JP2008133437A - 熱可塑性エラストマーおよび熱可塑性エラストマー組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】エポキシドと水酸基とを有するエラストマー性ポリマーであって、
エポキシドを有する化合物(A)と、第1級アミノ基を2個以上有し、かつ、分岐炭素および/または分岐窒素を有するポリアミン化合物(B)と、の反応により得られる熱可塑性エラストマー。
【選択図】なし
Description
このような熱可塑性エラストマーの典型例としては、樹脂成分とゴム成分とを含み、常温では微結晶の樹脂成分が三次元網目構造の架橋点の役割を果たすハードセグメントとなり、ゴム成分(ソフトセグメント)の塑性変形を阻止し、昇温により樹脂成分の軟化または融解により塑性変形する熱可塑性エラストマーが知られている。しかし、このような熱可塑性エラストマーでは、樹脂成分を含んでいるためゴム弾性が低下しやすい。そのため、樹脂成分を含まずに熱可塑性が付与できる材料が求められている。
すなわち、本発明は、下記(i)〜(ix)に記載の熱可塑性エラストマーおよび熱可塑性エラストマー組成物を提供する。
エポキシドを有する化合物(A)と、第1級アミノ基(−NH2)を2個以上有し、かつ、分岐炭素および/または分岐窒素を有するポリアミン化合物(B)と、の反応により得られる熱可塑性エラストマー。
本発明の熱可塑性エラストマーは、エポキシドと水酸基とを有するエラストマー性ポリマーであって、エポキシドを有する化合物(A)と、第1級アミノ基を2個以上有し、かつ、分岐炭素および/または分岐窒素を有するポリアミン化合物(B)と、の反応により得られる熱可塑性エラストマーである。
また、本発明においては、水酸基には、カルボキシ基の一部を構成する水酸基が含まれない。
熱可塑性エラストマーが、その構造中に、水素結合性の架橋部位を非常に多く有しているため、すなわち、本発明の熱可塑性エラストマーは、エポキシドを有する化合物(A)と、第1級アミノ基を2個以上有し、かつ、分岐炭素および/または分岐窒素を有するポリアミン化合物(B)との反応により得られることから、少なくとも、水酸基と2級アミノ基(反応部位)とを有するため、優れたリサイクル性を保持し、また機械的強度、特に圧縮永久歪に優れると考えられる。
同様に、熱可塑性エラストマーが、その構造中に、エポキシドを有することから耐油性に優れると考えられる。
このようなエラストマー性ポリマーとしては、具体的には、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)などのジエン系ゴムおよびこれらの水素添加物;エチレン−プロピレンゴム、エチレン−アクリルゴム(AEM)、エチレン−ブテンゴム(EBM)、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、ポリエチレンゴム、ポリプロピレンゴムなどのオレフィン系ゴム;エピクロロヒドリンゴム;多硫化ゴム;シリコーンゴム;ウレタンゴム;等が挙げられる。
本発明の熱可塑性エラストマーおよび本発明の組成物(以下、単に「本発明の熱可塑性エラストマー(組成物)」という場合がある。)を加熱(脱架橋)した時の流動性を重視する場合は、上記エラストマー性ポリマーは液状であることが好ましく、例えば、イソプレンゴム、ブタジエンゴム等のジエン系ゴムでは、重量平均分子量が1,000〜100,000であることが好ましく、1,000〜50,000程度であることが特に好ましい。
一方、本発明の熱可塑性エラストマー(組成物)の強度を重視する場合は、上記エラストマー性ポリマーは固体状であることが好ましく、例えば、イソプレンゴム、ブタジエンゴム等のジエン系ゴムでは、重量平均分子量が100,000以上であることが好ましく、500,000〜1,500,000程度であることが特に好ましい。
本発明において、重量平均分子量は、ゲルパーミエションクロマトグラフィー(Gel permeation chromatography(GPC))により測定した重量平均分子量(ポリスチレン換算)である。測定にはテトラヒドロフラン(THF)を溶媒として用いるのが好ましい。
また、上記エラストマー性ポリマーのガラス転移点は、上述したように25℃以下であることが好ましく、該エラストマー性ポリマーが2以上のガラス転移点を有する場合または2種以上の該エラストマー性ポリマーを混合して用いる場合は、ガラス転移点の少なくとも1つは25℃以下であることが好ましい。上記エラストマー性ポリマーのガラス転移点がこの範囲であると、本発明の熱可塑性エラストマー(組成物)からなる成形物が室温でゴム状弾性を示すため好ましい。
本発明において、ガラス転移点は、示差走査熱量測定(DSC−Differential Scanning Calorimetry)により測定したガラス転移点である。昇温速度は10℃/minにするのが好ましい。
