JP2008121042A - 金属成形品製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 形成される金属成形品に含まれる純金属または合金をすべて酸化物の状態且つ金属酸化物粒子の状態で含有し、バインダー成分を含有する混和物を作製する混和物作製工程と該混和物作製工程で作製された混和物を成形加工して予備成形品を作製する予備成形工程と、前記予備成形工程で作製された予備成形品からバインダー成分を除去するとともに、前記予備成形品に含まれている金属酸化物粒子の少なくとも一部を還元させる還元処理工程とを実施して金属成形品を成形することを特徴とする金属成形品製造方法を提供する。
【選択図】 なし
Description
しかし、特許文献1に示されているような合金で金属成形品を製造する場合に、例えば、互いに安定して合金を形成する金属元素以外の組み合わせで金属成形品を製造する場合には、内部にこれら金属元素の良好な分散状態を形成させた状態で金属成形品を製造することが困難である。
すなわち、従来の金属成形品の製造方法においては、金属元素の分散状況などの制御が困難であるばかりでなく、用いる金属元素を制約しなければ金属成形品を成形すること自体が困難となるおそれを有している。
また、安定した溶融状態を形成させることが困難となることから合金のロッド材料の作製も困難である。
この金属元素がその純金属の融点や比重を異ならせることにより金属元素の分散状況を制御することが困難となる点においては、純金属または合金に金属酸化物やセラミックスなどの粒子を分散させた複合材料で金属成形品を製造する際においても同様である。
(1)形成される金属成形品に含まれる純金属または合金をすべて酸化物の状態且つ金属酸化物粒子の状態で含有し、バインダー成分を含有する混和物を作製する混和物作製工程、
(2)該混和物作製工程で作製された混和物を成形加工して予備成形品を作製する予備成形工程、
(3)前記予備成形工程で作製された予備成形品からバインダー成分を除去するとともに、前記予備成形品に含まれている金属酸化物粒子の少なくとも一部を還元させる還元処理工程
を実施して金属成形品を成形することを特徴とする金属成形品製造方法を提供する。
また、“合金”との用語についても、本明細書中においては、不可避不純物などを微量含んでいるものをも含めた意味で用いており、また、固溶体や金属間化合物などを含めた意味で用いている。
また、例えば、一部の金属酸化物粒子を還元せずに他の金属酸化物粒子のみを還元させることにより、純金属または合金中に金属酸化物粒子が分散された金属複合材料状態を金属成形品中に形成させることも可能となる。
このような、金属酸化物粒子の粒径の調整には、一般的な手段を用いることが出来、例えば、セラミックボールなどを用いたボールミルや、アトライタを用いる方法などにより実施することができる。
また、金属酸化物粒子とバインダーとの混合についても、ニーダーなどの一般的な混練手段を採用することができる。
このバインダーとしては、特に限定されるものではないが、150〜400℃の範囲内程度で分解除去させ得る有機物を用いることが好ましく、該有機物を水和させた状態で用いることが好ましい。
このような有機水和物をバインダーに用いることにより還元反応に悪影響を及ぼすおそれを抑制しつつ比較的低温で分解させ得るという効果を奏する。
このような点において、セルロースなどの水和性に優れた有機物をバインダーに採用することが特に好適である。
なお、このときニアシェイプに成形することで、最終製品形状への外形調整を簡略化させ得る。
このとき、還元力ならびに予備成形品内部への浸透性に優れ、還元処理工程をより効率良く実施させ得る点において、予備成形品を水素を含む気体中で加熱する還元処理工程を実施することが好ましい。
この水素を含む気体は、水素を水素ガスなどの分子状態で含んでいるもの、あるいは、水素ラジカルのような原子状態で含んでいるものを使用することができる。
