JP2008140661A - 燃料電池を搭載する移動体 - Google Patents

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Abstract

【課題】この発明は燃料電池システムに関し、電解質膜の劣化を精密に検知する燃料電池システムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の燃料電池システムは、プロトンの伝導を行う電解質膜を備え、カソードガスの供給をカソードに受け、アノードガスの供給をアノードに受けて、発電を行う燃料電池を備える。燃料電池から排出されるカソードオフガスもしくは燃料電池から排出されるアノードオフガスを流通させるオフガス管路を備える。オフガス管路でのイオン濃度を取得するイオン濃度取得手段を備える。燃料電池に所在する水量を取得する水量取得手段を備える。イオン濃度と水量の積に基づいて燃料電池に所在するイオン量を取得するイオン量取得手段を備える。イオン量に基づいて電解質膜の劣化を検知する劣化検知手段を備える。
【選択図】図2

Description

この発明は、燃料電池システムに関し、特に、燃料電池の劣化を検知する燃料電池システムに関する。
従来、例えば、特開2006−49146号公報に、オフガスに含まれる水のイオン濃度に基づいて、燃料電池の劣化を検知する燃料電池システムが開示されている。燃料電池は、電解質膜を挟む形でアノードとカソードを備える。燃料電池の動作の際、アノードとカソードに供給ガスの供給を受け、発電に伴い、水が生成される。燃料電池で含まれる水は、燃料電池から排出されるオフガスに含まれる形で、燃料電池より外部へ排出される。また、燃料電池の動作の際、電解質膜の成分がイオンとして溶出する。溶出したイオンは、オフガスに含まれる形で、燃料電池より外部へ排出される。電解質膜よりイオンが溶出すると、電解質膜が劣化し、燃料電池の性能が低下する。そこで、上記従来の公報では、オフガスもしくはオフガスの水に含まれるイオン濃度を電解質膜の劣化状態として測定し、電解質膜の劣化を検知している。
特開2006−49146号公報
ところで、燃料電池の動作に伴い、燃料電池で生成される水量が大幅に変化する。例えば、燃料電池の高出力時には、大量の水が生成される。生成される水量が多いと、イオン濃度が低い。生成される水量が少ないと、イオン濃度が高い。このとき、イオン濃度は電解質膜の劣化を正しくあらわさず、電解質膜の真の劣化状態を正しく検知できない。したがって、上記従来の技術では、燃料電池の劣化を検知できないおそれがあった。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、電解質膜の劣化を精密に検知する燃料電池システムを提供することを目的とする。
第1の発明は、上記の目的を達成するため、燃料電池システムであって、プロトンの伝導を行う電解質膜を備え、カソードガスの供給をカソードに受け、アノードガスの供給をアノードに受けて、発電を行う燃料電池と、前記燃料電池から排出されるカソードオフガスもしくは前記燃料電池から排出されるアノードオフガスの少なくとも一方のオフガスを流通させるオフガス管路と、オフガス管路のイオン濃度を取得するイオン濃度取得手段と、前記燃料電池に所在する水量を取得する水量取得手段と、前記イオン濃度取得手段により取得されたイオン濃度を前記水量取得手段により取得された水量の積に基づいて燃料電池に所在するイオン量を取得するイオン量取得手段と、前記イオン量取得手段により取得されたイオン量に基づいて、電解質膜の劣化を検知する劣化検知手段と、を備えることを特徴とする。
第2の発明は、第1の発明記載の燃料電池システムであって、前記オフガス管路に、オフガスを気体と液体に分離する気液分離器を備え、前記イオン濃度取得手段は、前記気液分離器の液水のイオン濃度を取得することを含むことを特徴とする。
第3の発明は、第1もしくは第2の発明記載の燃料電池システムであって、前記水量取得手段は、燃料電池の起電流を取得する電流取得手段を含み、前記電流取得手段により取得された電流に基づいて燃料電池で生成される水量を取得する生成水量取得手段を含むことを特徴とする。
第1の発明によれば、燃料電池に所在する水量とイオン濃度の積に基づいて、イオン量を取得する。取得されたイオン量に基づいて、電解質膜の劣化を検知する。よって、本発明によれば、燃料電池に所在する水量の多少にかかわらず、電解質膜の劣化を精密に検知することができる。
第2の発明によれば、気液分離器の液水のイオン濃度を取得する。気液分離器にはオフガスの水分が液水として所在しやすい。本発明の構成によれば、イオン濃度を精密に取得することができる。
第3の発明によれば、燃料電池で生成される水量を燃料電池に所在する水量として取得する。燃料電池の動作に伴い、燃料電池で生成される水量が大きく変化する。よって、本発明によれば、燃料電池で生成される水量の多少にかかわらず、電解質膜の劣化を精密に検知することができる。
実施の形態1.
