JP2008106224A - 窒素含有合金、及びそれを使用した蛍光体の製造方法 - Google Patents

窒素含有合金、及びそれを使用した蛍光体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高特性、特に高輝度な蛍光体を工業的に生産することができる蛍光体の製造方法を提供する。この蛍光体の製造方法に用いることのできる、窒素含有合金を提供する。
【解決手段】蛍光体原料を窒素含有雰囲気下で加熱する工程を有する蛍光体の製造方法であって、蛍光体原料の一部又は全部として、蛍光体を構成する金属元素を2種以上有する合金を使用し、かつ、前記加熱工程において1分間当たりの温度変化が50℃以内となる条件下で加熱する蛍光体の製造方法。原料の一部又は全部として蛍光体原料用合金を用いて蛍光体を製造する際の加熱処理中の急激な窒化反応の進行を抑制することができ、よって、高特性、特に高輝度な蛍光体を工業的に生産することが可能となる。
【選択図】図1

Description

本発明は、窒化物又は酸窒化物を母体とする蛍光体の製造原料としての窒素含有合金と、この窒素含有合金を原料とした窒化物又は酸窒化物を母体とする蛍光体の製造方法に関する。
蛍光体は、蛍光灯、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、陰極線管(CRT)、白色発光ダイオード(LED)などに用いられている。これらのいずれの用途においても、蛍光体を発光させるためには、蛍光体を励起するためのエネルギーを蛍光体に供給する必要があり、蛍光体は真空紫外線、紫外線、可視光線、電子線などの高いエネルギーを有する励起源により励起されて、紫外線、可視光線、赤外線を発する。しかしながら、蛍光体は前記のような励起源に長時間曝されると、蛍光体の輝度が低下するという問題があった。
そこで、近年、従来のケイ酸塩蛍光体、リン酸塩蛍光体、アルミン酸塩蛍光体、ホウ酸塩蛍光体、硫化物蛍光体、酸硫化物蛍光体などの蛍光体に代わり、三元系以上の窒化物について多くの新規物質が合成されている。近年、特に窒化珪素をベースとした多成分窒化物や酸窒化物において優れた特性を有する蛍光体が開発されている。
特許文献1に、一般式MSi:Eu[ここで、MはCa、Sr、及びBaからなる群から選択される少なくとも一種のアルカリ土類金属元素であり、かつ、x、y、及びzはz=2/3x+4/3yを満たす数である。]で表される蛍光体が開示されている。これらの蛍光体は、アルカリ土類金属を窒化することによりアルカリ土類金属の窒化物を合成し、これに窒化珪素を加えて合成するか、あるいは、アルカリ土類金属及び珪素のイミドを原料として窒素又はアルゴン気流中で加熱することにより合成されている。いずれも空気や水分に敏感なアルカリ土類金属窒化物を原料として使用しなくてはならず、工業的な製造には問題があった。
また、特許文献2に、一般式M16Si1532:Euで表されるオキシニトリド、一般式MSiAl:Eu、M13Si18Al121836:Eu、MSiAlON:Eu及びMSiAlON10:Euで表されるサイアロン構造を有する酸窒化物蛍光体が開示されている。特に、MがSrの場合に、SrCOとAlNとSiとを1:2:1の割合で混合し、還元雰囲気(水素含有窒素雰囲気)中で加熱したところ、SrSiAl:Eu2+が得られたことが記載されている。
この場合、得られる蛍光体は、酸窒化物蛍光体のみであり、酸素を含まない窒化物蛍光体は得られていない。
また、上記窒化物又は酸窒化物蛍光体は、使用される原料粉末の反応性がいずれも低いことから、焼成時に原料混合粉末の間の固相反応を促進する目的で原料粉末間の接触面積を大きくして加熱する必要がある。そのため、これらの蛍光体は、高温において圧縮成形した状態、すなわち非常に硬い焼結体の状態で合成される。よって、この様にして得られた焼結体は、蛍光体の使用目的に適した微粉末状態まで粉砕する必要がある。ところが、硬い焼結体となっている蛍光体を通常の機械的粉砕方法、例えばジョークラッシャーやボールミルなどを使用して長時間に渡り多大なエネルギーをかけて粉砕すると、蛍光体の母体結晶中に多数の欠陥を発生させ、蛍光体の発光強度を著しく低下させてしまうという不都合が生じていた。
また、窒化物又は酸窒化物蛍光体の製造において、窒化カルシウム(Ca)、窒化ストロンチウム(Sr)などのアルカリ土類金属窒化物を使用することが好ましいとされているが、一般に2価の金属の窒化物は水分と反応して水酸化物を生成しやすく、水分含有雰囲気下で不安定である。特に、SrやSr金属の粉末の場合はこの傾向が著しく、取り扱いが非常に難しい。
以上の理由から、新たな蛍光体原料及びその製造方法が求められていた。
近年、金属を出発原料とした窒化物蛍光体の製造方法に関し、特許文献3が報告された。特許文献3には窒化アルミニウム系蛍光体の製造方法の一例が開示され、原料として、遷移元素、希土類元素、アルミニウム及びその合金が使用できる旨が記載されている。しかし、実際に合金を原料として用いた実施例は記載されておらず、Al源としてAl金属を用いることを特徴としている。また、原料に着火し、瞬時に高温(3000K)まで上昇させる燃焼合成法を用いる点で、本発明と大きく異なり、この方法で高特性の蛍光体を得ることは困難であると推測される。即ち、瞬時に3000Kという高温まで昇温させる方法では付活元素を均一に分布させることは難しく、特性の高い蛍光体を得ることは困難である。また、合金原料から得られるアルカリ土類金属元素を含む窒化物蛍光体、更に珪素を含む窒化物蛍光体に関する記載は無い。
そこで、本発明の一部の発明者は、蛍光体を構成する金属元素を2種以上含有する合金を窒素含有雰囲気下で加熱することにより蛍光体を製造する方法を発明し、先に特許出願を行っている(特許文献4)。
特表2003−515665号公報 特開2003−206481号公報 特開2005−54182号公報 特願2006−086850
本発明者等が検討した結果、合金を原料として窒化物又は酸窒化物を母体とする蛍光体を製造する場合において、加熱時に窒化反応が急速に進み、発生した熱によって原料の溶融や分相、あるいは窒化物の分解が起こり、蛍光体の特性が低下する場合があることがわかった。特に、生産性を上げるために一度に大量の原料を加熱処理したり、原料の充填密度を上げたりすると、場合によっては蛍光体が得られない場合があることがわかった。
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、高特性、特に高輝度な蛍光体を工業的に生産することができる蛍光体の製造方法を提供することである。また、本発明の目的は、この蛍光体の製造方法により得られる蛍光体、及びこの蛍光体を用いた蛍光体含有組成物及び発光装置と、この発光装置を用いた画像表示装置及び照明装置を提供することである。
また、前記の蛍光体の製造方法に用いることのできる、窒素含有合金を提供することも目的とする。
本発明者等は、上述の課題に鑑み、蛍光体の製造方法について鋭意検討した結果、原料の全部又は一部として、蛍光体を構成する金属元素を2種以上含有する合金(以下、「蛍光体原料用合金」と称する場合がある。)を用いて蛍光体を製造する際に、蛍光体原料を加熱する工程において、加熱処理中の温度変化を一定の範囲以下に制御すると一度に加熱することのできる量を増やすことができることを見出した。
即ち、本発明は以下の(1)〜(27)を要旨とするものである。
(1) 蛍光体原料を窒素含有雰囲気下で加熱する工程を有する蛍光体の製造方法であって、蛍光体原料の一部又は全部として、蛍光体を構成する金属元素を2種以上有する合金(以下、「蛍光体原料用合金」と称す。)を使用し、かつ、下記1)を満たすことを特徴とする蛍光体の製造方法。
1)前記蛍光体原料用合金の一部又は全部が、全金属元素含有率が97重量%以下で
ある窒素含有合金である
(2) 前記加熱工程において、前記蛍光体原料用合金の融点より100℃低い温度から該融点より30℃低い温度までの温度域における1分間当たりの温度変化が50℃以内となる条件下で加熱することを特徴とする(1)に記載の蛍光体の製造方法。
(3) 下記2)〜4)のいずれか一つを満たすことを特徴とする(1)又は(2)に記載の蛍光体の製造方法。
2)前記蛍光体原料用合金の融点より100℃低い温度から該融点より30℃低い温度
までの温度域における昇温速度を9℃/分以下とする
3)前記蛍光体原料として、前記蛍光体原料用合金と共に、前記蛍光体を構成する金属
元素を1種又は2種以上含有する窒化物又は酸窒化物を用いる
4)前記蛍光体原料用合金として、安息角が45度以下である蛍光体原料用合金粉末を
用いる
(4) 前記加熱工程において、前記蛍光体原料を焼成容器内で加熱する方法であって、下記式[A]で表される、焼成容器の質量に対する蛍光体原料の質量の割合が0.1以上であることを特徴とする(1)ないし(3)のいずれかに記載の蛍光体の製造方法。
(蛍光体原料の質量)/{(焼成容器の質量)+(蛍光体原料の質量)} …[A]
(5) 前記窒素含有合金の窒素含有率が0.8重量%以上、27重量%以下であることを特徴とする(1)ないし(4)のいずれかに記載の蛍光体の製造方法。
(6) 前記蛍光体原料用合金を、窒素含有雰囲気下で加熱することにより前記窒素含有合金を製造する工程(以下「一次窒化工程」と称す。)を有することを特徴とする(1)ないし(5)のいずれかに記載の蛍光体の製造方法。
(7) 前記窒素含有合金が下記式[7]を満足することを特徴とする(1)ないし(6)のいずれかに記載の蛍光体の製造方法。
0.03≦NI/NP≦0.9 …[7]
(式[7]において、
NIは、窒素含有合金の窒素含有率(重量%)を表し、
NPは、製造される蛍光体の窒素含有率(重量%)を表す。)
(8) 前記窒素含有合金を蛍光体原料の一部又は全部として、窒素含有雰囲気下で加熱する工程(以下「二次窒化工程」と称す。)が、該窒素含有合金の融点より300℃以上高い温度で加熱する工程であることを特徴とする(1)ないし(7)のいずれかに記載の蛍光体の製造方法。
(9) 前記二次窒化工程に先立ち、前記窒素含有合金を該窒素含有合金の融点より100℃以上低い温度まで冷却する工程を有することを特徴とする(1)ないし(8)のいずれかに記載の蛍光体の製造方法。
(10) 前記二次窒化工程に先立ち、前記窒素含有合金を粉砕する工程を有することを特徴とする(1)ないし(9)のいずれかに記載の蛍光体の製造方法。
(11) 蛍光体原料を窒素含有雰囲気下で加熱する工程を有する蛍光体の製造方法であって、蛍光体原料の一部又は全部として、蛍光体原料用合金を使用し、かつ、前記蛍光体原料用合金の一部又は全部が、窒素含有率が10重量%以上である窒素含有合金であることを特徴とする蛍光体の製造方法。
(12) 蛍光体原料を窒素含有雰囲気下で加熱する工程を有する蛍光体の製造方法であって、蛍光体原料の一部又は全部として、蛍光体を構成する金属元素を2種以上有する合金(以下、「蛍光体原料用合金」と称す。)を使用し、かつ、前記加熱工程において、前記蛍光体原料用合金の融点より100℃低い温度から該融点より30℃低い温度までの温度域における1分間当たりの温度変化が50℃以内となる条件下で加熱することを特徴とする蛍光体の製造方法。
(13) 前記蛍光体が、少なくともSiを含む4価の金属元素Mと、Si以外の金属元素の1種以上とを含むことを特徴とする(1)ないし(12)のいずれかに記載の蛍光体の製造方法。
(14) 前記蛍光体が、付活元素Mと、2価の金属元素Mと、少なくともSiを含む4価の金属元素Mとを含むことを特徴とする(13)に記載の蛍光体の製造方法。
(15) 前記蛍光体が、2価の金属元素Mとしてアルカリ土類金属元素を含むことを特徴とする(14)に記載の蛍光体の製造方法。
(16) 前記蛍光体が、さらに3価の金属元素Mを含むことを特徴とする(13)ないし(15)のいずれかに記載の蛍光体の製造方法。
(17) 窒化物又は酸窒化物を母体とする蛍光体の製造原料としての合金であって、該合金が少なくとも1種の金属元素と、少なくとも1種の付活元素Mとを含有し、全金属元素含有率が97重量%以下であり、窒素を含有することを特徴とする窒素含有合金。
(18) 窒素含有率が0.8重量%以上、27重量%以下であることを特徴とする(17)に記載の窒素含有合金。
(19) 下記式[7]を満足することを特徴とする(17)又は(18)に記載の窒素含有合金。
0.03≦NI/NP≦0.9 …[7]
(式[7]において、
NIは、窒素含有合金の窒素含有率(重量%)を表し、
NPは、窒化物又は酸窒化物を母体とする蛍光体の窒素含有率(重量%)を表す。)
(20) 少なくともSiを含む4価の金属元素Mと、Si以外の金属元素の1種類以上とを含むことを特徴とする(17)ないし(19)のいずれかに記載の窒素含有合金。
(21) 付活元素M、2価の金属元素M、及び少なくともSiを含む4価の金属元素Mを含むことを特徴とする(20)に記載の窒素含有合金。
(22) 2価の金属元素Mとしてアルカリ土類金属元素を含むことを特徴とする(21)に記載の窒素含有合金。
(23) 更に3価の金属元素Mを含むことを特徴とする(21)又は(22)に記載の窒素含有合金。
(24) 付活元素MがCr、Mn、Fe、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbからなる群から選ばれる1種以上の元素であることを特徴とする(17)ないし(23)のいずれかに記載の窒素含有合金。
(25) 2価の金属元素MがMg、Ca、Sr、Ba、及びZnからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、3価の金属元素MがAl、Ga、In、及びScからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、少なくともSiを含む4価の金属元素MがSi、Ge、Sn、Ti、Zr、及びHfからなる群から選ばれる1種以上の元素であることを特徴とする(23)又は(24)に記載の窒素含有合金。
(26) 2価の金属元素Mの50モル%以上がCa及び/又はSrであり、3価の金属元素Mの50モル%以上がAlであり、少なくともSiを含む4価の金属元素Mの50モル%以上がSiであることを特徴とする(25)に記載の窒素含有合金。
(27) 付活元素MとしてEuを、2価の金属元素MとしてCa及び/又はSrを、3価の金属元素MとしてAlを、少なくともSiを含む4価の金属元素MとしてSiを含むことを特徴とする(25)又は(26)に記載の窒素含有合金。
本発明によれば、原料の一部又は全部として蛍光体原料用合金を用いて蛍光体を製造する際の加熱工程における急激な窒化反応の進行を抑制することができ、よって、高特性、特に高輝度な蛍光体を工業的に生産することが可能となる。
また、本発明によれば、蛍光体原料として優れている、窒素含有合金を提供することも可能となる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、合金とは2種以上の金属の固溶体、共晶、金属間化合物、及びこれらが共存するものも含むものとし、非金属元素を含んでいてもよいものとする。
[蛍光体の製造方法]
本発明の蛍光体の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」と称する場合がある。)は、蛍光体原料を窒素含有雰囲気下で加熱する工程を有する蛍光体の製造方法であって、蛍光体原料の一部又は全部として、蛍光体を構成する金属元素を2種以上有する合金(以下、「蛍光体原料用合金」と称す。)を使用するものである。
窒化反応は、発熱反応であるため、前記加熱工程において一度に大量の蛍光体原料を加熱により窒化しようとすると、急激な発熱を伴う暴走反応が起こり、その発熱により、蛍光体原料の構成元素の一部が揮発したり、蛍光体原料用合金の粒子同士が融着したりすることが多く、得られる蛍光体の発光特性が低下する場合や、蛍光体が得られない場合がある。そこで、本発明の製造方法のように、加熱工程における温度変化の範囲を調整すると、一度に処理する蛍光体原料の量を増やしても急激な窒化反応の進行を抑制することができ、高特性な蛍光体を工業的に生産することが可能となる。
本発明の製造方法においては、前記加熱工程において、特定の温度域における蛍光体原料を充填する焼成容器外壁の温度変化が小さいこと(即ち、急激な発熱反応が起きていないことを意味する。)が重要である。上記の特定の温度域とは、通常、前記蛍光体原料用合金の融点より100℃低い温度から該融点より30℃低い温度までの温度域であり、好ましくは該融点より150℃低い温度以上、より好ましくは該融点より200℃低い温度以上、また、好ましくは該融点以下、より好ましくは該融点より100℃高い温度以下までの温度域である。
本発明の製造方法の前記加熱工程における1分間当たりの温度変化の範囲としては、通常50℃以内、好ましくは30℃以内、より好ましくは20℃以内、更に好ましくは、10℃以内である。前記加熱工程における温度変化が大き過ぎると、蛍光体の発光特性が低下する傾向にあり、場合によっては、蛍光体が得られないこともある。前記加熱工程における1分間当たりの温度変化の範囲の下限に特に制限はないが、生産性の観点から、通常、0.1℃以上である。但し、前記加熱工程において、温度が下がることがあってもよく、上記の「前記加熱工程における1分間当たりの温度変化」の数値は、絶対値を示すものとする。
また、上記の「前記加熱工程における1分間当たりの温度変化」は、焼成容器の外側の壁の温度(ただし、蛍光体原料を充填した高さの、1/2の高さ付近の位置に温度計を設置するものとする。以下、この温度を「焼成容器の側壁温度」と称する場合がある。)を、一定時間間隔でタングステン−レニウム合金熱電対、白金熱電対、ロジウム−白金熱電対等や放射温度計を用いて測定し、この測定値から1分間当たりの温度変化を、下記式[B]より求めた値である。
温度変化(℃/分)
= 時刻T分での温度 − 時刻(T−1)分での温度 …[B]
前記式[B]で表される温度変化がノイズでないことを確認するため、ある程度以下の間隔で温度をモニターすることが好ましい。具体的には、温度の測定間隔を、通常30秒以下、好ましくは20秒以下、より好ましくは10秒以下とする。尚、温度の測定間隔の下限としては、通常1秒以上である。
また、前記式[B]では、1分間当たりの温度変化について規定しているが、温度の測定間隔に特に制限はなく、例えば、10分間当たりの温度変化の範囲としては、通常100℃以内、好ましくは80℃以内、より好ましくは50℃以内である。10分間当たりの温度変化の範囲の下限に特に制限はないが、通常0.5℃以上である。
なお、この焼成容器の側壁温度は、加熱工程中、急激な発熱が起こらない場合には、炉内温度とほぼ一致する。従って、前記式[B]の値が炉内温度の変化等より大きくなる場合、通常、急激な発熱反応が起きていることを意味する。
本発明の製造方法としては、上述の条件を満たしていれば特に制限はないが、前記加熱工程における温度変化を調整する方法について以下に説明する。
窒化反応によって生じる一定時間当たりの発熱量を減らすと(即ち、急激な窒化反応の進行を抑制すると)、前記加熱工程における温度変化を上述の範囲に調整することができる。具体的には、下記1)〜4)の方法が挙げられ、本発明の製造方法としては、下記1)〜4)のうちのいずれか一つ以上を満たすことが好ましく、特に、少なくとも1)を満たすことが好ましい。
なお、下記1)〜4)の詳細については、後述する。
1)前記蛍光体原料用合金の一部又は全部が、全金属元素含有率が97重量%以下で
ある窒素含有合金である
2)前記蛍光体原料用合金の融点より100℃低い温度から該融点より30℃低い温度
までの温度域における昇温速度を9℃/分以下とする
3)前記蛍光体原料として、前記蛍光体原料用合金と共に、前記蛍光体を構成する金属
元素を1種又は2種以上含有する窒化物又は酸窒化物を用いる
4)前記蛍光体原料用合金として、安息角が45度以下である蛍光体原料用合金粉末を
用いる
本発明の製造方法は、必要に応じて、上記1)〜4)のうちのいずれか2つ以上を満たしていてもよい。これにより、一定時間当たりの発熱量をさらに減少させることができる。上記1)を満たす場合には、上記1)に加えて、上記2)〜4)のうちのいずれか1つ以上を満たしていてもよく、中でも、上記1)及び上記2)、又は、上記1)及び上記3)を満たすことが好ましい。あるいは、上記2)及び上記3)を満たすことが好ましい。蛍光体原料用合金の組成や形状、焼成装置、焼成雰囲気、焼成温度等のその他の条件によって、上記1)〜4)により得られる効果の程度が異なる場合があるので、上記1)〜4)の選択を適宜調整することが好ましい。
なお、一度に処理する蛍光体原料の量を増やし、かつ得られる蛍光体の発光特性を向上させるためには、上記1)〜4)を満たすことが好ましいが、下記式[A]で表される、蛍光体原料の焼成に用いる焼成容器の質量に対する蛍光体原料の質量の割合を適切な値に調整することにより、上記1)〜4)を満たさなくとも、前記加熱工程における1分間当たりの温度変化の範囲を、50℃以内となるようにしてもよい。また、上記1)〜4)のうちのいずれか一つを満たすことに加えて下記式[A]の値を調整することにより、前記加熱工程における1分間当たりの温度変化を調整してもよい。
(蛍光体原料の質量)/{(焼成容器の質量)+(蛍光体原料の質量)} …[A]
即ち、焼成容器は、蛍光体原料から発せられる熱を吸収する機能を有するため、焼成容器の質量と、蛍光体原料の質量との合計に対する、蛍光体原料の質量の比を小さくすると、加熱工程における急激な発熱反応の進行を抑制することができる傾向にある。
本発明の製造方法が、上記1)〜4)をいずれも満たさない場合の、好ましい前記式[A]の値としては、用いる蛍光体原料用合金の組成や形状(特に、合金粉末の粒径)、あるいは、窒素含有合金の全金属元素含有率や、その他の製造条件等によっても異なるが、通常、0.01以上、好ましくは0.05以上、また、通常0.5以下、好ましくは0.2以下である。
本発明の製造方法が上記1)〜4)のうちいずれか1つ以上を満たす場合は、上記1)〜4)をいずれも満たさない場合と比較して、前記式[A]の値が大きい場合でも高特性の蛍光体を得ることができる。具体的な数値範囲は以下の通りである。
本発明の製造方法が上記1)を満たす場合は、前記式[A]の値を、通常0.3以上、中でも0.4以上、また、通常0.95以下、中でも0.8以下の範囲とすることが、得られる蛍光体の特性、及び生産性の観点から好ましい。
また、本発明の製造方法が上記1)及び上記2)を満たす場合は、前記式[A]の値を、通常0.35以上、中でも0.45以上、また、通常0.95以下、中でも0.8以下の範囲とすることが、得られる蛍光体の特性、及び生産性の観点から好ましい。
また、本発明の製造方法が上記1)及び上記3)を満たす場合は、前記式[A]の値を、通常0.35以上、中でも0.45以上、また、通常0.6以下、中でも0.4以下の範囲とすることが、得られる蛍光体の特性、及び生産性の観点から好ましい。
また、本発明の製造方法が上記1)及び上記4)を満たす場合は、前記式[A]の値を、通常 0.1以上、中でも0.2以上、また、通常0.8以下、中でも0.6以下の範囲とすることが、得られる蛍光体の特性、及び生産性の観点から好ましい。
製造コストを低下させるためには、一度に処理できる蛍光体原料の量を増やすことが好ましい。従って、本発明の製造方法を工業的に実施する場合は、前記式[A]の値を0.24以上、好ましくは0.4以上とした上で、高特性の蛍光体が得られるように製造条件を調整することが好ましい。
なお、前記式[A]では、蛍光体原料と焼成容器との量比を便宜上、質量を用いて表したが、より正確に記載すると、前記式[A]で規定される値は、下記式[A']のように、質量と比熱の積(即ち、熱容量)で表される。
蛍光体原料の質量(g)×比熱/
{(焼成容器の質量(g)×比熱)+(蛍光体原料の質量(g)×比熱)} …[A']
ここで、例えば、実施例1で用いた蛍光体原料用合金(Eu0.008Sr0.792Ca0.2AlSi)の比熱は0.71J/K/gであり、窒化ホウ素(焼成容器の材質)の比熱は2.9J/K/gであり、モリブデンの比熱は0.26J/K/gであり、アルミナの比熱は0.6J/K/g、窒化アルミニウムの比熱は1.2J/K/gである。
