次に、本発明の最良の実施形態について図面と共に説明する。
(有機溶媒相)
(有機溶媒)
本実施形態のトナーを製造するために用いられる材料について説明する。本実施形態で用いる有機溶媒は、トナー組成物を溶解及び/又は分散可能な溶媒であれば、特に限定されるものではない。この有機溶媒としては、この溶剤の沸点が150℃未満であり、且つ、除去が容易である点から揮発性であることが好ましい。このような溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトン、及びテトラヒドロフランなどを単独又は2種類以上組合せて用いることができる。トナーに対する揮発性が高いことから上述の有機溶媒の中でも、酢酸メチル及び酢酸エチルを用いることが特に好ましい。トナー固形成分100質量部に対する有機溶剤の使用量は、通常40質量部以上300部質量部以下、好ましくは60質量部以上140質量部以下、さらに好ましくは、80質量部以上120質量部以下である。
(官能基含有ポリエステル系樹脂)
本実施形態では、変性ポリエステル系樹脂としてイソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーを用いることができる。イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)としては、ポリオール(1)及びポリカルボン酸(2)の重縮合物であり、且つ、活性水素基を有するポリエステルをさらにポリイソシアネート(3)と反応させたものなどが挙げられる。上述のポリエステルの有する活性水素基としては、水酸基(アルコール性水酸基及びフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、及びメルカプト基などが挙げられ、これらのうち好ましいものは、アルコール性水酸基である。
ポリオール(1)としては、ジオール(1−1)及び3価以上のポリオール(1−2)が挙げられ、(1−1)単独、又は(1−1)及び少量の(1−2)の混合物を用いることが好ましい。ジオール(1−1)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、及び1,6−ヘキサンジオールなど)、アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラメチレンエーテルグリコールなど)、脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール及び水素添加ビスフェノールAなど)、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、及びビスフェノールSなど)、上述の脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、及びブチレンオキサイドなど)付加物、及び上述のビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、及びブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2乃至12のアルキレングリコール、及びビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものは、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、並びに、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物及び炭素数2乃至12のアルキレングリコールの併用である。
3価以上のポリオール(1−2)としては、3乃至8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及びソルビトールなど)、3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、及びクレゾールノボラックなど)、及び上述の3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
ポリカルボン酸(2)としては、ジカルボン酸(2−1)、及び3価以上のポリカルボン酸(2−2)が挙げられ、(2−1)単独、又は(2−1)、及び少量の(2−2)の混合物を用いることが好ましい。
ジカルボン酸(2−1)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、及びセバシン酸など)、アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸及びフマール酸など)、芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、及びナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4乃至20のアルケニレンジカルボン酸、及び炭素数8乃至20の芳香族ジカルボン酸である。
3価以上のポリカルボン酸(2−2)としては、炭素数9乃至20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸及びピロメリット酸など)などが挙げられる。
また、ポリカルボン酸(2)としては、上述した化合物の酸無水物又は低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、及びイソプロピルエステルなど)を用いてポリオール(1)と反応させてもよい。
アルコール性水酸基を末端に有するポリエステルを重縮合反応により調整するため、ポリオール(1)及びポリカルボン酸(2)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比を[OH]/[COOH]として、通常2/1以上1/1以下、好ましくは1.5/1以上1/1以下、さらに好ましくは1.3/1以上1.02/1以下である。
ポリエステルのアルコール性水酸基と反応させて、ポリエステルプレポリマーを調整するために用いられるポリイソシアネート(3)としては、脂肪族ポリイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、及び2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなど)、脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、及びシクロヘキシルメタンジイソシアネートなど)、芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、及びジフェニルメタンジイソシアネートなど)、芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α',α'−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど)、イソシアヌレート類、上述のポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、及びカプロラクタムなどでブロックしたもの、及びこれら2種以上の併用が挙げられる。
ポリイソシアネートの使用比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比を[NCO]/[OH]として、通常5/1以上1/1以下、好ましくは4/1以上1.2/1以下、さらに好ましくは2.5/1以上1.5/1以下である。[NCO]/[OH]の値が、5を超えると低温定着性が悪化する。[NCO]のモル比が1未満では、変性ポリエステル中のウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中の1分子当たりに含有するイソシアネート基は、通常1個以上、好ましくは平均1.5個以上3個以下、さらに好ましくは平均1.8個以上2.5個以下である。1分子当たり1個未満では、架橋及び/又は伸長後の変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
(非反応性低分子量ポリエステルの併用)
本実施形態においては、上述の変性されたポリエステル(A)単独使用だけでなく、この(A)と共に、変性されていない非反応性のポリエステル(C)をトナーバインダー成分として含有させることが重要である。(C)を併用することで、低温定着性およびフルカラー装置に用いた場合の光沢性が向上する。(C)としては、(A)のポリエステル成分と同様なポリオール(1)とポリカルボン酸(2)との重縮合物などが挙げられ、好ましいものも(C)と同様である。また、(C)は無変性のポリエステルだけでなく、ウレア結合以外の化学結合で変性されているものでもよく、例えば、ウレタン結合で変性されていてもよい。(A)及び(C)は少なくとも一部が相溶していることが、低温定着性及び耐ホットオフセット性の面で好ましい。従って、(A)のポリエステル成分及び(C)は、類似の組成が好ましい。(A)を含有させる場合の(A)及び(C)の重量比は、通常5/95以上75/25以下、好ましくは10/90以上25/75以下、さらに好ましくは12/88以上25/75以下、特に好ましくは12/88以上22/78以下である。(A)の重量比が5%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利となる。
ポリエステル(C)を試料として、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定されるピーク分子量は、通常1000以上30000以下、好ましくは1500以上10000以下、さらに好ましくは2000以上8000以下である。1000未満では耐熱保存性が悪化し、10000を超えると低温定着性が悪化する。
(C)の水酸基価は、5KOHmg/g以上であることが好ましく、さらに好ましくは10KOHmg/g以上120KOHmg/g以下、特に好ましくは20KOHmg/g以上80KOHmg/g以下である。水酸基が5KOHmg/g未満では、耐熱保存性及び低温定着性の両立の面で不利になる。
(C)の酸価は、通常0.5KOHmg/g以上40KOHmg/g以下、好ましくは5KOHmg/g以上35KOHmg/g以下である。酸価が高すぎる場合は、負帯電性となりやすい傾向があるため好ましくない。また、上述の酸価の範囲を越えるものは、高温高湿度下及び低温低湿度下の環境下において、環境の影響を受けやすく、画像の劣化を招きやすい。
(活性水素含有化合物)
下述するように、上述のイソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)は、活性水素化合物と伸長及び/又は架橋反応させることにより、より高分子量のものとされる。
本実施形態においては、架橋剤及び/又は伸長剤としてアミン類を用いることができる。
アミン類(B)としては、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、及びB1乃至B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。
ジアミン(B1)としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、及び4,4'ジアミノジフェニルメタンなど)、脂環式ジアミン(4,4'−ジアミノ−3,3'ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、及びイソホロンジアミンなど)、及び脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、及びヘキサメチレンジアミンなど)などが挙げられる。
3価以上のポリアミン(B2)としては、ジエチレントリアミン及びトリエチレンテトラミンなどが挙げられる。
アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン及びヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。
アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、及びアミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。
アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸及びアミノカプロン酸などが挙げられる。
B1乃至B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、上述のB1乃至B5のアミン類及びケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、並びにオキサゾリン化合物などが挙げられる。これらアミン類(B)のうち好ましいものは、(B1)、又は(B1)及び少量の(B2)の混合物である。
さらに、必要により架橋及び/又伸長は停止剤を用いて反応終了後の変性ポリエステルの分子量を調整することができる。停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、及びラウリルアミンなど)、及びそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)などが挙げられる。
