JP2008138862A - 動圧発生部の形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】動圧発生部を高精度に形成すると共に、製造コストの高騰を招くことなく動圧発生部の量産性向上を図る。
【解決手段】回転可能に支持(保持)される素材1を、光硬化性樹脂2の液面2aに平行な軸を中心として回転させる。これにより、素材表面1aの、液面2aより上に位置する領域を、液状の光硬化性樹脂2で被覆する。これと同時に、素材1の表面1aを被覆する光硬化性樹脂2(被覆部2b)に対してレーザ光Lを照射する。詳細には、素材1の回転に同期して、形成すべき動圧発生部の描画パターンに応じて、照射のON・OFFを適宜切換えつつ、素材1の表面1a上をその回転軸方向に沿ってレーザ光Lで走査する。これにより、素材1の表面1aに動圧発生部を形成する。
【選択図】図3
【解決手段】回転可能に支持(保持)される素材1を、光硬化性樹脂2の液面2aに平行な軸を中心として回転させる。これにより、素材表面1aの、液面2aより上に位置する領域を、液状の光硬化性樹脂2で被覆する。これと同時に、素材1の表面1aを被覆する光硬化性樹脂2(被覆部2b)に対してレーザ光Lを照射する。詳細には、素材1の回転に同期して、形成すべき動圧発生部の描画パターンに応じて、照射のON・OFFを適宜切換えつつ、素材1の表面1a上をその回転軸方向に沿ってレーザ光Lで走査する。これにより、素材1の表面1aに動圧発生部を形成する。
【選択図】図3
Description
本発明は、動圧軸受装置の動圧発生部を形成するための方法に関する。
動圧軸受装置は、軸受部材と、軸受部材の内周に挿入した軸部材との相対回転により軸受隙間に流体の動圧作用を発生させ、これにより軸部材を非接触支持する軸受装置である。この動圧軸受装置は、高速回転、高回転精度、低騒音等の特徴を備えるものであり、情報機器をはじめ種々の電気機器に搭載されるモータ用の軸受装置として使用される。より具体的には、HDD等の磁気ディスク装置、CD−ROM、CD−R/RW、DVD−ROM/RAM等の光ディスク装置、MD、MO等の光磁気ディスク装置等におけるディスクドライブのスピンドルモータ用の軸受装置として、あるいはレーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータ、プロジェクタのカラーホイールモータ、ファンモータなどのモータ用軸受装置として好適に使用される。
上記動圧軸受装置の一例として、ラジアル軸受隙間に生じる流体の動圧作用で、軸部材をラジアル方向に非接触支持するものを挙げることができる。この種の動圧作用は、例えばラジアル軸受隙間を形成する軸部材の外周に、複数の動圧発生用の溝を配列してなる動圧発生部を形成することで得ることができる。
この動圧発生部の形成方法としては、例えば転写パターンを有する印刷版に接触している軸体を一回転させて、軸体の被腐食部以外の箇所に耐食性のインクを供給(印刷)する工程と、被腐食部を腐食液で腐食して動圧発生用の溝に形成する工程と、軸体から耐食性のインクを除去する行程とを経て、軸体に動圧発生用の溝を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
また、他の動圧発生部の形成手段として、例えば軸部材を回転させながら、インクジェットヘッドのノズルから吐出された微量インクを軸部材の外周面に着弾あるいは滴下供給し、供給された微量インクに紫外線等の光を照射しながら、当該インクの硬化を軸部材の円周方向に徐々に進行させることで、動圧発生部を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
特開平01−309980号公報
特開2005−331100号公報
特許文献1に記載の手段では、印刷の繰り返しに伴い、当該印刷に使用する印刷版が、軸部材との接触、磨耗により消耗する。そのため、印刷版に設けられた動圧発生部に対応する描画パターンが精度低下を生じ、高精度な動圧発生部が形成できないといった問題点があった。
例えば特許文献2に記載の手段によれば、微量インクをノズルから吐出供給し、これを素材表面(軸部材の外周面)に着弾又は滴下することにより、ノズルと素材とを非接触の状態でインクを供給し、印刷することが可能となる。
ところで、上述のインク供給法では、着弾した微量インクの集合体で動圧発生部を形成する。そのため、形成すべき動圧発生部のサイズが小さくなれば、その精度を保つため、供給すべき微量インクのドットサイズを小さくする必要が生じ、当該インクを吐出するノ
ズル開口の小径化が必然的に要求される。しかしながら、ノズル開口の小径化には、供給インクが満たすべき物性(粘性抵抗等)との兼ね合いから限界があり、そのためにノズル内でインク詰まりが生じ易くなる。以上より、この方法では量産性と形成精度の向上を両立して図ることは困難である。
ズル開口の小径化が必然的に要求される。しかしながら、ノズル開口の小径化には、供給インクが満たすべき物性(粘性抵抗等)との兼ね合いから限界があり、そのためにノズル内でインク詰まりが生じ易くなる。以上より、この方法では量産性と形成精度の向上を両立して図ることは困難である。
また、この方法では、ノズルの他に、着弾したインクを硬化させるための硬化部が必要となるが、同時に硬化部からの光がノズルに及ばないよう、遮蔽部の配設やその配置を適宜設定する必要があり、設備が煩雑化する。
以上の事情に鑑み、本発明では、動圧発生部を高精度に形成すると共に、製造コストの高騰を招くことなく動圧発生部の量産性向上を図ることを技術的課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は、軸受隙間に流体の動圧作用を発生させるための動圧発生部の製造方法であって、素材表面を光硬化性樹脂で被覆し、この被覆部のうち形成すべき動圧発生部に対応する箇所をレーザ光の照射で硬化させ、これにより動圧発生部を形成する動圧発生部の形成方法を提供する。