蛍光体原料の組成によって、さらには、蛍光体原料として後述する窒素含有合金や、窒化物及び/又は酸窒化物を用いることによって、蛍光体原料の比熱が異なってくることから、好ましい前記式[A']の値も変動するが、前記式[A']の値は、通常0.05以上、中でも0.1以上、また、通常0.9以下、中でも0.75以下とすることが好ましい。
従って、焼成容器による吸熱量を大きくするために、焼成容器として、熱伝導度が高いか、あるいは、比熱が大きい材質のものを用いることが好ましい。具体的には、窒化ホウ素製、モリブデン製、アルミナ製等の焼成容器を用いることが好ましく、中でも、窒化ホウ素製の焼成容器を用いることが特に好ましい。
なお、一度に処理する蛍光体原料の量をさらに増やしたい場合は、焼成装置内や焼成容器内の熱の蓄積量を出来る限り減らす工夫を行うとよい。例えば、焼成容器と焼成容器の間隔を調整して放熱性を向上させたり、焼成容器付近に冷却装置を設けたり、表面積の広い焼成容器を用いたり、焼成炉内に入れる焼成容器の数量を調整したりすることにより、熱の蓄積量を調整することができる。
また、本発明の製造方法を工業的に実施する場合、焼成装置の処理室容積に対する、蛍光体原料の体積の比(以下、「蛍光体原料の焼成容器内充填率」と称する。)が生産性の観点から重要である。焼成装置の処理室容積に対する、蛍光体原料の体積の比の具体的範囲としては、通常8%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上、また、通常80%以下、好ましくは60%以下、より好ましくは40%以下である。蛍光体原料の焼成容器内充填率がこの範囲より低い場合は、通常、上記1)〜4)の何れか1つ以上を満たさない場合であっても、本発明に従って、蛍光体を容易に製造することが出来るが、生産性が低い傾向にある。一方、蛍光体原料の焼成容器内充填率がこの範囲より高いと、焼成装置の劣化が早まる可能性がある。
以下に、本発明の製造方法の各工程について詳細に説明する。
上記1)〜4)についても併せて詳細に説明する。
本発明の蛍光体の製造方法では、以下の工程を経て本発明の蛍光体を製造する。
即ち、まず、原料となる金属やその合金を秤量する(原料秤量工程)。そして、これらの原料を融解させて(融解工程)合金化して蛍光体原料用合金を製造する。その後、蛍光体原料用合金を窒素含有雰囲気下で加熱することにより窒化を行なう(加熱工程。また、適宜、「二次窒化工程」ともいう。)。また、これらの工程に加え、必要に応じて鋳造工程、粉砕工程、分級工程、一次窒化工程、冷却工程などを行なってもよい。
なお、蛍光体原料用合金としては、目的とする組成の蛍光体が得られればよく、1種又は2種以上の蛍光体原料用合金を用いることができる。
上記1)を満たすためには、一次窒化工程を行なうか、二次窒化工程において後述の窒素含有合金を加えればよい。
上記2)を満たすためには、二次窒化工程における昇温速度を調整すればよい。
上記3)を満たすためには、二次窒化工程において後述の酸化物又は酸窒化物を混合すればよい。
上記4)を満たすためには、粉砕工程において、後述の(a)〜(c)の工程を有する方法(例えば、ガスアトマイズ法)を採用することにより、安息角が45度以下である蛍光体原料用合金粉末を得るか、二次窒化工程において安息角が45度以下である蛍光体原料用合金粉末を用いて行えばよい。
[I]蛍光体原料用合金の製造
{原料の秤量}
本発明の蛍光体の製造方法を用いて、例えば、後掲の一般式[1]で表される組成を有する蛍光体を製造する場合、下記一般式[3]の組成となるように、原料となる金属やその合金(以下、単に「原料金属」と言う場合がある。)を秤量して蛍光体原料用合金を製造することが好ましい。
…[3]
(但し、M、M、M、M、a、b、c、dはそれぞれ後掲の一般式[1]におけると同義である。)
原料としては、金属、当該金属の合金などを用いることができる。また、本発明の蛍光体が含む元素に対応した原料は、それぞれ、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。ただし、原料の中でも、付活元素Mの原料として使用するEu原料やCe原料としては、Eu金属やCe金属を使用することが好ましい。これは原料の入手が容易であるからである。
合金の製造に使用される金属の純度は、高いことが好ましい。具体的には、合成される蛍光体の発光特性の点から、付活元素Mの金属原料としては不純物が0.1モル%以下、好ましくは0.01モル%以下まで精製された金属を使用することが好ましい。付活元素M以外の元素の原料としては、2価、3価、4価の各種金属等を使用する。付活元素Mと同様の理由から、いずれも含有される不純物濃度は0.1モル%以下であることが好ましく、0.01モル%以下であることがより好ましい。例えば、不純物としてFe、Ni、及びCoからなる群から選ばれる少なくとも一種を含有する場合、各々の元素の含有量は、通常500ppm以下、好ましくは100ppm以下である。
原料金属の形状に制限は無いが、通常、直径数mmから数十mmの粒状又は塊状のものが用いられる。なお、ここでは直径10mm以上のものを塊状、それ未満のものを粒状と呼んでいる。
2価の金属元素Mとしてアルカリ土類金属元素を用いる場合、その原料としては、粒状、塊状など形状は問わないが、原料の化学的性質に応じて適切な形状を選択することが好ましい。例えば、Caは粒状、塊状のいずれでも大気中で安定であり、使用可能であるが、Srは化学的により活性であるため、塊状の原料を用いることが好ましい。
なお、融解時に揮発やルツボ材質との反応等により損失する金属元素については、必要に応じて、予め過剰に秤量し添加してもよい。
{原料の融解}
原料の秤量後、当該原料を融解させて合金化して蛍光体原料用合金を製造する(融解工程)。得られる蛍光体原料用合金は、本発明で製造される蛍光体(以下「本発明の蛍光体」と称する場合がある。)を構成する金属元素を2種以上含有するものである。なお、本発明の蛍光体を構成する金属元素を1つの蛍光体原料用合金が全て含有していなくても、後述の一次窒化工程又は二次窒化工程において、2種以上の合金及び/又は金属を併用することにより、本発明の蛍光体を製造することができる。
原料金属を融解する方法に特に制限はなく、任意の方法を採用することができる。例えば、抵抗加熱法、電子ビーム法、アーク融解法、高周波誘導加熱法(以下、「高周波融解法」と称する場合がある。)等を用いることができる。また、これらの方法を2種以上任意に組み合わせて融解することも可能である。
また、融解時に用いることのできるルツボの材質としては、アルミナ、カルシア、黒鉛、モリブデン等が挙げられる。
ただし、特に、Siと2価の金属元素Mとしてアルカリ土類金属元素を含む蛍光体原料用合金を製造する場合、次の点に留意することが好ましい。
即ち、Siの融点は1410℃であり、アルカリ土類金属の沸点と同程度である(例えば、Caの沸点は1494℃、Srの沸点は1350℃、Baの沸点は1537℃である)。特に、Srの沸点がSiの融点より低いため、SrとSiを同時に融解させることは極めて困難である。
そこで、本発明では、Siの原料(即ち、Si及び/又はSiを含む合金)を先に融解させて、その後、アルカリ土類金属原料(即ち、アルカリ土類金属及び/又はアルカリ土類金属を含む合金)を融解することが好ましい。これにより、アルカリ土類金属の原料とSiの原料とをともに融解させることが可能である。さらに、このようにSiの原料を融解した後でアルカリ土類金属の原料を融解することにより、得られる蛍光体原料用合金の純度が向上し、それを原料とする蛍光体の特性が著しく向上するという効果も奏される。
以下、このようにSiとアルカリ土類金属元素とを含む蛍光体原料用合金を製造する場合について詳しく説明する。
Siとアルカリ土類金属元素とを含む蛍光体原料用合金を製造する場合、融解法に制限は無く、前記の融解法を任意に採用できるが、中でも、アーク融解法、高周波融解法が好ましく、高周波融解法が特に好ましい。以下、(1)アーク融解・電子ビーム融解の場合、(2)高周波融解の場合を例に更に詳しく説明する。
(1)アーク融解法・電子ビーム融解法の場合
アーク融解・電子ビーム融解の場合は、以下の手順で融解を行う。
i)Si金属又はSiを含む合金を電子ビームあるいはアーク放電により融解する。
ii)次いで間接加熱によりアルカリ土類金属を融解し、Siとアルカリ土類金属とを含む合金を得る。
ここで、Siを含む溶湯にアルカリ土類金属が溶け込んだ後、電子ビームあるいはアーク放電により加熱及び/又は攪拌して混合を促進しても良い。
(2)高周波融解法の場合
アルカリ土類金属元素を含む合金は酸素との反応性が高いため、大気中ではなく真空あるいは不活性ガス中で融解する必要がある。このような条件では通常、高周波融解法が好ましい。しかしながら、Siは半導体であり、高周波を用いた誘導加熱による融解が困難である。例えば、アルミニウムの20℃における比抵抗率は2.8×10−8Ω・mであるのに対し、半導体用多結晶Siの比抵抗率は10Ω・m以上である。このように比抵抗率が大きいものを直接高周波融解することは困難であるため、一般に導電性のサセプタを用い、熱伝導や放射によりSiに熱移動を行って融解する。
サセプタの形状に制限はなく、ディスク状、管状なども可能であるが坩堝を用いることが好ましい。
また、サセプタの材質は、原料の融解が可能であれば制限はなく、黒鉛、モリブデン、炭化珪素などが一般に用いられる。しかし、これらは、非常に高価であり、また、アルカリ土類金属と反応しやすいという問題点がある。一方、アルカリ土類金属を融解可能な坩堝(アルミナ、カルシアなど)は絶縁体であり、サセプタとして使用することが難しい。従って、アルカリ土類金属とSi金属とを坩堝に仕込んで高周波融解するにあたり、公知の導電性の坩堝(黒鉛など)をサセプタとして使用して、間接的な加熱によりSi金属とアルカリ土類金属とを同時に融解することは困難である。そこで、次のような順序で融解することで、この問題点を解決する。
i)Si金属を導電性の坩堝を使用して間接加熱により融解する。
ii)次に、絶縁性の坩堝を使用して、アルカリ土類金属を融解することにより、Siとアルカリ土類金属元素とを含む合金を得る。
上記i)、ii)の工程の間でSi金属を冷却しても良いし、冷却せず連続してアルカリ土類金属を融解しても良い。連続して行う場合には導電性の容器にアルカリ土類金属の融解に適したカルシア、アルミナなどで被覆した坩堝を使用することもできる。
更に具体的な工程を記述すると、以下の通りである。
i)Si金属と金属M(例えばAl、Ga)を導電性の坩堝を使用して間接加熱により融解し、導電性の合金(母合金)を得る。
ii)次いで、アルカリ土類金属耐性坩堝を使用して、i)の母合金を融解させた後、アルカリ土類金属を高周波により融解させることにより、Siとアルカリ土類金属元素とを含む合金を得る。
Si金属あるいはSiを含む母合金を先に融解させ、次いでアルカリ土類金属を融解させる具体的方法としては、例えば、Si金属あるいはSiを含む母合金を先に融解させ、そこにアルカリ土類金属を添加する方法等が挙げられる。
また、Siを2価の金属元素M以外の金属Mと合金化して導電性を付与することもできる。この場合、得られる合金の融点がSiより低いことが好ましい。SiとAlの合金は、融点が1010℃付近と、アルカリ土類金属元素の沸点より融点が低くなるので特に好ましい。
Siと2価の金属元素M以外の金属Mとの母合金を用いる場合、その組成には特に制限はないが、母合金が導電性を有していることが好ましい。この場合、Siと金属Mとの混合割合(モル比)は、Siのモル数を1とした場合に、金属Mが、通常0.01以上、5以下の範囲となるようにして、アルカリ土類金属元素の沸点よりも融点の低い母合金を製造することが好ましい。
なお、Siを含む母合金に、さらにSi金属を加えることもできる。
本発明において、Si金属を融解させた後にアルカリ土類金属を融解させること以外に、他の原料金属の融解時期には特に制限はないが、通常、量が多いもの、もしくは、融点が高いものを先に融解させる。
付活元素Mを均一に分散させるため、また、付活元素Mの添加量は少量であるため、Si金属を融解させた後に付活元素Mの原料金属を融解させることが好ましい。
前述の一般式[3]で表され、4価の金属元素MがSiであり、2価の金属元素Mとして少なくともSrを含む蛍光体原料用合金を製造する場合、次のような手順で融解させることが好ましい。
(1) Siと3価の金属元素Mとの母合金を製造する。この際、好ましくはSiと3
価の金属元素Mとは、一般式[3]におけるSi:M比で合金化する。
(2) (1)の母合金を融解させた後、Srを融解させる。
(3) その後、Sr以外の2価の金属元素、付活元素Mを融解させる。
ところで、いずれの原料を融解する場合でも、原料の融解時の具体的な温度条件及び融解させる時間は、用いる原料に応じて適切な温度及び時間を設定すればよい。
また、原料の融解時の雰囲気は蛍光体原料用合金が得られる限り任意であるが、不活性ガス雰囲気が好ましく、中でもアルゴン雰囲気が好ましい。なお、不活性ガスは1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
さらに、原料の融解時の圧力は蛍光体原料用合金が得られる限り任意であるが、1×10Pa以上が好ましく、1×10Pa以下が好ましい。更に、安全性の面から、大気圧以下で行なうことが望ましい。
{溶湯の鋳造}
原料の融解により蛍光体原料用合金が得られる。この蛍光体原料用合金は通常は合金溶湯として得られるが、この合金溶湯から直接蛍光体を製造するには技術的課題が多く存在する。そのため、この合金溶湯を金型に注入して成型する鋳造工程を経て、凝固体(以下適宜、「合金塊」という)を得ることが好ましい。
ただし、この鋳造工程において溶融金属の冷却速度によって偏析が生じ、溶融状態で均一組成であったものが組成分布に偏りが生じることもある。従って、冷却速度はできるだけ速いことが望ましい。また、金型は銅などの熱伝導性のよい材料を使用することが好ましく、熱が放散しやすい形状であることが好ましい。また、必要に応じて水冷などの手段により金型を冷却する工夫をすることも好ましい。
このような工夫により、例えば厚さに対して底面積の大きい金型を用い、溶湯を金型へ注湯後、できるだけ早く凝固させることが好ましい。
また、合金の組成によって偏析の程度は異なるので必要な分析手段、例えばICP発光分光分析法などによって、得られた凝固体の数箇所より試料を採取して組成分析を行い、偏析の防止に必要な冷却速度を定めることが好ましい。
なお、鋳造時の雰囲気は、不活性ガス雰囲気が好ましく、中でもアルゴン雰囲気が好ましい。この際、不活性ガスは1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
{合金塊の粉砕}
加熱工程に先立ち、蛍光体原料用合金は、所望の粒径の粉末状にすることが好ましい。そこで、鋳造工程で得られた合金塊は、次いで粉砕することにより(粉砕工程)、所望の粒径、粒度分布を有する蛍光体原料用合金粉末(以下、単に「合金粉末」と称する場合がある。)とすることが好ましい。
粉砕方法に特に制限はないが、例えば、乾式法や、エチレングリコール、ヘキサン、アセトン等の有機溶媒を用いる湿式法で行うことが可能である。
以下、乾式法を例に詳しく説明する。
この粉砕工程は、必要に応じて、粗粉砕工程、中粉砕工程、微粉砕工程等の複数の工程に分けてもよい。この場合、全粉砕工程を同じ装置を用いて粉砕することもできるが、工程によって使用する装置を変えてもよい。
ここで、粗粉砕工程とは、合金粉末のおおよそ90重量%が粒径1cm以下になるように粉砕する工程であり、ジョークラッシャー、ジャイレトリークラッシャー、クラッシングロール、インパクトクラッシャーなどの粉砕装置を使用することができる。中粉砕工程とは、合金粉末のおおよそ90重量%が粒径1mm以下になるように粉砕する工程であり、コーンクラッシャー、クラッシングロール、ハンマーミル、ディスクミルなどの粉砕装置を使用することができる。微粉砕工程とは、合金粉末が後述する重量メジアン径になるように粉砕する工程であり、ボールミル、チューブミル、ロッドミル、ローラーミル、スタンプミル、エッジランナー、振動ミル、ジェットミルなどの粉砕装置を使用することができる。
中でも、不純物の混入を防止する観点から、最終の粉砕工程においては、ジェットミルを使用することが好ましい。ジェットミルを用いるためには、粒径2mm以下程度になるまで予め合金塊を粉砕しておくことが好ましい。ジェットミルでは、主に、ノズル元圧から大気圧に噴射される流体の膨張エネルギーを利用して粒子の粉砕を行うため、粉砕圧力により粒径を制御すること、不純物の混入を防止することが可能である。粉砕圧力は、装置によっても異なるが、通常、ゲージ圧で0.01MPa以上、2MPa以下の範囲であり、中でも、0.05MPa以上、0.4MPa未満が好ましく、0.1MPa以上、0.3MPa以下がさらに好ましい。ゲージ圧が低すぎると得られる粒子の粒径が大きすぎる可能性があり、高すぎると得られる粒子の粒径が小さすぎる可能性がある。
さらに、いずれの場合も粉砕工程中に鉄等の不純物の混入が起こらないよう、粉砕機の材質と被粉砕物の関係を適切に選択する必要がある。例えば、接粉部は、セラミックライニングが施されていることが好ましく、セラミックの中でも、アルミナ、窒化ケイ素、タングステンカーバイド、ジルコニア等が好ましい。
また、合金粉末の酸化を防ぐため、粉砕工程は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスの種類に特に制限はないが、通常、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの気体のうち1種単独雰囲気又は2種以上の混合雰囲気を用いることができる。中でも、経済性の観点から窒素が特に好ましい。
さらに、雰囲気中の酸素濃度は合金粉末の酸化が防止できる限り制限はないが、通常10体積%以下、特に5体積%以下が好ましい。また、酸素濃度の下限としては、通常、10ppm程度である。特定の範囲の酸素濃度とすることによって、粉砕中に合金の表面に酸化被膜が形成され、安定化すると考えられる。酸素濃度が5体積%より高い雰囲気中で粉砕工程を行う場合、粉砕中に粉塵が爆発する可能性があるため、粉塵を生じさせないような設備を設けることが好ましい。
なお、粉砕工程中に合金粉末の温度が上がらないように必要に応じて冷却してもよい。
{合金粉末の分級}
上述したようにして得られた合金粉末は、例えば、バイブレーティングスクリーン、シフターなどの網目を使用した篩い分け装置;エアセパレータ等の慣性分級装置;サイクロン等の遠心分離機などを使用して、前述の所望の重量メジアン径D50及び粒度分布に調整(分級工程)してから、これ以降の工程に供することが好ましい。
なお、粒度分布の調整においては、粗粒子を分級し、粉砕機にリサイクルすることが好ましく、分級及び/又はリサイクルが連続的であることがさらに好ましい。
この分級工程についても、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスの種類に特に制限はないが、通常、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの1種単独雰囲気又は2種以上の混合雰囲気が用いられ、経済性の観点から窒素が特に好ましい。また、不活性ガス雰囲気中の酸素濃度は10体積%以下、特に5体積%以下が好ましい。
後述の一次窒化工程や二次窒化工程で用いる合金粉末は、当該合金粉末を構成する金属元素の活性度により粒径を調整する必要があり、その重量メジアン径D50は、通常の場合、100μm以下、好ましくは80μm以下、特に好ましくは60μm以下、また、0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、特に好ましくは1μm以上である。また、合金がSrを含有する場合は、雰囲気ガスとの反応性が高いため、合金粉末の重量メジアン径D50は、通常5μm以上、好ましくは8μm以上、より好ましくは10μm以上、特に好ましくは13μm以上とすることが望ましい。合金粉末の粒径が前述の重量メジアン径D50の範囲よりも小さいと、窒化等の反応時の発熱速度が上昇する傾向にあるので、反応の制御が困難となる場合や、また、合金粉末が大気中で酸化されやすくなるので、得られる蛍光体に酸素が取り込まれやすくなる等、取り扱いが難しくなる場合がある。一方で、合金粉末の粒径が前述の重量メジアン径D50の範囲よりも大きいと、合金粒子内部での窒化等の反応が不十分となる場合がある。
また、合金粉末中に含まれる、粒径10μm以下の合金粒子の割合は80重量%以下であることが好ましく、粒径45μm以上の合金粒子の割合は40重量%以下であることが好ましい。
また、QDの値は、特に制限はないが、通常0.59以下である。ここで、QDとは、積算値が25%及び75%の時の粒径値をそれぞれD25、D75と表記し、QD=(D75−D25)/(D75+D25)と定義する。QDの値が小さいことは粒度分布が狭いことを意味する。
[II]加熱工程
本発明においては、上述のようにして得られた蛍光体原料用合金(ここで、蛍光体原料用合金は、粉末状であっても塊状であってもよいが、前述の蛍光体原料用合金粉末であることが好ましい。)、及び/又は後述する窒素含有合金を窒素含有雰囲気中で加熱することにより窒化する。加熱工程では、後述の二次窒化工程を必須とし、必要に応じて下記の一次窒化工程を行う。
{一次窒化工程}
本発明の蛍光体を工業的に効率よく製造する観点から、上記1)を満たす製造方法としたい場合には、必要に応じて、二次窒化工程の前に一次窒化工程を行なう。この一次窒化工程は、合金粉末(但し、粒状、塊状の合金であってもよい。)を窒化することで、後述する窒素含有合金を製造する工程である。具体的には、窒素含有雰囲気下、所定の温度域で所定の時間、合金粉末を加熱することにより、予備的に窒化を行なう工程である。このような一次窒化工程の導入により、後述する二次窒化工程における合金と窒素との反応性を制御することができ、合金から蛍光体を工業的に生産することが可能となる。
合金粉末は、本工程において窒化されることにより、その材質が蛍光体原料用合金から窒素含有合金に変換され、その重量が増加する。本明細書において、この際の合金粉末の重量増加は、下記式[4]で表される重量増加率で表すものとする。
(一次窒化工程後の窒素含有合金の重量−一次窒化工程前の合金粉末の重量)
/一次窒化工程前の合金粉末の重量×100 …[4]
本工程では、窒素分圧、温度、加熱時間等の反応条件により窒化の程度を制御することができる。
後述する二次窒化工程の反応条件、合金粉末の組成等によっても異なるが、上記式[4]で求められる合金粉末の重量増加率が、通常0.5重量%以上、中でも1重量%以上、特に5重量%以上となるように反応条件を調整することが好ましい。また、重量増加率の上限に特に制限はないが、理論上、通常40重量%以下、好ましくは31重量%以下となる。合金粉末の重量増加率を上記の範囲内となるように調整するために、一次窒化工程を2回以上繰り返し行なうこともできる。一次窒化工程を繰り返して行なう場合、その回数に特に制限はないが、製造コストを考えると、通常3回以下、中でも2回以下が好ましい。
また、一次窒化工程は、連続方式でも回分方式でも行なうことができる。連続方式の場合と回分方式の場合とで好ましい反応条件が異なるため、以下、一次窒化工程の反応条件について、連続方式で行なう場合と回分方式で行なう場合に分けて説明する。
なお、生産性の観点から回分方式よりも連続方式で行なうことが好ましい。即ち、一次窒化工程を連続方式で行なう場合、回分方式と比較してより高濃度の窒素を流通させ、より高温、より短時間で加熱することが好ましい。
<連続方式の場合>
(装置の形式)
一次窒化工程を連続方式で行なう場合、例えば、ロータリーキルン、トンネル炉、ベルト炉、流動焼成炉等の装置を用いることが可能であり、中でも、ロータリーキルンを用いることが好ましい。