アミン類(B)の比率は、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]、及びアミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比を[NCO]/[NHx]として、通常1/2以上2/1以下、好ましくは1.5/1以上1/1.5以下、さらに好ましくは1.2/1以上1/1.2以下である。[NCO]/[NHx]が、2より大きい、又は1/2未満では、変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
(トナーバインダーの素性)
本実施形態では、上述のとおり、ポリエステルプレポリマー(A)及びアミン(B)類との反応によって得られるウレア変性ポリエステル系樹脂をトナーバインダーとして用いることを特徴としている。また、非反応性ポリエステルなどの他成分(着色剤マスターバッチの際に用いる樹脂を含む)も併用される。
本実施形態において、トナーバインダーのガラス転移点(Tg)は通常40℃以上70℃以下、好ましくは45℃以上55℃以下である。このガラス転移点が40℃未満では、トナーの耐熱保存性が悪化し、また、このガラス転移点が70℃を超えると低温定着性が不十分となる。架橋及び/又は伸長されたポリエステル樹脂の共存により、本実施形態の静電荷像現像用トナーにおいては、公知のポリエステル系トナーと比較して、ガラス転移点が低くても良好な保存性を示す。
トナーの貯蔵弾性率としては、測定周波数20Hzにおいて1000Paとなる温度(TG')が、通常100℃以上、好ましくは110℃以上200℃以下である。100℃未満では、耐ホットオフセット性が悪化する。
トナーの粘性としては、測定周波数20Hzにおいて100Pa・sとなる温度(Tη)が、通常180℃以下、好ましくは90℃以上160℃以下である。180℃を超えると、低温定着性が悪化する。すなわち、低温定着性及び耐ホットオフセット性の両立の観点から、TG'はTηより高いことが好ましい。言い換えるとTG'及びTηの差(TG'−Tη)は0℃以上が好ましい。さらに好ましくは、TG'及びTηの差(TG'−Tη)は10℃以上であり、特に好ましくは20℃以上である。また、耐熱保存性及び低温定着性の両立の観点から、Tη及びTgの差は0℃以上100℃以下が好ましい。さらに好ましくは、Tη及びTgの差は、10℃以上90℃以下であり、特に好ましくは20℃以上80℃以下である。
(ガラス転移点の測定)
本実施形態のガラス転移点の測定は、理学電機社製TG−DSCシステムTAS−100を使用した。まず、試料約10mgをアルミ製試料容器に入れ、それをホルダユニットにのせ、電気炉中にセットする。まず、室温から昇温速度10℃/分で150℃まで加熱した後、150℃で10分間放置、室温まで試料を冷却して10分放置、窒素雰囲気下で再度150℃まで昇温速度10℃/分で加熱してDSC測定を行った。ガラス転移点は、TAS−100システム中の解析システムを用いて、ガラス転移点近傍の吸熱カーブの接線とベースラインとの接点から算出した。
(水系媒体相)
(水系媒体)
本実施形態において、後記樹脂微粒子を分散させて水系媒体相を形成する水系媒体としては、水単独でも良いが、水と混和可能な溶剤を併用することもできる。混和可能な溶剤としては、アルコール(メタノール、イソプロパノール、及びエチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類、及び低級ケトン類(アセトン及びメチルエチルケトンなど)が挙げられる。これらは1種単独又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
(樹脂微粒子)
本実施形態のトナーにおける樹脂微粒子は、下述するトナー形状(円形度及び粒度分布など)を制御するために製造工程で添加される。また、この微粒子は、下述するように、有機溶媒相及び活性水素含有化合物(アミン類)が水系媒体中に分散されて有機分散粒子が形成される際に、その表面部分に結合するものと考えられる。これにより、下述する外添剤と同様に、得られるトナー母体粒子の主として表面部分に偏在するものと考えられる。
本実施形態では、得られる外添剤処理後のトナー粒子に含まれる樹脂微粒子の量が、0.5重量%以上5.0重量%以下にすることが重要である。この樹脂微粒子の含有量が0.5重量%未満の時は、トナーの保存性が悪化してしまい、保管時及び現像機内でブロッキングの発生が見られる。また、この樹脂微粒子の含有量が5.0重量%以上では、樹脂微粒子がワックスのしみ出しを阻害し、ワックスの離型性効果が得られず、オフセットの発生が見られる。
また、樹脂微粒子のガラス転移点(Tg)が40℃以上100℃以下であり、重量平均分子量が9000以上20万以下とすることが重要である。樹脂微粒子のガラス転移点が40℃未満、及び/又は、樹脂微粒子の重量平均分子量が9000未満では、トナーの保存性が悪化してしまい、保管時及び現像機内でブロッキングの発生が見られる。さらには、樹脂微粒子のガラス転移点が80℃以上、及び/又は、樹脂微粒子の重量平均分子量が20万以上では、樹脂微粒子が、トナー及び定着紙の接着性を阻害し、定着下限温度の上昇が見られる。
樹脂微粒子の含有量は、トナー粒子に起因せず樹脂微粒子に起因する物質を熱分解ガスクロマトグラフ質量分析計で分析し、そのピーク面積から算出し測定することができる。
この検出器としては、質量分析計が好ましいが、特に制限はない。この樹脂微粒子の水系媒体中における分散及び配合量は、上述した樹脂微粒子の含有量に係る条件を満足するように設定すればよいが、通常0.5%重量%以上10重量%程度の範囲内とされる。
樹脂微粒子は水性分散体を形成しうる樹脂であればいかなる樹脂も使用でき、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよいが、例えば、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、及びポリカーボネート樹脂などが挙げられる。樹脂微粒子としては、上記の樹脂を2種以上併用しても差し支えない。このうち好ましいのは、微細球状樹脂粒子の水性分散体が得られやすい点から、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、及びそれらの併用が好ましい。
ビニル系樹脂としては、ビニル系モノマーを単独重合また共重合したポリマーで、例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、及びスチレン−(メタ)アクリル酸共重合体などが挙げられる。
(トナー微粉)
別ロットにてトナー粒子を製造した際に、分級操作(液中でサイクロン、デカンター、及び遠心分離など)により微粉を取り除く。乾燥後に粉体としてトナーを取得した後に、分級操作を行っても良いが、液体中で行うことが効率の面で適している。微粉は、再び有機溶媒相に戻してトナー粒子の形成に用いることができる。
また、上述の分級操作によって分級されたトナーとして用いられる所定の粒径のトナーの体積平均粒径Aと、上述のトナー微粉の前記微粉の体積平均粒径Bとの関係が、
0.1×A≦B≦0.9×A
を満たすことが好ましい。B>0.9×Aである場合は、別ロットにてトナー粒子を製造した際に、所定の粒径のトナーの収量が減るという生産上の問題が生じる。また微粉を再び有機溶媒相に戻してトナー粒子の形成をした際に粒子の粗大化が起こり、粒径分布がブロードになり、再び分級操作をする際に粗粉のカット量が増え所定の粒径のトナーの収量が減るという問題が生じる。また、B<0.1×Aである場合は、バグ微粉として回収されるような体積平均粒子径であり、分級操作によって得られる量としては少なく、生産効率の面で劣るという問題が生じる。
(着色剤)
本実施形態のトナーの着色剤としては、公知の染料及び顔料が全て使用でき、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン、及びそれらの混合物が使用できる。着色剤の含有量は、本実施形態のトナー母体中の含有量として、通常1重量%以上15重量%以下、好ましくは3重量%以上10重量%以下となる量である。
本実施形態で用いる着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造、又はマスターバッチとともに混練されるバインダー樹脂としては、例えば、上述のウレア変性ポリエステル樹脂、非反応性ポリエステル樹脂の他にポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン、及びその置換体の重合体、並びに、スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、及びスチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体、並びに、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられ、単独あるいは混合して使用できる。
本実施形態のマスターバッチは、マスターバッチ用の樹脂と着色剤とを高せん断力をかけて混合及び混練することにより得ることができる。このとき、着色剤と樹脂との相互作用を高めるために、有機溶剤を用いる事ができる。また、所謂フラッシング法と呼ばれる着色剤の水を含んだ水性ペーストを、樹脂と有機溶剤とともに混合混練を行い、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法も用いることができる。この方法によれば、着色剤のウエットケーキをそのまま用いる事ができるため乾燥する必要がなく、好ましく用いられる。
混合混練するには、3本ロールミルなどの高せん断分散装置が好ましく用いられる。また、着色剤又はマスターバッチは、上述の有機溶媒相中に溶解又は分散させることができるが、これに限定されるものではない。
(離型剤)
また、本実施形態のトナーは、トナーバインダー及び着色剤とともに離型剤としてワックスを含有させることもできる。本実施形態のワックスとしては、公知のものが使用でき、例えば、ポリオレフィンワッックス(ポリエチレンワックス及びポリプロピレンワックスなど)、長鎖炭化水素(パラフィンワッックス及びサゾールワックスなど)、及びカルボニル基含有ワックスなどが挙げられる。これらのうち好ましいものは、カルボニル基含有ワックスである。カルボニル基含有ワックスとしては、ポリアルカン酸エステル(カルナバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレートなど)、ポリアルカノールエステル(トリメリット酸トリステアリル及びジステアリルマレエートなど)、ポリアルカン酸アミド(エチレンジアミンジベヘニルアミドなど)、ポリアルキルアミド(トリメリット酸トリステアリルアミドなど)、及びジアルキルケトン(ジステアリルケトンなど)などが挙げられる。これらカルボニル基含有ワックスのうち好ましいものは、ポリアルカン酸エステルである。
本実施形態のワックスの融点は、通常40℃以上160℃以下であり、好ましくは50℃以上120℃以下、さらに好ましくは60℃以上90℃以下である。融点が40℃未満のワックスは、耐熱保存性に悪影響を与える。また、160℃を超えるワックスは、低温での定着時にコールドオフセットを起こしやすい。
ワックスの溶融粘度は、融点より20℃高い温度での測定値として、5cps以上1000cps以下が好ましく、さらに好ましくは10cps以上100cps以下である。1000cpsを超えるワックスは、耐ホットオフセット性、低温定着性への向上効果に乏しい。
また、離型剤としてのワックスの使用量は、トナー母体中の含有量として、通常0重量%以上40重量%以下であり、好ましくは3重量%以上30重量%以下となる量である。また、ワックスは、上述の有機溶媒相中に溶解又は分散させることができるが、これに限定されるものではない。
(荷電制御剤)
本実施形態のトナーは、必要に応じて帯電制御剤を含有してもよい。帯電制御剤としては、公知のものを全て使用することができ、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、リンの単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩、及びサリチル酸誘導体の金属塩などである。具体的には、ニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、並びに、その他スルホン酸基、カルボキシル基、及び四級アンモニウム塩などの官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。
本実施形態の荷電制御剤の使用量は、バインダー樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくはバインダー樹脂100重量部に対して、0.1重量部以上10重量部以下の範囲で用いられる。好ましくは、0.2重量部以上5重量部以下の範囲がよい。10重量部を越える場合には、トナーの帯電性が大きすぎるために主帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下及び画像濃度の低下を招く。
これらの帯電制御剤は、マスターバッチ及び樹脂とともに溶融混練した後溶解分散させることも可能であるし、有機溶剤に直接溶解又は分散する際に加えても良いが、トナー母体粒子調整後にその表面に固定化させることが好ましい。
(トナー粒子の調整)
本実施形態のトナーは、以下の方法で製造することができるが、これらに限定されることはない。
(水系媒体中でのトナー製造法)
本実施形態に用いる水性媒体相は、予め、樹脂微粒子を添加することにより使用される。水性媒体相に用いる水は、水単独でもよいが、水と混和可能な溶剤を併用することもできる。混和可能な溶剤としては、アルコール(メタノール、イソプロパノール、及びエチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブなど)、及び低級ケトン類(アセトン及びメチルエチルケトンなど)などが挙げられる。
