JP2008111671A - 分離フィルタ決定装置及びタイヤ検査装置 - Google Patents

分離フィルタ決定装置及びタイヤ検査装置 Download PDF

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Abstract

【課題】高精度にタイヤ表面を検査することを可能とする分離フィルタを決定する。
【解決手段】分離フィルタ設定部64が複数の分離フィルタを交叉または変異させてフィルタ配列を決定し、その分離フィルタで画像処理部70が画像処理した処理画像と、教師画像領域60の教師画像との差分に重み領域62の重み画像を付加して評価値を評価値演算部74で求めることを繰り返し、評価値が高い分離フィルタを決定部76で決定する。決定した分離フィルタで撮像画像を画像処理して、ローレット部等の領域を分離した処理画像を得て、タイヤ検査に用いる。
【選択図】図3

Description

本発明は、タイヤの表面を領域分割するための分離フィルタ決定装置、及びタイヤの表面構造を検査するタイヤ検査装置に関する。
タイヤ等の被検出体について表面欠陥について、変位センサにより得られる表面形状の凹凸波形から周波数解析することにより欠陥検出する技術が各種知られている。その周波数解析には、高速フーリエ変換による技術が一般的に知られており、この技術では計測データに含まれる雑音(ノイズ)の除去や欠陥部の抽出(欠陥位置の特定)が可能である。この高速フーリエ変換では、位置特定が困難であるため、タイヤ外面の変位をセンサにより検知し、その変位信号であるセンサ出力信号についてウェーブレット処理により波形を得て、得られた波形と欠陥波形とを比較することによりタイヤ欠陥を検出する技術も知られている(例えば、特許文献1参照)。
このようなタイヤ等の表面欠陥を変位センサを用いて行うことに比べ、タイヤ等の表面を撮像した撮像画像を画像処理して検査することは、目視検査に近く、好ましい検査である。
特開平10−106453号公報
しかしながら、画像処理によりタイヤ等の表面欠陥を得る方法では、画像処理のための様々なフィルタを詳細に設定した後に画像処理しなければならず、その設定は職人芸的なものであった。例えば、表面欠陥を表示させるためにタイヤ等の表面から所定の領域を分離するのには、複数のフィルタを組み合わせて分離フィルタを構成する必要がある。この分離フィルタの決定には、膨大な処理時間を要すると共に組み合わせの設定は熟練者に依存する必要があった。従って、多数の種類が存在するタイヤの各々の検査に適用するのには実用的ではなく、また、分離フィルタの決定を簡単に行うことが困難であった。
本発明は上記事実を考慮し、高精度にタイヤ表面を検査することを可能とする分離フィルタ決定装置、及びタイヤ検査装置を得ることが目的である。
請求項1に記載の発明の分離フィルタ決定装置は、特徴部分を含むタイヤの表面を撮像した撮像画像を入力する画像入力手段と、前記撮像画像を画像処理するためのフィルタを複数記憶すると共に、前記撮像画像から特徴部分が分離された画像に相当しかつ前記撮像画像を複数のフィルタにより画像処理した結果の画像に相当する予め定めた教師画像と、前記撮像画像に対する予め定めた領域に重みを設定した重み画像と、を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された複数フィルタの中から2つ以上のフィルタを組み合わせたフィルタ群を分離フィルタに設定する設定手段と、前記分離フィルタの各フィルタにより前記撮像画像を画像処理すると共に、該画像処理後の処理画像と前記教師画像との差分画像に前記重み画像に基づく重みを付した画像に基づいて前記分離フィルタの評価値を求める評価手段と、前記評価値が予め定めた所定範囲となるまで前記設定手段の設定と前記評価手段の評価値演算とを繰り返させ、該繰り返させた結果の評価値に対応する分離フィルタを前記撮像画像から前記特徴部分を分離するための分離フィルタに決定する分離フィルタ決定手段と、を備えている。
本発明によれば、分離フィルタとして2つ以上のフィルタを組み合わせたフィルタ群を設定し、その分離フィルタにより撮像画像を画像処理した結果の画像と、教師画像とから例えば差分を求めて評価値を算出することで、分離フィルタを評価する。教師画像は、タイヤの非ローレット部やローレット部等の特徴部分を分離した画像処理後の画像である。ところが、画像の差分を求めることでは、画像の全てすなわちタイヤの全ての領域について同じように評価がなされる。このため、その評価には、撮像画像に対して分離することが望ましい予め定めた領域に重みが設定された重み画像を用いて評価値を求める。これにより、撮像画像で分離することが望ましい領域を評価することができる。そして、評価値が所定範囲となるまでフィルタ群の設定と評価値演算とを繰り返させ、その結果、評価値が最良なもの例えば評価値が最大の分離フィルタを決定する。このように、撮像画像から分離することが望ましい特徴部分を分離する分離フィルタを容易に決定できる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の分離フィルタ決定装置において、前記記憶手段は、前記分離フィルタのフィルタ数に対応する予め定めた重み係数をさらに記憶し、前記評価手段は、差分画像に前記重み画像に基づく重みを付した画像と、前記設定した分離フィルタのフィルタ数に対応する重み係数とに基づいて前記フィルタ群の評価値を求めることを特徴とする。この発明によれば、分離フィルタのフィルタ数に対応する重み係数例えばフィルタ数が増加するに従って評価値が低下する重み係数によって、分離フィルタとして用いるフィルタの総数を考慮できるので、フィルタ数が増加するに従って画像処理負荷が増加することを抑制することが可能な分離フィルタを決定できる。
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の分離フィルタ決定装置において、前記決定手段は、所定回を繰り返したときに前記評価値が所定範囲となったものとして前記繰り返しを終了することを特徴とする。この発明によれば、評価値が収束するときや発散したときであっても所定回で繰り返しを終了できるので、無駄な繰り返し処理を継続することなく演算負荷を軽減して分離フィルタを決定できる。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の分離フィルタ決定装置において、前記設定手段は、前記分離フィルタとしてフィルタの配列を含むフィルタ群を設定し、前記評価手段は、前記設定された分離フィルタのフィルタ配列順序に従って前記撮像画像を画像処理することを特徴とする。この発明によれば、分離フィルタに含まれるフィルタの配列を設定しているので、複数のフィルタの順序変動により結果が異なる場合であっても、これに対応した分離フィルタを決定できる。
