JP2008121052A - 防錆剤ならびに被覆物 - Google Patents
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Abstract
【課題】分散安定性に優れ、紫外線および電子線等の活性エネルギー線の照射により防錆性に優れた硬化被膜を提供することができ、さらに揮発性有機溶剤を含有しないため作業環境および地球環境保全上も優れる活性エネルギー線硬化性防錆剤の提供。
【解決手段】窒素および不飽和二重結合を含有する化合物とポリアニリンからなる活性エネルギー線硬化性防錆剤。さらに窒素および不飽和二重結合を含有する化合物にポリアニリンのエメラルジンベースを溶解させる活性エネルギー線硬化性防錆剤。さらに、ドーピング剤を添加し、ポリアニリンのエメラルジンソルトとする活性エネルギー線硬化性防錆剤。またドーピング剤が、スルホン酸基を含有する化合物である活性エネルギー線硬化性防錆剤。さらに窒素および不飽和二重結合を含有する化合物がアクリロイルモルフォリンである上記記載の活性エネルギー線硬化性防錆剤。
【選択図】 なし
【解決手段】窒素および不飽和二重結合を含有する化合物とポリアニリンからなる活性エネルギー線硬化性防錆剤。さらに窒素および不飽和二重結合を含有する化合物にポリアニリンのエメラルジンベースを溶解させる活性エネルギー線硬化性防錆剤。さらに、ドーピング剤を添加し、ポリアニリンのエメラルジンソルトとする活性エネルギー線硬化性防錆剤。またドーピング剤が、スルホン酸基を含有する化合物である活性エネルギー線硬化性防錆剤。さらに窒素および不飽和二重結合を含有する化合物がアクリロイルモルフォリンである上記記載の活性エネルギー線硬化性防錆剤。
【選択図】 なし
Description
本発明は、活性エネルギー線硬化性防錆剤およびその被覆物に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、窒素および不飽和二重結合を含有する化合物とポリアニリンからなることを特徴とした活性エネルギー線硬化性防錆剤およびその被覆物に関するものである。
ポリアニリン等の導電性高分子は電解コンデンサ、リチウム電池電極等に応用されている。さらにポリアニリンは、金属への防錆効果を有することも知られている。非特許文献1には、金属表面上に電解重合で形成したポリアニリン被膜に防錆効果があることが開示されているが、電解重合の場合、基材の大きさ等に制約を受けるという問題がある。
一般的に導電性高分子は不溶、不融であるため、溶媒やバインダー樹脂中に溶解あるいは分散させることが困難であり、加工性を向上させることが実用化への課題となっていた。ポリアニリンは他の導電性高分子とは違い、ピリジン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等の一部の非プロトン性極性溶媒に溶解することが知られている。ポリアニリンの取り得る形態の一部として、絶縁性である非ドープ状態のエメラルジンベースと導電性であるドープ状態のエメラルジンソルトがあり、ドーピング剤の添加、脱離によりその性状を可逆的に変化させることができる。絶縁性であるエメラルジンベース状態のポリアニリンはN−メチルピロリドンへの溶解性が特に大きく、このことを利用してN−メチルピロリドン溶液から成形体に加工する方法が特許文献1に開示されている。しかし、この方法によればN−メチルピロリドンという揮発性有機溶剤を含有するため、乾燥工程を伴うという煩雑さに加えて、作業環境上の問題が生じている。
特許文献2には導電性ポリアニリンと非導電性マトリックスからなる塗料を塗装することにより、防錆効果を有する被膜を形成させるという方法が開示されている。該方法は、基材に制約を受けずに塗装ができるという反面、実施例には何れも乾燥工程を伴うものであり、上記と同様の問題が生じてくる。
上記のように導電性のエメラルジンソルトでの防錆機能が多く開示されているが、エメラルジンベースでの防錆機能の発現も非特許文献2に開示されている。しかしながら、該方法においてもエメラルジンベースを溶剤に溶解させて、基材に塗装するため、上記と同様の問題が生じてくる。
一方で、ポリアニリンを含有した放射線硬化性組成物の検討もなされている。導電性のエメラルジンソルト状態のポリアニリン粉末を放射線硬化性樹脂に分散させた導電性組成物が特許文献3に開示されている。しかしながら、導電性のエメラルジンソルト状態のポリアニリンにおいては、ポリアニリンの環構造に由来する強い分子間相互作用により放射線硬化性樹脂への分散性が十分ではなく、アクリル系樹脂を分散剤として併用しなければならない。さらに記載されている実施例は何れも有機溶剤を使用しており、上記と同様の問題が生じている。
また、特許文献4には重合性二重結合を有するスルホン酸系ドーピング剤を用いた紫外線硬化性のポリアニリン組成物について開示されているが、記載されている実施例は何れも有機溶剤を併用するものであり、上記と同様の問題が生じている。
特表平3−28229号
特開平9−500837号
特開平7−278399号
特開平11−172103号
J.Electrochem.Soc.,vol.132,pp.1022−1026(1985).
