以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明を適用した排ガス浄化システム1を、内燃機関(以下、「エンジン」という。)3とともに示している。また、エンジン3は、車両(図示せず)に搭載された、例えば、4気筒(1つのみ図示)のディーゼルエンジンである。
エンジン3のピストン3aとシリンダヘッド3bの間には、燃焼室3cが形成されている。シリンダヘッド3bには、吸気管4及び排気管5(排気系)がそれぞれ接続されるとともに、燃料噴射弁(以下、「インジェクタ」という。)6が、燃焼室3cに臨むように取り付けられている。
インジェクタ6は、燃焼室3cの天壁中央部に配置されており、コモンレールを介して、高圧ポンプ及び燃料タンク(いずれも図示せず)に順に接続されている。インジェクタ6の開弁時間である燃料噴射量TOUTは、ECU2からの駆動信号によって制御される(図2を参照。)。
また、エンジン3のクランクシャフト3dには、マグネットロータ30aが取り付けられており、このマグネットロータ30aとMREピックアップ30bによって、クランク角センサ30(運転状態検出手段)が構成されている。クランク角センサ30は、クランクシャフト3dの回転に伴い、パルス信号であるCRK信号及びTDC信号をECU2に出力する。
CRK信号は、所定のクランク角(例えば30゜)ごとに出力される。ECU2は、このCRK信号に基づき、エンジン3の回転数(以下、「エンジン回転数」という。)NEを求める。TDC信号は、各気筒のピストン3aが吸気行程開始時のTDC(上死点)付近の所定クランク角度位置にあることを表す信号であり、4気筒タイプの本例では、クランク角180゜ごとに出力される。
吸気管4には、過給装置7が設けられており、過給装置7は、ターボチャージャーで構成された過給機8と、これに連結されたアクチュエータ9と、ベーン開度制御弁10を備えている。
過給機8は、吸気管4に設けられた回転自在のコンプレッサブレード8aと、排気管5に設けられた回転自在のタービンブレード8b及び複数の回動自在の可変ベーン8c(2つのみ図示)と、これらのブレード8a,8bを一体に連結するシャフト8dとを有している。過給機8は、排気管5内の排ガスによりタービンブレード8bが回転駆動されるのに伴い、これと一体のコンプレッサブレード8aが回転駆動されることによって、吸気管4内の吸入空気を加圧する過給動作を行う。
アクチュエータ9は、負圧によって作動するダイアフラム式のものであり、各可変ベーン8cに機械的に連結されている。アクチュエータ9には、負圧ポンプから負圧供給通路(いずれも図示せず)を介して負圧が供給され、この負圧供給通路の途中にベーン開度制御弁10が設けられている。ベーン開度制御弁10は、電磁弁で構成されており、その開度がECU2からの駆動信号で制御されることにより、アクチュエータ9への供給負圧が変化し、それに伴い、可変ベーン8cの開度が変化することにより、過給圧が制御される。
吸気管4の過給機8よりも下流側には、上流側から順に、水冷式のインタークーラ11及びスロットル弁12が設けられている。インタークーラ11は、過給装置7の過給動作により吸入空気の温度が上昇したとき等に、吸入空気を冷却するものである。スロットル弁12には、例えば直流モータで構成されたアクチュエータ12aが接続されている。スロットル弁12の開度(以下、「スロットル弁開度」という。)THは、アクチュエータ12aに供給される電流のデューティ比をECU2で制御することによって、制御される。
ここで、本発明の好適な一実施形態によれば、スロットル弁12の操作を伴わずに、可変ベーン8cの開度を変化させることにより、スロットリングを伴わずに混合気内の吸入空気量の低下をさせる。より具体的には、アクセルペダル(図示しない)の操作に応じたECU2の制御にしたがって、スロットル弁12の操作を伴わずに、可変ベーン8cを開状態にすることにより、吸入空気量を低下させ、排気ガスの空燃比A/Fを理想空燃比(以下、「ストイキ」という。)近傍又はリッチにして排気ガスの浄化を行うようにしている。
また、吸気管4には、過給機8よりも上流側にエアフローセンサ31が設けられており、また、インタークーラ11とスロットル弁12の間に過給圧センサ32が設けられている。エアフローセンサ31は、吸入空気量QAを検出し、過給圧センサ32は、吸気管4内の過給圧PACTを検出し、それらの検出信号は、ECU2に出力される。
さらに、吸気管4の吸気マニホールド4aは、その集合部から分岐部にわたって、スワール通路4bとバイパス通路4cに仕切られており、これらの通路4b,4cはそれぞれ、吸気ポートを介して各燃焼室3cに連通している。
バイパス通路4cには、燃焼室3c内にスワールを発生させるためのスワール装置13が設けられている。スワール装置13は、スワール弁13aと、これを開閉するアクチュエータ13bと、スワール制御弁13cを備えている。アクチュエータ13b及びスワール制御弁13cはそれぞれ、過給装置7のアクチュエータ9及びベーン開度制御弁10と同様に構成されており、スワール制御弁13cは、前記負圧ポンプに接続されている。以上の構成により、スワール制御弁13cの開度がECU2からの駆動信号で制御されることにより、アクチュエータ13bに供給される負圧が変化し、スワール弁13aの開度が変化することによって、スワールの強さが制御される。
また、エンジン3には、EGR管14a及びEGR制御弁14bを有するEGR装置14が設けられている。EGR管14aは、吸気管4と排気管5の間に、具体的には、吸気マニホールド4aの集合部のスワール通路4bと排気管5の過給機8よりも上流側とをつなぐように接続されている。このEGR管14aを介して、エンジン3の排ガスの一部が吸気管4にEGRガスとして還流し、それにより、燃焼室3c内の燃焼温度が低下することによって、排ガス中のNOxが低減される。