(有機溶媒相の分散及び反応)
上述の通り、トナー粒子は、ポリエステルプレポリマー(A)を含む有機溶媒相をアミン類(B)とともに、上述の水系媒体相中に分散させて、水系媒体相中で伸長及び/又は架橋反応させ、ウレア変性ポリエステルを形成する工程を経て形成される。水性相にて、ポリエステルプレポリマー(A)からなる分散体を安定して形成させる方法としては、水性相に有機溶媒に溶解又は分散させたポリエステルプレポリマー(A)からなるトナー原料の組成物を加えて、せん断力により分散させる方法などが挙げられる。有機溶媒に溶解又は分散させたポリエステルプレポリマー(A)、及び他のトナー組成物である(以下トナー原料と呼ぶ)着色剤、着色剤マスターバッチ、離型剤、荷電制御剤、及び変性されていないポリエステル樹脂などは、水性相で分散体を形成させる際に混合してもよいが、あらかじめトナー原料を混合後、有機溶媒に溶解又は分散させた後、水性相にその混合物を加えて分散させたほうがより好ましい。また、本実施形態においては、着色剤、離型剤、及び荷電制御剤などの他のトナー原料は、必ずしも水性相で粒子を形成させる時に混合しておく必要はなく、粒子を形成した後に添加してもよい。例えば、着色剤を含まない粒子を形成させた後、公知の染着の方法で着色剤を添加することも可能である。
本実施形態においては、別ロットでトナーを製造したときに、分級工程により取り除かれた微粉を有機溶媒相に添加し、混合、分散、又は溶解することを特徴とする。本実施形態で用いる微粉は、予め、有機溶媒相への添加については、水性媒体相で分散体を形成させる前に行う。有機溶媒に溶解又は分散させたポリエステルプレポリマー(A)と他のトナー組成物である着色剤、着色剤マスターバッチ、離型剤、荷電制御剤、及び変性されていないポリエステル樹脂などを分散させた組成物に微粉を加えて、せん断力により分散させる方法などが挙げられる。上述のトナー組成物の少なくともいずれかを有機溶媒に溶解又は分散させる時に微粉を添加し、微粉を混合、分散、又は溶解させることで、有機溶媒相中へ均一化させることが好ましい。有機溶媒相に微粉を添加すると粘性が上昇するため、有機溶媒相の固形分濃度を調整することが好ましい。
このとき微粉は、有機溶媒相100重量部に対し20重量部以下含まれることが好ましい。さらに好ましくは、微粉が、有機溶媒相100重量部に対し10重量部以下である。微粉が、有機溶媒相100重量部に対し20重量部より多く含まれる場合には、トナーの定着下限温度が上昇してしまい、低温定着性が悪化するという問題が生じる。有機溶媒相に微粉を添加すると粘性が上昇するため、有機溶媒相の固形分濃度を調整することで粘性の上昇を抑えることができる。しかし、微粉が有機溶媒相100重量部に対し20重量部より多く含まれる場合には、固形分濃度を十分に下げなければならず生産効率が落ちるという問題が生じる。
分散の方法としては、特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、及び超音波などの公知の方法が適用することができる。分散体の粒径を2乃至20μmにするためには、高速せん断式を用いることが好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000回転/分以上30000回転/分以下、好ましくは5000回転/分以上20000回転/分以下である。分散時間は、特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1乃至5分である。分散時の温度としては、通常、加圧下において0℃以上150℃以下、好ましくは40℃以上98℃以下である。高温条件の方が、ポリエステルプレポリマー(A)からなる分散体の粘度が低く、分散が容易な点で好ましい。
ポリエステルプレポリマー(A)の有機溶媒相に含まれる固形成分100質量部に対する水系媒体の使用量は、通常50質量部以上2000重量部以下であり、好ましくは100質量部以上1000重量部以下である。50重量部未満ではトナー組成物の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られない。20000重量部を超えると経済的でない。
また、必要に応じて、分散剤を用いることもできる。分散剤を用いたほうが、粒度分布がシャープになるとともに分散が安定である点で好ましい。
ポリエステルプレポリマー(A)などを含む有機溶媒相を、乳化又は分散するための分散剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどの陰イオン界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、及び多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤(例えば、アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシン、及びN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムベタインなどの両性界面活性剤)が挙げられる。
また、フルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、ごく少量でその効果をあげることができる。好ましく用いられるフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2乃至10のフルオロアルキルカルボン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルキル(C6乃至C11)オキシ]−1−アルキル(C3乃至C4)スルホン酸ナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルカノイル(C6乃至C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11乃至C20)カルボン酸及び金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7乃至C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4乃至C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6乃至C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6乃至C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、並びにモノパーフルオロアルキル(C6乃至C16)エチルリン酸エステルなどが挙げられる。商品名としては、サーフロンS−111、S−112、S−113(以上、旭硝子社製)、フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−l29(以上、住友3M社製)、ユニダインDS−101、DS−l02(以上、ダイキン工業社製)、メガファックF−ll0、F−l20、F−113、F−191、F−812、F−833(以上、大日本インキ社製)、エクトップEF−102、EF−l03、EF−104、EF−105、EF−112、EF−123A、EF−123B、EF−306A、EF−501、EF−201、EF−204(以上、トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−100、及びF150(以上、ネオス社製)などが挙げられる。
また、カチオン界面活性剤としては、フルオロアルキル基を有する脂肪族一級、二級、及び二級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6乃至C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩などの脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、並びにイミダゾリニウム塩などが挙げられる。商品名としては、サーフロンS−l21(以上、旭硝子社製)、フロラードFC−135(以上、住友3M社製)、ユニダインDS−202(以上、ダイキン工業社製)、メガファックF−150、F−824(以上、大日本インキ社製)、エクトップEF−l32(以上、トーケムプロダクツ社製)、及びフタージェントF−300(以上、ネオス社製)などが挙げられる。
水に難溶の無機化合物分散剤としては、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、及びヒドロキシアパタイトなども用いることができる。
また、高分子系保護コロイドにより、分散液滴を安定化させても良い。高分子系保護コロイドの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸、及び無水マレイン酸などの酸類、並びに、水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体(例えば、アクリル酸β一ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、及びN−メチロールメタクリルアミドなど)、並びに、ビニルアルコール又はビニルアルコールとのエ一テル類(例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、及びビニルプロピルエーテルなど)、並びに、ビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類(例えば、酢酸ピニル、プロピオン酸ピニル、及び酪酸ビニルなど)、並びに、アクリルアミド、メタクリルアミド、及びジアセトンアクリルアミド又はこれらのメチロール化合物、並びに、アクリル酸クロライド及びメタクリル酸クロライドなどの酸クロライド類、並びに、ピニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、及びエチレンイミンなどの窒素原子又はその複素環を有するものなどのホモポリマーまたは共重合体、並びに、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフエニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、及びポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、並びに、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類などが使用できる。
なお、分散安定剤としてリン酸カルシウム塩などの酸又はアルカリに溶解可能な物を用いた場合は、塩酸などの酸によりリン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗するなどの方法によって、微粒子からリン酸カルシウム塩を除去する。その他、酵素による分解などの操作によっても除去することも可能である。分散剤を使用した場合は、分散剤がトナー粒子表面に残存したままとすることもできるが、伸長及び/又は架橋反応後に洗浄除去した方が、トナーの帯電面から好ましい。
伸長及び/又は架橋反応時間は、プレポリマー(A)の有するイソシアネート基構造とアミン類(B)の組み合わせによる反応性により決定されるが、通常10分以上40時間以下であり、好ましくは2時間以上24時間以下である。反応温度は、通常0℃以上150℃以下であり、好ましくは40℃以上98℃以下である。また、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。具体的には、ジブチルチンラウレート及びジオクチルチンラウレートなどが挙げられる。
得られた乳化分散体から有機溶媒を除去するためには、系全体を徐々に昇温し、液滴中の有機溶媒を完全に蒸発除去する方法を用いることができる。または、乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧して、液滴中の非水溶性有機溶媒を完全に除去してトナー微粒子を形成し、併せて水系分散剤を蒸発除去することも可能である。乳化分散体が噴霧される乾燥雰囲気としては、空気、窒素、炭酸ガス、及び燃焼ガスなどを加熱した気体、特に、使用される最高沸点溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が一般に用いられる。スプレイドライアー、ベルトドライアー、及びロータリーキルンなどの短時間の処理によって、十分な品質を確保することができる。
乳化分散時の粒度分布が広く、その粒度分布を保って洗浄及び乾燥処理が行われた場合、所望の粒度分布に分級して粒度分布を整えることができる。分級操作は、液中でサイクロン、デカンター、及び遠心分離などにより、微粉部分を取り除くことができる。もちろん乾燥後に粉体として取得した後に分級操作を行っても良いが、液体中で行うことが効率の面で好ましい。回収された不要の微粉は、本実施形態においては再び有機溶媒相に戻して粒子の形成に用いることができる。用いた分散剤は得られた分散液からできるだけ取り除くことが好ましい。この分散剤の除去は、先に述べた分級操作と同時に行うことが好ましい。
得られた乾燥後のトナーの粉体は、上述の離型剤微粒子、上述の帯電制御性微粒子、下述する外添剤としての流動化剤微粒子、及び上述の着色剤微粒子などの異種粒子とともに混合を行ったり、混合粉体に機械的衝撃力を与えたりすることにより、トナー粒子表面で固定化又は融合化させ、得られる複合体粒子の表面からの異種粒子の脱離を防止することができる。