Synthetic Metals,vol.85,PP.1323−1326(1997).
本発明は上記問題を解決するために、揮発性溶剤を使用することなく、簡便な加工が可能であり、その硬化被覆物が優れた防錆性を有する、分散安定性の良好な活性エネルギー線硬化性防錆剤を提供することを課題としている。
窒素および不飽和二重結合を含有する化合物とポリアニリンからなる組成物は、揮発性溶剤を含有せず、活性エネルギー線で硬化させることにより容易に防錆性の優れた塗膜を提供することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、窒素および不飽和二重結合を含有する化合物とポリアニリンからなる活性エネルギー線硬化性防錆剤に関するものである。
また本発明は、窒素および不飽和二重結合を含有する化合物にポリアニリンのエメラルジンベースを溶解させることを特徴とする上記記載の活性エネルギー線硬化性防錆剤に関するものである。
また本発明は、さらに、ドーピング剤を添加し、ポリアニリンのエメラルジンソルトとすることを特徴とする上記記載の活性エネルギー線硬化性防錆剤に関するものである。
また本発明は、ドーピング剤が、スルホン酸基を含有する化合物であることを特徴とする上記記載の活性エネルギー線硬化性防錆剤に関するものである。
また本発明は、窒素および不飽和二重結合を含有する化合物がアクリロイルモルフォリンであることを特徴とする上記記載の活性エネルギー線硬化性防錆剤に関するものである。
また本発明は、上記記載の活性エネルギー線硬化性防錆剤を被覆してなる被覆物に関するものである。
本発明に係わる活性エネルギー線硬化性防錆剤は、分散安定性に優れ、紫外線および電子線等の活性エネルギー線の照射により容易に防錆性に優れた硬化被膜を形成することができる。また、揮発性有機溶剤を含有しないため作業環境および地球環境保全上も優れるものである。
本発明におけるポリアニリンとは一般的にアニリンの酸化重合体として得られるものであるが、4種の構造を取るとされている。完全還元状態の無色のロイコエメラルインベース、ハーフ酸化状態のエメラルジンベースとエメラルジンソルト、および完全酸化状態のペルニグラニリンベースの4種である。本発明で用いられるポリアニリンは、そのうちのハーフ酸化状態の2種であり、絶縁性である非ドープ状態のエメラルジンベース、および導電性であるドープ状態のエメラルジンソルトである。
塩酸、硫酸または硝酸等の無機酸の存在下でアニリンモノマーを酸化剤により重合すると同時に生成する構造がエメラルジンソルトであり、キノンジイミン構造単位とフェニレンジアミン構造単位が1:1のモル比で存在する基本骨格を繰り返し単位として含むものである。さらにアンモニア等の塩基で処理することによりドーピング剤の酸が脱離され、エメラルジンベースが得られる。酸化重合は、従来公知の一般的な方法で行なうことができる。必要に応じて、アニリン誘導体を共重合してもよい。
本発明で使用されるポリアニリンの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)のポリスチレン換算で、1,000〜500,000の範囲内にあることが好ましい。重量平均分子量が1,000未満では、ドーピング剤をドープした状態での導電性が低くなりやすく、結果として得られるポリアニリン組成物を被膜とした際の防錆効果も低くなりやすく好ましくない。一方、重量平均分子量が500,000を超えると、窒素および不飽和二重結合を含有する化合物へのポリアニリンの溶解が困難となりやすく好ましくない。重量平均分子量は2,000〜200,000の範囲内がさらに好ましく、最も好ましくは5,000〜100,000の範囲内である。