ロータリーキルン方式を用いる場合、窒素含有ガスを流通させた耐火性の円筒形炉心管を回転させながら合金粉末を加熱する。炉心管を傾斜させ、合金粉末を連続供給することにより、連続処理が可能となる。ロータリーキルンを用いると、加熱中に合金粉末を攪拌することができることから、合金粉末同士の融着を抑制し、気固の接触効率を向上させることが可能である。その結果、加熱時間の短縮、かつ、均一な窒化処理を実現することができる。ロータリーキルンとしては、雰囲気ガスが流通可能な構造であるものが好ましく、さらには、合金粉末の滞留時間及び投入速度が制御できるものが好ましい。
なお、縦型炉を用いて、合金粉末を窒素雰囲気中で落下させながら、窒化させても良い。
炉心管の回転速度は窒素含有合金が得られる限り任意であるが、通常1rpm以上、好ましくは2rpm以上、特に好ましくは3rpm以上、また、通常100rpm以下、好ましくは20rpm以下、特に好ましくは8rpm以下である。この範囲を外れると、炉心管内での合金粉末の動態を制御することが困難となることがある。すなわち、回転速度が遅すぎると、合金粉末が炉心管の内壁に付着し、滞留する傾向がある。一方、回転速度が速すぎると、遠心力により合金粉末が炉心管の内壁に押し付けられたまま落下せず、攪拌効率が低下する傾向にある。
炉心管の水平に対する傾斜角は窒素含有合金が得られる限り任意であるが、通常0.6°以上、好ましくは1°以上、特に好ましくは1.7°以上、また、通常6°以下、好ましくは5°以下、特に好ましくは3.4°以下である。この範囲を外れると、合金粉末の供給速度が制御しにくくなる傾向にある。
ロータリーキルンを用いて一次窒化工程を行なう場合は、合金粉末の炉心管への付着を防止することが好ましい。即ち、合金粉末が炉心管へ付着すると、被処理物の排出を妨げ、安定した処理が困難となる可能性がある。また、炉心管をヒーター等で外部から加熱する場合、合金粉末が炉心管へ付着していると、付着物が断熱材として作用し、加熱温度が実質的に低下する場合がある。付着物は、一次窒化工程終了後、炉心管を冷却する際に、炉心管と合金粉末との熱膨張率の違いなどにより剥離して除去される場合もあるが、窒素含有合金の排出速度を一定とし、かつ、一次窒化工程における窒化の程度を一定に保つためには、炉心管に振動等を加えて付着物を剥離させたり、物理的に付着物を掻き落としたりする等、常に付着物を除去し続けることがより好ましい。
(装置の材質)
連続方式で用いる装置において、焼成容器、炉心管等の合金粉末と接触する部品の材質は窒素含有合金が得られる限り任意であるが、例えば、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、黒鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、モリブデン、タングステン等を用いることができる。使用時の温度がおおよそ1100℃以下の場合は、石英も用いることができる。これらの中でも、炉心管の材質としては、酸化アルミニウム、窒化ホウ素が特に好ましい。なお、前記材質は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(加熱時の雰囲気)
加熱時の雰囲気は、窒素元素を含有することを必須とし、窒素ガスと窒素以外の不活性ガスとを混合したガスを流通させることが好ましく、中でも、窒素と、アルゴン等の希ガス類元素とを混合したガスを流通させることが好ましい。これは、窒素ガスに不活性ガスを混合することで反応速度を制御することができるからである。なお、前記の不活性ガスは、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
雰囲気中の窒素濃度は窒素含有合金が得られる限り任意であるが、通常0.1体積%以上、好ましくは1体積%以上、さらに好ましくは3体積%以上、また、上限に特に制限はないが、好ましくは80体積%以下である。雰囲気中の窒素濃度が低すぎると、窒化の進行が不十分となる場合があり、一方、窒素濃度が高すぎると、加熱温度の制御が難しくなる場合や、炉心管等への合金の付着が多くなる場合がある。
また、雰囲気中の酸素濃度は窒素含有合金が得られる限り任意であるが、通常300ppm以下、好ましくは100ppm以下、また、0に近いことが好ましいが、通常0.1ppm以上、好ましくは1ppm以上である。雰囲気中の酸素濃度が高すぎると、窒素含有合金、更には最終的に得られる蛍光体中に酸素が混入し、発光ピーク波長が短波長化したり輝度が低下したりすることがある。
また、酸素の混入を避ける目的で、爆発限界に達しない量の還元性ガス(例えば、水素、一酸化炭素、炭化水素、アンモニア等)を雰囲気中に混合することが好ましい。なお、還元性ガスは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
加熱時の圧力は窒素含有合金が得られる限り任意であるが、大気中の酸素の混入を防ぐために大気圧以上の圧力とすることが好ましい。圧力が低すぎると、加熱炉の密閉性が悪い場合には多量の酸素が混入して特性の高い蛍光体を得ることができない場合がある。
加熱時の雰囲気中における窒素分圧は窒素含有合金が得られる限り任意であるが、通常大気圧以下、好ましくは0.09MPa以下、さらに好ましくは0.08MPa以下であり、また、通常0.0005MPa以上、好ましくは0.001MPa以上である。窒素分圧が高いほど窒化速度は大きくなるが、窒素分圧があまりにも高すぎると、発熱速度が大きすぎて合金粉末の温度が当該合金粉末を形成する合金の融点を超え、合金粒子が融着する可能性があり、窒化が均一に進行しないことがある。一方、窒素分圧が低すぎると、一次窒化工程に要する時間が長くなる、消費される雰囲気ガス(例えば、アルゴンガス等が挙げられる。)の量が多くなる等、工業的に課題が生じることがあり、また、合金からSr等が揮発して組成がずれる場合もある。
(窒素供給量・速度)
連続方式の場合、単位時間あたり所定量の合金粉末が装置内に供給されるようにすることが好ましい。また、供給された合金粉末を所望の程度まで窒化するためには、少なくとも、単位時間あたり理論上必要な量の窒素を装置内に供給する。具体的には、単位時間あたり供給される合金粉末の重量に対し、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、また、上限には特に制限はないが、通常200重量%以下の窒素を含有する窒素含有雰囲気ガスが装置内に供給されることが好ましい。
なお、上記の窒素含有の雰囲気ガスの流通方向は合金粉末の供給方向に対し、向流であっても併流であっても構わないが、通常、向流とする。
(加熱条件)
加熱温度は窒素含有合金が得られる限り任意であるが、通常は蛍光体原料用合金の融点より150℃低い温度以上、好ましくは蛍光体原料用合金の融点より100℃低い温度以上、また、通常は蛍光体原料用合金の融点より10℃低い温度以下の温度範囲で加熱するとよい。より具体的な加熱温度としては、合金の組成によっても異なるが、例えば、通常800℃以上、好ましくは900℃以上、また通常2500℃以下、好ましくは1500℃以下である。加熱温度が低すぎると窒化反応の進行が不充分となる傾向にあり、一方、温度が高すぎると炉心管への合金粉末の付着が多くなる傾向がある。なお、ここで加熱温度は、加熱時の炉心管温度を指している。
また、蛍光体原料用合金の融点より100℃低い温度とは、おおよそ、蛍光体原料用合金の窒化が開始される温度を意味している。
なお、本明細書において、蛍光体原料用合金、窒素含有合金等の合金の融点は、後述の実施例の項に記載されるように、熱重量・示差熱((thermogravimetry−differential thermal analysis:以下適宜「TG−DTA」と略す。)測定による吸熱ピークから求めることができるものであり、合金の組成によって異なるが、おおよそ900℃以上1300℃以下である。ただし、明確な融点を示さない合金の場合は、分解開始温度を合金の融点とみなす。また、複数種の合金を用いる場合は、当該合金の中でも最も融点の低い合金の融点を、合金の融点とする。
前記の温度範囲で加熱する時間(最高温度での保持時間)は窒素含有合金が得られる限り任意であるが、通常0.1分以上、好ましくは1分以上、また、通常1時間以下、好ましくは30分以下、さらに好ましくは8分以下である。加熱時間が長すぎると、アルカリ土類金属の揮発により組成がずれる場合があり、加熱する時間が短すぎると、窒化の進行が不十分となる場合がある。
<回分方式の場合>
(装置の形式)
一次窒化工程を回分方式で行なう場合、例えば、管状炉、一般的な雰囲気加熱炉、ロータリーキルン等を用いることができる。具体的操作としては、通常、合金粉末を耐火性の焼成容器(トレイやルツボ等)に充填してから装置内にて加熱を行なう。
(焼成容器)
合金粉末を充填する焼成容器の形状は窒素含有合金が得られる限り任意であるが、焼成雰囲気と合金粉末との接触効率が高くなるように、密閉構造でなく、かつ、充填層高が高すぎないものが好ましい。充填層高は、通常30mm以下、好ましくは20mm以下、さらに好ましくは15mm以下、また、通常3mm以上、好ましくは5mm以上である。充填層高が高すぎると窒化反応が均一に進行しないことがあり、一方、充填層高が低すぎると生産性が低下することがあるからである。
焼成容器等の合金粉末と接触する部分の材質は窒素含有合金が得られる限り任意であるが、例えば、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、黒鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、モリブデン、タングステン等を用いることができる。使用時の温度がおおよそ1100℃以下の場合は、石英も使用することができる。これらの中でも、黒鉛、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、石英を用いることが好ましく、窒化ホウ素を用いることがさらに好ましい。なお、前記材質は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(加熱時の雰囲気)
加熱時の雰囲気は、窒素雰囲気と不活性ガス雰囲気とを混合した雰囲気であることが好ましく、中でも、窒素と、アルゴン等の希ガス類元素とを混合した雰囲気であることが好ましい。これは、窒素雰囲気に不活性ガス雰囲気を混合することで反応速度を制御することができるからである。なお、前記の不活性ガスは、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
雰囲気中の窒素濃度は窒素含有合金が得られる限り任意であるが、通常0.1体積%以上、好ましくは1体積%以上、さらに好ましくは3体積%以上、また、通常99体積%以下、好ましくは20体積%以下、さらに好ましくは10体積%以下である。雰囲気中の窒素濃度が低すぎると、アルカリ土類金属等が揮発する場合があり、一方、窒素濃度が高すぎると、窒化の進行が不均一となることがある。
雰囲気中の酸素濃度は窒素含有合金が得られる限り任意であるが、通常は、連続方式の場合と同様である。
また、連続方式の場合と同様に、爆発限界に達しない量の還元性ガス(水素、一酸化炭素、炭化水素、アンモニア等)を混合することが好ましい。
加熱時の圧力は窒素含有合金が得られる限り任意であるが、連続方式の場合と同様、大気中の酸素の混入を防ぐために大気圧以上の圧力とすることが好ましい。
加熱時の雰囲気中における窒素分圧は窒素含有合金が得られる限り任意であるが、通常は、連続方式の場合と同様である。
(加熱条件)
加熱温度は窒素含有合金が得られる限り任意であるが、通常は蛍光体原料用合金の融点より150℃低い温度以上、好ましくは蛍光体原料用合金の融点より100℃低い温度以上、また、通常は蛍光体原料用合金の融点以下、好ましくは蛍光体原料用合金の融点より10℃低い温度以下、より好ましくは蛍光体原料用合金の融点より50℃低い温度以下で加熱するとよい。より具体的な加熱温度としては、合金組成によっても異なるが、例えば、通常800℃以上、好ましくは900℃以上、また、通常2500℃以下、好ましくは1500℃以下である。加熱温度が低すぎると、一次窒化工程が完了するまでに長時間を要する傾向にあり、場合によっては窒化の進行が不完全となることがある。一方、加熱温度が高すぎると、一次窒化工程において窒化反応の制御が困難となり、窒化の進行が不均一となることがある。また、蛍光体原料用合金の融点付近の温度で加熱を行なうと、合金粉末が容器に付着したり、合金粒子が融着したりして窒素との接触効率が低下する傾向にある。なお、ここで加熱温度とは、加熱時の炉内温度を指している。
また、前記の合金の融点については、連続方式の場合の項で説明したとおりである。
加熱時間は、装置の形式や加熱温度等の他の条件によって異なるが、連続方式で行なう場合よりも長時間の加熱を要する傾向にあり、通常10分以上、好ましくは20分以上、また、通常48時間以下である。加熱時間が長すぎると、アルカリ土類金属の揮発により組成がずれる場合があり、加熱時間が短すぎると、窒化の進行が不十分となる場合にある。ここで加熱時間とは、最高温度での保持時間をさす。
また、蛍光体原料用合金の融点より150℃低い温度から蛍光体原料用合金の融点より10℃低い温度までの温度範囲においては、ゆっくりと昇温することが好ましい。この温度範囲における昇温速度は、通常9℃/分以下、中でも7℃/分以下とすることが好ましく、また、昇温速度の下限には特に制限はないが、生産性の観点から、通常0.1℃/分以上、中でも0.5℃/分以上とすることが好ましい。
なお、加熱開始時から蛍光体原料用合金の融点より150℃低い温度までの昇温条件については特に制限はなく、急速に昇温してもゆっくり昇温してもよいが、場合によっては、焼成装置の温度制御に対する応答性などを勘案して、蛍光体原料用合金の融点より150℃低い温度より更に低い温度から、昇温速度を9℃/分以下に減速してもよい。
(窒素含有合金)
本明細書において、窒素含有合金とは、上述の一次窒化工程終了後の合金のことを指す。
窒素含有合金は本発明の蛍光体を構成する金属元素を2種以上含有するものである。また、窒素含有合金は、金属元素以外の成分として主として窒素を含有する。窒化の程度を表す指標の一つとして、下記式[5]で求められる全金属元素含有率(重量%)を用いることができる。この全金属元素含有率が小さいほど、窒化が進んでいることを示す。
全金属元素含有率(重量%)
=100−{(一次窒化工程後の窒素含有合金の重量−一次窒化工程前の合金の重量)
/一次窒化工程後の窒素含有合金の重量}×100 …[5]
窒素含有合金の全金属元素含有率(重量%)とは、窒素含有合金中に含まれる全ての金属元素の含有率である。その具体的範囲は本発明の蛍光体が得られる限り任意であるが、通常60重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは76重量%以上、また、通常97重量%以下、好ましくは95重量%以下、より好ましくは93重量%以下である。全金属元素含有率が上記範囲よりも大きくなると、一次窒化工程による効果が得られない場合がある。また、全金属元素含有率が上記範囲よりも小さくなることは理論的に考えられにくい。
また、窒素含有合金の窒化の程度は、窒素含有率(重量%)を用いて規定することもできる。窒素含有率は、例えば、酸素窒素同時分析装置(Leco社製)により窒素含有量を測定し、下記式[6]により求めることができる。
窒素含有合金の窒素含有率(重量%)
= (窒素含有量/窒素含有合金の重量)× 100 …[6]
上記式[6]で求められる窒素含有率の具体的範囲は、本発明の蛍光体が得られる限り任意であるが、通常1重量%以上、好ましくは2重量%以上、更に好ましくは5重量%以上であり、また、通常31重量%以下、好ましくは25重量%以下である。窒素含有率が小さすぎると後述の二次窒化工程における発熱の抑制が不十分となる可能性があり、大きすぎると時間、エネルギーの点で不経済となる可能性がある。
尚、上記式[6]で求められる窒素含有率が10重量%以上、好ましくは12重量%以上である窒素含有合金を蛍光体原料として用いると、後述の二次窒化工程において発熱を抑制する効果が大きく、上記式[A]の値に関わらず、高特性の蛍光体を製造できる傾向にあり、特に好ましい。
また、窒素含有合金は、さらに下記式[7]を満たすことが好ましい。
0.03≦NI/NP≦0.9 …[7]
(式[7]において、
NIは、窒素含有合金の窒素含有率(重量%)を表し、
NPは、製造される蛍光体の窒素含有率(重量%)を表す。)
ここで、上記式[7]は、窒素含有合金について、後述の二次窒化工程により製造される蛍光体の窒素含有率を基準として、窒素含有合金の窒化の程度を表したものである。一次窒化工程完了後の窒素含有合金の窒素含有率は、当然ながら、蛍光体の窒素含有率よりも小さくなる。上記式[7]の値は、本発明の蛍光体が得られる限り任意であるが、通常0.03以上、好ましくは0.04以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.1以上、特に好ましくは0.15以上、また、通常0.9以下、好ましくは0.85以下である。
上記式[7]のNI/NPの値が上記範囲よりも小さいと、一次窒化工程における窒化の進行が不十分なことがあり、二次窒化工程の際の発熱速度が大きくなり、特性の高い蛍光体が得られにくくなる傾向がある。一方、上記式[7]のNI/NPの値が上記範囲よりも大きいと、窒素含有合金自体が不安定となり、取り扱いが難しくなる傾向がある。
二次窒化工程を円滑に進行させるためには、原料とする合金の反応性によって、例えば上記式[5]、[6]、[7]で表せるような窒素含有合金の窒化の進行の程度を適宜調整することが好ましい。ここで、原料とする合金の反応性は、組成や重量メジアン径D50等によって決まる。例えば、Srを含む場合や重量メジアン径D50が小さい場合は原料と窒素との反応性が高い。したがって、反応性の高い原料を用いる場合には、一次窒化工程における窒化の程度を高くしておくことが好ましく、逆に、反応性の低い原料を用いる場合には、一次窒化工程における窒化の程度を低くしておくことが好ましい。
また、粉砕工程で得られた蛍光体原料用合金からなる合金粉末の窒素に対する反応性は、該合金粉末を、窒素気流中でTG−DTA測定を行なうことにより見積もることができる。具体的には、蛍光体原料用合金の融点から100℃低い温度から1500℃までの温度範囲において、大気圧下、合金粉末と窒素とを反応させ、TG−DTA測定により合金粉末の重量を測定し、重量増加速度を求める。
この時、連続方式を用いる場合は特に問題はないが、回分方式を用いる場合は、合金粉末の重量増加速度が、通常5重量%/時以上、中でも10重量%/時以上、また、通常300重量%/時以下、中でも150重量%/時以下、特には100重量%/時以下となるように、一次窒化工程の雰囲気中の窒素濃度を選択することが好ましい(ただし、昇温速度を10℃/分としたものとする)。回分方式を用いる場合、重量増加速度が上記範囲より大きくなるような窒素濃度を選択すると、一次窒化工程において発熱が大きくなり過ぎる傾向にあり、大量に窒素含有合金を製造する際に発生した熱により合金原料が溶融あるいは分相したり、窒化物が分解したりして蛍光体の特性が低下する場合がある。一方、この重量増加速度が上記範囲より小さくなるような窒素濃度を選択すると、窒化反応が充分に進行しない等の理由により、生産性が低下したり、蛍光体の輝度が低下したりする場合がある。
また、窒素含有合金の酸素含有率は、例えば、酸素窒素同時分析装置(Leco社製)により酸素含有量を測定し、下記式[8]により求めることができる。
窒素含有合金の酸素含有率(重量%)
= (酸素含有量/窒素含有合金の重量)×100 …[8]
窒素含有合金の酸素含有率(重量%)は、本発明の蛍光体が得られる限り任意であるが、通常7.5重量%以下、好ましくは5重量%以下、また、通常0.1重量%以上である。酸素含有率が高すぎると得られる蛍光体の輝度が低下する可能性がある。
上記のような窒素含有合金は、二次窒化工程によりさらに窒化することで、あるいは、窒素含有合金の合金粉末と粉砕工程で得られた合金粉末(一次窒化前の合金粉末)等とを混合し、二次窒化工程によりさらに窒化すると、本発明の蛍光体を得ることができる。また、この際、二次窒化工程における発熱速度を制御することができるため、合金を原料とした蛍光体の大量生産が可能となる。
二次窒化工程前の窒素含有合金の合金粉末の重量メジアン径D50は、合金を構成する金属元素の活性度により粒径を調整することが好ましい。本発明の蛍光体が得られる限りその具体的な範囲に制限は無いが、通常は、蛍光体原料用合金の合金粉末(一次窒化工程前の合金粉末)と同様の範囲が好ましい。
(冷却及び粉砕)
一次窒化工程を行なった場合、一次窒化工程終了後、二次窒化工程の前に、一次窒化工程で得られた窒素含有合金からなる合金粉末を一旦冷却してもよい(冷却工程)。
一次窒化工程で用いる装置と二次窒化工程で用いる装置とが異なる場合は、通常、合金粉末の温度が200℃以下になるまで冷却してから取り出して二次窒化工程で用いる装置に仕込む。また、一次窒化工程で用いる装置と二次窒化工程で用いる装置とが同一である場合においても、装置内の雰囲気の切り替えや置換等に先立ち、一旦冷却することが好ましい。冷却を行なわないと、急激な窒素分圧の変動により合金粉末の温度が急上昇して溶融したり、高温で大気と接触した際に合金粉末が変質したりする可能性がある。この場合の冷却温度は、通常、窒素含有合金の融点より100℃以上低い温度、好ましくは窒素含有合金の融点より200℃以上低い温度であり、下限には特に制限はないが、通常、室温以上である。
冷却後は、必要に応じて、粉砕及び/又は混合を行なう。粉砕後の窒素含有合金からなる合金粉末の重量メジアン径D50は、通常100μm以下であり、一次窒化工程前の合金粉末と同様であることが好ましい。
一次窒化工程後の窒素含有合金は、同じ粒径範囲の一次窒化工程前の合金粉末と比較して、より限界酸素濃度が高く、粉塵爆発し難い傾向があるため、取り扱い性及び安全性がより向上している。しかしながら、一次窒化工程後の窒素含有合金は大気中で加水分解される、あるいは酸化されて酸素が混入する可能性があるため、乾燥空気、窒素雰囲気、或いはアルゴン等の不活性ガス雰囲気中で扱うことが好ましく、窒素雰囲気で扱うことが特に好ましい。なお、不活性ガスは、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
雰囲気中の酸素濃度は、通常5体積%以下、好ましくは4体積%以下、また、通常0.1ppm以上である。酸素濃度が高すぎると、酸化される可能性があるので注意を要する。
このような一次窒化工程を導入すると、後述する二次窒化工程における原料合金と窒素との反応性を制御することができる。その他の条件によっても異なるが、一次窒化工程を行わない場合と比較して、一度に製造できる蛍光体の量を1.5倍以上、好ましくは2倍以上に増やすことができる。
<二次窒化工程(窒化処理工程)>
二次窒化工程においては、蛍光体原料に対して窒化処理を施すことにより、蛍光体を得る。この際、蛍光体原料としては、一次窒化工程を経ていない蛍光体原料用合金(好ましくは、その合金粉末)を用いてもよく、一次窒化工程により得られた窒素含有合金(好ましくは、その合金粉末)を用いてもよく、両者を併用してもよい。ただし、工業的な生産性の観点から、窒素含有合金の合金粉末のみ、又は、蛍光体原料用合金の合金粉末と窒素含有合金の合金粉末との混合物に対して窒化処理を施すことが好ましい。更に、前記混合物に対して窒化処理を施す場合、当該混合物中の窒素含有合金粉末の割合が20重量%以上となるようにすることが好ましい。また、全金属元素含有率が97重量%以下の窒素含有合金であることが好ましく(前記1)に相当する。)、特に蛍光体原料用合金の一部又は全部が、窒素含有率10重量%以上の窒素含有合金であることが好ましい。窒素含有合金の量ないしは窒素含有合金の窒素含有率が少なすぎると一次窒化工程を行なったことの利点が十分に得られない可能性があるからである。
二次窒化工程における窒化処理は、蛍光体原料を、例えばルツボ、トレイ等の焼成容器に充填して窒素含有雰囲気下で加熱することにより行なう。具体的には、以下の手順により行なう。