具体的手段としては、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、及び高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士または複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などがある。この方法に用いることができる装置としては、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して粉砕エアー圧力を下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、及び自動乳鉢などが挙げられる。
(外添剤)
本実施形態で得られた着色粒子の流動性、現像性、及び帯電性を補助するための外添剤としては、無機微粒子を好ましく用いることができる。この無機微粒子の一次粒子径は、好ましくは5nm以上2μm以下であり、さらに好ましくは5nm以上0.5μm以下である。また、BET法による比表面積は、好ましくは20m2/g以上500m2/g以下である。この無機微粒子の使用割合は、好ましくはトナーの0.01重量%以上5重量%以下であり、さらに好ましくは0.01重量%以上2.0重量%以下である。この無機微粒子の使用割合が、トナーの5重量%より多い場合は、2成分現像剤では現像装置における長期の攪拌においてキャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力を低下させる。また、このトナーを1成分現像剤として用いた場合には、現像ローラへのトナーのフィルミング、及びトナーを薄層化する為のブレードなどの部材へのトナーの融着を発生させやすくなる。
無機微粒子の具体例としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、及び窒化ケイ素などを挙げることができる。他には、分子系微粒子、例えば、ソープフリー乳化重合、懸濁重合、及び分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル共重合体、シリコン、ベンゾグアナミン、及びナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
このような外添剤は、予め表面処理を行うことにより疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性及び帯電特性の悪化を防止することができる。例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコンオイル、及び変性シリコンオイルなどが好ましい表面処理剤として挙げられる。
一方、感光体及び一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸など脂肪酸金属塩、例えば、ポリメチルメタクリレート微粒子及びポリスチレン微粒子などのソープフリー乳化重合などによって製造された、ポリマー微粒子などを挙げることかできる。ポリマー微粒子は、比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01μm以上1μm以下のものが好ましい。
(トナー円形度及び円形度分布)
本実施形態のトナーは、特定の形状及び形状の分布を有すことが重要である。平均円形度が0.90未満であるような、球形からあまりに離れた不定形の形状のトナーでは、満足した転写性、及びチリのない高画質画像を得ることができない。
円形度の計測方法としては、トナー粒子を含む懸濁液を平板上の撮像部検知帯に通過させ、CCDカメラで光学的に粒子画像を検知及び解析する、光学的検知帯の手法が用いられる。この手法によって得られる投影面積の等しい相当円の周囲長を、実在粒子の周囲長で除した値を平均円形度とする。
この平均円形度が0.90以上0.98以下であることは、適正な濃度の再現性のある高精細な画像を形成するのに有効である。より好ましくは、平均円形度が0.95以上0.97以下であり、且つ、円形度が0.94未満であるトナー粒子が15%以下である。平均円形度が0.98以上の場合、ブレードクリーニングなどを採用しているシステムでは、感光体上及び転写ベルトなどのクリーニング不良が発生し、画像上の汚れを引き起こす。画像面積率の低い現像及び転写では、転写残トナーが少なく、クリーニング不良が問題となることはない。しかし、カラー写真画像など画像面積率の高いとき、さらには、給紙不良などで未転写の画像形成したトナーが感光体上に転写残トナーとして発生することがあり、蓄積すると画像の地汚れを発生してしまう。また、感光体を接触帯電させる帯電ローラなどを汚染してしまい、本来の帯電能力を発揮できなくなってしまう。
(トナーの円形度の測定)
フロー式粒子像分析装置(Flow Particle Image Analyzer)を使用した、トナーの円形度の測定方法に関して以下に説明する。
トナー、トナー粒子、及び外添剤のフロー式粒子像分析装置による測定は、例えば、東亜医用電子社(株)製フロー式粒子像分析装置FPIA−2000を用いて測定することができる。
測定は、フィルターを通して微細なごみを取り除き、その結果として10−3cm3の水中に測定範囲(例えば、円相当径0.60μm以上159.21μm未満)の粒子数が20個以下の水10ml中に、陰イオン系界面活性剤(好ましくは、和光純薬社製コンタミノンN)を数滴加える。この中に測定試料を5mg加え、超音波分散器STM社製UH−50で20kHz、50W/10cm3の条件で1分間分散処理を行い、さらに、合計5分間の分散処理を行い測定試料の粒子濃度が4000乃至8000個/10−3cm3(測定円相当径範囲の粒子を対象として)の試料分散液を用いて、0.60μm以上159.21μm未満の円相当径を有する粒子の粒度分布を測定する。
試料分散液は、フラットで偏平な透明フローセル(厚み約200μm)の流路(流れ方向に沿って広がっている)を通過させる。フローセルの厚みに対して交差して通過する光路を形成するために、ストロボ及びCCDカメラは、フローセルに対して相互に反対側に位置するように装着する。試料分散液が流れている間に、フローセルを流れている粒子の画像を得るために1/30秒間隔でストロボ光を照射する。その結果、それぞれの粒子は、フローセルに平行な一定範囲を有する2次元画像として撮影される。それぞれの粒子の2次元画像の面積から、同一の面積を有する円の直径を円相当径として算出する。
約1分間で、1200個以上の粒子の円相当径を測定し、円相当径分布に基づく数及び規定された円相当径を有する粒子の割合(個数%)を測定する。その結果(頻度%及び累積%)は、0.06乃至400μmの範囲を226チャンネル(1オクターブに対し30チャンネルに分割)に分割して得る。実際の測定では、円相当径が0.60μm以上159.21μm未満の範囲で粒子の測定を行う。
(トナーの粒径)
本実施形態のトナーは、好ましくは体積平均粒径(Dv)が3μm以上8μm以下であり、さらに好ましくは4μm以上7μm以下である。また、体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)は、好ましくは1.25以下であり、さらに好ましくは1.10以上1.20以下の範囲である。
ここで、体積平均粒径(Dv)は、
Dv=〔Σ(nD3)/Σn〕/3 (式中、nは粒子個数、Dは粒子径である。)
と定義される。本実施形態では、Dv/Dnの値を上述の範囲とすることにより、耐熱保存性、低温定着性、及び耐ホットオフセット性のいずれにも優れ、とりわけフルカラー複写機などに用いた場合に画像の光沢性に優れたトナーを得ることができる。さらには、2成分現像剤においては、長期にわたるトナーの収支が行われても、現像剤中のトナー粒子径の変動が少なくなり、現像装置における長期の攪拌においても、良好で安定した現像性が得られる。また、1成分現像剤として用いた場合においても、トナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なくなると共に、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化する為のブレードなどの部材へのトナーの融着がなく、現像装置の長期の使用(攪拌)においても、良好で安定した現像性及び画像が得ることができる。
一般的には、トナーの粒子径は小さければ小さいほど、高解像で高画質の画像を得るのに有利であると言われているが、逆に転写性及びクリーニング性に対しては不利である。また、体積平均粒子径(Dv)が3μmよりも小さい場合、2成分現像剤では現像装置における長期の攪拌においてキャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力を低下させる。また、このトナーを1成分現像剤として用いた場合には、現像ローラへのトナーのフィルミング、及びトナーを薄層化する為のブレードなどの部材へのトナーの融着を発生させやすくなる。
逆に、体積平均粒子径(Dv)が8μmよりも大きい場合、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなるとともに、現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒子径の変動が大きくなる場合が多い。また、体積平均粒子径/個数平均粒子径(Dv/Dn)が大きすぎる場合も同様の問題が生じる。さらに、体積平均粒子径/個数平均粒子径 (Dv/Dn)が小さすぎると、トナーの挙動の安定化及び帯電量の均一化の面から好ましい面もあるが、トナーの帯電が不十分になる場合が見られる。また、クリーニング性を悪化させる場合もある。
(トナー粒径の測定)
体積平均粒子径/個数平均粒子径(Dv/Dn)の測定は、コールターエレクトロニクス社製の粒度測定器「コールターカウンターTAII」を用いてアパーチャー径100μmで測定した体積平均粒子径(Dv)と個数平均粒子径(Dn)の値により自動的に測定される。
まず、電解水溶液100乃至150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1乃至5ml加える。ここで、電解液とは1級塩化ナトリウムを用いて約1%NaCl水溶液を調製したものであり、例えば、ISOTON−II(コールター社製)が使用できる。ここで、さらに測定試料を2乃至20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1乃至3分間分散処理を行ない、上述の測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナー粒子又はトナーの体積及び個数を測定して、体積分布及び個数分布を算出する。得られた分布から、トナーの重量平均粒径及び個数平均粒径を求めることができる。
チャンネルとしては、2.00μm以上2.52μm未満、2.52μm以上3.17μm未満、3.17μm以上4.00μm未満、4.00μm以上5.04μm未満、5.04μm以上6.35μm未満、6.35μm以上8.00μm未満、8.00μm以上10.08μm未満、10.08μm以上12.70μm未満、12.70μm以上16.00μm未満、16.00μm以上20.20μm未満、20.20μm以上25.40μm未満、25.40μm以上32.00μm未満、及び32.00μm以上40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm以上40.30μm未満の粒子を対象とする。
(GPCによるトナーのピーク分子量の測定)
本実施形態による分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、GPC−8220GPC(東ソー社製)測定装置によって測定される。40℃のヒートチャンバー中でカラム(東ソー社製のTSK−gel SuperHZM−H 15cm カラムを3連にして使用した)を安定させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてテトラヒドロフランを0.35ml/分の流速で流し、試料濃度として0.15重量%に調製した試料溶液を0.4ml注入することにより測定する。試料の分子量測定に当たっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出した。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば、昭和電工社製のShowdexSTANDARDのStd.No S−7300、S−210、S−390、S−875、S−1980、S−10.9、S−629、S−3.0、及びS−0.580を用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料から作成した分子量校正曲線を使用して、トナーの数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を算出する。また、検出器には屈折率検出器を用いる。
(トナーの酸価及び水酸基価)
トナーの酸価は通常1KOHmg/g以上40KOHmg/g以下、好ましくは5KOHmg/g以上30KOHmg/g以下、さらに好ましくは15KOHmg/g以上28KOHmg/g以下である。所定の酸価を持たせることにより、負帯電性となりやすい傾向があり、定着時における紙との親和性が増大し、定着力を強くすることができる。
トナーの水酸基価は、通常5以上であることが好ましく、さらに好ましくは10KOHmg/g以上120KOHmg/g以下、特に好ましくは20KOHmg/g以上80KOHmg/g以下である。トナーの水酸基価が5KOHmg/g未満では、耐熱保存性と低温定着性との両立の面で不利になる。
(トナーの酸価及び水酸基価の測定方法)