本発明における、窒素および不飽和二重結合を含有する化合物は、特に限定されるものではなく、例として、N−ビニルピロリドン、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−イソプロピルアクリルアミド、N−n−ブチルアクリルアミド、N−イソブチルアクリルアミド、N−sec−ブチルアクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−n−ヘキシルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−n−オクチルアクリルアミド、N−2−エチルヘキシルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−イソプロポキシメチルアクリルアミド、N−n−ブトキシメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジn−ブチルアクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、アクリロイルピペリジン等が挙げられる。取り扱い上、室温で液状であることが好ましく、ポリアニリンへの溶解性の点で、特にアクリロイルモルフォリンが好ましい。
ポリアニリン、および窒素および不飽和二重結合を含有する化合物からなる組成物中、ポリアニリン含有量は、0.01〜15重量%の範囲内が好ましい。該含有量が0.01重量%未満では、防錆効果が低くなりやすく好ましくない。一方、15重量%を超えると窒素および不飽和二重結合を含有する化合物へのポリアニリンの溶解が困難となりやすく、また濃度が高いことによる溶液増粘が著しくなりやすく好ましくない。該含有量は0.1〜12重量%の範囲内がさらに好ましく、最も好ましくは0.5〜10重量%の範囲内である。
ポリアニリンはエメラルジンベースまたはエメラルジンソルトの状態で用いることができる。エメラルジンソルトの状態で用いるときには、溶解性の良好なエメラルジンベースの状態で窒素および不飽和二重結合を含有する化合物に溶解させた後に、ドーピング剤を添加することによりエメラルジンソルトを得ることが好ましい。本発明に用いられるドーピング剤としては、アニリンの窒素原子をイオン化できるものであれば特に限定されるものではなく、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、およびスルホン酸基、リン酸基、カルボン酸基、硫酸基等の含有化合物である有機酸が挙げられる。スルホン酸基含有化合物が分散安定性とイオン化能力、すなわち最終的に得られる塗膜の導電性の点で好ましい。スルホン酸基含有化合物の例としては、メタンスルホン酸等のアルキルスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、カンファースルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく2種類以上を併用してもよい。
ドーピング剤の添加量はエメラルジンベース1重量部に対して20重量部以下が好ましく、より好ましくは10重量部以下である。ドーピング剤の量がエメラルジンベースに対して多すぎると、耐水性等の塗膜物性が低下しやすく好ましくない。ドーピング剤の添加量が不十分であると一部エメラルジンベースが残存するが、本発明においては特に問題ではない。
本発明のポリアニリン組成物は、必要に応じて、窒素および不飽和二重結合を含有する化合物以外にもその他の重合性化合物および高分子化合物を併用することができる。その他の重合性化合物および高分子化合物は、得られる塗膜の要求物性により適宜選択することができ、上記条件で得られたポリアニリン組成物にさらに添加して用いられる。
本発明のポリアニリン組成物には、必要に応じて、光重合開始剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤、ハジキ防止剤等の化合物を任意に混合することが出来る。
以下に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例における「部」は、「重量部」を表す。
[ポリアニリン合成例1]