ここで、本発明者は種々検討を加えた結果、異分野に利用されている「遺伝的アルゴリズム手法」をタイヤと言う特殊分野に応用することに着目し、あらゆる検討を試み、遺伝的アルゴリズムの過程についてタイヤの外観検査等のための画像処理時に用いる分離フィルタの決定を容易にするため、具体的にそれを分離フィルタ決定装置として確立した。詳細には、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の分離フィルタ決定装置において、前記設定手段は、前記分離フィルタとして第1の分離フィルタと第2の分離フィルタを選択分離フィルタ群に設定すると共に、所定確率で第1の分離フィルタと第2の分離フィルタを交叉して新規の分離フィルタを生成して前記選択分離フィルタ群に追加すること、及び所定確率で前記選択分離フィルタ群に含まれる少なくとも1つの分離フィルタの少なくとも一部のフィルタを他のフィルタに変更して新規の分離フィルタを生成して該選択分離フィルタ群に追加することの少なくとも一方の追加を行い、前記評価手段は、前記選択分離フィルタ群に含まれる分離フィルタの各々で前記撮像画像を画像処理するすると共に、前記分離フィルタの各々の評価値を求め、前記分離フィルタ決定手段は、前記設定手段において次回の選択分離フィルタ群として前記評価手段で求めた評価値の各々に基づいて第1の分離フィルタと第2の分離フィルタを選択させ、該次回の選択分離フィルタ群について前記設定手段の設定と前記評価手段の評価値演算とを実行させることを規定回数繰り返させ、該繰り返させた結果の評価値に基づいて分離フィルタを決定することを特徴とする。
本発明によれば、分離フィルタとして第1の分離フィルタと第2の分離フィルタを選択分離フィルタ群に設定する。これらの分離フィルタに対して1以上のフィルタを交換する交叉や少なくとも一部を他のフィルタに変更する。他のフィルタに変更するとは、フィルタの欠失、置換及び付加を含む所謂変異である。これら交叉や変異が施された分離フィルタを選択分離フィルタ群に追加し、その中から次回の選択分離フィルタ群を設定する。この処理を規定回数繰り返すことで、規定回数対応する世代の分離フィルタを決定できる。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の分離フィルタ決定装置において、前記分離フィルタ決定手段は、前記設定手段において次回の選択分離フィルタ群として前記評価手段で求めた評価値の各々の大きさに応じた選択確率で第1の分離フィルタと第2の分離フィルタが選択されるように設定させることを特徴とする。この発明によれば、次の世代の選択分離フィルタ群を設定するときに、評価値の各々の大きさに応じた選択確率で第1の分離フィルタと第2の分離フィルタを選択することによって、評価値に応じる分離フィルタと、評価値に応じない分離フィルタとの何れも選択の機会が与えられる、所謂淘汰を実施することができる。
請求項7に記載の発明は、請求項5または請求項6に記載の分離フィルタ決定装置において、前記分離フィルタ決定手段は、前記設定手段において次回の選択分離フィルタ群として前記評価手段で求めた評価値が最大の分離フィルタが第1の分離フィルタまたは第2の分離フィルタに選択されるように設定させることを特徴とする。この発明によれば、評価値が最大の分離フィルタが常に選択されるので、評価値が最大となる優良なフィルタ配列の分離フィルタ、すなわち所謂エリート遺伝子を保存した分離フィルタを決定できる。
前記分離フィルタ決定装置で決定した分離フィルタは、タイヤ検査に特に有効であり、次のタイヤ検査装置によりタイヤ検査に適用可能である。詳細には、請求項8に記載の発明のタイヤ検査装置は、請求項1乃至請求項7の何れか1項の分離フィルタ決定装置で決定された分離フィルタの配列及び該分離フィルタを構成するフィルタを記憶する記憶手段と、タイヤの表面を撮像する撮像手段と、前記撮像手段で撮像した撮像画像を前記記憶手段に記憶された分離フィルタに従って画像処理する画像処理手段と、前記画像処理手段の処理結果を表示する表示手段と、を備えている。この発明によれば、タイヤ表面のタイヤ表面構造の特徴部分を検査することができる。
以上説明したように本発明によれば、分離フィルタの画像処理後の処理画像と教師画像との差分画像に重みを付して分離フィルタの評価値を求めることを評価値が所定範囲となるまで繰り返しているので、撮像画像から分離することが望ましい特徴部分を分離する分離フィルタを容易に決定できる、という優れた効果を有する。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。本実施の形態はタイヤの外観検査に本発明を適用したものである。
〔装置構成〕
図1には、本発明の実施形態に係るタイヤ検査装置10に検査対象である(断面図で示す)タイヤ20が装着された状態が示されている。タイヤ検査装置10は、タイヤ20を保持するホルダ部12を備えている。このホルダ部12は、タイヤ20を実装するホイールと同様の役目を有している。ホルダ部12は、一対の円盤部が互いに対向かつ平行に配置されている(図1では一方側のみを示す)。ホルダ部12の一方の中心には、モータ16の回転軸が連結された回転軸ホルダ14が取り付けられている。このモータ16は、コントローラ40に接続されている。
コントローラ40には、タイヤ20の外面を撮像するためのカメラ18が接続されている。本実施形態のカメラ18は、タイヤ20の外面撮影が可能に設置される場合を説明するが、カメラ18の設置位置はこれに限定されるものではなく、タイヤ20の内部撮影を可能とするように設置してもよい。モータ16は、コントローラ40からの指示信号に応じて回転駆動されて、ホルダ部12とカメラ18とを相対的に回転させることができるようになっている。この構成によって、カメラ18によりタイヤ20の全周に亘って撮影することが可能になる。
タイヤ20は、複数のゴム部材毎に分割されたカーカス22を有しており、このカーカス22はビード26により折り返されている。このカーカス22には各種のコードも含まれている。また、カーカス22の内側はインナーライナー24とされ、インナーライナー24に延長上にはビードゴム36が配置している。また、折り返されたカーカス22により形成される略三角形状の領域はビードフィラー28とされている。カーカス22の上方には、ベルト30が配置しており、このベルト30の半径方向外側には溝が形成されたトレッドゴム32が配置し、カーカス22の軸方向外側にはサイドゴム34が配置している。