ここで「動圧発生部」は、軸受隙間に流体の動圧作用を発生させることができるのものであれば特にその形態は問わず、例えば複数の溝部(ヘリングボーン溝、スパイラル状溝の何れでもよい。)と、各溝部の間にあってこれを区画形成する凸状の区画部とからなるもの、あるいは、軸受隙間を円周方向の一方または双方にくさび状に縮小させる複数の円弧面を有するもの等が含まれる。
このように、本発明は、未硬化の光硬化性樹脂で素材表面を被覆する点、および被覆した領域のうち、動圧発生部の対応箇所のみをレーザ光で照射することで硬化させることを特徴とするものである。よって、ノズルヘッドのように、動圧発生部の対応箇所に正確に樹脂を供給するための供給手段、あるいはノズルヘッドへの光の遮蔽手段が不要となる。また、インクジェット等を利用して動圧発生部を形成する場合、動圧発生部の形状は、液滴として吐出供給されるインクの素材への付着時形状に依存するが、レーザ光であれば、その照射領域(ビーム径)や走査態様、走査速度などを容易かつ高精度に調整することができる。そのため、他の方法に比べて動圧発生部の形成精度を高めることができる。また、特段の設備変更を行うことなく、動圧発生部の小サイズ化に低コストで対応することが可能となる。もちろん、インク供給のための機構、手段を特に必要としないので、継続使用に伴う磨耗、機能低下を回避することができ、量産性にも優れた動圧発生部の形成手段を提供することができる。
素材表面に光硬化性樹脂を被覆させる手段としては、種々の方法が考えられるが、例えば、素材表面の一部を光硬化性樹脂の液相中に配した状態から素材を回転させることで、素材表面の液相外領域を光硬化性樹脂で被覆し、この被覆部をレーザ光の照射で硬化させる方法が好ましい。
上記手段は、樹脂は液体の状態では一定の粘性抵抗を有し、かつ素材表面との間に所定の表面張力を有する点、およびこれらの力に起因して生じる付着力により、樹脂の液相から排出された素材の表面に液状の樹脂が付いて回る現象に着目してなされたものである。すなわち、本発明者は、液相中にある回転体の表面が液相外に移動する場合、当該表面に付着形成される樹脂被覆部が、動圧発生部の凹凸サイズに適した厚みを有する、との知見に基づき上述の発明を創作するに到った。
すなわち、上述の方法であれば、光硬化性樹脂の液相を用意し、これに素材表面を一部浸漬させたものを回転させると共に、レーザ光を照射することで動圧発生部が形成可能となるため、樹脂の供給機構を非常に簡素化できる。そのため、従来手段のように、供給機
構の高精度化を図ることなく、素材と光硬化性樹脂の選定、あるいは素材の表面処理などで硬化部(樹脂被覆部)の厚みを高精度に設定することができる。
構の高精度化を図ることなく、素材と光硬化性樹脂の選定、あるいは素材の表面処理などで硬化部(樹脂被覆部)の厚みを高精度に設定することができる。
さらに、本発明に係る形成方法であれば、素材を液相中に全て浸漬させるのではなく、その一部を液相中に配した状態で回転させ、回転時、液状樹脂の素材表面への付着力を利用して、素材表面の液相外領域に適度な厚みの被覆部を形成することができる。従って、素材に対しても、特段の高精度な位置決め機構を用いることなく高精度に動圧発生部を形成することができる。加えて、本発明に係る方法であれば、素材の回転でもって、樹脂被覆部の形成と、回転方向へのレーザ光の走査とを兼用させることも可能であるから、レーザ光の走査機構も簡素化することができ、その分低コストで高精度な制御が可能となる。
レーザ光の走査方向は、走査対象となる素材表面の回転方向接線と直交する向きにとるのがよい。例えば走査面が軸状をなす素材の外周面である場合、素材の回転軸方向に沿って走査するのがよい。このようにすれば、レーザ光の直線的な走査と、素材自体の回転との組み合わせにより所望の三次元曲面上に走査することができるので、より低コストのレーザ光走査機構でもって高精度な形成が可能となる。従い、このような硬化手段であれば、素材の外周面上に形成した光硬化性樹脂の被覆部をレーザ光の照射で硬化させて、ラジアル軸受隙間に流体の動圧作用を発生させるための動圧発生部を形成する方法として好適に実施することができる。
また、素材表面に光硬化性樹脂を被覆させる手段として上記以外の手段を採ることも可能である。例えば素材表面のうち平面となる部分を光硬化性樹脂で被覆し、この被覆部をレーザ光の照射で硬化させることで、素材に動圧発生部を形成することも可能である。
このように、素材表面のうち平面となる部分を光硬化性樹脂で被覆するのであれば、回転に伴い素材表面の液相外領域に被覆部を形成する場合と比べて、かかる未硬化の光硬化性樹脂からなる被覆部の形状を維持することが容易となる。そのため、光硬化性樹脂の被覆工程と、被覆部の部分的な硬化工程とを別々に実施することができる。この場合、例えば素材を停止した状態で、あるいは未硬化の光硬化性樹脂からなる被覆部が崩れない程度に素材に運動を付与した状態で、被覆部に対してレーザ光を照射することができ、厚みのばらつきが小さい樹脂硬化部(動圧発生部)を形成することができる。従い、レーザ照射による樹脂の硬化と相まって、形状精度に優れた動圧発生部を安定して量産することができる。
また、この種の動圧発生部の形成手段であれば、素材の平面上に形成した光硬化性樹脂の被覆部をレーザ光の照射で硬化させて、スラスト軸受隙間に流体の動圧作用を発生させるための動圧発生部を形成する方法として好適に実施することができる。
