用スピーカユニット7Lから出力してリスナの外耳道入口102Lへ到達させると共に、管状ダクト9Lの孔部9ALから再生音声の低音だけをリスナの外耳道入口102Lに到達させる一方、孔部9ALから僅かに漏れる中高音についてはリスナの外耳道入口102Lとは逆方向に向いた当該孔部9ALから指向性を持った状態で出力されるので、その漏れた中高音がリスナの外耳道入口102Lに到達することがなく、主として中高音が作用するリスナの音像定位に対して悪影響を与えずに済むようになされている。
これによりイヤースピーカ装置1では、中高音用スピーカユニット7Lから出力される中高音により自然な音像定位を与えながら、管状ダクト9Lの孔部9ALを介して充分なレベルの低音を当該リスナに聴取させ得るようになされている。
因みに、孔部9ALの位置としては、この場所に限られるものではなく、リスナの外耳道入口に対して逆方向を向きさえすれば管状ダクト9L上の何れの場所であってもよい。
更に管状ダクト9Lは、その先端が略U字状に形成されているため、リスナの外耳道内へ入り込まないようになされている。これによりイヤースピーカ装置1は、当該リスナがイヤースピーカ装置1の装着時等に、管状ダクト9Lにより誤って当該外耳道内を傷つけてしまうことを未然に防止し得るようになされている。
ここで図2に示すように、低音用電気音響変換部3Lの低音用筐体部6Lは低音用スピーカユニット8Lが半球状部11Lに取り付けられた状態で、管状ダクト9Lを除きカバー部12Lによって密閉された空間を形成しており、低音用スピーカユニット8Lに対して低音用筐体部6L及び当該管状ダクト9Lにより共振回路を形成し、ケルトン型のスピーカとして動作するようになされている。
この低音用電気音響変換部3Lでは、リスナの耳介101を塞いでしまうことがないため、リスナの周囲で発生した音(以下これを周囲音と呼ぶ)を遮断することなく当該リスナの鼓膜103Lまで到達させて聴取させ得ると共に、管状ダクト9Lの孔部9ALから再生音の低音を外耳道入口102Lへ直接到達させて、十分なレベルの低音をリスナに聴取させ得るようになされている。
因みに管状ダクト9Lは、内径が例えば1.8[mm]、バッフル板4ALの表面から管状ダクト9Lの孔部8ALまでの距離が例えば約35[mm]とされているが、これに限るものではない。
ここで管状ダクト9Lは、その側面が略U字状に形成され、U字状部分の中央に孔部9ALが設けられているため、実質的に上半分及び下半分による2本のダクトを構成しているのと同じであり、当該管状ダクト9Lを1本の管状ダクトに換算した場合の内径(この場合は約2.5[mm]に相当する)が考慮された上で、その内径及び有効長が決定されている。
すなわち管状ダクト9Lは、側面U字状に形成されたことにより、1本の管状ダクトとした場合に比べてその有効長を短く設定し得ると共に、デザイン性及び安全性を大きく向上させ得るようになされている。
このようにイヤースピーカ装置1では、リスナの頭部100に装着された際、中高音用電気音響変換部2Lの中高音用スピーカユニット7Lをリスナの外耳道入口102Lからやや離れた場所に位置させ、その中高音用スピーカユニット7Lから再生音の中高音を放射すると共に、低音用電気音響変換部3Lのカバー部12Lから当該外耳道入口102Lの近傍まで延長された管状ダクト9Lの孔部9ALから再生音の低音を放射することにより、自然な音像定位を与えながら充分なレベルの低音を含む良好な再生音を当該リスナに聴取させ得るようになされている。
(1−2)第1の実施の形態における他のイヤースピーカ装置の構成例
ところで、第1の実施の形態におけるイヤースピーカ装置1は、図1及び図2に示したように、装着部としてのバンド部4により中高音用電気音響変換部2L及び低音用電気音響変換部3Lをリスナの頭部100に装着するようになされているが、このバンド部4に代えて他の種々の装着部を用いることにより中高音用電気音響変換部2L及び低音用電気音響変換部3Lをリスナの頭部100に装着するようにしても良い。
なお、以下では、上述したイヤースピーカ装置1の場合と同様、主に左側の中高音用電気音響変換部2L及び低音用電気音響変換部3Lを例に説明する。
例えば図3に示すイヤースピーカ装置20は、所謂アンダーチン型として構成されており、イヤースピーカ装置1(図1及び図2)におけるバンド部4に代えて、低音用電気音響変換部3Lを保持すると共にリスナの耳介101Lに引っ掛けるためのバンド部24が用いられている。
このバンド部24は、下に凸の略アーチ状に形成され、リスナの顎の下を通って左右に渡されることを前提としており、バンド部24の途中から延設された略L字状でなるアーム24Cの先端に中高音用電気音響変換部2Lが取り付けられた構成を有している。
このイヤースピーカ装置20(図3)は、バンド部24の耳掛部24BLがリスナの耳介101Lに引っ掛けられることにより中高音用電気音響変換部2L及び低音用電気音響変換部3Lをリスナの頭部100に装着することができ、イヤースピーカ装置1と同様、自然な音像定位を与えながら充分なレベルの低音を含む良好な再生音を当該リスナに聴取させ得るようになされている。
さらに図4に示すイヤースピーカ装置30は、所謂ショルダーホールド型として構成されており、イヤースピーカ装置1(図1及び図2)におけるバンド部4に代えて、中高音用電気音響変換部2L及び低音用電気音響変換部3Lを保持すると共にリスナの肩部から支持するショルダーアーム34が用いられている。
このショルダーアーム34は、その先端に低音用電気音響変換部3Lが取り付けられており、リスナの肩口から垂設された棒状の保持部34Lの途中から延設されている略L字状でなるアーム34Cの先端に中高音用電気音響変換部2Lが取り付けられた構成を有している。また、このショルダーアーム34の中央部34Aは、後ろに凸の略アーチ状に形成され、リスナの首の後ろから肩の上部に引っ掛けて左右に渡されることを前提としている。
このイヤースピーカ装置30(図4)は、リスナの両肩に渡って引っ掛けられることにより中高音用電気音響変換部2L及び低音用電気音響変換部3Lをリスナの頭部100に装着することができ、イヤースピーカ装置1と同様、自然な音像定位を与えながら充分なレベルの低音を含む良好な再生音を当該リスナに聴取させ得るようになされている。
