JP2008122524A - 光学フィルム及びそれを用いたディスプレイ用前面板 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い耐候性を有し、且つ高い近赤外線遮蔽性能と、可視光領域全体において高い透過率を有する光学フィルムを提供する。
【解決手段】本発明の光学フィルムは、基材1と、基材1の主面に配置され、2種類以上の近赤外線吸収化合物を含む近赤外線吸収層2を備え、波長850nm以上1100nm以下の近赤外線領域における分光透過率は10%以下であり、波長450nm以上650nm以下の可視光領域における分光透過率の最小値は60%以上75%以下であり、波長450nm以上650nm以下の可視光領域における分光透過率の最大値と最小値との差は10%以上20%以下であることを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】本発明の光学フィルムは、基材1と、基材1の主面に配置され、2種類以上の近赤外線吸収化合物を含む近赤外線吸収層2を備え、波長850nm以上1100nm以下の近赤外線領域における分光透過率は10%以下であり、波長450nm以上650nm以下の可視光領域における分光透過率の最小値は60%以上75%以下であり、波長450nm以上650nm以下の可視光領域における分光透過率の最大値と最小値との差は10%以上20%以下であることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、近赤外線吸収層を備えた光学フィルム及びその光学フィルムを用いたディスプレイ用前面板に関する。
近年、大型テレビをはじめ種々の電子機器の表示パネルとして、プラズマディスプレイパネル(PDP)の需要が増大している。PDPは、2枚のガラス板の間にキセノンとネオンとを含む混合ガスが封入され、この混合ガスに高電圧をかけると紫外線が発生し、ガラス板に塗布された蛍光体にこの紫外線があたって発光する。
しかし、このとき紫外線以外に、波長850nm〜1100nmの領域の近赤外線や電磁波等も発生する。この近赤外線の波長領域は、近赤外線通信や他の電子機器のリモートコントロールに使用される波長領域と重複するため、これらの誤作動を引き起こす原因となる。そこで、PDPの前面板に、近赤外線を吸収する近赤外線フィルタを設けて、この近赤外線を吸収している(例えば、非特許文献1参照。)。
この近赤外線フィルタとしては、例えば、樹脂に近赤外線吸収化合物を分散させてフィルム状に構成したものが使用されている。近赤外線吸収化合物としては、例えば、ジイモニウム化合物、フタロシアニン化合物、シアニン化合物、アゾ化合物、スクアリリウム化合物、ジチオール化合物等の種々の有機色素が用いられている。
近赤外線フィルタに用いられる近赤外線吸収化合物は、高温多湿環境や強い光に長時間さらされても色素の分解や酸化によって色素が変性しない所謂耐候性を有することが求められる。また、有機色素によっては特定の波長領域の可視光を吸収するため、フィルタの透過色が濃い色味を帯びてしまい、ディスプレイ用のフィルタとしては不適切となるという問題がある。このため、上記近赤外線吸収化合物は、特定の可視光に対して大きな吸収を持たないことも求められる。
従来、これらの要求に対応するため、有機色素の中でも高い耐候性を持つフタロシアニン化合物が多く使用されている。例えば、フタロシアニン系色素とその他の色素を併用し、フィルタの透過色をブルーグレーの色味とし、且つ耐候性の高いフィルタを得る方法が提案されている(特許文献1参照。)。
花岡ほか、「反射防止膜の特性と最適設計・膜作製技術」、第1版第2刷、株式会社技術情報協会、2002年2月5日、184頁
特開2001−183523号公報
しかし、特許文献1の方法で得られるフィルタはブルーグレーの色味を持つものの、可視光領域の中心部における透過率が特に低いという問題点がある。
一方、可視光の透過率を上げるためにフタロシアニン化合物以外の色素を使用した場合には、バインダ樹脂の種類や添加剤、製造方法の工夫等で色素の耐候性を向上させることはある程度は可能であるが、色素の劣化を完全に抑えることは困難である。また、フィルタの色味の問題を解消するため、色味調整剤等を添加して可視光の吸収スペクトルをフラットにする方法も考えられるが、結果として可視光全体の透過率が低くなるという問題が生じる。
本発明は、上記問題を解決したもので、高い耐候性を有し、且つ高い近赤外線遮蔽性能と、可視光領域全体において高い透過率を有する光学フィルム及びそれを用いたディスプレイ用前面板を提供する。
