JP2008137975A - 水難溶性物質の徐放製剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】 高分子ハイドロゲルを用いて水難溶性薬物を徐放させる新たなシステムを提供すること。
【解決手段】 水難溶性物質の徐放製剤であって、前記水難溶性物質と疎水性基が付加されているゼラチン誘導体から構成されるミセルを含み、前記ミセルが高分子ハイドロゲル中に固定化されていることを特徴とする徐放製剤が開示される。本発明の水難溶性物質の徐放製剤は、疎水性基が付加されているゼラチン誘導体を用意し、前記水難溶性物質と前記ゼラチン誘導体から構成されるミセルを調製し、そして前記ミセルを高分子ハイドロゲル中に固定化する、の各工程を含む方法により製造することができる。本発明の徐放製剤は、水難溶性薬物の可溶化および徐放に有用である。
【選択図】 図3
【解決手段】 水難溶性物質の徐放製剤であって、前記水難溶性物質と疎水性基が付加されているゼラチン誘導体から構成されるミセルを含み、前記ミセルが高分子ハイドロゲル中に固定化されていることを特徴とする徐放製剤が開示される。本発明の水難溶性物質の徐放製剤は、疎水性基が付加されているゼラチン誘導体を用意し、前記水難溶性物質と前記ゼラチン誘導体から構成されるミセルを調製し、そして前記ミセルを高分子ハイドロゲル中に固定化する、の各工程を含む方法により製造することができる。本発明の徐放製剤は、水難溶性薬物の可溶化および徐放に有用である。
【選択図】 図3
Description
本発明は、水難溶性物質の徐放製剤およびその製造方法に関する。
薬理活性に優れた多くの低分子および中分子薬物が知られているが、薬物が水に難溶性である場合には、その投与方法に工夫が必要である。現在、大きく分けて2つの工夫が行われている。1つ目は界面活性剤を利用した水難溶性薬物の水可溶化である。2つ目は薬物の徐放化である。後者に関しては、薬物と同じく水に溶けない合成高分子材料の中に水難溶性薬物を分散、含有させ、その高分子材料の分解にともなう薬物の徐放化が試みられている。しかしながら、この方法は、薬物の徐放性には優れているものの、水不溶性の高分子材料自体に対する体内での炎症反応が激しく、薬物の徐放化担体としての利用が制限されている。
そこで、生体内反応性の低い薬物徐放性担体材料の開発が望まれている。一般に、水不溶性高分子材料のような疎水性表面をもつ材料に対する生体反応は激しく、その表面を親水性化することによって、その反応性を低下できることが知られている。この目的のため、薬物を含有させた水不溶性高分子材料の表面をコーティング処理によって親水性化する試みが行われている。この処理により、材料に対する生体反応はある程度は抑制されるが、完全ではない。
理想的には、例えば、生体反応性の低いハイドロゲルのような担体材料を水溶性材料から作製することが望まれる。しかしながら、材料内に大量の水を含むハイドロゲル内に、水難溶性薬物を均一に分散、含有させ、かつハイドロゲルからこれを徐放化させることは、物理的にきわめて困難である。あるいは、水に混和する有機溶媒中に水難溶性薬物を溶解し、これをハイドロゲル内に強制的に含浸させる方法もあるが、この方法では薬物のハイドロゲル内での分散性、包含および保持性が悪く、薬物の徐放化は期待できない。さらに、薬物を含有した水不溶性高分子からなるマイクロメートルオーダからサブマイクロメートルオーダサイズの粒子をハイドロゲル内に分散させる方法も試みられている。しかしながら、薬物を含有している水不溶性高分子の粒子サイズをサブマイクロメートルオーダーに下げたとしても、その粒子に対する生体反応は、完全には抑えることができず、ハイドロゲルの分解にともなう粒子自身に放出による炎症反応の誘導が生じうる。また、薬物を含む粒子自身がサブミクロンサイズを持っているため、粒子を含むハイドロゲル担体のサイズをサブミクロンオーダーにすることは難しい。このような点から、この徐放システムには使用上の限界がある。そこで、これらの問題を解決するためには、水難溶性薬物をナノメートルオーダーの粒子としてハイドロゲル内に分散、固定、包含させるとともに、ハイドロゲル内から拡散により洩れ出すことなく、ハイドロゲルの分解とともに包含薬物を放出させるシステムの開発が求められている。ナノメートルオーダーレベルの粒子を用いることによって、その粒子を含むサブミクロンサイズのハイドロゲル担体の作製が可能となる。
国際公開WO03/91283には、有機化合物をグラフト鎖として有するゼラチン誘導体および該ゼラチン誘導体を含む高分子ミセルが開示されており、この高分子ミセルに薬剤を担持させることにより、薬剤の徐放性を制御できることが述べられている。しかしながら、高分子ミセル中に担持できる薬物(薬剤)量は少なく、長期間かつ実用的な量の薬物の徐放化を期待することは難しいと考えられる。この文献には、薬物担持高分子ミセルをさらに高分子ハイドロゲル内に組み込み、徐放性担体とすることや、ハイドロゲルの分解性および高分子ミセルの種類によって薬物の徐放性が変化することについては言及されていない。
WO03/91283
本発明の目的は、高分子ハイドロゲルを用いて水難溶性薬物を徐放させる新たなシステムを開発することである。