本実施形態のトナーの酸価の測定方法は、JIS K0070−1992記載の測定方法に準拠して以下の条件で測定を行う。但しトナー試料が溶解しない場合は、溶媒にジオキサン及びテトラヒドロフランなどの溶媒を用いる。試料であるトナー0.5g(酢酸エチル可溶成分では0.3g)をトルエン120mlに添加して、23℃で約10時間撹拌することにより溶解する。さらに、エタノール30mlを添加して試料溶液とする。ただし、サンプルが溶解しない場合は、溶媒にジオキサン及びテトラヒドロフランなどの溶媒を用いる。得られた測定試料は、電位差自動滴定装置DL−53 Titrator(メトラー・トレド社製)に、電極DG113−SC(メトラー・トレド社製)を装着した測定系により、測定温度は23℃で酸度を測定する。また、上述の装置の校正には、トルエン120mlとエタノール30mlの混合溶媒を使用する。測定データの解析には、解析ソフトLabX Light Version 1.0を使用する。酸度は、上述の測定装置及び解析ソフトにより算出することができるが、具体的には次のように計算する。あらかじめ標定されたN/10苛性カリ/アルコール溶液で滴定し、アルコールカリ液の消費量から、下式により酸価を算出する。
酸価=KOH(ml数)×N×56.1/試料重量
(ただしNはN/10KOHのファクター)
本実施形態のトナーの水酸価の測定方法は、JIS K0070−1966記載の測定方法に準拠して以下の条件で測定を行う。
試料であるトナー0.5gを100mlのメスフラスコに精秤し、これにアセチル化試薬5mlを加える。その後、100±5℃の温浴中に浸して加熱する。1乃至2時間後フラスコを温浴から取り出し、放冷後水を加えて振り動かして無水酢酸を分解する。更に分解を完全にするため再びフラスコを浴中で10分間以上加熱し放冷後、有機溶剤でフラスコの壁を十分に洗う。このように得られた液体を、電位差自動滴定装置DL−53 Titrator(メトラー・トレド社製)に、電極DG113−SC(メトラー・トレド社製)を装着した測定系を用いて、測定温度は23℃で、N/2水酸化カリウムエチルアルコール溶液で電位差滴定を行うことにより水酸価を測定する。
(現像剤)
本実施形態のトナーを2成分系現像剤に用いる場合には、磁性キャリアと混合して用いれば良い。このときの現像剤中のキャリア及びトナーの含有比は、好ましくはキャリア100重量部に対してトナー1重量部以上10重量部以下であり、さらに好ましくは3重量部以上9重量部以下である。磁性キャリアとしては、粒子径20乃至200μm程度の鉄粉、フェライト粉、マグネタイト粉、及び磁性樹脂キャリアなどの従来から公知のものが使用できる。また、被覆材料としては、アミノ系樹脂、例えば、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂、及びエポキシ樹脂などが挙げられる。また、ポリビニル及びポリビニリデン系樹脂、例えば、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、及びスチレンアクリル共重合樹脂などのポリスチレン系樹脂、並びに、ポリ塩化ビニル等のハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、及びポリブチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル系樹脂、並びに、ポリカーボネート系樹脂、並びに、ポリエチレン樹脂、並びに、ポリフッ化ビニル樹脂、並びに、ポリフッ化ビニリデン樹脂、並びに、ポリトリフルオロエチレン樹脂、並びに、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、並びに、フッ化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、並びに、フッ化ビニリデンと弗化ビニルとの共重合体、並びに、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンと非フッ化単量体とのターポリマーなどのフルオロターポリマー、並びに、シリコン樹脂などが使用できる。また必要に応じて、導電粉などを被覆樹脂中に含有させてもよい。
導電粉としては、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫、及び酸化亜鉛などが使用できる。これらの導電粉は、平均粒子径1μm以下のものが好ましい。平均粒子径が1μmよりも大きくなると、電気抵抗の制御が困難になる。また、本実施形態のトナーは、キャリアを使用しない1成分系の磁性トナー又は非磁性トナーとしても用いることができる。
(プロセスカートリッジ)
本実施形態のプロセスカートリッジは、静電潜像を担持する静電潜像担持体と、この静電潜像担持体上に担持された静電潜像を、トナーを含む現像剤を用いて現像し可視像を形成する現像手段とを少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段を有してなる。
図1は、本発明の実施形態におけるプロセスカートリッジの構成図である。
図1を参照するに、プロセスカードリッジ99は大略すると、静電潜像担持体である感光体10、静電潜像形成手段である帯電器21、同じく静電潜像形成手段である露光装置30、現像手段である現像機40、クリーニング手段であるクリーニング装置60、除電手段である除電ランプ70、及び転写手段である転写ローラ80からなる。
上述したプロセスカードリッジ99の構成各部については、下述する画像形成装置の項にて詳細な説明を行う。
本実施形態のプロセスカートリッジは、各種電子写真装置などに自在に備えさせることができ、下述する本実施形態の画像形成装置に着脱自在に備えさせるのが好ましい。また、着脱自在であることは、下述する画像形成装置のメンテナンスを可能とすることができる。
(画像形成装置)
本実施形態の画像形成装置は、静電潜像担持体、静電潜像形成手段、現像手段、転写手段、及び定着手段を少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、除電手段、クリーニング手段、リサイクル手段、及び制御手段などを有してなる。
感光体とも称される静電潜像担持体としては、その材質、形状、構造、及び大きさなどについて特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができる。静電潜像担持体の形状としては、ドラム状が好適に挙げられる。静電潜像担持体の材質としては、例えばアモルファスシリコン及びセレンなどの無機感光体、並びに、ポリシラン及びフタロポリメチンなどの有機感光体などが挙げられる。これらの中でも、長寿命である点から、アモルファスシリコンなどが好ましい。アモルファスシリコンを材質とした感光体については、詳しく下述する。
静電潜像の形成は、上述の静電潜像担持体の表面を一様に帯電させた後、上述の静電潜像形成手段により像様に露光することにより行うことができる。
静電潜像形成手段は、例えば、上述の静電潜像担持体の表面を一様に帯電させる帯電手段、及びこの静電潜像担持体の表面を像様に露光する露光手段を少なくとも備える。
帯電は、帯電器を用いて静電潜像担持体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。
帯電手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のロール、ブラシ、フィルム、及びゴムブレードなどを備えたそれ自体公知の接触帯電器、並びに、コロトロン、及びスコロトロンなどのコロナ放電を利用した非接触帯電器などが挙げられる。
なお、本実施形態においては、静電潜像担持体表面に直接接触し、電圧を印加することにより、静電潜像担持体表面を均一に帯電する帯電手段を用いることが好適である。このような帯電手段を用いることは、装置内におけるオゾンの発生を抑えることができる点で好適である。
露光は、上述の露光器を用いて静電潜像担持体の表面を像様に露光することにより行うことができる。
露光器手段としては、上述の帯電器により帯電された静電潜像担持体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザー光学系、及び液晶シャッタ光学系などの各種露光器が挙げられる。
なお、本実施形態においては、静電潜像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
次に、現像手段について説明する。
現像手段は、上述の静電潜像を本実施形態のトナーを含む現像剤を用いて現像して、可視像を形成する。
可視像の形成は、現像手段により、静電潜像を本実施形態のトナーを含む現像剤を用いて現像することにより行うことができる。
現像手段は、本実施形態のトナーを含む現像剤を用いて現像することができる限り、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、本実施形態のトナーを含む現像剤を収容し、静電潜像に現像剤を接触又は非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものが好適に挙げられる。本実施形態のトナー入り容器を備えた現像器などがより好ましい。
現像手段は、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよい。例えば、トナー入りの現像剤を摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器、及び回転可能なマグネットローラを有してなるものなどが好適に挙げられる。
現像手段内では、トナー及びキャリアが混合攪拌され、その際の摩擦によりトナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。マグネットローラは、上述の静電潜像担持体(感光体)近傍に配置されているため、マグネットローラの表面に形成された磁気ブラシを構成するトナーの一部は、電気的な吸引力によって静電潜像担持体(感光体)の表面に移動する。その結果、静電潜像がトナーにより現像されて静電潜像担持体(感光体)の表面にトナーによる可視像が形成される。
現像器に収容させる現像剤は、本実施形態のトナーを含む現像剤であるが、現像剤としては1成分現像剤であってもよいし、2成分現像剤であってもよい。また、これらの現像剤に含まれるトナーは、本実施形態のトナーである。
次に、転写手段について説明する。
転写手段は、可視像を記録媒体に転写する手段である。転写手段は、中間転写体を用い、この中間転写体上に可視像を一次転写した後、この可視像を記録媒体上に二次転写する態様が好ましい。また、転写手段は、トナーとして2色以上、好ましくはフルカラートナーを用い、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを含む態様がより好ましい。
なお、中間転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルトなどが好適に挙げられる。
第一次転写手段及び第二次転写手段は、静電潜像担持体(感光体)上に形成された可視像を記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。転写手段は、1つであってもよいし、2以上であってもよい。
転写手段としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、及び粘着転写器などが挙げられる。
なお、記録媒体としては、特に制限はなく、公知の記録媒体(記録紙)の中から適宜選択することができる。
定着手段は、記録媒体に転写された可視像を定着装置によって定着させる手段であり、各色のトナーに対し記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
定着手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧手段が好適である。この加熱加圧手段としては、加熱ローラ及び加圧ローラの組合せ、並びに加熱ローラ、加圧ローラ及び無端ベルトとの組合せなどが挙げられる。
加熱加圧手段における加熱は、通常80℃以上200℃以下が好ましい。
なお、本実施形態においては、目的に応じて定着工程及び定着手段と共にあるいはこれらに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
また、本実施形態では、サーフ定着装置を定着装置として用いることが特に好ましい。サーフ定着装置については詳しく下述する。
除電手段は、静電潜像担持体(感光体)に対し除電バイアスを印加して除電を行う手段である。除電手段としては、特に制限はなく、静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができる。例えば、除電ランプなどが好適に挙げられる。
クリーニング手段は、静電潜像担持体上に残留する電子写真トナーを除去する手段である。
クリーニング手段としては、特に制限はなく、静電潜像担持体上に残留するトナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができる。例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、及びウエブクリーナなどが好適に挙げられる。
リサイクル手段は、上述のクリーニング手段により除去した電子写真用カラートナーを現像手段にリサイクルさせる手段である。
リサイクル手段としては、特に制限はなく、公知の搬送手段などが挙げられる。
制御手段は、上述の各工程を制御する工程であり、制御手段により好適に行うことができる。
