JP2008138720A - 車輪用転がり軸受装置 - Google Patents

Abstract

【課題】外輪の一端側開口部の内周面とカバー部材の筒部との嵌合部分に対する隙間の発生を防止することができる車輪用転がり軸受装置を提供する。
【解決手段】転がり軸受２１の外輪２２の一端側開口部に嵌込まれるカバー部材４０は、蓋部４２とこの蓋部４２の外周縁から軸方向に突出された筒部４３とを一体に有する金属製のカバー本体４１と、外装塗料層４５とを備える。外輪２２の一端側開口部にカバー部材４０が嵌込まれる前の状態において、外装塗料層４５のうち、少なくともカバー本体４１の筒部４３に対応する筒部塗料層４７の厚さ寸法ｔは、外輪２２の開口部内周面の切削加工目２７の谷部２８から山部２９までの高さ寸法ｈよりも大きく設定され、筒部塗料層の外径寸法Ａは、外輪２２の開口部内周面の切削加工目２７の山部２９の内径寸法Ｂよりも大きく設定されいる。
【選択図】図２

Description

この発明は、車輪が取り付けられるハブホイールのハブ軸の外周に転がり軸受が組み付けられた車輪用転がり軸受装置に関する。

従来、この種の車輪用転がり軸受装置においては、ハブホイールのハブ軸の外周に組み付けられた転がり軸受の内部を泥水や塵埃から保護するために、転がり軸受の外輪の一端側開口部に金属製のカバー部材が嵌込まれて塞がれたものが知られている。
また、カバー部材は、蓋部とこの蓋部の外周縁から軸方向に突出された筒部とを一体に有し、筒部の外径寸法は、外輪の一端側開口部の内径寸法よりも僅かに大きく設定されている。そして、外輪の一端側開口部にカバー部材がその筒部において嵌合（圧入）されて取り付けられるのが一般的であった。
また、車輪用転がり軸受装置において、転がり軸受の外輪の一端側開口部がカバー部材によって塞がれたものとしては、例えば、特許文献１に開示されている。
特開昭６３−１７６７６１号公報

ところで、外輪の一端側開口部の内周面（切削面）には、旋盤等の切削加工による切削加工目（リード目）が存在するため、外輪の一端側開口部の内周面とカバー部材の筒部との嵌合部分においては隙間が発生しやすく、その嵌合部分の隙間から泥水が不測に浸入する場合がある。
また、長期間の使用によって金属製のカバー部材が発錆すると、その発錆によって外輪の一端側開口部とカバー部材の筒部の外周面との嵌合部分に隙間が発生し、その隙間から泥水が浸入する場合もある。
また、カバー部材の外表面を塗装し、その塗膜によって発錆を防止したものがあるが、これにおいても、外輪の一端側開口部の内周面（切削加工目を有する切削面）とカバー部材の筒部との嵌合部分に隙間が発生しやすく、その嵌合部分の隙間から泥水が不測に浸入する場合がある。

この発明の目的は、前記問題点に鑑み、外輪の一端側開口部の内周面とカバー部材の筒部との嵌合部分に対する隙間の発生を防止することができる車輪用転がり軸受装置を提供することである。

前記目的を達成するために、この発明の請求項１に係る車輪用転がり軸受装置は、車輪が取り付けられるハブホイールのハブ軸の外周に転がり軸受が組み付けられ、前記転がり軸受の外輪の一端側開口部にカバー部材が嵌込まれた車輪用転がり軸受装置であって、
前記カバー部材は、蓋部とこの蓋部の外周縁から軸方向に突出された筒部とを一体に有する金属製のカバー本体と、このカバー本体の蓋部及び筒部の外表面を覆う外装塗料層とを備え、
前記外輪の一端側開口部にカバー部材が嵌込まれる前の状態において、前記外装塗料層のうち、少なくともカバー本体の筒部に対応する筒部塗料層の厚さ寸法は、前記外輪の開口部内周面の切削加工目の谷部から山部までの高さ寸法よりも大きく設定され、
前記筒部塗料層の外径寸法は、前記外輪の開口部内周面の切削加工目の山部の内径寸法よりも大きく設定されいることを特徴とする。

前記構成によると、外輪の一端側開口部の内周面にカバー部材がその筒部において嵌込まれて取り付けられる。
この取付状態において、筒部塗料層の外径寸法が外輪の開口部内周面の切削加工目の山部の内径寸法よりも大きく設定されいる分だけ切削加工目の山部が筒部塗料層に食い込む。この食い込みによって、外輪の一端側開口部の内周面（切削面）とカバー部材の筒部との嵌合部分を密閉することができる。このため、前記嵌合部分に対する隙間の発生を良好に防止することができ、防水性に優れる。