EGR制御弁14bは、EGR管14aに取り付けられたリニア電磁弁で構成されており、そのバルブリフト量VLACTが、ECU2からのデューティ制御された駆動信号で制御されることによって、EGRガス量が制御される。
また、EGR装置14には、EGRガスを冷却するためのEGR冷却装置15が設けられており、EGR冷却装置15は、バイパス通路15a、EGR通路切替弁15b及びEGRクーラ15cを有している。バイパス通路15aは、EGR管14aのEGR制御弁14bよりも下流側に、EGR管14aをバイパスするように設けられており、EGR通路切替弁15bはバイパス通路15aの分岐部に取り付けられ、EGRクーラ15cはバイパス通路15aの途中に設けられている。EGR通路切替弁15bは、ECU2による制御によって、EGR通路切替弁15bよりも下流側の部分を、EGR管14a側とバイパス通路15a側に選択的に切り替える。
以上により、EGR通路切替弁15bがバイパス通路15a側に切り替えられた場合には、EGRガスは、バイパス通路15aに通され、EGRクーラ15cで冷却された後、吸気管4に還流する。一方、逆側に切り替えられた場合には、EGRガスは、EGR管14aのみを介し、冷却されることなく吸気管4に還流する。
ここで、本発明の好適な一実施形態によれば、スロットル弁12の操作を伴わずに、EGR制御弁14bを制御して排気ガス還流率(EGR率)を変化させることにより、スロットリングを伴わずに混合気内の吸入空気量の低下をさせる。より具体的には、アクセルペダル(図示しない)の操作に応じたECU2の制御にしたがって、EGR制御弁14bを開状態にして排気ガス還流率(EGR率)を上げることによって、吸入空気量を低下させ、排気ガスの空燃比A/Fをストイキ近傍又はリッチにして排気ガスの浄化を行うようにしている。
また、排気管5の過給機8よりも下流側には、上流側から順に、三元触媒(TWC、Three Way Catalyst)16及びNOx触媒17が設けられている。三元触媒16は、ストイキ雰囲気下において、排ガス中のHC及びCOを酸化するとともに、NOxを還元することによって、排ガスを浄化する。NOx触媒17(NOx捕捉材)は、排ガス中の酸素濃度が高い酸化雰囲気において、排ガス中のNOxを捕捉する。捕捉されたNOxは、酸素濃度が低い還元雰囲気において、排ガス中の還元剤によって還元され、浄化される。NOx触媒17には、その温度(以下、「NOx触媒温度」という。)TLNCを検出するNOx触媒温度センサ36が設けられており、その検出信号はECU2に出力される。
さらに、排気管5の三元触媒16のすぐ上流側及び下流側には、第1のA/Fセンサ33及び第2のA/Fセンサ34がそれぞれ設けられている。第1及び第2のA/Fセンサ33,34はそれぞれ、リッチ領域からリーン領域までの広範囲な空燃比の領域において排ガス中の酸素濃度A/F1,A/F2をリニアに検出する。ECU2は、第1のA/Fセンサ33で検出された酸素濃度A/F1に基づいて、燃焼室3cで燃焼した実際のガスの空燃比を表す実空燃比A/FACTを算出する。ECU2にはさらに、アクセル開度センサ35から、アクセルペダル(図示せず)の操作量(以下、「アクセル開度」という。)APを表す検出信号が出力される。
ECU2は、I/Oインターフェース、CPU、RAM及びROM等からなるマイクロコンピュータで構成されている。前述した各種センサ30〜36からの検出信号は、それぞれ、I/OインターフェースでA/D変換や整形がなされた後、CPUに入力される。
CPUは、これらの入力信号に応じ、ROMに記憶された制御プログラム等にしたがって、エンジン3の運転状態を判別するとともに、判別した運転状態に応じて、燃料噴射量や吸入空気量の制御を含むエンジン3の制御を実行する。
<NOx触媒17の構成>
NOx触媒17は、2層以上の異なる触媒層により被覆された担体からなる一体構造型の触媒であって、アンモニア吸着能を有する固体酸触媒を含む第一触媒層と、貴金属と酸化セリウム系材料とを含む第二触媒層と、を少なくとも備えるNOx浄化触媒で構成されている。このNOx浄化触媒について以下に説明する。
<第一触媒層>
<構成成分>
第一触媒層は、NOx浄化触媒において、排気ガスと直接接する最表面層として使用されることが好ましい。又、実質的に白金成分を含まないことが好ましく、貴金属成分全般を含まないことがより好ましい。
この第一触媒層は、アンモニア吸着能を有する固体酸触媒を含む。該固体酸触媒としては、ゼオライト系触媒を用いることが好ましい。また、ゼオライト系触媒に鉄元素が添加されることが好ましく、さらにセリウム元素が添加されることが好ましい。
ゼオライト系触媒に鉄元素、又はセリウム元素を添加することにより排気ガスの浄化性能、特にNOxの浄化性能が向上する理由は定かではないが、鉄元素についてはNOxや還元成分の吸着が行われ、セリウム元素については酸素の吸蔵放出能力によりNOxの吸着が行われ、また酸素の吸蔵放出能力により還元成分による触媒被毒の抑制が期待される。このように両成分を併せて用いることで、これらの作用が相乗して触媒としてより優れた効果が発揮されるものと思われる。
<第二触媒層>
<構成成分>
第二触媒層には、白金等の貴金属と酸化セリウム系材料とが添加されている。これは、酸化セリウム系材料と白金との貴金属の相乗作用で、NOxの浄化能力が向上するためである。このようにNOxの浄化性能が向上する理由は定かではないが、還元成分による白金の被毒が防止されたり、NOxの吸着作用がその一因ではないかと考えられる。
第二触媒層は、触媒活性種としての貴金属と酸化セリウム系材料、好ましくは、貴金属を担持した酸化セリウム系材料及び貴金属を担持した酸化ジルコニウム系材料を含む。貴金属としては、白金を必須成分とするもので、必要に応じて金、パラジウム、ロジウムを使用することができるが、活性の高さから、白金を主成分として用いることが好ましい。