本発明者らは、水難溶性薬物を疎水性基が付加されているゼラチン誘導体を用いて水可溶化し、次に、この水可溶化薬物(ナノオーダーレベルの大きさをもつ)と水溶性高分子からなるハイドロゲルを作製することにより、水難溶性薬物を徐放させるシステムを構築しうることを見いだした。
すなわち、本発明は、水難溶性物質の徐放製剤であって、前記水難溶性物質と疎水性基が付加されているゼラチン誘導体から構成されるミセルを含み、前記ミセルが高分子ハイドロゲル中に固定化されていることを特徴とする徐放製剤を提供する。
別の観点においては、本発明は、水難溶性物質の徐放製剤の製造方法であって、疎水性基が付加されているゼラチン誘導体を用意し、前記水難溶性物質と前記ゼラチン誘導体から構成されるミセルを調製し、そして前記ミセルを高分子ハイドロゲル中に固定化する、の各工程を含む方法を提供する。
本発明の徐放製剤においては、水難溶性薬物がハイドロゲル内でナノオーダーレベルのサイズで分散、固定包含されているため、薬物徐放担体であるハイドロゲルの大きさや形状が制限されるという問題点を解決することができる。この薬物含有ハイドロゲルを水溶液中に投入したところ、ハイドロゲルの分解とともに薬物が放出され、かつハイドロゲル作製条件を変えることにより、薬物の放出パターンを変化させることが可能となった。本発明のシステムでは、薬物はハイドロゲル内に化学的に固定化されているのではなく、分子間力によって物理的に含有固定化されているため、薬物の生物活性を損なうことがなく、また、生体内でのハイドロゲルの分解の速度を調節することにより、薬物の放出速度を制御することができる。
本発明の徐放製剤は、水難溶性物質と疎水性基が付加されているゼラチン誘導体から構成されるミセルが高分子ハイドロゲル中に固定化されている構成を有する。本明細書において用いる場合、水難溶性とは、25±5℃において5分間ごとに30秒間強く振り混ぜて、30分以内に溶ける度合いと定義した場合、薬物1gまたは1mlを溶解するのに要する水の量が、100ml以上、特に1000ml以上の場合をいう。水難溶性の薬物の例としては、例えば、パクリタキセル、コルヒチン、ビンクリスチンなどの抗癌剤、ラパマイシン、タクロリムスなどの免疫拒絶抑制剤、スタチンなどの高脂血症予防薬、ステロイドなどのホルモン、あるいは、脂溶性の蛍光性診断薬、フェライトなどのMRI試薬、美白剤、UV吸収剤などの脂溶性化粧品成分、酸化チタン、酸化亜鉛などの金属酸化物、ベスタチンなどの免疫系細胞を活性化するような予防薬、あるいは脂溶性の抗原物質などが挙げられる。
疎水性基が付加されているゼラチン誘導体とは、ゼラチン分子に疎水性基を共有結合させて誘導体化したゼラチンを表す。疎水性基としては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ−ε−カプロラクトンなどのポリエステル類、コレステロールやホスファチジルエタノールアミンなどの脂質、アルキル基、ベンゼン環を含む芳香族基、複素芳香族基など、およびこれらの混合物が挙げられる。具体的には、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール及びこれらの共重合体)、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアリルアミン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、生分解性ポリエステル(例えば、ポリ乳酸、ポリε−カプロラクトン、サクシネート系重合体、ポリヒドロキシアルカノエート)、ポリグリコール酸、ポリリンゴ酸、ポリジオキサノンおよび、ポリアミノ酸などの低分子、オリゴマー及び合成高分子およびそれらの誘導体が挙げられる。またこのうち、ポリアミノ酸としてはポリαグルタミン酸、ポリγグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、ポリセリン等の酸性、塩基性、非荷電親水性および疎水性アミノ酸単独重合体及び共重合体が挙げられる。サクシネート系重合体として、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート等が挙げられ、ポリヒドロキシアルカノエートとして、ポリヒドロキシプロピオナート、ポリヒドロキシブチラート、ポリヒドロキシパリラート等が挙げられる。ゼラチンの誘導体化に利用される天然高分子化合物としては、たんぱく質、多糖、核酸などが挙げられ、それらの誘導体、あるいは上記合成高分子化合物との共重合体も含まれる。
ゼラチン分子に付加される疎水性基の分子量は、好ましくは500から30,000、より好ましくは1,000から20,000である。
疎水性基が付加されているゼラチン誘導体は、公知の方法により、疎水性基をゼラチン分子のアミノ基、水酸基、カルボキシル基などの官能基に、直接または二官能性リンカーを用いて共有結合させることにより製造することができる。例えば、ポリ乳酸を適当な溶媒に溶解し、N', N-ジスクシンイミジルカーボネートを加えてポリ乳酸の水酸基末端を活性エステル化する。次に、得られた活性エステル化ポリ乳酸溶液をゼラチンのDMSO溶液に加えて、ゼラチン分子のアミノ基にポリ乳酸をグラフトさせることにより、ポリ乳酸グラフト化ゼラチン誘導体を製造することができる(図1を参照)。誘導体化反応における疎水性基とゼラチンとのモル比や反応条件を適宜選択することにより、ゼラチンへの疎水性基の導入率を調節することができる。