ところで、被覆手段に関わらず、素材表面を被覆する光硬化性樹脂の厚みは、上述の如く、樹脂の粘性や素材との濡れ性等に大きく影響を受ける。そのため、例えば予め表面処理を施した素材に対して上述の方法で動圧発生部を形成するようにすれば、容易に被覆樹脂の厚みを制御することができる。表面処理としては、カップリング剤を用いて行う処理が好ましい。カップリング剤を用いて表面処理を行えば、素材表面と動圧発生部を形成する光硬化性樹脂硬化層との間にカップリング剤からなる被膜が形成される。そのため、樹脂被覆部の厚み調整が可能になると共に、光硬化性樹脂との接着性を高めて、動圧発生部の耐久性(剥れ難さ)を向上させることができる。なお、カップリング剤としてはシラン系が好ましく、シラン系の中でも特に光硬化性樹脂との密着性に優れたメルカプト系がより好ましい。
本発明に係る方法は、上述の如く、素材の外周面や平面に動圧発生部を形成するものであるから、例えば素材を軸部材とすることで、高精度な動圧発生部を有する動圧軸受装置用軸部材を低コストに量産することができる。あるいは、軸部材に限らず、他の部材との間でラジアル軸受隙間あるいはスラスト軸受隙間を形成するものであれば、本発明に係る方法により、高精度な動圧発生部を形成することが可能となる。すなわち、軸受スリーブやハウジング等、相対支持すべき軸部材の外周面や端面と対向して配設される動圧軸受装置の構成部品に対して本発明に係る方法を適用することで、高精度な動圧発生部を有する当該構成部品を低コストに量産することができる。
以上より、本発明によれば、高精度に動圧発生部を形成でき、かつこの動圧発生部の量産性向上を低コストに図ることができる。
以下、本発明の一実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る動圧発生部の形成方法の一例を概念的に示すもので、素材1の表面1aにレーザ光を照射して、表面1aを被覆する光硬化性樹脂2を硬化させ、これにより表面1aに動圧発生部を形成する装置の概要を示している。図1に示すように、この形成装置は、液状の光硬化性樹脂2を貯留する容器4と、容器4中に配設され、素材1を保持、回転させる回転保持部5と、容器4の上方に配設され、レーザ光発振器とレーザ光走査機構とを有するレーザヘッド(図示は省略)とを備える。ここで、レーザ光発振器としては、後述する光硬化性樹脂2の種類(紫外線硬化型、赤外線硬化型、可視光硬化型など)に応じた種類のレーザ光を発振可能なものが使用される。
この実施形態では、素材1は軸状をなし、図2に示すように複数個を連結した状態で治具6を介して回転保持部5に取り付けられる。図1では、複数の素材1を回転軸方向に連
結してなる連結体10を、さらに並列に複数配置した状態で回転保持部5に保持した場合を例示している。
結してなる連結体10を、さらに並列に複数配置した状態で回転保持部5に保持した場合を例示している。
このように、1又は複数の素材1が回転保持部5により保持されている状態では、素材1の表面1a(ここでは外周面)の一部が、容器4内に貯留された光硬化性樹脂2の液面2aより下に位置している。言い換えると、素材1は、その表面1aの一部を、容器4内に貯留された光硬化性樹脂2の液相中に配した状態で保持されている。
光硬化性樹脂2としては、紫外線硬化型や赤外線硬化型の他、可視光硬化型の樹脂も使用することができるが、この中でも低コストでかつ短時間で硬化可能な紫外線硬化タイプが特に好適に使用可能である。ここで、紫外線硬化樹脂としては、例えばラジカル重合系モノマーやラジカル重合系オリゴマー、カチオン重合系モノマーの他、イミドアクリレート、あるいは環状ポリエン化合物やポリチオール化合物に代表されるエン・チオール化合物が挙げられるが、この中でもラジカル重合系モノマーやラジカル重合系オリゴマー、カチオン重合系モノマーを好ましく使用することができる。ラジカル重合系モノマーとしては、例えば単官能、2官能あるいは多官能のアクリレート系モノマーや、メタクリレート系モノマーが使用でき、ラジカル重合系モノマーとしては、例えばウレタンアクリレートや、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、あるいは不飽和ポリエステルなどが使用できる。また、カチオン重合系モノマーとしては、例えば脂環式エポキシ樹脂や、フェノールノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールA系エポキシ樹脂の他、3−エチル−3−(2−エチルへキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、3−エチル−3−{[3−(トリエトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン等のオキセタン樹脂が使用できる。これら紫外線硬化樹脂は、単体で使用する他、2種類以上を混合したものをベース樹脂として使用することもできる。
