JP2008125366A - トランスジェニックカイコの絹糸腺で組換えタンパク質を発現させるための融合ポリヌクレオチド - Google Patents
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Abstract
【課題】 トランスジェニックカイコの後部絹糸腺細胞または中部絹糸腺細胞において、組換えタンパク質mRNAからタンパク質が合成される翻訳反応を促進するための新規な手段を提供する。
【解決手段】 トランスジェニックカイコの後部絹糸腺または中部絹糸腺において組換えタンパク質を発現させるために、組換えタンパク質構造遺伝子の上流に機能的に連結される融合ポリヌクレオチドであって、絹タンパク質遺伝子のプロモーター領域を構成するポリヌクレオチド(A)と、ポリヌクレオチド(A)の下流に連結された、バキュロウイルス・ポリヘドリンの5’非翻訳領域を構成するポリヌクレオチド(B)とからなる融合ポリヌクレオチド。
【選択図】なし
【解決手段】 トランスジェニックカイコの後部絹糸腺または中部絹糸腺において組換えタンパク質を発現させるために、組換えタンパク質構造遺伝子の上流に機能的に連結される融合ポリヌクレオチドであって、絹タンパク質遺伝子のプロモーター領域を構成するポリヌクレオチド(A)と、ポリヌクレオチド(A)の下流に連結された、バキュロウイルス・ポリヘドリンの5’非翻訳領域を構成するポリヌクレオチド(B)とからなる融合ポリヌクレオチド。
【選択図】なし
Description
この発明は、カイコでの組換えタンパク質製造のための融合ポリヌクレオチドに関するものである。さらに詳しくは、この発明は、カイコの絹糸腺で有用組換えタンパク質を大量に発現させるために有用な融合ポリヌクレオチド、その融合ポリヌクレオチドを含むベクター、および、そのベクターを用いて作製されたトランスジェニックカイコ、並びに、そのトランスジェニックカイコの絹糸腺で組換えタンパク質を発現させる組換えタンパク質の製造方法に関するものである。
カイコは蛹になる直前に繭を作る。この繭の主成分は絹タンパク質であり、一つの繭あたり0.3〜0.5gもの絹タンパク質が含まれている。絹タンパク質は、約70%がフィブロイン、残りの約30%がセリシンと呼ばれるタンパク質により構成されている。これら絹タンパク質は絹糸腺で合成される。絹糸腺は後部絹糸腺、中部絹糸腺および前部絹糸腺より構成され、後部絹糸腺ではフィブロインが、中部絹糸腺ではセリシンがそれぞれ特異的に合成・分泌される。後部絹糸腺から分泌されたフィブロインは、絹糸腺の蠕動運動によって徐々に中部絹糸腺へと送られ、そこで分泌されたセリシンによって周りが被覆され、さらに前部絹糸腺へと送られ絹糸として吐糸される。従って、吐糸された絹糸において、フィブロインは糸の中心に、セリシンは、フィブロインの周りを取り巻くように存在する。セリシンは、糊の役目をしているタンパク質であり、吐糸された絹糸どうしを接着させる機能をもっている。フィブロインが水に対して極めて不溶性であるのに対し、セリシンは比較的水に溶けやすい。繭から生糸を紡ぐ場合、繭を煮沸する等の作業により、熱水に可溶性のセリシンは取り除かれ、不溶性のフィブロイン繊維のみが生糸として精練される。
この出願の発明者らは、カイコが有する絹タンパク質の合成能力に着目し、絹タンパク質と共に大量の組換えタンパク質を繭中に分泌する形質転換カイコの開発を行ってきた。外来遺伝子を導入した形質転換カイコの作出については、鱗翅目昆虫Trichoplusia niに由来するDNA型トランスポゾンであるpiggyBacを組み込んだプラスミドベクターをカイコ卵に微量注射する方法が確立されている(非特許文献1)。この遺伝子導入法を用い、絹タンパク質遺伝子プロモーターの下流に連結したヒト・コラーゲンcDNAをカイコに組み込み、組換えヒト・コラーゲンを繭または絹糸腺内のタンパク質の一部として産生する形質転換カイコを開発し(非特許文献2)、また特許出願している(特許文献1−3)。また、同様な方法により、絹糸腺または繭糸にサイトカインを生産する遺伝子組換えカイコを作製し、絹糸腺または繭糸からサイトカインを回収する組換え型サイトカインの製造方法に関する特許も出願されている(特許文献4)。
さらに、この出願の発明者らは、繭中の組換えタンパク質含有量を向上させるために、高い転写活性を有するフィブロイン重鎖遺伝子に着目し、その上流域から遺伝子の転写活性を促進する最小領域としてのポリヌクレオチドを特定し、外来遺伝子の発現を促進するポリヌクレオチドを提案し(非特許文献3、4)、特許出願している(特願文献5)。
また、この発明の出願者らは、後部絹糸腺で、フィブロインと生理活性タンパク質の融合タンパク質遺伝子を発現させることにより、絹糸の中心に存在するフィブロインの中に、フィブロインと生理活性タンパク質の融合タンパク質を発現させ、カイコが産生する絹タンパク質と前記融合タンパク質を主成分とする生理活性バイオマテリアルを開発し(非特許文献5)、特許出願している(特許文献6)。
一方、この発明の出願者らは、フィブロインの周りに存在し、比較的水に溶けやすいセリシンの中に、組換えタンパク質を局在させるために、中部絹糸腺で効率良く組換えタンパク質を発現させるためのポリヌクレオチドも開発し(非特許文献6)、特許出願を行っている(特許文献7)。この特許文献7の発明を利用すると、繭に含まれる組換えタンパク質を、その立体構造を変性させることなく容易に抽出することが可能となる。
特開2001-161214号公報
特開2002-315580号公報
特開2004-016144号公報
特開2003-325188号公報
特開2004-344123号公報
特開2006-016323号公報
特開2006-109772号公報
Tamura, T. Et al., Nat. Biotechnol. 18, 81-84, 2000
Tomita, M. et al., Nature Biotechnology. 21, 52-56, 2003
第25回 日本分子生物学会年回 プログラム・講演要旨集、2002年11月25日、2P-1588
第26回日本分子生物学会 プログラム・講演要旨集、2003年11月25日、2PC-174
第27回 日本分子生物学会年回 プログラム・講演要旨集、2004年11月25日、3PB-531
第27回 日本分子生物学会年回 プログラム・講演要旨集、2004年11月25日、3PB-533
前記したように、トランスジェニックカイコの後部絹糸腺や中部絹糸腺で組換えタンパク質を発現し、絹糸のフィブロインやセリシンの中に組換えタンパク質を分泌させる方法が開発されている。また、後部絹糸腺や中部絹糸腺で組換えタンパク質を効率良く発現させるためのポリヌクレオチドも発明されている。しかしながら、これら、組換えタンパク質を効率良く発現させるために開発されたポリヌクレオチドは、組換えタンパク質遺伝子からmRNAを効率良く転写させるためのプロモーターやエンハンサー、または、プロモーターやエンハンサーに作用する転写制御因子の遺伝子であり、組換えタンパク質遺伝子の転写反応の促進のみに着目して開発されている。有用な組換えタンパク質を安価に大量に生産するためには、如何にして組換えタンパク質の発現量を増加させるかが鍵となる。従って、遺伝子の転写反応のみに着目した開発だけでは、発現量を最大限に増加させることは困難である。そこで、転写後の反応、例えばmRNAからタンパク質への翻訳反応を促進するための方法も開発する必要があると考えられる。
この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、トランスジェニックカイコの後部絹糸腺細胞または中部絹糸腺細胞において、組換えタンパク質mRNAからタンパク質が合成される翻訳反応を促進するための新規な手段を提供することを課題としている。
この出願は、前記の課題を解決する発明として、以下の(1)〜(7)の発明を提供する。
(1)トランスジェニックカイコの後部絹糸腺または中部絹糸腺において組換えタンパク質を発現させるために、組換えタンパク質構造遺伝子の上流に機能的に連結される融合ポリヌクレオチドであって、以下のポリヌクレオチド(A)および(B):
(A)絹タンパク質遺伝子のプロモーター領域を構成するポリヌクレオチド;