図2に示すように、モータ16はコントローラ40に備えられた撮影位置制御部44に接続されており、撮影するタイヤ20内の回転位置が制御される。なお、コントローラ40は、ハードウェア資源として図示を省略したCPU、ROM、RAMを含むコンピュータ構成とされ、図2ではコンピュータ構成のコントローラ40を後述するソフトウェア資源の処理プログラムを含めた機能別ブロックとして示した。
コントローラ40の図示を省略したROMには、後述する画像処理、分離フィルタ決定処理、及びタイヤ検査の各処理を実行する処理プログラムが格納されている。また、コントローラ40には、フレキシブルディスクが挿抜可能なフレキシブルディスクユニット(FDU)を備えることができる。上記処理プログラム等は、フレキシブルディスクユニットを用いてフレキシブルディスクに対して読み書きすることができる。従って、処理プログラムは、予めフレキシブルディスクに記録しておき、フレキシブルディスクユニットを介してフレキシブルディスクに記録された処理プログラムを実行してもよい。また、コントローラ40にハードディスク装置等の大容量記憶装置(図示省略)を接続し、処理プログラムを大容量記憶装置(図示省略)へ格納(インストール)して実行するようにしてもよい。また、記録媒体としては、CD−ROMやDVD等の光ディスクや、MD,MO等の光磁気ディスクがあり、これらを用いるときには、上記フレキシブルディスクユニットに代えてまたはさらに、対応する装置を用いればよい。
コントローラ40の撮影位置制御部44は、撮像部であるカメラ18にも接続可能である(図2では点線で示す)。すなわち、撮影位置制御部44のモータ16に対する制御に同期してカメラ18による撮影指示がなされる。これはカメラ18によってタイヤ20の外面についてタイヤ半径方向を1度に撮影することが可能であるときには、タイヤ20とカメラ18とを相対的に回転することなく、タイヤ20の内面を全周にわたって撮影することが可能である。一方、カメラ18による撮影範囲が限定的であり、タイヤ20のタイヤ半径方向内面を1度に撮影することができない場合、撮影範囲を移動しなければならない。例えばタイヤ20を回転させつつ撮像画像をつなぎ合わせる処理が必要である。このとき、画像処理を容易とするため、円環状に撮像されるタイヤ表面を長尺状の帯形状の画像に変換することが好ましい。なお、これはスリット形状の画像を得て、これを回転に伴ってつなぎ合わせることで実現できる。
また、撮像部であるカメラ18はコントローラ40に備えられた画像記憶部42に接続されている。画像記憶部42は、カメラ18による撮像画像を一時的に記憶し、記憶された撮像画像の画像信号を出力するように構成されている。この画像記憶部42から出力される画像信号が分離フィルタ処理部48に入力されるように画像記憶部42の出力側が接続される。
分離フィルタ処理部48は、詳細を後述する分離フィルタ決定処理及びタイヤ検査時の画像処理を実行する機能部であり、処理結果が判定部50に入力されるように出力側が接続される。また、分離フィルタ処理部48はユーザによりキーボード入力等の入力信号の入力が可能に入力部46が接続されている。さらに、分離フィルタ処理部48には、画像処理に利用する複数のフィルタ、教師画像、及び重み等の各種データが記憶された記憶部54が接続されている。判定部50は、分離フィルタ処理部48の処理結果の画像信号から欠陥判定処理等の信号処理する機能部である。判定部50の出力側は、判定部50の信号処理後すなわち演算結果等を表示する表示部52に接続されている。なお、記憶部54は本発明の記憶手段に対応する。
ここで、本実施形態の分離フィルタ処理部48では、ローレット部の欠陥等を検査するタイヤ検査をするために複数のフィルタを組み合わせて構成される分離フィルタを利用する。その分離フィルタを決定し、決定した分離フィルタを用いてタイヤ検査を行っている。これらの分離フィルタの決定と分離フィルタを用いたタイヤ検査とは機能的に略同一の構成を用いるため、これらが、コントローラ40において実行されるものとして、分離フィルタ決定という観点と、タイヤ検査という観点との各々について機能的に分離して説明する。
図3に示すように、分離フィルタ処理部48に接続される記憶部54は、各種画像処理のためのフィルタを格納したフィルタ領域56、分離フィルタを構成するフィルタ配列を記憶する分離フィルタ設定メモリ領域58,教師画像を格納した教師画像領域60,及び重みを数値として格納した重み領域62を含んで構成されている。
フィルタ領域56に格納されるデータは、フィルタとして総称される、例えば階調画像に対して画素毎に一定の処理を施す処理モジュール(例えば関数)であり、フィルタを呼び出すことにより、画像に対してその画像処理を施すことができる。一例としては、2値化、多値化、最大最小、膨張収縮、反転、孤立点除去、x軸(縦)方向1次微分、y軸(横)方向1次微分、x軸(縦)方向2次微分、y軸(横)方向2次微分、x軸(縦)方向強調、y軸(横)方向強調、エッヂ強調、及び平滑化等の各処理を施す処理モジュールがある。これらの処理モジュールには閾値を設定することができ、設定閾値毎の処理モジュールを異なるフィルタとしてフィルタ領域56に格納することができる。以下の説明では、フィルタFi(1≦i≦n:nは処理モジュールの総数)と表記してフィルタを表現することとする。
分離フィルタ設定メモリ領域58に格納されるデータは、後述するように決定された分離フィルタVFを構成するフィルタの組み合わせを配列と共に表すものである。例えば、分離フィルタVFが4個のフィルタF1,F3,F7,F5からなるとき、[F1,F3,F7,F5]が格納される。なお、フィルタ組み合わせの分離フィルタVFを識別するために、分離フィルタをVFj(1≦j≦m:mはフィルタの組み合わせ総数)と表記することができる。
教師画像領域60に格納されるデータは、後述する分離フィルタVFの決定時に用いる教師画像(例えば、図6(B)参照)の画像データである。この教師画像は、入力された画像を画像処理した後に得られる画像としてタイヤの特徴部分が分離された画像である。この特徴部分には、タイヤの非ローレット部やローレット部等がある。
重み領域62に格納されるデータは、重み画像の画像データと、フィルタ長の重みを表す係数データとがある。重み画像とは、タイヤ検査時に高精度検査が必要な領域として予め定めた領域に重みを付するための画像である(例えば、図6(C)参照)。この重み画像は、後述する分離フィルタVFの決定時に用いるタイヤに対応して定めることが好ましい。また、フィルタ長の重みとは、後述するように決定された分離フィルタVFを構成するフィルタの総数に応じて変化する数値データである。この数値データは、フィルタ総数が所定数(例えば4個)であるときを最大として大きくなるに従ってなったり、小さくなるに従って小さくなったりするように予め定められる。