即ち、まず、蛍光体原料を焼成容器に充填する。ここで使用する焼成容器の材質は本発明の製造方法の効果が得られる限り任意であるが、例えば、窒化ホウ素、窒化珪素、炭素、窒化アルミニウム、タングステン等が挙げられる。中でも、窒化ホウ素が耐食性に優れることから好ましい。なお、前記の材質は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、ここで使用する焼成容器の形状は本発明の製造方法の効果が得られる限り任意である。例えば、焼成容器の底面が、円形、楕円形等の角のない形や、三角形、四角形等の多角形であってもよいし、焼成容器の高さも加熱炉に入る限り任意であり、低いものでも高いものでもよい。中でも、放熱性のよい形状を選択することが好ましい。
この蛍光体原料を充填した焼成容器を、焼成装置(「加熱炉」と称する場合もある。)に納める。ここで使用する焼成装置としては、本発明の製造方法の効果が得られる限り任意であるが、装置内の雰囲気を制御できる装置が好ましく、さらに圧力も制御できる装置が好ましい。例えば、熱間等方加圧装置(HIP)、抵抗加熱式真空加圧雰囲気熱処理炉等が好ましい。
また、加熱開始前に、焼成装置内に窒素を含むガスを流通して系内を十分にこの窒素含有ガスで置換することが好ましい。必要に応じて、系内を真空排気した後、窒素含有ガスを流通しても良い。
窒化処理の際に使用する窒素含有ガスとしては、窒素元素を含むガス、例えば窒素、アンモニア、或いは窒素と水素の混合気体等が挙げられる。なお、窒素含有ガスは、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。系内の酸素濃度は製造される蛍光体の酸素含有量に影響し、余り高い含有量となると高い発光が得られなくなるため、窒化処理雰囲気中の酸素濃度は、低いほど好ましく、通常0.1体積%以下、好ましくは100ppm以下、より好ましくは10ppm以下とする。また、必要に応じて、炭素、モリブデン等の酸素ゲッターを系内加熱部分に入れて、酸素濃度を低下させても良い。なお、酸素ゲッターは、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
窒化処理は、窒素含有ガスを充填した状態或いは流通させた状態で蛍光体原料を加熱することにより行なうが、その際の圧力は大気圧よりも幾分減圧、大気圧或いは加圧の何れの状態でも良い。ただし、大気中の酸素の混入を防ぐためには大気圧以上とすることが好ましい。圧力を大気圧未満にすると加熱炉の密閉性が悪い場合には多量の酸素が混入して特性の高い蛍光体を得ることができない可能性がある。窒素含有ガスの圧力は少なくともゲージ圧で0.2MPa以上が好ましく、中でも10MPa以上がより好ましく、また、200MPa以下が好ましい。
蛍光体原料の加熱温度は本発明の蛍光体が得られる限り任意であるが、通常800℃以上、好ましくは1000℃以上、更に好ましくは1200℃以上、また、通常2200℃以下、好ましくは2100℃以下、更に好ましくは2000℃以下である。加熱温度が800℃より低いと、窒化処理に要する時間が非常に長くなる可能性がある。一方、加熱温度が2200℃より高いと、生成する窒化物が揮発或いは分解し、得られる窒化物蛍光体の化学組成がずれて、特性の高い蛍光体が得られず、また、再現性も悪いものとなる可能性がある。
また、加熱温度は、合金の組成等によっても異なるが、蛍光体原料用合金の融点より通常300℃以上、中でも400℃以上、更には500℃以上、特には700℃以上高い温度であることが好ましい。なお、合金の融点については、前述の一次窒化工程の項で説明した通りである。
窒化処理時の加熱時間(最高温度での保持時間)は、蛍光体原料と窒素との反応に必要な時間で良いが、通常1分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上、更に好ましくは60分以上とする。加熱時間が1分より短いと窒化反応が完了せず特性の高い蛍光体が得られない可能性がある。また、加熱時間の上限は生産効率の面から決定され、通常24時間以下である。
このように蛍光体原料に対して窒化処理することにより、窒化物又は酸窒化物を母体とする本発明の蛍光体を得ることができる。
ところで、二次窒化工程においては、一度に大量の蛍光体原料について窒化処理を行なう場合、その他の条件によっては、窒化反応が急激に進行し、本発明の蛍光体の特性を低下させる可能性がある。そこで、一度に大量の蛍光体原料の加熱処理を行いたい場合、以下のように昇温条件を調整すると、急激な窒化反応の進行をさらに抑えることができ、好ましい。
即ち、二次窒化工程において、加熱する蛍光体原料用合金の融点より100℃低い温度から前記融点より30℃低い温度までの温度域(以下、「昇温速度を減速する温度域」と称す場合がある)の加熱を、9℃/分以下の昇温速度で行なう。このように、加熱する合金の融点より100℃低い温度から融点より30℃低い温度までの温度域で昇温速度を減速する理由は次の通りである。但し、蛍光体原料用合金に代えて窒素含有合金を用いる場合や、蛍光体原料用合金と窒素含有合金とを併用する場合であっても、前記の「加熱する蛍光体原料用合金の融点」とは、蛍光体原料用合金の融点とする。
蛍光体は、一般的に蛍光体原料をルツボ、トレイ等の焼成容器に充填し、加熱炉内で加熱することにより合成される。この際、蛍光体原料の炉内での滞留時間を短くすることで、生産性を高めることができるため、反応に必要な温度域までの昇温速度は、加熱炉の能力と坩堝等の耐熱衝撃特性が許す範囲で速いことが好ましい。
しかしながら、蛍光体原料用合金、窒素含有合金等の合金を原料として蛍光体を工業的に生産する場合においては、昇温速度が速いと、窒化時の発熱により合金粉末が溶融し、合金粒子同士が融着し、内部まで窒素ガスが侵入できず、合金粒子の内部まで窒化反応が進行しない場合がある。このため、得られる蛍光体の輝度が低下する傾向にあり、場合によっては発光しない場合もある。
焼成容器の直径が同一の場合において、合金粉末の充填量が少なければ、放熱性が高く、窒化反応時の発熱量の蓄積が少ないため、上述したような現象は生じない。しかし、蛍光体原料の充填量が多いと、放熱性が低下するため、窒化反応時の発熱を抑制することが望まれる。
一方で、蛍光体、特に窒化物蛍光体の合成は、高温高圧下で反応を行なうため、通常は高価な反応装置を使用することになる。そのため、一回あたりの蛍光体原料の充填量を増やすことがコスト低減のためには望まれる。
そこで、本発明の蛍光体の製造方法では、後述する特定の温度域において昇温速度を減速することが好ましい(前記2)に相当する)。これにより、蛍光体原料用合金、窒素含有合金等の合金を原料として蛍光体を工業的に生産する場合であっても、反応熱の蓄積による蛍光体特性の低下を避けることが可能となる。特に、蛍光体原料用合金にSrを含む場合において、蛍光体原料用合金の融点より100℃低い温度から融点の間で、急激に窒化反応が進み、原料の重量が急激に増加することがあるが、この温度域で昇温速度を減速すると、この急激な重量増加が起こらなくなるという効果がある。
前記の昇温速度を減速する温度域は、通常、蛍光体原料用合金の融点より100℃低い温度から該融点より30℃低い温度までの温度域であり、好ましくは蛍光体原料用合金の融点より150℃低い温度以上、より好ましくは該融点より200℃低い温度以上、また、好ましくは該融点以下、より好ましくは該融点より100℃以上高い温度以下までの温度域である。
ここで、蛍光体原料用合金の融点より100℃低い温度とは、おおよそ、窒化が開始される温度を意味する。また、該融点より30℃低い温度から該融点までの温度域では、窒化反応が急激に進行するため、昇温速度による窒化反応の進行の制御は困難であることが多い。
なお、前記の融点より100℃低い温度から融点より30℃低い温度までの温度域の温度とは、加熱処理の際の炉内温度、即ち、焼成装置の設定温度をさす。
昇温速度を減速する温度域において、昇温速度は通常9℃/分以下であり、好ましくは7℃/分以下である。これよりも速い昇温速度では、急激な反応熱の蓄積を避けることができず、高輝度の蛍光体が得られない傾向にある。また、昇温速度の下限には特に制限はないが、通常、生産性の観点から0.1℃/分以上であり、好ましくは0.5℃/分以上である。
なお、蛍光体原料用合金の融点より100℃低い温度より更に低い温度域における昇温条件については特に制限はなく、急速に昇温してもゆっくり昇温してもよい。また、加熱炉の温度制御の応答性などを勘案して、合金の融点より100℃低い温度より更に低い温度から、昇温速度を9℃/分以下に減速してもよい。
また、蛍光体原料用合金の融点より30℃低い温度に到達した後も加熱を続ける場合、その昇温速度に特に制限はないが、該融点より30℃低い温度から該融点までの温度域においても、通常9℃/分以下、特に7℃/分以下、また、通常0.1℃/分以上、特に0.5℃/分以上で、ゆっくり昇温することが好ましい。該融点よりも更に高い温度にまで加熱する場合にあっても、該融点からその温度までの昇温速度も、通常9℃/分以下、特に7℃/分以下、通常0.1℃/分以上、特に0.5℃/分以上であることが好ましいが、該融点より10℃高い温度から更にそれよりも高温域においては、昇温速度を減速することによる効果は特になく、この高温域の昇温速度は10℃/分以上、例えば10℃/分〜100℃/分として生産性を高めることが好ましい。
なお、蛍光体原料用合金の融点については、前述の一次窒化工程の項で説明した通りである。
以上のように蛍光体原料用合金及び/又は窒素含有合金を窒化することにより、本発明の蛍光体を製造することができる。
[III]その他の付加工程
{再加熱工程}
二次窒化工程により得られた蛍光体は、必要に応じて再加熱工程を行ない、再度、加熱処理(再加熱処理)をすることにより粒子成長させても良い。これにより、粒子が成長し、蛍光体が高い発光を得ることが可能となる等、蛍光体の特性が向上する場合がある。
この再加熱工程では、一度室温まで冷却してから、再度加熱を行なってもよい。再加熱処理を行なう場合の加熱温度は、通常1200℃以上、好ましくは1300℃以上、より好ましくは1400℃以上、特に好ましくは1500℃以上であり、また、通常2200℃以下、好ましくは2100℃以下、より好ましくは2000℃以下、特に好ましくは1900℃以下である。1200℃未満で加熱すると、蛍光体粒子を成長させる効果が小さくなる傾向にある。一方、2200℃を超える温度で加熱すると、無駄な加熱エネルギーを消費してしまうだけでなく、蛍光体が分解する場合がある。また、蛍光体の分解を防止するためには雰囲気ガスの一部となる窒素の圧力を非常に高くすることになるため、製造コストが高くなる傾向にある。
蛍光体の再加熱処理時の雰囲気は、基本的には窒素ガス雰囲気、不活性ガス雰囲気又は還元性雰囲気が好ましい。なお、不活性ガス及び還元性ガスは、それぞれ、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、雰囲気中の酸素濃度は、通常1000ppm以下、好ましくは100ppm以下、より好ましくは10ppm以下とする。酸素濃度が1000ppmを越えるような酸素含有ガス中や大気中など酸化雰囲気下で再加熱処理すると、蛍光体が酸化され、目的の蛍光体を得ることができない可能性がある。ただし、0.1ppm〜10ppmの微量酸素を含有する雰囲気とすることで比較的低温での蛍光体の合成が可能となるので好ましい。
再加熱処理時の圧力条件は、大気中の酸素の混入を防ぐためには大気圧以上の圧力とすることが好ましい。圧力が低すぎると、前述の加熱工程と同様に焼成装置の密閉性が悪い場合には多量の酸素が混入し、特性の高い蛍光体を得ることができない可能性がある。
再加熱処理時の加熱時間(最高温度での保持時間)は、通常1分間以上、好ましくは10分間以上、より好ましくは30分間以上であり、また、通常100時間以下、好ましくは24時間以下、より好ましくは12時間以下である。加熱時間が短すぎると粒子成長が不十分となる傾向にある。一方、加熱時間が長すぎると、無駄な加熱エネルギーが消費される傾向にあり、また、蛍光体の表面から窒素が脱離して発光特性が低下する場合もある。
{後処理工程}
得られた蛍光体は、必要に応じて、分散工程、分級工程、洗浄工程、乾燥工程等の後処理工程を行なってから各種用途に用いてもよい。
〈分散工程〉
分散工程では、窒化工程中の粒子成長、焼結などにより凝集している蛍光体に機械的な力を加え、解砕する。例えば、ジェットミルなどの気流による解砕や、ボールミル、ビーズミル等のメディアによる解砕などの方法が使用できる。
〈分級工程〉
上記の手法により分散された蛍光体の粉末は、分級工程を行なうことにより所望の粒度分布に調整できる。分級には、例えば、バイブレーティングスクリーン、シフター等の網目を使用した篩い分け装置、エアセパレータ、水簸装置等の慣性分級装置や、サイクロン等の遠心分級機を使用することができる。
〈洗浄工程〉
洗浄工程では、蛍光体を、例えばジョークラッシャー、スタンプミル、ハンマーミル等で粗粉砕した後、中性又は酸性の溶液(以下、「洗浄媒」と称する場合がある。)を用いて洗浄する。
ここで用いる中性の溶液としては、水を用いることが好ましい。使用可能な水の種類は、特に制限はないが、脱塩水又は蒸留水が好ましい。用いる水の電気伝導度は、通常0.0064mS/m以上、また、通常1mS/m以下、好ましくは0.5mS/m以下である。また、水の温度は、通常、室温(25℃程度)が好ましいが、好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上、また、好ましくは90℃以下、さらに好ましくは80℃以下の温水又は熱水を用いることにより、目的とする蛍光体を得るための洗浄回数を低減することも可能である。
また、酸性の溶液としては酸性の水溶液が好ましい。酸性水溶液の種類に特に制限はないが、塩酸、硫酸などの鉱酸の1種又は2種以上を希釈した水溶液が使用できる。酸水溶液の酸の濃度は、通常0.1mol/l以上、好ましくは0.2mol/l以上、また、通常5mol/l以下、好ましくは2mol/l以下である。中性の水溶液ではなく、酸性の水溶液を用いると、蛍光体の溶解イオン量の低減効率の点で好ましいが、この洗浄に用いる酸水溶液の酸濃度が5mol/lを超えると、蛍光体表面を溶解する場合がある。一方、酸性の溶液の酸濃度が0.1mol/l未満であると、酸を用いた効果が十分に得られない傾向にある。
なお、本発明においては、洗浄に用いる酸性の溶液としてフッ酸のような腐食性の強い酸は必要としない。
また、洗浄媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で行なってもよい。
蛍光体を洗浄する方法としては、特に制限はないが、具体的には、得られた蛍光体粒子を上述の中性又は酸性の溶液(洗浄媒)に入れて所定時間撹拌することにより分散させ、その後、蛍光体粒子を固液分離する方法等が挙げられる。
蛍光体を洗浄する際の撹拌手法には特に制限はなく、蛍光体粒子を均一に分散させることができればよい。例えば、チップスターラーや撹拌機等を用いることができる。
洗浄媒の量には特に制限はないが、過度に少ないと十分な洗浄効果が得られず、過度に多いと大量の洗浄媒を要し、不合理であることから、洗浄する蛍光体の重量の2重量倍以上、中でも5重量倍以上であることが好ましく、また、洗浄する蛍光体の重量の1000重量倍以下、中でも100重量倍以下であることが好ましい。
撹拌時間は、蛍光体と上述のような洗浄媒とを十分に接触させることができるような時間であれば良く、通常1分以上、また、通常1時間以下である。
洗浄媒と蛍光体粒子とを固液分離する手法には、特に制限はなく、例えば、濾過、遠心分離、デカンテーション等が挙げられる。
ただし、蛍光体粒子の洗浄方法は、上述のような、洗浄媒中で蛍光体粒子を撹拌し、分散した後の固液分離を行なう手法に限定されるものではなく、例えば、蛍光体粒子を洗浄媒の流体にさらす方法等であっても良い。
また、このような洗浄工程は複数回行なっても良い。複数回の洗浄工程を行なう場合、水による洗浄と酸性の溶液による洗浄とを組み合わせて行なっても良いが、その場合、蛍光体への酸の付着を防止するために、酸性の溶液で洗浄した後、水による洗浄を行なうようにすることが好ましい。また、水による洗浄後、酸性の溶液で洗浄し、その後、水による洗浄を行なってもよい。
また、複数回の洗浄工程を行なう場合、洗浄工程の間に前述の粉砕工程や分級工程を行なっても良い。
蛍光体の洗浄は、洗浄後の蛍光体について、次のような水分散試験を行ない、その時の上澄み液の電気伝導度が所定の値以下となるまで行なうことが好ましい。
即ち、洗浄後の蛍光体を、必要に応じて乾式ボールミル等で解砕ないし粉砕し、篩又は水簸により分級を行なって所望の重量メジアン径に整粒し、その後、当該蛍光体の10重量倍の水中で所定時間、例えば10分間撹拌して分散させた後、1時間静置することにより、水よりも比重の重い蛍光体粒子を自然沈降させる。このときの上澄み液の電気伝導度を測定し、その電気伝導度が、通常50mS/m以下、好ましくは10mS/m以下、より好ましくは5mS/m以下となるまで、必要に応じて上述の洗浄操作を繰り返す。
この蛍光体の水分散試験に用いられる水としては、特に制限はないが、上述の洗浄媒の水と同様に脱塩水又は蒸留水が好ましく、特に電気伝導度は、通常0.0064mS/m以上、また、通常1mS/m以下、好ましくは0.5mS/m以下である。また、上記蛍光体の水分散試験に用いられる水の温度は、通常、室温(25℃程度)である。
このような洗浄を行なうことにより、蛍光体の輝度をさらに向上させることができる。
なお、上記蛍光体の水分散試験における上澄み液の電気伝導度の測定は、東亜ディケーケー社製電気伝導度計「EC METER CM−30G」等を用いて行なうことができる。
上記蛍光体の水分散試験における上澄み液の電気伝導度は、蛍光体の構成成分が一部溶解した結果、イオンとなって水中に溶け出すことにより上昇する。上記上澄み液の電気伝導度が低い、ということは、蛍光体中のこの水溶性成分の含有量が少ないことを意味する。
また、洗浄工程を行なうことにより、蛍光体の酸素含有量も減少することがある。これは、酸素を含む不純物相、例えば結晶性の悪い窒化物が加水分解して生じた水酸化物が除去されるためと推察される。
例えば、本発明の蛍光体では、洗浄すると、以下のようなことが起きていると推測することができる。
(1)結晶性の悪い窒化物等が加水分解して、例えばSr(OH)などの水酸化物となり、水中に溶け出す。温水、あるいは希薄な酸で洗浄すると、これらが効率よく除去され、電気伝導度が低下する。一方で、洗浄媒の酸濃度が高過ぎたり、酸性の溶液にさらす時間が長過ぎたりすると、母体の蛍光体自体が分解する場合がある。
(2)前記の加熱工程において加熱時に使用する窒化ホウ素(BN)製ルツボから混入したホウ素が、水溶性のホウ素窒素−アルカリ土類化合物を形成して蛍光体に混入するが、上記洗浄によりこれが分解され、除去される。
洗浄による発光効率及び輝度向上の理由は完全には明らかとはされていないが、焼成直後の蛍光体を空気中に取り出したときわずかなアンモニア臭が感じられるところから、洗浄により、この未反応又は反応不十分な部分が分解して生成した部分が除去されたことによると考えられる。
〈乾燥工程〉
上記洗浄後は、蛍光体を付着水分がなくなるまで乾燥させて、使用に供することができる。具体的な操作の例を挙げると、洗浄を終了した蛍光体スラリーを遠心分離機等で脱水し、得られた脱水ケーキを乾燥用トレイに充填すればよい。その後、100℃〜200℃の温度範囲で含水量が0.1重量%以下となるまで乾燥する。得られた乾燥ケーキを篩等に通し、軽く解砕し、蛍光体を得る。
なお、蛍光体は多くの場合、粉体で使用され、他の分散媒中に分散した状態で使用される。従って、これらの分散操作を容易にするため、蛍光体に各種表面処理を行なうことが当業者の中では通常の手法として行われている。かかる表面処理が行われた蛍光体にあっては表面処理が行われる前の段階が本発明による蛍光体と理解するのが適切である。
[IV]アトマイズ法等による合金の製造
ところで、蛍光体原料用合金及び窒素含有合金は、上述した方法により製造するほか、以下に説明する(a)〜(c)の工程を経て製造することもできる。これにより、安息角が45度以下である蛍光体原料用合金粉末を得ることができる(前記4)に相当する)。
(a)蛍光体を構成する金属Ln、Ca、Sr、MII、MIII及びMIVの原料のうち、
2種以上を溶融させて、これらの元素を含む合金溶湯を用意する(融解工程)。
(b)合金溶湯を不活性ガス中で微細化する(微細化工程)。
(c)微細化した合金溶湯を凝固させ、合金粉末を得る(凝固工程)。
即ち、この方法は、合金溶湯をガス中で微細化し、これを凝固させて粉末を得るものである。前記(b)微細化工程及び(c)凝固工程は、例えば、合金溶湯を噴霧する方法、ロールやガス流により急冷し、リボン状に微細化する方法やアトマイズ法等により粉末化することが好ましく、中でもアトマイズ法を用いることが好ましい。
アトマイズ法とは、液体を滴下又はノズルで吹き出し、ジェット流体によって粉砕して液滴とし、凝固させて粉末化する方法を指す。アトマイズ法としては、例えば、水アトマイズ法、ガスアトマイズ法、遠心力アトマイズ法等が挙げられる。中でも、酸素等の不純物の混入が少なく、生成する合金粉末が球状になることから、ガスアトマイズ法が特に好
ましい。なお、本発明においてレビアトマイズ法も使用可能である。レビアトマイズ法とは、ガスアトマイズ法にレビテーション溶解を組み合わせたもので、これを用いると、ルツボと原料との接触を避けることができる。
まず、蛍光体原料用合金を製造するには、{原料の秤量}に記載の方法と同様に、原料となる金属や合金を秤量する。そして、{原料の融解}の記載の方法と同様にして、原料を融解させて合金化し、蛍光体原料用合金の合金溶湯を用意する。
得られた合金溶湯は、ついで、(b)微細化工程に供される。この際、合金溶湯は、そのまま(b)微細化工程に供しても良く、この合金溶湯を一旦冷却して鋳造し、合金の鋳塊(インゴット)を得てから、これを再度融解して(b)微細化工程に供しても良い。
また、(b)微細化工程と(c)凝固工程とを一工程で行なっても良い。特に、ガスアトマイズ法であれば、これらの工程を一工程で容易に実施することができる。
以下、そのガスアトマイズ法を例に説明する。
図4にガスアトマイズ法による合金粉末化装置の模式図を例示する。この図4の装置では、誘導コイル102を設けた溶解室101において、原料となる金属及び/又は合金(前述の如く、原料金属を融解して合金溶湯を調製し、これをそのままガスアトマイズ法により粉末化する場合と、この合金溶湯を一旦凝固、鋳造し、これを融解する場合とがあるが、以下のアトマイズ法の説明においてこれらを単に「原料合金」と称す。)を融解し、得られた合金溶湯を、溶解室101内のルツボ103の底部に設けた細穴から流し、溶湯の流れ又は液滴を作る。流出した溶湯に、噴射ノズル104から粉砕ガスのジェット流を吹き付けて、その粉砕ガスのジェット流のエネルギーで、流下してくる溶湯を順次、微細化し、生成した微細な液滴を噴射室105内で凝固させて合金粉末を作製する。通常、得られた合金粉末の粗粒子は回収室106で直接回収し、細粒子はサイクロン107にて回収する。なお、未粉砕の溶湯を除去する溶湯受けを噴射室105に設けることもできる。
溶解室101の圧力は本発明の蛍光体を製造できる限り任意であるが、通常1×10Pa以上、また、通常1×10Pa以下が好ましく、安全性の面から、大気圧以下で行なうことがより好ましい。さらに、溶解室101の雰囲気としては、金属の酸化を防ぐため不活性ガス雰囲気が好ましい。不活性ガスとしては、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガス類元素が挙げられ、中でもアルゴンが好ましい。なお、不活性ガスは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
ルツボ103の材質としては、本発明の蛍光体を製造できる限り任意であるが、例えば、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、黒鉛、窒化ホウ素等が使用でき、不純物の混入を避けることができることから、酸化アルミニウム又は窒化ホウ素が好ましい。なお、ルツボ103の原料は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