[実施の形態1の構成]
図1は、本実施の形態の燃料電池システムをあらわす図である。図1に示す燃料電池システムは燃料電池スタック10を備える。燃料電池スタック10は、燃料電池セルを複数積層した構成になっている。燃料電池セルは、電解質膜を挟む形で、アノードとカソードを備える。電解質膜は、高分子鎖にC−F結合を有するフッ素系電解質膜である。ここで、電解質膜は、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)である。アノード及びカソードは触媒を担持した触媒担持カーボンと電解質を備える。触媒は白金である。以下、燃料電池スタック10と燃料電池セルを総称する形で燃料電池を用いる。燃料電池スタック10は、電流計12を備える。電流計12は燃料電池スタック10の電流を測定する。電流計12はECU14と接続され、測定した電流をECU14へ送信する。燃料電池スタック10は、ランプ16を備える。ランプ16は燃料電池スタック10の交換を促すために点灯するようになっている。ランプ16は、ECU14と接続され、ECU14の信号に従い、点灯を行うことができる。燃料電池スタック10は、カソード管路系13とアノード管路系15と冷却水管路系17とを備える。
カソード管路系13について説明する。カソード管路系13は、空気取り込み口とカソードを結ぶ管路18を備える。管路18は、コンプレッサ20を備える。コンプレッサ18は、空気取り込み口から燃料電池に空気を付勢する役割を持つ。燃料電池スタック10のカソードガス出口は、管路22を介して、調圧弁24と接続される。調圧弁24は、燃料電池スタック10内のカソードガスを所望の圧力に調節する役割をもつ。調圧弁24は管路26を介して気液分離器28と接続される。気液分離器28は気液分離器28内のガスを液体と気体に分離する役割を持つ。気液分離器28は、気液分離器と外部を結ぶ管路30を備える。気液分離器と外部を結ぶ管路30には、気液分離器28で分離された液体が流通し得る。気液分離器30と外部を結ぶ管路30は、遮断弁32を備える。遮断弁32は、管路30の液体の流通を遮断する役割を持つ。気液分離器28は、気液分離器と外部を結ぶ管路34を備える。気液分離器と外部を結ぶ管路34には、気液分離器28で分離された気体が流通し得る。また、カソード管路系13に備えられる管路18、22、26、30、34はステンレスにより構成される。
アノード管路系15について説明する。アノード管路系15は、アノードガス(水素)源として水素タンク36を備える。水素タンク36は管路38を介して遮断弁40と接続される。遮断弁40は、弁の絞りを開閉することにより、遮断弁40を流通するガスの流れを遮断する役割を持つ。遮断弁40は、管路42を介して、インジェクタ44に接続される。インジェクタ44は、アノードガス入口の管路46を備える。インジェクタ44は、アノードガスを付勢し、管路42から燃料電池スタック10のアノードガス入口へアノードガスを流通させる役割を持つ。
燃料電池スタック10は、アノードガス出口の管路48を備える。アノードガス出口の管路48は、気液分離器50を備える。気液分離器50は、気液分離器50のガスを気体と液体に分離する役割を持つ。気液分離器50は、気液分離器と外部を結ぶ管路52を備える。気液分離器と外部を結ぶ管路52は、気液分離器50で分離された液体を流通させ得る。気液分離器と外部を結ぶ管路52は、遮断弁54を備える。遮断弁は管路52の液体の流通を遮断する役割を持つ。気液分離器50は、イオン濃度計56を備える。イオン濃度計56は、気液分離器50の液体に含まれるイオン濃度を測定する役割を持つ。イオン濃度計52はECU14と接続され、測定したイオン濃度をECU14に送信する。気液分離器50は、アノードガス循環路58を介して、アノードガス入口の管路46に接続される。アノードガス循環路58は、コンプレッサ60を備える。コンプレッサ60は、気液分離器50からアノードガス入口の管路46へ、アノードガスを流通させる役割を持つ。また、アノード管路系15に備えられる管路38、42、46、48、52、58はステンレスにより構成される。