また、上記エラストマー性ポリマーの主鎖として、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エチレン−アクリルゴム(AEM)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−ブテンゴム(EBM)を用いる場合、そのエチレン含有量は、好ましくは10〜90モル%であり、より好ましくは40〜90モル%である。エチレン含有量がこの範囲であると、本発明の熱可塑性エラストマー(組成物)の機械的強度、特に圧縮永久歪に優れるため好ましい。
次に、本発明の熱可塑性エラストマーの生成に用いられるエポキシドを有する化合物(A)およびポリアミン化合物(B)について詳述する。
エポキシドを有する化合物(A)としては、例えば、上記エラストマー性ポリマーにエポキシドを有するエポキシ化エラストマーが挙げられる。
エポキシ化エラストマーとしては、具体的には、例えば、エポキシ化天然ゴム、エポキシドを有するスチレン系エラストマー、エポキシドを有するアクリルゴム、エチレン−グリシジルメタクリレート−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−酢酸ビニル共重合体等が好適に挙げられる。
中でも、エポキシ化天然ゴム、エポキシドを有するアクリルゴムであるのが、得られる本発明の熱可塑性エラストマー(組成物)の圧縮永久歪がより良好となる理由から好ましい。
天然ゴムをエポキシ化する方法は特に限定されず、例えば、クロルヒドリン法、直接酸化法、過酸化水素法、アルキルヒドロペルオキシド法、過酸法等の方法が挙げられる。具体的には、天然ゴムに過酢酸や過ギ酸などの有機過酸を反応させる方法が挙げられる。
また、市販品としては、具体的には、例えば、マレーシアゴム局(MRB)製のENR−25(エポキシ化率:25%)、ENR−50(エポキシ化率:50%)、ENR−60(エポキシ化率:60%)等が挙げられる。
市販品としては、具体的には、例えば、日本ゼオン社製のNipol AR30シリーズ、40シリーズ、50シリーズが挙げられ、中でも、Tgが低く、耐寒性に優れる理由から、AR32、AR53L、AR54が好適に挙げられる。
ポリアミン化合物(B)は、第1級アミノ基を2個以上有し、かつ、分岐炭素および/または分岐窒素を有する化合物であれば特に限定されず、その具体例としては、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミンなどのポリアルキレンイミン;ジアミノシクロヘキサン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、N−アミノエチルピペラジンなどの脂環族アミン;ジアミノトルエン、ジアミノキシレン、テトラメチルキシリレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族ポリアミン;等が挙げられる。
ここで、分岐炭素とは、ポリアミン化合物(B)の主鎖骨格が分岐している起点となる炭素原子のことをいい、分岐窒素とは、ポリアミン化合物(B)の主鎖骨格が分岐している起点となる窒素原子のことをいう。
ここで、第3級アミノ基とは、いずれの結合手にも水素原子が結合していない窒素原子からなる基のことをいう。
ここで、第2級アミノ基とは、イミノ基(−NH−)のことをいう。
ここで、ポリエチレンイミンとは、第1級アミノ基、第2級アミノ基および第3級アミノ基を1:2:1程度の割合で有し、重量平均分子量が300〜100000程度のアミン化合物をいう。具体的には、例えば、以下に示す一般式で表す化合物である。
市販品としては、例えば、ポリエチレンイミン(エポミンSP−018、重量平均分子量1800、日本触媒社製)およびポリエチレンイミン(エポミンSP−200、重量平均分子量10000、日本触媒社製)等を用いることができる。
ここで、上記式(1a)の各炭素原子のフリーな結合手は、メチル基を表すものではなく、上記式(1a)中の2つの炭素原子間の結合は、上記エラストマー性ポリマーの主鎖の一部を構成するものである。また、上記式(1b)中のR2が結合した炭素原子および上記式(1c)中のR1が結合した炭素原子のフリーな結合手は、メチル基を表すものではなく、上記エラストマー性ポリマーとの結合(例えば、共有結合、イオン結合等)を表す。
このような置換基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、オクチル基、ドデシル基、ステアリル基などの直鎖状のアルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、1−メチルブチル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基などの分岐状のアルキル基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基;フェニル基、トリル基(o−、m−、p−)、ジメチルフェニル基、メシチル基などのアリール基;等が挙げられる。
これらのうち、アルキル基、特に、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、イソプロピル基、2−エチルヘキシル基であることが、得られる本発明の熱可塑性エラストマー(組成物)の高温での流動性が良好となるため好ましい。
