近年、スイッチング電源装置などの変換周波数は、装置の小型化の要求に伴なって、年々高周波数化されている。そのため、スイッチング電源装置の主スイッチング素子として使用されるMOSFET(金属酸化膜形電界効果トランジスタ)には、そのゲート・ソース間に高速のゲート駆動信号を供給するためのゲート駆動回路が設けられる。特に、MOSFETのゲート・ソース間容量とインダクタンス素子とからなる共振回路を利用して、ゲート駆動回路内における余剰なエネルギーを直流電源側に回生させ、MOSFETのゲート駆動損失を減少させて、MOSFETを高速でスイッチングさせるものが、例えば特許文献1や特許文献2に開示されている。
こうしたゲート駆動回路の一例を、図9に示す。同図において、101は直流電源E1を含むゲート駆動回路、2はゲート駆動回路101からのパルス駆動信号が与えられる被駆動素子としてのMOSFETであり、ここでのMOSFET2は、そのゲート・ソース間の入力キャパシタンスC2と抵抗R1の直列回路が等価的に示されている。図9のゲート駆動回路101は、前記直流電源E1の他に、2つのスイッチ素子(例えば、MOSFET)S1,S3と、各スイッチ素子S1,S3に各々パルス信号を供給するPWM(パルス幅変調)制御手段52,53と、一次巻線L11および二次巻線L12を磁気的に結合してなるトランス104と、4つのダイオードD1,D2,D3,D11と、1つの抵抗R4とにより構成される。
そして、直流電源E1の正極性端子に抵抗R4の一端を接続し、この抵抗R4の他端にスイッチ素子S1の一端を接続し、スイッチ素子S1の他端にダイオードD3のアノードを接続し、ダイオードD3のカソードを一次巻線L11の一端すなわちドット側端子に接続しており、一次巻線L11の他端すなわち非ドット側端子と接地された直流電源E1の負極性端子間には、前述したMOSFET2の入力キャパシタンスC2と抵抗R1によるゲート等価直列回路が接続される。すなわち、スイッチ素子S1はMOSFET2のオンタイミングを決めるもので、当該スイッチ素子S1のオン時には、直流電源E1から抵抗R4,スイッチ素子S1,ダイオードD3,一次巻線L11およびMOSFET2のゲートの順に電流が流れるように構成する。
一方、ダイオードD3のカソードと一次巻線L11の一端との接続点には、別なスイッチ素子S3の一端が接続され、このスイッチ素子S3の他端は接地した直流電源E1の負極性端子に接続される。スイッチ素子S3はMOSFET2のオフタイミングを決めるもので、当該スイッチ素子S3のオン時には、MOSFET2の入力キャパシタンスC2を電源として、一次巻線L11および入力キャパシタンスC2の順に電流が流れ、MOSFET2の入力キャパシタンスC2すなわちゲート・ソース間の電圧をゼロにする。
さらに、抵抗R4の他端とスイッチ素子S1の一端との間の接続点と直流電源E1の負極性端子との間には、一次巻線L11に蓄えられたエネルギーを直流電源E1側に戻すための回生回路として、二次巻線L12とダイオードD11との直列回路が接続される。この回生回路は、直流電源E1の負極性端子に二次巻線L12の他端すなわち非ドット側端子を接続し、二次巻線L12の一端すなわちドット側端子にダイオードD11のアノードを接続し、ダイオードD11のカソードを抵抗R4の他端とスイッチ素子S1の一端との間の接続点に接続して構成され、入力キャパシタンスC2から一次巻線L11にエネルギーが全て移動したタイミングでスイッチ素子S3をターンオフすると、一次巻線L11と磁気的に結合した二次巻線L12から、ダイオードD11および抵抗R4を通して、直流電源E1側に当該エネルギーが返還されるように構成される。
なお、スイッチ素子S1,S3が例えばMOSFETの場合、素子に内蔵するボディダイオードとして、その両端間には、当該スイッチ素子S1,S3に流れる電流とは逆方向に導通するダイオードD1,D2が並列に接続される。前記ダイオードD3は、スイッチ素子S1のボディダイオードであるダイオードD1を通して、電流が流れるのを防止するために設けられている。
図10は、上記図9の回路構成における各部の波形である。同図において、VPWM1はPWM制御手段52からスイッチ素子S1に供給されるパルス信号であり、VPWM2はPWM制御手段53からスイッチ素子S3に供給されるパルス信号であり、IL11はトランス104の一次巻線L11を流れる電流(但し、ドット側端子から非ドット側端子への流れをプラスとする)であり、IE1は直流電源E1を流れる電流(但し、負極性から正極性への流れをプラスとする)であり、VC2はMOSFET2の入力キャパシタンスC2両端間の電圧である。
図9の回路では、PWM制御手段52からのオンパルスを受けて、スイッチ素子S1がオンすると、直流電源E1からの電源電圧が、MOSFET2の入力キャパシタンスC2と、トランス104の一次巻線L11に印加されて共振し、共振電流(直列共振)が流れる。これにより、MOSFET2のゲート・ソース間電位は上昇してターンオンする。スイッチ素子S1と一次巻線L11との間には、逆電流を阻止するダイオードD3が挿入接続されているので、PWM制御手段52から与えられるスイッチ素子S1のパルスのオフタイミングは、当該スイッチ素子S1をオンすることで得られた直列共振電流波形の1/2波長から、スイッチ素子S3がターンオンする直前までの間の任意でよい。こうして、スイッチ素子S1がオンすると、直列共振エネルギー(電源からの出力電流)は、最終的にはMOSFET2の入力キャパシタンスC2に電圧という形で全て蓄積され、その後は、スイッチ素子S1がターンオフした後、スイッチ素子S3がターンオンするまで、入力キャパシタンスC2に蓄えられたエネルギーによってMOSFET2がオンし続ける。その電圧は、理論的には直流電源E1の電圧値の二倍(2*E1)となる。