原料合金の融解方法に制限は無いが、前述の{原料の融解}の融解工程と同様に、高周波融解法で融解することが好ましい。ルツボ103内の溶湯は、高周波誘導コイル102に電力を供給することにより、原料として用いる合金又は金属の凝固点以上、好ましくは1450℃以上、さらに好ましくは1480℃以上、また、通常1800℃以下、好ましくは1700℃以下、さらに好ましくは1600℃以下で保持する。
噴射ノズル104は、通常、耐熱性の高いセラミックスが使用され、中でも酸化アルミニウム、酸化カルシウム、窒化ホウ素製が好ましい。また、ノズルの内径は、溶湯の粘性等により適宜選択されるが、通常0.5mm以上、好ましくは1mm以上、また、通常5mm以下、好ましくは3mm以下である。
粉砕ガスは、合金溶湯に直接衝突させることから、不活性ガスが好ましい。不活性ガスの中でも、窒素あるいはアルゴン等の希ガスが好ましい。なお、不活性ガスは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
粉砕ガスの温度に制限は無いが、通常、室温である。
また、粉砕ガスの噴射圧は所望の粒径の合金粉末が得られる限り任意であるが、通常10kg/cm(0.98MPa)以上、好ましくは20kg/cm(1.96MPa)以上、通常100kg/cm(9.8MPa)以下、80kg/cm(7.84MPa)以下である。噴射圧がこの範囲を外れると、収率が低下する傾向にある。
噴射室105及び回収室106の雰囲気は、不活性ガス雰囲気又は窒素雰囲気であることが好ましく、経済的な理由から、窒素雰囲気又は窒素含有不活性ガス雰囲気であることがさらに好ましい。
噴射室105及び回収室106の窒素濃度は、本発明の蛍光体を製造できる限り任意であるが、通常0.1%以上、好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上、また、通常100%以下である。窒素濃度が低すぎると、粉末化の過程、及び合金粉末の回収過程で粒子表面から揮発性の高い金属成分が揮発して表面の組成がずれる場合がある。
噴射室105及び回収室106の圧力は、通常、大気圧付近であり、また、噴射室105及び回収室106の温度については、蛍光体原料用合金の融点以下であれば特に制限はない。噴射室105の温度は、通常は950℃以下、0℃以上である。また、回収室106の温度は、通常0℃以上、中でも20℃以上、また、通常400℃以下、中でも40℃以下であることが好ましい。
(c)凝固工程においては、ジェット流体によって生成した合金溶湯の液滴を急冷することが好ましい。急冷とは高温度より急速に冷却する操作のこという。合金溶湯の液滴が凝固するまでにかかる時間は本発明の蛍光体を製造できる限り任意であるが、通常1分以下、好ましくは30秒以下、より好ましくは10秒以下であり、さらに好ましくは3秒以下である。上記のガスアトマイズ法では、細穴を通して落下させた溶湯に粉砕ガスを衝突させることにより、粉砕させて合金粉末を製造している。この際、微粒子に粉砕された瞬間から、表面からの熱幅射と粉砕ガスにより急速に冷却される状態となり、体積に対して、熱が放散する表面積が大きいので急冷凝固が可能となり、好ましい。
ガスアトマイズ法では、上述した(b)微細化工程、(c)凝固工程において、粉砕ガス、及び/又は噴射室105や回収室106の雰囲気中の窒素濃度等を制御すると、合金粉末を製造しながら同時に上述した一次窒化工程を進行させ、窒素含有合金を製造することができる。この場合、例えば、下記i)のようにすることが好ましく、下記i)及びii)とすることがさらに好ましい。
i)粉砕ガス、噴射室105及び回収室106のうちいずれか1つ以上を高濃度の窒素含有雰囲気とする。この時の窒素濃度は、100体積%に近いことが好ましく、通常90体積%以上、好ましくは95体積%以上、さらに好ましくは98体積%以上である。
ii)噴射ノズル104やルツボ103の底部の温度を、合金の融点によっても異なるが、通常900℃以上、好ましくは1000℃以上、また通常1300℃以下、好ましくは1200℃以下にする。この場合、例えば、高周波融解法で加熱しても良いし、溶解室101からの熱伝導で上述の温度となるように設計しても良い。
このようにして製造された合金粉末は、必要に応じて分級処理を行って、前述の一次窒化工程及び/又は二次窒化工程に用いられる。例えばバイブレーティングスクリーン、シフターなどの網目を使用した篩い分け装置、エアセパレータ等の慣性分級装置、サイクロン等の遠心分離機を使用して、前述の所望の重量メジアン径D50及び粒度分布に調整される。
この分級工程についても、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、不活性ガス雰囲気中の酸素濃度は10%以下、特に5%以下が好ましい。不活性ガスの種類に特に制限はないが、通常、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの1種又は2種以上が用いられ、特に経済性の観点から窒素が好ましい。
以上のように、上記のアトマイズ法などによっても、蛍光体原料用合金又は窒素含有合金で形成された合金粉末として得られる。特に、この上記の方法によれば、(a)融解工程で得られる合金溶湯を粉末化することにより、原料金属から合金粉末、さらには窒素含有合金の製造までを一貫した工程で行なうことができる。また、更に、得られた合金粉末及び/又は窒素含有合金を、二次窒化工程で用いる焼成装置まで移送する移送手段(パイプライン、ベルトコンベア等)を設けることにより、原料金属から蛍光体の製造までを一貫して行うことも可能である。
[V]アトマイズ法等により製造される合金粉末の特性
上記[IV]に記載のアトマイズ法等により製造される合金粉末(蛍光体原料用合金又は窒素含有合金で形成された合金粉末)は、好ましくは、次のような特性を有する。
(流動性)
流動性を示す指標として、安息角、崩潰角、差角がある。これらの測定は、Carrら、Chemical Engineering,Jan.18,(1965)166−167に記載される方法に従って行うことができ、例えば、パウダテスタPT−N型(ホソカワミクロン株式会社製)を用いて測定することができる。
安息角とは、粉粒体を漏斗等から静かに平面状に落下させ、円錐状に堆積させた時に、前記円錐の母線と水平面とのなす角をいう。
本発明で用いる蛍光体原料用合金粉末が前述のアトマイズ法等で製造されたものである場合、その安息角は、通常45度以下(前記4)に相当する。)、好ましくは40度以下であり、より好ましくは35度以下であり、小さいほど好ましい。安息角が小さいほど流動性が高く、工業的に操作する場合、取り扱い性が良いからである。一方、安息角が大きすぎると、流動性が低く、輸送、運搬が困難となる傾向にある。
崩潰角とは、安息角を作っている粉粒体に一定の衝撃を与えて崩壊した後、残る山の角度をいう。
本発明で用いる蛍光体原料用合金粉末が前述のアトマイズ法等で製造されたものである場合、その崩潰角は、通常25度以下、好ましくは20度以下、より好ましくは15度以下であり、小さいほど好ましい。
また、安息角から崩潰角をひいた角度を差角という。
本発明で用いる蛍光体原料用合金粉末が前述のアトマイズ法等で製造されたものである場合、その差角は20度以下が好ましい。差角が大きすぎると、フラッシング現象が起こりやすく、制御が困難になる傾向にあり、好ましくないからである。
安息角、崩潰角、差角が小さく、流動性が高い合金粉末を原料として使用すると、取り扱い性が向上し、輸送・運搬しやすくなるという効果が得られる。
(形状)
本発明で用いる蛍光体原料用合金粉末が前述のアトマイズ法等で製造されたものである場合、その合金粒子の形状については、球状性を数量的に表す指標として平均円形度を用いることができる。
ここで、平均円形度は、以下の式で求められ、粒子の投影図において各粒径の真円との近似程度を表す。
平均円形度=粒子の投影面積に等しい真円の周囲長さ/粒子の投影図の周囲長さ
本発明で用いる蛍光体原料用合金粉末が前述のアトマイズ法等で製造されたものである場合、その平均円形度は、通常0.7以上、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上であり、1に近いほど好ましい。
また、本発明で用いる蛍光体原料用合金粉末が前述のアトマイズ法等で製造されたものである場合、その平均円形度が0.9以上である真球状の合金粒子の個数割合は、通常20%以上、好ましくは40%以上である。
(重量メジアン径D50
本発明で用いる蛍光体原料用合金粉末が前述のアトマイズ法等で製造されたものである場合、その重量メジアン径D50は、合金粉末を構成する金属元素の活性度により粒径を調整する必要があり、通常の場合、0.1μm以上、好ましくは1μm以上、さらに好ましくは3μm以上、また100μm以下、好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。また、Srを含有する場合は、雰囲気ガスとの反応性が高いため、合金粉末の重量メジアン径D50は、通常5μm以上、好ましくは8μm以上、より好ましくは10μm以上、特に好ましくは13μm以上とすることが望ましい。
前述の重量メジアン径D50の範囲よりも小さいと、窒化等の反応時の発熱速度が大きくなり、反応の制御が困難となる場合がある。一方で前述の重量メジアン径D50の範囲よりも大きいと、合金粒子内部での窒化等の反応が不十分となり、輝度が低下する場合がある。
(タップ密度)
タップ密度とは、一定の振動(タッピング)を加えた場合の密度をいう。即ち、本明細書において、タップ密度とは、次のように測定して得た値である。
合金粉末約10gを容量10mlのガラス製メスシリンダーに入れて、高さ約1cm〜5cmの位置からテーブル上に50回/分〜500回/分程度の間隔で、体積が変化しなくなるまで(通常200回〜800回)手動でタッピングした後、合金粉末の体積(V)を測定する。総重量からメスシリンダーの風袋重量を差し引き、合金粉末の正味の重量(W)を測定し、下式[9]で計算した値をタップ密度と言う。
タップ密度(g/ml)=W(g)/V(ml) …[9]
本発明で用いる蛍光体原料用合金粉末が前述のアトマイズ法等で製造されたものである場合、そのタップ密度は、通常1.9g/ml以上、好ましくは2g/ml以上、また通常4g/ml以下であり、好ましくは3g/ml以下である。タップ密度が低すぎると、蛍光体の製造において、反応容器に充填しにくく、生産性が低下する場合がある。タップ密度が高過ぎると、焼成工程において合金粒子と窒素等の焼成雰囲気との接触効率が低下する場合がある。
(酸素及び炭素含有量)
本発明で用いる蛍光体原料用合金粉末が前述のアトマイズ法等で製造されたものである場合、その酸素含有量は、通常2重量%以下であり、1重量%以下が好ましい。下限は通常0.05重量%以上であり、0.1重量%以上が好ましい。
本発明で用いる蛍光体原料用合金粉末が前述のアトマイズ法等で製造されたものである場合、その炭素含有量は、0.2重量%以下であり、0.1重量%以下がさらに好ましい。
合金粉末の酸素及び炭素含有量がこの範囲を外れると、得られる蛍光体の発光特性が低下する傾向にあり、好ましくない。
前述のガスアトマイズ法等を用いて合金の粉末化を行なうと、ジェットミル等を用いて合金を機械的に粉砕する場合と比較して、不純物の混入が少なくなる。不純物が少ない合金粉末を原料として使用すると、得られる蛍光体の輝度が向上するという効果が得られる。
また、合金の粉末化に、特に前述のガスアトマイズ法を用いると、均一に溶融された合金の湯を瞬間的に液滴化すると共に冷却することができるため、均一な微細組織を有する合金粉末が得られる。また、同じ溶湯から連続的に液滴をつくるため、粒子間の組成差が極めて小さい合金粉末を得ることができるという効果も得られる。しかも、流動性が高く、不純物の少ない合金粉末を得ることができる。
[VI]合金粉末と窒化物又は酸窒化物との混合
前記の一次窒化工程及び/又は二次窒化工程においては、窒化対象である合金(即ち、蛍光体原料用合金及び/又は窒素含有合金)を、窒化物又は酸窒化物の存在下で、好ましくは、窒化物又は酸窒化物と混合してから加熱してもよい(前記3)に相当する)。前記の窒化物又は酸窒化物としては、本発明の蛍光体を構成する金属元素を1種又は2種以上含有する窒化物又は酸窒化物(以下、「原料窒化物」と称す場合がある)を用いる。
原料窒化物の組成は、前述の原料合金等と合わせて目的の蛍光体組成とすることができるものであればよく、特に制限はない。従って、原料窒化物は、前述した蛍光体の組成と同様に、少なくともSiを含む4価の金属元素Mを含むことが好ましく、さらにSi以外の金属元素1種以上を含むことがより好ましく、付活元素M、2価の金属元素M、及び4価の金属元素Mを含むことがさらに好ましい。ここで、2価の金属元素Mとしては、アルカリ土類金属元素が好ましい。また、均一な蛍光体を得る上では、原料窒化物の組成を、目的の蛍光体と同一の構成元素とすることが、好ましい。例えば、原料窒化物は、前述の一般式[1]で表される組成であることが好ましく、前述の一般式[2]で表される組成であることがより好ましい。
原料窒化物の具体例としては、AlN、Si、Ca、Sr、EuN等の蛍光体を構成する元素の窒化物、CaAlSiN、(Sr,Ca)AlSiN、(Sr,Ca)Si、SrSiN等の蛍光体を構成する元素の複合窒化物、(Sr,Ca)AlSiN:Eu、(Sr,Ca)AlSiN:Ce、(Sr,Ca)Si:Eu、SrSiN:Eu、Sr1−xCaSi:Eu等の付活元素を含む複合窒化物等が挙げられる。なお、原料窒化物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、原料窒化物は、微量の酸素を含んでいてもよい。原料窒化物の酸素/(酸素+窒素)の割合は本発明の蛍光体が得られる限り任意であるが、通常0.5以下、中でも0.3以下、特には0.2以下とすることが好ましい。原料窒化物中の酸素の割合が多すぎると輝度が低下する可能性がある。
原料窒化物の重量メジアン径D50は、他の原料との混合に支障がない限り、特に制限は無い。ただし、他の原料と混合しやすいことが好ましく、例えば、合金粉末と同程度であることが好ましい。原料窒化物の具体的な重量メジアン径D50の値は、蛍光体が得られる限り任意であるが、200μm以下であることが好ましく、より好ましくは100μm以下、特に好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下、また、0.1μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.5μm以上である。
原料窒化物の蛍光体原料全体量に対する混合割合、即ち、前述の合金(蛍光体原料用合金又は窒素含有合金で形成された合金粉末)と原料窒化物との合計に対する混合割合は、通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは15重量%以上である。原料窒化物の混合割合が低すぎると、得られる蛍光体の輝度の向上効果が不十分となる傾向がある。一方、原料窒化物の混合割合の上限は、特に制限は無いが、原料窒化物の混合割合が高すぎると、得られる蛍光体の輝度は向上するものの、生産性が低下する傾向にあるため、通常、85重量%以下とする。
このように一次窒化工程及び/又は二次窒化工程において合金に原料窒化物を混合すると、窒化時の単位体積当たりの発熱速度が抑えられる。この結果、発生した熱により原料の溶融や分相、あるいは窒化物の分解が起こり、得られる蛍光体の特性が低下するという現象を抑制することができる。
例えば、合金粉末を原料として本発明の蛍光体を製造する場合、二次窒化工程において窒化時の発熱により合金粉末が溶融すると、合金粒子同士が融着し、内部まで窒素ガスが侵入できず、合金粒子の内部まで窒化反応が進行しない可能性がある。このため、得られる蛍光体の輝度が低下する傾向にあり、場合によっては発光しない場合もある。しかし、合金粉末に原料窒化物を混合することにより、これらの点が改善される。
また、窒化反応容器の直径が同一の場合において、合金粉末の充填量が少なければ、放熱性が高く、窒化反応時の発熱量の蓄積が少ないため、発生した熱による合金の溶融や分相、あるいは窒化物又は酸窒化物の分解といった現象は生じない。しかし、蛍光体の合成には、高温下で反応を行なうことになるため、合成時のエネルギー消費量が大きく、一回あたりの充填量を増やすことがコスト低減のためには好ましい。そして、反応容器の合金充填量が多いと、放熱性が低下するため、発生した熱による合金の溶融や分相、あるいは窒化物又は酸窒化物の分解が生じる可能性がある。
これに対し、一次窒化工程及び/又は二次窒化工程において合金に原料窒化物を混合すると、窒化反応容器の合金充填量を増やした上で発熱量を抑え、効率的な窒化処理を行なえる。これは、窒化物又は酸窒化物の融点は、通常、合金と比較して高いため、合金に原料窒化物を混合すると、蛍光体原料全体の放熱性を向上させることによるものと考えられ、したがって、窒化時の合金の溶融を防ぎ、窒化反応を円滑に進行させることにより、高特性の蛍光体が高い生産性で得られるようになる。
[蛍光体]
以下に本発明の製造方法により製造される蛍光体(以下、「本発明の蛍光体」と称する場合がある。)について説明する。本発明の蛍光体としては、窒化物又は酸窒化物を母体とする蛍光体であることが好ましい。
なお、本明細書において、蛍光体の母体とは、付活元素を固溶し得る結晶又はガラス(アモルファス)を意味し、付活元素を含有せずに、結晶又はガラス(アモルファス)それ自体が発光するものも含むものとする。
{蛍光体の組成}
本発明の蛍光体は、本発明の製造方法により製造されたものであれば、その組成に特に制限はないが、少なくともSiを含む4価の金属元素Mと、Si以外の金属元素の1種類以上とを含むことが好ましく、さらに付活元素Mを含有することがより好ましい。ここで、Si以外の金属元素としては、アルカリ土類金属元素が好ましい。
本発明の蛍光体は、付活元素M、2価の金属元素M、及び少なくともSiを含む4価の金属元素Mを含むことが好ましく、付活元素M、2価の金属元素M、3価の金属元素M、及び少なくともSiを含む4価の金属元素Mを含むことがより好ましい。
付活元素Mとしては、窒化物又は酸窒化物を母体とする蛍光体を構成する結晶母体に含有可能な各種の発光イオンを使用することができるが、Cr、Mn、Fe、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbよりなる群から選ばれる1種以上の元素を使用すると、発光特性の高い蛍光体を製造することが可能なので好ましい。また、付活元素MとしてはMn、Ce、Pr及びEuの1種又は2種以上を含むことが好ましく、特にCe及び/又はEuを含むことが高輝度の赤色又は黄色発光を示す蛍光体を得ることができるので更に好ましい。また、輝度を上げることや蓄光性を付与するなど様々な機能を持たせるために、付活元素MとしてはCe及び/又はEu以外に共付活剤を1種又は複数種含有させても良い。
付活元素M以外の元素としては、各種の2価、3価、4価の金属元素が使用可能である。2価の金属元素MがMg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、3価の金属元素MがAl、Ga、In、及びScよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、4価の金属元素MがSi、Ge、Sn、Ti、Zr、及びHfよりなる群から選ばれる1種以上の元素であることが、発光特性の高い蛍光体を得ることができるので好ましい。
また、2価の金属元素Mの50モル%以上がCa及び/又はSrとなるように組成を調整すると発光特性の高い蛍光体が得られるので好ましい。中でも、2価の金属元素Mの80モル%以上をCa及び/又はSrとすることがより好ましく、90モル%以上をCa及び/又はSrとすることが更に好ましく、2価の金属元素Mの全てをCa及び/又はSrとすることが最も好ましい。
また、3価の金属元素Mの50モル%以上がAlとなるように組成を調整すると発光特性の高い蛍光体が得られるので好ましい。中でも、3価の金属元素Mの80モル%以上をAlとすることが好ましく、90モル%以上をAlとすることがより好ましく、3価の金属元素Mの全てをAlとすることが最も好ましい。
また、少なくともSiを含む4価の金属元素Mの50モル%以上がSiとなるように組成を調整すると発光特性の高い蛍光体が得られるので好ましい。中でも、少なくともSiを含む4価の金属元素Mの80モル%以上をSiとすることが好ましく、90モル%以上をSiとすることがより好ましく、4価の金属元素Mの全てをSiとすることが好ましい。
特に、2価の金属元素Mの50モル%以上がCa及び/又はSrであり、かつ、3価の金属元素Mの50モル%以上がAlであり、かつ、少なくともSiを含む4価の金属元素Mの50モル%以上がSiとなるようにすることにより、発光特性が特に高い蛍光体が製造できるので好ましい。
中でも、本発明の蛍光体としては、下記一般式[1]で表される化学組成を有することが好ましい。
[1]
(但し、a、b、c、d、e、fはそれぞれ下記の範囲の値である。
0.00001≦a≦0.15
a+b=1
0.5≦c≦1.5
0.5≦d≦1.5
2.5≦e≦3.5
0≦f≦0.5 )
尚、前記一般式[1]において、Mは前記付活元素Mを表し、Mは前記2価の金属元素Mを表し、Mは前記3価の金属元素Mを表し、Mは前記少なくともSiを含む4価の金属元素Mを表す。
また、前記一般式[1]におけるa〜fの数値範囲の好適理由は次の通りである。
aが0.00001より小さいと十分な発光強度が得られない傾向にあり、aが0.15より大きいと濃度消光が大きくなって発光強度が低くなる傾向にある。従って、aは通常0.00001以上、好ましくは0.0001以上、より好ましくは0.001以上、更に好ましくは0.002以上、特に好ましくは0.004以上で、通常0.15以下、好ましくは0.1以下、より好ましくは0.05以下、更に好ましくは0.04以下、特に好ましくは0.02以下となるように原料を混合することが好ましい。
aとbの合計は、蛍光体の結晶母体中において付活元素Mが2価の金属元素Mの原子位置を置換するので、通常1となるように原料混合組成を調整する。
cが0.5より小さい場合も、cが1.5より大きい場合も、製造時に異相が生じ、前記蛍光体の収率が低くなる傾向にある。従って、cは通常0.5以上、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.8以上で、通常1.5以下、好ましくは1.4以下、より好ましくは1.2以下となるように原料を混合することが発光強度の観点からも好ましい。
dが0.5より小さい場合も、dが1.5より大きい場合も、製造時に異相が生じ、前記蛍光体の収率が低くなる傾向にある。従って、dは通常0.5以上、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.8以上で、通常1.5以下、好ましくは1.4以下、より好ましくは1.2以下となるように、原料を混合することが発光強度の観点からも好ましい。
eは窒素の含有量を示す係数であり、
Figure 2008106224
となる。この式に0.5≦c≦1.5,0.5≦d≦1.5を代入すれば、eの範囲は
1.84≦e≦4.17
となる。しかしながら、前記一般式[1]で表される蛍光体組成において、窒素の含有量を示すeが2.5未満であると蛍光体の収率が低下する傾向にある。また、eが3.5を超えても蛍光体の収率が低下する傾向にある。従って、eは通常2.5≦e≦3.5である。
前記一般式[1]で表される蛍光体中の酸素は、原料金属中の不純物として混入する場合、粉砕工程、窒化工程などの製造プロセス時に導入される場合などが考えられる。酸素の割合であるfは蛍光体の発光特性の低下が容認できる範囲で0≦f≦0.5が好ましい。
前記一般式[1]で表される蛍光体の中でも、下記一般式[2]で表される蛍光体とすることができる。
1’ a’Srb’Cac’2’ d’Ale’Sif’g’ [2]
(但し、a’、b’、c’、d’、e’、f’、g’はそれぞれ下記の範囲の値である。
