JP2008127463A - シーリング剤の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】シーリング剤中からラテックス凝集塊を効率的に除去して、ラテックス凝集塊に起因するシーリング剤のゲル化を効果的に防止する。
【解決手段】調液容器12内で、ゴムラテックス、樹脂系エマルジョン及び界面活性剤、並びに所要量の水を混合して混合溶液14を調液した後、この混合溶液14に凍結防止剤18を添加してシーリング剤原液20を調液する。このシーリング剤原液20を少なくとも24時間以上、好ましくは48時間以上に亘って撹拌することなく、調液容器12内に保持(静置)した後、このシーリング剤原液20を、メッシュ数が50メッシュ〜400メッシュのメッシュフィルタからなるフィルタ部材26により濾過し、シーリング剤原液20中に生成されたラテックス凝集塊36を除去し、ラテックス凝集塊36を含まないシーリング剤10を製造する。
【選択図】図1
【解決手段】調液容器12内で、ゴムラテックス、樹脂系エマルジョン及び界面活性剤、並びに所要量の水を混合して混合溶液14を調液した後、この混合溶液14に凍結防止剤18を添加してシーリング剤原液20を調液する。このシーリング剤原液20を少なくとも24時間以上、好ましくは48時間以上に亘って撹拌することなく、調液容器12内に保持(静置)した後、このシーリング剤原液20を、メッシュ数が50メッシュ〜400メッシュのメッシュフィルタからなるフィルタ部材26により濾過し、シーリング剤原液20中に生成されたラテックス凝集塊36を除去し、ラテックス凝集塊36を含まないシーリング剤10を製造する。
【選択図】図1
Description
本発明は、空気入りタイヤのパンク穴を閉塞するために空気入りタイヤの内部に注入されるシーリング剤の製造方法に関する。
近年、空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」という。)がパンクした際に、タイヤ及びホイールを交換することなく、液状のシーリング剤をタイヤの内部へ注入した後、このタイヤの内圧を指定圧まで昇圧することによりタイヤのパンク修理を行うシーリング・ポンプアップ装置が普及している。この種のシーリング・ポンプアップ装置に用いられるシーリング剤としては、ゴムラテックス、樹脂系エマルジョン及び、プロピレングリコールからなる凍結防止剤が撹拌混合されて製造されるものがある。このようなシーリング剤の製造工程では、一般に、ゴムラテックスと粘着剤とを混合して混合溶液を調液した後、この混合容器中に凍結防止剤を注入してシーリング剤原液を製造する。しかし、混合溶液中にプロピレングリコールを注入する際に、凍結防止剤として使用されるプロピレングリコールが水との混和力が非常に強い粘性の液体であることから、このプロピレングリコールと接触する周囲のゴムラテックスから水分を急激に吸収する。このため、周囲のラテックス中のゴム粒子の濃度が非常に高くなり、ゴム粒子同士が融合して凝集塊が生成され、この凝集塊をコアとしてシーリング剤の一部又は全部が固形化(ゲル化)してしまう、という現象が生じ易い。
上記のような凝集塊がシーリング剤に発生することを防止することを目的とするシーリング剤の製造方法としては、例えば、特許文献1に記載されているものが知られている。この特許文献1に示されたシーリング剤の製造方法は、円筒状容器に収容したゴムラテックスと粘着剤との混合溶液に、凍結防止剤を注入攪拌する凍結防止剤注入攪拌ステップを含んでおり、この凍結防止剤注入攪拌ステップでは、先端速度が1.0〜10.0m/秒という比較的早い速度で回転する攪拌羽根の回転により混合溶液を攪拌しながら、凍結防止剤を複数個の注入口から1個の注入口当たり0.01〜1.0リッタ−/分という比較的遅い注入速度で混合溶液の表面に注入する。
上記特許文献1記載のシーリング剤の製造方法によれば、ゴムラテックスと粘着剤との混合溶液を上記速度で攪拌しながら、この混合溶液の表面にプロピレングリコールを遅い注入速度で少しずつゆっくりと注入することにより、このプロピレングリコールが周囲から水分を急激に吸収してラテックス粒子の濃度が局部的に高くなることを抑制でき、この結果、シーリング剤原液中に複数のラテックス粒子が凝集して生成されるラテックス凝集塊の生成を効果的に抑制することができる、という効果を得られる。