攪拌器、温度計及び滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、1規定の塩酸250部、アニリン3.75部を加えて溶解させ、攪拌を行いながら0℃に保持しアニリン塩酸塩溶液を得た。また、1規定の塩酸50部に過硫酸アンモニウム11.5部を溶解させた重合開始剤溶液を滴下ロートから1時間かけて滴下した。さらに、0℃に保持し3時間攪拌を行った。得られたポリアニリンの沈殿物を濾別し、濾液が透明になるまで水、アセトンにて洗浄した後に室温で真空乾燥することにより濃緑色のエメラルジンソルト粉末を得た。
[ポリアニリン合成例2]
ポリアニリン合成例1において、得られたポリアニリンの沈殿物(濃緑色のエメラルジンソルト粉末)を、0.1規定のアンモニア水にて洗浄し、脱ドープを行なった。濾液が透明になるまで水、アセトンにて洗浄した後に室温で真空乾燥することにより濃青色のエメラルジンベース粉末を得た。
[実施例1]
ポリアニリン合成例2で得られたエメラルジンベース3部およびアクリロイルモルフォリン97部をホモジナイザで攪拌しながら溶解し、濃青色のポリアニリン組成物(A1)を得た。得られたポリアニリン組成物を室温で24時間放置したところ、変化はなかった。
[実施例2]
ポリアニリン合成例2で得られたエメラルジンベース3部およびアクリロイルモルフォリン97部をホモジナイザで攪拌しながら溶解し、濃青色溶液を得た。次いで、この溶液の中にドデシルベンゼンスルホン酸15部を混合し、ポリアニリン組成物(A2)を得た。溶液は脱ドープ状態の濃青色からドープ状態である濃緑色に変化した。得られたポリアニリン組成物を室温で24時間放置したところ、変化はなかった。
[実施例3]
ポリアニリン合成例2で得られたエメラルジンベース4部およびアクリロイルモルフォリン96部をホモジナイザで攪拌しながら溶解し、濃青色溶液を得た。次いで、この溶液の中にドデシルベンゼンスルホン酸16部を混合した。溶液は脱ドープ状態の濃青色からドープ状態である濃緑色に変化した。さらに、トリメチロールプロパントリアクリレート38部を添加し、ポリアニリン組成物(A3)を得た。得られたポリアニリン組成物を室温で24時間放置したところ、変化はなかった。
[実施例4]
ポリアニリン合成例1で得られたエメラルジンソルト3部およびアクリロイルモルフォリン97部をホモジナイザで攪拌しながら分散し、ポリアニリン組成物(A4)を得た。組成物は濃緑色であった。得られたポリアニリン組成物を室温で24時間放置したところ、沈殿物が生じていた。
[比較例1]
ポリアニリン合成例2で得られたエメラルジンベース2部およびN−メチルピロリドン65部をホモジナイザで攪拌しながら溶解し、濃青色溶液を得た。さらにjER828(ジャパンエポキシレジン社製エポキシ樹脂)65部、jERキュアT(ジャパンエポキシレジン社製変性脂肪族アミン系エポキシ樹脂硬化剤)13部を添加してポリアニリン組成物(A5)を得た。得られたポリアニリン組成物を室温で24時間放置したところ、変化はなかった。
[比較例2]
ポリアニリン合成例2で得られたエメラルジンベース2部およびN−メチルピロリドン65部をホモジナイザで攪拌しながら溶解し、濃青色溶液を得た。次いで、この溶液の中にドデシルベンゼンスルホン酸10部を混合した。溶液は脱ドープ状態の濃青色からドープ状態である濃緑色に変化した。さらにjER828(ジャパンエポキシレジン社製エポキシ樹脂)65部、jERキュアT(ジャパンエポキシレジン社製変性脂肪族アミン系エポキシ樹脂硬化剤)13部を添加してポリアニリン組成物(A6)を得た。得られたポリアニリン組成物を室温で24時間放置したところ、変化はなかった。
[比較例3]
アクリロイルモルフォリンのみを(A7)とする。
(電子線硬化性試験)
実施例1〜4、比較例3で得られた活性エネルギー線硬化性組成物(A1〜A4、A7)を、ワイヤバーコータにより乾燥被膜厚が約5μmとなるように冷間圧延鋼板(SPCC−SB)上に塗工し、Min−EBlabo電子線照射装置(ウシオ電機社製)を用い、加速電圧50kV、照射線量100kGy、酸素濃度500ppmの窒素置換した雰囲気で電子線を照射した。比較例3は均一な塗膜が得られなかった。電子線硬化後の塗工面にカッターナイフにて金属素地に到達する1辺の長さ1cmのクロスカットを入れ、5%食塩水に1週間浸漬後のクロスカット部の錆の発生を目視にて評価した。評価結果を表1に示す。
(紫外線硬化性試験)