やがて、スイッチ素子S1がオフした後に、PWM制御手段53からのオンパルスを受けて、別なスイッチ素子S3がオンすると、今度はMOSFET2の入力キャパシタンスC2を電圧源として、再びこのMOSFET2の入力キャパシタンスC2とトランス104の一次巻線L11で電流共振するが、その共振電流波形の1/4波長になった時点で、当該入力キャパシタンスC2の電圧がゼロとなり、トランス104の一次巻線L11に電流の形ですべてエネルギーは変換される。また、入力キャパシタンスC2の電圧が降下する過程で、MOSFET2はターンオフする。入力キャパシタンスC2の電圧がゼロになったタイミングで、PWM制御手段53からのパルスをオフにして、スイッチ素子S3をオフにすれば、スイッチ素子S3を通しての電流は遮断され、一次巻線L11と二次巻線L12はトランス構成になっている関係で、ダイオードD11から抵抗R4を介して全て直流電源E1側へエネルギーが返還される。直流電源E1からの出力電流(負荷電流)は、スイッチ素子S1がオンしたときの電流であり、これはスイッチ素子S3をオフした後の二次巻線L12から返還される回生電流と等しいために、直流電源E1からの平均電流はゼロになって、結果的に無損失を達成する。
しかし、図9の回路では、直流電源E1にエネルギーを変換する際のPWM制御手段53のオンパルス幅が狭く、スイッチング電源装置の高周波化には限界がある。そこで、PWM制御手段53のオンパルス波形を広げることができるように工夫したのが、図11に示すゲート駆動回路111である。このゲート駆動回路111は、スイッチ素子S1のオン時に入力キャパシタンスC2と共振するインダクタンス(三次巻線L13)と、スイッチ素子S1のオフ時に入力キャパシタンスC2と共振するインダクタンス(一次巻線L11)を別々にし、スイッチ素子S1のオン時に、スイッチ素子S1の他端からMOSFET2のゲートに電流が流れるように、ダイオードD3と三次巻線L13との直列回路を接続すると共に、スイッチ素子S3のオン時に、MOSFET2のゲートからスイッチ素子3に電流が流れるように、別な一次巻線L11とダイオードD4との直列回路を接続する。そして、これらの一次巻線L11および三次巻線L13と、ダイオードD11と共に回生回路をなす二次巻線L12は磁気的に結合し、一つのトランス114を構成している。なお、必要に応じて、抵抗R4とスイッチ素子S1の一端との接続点と接地ライン間にコンデンサC11を接続してもよい。その他の構成は、図9に示すものと共通している。
図12は、上記図11の回路構成における各部の波形である。同図において、VPWM1,VPWM2,IL11,IE1,VC2は前述の図10と同じ箇所の波形であり、IL12はトランス114の二次巻線L12を流れる電流(但し、ドット側端子から非ドット側端子への流れをプラスとする)である。
そして、スイッチ素子S1がオンすると、トランス114の三次巻線L13とMOSFET2の入力キャパシタンスC2とによる共振電流が流れ、直流電源E1からのエネルギーがMOSFET2の入力キャパシタンスC2に電圧の形で全て蓄積される。MOSFET2は、スイッチ素子S1がターンオフした後、別なスイッチ素子S3がターンオンするまで、入力キャパシタンスC2に蓄えられたエネルギーによってオンし続ける。
その後、スイッチ素子S3がオンすると、MOSFET2の入力キャパシタンスC2とトランス114の一次巻線L11で電流共振が起こり、その共振電流波形の1/4波長になった時点で、当該入力キャパシタンスC2の電圧がゼロとなり、トランス114の一次巻線L11に電流の形ですべてエネルギーは変換される。また、入力キャパシタンスC2の電圧が降下する過程で、MOSFET2はターンオフする。ここでも、入力キャパシタンスC2の電圧がゼロになったタイミングで、PWM制御手段53からのパルスをオフにして、スイッチ素子S3をオフにすれば、トランス114の一次巻線L11に蓄えられたエネルギーは、二次巻線L12からダイオードD11および抵抗R4を経て、全て直流電源E1側に返還される。
この図11に示す従来例では、一次巻線L11と三次巻線L13の各インダクタンス値を任意に設定できるので、スイッチ素子S1をオンしたときの共振電流の周波数と、スイッチ素子S3をオンしたときの共振電流の周波数を任意に変えることができる。これにより、PWM制御手段53からスイッチ素子S3へのパルスをオフにするタイミングを延ばして、エネルギー返還時におけるスイッチ素子S3のオンパルス幅を大きくすることができ、PWM制御手段53の制御が容易になって、スイッチング電源装置の高周波化に対応することが可能になる。
特開平5−207731号公報
特開2006−54954号公報
しかし、上述した従来のゲート駆動回路101,111では、次のような問題点を生じる。
第1に、MOSFET2の入力キャパシタンスC2は、例えば2nF程度の小容量であるため、これに対応した共振インダクタのインダクタンス値は、nオーダーにならざるを得ない。一例として、図9の回路では、一次巻線L11と二次巻線L12のインダクタンス値が20nHとなり、図11の回路では、一次巻線L11と二次巻線L12のインダクタンス値が20nH,三次巻線L13のインダクタンス値が80nHとなる。これでは、トランス104,114として構成するのは困難である。また、入力キャパシタンスC2を放電する回路とエネルギーを電源側に回生する回路が別々であり、ゲート駆動回路101,111としての構成が複雑になる。
第2に、スイッチ素子S3のオフタイミングは、MOSFET2の入力キャパシタンスC2と、トランス104,114の一次巻線L11とによる共振電流波形が、1/4波長になったときに一致させなければならず、こうした時間制御でエネルギーを返還すると、PWM制御手段53を構成する各ICなどの時間遅れが問題になると共に、理想的な制御パルスを生成することが難しくなる。
本発明は上記の各問題点に着目してなされたもので、単独のインダクタンス素子で共振とエネルギーの回生を行ない、さらには回路構成を簡素化できるゲート駆動回路を提供することを、その第1の目的とする。
また本発明の第2の目的は、時間とは無関係にエネルギーを電源側に返還させることができるゲート駆動回路を提供することにある。
本発明における請求項1のゲート駆動回路は、上記第1の目的を達成するために、被駆動素子のゲート入力容量を充電させる充電動作回路と、前記被駆動素子のゲート入力容量を放電させる放電動作回路とを備え、前記充電動作回路は、第1の電源と、第1のスイッチ素子と、前記被駆動素子のゲートに接続するインダクタンス素子とを備え、前記第1のスイッチ素子がオンすると、前記第1の電源からのエネルギーにより、前記インダクタンス素子と前記ゲート入力容量を共振させるものであり、前記放電動作回路は、前記第1の電源よりも低い電圧に設定された第2の電源と、第2のスイッチ素子と、前記インダクタンス素子とを備え、前記第1のスイッチ素子がオン,オフした後に前記第2のスイッチ素子がオンすると、前記ゲート入力容量に蓄積されたエネルギーにより、前記インダクタンス素子と前記ゲート入力容量を共振させ、前記インダクタンス素子から前記第2のスイッチ素子を通して、前記第2の電源にエネルギーを回生させるものであることを特徴とする。