次に、水難溶性物質とゼラチン誘導体から構成されるミセルを製造する。本発明においては、ミセルとは、疎水性基が付加されているゼラチン誘導体が、ゼラチン部分を表層側に、疎水性基部分をコア側にして球状に集まって形成される集合体を意味し、水難溶性物質はこのミセルのコア部分に内包されている。このようなミセルは、国際公開WO03/91283に開示されるようにして製造することができる。例えば、ゼラチン誘導体を有機溶媒中に溶解し、水難溶性物質の有機溶媒溶液とを混合した後、この混合物を水に対して透析することによって製造することができる。あるいは、ゼラチン誘導体の水溶液と水難溶性物質の有機溶媒溶液とを混合し、超音波照射処理することによっても製造することができる。また、有機溶媒中に溶解させた水難溶性物質とゼラチン誘導体との混合物を水中に投入し、あるいは逆に有機溶媒中の混合物に水を投入することによっても、製造することができる。ミセルは水溶液中で安定して分散させることができる。また、凍結乾燥してもよい。
次に、水難溶性物質とゼラチン誘導体から構成されるミセルを高分子ハイドロゲル中に固定化する。ハイドロゲルとは、高分子の架橋構造の内部に水性液体が保持されているゲルをいう。本発明において高分子ハイドロゲルを作製するために使用される高分子は、徐放すべき水難溶性薬物を含むゼラチン誘導体ミセルと物理化学的な相互作用によって複合体を形成することが可能な高分子であって、生体内で加水分解および酸素分解により分解されるか、あるいは、生体のもつ生理活性物質、例えば酵素等の働きによって加水分解される性質を有する高分子である。具体的にはキチン、キトサン、ヒアルロン酸、アルギン酸、デンプン、ペクチン等の多糖類、ゼラチン、コラーゲン、フィブリン、アルブミン等のタンパク質、ポリ−γ−グルタミン酸、ポリ−L−リジン、ポリアルギニンなどのポリアミノ酸、ならびにそれらの誘導体などが挙げられる。また、これらの高分子には、グアニジル基、チオール基、アミノ基、カルボキシル基、硫酸基、リン酸基などの化学官能性基が付加されていてもよく、あるいは、ポリエチレングリコールなどの水溶性高分子基が付加されていてもよい。これらの高分子は化学的に合成してもよく、天然の起源から調製してもよく、微生物を用いた発酵法や遺伝子組換え操作により得られるものであってもよい。
ハイドロゲルを形成するための高分子としては、好ましくはゼラチンが用いられる。ゼラチンは、牛、豚、魚類などを始めとする各種の動物種の皮膚、骨、腱などから採取できるコラーゲンから、アルカリ加水分解、酸加水分解、および酵素分解等の種々の処理によって変性させて得ることができる。遺伝子組換え型コラーゲンの変性体ゼラチンを用いてもよい。また、それらのゼラチンを混合して用いることもできる。
本発明において水難溶性薬物のより優れた徐放性制御効果を得るために、種々の化学的架橋剤を用いて高分子ハイドロゲルを架橋して水不溶性とする。化学的架橋剤としては、例えばグルタルアルデヒド、例えばEDC等の水溶性カルボジイミド、例えばプロピレンオキサイド、ジエポキシ化合物、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、イミダゾール基などの間に化学結合を作る縮合剤を用いることができる。好ましいものは、グルタルアルデヒドである。また、高分子は、ゼラチン誘導体ミセルの構造を不安定にしない限り、熱脱水処理、紫外線、ガンマ線、電子線照射によって化学架橋してもよい。
高分子の架橋度は、所望の含水率、すなわちハイドロゲルの生体吸収性のレベルに応じて適宜選択することができる。高分子としてゼラチンを用いる場合、ハイドロゲルを調製する際のゼラチンと架橋剤の濃度の好ましい範囲は、ゼラチン濃度1〜20w/w%、架橋剤濃度0.01〜1w/w%である。架橋反応条件は特に制限はないが、例えば、0〜40℃、好ましくは25−30℃で、1〜48時間、好ましくは12−24時間で行うことができる。一般に、ゼラチンおよび架橋剤の濃度、架橋時間が増大するとともにハイドロゲルの架橋度は増加し、生体内におけるハイドロゲルの分解が遅くなり、ゼラチン誘導体ミセル中の薬物の放出が遅くなる。
高分子ハイドロゲルの形状は、特に制限はないが、例えば、円柱状、角柱状、シート状、ディスク状、球状、ペースト状とすることができる。円柱状、角柱状、シート状、ディスク状のゼラチンハイドロゲルは、ゼラチン誘導体ミセルとゼラチンとを含む溶液に架橋剤溶液を添加し、所望の形状の鋳型に流し込んで、架橋反応させることにより調製することができる。架橋反応を停止させるには、エタノールアミン、グリシン等のアミノ基を有する低分子物質に接触させるか、あるいは、pH2.5以下の水溶液を添加する。反応に用いられた架橋剤および低分子物質を完全に除去する目的で、得られたゼラチンハイドロゲルは、蒸留水、エタノール、2−プロパノール、アセトン等により洗浄し、製剤調製に供される。