これらベース樹脂には、ラジカル系光重合開始剤や、カチオン系光重合開始剤等の光重合開始剤を使用することができる。ラジカル系光重合開始剤としては、例えばベンゾフェノンや、オルソベンゾイン安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4‘−メチルジフェニルサルファイド、ベンゾフェノンのアンモニウム塩、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、チオキサントンのアンモニウム塩に代表される水素引抜型の光重合系開始剤が使用でき、あるいはベンゾイン誘導体や、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン、アシルホスフィンオキサイド、モノアシルホスフィンオキサイド、ビスアシルホスフィンオキサイド、アクリルフェニルグリオキシレート、ジエトキシアセトフェノン、チタノセン化合物に代表される分子内開裂型の光重合開始剤が使用できる。また、カチオン系光重合開始剤としては、例えばトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートや、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロフォスフェート、SP−170やSP−150(共に旭電化(株)製)、FC−508やFC−512(共に3Mカンパニー社製)、UVE−1014(ゼネラルエレクトリックカンパニー社製)に例示されるポリアリールスルホニウム塩、Uvacure1590やUvacure1591(共にダイセル・ユーシービー社製)に例示されるトリアリルスルフォニウムヘキサフルオロフォスフェート塩の混合物、Irg−261(チバ・ガイギー社製)に例示されるメタロセン化合物、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートやP−ノニルフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4,4‘−ジエトキシフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等のポリアリールヨードニウム塩が使用できる。これら光重合開始剤は、1種類で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
なお、上記構成の紫外線硬化樹脂に、光重合開始材の他、レベリング剤(表面調整剤)を配合したものを使用することも可能である。レベリング剤(表面調整剤)としては、アクリル系、ビニル系、シリコーン系、あるいはフッ素系レベリング剤等、公知のレベリング剤を使用することができる。
また、素材1には、表面1aの改質(光硬化性樹脂2との濡れ性改善)を目的として、予め表面処理を施しておくこともできる。具体的にはカップリング剤を用いて表面処理を施した素材1を好適に使用することができる。素材1が金属製の場合、使用可能なカップリング剤として、例えばシラン系、チタン系、およびアルミ系などを挙げることができる。また、上記例示のうち、シラン系カップリング剤としては、ビニル系、エポキシ系、スチリル系、メタクリロキシ系、アクリロキシ系、アミノ系、ウレイド系、クロロプロピル系、メルカプト系、スルフィド系、およびイソシアネーと系などを挙げることができる。特に、この中でも、メルカプト系は光硬化性樹脂2との密着性に優れるため、またその硬化速度を高める作用があるため、非常に好ましい。
ここで、メルカプト基は、シランカップリング剤を構成するケイ素(Si)原子とアルキル基を介して結合している有機官能基の一種であり、有機材料(ここでは、光硬化性樹脂2)と結合する。メルカプト基は「チオール」と称される場合もある。メルカプト基を有するシランカップリング剤として使用可能なものに、例えば3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製 KBM−803や、東レ・ダウコーニング株式会社製 Z−6062など)、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業株式会社製 KBM−802など)、あるいは3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製 Z−6911など)等がある。
上記構成において、回転可能に支持(保持)される素材1を、回転保持部5により回転させる。ここでは、光硬化性樹脂2の液面2aに平行な軸(連結体10でいえばその連結軸であり、軸状をなす素材1の中心軸に一致している)を中心として回転させる。これにより、図3(b)に示すように、素材1まわりの光硬化性樹脂2が、素材1の回転につれてその表面1aに付いて回る。この結果として、素材表面1aの液相外領域が、図3(a)でいえば、素材表面1aのうち光硬化性樹脂2の液面2aより上に位置する領域が液状の光硬化性樹脂2で被覆される。この場合、被覆部2bの厚みは形成すべき動圧発生部3の厚みあるいはそれ以下の寸法に設定されている。なお、図3(b)に示す被覆部2bの厚みは、実際には素材1の径方向寸法に比べれば僅かであるが、同図では内容理解の容易化のため実際より誇張して描いている。図4や図6に示す動圧発生部3、あるいは後述するが、図10に例示の動圧発生部7についても同様である。
このようにして素材1を回転させるのと同時に、素材1の表面1aを被覆する光硬化性樹脂2(被覆部2b)に対してレーザ光Lを照射する。詳細には、素材1の回転に同期して、形成すべき動圧発生部3の描画パターンに応じて、照射のON・OFFを適宜切換えつつ、素材1の表面1a上をその回転軸方向に沿ってレーザ光Lで走査する。例えば図4でいえば、同図中矢印の方向にレーザ光Lを走査しつつ、斜線領域に対応する間のみレーザ光Lを照射する。この実施形態では、図3(b)あるいは図4に示すように、素材表面1aのうち、液面2aから最も離れた位置(最頂部)にレーザ光Lを照射する。
これにより、照射領域の光硬化性樹脂2が硬化し、照射領域の回転方向前方に、レーザ光Lの描画パターンに対応する領域、すなわち動圧発生部3が順次形成されていく。この操作を少なくとも照射開始から一回転の間行うことで、光硬化性樹脂2を硬化させてなる動圧発生部3が表面1aの全周にわたって形成される。図4に示す動圧発生部3はその一例であり、光硬化性樹脂2を硬化してなる丘部3aと、回転方向に隣接する丘部3a、3aの間に設けられる動圧発生用の溝としての溝部3bとを交互に配列した形状をなす。