(B)ポリヌクレオチド(A)の下流に連結された、バキュロウイルス・ポリヘドリンの5’非翻訳領域を構成するポリヌクレオチド、
からなる融合ポリヌクレオチド。
(2)ポリヌクレオチド(B)が、バキュロウイルスBmNPVポリヘドリンの5’非翻訳領域を構成する、配列番号1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドである前記発明(1)の融合ポリヌクレオチド。
(3)前記発明(1)または(2)に記載の融合ポリヌクレオチドと組換えタンパク質構造遺伝子とが連結された発現カセット。
(4)前記発明(3)に記載の発現カセットを保有する発現ベクター。
(5)発現カセットが、昆虫由来DNA型トランスポゾンの一対の逆向き反復配列に挟まれている前記発明(4)の発現ベクター。
(6)前記発明(3)に記載の発現カセットをゲノム中に保有し、組換えタンパク質を後部絹糸腺または中部絹糸腺にて発現するトランスジェニックカイコ。
(7)前記発明(6)に記載のトランスジェニックカイコの組換えタンパク質遺伝子を発現させ、当該遺伝子がコードする組換えタンパク質をトランスジェニックカイコの後部絹糸腺または中部絹糸腺で産生させ、この産生された組換えタンパク質を回収することを特徴とする組換えタンパク質の製造方法。
(1)トランスジェニックカイコの後部絹糸腺または中部絹糸腺において組換えタンパク質を発現させるために、組換えタンパク質構造遺伝子の上流に機能的に連結される融合ポリヌクレオチドであって、以下のポリヌクレオチド(A)および(B):
(A)絹タンパク質遺伝子のプロモーター領域を構成するポリヌクレオチド;
(B)ポリヌクレオチド(A)の下流に連結された、バキュロウイルス・ポリヘドリンの5’非翻訳領域を構成するポリヌクレオチド、
からなる融合ポリヌクレオチド。
(2)ポリヌクレオチド(B)が、バキュロウイルスBmNPVポリヘドリンの5’非翻訳領域を構成する、配列番号1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドである前記発明(1)の融合ポリヌクレオチド。
(3)前記発明(1)または(2)に記載の融合ポリヌクレオチドと組換えタンパク質構造遺伝子とが連結された発現カセット。
(4)前記発明(3)に記載の発現カセットを保有する発現ベクター。
(5)発現カセットが、昆虫由来DNA型トランスポゾンの一対の逆向き反復配列に挟まれている前記発明(4)の発現ベクター。
(6)前記発明(3)に記載の発現カセットをゲノム中に保有し、組換えタンパク質を後部絹糸腺または中部絹糸腺にて発現するトランスジェニックカイコ。
(7)前記発明(6)に記載のトランスジェニックカイコの組換えタンパク質遺伝子を発現させ、当該遺伝子がコードする組換えタンパク質をトランスジェニックカイコの後部絹糸腺または中部絹糸腺で産生させ、この産生された組換えタンパク質を回収することを特徴とする組換えタンパク質の製造方法。
すなわち前記の各発明は、組換えタンパク質構造遺伝子に連結したバキュロウイルス・ポリヘドリンの5’非翻訳領域を構成するポリヌクレオチドが、トランスジェニックカイコの後部絹糸腺細胞または中部絹糸腺細胞において、組換えタンパク質mRNAからタンパク質への翻訳反応を促進することを見出し、完成されたものである。
なお、この発明において、「ポリヌクレオチド」とはプリンまたはピリミジンが糖にβ-N-グリコシド結合したヌクレオシドのリン酸エステル(ATP、GTP、CTP、UTP;またはdATP、dGTP、dCTP、dTTP)が2個以上結合した分子を意味する。
組換えタンパク質構造遺伝子と融合ポリヌクレオチドとが「機能的に連結される」とは、構造遺伝子と融合ポリヌクレオチドのそれぞれが有する機能が損なわれることなく、しかも連結によって所望の機能が発揮しうる状態が確保されている状態を意味する。また同様に、「融合ポリヌクレオチド」とは、ポリヌクレオチド(A)の3’端ヌクレオチドとポリヌクレオチド(B)の5’端ヌクレオチドが直接、または他のリンカー配列を介して結合しており、この結合によってそれぞれが有する機能が損なわれることなく、しかも連結によって所望の機能(具体的には、その下流の組換えタンパク質構造遺伝子の大量発現を制御する機能)が発揮しうる状態が確保されていることを意味する。
さらにこの発明において「タンパク質」とは、アミド結合(ペプチド結合)によって互いに結合した複数個のアミノ酸残基から構成された分子を意味し、「組換えタンパク質」とは、遺伝子工学的に製造されるタンパク質を意味する。
またさらに、この発明における「組換えタンパク質構造遺伝子」とは、組換えタンパク質をコードする領域(open reading flame: ORF)を含むポリヌクレオチドであり、例えば組換えタンパク質遺伝子のcDNAである。「遺伝子プロモーター領域」とは、タンパク質をコードする遺伝子領域の転写開始点から上流域に存在する転写を開始させるために必須な配列を含む領域であって、一般に「プロモーター領域」および「エンハンサー領域」と言われる領域を言う。
この発明におけるその他の用語や概念は、発明の実施形態の説明や実施例において詳しく規定する。またこの発明を実施するために使用する様々な技術は、特にその出典を明示した技術を除いては、公知の文献等に基づいて当業者であれば容易かつ確実に実施可能である。例えば、遺伝子工学および分子生物学的技術はSambrook and Maniatis, in Molecular Cloning-A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, 1989; Ausubel, F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, N.Y, 1995等に記載されている。
この出願の発明によれば、トランスジェニックカイコの後部絹糸腺細胞または中部絹糸腺細胞内で、組換えタンパク質mRNAからのタンパク質翻訳反応が促進され、組換えタンパク質合成量が増加する。従って、トランスジェニックカイコを用いて、より多くの組換えタンパク質を安価に生産することが可能となる。
以下、各発明について、実施形態を詳しく説明する。
発明(1)は、トランスジェニックカイコの後部絹糸腺細胞または中部絹糸腺細胞において、効率良く組換えタンパク質を発現させるために、後部絹糸腺細胞または中部絹糸腺細胞で、組換えタンパク質遺伝子を特異的に転写させるための絹タンパク質遺伝子のプロモーター領域を構成するポリヌクレオチド(A)の下流に、転写された組換えタンパク質mRNAからタンパク質への翻訳を促進するためのバキュロウイルス・ポリヘドリンの5’非翻訳領域を構成するポリヌクレオチド(B)、を連結した融合ポリヌクレオチドである。
後部絹糸腺細胞では、フィブロインH鎖、フィブロインL鎖およびフィブロヘキサメリンを含む絹タンパク質が合成されている。また、中部絹糸腺細胞では、セリシン1遺伝子およびセリシン2遺伝子から合成される4〜6種類以上のセリシンを含む絹タンパク質が合成されている。発明(1)で用いるポリヌクレオチド(A)は、これら後部絹糸腺細胞や中部絹糸腺細胞で合成されている絹タンパク質遺伝子のプロモーター領域を構成するポリヌクレオチドである。ここでいう絹タンパク質遺伝子のプロモーター領域とは、絹タンパク質遺伝子の転写開始点、および、その上流域に存在する転写を開始させるために必須な配列を含む領域を指す。実質的には、絹タンパク質遺伝子由来の塩基配列であって、その配列の下流に連結した組換えタンパク質遺伝子の中部絹糸腺細胞での転写を開始させることができる配列のことを指し、この条件に合う配列であれば、配列の長さなどは限定されない。また、プロモーター領域の転写活性を促進する、いわゆるエンハンサー配列を含んでいても良い。絹タンパク質遺伝子のプロモーター領域は、公知の塩基配列(GeneBank/AB007831、GenBank/AF2266688、GenBank/Z26887)などを利用してプライマーを設計し、ゲノムPCRを行うなどの方法により取得することができる。