水難溶性物質とゼラチン誘導体から構成されるミセルを含有する高分子ハイドロゲルは適宜、適当な大きさ及び形に切断後凍結乾燥し滅菌して使用することができる。凍結乾燥は、例えば、ゼラチン誘導体ミセル含有高分子ハイドロゲルを蒸留水に入れ、液体窒素中で30分以上、又は−80℃で1時間以上凍結させた後に、凍結乾燥機で1〜3日間乾燥させることにより行うことができる。
本発明のゼラチン誘導体ミセルと高分子ハイドロゲルとの複合体においては、複合体中に取り込まれているゼラチン誘導体ミセルは、高分子ハイドロゲルが生体内で分解されるに従って崩壊し、水難溶性薬物が徐々に放出される。この放出速度は、使用する高分子ハイドロゲルの生体における分解および吸収の程度、ならびに複合体内でのゼラチン誘導体ミセルと高分子ハイドロゲルとの結合の強さの程度および安定性により決定される。高分子ハイドロゲルの生体における分解および吸収の程度は、ハイドロゲル作製時における架橋の程度を調節することにより調節することができる。
本発明の徐放性製剤には、得られるハイドロゲルの安定性や薬物放出の持続性を高めるために、所望により他の成分を加えることもできる。他の成分としては例えばアミノ糖あるいはその高分子量体やキトサンオリゴマー、塩基性アミノ酸あるいはそのオリゴマーや高分子量体、ポリアリルアミン、ポリジエチルアミノエチルアクリルアミド、ポリエチレンイミン等の塩基性高分子等が挙げられる。
ゼラチン誘導体ミセル含有高分子ハイドロゲルは、更に必要に応じて製剤上許容し得る担体(安定化剤、保存剤、可溶化剤、pH調整剤、増粘剤等)と混合することにより、本発明の徐放性製剤を調製することができる。そのような担体としては公知のものが使用できる。さらに徐放効果を調節する各種添加剤を含めることもできる。
本発明の徐放性製剤は、種々の方法により、例えば、経口、経皮、経粘膜、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、輸液注入などの方法により投与することができる。本発明の徐放性製剤の投与量は、治療に必要とされる水難溶性薬物の投与量に応じて、適宜選択することができる。
以下に実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
ポリ乳酸グラフトゼラチンハイドロゲルの調製
等電点(pI) 5のゼラチン1 g(約1.0 x 10-5 mol)をジメチルスルホキシド(DMSO) 30 ml中で、40℃で2日間撹拌し、ゼラチン溶液を得た。以下の表 1に示す通り、ゼラチンに対して様々なモル量比のポリ乳酸(分子量 1000, 5000, 20000の3タイプ)をDMSO 30 mlに溶解し、ポリ乳酸溶液を得た。ポリ乳酸に対して3モル等量のN', N-ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)と4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)をそれぞれDMSO 2.5 mlに溶解した。これらのDSC溶液、DMAP溶液を、順にポリ乳酸溶液に滴下、40℃で6時間撹拌して、ポリ乳酸の水酸基末端を活性エステル化した。得た活性エステル化ポリ乳酸溶液を、ゼラチン溶液に滴下後、室温で24時間撹拌し、ゼラチン分子へのポリ乳酸グラフト反応を行った。反応後、夾雑物を除くため、反応溶液をセルロース透析チューブ(カットオフ分子量:12,000〜14,000、Viskase Companies, Inc.)内に入れ、二回蒸留水(DDW)に対して、48時間、室温で透析した。透析後、チューブ内から得られた溶液を凍結乾燥し、ポリ乳酸グラフトゼラチンを得た。グラフト反応のスキームを図1に示す。
等電点(pI) 5のゼラチン1 g(約1.0 x 10-5 mol)をジメチルスルホキシド(DMSO) 30 ml中で、40℃で2日間撹拌し、ゼラチン溶液を得た。以下の表 1に示す通り、ゼラチンに対して様々なモル量比のポリ乳酸(分子量 1000, 5000, 20000の3タイプ)をDMSO 30 mlに溶解し、ポリ乳酸溶液を得た。ポリ乳酸に対して3モル等量のN', N-ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)と4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)をそれぞれDMSO 2.5 mlに溶解した。これらのDSC溶液、DMAP溶液を、順にポリ乳酸溶液に滴下、40℃で6時間撹拌して、ポリ乳酸の水酸基末端を活性エステル化した。得た活性エステル化ポリ乳酸溶液を、ゼラチン溶液に滴下後、室温で24時間撹拌し、ゼラチン分子へのポリ乳酸グラフト反応を行った。反応後、夾雑物を除くため、反応溶液をセルロース透析チューブ(カットオフ分子量:12,000〜14,000、Viskase Companies, Inc.)内に入れ、二回蒸留水(DDW)に対して、48時間、室温で透析した。透析後、チューブ内から得られた溶液を凍結乾燥し、ポリ乳酸グラフトゼラチンを得た。グラフト反応のスキームを図1に示す。