また、請求項2のゲート駆動回路は、上記第2の目的を達成するために、前記充電動作回路が、前記被駆動素子のゲートから前記第1の電源に向かう電流を阻止する第1の一方向素子を備え、前記放電動作回路が、前記第2の電源から前記被駆動素子のゲートに向かう電流を阻止する第2の一方向素子を備えている。
また、請求項3のゲート駆動回路は、前記第2の電源が、前記第1の電源から前記第1の一方向素子と前記第2の一方向素子の電圧降下分の合計を差し引いた値よりも低い電圧に設定される。
また、請求項4のゲート駆動回路は、前記第2の電源が、前記第1の電源の電圧を降下させる電圧降下素子と、この降下した電圧で充電される容量性素子と、により構成される。
また、請求項5のゲート駆動回路は、前記第2の電源が、前記インダクタンス素子から前記第2のスイッチ素子を通して回生されるエネルギーを蓄えるエネルギー蓄積素子と、そのエネルギーを第1の電源に戻すエネルギー帰還回路とを備えている。
本発明における請求項6のゲート駆動回路は、被駆動素子のゲート入力容量を充電させる充電動作回路と、前記被駆動素子のゲート入力容量を放電させる放電動作回路と、回生回路とを備え、前記充電動作回路は、電源と、第1のスイッチ素子と、前記被駆動素子のゲートに接続するインダクタンス素子とを備え、前記第1のスイッチ素子がオンすると、前記電源からのエネルギーにより、前記インダクタンス素子と前記ゲート入力容量を共振させるものであり、前記放電動作回路は、第2のスイッチ素子と、前記インダクタンス素子とを備え、前記第1のスイッチ素子がオン,オフした後に前記第2のスイッチ素子がオンすると、前記ゲート入力容量に蓄積されたエネルギーにより、前記インダクタンス素子と前記ゲート入力容量を共振させて、前記インダクタンス素子にエネルギーを移動させるものであり、前記回生回路は、第3のスイッチ素子を備え、前記第2のスイッチ素子がオフした後も前記第3のスイッチ素子をオンさせ続け、前記第3のスイッチ素子を通じて前記インダクタンス素子に移動したエネルギーを前記電源に返還するものであることを特徴とする。
また、請求項7のゲート駆動回路は、前記充電動作回路が、前記被駆動素子のゲートから前記電源に向かう電流を阻止する第1の一方向素子を備え、前記回生回路が、前記電源から前記放電動作回路に向かう電流を阻止する第2の一方向素子を備えている。
請求項1のゲート駆動回路によれば、第1のスイッチ素子をオンすると、第1の電源からのエネルギーがインダクタンス素子と被駆動素子のゲート入力容量に供給され、インダクタンス素子と被駆動素子のゲート入力容量が共振することで、被駆動素子のゲート入力容量の電位が第1の電源よりも上昇し、当該ゲート入力容量にエネルギーが蓄積される。その後、別な第2のスイッチ素子をオンすると、被駆動素子のゲート入力容量に蓄積されたエネルギーにより、インダクタンス素子と被駆動素子のゲート入力容量が再び共振し、インダクタンス素子から第2のスイッチ素子を通して、第1の電源よりも電圧値の低い第2の電源にエネルギーを返還することができる。
このように、被駆動素子のゲート入力容量の充電時および放電時に、当該ゲート入力容量と共振し、且つ第2の電源にエネルギーを受け渡すインダクタンス素子が単独で構成されるので、比較的小さなインダクタンス値であっても容易に構成することが可能である。また、インダクタンス素子から第2のスイッチ素子を通して第2の電源にエネルギーを返還するので、放電動作回路が実質的に回生回路としての機能をも果たし、ゲート駆動回路としての構成を簡素化することができる。
請求項2のゲート駆動回路によれば、第1のスイッチ素子のオン時には、被駆動素子のゲート入力容量から第1の電源への電流の流れを阻止でき、第2のスイッチ素子のオン時には、第2の電源から被駆動素子のゲートへの電流の流れを阻止できるので、第1および第2の各スイッチ素子のオフタイミングを、時間的な制御無しに設定できる。よって、2つの一方向素子を付加するだけで、時間とは無関係にエネルギーを第2の電源側に返還させることができる。
請求項3のゲート駆動回路によれば、被駆動素子のゲート入力容量の放電時に、当該ゲート入力容量の充電時と同様の電流共振を発生させることが可能になる。
請求項4のゲート駆動回路によれば、第2の電源として独立した電源ソースをわざわざ持たなくても、第1の電源から発生する電源電圧を利用して、第2の電源の電圧を生成することができる。
請求項5のゲート駆動回路によれば、第2の電源として独立した電源ソースをわざわざ持たなくても、インダクタンス素子から第2のスイッチ素子を通して回生されるエネルギーを利用して、第2の電源の電圧を生成することができる。また、エネルギー帰還回路によって、この回生エネルギーを第1の電源に戻すことができる。
請求項6のゲート駆動回路によれば、第1のスイッチ素子をオンすると、電源からのエネルギーがインダクタンス素子と被駆動素子のゲート入力容量に供給され、インダクタンス素子と被駆動素子のゲート入力容量が共振することで、被駆動素子のゲート入力容量の電位が電源よりも上昇し、当該ゲート入力容量にエネルギーが蓄積される。その後、別な第2のスイッチ素子をオンすると、被駆動素子のゲート入力容量に蓄積されたエネルギーにより、インダクタンス素子と被駆動素子のゲート入力容量が再び共振し、このエネルギーがインダクタンス素子に移動する。ここで第2のスイッチ素子をオフにする一方で、第3のスイッチ素子をオンさせ続けると、第3のスイッチ素子を通してインダクタンス素子に移動したエネルギーを電源に返還することができる。
このように、被駆動素子のゲート入力容量の充電時および放電時に、当該ゲート入力容量と共振し、且つ最終的には回生回路を介して電源にエネルギーを受け渡すインダクタンス素子が単独で構成されるので、比較的小さなインダクタンス値であっても容易に構成することが可能である。
請求項7のゲート駆動回路によれば、第1のスイッチ素子のオン時には、被駆動素子のゲート入力容量から電源への電流の流れを阻止でき、第2のスイッチ素子のオン時には、電源から放電動作回路への電流の流れを阻止できるので、第1および第2の各スイッチ素子のオフタイミングを、時間的な制御無しに設定できる。また、第3のスイッチ素子も、インダクタンス素子の全エネルギーが電源側に戻った後にターンオフすればよく、これも時間的な制御無しに設定できる。よって、2つの一方向素子を付加するだけで、時間とは無関係にエネルギーを電源側に返還させることができる。