ポリヌクレオチド(B)は、バキュロウイルス・ポリヘドリンの5’非翻訳領域を構成するポリヌクレオチドである。バキュロウイルス・ポリヘドリンの5’非翻訳領域とは、バキュロウイルス・ポリヘドリンmRNAの開始コドンの上流に存在し、タンパク質に翻訳されない領域である。この発明で用いる5’非翻訳領域を構成するポリヌクレオチドとは、バキュロウイルス・ポリヘドリンmRNAの5’非翻訳領域をコードするDNA配列を指す。実質的には、バキュロウイルス・ポリヘドリン遺伝子の転写開始点から開始コドンまでの配列であり、トランスジェニックカイコの後部絹糸腺細胞または中部絹糸腺細胞において、組換えタンパク質mRNAからタンパク質への翻訳反応を促進する配列であれば、配列の長さなどは限定されない。また、バキュロウイルスには、BmNPV、AcNPV、EoNPV、SfNPV、MnNPVなどが存在するが、トランスジェニックカイコの後部絹糸腺細胞または中部絹糸腺細胞において、組換えタンパク質mRNAからタンパク質への翻訳反応を促進する配列であれば、どのバキュロウイルスに由来するポリヘドリンの5’非翻訳領域であってもよいが、好ましくは、BmNPVのポリヘドリンの5’非翻訳領域(配列番号1)である(発明(2))。また、BmNPV以外のバキュロウイルス・ポリヘドリンの5’非翻訳領域を構成するポリヌクレオチドは、公知の塩基配列(GeneBank/NC_001623 、GeneBank/DQ837165、GeneBank/AJ277555など)を利用して、化学合成などの方法によって取得することができる。
発明(3)は、発明(1)または(2)の融合ポリヌクレオチドと組換えタンパク質構造遺伝子とが連結された発現カセットである。カセット内の組換えタンパク質構造遺伝子は、任意のタンパク質をコードするcDNAなどを用いることができる。cDNAなどは、発明(1)または(2)の融合ポリヌクレオチドの下流に連結される。
発明(4)は、発明(3)の発現カセットを保有する発現ベクターである。このベクターは、カイコの形質転換のために使用することのできる昆虫用のベクターであれば特段の制限なく使用することができる。例えば、AcNPVベクターや、昆虫由来DNA型トランスポゾンを組み込んだプラスミドベクターなどであるが、特に後者が好ましい(発明(5))。昆虫由来DNA型トランスポゾンとしては、piggyBac、mariner(Insect Mol. Biol. 9, 145-155, 2000)、およびMinos(Insect Mol. Biol. 9, 277-281, 2000)等が知られている。これらのトランスポゾンは、カイコ細胞内で転移活性を示すことから、これらのDNA型トランスポゾンをもとに作製したベクターによりカイコを形質転換させることが可能である。特にpiggyBacをもとに作製したプラスミドベクターは、カイコ卵に微量注入することにより、効率よくカイコを形質転換させることができる(非特許文献1)。(「実際に成功している」と記載すると、他の方法での実施可能性が問題視される危険性があると考えました。)
発明(4)または発明(5)のベクターを使って、組換えタンパク質を発現するための発現カセットをゲノム中に保有し、組換えタンパク質を後部絹糸腺または中部絹糸腺にて効率良く発現するトランスジェニックカイコ(発明(6))を作出することができる。トランスジェニックカイコの作出については、例えばpiggyBacをもとに作製したベクターを利用する場合は、田村らの方法(非特許文献1)と同様な方法によって行うことができる。すなわち、piggyBacの一対の逆向き反復配列を適当なプラスミドベクターに組み込み、挿入するポリヌクレオチドを一対の逆向き反復配列で夾むように挿入する。そしてこのプラスミドベクターを、piggyBacのトランスポゼース発現ベクター(ヘルパープラスミド)と共にカイコ卵へ微量注入する。このヘルパープラスミドは、piggyBacの逆向き反復配列の片方または両方を欠いた、実質的にはpiggyBacのトランスポゼース遺伝子領域のみが組み込まれている組換えプラスミドベクターである。このヘルパープラスミドにおいて、トランスポゼースを発現させるためのプロモーターは、内在性のトランスポゼースプロモーターをそのまま利用しても良いし、あるいは、カイコ・アクチンプロモーターやショウジョウバエHSP70プロモーター等を利用してもよい。次世代カイコのスクリーニングを容易にするために、挿入するポリヌクレオチドを組み込んだベクター内に同時にマーカー遺伝子を組み込んでおくこともできる。この場合、マーカー遺伝子の上流に例えばカイコ・アクチンプロモーターやショウジョウバエHSP70プロモーター等のプロモーター配列を組み込み、その作用によりマーカー遺伝子を発現させるようにする。
発明(4)または発明(5)のベクターを使って、組換えタンパク質を発現するための発現カセットをゲノム中に保有し、組換えタンパク質を後部絹糸腺または中部絹糸腺にて効率良く発現するトランスジェニックカイコ(発明(6))を作出することができる。トランスジェニックカイコの作出については、例えばpiggyBacをもとに作製したベクターを利用する場合は、田村らの方法(非特許文献1)と同様な方法によって行うことができる。すなわち、piggyBacの一対の逆向き反復配列を適当なプラスミドベクターに組み込み、挿入するポリヌクレオチドを一対の逆向き反復配列で夾むように挿入する。そしてこのプラスミドベクターを、piggyBacのトランスポゼース発現ベクター(ヘルパープラスミド)と共にカイコ卵へ微量注入する。このヘルパープラスミドは、piggyBacの逆向き反復配列の片方または両方を欠いた、実質的にはpiggyBacのトランスポゼース遺伝子領域のみが組み込まれている組換えプラスミドベクターである。このヘルパープラスミドにおいて、トランスポゼースを発現させるためのプロモーターは、内在性のトランスポゼースプロモーターをそのまま利用しても良いし、あるいは、カイコ・アクチンプロモーターやショウジョウバエHSP70プロモーター等を利用してもよい。次世代カイコのスクリーニングを容易にするために、挿入するポリヌクレオチドを組み込んだベクター内に同時にマーカー遺伝子を組み込んでおくこともできる。この場合、マーカー遺伝子の上流に例えばカイコ・アクチンプロモーターやショウジョウバエHSP70プロモーター等のプロモーター配列を組み込み、その作用によりマーカー遺伝子を発現させるようにする。
ベクターを微量注入したカイコ卵から孵化した幼虫(F0世代)を飼育する。得られた全F0世代のカイコを野生型カイコと、あるいはF0カイコ同士で交配し、次世代(F1世代)のカイコからトランスジェニックカイコを選抜する。トランスジェニックカイコの選抜は、例えばPCR法やサザンブロット法を用いて行う。また、マーカー遺伝子を組み込んだ場合には、その表現形質を利用して選抜することも可能である。例えばマーカー遺伝子としてGFP等の蛍光タンパク質遺伝子を利用した場合には、F1世代のカイコ卵や幼虫に励起光を照射し、蛍光タンパク質の発する蛍光を検出することにより行うことができる。以上のような方法によりトランスジェニックカイコを作出することができる。
発明(7)は、発明(6)のトランスジェニックカイコの後部絹糸腺または中部絹糸腺で組換えタンパク質を発現させる、組換えタンパク質の製造方法である。発明(6)のトランスジェニックカイコの後部絹糸腺細胞または中部絹糸腺細胞内では、ゲノム中に組み込まれた発現カセットから、バキュロウイルス・ポリヘドリンの5’非翻訳領域を有する組換えタンパク質のmRNAが転写され、この5’非翻訳領域の作用により、mRNAから効率良く組換えタンパク質が翻訳される。組換えタンパク質が、シグナルペプチドを持たない非分泌性のタンパク質であった場合は、組換えタンパク質は後部絹糸腺または中部絹糸腺の細胞内に蓄積される。また、組換えタンパク質が、シグナルペプチドを有する分泌性のタンパク質であった場合は、組換えタンパク質は、後部絹糸腺または中部絹糸腺細胞から分泌され、繭のタンパク質として吐糸される。分泌タンパク質が後部絹糸腺で発現された場合は、フィブロインと共に繭に分泌され、分泌タンパク質が中部絹糸腺で発現された場合には、セリシンと共に繭に分泌される。繭に分泌された組換えタンパク質は簡便な操作により回収することが可能である。特に、セリシンと共に分泌された組換えタンパク質は、繭を中性の緩衝液などに浸すなどの極めて簡便な方法で回収することもできる。この場合、組換えタンパク質は変性させずに抽出することができるため、タンパク質の活性が損なわれることはない。また、後部絹糸腺で組換えタンパク質を発現させ、組換えタンパク質をフィブロインと共に分泌させることにより、組換えタンパク質が安定に組み込まれたフィブロイン繊維を生産することもできる。さらに、組換えタンパク質が組み込まれたフィブロイン繊維からフィブロイン材料を加工することも可能である。