この水素を用いる還元処理工程における加熱条件としては、例えば、600℃程度の温度で数時間の加熱を行う条件などとすることができる。
また、この還元処理工程は、予備成形品に圧力を加えた加圧状態で実施することもでき、無加圧状態で実施することも可能である。
なお、水素は、原子サイズあるいは分子サイズが小さく、混和物内部に浸透させやすいことから、この還元処理工程の効率を高める効果を奏する。
また、上記のように水素を用いる還元処理工程では、金属酸化物の酸素との反応で水が形成されるのみであり、環境負荷の増大を抑制させ得るのみならず、処理が必要となるような副生成物の産出を抑制させ得るという点においても優れている。
この空孔部分を減少させる方法としては、一般的な方法を採用することができ、例えば、機械加工によって空孔部分を押し潰して金属成形品に占める空孔の割合を減少させる方法や、他金属を溶融させてこの空孔部分に含浸させる方法などを採用することができる。
Cu2O微粒子(平均粒径3μm)とセルロースが用いられたバインダー成分とをボールミルにて3時間混合して混和物を作製する混和物作製工程を実施し、該混和物を、500MPaの圧力で加圧成形して直径10mm×高さ10mmの円柱状の予備成形品に加工する予備成形工程を実施した。
この予備成形品を水素ガス(大気圧状態)中で、973Kで3時間加熱する還元処理工程を実施し円柱形状の金属成形品を作製した。
還元処理工程の温度を1023Kとした以外は、実施例1と同様に円柱形状の金属成形品を作製した。
実施例1および2の金属成形品の化学成分をそれぞれX線回折により分析した。結果を図1に示す。
なお、図1に“Reduced at 973K”として示されているものが実施例1のX線回折チャートであり、“Reduced at 1023K”として示されているものが実施例2のX線回折チャートである。
また、“Green Compact”として示されているのは、還元処理工程前の予備成形品のX線回折チャートである。
この図1においては、実施例1の金属成形品には、Cu2Oの存在を示すピークが認められるが、実施例2の金属成形品には、これらが消失した状態となっており、温度条件の選択により、Cu中にCu2Oを残存させた金属複合体とさせたり、Cu単相とさせたりし得ることがわかる。
また、上記実施例の金属成形品は、予備成形品に比べて体積が減少しているものの、予備成形品の形状をそのままの状態で保持している(図2参照:左側が金属成形品、右側が予備成形品)。
加熱時間を、0.5時間(実施例3)、1時間(実施例4)、2時間(実施例5)とした以外は、実施例2と同様に円柱形状の金属成形品を作製した。
実施例3乃至5の金属成形品の化学成分をそれぞれX線回折により分析した。結果を図3に示す。
なお、図2に“0.5hr”として示されているものが実施例3のX線回折チャートであり、“1hr”として示されているものが実施例4のX線回折チャートである。
また、“2hr”として示されているものが実施例5のX線回折チャートであり、“Green Compact”として示されているのは、還元処理工程前の予備成形品のX線回折チャートである。
この図3においては、実施例3の金属成形品には、Cu2Oの存在を示すピークが認められるが、実施例4、5の金属成形品には、これらが消失した状態となっており、加熱時間の選択により、Cu中にCu2Oを残存させた金属複合体とさせたり、完全にCu単相とさせたりし得ることがわかる。
これは、バインダー成分の消失ならびに多孔質組織の形成による効果であると考えられる。
そして、実施例1乃至5の金属成形品は、内部に空孔が形成されて多孔質に形成されており、実施例4の金属成形品の密度を測定したところ、純銅に対して62.7%の見掛け密度で形成されていることがわかった。
Cu2O微粒子(平均粒径3μm)とAl2O3微粒子(平均粒径0.1μm)とを、Cu2O微粒子のCu量とAl2O3微粒子との合計質量におけるAl2O3微粒子の占める割合が10質量%となるように配合し、バインダー成分と混合して混和物を作製する混和物作製工程を実施し、該混和物を、円盤ディスク状の予備成形品に加工する予備成形工程を実施した。