上記記憶部54に接続された分離フィルタ処理部48は、分離フィルタ設定部64,画像入力部66,評価部68,及び決定部76から構成されている。なお、分離フィルタ処理部48は、本発明の分離フィルタ決定装置に対応し、分離フィルタ設定部64は設定手段、画像入力部66は画像入力手段、評価部68は評価手段、決定部76は分離フィルタ決定手段に対応する。
分離フィルタ設定部64は、決定部76からの指示に応じて、入力される画像からローレット部等の特徴部分を分離するための分離フィルタVFを構成する複数のフィルタ配列を画像処理部70に対して設定する機能部である。分離フィルタ設定部64の入力側は記憶部54のフィルタ領域56及び分離フィルタ設定メモリ領域58と、決定部76とに接続され、出力側は画像処理部70に接続される。
この分離フィルタ設定部64では、詳細を後述する遺伝的アルゴリズムに従う分離フィルタの生成を実行するために、分離フィルタVFの交叉や変異を生じさせて新規の分離フィルタを生成する処理を実行する機能を含むものである。
評価部68は、分離フィルタ設定部64で設定される撮像画像から分離することが望ましい特徴部分を分離する分離フィルタを評価する機能部である。評価部68は、画像処理部70、処理画像メモリ72、及び評価値演算部74を含んでいる。この評価部68を構成する画像処理部70は切換部78を介して画像入力部66または画像記憶部42に接続可能に構成され、処理画像メモリ72は切換部80を介して評価値演算部74または判定部50に接続可能に構成される。
切換部78,80は、決定部76により切換制御される機能部である。決定部76は、入力部46の入力値により、分離フィルタを決定する決定モードと、タイヤ検査を実施する検査モードの何れかのモードへ移行する。このモードにより切換部78,80が切換制御される。決定モードでは、画像入力部66と画像処理部70が接続されるべく切換部78が切り換えられかつ処理画像メモリ72と評価値演算部74が接続されるべく切換部80が切り換えられる。一方、検査モードでは、画像記憶部42と画像処理部70が接続されるべく切換部78が切り換えられかつ処理画像メモリ72と判定部50が接続されるべく切換部80が切り換えられる。
なお、画像入力部66は、分離フィルタを決定するときにタイヤ表面等の画像(例えば、図6(A)参照)を入力するためのものであり、記憶部54内に予め格納してもよく、画像記憶部42に代えても良い。
画像処理部70は、分離フィルタ設定部64で設定された配列のフィルタ群による分離フィルタVFに従って入力された画像を画像処理する機能部であり、処理後の処理画像データが処理画像メモリ72に格納される。この処理画像メモリ72に格納される処理画像の一例を図6(D)に示す。
評価値演算部74は、分離フィルタの評価値を演算する機能部であり、入力側が教師画像領域60,重み領域62に接続され、出力側が決定部76に接続される。本実施形態では、評価値は大きくなるに従って評価が高い分離フィルタVFである場合を説明する。評価値の算出は次の(1)式に一例を示す評価関数gで求めることができる。この評価関数gは、画像を縦横複数に分割した画素毎に求めた数値の総和から求めるもので、画像は8ビットの階調画像である場合を示している。
g(VF)=1.0−k・〔Σ{(Gw/255)・|Gt-Gc|}/(255・Vs・Hs)〕
・・・(1)
なお、VF:評価対象の分離フィルタを示す識別子
k :フィルタ長で定められる重み係数
Gw:重み画像の特定画素の輝度値
Gt:教師画像の特定画素の輝度値
Gc:処理画像の特定画素の輝度値
Vs:画像の横方向の画素数(横方向サイズ)
Hs:画像の縦方向の画素数(縦方向サイズ)
である。上記式における大括弧内の分子式は教師画像と処理画像の差分を求め、その差分に重み画像を付加する計算(画像に含まれる画素毎に求めて総和する計算)に相当する。また、分母式は、画像の大きさ及び階調数を正規化するための定数である。この計算結果にフィルタ長で定められる重み係数を付加して1.0から減算することで、大きくなるに従って評価が高い分離フィルタの評価値を求めることができる。
決定部76は、評価部68の評価値から分離フィルタVFを決定したり既存のVFを用いた画像処理をさせたりする機能部であり、入力側は入力部46と評価部68に接続され、出力側は分離フィルタ設定部64と分離フィルタ設定メモリ領域58に接続される。決定部76は、入力部46からモード指定値が入力されると、決定モードまたは検査モードへ移行して、切換部78,80を以降モードに対応する接続に切り換える(決定モード:画像入力部66及び画像処理部70と処理画像メモリ72と評価値演算部74、検査モード:画像記憶部42及び画像処理部70と処理画像メモリ72と判定部50)。
この決定部76は、決定モードのときには、評価部68の評価値から分離フィルタVFを決定し、その結果を分離フィルタ設定メモリ領域58へ格納する。また、繰り返し処理時には分離フィルタ設定部64へ分離フィルタの設定指示を行う。一方、検査モードのときには、分離フィルタ設定メモリ領域58に格納済みの分離フィルタVFが分離フィルタ設定部64に設定されるように分離フィルタ設定部64へ設定指示を行う。
次に、上述の構成によるタイヤ検査装置10の作動と共に、本実施の形態の作用を説明する。なお、本実施形態のタイヤ検査装置10は、ローレット部の欠陥等を検査するタイヤ検査をするために用いる分離フィルタを決定する処理を実行する場合と、その分離フィルタを用いてタイヤ検査を行う処理を実行する場合との双方で作動が異なる。そこで、これらの処理がコントローラ40において実行されるものとして、決定部76(図3)で移行するモードに対応し、分離フィルタ決定という観点である決定モード、タイヤ検査という観点である検査モードとの各々について順に説明する。
なお、ここでは、特徴部分として、タイヤ外面のローレット部分及び非ローレット部分に生じる欠陥を検査するために、分離フィルタを決定することとそれを用いてタイヤ検査することを一例として説明する。
〔分離フィルタ決定〕
まず、コントローラ40で分離フィルタを決定するプロセスで画像処理されるタイヤ表面について、図6を参照して説明する。図6(A)には、タイヤ20の側面の一部領域についての撮像画像である入力画像82を示した。入力画像82は、ローレット部82Aと非ローレット部82Bとからなり、ローレット部82Aには文字やデザインが含まれる場合がある(図6(A)の例では文字画像)。タイヤ表面には、文字やデザインの欠けや連結、突起やへこみ、そして傷等の欠陥が発生することがある。これらの欠陥は、タイヤ表面のローレット部82Aと非ローレット部82Bとの領域毎に欠陥状態が異なるので、検出精度向上のために、これらローレット部82Aと非ローレット部82Bとの画像分離が要求される。そこで本実施形態では、タイヤ外面のローレット部分及び非ローレット部分を分離する分離フィルタを決定して、その分離フィルタを用いてタイヤ表面を領域分割した画像で検査する。なお、文字画像やデザイン画像についての検出は別途処理により可能であるのでここでは詳細な説明を省略する。