冷却水管路系17について説明する。冷却水管路系17は、燃料電池スタック10の隅々まで冷却水を流通させる冷却水循環路62を備える。冷却水循環路62は、冷却水循環路62は、燃料電池スタック10の燃料電池セル付近を冷却する役割を持つ。冷却水循環路62は、冷却器64を備える。ここでは、冷却器64はラジエータである。冷却器60は、冷却能力を調整することで、冷却水の温度を調節する役割を持つ。冷却水循環路62は、ポンプ66を備える。ポンプ66は、冷却水循環路62を循環する冷却水を付勢する役割を持つ。
[実施の形態1の作用.]
燃料電池スタック10の動作の際、アノードガス(水素)とカソードガス(空気(酸素))が供給され、発電反応に伴い、燃料電池セルのカソード付近で水が生成される。燃料電池で生成された水は、燃料電池を移動するカソードガスに含まれる形で移動する。燃料電池スタック10から排出されるカソードガスをカソードオフガスと呼ぶ。燃料電池で生成された水は、カソードオフガスに含まれる形で、燃料電池スタック10より外部に排出される。カソードオフガスに含まれる水は、気液分離器28により液体に分離され得る。気液分離器28で分離された液水は、気液分離器28に溜まり得る。気液分離器28で分離された液水は、遮断弁32の動作に伴い、気液分離器28外部に排出され得る。
また、燃料電池セルのカソード付近で生成する水の一部は、電解質膜を通過し、アノードに所在する。アノードの水は、アノードガスの流れに伴い、移動する。燃料電池スタック10から排出されるアノードガスをアノードオフガスと呼ぶ。アノードに所在する水は、アノードオフガスに含まれる形で、燃料電池スタック10より外部に排出される。アノードオフガスに含まれる水は、気液分離器50で気体と液体に分離され得る。気液分離器50で分離された液水は、気液分離器50に溜まり得る。気液分離器50で分離された液水は、遮断弁54の動作に伴い、気液分離器50外部に排出され得る。また、アノードオフガスは、コンプレッサ60の動作に伴い、燃料電池のアノードに循環され、燃料電池に供給される。
燃料電池の動作の際、アノード管路系15の管路を構成するステンレスの成分が、アノードガスに金属イオンとして溶出する。カソード管路系13の管路を構成するステンレスの成分が、カソードガスに金属イオンとして溶出する。これらの金属イオンとしてFeイオン、Niイオン、Crイオンが溶出する。また、コンプレッサ20、60の動作に伴い、コンプレッサ20、60の金属の一部が磨耗により乖離する。コンプレッサ20、60より乖離した金属は、カソードガスもしくはアノードガスに混入する。混入した金属は、カソードガスもしくはアノードガスに金属イオンとして所在する。金属イオンは、カソードガスもしくは/及びアノードガスに含まれる形で燃料電池スタック10に供給され、燃料電池セルの触媒付近に所在する。
燃料電池の動作の際、燃料電池セルの触媒付近に、過酸化水素(H22)が生成される。また、燃料電池セルの触媒付近に、金属イオンが所在する。この過酸化水素と金属イオンにより、触媒上で式(1)の反応が行われる。ここで、反応に用いられる金属イオンがFe2+イオンであるときの反応を示す。
Fe2+ + H22 → Fe3+ + OH- + ・OH ・・・(1)