請求項２に係る車輪用転がり軸受装置は、請求項１に記載の車輪用転がり軸受装置であって、
外輪の開口部内周面の切削加工目の山部が筒部塗料層の塗料厚さの約１／４〜３／４程度まで食い込むように、カバー本体の筒部の外径寸法及び筒部塗料層の外径寸法が設定されていることを特徴とする。

前記構成によると、筒部塗料層の塗料厚さに若干のバラツキがあったとしても、外輪の開口部内周面の切削加工目の山部が筒部塗料層に確実に食い込むため、より一層密閉性を高めて防水性の向上を図ることができる。

次に、この発明を実施するための最良の形態を実施例にしたがって説明する。

この発明の実施例１を図面にしたがって説明する。
図１はこの発明の実施例１に係る車輪用転がり軸受装置を示す断面図である。図２は外輪の一端側開口部の内周面にカバー部材の筒部が嵌込まれた状態を拡大して示す断面図である。図３は外輪の一端側開口部の内周面の切削加工目とカバー部材の筒部塗料層の関係を示す説明図である。図４は切削加工目の山部が筒部塗料層に食い込んだ状態を示す説明図である。
図１に示すように、車輪用転がり軸受装置（車輪用ハブユニット）１０は、ハブホイール１１と、転がり軸受としての複列のアンギュラ玉軸受２１とを一体状に有してユニット化されている。

図１に示すように、ハブホイール１１は、ハブ軸１４と、ハブ軸１４の一端部寄り外周面に形成されたフランジ１２とを一体に有し、フランジ１２には、ブレーキロータを間に挟んで車輪（従動輪）を取り付けるための複数本のハブボルト１３が所定の配設ピッチ円上に所定角度を隔ててそれぞれ圧入固定されている。
ハブ軸１４の外周には、外輪２２、内輪３０、転動体とての複数の玉３５、３６及び保持器３７、３８を備えた複列のアンギュラ玉軸受２１が組み付けられている。

この実施例１において、ハブ軸１４はフランジ１２側に形成された大径軸部１５と、大径軸部１５よりも適宜に小径でかつ大径軸部１５と段差面をもって連続して形成された小径軸部１７とを一体に有している。そして、大径軸部１５の外周面に、外輪２２の第１の軌道面２３に対応する第１の軌道面３１が形成されている。
さらに、外輪２２の第２の軌道面２４に対応する第２の軌道面３２が外周面に形成された内輪３０がハブ軸１４の小径軸部１７の外周面に嵌込まれた後、小径軸部１７の先端部がかしめられてかしめ部１８が形成されることによって、内輪３０が段差面とかしめ部１８との間に固定されている。

また、外輪２２の第１、第２の両軌道面２３、２４と、ハブ軸１４側の第１、第２の両軌道面３１、３２との間には各複数個の玉３５、３６と、これら各複数個の玉３５、３６をそれぞれ保持する保持器３７、３８が組み付けられる。
また、外輪２２の外周面には、車両の懸架装置（図示しない）に支持された車体側部材（ナックル、又はキャリア）にボルトによって取り付けるための取付フランジ２５が一体に形成されている。

前記したハブホイール１１のハブ軸１４の外周に組み付けられた転がり軸受としてのアンギュラ玉軸受２１の内部を泥水や塵埃から保護するために、図１と図２に示すように、外輪２２の一端側開口部にはカバー部材４０が嵌込まれて塞がれている。
カバー部材４０は、金属製のカバー本体４１と外装塗料層４５とを備えて有蓋筒状に形成されている。
カバー本体４１は、金属板のプレス加工によって形成され、蓋部４２とこの蓋部４２の外周縁から軸方向に突出された筒部４３とを一体に備えている。
外装塗料層４５は、カバー本体４１の蓋部４２及び筒部４３の外表面全面を覆うようにして塗布された蓋部塗料層４６及び筒部塗料層４７を有している。

図３と図４に示すように、外輪２２の一端側開口部にカバー部材４０が嵌込まれる前の状態において、外装塗料層４５の蓋部塗料層４６と筒部塗料層４７のうち、少なくともカバー本体４１の筒部４３に対応する筒部塗料層４７の厚さ寸法ｔは、外輪２２の開口部内周面の切削加工目２７の谷部２８から山部２９までの高さ寸法ｈよりも大きく設定されている。
また、筒部塗料層４７の外径寸法Ａは、外輪２２の開口部内周面の切削加工目２７の山部２９の内径寸法Ｂよりも大きく、谷部２８の内径寸法Ｃよりも寸法αだけ小さく設定されいる。
さらに、カバー本体４１の筒部４３の外径寸法Ｄは、切削加工目２７の山部２９の内径寸法Ｂよりも若干小さく設定されている。

また、この実施例１において、図４に示すように、外輪２２の開口部内周面の切削加工目２７の山部２９が筒部塗料層４７の塗料厚さの約１／４〜３／４程度まで食い込むように、カバー本体４１の筒部４３の外径寸法Ｄ及び筒部塗料層４７の外径寸法Ａが設定されている。

