JP2008108862A - コンデンサ素子およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】一対の電極と、該一対の電極に挟まれた誘電体とを有するコンデンサにおいて、前記誘電体の配向分極が消失する周波数が、コンデンサの自己共振周波数より低く設定されている。例えば、図の特性を有する誘電体では109Hz付近において誘電緩和が発生しているが、この誘電体を使用する場合には自己共振周波数が109Hz以上となるようにする。具体的には、そのように誘電体について緩和時間を調整し、その誘電体を用いてコンデンサを作製する。
【選択図】図2
Description
一般に、コンデンサは図8に示す等価回路で表現される。同図に示されるように、コンデンサには、本来のキャパシタンスC(F)の外に、寄生の要素として、等価直列抵抗(equivalent series resistance)ESR(Ω)と寄生インダクタンスL(H)がある。そのため、コンデンサのインピーダンスZC(Ω)は(1)式で与えられる。
ここで、キャパシタンスCの含まれる1/jωCの項は、用いられる周波数(角周波数ω)が上昇すればするほど、小さくなっていく。逆に、寄生インダクタンスLが含まれる項jωLは、周波数が上昇すればするほど大きくなっていく。そのため、周波数が低く、ωL<1/ωCとなるときには、キャパシタンスCに関する項が大きいため、キャパシタンスCの影響の方が大きい。したがって、キャパシタンスCの動作、つまり、コンデンサとして動作する。しかし、周波数が上昇すると、キャパシタンスの項1/jωCに比べ、寄生インダクタンスの項jωLが大きくなる。したがって、キャパシタンスの影響より寄生インダクタンスの影響の方が大きくなるため、コンデンサとして動作しなくなる。また、jωL=−1/jωCとなれば、キャパシタンスCと寄生インダクタンスが打ち消しあう。この周波数のときに、インピーダンスZCは最小となり、キャパシタンスCと寄生インダクタンスLの共振となる。この周波数は、コンデンサの自己共振周波数ωCである。この自己共振周波数ωCはωL=1/ωCとなる周波数であり、(2)式で示される。
本発明の課題は、上述した従来技術の問題点を解決することであって、その目的は、素子構造を複雑化、大型化することなく、使用可能な帯域の広いコンデンサ素子を提供できるようにすることである。
上記の目標を達成するため、本発明によれば、一対の電極と該一対の電極にはさまれた誘電体とを有するコンデンサ素子において、前記誘電体の配向分極の消失により誘電率が変化する前の誘電率をεLとしたとき、誘電率εLの誘電体を用いて前記コンデンサ素子を構成したときの自己共振周波数より低い周波数にて、配向分極が消失するような緩和時間τCを持つ誘電体を用いることを特徴とするコンデンサ素子が提供される。
(1)電極および端子を含めたコンデンサ素子の形状を決定する過程と、
(2)決定されたコンデンサ素子の形状から、コンデンサ素子のキャパシタンスと誘電体の誘電率との比であるコンデンサ定数kと、コンデンサ素子の寄生インダクタンスLとを求める過程と、
(3)前記誘電体の配向分極が消失する周波数が、自己共振周波数より低くなる誘電体を選定する過程と、
(4)前過程で選定された誘電体素子を用いてコンデンサ素子を作製する過程と、
を有することを特徴とするコンデンサ素子の製造方法、が提供される。
(1)電極および端子を含めたコンデンサ素子の形状を決定する過程と、
(2)決定されたコンデンサ素子の形状から、コンデンサ素子のキャパシタンスと誘電体の誘電率との比であるコンデンサ定数kと、コンデンサ素子の寄生インダクタンスLとを求める過程と、
(3)誘電体の配向分極が消失する周波数より十分低い周波数における誘電体の誘電率をεLとして、緩和時間τCが、
(1)電極および端子を含めたコンデンサ素子の形状を決定する過程と、
(2)決定されたコンデンサ素子の形状から、コンデンサ素子のキャパシタンスと誘電体の誘電率との比であるコンデンサ定数kと、コンデンサ素子の寄生インダクタンスLとを求める過程と、
(3)誘電体の配向分極が消失する周波数より十分低いおよび十分高い周波数における誘電体の誘電率をそれぞれεL、εHとして、緩和時間τCが、