白金を使用することにより排気ガス中のNOxの浄化が促進される理由は定かでないが、白金により排気ガス中の大部分を占めるNOをNO2に酸化し、このNO2が、本発明に使用される触媒のセリウム成分に吸着することで、還元成分との反応が促進されるのが一因でないかと考えられる。
この触媒活性種の貴金属は、酸化セリウム系材料や上記の酸化セリウム系材料以外の耐熱性無機酸化物(単に耐熱性無機酸化物ともいう)に担持されて使用される。この貴金属の担持については、触媒層を構成する酸化セリウム系材料や耐熱性無機酸化物全体に担持させることもできるが、特定の無機酸化物に担持させても良い。特定の無機酸化物としては高比表面積値を有し、耐熱性に優れる酸化セリウム系材料が含まれることが好ましく、このような酸化セリウム系材料としては、耐熱性向上のため、結晶中に微量のランタン(La)、プラセオジム(Pr)等の希土類元素が取り込まれたものが好ましい。また、他の耐熱性無機酸化物としては、γ−アルミナが好ましい。
<第一触媒層と第二触媒層との積層形態>
本発明においては、NOx触媒17を構成するNOx浄化触媒は、第一触媒層と第二触媒層との配置関係を有している。すなわち、担体上に第二触媒層及び第一触媒層が順次積層され、第一触媒層が最上層となるように構成されていることが好ましい。また、下層の第二触媒層は、第一触媒層側から担体側に向かって、貴金属含量が順次又は段階的に減少するように構成されていることが好ましい。このことは、下層は必ずしも1層である必要はなく、貴金属含量が順次又は段階的に減少するように、多層で構成されていても良いことを意味する。
<NOx浄化装置の配置>
NOx触媒17は、図1に示すように、エンジン3からの排気管5に接続されているが、さらに、NOx触媒17を400℃以下、好ましくは300℃以下で温調可能な、図示しない温度調節手段を備えていても良い。
また、エンジン3からの排気管5には、その排気方向に沿って、三元触媒16と、NOx触媒17と、が順次配置されている構成が好ましい。そして、この場合、NOx触媒17がエンジン3からの熱影響を実質的に受けない位置に離れて配置されることが好ましい。このNOx触媒17は、低温における運転領域で十分なNOx浄化能力を有することを特徴としている。したがって、エンジン3からの熱影響を実質的に受けない位置に離れて配置しても、十分なNOx除去効果を得ることができる。具体的には、NOx触媒17を、例えば車両の床下等へ配置しても良く、本発明におけるNOx触媒17はレイアウト上の自由度が高いという特徴がある。
<第1実施例>
ここで、ディーゼル用のNOx触媒17が作用する温度域は、約250℃〜400℃であり、また、NOx触媒17に捕捉(以下、「被毒」という。)されている硫黄酸化物(以下、「SOx」という。)の除去を行うための温度域は、約600℃である。したがって、SOxの除去制御中(つまり、約600℃のとき)は、NOxの処理能力が低下してしまい、NOx触媒17が作用しているときに比べて、NOxが約90パーセント増加してしまう。
本発明に係る排ガス浄化システム1は、NOx触媒17をSOxの除去が可能な高温(約500℃〜700℃)の状態にしつつ、NOx触媒17の上流側に配置されている三元触媒16へ流入する排気ガスの空燃比A/Fをストイキ(14.7)以下に制御することにより、NOxの浄化と、SOxの除去を同時に行うことを可能とする。以下に、NOxの浄化と、SOxの除去を同時に行うための制御について、図1の簡略図である図3を用いて説明する。なお、以下では、図1と同一の構成要件には同一の名称及び番号を付す。
排ガス浄化システム1は、図3に示すように、エンジン3から排出された排気ガスが通る排気管5に第1のA/Fセンサ33(空燃比検出手段)と、三元触媒16(第一の浄化部)と、NOx触媒17(第二の浄化部)とが配置されており、ECU2により各種の制御が行われる。
また、三元触媒16には、三元触媒16の温度を検出する三元触媒温度センサ40(温度検出手段)が設けられている。また、三元触媒温度センサ40は、検出信号をECU2に出力する。
ECU2は、図3に示すように、第1のROM41(第一の格納手段)と、A/F制御部42(空燃比制御手段、制御手段)とを備えている。
第1のROM41は、エンジン3のトルクと回転数との関係から、ストイキ以下である目標空燃比を決定するためのテーブルが格納されている。また、当該テーブルは、例えば、図4に示すように、トルク(0、50、100、150、200)と回転数(0、1000、2000、3000)との関係から、目標空燃比が定められている。また、図4に示すテーブルは、三元触媒16が600℃のときを基準に目標空燃比が定められている。なお、図4に示すテーブルは、一例であって、目標空燃比がストイキ(A/F=14.7)以下であれば良く、特にこれに限られない。
また、A/F制御部42は、エンジン3から検出したトルクと回転数とに基づいて、第1のROM41に格納されているテーブルから目標空燃比を求め、第1のA/Fセンサ33により供給された酸素濃度A/F1が、当該目標空燃比となるようにエンジン3を制御する。
また、ECU2は、より好適に、三元触媒16においてNOxを浄化させるために、第2のROM43(第二の格納手段)と、補正係数算出部44(補正係数算出手段)とを備え、三元触媒16の温度に基づいて、当該目標空燃比を補正する。
第2のROM43は、三元触媒16の温度に対応する補正係数テーブルが格納されている。また、当該補正係数テーブルは、三元触媒温度センサ40により検出された三元触媒16の温度が600℃よりも高い場合には、目標空燃比をリーン側に補正し、また、三元触媒温度センサ40により検出された三元触媒16の温度が600℃よりも低い場合には、目標空燃比をリッチ側に補正する補正係数により構成されており、例えば、図5に示すように、三元触媒16の温度(500℃、600℃、700℃、800℃)に対応する補正係数(0.99、1、1.01、1.02)が定められている。なお、図5に示す補正係数テーブルは、一例であって、特にこれに限られない。