さらに図5に示すイヤースピーカ装置40は、所謂ネックバンド型として構成されており、イヤースピーカ装置1(図1及び図2)におけるバンド部4に代えて、中高音用電気音響変換部2L及び低音用電気音響変換部3Lを保持すると共にリスナの耳介101Lに掛けるためのバンド部44が用いられている。
このバンド部44の中央部44Aは、後ろに凸の略アーチ状に形成され、リスナの後頭部100の後ろ側で渡されることを前提としており、バンド部44の先端に低音用電気音響変換部3Lが取り付けられていると共に、バンド部44の途中から延設された略L字状でなるアーム44Cの先端に中高音用電気音響変換部2Lが取り付けられた構成を有している。
このイヤースピーカ装置40(図5)は、バンド部44の耳掛部44BLがリスナの耳介101Lに引っ掛けられることにより中高音用電気音響変換部2L及び低音用電気音響変換部3Lをリスナの頭部100に装着することができ、イヤースピーカ装置1と同様、自然な音像定位を与えながら充分なレベルの低音を含む良好な再生音を当該リスナに聴取させ得るようになされている。
このように本発明では、イヤースピーカ装置1のバンド部4(図1及び図2)以外にも、イヤースピーカ装置20〜40(図3〜図5)のような種々の方式でなる装着部により、中高音用電気音響変換部2L及び低音用電気音響変換部3Lをリスナの頭部100に対して装着させるようにしても良い。
(1−3)第1の実施の形態における動作及び効果
以上の構成において、イヤースピーカ装置1(図1及び図2)は、リスナの頭部100に装着されることにより、中高音用電気音響変換部2Lの中高音用筐体部5Lに設けられた中高音用スピーカユニット7Lを当該リスナの外耳道入口102Lから所定距離だけ離れた場所に位置させると共に、当該リスナの外耳道入口102Lのやや前側上方に位置した低音用電気音響変換部3Lの管状ダクト9Lの孔部9ALを外耳道入口102Lの近傍に位置させた状態で、所定のアンプから供給されるオーディオ信号に基づいた再生音を出力する。
これによりイヤースピーカ装置1では、リスナの外耳道入口102Lよりも前方にある中高音用筐体部5Lの中高音用スピーカユニット7Lから出力する中高音をリスナの頬や耳介101L等で反射させて鼓膜103Lに到達させることができるので、一般的なスピーカを介して再生音を聴取する場合と似た特性の中高音を当該リスナに聴取させ、音像が頭外に位置しているような自然な定位感を与えることができる。
一方、イヤースピーカ装置1では、低音用筐体部6Lの低音用スピーカユニット8Lから出力する低音を、管状ダクト9Lを介して外耳道入口102Lへ直接到達させることができるので、リスナの耳介101Lを密閉してしまうことなく開放状態のまま、充分なレベルの低音を聴取させることができる。
またイヤースピーカ装置1は、低音の再生音量を上げるのではなく、低音の放射口である管状ダクト9Lの孔部9ALを外耳道入口102Lに近づけることにより、リスナの鼓膜103L(図2)に充分な低音を到達させているため、例えば大口径のスピーカやサブウーファー等を用いて低音を再生するような場合と比較して、周囲に漏れる低音や振動をほぼ皆無にすることができる。
従って、例えばリスナが深夜にイヤースピーカ装置1を介して再生音を聴取する場合等に、近隣や周囲への迷惑を殆ど気にすることなく、充分なレベルの低音が含まれる良好な再生音を堪能することができる。
また、この管状ダクト9Lは、先端がU字状に形成されており、リスナの外耳道入口102Lを塞いでしまうことがないため、再生音と共に、当該リスナの周囲で発生した周囲音を遮断することなく鼓膜103Lに到達させて聴取させることができる。
これによりイヤースピーカ装置1では、リスナが歩行するときやスポーツを行うときなど、リスナが周囲音を聴取する必要がある場合にも、良好な再生音に加えて周囲音を確実に聴取させることができる。
またイヤースピーカ装置1は、従来の密閉型ヘッドホンのように、リスナの耳介101L等を中高音用電気音響変換部2Lの中高音用筐体部5Lによって覆ってしまうことがないため、密閉型ヘッドホンを装着したリスナが感じるような閉塞感や蒸れといった不快感を与えることがない。さらにイヤースピーカ装置1では、密閉空間を形成しないため、密閉型ヘッドホンを使用した場合に生じ得る、外耳道における共振周波数の変化を生じることもなく、リスナに違和感を与えることもない。
そのうえイヤースピーカ装置1は、低音の放射口である管状ダクト9Lの孔部9ALを鼓膜103Lに近づけることによりリスナに十分な音量レベルの低音を聴取させ得るため、低音用スピーカユニット8Lの口径を不必要に大きくする必要が無く、低音用筐体部6Lの大きさを必要最小限に止めることができる。これによりイヤースピーカ装置1では、全体の大きさや重量を必要最小限に抑えることができるので、リスナがイヤースピーカ装置1を装着した際の大きさや重さによる煩わしさを極力抑えることができる。
さらにイヤースピーカ装置1は、頭部100の頂上近傍にバンド部4の中央部4Aを配置し、中高音用電気音響変換部2L及び低音用電気音響変換部3Lを分けた位置に配置したことにより、中高音用電気音響変換部2L及び低音用電気音響変換部3Lによる重量バランスを釣り合わせることができ、かくして頭部100の装着時における安定性を向上させると共に、装着感を向上させることが出来る。
以上の構成によれば、イヤースピーカ装置1は、リスナの頭部100に装着された際、中高音用電気音響変換部2Lの中高音用スピーカユニット7Lを当該リスナの外耳道入口102Lよりもやや前方の所定距離だけ離れた場所に位置させると共に、低音用電気音響変換部3Lの管状ダクト9Lの孔部9ALを外耳道入口102Lの近傍に位置させた状態で再生音を出力することにより、装着時の安定性を持たせながら、自然でかつ立体的な音像定位を与え、かつ高品質な再生音をリスナに聴取させることができる。
(2)第2の実施の形態
(2−1)第2の実施の形態におけるイヤースピーカ装置の構成
図1との対応部分に同一符号を付した図6において、200は全体として第2の実施の形態におけるイヤースピーカ装置を示し、ポータブルCDプレーヤやDMPの再生処理等により生成されたオーディオ信号を再生音に変換し、これをリスナに聴取させるようになされている。