同様に、本発明の熱可塑性エラストマーが有する水酸基は、上記エラストマー性ポリマーを構成するモノマー単位に対して0.1〜60%の割合で有しているのが好ましい。水酸基を有する割合がこの範囲であると、得られる本発明の熱可塑性エラストマー(組成物)のリサイクル性および圧縮永久歪がより良好となる。
本発明の組成物は、本発明の第1の態様に係る熱可塑性エラストマーを1種以上含有する。2種以上含有する場合の混合比は、組成物が用いられる用途、組成物に要求される物性等に応じて、任意の比率とすることができる。
ポリアミド化合物は、主鎖中にアミド結合有する重合体であれば特に限定されないが、その具体例としては、ナイロン(登録商標。以下同様。)6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12などをハードセグメントとし、ポリエーテルやポリエステルなどをソフトセグメントとして有するポリアミドエラストマーが好適に挙げられる。
このようなポリアミドエラストマーとしては、具体的には、例えば、UBESTA XPA(宇部興産社製)、VESTAMID(ダイセルヒュルス社製)、PEBAX(東レ社製)、GRILAX(大日本インキ社製)、NOBAMID EL(三菱化学社製)等の市販品を用いることができる。
上記ポリアミド化合物の含有量は、本発明の熱可塑性エラストマー100質量部に対して、300質量部以下であるのが好ましい。
上記ポリエーテルエステル系可塑剤としては、具体的には、例えば、RS−735(ADEKA社製)等の市販品を用いることができ、上記ポリエステルワックスとしては、具体的には、例えば、グレックG−8205(大日本インキ社製)の市販品を用いることができる。
上記ポリエステル化合物の含有量は、その種類により異なるため特に限定されないが、本発明の組成物からなる成形物の伸びや、押出し成形時の肌状態の観点から、本発明の熱可塑性エラストマー100質量部に対して、ポリエーテルエステル可塑剤で50質量部以下、ポリエステルワックスで30質量部以下であるのが好ましい。
カーボンブラックの種類は、用途に応じて適宜選択される。一般に、カーボンブラックは粒子径に基づいて、ハードカーボンとソフトカーボンとに分類される。ソフトカーボンはゴムに対する補強性が低く、ハードカーボンはゴムに対する補強性が強い。本発明では、特に、補強性の強いハードカーボンを用いることが好ましい。
カーボンブラックの含有量(カーボンブラック単独で用いる場合)は、本発明の熱可塑性エラストマー100質量部に対して、0.1〜200質量部であり、1〜100質量部であることが好ましく、1〜80質量部であることがより好ましい。
補強剤としてシリカを用いる場合には、シランカップリング剤を併用できる。シランカップリング剤としては、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(Si69)、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(Si75)、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。また、後述するアミノシラン化合物も用いることができる。
本発明の熱可塑性エラストマー以外のポリマーとしては、上記した理由と同様にガラス転移温度が25℃以下のポリマーが好ましい。具体的には、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−アクリルゴム(AEM)、エチレン−ブテンゴム(EBM)等が挙げられ、特にIIR、EPM、EBMの不飽和結合を有さないポリマーまたは不飽和結合の少ないポリマー(例えば、EPDM)が好ましい。また、水素結合可能な部位を有するポリマーも好ましく、例えば、ポリエステル、ポリラクトン、ポリアミド等が挙げられる。更に、ポリオレフィン系軟質樹脂、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−オクテンまたはエチレン−ブテン共重合体などの熱可塑性ポリマーも挙げられる。
また、本発明の組成物において、本発明の熱可塑性エラストマー以外のポリマーは、1種または2種以上を含有させてもよく、該ポリマーの含有量は、本発明の熱可塑性エラストマー100質量部に対して、0.1〜200質量部であることが好ましく、1〜100質量部であることがより好ましい。
ここで、本発明において、脂肪族アミン化合物に有するアミノ基を脂肪族アミノ基、芳香族アミン化合物に有する芳香族基に結合したアミノ基を芳香族アミノ基、複素環アミン化合物に有するアミノ基を複素環アミノ基という。
これらのうち、本発明の熱可塑性エラストマーとの相互作用を適度に形成し、該熱可塑性エラストマー中に効果的に分散可能であるという観点から、複素環アミノ基、複素環アミノ基を含む混合アミノ基または脂肪族アミノ基であることが好ましく、複素環アミノ基または脂肪族アミノ基であることが好ましい。
上記アミノ基が1級であると、本発明の熱可塑性エラストマーとの相互作用が強くなる傾向があり、組成物を調製する際の条件等によってはゲル化する場合がある。一方、上記アミノ基が3級であると、本発明の熱可塑性エラストマーとの相互作用が弱くなる傾向があり、組成物としたときの圧縮永久歪等の改善効果が小さい場合がある。