図6の例では、ローレット部82Aと非ローレット部82Bとを区別するために、画像処理後に2値画像を得る場合を示すものである。図6(B)に示す教師画像84は、入力画像82の画像処理後に得られるべき画像である。画像処理部70では、入力画像82を画像処理した結果、教師画像84に相当する画像が得られるように処理するが、領域毎に表面状態が異なるので、検出精度向上が要求される領域について、図6(C)に示す重み画像86による考慮を施す。図6(C)の例の重み画像86は階調画像であり、非ローレット部86Bの重みが重く、ローレット部86Aの重みが軽くなるように階調値が設定され、ローレット部86A内の文字画像については最も軽くなるように重みが設定されている。これら教師画像84と重み画像86と用いて複数フィルタの配列を定めて画像処理することで、ローレット部82Aと非ローレット部82Bとを区別可能な図6(D)に示す処理画像88が得られる。
図4には、コントローラ40において遺伝的アルゴリズムに従って実行される分離フィルタ決定処理についてプロセスを処理の流れとして示した。まず、コントローラ40に電源投入され、入力部46からのユーザ指示が決定部76に対してなされ、その入力値に対応するモードが決定モードであるとき、決定部76は決定モードに推移し、図4のプロセスが開始される。なお、ここでは、分離フィルタ決定用の画像が画像入力部66から入力される場合を説明するが、カメラ18による撮像画像でもよい。この場合、分離フィルタ決定用のサンプルとしてタイヤ外面にローレット部分及び非ローレット部分を有するタイヤ20をタイヤ検査装置10に設置すると共に、カメラ18の撮像範囲内にタイヤ外面のローレット部分及び非ローレット部分が含まれる撮像位置に設定する。
ステップ100では、コントローラ40において初期値として用いるための各種データ(例えば、図6(B)に示す教師画像、図6(A)に示す入力画像、図6(D)に示す重み画像、上記(1)式による評価関数g、重み係数k)を読み取る。この処理は分離フィルタ設定部64、画像入力部66、評価部68、及び決定部76で処理を実行するために必要かつ最小限のデータである。
次に、ステップ102乃至106において遺伝的アルゴリズムの処理を実行するための第1の分離フィルタ及び第2の分離フィルタを設定する。これらの処理は、分離フィルタ設定部64においてなされるものである。まず、ステップ102では、各種フィルタFを読み取ると共に識別子Fi(1≦i≦n:nは処理モジュールの総数)を付与する。この処理は、フィルタ領域56に格納された複数のフィルタFを識別するためのテーブル(例えば、フィルタ名称と識別子)を作成する処理に相当する。
次のステップ104では、初期の分離フィルタを複数設定する。ここでは分離フィルタVFを識別するために、分離フィルタVFj(1≦j≦m:mはフィルタの組み合わせ総数)とする。なお、初期の分離フィルタは、実験的に予め求まっている場合、例えば複数フィルタの組み合わせが配列と共に既知の場合にはこれを読み取るようにしてもよい。この場合には、その初期配列を記憶部54に格納しておけばよい。次のステップ106では、複数の初期分離フィルタを母集団として記憶すると共に、その母集団の中から2個の分離フィルタを選択して選択分離フィルタ群に設定する。以下の説明では、遺伝的アルゴリズムの処理を実行するための分離フィルタVFを、便宜上、第1の分離フィルタVF1及び第2の分離フィルタVF2とする。従って、現時点では、選択分離フィルタ群に、VF1,VF2が登録される。
第1の分離フィルタ及び第2の分離フィルタが設定されると、ステップ108で交叉、そしてステップ110で変異の各処理が施される。これらの処理も分離フィルタ設定部64においてなされるものである。また、これらステップ108,110の処理は少なくとも一方が実行されればよく、何れか一方の処理のみ実行されるときには、他方の処理は省略される。これらの処理を施すか否かは、予め定めた所定確率で決定されて実行される。
上記の交叉及び変異についてさらに説明する。
交叉は、選択された2個の分離フィルタVF1,VF2の各複数フィルタについてその一部のフィルタを交換する処理である。まず、所定確率に応じて(予め定めた乱数を生成し、この乱数に応じて)第1の分離フィルタVF1、第2の分離フィルタVF2に関する交叉場所uを決定する。次に、交叉すると決定された交叉場所uのフィルタFiから交叉するフィルタ個数(交叉個数v)を求める。この交叉する個数は、乱数による所定確率で定めてもよく、所定関数で定めても良い。このようにして、交叉場所u及び交叉個数vを求めた後に、第1の分離フィルタVF1と第2の分離フィルタVF2を交叉して新規のフィルタ配列である分離フィルタVF3、VF4を生成する。
例えば、選択された2個の分離フィルタが次に示すフィルタ配列である場合を説明する。
VF1=[F11,F32,F27,F15,F10,F25,F12,F31,F28,F19]
VF2=[F11,F33,F17,F23,F35,F10,F27,F29,F14,F20]
これらの分離フィルタの交叉場所uが「7」すなわち第7番目のフィルタ、交叉個数vが「4」すなわち第7番目のフィルタ以降全てのフィルタを示す数値が求まると、交叉対象のフィルタは、次のようになる。
VF1=[F11,F32,F27,F15,F10,F25,(F12,F31,F28,F19)]
VF2=[F11,F33,F17,F23,F35,F10,<F27,F29,F14,F20>]
この結果、新規の分離フィルタVF3,VF4は次のようになる
VF3=[F11,F32,F27,F15,F10,F25,<F27,F29,F14,F20>]
VF4=[F11,F33,F17,F23,F35,F10,(F12,F31,F28,F19)]
なお、上記フィルタに施した()と、<>の記号は便宜上表記したものである。
このように生成した新規の分離フィルタを、選択分離フィルタ群に追加する。これによって、交叉が実行された時点では、選択分離フィルタ群に、VF1,VF2,VF3,VF4,の4個の分離フィルタVFが含まれることになる。
なお、上記例では交叉場所iは1ヶ所であるが、この他に遺伝的アルゴリズム(北野 宏明 編)に示されているような、複数点交叉または一様交叉等を用いてもよい。
次に、変異は、分離フィルタの少なくとも一部のフィルタを微小に変更することをいい、最適なフィルタ数及び配列となりうる分離フィルタを含む確度を高くするためである。この変異として、分離フィルタの少なくとも一部のフィルタを微小に変更することは、フィルタの欠失、他のフィルタとの置換及び新規のフィルタを追加する付加を含むものである。