本発明の光学フィルムは、2種類以上の近赤外線吸収化合物を含む近赤外線吸収層を備えた光学フィルムであって、波長850nm以上1100nm以下の近赤外線領域における分光透過率は、10%以下であり、波長450nm以上650nm以下の可視光領域における分光透過率の最小値は、60%以上75%以下であり、波長450nm以上650nm以下の可視光領域における分光透過率の最大値と最小値との差は、10%以上20%以下であることを特徴とする。
また、本発明のディスプレイ用前面板は、基板上に上記本発明の光学フィルムが配置されていることを特徴とする。
本発明によれば、高い耐候性を有し、且つ高い近赤外線遮蔽性能と、可視光領域全体において高い透過率を有する光学フィルム及びそれを用いたディスプレイ用前面板を提供できる。
本発明の光学フィルムは、2種類以上の近赤外線吸収化合物を含む近赤外線吸収層を備えている。また、本発明の光学フィルムは、波長850nm以上1100nm以下の近赤外線領域における分光透過率は、10%以下であり、波長450nm以上650nm以下の可視光領域における分光透過率の最小値は、60%以上75%以下であり、波長450nm以上650nm以下の可視光領域における分光透過率の最大値と最小値との差は、10%以上20%以下である。
本発明の光学フィルムは、2種類以上の近赤外線吸収化合物を用いることにより、近赤外線吸収化合物の選択の幅が広がり、1種類の近赤外線吸収化合物では達成できない、多様な特性を光学フィルムに付与できる。これにより、高い耐候性を有し、且つ高い近赤外線遮蔽性能と、可視光領域全体において高い透過率を有する光学フィルムを提供できる。
また、本発明の光学フィルムは、波長450nm以上650nm以下の可視光領域において最大の分光透過率を示す透過光の波長が、500nm以上600nm未満であり、波長450nm以上650nm以下の可視光領域において最小の分光透過率を示す透過光の波長が、450nm以上500nm未満又は600nm以上650nm以下であることが好ましい。これにより、可視光領域の中央部の波長500nm以上600nm未満における分光透過率を高めることができる。
上記近赤外線吸収化合物は、ジイモニウム化合物を含み、さらにシアニン化合物、フタロシアニン化合物、アゾ化合物、スクアリリウム化合物及びジチオール化合物からなる群から選ばれる少なくとも2種類の化合物を含むことが好ましく、特に、ジイモニウム化合物、シアニン化合物及びフタロシアニン化合物を含むことが好ましい。ジイモニウム化合物と他の色素を2種類以上組み合わせる場合、特にジイモニウム化合物と、シアニン化合物及びフタロシアニン化合物を組み合わせる場合に、より高い耐候性を有し、且つより高い近赤外線遮蔽性能と、可視光領域全体においてより高い透過率を有する光学フィルムを提供できる。
上記近赤外線吸収層は、近赤外線吸収化合物を分散させる樹脂を含めば、近赤外線吸収化合物を分散させて基材上に固定化できるので好ましい。上記樹脂は、ガラス転移温度が80℃以上であれば、近赤外線吸収化合物をより強く固定化させ、耐熱性を向上させることができるのでより好ましい。
上記近赤外線吸収層は、基材の一方の主面に配置されていることが好ましい。これにより、光学フィルムの強度及び取扱い性を向上できる。
また、本発明の光学フィルムは、近赤外線吸収層が配置された基材の主面の反対面に、反射防止層がさらに配置されていることが好ましい。これにより、光学フィルムに反射防止機能を付与できる。
さらに、本発明の光学フィルムは、基材と反射防止層との間に、ハードコート層が配置されていることが好ましい。これにより、光学フィルムに表面保護機能を付与できる。
また、本発明のディスプレイ用前面板は、基板上に、上記本発明の光学フィルムが配置されていることを特徴とする。これにより、高い耐候性を有し、且つ高い近赤外線遮蔽性能と、可視光領域全体において高い透過率を有するディスプレイ用前面板を提供できる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の光学フィルムの一例を示す断面図である。本実施形態の光学フィルムは、基材1と、基材1の一方の主面に配置された近赤外線吸収層2から形成されている。
図1は、本発明の光学フィルムの一例を示す断面図である。本実施形態の光学フィルムは、基材1と、基材1の一方の主面に配置された近赤外線吸収層2から形成されている。
本実施形態の光学フィルムは、波長850nm以上1100nm以下の近赤外線領域における分光透過率が10%以下であり、より好ましくは8%以下である。上記分光透過率を10%以下とすることで、例えば、本実施形態の光学フィルムをPDPの前面板に用いると、PDPから発生する近赤外線を遮蔽することが可能となり、周辺の電子機器の誤作動を十分に防ぐことができる。一方、上記分光透過率が10%を超えると、近赤外線遮蔽性能を十分に発揮できなくなる。上記分光透過率の下限値については特に限定されない。