このような観点から、上記アミノ基の級数は、1級または2級であることが好ましく、2級であることがより好ましい。
また、上記アミノ基は、組成物に要求される物性に応じてアミノ基の種類および級数を任意に調整できる。
上記アミノ基を導入する方法は、特に限定されず、その具体例としては、一般的に各種充填剤、補強剤等に用いられる表面処理法(例えば、表面改質法、表面被覆法等)が挙げられる。好ましい方法としては、上記基体となる充填剤と反応可能な官能基およびアミノ基を有する化合物を該充填剤に反応させる方法(表面改質法)、アミノ基を有するポリマーで上記基体となる充填剤の表面をコーティングする方法(表面被覆法)、または、充填剤の合成過程においてアミノ基を有する化合物等を反応させる方法等が挙げられる。
上記アミノ基導入充填剤の含有量は、本発明の熱可塑性エラストマー100質量部に対して、0.1〜200質量部であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることが特に好ましい。
上記アミノ基含有化合物中のアミノ基は、上記アミノ基導入充填剤において説明したものと基本的に同様であり、また、該アミノ基の含有数は1個以上であれば特に限定されず、2個以上であることが本発明の熱可塑性エラストマーと2以上の架橋結合を形成することができ、物性の改善効果に優れるため好ましい。
また、上記アミノ基含有化合物が、2個以上のアミノ基を含有する場合においては、該アミノ基含有化合物中における1級アミノ基数が2個以下となるようにすることが好ましく、1個以下とすることがより好ましい。1級アミノ基を3個以上有すると、該アミノ基および本発明の熱可塑性エラストマー中の官能基(特に、カルボニル含有基であるカルボキシ基)によって形成される(架橋)結合が強固になり、優れたリサイクル性を損なう場合がある。
これらのうち、2級の脂肪族ジアミン、芳香族1級アミンと複素環状アミンを含むポリアミンまたは3級複素環状ジアミンがより好ましい。
これらのポリマーの平均分子量、分子量分布、粘度等の物性は、特に限定されず、本発明の組成物が用いられる用途、本発明の組成物に要求される物性等に応じて任意の物性とすることができる。
これらのうち、圧縮永久歪等の物性の改善効果が高い観点から、上記した、脂肪族1級アミノ基を有するアミノシラン化合物、脂肪族2級アミノ基を有するアミノシラン化合物および脂肪族1級および2級アミノ基を有するアミノシラン化合物のアミノアルキルシラン化合物であることが好ましい。
アルコキシシラン化合物としては、具体的には、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
ハロゲン化シラン化合物としては、具体的には、例えば、テトラクロロシラン、ビニルトリフルオロシラン等が挙げられる。
これらのうち、安価で取扱い等が安全である観点から、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシランが好ましい。
そのため、アミノ基を有する高分子化合物の含有量は、本発明の熱可塑性エラストマー100質量部に対して、1〜200質量部であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることが特に好ましい。
上記金属塩としては、具体的には、例えば、これらの1種以上の金属元素を含むギ酸塩、酢酸塩、ステアリン酸塩等の炭素数1〜20の飽和脂肪酸塩、(メタ)アクリル酸塩等の不飽和脂肪酸塩、金属アルコキシド(炭素数1〜12のアルコールとの反応物)、硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、塩化物、酸化物、水酸化物、ジケトンとの錯体等が挙げられる。
ここで、「ジケトンとの錯体」とは、例えば、1,3−ジケトン(例えば、アセチルアセトン)等が金属原子に配位した錯体をいう。
更に、上記金属塩は、上述したように、Li、Na、K、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、GaおよびAlからなる群から選択される1種以上の金属元素を含む化合物であることが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲でこれら以外の金属元素を含有してもよい。これら以外の金属元素の含有率は、特に限定されないが、例えば、上記金属塩中の全金属元素に対して、1〜50モル%であることが好ましい。
したがって、上記無水マレイン酸変性熱可塑性ポリマーとしては、例えば、下記式(2)のように、無水マレイン酸のエチレン性不飽和結合部分がエラストマー性ポリマーと反応して得られる、側鎖に環状酸無水物基を有し含窒素複素環を有しない熱可塑性のエラストマーが挙げられ、その具体例としては、上記した環状酸無水物基を側鎖に含有するエラストマー性ポリマーで例示したものが挙げられる。
なお、本発明の熱可塑性エラストマーの製造時、具体的には、上記反応工程AまたはBにおいて、未反応物として環状酸無水物基を側鎖に含有するエラストマー性ポリマーが残存する場合は、残存するカルボニル含有基変性エラストマーを除去せずに、そのまま本発明の組成物に含有させることもできる。