この実施例１において、筒部塗料層４７の厚さ寸法ｔと、切削加工目２７の谷部２８から山部２９までの高さ寸法ｈとは、「ｔ＝１．５ｈ」の関係となるように筒部塗料層４７の厚さ寸法ｔが設定されている。
例えば、切削加工目２７の谷部２８から山部２９までの高さ寸法ｈが３０μｍである場合には、筒部塗料層４７の厚さ寸法ｔが４５μｍに設定される。

この実施例１に係る車輪用転がり軸受装置は上述したように構成される。
したがって、図１に示すように、外輪２２の一端側開口部の内周面（切削面）にカバー部材４０がその筒部４３において嵌込まれて取り付けられる。
この取付状態において、図３と図４に示すように、筒部塗料層４７の外径寸法Ａが外輪２２の開口部内周面の切削加工目２７の山部２９の内径寸法Ｂよりも大きく設定されいる分だけ切削加工目２７の山部２９が筒部塗料層４７に食い込む。この食い込みによって、外輪２２の一端側開口部の内周面（切削面）とカバー部材４０の蓋部４２との嵌合部分を密閉することができる。このため、前記嵌合部分に対する隙間の発生を良好に防止することができ、防水性に優れる。

また、この実施例１においては、外輪２２の開口部内周面の切削加工目２７の山部２９が筒部塗料層４７の塗料厚さの約１／４〜３／４程度まで食い込むように、カバー本体４１の筒部４３の外径寸法Ｄ及び筒部塗料層４７の外径寸法Ａが設定されている。このため、筒部塗料層４７の厚さ寸法（塗料厚さ）ｔに若干のバラツキがあったとしても、外輪２２の開口部内周面の切削加工目２７の山部２９が筒部塗料層４７に確実に食い込むため、より一層密閉性を高めて防水性の向上を図ることができる。

なお、この発明は前記実施例１に限定するものではない。
例えば、前記実施例１においては、車輪用転がり軸受装置（車輪用ハブユニット）１０が従動輪に対応する場合を例示したが、ハブホイールのハブ軸が筒軸状に形成され、そのハブ軸の内孔に車軸（駆動軸）がトルク伝達可能に嵌合される駆動輪用の車輪用転がり軸受装置（車輪用ハブユニット）においてもこの発明を実施することができる。
また、前記実施例１においては、転がり軸受として、複列のアンギュラ玉軸受２１が採用された場合を例示したが、複列の円すいころ軸受を用いてもこの発明を実施可能である。

この発明の実施例１に係る車輪用転がり軸受装置を示す断面図である。 同じく外輪の一端側開口部の内周面にカバー部材の筒部が嵌込まれた状態を拡大して示す断面図である。 同じく外輪の一端側開口部の内周面の切削加工目とカバー部材の筒部塗料層の関係を示す説明図である。 同じく切削加工目の山部が筒部塗料層に食い込んだ状態を示す説明図である。

符号の説明

１０ 車輪用転がり軸受装置（車輪用ハブユニット）
１１ ハブホイール
１２ フランジ
１４ ハブ軸
２１ アンギュラ玉軸受（転がり軸受）
２２ 外輪
２７ 切削加工目
２８ 谷部
２９ 山部
４０ カバー部材
４１ カバー本体
４２ 蓋部
４３ 筒部
４５ 外装塗料層
４７ 筒部塗料層

Claims (2)

1. 車輪が取り付けられるハブホイールのハブ軸の外周に転がり軸受が組み付けられ、前記転がり軸受の外輪の一端側開口部にカバー部材が嵌込まれた車輪用転がり軸受装置であって、
   前記カバー部材は、蓋部とこの蓋部の外周縁から軸方向に突出された筒部とを一体に有する金属製のカバー本体と、このカバー本体の蓋部及び筒部の外表面を覆う外装塗料層とを備え、
   前記外輪の一端側開口部にカバー部材が嵌込まれる前の状態において、前記外装塗料層のうち、少なくともカバー本体の筒部に対応する筒部塗料層の厚さ寸法は、前記外輪の開口部内周面の切削加工目の谷部から山部までの高さ寸法よりも大きく設定され、
   前記筒部塗料層の外径寸法は、前記外輪の開口部内周面の切削加工目の山部の内径寸法よりも大きく設定されいることを特徴とする車輪用転がり軸受装置。
2. 請求項１に記載の車輪用転がり軸受装置であって、
   外輪の開口部内周面の切削加工目の山部が筒部塗料層の塗料厚さの約１／４〜３／４程度まで食い込むように、カバー本体の筒部の外径寸法及び筒部塗料層の外径寸法が設定されていることを特徴とする車輪用転がり軸受装置。

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