まず、変異では、所定確率によって、変異の対象となる分離フィルタを選択分離フィルタ群に含まれる分離フィルタの中から1個の分離フィルタを決定する。次に、所定確率によって変異の場所(変異場所x)を決定した後に、所定確率によって変異させるフィルタ(変異内容y)を決定する。変異内容yは、フィルタ領域56に格納済みのフィルタから何れか1つのフィルタを所定確率で選択すればよい。なお、ここでは、1個の分離フィルタについての変異を説明するが、複数の分離フィルタであってもよい。
例えば、VF3が変異対象の分離フィルタに決定され、変異場所xが「2」すなわち第2番目のフィルタと求まると、分離フィルタは次のように識別できる。
VF3=[F11,(F33),F17,F23,F35,F10,F12,F31,F28,F19]
そして、変異内容yが「50」すなわち識別子がF50のフィルタを示す数値が求まると、変異後の分離フィルタVF5は、次のようになる。
VF5=[F11,<F50>,F17,F23,F35,F10,F12,F31,F28,F19]
このように生成した新規の分離フィルタを、選択分離フィルタ群に追加する。これによって、交叉後に変異が実行された時点では、選択分離フィルタ群に、VF1,VF2,VF3,VF4,VF5の5個の分離フィルタVFが含まれることになる。
以上のようにして選択分離フィルタ群に新規の分離フィルタの追加が終了すると、ステップ112において選択分離フィルタ群の各分離フィルタについて評価値を順次演算する。この処理は、評価部68においてなされるものである。分離フィルタ設定部64は評価部68の画像処理部70に選択分離フィルタ群の分離フィルタを順に設定する。
評価部68では、設定された分離フィルタのフィルタ順序に従って画像処理部70において画像入力部66の画像を画像処理して処理画像メモリ72へ格納した後に、評価値演算部74で評価値を演算する。この評価値演算部74では評価関数gとして例示した上記(1)式に従って、画素毎に、教師画像と処理画像との差分に重み画像を付すと共に、この処理画像の分離フィルタに含まれるフィルタ数に応じた重み係数が付加されて、評価値を求める。これら選択分離フィルタ群の各分離フィルタの評価値は順次決定部76へ出力される。
次に、選択分離フィルタ群の各分離フィルタの評価値に基づいて、ステップ114乃至ステップ122において、次世代の分離フィルタの決定及び最終的な分離フィルタの決定である最適化が実行される。これらの処理は、決定部76においてなされるものである。
まず、ステップ114では、現在の世代における分離フィルタを淘汰する。この淘汰は、選択分離フィルタ群に含まれる複数分離フィルタのなかから評価値に応じて確率的に分離フィルタを選択する処理である。これは、評価値を適応度に対応させたときの適応度比例戦略に対応する。すなわち、評価値に比例して選択される分離フィルタの確率を定めて、その確率に従って、無差不意に複数の分離フィルタのなかから、2つの分離フィルタを選択することである。
次のステップ116では、エリート保存処理が実行される。この処理は、最も評価値の高い分離フィルタをそのまま次世代に複製するもので、上記淘汰された2つの分離フィルタを共に置き換えても良いし、何れか1つを置き換えても良い。また、淘汰処理を実行しない場合には、選択分離フィルタ群に含まれる複数分離フィルタの中で最も評価値の高い分離フィルタをそのまま次世代に複製すればよい。
従って、ステップ114,116では、次世代用に2つの分離フィルタを識別可能に選択値等の識別データ付与が好ましい。なお、決定部76では評価部68から評価値が入力されるが、この評価値に対応して分離フィルタを識別できるようにVFjを読み取ることができる。これは、分離フィルタ設定部64から決定部76に対して入力するようにしてもよく、評価部68で評価値とVFjとを対応付けて出力するようにしてもよい。
上記ステップ114及び116の処理には所謂トーナメント戦略を含むようにしてもよい。この戦略は、無差不意に複数の分離フィルタを選択肢、その選択した複数の分離フィルタのなかの最も評価値の高い分離フィルタを2つ残存させる処理である。なお、上記ステップ114,116、そして所謂トーナメント戦略は少なくとも一つが実行されればよく、何れか一つのみ実行されるときには、他処理は省略される。これらの処理を施すか否かは、予め定めた所定確率で決定されて実行される。
次にステップ118では、現在世代(上記ステップ108乃至ステップ116の繰り返し回数)が予め定めた規定世代(例えば200世代)に到達したか否かを判断する。未到達の場合にはステップ120において上記選択済みの2つの分離フィルタを、次世代の分離フィルタとして複写し、ステップ106へ戻る。このステップ120では、上記母集団として記憶された複数の分離フィルタからなる分離フィルタ群に、上記選択済みの2つの分離フィルタを追加することである。なお、この追加は、母集団に含まれる分離フィルタの総数を増加することに限定されない。例えば、追加に伴って、追加と同数までの任意数の分離フィルタを削除してもよい。この場合、評価値が最低のものから追加と同数までの任意数の分離フィルタを削除することが一例としてあげられる。
一方、現在世代が規定世代に到達した場合にはステップ118で肯定され、ステップ122において本プロセスにより求めた最良の分離フィルタを決定する。この最良の分離フィルタとは、上記選択分離フィルタ群に含まれる複数分離フィルタの中で最も評価値の高い分離フィルタを選択したり、上記淘汰やエリート保存された分離フィルタのうち評価値の高い分離フィルタを選択したりすることで得られるものである。このステップ122では、決定した分離フィルタVF、例えばフィルタ配列等を分離フィルタ設定メモリ領域58へ格納する。
なお、ステップ122における最良の分離フィルタの決定は、上記選択分離フィルタ群に含まれる複数分離フィルタに限定されるものではなく、母集団に含まれる複数分離フィルタを用いてもよい。これは、母集団には、規定世代までの複数の分離フィルタが含まれており、これらの中に最良のフィルタが残存する可能性を有するので、これらの中に含まれる分離フィルタを最良の分離フィルタとして決定する機会を与えるためである。この場合には、母集団に含まれる複数分離フィルタの中で最も評価値の高い分離フィルタを選択することが一例としてあげられる。
これによって、分離フィルタ設定メモリ領域58に格納される分離フィルタVFは、入力画像82を処理画像88へ変換できる画像処理のためのフィルタ配列となる。