式(1)の反応によりOHラジカル(・OH)が触媒付近に生成される。OHラジカルは、電解質膜付近に移動し、ラジカル反応により電解質膜に作用する。電解質膜付近でのラジカル反応により、電解質膜よりフッ素イオンが溶出する。電解質膜より溶出したフッ素イオンは、燃料電池に所在する水に溶解する。
上述のとおり、電解質膜より溶出したフッ素イオンは、燃料電池に所在する水に溶解している。燃料電池に所在する水は、燃料電池の運転に伴い、大きく変化する。例えば、燃料電池が高出力の際、燃料電池で生成される水量は多く、燃料電池に所在する水量が多い。燃料電池に所在する水量が多いと、燃料電池のフッ素イオン濃度は低い。燃料電池に所在する水量が少ないと、燃料電池のフッ素イオン濃度は高い。また、燃料電池に所在する水量が多くなると、燃料電池のフッ素イオン濃度は高くなる。燃料電池に所在する水量が少なくなると、燃料電池のフッ素イオン濃度は低くなる。
上述のとおり、電解質膜よりフッ素イオンが溶出する。溶出するフッ素イオンの量が多いと、電解質膜の劣化が大きい。溶出するフッ素イオンの量が少ないと、電解質膜の劣化は小さい。
[実施の形態1の効果.]
本実施の形態によれば、フッ素イオン濃度と燃料電池で生成される水量の積をフッ素イオン量として取得する。よって、燃料電池で生成される水量の多少にかかわらず、フッ素イオン量を精密に取得できる。さらに、燃料電池で生成される水量の増減にかかわらず、フッ素イオン量を精密に取得できる。
本実施の形態によれば、電解質膜より溶出するフッ素イオンの量を電解質膜の劣化状態として取得する。電解質膜より溶出するフッ素イオンの量が多いと、電解質膜が劣化している。溶出するフッ素イオンの量が少ないと、電解質膜はそれほど劣化していない。よって、フッ素イオン量により電解質膜の劣化状態を取得することにより、電解質膜の劣化を精密に検知することができる。
冷却器64の冷却能力を増加させると、冷却水の温度が低下し、燃料電池スタック10の温度が低くなる。燃料電池スタック10の温度が低くなると、触媒付近での温度が低くなる。触媒付近での温度が低いと、触媒付近で生じる化学反応が抑制され、OHラジカル反応による電解質膜の劣化が抑制される。したがって、本発明によれば、燃料電池の運転時の温度を低下させることにより、電解質膜の劣化を抑制することができる。
なお、本実施の形態において、燃料電池の運転時の温度を低下させるが、これに限られず、電解質膜の劣化を抑制する制御を行えばよい。例えば、アノードガス不足もしくは/及びカソードガス不足による運転(以下、間欠運転と称す)が行われているとき、間欠運転を停止させて、電解質膜の劣化を抑制してもよい。例えば、アノードガスもしくは/及びカソードガスへの加湿量を増加させて電解質膜を湿潤状態にし、電解質膜の劣化を抑制してもよい。例えば、急負荷変動を抑制してもよいし、電流0アンペアでの燃料電池の運転を抑制してもよい。例えば、アノードオフガスもしくは/及びカソードオフガスの排出頻度を増加させて、燃料電池の不純物を減少させ、電解質膜の劣化を抑制してもよい。例えば、調圧弁24の調圧値を通常の圧力範囲より上昇させ、もしくは、アノードガス/カソードガスのストイキを上げ、電解質膜の劣化を抑制してもよい。
なお、本実施の形態において、イオン濃度計56が備えられているが、これに限られるものではない。例えば、イオン濃度計56の代わりに気液分離器50に所在する液水のPHを測定するPH計でもよいし、導電率を測定する導電率計を備えてもよい。
なお、本実施の形態において、ランプ16は、燃料電池スタック10に備えられているが、これに限られるものではない。燃料電池スタック10の劣化を告知できればよい。燃料電池スタック10が電力源として移動体に搭載されている場合には、ランプ16は移動体に備えられてもよい。