0.00001≦a’≦0.15
0.1≦b’≦0.99999
0≦c’<1
0≦d’<1
a’+b’+c’+d’=1
0.5≦e’≦1.5
0.5≦f’≦1.5
0.8×(2/3+e’+4/3×f’)≦g’≦1.2×(2/3+e’+4/3×f’))
ここで、M1’は前記一般式[1]におけるMと同様に、Cr、Mn、Fe、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びYbからなる群から選ばれる付活元素を表す。付活元素M1’としては中でも、Mn、Ce、Pr及びEuの1種又は2種以上を含むことが好ましく、特にEu及び/又はCeを含むことが好ましい。
2’はMg及び/又はBaを表し、好ましくはMgである。Mgを含有させることにより、蛍光体の発光ピーク波長を長波長化することができる。
a’の範囲は、通常0.00001以上、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.002以上であり、また、通常0.15以下、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.01以下である。
b’の範囲は、通常0.1以上であり、好ましくは0.4以上、より好ましくは0.7以上であり、また、通常0.99999以下である。
c’の範囲は、通常0以上であり、また通常1未満、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下である。
d’の範囲は、通常0以上であり、また通常1未満、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.2以下である。
a’、b’、c’、d’相互の関係は通常、
a’+b’+c’+d’=1
を満足する。
e’の範囲は通常、0.5以上、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上であり、また通常1.5以下、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下である。
f’の範囲は通常、0.5以上であり、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上であり、また通常1.5以下であり、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下である。
g’の範囲は、通常0.8×(2/3+e’+4/3×f’)以上であり、好ましくは0.9×(2/3+e’+4/3×f’)以上、より好ましくは2.5以上であり、また通常1.2×(2/3+e’+4/3×f’)以下であり、好ましくは1.1×(2/3+e’+4/3×f’)以下、より好ましくは3.5以下である。
以下に、一般式[2]においてb’の値が、0.4≦b’≦0.99999の範囲であり、かつ、d’=0である蛍光体を「Sr置換量が多い蛍光体」と略記する場合がある。
本発明の蛍光体に含まれる酸素は、原料金属中の不純物として混入するもの、粉砕工程、窒化工程などの製造プロセス時に混入するものなどが考えられる。
酸素の含有量は蛍光体の発光特性低下が容認できる範囲で通常5重量%以下、好ましくは2重量%以下、最も好ましくは1重量%以下である。
蛍光体の組成の具体例としては、(Sr,Ca,Mg)AlSiN:Eu、(Sr,Ca,Mg)AlSiN:Ce、(Sr,Ca,Ba)Si:Eu、(Sr,Ca,Ba)Si:Ce等が挙げられる。
{蛍光体の特性}
本発明で製造される蛍光体は、例えば、以下のような特性を有する場合がある。
<発光色>
本発明の蛍光体の発光色は、化学組成等を調整することにより、青色、青緑色、緑色、黄緑色、黄色、橙色、赤色等、所望の発光色とすることができる。
(発光スペクトル)
例えば、本発明の蛍光体が、前記のSr置換量が多い蛍光体であり、かつ、付活元素MとしてEuを含有する場合、橙色ないし赤色蛍光体としての用途に鑑みて、ピーク波長465nmの光で励起した場合における発光スペクトルを測定した場合に、以下の特徴を有することが好ましい。
まず、上記の蛍光体は、上述の発光スペクトルにおけるピーク波長λp(nm)が、通常590nmより大きく、中でも600nm以上、また、通常650nm以下、中でも640nm以下の範囲であることが好ましい。この発光ピーク波長λpが短過ぎると黄味を帯びる傾向がある一方で、長過ぎると暗赤味を帯びる傾向があり、何れも橙色ないし赤色光としての特性が低下する場合があるので好ましくない。
また、上記の蛍光体は、上述の発光スペクトルにおける発光ピークの半値幅(full width at half maximum。以下適宜「FWHM」と略称する。)が、通常50nmより大きく、中でも70nm以上、更には75nm以上、また、通常120nm未満、中でも100nm以下、更には90nm以下の範囲であることが好ましい。この半値幅FWHMが狭過ぎると発光強度が低下する場合があり、広過ぎると色純度が低下する場合がある。
なお、上記の蛍光体をピーク波長465nmの光で励起するには、例えば、GaN系発光ダイオードを用いることができる。また、本発明の蛍光体の発光スペクトルの測定は、例えば、励起光源として150Wキセノンランプを、スペクトル測定装置としてマルチチャンネルCCD検出器C7041(浜松フォトニクス社製)を備える蛍光測定装置(日本分光社製)等を用いて行うことができる。発光ピーク波長、及び発光ピークの半値幅は、得られる発光スペクトルから算出することができる。
(重量メジアン径D50
本発明の蛍光体は、その重量メジアン径D50が、通常3μm以上、中でも5μm以上、また、通常30μm以下、中でも20μm以下の範囲であることが好ましい。重量メジアン径D50が小さすぎると、輝度が低下する場合や、蛍光体粒子が凝集してしまう場合がある。一方、重量メジアン径D50が大きすぎると、塗布ムラやディスペンサー等の閉塞が生じる傾向がある。
なお、本発明における蛍光体の重量メジアン径D50は、例えばレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置等の装置を用いて測定することができる。
(温度特性)
本発明の蛍光体は、温度特性にも優れるものである。具体的には、波長455nmにピークを有する光を照射した場合における25℃での発光スペクトル図中の発光ピーク強度値に対する150℃での発光スペクトル図中の発光ピーク強度値の割合が、通常55%以上であり、好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上である。
また、通常の蛍光体は温度上昇と共に発光強度が低下するので、該割合が100%を越えることは考えられにくいが、何らかの理由により100%を超えることがあっても良い。ただし150%を超えるようであれば、温度変化により色ずれを起こす傾向となる。
本発明の蛍光体は、上記発光ピーク強度に関してだけでなく、輝度の点からも温度特性に優れたものである。具体的には、波長455nmにピークを有する光を照射した場合の25℃での輝度に対する150℃での輝度の割合も、通常55%以上であり、好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上である。
尚、上記温度特性を測定する場合は、例えば、発光スペクトル装置として大塚電子製MCPD7000マルチチャンネルスペクトル測定装置、輝度測定装置として色彩輝度計BM5A、ペルチェ素子による冷却機構とヒーターによる加熱機構を備えたステージ及び光源として150Wキセノンランプを備える装置を用いて、以下のように測定することができる。ステージに蛍光体サンプルを入れたセルを載せ、温度を20℃から150℃の範囲で変化させる。蛍光体の表面温度が測定温度で一定となったことを確認する。次いで、光源から回折格子で分光して取り出したピーク波長455nmの光で蛍光体を励起して発光スペクトル測定する。測定された発光スペクトルから発光ピーク強度を求める。ここで、蛍光体の励起光照射側の表面温度の測定値は、放射温度計と熱電対による温度測定値を利用して補正した値を用いる。
(その他)
本発明の蛍光体は、その内部量子効率が高いほど好ましい。その値は、通常0.5以上、好ましくは0.6以上、更に好ましくは0.7以上である。内部量子効率が低いと発光効率が低下する傾向にあり、好ましくない。
本発明の蛍光体は、その吸収効率も高いほど好ましい。その値は通常0.5以上、好ましくは0.6以上、更に好ましくは0.7以上である。吸収効率が低いと発光効率が低下する傾向にあり、好ましくない。
{蛍光体の用途}
本発明の蛍光体は、高輝度であり、演色性が高いという特性を生かして、各種の発光装置(後述する「本発明の発光装置」)に好適に用いることができる。例えば、本発明の蛍光体が橙色ないし赤色蛍光体である場合、緑色蛍光体、青色蛍光体等を組み合わせれば、高演色性の白色発光装置を実現することができる。こうして得られた発光装置を、画像表示装置の発光部(特に液晶用バックライトなど)や照明装置として使用することができる。また、本発明の蛍光体を単独で使用することも可能であり、例えば、近紫外LEDと本発明の橙色蛍光体とを組み合わせれば、橙色発光装置を製造することができる。
{蛍光体含有組成物}
本発明の蛍光体は、液体媒体と混合して用いることもできる。特に、本発明の蛍光体を発光装置等の用途に使用する場合には、これを液体媒体中に分散させた形態で用いることが好ましい。本発明の蛍光体を液体媒体中に分散させたものを、適宜「本発明の蛍光体含有組成物」と呼ぶものとする。
<蛍光体>
本発明の蛍光体含有組成物に含有させる本発明の蛍光体の種類に制限は無く、上述したものから任意に選択することができる。また、本発明の蛍光体含有組成物に含有させる本発明の蛍光体は、1種のみであってもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。更に、本発明の蛍光体含有組成物には、必要に応じて本発明の蛍光体以外の蛍光体を含有させてもよい。
<液体媒体>
本発明の蛍光体含有組成物に使用される液体媒体としては、該蛍光体の性能を目的の範囲で損なわない限りにおいて特に限定されない。例えば、所望の使用条件下において液状の性質を示し、本発明の蛍光体を好適に分散させるとともに、好ましくない反応を生じないものであれば、任意の無機系材料及び/又は有機系材料が使用できる。
無機系材料としては、例えば、金属アルコキシド、セラミック前駆体ポリマー若しくは金属アルコキシドを含有する溶液をゾル−ゲル法により加水分解重合して成る溶液、又はこれらの組み合わせを固化した無機系材料(例えばシロキサン結合を有する無機系材料)等を挙げることができる。
有機系材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。具体的には、例えば、ポリメタアクリル酸メチル等のメタアクリル樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエステル樹脂;フェノキシ樹脂;ブチラール樹脂;ポリビニルアルコール;エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース系樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;シリコーン樹脂等が挙げられる。
これらの中で特に照明など大出力の発光装置に蛍光体を用いる場合には、耐熱性や耐光性等を目的として珪素含有化合物を使用することが好ましい。
珪素含有化合物とは、分子中に珪素原子を有する化合物をいい、例えば、ポリオルガノシロキサン等の有機材料(シリコーン系材料)、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素等の無機材料、及びホウケイ酸塩、ホスホケイ酸塩、アルカリケイ酸塩等のガラス材料を挙げることができる。中でも、ハンドリングの容易さ等の点から、シリコーン系材料が好ましい。
上記シリコーン系材料とは、通常、シロキサン結合を主鎖とする有機重合体をいい、例えば下記式(i)で表される化合物及び/又はそれらの混合物が挙げられる。
Figure 2008106224
上記式(i)において、RからRは同じであっても異なってもよく、有機官能基、水酸基、水素原子からなる群から選択される。
また、上記式(i)において、M、D、T及びQは、各々0以上1未満の数であり、且つ、M+D+T+Q=1を満足する数である。
該シリコーン系材料は、後述の第1の発光体として用いることができる半導体発光素子の封止に用いる場合、液状のシリコーン系材料を用いて封止した後、熱や光によって硬化させて用いることができる。
シリコーン系材料を硬化のメカニズムにより分類すると、通常、付加重合硬化タイプ、縮重合硬化タイプ、紫外線硬化タイプ、パーオキサイド架硫タイプなどのシリコーン系材料を挙げることができる。これらの中では、付加重合硬化タイプ(付加型シリコーン樹脂)、縮合硬化タイプ(縮合型シリコーン樹脂)、紫外線硬化タイプが好適である。以下、付加型シリコーン系材料、及び縮合型シリコーン系材料について説明する。
付加型シリコーン系材料とは、ポリオルガノシロキサン鎖が、有機付加結合により架橋されたものをいう。代表的なものとしては、例えばビニルシランとヒドロシランをPt触媒などの付加型触媒の存在下反応させて得られるSi−C−C−Si結合を架橋点に有する化合物等を挙げることができる。これらは市販のものを使用することができ、例えば付加重合硬化タイプの具体的商品名としては信越化学工業社製「LPS−1400」「LPS−2410」「LPS−3400」等が挙げられる。
一方、縮合型シリコーン系材料とは、例えば、アルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合で得られるSi−O−Si結合を架橋点に有する化合物を挙げることができる。
具体的には、下記一般式(ii)及び/又は(iii)で表される化合物、及び/又はそ
のオリゴマーを加水分解・重縮合して得られる重縮合物が挙げられる。
m+ m−n (ii)
(式(ii)中、Mは、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンより選択される少なくとも1種の元素を表し、Xは、加水分解性基を表し、Yは、1価の有機基を表し、mは、Mの価数を表す1以上の整数を表し、nは、X基の数を表す1以上の整数を表す。但し、m≧nである。)
s+ s−t−1 (iii)
(式(iii)中、Mは、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンより選択される少なくとも1種の元素を表し、Xは、加水分解性基を表し、Yは、1価の有機基を表し、Yは、u価の有機基を表し、sは、Mの価数を表す1以上の整数を表し、tは、1以上、s−1以下の整数を表し、uは、2以上の整数を表す。)
また、縮合型シリコーン系材料には、硬化触媒を含有させてもよい。この硬化触媒としては、例えば、金属キレート化合物などを好適なものとして用いることができる。金属キレート化合物は、Ti、Ta、Zrの何れか1以上を含むものが好ましく、Zrを含むものが更に好ましい。なお、硬化触媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
このような縮合型シリコーン系材料としては、例えば特願2006−47274号〜47277号明細書及び特願2006−176468号明細書に記載の半導体発光デバイス用部材が好適である。
縮合型シリコーン系材料の中で、特に好ましい材料について、以下に説明する。
シリコーン系材料は、一般に半導体発光素子や素子を配置する基板、パッケージ等との接着性が弱いことが課題とされるが、密着性が高いシリコーン系材料として、特に、以下の特徴〔1〕〜〔3〕のうち1つ以上を有する縮合型シリコーン系材料が好ましい。
〔1〕ケイ素含有率が20重量%以上である。
〔2〕後に詳述する方法によって測定した固体Si−核磁気共鳴(NMR)スペクトルにおいて、下記(a)及び/又は(b)のSiに由来するピークを少なくとも1つ有する。
(a)ピークトップの位置がテトラメトキシシランを基準としてケミカルシフト−40ppm以上、0ppm以下の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上、3.0ppm以下であるピーク。
(b)ピークトップの位置がテトラメトキシシランを基準としてケミカルシフト−80ppm以上、−40ppm未満の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上5.0ppm以下であるピーク。
〔3〕シラノール含有率が0.1重量%以上、10重量%以下である。
本発明においては、上記の特徴〔1〕〜〔3〕のうち、特徴〔1〕を有するシリコーン系材料が好ましく、上記の特徴〔1〕及び〔2〕を有するシリコーン系材料がより好ましく、上記の特徴〔1〕〜〔3〕を全て有するシリコーン系材料が特に好ましい。
以下、上記の特徴〔1〕〜〔3〕について説明する。
<特徴〔1〕(ケイ素含有率)>
従来のシリコーン系材料の基本骨格は炭素−炭素及び炭素−酸素結合を基本骨格としたエポキシ樹脂等の有機樹脂であるが、これに対し本発明のシリコーン系材料の基本骨格はガラス(ケイ酸塩ガラス)などと同じ無機質のシロキサン結合である。このシロキサン結合は、下記表1の化学結合の比較表からも明らかなように、シリコーン系材料として優れた以下の特徴がある。
(I)結合エネルギーが大きく、熱分解・光分解し難いため、耐光性が良好である。
(II)電気的に若干分極している。
(III)鎖状構造の自由度は大きく、フレキシブル性に富む構造が可能であり、シロキサ
ン鎖中心に自由回転可能である。
(IV)酸化度が大きく、これ以上酸化されない。
(V)電気絶縁性に富む。
Figure 2008106224
これらの特徴から、シロキサン結合が3次元的に、しかも高架橋度で結合した骨格で形成されるシリコーン系のシリコーン系材料は、ガラス或いは岩石などの無機質に近く、耐熱性及び耐光性に富む保護皮膜となることが理解できる。特にメチル基を置換基とするシリコーン系材料は、紫外領域に吸収を持たないため光分解が起こり難く、耐光性に優れる。
本発明に好適なシリコーン系材料のケイ素含有率は、通常20重量%以上であるが、中でも25重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましい。一方、上限としては、SiOのみからなるガラスのケイ素含有率が47重量%であるという理由から、通常4
7重量%以下の範囲である。
なお、シリコーン系材料のケイ素含有率は、例えば以下の方法を用いて誘導結合高周波プラズマ分光(inductively coupled plasma spectrometry:以下適宜「ICP」と略する。)分析を行ない、その結果に基づいて算出することができる。
(ケイ素含有率の測定)
シリコーン系材料を白金るつぼ中にて大気中、450℃で1時間、次いで750℃で1時間、950℃で1.5時間保持して焼成し、炭素成分を除去した後、得られた残渣少量に10倍量以上の炭酸ナトリウムを加えてバーナー加熱し溶融させ、これを冷却して脱塩水を加え、更に塩酸にてpHを中性程度に調整しつつケイ素として数ppm程度になるよう定容し、ICP分析を行なう。
<特徴〔2〕(固体Si−NMRスペクトル)>
本発明に好適なシリコーン系材料の固体Si−NMRスペクトルを測定すると、有機基の炭素原子が直接結合したケイ素原子に由来する前記(a)及び/又は(b)のピーク領域に少なくとも1本、好ましくは複数本のピークが観測される。
ケミカルシフト毎に整理すると、本発明に好適なシリコーン系材料において、(a)に記載のピークの半値幅は、分子運動の拘束が小さいために、全般に後述の(b)に記載のピークの場合より小さく、通常3.0ppm以下、好ましくは2.0ppm以下、また、通常0.3ppm以上の範囲である。
一方、(b)に記載のピークの半値幅は、通常5.0ppm以下、好ましくは4.0ppm以下、また、通常0.3ppm以上、好ましくは0.4ppm以上の範囲である。
上記のケミカルシフト領域において観測されるピークの半値幅が大き過ぎると、分子運動の拘束が大きくひずみの大きな状態となり、クラックが発生し易く、耐熱・耐候耐久性に劣る部材となる場合がある。例えば、四官能シランを多用した場合や、乾燥工程において急速な乾燥を行ない大きな内部応力を蓄えた状態などにおいて、半値幅範囲が上記の範囲より大きくなる。
また、ピークの半値幅が小さ過ぎると、その環境にあるSi原子はシロキサン架橋に関わらないことになり、三官能シランが未架橋状態で残留する例など、シロキサン結合主体で形成される物質より耐熱・耐候耐久性に劣る部材となる場合がある。
但し、大量の有機成分中に少量のSi成分が含まれるシリコーン系材料においては、−80ppm以上に上述の半値幅範囲のピークが認められても、良好な耐熱・耐光性及び塗布性能は得られない場合がある。
本発明に好適なシリコーン系材料のケミカルシフトの値は、例えば以下の方法を用いて固体Si−NMR測定を行ない、その結果に基づいて算出することができる。また、測定データの解析(半値幅やシラノール量解析)は、例えばガウス関数やローレンツ関数を使用した波形分離解析等により、各ピークを分割して抽出する方法で行なう。
(固体Si−NMRスペクトル測定及びシラノール含有率の算出)
シリコーン系材料について固体Si−NMRスペクトルを行なう場合、以下の条件で固体Si−NMRスペクトル測定及び波形分離解析を行なう。また、得られた波形データより、シリコーン系材料について、各々のピークの半値幅を求める。また、全ピーク面積に対するシラノール由来のピーク面積の比率より、全ケイ素原子中のシラノールとなっているケイ素原子の比率(%)を求め、別に分析したケイ素含有率と比較することによりシラノール含有率を求める。
(装置条件)
装置:Chemagnetics社InfinityCMX-400核磁気共鳴分光装置
29Si共鳴周波数:79.436MHz
プローブ:7.5mmφCP/MAS用プローブ
測定温度:室温
試料回転数:4kHz
測定法:シングルパルス法
1Hデカップリング周波数:50kHz
29Siフリップ角:90゜
29Si90゜パルス幅:5.0μs
繰り返し時間:600s
積算回数:128回
観測幅:30kHz
ブロードニングファクター:20Hz
基準試料:テトラメトキシシラン
シリコーン系材料については、512ポイントを測定データとして取り込み、8192ポイントにゼロフィリングしてフーリエ変換する。
(波形分離解析法)
フーリエ変換後のスペクトルの各ピークについてローレンツ波形及びガウス波形或いは両者の混合により作成したピーク形状の中心位置、高さ、半値幅を可変パラメータとして、非線形最小二乗法により最適化計算を行なう。
なお、ピークの同定は、AIChE Journal,44(5),p.1141,1998年等を参考にする。
<特徴〔3〕(シラノール含有率)>
本発明に好適なシリコーン系材料は、シラノール含有率が、通常0.1重量%以上、好ましくは0.3重量%以上、また、通常10重量%以下、好ましくは8重量%以下、更に好ましくは5重量%以下の範囲である。シラノール含有率を低くすることにより、シラノール系材料は経時変化が少なく、長期の性能安定性に優れ、吸湿及び透湿性何れも低い優れた性能を有する。但し、シラノールが全く含まれない部材は密着性に劣るため、シラノール含有率に上記のごとく最適な範囲が存在する。
なお、シリコーン系材料のシラノール含有率は、例えば上記<特徴〔2〕(固体Si−NMRスペクトル)>の(固体Si−NMRスペクトル測定及びシラノール含有率の算出)の項において説明した方法を用いて固体Si−NMRスペクトル測定を行ない、全ピーク面積に対するシラノール由来のピーク面積の比率より、全ケイ素原子中のシラノールとなっているケイ素原子の比率(%)を求め、別に分析したケイ素含有率と比較することにより算出することができる。
また、本発明に好適なシリコーン系材料は、適当量のシラノールを含有しているため、通常は、デバイス表面に存在する極性部分にシラノールが水素結合し、密着性が発現する。極性部分としては、例えば、水酸基やメタロキサン結合の酸素等が挙げられる。