以下、本発明におけるゲート駆動回路の好ましい実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、従来例と共通の部分には共通の符号を付し、共通する箇所の説明は重複を避けるため極力省略する。
図1〜図3は、本発明の第1実施例におけるゲート駆動回路1を示すもので、回路構成を示す図1において、本実施例では、MOSFET2の入力キャパシタンスC2を充電して、当該MOSFET2をターンオンさせるための充電動作回路41として、直流電源E1と、抵抗R4と、PWM制御手段52からのパルス信号によりオン,オフするスイッチ素子S1と、逆電流防止用のダイオードD3と、インダクタンス素子L1とからなる直列回路を、MOSFET2のゲートに接続する。また、MOSFET2の入力キャパシタンスC2を放電して、当該MOSFET2をターンオフさせるための放電動作回路42として、前記インダクタンス素子L1と、逆電流防止用のダイオードD3と、PWM制御手段53からのパルス信号によりオン,オフするスイッチ素子S3と、抵抗R2と、直流電源E1からダイオードD3,D4の電圧降下分の合計を差し引いた値よりも低い電圧に設定されたシンク電源E2とからなる直列回路を、MOSFET2のゲートに接続している。ここでは、MOSFET2の入力キャパシタンスC2に蓄えられたエネルギーを、放電動作回路42によって直流電源E1にではなく、シンク電源E2に戻すようになっている。つまり、放電動作回路42は電源側にエネルギーを返還する回生回路43としての機能も兼用しており、これによりMOSFET2の入力キャパシタンスC2の充電時および放電時に入力キャパシタンスC2と共振し、且つスイッチ素子S3のオン期間中に電源側にエネルギーを受け渡すインダクタンス素子L1を、磁気的に他の巻線と結合しない単独のものとすることができる。
前記シンク電源E2は、図1に示すように、直流電源E1をソースとした別な回路素子の組み合わせでも実現可能である。シンク電源E2の代替となる電源回路45は、直流電源E1の正極性端子に、電圧降下用のダイオードD6〜D8を直列に接続し、このダイオードD6〜D8と直流電源E1の負極性端子との間に、充電用のコンデンサC1と抵抗R3との並列回路を接続し、このコンデンサC1の正極性端子を、前記スイッチ素子S1に一端を接続した抵抗R2の他端に接続して構成される。なお、ダイオードD6〜D8は、直流電源E1よりも低い電圧をコンデンサC1の正極性端子に発生させるためのもので、その個数は、ダイオードD3,D4の特性などを考慮して適宜決めればよい。また、別な電圧降下素子を用いてもよい。一例として、直流電源E1の電圧は5.3Vであり、シンク電源E2または電源回路45で生成される電圧は4.4Vである。なお、前記ゲート駆動回路1の抵抗R2,R4は、何れもかなり小さな抵抗値であり、実際の回路動作では殆ど無視してよい。
図2は、上記図1の回路構成における各部の波形である。同図において、VPWM1はPWM制御手段52からスイッチ素子S1に供給されるパルス信号であり、VPWM2はPWM制御手段53からスイッチ素子S3に供給されるパルス信号であり、IL1はインダクタンス素子L1を流れる電流(但し、ドット側端子から非ドット側端子への流れをプラスとする)であり、IE1は直流電源E1を流れる電流(但し、負極性から正極性への流れをプラスとする)であり、VC2はMOSFET2の入力キャパシタンスC2両端間の電圧であり、IR2は抵抗R2を流れる電流(但し、他端から一端への流れをプラスとする)である。また図3は、MOSFET2の状態遷移を示したもので、縦軸jLは入力電圧Viを特性インピーダンスZ(=√(L/C))で割った正規化したインダクタンス素子L1を流れる電流値、横軸mcは入力電圧Viで正規化した電圧値である。
これらの各図を参照しながら、本実施例におけるゲート駆動回路1の動作を説明する。入力キャパシタンスC2の充電時において、PWM制御手段52はMOSFET2をターンオンさせるために、充電動作回路41を構成するスイッチ素子S1にオンパルスを供給する。これにより、スイッチ素子S1がターンオンすると、ダイオードD3は導通状態となり、直流電源E1からの電源電圧が、MOSFET2の入力キャパシタンスC2と、トランス104の一次巻線L11に印加されて共振し、共振電流(直列共振)が流れる。このとき、図3の状態1に示すように、スイッチ素子S1がターンオンする直前の初期状態から、スイッチ素子S1がターンオンして、充電動作回路41による直列共振電流波形の1/4波長に至るまでは、入力キャパシタンスC2に流れ込む方向の電流がゼロから徐々に増加すると共に、入力キャパシタンスC2の両端間電圧もゼロから徐々に上昇し、直列共振電流波形の1/4波長に達すると、この電流が最大になると共に、電圧が直流電源E1と等しくなり、その後は、電圧がさらに上昇するものの、電流は次第に減少して、直列共振電流波形の1/2波長に達すると、電流はゼロになると共に、入力キャパシタンスC2には直流電源E1の二倍の電圧(2*E1)がエネルギーとして蓄積される。
こうして、充電動作回路41がMOSFET2の入力キャパシタンスC2の電位を上昇させることにより、当該MOSFET2をターンオンさせるが、入力キャパシタンスC2に流れ込む方向の電流がゼロになると、充電動作回路41を構成するダイオードD3は非導通状態となり、また放電動作回路42のスイッチ素子S3はオフ状態にあるため、入力キャパシタンスC2から充電動作回路41や放電動作回路42への逆方向の電流の流れは阻止され、スイッチ素子S1のオン,オフ状態に拘らず、MOSFET2はオン状態を維持する。よって、スイッチ素子S1のオフタイミングは、入力キャパシタンスC2の充電時における直列共振電流波形の1/2波長を過ぎた後、MOSFET2をターンオフさせるために、スイッチ素子S3をターンオンさせる直前までの間であれば、時間的な制約を受けない。