なお、ステップ118の世代判定は次の条件のいずれかを満足したら肯定されるようにしてもよい。例えば、最大の評価値が予め定めた所定範囲内の評価値に到達したこと、最大の評価値がそれ以降の所定回の世代で更新されないこと、過去の最大の評価値に対して所定割合以下の評価値が所定回連続すること等の条件がある。
このように、本実施の形態における分離フィルタの決定は、表面に特徴を有して分離を望む領域を重み画像として考慮している。これによって、詳細に検査をすることを希望する領域を容易に分離できるフィルタの組み合わせを簡便に決定することができる。また、フィルタの個数による重み係数を付与して考慮することで、分離フィルタの評価を画像の分離に限定せず、画像処理の処理負荷を考慮してフィルタの組み合わせを簡便に決定することができる。
なお、上記では、図6に示すローレット部82Aと非ローレット部82Bとからかる画像について分離フィルタVFを決定する場合を説明したが、この分離フィルタVFは図6の画像やタイヤの種類別に求めるものではない。すなわち、撮像画像から領域を区別するための分離フィルタを決定すればよいので、領域を区別するための教師画像84と精度を要求する領域の重み画像86とからフィルタ配列を決定すれば、各領域毎に分離された処理画像を得ることができ、様々なタイヤ表面への適用が可能である。この場合、文字画像やデザイン画像が際だって現れることがあるが、これら文字画像やデザイン画像は、予め既知であるので、後述するタイヤ検査時に検査対象領域から除外することは容易である。
〔タイヤ検査〕
次に、タイヤ20について、タイヤ外面の欠陥検査をするタイヤ検査装置10の処理について説明する。この処理は、上述のようにして決定した分離フィルタを用いてタイヤ検査を行う欠陥検出処理であり、図5に示すプロセスによって実行される。
図5には、コントローラ40において実行されるタイヤ検査処理についてプロセスを処理の流れとして示した。まず、コントローラ40に電源投入され、入力部46からのユーザ指示が決定部76に対してなされ、その入力値に対応するモードが検査モードであるとき、決定部76は検査モードに推移し、図5のプロセスが開始される。
まず、タイヤ外面にローレット部分及び非ローレット部分を有するタイヤ20をタイヤ検査装置10に設置すると共に、カメラ18の撮像範囲内にタイヤ外面のローレット部分及び非ローレット部分が含まれる撮像位置に設定すると、ユーザは、ローレット部分及び非ローレット部分を分離する画像処理による画像提供を表す入力値を検査種類として入力し、ステップ202へ進む。この時点で、カメラ18による撮像画像が画像処理部70へ入力される。次のステップ202では、検査種類に対応する分離フィルタVFが分離フィルタ設定メモリ領域58から読み取られ、画像処理部70に設定される。
これらステップ200,202の処理は決定部76で実行される。すなわち、まず、決定部76は、検査モードとして、画像記憶部42及び画像処理部70と、処理画像メモリ72及び判定部50とが接続されるように切換部78、80を切り換える。そして、決定部76は、入力部46からの入力値に応じて分離フィルタ設定メモリ領域58に格納された分離フィルタVFを分離フィルタ設定部64が画像処理部70に設定するように制御する。これによって、撮像画像は、画像記憶部42,画像処理部70,処理画像メモリ72,判定部50,表示部52の順序で処理されるプロセス経路が形成される。
次のステップ204では、カメラ18によりタイヤ20の表面を撮像させ、その撮像信号が画像記憶部42に格納されそれを読み取ることで、タイヤ20の表面構造が検出される。次のステップ206では、画像処理部70において撮像信号が、分離フィルタVFを構成する複数フィルタの各々で画像処理され、次のステップ208において処理結果が処理画像メモリ72に出力される。次のステップ210では、処理結果の画像に基づいて欠陥判定処理が実行される。この判定処理は、判定処理部50において実行される。なお、判定処理部50には、画像処理部70の画像処理結果の処理画像が格納された処理画像メモリ72から処理画像が入力される。また、判定処理部50には、入力部46による閾値が入力されるようになっている。この閾値は、処理結果の画像について欠陥部分であるか許容範囲内であるかを判別する基準値(または基準範囲)である。この閾値を調整することで、欠陥検出感度を調整することができる。また、この閾値は検出部分を抽出するための画像であってもよい。
次のステップ212では、ステップ210の判定結果からタイヤ表面欠陥を有しない良好なタイヤであるか否かを判断する。この判断は、ステップ210の判定に依存するものである。ステップ212で否定されるとステップ214へ進み、対応処理が実行される。この対応処理の一例は、表面欠陥部分が存在するので詳細検査が必要であることを、画像表示してユーザへ提示することがある。他の例としては、単に表面欠陥部分があることをユーザへ提示することがある。その提示は、撮像画像上に欠陥部分の領域を明示的に示すことが好ましい。一方、ステップ212で肯定されるとステップ216において良好であることを示す検査結果を出力してステップ218へ進む。
ステップ218では、撮影位置制御部44によるモータ16の回転でタイヤとカメラ18とが相対的に1回転してタイヤ表面の全てについての検査が終了したか否かを判断する。否定判断の場合は隣接するタイヤ表面を撮像するために撮影位置制御部44によりモータ16を回転させてステップ204へ戻り、上記処理を繰り返す。一方、肯定判断の場合には、ステップ220へ進み。タイヤ検査が終了したことを報知する等の検査終了処理を実行した後に本ルーチンを終了する。
このように、本実施形態では、タイヤ表面について遺伝的アルゴリズムで決定したフィルタの組み合わせによる分離フィルタVFで画像処理した画像によって表面欠陥を検出するので、目視検査と同程度のタイヤ20の表面検査をすることができる。
また、本実施形態では、タイヤ検査としてタイヤ20の表面を検査する場合を説明したが、タイヤに限定されるものではなく、検査対象としては、物体表面の検査や外観検査への適用も可能である。
次に、本発明の実施例を説明する。本実施例は、上記実施形態におけるタイヤ検査装置10の動作について、入力画像,教師画像,重み画像の各々を用いて分離フィルタVFを作成し、その分離フィルタVFを用いて同種のタイヤ表面を検査したときの処理画像を得る処理の結果について実験したものである。また、他種のタイヤ表面を検査したときの処理画像を得る処理の結果についても実験した。