また特許文献1には、凍結防止剤注入攪拌ステップで凍結防止剤(エチレングリコール)の注入が完了した後も、ある程度(例えば、5分以上)の時間に亘って攪拌を継続することが好ましいと記載されている。これは、エチレングリコールの注入完了後に、シーリング剤原液の撹拌を一定時間に亘って継続することにより、撹拌中にシーリング剤原液中に生成された微小なラテックス凝集塊の凝集、成長を促進できるので、シーリング剤原液中にラテックス凝集塊が微小なまま存在しているよりも、濾過によりシーリング剤原液中からラテックス凝集塊を除去することが容易になるためである。
ここで、発明者等の知見によれば、シーリング剤原液からのラテックス凝集塊の除去が不十分で、製品としてのシーリング剤中にラテックス凝集塊が所定量以上残存している場合には、ラテックス凝集塊がコアとなってシーリング剤のゲル化が促進される現象が生じ、経時的にシーリング剤によるパンク穴に対する閉塞能力が低下し、長期的にはシーリング剤全体がゲル化してタイヤへ注入不能になるおそれもある。
特開2003−342551号公報
しかしながら、発明者等が特許文献1記載のシーリング剤の製造方法の効果等を確認するための実験を行った結果、シーリング剤原液の撹拌を一定時間に亘って継続した後、このシーリング剤原液を濾過しただけでは、シーリング剤原液中からラテックス凝集塊を十分に除去できず、このシーリング剤原液から製造されたシーリング剤のゲル化を完全に防止できないことが明らかになった。
本発明の目的は、上記事実を考慮して、シーリング剤原液中からラテックス凝集塊を効率的に除去して、ラテックス凝集塊に起因するシーリング剤のゲル化を効果的に防止できるシーリング剤の製造方法を提供することにある。
本発明の請求項1に係るシーリング剤の製造方法は、ゴムラテックス、樹脂系エマルジョン及び凍結防止剤を少なくとも含み、空気入りタイヤのパンク穴を閉塞するために用いられる液状のシーリング剤の製造方法であって、少なくともゴムラテックス及び凍結防止剤を混合することによりシーリング剤原液を調液する調液工程と、前記調液工程により調液されたシーリング剤原液を所定時間に亘って静置することにより、複数のゴムラテックス粒子が凝集したラテックス凝集塊を成長させる凝集塊成長工程と、前記凝集塊成長工程を経たシーリング剤原液を濾過して、該シーリング剤原液中からラテックス凝集塊を除去する凝集塊除去工程と、を有することを特徴とする。
また本発明の請求項2に係るシーリング剤の製造方法は、請求項1記載のシーリング剤の製造方法において、前記凝集塊成長工程では、24時間以上に亘ってシーリング剤原液を静置することを特徴とする。
また本発明の請求項3に係るシーリング剤の製造方法は、請求項1記載のシーリング剤の製造方法において、前記凝集塊成長工程では、シーリング剤原液を好ましくは48時間以上に亘って静置することを特徴とする。
また本発明の請求項4に係るシーリング剤の製造方法は、請求項1乃至3の何れか1項記載のシーリング剤の製造方法において、前記凝集塊成長工程では、シーリング剤原液を非撹拌状態で調液容器内に保持することにより、該シーリング剤原液を静置することを特徴とする。
また本発明の請求項5に係るシーリング剤の製造方法は、請求項1乃至4の何れか1項記載のシーリング剤の製造方法において、前記凝集塊除去工程では、シーリング剤原液を50メッシュよりも細かい網目を有するメッシュフィルタを通過させて、該メッシュフィルタによりシーリング剤原液中からラテックス凝集塊を除去することを特徴とする。
また本発明の請求項6に係るシーリング剤の製造方法は、請求項1乃至5の何れか1項記載のシーリング剤の製造方法において、前記シーリング剤原液に含まれるゴムラテックスが、SBRラテックス、NRラテックス、NBRラテックス、MBRラテックス、BRラテックス、カルボキシル変性NBRラテックス、及びカルボキシル変性SBRラテックスからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