得られたポリ乳酸グラフトゼラチンの5μg/ml水溶液を調製し、0.13 Mのリン酸緩衝液(pH 8)で6倍に希釈した。希釈後のポリ乳酸グラフトゼラチン溶液1.5 mlに、フルオレスカミンの0.3 mg/mlアセトン溶液 500μlを加えて撹拌した。得られた混合液に、一級アミンと結合したフルオレスカミンの励起光(波長390 nm)を照射し、その蛍光(波長 475 nm)の強度を測定した。異なる濃度のβ−アラニン溶液を用いて作成した校正曲線から、ポリ乳酸によりグラフトされたアミノ基の割合を比色定量し、ポリ乳酸グラフトのモル導入率を計算した。
ポリ乳酸グラフトゼラチンミセルを用いたラパマイシンの水可溶化
以下に示す透析法により、高分子ミセルにラパマイシンを内包させた。実施例1で作製したポリ乳酸グラフトゼラチンの1 mg/ml DMSO溶液(10 ml)とラパマイシンの0.6 mg/ml DMSO溶液(5 ml)をそれぞれ調製し、室温で1時間撹拌、混合した。この混合溶液をセルロース透析チューブ(カットオフ分子量:12,000〜14,000、Viskase Companies, Inc.)内に入れ、DDWに対して、48時間、室温で透析した。透析後、チューブ内から得られた溶液を凍結乾燥し、ポリ乳酸グラフトゼラチンミセルに内包され水可溶化されたラパマイシンを得た。
以下に示す透析法により、高分子ミセルにラパマイシンを内包させた。実施例1で作製したポリ乳酸グラフトゼラチンの1 mg/ml DMSO溶液(10 ml)とラパマイシンの0.6 mg/ml DMSO溶液(5 ml)をそれぞれ調製し、室温で1時間撹拌、混合した。この混合溶液をセルロース透析チューブ(カットオフ分子量:12,000〜14,000、Viskase Companies, Inc.)内に入れ、DDWに対して、48時間、室温で透析した。透析後、チューブ内から得られた溶液を凍結乾燥し、ポリ乳酸グラフトゼラチンミセルに内包され水可溶化されたラパマイシンを得た。
得られたラパマイシン内包ポリ乳酸グラフトゼラチンミセルをDMSOに溶解し、280 nmにおけるDMSO溶液のUV吸光度を測定した。異なる濃度のラパマイシン/DMSO溶液を用いて作成した校正曲線から、水可溶化されたラパマイシンを定量した。
グラフトポリ乳酸の分子量とゼラチンアミノ基に対するポリ乳酸のモル導入率に対するラパマイシンの水可溶化濃度の影響を図2に示す。ポリ乳酸の分子量は1,000 (○), 5,000 (△), 20,000 (□)である。ゼラチンにグラフトするポリ乳酸の分子量およびグラフト導入率により、ラパマイシンの水可溶化濃度は1.0〜25μg/mlまで変化した。グラフトされたポリ乳酸導入率の増加にともない、ポリ乳酸グラフトゼラチンによるラパマイシンの水可溶化量は増加した。また、ポリ乳酸の分子量に関係なく、グラフト導入率の増加とともに、水可溶化ラパマイシン量は増加した。
ラパマイシン内包ポリ乳酸グラフト化ゼラチンからなるハイドロゲルの作製
ポリ乳酸グラフト化ゼラチンミセル ( ポリ乳酸分子量 1000、グラフト導入率 10 mol/mol ) 20.5 mg を0.07 M リン酸緩衝液 ( pH = 6.5 ) 800μl に溶解した。それにゼラチン 20 mg を加え溶解した。さらに25 wt% グルタルアルデヒド水溶液 8μl を加えた後、その混合液を2 cm x 2 cm ディッシュ内に流延、ゼラチンの架橋反応 ( 4℃、24 時間 ) を行った。 得られた水可溶化ラパマイシン内包架橋ゼラチンハイドロゲルを、0.1 M グリシン水溶液中に浸漬、室温で1時間、撹拌することで、ゲル内の未反応のアルデヒド基をブロックした。その後、DDWで 2 回洗浄、凍結乾燥することによってラパマイシンを含むゼラチンハイドロゲルを得た。
ポリ乳酸グラフト化ゼラチンミセル ( ポリ乳酸分子量 1000、グラフト導入率 10 mol/mol ) 20.5 mg を0.07 M リン酸緩衝液 ( pH = 6.5 ) 800μl に溶解した。それにゼラチン 20 mg を加え溶解した。さらに25 wt% グルタルアルデヒド水溶液 8μl を加えた後、その混合液を2 cm x 2 cm ディッシュ内に流延、ゼラチンの架橋反応 ( 4℃、24 時間 ) を行った。 得られた水可溶化ラパマイシン内包架橋ゼラチンハイドロゲルを、0.1 M グリシン水溶液中に浸漬、室温で1時間、撹拌することで、ゲル内の未反応のアルデヒド基をブロックした。その後、DDWで 2 回洗浄、凍結乾燥することによってラパマイシンを含むゼラチンハイドロゲルを得た。
ラパマイシン含有ゼラチンハイドロゲルからのラパマイシンインビトロ徐放試験
ラパマイシンを内包したポリ乳酸グラフトゼラチンハイドロゲル2 mg を0.1 wt% Tween 80 を含む9.6 mM リン酸緩衝生理食塩水溶液(pH 7.4, PBS) 2 ml に投入した。この試験溶液を5種類用意し、37 ℃、100 rpm で振とうし、それぞれ1、3、6、12、および24 時間後に、PBS を全量抜き取って、凍結乾燥した。凍結乾燥物をDMSO に溶解し、DMSOの280 nm における吸光度からラパマイシンの放出量を測定した(図3)。図より明らかなように、PBS中におけるラパマイシンの徐放化が確認された。また、24 時間後、ゼラチンハイドロゲルを含むPBS中にDMSOを添加したところ、ラパマイシンの急激な放出が見られたことから、ハイドロゲル内でラパマイシンは化学固定されているのではなく、ミセル内に物理的に固定されていることがわかる。