このように、素材表面1aを液状の光硬化性樹脂2で被覆し、被覆した領域のうち、動圧発生部3の対応箇所のみをレーザ光Lで照射して硬化させることで、例えばノズルヘッドのように、動圧発生部3の対応箇所に正確に光硬化性樹脂2を供給するための供給手段、あるいはノズルヘッドへの光の遮蔽手段が不要となる。また、レーザ光Lを使用することで、その照射領域(ビーム径)や走査態様、走査速度などを容易かつ高精度に調整することができる。そのため、動圧発生部3の形成精度を高く保ちつつも、特段の設備変更を行うことなく、動圧発生部3の小サイズ化に低コストで対応することが可能となる。
また、この実施形態では、回転可能に支持(保持)される素材1を回転させることで、素材表面1aの、液面2aより上に位置する領域を液状の光硬化性樹脂2で被覆し、この被覆部2bが形成された領域に対してレーザ光Lを照射し、硬化させるようにした。そのため、この方法によれば、光硬化性樹脂2の供給機構の高精度化を図る必要はなく、素材1と樹脂2の選定、処理などで被覆部2bの厚みを高精度に設定することができる。
具体的には、上述の手段は、素材表面1aの一部を液相中に配した状態から素材1を回転させ、回転時、液状樹脂の素材表面への付着力を利用して、素材表面に適度な厚みの被覆部2bを形成するものである。そのため、被覆部2bの厚みは、例えば光硬化性樹脂2の物性(粘性抵抗など)、あるいは素材表面1aの表面性状(樹脂2との濡れ性など)を適宜調整することで高精度に管理可能となる。従って、特段の高度な位置決め機構を用いなくても、レーザ光Lの走査態様をはじめ、素材表面1aの処理、光硬化性樹脂2の組成調整等でもって、高精度に動圧発生部3を形成することができる。加えて、上述の方法(形成装置)であれば、素材1の回転機構(回転保持部5)が、被覆部2bの形成機構と、回転方向へのレーザ光Lの回転方向への走査機構とを兼ねることになるため、レーザ光Lの走査機構も簡素化することができ、その分低コストで高精度な制御が可能となる。
また、この実施形態では、レーザ光Lの走査を、素材表面1aの回転軸方向に沿って行うようにしたので、レーザ光Lの直線的な走査機構と、素材1の回転機構(回転保持部5)との組み合わせにより、素材表面1a上を所望の曲面パターンで高精度に走査可能となる。従って、より低コストのレーザ光走査機構でもって動圧発生部3を高精度に形成することができる。
特に、この実施形態のように、丘部3aと、回転方向に隣接する丘部3a、3aの間に設けられる動圧発生用の溝としての溝部3bとを交互に配列した動圧発生部3を形成する場合に、本発明は有効となる。すなわち、既知の手段、例えばインクジェット等を利用した手段であれば、インクを素材表面に向けて吐出供給する特性上、どうしても丘部3aのような鋭角なエッジを有する硬化部を形成するのには限界があった。これに対して、本発明のように、素材表面に光硬化性樹脂を被覆し、かつ、この被覆部をレーザ照射で局所的に硬化させていく手法を用いれば、レーザ光の照射領域に倣って、エッジを有する丘部3aを形成することができる。これにより、流体動圧を効果的に発生させることができ、動圧発生部本来の機能を十分に発揮することができる。
また、この実施形態では、素材表面1aのうち、液面2aから最も離れた位置に、言い換えると、円筒状をなす表面1aの最頂部にレーザ光Lを走査および照射するようにした。そのため、素材1の回転に伴い表面1aの液相外領域に形成される被覆部2bの厚みを安定させることができ、非常にばらつきの少ない高精度な動圧発生部3の量産が可能となる。
また、この実施形態のように、樹脂硬化部(図4で示す丘部3a)は動圧発生部3の凹凸程度の厚み寸法で済み、かつ紫外線硬化樹脂と紫外線レーザとの組み合わせであれば、実質的にレーザ光Lの照射とほぼ同時に、あるいは非常に短時間で硬化可能であるため、素材1を1回転させる間に動圧発生部3の形成が可能となる。なお、動圧発生部3(の丘部3a)に必要な物理的特性を改善する目的で、炭素繊維をはじめとしてガラス繊維や金属繊維、ウィスカ等の繊維状添加物やカーボンブラックやセラミック、金属等の粉体を上述の光硬化性樹脂に添加することができる。もちろんPTFE等の樹脂材料からなる粉粒体も離型剤として添加可能である。後述するスラスト動圧発生用の動圧発生部7に関しても同様である。
併せて、この実施形態では、複数の素材1を軸方向に連結した状態で上述の作業を行うことで、図5に示すように、外周に動圧発生部3を形成した複数の素材1が軸方向に連結した状態で得られる。レーザ光Lの走査を素材1の回転軸方向に沿って行う場合、走査のストロークを大きくとるだけで、複数個の素材1に対して動圧発生部3の形成(光硬化性樹脂2の硬化)をまとめて行うことができる。そのため、動圧発生部3の形成速度をより一層高めて、さらなる製造コストの低減化を図ることが可能となる。
なお、上記実施形態では、動圧発生部3を形成すべき素材1の表面1aに、動圧発生部3の丘部3aとなる凸状の硬化部21のみを形成し、相対的に凹部となる溝部3bを、素材1の表面1aと凸状硬化部21の側面とで構成した場合を例示したが、これに限る必要はない。丘部3aと素材1との剥離強度をより高めるのであれば、例えば図6(b)に示すように、丘部3aだけでなく溝部3bも光硬化性樹脂2で構成することもできる。この場合、まず素材1の回転に伴い層状の硬化部22を形成し、その後の回転時、層状の硬化部22上に丘部3aをなす凸状の硬化部21を形成するようにすればよい。これにより、層状硬化部22の表面22aと、これを挟持する凸状硬化部21の側面とで溝部3bが形成される。