実施例1〜4、比較例3で得られた活性エネルギー線硬化性組成物(A1〜A4、A7)100部にイルガキュア184(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製光重合開始剤)5部を添加し、ワイヤバーコータにより乾燥被膜厚が約5μmとなるように冷間圧延鋼板(SPCC−SB)上に塗工し、紫外線硬化装置(アイグラフィックス社製)を用いて、メタルハライドランプ112W/cm、コンベアスピード30m/minで紫外線を照射した。紫外線照射後の塗工面にカッターナイフにて金属素地に到達する1辺の長さ1cmのクロスカットを入れ、5%食塩水に1週間浸漬後のクロスカット部の錆の発生を目視にて評価した。評価結果を表1に示す。
(熱硬化性試験)
比較例1〜2で得られた熱硬化性組成物(A5〜A6)を、ワイヤバーコータにより乾燥被膜厚が約5μmとなるように冷間圧延鋼板(SPCC−SB)上に塗工し、130℃で3時間加熱した。熱硬化後の塗工面にカッターナイフにて金属素地に到達する1辺の長さ1cmのクロスカットを入れ、5%食塩水に1週間浸漬後のクロスカット部の錆の発生を目視にて評価した。評価結果を表1に示す。
[ポリアニリン合成例1]
攪拌器、温度計及び滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、1規定の塩酸250部、アニリン3.75部を加えて溶解させ、攪拌を行いながら0℃に保持しアニリン塩酸塩溶液を得た。また、1規定の塩酸50部に過硫酸アンモニウム11.5部を溶解させた重合開始剤溶液を滴下ロートから1時間かけて滴下した。さらに、0℃に保持し3時間攪拌を行った。得られたポリアニリンの沈殿物を濾別し、濾液が透明になるまで水、アセトンにて洗浄した後に室温で真空乾燥することにより濃緑色のエメラルジンソルト粉末を得た。
[ポリアニリン合成例2]
ポリアニリン合成例1において、得られたポリアニリンの沈殿物(濃緑色のエメラルジンソルト粉末)を、0.1規定のアンモニア水にて洗浄し、脱ドープを行なった。濾液が透明になるまで水、アセトンにて洗浄した後に室温で真空乾燥することにより濃青色のエメラルジンベース粉末を得た。
[実施例1]
ポリアニリン合成例2で得られたエメラルジンベース3部およびアクリロイルモルフォリン97部をホモジナイザで攪拌しながら溶解し、濃青色のポリアニリン組成物(A1)を得た。得られたポリアニリン組成物を室温で24時間放置したところ、変化はなかった。
[実施例2]
ポリアニリン合成例2で得られたエメラルジンベース3部およびアクリロイルモルフォリン97部をホモジナイザで攪拌しながら溶解し、濃青色溶液を得た。次いで、この溶液の中にドデシルベンゼンスルホン酸15部を混合し、ポリアニリン組成物(A2)を得た。溶液は脱ドープ状態の濃青色からドープ状態である濃緑色に変化した。得られたポリアニリン組成物を室温で24時間放置したところ、変化はなかった。
[実施例3]
ポリアニリン合成例2で得られたエメラルジンベース4部およびアクリロイルモルフォリン96部をホモジナイザで攪拌しながら溶解し、濃青色溶液を得た。次いで、この溶液の中にドデシルベンゼンスルホン酸16部を混合した。溶液は脱ドープ状態の濃青色からドープ状態である濃緑色に変化した。さらに、トリメチロールプロパントリアクリレート38部を添加し、ポリアニリン組成物(A3)を得た。得られたポリアニリン組成物を室温で24時間放置したところ、変化はなかった。
[実施例4]
ポリアニリン合成例1で得られたエメラルジンソルト3部およびアクリロイルモルフォリン97部をホモジナイザで攪拌しながら分散し、ポリアニリン組成物(A4)を得た。組成物は濃緑色であった。得られたポリアニリン組成物を室温で24時間放置したところ、沈殿物が生じていた。
[比較例1]
ポリアニリン合成例2で得られたエメラルジンベース2部およびN−メチルピロリドン65部をホモジナイザで攪拌しながら溶解し、濃青色溶液を得た。さらにjER828(ジャパンエポキシレジン社製エポキシ樹脂)65部、jERキュアT(ジャパンエポキシレジン社製変性脂肪族アミン系エポキシ樹脂硬化剤)13部を添加してポリアニリン組成物(A5)を得た。得られたポリアニリン組成物を室温で24時間放置したところ、変化はなかった。