ラパマイシンを内包したポリ乳酸グラフトゼラチンハイドロゲル2 mg を0.1 wt% Tween 80 を含む9.6 mM リン酸緩衝生理食塩水溶液(pH 7.4, PBS) 2 ml に投入した。この試験溶液を5種類用意し、37 ℃、100 rpm で振とうし、それぞれ1、3、6、12、および24 時間後に、PBS を全量抜き取って、凍結乾燥した。凍結乾燥物をDMSO に溶解し、DMSOの280 nm における吸光度からラパマイシンの放出量を測定した(図3)。図より明らかなように、PBS中におけるラパマイシンの徐放化が確認された。また、24 時間後、ゼラチンハイドロゲルを含むPBS中にDMSOを添加したところ、ラパマイシンの急激な放出が見られたことから、ハイドロゲル内でラパマイシンは化学固定されているのではなく、ミセル内に物理的に固定されていることがわかる。
異なるゼラチン材料を用いたハイドロゲルの作製
実施例3と同じように、ポリ乳酸グラフト化ゼラチンミセル20.5mgをリン酸緩衝溶液(pH6.5)に溶解させた。それに、等電点9.0のゼラチン20mg(pI9)または40mg(pI9×2)を加え溶解した。この水溶液に25wt%グルタルアルデヒド水溶液を8μl加えた後、その混合液を2cm×2cmディッシュ内に流延、ゼラチンの架橋反応(4℃、24時間)を行った。その後、実施例3と同様の操作を行い、2種類のラパマイシン含有ゼラチンハイドロゲルを得た。この2つのハイドロゲルからのラパマイシンの徐放を実施例4と同じ方法で評価した。PBSのサンプリング時間は3、6、12、24、および48時間とした。実施例3で作製したラパマイシン含有ゼラチンハイドロゲル(pI5)についても徐放試験を再度、行った。
実施例3と同じように、ポリ乳酸グラフト化ゼラチンミセル20.5mgをリン酸緩衝溶液(pH6.5)に溶解させた。それに、等電点9.0のゼラチン20mg(pI9)または40mg(pI9×2)を加え溶解した。この水溶液に25wt%グルタルアルデヒド水溶液を8μl加えた後、その混合液を2cm×2cmディッシュ内に流延、ゼラチンの架橋反応(4℃、24時間)を行った。その後、実施例3と同様の操作を行い、2種類のラパマイシン含有ゼラチンハイドロゲルを得た。この2つのハイドロゲルからのラパマイシンの徐放を実施例4と同じ方法で評価した。PBSのサンプリング時間は3、6、12、24、および48時間とした。実施例3で作製したラパマイシン含有ゼラチンハイドロゲル(pI5)についても徐放試験を再度、行った。
その結果、ハイドロゲル作製のためのゼラチンをpI5からpI9に変えることにより、ラパマイシンの徐放パターンが大きく変化することがわかった。PLLAグラフト化ゼラチンのゼラチンはpI5であるため、pI9ゼラチンからなるハイドロゲル内で、pI5のゼラチンとpI9のゼラチンとの間の相互作用が高まり、ラパマイシン内包ミセルの保持率が高まったことがその原因であると考えられる。さらに、ハイドロゲル作製時に用いるpI9ゼラチンの量を2倍に高めることによって(pI9x2)、ミセルとpI9ゼラチンとの相互作用がより高まり、ラパマイシンの徐放がさらに抑制された。
このように、ゼラチンハイドロゲルから疎水性薬物であるラパマイシンの徐放化が可能であり、さらに、その徐放パターンをゼラチンの種類と存在割合によって制御できることがわかった。48時間後、ゼラチンハイドロゲルを含むPBS中にDMSOを添加したところ、ラパマイシンの急激な放出が見られた。このことは、ラパマイシンはハイドロゲル内に化学固定されているのではなく、ミセル内に物理的に固定化されていることを示している。
架橋の程度の異なるゼラチンハイドロゲルの作製
実施例3と同じように、ポリ乳酸グラフト化ゼラチンミセル20.5mgをリン酸緩衝溶液(pH6.5)に溶解させた。それに、等電点5.0のゼラチン20mg(pI5)を加え溶解した。この水溶液に25wt%グルタルアルデヒド水溶液を4、8または16μl加えた後、その混合液を2cm×2cmディッシュ内に流延、ゼラチンの架橋反応(4℃、24時間)を行った。その後、実施例3と同様の操作を行い、3種類の架橋程度の異なるラパマイシン含有ゼラチンハイドロゲルを得た。この3つのハイドロゲルからのラパマイシンの徐放を、0.05wt%のコラゲナーゼを含むPBS溶液を用いて、実施例4と同じ方法で評価した。PBS水溶液のサンプリング時間は3、6、12、24、および48時間とした。
実施例3と同じように、ポリ乳酸グラフト化ゼラチンミセル20.5mgをリン酸緩衝溶液(pH6.5)に溶解させた。それに、等電点5.0のゼラチン20mg(pI5)を加え溶解した。この水溶液に25wt%グルタルアルデヒド水溶液を4、8または16μl加えた後、その混合液を2cm×2cmディッシュ内に流延、ゼラチンの架橋反応(4℃、24時間)を行った。その後、実施例3と同様の操作を行い、3種類の架橋程度の異なるラパマイシン含有ゼラチンハイドロゲルを得た。この3つのハイドロゲルからのラパマイシンの徐放を、0.05wt%のコラゲナーゼを含むPBS溶液を用いて、実施例4と同じ方法で評価した。PBS水溶液のサンプリング時間は3、6、12、24、および48時間とした。