やがて、入力キャパシタンスC2の放電時になると、PWM制御手段53はMOSFET2をターンオフさせるために、放電動作回路42を構成するスイッチ素子S3にオンパルスを供給する。これを受けてスイッチ素子S3がターンオンすると、ダイオードD4は導通状態となり、入力キャパシタンスC2から、インダクタンス素子L1,ダイオードD4,スイッチ素子S3,抵抗R2,シンク電源E2を経て、入力キャパシタンスC2に至る閉回路が形成される。そのため、MOSFET2の入力キャパシタンスC2とシンク電源E2との電位差を利用して、再びこのMOSFET2の入力キャパシタンスC2とインダクタンス素子L1が電流共振する。このとき、図3の状態2に示すように、スイッチ素子S3がターンオンして、放電動作回路42による前記直列共振電流波形の1/4波長に至るまでは、入力キャパシタンスC2から流れ出る方向の電流がゼロから徐々に増加すると共に、入力キャパシタンスC2の両端間電圧は直流電源E1の二倍の電圧値から徐々に降下し、直列共振電流波形の1/4波長に達すると、この電流が最大になると共に、電圧が直流電源E1と等しくなり、その後は、電流が次第に減少しつつ、電圧もさらに降下して、直列共振電流波形の1/2波長に達すると、入力キャパシタンスC2からの電流はゼロになると共に、入力キャパシタンスC2の両端間電圧もゼロになり、当該入力キャパシタンスC2に蓄えられていた全てのエネルギーが、回生回路43を兼ねるシンク電源E2側に返還される。
こうして、放電動作回路42がMOSFET2の入力キャパシタンスC2の電位を降下させることにより、当該MOSFET2をターンオフさせるが、入力キャパシタンスC2からインダクタンス素子L1を通して放電動作回路42に流れ出る方向の電流がゼロになると、放電動作回路42を構成するダイオードD4は非導通状態となり、また充電動作回路41のスイッチ素子S1はオフ状態にあるため、充電動作回路41や放電動作回路42から入力キャパシタンスC2への電流の流れは阻止され、スイッチ素子S3のオン,オフ状態に拘らず、MOSFET2はオフ状態を維持する。よって、スイッチ素子S3のオフタイミングは、入力キャパシタンスC2の放電時における直列共振電流波形の1/2波長を過ぎた後、MOSFET2をターンオンさせるために、スイッチ素子S1をターンオンさせる直前までの間であれば、時間的な制約を受けない。
つまり、本実施例のゲート駆動回路1では、単独のインダクタンス素子L1と入力キャパシタンスC2とによる共振を利用して、このインダクタンス素子L1と入力キャパシタンスC2から直接、別な巻線を介在させることなく、時間とは無関係にエネルギーを直流電源E1とは別のシンク電源E2側に返還させることができる。
なお、上記ゲート駆動回路1では、MOSFET2の入力キャパシタンスC2に充電する際と放電する際の損失が実際には存在するため、シンク電源E2側にエネルギーを完全に返還できない。そのため、図3に示す電流と電圧の軌跡は、その半径が次第に大きくなる。こうした損失がなければ、電流と電圧の軌跡は、その半径が一定に保たれる。また、前述したように、入力キャパシタンスC2を放電する際のシンク電源E2は、入力キャパシタンスC2を充電する際の直流電源E1よりも、ダイオードD3,D4の電圧降下分だけ電圧値を低く設定する必要がある(例えば、ダイオードD3,D4の順方向電圧降下が何れもVfであれば、E2≦E1−2Vf)。
さらに、図1の回路において、シンク電源E2の代わりに電源回路45を用いてもよい。この場合は、シンク電源E2を電源回路45に置き換えるだけで、上述した動作説明の通りとなる。
以上のように、本実施例では、被駆動素子であるMOSFET2の入力キャパシタンス(ゲート入力容量)C2を充電させる充電動作回路41と、MOSFET2の入力キャパシタンスC2を放電させる放電動作回路42とを備え、充電動作回路41は、第1の電源である直流電源E1と、第1の制御手段52からのパルス信号によりオン,オフする第1のスイッチ素子S1と、MOSFET2のゲートに直列に接続するインダクタンス素子L1とを備え、スイッチ素子S1がオンすると、直流電源E1からのエネルギーにより、このインダクタンス素子L1と入力キャパシタンスC2を共振させる一方で、前記放電動作回路42は、直流電源E1よりも低い電圧に設定された第2の電源としてのシンク電源E2と、第2の制御手段53からのパルス信号によりオン,オフする第2のスイッチ素子S3と、充電動作回路41と共有するインダクタンス素子L1とを備え、スイッチ素子S1がオン,オフした後にスイッチ素子S3がオンすると、入力キャパシタンスC2に蓄積されたエネルギーにより、インダクタンス素子L1と入力キャパシタンスC2を共振させ、インダクタンス素子L1からスイッチ素子S3を通して、シンク電源E2にエネルギーを回生させるように構成している。
こうすると、スイッチ素子S1をオンすると、直流電源E1からのエネルギーがインダクタンス素子L1と入力キャパシタンスC2に供給され、インダクタンス素子L1と入力キャパシタンスC2が共振することで、入力キャパシタンスC2の電位が直流電源E1よりも上昇し、当該入力キャパシタンスC2にエネルギーが蓄積される。その後、別なスイッチ素子S3をオンすると、入力キャパシタンスC2に蓄積されたエネルギーにより、インダクタンス素子L1と入力キャパシタンスC2が再び共振し、インダクタンス素子L1からスイッチ素子S3を通して、直流電源E1よりも電圧値の低いシンク電源E2にエネルギーを返還することができる。
このように、入力キャパシタンスC2の充電時および放電時に、当該入力キャパシタンスC2と共振し、且つシンク電源E2にエネルギーを受け渡すインダクタンス素子L1が単独で構成されるので、比較的小さなインダクタンス値であっても容易に構成することが可能である。また、インダクタンス素子L1からスイッチ素子S3を通してシンク電源E2にエネルギーを返還するので、放電動作回路42が実質的に回生回路43としての機能をも果たし、ゲート駆動回路1としての構成を簡素化することができる。
また本実施例では、MOSFET2のゲートから直流電源E1に向かう電流を阻止する第1の一方向素子たるダイオードD3を、充電動作回路41に備えており、シンク電源E2からMOSFET2のゲートに向かう電流を阻止する第2の一方向素子たるダイオードD4を、放電動作回路42に備えている。
こうすると、スイッチ素子S1のオン時には、MOSFET2の入力キャパシタンスC2から直流電源E1への電流の流れを阻止でき、スイッチ素子S3のオン時には、シンク電源E3から入力キャパシタンスC2への電流の流れを阻止できるので、スイッチ素子S1,S3のオフタイミングを、時間的な制御無しに設定できる。よって、2つの一方向素子(ダイオードD3,D4)を付加するだけで、時間とは無関係にエネルギーをシンク電源E2側に返還させることができる。