また、上記実施形態では、レーザ光Lの照射に際し、レーザ走査機構を工夫する等して、焦点が一致するようレーザ光Lを直線的に走査および照射する例を示したが、これに限る必要はない。照射位置がぶれないのであれば、レーザ光発振器自体を軸方向にスライドさせるように構成しても構わない。また、レーザヘッドは、1つでもよく、あるいは並列配置する素材1(連結体10)の数に合わせて複数配置することも可能である。
また、動圧発生部3の形成にかかる回転数を1回転に限る必要はない。形成すべき動圧発生部3の形状(例えば既述の図6(b)の形状)に合わせて、あるいは使用する光硬化性樹脂2の硬化速度との兼ね合いから、複数回転の間に動圧発生部3を形成するようにしてもよい。
図7は、上述の方法でその外周に動圧発生部3を形成した素材1を動圧軸受装置用の軸部材として使用した場合の使用形態例を示している。図7(a)は、外周に形成した動圧発生部3を、スリーブ状部材17の内周面17aと対向させると共に、軸部材(素材)1の一端面を半球面状とし、この半球面1bを対向するスラストプレート部18の端面18aに当接させた構成の動圧軸受装置11を例示している。この場合、軸部材1の回転に伴い、軸受内部空間の潤滑油が、外周面(表面)1aに形成された溝部3bにより、外周面1aと内周面17aとの間に形成されるラジアル軸受隙間に引き込まれ、この隙間における流体圧が上昇する。このような動圧発生部3(溝部3b)の動圧作用によって、軸部材1をラジアル方向に非接触支持するラジアル軸受部R1、R2がラジアル軸受隙間に形成される。同時に、軸部材の一端に形成された半球面1bが、これに対向するスラストプレート部18の一端面18aにより接触支持(ピボット支持)され、これにより両面1b、18a間に、軸部材1をスラスト方向に回転自在に支持するスラスト軸受部Tが形成される。
また、図7(b)は、外周に形成した動圧発生部3を、スリーブ状部材17の内周面17aに対向させると共に、軸部材1にフランジ部1cを設け、フランジ部1cの一端面1dを、スリーブ状部材17の一端面17bと対向させ、かつフランジ部1cの他端面1eをスラストプレート部18の端面18aとそれぞれ対向させた構成の動圧軸受装置12を例示している。この場合、軸部材1の回転に伴い、外周面1aと内周面17aとの間のラジアル軸受隙間に、動圧発生部3の動圧作用により、軸部材1をラジアル方向に非接触支持するラジアル軸受部R1、R2が形成される点は、図7(a)に示す動圧軸受装置11の場合と同様である。スラスト方向に関しては、例えば、互いに対向する一端面1dと一端面17bとのうち何れか一方に、潤滑油の動圧作用を生じるための動圧発生部(図示は省略)が形成される。互いに対向する他端面1eと端面18aについても同様である。この構成において、軸部材1の回転に伴い、一方の両面1d、17b間、および他方の両面1e、18a間に潤滑油の動圧作用が生じ、これにより、軸部材1を双方のスラスト方向に非接触支持するスラスト軸受部T1、T2が形成される。なお、これらスラスト軸受隙間(一方の両面1d、17b間、および他方の両面1e、18a間など)に動圧作用を生じるためのスラスト動圧発生部についても、既述のラジアル動圧発生部3と同様、表面を被覆した未硬化の光硬化性樹脂2にレーザ光Lを照射して硬化させる、本発明の形成方法を適用することができる。
また、この場合、動圧発生部(スラスト動圧発生部)の形成は、以下に例示の手順で実施することが可能である。以下、フランジ部1cの他端面1eに、図8に示す形状の動圧発生部7を形成する場合を例にとり、素材の平面部にスラスト動圧発生部を形成する場合を説明する。
まず、図9(a)に示すように、フランジ部1cの他端面1e上に、液状の光硬化性樹脂からなる膜状の被覆部2bを形成する。ここで、被覆部2bの形成には、スプレーコーティング法やディップコーティング法、スピンコーティング法などの種々の被膜形成手段を用いることができる。また、素材(フランジ部1c)の形状、あるいは形成すべき動圧発生部7の形状を考慮した場合、回転に伴い生じる遠心力を利用して被覆部2bを形成可能なスピンコーティング法が好適に使用可能である。かかる方法によれば、例えば下端面1eの中央に滴下した液状の光硬化性樹脂をフランジ部1cの回転に伴う遠心力で同心円状に拡げて、他端面1eを覆う円状の被覆部2b(図8中1点鎖線で示す領域)が形成されるので、均一な厚みの被覆部2bを得ることができる。
次に、図9(b)に示すように、他端面1e上に形成した被覆部2bにレーザ光Lを局所的に照射し、当該照射領域を硬化させる。この照射作業を、形成すべき動圧発生部7の形状パターンに応じて、照射のON・OFFを適宜切換えつつ、照射領域を移動させながら継続実施することで、所望の形状を有する硬化部、ここでは図9(c)に示す複数の丘部7a、7bを形成する。ここで、レーザ光Lの照射領域の移動は、例えば素材(フランジ部1c)を停止させた状態で、レーザ光Lの照射部をその走査機構により走査することで行うことができる。あるいは、図10に示すように、フランジ部1cをその中心軸まわりに回転させつつ、レーザ光Lをフランジ部1cの半径方向に沿って走査することで、複雑な走査を要することなく、動圧発生部7の硬化形成を実施することができる。
そして、丘部7aの形成後、図9(d)に示すように、未硬化の状態で他端面1e上に残存する光硬化性樹脂の被覆部2bを除去することで、丘部7a、7aの間に動圧発生用の溝部7bを配列した動圧発生部7が完成する。なお、この図示例では、環状の丘部7cが、渦状に伸びる複数の丘部7aとその半径方向内側でつながって形成されているものが例示されている。
なお、レーザ光Lの照射による硬化時まで、被覆部2bの形状をなるべく崩さず維持するために、丘部7aの硬化形成前に被覆部2b全体に光を照射して、その形状を維持できる程度に被覆部2bを硬化させておくことも可能である。この場合、丘部7aの硬化形成後に、被覆部2bのうち丘部7aを除く部分を除去できる程度に硬化させておくのが好ましい。