また、本実施形態の光学フィルムは、波長450nm以上650nm以下の可視光領域における分光透過率の最小値が60%以上75%以下、より好ましくは65%以上70%以下であり、且つ波長450nm以上650nm以下の可視光領域における分光透過率の最大値と最小値との差が10%以上20%以下、より好ましくは10%以上15%以下である。これにより、可視光領域全体において高い透過率を有し、色味調整のしやすい光学フィルムを提供できる。可視光領域の分光透過率の最小値が60%未満になると、例えば、本実施形態の光学フィルムをPDPの前面板に用いると、PDP画面からの透過光が暗くなる傾向がある。一方、近赤外線吸収化合物は少なからず可視光領域の光を吸収するものが多いため、上記近赤外線領域における分光透過率を10%以下に保持しながら可視光領域における分光透過率の最小値を75%よりも上昇させることは、実質的に困難である。
さらに、本実施形態の光学フィルムは、波長450nm以上650nm以下の可視光領域において最大の分光透過率を示す透過光の波長が、500nm以上600nm未満であり、波長450nm以上650nm以下の可視光領域において最小の分光透過率を示す透過光の波長が、450nm以上500nm未満又は600nm以上650nm以下であることが好ましい。可視光領域の中央部の波長500nm以上600nm未満における分光透過率を最も高めることで、色未調整後の可視光領域全体の透過率が高い光学フィルムとすることができる。
基材1は、可視光に対して透光性を有する材料で形成されていれば、その形状や製造方法等は特に限定されない。例えば、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、脂環式ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、トリアセチルセルロース系樹脂等の材料を、フィルム状又はシート状に加工したものを用いることができる。フィルム状又はシート状に加工する方法としては、押し出し成形、カレンダー成形、圧縮成形、射出成形、上記樹脂を溶剤に溶解させてキャスティングする方法等が挙げられる。基材1の厚さは、通常10μm〜500μm程度である。なお、上記材料には、酸化防止剤、難燃剤、耐熱防止剤、紫外線吸収剤、表面調整剤、易滑剤、帯電防止剤等の添加剤が添加されていてもよい。
近赤外線吸収層2は、2種類以上の近赤外線吸収化合物を含む樹脂から形成されている。2種類以上の近赤外線吸収化合物を組み合わせて用いることにより、高い耐候性を有し、且つ高い近赤外線遮蔽性能と、可視光領域全体において高い透過率を有する光学フィルムを提供できる。また、上記樹脂を用いることにより、近赤外線吸収化合物を樹脂に分散させて基材上に固定化できる。
上記近赤外線吸収化合物は、特に限定されるものではないが、ジイモニウム化合物、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、アゾ化合物、スクアリリウム化合物、ジチオール化合物等の有機色素が使用できる。特に、上記近赤外線吸収化合物としては、ジイモニウム化合物を含み、さらにシアニン化合物、フタロシアニン化合物、アゾ化合物、スクアリリウム化合物及びジチオール化合物からなる群から選ばれる少なくとも2種類の化合物を含むことが好ましく、さらに、ジイモニウム化合物、シアニン化合物及びフタロシアニン化合物を含むことがより好ましい。これにより、ジイモニウム化合物と他の色素を2種類以上組み合わせる場合、特にジイモニウム化合物と、シアニン化合物及びフタロシアニン化合物を組み合わせる場合に、より高い耐候性を有し、且つより高い近赤外線遮蔽性能と、可視光領域全体においてより高い透過率を有する光学フィルムを提供できる。
上記近赤外線吸収化合物の含有量は、上記樹脂100重量部に対し、5重量部以上50重量部以下であることが好ましい。近赤外線吸収化合物の含有量が5重量部未満では、近赤外線を十分に遮蔽することができず、また、50重量部を超えると可視光領域の分光透過率が低下して可視光透過率の高い光学フィルムを得ることができない。
近赤外線吸収層2を形成する樹脂としては可視光に対して透光性を有していれば特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、セルロース樹脂、ポリブチラール樹脂、ポリエステル樹脂等を用いることができる。また、これらの樹脂を2種類以上ブレンドしたポリマーブレンドを用いることもできる。特に、ガラス転移温度が80℃以上の樹脂を用いると、近赤外線吸収化合物が樹脂により強く固定化され、耐熱性を向上させることができるので好ましい。また、疎水性成分を含む樹脂を併用すれば、耐湿熱性を向上させることができるのでより一層好ましい。