また、本実施例のように、直流電源E1からダイオードD3,D4の電圧降下分の合計を差し引いた値よりも低い電圧に、シンク電源E2を設定することにより、入力キャパシタンスC2の放電時に、入力キャパシタンスC2の充電時と同様の電流共振を発生させることが可能になる。
さらに本実施例では、直流電源E1の電圧を降下させる電圧降下素子としてのダイオードD6〜D8と、この降下した電圧で充電される容量性素子としてのコンデンサC1とにより、シンク電源E2の代わりとなる第2の電源としての電源回路45を構成してもよい。こうすれば、独立した電源ソースをわざわざ持たなくても、直流電源E1から発生する電源電圧を利用して、第2の電源の電圧を生成することができる。
次に、本発明の第2実施例を図4〜図6に基づき説明する。回路図を示す図4において、本実施例のゲート駆動回路11は、第1実施例におけるゲート駆動回路1を改良したもので、前記シンク電源E2や電源回路45に代わって、第2電源として別な電源回路47が設けられており、また入力キャパシタンスC2の両端間には、当該入力キャパシタンスC2のエネルギーが全てインダクタンス素子L1側に移動した後に導通する一方向素子としてのダイオードD5が接続される。なお、スイッチ素子S1,S3と、ダイオードD3,D4,D5には、それぞれ導通時の抵抗成分が抵抗R8,R6,R5,R3,R7として直列に接続されているが、その抵抗値は何れもかなり小さく、実際の回路動作では殆ど無視してよい。
前記電源回路47は、スイッチ素子S3の他端と接地ラインとの間に接続され、実際には抵抗R2と接地ラインとの間に接続されるコンデンサC3と、このコンデンサC3の両端間に接続されるインダクタンス素子L2とスイッチ素子S2との直列回路と、インダクタンス素子L2とスイッチ素子S2の接続点にアノードを接続し、カソードを直流電源E4の正極性端子に接続したダイオードD6と、により構成される。また、MOSFETなどで構成されるスイッチ素子S2は、前記スイッチ素子S3と同じパルス信号が制御手段53から与えられるようになっている。これにより、スイッチ素子S2,S3のオン時には、入力キャパシタンスC2からの回生エネルギーが、インダクタンス素子L1からスイッチ素子S3を通して、エネルギー蓄積素子であるインダクタンス素子L2とコンデンサC3に蓄えられ、その後でスイッチ素子S2,S3がターンオフすると、インダクタンス素子L2の慣性電流を利用してダイオードD6を導通状態にし、インダクタンス素子L2やコンデンサC3に蓄えられた回生エネルギーを、最終的に直流電源E1に戻すように構成している。そしてここでも、電源回路47の電圧E2は、直流電源E1からダイオードD3,D4の電圧降下分の合計を差し引いた値よりも低い電圧に設定される。
図5は、上記図4の回路構成における各部の波形である。同図において、VPWM1,VPWM2,IL1,IE1,VC2は前記図2と同じ箇所の波形であり、さらにここでは、コンデンサC3の両端間電圧VC3と、インダクタンス素子L2を流れる電流IL2(但し、図4で示す非ドット側端子からドット側端子への流れをプラスとする)と、ダイオードD6を流れる電流ID6(但し、アノードからカソードへの流れをプラスとする)とを示している。また図6は、MOSFET2の状態遷移を示したもので、縦軸jLは入力電圧Viを特性インピーダンスZ(=√(L/C))で割った正規化したインダクタンス素子L1を流れる電流値、横軸mcは入力電圧Viで正規化した電圧値である。
これらの各図を参照しながら、本実施例におけるゲート駆動回路1の動作を説明する。入力キャパシタンスC2の充電時における動作は、第1実施例と全く同じなので、その説明は省略する。入力キャパシタンスC2の放電時になると、PWM制御手段53はMOSFET2をターンオフさせるために、放電動作回路42を構成するスイッチ素子S3にオンパルスを供給すると共に、電源回路47を構成する別なスイッチ素子S2にも同様のオンパルスを供給する。ここでスイッチ素子S3がターンオンすると、ダイオードD4は導通状態となり、入力キャパシタンスC2に蓄えられたエネルギーによって、当該入力キャパシタンスC2とインダクタンス素子L1が電流共振する。このとき、図6の状態2に示すように、スイッチ素子S3がターンオンして、放電動作回路42による前記直列共振電流波形の1/4波長に至るまでは、入力キャパシタンスC2から流れ出る方向の電流がゼロから徐々に増加すると共に、入力キャパシタンスC2の両端間電圧は直流電源E1の二倍の電圧値から徐々に降下する。そして、図5に示すように、入力キャパシタンスC2の両端間電圧もゼロになって、入力キャパシタンスC2のエネルギーがインダクタンス素子L1に移ると、今度はダイオードD5が導通して、インダクタンス素子L1を流れる電流は直線的に減少し、電源回路47を構成する別なスイッチ素子S2もオンしている関係で、インダクタンス素子L2やコンデンサC3に回生エネルギーが移動する。スイッチ素子S2がオンしている間は、インダクタンス素子L2とコンデンサC3とによる並列回路が構成されるので、インダクタンス素子L1から全ての回生エネルギーが電源回路47側に返還された後も、インダクタンス素子L2は、電源回路47の電源電圧E2が発生する抵抗R2とコンデンサC3の接続点を一端として、他端への電流の流れが直線的に増加する。このとき、放電動作回路42を構成するダイオードD4は非導通状態となり、また充電動作回路41のスイッチ素子S1はオフ状態にあるため、充電動作回路41や放電動作回路42から入力キャパシタンスC2への電流の流れは阻止され、スイッチ素子S3のオン,オフ状態に拘らず、MOSFET2はオフ状態を維持する。よって、この実施例でも、スイッチ素子S3のオフタイミングは、インダクタンス素子L1に蓄えられたエネルギーが電源回路47に回生された後、MOSFET2をターンオンさせるために、スイッチ素子S1をターンオンさせる直前までの間であれば、時間的な制約を受けない。
やがて、スイッチ素子S2,S3が同時にターンオフすると、インダクタンス素子L2にそれまで流れていた電流によって、ダイオードD6は導通状態に切り替わり、インダクタンス素子L2やコンデンサC3に一時的に蓄えられていた回生エネルギーは、最終的に直流電源E1に戻される。