酸化防止剤としては、具体的には、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等が挙げられる。
顔料としては、具体的には、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩等の無機顔料、アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料等の有機顔料等が挙げられる。
揺変性付与剤としては、具体的には、例えば、ベントン、無水ケイ酸、ケイ酸誘導体、尿素誘導体等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、具体的には、例えば、2−ヒドロキシベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸エステル系等が挙げられる。
難燃剤としては、具体的には、例えば、TCP等のリン系、塩素化パラフィン、パークロルペンタシクロデカン等のハロゲン系、酸化アンチモン等のアンチモン系、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
界面活性剤(レベリング剤)としては、具体的には、例えば、ポリブチルアクリレート、ポリジメチルシロキサン、変性シリコーン化合物、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。
脱水剤としては、具体的には、例えば、ビニルシラン等が挙げられる。
接着付与剤としては、具体的には、例えば、公知のシランカップリング剤、アルコキシシリル基を有するシラン化合物、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤等が挙げられる。より具体的には、トリメトキシビニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
帯電防止剤としては、一般的に、第4級アンモニウム塩、あるいはポリグリコールやエチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物が挙げられる。
加硫剤としては、イオウ系、有機過酸化物系、金属酸化物系、フェノール樹脂、キノンジオキシム等の加硫剤が挙げられる。
イオウ系加硫剤としては、具体的には、例えば、粉末イオウ、沈降性イオウ、高分散性イオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウ、ジモルフォリンジサルファイド、アルキルフェノールジサルファイド等が挙げられる。
有機過酸化物系の加硫剤としては、具体的には、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ(パーオキシルベンゾエート)等が挙げられる。
その他として、酸化マグネシウム、リサージ(酸化鉛)、p−キノンジオキシム、テトラクロロ−p−ベンゾキノン、p−ジベンゾイルキノンジオキシム、ポリ−p−ジニトロソベンゼン、メチレンジアニリン等が挙げられる。
加硫促進剤としては、具体的には、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)等のチウラム系;ヘキサメチレンテトラミンなどのアルデヒド・アンモニア系;ジフェニルグアニジン等のグアニジン系;2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジサルファイド(DM)などのチアゾール系;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系;等が挙げられる。更にアルキルフェノール樹脂やそのハロゲン化物等を用いることもできる。
加硫遅延剤としては、具体的には、例えば、無水フタル酸、安息香酸、サリチル酸、アセチルサリチル酸などの有機酸;N−ニトロソージフェニルアミン、N−ニトロソーフェニル−β−ナフチルアミン、N−ニトロソ−トリメチル−ジヒドロキノリンの重合体などのニトロソ化合物;トリクロルメラニンなどのハロゲン化物;2−メルカプトベンツイミダゾール;N−(シクロヘキシルチオ)フタルイミド(サントガードPVI);等が挙げられる。
これら加硫剤等の含有量は、本発明の熱可塑性エラストマー100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることがより好ましい。
軟化し、流動性が付与された本発明の熱可塑性エラストマー(組成物)を約80℃以下に放置にすると、解離した三次元の架橋結合(架橋構造)が再び結合して硬化する。この繰り返しにより、本発明の熱可塑性エラストマー(組成物)はリサイクル性が発現する。
(実施例1および比較例1)
まず、180℃に設定した加圧ニーダーに、エポキシ化天然ゴム(ENR−50、エポキシ化率:50%、マレーシアゴム局(MRB)製)および老化防止剤(Irganox1010、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を下記表1に示す質量部投入し、5分間混練した。