また、補正係数算出部44は、三元触媒温度センサ40により検出された温度に基づいて、第2のROM43に格納されている補正係数テーブルから補正係数を算出し、算出した補正係数をA/F制御部42に出力する。
A/F制御部42は、補正係数算出部44から供給された補正係数に基づいて、第1のROM41から求めた目標空燃比を補正し、第1のA/Fセンサ33により供給された酸素濃度A/F1が、当該補正後の目標空燃比となるようにエンジン3を制御する。
また、A/F制御部42は、具体的には、第1のA/Fセンサ33により供給された酸素濃度A/F1が、目標空燃比よりもリーン側の場合には、ポスト噴射量を増量するようにエンジン3を制御し、また、当該酸素濃度A/F1が、目標空燃比よりもリッチ側の場合には、ポスト噴射量を減量するようにエンジン3を制御する。
このようにして、ECU2は、第1のA/Fセンサ33の酸素濃度A/F1に基づいて、所定のタイミングで、三元触媒16又はNOx触媒17のいずれかをSOxが放出される温度まで昇温をさせるとともに、昇温がなされていない触媒に対して、排気ガスの空燃比をリッチ側に制御する。例えば、ECU2は、昇温部45を制御してNOx触媒17を昇温する(図3を参照。)。
つぎに、排ガス浄化システム1の具体的な制御の手順について、図6に示すフローチャートを用いて説明する。なお、以下では、ECU2により、走行距離又は燃料消費量等によりNOx触媒17のSOxの被毒量が推定され、当該推定結果に基づいて、NOx触媒17のSOxの除去が必要であると判断され、SOxの除去制御の要求がされていることを前提として説明を行う。
ステップS1において、A/F制御部42は、NOx触媒17の温度(床温)がSOx除去可能な温度に達しているかどうかを判断する。具体的には、A/F制御部42は、NOx触媒温度センサ36から供給されたTLNCに基づいて、NOx触媒17の温度が所定範囲内(例えば、500℃〜600℃)であるかどうかを判断する。なお、SOx除去可能な下限温度は、再生時間とSOx除去の頻度によって約500℃〜600℃の範囲で変化する。また、温度は、高いほどSOx除去を効率的に行うことができるが、触媒の劣化を防ぐためには低い方が望ましく、また、通常制御によるEM(排気ガス)により変化する。本実施の形態においては、SOx除去可能な温度を約600℃であるとし、ステップS1の工程においては、当該600℃からSOx除去を行う際の温度と下限温度との差により求まる温度(例えば、100℃)を減算した温度(例えば、500℃)を基準に判断する。なお、所定範囲として示した500℃〜600℃は、例示であって、これに限られない。NOx触媒17の温度は、車種やエンジンの構成、レイアウト等によって変化するものであり、当該所定範囲も適宜変化する。
NOx触媒17の温度がSOx除去可能な温度でない場合(NO)には、ステップS2へ進み、NOx触媒17の温度がSOx除去可能な温度である場合(YES)には、ステップS3へ進む。
ステップS2において、A/F制御部42は、NOx触媒17を所定温度まで昇温する制御を行う。具体的には、A/F制御部42は、ポスト噴射量を増量したり、吸入空気量を増量したりして、NOx触媒17の温度が所定範囲(例えば、500℃〜600℃)以上になるように制御する。なお、燃焼リッチ及びポストリッチの設定は、三元触媒16が600℃以上になるように設定されているため、A/F制御部42は、SOxの除去が可能な最低温度である500℃まで昇温を行うように制御する。
また、ステップS3において、A/F制御部42は、三元触媒16に流入する排気ガスの空燃比A/Fが目標空燃比と同一かどうかを判断する。具体的には、A/F制御部42は、現在の走行状態(エンジン3から検出したトルクと回転数とから求められる)に基づいて、第1のROM41に格納されているテーブル(図4を参照。)から目標空燃比を求める。
また、図4に示すテーブルは、上述したように、三元触媒16の温度が所定範囲内(例えば、600℃〜900℃)のときを基準に目標空燃比が定められているので、三元触媒16の温度に応じて補正を行う。具体的には、A/F制御部42は、補正係数算出部44から供給された補正係数に基づいて、当該目標空燃比を補正する。なお、所定範囲として示した600℃〜900℃は、例示であって、これに限られない。三元触媒16の温度は、車種やエンジンの構成、レイアウト等によって変化するものであり、当該所定範囲も適宜変化する。
ここで、三元触媒16の温度が所定範囲内(例えば、600℃〜900℃)の場合には、供給したCOの反応性が上がるため、COの供給量を減らすことができるので、目標空燃比をリーン側へ補正する。また、三元触媒16の温度が所定範囲内(例えば、600℃〜900℃)の下限値(例えば、600℃)よりも低い場合には、還元剤の反応性が悪くなるため、還元剤の供給量を増やすために目標空燃比をリッチ側へ補正する。
A/F制御部42は、三元触媒16の上流側に設けられている第1のA/Fセンサ33により検出された酸素濃度A/F1が、補正後の目標空燃比と同一かどうかを判断する。同一の場合(YES)には、ステップS4に進み、同一でない場合(NO)には、ステップS5に進む。
ステップS4において、排ガス浄化システム1は、NOx触媒17でSOxの除去を行いつつ、三元触媒16でNOxの浄化を行う。
また、ステップS5において、A/F制御部42は、三元触媒16に流入する排気ガスの空燃比A/Fが目標空燃比よりも小さいかどうかを判断する。三元触媒16に流入する排気ガスの空燃比A/Fが目標空燃比よりも小さい場合(YES)には、ステップS6に進み、三元触媒16に流入する排気ガスの空燃比A/Fが目標空燃比よりも小さくない場合(NO)には、ステップS7に進む。