また、以上に例示の方法で形成されたラジアル用の動圧発生部3やスラスト用の動圧発生部7を備えた動圧軸受装置の、より実施に適した構成として、例えば図11に示す動圧軸受装置13を挙げることができる。同図における動圧軸受装置13は、必要とする潤滑油を軸受内部に確保するため、例えばスリーブ状部材17を焼結金属製とし、かつこのスリーブ状部材17を含め軸受内部空間に潤滑油を保持するため、スリーブ状部材17の外周にハウジング部19を配置し、ハウジング部19の一端をスラストプレート部18により閉口した構成をなす。また、この実施形態では、使用時あるいは輸送時等の温度変化を考慮して、ハウジング部19の他端側にシール部20を配設し、シール部20の内周面20aとこの面に対向する軸部材1の外周面1aとの間に、バッファ機能とオイル漏れ防止機構を兼ねたシール空間Sを形成している。これ以外の構成については、図7(b)に例示の動圧軸受装置12と同様であるので、その説明を省略する。
また、実施に即した構成を考えた場合、各構成部品の一体化が考えられる。これは、部品点数を削減して、各部品間の組立て工程数を低減することで、組立て時の精度低下を極力小さく抑え、かつ製造コストを低減する目的で行われる。図12はその一例を示すもので、同図に示す動圧軸受装置14は、主にスリーブ状部材17とハウジング部19とを一体化した点で、図11に示す動圧軸受装置13と構成を異にする。この場合、動圧軸受装置14は内周を異径形状とする筒状部材27を備える。この筒状部材27は、内周面17aに対応する小径面27aの軸方向両端に、小径面27aより大径の第一大径面27b、第二大径面27cをそれぞれ設けた構成をなす。第一大径面27bにスラストプレート部18を固定することで、筒状部材27の一端側を閉口すると共に、シール部20を第二大径面27cに固定することで筒状部材27の他端側を閉口している。
また、この図示例では、スラストプレート部18の一端側(端面18aの側)から筒状の突出部18bが延びており、この突出部18bの端面18b1を、小径面27aと第一大径面27bとの間に段を形成する端面27dに当接させた状態でスラストプレート部18を固定している。このように、スラストプレート部18自体に位置決め部を設けることで、スラスト軸受部T1、T2のスラスト軸受隙間の幅寸法の総和が高精度に管理可能としている。
もちろん、構成部品の一体化は、スリーブ状部材17とハウジング部19との間に限られる訳ではない。例えば、ハウジング部19とスラストプレート部18、ハウジング部19とシール部20との間で一体化した構成を採ることも可能である。
さらに別の観点から動圧軸受装置の製品化(実施)を考えた場合、例えば図13に示す構成を採ることも可能である。同図に示す動圧軸受装置15は、主にハウジング部19の外周にシール空間Sを有する点で、既述の動圧軸受装置13、14と構成を異にしている。具体的には、軸部材1の他端側(フランジ部1cとは反対の側)には、スリーブ状部材17やハウジング部19を覆うハブ部30が設けられる。このハブ部30は、円盤部30aと、円盤部30aの外周縁から下方に延びる側壁部30bとを有し、側壁部30bの内周面30b1と、この面に対向するハウジング部19の外周面19bとの間に、シール空間Sを形成している。また、この実施形態では、スラスト軸受部の一方(スラスト軸受部T2)が、ハウジング部19の上端面19aとこの面に対向するハブ部30(円盤部30a)の下端面30a1との間に形成されている。
このように、シール空間Sをハウジング部19の外径側に移すことで、動圧軸受装置15を薄型化することができ、これを組み込んで使用する情報機器の最近の小型化、薄肉化にも対応することが可能となる。
また、以上の実施形態では、動圧発生部を何れも回転側(軸部材1あるいはフランジ部1cの側)に設けた場合を説明したが、その一部あるいは全てを固定側に設けることも可能である。具体的には、軸部材1とラジアル方向に対向するスリーブ状部材17の内周面17aや筒状部材27aの小径面27aのうち、1ヶ所以上に既述の動圧発生部3を設けることができる。また、フランジ部1cとスラスト方向に対向するスリーブ状部材17の一端面17bやスラストプレート部18の端面18a(ハウジング19と一体化した場合にはハウジングの内底面)、あるいは図13に示すハウジング部19の上端面19aや、上端面19aに対向するハブ部30(円盤部30a)の下端面30a1のうち、1ヶ所以上に既述の動圧発生部7を設けることもできる。もちろん、これら動圧軸受装置11〜15を構成する部品に動圧発生部3、7を形成するに際し、本発明に係る方法を適用することで、高精度な動圧発生部を低コストに量産することが可能となる。
なお、以上の実施形態では、軸部材1が回転して、それをスリーブ状部材17などで非接触支持する構成を説明したが、これとは逆に、スリーブ状部材17の側が回転して、それを軸部材1の側で支持する構成に対しても本発明を適用することが可能である。
また、以上の説明では、動圧軸受装置11〜15の内部に充満し、ラジアル軸受隙間やスラスト軸受隙間に動圧作用を発生させるための流体として潤滑油を例示したが、これ以外にも動圧作用を発生させることが可能な限りにおいて、例えば空気等の気体や、磁性流体等の流動性を有する潤滑剤、あるいは潤滑グリース等を使用することもできる。
本発明の有用性を確認するため、素材の表面を光硬化性樹脂で被覆し、この被覆部にレーザ光を照射することで動圧発生部を形成し、その形成性について評価を行った。以下に、本形成方法の手順を示す。ここで、光硬化性樹脂として、サンユレック(株)製のRL−4868を使用した。また、レーザ光として、ビーム径を0.1mmに収束したArレーザ光(出力:500mW、波長:368nm)を使用した。このレーザ光を、ガルバノミラーとfθレンズとからなるレーザ光走査機構を備えた光造形装置((株)ディーメック製 SCS−300P ソリッドクリエータ)を一部改造したものを用いて走査および照射を行った。