その結果、ハイドロゲル作製のためのゼラチンの架橋条件を変えることにより、ラパマイシンの徐放パターンが大きく変化することがわかった。グルタルアルデヒド濃度の増加とともに、ゼラチンハイドロゲルの架橋度が上昇し、それにともない、薬物の徐放が抑制された。このことは、薬物の徐放化が、ゼラチンの分解にともなうゼラチンの水可溶化によることを示している。また、その水可溶化が架橋程度により制御可能であることを示している。
6時間後、ゼラチンハイドロゲルを含むPBS中にDMSOを添加したところ、ラパマイシンの急激な放出が見られたことから、ハイドロゲル内でラパマイシンは化学固定されているのではなく、ミセル内に物理的に固定されていることがわかる。
コレステロール導入ゼラチンの作製
等電点(pI) 5のゼラチン1 g(約1.0 x 10-5 mol)をジメチルスルホキシド(DMSO) 30 ml中で、40℃で2日間撹拌し、ゼラチン溶液を得た。ゼラチンに対して3,6,および12モル量比のコレステロールのDMSO 溶解溶液(30ml)を得た。コレステロールに対して3モル等量のN', N-ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)と4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)をそれぞれDMSO 2.5 mlに溶解した。これらのDSC溶液、DMAP溶液を、順にコレステロール溶液に滴下、40℃で6時間撹拌して、コレステロールの水酸基を活性エステル化した。得た活性エステル化コレステロール溶液を、ゼラチン溶液に滴下後、室温で24時間撹拌し、ゼラチン分子へのコレステロール導入反応を行った。反応後、夾雑物を除くため、反応溶液をセルロース透析チューブ(カットオフ分子量:12,000−14,000、Viskase Companies, Inc.)内に入れ、二回蒸留水(DDW)に対して、48時間、室温で透析した。透析後、チューブ内から得られた溶液を凍結乾燥し、コレステロール導入ゼラチンを得た。
等電点(pI) 5のゼラチン1 g(約1.0 x 10-5 mol)をジメチルスルホキシド(DMSO) 30 ml中で、40℃で2日間撹拌し、ゼラチン溶液を得た。ゼラチンに対して3,6,および12モル量比のコレステロールのDMSO 溶解溶液(30ml)を得た。コレステロールに対して3モル等量のN', N-ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)と4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)をそれぞれDMSO 2.5 mlに溶解した。これらのDSC溶液、DMAP溶液を、順にコレステロール溶液に滴下、40℃で6時間撹拌して、コレステロールの水酸基を活性エステル化した。得た活性エステル化コレステロール溶液を、ゼラチン溶液に滴下後、室温で24時間撹拌し、ゼラチン分子へのコレステロール導入反応を行った。反応後、夾雑物を除くため、反応溶液をセルロース透析チューブ(カットオフ分子量:12,000−14,000、Viskase Companies, Inc.)内に入れ、二回蒸留水(DDW)に対して、48時間、室温で透析した。透析後、チューブ内から得られた溶液を凍結乾燥し、コレステロール導入ゼラチンを得た。
得られたコレステロール導入ゼラチンの5 μg/ml水溶液を0.13 Mのリン酸緩衝液(pH 8)で6倍に希釈した後、その溶液1.5 mlに、フルオレスカミンの0.3 mg/mlアセトン溶液 500 μlを加えて撹拌した。得られた混合液に、一級アミンと結合したフルオレスカミンの励起光(波長390 nm)を照射し、その蛍光(波長 475 nm)の強度を測定した。異なる濃度のβ-アラニン溶液を用いて作成した校正曲線から、コレステロールが化学導入されたアミノ基の割合を比色定量し、コレステロールのモル導入率を計算したところ、仕込みコレステロールモル比の増加とともに、モル導入率は、1.2、3.4、および10.2であった。
コレステロール導入ゼラチンミセルを用いたラパマイシンの水可溶化
得られたコレステロール導入ゼラチンの1 mg/ml DMSO溶液(10 ml)とラパマイシンの0.6 mg/ml DMSO溶液(5 ml)をそれぞれ調製し、室温で1時間撹拌、混合した。この混合溶液をセルロース透析チューブ(カットオフ分子量:12,000−14,000、Viskase Companies, Inc.)内に入れ、DDWに対して、48時間、室温で透析した。透析後、チューブ内から得られた溶液を凍結乾燥し、コレステロール導入ゼラチンミセルに内包され水可溶化されたラパマイシンを得た。