この予備成形品を水素ガス中で、1023Kで3時間加熱する還元処理工程を実施し円柱形状の金属成形品を一旦作製した。
さらに、還元処理工程後の金属成形品に対して、853Kの温度で、600MPaの圧力で1時間ホットプレスする緻密化工程を実施した。
実施例6の金属成形品の化学成分をX線回折により分析した。結果を図4に示す。
この図4においては、実施例6の金属成形品には、Cu2Oの存在を示すピークが消失し、Al2O3の存在を示すピークが認められる。
すなわち、Cu中にAl2O3を分散させた金属複合材料が形成されていることがわかる。
しかも、仮にAl2O3の大きな凝集体が形成されているようであれば、図4にAl2O3の存在を示すピークが明確に認められるはずであるが、この図4では、Al2O3の存在を示すピークがCuの存在を示すピークに比べて十分小さくなっており、Al2O3が微細に分散されていることがわかる。
また、このAl2O3が微細に分散されていることは、電子顕微鏡による組織の観察からも確認することができた(図5)。
なお、この図5中の白い粒状物がAl2O3である。
実施例6の(緻密化工程後の)金属成形品を、熱機械分析装置(リガク社製、商品名「TMA8310」)を用いて熱膨張係数を測定した。結果を図6に示す。
この図6では、800℃までは、温度に対してほぼ一定の熱膨張変形を示している。
この800℃までのデータから実施例6の金属成形品を形成している金属複合材料の熱膨張係数を求めたところ8.0×10-6/Kであった。
この値は、Cuの熱膨張係数(16.8×10-6/K)の半分以下となっており、Cu中にAl2O3を微細に分散させた効果の現れであると思われる。
Cu2O微粒子(平均粒径3μm)とFe3O4微粒子とを、Cu2O微粒子のCu量とFe3O4微粒子のFe量との合計質量におけるFe量の占める割合が5質量%となる割合で配合し、バインダー成分と混合して混和物を作製する混和物作製工程を実施し、該混和物を押し出し成形して予備成形品を作製する予備成形工程を実施した。
実施例7においては板状の予備成形体を、実施例8においてはハニカム状の予備成形体を作製した。
図7では、左側が予備成形品、右側が還元処理工程後の金属成形品を示す。
また、図8では、上側が予備成形品、下側が還元処理工程後の金属成形品を示す。
この予備成形品に対して還元処理工程を実施し金属成形品作製した結果、図7、8に示すように予備成形体の形状を保持した、Cu−Fe合金製の金属成形品を得ることができた。
Cu2O微粒子(平均粒径3μm)とWO2微粒子(平均粒径4μm)とを、Cu2O微粒子中のCu量とWO2微粒子中のW量との合計質量に占めるW量の割合が10質量%(実施例9)、15質量%(実施例10)、25質量%(実施例11)となるようにCu2O微粒子とWO2微粒子とを配合しバインダー成分と混合して混和物を作製する混和物作製工程を実施し、該混和物を円盤ディスク状の予備成形品に加工する予備成形工程を実施した。
この予備成形品に対して、1023K×1時間の還元処理工程を実施して実施例9乃至11の金属成形品を作製した。
実施例9乃至11の金属成形品の化学成分をそれぞれX線回折により分析した。結果を図9に示す。
この図9の左側は、還元処理工程前の予備成形品のX線回折チャートであり横軸(2θ)の範囲は20度から90度である。一方、右側は、還元処理工程後の金属成形品のX線回折チャートであり、横軸(2θ)の範囲は25度から55度である。
それぞれ、“10%WO2”、“Cu-10%W”として示されているものが実施例9の予備成形品と金属成形品とを示すX線回折チャートであり、“15%WO2”、“Cu-15%W”として示されているものが実施例10の予備成形品と金属成形品とを示すX線回折チャートである。
また、“25%WO2”、“Cu-25%W”として示されているものが実施例11の予備成形品と金属成形品とを示すX線回折チャートである。