(1)まず、素材としてステンレス(SUS304)製の軸状体を用意する。
(2)次に、手順(1)で用意した素材を、シランカップリング剤(信越化学工業(株)製 KBM−803)を1mass%加えたIPA溶液中に浸漬し、その後、50℃のデシケータで1時間乾燥させる。
(3)手順(2)でシランカップリング処理を表面に施した複数の素材を、図2に示すように軸方向に連結して、かつ図1に示すように、素材の表面下部が光硬化性樹脂の液面下に位置するよう、治具を介して保持する。
(4)手順(3)で所定位置に保持された素材を、0.5rpmで回転させながら、素材の表面上部(頂部)にレーザ光を照射し、照射領域にある光硬化性樹脂を硬化させる。具体的には、形成すべき動圧溝パターンに即した走査パターン(照射パターン)で、素材表面上をその軸方向に沿って走査することで、素材表面に動圧発生部を形成する。
(2)次に、手順(1)で用意した素材を、シランカップリング剤(信越化学工業(株)製 KBM−803)を1mass%加えたIPA溶液中に浸漬し、その後、50℃のデシケータで1時間乾燥させる。
(3)手順(2)でシランカップリング処理を表面に施した複数の素材を、図2に示すように軸方向に連結して、かつ図1に示すように、素材の表面下部が光硬化性樹脂の液面下に位置するよう、治具を介して保持する。
(4)手順(3)で所定位置に保持された素材を、0.5rpmで回転させながら、素材の表面上部(頂部)にレーザ光を照射し、照射領域にある光硬化性樹脂を硬化させる。具体的には、形成すべき動圧溝パターンに即した走査パターン(照射パターン)で、素材表面上をその軸方向に沿って走査することで、素材表面に動圧発生部を形成する。
上述の方法で形成を行った結果、動圧発生部として実用に足る精度を有する厚み10μmのへリングボーン形状の動圧溝パターンを素材表面に形成することができた。
1 素材
1a 表面
2 光硬化性樹脂
2a 液面
2b 被覆部
3 動圧発生部(ラジアル)
4 容器
5 回転保持部
7 動圧発生部(スラスト)
10 連結体
11、12、13、14、15 動圧軸受装置
21、22 硬化部
L レーザ光
S シール空間
R1、R2 ラジアル軸受部
T、T1、T2 スラスト軸受部
1a 表面
2 光硬化性樹脂
2a 液面
2b 被覆部
3 動圧発生部(ラジアル)
4 容器
5 回転保持部
7 動圧発生部(スラスト)
10 連結体
11、12、13、14、15 動圧軸受装置
21、22 硬化部
L レーザ光
S シール空間
R1、R2 ラジアル軸受部
T、T1、T2 スラスト軸受部
Claims (10)
- 軸受隙間に流体の動圧作用を発生させるための動圧発生部の形成方法であって、
素材表面を光硬化性樹脂で被覆し、この被覆部のうち形成すべき動圧発生部に対応する箇所をレーザ光の照射で硬化させ、これにより動圧発生部を形成する動圧発生部の形成方法。 - 素材表面の一部を光硬化性樹脂の液相中に配した状態から素材を回転させることで、素材表面の液相外領域を光硬化性樹脂で被覆し、この被覆部をレーザ光の照射で硬化させる請求項1記載の動圧発生部の形成方法。
- 素材の外周面上に形成した光硬化性樹脂の被覆部をレーザ光の照射で硬化させて、ラジアル軸受隙間に流体の動圧作用を発生させるための動圧発生部を形成する請求項2記載の動圧発生部の形成方法。
- 素材表面上をその回転軸方向に沿ってレーザ光で走査する請求項2記載の動圧発生部の形成方法。
- 素材表面のうち平面となる部分を光硬化性樹脂で被覆し、この被覆部をレーザ光の照射で硬化させる請求項1記載の動圧発生部の形成方法。
- 素材の平面上に形成した光硬化性樹脂の被覆部をレーザ光の照射で硬化させて、スラスト軸受隙間に流体の動圧作用を発生させるための動圧発生部を形成する請求項5記載の動圧発生部の形成方法。
- 表面処理が施された素材に対して動圧発生部を形成する請求項1記載の動圧発生部の形成方法。
- 表面処理がカップリング剤を用いてなされた請求項7記載の動圧発生部の形成方法。
- 請求項1〜8の何れか記載の方法により形成された動圧発生部を有する動圧軸受装置用軸部材。
- 請求項1〜8の何れか記載の方法により形成された動圧発生部を有する動圧軸受装置の構成部品。
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JP2007122669A JP2008138862A (ja) | 2006-11-10 | 2007-05-07 | 動圧発生部の形成方法 |
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CN117506142A (zh) * | 2024-01-08 | 2024-02-06 | 浙江珏芯微电子有限公司 | 一种杜瓦薄壁冷指精密装配与焊接装置及其制备方法 |
-
2007
- 2007-05-07 JP JP2007122669A patent/JP2008138862A/ja not_active Withdrawn
Cited By (2)
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CN117506142B (zh) * | 2024-01-08 | 2024-04-26 | 浙江珏芯微电子有限公司 | 一种杜瓦薄壁冷指精密装配与焊接装置及其制备方法 |
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