因みに、この場合のイヤースピーカ装置200(図6)においても、リスナの左側面から見える部位だけが表示されており、リスナの右側面から見える部位については表示されていないが、双方共に同一の左右対称構造である。
このイヤースピーカ装置200は、一般的な箱形のスピーカ装置とは異なり、ヘッドホン装置と同様にリスナの頭部100に装着されることを前提としており、オーディオ信号を再生音に変換し、その再生音のうち主に中高音を出力する中高音用電気音響変換部2L及び後方中高音用電気音響変換部50Lと、再生音のうち主に低音を出力する低音用電気音響変換部3Lと、その中高音用電気音響変換部2L、後方中高音用電気音響変換部50L及び低音用電気音響変換部3Lをリスナの頭部に装着して固定させるためのバンド部204とにより構成されている。
すなわちイヤースピーカ装置200は、バンド部204を介してリスナの左側に中高音用電気音響変換部2L、後方中高音用電気音響変換部50L及び低音用電気音響変換部3Lを配置し、バンド部4を介してリスナの右側に中高音用電気音響変換部2R(図示せず)、後方中高音用電気音響変換部50R(図示せず)及び低音用電気音響変換部3R(図示せず)を配置することになるため、左右で4.2chのヘッドホンを構成するようになされている。
バンド部204は、中央部4Aを中心に一般的な人間の頭部100の形状に合わせて上に凸の略アーチ型に形成されていると共に、当該中央部4Aに対して伸縮自在に摺動し得るアジャスト部4BLによりバンド部204全体の長さを調整し得るようになされている。
このバンド部204は、アジャスト部4BLの途中から前方に延設された略L字状でなるアーム4Cの先端に中高音用電気音響変換部2Lが取り付けられ、かつアジャスト部4BLの途中から後方に延設された略L字状でなるアーム204Dの先端に後方中高音用電気音響変換部50Lが取り付けられると共に、アジャスト部4BLの先端に低音用電気音響変換部3Lが取り付けられた構成を有している。
またバンド部204は、一般的な人間の頭部100の形状よりも小さい径のアーチ型に形成されていると共に弾性力を有しており、低音用電気音響変換部3Lを広げながらリスナの頭部100に装着されると、バンド部4の弾性力の作用によって元の形状に戻ろうとするため、中高音用電気音響変換部2L、後方中高音用電気音響変換部50L及び低音用電気音響変換部3Lを当該リスナの頭部100に対して当接させた状態で保持させるようになされている。
その結果、イヤースピーカ装置200では、中高音用電気音響変換部2Lをリスナの耳から前方へ所定距離だけ離れた場所に位置させると共に、後方中高音用電気音響変換部50Lをリスナの耳から後方へ所定距離だけ離れた場所に位置させ、更に低音用電気音響変換部3Lをリスナの耳介101Lのやや前側上方に位置させるようになされている。
中高音用電気音響変換部2Lは、球体が垂直方向に2等分されたような形状の中高音用筐体部5Lでなり、その中高音用筐体部5Lの平面部分であるバッフル板2ALには、オーディオ信号を再生音に変換する中高音用スピーカユニット7Lが後方の外耳道入口102Lへ向けて取り付けられている。
この中高音用スピーカユニット7Lは、ポータブルCDプレーヤやDMP等から接続ケーブル(図示せず)を介して供給されるオーディオ信号に応じて、振動板を振動させることにより放音するようになされている。
また後方中高音用電気音響変換部50Lは、中高音用電気音響変換部2Lと同様、球体が垂直方向に2等分されたような形状の後方中高音用筐体部51Lでなり、その後方中高音用筐体部51Lの平面部分であるバッフル板50ALには、オーディオ信号を再生音に変換する後方中高音用スピーカユニット53Lが前方の耳介101Lへ向かって取り付けられている。
この後方中高音用スピーカユニット53Lは、ポータブルCDプレーヤやDMP等から接続ケーブル(図示せず)を介して供給されるオーディオ信号に応じて、振動板を振動させることにより放音するようになされている。
これによりイヤースピーカ装置200の中高音用電気音響変換部2L及び後方中高音用電気音響変換部50Lは、中高音用スピーカユニット7L及び後方中高音用スピーカユニット53Lからそれぞれ放射された中高音をリスナの外耳道入口102Lへ直接到達させると共に、当該リスナの頬や耳介101L等で反射された反射音も外耳道入口102Lへ到達させることができるため、一般的な据置型スピーカを介して聴取した場合と同様の、自然でかつ一層立体的な音像定位を与え得るようになされている。
一方、低音用電気音響変換部3Lは、全体がほぼ球形状でなる低音用筐体部6Lでなり、その低音用筐体部6Lの内側に低音用スピーカユニット8Lが設けられている。低音用筐体部6Lは、低音用スピーカユニット8Lを境に、上方に位置する半球状部11Lと、下方に位置するカバー部12Lとに分けられており、半球状部11Lのバッフル板13Lに対して、オーディオ信号を再生音に変換する低音用スピーカユニット8Lが取り付けられている。
この低音用スピーカユニット8Lは、ポータブルCDプレーヤやDMP等から接続ケーブル(図示せず)を介して供給されるオーディオ信号に応じて、振動板を振動させることにより主に低音を放音するようになされている。
カバー部12Lは、半球状部11Lに対して取り付けられ、その内側に空間を有する半球形状でなり、低音用スピーカユニット8Lの前方空間を覆い隠すようになされている。またカバー部12Lは、金属製でなり、所定太さを有する中空の部材を側面略U字状に屈曲させた管状ダクト9Lが、当該カバー部12Lの表面の端部に対し貫通した状態で取り付けられている。
この管状ダクト9Lは、その先端のU字状部分がリスナの外耳道入口102Lへ向かって折り曲げられており、さらにU字状部分のほぼ中央に孔部9ALが設けられている。
従ってイヤースピーカ装置200では、リスナに対して正常に装着された際、低音用電気音響変換部3Lの低音用スピーカユニット8Lが外耳道入口102Lのやや前側上方に位置し、管状ダクト9Lの孔部9ALが外耳道入口102Lの極めて近傍に位置するようになされている。