制御手段としては、上述の各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、シークエンサー及びコンピュータなどの機器が挙げられる。
本実施形態の画像形成装置の1つの態様について説明する。
図2は、本実施形態における画像形成装置の構成図(その1)である。
図2を参照するに、画像形成装置100Aは、静電潜像担持体としての感光体10、帯電手段としての帯電ローラ20、露光手段としての露光装置30、現像手段としての現像装置40、中間転写体50、クリーニングブレードを有するクリーニング手段としてのクリーニング装置60、除電手段としての除電ランプ70からなる。
中間転写体50は、無端ベルトであり、その内側に配置されこれを張架する3個のローラ51によって、矢印方向に移動可能に設計されている。3個のローラ51の一部は、中間転写体50へ所定の転写バイアス(一次転写バイアス)を印加可能な転写バイアスローラとしても機能する。中間転写体50には、その近傍にクリーニングブレードを有するクリーニング装置90が配置されており、また、最終転写材としての転写紙95に現像像(トナー像)を転写(二次転写)するための転写バイアスを印加可能な転写手段としての転写ローラ80が対向して配置されている。中間転写体50の周囲には、中間転写体50上のトナー像に電荷を付与するためのコロナ帯電器58が、中間転写体50の回転方向において、感光体10と中間転写体50との接触部と、中間転写体50と転写紙95との接触部との間に配置されている。
現像装置40は、現像剤担持体としての現像ベルト41と、現像ベルト41の周囲に併設したブラック現像ユニット45K、イエロー現像ユニット45Y、マゼンタ現像ユニット45M及びシアン現像ユニット45Cとから構成されている。なお、ブラック現像ユニット45Kは、現像剤収容部42Kと現像剤供給ローラ43Kと現像ローラ44Kとを備えており、イエロー現像ユニット45Yは、現像剤収容部42Yと現像剤供給ローラ43Yと現像ローラ44Yとを備えており、マゼンタ現像ユニット45Mは、現像剤収容部42Mと現像剤供給ローラ43Mと現像ローラ44Mとを備えており、シアン現像ユニット45Cは、現像剤収容部42Cと現像剤供給ローラ43Cと現像ローラ44Cとを備えている。また、現像ベルト41は、無端ベルトであり、複数のベルトローラに回転可能に張架され、一部が感光体10と接触している。
現像ベルト41の表層材料及び表層は、弾性材料による感光体への汚染防止と、転写ベルト表面への表面摩擦抵抗を低減させてトナーの付着力を小さくして、クリーニング性及び2次転写性を高めるものが要求される。例えば、ポリウレタン、ポリエステル、及びエポキシ樹脂などの1種類又は2種類以上を使用する。また、表面エネルギーを小さくし潤滑性を高める材料、例えば、フッ素樹脂、フッ素化合物、フッ化炭素、二酸化チタン、及びシリコンカーバイトなどの粉体若しくは粒子を1種類若しくは2種類以上、又は、粒径を異ならしたものを分散させ使用することができる。また、フッ素系ゴム材料のように、熱処理を行うことで表面にフッ素リッチな層を形成させ、表面エネルギーを小さくさせたものも使用することができる。
画像形成装置100Aにおいて、例えば、帯電ローラ20が感光体10を一様に帯電させる。露光装置30が感光体10上に像様に露光を行い、静電潜像を形成する。感光体10上に形成された静電潜像を、現像装置40からトナーを供給して現像して可視像(トナー像)を形成する。この可視像(トナー像)が、ローラ51から印加された電圧により中間転写体50上に転写(一次転写)され、更に転写ローラ80によって転写紙95上に転写(二次転写)される。その結果、転写紙95上には転写像が形成される。なお、感光体10上の残存トナーは、クリーニング装置60により除去され、感光体10における帯電は除電ランプ70により除去される。同様に、中間転写体50上の残存トナーは、クリーニング装置90により除去される。
本実施形態の画像形成装置の他の態様について説明する。
図3は、本実施形態の画像形成装置の構成図(その2)である。
図3を参照するに、画像形成装置100Bは、図2に示す画像形成装置100Aとは異なり現像ベルト41を備えておらず、感光体10の周囲に、ブラック現像ユニット45K、イエロー現像ユニット45Y、マゼンタ現像ユニット45M、及びシアン現像ユニット45Cが直接対向して配置されていること以外は、図2に示す画像形成装置100Aと同様の構成を有し、同様の作用効果を示す。なお、図3においては、先に説明した構成について同一の引用符号を付し、詳細な説明を省略する。
本実施形態の画像形成装置の他の態様について説明する。
図4は、本実施形態の画像形成装置の構成図(その3)であり、及び図5は、本実施形態の画像形成装置の構成図(その3)の部分拡大図である。図5は、図4の画像形成手段のうち2つを拡大して示したものである。
図4及び図5を参照するに、タンデム画像形成装置120は、タンデム型カラー画像形成装置である。タンデム画像形成装置120は、複写装置本体150、給紙テーブル200、スキャナ300、及び原稿自動搬送装置(ADF)400からなる。
複写装置本体150は、無端ベルト状の中間転写体50が中央部に設けられている。
中間転写体50は、支持ローラ14、支持ローラ15、及び支持ローラ16に張架され、図4中、時計回りに回転可能とされている。支持ローラ15の近傍には、中間転写体50上の残留トナーを除去するための中間転写体クリーニング装置17が配置されている。支持ローラ14及び支持ローラ15により張架された中間転写体50には、その搬送方向に沿って、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4つの画像形成手段18が対向して並置されたタンデム型現像器120が配置されている。タンデム型現像器120の近傍には、露光装置30が配置されている。中間転写体50における、タンデム型現像器120が配置された側とは反対側には、二次転写装置22が配置されている。二次転写装置22においては、無端ベルトである二次転写ベルト24が一対のローラ23に張架されており、二次転写ベルト24上を搬送される転写紙と中間転写体50とは互いに接触可能である。二次転写装置22の近傍には定着装置25が配置されている。定着装置25は、無端ベルトである定着ベルト26と、これに押圧されて配置された加圧ローラ27とを備えている。
なお、タンデム画像形成装置120においては、二次転写装置22及び定着装置25の近傍に、転写紙の両面に画像形成を行うために、この転写紙を反転させるためのシート反転装置28が配置されている。
次に、タンデム型現像器120を用いたフルカラー画像の形成(カラーコピー)について説明する。原稿自動搬送装置(ADF)400の原稿台130上に原稿をセットするか、又は原稿自動搬送装置400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス32上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置400を閉じる。
スタートスイッチ(不図示)を押すと、原稿自動搬送装置400に原稿をセットした時は、原稿が搬送されてコンタクトガラス32上へと移動された後で、一方、コンタクトガラス32上に原稿をセットした時は直ちに、スキャナ300が駆動し、第1走行体33及び第2走行体34が走行する。このとき、第1走行体33により、光源からの光が照射されると共に原稿面からの反射光を第2走行体34におけるミラーで反射し、結像レンズ35を通して読取りセンサ36で受光されてカラー原稿(カラー画像)が読み取られ、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの画像情報とされる。
そして、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各画像情報は、タンデム型現像器120における各画像形成手段18(ブラック用画像形成手段、イエロー用画像形成手段、マゼンタ用画像形成手段、及びシアン用画像形成手段)にそれぞれ伝達され、各画像形成手段において、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各トナー画像が形成される。タンデム型現像器120における各画像形成手段18(ブラック用画像形成手段、イエロー用画像形成手段、マゼンタ用画像形成手段及びシアン用画像形成手段)は、図4に示すように、それぞれ、感光体10(ブラック用感光体10K、イエロー用感光体10Y、マゼンタ用感光体10M及びシアン用感光体10C)と、感光体を一様に帯電させる帯電器60(参照符号は図5に示す)と、各カラー画像情報に基づいて各カラー画像対応画像様に感光体を露光(図5中、L)し、感光体上に各カラー画像に対応する静電潜像を形成する露光装置30と、静電潜像を各カラートナー(ブラックトナー、イエロートナー、マゼンタトナー及びシアントナー)を用いて現像して各カラートナーによるトナー像を形成する現像器61(参照符号は図5に示す)と、このトナー像を中間転写体50上に転写させるための転写帯電器62と、クリーニング手段である感光体クリーニング装置63と、除電手段である除電器64とを備えており、それぞれのカラーの画像情報に基づいて各単色の画像(ブラック画像、イエロー画像、マゼンタ画像及びシアン画像)を形成可能である。こうして形成されたブラック画像、イエロー画像、マゼンタ画像及びシアン画像は、支持ローラ14、支持ローラ15、及び支持ローラ16により回転移動される中間転写体50上にそれぞれ、ブラック用感光体10K上に形成されたブラック画像、イエロー用感光体10Y上に形成されたイエロー画像、マゼンタ用感光体10M上に形成されたマゼンタ画像及びシアン用感光体10C上に形成されたシアン画像が、順次転写(一次転写)される。そして、中間転写体50上にブラック画像、イエロー画像、マゼンタ画像及びシアン画像が重ね合わされて合成カラー画像(カラー転写像)が形成される。
一方、給紙テーブル200においては、給紙ローラ142の1つを選択的に回転させ、ペーパーバンク143に多段に備える給紙カセット144の1つから記録紙を繰り出し、分離ローラ145で1枚ずつ分離して給紙路146に送出し、搬送ローラ147で搬送して複写機本体150内の給紙路148に導き、レジストローラ49に突き当てて止める。あるいは、給紙ローラ150を回転して手差しトレイ51上の記録紙を繰り出し、分離ローラ52で1枚ずつ分離して手差し給紙路53に入れ、同じくレジストローラ49に突き当てて止める。なお、レジストローラ49は、一般には接地されて使用されるが、シートの紙粉除去のためにバイアスが印加された状態で使用されてもよい。
そして、中間転写体50上に合成された合成カラー画像(カラー転写像)にタイミングを合わせてレジストローラ49を回転させ、中間転写体50と二次転写装置22との間に記録紙を送出させ、二次転写装置22により合成カラー画像(カラー転写像)を記録紙上に転写(二次転写)することにより、記録紙上にカラー画像が転写され形成される。なお、画像転写後の中間転写体50上の残留トナーは、中間転写体クリーニング装置17によりクリーニングされる。
カラー画像が転写され形成された記録紙は、二次転写装置22により搬送されて、定着装置25へと送出され、定着装置25において、熱と圧力とにより合成カラー画像(カラー転写像)が記録紙上に定着される。その後、記録紙は、切換爪55で切り換えて排出ローラ56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされ、あるいは、切換爪55で切り換えてシート反転装置28により反転されて再び転写位置へと導き、裏面にも画像を記録した後、排出ローラ56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされる。
本実施形態の画像形成装置及び画像形成方法では、帯電性能及び表面性状などに優れた本発明のトナーを用いるので、高画質が効率よく得られる。
(アモルファスシリコン感光体)
本実施形態に用いられる電子写真用感光体としては、導電性支持体を50℃以上400℃以下に加熱し、この導電性支持体上に真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、光CVD法、及びプラズマCVD法などの成膜法によりa−Siからなる光導電層を有するアモルファスシリコン感光体(以下、a−Si系感光体と称する)を用いることが出来る。中でも、プラズマCVD法、即ち原料ガスを直流又は高周波あるいはマイクロ波グロー放電によって分解し、支持体上にa−Si堆積膜を形成する方法が好適なものとして用いられている。
アモルファスシリコン感光体の層構成は例えば以下のようなものである。
図6は、本実施形態のアモルファスシリコン感光体の層構成を説明するための模式的構成図である。
図6(a)を参照するに、電子写真用感光体600は、支持体601の上にa−Si:Hからなり光導電性を有する光導電層602が設けられている。
図6(b)を参照するに、電子写真用感光体600は、支持体601の上に、a−Si:Hからなり光導電性を有する光導電層602と、アモルファスシリコン系表面層603とから構成されている。
図6(c)を参照するに、電子写真用感光体600は、支持体601の上に、a−Si:Hからなり光導電性を有する光導電層602と、アモルファスシリコン系表面層603と、アモルファスシリコン系電荷注入阻止層604とから構成されている。
図6(d)を参照するに、電子写真用感光体600は、支持体601の上に、光導電層602が設けられている。光導電層602はa−Si:Hからなる電荷発生層605ならびに電荷輸送層606とからなり、その上にアモルファスシリコン系表面層603が設けられている。