また本発明の請求項7に係るシーリング剤の製造方法は、請求項1乃至請求項6の何れか1項記載のシーリング剤の製造方法において、前記シーリング剤原液には、10〜55質量%の凍結防止剤を含み、該凍結防止剤がエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール及びジプロピレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
以上説明した本発明のシーリング剤の製造方法によれば、シーリング剤原液中からラテックス凝集塊を効率的に除去して、ラテックス凝集塊に起因するシーリング剤のゲル化を効果的に防止できる。
以下、本発明の実施の形態に係るシーリング剤の製造方法について説明する。
本発明の実施形態に係るシーリング剤の製造方法により製造されるシーリング剤(以下、これを「シーリング剤10」(図1(D)参照)と表記する。)は、ゴムラテックス、樹脂系エマルジョン及び凍結防止剤を少なくとも含むものである。
ここで、シーリング剤10に含まれるゴムラテックスとしては、NR(天然ゴム)ラテックス又は合成ゴムラテックスを用いることが好ましく、合成ゴムラテックスとしては、SBRラテックス、NBRラテックス、MBRラテックス、BRラテックス、カルボキシル変性NBRラテックス、及びカルボキシル変性SBRラテックスからなる群より選択される1種の物質又は2種以上の混合物を用いることが好ましい。
またシーリング剤10は、寒冷地での凍結防止のために凍結防止剤を含むことが好ましく、この凍結防止剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール及びジプロピレングリコールからなる群より選択される1種の物質又は2種以上の混合物であることが好ましい。このような凍結防止剤の含有量は、10〜55質量%であることが好ましい。これは、10質量%未満では、低温での凍結防止性が十分に得られないことがあり、55質量%を超えると、ゴムラテックス量に対して、グリコール量が多くなり、パンク補修時に、凝集したゴムラテックスの粒がグリコール中に分散した状態で存在することから、十分なシール特性が得られないことがあるためである。
またシーリング剤10に含まれる樹脂系エマルジョンとしては、テルペン樹脂、ロジン樹脂、トール油樹脂、フェノール樹脂、石油系樹脂及び、これら樹脂の変性体からなる群より選択される1種の物質又は2種以上の混合物であることが好ましい。
またシーリング剤10には、必要に応じて、希薄化のために水を含有させることができ、さらに通常の分散剤、乳化剤、発泡安定剤、又はアンモニア、苛性ソーダ等のpH調整剤を添加してもよい。
図1(A)〜(B)には、本実施形態に係るシーリング剤の製造方法が模式的に示されている。本実施形態に係るシーリング剤の製造方法は、図1(A)〜(B)に示される調液工程を備えている。この調液工程では、先ず、図1(A)に示されるように、調液容器12内にシーリング剤10の含有成分のうち、少なくともゴムラテックス、樹脂系エマルジョン及び界面活性剤、並びに濃度調整のために必要な場合には所要量の水を投入した後、調液容器12内の液面下に保持された撹拌羽14を回転させることにより、この撹拌羽14の撹拌力によりゴムラテックス及び樹脂系エマルジョンを均一に混合して混合溶液16を調液する。
次いで、図1(B)に示されるように、混合溶液16を撹拌羽14により撹拌しつつ、凍結防止剤である凍結防止剤(PG)18を混合溶液16の液面上に滴下し、混合溶液16中に所定の供給量の凍結防止剤18を混合する。このとき、凍結防止剤18は、混合溶液16中における含有率が10〜55質量%となるように供給量が設定される。
調液工程では、混合溶液16に滴下された凍結防止剤18が調液容器12内で撹拌羽14により均一に混合されることにより、製品としてのシーリング剤10(図1(E)参照)と基本的に同一成分のシーリング剤原液20が調液される。
本実施形態に係るシーリング剤の製造方法は、図1(C)に示される凝集塊成長工程を備えている。この凝集塊成長工程では、調液工程で調液されたシーリング剤原液20を少なくとも24時間以上、好ましくは48時間以上の静置時間Tに亘って撹拌することなく調液容器12内に保持(静置)する。静置時間Tの下限値は、後述する凝集塊除去工程(図1(D)参照)で用いられるメッシュフィルタのメッシュ数等に応じて24時間以上、48時間以下の範囲で適宜、変更することができる。