なお、本実施の形態において、電解質膜はフッ素系電解質膜を用いている。例えば、アシプレックス(登録商標、旭化成(株)製)もしくはフレミオン(登録商標、旭硝子(株)製)を用いてもよい。
なお、本実施の形態において、電解質膜より溶出するフッ素イオンにより電解質膜の劣化を検知するが、これに限られるものではない。例えば、炭化水素膜を備える燃料電池のとき、炭化水素電解質膜より硫酸イオンが溶出する。このとき、硫酸イオンの量を電解質膜の劣化状態として検知すればよい。より具体的には、炭化水素膜は、スルホン酸基を持つ炭化水素系膜である。
[実施の形態1の具体的動作]
図2は、実施の形態1の具体的動作をあらわすフローチャートである。ECU14は図2に示すルーチンを所定のタイミングで繰り返し行う。図2に示すルーチンにおいて、まず、気液分離器50でのイオン濃度xが取得される(ステップ100)。上述のとおり、イオン濃度計56は、気液分離器50の液水に含まれるイオン濃度を測定する。電解質膜より溶出するフッ素イオンは、アノードオフガスに含まれる形で、気液分離器50に移動する。気液分離器50の液体でのイオン濃度が、電解質膜より溶出するフッ素イオンの濃度であると考える。本ステップ100において、イオン濃度計56により取得されたイオン濃度xを、電解質膜より溶出するフッ素イオンの濃度として取得する。
続いて、電流Iを取得する(ステップ102)。上述のとおり、電流計12は燃料電池スタック10の電流を測定する。本ステップ102において、電流計12により測定された電流を取得する。
続いて、電解質膜より溶出されるフッ素イオン量yを算出する(ステップ104)。燃料電池の動作に伴い、電解質膜よりフッ素が溶出し、気液分離器50の液水にフッ素イオンが所在する。気液分離器50のフッ素イオン濃度は、燃料電池で生成される水量により変化するため、溶出するフッ素イオン量と同等に考えることはできない。そこで、フッ素イオン濃度と燃料電池で生成される水量に基づいて、電解質膜より溶出されるフッ素イオン量yを算出する。本ステップ104において、まず、電流Iを燃料電池で生成される水量として取得する。燃料電池で生成される水量とフッ素イオン濃度の積を定数A倍した量を、電解質膜より溶出されるフッ素イオン量yとして算出する。ここで、定数Aはあらかじめ与えられる値であり、フッ素イオン量yは単位時間あたりに電解質膜より溶出するフッ素イオン量をあらわす。
続いて、溶出されるフッ素イオン量yと所定値C1を比較する(ステップ106)。溶出イオン量が多いと、電解質膜は大きく劣化している。溶出イオン量が少ないと、電解質膜はそれほど劣化していない。本ステップ106において、溶出されるフッ素イオン量yがC1より大きくないと、電解質膜の劣化が進行していないと判断し、ステップ100に戻る。溶出されるフッ素イオン量yが定数C1より多いと、電解質膜の劣化が進行中と判断し、電解質膜の劣化を抑制する制御を行う(ステップ108)。ここでは、冷却水の温度を低下させ、燃料電池スタック10の温度を低下させる。燃料電池スタック10の温度が低くなると、触媒付近の温度は低くなり、OHラジカルによる電解質膜の劣化反応が抑制される。これより、電解質膜の劣化を抑制する。本ステップ108では、溶出されるフッ素イオン量yが定数C1より大きいと、電解質膜の劣化が進行中と判断し、フッ素イオン量yが定数C1より大きくないときより冷却器64の冷却能力を向上させて燃料電池の運転時の温度を低下させる。