感光体600の支持体601としては、導電性でも電気絶縁性であってもよい。導電性支持体としては、Al、Cr、Mo、Au、In、Nb、Te、V、Ti、Pt、Pd、及びFeなどの金属、並びに、上述の金属の合金、例えば、ステンレスなどが挙げられる。また、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、セルロースアセテート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、及びポリアミドなどの合成樹脂のフィルム、シート、ガラス、及びセラミックなどの電気絶縁性支持体の少なくとも感光層を形成する側の表面を導電処理した支持体も用いることができる。
支持体601の形状は、平滑表面あるいは凹凸表面の円筒状または板状、無端ベルト状であることができ、その厚さは、所望通りの画像形成装置用感光体を形成し得るように適宜決定するが、画像形成装置用感光体としての可撓性が要求される場合には、支持体としての機能が充分発揮できる範囲内で可能な限り薄くすることができる。しかしながら、支持体は製造上および取り扱い上、機械的強度などの点から通常は10μm以上とされる。
本実施形態に用いることが出来るアモルファスシリコン感光体600には、図6(c)に示すとおりに、必要に応じて導電性支持体601と光導電層602との間に、導電性支持体601側からの電荷の注入を阻止する働きのある電荷注入阻止層604を設けるのがいっそう効果的である。即ち、電荷注入阻止層604は感光層が一定極性の帯電処理をその自由表面に受けた際、支持体601側より光導電層602側に電荷が注入されるのを阻止する機能を有し、逆の極性の帯電処理を受けた際にはそのような機能が発揮されない、いわゆる極性依存性を有している。そのような機能を付与するために、電荷注入阻止604層には伝導性を制御する原子を光導電層602に比べ比較的多く含有させる。
電荷注入阻止層604の層厚は所望の電子写真特性が得られること、及び経済的効果などの点から好ましくは0.1μm以上5μm以下、より好ましくは0.3μm以上4μm以下、最適には0.5μm以上3μm以下とされるのが望ましい。
光導電層602は、必要に応じて下引き層上に形成され、光導電層602の層厚は所望の電子写真特性が得られること、及び経済的効果等の点から適宜所望にしたがって決定され、好ましくは1μm以上100μm以下、より好ましくは20μm以上50μm以下、最適には23μm以上45μm以下とされるのが望ましい。
電荷輸送層606は、光導電層602を機能分離した場合の電荷を輸送する機能を主として奏する層である。この電荷輸送層606は、その構成要素として少なくともシリコン原子と炭素原子とフッ素原子とを含み、必要であれば水素原子、酸素原子を含むa−SiC(又はCの代わりに、H、F、O)からなり、所望の光導電特性、特に電荷保持特性,電荷発生特性および電荷輸送特性を有する。本実施形態においては酸素原子を含有することが特に好ましい。
電荷輸送層606の層厚は所望の電子写真特性が得られることおよび経済的効果などの点から適宜所望にしたがって決定され、電荷輸送層については、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは10μm以上40μm以下、最適には20μm以上30μm以下とされるのが望ましい。
電荷発生層605は、光導電層602を機能分離した場合の電荷を発生する機能を主として奏する層である。この電荷発生層605は、構成要素として少なくともシリコン原子を含み、実質的に炭素原子を含まず、必要であれば水素原子を含むa−Si:Hから成り、所望の光導電特性、特に電荷発生特性,電荷輸送特性を有する。
電荷発生層605の層厚は所望の電子写真特性が得られることおよび経済的効果等の点から適宜所望にしたがって決定され、好ましくは0.5μm以上15μm以下、より好ましくは1μm以上10μm以下、最適には1μm以上5μm以下とされる。
本実施形態に用いることが出来るアモルファスシリコン感光体600には必要に応じて、上述のようにして支持体601上に形成された光導電層602の上に、更に表面層603を設けることが出来、アモルファスシリコン系の表面層603を形成することが好ましい。この表面層603は自由表面を有し、主に耐湿性、連続繰り返し使用特性、電気的耐圧性、使用環境特性、及び耐久性において本実施形態の目的を達成するために設けられる。
本実施形態における表面層603の層厚としては、通常0.01μm以上3μm以下、好適には0.05μm以上2μm以下、最適には0.1μm以上1μm以下とされるのが望ましいものである。層厚が0.01μmよりも薄いと感光体600を使用中に摩耗などの理由により表面層603が失われてしまい、3μmを超えると残留電位の増加等の電子写真特性低下がみられる。
(サーフ定着装置)
図7は、本実施形態のサーフ定着装置の概略図である。
図7を参照するに、定着装置800は、定着フィルム801を図中の矢印の方向に回転させて定着する、いわゆるサーフ定着装置である。以下詳説すると、定着フィルム801はエンドレスベルト状耐熱フィルムであり、このフィルムの支持回転体である駆動ローラ802と、従動ローラ803と、この両ローラ間の図中下方に設けた加熱体804とに懸回張設している。
従動ローラ802は、定着フィルム801のテンションローラを兼ね、定着フィルム801は駆動ローラ802の図中矢印方向の回転駆動によって、図中矢印方向に向かって回転駆動される。この回転駆動速度は、加圧ローラ805と定着フィルム801が接する定着ニップ領域Lにおいて転写材806と定着フィルム801の速度が等しくなる速度に調節される。
ここで、加圧ローラ805はシリコンゴムなどの離型性のよいゴム弾性層を有するローラであり、図中の矢印方向に回転しつつ、定着ニップ領域Lに対して総圧4kg以上10kg以下の当接圧をもって圧接させてある。
また定着フィルム801は、耐熱性、離型性、及び耐久性に優れたものが好ましく、総厚100μm以下、好ましくは40μm以下の薄肉のものを使用する。例えば、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)、及びPFA(4フッ化エチレンバーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂)などの耐熱樹脂の単層フィルム、並びに、複合層フィルム、例えば、20μm厚フィルムの少なくとも画像当接面側にPTFE(4フッ化エチレン樹脂)及びPFAなどのフッ素樹脂に導電材を添加した離型性コート層を10μm厚に施したものや、フッ素ゴム及びシリコンゴムなどの弾性層を施したものである。
加熱体804は、平面基板807及び定着ヒータ808から構成されており、平面基板807は、アルミナなどの高熱伝導度且つ高電気抵抗率を有する材料からなっており、定着フィルム801と接触する表面には抵抗発熱体で構成した定着ヒータ808を長手方向に設置してある。定着ヒータ808は、例えばAg/Pd、Ta2Nなどの電気抵抗材料を、スクリーン印刷などにより線状又は帯状に塗工したものである。また、定着ヒータ808の両端部には、図示しない電極が形成され、この電極間に通電することで抵抗発熱体が発熱する。さらに、基板の定着ヒータ808が具備させてある面と逆の面にはサーミスタによって構成した定着温度センサ809が設けられている。
定着温度センサ809によって検出された基板の温度情報は、図示しない制御手段に送られ、かかる制御手段により定着ヒータに供給される電力量が制御され、加熱体804は所定の温度に制御される。
以下、実施形態について実施例によってさらに詳細に説明する。なお、下記においては「部」は重量部を、「%」は重量%を意味するものとする。
<実施例1>
(有機微粒子エマルションの合成)
撹拌棒及び温度計を設置した反応容器に、水683部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30、三洋化成工業製)11部、スチレン80部、メタクリル酸83部、アクリル酸ブチル110部、チオグリコール酸ブチル12部、及び過硫酸アンモニウム1部を入れ、400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。この乳濁液を加熱し、系内温度75℃で5時間反応させた。さらに反応後、1%過硫酸アンモニウム水溶液30部加え、75℃で5時間熟成させることにより、ビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液を得た。この水性分散液を[微粒子分散液1]とする。
この[微粒子分散液1]をレーザー回折式粒度分布測定器(LA−920 島津製作所製)で測定した体積平均粒径は、120nmであった。また、[微粒子分散液1]の一部を乾燥して樹脂分を単離した。この樹脂分のガラス転移点は42℃であり、重量平均分子量は3万であった。
(水相の調製)
水990部、[微粒子分散液1]65部、ドデシルジフェニルェーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5%水溶液(エレミノール MON−7、三洋化成工業製)37部、及び酢酸エチル90部を混合撹拌し、液体を得た。この液体を[水相1]とする。
(低分子ポリエステルの合成)
冷却管、撹拌機、及び窒素導入管が設置された反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物229部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物529部、テレフタル酸208部、アジピン酸46部、及びジブチルチンオキサイド2部を入れ、常圧、230℃で8時間反応させ、さらに、1.3×103乃至2.0×103Paの減圧条件で5時間反応させた。反応後、反応容器に無水トリメリット酸44部を入れ、180℃、常圧で2時間反応させ、[低分子ポリエステル1]を得た。[低分子ポリエステル1]は、数平均分子量が2500、重量平均分子量が6700、ガラス転移点が43℃、酸価が25KOHmg/gであった。
(中間体ポリエステルの合成)
冷却管、撹拌機、及び窒索導入管の設置された反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物81部、テレフタル酸283部、無水トリメリット酸22部、及びジブチルチンオキサイド2部を入れ、常圧、230℃で8時間反応させ、さらに、1.3×103乃至2.0×103Paの減圧で5時間反応させ、[中間体ポリエステル1]を得た。[中間体ポリエステル1]は、数平均分子量が2100、重量平均分子量が9500、ガラス転移点が55℃、酸価が0.5KOHmg/g、水酸基価が51KOHmg/gであった。
(少なくとも活性水素基を有する化合物と反応可能な変性されたポリエステル系樹脂の合成)
冷却管、撹拌機、及び窒素導入管の設置された反応容器中に、[中間体ポリエステル1]410部、イソホロンジイソシアネート89部、酢酸エチル500部を入れ、100℃で5時間反応させ、[プレポリマー1]を得た。[プレポリマー1]の遊離イソシアネートの重量%は、1.53%であった。
(ケチミンの合成)
撹拌棒及び温度計を設置した反応容器に、イソホロンジアミン170部及びメチルエチルケトン75部を入れ、50℃で5時間反応を行い、[ケチミン化合物1]を得た。[ケチミン化合物1]のアミン価は、418であった。
(マスターバッチの合成)
水1200部、カーボンブラック(リーガル400R、キャボット社製)40部、ポリエステル樹脂(RSE−801、三洋化成製、数平均分子量3500,重量平均分子量19000,ガラス転移点63℃)60部、及び水30部を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で混合した。この混合物を、2本ロールを用いて150℃で30分混練後、圧延冷却し、パルペライザーで粉砕することにより[マスターバッチ1]を得た。
(油相の調製)
撹拌棒及び温度計を設置した容器に、[低分子ポリエステル1]400部、カルナバワックス110部、及び酢酸エチル947部を入れ、撹拌下、80℃で5時間保持した後、1時間で30℃に冷却した。次いで、容器に[マスターバッチ1]500部及び酢酸エチル500部を入れ、1時間混合を行い、[原料溶解液1]を得た。
[原料溶解液1]1324部を容器に移し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1Kg/時間、ディスク周速度6m/秒、0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、及び3パスの条件で、ワックスの分散を行った。次いで、[低分子ポリエステル1]の65%酢酸エチル溶液1324部、別ロットでトナー粒子を製造した際に分級工程により取り除かれた[微粉1](Dv=4.4μm、Dv/Dn=1.29)140部を加え、酢酸エチル300部を入れ、上記条件のビーズミルで5パスの分散を行い、[顔料・ワックス分散液1]を得た。[顔料・ワックス分散液1]の固形分濃度(130℃、30分)は50%であった。このとき、有機溶剤相100重量部あたりの微粉量は10重量部であった。別ロットトナーの作成については、後述する。
(乳化)
[顔料・ワックス分散液1]648部、[プレポリマー1]を154部、及び[ケチミン化合物1]8.5部を容器に入れ、TKホモミキサー(特殊機化製)によって5000回転/分で1分間混合した。この混合液に[水相1]1200部を加え、TKホモミキサーによって回転数10000回転/分で20分間混合し[乳化スラリー1]を得た。
すなわち、樹脂微粒子を含む水系媒体中で分散させると共に伸長反応が行なわれる。
(脱溶剤)
撹拌機及び温度計を設置した容器に、[乳化スラリー1]を入れ、30℃で8時間脱溶剤した後、45℃で4時間熟成を行い、[分散スラリー1]を得た。
(洗浄・乾燥)