また、近赤外線吸収層2には、酸化防止剤、難燃剤、耐熱防止剤、紫外線吸収剤、表面調整剤、易滑剤、帯電防止剤等の添加剤が添加されていてもよい。
基材1の主面に近赤外線吸収層2を形成する方法は特に限定されず、上記近赤外線吸収化合物、上記樹脂及び必要に応じて上記添加剤を溶媒に溶解させた塗布液を基材1の表面に塗布して乾燥すればよい。塗布方法としては、例えば、ロールコート、ダイコート、エアナイフコート、ブレードコート、スピンコート、リバースコート、グラビアコート等の塗工法、グラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷等の印刷法を用いることができる。
上記塗布液に用いる溶媒については、上記近赤外線吸収化合物及び上記樹脂の溶解性を損なわなければ特に限定されず、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、アセトニトリル、プロピオニトリル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、トルエン、キシレン、テトラヒドロキシフラン等を1種類又は2種類以上を混合して用いることができる。
なお、本明細書において、「近赤外線吸収化合物の溶解」とは、近赤外線吸収化合物が溶媒中に溶け込み、固体の形状がなくなり、イオン対又は錯体を形成する状態となることを意味し、イオン対又は錯体を形成しないほどに、溶媒に溶け込んだ状態を意味する「解離」とは区別される。
近赤外線吸収層2の厚さは、2μm以上15μm以下が好ましく、3μm以上10μm以下がより好ましい。近赤外線吸収層2の厚さが2μm未満では、波長850nm以上1100nm以下の近赤外線領域における分光透過率を10%以下にするためには樹脂に対する近赤外線吸収化合物の添加量を増加させる必要があり、未溶解の近赤外線吸収化合物に起因する光の散乱が生じ、近赤外線吸収層2が白濁する場合がある。また、近赤外線吸収層2の厚さが15μmを超えると、波長850nm以上1100nm以下の近赤外線領域における分光透過率を10%以下に維持することはできるものの、近赤外線吸収層2中に前述の溶媒が残存する場合がある。この残存溶剤は、近赤外線吸収化合物の再溶解又は解離等を引き起こして、近赤外線吸収性能の経時劣化をもたらすおそれがある。近赤外線吸収層2の厚さが、2μm以上15μm以下であれば、これらの問題が生じないため好ましい。
本実施形態の光学フィルムは、基材1の上に近赤外線吸収層2を形成した例であるが、基材1を省略して、近赤外線吸収層2のみから光学フィルムを形成してもよい。
(実施形態2)
図2は、本発明の光学フィルムの他の一例を示す断面図である。図2において、図1に示した光学フィルムと同じ構成部材には同じ符号を付し、その説明を省略する。また、同じ部材は同様の効果を有する。
図2は、本発明の光学フィルムの他の一例を示す断面図である。図2において、図1に示した光学フィルムと同じ構成部材には同じ符号を付し、その説明を省略する。また、同じ部材は同様の効果を有する。
本実施形態の光学フィルムは、基材1と、基材1の一方の主面に配置された近赤外線吸収層2と、この基材1の他方の主面に配置されたハードコート層3と、このハードコート層3の上に配置された反射防止層4から形成されている。また、上記反射防止層4は、屈折率の異なる3層から形成され、ハードコート層3側から中屈折率層4a、高屈折率層4b、低屈折率層4cの順に配置されている。
ハードコート層3の構成材料は、硬度が高く、可視光に対して透光性を有する材料であれば特に限定されない。例えば、ウレタン系、メラミン系、エポキシ系、アクリル系等の熱硬化型樹脂、電磁波硬化型樹脂等を用いることができる。特に表面硬度が高い電磁波硬化型樹脂を用いることが好ましい。また、上記ハードコート層3は、無機微粒子をさらに含むことが好ましい。無機微粒子を含むことによってハードコート層3は、より高い表面硬度が得られるとともに、樹脂等の硬化による収縮を緩和できる。無機微粒子の材料としては、例えば、二酸化珪素(シリカ)、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、酸化ジルコニウム等を用いることができる。