図7は、225/45Rの特定種のタイヤ表面についての実験結果を示すものである。図7(A)は入力画像,図7(B)は教師画像,図7(C)は重み画像、図7(D)は作成した分離フィルタVFを用いてタイヤ表面を画像処理した処理画像を示したものである。図7(E)は特定種で作成した分離フィルタVFを用いて他種タイヤについて実験するための他種のタイヤ表面の入力画像、図7(F)はその処理画像を示したものである。同様に、図8は、他の特定種のタイヤ表面についての実験結果を示し、(A)は入力画像、(B)は教師画像、(C)は重み画像、(D)は処理画像、(E)は他種タイヤのタイヤ表面の入力画像、(F)はその処理画像を示したものである。
これらの図からも理解されるように、入力画像,教師画像,重み画像から分離フィルタVFを作成することで、詳細に検査をすることを希望する領域を容易に分離できると共に、他種類のタイヤ表面であっても、簡便に領域分離が可能となる。このため、タイヤ検査を迅速かつ高精度に実行できることが理解できる。
本発明の実施形態に係るタイヤ検査装置の概略構成図である。 本発明の実施形態に係るタイヤ検査装置のコントローラの概略構成を示すブロック図である。 分離フィルタ処理部の概略構成を示すブロック図である。 分離フィルタ処理の流れを示すフローチャートである。 本発明の実施形態に係るタイヤ検査処理の流れを示すフローチャートである。 本発明の実施形態に係るタイヤ検査装置において利用する画像を示すイメージ図であり、(A)は入力画像、(B)は教師画像、(C)は重み画像、(D)は処理画像である。 本実施例における特定種のタイヤ表面についての実験結果を示し、(A)は入力画像、(B)は教師画像、(C)は重み画像、(D)は処理画像、(E)は他種タイヤの入力画像、(F)は処理画像を示したものである。 本実施例における他の特定種のタイヤ表面についての実験結果を示し、(A)は入力画像、(B)は教師画像、(C)は重み画像、(D)は処理画像、(E)は他種タイヤの入力画像、(F)は処理画像を示したものである。
符号の説明
10…タイヤ検査装置
16…モータ
18…カメラ
20…タイヤ
40…コントローラ
48…分離フィルタ処理部
54…記憶部
64…分離フィルタ設定部
66…画像入力部
68…評価部
70…画像処理部
74…評価値演算部
76…決定部

Claims (8)

  1. 特徴部分を含むタイヤの表面を撮像した撮像画像を入力する画像入力手段と、
    前記撮像画像を画像処理するためのフィルタを複数記憶すると共に、前記撮像画像から特徴部分が分離された画像に相当しかつ前記撮像画像を複数のフィルタにより画像処理した結果の画像に相当する予め定めた教師画像と、前記撮像画像に対する予め定めた領域に重みを設定した重み画像と、を記憶する記憶手段と、
    前記記憶手段に記憶された複数フィルタの中から2つ以上のフィルタを組み合わせたフィルタ群を分離フィルタに設定する設定手段と、
    前記分離フィルタの各フィルタにより前記撮像画像を画像処理すると共に、該画像処理後の処理画像と前記教師画像との差分画像に前記重み画像に基づく重みを付した画像に基づいて前記分離フィルタの評価値を求める評価手段と、
    前記評価値が予め定めた所定範囲となるまで前記設定手段の設定と前記評価手段の評価値演算とを繰り返させ、該繰り返させた結果の評価値に対応する分離フィルタを前記撮像画像から前記特徴部分を分離するための分離フィルタに決定する分離フィルタ決定手段と、
    を備えた分離フィルタ決定装置。
  2. 前記記憶手段は、前記分離フィルタのフィルタ数に対応する予め定めた重み係数をさらに記憶し、
    前記評価手段は、差分画像に前記重み画像に基づく重みを付した画像と、前記設定した分離フィルタのフィルタ数に対応する重み係数とに基づいて前記フィルタ群の評価値を求める
    ことを特徴とする請求項1に記載の分離フィルタ決定装置。
  3. 前記分離フィルタ決定手段は、所定回を繰り返したときに前記評価値が所定範囲となったものとして前記繰り返しを終了する
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の分離フィルタ決定装置。
  4. 前記設定手段は、前記分離フィルタとしてフィルタの配列を含むフィルタ群を設定し、
    前記評価手段は、前記設定された分離フィルタのフィルタ配列順序に従って前記撮像画像を画像処理する
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の分離フィルタ決定装置。
  5. 前記設定手段は、前記分離フィルタとして第1の分離フィルタと第2の分離フィルタを選択分離フィルタ群に設定すると共に、所定確率で第1の分離フィルタと第2の分離フィルタを交叉して新規の分離フィルタを生成して前記選択分離フィルタ群に追加すること、及び所定確率で前記選択分離フィルタ群に含まれる少なくとも1つの分離フィルタの少なくとも一部のフィルタを他のフィルタに変更して新規の分離フィルタを生成して該選択分離フィルタ群に追加することの少なくとも一方の追加を行い、
    前記評価手段は、前記選択分離フィルタ群に含まれる分離フィルタの各々で前記撮像画像を画像処理するすると共に、前記分離フィルタの各々の評価値を求め、
    前記分離フィルタ決定手段は、前記設定手段において次回の選択分離フィルタ群として前記評価手段で求めた評価値の各々に基づいて第1の分離フィルタと第2の分離フィルタを選択させ、該次回の選択分離フィルタ群について前記設定手段の設定と前記評価手段の評価値演算とを実行させることを規定回数繰り返させ、該繰り返させた結果の評価値に基づいて分離フィルタを決定する
    ことを特徴とする請求項4に記載の分離フィルタ決定装置。
  6. 前記分離フィルタ決定手段は、前記設定手段において次回の選択分離フィルタ群として前記評価手段で求めた評価値の各々の大きさに応じた選択確率で第1の分離フィルタと第2の分離フィルタが選択されるように設定させる
    ことを特徴とする請求項5に記載の分離フィルタ決定装置。
  7. 前記分離フィルタ決定手段は、前記設定手段において次回の選択分離フィルタ群として前記評価手段で求めた評価値が最大の分離フィルタが第1の分離フィルタまたは第2の分離フィルタに選択されるように設定させる
    ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の分離フィルタ決定装置。
  8. 請求項1乃至請求項7の何れか1項の分離フィルタ決定装置で決定された分離フィルタの配列及び該分離フィルタを構成するフィルタを記憶する記憶手段と、
    タイヤの表面を撮像する撮像手段と、
    前記撮像手段で撮像した撮像画像を前記記憶手段に記憶された分離フィルタに従って画像処理する画像処理手段と、
    前記画像処理手段の処理結果を表示する表示手段と、
    を備えたタイヤ検査装置。
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