なお管状ダクト9Lでは、孔部9ALが外耳道入口102Lとは逆向きに形成されているが、孔部9ALから放射される低音については指向性を持たないため、その低音がリスナの外耳道入口102Lに対して確実に到達し得る一方、孔部9ALから僅かに放射される中高音については、その孔部9ALが外耳道入口に対して逆方向を向き、かつ中高音が指向性を有しているため、リスナの外耳道入口102Lに殆ど到達することがない。
従ってイヤースピーカ装置200では、再生音の中高音を中高音用スピーカユニット7L及び後方中高音用スピーカユニット53Lから出力してリスナの外耳道入口102Lへ到達させると共に、管状ダクト9Lの孔部9ALから再生音声の低音だけをリスナの外耳道入口102Lに到達させる一方、孔部9ALから僅かに漏れる中高音についてはリスナの外耳道入口102Lとは逆方向に向いた当該孔部9ALから指向性を持った状態で出力されるので、その漏れた中高音がリスナの外耳道入口102Lに到達することがなく、孔部9ALから僅かに漏れる中高音がリスナの立体的な音像定位に対して悪影響を与えずに済むようになされている。
これによりイヤースピーカ装置200では、中高音用スピーカユニット7L及び後方中高音用スピーカユニット53Lから出力される中高音により自然な音像定位を与えながら、管状ダクト9Lの孔部9ALを介して充分なレベルの低音を当該リスナに聴取させ得るようになされている。
因みに、孔部9ALの位置としては、この場所に限られるものではなく、リスナの外耳道入口に対して逆方向を向きさえすれば管状ダクト9L上の何れの場所であってもよい。
なお管状ダクト9Lは、その先端が略U字状に形成されているため、リスナの外耳道内へ入り込まないようになされている。これによりイヤースピーカ装置200は、当該リスナがイヤースピーカ装置200の装着時等に、管状ダクト9Lにより誤って当該外耳道内を傷つけてしまうことを未然に防止し得るようになされている。
また低音用電気音響変換部3Lの低音用筐体部6Lは、低音用スピーカユニット8Lが半球状部11Lに取り付けられた状態で、管状ダクト9Lを除きカバー部12Lによって密閉された空間を形成しており、低音用スピーカユニット8Lに対して低音用筐体部6L及び当該管状ダクト9Lにより共振回路を形成し、ケルトン型のスピーカとして動作するようになされている。
この低音用電気音響変換部3Lでは、リスナの耳介101を塞いでしまうことがないため、リスナの周囲で発生した音(以下これを周囲音と呼ぶ)を遮断することなく当該リスナの鼓膜103Lまで到達させて聴取させ得ると共に、管状ダクト9Lの孔部9ALから再生音の低音を外耳道入口102Lへ直接到達させて、十分なレベルの低音をリスナに聴取させ得るようになされている。
因みに管状ダクト9Lは、内径が例えば1.8[mm]、バッフル板4ALの表面から管状ダクト9Lの孔部8ALまでの距離が例えば約35[mm]とされているが、これに限るものではない。
ここで管状ダクト9Lは、U字状部分の中央に孔部9ALが設けられているため、実質的に上半分及び下半分による2本のダクトを構成しているのと同じであり、当該管状ダクト9Lを1本の管状ダクトに換算した場合の内径(この場合は約2.5[mm]に相当する)が考慮された上で、その内径及び有効長が決定されている。
すなわち管状ダクト9Lは、側面U字状に形成されたことにより、1本の管状ダクトとした場合に比べてその有効長を短く設定し得ると共に、デザイン性及び安全性を大きく向上させ得るようになされている。
このようにイヤースピーカ装置200では、リスナの頭部100に装着された際、中高音用電気音響変換部2Lの中高音用スピーカユニット7Lをリスナの外耳道入口102Lから前方のやや離れた場所に位置させ、その中高音用スピーカユニット7Lから再生音の中高音を放射すると共に、後方中高音用電気音響変換部50Lの後方中高音用スピーカユニット53Lをリスナの外耳道入口102Lから後方のやや離れた場所に位置させ、その後方中高音用スピーカユニット53Lから再生音の中高音を放射し、低音用電気音響変換部3Lのカバー部12Lから当該外耳道入口102Lの近傍まで延長された管状ダクト9Lの孔部9ALから再生音の低音を放射することにより、自然でより一層立体的な音像定位を与えながら充分なレベルの低音を含む良好な再生音を当該リスナに聴取させ得るようになされている。
(2−2)第2の実施の形態における他のイヤースピーカ装置の構成例
ところで、第2の実施の形態におけるイヤースピーカ装置200は、図6に示したように、装着部としてのバンド部204により中高音用電気音響変換部2L、後方中高音用電気音響変換部50L及び低音用電気音響変換部3Lをリスナの頭部100に装着するようになされているが、このバンド部204に代えて他の種々の装着部を用いることにより中高音用電気音響変換部2L、後方中高音用電気音響変換部50L及び低音用電気音響変換部3Lをリスナの頭部100に装着するようにしても良い。
なお、以下では、上述したイヤースピーカ装置200の場合と同様、主に左側の中高音用電気音響変換部2L、後方中高音用電気音響変換部50L及び低音用電気音響変換部3Lを例に説明するが、右側の中高音用電気音響変換部2R(図示せず)、後方中高音用電気音響変換部50R(図示せず)及び低音用電気音響変換部3R(図示せず)についても、当該左側の中高音用電気音響変換部2L、後方中高音用電気音響変換部50L及び低音用電気音響変換部3Lと左右対称に構成されているものとする。
例えば図3との対応部分に同一符号を付した図7に示すように、第2の実施の形態におけるイヤースピーカ装置220(図7)としては、所謂アンダーチン型として構成されており、イヤースピーカ装置200(図6)におけるバンド部204に代えて、中高音用電気音響変換部2L、後方中高音用電気音響変換部50L及び低音用電気音響変換部3Lを保持すると共にリスナの耳介101Lに引っ掛けるためのバンド部224が用いられている。