以下、実施例によりこの発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、この発明は以下の例によって限定されるものではない。
バキュロウイルス・ポリヘドリン5’非翻訳領域によるルシフェラーゼ遺伝子発現量促進効果の検証
バキュロウイルス(BmNPV、EoNPV、MnNPV、およびSfNPV)のポリヘドリン5’非翻訳領域をルシフェラーゼcDNAの上流に連結し、このcDNAを中部絹糸腺で一過的に発現させることにより、バキュロウイルス・ポリヘドリン5’非翻訳領域が外来遺伝子の発現に及ぼす効果を調べた。
[1]セリシンプロモーターおよびフィブロインポリAシグナルを有するベクターの構築
5’末端がリン酸化されたオリゴヌクレオチド5’-aattccttaagctcgagtcgcga-3’(配列番号2)と5’-aatttcgcgactcgagcttaagg-3’(配列番号3)をアニーリングさせた2本鎖オリゴヌクレオチドを作製した。この2本鎖オリゴヌクレオチドは、AflII、XhoI、NruIの制限酵素認識配列を有し、両末端はEcoRIサイトに連結可能な構造をしている。マーカー遺伝子として眼や神経系で発現する赤色蛍光タンパク質(DsRed)遺伝子を有するpiggyBacベクターであるpBac[3xP3-DsRed/pA](非特許文献2)のEcoRIサイトに、この2本鎖オリゴヌクレオチドを挿入し、pBac[3xP3-DsRed/pA]ベクターにAflII、XhoI、NruIの制限酵素認識配列を挿入した。
バキュロウイルス(BmNPV、EoNPV、MnNPV、およびSfNPV)のポリヘドリン5’非翻訳領域をルシフェラーゼcDNAの上流に連結し、このcDNAを中部絹糸腺で一過的に発現させることにより、バキュロウイルス・ポリヘドリン5’非翻訳領域が外来遺伝子の発現に及ぼす効果を調べた。
[1]セリシンプロモーターおよびフィブロインポリAシグナルを有するベクターの構築
5’末端がリン酸化されたオリゴヌクレオチド5’-aattccttaagctcgagtcgcga-3’(配列番号2)と5’-aatttcgcgactcgagcttaagg-3’(配列番号3)をアニーリングさせた2本鎖オリゴヌクレオチドを作製した。この2本鎖オリゴヌクレオチドは、AflII、XhoI、NruIの制限酵素認識配列を有し、両末端はEcoRIサイトに連結可能な構造をしている。マーカー遺伝子として眼や神経系で発現する赤色蛍光タンパク質(DsRed)遺伝子を有するpiggyBacベクターであるpBac[3xP3-DsRed/pA](非特許文献2)のEcoRIサイトに、この2本鎖オリゴヌクレオチドを挿入し、pBac[3xP3-DsRed/pA]ベクターにAflII、XhoI、NruIの制限酵素認識配列を挿入した。
特許文献7(特開2006-109772号公報)の実施例1に記載されている「hr3とセリシン1プロモーターの下流にホタルルシフェラーゼ遺伝子を有するベクター」をテンプレートとしたPCRによって、hr3とセリシン1プロモーターからなり、かつ両末端にXhoIサイトを有したDNA断片を増幅した。用いたプライマーは、5’-ctcgaggatatcgaattcctgcagcc-3'(配列番号4)および5’-ctcgagcccgatgataagacgactatg-3'(配列番号5)である。増幅したDNA断片をXhoIで消化した後、前記のAflII、XhoI、NruIの制限酵素認識配列を挿入したpBac[3xP3-DsRed/pA]ベクターのXhoIサイトに挿入した。これをpMSG1.1Rと表記する。
pMSG1.1RをテンプレートとしたPCRによって、セリシン1プロモーターとフィブロインpolyAシグナルからなるDNA断片を増幅した。PCRに用いたプライマーは、5’-agtcgaatttcgactactgcg-3’(配列番号6)および5'-ctcatgacaacagtaccgaaatc-3’(配列番号7)であり、増幅したDNA断片においては、セリシンプロモーター配列とフィブロインpolyAシグナル配列の間に、NruIサイトが組み込まれている。このDNA断片をpCR4Blunt-TOPO(Invitrogen)に挿入し、pPser-FLpA/pCR4を作製した。
[2]ホタルルシフェラーゼ一過性発現ベクターの構築
以下の5種類のベクターを構築した。
(I)ルシフェラーゼcDNAの上流にCACC配列を有するベクター
pGL3-basic(Promega)をテンプレートとしたPCRによって、CACC配列を有するホタルルシフェラーゼDNA断片を増幅した。PCRに用いたプライマーは、CACCフォワードプライマー:5’-gatatccaccatggaagacgccaa-3’(配列番号8)、およびルシフェラーゼリバースプライマー:5’-gatatcttacacggcgatctttcc-3’(配列番号9)である。CACCフォワードプライマーの5’末端には、EcoRVサイトが付加されており、その直後にコザックコンセンサス配列であるCACC配列が、さらにその直後に、ホタルルシフェラーゼの翻訳開始点であるATG以下ホタルルシフェラーゼをコードする配列が連結している。ルシフェラーゼリバースプライマーの5’末端には、EcoRVサイトが付加されている。増幅したDNA断片をEcoRVで消化し、前記したpPser-FlpA/pCR4ベクターのNruIサイトに挿入し、ルシフェラーゼ翻訳開始点の直前にCACC配列を有するルシフェラーゼ発現ベクター CACC-Fluci/pCR4を作製した。
(II)ルシフェラーゼcDNAの上流にBmNPVポリヘドリン5’非翻訳領域を有するベクター
pGL3-basic(Promega)をテンプレートとしたPCRによって、Bombyx mori核多角体病ウイルス(BmNPV)ポリヘドリンの5’非翻訳領域を有するホタルルシフェラーゼDNA断片を増幅した。PCRに用いたプライマーは、BmNPV5’UTRフォワードプライマー:5’-gatatcaagtattttactgttttcgtaacagttttgtaataaaaaaacctataaatatggaagacgccaaaaac-3’(配列番号10)、およびルシフェラーゼリバースプライマー(配列番号9)である。BmNPV5’UTRフォワードプライマーの5’末端には、EcoRVサイトが付加されており、その直後にBmNPVポリヘドリン遺伝子の5’非翻訳領域である50merの配列が連結しており、さらにその直後に、ホタルルシフェラーゼの翻訳開始点であるATG以下ホタルルシフェラーゼをコードするDNA配列が連結している。増幅したDNA断片をEcoRVで消化し、pPser-FlpA/pCR4ベクターのNruIサイトに挿入し、ルシフェラーゼ翻訳開始点の直前にBmNPVポリヘドリン遺伝子の5’非翻訳領域の配列を有するルシフェラーゼ発現ベクターBm5’-Fluci/pCR4を作製した。
(III)ルシフェラーゼcDNAの上流にEoNPVポリヘドリン5’非翻訳領域を有するベクター
EoNPV5’UTRフォワードプライマー:5’-gatatcagtattgtagtcctttcgtaattgtttgtgaaatctaaaatacaccgtaatggaagacgccaaaaac-3’(配列番号11)、およびルシフェラーゼリバースプライマー(配列番号9)を用いて、(II)と同様にして、Ecotropis obliqua核多角体病ウイルス(EoNPV)ポリヘドリン遺伝子の5’非翻訳領域の配列を有するホタルルシフェラーゼDNA断片を増幅した。増幅したDNA断片を、(II)と同様にしてpPser-FlpA/pCR4ベクターに挿入し、ルシフェラーゼ発現ベクターEo5’-Fluci/pCR4を作製した。
(IV)ルシフェラーゼcDNAの上流にMnNPVポリヘドリン5’非翻訳領域を有するベクター