ステップS6において、A/F制御部42は、ポスト噴射量を減量させるように制御し、空燃比A/Fをリーン側へ補正する。
また、ステップS7において、A/F制御部42は、ポスト噴射量を増量させるように制御し、空燃比A/Fをリッチ側へ補正する。
このようにして、排ガス浄化システム1は、供給するCOを調整するために、リーン側へ補正する場合には、ポスト噴射量を減量し、また、リッチ側へ補正する場合には、ポスト噴射量を増量する。なお、排ガス浄化システム1は、ポスト噴射量を使用していない燃焼リッチの領域では、メイン噴射量を増減制御することにより、空燃比A/Fを補正後の目標空燃比となるように制御する。
したがって、排ガス浄化システム1は、三元触媒16と、当該三元触媒16の下流側にあるNOx触媒17との両方の雰囲気(A/F)がストイキ(14.7)以下となるので、三元触媒16でNOxを浄化しつつ、NOx触媒17でSOxの除去を行うことができる。ゆえに、排ガス浄化システム1は、従来、SOxの除去において90パーセント悪化していたNOxを、ほぼ100パーセント低減することが可能となり、SOx除去制御中の排気ガス(EM)を通常の走行時と同等程度まで低減することが可能となる。
<第2実施例>
ここで、NOx触媒は、排ガスに含まれているSOxにより被毒する。排ガス浄化システムでは、一般的に、NOx触媒に被毒しているSOxを除去するための除去手段を備えており、一定の走行距離や燃料消費量に基づいてNOx触媒に被毒しているSOxの被毒量を推定し、当該推定結果に応じて、除去手段を駆動することにより、NOx触媒の被毒除去を行っている。
ところで、エンジンとNOx触媒との間に三元触媒を設けた排ガス浄化システムの場合には、三元触媒にもSOxが被毒し、車両の走行状況によっては、三元触媒のみにSOxが被毒し、NOx触媒にはSOxが被毒しないような場合が生じ得る。
本発明に係る排ガス浄化システム1は、三元触媒16のSOxの被毒量を考慮して、システム全体のSOxの被毒量を推定し、NOx触媒によるSOx被毒除去の頻度(タイミング)を適正化することにより、燃料消費量を低減することを可能とする。以下に、NOx触媒によるSOx被毒除去の頻度(タイミング)を適正化するための制御について、図1の簡略図である図7を用いて説明する。なお、以下では、図1及び図3と同一の構成要件には同一の名称及び番号を付す。
排ガス浄化システム1は、図7に示すように、エンジン3から排出された排気ガスが通る排気管5に第1のA/Fセンサ33(空燃比検出手段)と、三元触媒16(第一の浄化部)と、NOx触媒17(第二の浄化部)とが配置されており、ECU2により各種の制御が行われる。
また、三元触媒16には、三元触媒16の温度を検出する三元触媒温度センサ40(温度検出手段)が設けられている。また、三元触媒温度センサ40は、検出信号をECU2に出力する。
ECU2は、図7に示すように、三元触媒温度調整部50(温度調整手段)と、NOx触媒温度調整部51(温度調整手段)と、制御部52(捕捉推定量算出手段、動作制御手段、放出量算出手段)とを備えている。
三元触媒温度調整部50は、制御部52から供給される信号に応じて、三元触媒16の温度を調整する。
NOx触媒温度調整部51は、制御部52から供給される信号に応じて、NOx触媒17の温度を調整する。
制御部52は、走行距離又は燃料消費量に基づいて、三元触媒16及びNOx触媒17に被毒されているSOxの被毒推定量をそれぞれ算出する。また、制御部52は、算出された三元触媒16のSOxの被毒推定量に基づいて、NOx触媒17のSOxの被毒推定量を補正し、補正後の被毒推定量に基づいて、NOx触媒17に被毒されているSOxを放出するようにNOx触媒温度調整部51の動作を制御する。
ここで、制御部52の構成について説明する。制御部52は、三元触媒16に被毒されているSOxの被毒推定量をカウントするカウンタ52Aと、NOx触媒17に被毒されているSOxの被毒推定量をカウントするカウンタ52Bと、カウンタ52Aとカウンタ52Bとを制御するカウンタ制御部52Cとを備える。
カウンタ52Aは、カウンタ制御部52Cによりカウント値が加算制御、減算制御又は停止制御され、また、カウント値が所定値に達した場合に、三元触媒温度調整部50に所定の信号を供給する。三元触媒温度調整部50は、カウンタ52Aから供給された信号に応じて、三元触媒16の温度を調整する。
カウンタ52Bは、カウンタ制御部52Cによりカウント値が加算制御、減算制御又は停止制御され、また、カウント値が所定値に達した場合に、NOx触媒温度調整部51に所定の信号を供給する。NOx触媒温度調整部51は、カウンタ52Bから供給された信号に応じて、NOx触媒17の温度を調整する。
カウンタ制御部52Cは、走行距離又は燃料消費量に基づいて、NOx触媒17に被毒されているSOxの被毒推定量を算出し、当該算出結果に応じてカウンタ52Aを制御し、また、走行距離又は燃料消費量に基づいて、NOx触媒17に被毒されているSOxの被毒推定量を算出し、当該算出結果に応じてカウンタ52Bを制御する。
また、具体的には、カウンタ制御部52Cは、走行距離又は燃料消費量に基づいて、三元触媒16がSOxにより被毒されていると判断した場合には、NOx触媒17のSOxの被毒推定量を補正するために、カウンタ52Bを停止制御する。
このようにして、排ガス浄化システム1は、カウンタ制御部52Cにより三元触媒16のSOx被毒推定量に応じて、NOx触媒17のSOx被毒推定量を補正するので、NOx触媒17のSOx被毒推定量を正確に推定することができ、また、カウンタ52Bのカウント値に応じてNOx触媒17のSOx被毒除去の開始タイミングを適正化することができる。