また静置時間Tの上限値は特に制限されないが、シーリング剤10を製造する際の工程時間(タクト時間)の制約、製造されたシーリング剤10をストックするためのストック量の制限等を考慮すると共に、また保管環境に応じてシーリング剤10に含まれる水分量が蒸発又は吸湿により徐々に変化することから、保管時の水分量の変化を考慮すると、静置時間Tの上限値は480時間以下に設定することが好ましい。
本実施形態に係るシーリング剤の製造方法は、図1(D)に示される凝集塊除去工程を備えている。この凝集塊除去工程では、凝集塊成長工程を経たシーリング剤原液20を濾過器22により濾過しつつ、調液容器12からストック容器28内へ移しかえる。ここで、濾過器22には、外部容器23及び、この外部容器23内へ装填されるフィルタ部材26が設けられている。外部容器23には、上端部及び下端部に受入口24及び吐出口25がそれぞれ開口しており、受入口24を通して供給されたシーリング剤原液20は、容器内に装填されたフィルタ部材26により濾過された後、吐出口25を通して製品としてのシーリング剤10としてストック容器28内へ吐出され、貯留される。
フィルタ部材26としては、金網状に形成された金属製のメッシュフィルタが用いられており、そのメッシュ数が50メッシュ(網目の開口径が約300μm)〜400メッシュ(網目の開口径が約30μm)のものが用いられる。好ましくは、フィルタ部材26としては、100メッシュ(網目の開口径が約120μm)又は200メッシュ(網目の開口径が約70μm)が用いられる。このメッシュフィルタの材質としては、ステンレス、アルミ合金等の耐腐食性が高い金属材料を好適に用いることができる。なお、400メッシュよりも網目が細かいメッシュフィルタをフィルタ部材26として用いても良いが、目詰まりが短時間で発生しやすくなるため、外部容器23に装填されるフィルタ部材26の交換又は清掃周期を十分に短くすることが必要となる。
またフィルタ部材26としては、50メッシュ〜400メッシュのメッシュフィルタの網目と略同等の開口径の微小開口が多数、穿設された多孔質フィルタを用いても良く、またメッシュフィルタや多孔質フィルタが積層された積層フィルタを用いても良い。
図1(D)に示されるように、ストック容器28内へ貯留されたシーリング剤10は、1回のパンク修理の際に必要となるシーリング剤10の量(例えば、200g〜400g)に対応する容量を有する液剤容器30内へ充填された後、液剤容器30の注入口を内蓋(図示省略)及び外蓋32により閉塞することにより、液剤容器30内に密閉状態で保管される。この液剤容器30は、タイヤに対するパンク修理時に内蓋及び外蓋がそれぞれ取り外され、シーリング・ポンプアップ装置(図示省略)に装填される。このシーリング・ポンプアップ装置は、例えば、ポンプにより液剤容器30内のシーリング剤10を加圧することにより、シーリング剤10をタイヤのタイヤバルブに接続されたジョイントホースを通して液剤容器30からタイヤ内部へ圧送する。
次に、本実施形態に係るシーリング剤の製造方法の各工程にて調液される混合溶液16、シーリング剤原液20及びシーリング剤10について説明する。
図1(F)には、調液工程で調液された凍結防止剤18の添加前の混合溶液16を拡大して観察した状態が模式的に示されている。混合溶液16を拡大して観察すると、多数のゴムラテックス粒子34が水、界面活性剤等を含む溶液L中に浮遊している。このとき、ゴムラテックス粒子34は、界面活性剤のイオン斥力により溶液L中に分散した状態で浮遊している。
このとき、混合溶液16中のゴムラテックス粒子34の粒径を粒度分布計により測定すると、ゴムラテックス粒子34の粒径は、図2(A)に示されるように、0.1μm(100nm)付近を中心値として、約30nm〜220nmの範囲で略正規分布していた。
図1(G)には、調液工程で凍結防止剤18が均一に混合された直後の混合溶液16(シーリング剤原液20)を拡大して観察した状態が模式的に示されている。調液工程におけるシーリング剤原液20を拡大して観察すると、溶液L中には複数個のゴムラテックス粒子34が凝集してラテックス凝集塊36が生成していた。これは、混合溶液16中に添加された凍結防止剤18が水との混和力が非常に強い粘性の液体であることから、凍結防止剤18と接触する周囲のゴムラテックス粒子34から水分を急激に吸収したことが原因と推定される。