MnNPV5’UTRフォワードプライマー:5’-gatatcagtatttttattctttcgtaaaaaaattagaaaaataaaatataaaatggaagacgccaaaaac-3’(配列番号12)、およびルシフェラーゼリバースプライマー(配列番号9)を用いて、(II)と同様にして、Malacosoma neustria核多角体病ウイルス(MnNPV)ポリヘドリン遺伝子の5’非翻訳領域の配列を有するホタルルシフェラーゼDNA断片を増幅した。増幅したDNA断片を、(II)と同様にしてpPser-FlpA/pCR4ベクターに挿入し、ルシフェラーゼ発現ベクターMn5’-Fluci/pCR4を作製した。
(V)ルシフェラーゼcDNAの上流にSfNPVポリヘドリン5’非翻訳領域を有するベクター
SfNPV5’UTRフォワードプライマー:5’-gatatcagtaattttttcctttcgtaaaacattgtgaaaaaataaatataatggaagacgccaaaaac-3’(配列番号13)、およびルシフェラーゼリバースプライマー(配列番号9)を用いて、(II)と同様にして、Spodoptera frugiperda核多角体病ウイルス(SfNPV)ポリヘドリン遺伝子の5’非翻訳領域の配列を有するホタルルシフェラーゼDNA断片を増幅した。増幅したDNA断片を、(II)と同様にしてpPser-FlpA/pCR4ベクターに挿入し、ルシフェラーゼ発現ベクターSf5’-Fluci/pCR4を作製した。
[3]ウミシイタケルシフェラーゼ一過性発現ベクターの構築
pMSG1.1RをテンプレートとしたPCRによって、セリシン1プロモーターのDNA断片を増幅した。用いたプライマーは、5’-cccgggagtcgaatttcgactactgcg-3’(配列番号14)と5’-cccgggcccgatgataagacgactatg-3’(配列番号15)であり、それぞれの5’末端には、SmaIサイトが付加されている。ウミシイタケルシフェラーゼを有するベクターpRL-null(Promega)からhuman b-globin intron を除去するため、ベクターをPstIとNheIで切断した後、切断末端を平滑化してセルフライゲーションを行った。このベクターをSmaIで消化し、SmaI処理した上記のセリシン1プロモーターのDNA断片を挿入して、ウミシイタケルシフェラーゼ発現ベクターpRLを作製した。
[4]遺伝子銃を用いた一過性発現実験による評価
上記[2]-(I)〜(V)の各ベクターを、インターナルコントロールのpRLと1:1の割合で混合した5種類のDNA溶液を用意し、以下に記載した方法によって、これらのDNA混合液をカイコ絹糸腺に導入し、ルシフェラーゼ活性を測定した。
(I)金粒子の調製:金粒子1 mgあたり375 ngのDNA混合液を付着させた。
(II)絹糸腺採取:5令1日の幼虫から絹糸腺を取出し、Grace培地で洗浄した。
(III)遺伝子銃によるDNAの絹糸腺への導入:遺伝子銃(Helios Gene Gun; BioRad)を用いて絹糸腺にDNAの付着した金粒子を打ち込んだ。絹糸腺あたり0.02 mgの金粒子(7.5ng DNA)を打ち込んでいる。
(IV)絹糸腺の移植:絹糸腺をGrace培地で洗浄後、絹糸腺を取出した個体と同じ日令の幼虫の背側後方体腔内に移植した。絹糸腺を移植した幼虫を3日間飼育した。
(V)絹糸腺の採取:移植した絹糸腺を宿主から取出し、Grace培地で洗浄後、絹糸腺を中部絹糸腺と後部絹糸腺に分割した。
(VI)ルシフェラーゼ活性の測定:中部絹糸腺をpassive lysis buffer(Promega)に浸透し、上清中のホタルおよびウミシイタケルシフェラーゼ活性を、ルシフェラーゼ定量システム(Promega)を用いて測定した。
[2]ホタルルシフェラーゼ一過性発現ベクターの構築
以下の5種類のベクターを構築した。
(I)ルシフェラーゼcDNAの上流にCACC配列を有するベクター
pGL3-basic(Promega)をテンプレートとしたPCRによって、CACC配列を有するホタルルシフェラーゼDNA断片を増幅した。PCRに用いたプライマーは、CACCフォワードプライマー:5’-gatatccaccatggaagacgccaa-3’(配列番号8)、およびルシフェラーゼリバースプライマー:5’-gatatcttacacggcgatctttcc-3’(配列番号9)である。CACCフォワードプライマーの5’末端には、EcoRVサイトが付加されており、その直後にコザックコンセンサス配列であるCACC配列が、さらにその直後に、ホタルルシフェラーゼの翻訳開始点であるATG以下ホタルルシフェラーゼをコードする配列が連結している。ルシフェラーゼリバースプライマーの5’末端には、EcoRVサイトが付加されている。増幅したDNA断片をEcoRVで消化し、前記したpPser-FlpA/pCR4ベクターのNruIサイトに挿入し、ルシフェラーゼ翻訳開始点の直前にCACC配列を有するルシフェラーゼ発現ベクター CACC-Fluci/pCR4を作製した。
(II)ルシフェラーゼcDNAの上流にBmNPVポリヘドリン5’非翻訳領域を有するベクター
pGL3-basic(Promega)をテンプレートとしたPCRによって、Bombyx mori核多角体病ウイルス(BmNPV)ポリヘドリンの5’非翻訳領域を有するホタルルシフェラーゼDNA断片を増幅した。PCRに用いたプライマーは、BmNPV5’UTRフォワードプライマー:5’-gatatcaagtattttactgttttcgtaacagttttgtaataaaaaaacctataaatatggaagacgccaaaaac-3’(配列番号10)、およびルシフェラーゼリバースプライマー(配列番号9)である。BmNPV5’UTRフォワードプライマーの5’末端には、EcoRVサイトが付加されており、その直後にBmNPVポリヘドリン遺伝子の5’非翻訳領域である50merの配列が連結しており、さらにその直後に、ホタルルシフェラーゼの翻訳開始点であるATG以下ホタルルシフェラーゼをコードするDNA配列が連結している。増幅したDNA断片をEcoRVで消化し、pPser-FlpA/pCR4ベクターのNruIサイトに挿入し、ルシフェラーゼ翻訳開始点の直前にBmNPVポリヘドリン遺伝子の5’非翻訳領域の配列を有するルシフェラーゼ発現ベクターBm5’-Fluci/pCR4を作製した。
(III)ルシフェラーゼcDNAの上流にEoNPVポリヘドリン5’非翻訳領域を有するベクター
EoNPV5’UTRフォワードプライマー:5’-gatatcagtattgtagtcctttcgtaattgtttgtgaaatctaaaatacaccgtaatggaagacgccaaaaac-3’(配列番号11)、およびルシフェラーゼリバースプライマー(配列番号9)を用いて、(II)と同様にして、Ecotropis obliqua核多角体病ウイルス(EoNPV)ポリヘドリン遺伝子の5’非翻訳領域の配列を有するホタルルシフェラーゼDNA断片を増幅した。増幅したDNA断片を、(II)と同様にしてpPser-FlpA/pCR4ベクターに挿入し、ルシフェラーゼ発現ベクターEo5’-Fluci/pCR4を作製した。
(IV)ルシフェラーゼcDNAの上流にMnNPVポリヘドリン5’非翻訳領域を有するベクター
MnNPV5’UTRフォワードプライマー:5’-gatatcagtatttttattctttcgtaaaaaaattagaaaaataaaatataaaatggaagacgccaaaaac-3’(配列番号12)、およびルシフェラーゼリバースプライマー(配列番号9)を用いて、(II)と同様にして、Malacosoma neustria核多角体病ウイルス(MnNPV)ポリヘドリン遺伝子の5’非翻訳領域の配列を有するホタルルシフェラーゼDNA断片を増幅した。増幅したDNA断片を、(II)と同様にしてpPser-FlpA/pCR4ベクターに挿入し、ルシフェラーゼ発現ベクターMn5’-Fluci/pCR4を作製した。
(V)ルシフェラーゼcDNAの上流にSfNPVポリヘドリン5’非翻訳領域を有するベクター
SfNPV5’UTRフォワードプライマー:5’-gatatcagtaattttttcctttcgtaaaacattgtgaaaaaataaatataatggaagacgccaaaaac-3’(配列番号13)、およびルシフェラーゼリバースプライマー(配列番号9)を用いて、(II)と同様にして、Spodoptera frugiperda核多角体病ウイルス(SfNPV)ポリヘドリン遺伝子の5’非翻訳領域の配列を有するホタルルシフェラーゼDNA断片を増幅した。増幅したDNA断片を、(II)と同様にしてpPser-FlpA/pCR4ベクターに挿入し、ルシフェラーゼ発現ベクターSf5’-Fluci/pCR4を作製した。