基材1の上にハードコート層3を形成する方法は特に限定されず、例えば、ロールコート、ダイコート、エアナイフコート、ブレードコート、スピンコート、リバースコート、グラビアコート等の塗工法、グラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷等の印刷法を用いることができる。ハードコート層3の厚さは、1μm〜10μmが好ましく、2μm〜7μmがより好ましい。
ハードコート層3の上に反射防止層4を形成する方法も特に限定されず、上記ハードコート層3と同様の方法を用いることができる。
中屈折率層4aは、屈折率nmが1.53以上1.65以下の範囲、より好ましくは1.57以上1.63以下の範囲であり、その構成材料が可視光に対して透光性を有していれば特に限定されない。その構成材料としては、例えば、屈折率の高い無機微粒子を有機物成分中に均一に分散させたコーティング組成物等を好適に用いることができる。上記有機物成分としては、例えば、熱硬化型樹脂又は電磁波硬化型樹脂等の架橋可能な有機物を用いることができる。また、上記無機微粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化錫、酸化インジウム、ITO、ATO、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム等の微粒子を用いることができる。特に、高い導電性を有するITO微粒子又はATO微粒子を用いれば、中屈折率層4aの帯電を防止する効果が得られる。
高屈折率層4bは、屈折率nhが1.70以上1.95以下の範囲、より好ましくは1.76以上1.84以下の範囲であり、その構成材料が可視光に対して透光性を有していれば特に限定されない。その構成材料としては、例えば、屈折率の最も高い無機微粒子である酸化チタン微粒子や、化学的に安定である酸化ジルコニウム微粒子を有機物成分中に均一に分散させたコーティング組成物を好適に用いることができる。上記有機物成分としては、例えば、熱硬化型樹脂又は電磁波硬化型樹脂等の架橋可能な有機物を用いることができ、この高屈折率層4bは、コーティング組成物が強固に架橋した膜として形成される。また、酸化チタン微粒子としては、光触媒作用が弱く、且つ屈折率も高いルチル構造の酸化チタン微粒子を用いることがより好ましい。アナターゼ構造の酸化チタン微粒子は、光触媒作用があり、紫外線の照射によりこの膜を構成する樹脂成分や基材等の有機物を分解してしまうおそれがある。酸化チタン微粒子あるいは酸化ジルコニウム微粒子の含有量は、硬化後の高屈折率層4bの全重量の50重量%以上70重量%以下が好ましい。また、上記屈折率を満足できるのであれば、上記酸化チタンあるいは酸化ジルコニウムに、例えば酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化錫等の導電性粒子や、アルカリ金属イオンやアンモニウムイオン等を含有する帯電防止剤を添加してもよい。導電性粒子や帯電防止剤を添加することにより、高屈折率層4bに帯電防止機能を付与できる。また、これらの導電性粒子や帯電防止剤は、ハードコート層の材料に添加することで、ハードコート層3に帯電防止機能を付与することもできる。
低屈折率層4cは、屈折率nlが1.30以上1.47以下の範囲、より好ましくは1.35以上1.45以下の範囲であり、その構成材料が可視光に対して透光性を有していれば特に限定されない。その構成材料としては、例えば、フッ素系又はシリコーン系有機化合物、二酸化珪素(シリカ)、フッ化マグネシウム等の無機微粒子又は二酸化珪素(シリカ)、フッ化マグネシウム等の屈折率の低い粒子を中空状にした無機微粒子を有機物成分中に均一に分散させたコーティング組成物を好適に用いることができる。上記有機物成分としては、例えば、熱硬化型樹脂又は電磁波硬化型樹脂等の架橋可能な有機物を用いることができる。特に、電磁波硬化型樹脂として紫外線硬化型樹脂を用いる場合には、窒素等の不活性ガスをパージして、酸素濃度が1000ppm以下になる条件下で紫外線照射を行うことが好ましい。これより、酸素による重合阻害を防止することができる。
なお、実施形態1の光学フィルムのみでもディスプレイ用の前面板の部材として使用できるが、実施形態2に示したように、反射防止機能等の複数の機能を備えた複合光学フィルムを使用することがより好ましい。
また、本実施形態の光学フィルムは、ハードコート層3及び反射防止層4を設けた例を示したが、ハードコート層3は省略することもできる。また、反射防止層4の各層の屈折率及び厚みを変えることで、高屈折率層と低屈折率層の2層構造、ハードコート層3と屈折率の異なる反射防止層のみの単層構造という構成も可能である。
(実施形態3)