このように、本実施例においても、入力キャパシタンスC2の充電時および放電時に、当該入力キャパシタンスC2と共振し、且つ電源回路47にエネルギーを受け渡すインダクタンス素子L1が単独で構成されるので、比較的小さなインダクタンス値であっても容易に構成することが可能である。また、インダクタンス素子L1からスイッチ素子S3を通して電源回路47ひいては直流電源E1にエネルギーを返還するので、放電動作回路42が実質的に回生回路43としての機能をも果たし、ゲート駆動回路11としての構成を簡素化することができる。
また、この実施例では、第2の電源である電源回路47が、インダクタンス素子L1からスイッチ素子S3を通して回生されるエネルギーを蓄えるエネルギー蓄積素子としてのインダクタンス素子L2およびコンデンサC3と、スイッチ素子S3がオフすると、インダクタンス素子L2およびコンデンサC3に蓄えたエネルギーを第1の電源である直流電源E1に戻すエネルギー帰還回路としてのスイッチ素子S2およびダイオードD6を備えている。
こうすることで、第2の電源として独立した電源ソースをわざわざ持たなくても、インダクタンス素子L1からスイッチ素子S3を通して回生されるエネルギーを利用して、電源回路47の電圧を生成することができる。また、エネルギー帰還回路であるスイッチ素子S2とダイオードD6によって、この回生エネルギーを直流電源E1側に戻すことができる。
次に、本発明の第3実施例を図7および図8に基づき説明する。回路図を示す図7において、ここでのゲート駆動回路21は、MOSFET2の入力キャパシタンスC2を充電する充電動作回路41として、従来例の図9と同様に、MOSFET2のゲート・ソース間に、直流電源E1と、抵抗R4と、スイッチ素子S1と、抵抗R8と、ダイオードD3と、抵抗R10と、インダクタンス素子L1とを順に接続した直列回路が介挿され、MOSFET2の入力キャパシタンスC2を放電する充電動作回路42として、MOSFET2のゲート・ソース間に、前記充電動作回路41と共通のインダクタンス素子L1と、抵抗R10の他に、スイッチ素子S3と、抵抗R6とを順に接続した直列回路が介挿される。さらに、入力キャパシタンスC2の放電エネルギーを直流電源E1側に返還する回生回路43として、MOSFET2のゲートと、直流電源E1の正極性ひいては抵抗R4の他端との間には、前記充電動作回路41および放電動作回路42と共通のインダクタンス素子L1と、抵抗R10の他に、ダイオードD8と、抵抗R9と、スイッチ素子S4との直列回路が介挿される。
52,53,54は、前記スイッチ素子S1,S3,S4にそれぞれパルス信号を供給する制御手段で、各スイッチ素子S1,S3,S4は、対応する制御手段からオンパルスが与えられるとオンするようになっている。スイッチ素子S1,S3は、前述したとおりMOSFET2のオンタイミングとオフタイミングをそれぞれ決定するものであるが、本実施例で新たに付加されたスイッチ素子S4は、少なくともスイッチ素子S3のオン期間中にターンオンし、スイッチ素子S3がターンオフした後も、インダクタンス素子L1に蓄えられた全エネルギーが、ダイオードD8およびスイッチ素子S4を通して直流電源E1に戻るまでオン状態を継続するように動作する。
また第2実施例と同様に、この実施例においても、入力キャパシタンスC2の両端間には、当該入力キャパシタンスC2のエネルギーが全てインダクタンス素子L1側に移動した後に導通する一方向素子としてのダイオードD5が接続される。
なお、前記直流電源E1と直列に接続する抵抗R4と、インダクタンス素子L1と直列に接続する抵抗10の各抵抗値は、それぞれかなり小さく、実際の回路動作では殆ど無視してよい。また、スイッチ素子S1,S3,S4には、それぞれ導通時の抵抗成分が抵抗R8,R6,R9として直列に接続されているが、その抵抗値は何れもかなり小さく、これも実際の回路動作では殆ど無視してよい。さらに、スイッチ素子S1,S3,S4が例えばMOSFETの場合、素子に内蔵するボディダイオードとして、その両端間には当該スイッチ素子S1,S3,S4に流れる電流とは逆方向に導通するダイオードD1,D2,D7が並列に接続される。前記ダイオードD3は、スイッチ素子S1のボディダイオードであるダイオードD1を通して、電流が流れるのを防止するために設けられており、またダイオードD8は、スイッチ素子S4のボディダイオードであるダイオードD7を通して、電流が流れるのを防止するために設けられている。
図8は、上記図7の回路構成における各部の波形である。同図において、VPWM1,VPWM2,IL1,IE1,VC2は前記図2と同じ箇所の波形であり、さらにここでは、PWM制御手段54からスイッチ素子S4に供給されるパルス信号VPWM3が示されている。
これらの各図を参照しながら、本実施例におけるゲート駆動回路21の動作を説明する。制御手段52からスイッチ素子S1にオンパルスを供給したときの、入力キャパシタンスC2の充電時における動作は、第1実施例や第2実施例と全く同じなので、その説明は省略する。
入力キャパシタンスC2の放電時になると、PWM制御手段53はMOSFET2をターンオフさせるために、放電動作回路42を構成するスイッチ素子S3にオンパルスを供給する。また、これと同じタイミングで、PWM制御手段54から回生回路43を構成する別なスイッチ素子S4にオンパルスを供給する。スイッチ素子S3がターンオンすると、入力キャパシタンスC2から、インダクタンス素子L1,抵抗R10,スイッチ素子S3,および抵抗R6を経て、入力キャパシタンスC2に戻る閉回路が形成され、入力キャパシタンスC2に蓄えられたエネルギーによって、当該入力キャパシタンスC2とインダクタンス素子L1が電流共振する。このとき、スイッチ素子S3がターンオンして、放電動作回路42による前記直列共振電流波形の1/4波長に至るまでは、入力キャパシタンスC2から流れ出る方向の電流がゼロから徐々に増加すると共に、入力キャパシタンスC2の両端間電圧は直流電源E1の二倍の電圧値から徐々に降下する。そして、前記直列共振電流波形の1/4波長に達した時点で、入力キャパシタンスC2の両端間電圧がゼロになり、入力キャパシタンスC2の全エネルギーがインダクタンス素子L1に移動すると、今度はダイオードD5が導通して、インダクタンス素子L1からの電流はダイオードD5をバイパスして前記閉回路を流れる。そのため、この閉回路中の素子や線材の抵抗分(具体的には、図7に示す抵抗R6,R10)により、インダクタンス素子L1を流れる電流は、スイッチ素子S3がターンオフするまで徐々に直線的に減少する。MOSFET2は、入力キャパシタンスC2の両端間電圧がゼロに降下することでターンオフする。