コンデンサのキャパシタンスは誘電体の誘電率と比例関係にある。そこで、誘電体の誘電率を周波数により変化させることで、コンデンサのキャパシタンスを高周波で減少させる。そのために誘電分散の現象を利用する。例えば、塩嵜 忠 監修、「絶縁・誘電セラミックスの応用技術」、シーエムシー出版、2003年8月18日出版、pp.20-25に示されるように、誘電体の分極には、共鳴型の分極と緩和型の分極があり、そして共鳴型の分極には電子分極とイオン分極が含まれ、緩和型の分極には配向分極と界面分極が含まれる。配向分極と界面分極が緩和型であるため、これらによる誘電分散は誘電緩和とも呼ばれる。
配向分極が消失することによる誘電緩和による誘電率の変化は、(3)式にて近似される(例えば、前掲書参照)。
また、本発明のコンデンサにおいては、誘電緩和により高周波での誘電率が低下し、コンデンサのキャパシタンスが減少する現象を用いることで、周波数により異なるキャパシタンスのコンデンサとして動作させることができる。
また、本発明は、コンデンサの広帯域対応を二つのコンデンサを一つの素子内に作り込むことによって達成するものではないので、素子構造が複雑となったり実装面積が増大したりすることがなく、構造および製造工程は従来法をそのまま適用することができ、高性能素子を安価に提供することができる。
誘電体の分極の緩和時間をτとし、誘電体のωτ≪1のとき、つまり、配向分極による分極が存在するときの誘電率をεL、ωτ≫1のとき、つまり、誘電緩和により配向分極による分極が失われた後の誘電率をεHとするとき、誘電体の誘電緩和による複素誘電率の実部ε′の変化は(3)式で表される。また、このときの誘電率の変化を実線にて図2に示す。同図においてε0は真空の誘電率である。
本発明においては、共振は誘電体の誘電緩和が発生する周波数以上の周波数で発生するようになされる。したがって、その共振周波数ωCHは、(4)式で表される。
高い周波数まで、誘電体の誘電緩和の影響が出ないようにするには、自己共振周波数において、誘電体の誘電率が配向分極の消失により十分に減少するように緩和時間τを設定すればよい。すなわち、それよりさらに低い周波数で配向分極が消失するような、緩和時間τは有効でない。本発明によれば、コンデンサ素子の自己共振周波数において誘電体の誘電率が、配向分極が完全に消失したときの誘電率εHに十分近づくように、緩和時間τを設定することで、有効な緩和時間を設定できる。
そこで、(3)式右辺第2項が、(εL−εH)の1/1000以下とはならない周波数で、すなわち、(1+ω2τ2)が1000以下となる周波数で共振するように誘電体を選択、調整する。このとき、共振周波数ωC、緩和時間τCは、ωCτC≦31.6を満たしており、緩和時間τCは、τC≦31.6/ωC、すなわちτC≦31.6√(LkεC)となる(εCは共振周波数での誘電率)。ここで、共振周波数での誘電率εCはεHに近似しているので、上式にεHを代入すると、誘電体の緩和時間τCは(7)式で示されるものとなる。
したがって、コンデンサの誘電体を、緩和時間τCを(8)式を満たす値になる誘電体を選択、調整することで、コンデンサの自己共振周波数を高周波にシフトし、より広帯域で使用可能なコンデンサを実現できる。
従来のコンデンサの特性においては共振周波数が3.3GHzで発生しているのに対し、本発明のコンデンサ素子においては、共振周波数が6.6GHzにまで高周波に変化している。したがって、本発明の素子においては従来のコンデンサに比べ2倍の高周波までその利用可能な帯域が広げられていることになる。
求めたkとLの値および誘電体の誘電率を用い、(6)ないし(8)式に従い、適切な緩和時間τを求める。求めた緩和時間を元に、分極の緩和時間が適切な誘電体を選択し、調整を行う。選択、調整を行った誘電体を用い、コンデンサを製作することで、本発明の誘電緩和を利用したコンデンサ素子を提供することができる。