図3は、本発明のディスプレイ用前面板の一例を示す断面図である。本実施形態のディスプレイ用前面板11は、基板12と、基板12の一方の主面に配置された近赤外線遮蔽体13及び他方の主面に配置された電磁波遮蔽体14と、電極(アース)15から形成されている。基板12の構成材料は、可視光に対して透光性を有する材料であれば特に限定されず、例えば強化ガラス等を用いればよい。近赤外線遮蔽体13としては、例えば、実施形態1又は実施形態2の光学フィルムをそのまま用いることができる。実施形態1又は実施形態2の光学フィルムを用いることにより、高い耐候性を有し、且つ高い近赤外線遮蔽性能と、可視光領域全体において高い透過率を有するディスプレイ用前面板を得られる。
図3は、本発明のディスプレイ用前面板の一例を示す断面図である。本実施形態のディスプレイ用前面板11は、基板12と、基板12の一方の主面に配置された近赤外線遮蔽体13及び他方の主面に配置された電磁波遮蔽体14と、電極(アース)15から形成されている。基板12の構成材料は、可視光に対して透光性を有する材料であれば特に限定されず、例えば強化ガラス等を用いればよい。近赤外線遮蔽体13としては、例えば、実施形態1又は実施形態2の光学フィルムをそのまま用いることができる。実施形態1又は実施形態2の光学フィルムを用いることにより、高い耐候性を有し、且つ高い近赤外線遮蔽性能と、可視光領域全体において高い透過率を有するディスプレイ用前面板を得られる。
以下、実施例に基づき本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
基材として、表裏両面を易接着処理した厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ社製“U−34”)を準備した。
基材として、表裏両面を易接着処理した厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ社製“U−34”)を準備した。
また、近赤外線吸収化合物として、ジイモニウム化合物(日本カーリット社製“CIR−1085”、最大吸収波長:1074nm)6重量部、シアニン化合物(住友精化社製“SD50−E05N”、最大吸収波長:833nm)1重量部、及びフタロシアニン化合物(日本触媒社製“IR−12”、最大吸収波長:876nm)2重量部を準備した。さらに、樹脂及び溶媒として、ポリエステル樹脂(ユニチカ社製“UE34”)100重量部及びメチルエチルケトン560重量部を準備した。
次に、近赤外線吸収層の材料であるこれらの近赤外線吸収化合物、樹脂及び溶媒を混合・撹拌させたコーティング液を、バーコータを用いて上記基材上に塗布し、110℃で3分間乾燥し、基材上に厚さ4μmの近赤外線吸収層を形成し、本実施例の光学フィルムを作製した。
次に、本実施例の光学フィルムの分光透過率を分光光度計(日本分光社製“U−Best V−570”)にて測定したところ、図4に示すような吸収スペクトルを得た。
(比較例1)
近赤外線吸収化合物として、ジイモニウム化合物(日本カーリット社製“CIR−1085”、最大吸収波長:1074nm)6重量部、シアニン化合物(住友精化社製“SD50−E04N”、最大吸収波長:877nm)1重量部、及びシアニン化合物(住友精化社製“SD50−E05N”、最大吸収波長:833nm)1重量部を用いた以外は、実施例1と同様にして本比較例の光学フィルムを作製した。
近赤外線吸収化合物として、ジイモニウム化合物(日本カーリット社製“CIR−1085”、最大吸収波長:1074nm)6重量部、シアニン化合物(住友精化社製“SD50−E04N”、最大吸収波長:877nm)1重量部、及びシアニン化合物(住友精化社製“SD50−E05N”、最大吸収波長:833nm)1重量部を用いた以外は、実施例1と同様にして本比較例の光学フィルムを作製した。
次に、本比較例の光学フィルムの分光透過率を実施例1と同様にして測定したところ、図5に示すような吸収スペクトルを得た。
(比較例2)
近赤外線吸収化合物として、ジイモニウム化合物(日本カーリット社製“CIR−1085”、最大吸収波長:1074nm)6重量部、フタロシアニン化合物(日本触媒社製“IR−10A”、最大吸収波長:850nm)2重量部、フタロシアニン化合物(日本触媒社製“IR−12”、最大吸収波長:830nm)2重量部、フタロシアニン化合物(日本触媒社製“IR−14”、最大吸収波長:820nm)2重量部を用いた以外は、実施例1と同様にして本比較例の光学フィルムを作製した。
近赤外線吸収化合物として、ジイモニウム化合物(日本カーリット社製“CIR−1085”、最大吸収波長:1074nm)6重量部、フタロシアニン化合物(日本触媒社製“IR−10A”、最大吸収波長:850nm)2重量部、フタロシアニン化合物(日本触媒社製“IR−12”、最大吸収波長:830nm)2重量部、フタロシアニン化合物(日本触媒社製“IR−14”、最大吸収波長:820nm)2重量部を用いた以外は、実施例1と同様にして本比較例の光学フィルムを作製した。