[3]ウミシイタケルシフェラーゼ一過性発現ベクターの構築
pMSG1.1RをテンプレートとしたPCRによって、セリシン1プロモーターのDNA断片を増幅した。用いたプライマーは、5’-cccgggagtcgaatttcgactactgcg-3’(配列番号14)と5’-cccgggcccgatgataagacgactatg-3’(配列番号15)であり、それぞれの5’末端には、SmaIサイトが付加されている。ウミシイタケルシフェラーゼを有するベクターpRL-null(Promega)からhuman b-globin intron を除去するため、ベクターをPstIとNheIで切断した後、切断末端を平滑化してセルフライゲーションを行った。このベクターをSmaIで消化し、SmaI処理した上記のセリシン1プロモーターのDNA断片を挿入して、ウミシイタケルシフェラーゼ発現ベクターpRLを作製した。
[4]遺伝子銃を用いた一過性発現実験による評価
上記[2]-(I)〜(V)の各ベクターを、インターナルコントロールのpRLと1:1の割合で混合した5種類のDNA溶液を用意し、以下に記載した方法によって、これらのDNA混合液をカイコ絹糸腺に導入し、ルシフェラーゼ活性を測定した。
(I)金粒子の調製:金粒子1 mgあたり375 ngのDNA混合液を付着させた。
(II)絹糸腺採取:5令1日の幼虫から絹糸腺を取出し、Grace培地で洗浄した。
(III)遺伝子銃によるDNAの絹糸腺への導入:遺伝子銃(Helios Gene Gun; BioRad)を用いて絹糸腺にDNAの付着した金粒子を打ち込んだ。絹糸腺あたり0.02 mgの金粒子(7.5ng DNA)を打ち込んでいる。
(IV)絹糸腺の移植:絹糸腺をGrace培地で洗浄後、絹糸腺を取出した個体と同じ日令の幼虫の背側後方体腔内に移植した。絹糸腺を移植した幼虫を3日間飼育した。
(V)絹糸腺の採取:移植した絹糸腺を宿主から取出し、Grace培地で洗浄後、絹糸腺を中部絹糸腺と後部絹糸腺に分割した。
(VI)ルシフェラーゼ活性の測定:中部絹糸腺をpassive lysis buffer(Promega)に浸透し、上清中のホタルおよびウミシイタケルシフェラーゼ活性を、ルシフェラーゼ定量システム(Promega)を用いて測定した。
1種類のDNA混合液について10〜12本の絹糸腺への導入を行い、ルシフェラーゼ活性を測定し、それぞれのホタルルシフェラーゼ活性の値をウミシイタケルシフェラーゼ活性の値で割った値の平均値と標準誤差を算出した。図1にその結果を示した。値はCACC-Fluci/pCR4を含むDNA溶液を導入した絹糸腺における中部絹糸腺でのルシフェラーゼ活性の平均値を1とした場合の相対値として示した。
CACC-Fluci/pCR4、Bm5’-Fluci/pCR4、Eo5’-Fluci/pCR4、Mn5’-Fluci/pCR4およびSf5’-Fluci/pCR4を含むDNA混合液を導入した中部絹糸腺でのルシフェラーゼ相対活性は、それぞれ、1.0、2.3、1.8、1.5、1.9であった。このように、中部絹糸腺細胞において、バキュロウイルス・ポリヘドリンの5’非翻訳領域をルシフェラーゼ遺伝子の5’側に付加させ発現させると、ルシフェラーゼ合成量が高められることが明らかになった。4種類のバキュロウイルスのポリヘドリン5’非翻訳領域のうち、ルシフェラーゼ発現促進効果が最も高かったのは、BmNPVのポリヘドリン5’非翻訳領域であった。
BmNPVポリヘドリン5’非翻訳領域による分泌型EGFP遺伝子発現量促進効果の検証
[1]分泌型EGFP cDNAの構築
ヒトカルレティキュリンのシグナルペプチドをコードする配列を含むプライマー:5’-caccatggtgctatccgtgccgttgctgctcggcctcctcggcctggccgtcgccgtgagcaagggcgaggag-3’(配列番号16)およびEGFPの終止コドンを含むプライマー:5’-tttacttgtacagctcgtccatgc-3’(配列番号17)を用い、pEGFP(Clontech)をテンプレートにしたPCRによって、ヒトカルレティキュリンのシグナルペプチドをコードする配列を5’末端に付加したEGFPのcDNAを増幅し、得られたDNA断片をpENTR/D-TOPOベクター(Invitrogen)に組み込んだ。次に、このベクターをテンプレートにしたPCRによって、cDNAの3’末端にヒスチジンtagをコードする配列を付加した。用いたプライマーは、5'-caccatggtgctatccgtgc-3’(配列番号18)、および5’-ttaatgatgatgatgatgatgagaaccccccttgtacagctcgtccatgcc-3’(配列番号19)である。後者のプライマーには、その5’末端に終止コドンおよび6つのヒスチジンをコードする配列が連結しており、さらにその直後に、セリン、グリシン、グリシンの3つのアミノ酸からなるリンカーをコードする配列、そしてEGFPをコードする配列が連結している。増幅したDNA断片をpENTR/D-TOPOベクターに組み込み、ヒスチジンtagが付加された分泌型EGFPのcDNAを有するベクター(psEGFP-his)を作製した。
[2]EGFP一過性発現ベクターの構築
psEGFP-hisをテンプレートとしたPCRによって、5’末端にBmNPVポリヘドリン遺伝子の5’非翻訳領域である50merの配列および3’末端側にヒスチジンtagの配列を有した分泌型EGFPのDNA断片を増幅した。PCRに用いたプライマーは5’-gatatcaagtattttactgttttcgtaacagttttgtaataaaaaaacctataaatatggtgctatccgtgccgtt-3’(配列番号20)、および5’-gatatcttaatgatgatgatgatgatgagaaccc-3’(配列番号21)である。前者のプライマーには、5’末端にEcoRVサイトが付加されており、その直後にBmNPVポリヘドリン遺伝子の5’非翻訳領域である50merの配列が連結しており、さらにその直後に、ヒトカルレティキュリンのシグナルペプチドをコードする配列が連結している。増幅したDNA断片をEcoRVで消化し、前記したNruIを有するpPser-FlpA/pCR4ベクターのNruIサイトに挿入し、Bm5’-EGFP/pCR4を作製した。
[1]分泌型EGFP cDNAの構築
ヒトカルレティキュリンのシグナルペプチドをコードする配列を含むプライマー:5’-caccatggtgctatccgtgccgttgctgctcggcctcctcggcctggccgtcgccgtgagcaagggcgaggag-3’(配列番号16)およびEGFPの終止コドンを含むプライマー:5’-tttacttgtacagctcgtccatgc-3’(配列番号17)を用い、pEGFP(Clontech)をテンプレートにしたPCRによって、ヒトカルレティキュリンのシグナルペプチドをコードする配列を5’末端に付加したEGFPのcDNAを増幅し、得られたDNA断片をpENTR/D-TOPOベクター(Invitrogen)に組み込んだ。次に、このベクターをテンプレートにしたPCRによって、cDNAの3’末端にヒスチジンtagをコードする配列を付加した。用いたプライマーは、5'-caccatggtgctatccgtgc-3’(配列番号18)、および5’-ttaatgatgatgatgatgatgagaaccccccttgtacagctcgtccatgcc-3’(配列番号19)である。後者のプライマーには、その5’末端に終止コドンおよび6つのヒスチジンをコードする配列が連結しており、さらにその直後に、セリン、グリシン、グリシンの3つのアミノ酸からなるリンカーをコードする配列、そしてEGFPをコードする配列が連結している。増幅したDNA断片をpENTR/D-TOPOベクターに組み込み、ヒスチジンtagが付加された分泌型EGFPのcDNAを有するベクター(psEGFP-his)を作製した。
[2]EGFP一過性発現ベクターの構築