その後、ポリエチレンイミン(エポミンSP−200、重量平均分子量10000、日本触媒社製)、または、ジエチレントリアミン(東京化成社製)を下記表1に示す質量部投入して更に10分間混練して反応させることで熱可塑性エラストマーを含有する熱可塑性エラストマー組成物を調製した。IR分析を行うことにより、エポキシドと水酸基と第1級アミノ基および/または第2級アミノ基とを有する熱可塑性エラストマーを含有していることを確認した。
得られた各熱可塑性エラストマー組成物を180℃で10分間熱プレスし、2mm厚のシートを作製した。
このシートから円板状(直径29mm)の試験片を打ち抜き、得られた円板状試験片を7枚重ね、200℃で20分間熱プレスし、JIS K6253に準拠して、JIS−A硬度を測定した。
得られた各熱可塑性エラストマー組成物を180℃で10分間熱プレスし、2mm厚のシートを作製した。
このシートから3号ダンベル状の試験片を打ち抜き、引張速度500mm/分での引張試験をJIS K6251に準拠して行い、100%モジュラス(M100)[MPa]、300%モジュラス(M300)[MPa]、破断強度(TB)[MPa]、および、破断伸び(EB)[%]を室温にて測定した。
なお、実施例1については、300%以下の伸びで破断したため、M300については測定できず、下記表1においては「−」と示した。
得られた各熱可塑性エラストマー組成物を180℃で10分間熱プレスし、2mm厚のシートを作製した。
作製したシートを7枚重ね合わせて200℃で20分間熱プレスし、円筒状のサンプル(直径29mm×厚さ12.5mm)を作製した。
この円筒状サンプルを、専用治具で25%圧縮し、70℃で22時間放置した後の圧縮永久歪みをJIS K6262に準じて測定した。
得られた各熱可塑性エラストマー組成物を180℃で10分間熱プレスし、2mm厚のシートを作製した。
このシートから円板状(直径29mm)の試験片を打ち抜き、23℃のJIS 3号オイル中に、168時間浸漬させ、浸漬前後の体積変化率(%)を測定することにより行った。
得られた各熱可塑性エラストマー組成物を200℃で10分間熱プレスし、2mm厚のシートを作製した。このシートを細かく切断して再度プレス成形し、継ぎ目のない一体化したシートが作製できる回数で評価した。
10回以上作製できたものを「○」とした。
まず、200℃に設定した加圧ニーダーに、エポキシドを有するアクリルゴム(エポキシド含有アクリルゴム)、ポリアミドエラストマー(UBESTA XPA、宇部興産社製)および老化防止剤(Irganox1010、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を下記表2に示す質量部投入し、5分間混練した。
その後、ポリエチレンイミン(エポミンSP−200、重量平均分子量10000、日本触媒社製)、または、ジエチレントリアミン(東京化成社製)を下記表2に示す質量部投入して更に10分間混練して反応させることで熱可塑性エラストマーを含有する熱可塑性エラストマー組成物を調製した。IR分析を行うことにより、エポキシドと水酸基と第1級アミノ基および/または第2級アミノ基とを有する熱可塑性エラストマーを含有していることを確認した。
なお、下記表2中、エポキシド含有アクリルゴム1としては、Nipol AR32(ガラス転移温度:−26℃、日本ゼオン社製)を用い、エポキシド含有アクリルゴム2としては、Nipol AR53L(ガラス転移温度:−32℃、日本ゼオン社製)を用いた。
Claims (9)
- エポキシドと水酸基とを有するエラストマー性ポリマーであって、
エポキシドを有する化合物(A)と、第1級アミノ基を2個以上有し、かつ、分岐炭素および/または分岐窒素を有するポリアミン化合物(B)と、の反応により得られる熱可塑性エラストマー。 - 前記化合物(A)が、エポキシ化エラストマーである請求項1に記載の熱可塑性エラストマー。
- 前記エポキシ化エラストマーが、エポキシ化天然ゴム、エポキシドを有するスチレン系エラストマー、エポキシドを有するアクリルゴム、エチレン−グリシジルメタクリレート−アクリル酸メチル共重合体またはエチレン−グリシジルメタクリレート−酢酸ビニル共重合体である請求項2に記載の熱可塑性エラストマー。
- 前記ポリアミン化合物(B)が、第3級アミノ基を有する請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー。
- 前記ポリアミン化合物(B)が、第2級アミノ基を有する請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー。
- 前記ポリアミン化合物(B)が、ポリアルキレンイミンである請求項5に記載の熱可塑性エラストマー。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の熱可塑性エラストマーを含有する熱可塑性エラストマー組成物。
- 更に、ポリアミド化合物を含有する請求項8に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
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