この図9においては、実施例9乃至11の金属成形品には、CuとWの存在を示すピークのみで酸化物を示すピークは認められない。また、WO2微粒子の配合量の増加に伴いCuピークに対するWピークの比率が増大しており、金属成形品中のW量の制御が混和物の配合量の調整という簡便な手段で可能となっていることがわかる。
Cu2O微粒子(平均粒径3μm)とWO2微粒子(平均粒径4μm)とを、Cu2O微粒子中のCu量とWO2微粒子中のW量との合計質量に占めるW量の割合が5質量%(実施例12)、10質量%(実施例13)、15質量%(実施例14)、25質量%(実施例15)となる割合でCu2O微粒子とWO2微粒子とを配合し、バインダー成分と混合して混和物を作製する混和物作製工程を実施し、該混和物を円盤ディスク状の予備成形品に加工する予備成形工程を実施した。
この予備成形品に対して、1023K×1時間の還元処理工程を実施して金属成形品を作製した。
さらに、還元処理工程後の金属成形品に対して、853Kの温度で、500MPaの圧力で1時間ホットプレスする緻密化工程を実施し実施例12乃至15の金属成形品を作製した。
実施例12乃至15の金属成形品とWO2微粒子を配合せずに作製した金属成形品のVickers硬さを測定した。
結果を、図10に示す。
市販の高タングステン・銅合金(Cu20W80)でのVickers硬さが260程度であることを考慮すると、実施例12乃至15の金属成形品では、少量のWの含有量で高い強度が得られていることがわかる。
実施例12乃至15の金属成形品とWO2微粒子を配合せずに作製した金属成形品の熱膨張係数を熱機械分析装置(リガク社製、商品名「TMA8310」)を用いて熱膨張係数を測定した。結果を図11に示す。
Cu−W合金メーカーであるアライドケミカル社からは、W単相で4.5×10-6/K、Cu10W90合金で6.5×10-6/K、Cu20W80で8.3×10-6/K、Cu30W70で10.2×10-6/K、Cu40W60で12.1×10-6/Kであることが公表されている。
このことから、本発明によれば、比重ならびに融点の大きく異なるCuとWとの合金により形成された金属成形品を簡便に作製し得るとともに、従来のCu−W合金が用いられた金属成形品と同等の強度あるいは熱膨張係数の金属成形品を一般に高価なWの使用量を削減させて作製することができる。
したがって、本発明によれば、Cu−W合金が用いられている電極部品やヒートシンク材などを安価に提供し得るという効果も奏することとなる。
Claims (5)
- 金属酸化物粒子またはセラミックス粒子が純金属中または合金中に分散されている金属複合材料か、あるいは合金かによって形成されている金属成形品を製造する金属成形品製造方法であって、
(1)形成される金属成形品に含まれる純金属または合金をすべて酸化物の状態且つ金属酸化物粒子の状態で含有し、バインダー成分を含有する混和物を作製する混和物作製工程、
(2)該混和物作製工程で作製された混和物を成形加工して予備成形品を作製する予備成形工程、
(3)前記予備成形工程で作製された予備成形品からバインダー成分を除去するとともに、前記予備成形品に含まれている金属酸化物粒子の少なくとも一部を還元させる還元処理工程
を実施して金属成形品を成形することを特徴とする金属成形品製造方法。 - 前記還元処理工程を、水素を含む気体中で予備成形品を加熱して実施する請求項1記載の金属成形品製造方法。
- 前記バインダー成分に有機水和物が用いられている請求項1または2に記載の金属成形品製造方法。
- 前記有機水和物にはセルロースが用いられている請求項3記載の金属成形品製造方法。
- 前記還元処理工程後に、金属成形品の緻密化を行う緻密化工程をさらに実施する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の金属成形品製造方法。
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2006
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