続いて、溶出されるフッ素イオン量yと所定値C2を比較する(ステップ110)。ここで、所定値C2は、C2>C1である。本ステップ110において、電解質膜の劣化が大きく進行すると、燃料電池の運転は不適であると考え、燃料電池スタック10の交換を促す。また、溶出されるフッ素イオン量yが所定値C2より大きいと、燃料電池スタック10の交換時期と考え、スタック交換を促すランプ16を点灯させる(ステップ112)。スタック交換を促すランプ16が点灯すると、電解質膜の大きな劣化が告知され、スタック交換が促される。また、ステップ110において、溶出されるフッ素イオン量yが所定値C2より大きくないと、燃料電池の運転を継続すると考え、本ルーチンを終了する。
以上の具体的処理を行うことにより、燃料電池で生成される水量とフッ素イオン量の積を、溶出されるフッ素イオン量として取得する。よって、燃料電池で生成される水量の多少にかかわらず、フッ素イオン量を精密に取得できる。したがって、電解質膜の劣化を精密に検知できる。
なお、本実施の形態では、ステップ100において、アノード管路系15の気液分離器50でのイオン濃度を取得するが、これに限られるものではない。カソード管路系13の気液分離器28でのイオン濃度を取得してもよい。
なお、本実施の形態では、ステップ100において、気液分離器50においてフッ素イオン濃度が取得されるが、これに限られるものではない。例えば、カソード管路系13もしくはアノード管路系15に備えられる管路でのイオン濃度を取得することで、アノードオフガスもしくはカソードオフガスに所在する液水に含まれるフッ素イオン濃度を取得してもよい。例えば、燃料電池スタック10に所在する水に含まれるイオン濃度を直接取得してもよい。これらのとき、気液分離器50は備えられなくともよい。
なお、本実施の形態では、ステップ104において、フッ素イオン量は、フッ素イオン濃度と燃料電池で生成される水量の積により取得されるが、これに限られるものではない。例えば、電解質膜より溶出されるフッ素イオン量を直接測定してもよい。
なお、本実施の形態では、ステップ104において、電解質膜より溶出されるフッ素イオン量yは、燃料電池で生成される水量に基づいて算出されているが、これに限られるものではない。燃料電池に所在する水量に基づいて算出すればよい。例えば、燃料電池に供給されるアノードガスまたは/及びカソードガスに加湿を行って燃料電池を加湿する場合、加湿量と燃料電池で生成される水量を加えた量を燃料電池に所在する水量として取得してもよい。例えば、燃料電池の高温の際に、燃料電池から排出される水量を燃料電池で生成される水量から引いた量を、燃料電池に所在する水量として取得してもよい。
なお、本実施の形態では、ステップ104において、電解質膜より溶出されるフッ素イオン量yは、燃料電池で生成される水量に基づいて算出される。燃料電池で生成される水量の総量に基づいて算出してもよい。具体的には、燃料電池の電流Iの積分とフッ素イオン濃度の積に基づいて、フッ素イオン量Iを取得してもよい。
なお、本実施の形態では、ステップ104において、定数Aは予め与えられる値を用いるが、これに限られるものではない。例えば、燃料電池に所在する金属イオン濃度に基づいてもとめてもよい。燃料電池の金属イオン濃度に基づいて気液分離器50の液水のイオン濃度が多少もしくは増減することで、イオン濃度計56で測定されるイオン濃度が増減する。そこで、燃料電池の金属イオン濃度に基づいて定数Aを求めてもよい。具体的には、燃料電池スタック10の運転時間により定数Aを調整してもよいし、アノード管路系13もしくはカソード管路系15の管路を構成するステンレスの総量により、定数Aを求めてもよい。
なお、本実施の形態では、所定のタイミングで図2に示すルーチンを繰り返し行っている。例えば、所定のタイミングは、燃料電池の停止時でもよい。例えば、燃料電池に所在する水量が多い燃料電池の高出力時でもよい。燃料電池に所在する水量が少ない燃料電池の高温時でもよい。
[実施の形態2.]