このバンド部224は、下に凸の略アーチ状に形成され、リスナの顎の下を通って左右に渡されることを前提としており、バンド部224の途中から前方へ延設された略L字状でなるアーム24Cの先端に中高音用電気音響変換部2Lが取り付けられると共に、バンド部224の途中から後方へ延設された略L字状でなるアーム224Dの先端に後方中高音用電気音響変換部50Lが取り付けられ、かつリスナの耳介101Lのやや前側上方に位置するように低音用電気音響変換部3Lがバンド部224に対して取り付けられた構成を有している。
このイヤースピーカ装置220(図7)は、バンド部224の耳掛部24BLがリスナの耳介101Lに引っ掛けられることにより中高音用電気音響変換部2L、後方中高音用電気音響変換部50L及び低音用電気音響変換部3Lをリスナの頭部100に装着することができ、イヤースピーカ装置200と同様、自然でかつ一層立体的な音像定位を与えながら充分なレベルの低音を含む良好な再生音を当該リスナに聴取させ得るようになされている。
この場合のイヤースピーカ装置220(図7)においても、低音用スピーカユニット8Lから放射された主に低音をカバー部12L及び管状ダクト9Lを介して、直接リスナの外耳道入口102Lへ到達させることができるため、一般的な据置型スピーカを介して聴取した場合よりも低音の音漏れを低減させ得るようになされている。
さらに図4との対応部分に同一符号を付した図8に示すように、イヤースピーカ装置230としては、所謂ショルダーホールド型として構成されており、イヤースピーカ装置200(図6)におけるバンド部204に代えて、中高音用電気音響変換部2L、後方中高音用電気音響変換部50L及び低音用電気音響変換部3Lを保持すると共にリスナの肩部から支持するショルダーアーム234が用いられている。
このショルダーアーム234は、その先端に低音用電気音響変換部3Lが取り付けられており、リスナの肩口から垂設された棒状の保持部34Lの途中から前方へ延設された略L字状でなるアーム34Cの先端に中高音用電気音響変換部2Lが取り付けられ、かつ保持部34Lの途中から後方へ延設された略L字状でなるアーム234Dの先端に後方中高音用電気音響変換部50Lが取り付けられた構成を有している。また、このショルダーアーム234の中央部34Aは、後ろに凸の略アーチ状に形成され、リスナの首の後ろから肩の上部に引っ掛けて左右に渡されることを前提としている。
このイヤースピーカ装置230(図8)は、リスナの両肩に渡って引っ掛けられることにより中高音用電気音響変換部2L、後方中高音用電気音響変換部50L及び低音用電気音響変換部3Lをリスナの頭部100に装着することができ、イヤースピーカ装置200と同様、自然でかつ一層立体的な音像定位を与えながら充分なレベルの低音を含む良好な再生音を当該リスナに聴取させ得るようになされている。
さらに図5との対応部分に同一符号を付した図9に示すように、イヤースピーカ装置240としては、所謂ネックバンド型として構成されており、イヤースピーカ装置200(図6)におけるバンド部204に代えて、中高音用電気音響変換部2L、後方中高音用電気音響変換部50L及び低音用電気音響変換部3Lを保持すると共にリスナの耳介101Lに掛けるためのバンド部244が用いられている。
このバンド部244の中央部44Aは、後ろに凸の略アーチ状に形成され、リスナの後頭部100の後ろ側で渡されることを前提としており、バンド部244の途中から前方へ延設された略L字状でなるアーム44Cの先端に中高音用電気音響変換部2Lが取り付けられ、かつバンド部244の途中から後方へ延設された略L字状でなるアーム244Dの先端に後方中高音用電気音響変換部50Lが取り付けられた構成を有している。
このイヤースピーカ装置240(図9)は、バンド部244の耳掛部44BLがリスナの耳介101Lに引っ掛けられることにより中高音用電気音響変換部2L、後方中高音用電気音響変換部50L及び低音用電気音響変換部3Lをリスナの頭部100に装着することができ、イヤースピーカ装置200と同様、自然でかつ一層立体的な音像定位を与えながら充分なレベルの低音を含む良好な再生音を当該リスナに聴取させ得るようになされている。
このように本発明では、イヤースピーカ装置200のバンド部204(図6)以外にも、イヤースピーカ装置220〜240(図7〜図9)に用いられている種々の方式でなる装着部により、中高音用電気音響変換部2L、後方中高音用電気音響変換部50L及び低音用電気音響変換部3Lをリスナの頭部100に対して装着させるようにしても良い。
(2−3)第2の実施の形態における動作及び効果
以上の構成において、イヤースピーカ装置200は、リスナの頭部100に装着されることにより、中高音用電気音響変換部2Lの中高音用筐体部5Lに設けられた中高音用スピーカユニット7Lを当該リスナの外耳道入口102Lから前方へ所定距離だけ離れた場所に位置させ、かつ後方中高音用電気音響変換部50Lの後方中高音用筐体部51Lに設けられた後方中高音用スピーカユニット53Lを当該リスナの外耳道入口102Lから後方へ所定距離だけ離れた場所に位置させると共に、当該リスナの外耳道入口102Lのやや前側上方に位置する低音用電気音響変換部3Lの管状ダクト9Lの孔部9ALを外耳道入口102Lの近傍に位置させた状態で、所定のアンプから供給されるオーディオ信号に基づく再生音を出力する。
これによりイヤースピーカ装置200では、リスナの外耳道入口102Lよりも前方にある中高音用筐体部5Lの中高音用スピーカユニット7Lから出力する中高音をリスナの頬や耳介101L等で反射させて鼓膜103Lに到達させると共に、リスナの外耳道入口102Lよりも後方にある後方中高音用筐体部51Lの後方中高音用スピーカユニット53Lから出力する中高音をリスナの耳介101L等で反射させて鼓膜103Lに到達させることができるので、一般的なスピーカを介して再生音を聴取する場合と似た特性の中高音を当該リスナに聴取させ、音像が頭外に位置しているような自然でかつ一層立体的な定位感を与えることができる。
一方、イヤースピーカ装置200では、低音用筐体部6Lの低音用スピーカユニット8Lから出力する低音を、管状ダクト9Lを介して外耳道入口102Lへ直接到達させることができるので、リスナの耳介101Lを密閉してしまうことなく開放した状態のまま、充分なレベルの低音を聴取させることができる。