その理由を説明する。自己共振周波数付近では、コンデンサのキャパシタンス成分によるインピーダンスが小さい。また、ωτ=1の周波数では、誘電緩和による損失の上昇により、損失によるインピーダンスの上昇が大きくなる。そのため、コンデンサの自己共振周波数と、ωτ=1となる周波数が近いときは、キャパシタンス成分によるインピーダンスが損失によるインピーダンスより小さくなる。そのため、キャパシタンス成分の影響より、損失による影響が強くなるため、コンデンサ素子としての動作が損なわれる。
そこで、誘電体の配向分極の消失により誘電率が微小化した後の誘電率における自己共振周波数での誘電損失が、十分小さくなるような緩和時間を有する誘電体を用いることにより、素子の共振周波数とωτ=1となる周波数をずらし、共振周波数での誘電損失の影響を少なくする。
ε″(ωCτC)≦ε″(ωτ=1)/5
(9)式より、
ωCτC/(1+ωC 2τC 2)≦1/10
よって、ωCτC≧10、すなわちτC≧10√(LkεC)が得られる(εCは共振周波数での誘電率)。ここで、共振点での誘電率εCはεHに近似しているので、上式にεHを代入すると、(10)式が得られる。
誘電体として、有機高分子化合物を使用した場合をさらに詳述すると、有機高分子化合物には、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなどが挙げられる。これらのあるいはその他の有機高分子化合物は分子量が大きく、また、その分子単位を調整することも容易なため、誘電分散の生じる周波数を自由に調整することができる。
図4は、実施例1に係るセラミックコンデンサの斜視図である。上部電極42と下部電極43の間に誘電体41があり、コンデンサを形成している。この際、誘電体の厚みtは幅wや奥行きdにくらべ十分に小さいものとし、誘電体のふちの影響は十分に小さいものとすると、コンデンサの定数であるkはk=wd/tで求められる。ここで、幅wが300μm、奥行きdが300μm、厚みtが5μmとすると、k=0.018となる。
誘電体41に炭化珪素SiCを用いる場合、誘電緩和前の比誘電率εrLは99.9であり、誘電緩和後の比誘電率εrHは13.1となる。したがって、εLとεHはそれぞれ真空の誘電率ε0をかけたεL=0.885×10−9、εH=0.116×10-9となる。このとき、誘電緩和前の誘電率を元に、端子44、45を含め、3次元の電磁界シミュレータによる解析で寄生インダクタンスLを求めると、0.26nHとなった。
42 上部電極
43 下部電極
44 上部電極用端子
45 下部電極用端子
61 誘電体
62 第1の電極
63 第2の電極
64 第1の端子
65 第2の端子
Claims (7)
- 一対の電極と、該一対の電極に挟まれた誘電体とを有するコンデンサ素子において、前記誘電体の配向分極が消失する周波数が、自己共振周波数より低く設定されていることを特徴とするコンデンサ素子。
- 一対の電極と、該一対の電極に挟まれた誘電体とを有するコンデンサ素子の製造方法であって、
(1)電極および端子を含めたコンデンサ素子の形状を決定する過程と、
(2)決定されたコンデンサ素子の形状から、コンデンサ素子のキャパシタンスと誘電体の誘電率との比であるコンデンサ定数kと、コンデンサ素子の寄生インダクタンスLとを求める過程と、
(3)前記誘電体の配向分極が消失する周波数が、自己共振周波数より低くなる誘電体を選定する過程と、
(4)前過程で選定された誘電体を用いてコンデンサ素子を作製する過程と、
を有することを特徴とするコンデンサ素子の製造方法。 - 一対の電極と、該一対の電極に挟まれた誘電体とを有するコンデンサ素子の製造方法であって、
(1)電極および端子を含めたコンデンサ素子の形状を決定する過程と、
(2)決定されたコンデンサ素子の形状から、コンデンサ素子のキャパシタンスと誘電体の誘電率との比であるコンデンサ定数kと、コンデンサ素子の寄生インダクタンスLとを求める過程と、
(3)誘電体の配向分極が消失する周波数より十分低いおよび十分高い周波数における誘電体の誘電率をそれぞれεL、εHとして、緩和時間τCが、
(4)前過程で選定された誘電体を用いてコンデンサ素子を作製する過程と、
を有することを特徴とするコンデンサ素子の製造方法。
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