psEGFP-hisをテンプレートとしたPCRによって、5’末端にBmNPVポリヘドリン遺伝子の5’非翻訳領域である50merの配列および3’末端側にヒスチジンtagの配列を有した分泌型EGFPのDNA断片を増幅した。PCRに用いたプライマーは5’-gatatcaagtattttactgttttcgtaacagttttgtaataaaaaaacctataaatatggtgctatccgtgccgtt-3’(配列番号20)、および5’-gatatcttaatgatgatgatgatgatgagaaccc-3’(配列番号21)である。前者のプライマーには、5’末端にEcoRVサイトが付加されており、その直後にBmNPVポリヘドリン遺伝子の5’非翻訳領域である50merの配列が連結しており、さらにその直後に、ヒトカルレティキュリンのシグナルペプチドをコードする配列が連結している。増幅したDNA断片をEcoRVで消化し、前記したNruIを有するpPser-FlpA/pCR4ベクターのNruIサイトに挿入し、Bm5’-EGFP/pCR4を作製した。
同様にして、BmNPVポリヘドリン遺伝子の5’非翻訳領域の代わりに、5’末端にCACC配列を有した分泌型EGFP cDNA断片を増幅した。用いたプライマーは、5’-gatatccaccatggtgctatccgtgccgtt-3’(配列番号22)および5’-gatatcttaatgatgatgatgatgatgagaaccc-3’(配列番号23)である。このDNA断片をEcoRVで消化し、pPser-FlpA/pCR4ベクターに挿入し、CACC-EGFP/pCR4を作製した。
[3] 遺伝子銃を用いた一過性発現実験による評価
Bm5’-EGFP/pCR4、CACC-EGFP/pCR4およびコントロールとしてEGFP DNA断片を含まないベクターpPser-FLpA/pCR4のそれぞれを、インターナルコントロールのCACC-Fluci/pCR4と10:1の割合で混合した3種類のDNA溶液を用意し、以下に記載した方法によって、これらのDNA混合液をカイコ絹糸腺に導入し、EGFPの発現量を測定した。
(I)金粒子の調製:金粒子1 mgあたり4.13 μgのDNA混合液を付着させた。
(II)絹糸腺採取:5令1日の幼虫から絹糸腺を取出し、Grace培地で洗浄した。
(III)遺伝子銃によるDNAの絹糸腺への導入:遺伝子銃(Helios Gene Gun; BioRad)を用いて絹糸腺にDNAの付着した金粒子を打ち込んだ。絹糸腺あたり0.02 mgの金粒子(82.6 ng DNA)を打ち込んでいる。
(IV)絹糸腺の移植:絹糸腺をGrace培地で洗浄後、絹糸腺を取出した個体と同じ日令の幼虫の背側後方体腔内に移植した。絹糸腺を移植した幼虫を3日間飼育した。
(V)絹糸腺の採取:移植した絹糸腺を宿主から取出し、Grace培地で洗浄した。
(VI)EGFP蛍光強度の測定:採取した絹糸腺をスライドガラスに並べ、GFP用フィルターを装填した蛍光顕微鏡で15秒間露光し、EGFPを発現している絹糸腺を撮影した。
(VII)ルシフェラーゼ活性の測定:蛍光顕微鏡での撮影後、絹糸腺をpassive lysis buffer(Promega)に浸透し、上清中のホタルルシフェラーゼ活性を、ルシフェラーゼ定量システム(Promega)を用いて測定した。
[3] 遺伝子銃を用いた一過性発現実験による評価
Bm5’-EGFP/pCR4、CACC-EGFP/pCR4およびコントロールとしてEGFP DNA断片を含まないベクターpPser-FLpA/pCR4のそれぞれを、インターナルコントロールのCACC-Fluci/pCR4と10:1の割合で混合した3種類のDNA溶液を用意し、以下に記載した方法によって、これらのDNA混合液をカイコ絹糸腺に導入し、EGFPの発現量を測定した。
(I)金粒子の調製:金粒子1 mgあたり4.13 μgのDNA混合液を付着させた。
(II)絹糸腺採取:5令1日の幼虫から絹糸腺を取出し、Grace培地で洗浄した。
(III)遺伝子銃によるDNAの絹糸腺への導入:遺伝子銃(Helios Gene Gun; BioRad)を用いて絹糸腺にDNAの付着した金粒子を打ち込んだ。絹糸腺あたり0.02 mgの金粒子(82.6 ng DNA)を打ち込んでいる。
(IV)絹糸腺の移植:絹糸腺をGrace培地で洗浄後、絹糸腺を取出した個体と同じ日令の幼虫の背側後方体腔内に移植した。絹糸腺を移植した幼虫を3日間飼育した。
(V)絹糸腺の採取:移植した絹糸腺を宿主から取出し、Grace培地で洗浄した。
(VI)EGFP蛍光強度の測定:採取した絹糸腺をスライドガラスに並べ、GFP用フィルターを装填した蛍光顕微鏡で15秒間露光し、EGFPを発現している絹糸腺を撮影した。
(VII)ルシフェラーゼ活性の測定:蛍光顕微鏡での撮影後、絹糸腺をpassive lysis buffer(Promega)に浸透し、上清中のホタルルシフェラーゼ活性を、ルシフェラーゼ定量システム(Promega)を用いて測定した。
GFPフィルターを装填した蛍光顕微鏡で撮影した映像の蛍光強度をSience Lab 99 Image Gauge(富士フィルム)で解析した。Bm5’-EGFP/pCR4あるいはCACC-EGFP/pCR4を含んだDNA混合液を導入した絹糸腺の蛍光強度からpPser-FLpA/pCR4を含んだDNA混合液を導入した絹糸腺の蛍光強度の平均値を引いた値を算出し、各絹糸腺のEGFPの蛍光強度とした。次に、EGFPの蛍光強度をルシフェラーゼ活性の値で割ることにより絹糸腺細胞へのDNA混合液の導入効率を規準化した。1種類のDNA混合液について9〜12本の絹糸腺への導入を行なった。規準化したEGFPの蛍光強度の平均値と標準誤差を算出した。図2にその結果を示した。値はCACC-EGFP/pCR4を含むDNA溶液を導入した絹糸腺における規準化したEGFPの蛍光強度の平均値を1とした場合の相対値として示した。
Bm5’-EGFP/pCRを導入した絹糸腺におけるEGFPの相対的な蛍光強度は、CACC-EGFP/pCR4を導入した絹糸腺の蛍光強度の4.7倍であった。このように、絹糸腺細胞において、BmNPVの5’非翻訳領域をEGFP遺伝子の5’側に付加させ発現させると、EGFPの合成量が高められることが明らかになった。
トランスジェニックカイコにおけるBmNPV5’非翻訳領域による外来性遺伝子発現量促進効果の検証
[1]トランスジェニックカイコ作製用ベクターの構築
実施例2の[2]で作製した「5’末端にBmNPVポリヘドリン遺伝子の5’非翻訳領域である50merの配列および3’末端側にヒスチジンtagの配列を有した分泌型EGFPのDNA断片」をEcoRVで消化した後、実施例1の[1]で作製したpMSG1.1RベクターのNruIサイトに挿入し、pBNP+を作製した。同様にして、実施例2の[2]で作製した「5’末端にCACC配列を有した分泌型EGFP cDNA断片」をEcoRVで消化した後、pMSG1.1RベクターのNruIサイトに挿入し、pBNP-を作製した。
[2]トランスジェニックカイコの作出
pBNP+を塩化セシウム超遠心法で精製した後、ヘルパープラスミドであるpHA3PIG(Nat. Biotechnol. 18, 81-84 (2000))とプラスミド量が1:1になるように混合し、さらにエタノール沈殿を行った後、pBNP+とpHA3PIGの濃度がそれぞれ200μg/mlなるようにインジェクションバッファー(0.5 mMリン酸バッファー pH 7.0, 5 mM KCl)に溶解した。このDNA溶液を、産卵後2〜8時間の前胚盤葉期のカイコ卵(カイコ胚)に、一つの卵あたり約15〜20 nlの液量で微量注入した。合計3447個の卵に微量注入した。上記の操作を、pBNP-についても同様に行い、合計3020個の卵に微量注入した。DNAを微量注入した卵を25℃でインキュベートしたところpBNP+においては1429個、pBNP-においては、1031個の卵が孵化した。孵化したカイコの飼育を続け、得られた生殖可能な成虫を交配し、pBNP+においては361グループ、pBNP-においては266グループ、のF1卵塊を得た。産卵日から5〜6日目のF1卵塊を蛍光実体顕微鏡で観察することにより、眼や神経系から赤色蛍光を発するトランスジェニックカイコの卵をスクリーニングした。その結果、トランスジェニックカイコの卵を含む卵塊をpBNP+においては31グループ、pBNP-においては33グループ得た。得られたF1世代の卵塊を孵化させ飼育し、トランスジェニックカイコから繭を得た。pBNP+においては24グループからそれぞれ1〜3個の繭を得た(合計66個)。pBNP-においては28グループからそれぞれ1〜3個の繭を得た(合計67個)。また、さらに羽化して生殖能力を有した成虫を野生型のカイコと交配して、トランスジェニック系統BNP+およびBNP-を15系統ずつ樹立した。