ここで、制御部52が、エンジン3の燃料消費量に基づいて、三元触媒16及びNOx触媒17に被毒されているSOxの被毒推定量をそれぞれ算出する場合の動作について説明する。
制御部52は、燃料消費量に基づいて、三元触媒16がSOxにより被毒されていると判断したときには、NOx触媒17のSOxの被毒推定量を推定するカウンタ52Bを停止制御することにより、NOx触媒17に被毒されているSOxの被毒推定量を補正する。制御部52は、当該補正後の被毒推定量に基づいて、NOx触媒17に被毒されているSOxを放出するようにNOx触媒温度調整部51の動作を制御する。また、制御部52は、例えば、燃料中に含まれる硫黄分を10ppmとし、測定開始からの燃料消費量に基づいてSOx被毒推定量を算出し、例えば、燃料を25L消費したときに、SOxの被毒推定量を0.0005gであると算出する。
つぎに、制御部52が、走行距離に基づいて、三元触媒16及びNOx触媒17に被毒されているSOxの被毒推定量をそれぞれ算出する場合の動作について説明する。
制御部52は、走行距離に基づいて、三元触媒16がSOxにより被毒されていると判断したときには、NOx触媒17のSOxの被毒推定量を推定するカウンタ52Bを走行距離に応じて加算しない、すなわちカウンタ52Bを停止制御することにより、NOx触媒17に被毒されているSOxの被毒推定量を補正する。制御部52は、当該補正後の被毒推定量に基づいて、NOx触媒17に被毒されているSOxを放出するようにNOx触媒温度調整部51の動作を制御する。また、制御部52は、例えば、走行距離が測定開始から400kmに達したかどうかで被毒推定量を算出し、例えば、走行距離が400kmに達した場合には、SOxの被毒推定量を0.0005gであると算出する。
また、ECU2は、より好適に三元触媒16に被毒されているSOxの被毒推定量を算出するために、第3のROM53(格納手段)を備える。
第3のROM53は、三元触媒16の温度と、排気ガスの空燃比A/Fとの関係から、三元触媒16によるSOxの放出量を決定するためのテーブルが格納されている。また、当該テーブルは、例えば、図8に示すように、空燃比A/F(14.7、14.5、14.3、14.1、13.9)と三元触媒16の温度(300℃、400℃、500℃、600℃)との関係から、三元触媒16によるSOxの放出量が定められている。また、SOxの放出量の単位は、g/secである。なお、図8に示すテーブルは、一例であって、特にこれに限られない。
制御部52は、例えば、燃料消費量に基づいて、三元触媒16に被毒されているSOxの被毒推定量を算出(以下、「第1の算出値」という。)し、また、三元触媒温度センサ40により検出された温度と、第1のA/Fセンサ33により検出された酸素濃度A/F1とに基づいて、第3のROM53に格納されているテーブルから、三元触媒16によるSOxの放出量を算出(以下、「第2の算出値」という。)する。制御部52は、第1の算出値から第2の算出値を減算することにより、最終的な三元触媒16に被毒されているSOxの被毒推定量を算出する。
ここで、上述したSOxの被毒推定量を補正する手順の具体例について、図9に示すフローチャートを用いて説明する。なお、以下では、カウンタ52A及びカウンタ52Bは、硫黄分が10ppmと想定し、燃料消費量から算出された値を積算(カウントアップ)する。
ステップS10において、制御部52は、三元触媒16の温度(床温)がSOxを被毒する温度かどうかを判断する。具体的には、制御部52は、三元触媒温度センサ40から供給される検出値に基づいて、三元触媒16の温度が約200℃〜400℃かどうかを判断する。三元触媒16の温度がSOxの被毒温度の場合(YES)には、ステップS11に進み、三元触媒16の温度がSOxの被毒温度ではない場合(NO)には、ステップS14に進む。
ステップS11において、制御部52は、三元触媒16の温度(床温)がSOxの放出温度であり、かつ、排気ガスの空燃比A/Fが三元触媒16のSOx放出可能な空燃比A/Fよりも小さいかどうかを判断する。具体的には、制御部52は、第3のROM53に格納されているテーブルを参照し、三元触媒温度センサ40から供給される検出値に基づいて、三元触媒16の温度がSOxの放出温度であり、かつ、第1のA/Fセンサ33から供給される酸素濃度A/F1に基づいて、排気ガスの空燃比A/Fが三元触媒16のSOx放出可能な空燃比A/Fよりも小さいかどうかを判断する。
三元触媒16の温度(床温)がSOxの放出温度であり、かつ、排気ガスの空燃比A/Fが三元触媒16のSOx放出可能な空燃比A/Fよりも小さい場合(YES)には、ステップS12に進み、三元触媒16の温度(床温)がSOxの放出温度でない、又は、排気ガスの空燃比A/Fが三元触媒16のSOx放出可能な空燃比A/Fよりも小さくない場合(NO)には、ステップS13に進む。
ステップS12において、制御部52は、第3のROM53に格納されているテーブルに基づいて、三元触媒16のSOxの被毒推定量をカウントするカウンタ52Aを減算制御し、NOx触媒17のSOxの被毒推定量をカウントするカウンタ52Bを加算制御する。
ステップS13において、制御部52は、第3のROM53に格納されているテーブルに基づいて、三元触媒16のSOxの被毒推定量をカウントするカウンタ52Aを加算制御し、NOx触媒17のSOxの被毒推定量をカウントするカウンタ52Bを停止制御する。
ステップS14において、制御部52は、三元触媒16の温度(床温)がSOxの放出温度であり、かつ、排気ガスの空燃比A/Fが三元触媒16のSOx放出可能な空燃比A/Fよりも小さいかどうかを判断する。具体的には、制御部52は、第3のROM53に格納されているテーブルを参照し、三元触媒温度センサ40から供給される検出値に基づいて、三元触媒16の温度がSOxの放出温度であり、かつ、第1のA/Fセンサ33から供給される酸素濃度A/F1に基づいて、排気ガスの空燃比A/Fが三元触媒16のSOx放出可能な空燃比A/Fよりも小さいかどうかを判断する。