次に、本比較例の光学フィルムの分光透過率を実施例1と同様にして測定したところ、図6に示すような吸収スペクトルを得た。
<分光透過率の分析>
図4、図5及び図6から、実施例1、比較例1及び比較例2の光学フィルムの、波長850nm〜1100nmの領域における分光透過率、波長450nm〜650nmの領域において最大の分光透過率を示す透過光の波長、波長450nm〜650nmの領域における分光透過率の最大値、波長450nm〜650nmの領域において最小の分光透過率を示す透過光の波長、波長450nm〜650nmの領域における分光透過率の最小値、及び波長450nm〜650nmの領域における分光透過率の最大値と最小値との差を求めた。その結果を表1に示す。
図4、図5及び図6から、実施例1、比較例1及び比較例2の光学フィルムの、波長850nm〜1100nmの領域における分光透過率、波長450nm〜650nmの領域において最大の分光透過率を示す透過光の波長、波長450nm〜650nmの領域における分光透過率の最大値、波長450nm〜650nmの領域において最小の分光透過率を示す透過光の波長、波長450nm〜650nmの領域における分光透過率の最小値、及び波長450nm〜650nmの領域における分光透過率の最大値と最小値との差を求めた。その結果を表1に示す。
<光学フィルムの色味の観察>
実施例1、比較例1及び比較例2の光学フィルムの色味を目視により観察した。その結果を表1に示す。
実施例1、比較例1及び比較例2の光学フィルムの色味を目視により観察した。その結果を表1に示す。
<耐候性試験>
実施例1、比較例1及び比較例2の光学フィルムを用いて、温度80℃、相対湿度95%で48時間保存する耐候性試験を行い、その耐候性試験前後に、上記と同様にして、各光学フィルムの特定波長(850nm、950nm、1000nm、1100nm)の分光透過率を測定し、耐候性試験の前後における分光透過率の変化率を下記数式(1)から算出した。
実施例1、比較例1及び比較例2の光学フィルムを用いて、温度80℃、相対湿度95%で48時間保存する耐候性試験を行い、その耐候性試験前後に、上記と同様にして、各光学フィルムの特定波長(850nm、950nm、1000nm、1100nm)の分光透過率を測定し、耐候性試験の前後における分光透過率の変化率を下記数式(1)から算出した。
(数1)
分光透過率の変化率(%)=(|Tint(WL)−Tend(WL)|/Tint(WL))×100
数式(1)において、Tint(WL)は上記耐候性試験前の波長WLでの分光透過率、Tend(WL)は上記耐候性試験後の波長WLでの分光透過率を表す。
分光透過率の変化率(%)=(|Tint(WL)−Tend(WL)|/Tint(WL))×100
数式(1)において、Tint(WL)は上記耐候性試験前の波長WLでの分光透過率、Tend(WL)は上記耐候性試験後の波長WLでの分光透過率を表す。
上記分光透過率の変化率を下記評価基準により分類し、その結果をそれぞれ◎、○、△の記号を用いて表1に示す。
〔評価基準〕
◎:耐候性試験前後における分光透過率の変化率が1.0%未満
○:耐候性試験前後における分光透過率の変化率が1.0%以上1.5%未満
△:耐候性試験前後における分光透過率の変化率が1.5%以上
また、上記耐候性試験後の実施例1、比較例1及び比較例2の光学フィルムの色味の変化を目視により観察した。その結果を表1に示す。
◎:耐候性試験前後における分光透過率の変化率が1.0%未満
○:耐候性試験前後における分光透過率の変化率が1.0%以上1.5%未満
△:耐候性試験前後における分光透過率の変化率が1.5%以上
また、上記耐候性試験後の実施例1、比較例1及び比較例2の光学フィルムの色味の変化を目視により観察した。その結果を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1では、高い耐候性を有し、且つ高い近赤外線遮蔽性能と、可視光領域全体において高い透過率を有する光学フィルムを提供できることが分かる。一方、波長450nm以上650nm以下の可視光領域における分光透過率の最小値が60%を下回り、波長450nm以上650nm以下の可視光領域における分光透過率の最大値と最小値との差が20%を超えた比較例1では、耐候性が低下した。また、図6から明らかなように、波長450nm以上650nm以下の可視光領域における分光透過率の最小値が60%を下回り、波長450nm以上650nm以下の可視光領域における分光透過率の最大値と最小値との差が10%を下回った比較例2では、可視光領域の中央部における透過率が低下した。