また、本発明に好適なシリコーン系材料は、通常、適当な触媒の存在下で加熱することにより、デバイス表面の水酸基との間に脱水縮合による共有結合を形成し、更に強固な密着性を発現することができる。
一方、シラノールが多過ぎると、系内が増粘して塗布が困難になったり、活性が高くなり加熱により軽沸分が揮発する前に固化したりすることによって、発泡や内部応力の増大が生じ、クラックなどを誘起する場合がある。
<液体媒体の含有率>
本発明の蛍光体含有組成物の液体媒体の含有率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本発明の蛍光体含有組成物全体に対して、通常50重量%以上、好ましくは75重量%以上であり、通常99重量%以下、好ましくは95重量%以下である。液体媒体の量が多い場合には特段の問題は起こらないが、発光装置とした場合に所望の色度座標、演色指数、発光効率等を得るには、通常、上記のような配合比率で液体媒体を用いることが望ましい。一方、液体媒体が少な過ぎると流動性がなく取り扱い難くなる可能性がある。
液体媒体は、本発明の蛍光体含有組成物において、主にバインダーとしての役割を有する。液体媒体は、1種を単独で用いてもよいが、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。例えば、耐熱性や耐光性等を目的として珪素含有化合物を使用する場合は、当該珪素含有化合物の耐久性を損なわない程度に、エポキシ樹脂など他の熱硬化性樹脂を含有してもよい。この場合、他の熱硬化性樹脂の含有量は、バインダーである液体媒体全量に対して通常25重量%以下、好ましくは10重量%以下とすることが望ましい。
<その他の成分>
なお、本発明の蛍光体含有組成物には、本発明の効果を著しく損なわない限り、蛍光体及び液体媒体以外に、その他の成分を含有させてもよい。また、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
<蛍光体含有組成物の利点>
本発明の蛍光体含有組成物によれば、本発明の蛍光体を所望の位置に容易に固定できる。例えば、本発明の蛍光体含有組成物を発光装置の製造に用いる場合、本発明の蛍光体含有組成物を所望の位置に成形し、液体媒体を硬化させれば、当該液体媒体で本発明の蛍光体を封止することができ、所望の位置に本発明の蛍光体を容易に固定することが可能となる。
{発光装置}
次に、本発明の発光装置について説明する。
本発明の発光装置(以下、適宜「発光装置」という)は、第1の発光体(励起光源)と、当該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する第2の発光体とを有する発光装置であって、該第2の発光体が、前述の本発明の蛍光体の1種又は2種以上を第1の蛍光体として含有するものである。
本発明の発光装置に用いる本発明の蛍光体としては、前述の本発明の蛍光体であれば、その組成や発光色に特に制限はない。例えば、本発明の蛍光体が、前記一般式[2]で表され、かつ、付活元素MとしてEuを含有する場合、本発明の蛍光体は、通常は、励起光源からの光の照射下において、橙色ないし赤色領域の蛍光を発する蛍光体(以下「本発明の橙色ないし赤色蛍光体」と言う場合がある。)となる。具体的に、本発明の蛍光体が橙色ないし赤色蛍光体である場合は、590nm〜640nmの波長範囲に発光ピークを有するものが好ましい。本発明の蛍光体は、何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、本発明の発光装置に用いる本発明の蛍光体の重量メジアン径D50は、通常10μm以上、中でも15μm以上、また、通常30μm以下、中でも20μm以下の範囲であることが好ましい。重量メジアン径D50が小さ過ぎると、輝度が低下し、蛍光体粒子が凝集してしまう傾向がある。一方、重量メジアン径D50が大き過ぎると、塗布ムラやディスペンサー等の閉塞が生じる傾向がある。
また、本発明の発光装置に用いられる本発明の蛍光体の好ましい具体例としては、前述の{蛍光体の組成}の欄に記載した本発明の蛍光体や、後述の[実施例]の欄の各実施例に用いた蛍光体が挙げられる。
本発明の発光装置は、第1の発光体(励起光源)を有し、且つ、第2の発光体として少なくとも本発明の蛍光体を使用している他は、その構成は制限されず、公知の装置構成を任意にとることが可能である。装置構成の具体例については後述する。
本発明の発光装置の発光スペクトルにおける橙色ないし赤色領域の発光ピークとしては、590nm〜670nmの波長範囲に発光ピークを有するものが好ましい。
本発明の発光装置のうち、特に白色発光装置として、具体的には、第1の発光体として後述するような励起光源を用い、上述のような橙色ないし赤色蛍光体の他、後述するような緑色の蛍光を発する蛍光体(以下、適宜「緑色蛍光体」という)、青色の蛍光を発する蛍光体(以下、適宜「青色蛍光体」という)、黄色の蛍光を発する蛍光体(以下、適宜「黄色蛍光体」という)等の公知の蛍光体を任意に組み合わせて使用し、公知の装置構成をとることにより得られる。
ここで、該白色発光装置の白色とは、JISZ8701により規定された、(黄みの)白、(緑みの)白、(青みの)白、(紫みの)白及び白の全てを含む意であり、このうち好ましくは白である。
<発光装置の構成(発光体)>
(第1の発光体)
本発明の発光装置における第1の発光体は、後述する第2の発光体を励起する光を発光するものである。
第1の発光体の発光波長は、後述する第2の発光体の吸収波長と重複するものであれば、特に制限されず、幅広い発光波長領域の発光体を使用することができる。通常は、紫外領域から青色領域までの発光波長を有する発光体が使用され、近紫外領域から青色領域までの発光波長を有する発光体を使用することが特に好ましい。
第1の発光体の発光ピーク波長の具体的数値としては、通常200nm以上が望ましい。このうち、近紫外光を励起光として用いる場合には、通常300nm以上、好ましくは330nm以上、より好ましくは360nm以上、また、通常420nm以下の発光ピーク波長を有する発光体を使用することが望ましい。また、青色光を励起光として用いる場合には、通常420nm以上、好ましくは430nm以上、また、通常500nm以下、好ましくは480nm以下の発光ピーク波長を有する発光体を使用することが望ましい。何れも、発光装置の色純度の観点からである。
第1の発光体としては、一般的には半導体発光素子が用いられ、具体的には発光LEDや半導体レーザーダイオード(semiconductor laser diode。以下、適宜「LD」と略称する。)等が使用できる。その他、第1の発光体として使用できる発光体としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス発光素子、無機エレクトロルミネッセンス発光素子等が挙げられる。但し、第1の発光体として使用できるものは本明細書に例示されるものに限られない。
中でも、第1の発光体としては、GaN系化合物半導体を使用したGaN系LEDやLDが好ましい。なぜなら、GaN系LEDやLDは、この領域の光を発するSiC系LED等に比し、発光出力や外部量子効率が格段に大きく、本発明の蛍光体と組み合わせることによって、非常に低電力で非常に明るい発光が得られるからである。例えば、20mAの電流負荷に対し、通常GaN系LEDやLDはSiC系の100倍以上の発光強度を有する。GaN系LEDやLDにおいては、AlGaN発光層、GaN発光層又はInGaN発光層を有しているものが好ましい。GaN系LEDにおいては、それらの中でもInGaN発光層を有するものは発光強度が非常に強いので特に好ましく、GaN系LEDにおいては、InGaN層とGaN層の多重量子井戸構造のものが発光強度は非常に強いので特に好ましい。
なお、上記においてX+Yの値は通常0.8〜1.2の範囲の値である。GaN系LEDにおいて、これら発光層にZnやSiをドープしたものやドーパント無しのものが発光特性を調節する上で好ましいものである。
GaN系LEDはこれら発光層、p層、n層、電極、及び基板を基本構成要素としたものであり、発光層をn型とp型のAlGaN層、GaN層、又はInGaN層などでサンドイッチにしたヘテロ構造を有しているものが、発光効率が高くて好ましく、更にヘテロ構造を量子井戸構造にしたものが、発光効率が更に高いため、より好ましい。
なお、第1の発光体は、1個のみを用いてもよく、2個以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(第2の発光体)
本発明の発光装置における第2の発光体は、上述した第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する発光体であり、第1の蛍光体として前述の本発明の蛍光体(例えば、橙色ないし赤色蛍光体)を含有するとともに、その用途等に応じて適宜、後述する第2の蛍光体(例えば、緑色蛍光体、青色蛍光体、黄色蛍光体等)を含有する。また、例えば、第2の発光体は、第1及び第2の蛍光体を封止材料中に分散させて構成される。
上記第2の発光体中に用いられる、本発明の蛍光体以外の蛍光体の組成には特に制限はないが、結晶母体となる、Y、YVO、ZnSiO、YAl12、SrSiO等に代表される金属酸化物、SrSi等に代表される金属窒化物、Ca(PO)Cl等に代表されるリン酸塩及びZnS、SrS、CaS等に代表される硫化物、YS、LaS等に代表される酸硫化物等にCe、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等の希土類金属のイオンやAg、Cu、Au、Al、Mn、Sb等の金属のイオンを付活元素又は共付活元素として組み合わせたものが挙げられる。
結晶母体の好ましい例としては、例えば、(Zn,Cd)S、SrGa、SrS、ZnS等の硫化物;YS等の酸硫化物;(Y,Gd)Al12、YAlO、BaMgAl1017、(Ba,Sr)(Mg,Mn)Al1017、(Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn,Mn)Al1017、BaAl1219、CeMgAl1119、(Ba,Sr,Mg)O・Al、BaAlSi、SrAl、SrAl1425、YAl12等のアルミン酸塩;YSiO、ZnSiO等の珪酸塩;SnO、Y等の酸化物;GdMgB10、(Y,Gd)BO等の硼酸塩;Ca10(PO)(F,Cl)、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO)Cl等のハロリン酸塩;Sr、(La,Ce)PO等のリン酸塩等を挙げることができる。
但し、上記の結晶母体及び付活元素又は共付活元素は、元素組成には特に制限はなく、同族の元素と一部置き換えることもでき、得られた蛍光体は近紫外から可視領域の光を吸収して可視光を発するものであれば用いることが可能である。
具体的には、蛍光体として以下に挙げるものを用いることが可能であるが、これらはあくまでも例示であり、本発明で使用できる蛍光体はこれらに限られるものではない。なお、以下の例示では、前述の通り、構造の一部のみが異なる蛍光体を、適宜省略して示している。
(第1の蛍光体)
本発明の発光装置における第2の発光体は、第1の蛍光体として、少なくとも上述の本発明の蛍光体を含有する。本発明の蛍光体は、何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、第1の蛍光体としては、本発明の蛍光体以外にも、本発明の蛍光体と同色の蛍光を発する蛍光体(同色併用蛍光体)を用いてもよい。例えば、本発明の蛍光体が、前記一般式[2]で表され、かつ、付活元素MとしてEuを含有する場合において、通常、本発明の蛍光体は橙色ないし赤色蛍光体であるので、第1の蛍光体として、本発明の蛍光体と共に他種の橙色ないし赤色蛍光体を併用することができる。
該橙色ないし赤色蛍光体としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。
この際、同色併用蛍光体である橙色ないし赤色蛍光体の発光ピーク波長は、通常570nm以上、好ましくは580nm以上、より好ましくは585nm以上、また、通常780nm以下、好ましくは700nm以下、より好ましくは680nm以下の波長範囲にあることが好適である。
このような橙色ないし赤色蛍光体としては、例えば、赤色破断面を有する破断粒子から構成され、赤色領域の発光を行なう(Mg,Ca,Sr,Ba)Si:Euで表されるユーロピウム賦活アルカリ土類シリコンナイトライド系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、赤色領域の発光を行なう(Y,La,Gd,Lu)S:Euで表されるユーロピウム賦活希土類オキシカルコゲナイド系蛍光体等が挙げられる。
更に、特開2004−300247号公報に記載された、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、W、及びMoよりなる群から選ばれる少なくも1種類の元素を含有する酸窒化物及び/又は酸硫化物を含有する蛍光体であって、Al元素の一部又は全てがGa元素で置換されたアルファサイアロン構造をもつ酸窒化物を含有する蛍光体も、本発明において用いることができる。なお、これらは酸窒化物及び/又は酸硫化物を含有する蛍光体である。
また、そのほか、赤色蛍光体としては、(La,Y)S:Eu等のEu付活酸硫化物蛍光体、Y(V,P)O:Eu、Y:Eu等のEu付活酸化物蛍光体、(Ba,Mg)SiO:Eu,Mn、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、LiW:Eu、LiW:Eu,Sm、Eu、Eu:Nb、Eu:Sm等のEu付活タングステン酸塩蛍光体、(Ca,Sr)S:Eu等のEu付活硫化物蛍光体、YAlO:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、Ca(SiO:Eu、LiY(SiO:Eu、(Sr,Ba,Ca)SiO:Eu、SrBaSiO:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、(Y,Gd)Al12:Ce、(Tb,Gd)Al12:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、(Mg,Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Eu等のEu付活酸化物、窒化物又は酸窒化物蛍光体、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Ce等のCe付活酸化物、窒化物又は酸窒化物蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POCl:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、BaMgSi:Eu,Mn、(Ba,Sr,Ca,Mg)(Zn,Mg)Si:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn等のMn付活ゲルマン酸塩蛍光体、Eu付活αサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La):Eu,Bi等のEu,Bi付活酸化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)S:Eu,Bi等のEu,Bi付活酸硫化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)VO:Eu,Bi等のEu,Bi付活バナジン酸塩蛍光体、SrY:Eu,Ce等のEu,Ce付活硫化物蛍光体、CaLa:Ce等のCe付活硫化物蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgP:Eu,Mn、(Sr,Ca,Ba,Mg,Zn):Eu,Mn等のEu,Mn付活リン酸塩蛍光体、(Y,Lu)WO:Eu,Mo等のEu,Mo付活タングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)Si:Eu,Ce(但し、x、y、zは、1以上の整数を表す。)等のEu,Ce付活窒化物蛍光体、(Ca,Sr,Ba,Mg)10(PO(F,Cl,Br,OH):Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、((Y,Lu,Gd,Tb)1−x−yScCe(Ca,Mg)1−r(Mg,Zn)2+rSiz−qGe12+δ等のCe付活珪酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
赤色蛍光体としては、β−ジケトネート、β−ジケトン、芳香族カルボン酸、又は、ブレンステッド酸等のアニオンを配位子とする希土類元素イオン錯体からなる赤色有機蛍光体、ペリレン系顔料(例えば、ジベンゾ{[f,f’]−4,4’,7,7’−テトラフェニル}ジインデノ[1,2,3−cd:1’,2’,3’−lm]ペリレン)、アントラキノン系顔料、レーキ系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、フタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、インダンスロン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料等を用いることも可能である。
以上の中でも、赤色蛍光体としては、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Ce、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Ca,Sr)S:Eu、(La,Y)S:Eu又はEu錯体を含むことが好ましく、より好ましくは(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Ce、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Ca,Sr)S:Eu又は(La,Y)S:Eu、もしくはEu(ジベンゾイルメタン)・1,10−フェナントロリン錯体等のβ−ジケトン系Eu錯体又はカルボン酸系Eu錯体を含むことが好ましく、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Sr,Ca)AlSiN:Eu又は(La,Y)S:Euが特に好ましい。
また、以上例示の中でも、橙色蛍光体としては(Sr,Ba)SiO:Euが好ましい。
以上例示した橙色ないし赤色蛍光体は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(第2の蛍光体)
本発明の発光装置における第2の発光体は、その用途に応じて、上述の第1の蛍光体以外にも蛍光体(即ち、第2の蛍光体)を含有していてもよい。この第2の蛍光体は、第1の蛍光体とは発光ピーク波長が異なる蛍光体である。通常、これらの第2の蛍光体は、第2の発光体の発光の色調を調節するために使用されるため、第2の蛍光体としては第1の蛍光体とは異なる色の蛍光を発する蛍光体を使用することが多い。上記のように、第1の蛍光体として橙色ないし赤色蛍光体を使用する場合、第2の蛍光体としては、例えば緑色蛍光体、青色蛍光体、黄色蛍光体等の第1の蛍光体とは異なる色を発する蛍光体を用いる。
本発明の発光装置に使用される第2の蛍光体の重量メジアン径は、通常10μm以上、中でも12μm以上、また、通常30μm以下、中でも25μm以下の範囲であることが好ましい。重量メジアン径D50が小さ過ぎると、輝度が低下し、蛍光体粒子が凝集してしまう傾向がある。一方、重量メジアン径D50が大き過ぎると、塗布ムラやディスペンサー等の閉塞が生じる傾向がある。
<青色蛍光体>
第2の蛍光体として青色蛍光体を使用する場合、当該青色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、青色蛍光体の発光ピーク波長は、通常420nm以上、好ましくは430nm以上、より好ましくは440nm以上、また、通常490nm以下、好ましくは480nm以下、より好ましくは470nm以下、更に好ましくは460nm以下の波長範囲にあることが好適である。
このような青色蛍光体としては、規則的な結晶成長形状としてほぼ六角形状を有する成
長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Euで表されるユーロピウム賦活バリウムマグネシウムアルミネート系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Mg,Ca,Sr,Ba)(PO(Cl,F):Euで表されるユウロピウム賦活ハロリン酸カルシウム系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ立方体形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Ca,Sr,Ba)Cl:Euで表されるユウロピウム賦活アルカリ土類クロロボレート系蛍光体、破断面を有する破断粒子から構成され、青緑色領域の発光を行なう(Sr,Ca,Ba)Al:Eu又は(Sr,Ca,Ba)Al1425:Euで表されるユウロピウム賦活アルカリ土類アルミネート系蛍光体等が挙げられる。
また、そのほか、青色蛍光体としては、Sr:Sn等のSn付活リン酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba)Al:Eu又は(Sr,Ca,Ba)Al1425:Eu、BaMgAl1017:Eu、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu、BaMgAl1017:Eu,Tb,Sm、BaAl13:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、SrGa:Ce、CaGa:Ce等のCe付活チオガレート蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POCl:Eu、(Ba,Sr,Ca)(PO(Cl,F,Br,OH):Eu,Mn,Sb等のEu付活ハロリン酸塩蛍光体、BaAlSi:Eu、(Sr,Ba)MgSi:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、Sr:Eu等のEu付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Ag、ZnS:Ag,Al等の硫化物蛍光体、YSiO:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaWO等のタングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)BPO:Eu,Mn、(Sr,Ca)10(PO・nB:Eu、2SrO・0.84P・0.16B:Eu等のEu,Mn付活硼酸リン酸塩蛍光体、SrSi・2SrCl:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体、SrSiAl19ON31:Eu、EuSiAl19ON31等のEu付活酸窒化物蛍光体、La1−xCeAl(Si6−zAl)(N10−z)(ここで、x、及びyは、それぞれ0≦x≦1、0≦z≦6を満たす数である。)、La1−x−yCeCaAl(Si6−zAl)(N10−z)(ここで、x、y、及びzは、それぞれ、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦6を満たす数である。)等のCe付活酸窒化物蛍光体等を用いることも可能である。
また、青色蛍光体としては、例えば、ナフタル酸イミド系、ベンゾオキサゾール系、スチリル系、クマリン系、ピラリゾン系、トリアゾール系化合物の蛍光色素、ツリウム錯体等の有機蛍光体等を用いることも可能である。