[分散スラリー1]100部を減圧濾過した後、濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーによって12000回転/分で10分間混合した後、濾過し、濾過ケーキAを得た。
濾過ケーキAに10%水酸化ナトリウム水溶液100部を加え、TKホモミキサーによって12000回転/分で30分間混合した後、減圧濾過し、濾過ケーキBを得た。
濾過ケーキBに10%塩酸100部を加え、TKホモミキサーによって12000回転/分で10分間混合した後、濾過し、濾過ケーキCを得た。
濾過ケーキCにイオン交換水300部を加え、TKホモミキサーで12000回転/分で10分間混合した後、濾過する操作を2回行い、ケーキ状物を得た。これを、[濾過ケーキ1]とする。
[濾過ケーキ1]を循風乾燥機によって、45℃で48時間乾燥した。その後目開き75μmメッシュで篩い、エルボージェットにより、分級操作を行い、トナー母体粒子を得た。これを、[トナー母体粒子1]とする。[トナー母体粒子1]の分級の時に得られた微粉を[微粉2](Dv=4.0μm、Dv/Dn=1.25)とする。
(外添剤処理)
[トナー母体粒子1]100部に対して、外添剤として疎水性シリカ0.7部及び疎水化酸化チタン0.3部をヘンシェルミキサーにて混合処理し、トナーを得た。これを[トナー1]とする。
(現像剤の調整)
[トナー母体粒子1]5%、及びシリコン樹脂を被覆した平均粒子径が40μmの銅−亜鉛フェライトキャリア95%からなる2成分現像剤を調製した。この2成分現像剤を使用して、A4サイズの用紙を45枚/分で印刷できるリコー製imagio Neo 450(以降、評価機とする)を用いて、連続印刷して下述の方法にて評価した。
(別ロットトナーの作成)
(油相の調製)
撹拌棒及び温度計を設置した容器に、[低分子ポリエステル1]400部、カルナバワックス110部、及び酢酸エチル947部を入れ、撹拌下、80℃で5時間保持した後、1時間で30℃に冷却した。次いで、容器に[マスターバッチ1]500部及び酢酸エチル500部を入れ、1時間混合を行い、[原料溶解液1]を得た。
[原料溶解液1]1324部を容器に移し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/時間、ディスク周速度6m/秒、0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、及び3パスの条件で、ワックスの分散を行った。次いで、[低分子ポリエステル1]の65%酢酸エチル溶液1324部を加え、酢酸エチル160部を入れ、上記条件のビーズミルで5パスの分散を行い、[顔料・ワックス分散液2]を得た。[顔料・ワックス分散液]の固形分濃度(130℃、30分)は50%であった。
[顔料・ワックス分散液2]を使用したこと以外は、実施例1と同様な工程にてトナー母体粒子を作製し、[トナー2](Dv=5.0μm、Dv/Dn=1.14)を得、分級操作を行い、別ロットトナーの[微粉1](Dv=4.4μm、Dv/Dn=1.29)と[粗粉1](Dv=7.1μm、Dv/Dn=1.51)を得た。
<実施例2>
(油相の調製)
撹拌棒及び温度計を設置した容器に、[低分子ポリエステル1]400部、カルナバワックス110部、及び酢酸エチル947部を入れ、撹拌下、80℃で5時間保持した後、1時間で30℃に冷却した。次いで、容器に[マスターバッチ1]500部及び酢酸エチル500部を入れ、1時間混合を行い、[原料溶解液1]を得た。
[原料溶解液1]1324部を容器に移し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1Kg/時間、ディスク周速度6m/秒、0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、及び3パスの条件で、ワックスの分散を行なった。次いで、[低分子ポリエステル1]の65%酢酸エチル溶液1324部、別ロットでトナー粒子を製造した際に分級工程により取り除かれた[微粉1](Dv=4.4μm、Dv/Dn=1.29)280部を加え、酢酸エチル440部を入れ、上記条件のビーズミルで5パスの分散を行い、[顔料・ワックス分散液3]を得た。[顔料・ワックス分散液3]の固形分濃度(130℃、30分)は50%であった。このとき、有機溶剤相100重量部あたりの微粉量は20重量部であった。
[顔料・ワックス分散液3]を使用したこと以外は、実施例1と同様な工程にてトナーを作製し、[トナー3]を得た。
<実施例3>
(油相の調製)
撹拌棒及び温度計を設置した容器に、[低分子ポリエステル1]400部、カルナバワックス110部、及び酢酸エチル947部を入れ、撹拌下、80℃で5時間保持した後、1時間で30℃に冷却した。次いで、容器に[マスターバッチ1]500部及び酢酸エチル500部を入れ、1時間混合を行い、[原料溶解液1]を得た。
[原料溶解液1]1324部を容器に移し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/時間、ディスク周速度6m/秒、0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、及び3パスの条件で、ワックスの分散を行なった。次いで、[低分子ポリエステル1]の65%酢酸エチル溶液1324部、実施例1でトナー粒子を製造した際に分級工程により取り除かれた[微粉2](Dv=4.0μm、Dv/Dn=1.25)140部を加え、酢酸エチル300部を入れ、上記条件のビーズミルで5パスの分散を行い、[顔料・ワックス分散液4]を得た。[顔料・ワックス分散液4]の固形分濃度(130℃、30分)は50%であった。このとき、有機溶剤相100重量部あたりの微粉量は10重量部であった。
[顔料・ワックス分散液4]を使用したこと以外は、実施例1と同様な工程にてトナーを作製し、[トナー4]を得た。
<比較例1>
(油相の調製)
撹拌棒及び温度計を設置した容器に、[低分子ポリエステル1]400部、カルナバワックス110部、及び酢酸エチル947部を入れ、撹拌下、80℃で5時間保持した後、1時間で30℃に冷却した。次いで、容器に[マスターバッチ1]500部及び酢酸エチル500部を入れ、1時間混合を行い、[原料溶解液1]を得た。
[原料溶解液1]1324部を容器に移し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/時間、ディスク周速度6m/秒、0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、及び3パスの条件で、ワックスの分散を行なった。次いで、[低分子ポリエステル1]の65%酢酸エチル溶液1324部、別ロットでトナー粒子を製造した際に分級工程により取り除かれた[微粉1](Dv=4.4μm、Dv/Dn=1.29)420部を加え、酢酸エチル580部を入れ、上記条件のビーズミルで5パスの分散を行い、[顔料・ワックス分散液5]を得た。[顔料・ワックス分散液5]の固形分濃度(130℃、30分)は50%であった。このとき、有機溶剤相100重量部あたりの微粉量は30重量部であった。
[顔料・ワックス分散液5]を使用したこと以外は、実施例1と同様な工程にてトナーを作製し、[トナー5]を得た。
<比較例2>
(油相の調製)
撹拌棒及び温度計を設置した容器に、[低分子ポリエステル1]400部、カルナバワックス110部、及び酢酸エチル947部を入れ、撹拌下、80℃で5時間保持した後、1時間で30℃に冷却した。次いで、容器に[マスターバッチ1]500部及び酢酸エチル500部を入れ、1時間混合を行い、[原料溶解液1]を得た。
[原料溶解液1]1324部を容器に移し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/時間、ディスク周速度6m/秒、0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、及び3パスの条件で、ワックスの分散を行なった。次いで、[低分子ポリエステル1]の65%酢酸エチル溶液1324部、別ロットでトナー粒子を製造した際に分級工程により取り除かれた[粗粉1](Dv=7.1μm、Dv/Dn=1.51)280部を加え、上記条件のビーズミルで1パスの分散を行い、[顔料・ワックス分散液6]を得た。[顔料・ワックス分散液6]の固形分濃度(130℃、30分)は50%であった。このとき、有機溶剤相100重量部あたりの微粉量は20重量部であった。
[顔料・ワックス分散液6]を使用したこと以外は、実施例1と同様な工程にてトナーを作製し、[トナー6]を得た。
<評価方法>
体積平均粒径(Dv)、Dv/Dnの値、及び平均円形度の測定は、上述の方法を用いて測定を行うことにより、評価を行った。
(クリーニング性)
100枚出力後の清掃工程を通過した感光体上の転写残トナーをスコッチテープ(住友スリーエム(株)製)で白紙に移し、それをマクベス反射濃度計RD514型で測定した。このとき、ブランクとの差が、0.005未満のものを◎、0.005以上0.010以下のものを○、0.011以上0.02以下のものを△、0.02を超えるものを×として評価した。
(画像濃度)
単色モードで50%画像面積の画像チャートを15万枚ランニング出力した後、ベタ画像をリコー社製6000ペーパーに画像出力後、画像濃度をX−Rite(X−Rite社製)により測定を行なった。これを4色のトナーについてそれぞれ単独にて測定を行ない、4色のトナーの測定値の平均値を求めた。この平均値が、1.2未満の場合を×、1.2以上1.4未満の場合を△、1.4以上1.8未満の場合を○、1.8以上2.2未満の場合を◎として評価した。
(画像粒状性及び鮮鋭性)
単色で写真画像の出力を行ない、粒状性及び鮮鋭性の度合を目視にて官能評価した。良好なものから◎、○、△、及び×の4段階にて評価し、オフセット印刷並の程度を◎、オフセット印刷よりわずかに悪い程度を○、オフセット印刷よりかなり悪い程度を△、従来の電子写真画像程度を×とした。
(地肌汚れ)
単色モードで50%画像面積の画像チャートを3万枚ランニング出力した後、白紙画像を現像中に停止させ、現像後の感光体上の現像剤をテープによって転写し、このテープと、未転写のテープとの画像濃度の差を938スペクトロデンシトメーター(X−Rite社製)により測定した。画像濃度の差が少ないほど地肌汚れが少なく、この地肌汚れが少ない順に、◎、○、△、及び×の4段階にて評価した。
(文字画像内部の白抜け)
単色モードで50%画像面積の画像チャートを3万枚ランニング出力した後、文字部画像をリコー社製タイプDXのOHPシートに4色重ねて出力させ、文字部の線画像内部が抜けるトナー未転写頻度を段階見本と比較した。ランク1を最低、ランク5を最高とし、ランク1及び2の場合を×、ランク3の場合を△、ランク4の場合を○、ランク5の場合を◎として評価した。
(トナー流動性)
パウダーテスター(PT−N型、ホソカワミクロン製)に、上から順に目開き75μm、45μm、22μmのメッシュを重ねて装填した。トナー母体を一番上側の75μmメッシュ上に2g入れ、縦方向に1mmの振動を10秒間与え、各メッシュ上のトナー残存量及び下式からトナー母体の流動性(凝集度)を算出した。
凝集度(%)=(5×(75μmメッシュ上の残トナー量(g))+3×(45μmメッシュ上の残トナー量(g))+(22μmメッシュ上の残トナー量(g)))×10
凝集度が、8%未満の場合を◎、8%以上16%未満の場合を○、16%以上25%未満の場合を△、25%以上の場合を×として評価した。
(定着性)
普通紙及び厚紙の転写紙(タイプ6200及びNBSリコー製複写印刷用紙<135>、リコー製)に全面ベタ画像を印刷し、記録紙0.85±0.1mg/cm2のトナー付着量で定着性を評価した。定着ベルトの温度を変化させて定着試験を行ない、普通紙でホットオフセットの発生しない上限温度を定着上限温度とした。また厚紙で定着下限温度を測定した。定着下限温度は、得られた定着画像をパットで擦った後の画像濃度の残存率が70%以上となる定着ロール温度をもって定着下限温度とした。定着上限温度は、190℃以上の場合を◎、180℃以上190℃未満の場合を○、170℃以上180℃未満の場合を△、170℃未満の場合を×として評価した。また、定着下限温度は、135℃未満の場合を◎、135℃以上145℃未満の場合を○、145℃以上155℃未満の場合を△、155℃以上の場合を×として評価した。
表1及び表2を参照するに、別ロットにてトナーを製造したときの分級工程により除去された所定の粒径より小さいトナーである微粉を、有機溶媒相中に所定量混合した実施例1乃至3のトナーは、微粉を過剰量加えた比較例1のトナー、及び上述の分級工程により除去された所定の粒径より大きいトナーである粗粉を加えた比較例2のトナーに比べて、特に低温定着性が優れていた。また、実施例1乃至3のトナーは、微粉を有機溶媒中に所定量混合することで、特に定着性を阻害することなく、画像濃度、画像粒状性・鮮鋭性、地汚れ、文字部白抜け、及びトナー流動性については、比較例1、2のトナーと比べて総合的に優れた結果を示すことが確認された。更には、実施例3においては、微粉を再利用した実施例1のトナーの分級行程により除去された微粉を再度、再利用可能であることが確認された。
実施形態及び実施例によれば、所定外のトナーのうち微粉を材料として再利用に供することにより、クリーニング性に優れ、且つ、高品質画像であるトナーの製造方法を提供することが可能となる。また、トナーとして用いることができなかった微粉を再利用することができるため、トナー製造上の歩留まりを向上させることも可能となる。このトナー歩留まりの向上は、トナー製造に伴う廃棄物の減少を意味するところであり、本実施形態及び本実施例のトナーの製造方法は、自然環境の保護に配慮された方法である。
以上、本発明の好ましい実施形態及び実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。