またイヤースピーカ装置200は、低音の再生音量を上げるのではなく、低音の放射口である管状ダクト9Lの孔部9ALを外耳道入口102Lに近づけることにより、リスナの外耳道入口102Lに充分な低音を到達させているため、例えば大口径のスピーカやサブウーファー等を用いて低音を再生するような場合と比較して、周囲に漏れる低音や振動をほぼ皆無にすることができる。
従って、例えばリスナが深夜にイヤースピーカ装置200を介して再生音を聴取する場合等に、近隣や周囲への迷惑を殆ど気にすることなく、充分な低音が含まれる良好な再生音を堪能することができる。
また、この管状ダクト9Lは、先端がU字状に形成されており、リスナの外耳道入口102Lを塞ぐことがないため、再生音と共に、当該リスナの周囲で発生した周囲音を遮断することなく鼓膜103Lに到達させて聴取させることができる。
これによりイヤースピーカ装置200では、リスナが歩行するときやスポーツを行うときなど、リスナが周囲音を聴取する必要がある場合にも、良好な再生音に加えて確実に周囲音を聴取させることができる。
またイヤースピーカ装置200は、従来の密閉型ヘッドホンのように、リスナの耳介101L等を中高音用電気音響変換部2Lの中高音用筐体部5Lや、後方中高音用電気音響変換部50Lの後方中高音用筐体部51Lによって覆ってしまうことがないため、密閉型ヘッドホンを装着したリスナが感じるような閉塞感や蒸れといった不快感を与えることがない。さらにイヤースピーカ装置200では、密閉空間を形成しないため、密閉型ヘッドホンを使用した場合に生じ得る、外耳道における共振周波数の変化を生じることもなく、リスナに違和感を与えることもない。
そのうえイヤースピーカ装置200は、低音の放射口である管状ダクト9Lの孔部9ALを鼓膜103Lに近づけることによりリスナに十分な音量レベルの低音を聴取させ得るため、低音用スピーカユニット8Lの口径を不必要に大きくする必要が無く、低音用筐体部6Lの大きさを必要最小限に止めることができる。これによりイヤースピーカ装置200では、全体の大きさや重量を必要最小限に抑えることができるので、リスナがイヤースピーカ装置200を装着した際の大きさや重さによる煩わしさを極力抑えることができる。
さらにイヤースピーカ装置200は、頭部100の頂上近傍にバンド部204の中央部4Aを配置し、中高音用電気音響変換部2L、後方中高音用電気音響変換部50L及び低音用電気音響変換部3Lを3方向に振り分けて配置したことにより、中高音用電気音響変換部2L、後方中高音用電気音響変換部50L及び低音用電気音響変換部3Lによる重量バランスを最適に釣り合わせることができ、かくして頭部100の装着時における安定性を更に向上させると共に、装着感を一層向上させることが出来る。
以上の構成によれば、イヤースピーカ装置200は、リスナの頭部100に装着された際、中高音用電気音響変換部2Lの中高音用スピーカユニット7Lを当該リスナの外耳道入口102Lよりもやや前方の所定距離だけ離れた場所に位置させると共に、後方中高音用電気音響変換部50Lの後方中高音用スピーカユニット53Lをリスナの外耳道入口102Lよりも後方の所定距離だけ離れた場所に位置させ、かつ低音用電気音響変換部3Lの管状ダクト9Lの孔部9ALを外耳道入口102Lの近傍に位置させた状態で再生音を出力することにより、装着時の安定性を持たせながら、自然でかつ一層立体的な音像定位を与え、かつ高品質な再生音をリスナに聴取させることができる。
(3)他の実施の形態
なお上述した第1及び第2の実施の形態においては、低音用電気音響変換部3Lの管状ダクト9Lが側面略U字状の2本構造として形成されるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、当該管状ダクト9Lを1本や3本以上の管状ダクトによって構成するようにしても良い。
例えば図10に示すように、低音用電気音響変換部3Lにおいては、低音用筐体部6Lから1本の管状ダクト58Lが下方へ延長されるようにしても良く、さらに当該管状ダクト58Lの先端部にリスナの外耳道入口102Lを傷つけないための保護部59Lが取り付けられていても良い。この場合、保護部59Lは、音を通しやすいスポンジ状の部材等で構成されることにより、周囲音を遮断せずリスナに聴取させることができる。
また第1及び第2の実施の形態においては、金属等の固い材料で形成された管状ダクト9Lを用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、可撓性を有する樹脂等の柔らかい材料で形成された管状ダクト9Lを用いるようにしても良い。
さらに第1及び第2の実施の形態においては、管状ダクト9Lが低音用筐体部6Lのカバー部12Lにおける表面の端部を貫通するように設けられた場合について述べたが、本発明はこれに限らず、当該管状ダクト9Lが当該カバー部12Lにおける表面の他の箇所を貫通するよう設けられていても良い。
さらに第1及び第2の実施の形態においては、イヤースピーカ装置1及びイヤースピーカ装置200がリスナの頭部100(図1及び図6)に装着された際、中高音用筐体部5Lの中高音用スピーカユニット7Lの放音面がほぼ後方向を向くようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば中高音用スピーカユニット7Lの放音面がやや内側を向くようにしても良く、要は当該中高音用スピーカユニット7Lの放音面がおおよそ外耳道入口102Lの方向に向き、放射する中高音が効率良く外耳道入口102Lへ到達されれば良い。
さらに第2の実施の形態においては、イヤースピーカ装置200がリスナの頭部100(図6)に装着された際、後方中高音用筐体部51Lの後方中高音用スピーカユニット53Lの放音面がほぼ前方向を向くようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば後方中高音用スピーカユニット51Lの放音面がやや内側を向くようにしても良く、要は当該後方中高音用スピーカユニット51Lの放音面がおおよそ耳階101の外耳道入口102Lの方向へ向き、放射する中高音が効率良く外耳道入口102Lへ到達されれば良い。