実施の形態2の燃料電池システムについて説明する。実施の形態2のシステムは、イオン濃度計56の代わりにPH計68を備える点を除いて、図1に示す実施の形態1のシステムと同様である。実施の形態2において図1と同じ部分は、同じ符号を用い、詳細な説明を省略する。実施の形態2の燃料電池システムは、気液分離器50に水素イオン濃度を測定するPH計68を備える。PH計68は、気液分離器50に所在する液水の水素イオン濃度をPHとして測定する。PH計68はECU14と接続され、測定したPHをECUに送信する。
図3は実施の形態2の具体的処理をあらわすフローチャートである。図3において図2と同じ部分には、同じ符号を用い、詳細な説明を省略する。図3に示すルーチンでは、まず、気液分離器50の液水でのPHを取得する(ステップ114)。本ステップ114では、PH計68で測定されるPHを取得する。
そして、ステップ102での電流Iの取得に続き、電解質膜より溶出されるフッ素イオン量yを算出する(ステップ118)。上述のとおり、燃料電池の動作に伴い、電解質膜よりフッ素イオンが溶出する。溶出したフッ素イオンは、燃料電池に所在する水に溶解する。このとき、フッ素イオンのモル数に相当する水素イオンのモル数が、燃料電池に所在する水中に存在する。本ステップ118では、PHに基づいて水素イオン濃度を取得する。取得された水素イオン濃度をフッ素イオン濃度として取得する。気液分離器50でのフッ素イオン濃度と、燃料電池で生成される水量の積に基づいて、式(2)のように、フッ素イオン量yを取得する。ここで、定数Cは予め与えられた値とし、「^」は階乗をあらわす。
y=C×I×10^(−PH) ・・・(2)
以上の具体的処理を行うことにより、PHn、電解質膜より溶出されるフッ素イオン量を精密に算出することができる。したがって、電解質膜の劣化を正しく検知することができる。
なお、本実施の形態では、ステップ118において、定数Cは予め与えられる値を用いるが、これに限られるものではない。例えば、燃料電池に所在する金属イオン濃度の多少もしくは増減に基づいても求めてもよい。具体的には、アノードオフガスの金属イオン濃度が増加すると、アノードオフガスに含まれる水のPHが減少する。アノードオフガスの金属イオン濃度が減少すると、アノードオフガスに含まれる水のPHが増加する。よって、アノードオフガスの金属イオン濃度に基づいて定数Cを求めてもよい。燃料電池の金属イオン濃度に基づいて定数Cを求めてもよい。より具体的には、燃料電池スタック10の運転時間が長いと、定数Cを大きくしてもよい。
図1は実施の形態1の燃料電池システムをあらわす図である。 図2は実施の形態1の具体的動作をあらわすフローチャートである。 図3は実施の形態2の具体的処理をあらわすフローチャートである。
符号の説明
10 燃料電池スタック
12 電流計
16 ランプ
13 カソード管路系
15 アノード管路系
17 冷却水管路系
28 気液分離器
50 気液分離器
56 イオン濃度計
64 冷却器

Claims (3)

  1. プロトンの伝導を行う電解質膜を備え、カソードガスの供給をカソードに受け、アノードガスの供給をアノードに受けて、発電を行う燃料電池と、
    前記燃料電池から排出されるカソードオフガスもしくは前記燃料電池から排出されるアノードオフガスの少なくとも一方のオフガスを流通させるオフガス管路と、
    前記オフガス管路のイオン濃度を取得するイオン濃度取得手段と、
    前記燃料電池に所在する水量を取得する水量取得手段と、
    前記イオン濃度取得手段により取得されたイオン濃度を前記水量取得手段により取得された水量の積に基づいて燃料電池に所在するイオン量を取得するイオン量取得手段と、
    前記イオン量取得手段により取得されたイオン量に基づいて、電解質膜の劣化を検知する劣化検知手段と、
    を備えることを特徴とする燃料電池システム。
  2. 請求項1記載の燃料電池システムであって、
    前記オフガス管路に、オフガスを気体と液体に分離する気液分離器を備え、
    前記イオン濃度取得手段は、前記気液分離器の液水のイオン濃度を取得することを含むことを特徴とする燃料電池システム。
  3. 請求項1もしくは2記載の燃料電池システムであって、
    前記水量取得手段は、燃料電池の起電流を取得する電流取得手段を含み、前記電流取得手段により取得された電流に基づいて燃料電池で生成される水量を取得する生成水量取得手段を含むことを特徴とする燃料電池システム。
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