このとき、混合溶液16中のゴムラテックス粒子34及びラテックス凝集塊36の粒径をそれぞれ粒度分布計により測定すると、ゴムラテックス粒子34単体の粒径は、図2(B)に示されるように、0.1μm(100nm)付近を中心値として、約30nm〜220nmの範囲で略正規分布しており、凍結防止剤18添加前の混合溶液16中のゴムラテックス粒子34と同様であったが、複数個のゴムラテックス粒子34が凝集されて生成されたラテックス凝集塊36は、その粒径が2μm〜5μmの範囲に分布していた。
上記のようなラテックス凝集塊36がシーリング剤10中に存在する場合には、ラテックス凝集塊36がコアとなってシーリング剤のゲル化が促進される現象が生じ易くなる。このとき、ラテックス凝集塊36の存在比率が高くなるに従って、シーリング剤10がゲル化するまでの時間が短くなる傾向を示すことから、シーリング剤10を長期保存(例えば、10年以上)に安定的に耐えるものとするためには、シーリング剤10からラテックス凝集塊36を可能限り除去する必要がある。
図1(H)には、凝集塊成長工程を経た直後のシーリング剤原液20を拡大して観察した状態が模式的に示されている。凝集塊成長工程を経たシーリング剤原液20を拡大して観察すると、調液工程で溶液L中には生成された複数のラテックス凝集塊36同士及び更に凝集し、溶液L中に存在する各ゴムラテックス粒子34の粒径が成長(粗大化)していた。
このとき、シーリング剤原液20中のゴムラテックス粒子34及びラテックス凝集塊36の粒径をそれぞれ粒度分布計により測定すると、ゴムラテックス粒子34単体の粒径は、図2(C)に示されるように、0.1μm(100nm)付近を中心値として、約30nm〜220nmの範囲で略正規分布していており、凍結防止剤18添加前の混合溶液16と同様であったが、複数個のラテックス凝集塊36が更に凝集されて粗大化したラテックス凝集塊36は、その粒径が約10μm以上(上限値については正確には測定不能)になっていた。
また、本実施形態に係る凝集塊成長工程との比較のために、シーリング剤原液20を撹拌羽14により撹拌しつつ、調液容器12内に48時間以上の時間に亘って保持した場合のシーリング剤原液20についても、ゴムラテックス粒子34及びラテックス凝集塊36の粒径を粒度分布計により測定した。その結果、ゴムラテックス粒子34単体の粒径は、本実施形態に係る凝集塊成長工程を経たシーリング剤原液20と同様であったが、ラテックス凝集塊36については、10μm以上まで粗大化したものもあったが、全体としては2μm〜10μmという広い範囲に分布していた。これは、撹拌力の影響によりラテックス凝集塊36の成長と分解とが同時に生じるためと推定される。
図1(I)には、凝集塊除去工程を経た直後のシーリング剤10を拡大して観察した状態が模式的に示されている。図1(I)に示されるように、凝集塊除去工程を経たシーリング剤10を拡大して観察すると、溶液L中からラテックス凝集塊が略完全に除去されており、溶液L中にはゴムラテックス粒子34が分散して浮遊していた。
図1(J)には、凝集塊除去工程を経て液剤容器30内に封入されたシーリング剤10を一定期間(例えば、高温環境下で90日以上)放置した後のシーリング剤10を拡大して観察した状態が模式的に示されている。液剤容器30内に封入され長期放置されたシーリング剤10を拡大して観察すると、溶液L中にラテックス凝集塊36が新たに生成されておらず、ゲル化の進行も観察されなかった。
なお、発明者等による実験の結果、シーリング剤10に浮遊するラテックス凝集塊36の粒径が2μm〜5μmのままである場合には、シーリング剤10を400メッシュよりも細かいメッシュフィルタ等のフィルタ部材26により濾過しても、シーリング剤10中から殆んどラテックス凝集塊36を除去できなかったが、ラテックス凝集塊36を粒径10μm以上まで粗大化した場合には、シーリング剤10を50メッシュのフィルタ部材26により濾過することにより、シーリング剤10中から10μm以上の粒径を有するラテックス凝集塊36を略完全に除去できることが確認された。