さらに第1の実施の形態においては、イヤースピーカ装置1がリスナの左側だけで中高音用電気音響変換部2L及び低音用電気音響変換部3Lを有し、リスナの右側についても中高音用電気音響変換部2R(図示せず)及び低音用電気音響変換部3R(図示せず)を有することにより左右で2.2チャンネルの再生音を出力するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば左側の中高音用電気音響変換部2L及び低音用電気音響変換部3Lのみを有し、1.1チャンネルの再生音を出力するようにしても良い。
さらに第2の実施の形態においては、イヤースピーカ装置200がリスナの左側だけで中高音用電気音響変換部2L、後方中高音用電気音響変換部50L及び低音用電気音響変換部3Lを有し、リスナの右側についても中高音用電気音響変換部2R(図示せず)、後方中高音用電気音響変換部50R(図示せず)及び低音用電気音響変換部3R(図示せず)を有することにより左右で4.2チャンネルの再生音を出力するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば左側の中高音用電気音響変換部2L、後方中高音用電気音響変換部50L及び低音用電気音響変換部3Lのみを有し、2.1チャンネルの再生音を出力するようにしても良い。
さらに第1及び第2の実施の形態においては、中高音用筐体部5Lに中高音用スピーカユニット7Lを設け、後方中高音筐体部51Lに後方中高音用スピーカユニット53Lを設けるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば中音用及び高音用といった2つのスピーカユニットを1つの中高音用筐体部5L及び後方中高音用筐体部51Lに設けて2ウェイスピーカとするなど、複数のスピーカユニットを中高音用筐体部5L及び後方中高音用筐体部51Lに設けるようにしても良い。
さらに第1及び第2の実施の形態においては、球体を垂直方向に2等分したような形状でなる中高音用筐体部5L及び後方中高音用筐体部51Lを用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば立方体状や円柱状等の種々の形状であっても良く、要はスピーカのエンクロージャとして機能し得るようなほぼ密閉された空間を内部に有していれば良い。
さらに第1及び第2の実施の形態においては、管状ダクト9L(図2)の内端部9BL1及び9BL2の端部にエッジが残された状態のカバー部12Lを用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、管状ダクト9Lの内端部9BL1及び9BL2の端部に対してR状の丸みが形成されたカバー部12Lを用いるようにしても良い。この場合、カバー部12Lでは、低音用スピーカユニット8Lの前面から押し出される空気がエッジに当って風切り音を発生するようなことがなく、ノイズのない低音だけを管状ダクト9Lの孔部9ALから放射することができる。
さらに第1及び第2の実施の形態においては、孔部9ALから内端部9BL1(図2)までのダクト長と、孔部9ALから内端部9BL2(図2)までがそれぞれ同じ長さに設定された管状ダクト9Lを用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、それぞれ異なる長さのダクト長に設定された管状ダクトを用いるようにしても良い。
例えば、孔部9ALから内端部9BL1までの長さと、孔部9ALから内端部9BL2までの長さとが異なる管状ダクトが設けられた低音用筐体部6Lでは、長さが異なる2つのダクト部分により相互に共振特性の位相ずれが生じ、その結果、孔部9ALから僅かに出力される中高域の周波数成分についても相互に相殺し、管状ダクトの孔部9ALから中高音が打ち消された低音だけを放射し得るようになされている。
さらに第1及び第2の実施の形態においては、半球形状のカバー部12Lを用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば四角錐や三角錐等の形状であっても良く、要は低音用スピーカユニット8Lから出力された低音を集め、かつ外部に漏れない構造であれば良い。
さらに第1及び第2の実施の形態においては、低音用スピーカユニット8Lの後方を閉塞した構造の半球状部11Lが設けられた低音用筐体部6Lを用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、図11に示すように、低音用スピーカユニット8Lの後方に貫通孔305〜308が形成されると共に、その貫通孔305〜308を内側から塞ぐようなスポンジ等でなる音響抵抗体309が取り付けられた半球状部311Lを有する低音用筐体部303Lを用いるようにしても良い。
この場合の低音用筐体部303L(図11)では、低音用スピーカユニット8Lの後方側が貫通孔305〜308によって開放されたことによって当該低音用スピーカユニット8Lの振動板がオーディオ信号に対して追従し易くなると共に、貫通孔305〜308が形成されたことによる音質の低下を音響抵抗体309によって防ぐことができるので、高音質な低音を管状ダクト9Lの孔部9ALから放射することができる。
因みに、低音用筐体部303L(図11)では、音響抵抗体309が必ずしもなければならない訳ではなく、必要に応じて音響抵抗体309を取り付け、またその長さ及び厚さを変更したものを取り付けることにより音質を調整することが可能である。
さらに第1及び第2の実施の形態においては、低音用スピーカユニット8Lの後方を閉塞した構造の半球状部11Lが設けられた低音用筐体部6Lを用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、図12に示すように、低音用スピーカユニット8Lの前方にあるカバー部410Lに貫通孔405〜407が形成されると共に、その貫通孔405〜407を内側から塞ぐようなスポンジ等でなる音響抵抗体408及び409が取り付けられた低音用筐体部411Lを用いるようにしても良い。