以上説明したように本発明は、高い耐候性を有し、且つ高い近赤外線遮蔽性能と、可視光領域全体において高い透過率を有する光学フィルムを提供できる。また、本発明の光学フィルムを用いることにより、電子ディスプレイ、特にPDPに好適なディスプレイ用前面板を提供できる。
1 基材
2 近赤外線吸収層
3 ハードコート層
4 反射防止層
4a 中屈折率層
4b 高屈折率層
4c 低屈折率層
11 ディスプレイ用前面板
12 基板
13 近赤外線遮蔽体
14 電磁波遮蔽体
15 電極
2 近赤外線吸収層
3 ハードコート層
4 反射防止層
4a 中屈折率層
4b 高屈折率層
4c 低屈折率層
11 ディスプレイ用前面板
12 基板
13 近赤外線遮蔽体
14 電磁波遮蔽体
15 電極
Claims (9)
- 2種類以上の近赤外線吸収化合物を含む近赤外線吸収層を備えた光学フィルムであって、
波長850nm以上1100nm以下の近赤外線領域における分光透過率は、10%以下であり、
波長450nm以上650nm以下の可視光領域における分光透過率の最小値は、60%以上75%以下であり、
波長450nm以上650nm以下の可視光領域における分光透過率の最大値と最小値との差は、10%以上20%以下であることを特徴とする光学フィルム。 - 波長450nm以上650nm以下の可視光領域において最大の分光透過率を示す透過光の波長は、500nm以上600nm未満であり、波長450nm以上650nm以下の可視光領域において最小の分光透過率を示す透過光の波長は、450nm以上500nm未満又は600nm以上650nm以下である請求項1に記載の光学フィルム。
- 前記近赤外線吸収化合物は、ジイモニウム化合物を含み、さらにシアニン化合物、フタロシアニン化合物、アゾ化合物、スクアリリウム化合物及びジチオール化合物からなる群から選ばれる少なくとも2種類の化合物を含む請求項1に記載の光学フィルム。
- 前記近赤外線吸収化合物は、ジイモニウム化合物、シアニン化合物及びフタロシアニン化合物を含む請求項1に記載の光学フィルム。
- 前記近赤外線吸収層は、前記近赤外線吸収化合物を分散させる樹脂を含む請求項1に記載の光学フィルム。
- 前記近赤外線吸収層は、基材の一方の主面に配置されている請求項1又は5に記載の光学フィルム。
- 前記近赤外線吸収層が配置された前記基材の主面の反対面に、反射防止層がさらに配置されている請求項6に記載の光学フィルム。
- 前記基材と前記反射防止層との間に、ハードコート層がさらに配置されている請求項7に記載の光学フィルム。
- 基板上に、請求項1〜8のいずれか1項に記載の光学フィルムが配置されていることを特徴とするディスプレイ用前面板。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006304156A JP2008122524A (ja) | 2006-11-09 | 2006-11-09 | 光学フィルム及びそれを用いたディスプレイ用前面板 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2008122524A (ja) |
Citations (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH1173115A (ja) * | 1997-07-03 | 1999-03-16 | Kanebo Ltd | プラズマディスプレイ用前面多層パネル |
WO2006057490A1 (en) * | 2004-11-29 | 2006-06-01 | Lg Chem, Ltd. | Film for color compensation, multi-functional film for color compensation and near infrared absorption and plasma display panel filter comprising the same |
JP2006171705A (ja) * | 2004-11-18 | 2006-06-29 | Hitachi Maxell Ltd | 近赤外線遮蔽体及びディスプレイ用前面板 |
-
2006
- 2006-11-09 JP JP2006304156A patent/JP2008122524A/ja active Pending
Patent Citations (3)
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