[比較例2]
ポリアニリン合成例2で得られたエメラルジンベース2部およびN−メチルピロリドン65部をホモジナイザで攪拌しながら溶解し、濃青色溶液を得た。次いで、この溶液の中にドデシルベンゼンスルホン酸10部を混合した。溶液は脱ドープ状態の濃青色からドープ状態である濃緑色に変化した。さらにjER828(ジャパンエポキシレジン社製エポキシ樹脂)65部、jERキュアT(ジャパンエポキシレジン社製変性脂肪族アミン系エポキシ樹脂硬化剤)13部を添加してポリアニリン組成物(A6)を得た。得られたポリアニリン組成物を室温で24時間放置したところ、変化はなかった。
[比較例3]
アクリロイルモルフォリンのみを(A7)とする。
(電子線硬化性試験)
実施例1〜4、比較例3で得られた活性エネルギー線硬化性組成物(A1〜A4、A7)を、ワイヤバーコータにより乾燥被膜厚が約5μmとなるように冷間圧延鋼板(SPCC−SB)上に塗工し、Min−EBlabo電子線照射装置(ウシオ電機社製)を用い、加速電圧50kV、照射線量100kGy、酸素濃度500ppmの窒素置換した雰囲気で電子線を照射した。比較例3は均一な塗膜が得られなかった。電子線硬化後の塗工面にカッターナイフにて金属素地に到達する1辺の長さ1cmのクロスカットを入れ、5%食塩水に1週間浸漬後のクロスカット部の錆の発生を目視にて評価した。評価結果を表1に示す。
(紫外線硬化性試験)
実施例1〜4、比較例3で得られた活性エネルギー線硬化性組成物(A1〜A4、A7)100部にイルガキュア184(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製光重合開始剤)5部を添加し、ワイヤバーコータにより乾燥被膜厚が約5μmとなるように冷間圧延鋼板(SPCC−SB)上に塗工し、紫外線硬化装置(アイグラフィックス社製)を用いて、メタルハライドランプ112W/cm、コンベアスピード30m/minで紫外線を照射した。紫外線照射後の塗工面にカッターナイフにて金属素地に到達する1辺の長さ1cmのクロスカットを入れ、5%食塩水に1週間浸漬後のクロスカット部の錆の発生を目視にて評価した。評価結果を表1に示す。
(熱硬化性試験)
比較例1〜2で得られた熱硬化性組成物(A5〜A6)を、ワイヤバーコータにより乾燥被膜厚が約5μmとなるように冷間圧延鋼板(SPCC−SB)上に塗工し、130℃で3時間加熱した。熱硬化後の塗工面にカッターナイフにて金属素地に到達する1辺の長さ1cmのクロスカットを入れ、5%食塩水に1週間浸漬後のクロスカット部の錆の発生を目視にて評価した。評価結果を表1に示す。
Claims (6)
- 窒素および不飽和二重結合を含有する化合物とポリアニリンからなる活性エネルギー線硬化性防錆剤。
- 窒素および不飽和二重結合を含有する化合物にポリアニリンのエメラルジンベースを溶解させることを特徴とする請求項1記載の活性エネルギー線硬化性防錆剤。
- 請求項2記載のポリアニリンのエメラルジンベースに、ドーピング剤を添加し、ポリアニリンのエメラルジンソルトとすることを特徴とする請求項2記載の活性エネルギー線硬化性防錆剤。
- ドーピング剤が、スルホン酸基を含有する化合物であることを特徴とする請求項3記載の活性エネルギー線硬化性防錆剤。
- 窒素および不飽和二重結合を含有する化合物がアクリロイルモルフォリンであることを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載の活性エネルギー線硬化性防錆剤。
- 請求項1ないし5いずれか記載の活性エネルギー線硬化性防錆剤を被覆してなる被覆物。
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2006
- 2006-11-10 JP JP2006304897A patent/JP2008121052A/ja active Pending
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