[1]トランスジェニックカイコ作製用ベクターの構築
実施例2の[2]で作製した「5’末端にBmNPVポリヘドリン遺伝子の5’非翻訳領域である50merの配列および3’末端側にヒスチジンtagの配列を有した分泌型EGFPのDNA断片」をEcoRVで消化した後、実施例1の[1]で作製したpMSG1.1RベクターのNruIサイトに挿入し、pBNP+を作製した。同様にして、実施例2の[2]で作製した「5’末端にCACC配列を有した分泌型EGFP cDNA断片」をEcoRVで消化した後、pMSG1.1RベクターのNruIサイトに挿入し、pBNP-を作製した。
[2]トランスジェニックカイコの作出
pBNP+を塩化セシウム超遠心法で精製した後、ヘルパープラスミドであるpHA3PIG(Nat. Biotechnol. 18, 81-84 (2000))とプラスミド量が1:1になるように混合し、さらにエタノール沈殿を行った後、pBNP+とpHA3PIGの濃度がそれぞれ200μg/mlなるようにインジェクションバッファー(0.5 mMリン酸バッファー pH 7.0, 5 mM KCl)に溶解した。このDNA溶液を、産卵後2〜8時間の前胚盤葉期のカイコ卵(カイコ胚)に、一つの卵あたり約15〜20 nlの液量で微量注入した。合計3447個の卵に微量注入した。上記の操作を、pBNP-についても同様に行い、合計3020個の卵に微量注入した。DNAを微量注入した卵を25℃でインキュベートしたところpBNP+においては1429個、pBNP-においては、1031個の卵が孵化した。孵化したカイコの飼育を続け、得られた生殖可能な成虫を交配し、pBNP+においては361グループ、pBNP-においては266グループ、のF1卵塊を得た。産卵日から5〜6日目のF1卵塊を蛍光実体顕微鏡で観察することにより、眼や神経系から赤色蛍光を発するトランスジェニックカイコの卵をスクリーニングした。その結果、トランスジェニックカイコの卵を含む卵塊をpBNP+においては31グループ、pBNP-においては33グループ得た。得られたF1世代の卵塊を孵化させ飼育し、トランスジェニックカイコから繭を得た。pBNP+においては24グループからそれぞれ1〜3個の繭を得た(合計66個)。pBNP-においては28グループからそれぞれ1〜3個の繭を得た(合計67個)。また、さらに羽化して生殖能力を有した成虫を野生型のカイコと交配して、トランスジェニック系統BNP+およびBNP-を15系統ずつ樹立した。
系統樹立した15系統のBNP+およびBNP-のトランスジェニックカイコのF1世代から得られた繭をルミノイメージアナライザーLAS-1000plus(富士フィルム)で撮影し、繭に含まれるEGFPの蛍光強度をSience Lab 99 Image Gauge(富士フィルム)で解析した。野生型カイコの繭、およびpMOSRA-7ベクター(Nat. Biotechnol. 21, 52-56 (2003))によって作出されたトランスジェニックカイコの繭(不溶性のフィブロイン層にフィブロインL鎖、ミニコラーゲンの三重らせん領域およびEGFPの融合タンパク質を含んでいる)とpBNP+またはpBNP-によって作出されたトランスジェニックカイコの繭を同時にルミノイメージアナライザーで撮影し、pBNP+またはpBNP-で作出されたトランスジェニックカイコの繭重量当たりの蛍光強度から野生型カイコの繭重量当たりの蛍光強度を引いた値を算出した。pMOSRA-7ベクターによって作出されたトランスジェニックカイコの繭重量当たりの蛍光強度を1とした相対値を算出した。pBNP+またはpBNP-によって作出されたトランスジェニックカイコの繭の相対蛍光強度の平均値と標準誤差を算出し、図3に示した。その結果、pBNP+およびpBNP-で作出されたトランスジェニックカイコの繭の蛍光強度は、0.9と1.3であった。
以上の結果より、トランスジェニックカイコにおいて、BmNPVポリへドリン遺伝子の5’非翻訳領域の配列を外来遺伝子の翻訳開始点の上流に組み込むと、組換えタンパク質の合成量が促進されることが明らかとなった。
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、カイコの絹糸腺で有用組換えタンパク質を大量に発現させるために有用なポリヌクレオチドが提供される。さらに、このポリヌクレオチドを含むベクター、およびこのベクターを用いて作製されたトランスジェニックカイコ、並びに、そのトランスジェニックカイコの絹糸腺で組換えタンパク質を発現させる組換えタンパク質の製造方法が提供される。この発明を利用すれば、様々な組換えタンパク質を大量に発現させることができる。従って、医療、食品、化粧品、繊維などの様々な産業分野で利用可能な組換えタンパク質を、大量にかつ容易に生産することが可能となる。
Claims (7)
- トランスジェニックカイコの後部絹糸腺または中部絹糸腺において組換えタンパク質を発現させるために、組換えタンパク質構造遺伝子の上流に機能的に連結される融合ポリヌクレオチドであって、以下のポリヌクレオチド(A)および(B):
(A)絹タンパク質遺伝子のプロモーター領域を構成するポリヌクレオチド;
(B)ポリヌクレオチド(A)の下流に連結された、バキュロウイルス・ポリヘドリンの5’非翻訳領域を構成するポリヌクレオチド、
からなる融合ポリヌクレオチド。 - ポリヌクレオチド(B)が、バキュロウイルスBmNPVポリヘドリンの5’非翻訳領域を構成する、配列番号1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドである請求項1の融合ポリヌクレオチド。
- 請求項1または2に記載の融合ポリヌクレオチドと組換えタンパク質構造遺伝子とが連結された発現カセット。
- 請求項3に記載の発現カセットを保有する発現ベクター。
- 発現カセットが、昆虫由来DNA型トランスポゾンの一対の逆向き反復配列に挟まれている請求項4の発現ベクター。
- 請求項3に記載の発現カセットをゲノム中に保有し、組換えタンパク質を後部絹糸腺または中部絹糸腺にて発現するトランスジェニックカイコ。
- 請求項6に記載のトランスジェニックカイコの組換えタンパク質遺伝子を発現させ、当該遺伝子がコードする組換えタンパク質をトランスジェニックカイコの後部絹糸腺または中部絹糸腺で産生させ、この産生された組換えタンパク質を回収することを特徴とする組換えタンパク質の製造方法。
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---|---|---|---|---|
JP2006016323A (ja) * | 2004-06-30 | 2006-01-19 | Hiroshima Industrial Promotion Organization | 生理活性バイオマテリアル |
JP2006109772A (ja) * | 2004-10-15 | 2006-04-27 | Hiroshima Industrial Promotion Organization | カイコでの組換えタンパク質製造のためのポリヌクレオチド |
-
2006
- 2006-11-16 JP JP2006310528A patent/JP2008125366A/ja active Pending
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Non-Patent Citations (1)
Title |
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JPN6012018843; Biotechnol.Prog. Vol.22, 20060914, p.1570-1577 * |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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