この場合の低音用筐体部411L(図12)では、低音用スピーカユニット8Lの前面側が貫通孔405〜407によって開放されたことによって当該低音用スピーカユニット8Lの振動板がオーディオ信号に対して追従し易くなると共に、貫通孔405〜407が形成されたことによる音質の低下を音響抵抗体408及び409によって防ぐことができるので、高音質な低音を管状ダクト9Lの孔部9ALから放射することができる。
因みに、低音用筐体部411L(図12)においても、音響抵抗体408及び409が必ずしもなければならない訳ではなく、必要に応じて音響抵抗体408及び409を取り付け、またその長さ及び厚さを変更したものを取り付けることにより音質を調整することが可能である。
さらに第1及び第2の実施の形態においては、カバー部12Lの表面に管状ダクト9Lが設けられた低音用筐体部6Lを用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、図13に示すように半球状部11Lのバッフル板13Lに対して管状ダクト9Lが設けられた低音用筐体部511Lを用いるようにしても良い。
この場合、低音用筐体部511L(図13)は、低音用スピーカユニット8Lの後方に発生した所定周波数帯域の低音だけを管状ダクト9Lの孔部9ALを介して放射させることができる。
さらに第1及び第2の実施の形態においては、カバー部12Lの表面に管状ダクト9Lが設けられた低音用筐体部6Lを用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、図14に示すように半球状部522Lの表面に管状ダクト509Lが一体に設けられた低音用筐体部521Lを用いるようにしても良い。
この場合も低音用筐体部521L(図14)は、所謂ケルトン型のスピーカ装置と同様の構造を有することになり、低音用スピーカユニット8Lの後方から所定の周波数帯域の低音だけを、管状ダクト509Lの孔部509ALを介して放射させることができる。
さらに第1及び第2の実施の形態においては、低音用筐体部6Lに対して管状ダクト9Lが一体に取り付けられているようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、図15に示すように、カバー部528Lに形成された勘合部525LBSと、管状ダクト529Lの一方に形成された保持部529LSとを相互に勘合することにより、当該管状ダクト529Lがカバー部528Lに対して着脱自在に設けられた構成の低音用筐体部531Lを用いるようにしても良い。
これにより低音用筐体部531Lでは、リスナにとって必要なときにのみ管状ダクト529Lが取り付けられた状態で使用され、リスナにとって不必要なときには管状ダクト529Lが取り外された状態で使用されるようになるため、リスナの使い勝手を大幅に向上させることができる。
さらに第1及び第2の実施の形態においては、カバー部12Lの内側であって、管状ダクト9Lの内端部9BL1及び9BL2にエッジが残った状態の低音用筐体部6(図2)を用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、図16に示すようにカバー部558Lの内側であって、当該カバー部558Lと一体に設けられた管状ダクト569Lの付け根部分にR状のラウンド部570が形成された低音用筐体部551Lを用いるようにしても良い。
この低音用筐体部551Lでは、低音用スピーカユニット8Lの前面側から押し出される空気がエッジに当って風切り音を発生するようなことがなく、高音質な低音だけを管状ダクト569Lの孔部569ALから放射することができる。
さらに第1及び第2の実施の形態においては、耳介101の前側上方に低音用電気音響変換部3Lを配置するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、図17に示すように、バンド部4の中央部4Aに対して半球形状でなる低音用電気音響変換部700を取り付けるようにしてもよい。
この場合、イヤースピーカ装置800(図17)では、リスナの頭部100の頂上に配置された低音用電気音響変換部700からオーディオ信号の低音成分に応じた低音を放射することができるので、左右の中高音用電気音響変換部2L、2R、後方中高音電気音響変換部50L、50R及び低音用電気音響変換部700による4.1chのヘッドホンを実現することができる。
さらに第1及び第2の実施の形態においては、カバー部12Lの表面に管状ダクト9Lが一体化した状態で形成された低音用筐体部6Lを用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、カバー部12Lと管状ダクト9Lとを区別することなく、低音用スピーカユニット8Lの前面側を包み込むような形状で先端に行くに連れて細い管状に形成された管状ダクトがバッフル板13Lに取り付けられた構造の低音用筐体部を用いるようにしても良い。
さらに第1及び第2の実施の形態においては、第1筐体部としての中高音用電気音響変換部2L、50Lと、中高音用スピーカユニットとしての中高音用スピーカユニット7L、後方中高音用スピーカユニット53Lと、装着部としてのバンド部4、204と、第2筐体部としての低音用電気音響変換部3Lと、低音用スピーカユニットとしての低音用スピーカユニット8Lとによってイヤースピーカ装置としてのイヤースピーカ装置1、200を構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる第1筐体部と、中高音用スピーカユニットと、装着部と、第2筐体部と、低音用スピーカユニットとによってイヤースピーカ装置を構成するようにしても良い。
1、20、30、40、200、220、230、240、800……イヤースピーカ装置、2L、2R……中高音用電気音響変換部、3L……低音用電気音響変換部、50L……後方中高音用電気音響変換部、4、24、44、204、224、244……バンド部、5L……中高音用筐体部、6L……中高音用筐体部、7L……中高音用スピーカユニット、8L……低音用スピーカユニット、9L……管状ダクト、9AL……孔部、11L……半球状部、12L……カバー部、13L……バッフル板、51L……後方中高音用筐体部、53L……後方中高音用スピーカユニット、100……頭部、101L……耳介、102L……外耳道入口、103L……鼓膜。