なお、スイッチ素子S3のオン期間中は、回生回路43のダイオードD8が非導通状態にあり、回生回路43が放電動作回路42から切り離されているので、スイッチ素子S4をターンオンするタイミングは、スイッチ素子S3がターンオンするタイミングよりも遅れてもよい。但し、スイッチ素子S3,S4を同時に立ち上げる方が、制御手段53,54からのパルス信号を生成しやすい利点がある。また、スイッチ素子S3のオフタイミングは、ダイオードD8が非導通状態にあることにより、直流電源E1から放電動作回路42への電流の流れ込みを考慮しなくてもよいので、前記直列共振電流波形が1/4波長に達した後であれば、時間的な制約を受けない。しかし、スイッチ素子S3のオン期間が延びると、上述した素子や線材の抵抗分に起因するエネルギーロスが大きくなるので、できるだけ直列共振電流波形が1/4波長に達した直後であることが望ましい。
やがて、スイッチ素子S3がスイッチ素子S4よりも先にターンオフすると、今度は回生回路43のダイオードD8が導通し、インダクタンス素子L1から、抵抗R10,ダイオードD8,抵抗R9,スイッチ素子S4,抵抗R4を経て、直流電源E1に電流が流れる。したがって、放電動作回路42によって一時的にインダクタンス素子L1に蓄えられたエネルギーが、直流電源E1側に返還される。その後、スイッチ素子S4はターンオフするが、このスイッチ素子S4のオフタイミングは、インダクタンス素子L1に蓄えられた全エネルギーが直流電源E1に回生された後、MOSFET2をターンオンさせるために、スイッチ素子S1をターンオンさせる直前までの間であれば、時間的な制約を受けない。
以上のように、本実施例では、被駆動素子であるMOSFET2の入力キャパシタンス(ゲート入力容量)C2を充電させる充電動作回路41と、MOSFET2の入力キャパシタンスC2を放電させる放電動作回路42と、回生回路43とを備え、
前記充電動作回路は、充電動作回路41は、電源としての直流電源E1と、第1の制御手段52からのパルス信号によりオン,オフする第1のスイッチ素子S1と、MOSFET2のゲートに直列に接続するインダクタンス素子L1とを備え、スイッチ素子S1がオンすると、直流電源E1からのエネルギーにより、このインダクタンス素子L1と入力キャパシタンスC2を共振させ、放電動作回路42は、第2の制御手段53からのパルス信号によりオン,オフする第2のスイッチ素子S3と、充電動作回路41と共有するインダクタンス素子L1とを備え、スイッチ素子S1がオン,オフした後にスイッチ素子S3がオンすると、入力キャパシタンスC2に蓄積されたエネルギーにより、インダクタンス素子L1と入力キャパシタンスC2を共振させて、インダクタンス素子L1にエネルギーを移動させ、さらに回生回路43は、第3のスイッチ素子S4を備え、前記スイッチ素子S3がオフした後もスイッチ素子S4をオンさせ続けることで、このスイッチ素子S4を通じてインダクタンス素子L1に移動したエネルギーを直流電源E1に返還するように構成している。
この場合、スイッチ素子S1をオンすると、直流電源E1からのエネルギーがインダクタンス素子L1とMOSFET2の入力キャパシタンスC2に供給され、インダクタンス素子L1とMOSFET2の入力キャパシタンスC2が共振することで、MOSFET2の入力キャパシタンスC2の電位が直流電源E1よりも上昇し、当該入力キャパシタンスC2にエネルギーが蓄積される。その後、別なスイッチ素子S3をオンすると、MOSFET2の入力キャパシタンスC2に蓄積されたエネルギーにより、インダクタンス素子L1とMOSFET2の入力キャパシタンスC2が再び共振し、このエネルギーがインダクタンス素子L1に移動する。ここでスイッチ素子S3をオフにする一方で、スイッチ素子S4をオンさせ続けると、スイッチ素子S4を通してインダクタンス素子L1に移動したエネルギーを直流電源E1に返還することができる。
このように、MOSFET2の入力キャパシタンスC2の充電時および放電時に、当該入力キャパシタンスC2と共振し、且つ最終的には回生回路43を介して直流電源E1にエネルギーを受け渡すインダクタンス素子L1が単独で構成されるので、比較的小さなインダクタンス値であっても容易に構成することが可能である。
また本実施例では、MOSFET2のゲートから直流電源E1に向かう電流を阻止する第1の一方向素子たるダイオードD3を、充電動作回路41に備えており、直流電源E1から放電動作回路42に向かう電流を阻止する第2の一方向素子たるダイオードD8を、回生回路43に備えている。
こうすると、スイッチ素子S1のオン時には、MOSFET2の入力キャパシタンスC2から直流電源E1への電流の流れを阻止でき、スイッチ素子S3のオン時には、直流電源E1から放電動作回路42への電流の流れを阻止できるので、各スイッチ素子S1,S3のオフタイミングを、時間的な制御無しに設定できる。また、別なスイッチ素子S4も、インダクタンス素子L1の全エネルギーが直流電源E1側に戻った後にターンオフすればよく、これも時間的な制御無しに設定できる。よって、2つの一方向素子であるダイオードD3,D8を付加するだけで、時間とは無関係にエネルギーを直流電源E1に返還させることができる。
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲において種々の変形実施が可能である。上記各実施例におけるMOSFET2は、スイッチング電源装置のスイッチング素子に適用されるが、制御端子付きの半導体素子を有するあらゆる電子回路に、ゲート駆動回路1,11,21を適用することができる。また、制御手段52,53,54のオンパルスでスイッチ素子S1〜S4をオンさせるのではなく、制御手段52,53のオフパルスでスイッチ素子S1〜S4をオンさせてもよく、MOSFET2も本実施例とオン,オフ動作が逆のものであってもよい。したがって、実施例中の充電動作回路41がMOSFET2をターンオフさせ、放電動作回路42がMOSFET2をターンオンさせる構成であっても構わない。また、ダイオードD3,D4,D8に代わる一方向素子として、例えばサイリスタなどの制御端子付きのものを用いてもよい。