本発明に係るシーリング剤の製造方法に従って製造されたシーリング剤(実施例A〜F)と、本発明に係るシーリング剤の製造方法とは製造条件が異なる製造方法により製造されたシーリング剤(比較例G及びH)について、それぞれシーリング剤中に含まれる2μm〜5μmのラテックス凝集塊の存在比率(vol%)を測定すると共に、シーリング剤の保存性を評価し、その結果を下記(表1)に示す。
なお、シーリング剤中に含まれる2μm〜5μmのラテックス凝集塊の存在比率は、堀場製作所製の粒度分布計 LB−500を用いて測定した。また保存性の評価欄には、80℃の高温環境下でシーリング剤を放置する加速試験を行い、40日の放置時間の経過後、シーリング剤にゲル化が生じた場合には、「(1)」の評価記号を示し、50日の放置時間の経過後、シーリング剤にゲル化が生じた場合には、「(2)」の評価記号を示し、60日の放置時間の経過後、シーリング剤にゲル化が生じた場合には、「(3)」の評価記号を示し、90日の放置時間の経過後、シーリング剤にゲル化が生じた場合には、「(4)」の評価記号を示し、90日の放置時間の経過後、シーリング剤にゲル化が生じない場合には、「(5)」の評価記号を示した。
10 シーリング剤
18 プロピレングリコール(凍結防止剤)
20 シーリング剤原液
26 フィルタ部材(メッシュフィルタ)
34 ゴムラテックス粒子
36 ラテックス凝集塊
18 プロピレングリコール(凍結防止剤)
20 シーリング剤原液
26 フィルタ部材(メッシュフィルタ)
34 ゴムラテックス粒子
36 ラテックス凝集塊
Claims (7)
- ゴムラテックス、樹脂系エマルジョン及び凍結防止剤を少なくとも含み、空気入りタイヤのパンク穴を閉塞するために用いられる液状のシーリング剤の製造方法であって、
少なくともゴムラテックス及び凍結防止剤を混合することによりシーリング剤原液を調液する調液工程と、
前記調液工程により調液されたシーリング剤原液を所定時間に亘って静置することにより、複数のゴムラテックス粒子が凝集したラテックス凝集塊を成長させる凝集塊成長工程と、
前記凝集塊成長工程を経たシーリング剤原液を濾過して、該シーリング剤原液中からラテックス凝集塊を除去する凝集塊除去工程と、
を有することを特徴とするシーリング剤の製造方法。 - 前記凝集塊成長工程では、24時間以上に亘ってシーリング剤原液を静置することを特徴とする請求項1記載のシーリング剤の製造方法。
- 前記凝集塊成長工程では、シーリング剤原液を好ましくは48時間以上に亘って静置することを特徴とする請求項1記載のシーリング剤の製造方法。
- 前記凝集塊成長工程では、シーリング剤原液を非撹拌状態で調液容器内に保持することにより、該シーリング剤原液を静置することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載のシーリング剤の製造方法。
- 前記凝集塊除去工程では、シーリング剤原液を50メッシュよりも細かい網目を有するメッシュフィルタを通過させて、該メッシュフィルタによりシーリング剤原液中からラテックス凝集塊を除去することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載のシーリング剤の製造方法。
- 前記シーリング剤原液に含まれるゴムラテックスが、SBRラテックス、NRラテックス、NBRラテックス、MBRラテックス、BRラテックス、カルボキシル変性NBRラテックス、及びカルボキシル変性SBRラテックスからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載のシーリング剤の製造方法。
- 前記シーリング剤原液には、10〜55質量%の凍結防止剤を含み、該凍結防止剤がエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール及びジプロピレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項記載のシーリング剤の製造方法。
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