三元触媒16の温度(床温)がSOxの放出温度であり、かつ、排気ガスの空燃比A/Fが三元触媒16のSOx放出可能な空燃比A/Fよりも小さい場合(YES)には、ステップS15に進み、三元触媒16の温度(床温)がSOxの放出温度でない、又は、排気ガスの空燃比A/Fが三元触媒16のSOx放出可能な空燃比A/Fよりも小さくない場合(NO)には、ステップS16に進む。
ステップS15において、制御部52は、第3のROM53に格納されているテーブルに基づいて、三元触媒16のSOxの被毒推定量をカウントするカウンタ52Aを減算制御し、NOx触媒17のSOxの被毒推定量をカウントするカウンタ52Bを加算制御する。
ステップS16において、制御部52は、第3のROM53に格納されているテーブルに基づいて、三元触媒16のSOxの被毒推定量をカウントするカウンタ52Aを停止制御し、NOx触媒17のSOxの被毒推定量をカウントするカウンタ52Bを加算制御する。なお、ステップS16の工程は、三元触媒16の温度が、SOxの被毒可能な温度ではなく、また、SOxが放出される温度でもない場合に該当するので、従来と同様の手法により、燃料消費量から算出したSOxの被毒推定量をそのままカウンタ52Bに加算するパターンである。
また、カウンタ制御部52Cの制御に応じて変化するカウンタ52Aとカウンタ52Bの動作について、車両の速度の変化と、燃料消費量から算出されたSOxの被毒推定量の変化と、三元触媒16の温度変化とのそれぞれと対比したときのタイムチャートを図10に示す。
また、車両の速度は、図10の(A)に示すように、所定時間、第1の速度で一定走行し、その後、第2の速度まで増加し、その後、所定時間、第2の速度で一定走行するように変化する。
また、燃料消費量から算出されたSOxの被毒推定量は、図10の(B)に示すように、車両の速度変化に応じて変化する。
また、三元触媒16の温度は、図10の(C)に示すように、車両の速度が第1の速度で一定走行しているときには、SOxの被毒可能な温度内で一定に推移し、車両の速度が第2の速度まで増加しているときには、当該増加に伴って温度が上昇し、車両の速度が第2の速度で一定走行しているときには、上昇した温度が漸減するように変化する。また、図10では、三元触媒16の温度がSOxの被毒可能な範囲内で一定に推移しているときを領域1とし、三元触媒16の温度が被毒可能な範囲内で増加しているときを領域2とし、三元触媒16の温度が被毒可能な範囲を超えているときを領域3としている。
ここで、領域1おいては、図10の(D)に示すように、カウンタ52Aは、カウンタ制御部52Cにより第1の割合で加算制御(カウントアップ)され、また、カウンタ52Bは、カウンタ制御部52Cにより停止制御される。
また、領域2においては、図10の(D)に示すように、カウンタ52Aは、カウンタ制御部52Cにより第2の割合で加算制御(カウントアップ)され、また、カウンタ52Bは、カウンタ制御部52Cにより停止制御される。
また、領域3においては、図10の(D)に示すように、カウンタ52Aは、カウンタ制御部52Cにより停止制御され、また、カウンタ52Bは、カウンタ制御部52Cにより一定の割合で加算制御される。
つぎに、走行距離によるSOxの被毒除去の開始タイミングを補正する手順について、図11に示すフローチャートを用いて説明する。また、ECU2は、第4のROM54を備えているものとする。第4のROM54は、三元触媒16のSOxの被毒推定量に基づく補正距離を定めるテーブルである。補正距離テーブルは、例えば、図12に示すように、三元触媒16のSOxの被毒推定量(0、0.0001、0.0002、0.0003、0.0004、0.0005)に対応する積算距離(0、80、160、240、320、400)が定められている。なお、図12に示す補正距離テーブルは、一例であって、特にこれに限られない。
ステップS20において、制御部52は、三元触媒16の温度(床温)がSOxを被毒する温度かどうかを判断する。具体的には、制御部52は、三元触媒温度センサ40から供給される検出値に基づいて、三元触媒16の温度が約200℃〜400℃かどうかを判断する。三元触媒16の温度がSOxの被毒温度の場合(YES)には、ステップS21に進み、三元触媒16の温度がSOxの被毒温度ではない場合(NO)には、ステップS24に進む。
ステップS21において、制御部52は、三元触媒16の温度(床温)がSOxの放出温度であり、かつ、排気ガスの空燃比A/Fが三元触媒16のSOx放出可能な空燃比A/Fよりも小さいかどうかを判断する。具体的には、制御部52は、第3のROM53に格納されているテーブルを参照し、三元触媒温度センサ40から供給される検出値に基づいて、三元触媒16の温度がSOxの放出温度(300℃以上)であり、かつ、第1のA/Fセンサ33から供給される酸素濃度A/F1に基づいて、排気ガスの空燃比A/Fが三元触媒16のSOx放出可能な空燃比A/Fであるストイキ(14.7)よりも小さいかどうかを判断する。
三元触媒16の温度(床温)がSOxの放出温度(300℃以上)であり、かつ、排気ガスの空燃比A/Fが三元触媒16のSOx放出可能な空燃比A/F(14.7)よりも小さい場合(YES)には、ステップS22に進み、三元触媒16の温度(床温)がSOxの放出温度(300℃以上)でない、又は、排気ガスの空燃比A/Fが三元触媒16のSOx放出可能な空燃比A/F(14.7)よりも小さくない場合(NO)には、ステップS23に進む。
ステップS22において、制御部52は、第3のROM53に格納されているテーブルに基づいて、三元触媒16のSOxの被毒推定量をカウントするカウンタ52Aを減算制御し、被毒推定量を算出する。そして、制御部52は、第4のROM54に格納されている補正距離テーブルに基づいて、算出した被毒推定量から積算距離βを求め、基準となる開始判定距離から減算する。このようにして、走行距離に基づいて、SOxの被毒除去の開始タイミングが補正される。