得られたコレステロール導入ゼラチンの1 mg/ml DMSO溶液(10 ml)とラパマイシンの0.6 mg/ml DMSO溶液(5 ml)をそれぞれ調製し、室温で1時間撹拌、混合した。この混合溶液をセルロース透析チューブ(カットオフ分子量:12,000−14,000、Viskase Companies, Inc.)内に入れ、DDWに対して、48時間、室温で透析した。透析後、チューブ内から得られた溶液を凍結乾燥し、コレステロール導入ゼラチンミセルに内包され水可溶化されたラパマイシンを得た。
得られたラパマイシン内包コレステロール導入ゼラチンミセルをDMSOに溶解し、280 nmにおけるDMSO溶液のUV吸光度を測定した。異なる濃度のラパマイシン/DMSO溶液を用いて作成した校正曲線から、水可溶化されたラパマイシンを定量した。ゼラチンアミノ基に対するコレステロールのモル導入率の増加にともない、コレステロール導入ゼラチンによるラパマイシンの水可溶化量は17.5、20.3、および31.7μ/mlと増加した。
ラパマイシン内包コレステロール導入ゼラチンからなるハイドロゲルの作製
コレステロール導入ゼラチンミセル ( 導入率 20.3 mol/mol ) 15.0mgを0.07 M リン酸緩衝液 ( pH = 6.5 ) 800μl に溶解した。それにゼラチン 20 mg を加え溶解した。さらに25 wt% グルタルアルデヒド水溶液 4および8 μl を加えた後、その混合液を2 cm x 2 cm ディッシュ内に流延、ゼラチンの架橋反応 ( 4℃、24 時間 ) を行った。 得られた水可溶化ラパマイシン内包架橋ゼラチンハイドロゲルを、0.1 M グリシン水溶液中に浸漬、室温で1時間、撹拌することで、ゲル内の未反応のアルデヒド基をブロックした。その後、DDWで 2 回洗浄、凍結乾燥することによってラパマイシンを含むゼラチンハイドロゲルを得た。
コレステロール導入ゼラチンミセル ( 導入率 20.3 mol/mol ) 15.0mgを0.07 M リン酸緩衝液 ( pH = 6.5 ) 800μl に溶解した。それにゼラチン 20 mg を加え溶解した。さらに25 wt% グルタルアルデヒド水溶液 4および8 μl を加えた後、その混合液を2 cm x 2 cm ディッシュ内に流延、ゼラチンの架橋反応 ( 4℃、24 時間 ) を行った。 得られた水可溶化ラパマイシン内包架橋ゼラチンハイドロゲルを、0.1 M グリシン水溶液中に浸漬、室温で1時間、撹拌することで、ゲル内の未反応のアルデヒド基をブロックした。その後、DDWで 2 回洗浄、凍結乾燥することによってラパマイシンを含むゼラチンハイドロゲルを得た。
ラパマイシン含有ゼラチンハイドロゲルからのラパマイシンインビトロ徐放試験
ラパマイシンを内包したコレステロール導入ゼラチンハイドロゲル2 mg を0.05wt%のコラゲナーゼを含むあるいは含まない9.6 mM リン酸緩衝生理食塩水溶液(pH 7.4, PBS) 2 ml に投入した。37 ℃、100 rpm で振とう、1、3、6、12、および24 時間後に、PBS を全量抜き取り、凍結乾燥を行った。凍結乾燥物をDMSO に溶解し、DMSOの280 nm における吸光度からラパマイシンの放出量を測定した。
ラパマイシンを内包したコレステロール導入ゼラチンハイドロゲル2 mg を0.05wt%のコラゲナーゼを含むあるいは含まない9.6 mM リン酸緩衝生理食塩水溶液(pH 7.4, PBS) 2 ml に投入した。37 ℃、100 rpm で振とう、1、3、6、12、および24 時間後に、PBS を全量抜き取り、凍結乾燥を行った。凍結乾燥物をDMSO に溶解し、DMSOの280 nm における吸光度からラパマイシンの放出量を測定した。
コラゲナーゼのないPBS中での1,3,6,12、および24時間後のラパマイシン徐放率(%)は、4μl(8μl)のグルタルアルデヒド水溶液を加えて作製したハイドロゲルでは、9.0(20.4)、13.3(38.3)、22.9(51.2)、34.9(62.3)、および40.3(74.6)であった。コラゲナーゼ含有のPBS中での1,3,6,12、および24時間後のラパマイシン徐放率(%)は、4μl(8μl)のグルタルアルデヒド水溶液を加えて作製したハイドロゲルでは、44.0(30.4)、57.3(41.3)、89.6(72.2)、100(87.9)、および100(100)であった。
このように、ハイドロゲルの架橋程度によって、ラパマイシンの徐放量が異なっていることがわかった。また、コラゲナーゼ存在によって、ハイドロゲルの分解が進み、その結果、薬物の徐放化は促された。その徐放パターンは、ハイドロゲルの架橋程度によって制御が可能であることがわかった。
本発明の徐放製剤は、水難溶性薬物の可溶化および徐放に有用である。
Claims (2)
- 水難溶性物質の徐放製剤であって、前記水難溶性物質と疎水性基が付加されているゼラチン誘導体から構成されるミセルを含み、前記ミセルが高分子ハイドロゲル中に固定化されていることを特徴とする徐放製剤。
- 水難溶性物質の徐放製剤の製造方法であって、疎水性基が付加されているゼラチン誘導体を用意し、前記水難溶性物質と前記ゼラチン誘導体から構成されるミセルを調製し、そして前記ミセルを高分子ハイドロゲル中に固定化する、の各工程を含む方法。
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