ステップS23において、制御部52は、第3のROM53に格納されているテーブルに基づいて、三元触媒16のSOxの被毒推定量をカウントするカウンタ52Aを加算制御し、被毒推定量を算出する。そして、制御部52は、第4のROM54に格納されている補正距離テーブルに基づいて、算出した被毒推定量から積算距離αを求め、基準となる開始判定距離に加算する。このようにして、走行距離に基づいて、SOxの被毒除去の開始タイミングが補正される。
また、ステップS24において、制御部52は、三元触媒16の温度(床温)がSOxの放出温度であり、かつ、排気ガスの空燃比A/Fが三元触媒16のSOx放出可能な空燃比A/Fよりも小さいかどうかを判断する。具体的には、制御部52は、第3のROM53に格納されているテーブルを参照し、三元触媒温度センサ40から供給される検出値に基づいて、三元触媒16の温度がSOxの放出温度であり、かつ、第1のA/Fセンサ33から供給される酸素濃度A/F1に基づいて、排気ガスの空燃比A/Fが三元触媒16のSOx放出可能な空燃比A/Fよりも小さいかどうかを判断する。
三元触媒16の温度(床温)がSOxの放出温度であり、かつ、排気ガスの空燃比A/Fが三元触媒16のSOx放出可能な空燃比A/Fよりも小さい場合(YES)には、ステップS25に進み、三元触媒16の温度(床温)がSOxの放出温度でない、又は、排気ガスの空燃比A/Fが三元触媒16のSOx放出可能な空燃比A/Fよりも小さくない場合(NO)には、ステップS26に進む。
ステップS25において、制御部52は、第3のROM53に格納されているテーブルに基づいて、三元触媒16のSOxの被毒推定量をカウントするカウンタ52Aを減算制御し、被毒推定量を算出する。そして、制御部52は、第4のROM54に格納されている補正距離テーブルに基づいて、算出した被毒推定量から積算距離γを求め、基準となる開始判定距離から減算する。このようにして、走行距離に基づいて、SOxの被毒除去の開始タイミングが補正される。
ステップS26において、制御部52は、第3のROM53に格納されているテーブルに基づいて、三元触媒16のSOxの被毒推定量をカウントするカウンタ52Aを停止制御する。なお、ステップS26の工程は、三元触媒16の温度が、SOxの被毒可能な温度ではなく、また、SOxが放出される温度でもない場合に該当するので、従来と同様の手法により、燃料消費量から算出したSOxの被毒推定量をそのままカウンタ52Bに加算するパターンであり、基準となる開始判定距離に基づいて、SOxの被毒除去が開始される。
このようにして、排ガス浄化システム1は、三元触媒16のSOxの被毒推定量に応じて、NOx触媒17のSOxの被毒推定量を補正するので、NOx触媒17のSOxの被毒推定量を正確に算出できる。また、排ガス浄化システム1は、正確に算出したNOx触媒17のSOxの被毒推定量に基づいて、NOx触媒17のSOxの被毒除去開始のタイミングを判断するので、当該タイミングを適正化することができ、燃料消費量の低減を図ることができる。また、排ガス浄化システム1は、三元触媒16でNOxの浄化を行いつつ、NOx触媒17でSOxの被毒除去を行うため、NOx触媒17の被毒除去を行うタイミングに応じて、上述したA/F制御部42(空燃比制御手段)による制御動作により、排気ガスの空燃比をリッチ側にする。
また、排ガス浄化システム1は、走行距離に応じてSOxの被毒除去開始のタイミングを判断する場合には、例えば、トータルの走行距離の積算が400kmになった時点で、SOxの被毒除去の制御開始を行う。ここで、三元触媒16がSOxの被毒をしているときは、三元触媒16の下流側に配置されているNOx触媒17はSOxによる被毒が行われないため、NOxの浄化率が低下せず、SOxの被毒除去制御を行う必要がない。
そこで、本発明に係る排ガス浄化システム1は、三元触媒16のSOxの被毒推定量に応じて、SOxの被毒除去開始の判定距離400kmを補正するので、無駄なSOxの被毒除去制御をなくすことができる。また、本発明に係る排ガス浄化システム1は、上述したように、図12に示した補正距離テーブルに基づいて算出した距離を開始判定距離に加算することにより、三元触媒16がSOx被毒するにしたがって開始判定距離が長くなるように補正し、また、三元触媒16からSOxが放出された場合には開始判定距離が短くなるように補正するので、三元触媒16がSOx被毒する分、NOx触媒17のSOxの被毒除去の開始タイミングが延長され、約1〜2パーセントの燃料消費量の改善を図ることができる。
なお、本発明は、上述において説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。さらに、本発明は、車両に搭載されたエンジンに限らず、クランク軸が鉛直方向に配置された船外機等のような船舶推進機用エンジンを含む、様々な産業用の内燃機関に適用できることはもちろんである。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
1 排ガス浄化システム、2 ECU、3 エンジン、4 吸気管、5 排気管、6 インジェクタ、8過給機、8c 可変ベーン、12 スロットル弁、13a スワール弁、14b EGR制御弁、16 三元触媒、17 NOx触媒、30 クランク角センサ、31 エアフローセンサ、33 第1のA/Fセンサ、36 NOx触媒温度センサ、40 三元触媒温度センサ、41 第1のROM、42 A/F制御部、43 第2のROM、44 補正係数算出部、45 昇温部、50 三元触媒温度調整部、51 NOx触媒温度調整部、52 制御部、52A、52B カウンタ、52C カウンタ制御部、53 第3のROM