以上の例示の中でも、青色蛍光体としては、(Ca、Sr,Ba)MgAl1017:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO(Cl,F):Eu又は(Ba,Ca,Mg,Sr)SiO:Euを含むことが好ましく、(Ca、Sr,Ba)MgAl1017:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO(Cl,F):Eu又は(Ba,Ca,Sr)MgSi:Euを含むことがより好ましく、BaMgAl1017:Eu、Sr10(PO(Cl,F):Eu又はBaMgSi:Euを含むことがより好ましい。また、このうち照明用途及びディスプレイ用途としては(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POCl:Eu又は(Ca、Sr,Ba)MgAl1017:Euが特に好ましい。
以上例示した青色蛍光体は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
<黄色蛍光体>
第2の蛍光体として黄色蛍光体を使用する場合、当該黄色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、黄色蛍光体の発光ピーク波長は、通常530nm以上、好ましくは540nm以上、より好ましくは550nm以上、また、通常620nm以下、好ましくは600nm以下、より好ましくは580nm以下の波長範囲にあることが好適である。
このような黄色蛍光体としては、各種の酸化物系、窒化物系、酸窒化物系、硫化物系、
酸硫化物系等の蛍光体が挙げられる。
特に、RE12:Ce(ここで、REは、Y、Tb、Gd、Lu、及びSmからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表し、Mは、Al、Ga、及びScからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表す。)やM 12:Ce(ここで、Mは2価の金属元素、Mは3価の金属元素、Mは4価の金属元素を表す。)等で表されるガーネット構造を有するガーネット系蛍光体、AE:Eu(ここで、AEは、Ba、Sr、Ca、Mg、及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表し、Mは、Si、及び/又はGeを表す。)等で表されるオルソシリケート系蛍光体、これらの系の蛍光体の構成元素の酸素の一部を窒素で置換した酸窒化物系蛍光体、AEAlSiN:Ce(ここで、AEは、Ba、Sr、Ca、Mg及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表す。)等のCaAlSiN構造を有する窒化物系蛍光体等のCeで付活した蛍光体等が挙げられる。
また、その他、黄色蛍光体としては、CaGa:Eu、(Ca,Sr)Ga:Eu、(Ca,Sr)(Ga,Al):Eu等の硫化物系蛍光体、Cax(Si,Al)12(O,N)16:Eu等のSiAlON構造を有する酸窒化物系蛍光体等のEuで付活した蛍光体、(M1−A−AEuMn(BO1−P(POX(但し、Mは、Ca、Sr、及びBaからなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、Xは、F、Cl、及びBrからなる群より選ばれる1種以上の元素を表す。A、B、及びPは、各々、0.001≦A≦0.3、0≦B≦0.3、0≦P≦0.2を満たす数を表す。)等のEu付活又はEu,Mn共付活ハロゲン化ホウ酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
また、黄色蛍光体としては、例えば、brilliant sulfoflavine FF(Colour Index Number 56205)、basic yellow HG(Colour Index Number 46040)、eosine(Colour Index Number 45380)、rhodamine 6G(Colour Index Number 45160)等の蛍光染料等を用いることも可能である。
以上例示した黄色蛍光体は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
<緑色蛍光体>
第2の蛍光体として緑色蛍光体を使用する場合、当該緑色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、緑色蛍光体の発光ピーク波長は、通常500nm以上、中でも510nm以上、更には515nm以上、また、通常550nm以下、中でも542nm以下、更には535nm以下の範囲であることが好ましい。この発光ピーク波長が短過ぎると青味を帯びる傾向がある一方で、長過ぎると黄味を帯びる傾向があり、何れも緑色光としての特性が低下する場合がある。
緑色蛍光体として具体的には、例えば、破断面を有する破断粒子から構成され、緑色領域の発光を行なう(Mg,Ca,Sr,Ba)Si:Euで表されるユウロピウム付活アルカリ土類シリコンオキシナイトライド系蛍光体等が挙げられる。
また、その他の緑色蛍光体としては、SrAl1425:Eu、(Ba,Sr,Ca)Al:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ba)AlSi:Eu、(Ba,Mg)SiO:Eu、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:Eu、(Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn)Si:Eu、(Ba,Ca,Sr,Mg)(Sc,Y,Lu,Gd)(Si,Ge)24:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、YSiO:Ce,Tb等のCe,Tb付活珪酸塩蛍光体、Sr−Sr:Eu等のEu付活硼酸リン酸塩蛍光体、SrSi−2SrCl:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体、ZnSiO:Mn等のMn付活珪酸塩蛍光体、CeMgAl1119:Tb、YAl12:Tb等のTb付活アルミン酸塩蛍光体、Ca(SiO:Tb、LaGaSiO14:Tb等のTb付活珪酸塩蛍光体、(Sr,Ba,Ca)Ga:Eu,Tb,Sm等のEu,Tb,Sm付活チオガレート蛍光体、Y(Al,Ga)12:Ce、(Y,Ga,Tb,La,Sm,Pr,Lu)(Al,Ga)12:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、CaScSi12:Ce、Ca(Sc,Mg,Na,Li)Si12:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaSc:Ce等のCe付活酸化物蛍光体、Eu付活βサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、BaMgAl1017:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、SrAl:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(La,Gd,Y)S:Tb等のTb付活酸硫化物蛍光体、LaPO:Ce,Tb等のCe,Tb付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Cu,Al、ZnS:Cu,Au,Al等の硫化物蛍光体、(Y,Ga,Lu,Sc,La)BO:Ce,Tb、NaGd:Ce,Tb、(Ba,Sr)(Ca,Mg,Zn)B:K,Ce,Tb等のCe,Tb付活硼酸塩蛍光体、CaMg(SiOCl:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba)(Al,Ga,In):Eu等のEu付活チオアルミネート蛍光体やチオガレート蛍光体、(Ca,Sr)(Mg,Zn)(SiOCl:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体、MSi:Eu、MSi12:Eu(但し、Mはアルカリ土類金属元素を表す。)等のEu付活酸窒化物蛍光体等を用いることも可能である。
また、緑色蛍光体としては、ピリジン−フタルイミド縮合誘導体、ベンゾオキサジノン系、キナゾリノン系、クマリン系、キノフタロン系、ナルタル酸イミド系等の蛍光色素、テルビウム錯体等の有機蛍光体を用いることも可能である。
以上例示した緑色蛍光体は、いずれか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
<第2の蛍光体の選択>
上記第2の蛍光体としては、1種類の蛍光体を単独で使用してもよく、2種以上の蛍光体を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、第1の蛍光体と第2の蛍光体との比率も、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。従って、第2の蛍光体の使用量、並びに、第2の蛍光体として用いる蛍光体の組み合わせ及びその比率等は、発光装置の用途等に応じて任意に設定すればよい。
本発明の発光装置において、以上説明した第2の蛍光体(黄色蛍光体、青色蛍光体、緑色蛍光体等)の使用の有無及びその種類は、発光装置の用途に応じて適宜選択すればよい。例えば、本発明の発光装置を橙色ないし赤色発光の発光装置として構成する場合には、第1の蛍光体(橙色ないし赤色蛍光体)のみを使用すればよく、第2の蛍光体の使用は通常は不要である。
一方、本発明の発光装置を白色発光の発光装置として構成する場合には、所望の白色光が得られるように、第1の発光体と、第1の蛍光体(橙色ないし赤色蛍光体)と、第2の蛍光体を適切に組み合わせればよい。具体的に、本発明の発光装置を白色発光の発光装置として構成する場合における、第1の発光体と、第1の蛍光体と、第2の蛍光体との好ましい組み合わせの例としては、以下の(i)〜(iii)の組み合わせが挙げられる。
(i)第1の発光体として青色発光体(青色LED等)を使用し、第1の蛍光体として赤色蛍光体(本発明の蛍光体等)を使用し、第2の蛍光体として緑色蛍光体を使用する。
(ii)第1の発光体として近紫外発光体(近紫外LED等)を使用し、第1の蛍光体として赤色蛍光体(本発明の蛍光体等)を使用し、第2の蛍光体として青色蛍光体及び緑色蛍光体を併用する。
(iii)第1の発光体として青色発光体(青色LED等)を使用し、第1の蛍光体として橙色蛍光体(本発明の蛍光体等)を使用し、第2の蛍光体として緑色蛍光体を使用する。
上記の蛍光体の組み合わせについて、さらに具体例を以下の表a)〜h)に挙げる。
但し、以下の表d)、表h)、及び後掲の表5)で深赤色蛍光体として例示している(Ca,Sr)AlSiNi:Euとは、CaとSrの合計量に対するCaの量が40モル%以上であり、波長630nm以上700nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する蛍光体であり、本発明の蛍光体であってもよい。
Figure 2008106224
Figure 2008106224
Figure 2008106224
これらの組み合わせの中でも、半導体発光素子と蛍光体を、下記の表1)〜7)に示す組み合わせで使用した発光装置が特に好ましい。
Figure 2008106224
Figure 2008106224
また、本発明の蛍光体は、他の蛍光体と混合(ここで、混合とは、必ずしも蛍光体同士が混ざり合っている必要はなく、異種の蛍光体が組み合わされていることを意味する。)して用いることができる。特に、上記に記載の組み合わせで蛍光体を混合すると、好ましい蛍光体混合物が得られる。なお、混合する蛍光体の種類やその割合に特に制限はない。
<封止材料>
本発明の発光装置において、上記第1及び/又は第2の蛍光体は、通常、封止材料である液体媒体に分散させて用いられる。
該液体媒体としては、前述の{蛍光体含有組成物}の項で記載したのと同様のものが挙げられる。
また、該液体媒体は、封止部材の屈折率を調整するために、高い屈折率を有する金属酸化物となり得る金属元素を含有させることができる。高い屈折率を有する金属酸化物を与える金属元素の例としては、Si、Al、Zr、Ti、Y、Nb、B等が挙げられる。これらの金属元素は単独で使用されてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で併用されてもよい。
このような金属元素の存在形態は、封止部材の透明度を損なわなければ特に限定されず、例えば、メタロキサン結合として均一なガラス層を形成していても、封止部材中に粒子状で存在していてもよい。粒子状で存在している場合、その粒子内部の構造はアモルファス状であっても結晶構造であってもよいが、高屈折率を与えるためには結晶構造であることが好ましい。また、その粒子径は、封止部材の透明度を損なわないために、通常は、半導体発光素子の発光波長以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下、特に好ましくは30nm以下である。例えばシリコーン系材料に、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化イットリウム、酸化ニオブ等の粒子を混合することにより、上記の金属元素を封止部材中に粒子状で存在させることができる。
また、上記液体媒体としては、更に、拡散剤、フィラー、粘度調整剤、紫外線吸収剤等公知の添加剤を含有していてもよい。
<発光装置の構成(その他)>
本発明の発光装置は、上述の第1の発光体及び第2の発光体を備えていれば、そのほかの構成は特に制限されないが、通常は、適当なフレーム上に上述の第1の発光体及び第2の発光体を配置してなる。この際、第1の発光体の発光によって第2の発光体が励起されて(即ち、第1及び第2の蛍光体が励起されて)発光を生じ、且つ、この第1の発光体の発光及び/又は第2の発光体の発光が、外部に取り出されるように配置されることになる。この場合、第1の蛍光体と第2の蛍光体とは必ずしも同一の層中に混合されなくてもよく、例えば、第1の蛍光体を含有する層の上に第2の蛍光体を含有する層が積層する等、蛍光体の発色毎に別々の層に蛍光体を含有するようにしてもよい。
また、本発明の発光装置では、上述の励起光源(第1の発光体)、蛍光体(第2の発光体)及びフレーム以外の部材を用いてもよい。その例としては、前述の封止材料が挙げられる。該封止材料は、発光装置において、蛍光体(第2の発光体)を分散させる目的以外にも、励起光源(第1の発光体)、蛍光体(第2の発光体)及びフレーム間を接着する目的で用いたりすることができる。
<発光装置の実施形態>
以下、本発明の発光装置について、具体的な実施の形態を挙げて、より詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
本発明の発光装置の一例における、励起光源となる第1の発光体と、蛍光体を有する蛍光体含有部として構成された第2の発光体との位置関係を示す模式的斜視図を図1に示す。図1中の符号1は蛍光体含有部(第2の発光体)、符号2は励起光源(第1の発光体)としての面発光型GaN系LD、符号3は基板を表す。相互に接触した状態をつくるために、LD(2)と蛍光体含有部(第2の発光体)(1)とそれぞれ別個に作製し、それらの面同士を接着剤やその他の手段によって接触させてもよいし、LD(2)の発光面上に蛍光体含有部(第2の発光体)を製膜(成型)させてもよい。これらの結果、LD(2)と蛍光体含有部(第2の発光体)(1)とを接触した状態とすることができる。
このような装置構成をとった場合には、励起光源(第1の発光体)からの光が蛍光体含有部(第2の発光体)の膜面で反射されて外にしみ出るという光量損失を避けることができるので、装置全体の発光効率を良くすることができる。
図2(a)は、一般的に砲弾型と言われる形態の発光装置の代表例であり、励起光源(第1の発光体)と蛍光体含有部(第2の発光体)とを有する発光装置の一実施例を示す模式的断面図である。該発光装置(4)において、符号5はマウントリード、符号6はインナーリード、符号7は励起光源(第1の発光体)、符号8は蛍光体含有樹脂部、符号9は導電性ワイヤ、符号10はモールド部材をそれぞれ指す。
また、図2(b)は、表面実装型と言われる形態の発光装置の代表例であり、励起光源(第1の発光体)と蛍光体含有部(第2の発光体)とを有する発光装置の一実施例を示す模式的断面図である。図中、符号22は励起光源(第1の発光体)、符号23は蛍光体含有部(第2の発光体)としての蛍光体含有樹脂部、符号24はフレーム、符号25は導電性ワイヤ、符号26及び符号27は電極をそれぞれ指す。
<発光装置の用途>
本発明の発光装置の用途は特に制限されず、通常の発光装置が用いられる各種の分野に使用することが可能であるが、色再現範囲が広く、且つ、演色性も高いことから、中でも照明装置や画像表示装置の光源として、とりわけ好適に用いられる。
{照明装置}
本発明の発光装置を照明装置に適用する場合には、前述のような発光装置を公知の照明装置に適宜組み込んで用いればよい。例えば、図3に示されるような、前述の発光装置(4)を組み込んだ面発光照明装置(11)を挙げることができる。
図3は、本発明の照明装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。この図3に示すように、該面発光照明装置は、内面を白色の平滑面等の光不透過性とした方形の保持ケース(12)の底面に、多数の発光装置(13)(前述の発光装置(4)に相当)を、その外側に発光装置(13)の駆動のための電源及び回路等(図示せず。)を設けて配置し、保持ケース(12)の蓋部に相当する箇所に、乳白色としたアクリル板等の拡散板(14)を発光の均一化のために固定してなる。
そして、面発光照明装置(11)を駆動して、発光装置(13)の励起光源(第1の発光体)に電圧を印加することにより光を発光させ、その発光の一部を、蛍光体含有部(第2の発光体)としての蛍光体含有樹脂部における前記蛍光体が吸収し、可視光を発光し、一方、蛍光体に吸収されなかった青色光等との混色により演色性の高い発光が得られ、この光が拡散板(14)を透過して、図面上方に出射され、保持ケース(12)の拡散板(14)面内において均一な明るさの照明光が得られることとなる。
{画像表示装置}
本発明の発光装置を画像表示装置の光源として用いる場合には、その画像表示装置の具体的構成に制限は無いが、カラーフィルターとともに用いることが好ましい。例えば、画像表示装置として、カラー液晶表示素子を利用したカラー画像表示装置とする場合は、上記発光装置をバックライトとし、液晶を利用した光シャッターと赤、緑、青の画素を有するカラーフィルターとを組み合わせることにより画像表示装置を形成することができる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
後述の各実施例及び各比較例において、各種の評価は以下の手法で行った。
(重量変化、及び融点の測定)
各実施例及び各比較例の合金粉末又は窒素含有合金10mgを用いて、熱重量・示差熱(thermogravimetry-differential thermal analysis:TG−DTA)測定装置(ブルカー・エイエックスエス株式会社製、TG−DTA2000)により、雰囲気ガス(窒素、アルゴン、又は窒素とアルゴンとの混合ガス)100ml/分流通下、昇温速度10℃/分で室温から1500℃まで加熱し、重量変化について測定を行った。
なお、測定結果を示すグラフ(図5、及び図10)において、左側の縦軸はサンプル温度(℃)を、右側の縦軸は重量変化速度(%/時)を示す。
また、アルゴン気流中でのTG−DTA測定において、融解に伴う吸熱を検出し、吸熱ピークが現れる温度を融点とした。なお、融点の測定においては、Au(融点1063℃)及びSi(融点1410℃)を用いて温度校正を行った。
(重量増加率の測定)
重量増加率は、一次窒化工程前の合金粉末、及び一次窒化工程後の窒素含有合金の重量を測定し、下記式[4]により求めた。
(一次窒化工程後の窒素含有合金の重量−一次窒化工程前の合金粉末の重量)
/一次窒化工程前の合金粉末の重量×100 …[4]
(全金属元素含有率の測定)
全金属元素含有率は、一次窒化工程前の合金粉末、及び一次窒化工程後の窒素含有合金の重量を測定して、下記式[5]により求めた。
全金属元素含有率(重量%)
=100−{(一次窒化工程後の窒素含有合金の重量−一次窒化工程前の合金の重量)
/一次窒化工程後の窒素含有合金の重量}×100 …[5]
(窒素含有率の測定)
窒素含有率は、酸素窒素同時分析装置(Leco社製)により、窒素含有合金又は蛍光体の窒素含有量を測定し、窒素含有合金の窒素含有率は下記式[6]により、また、蛍光体の窒素含有率は下記式[6A]により求めることができる。
窒素含有合金の窒素含有率(重量%)
= (窒素含有量/一次窒化工程後の窒素含有合金の重量)×100 …[6]
蛍光体の窒素含有率(重量%)
= (窒素含有量/蛍光体の重量)×100 …[6A]
(酸素含有率の測定)
酸素含有率は、酸素窒素同時分析装置(Leco社製)により、窒素含有合金又は蛍光体の酸素含有量を測定し、窒素含有合金の酸素含有率は下記式[8]により、また、蛍光体の酸素含有率は下記式[8A]により求めることができる。
窒素含有合金の酸素含有率(重量%)
= (酸素含有量/一次窒化工程後の窒素含有合金の重量)×100 …[8]
蛍光体の酸素含有率(重量%)
= (酸素含有量/蛍光体の重量)×100 …[8A]
(NI/NPの算出方法)
NI/NPは、窒素含有率の測定結果から、下記式[7]により求めた。
0.03≦NI/NP≦0.9 …[7]
(式[7]において、
NIは、窒素含有合金中に含まれる窒素含有率(重量%)を表し、
NPは、製造される蛍光体中に含まれる窒素含有率(重量%)を表す。)
(合金粉末の重量メジアン径D50の測定)
気温25℃、湿度70%の環境下において、エチレングリコールに合金粉末サンプルを分散させ、レーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所 LA−300)により粒径範囲0.1μm〜600μmにて測定して得られた重量基準粒度分布曲線から求め、積算値が50%のときの粒径値を重量メジアン径D50とした。また、この積算値が25%及び75%の時の粒径値をそれぞれD25、D75とし、QD=(D75−D25)/(D75+D25)でQDを算出した。
(蛍光体の重量メジアン径D50の測定)
測定前に、超音波分散器(株式会社カイジョー製)を用いて周波数を19KHz、超音波の強さを5Wとし、25秒間試料を超音波で分散させた。なお、分散液には、再凝集を防止するため界面活性剤を微量添加した水を用いた。
重量メジアン径の測定においては、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製)を使用した。
(X線粉末回折測定)
Philips社製XPert MPDを用いて、大気中で以下の条件で測定した。
ステップサイズ[°2Th.] 0.0500
スタートposition[°2Th.] 10.0350
終了pos.[°2Th.] 89.9350
X線出力設定 45kV,40mA
発散スリット(DS)サイズ[°] 1.0000
受光スリット(RS)サイズ[mm] 1.0000
スキャンの種類 CONTINUOUS
スキャンステップ時間[s] 33.0000
測定温度[℃] 0.00
ゴニオメータ半径[mm] 200.00
フォーカス−DS間の距離[mm] 91.00
照射幅[mm] 10.00
試料幅[mm] 10.00
スキャン軸 ゴニオ
入射側モノクロメータ なし
ターゲット Cu
CuKα(1.541Å)
(化学組成の分析)
ICP発光分光分析法(Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectrometry;以下、「ICP法」と称する場合がある。)により、ジョバイボン社製ICP化学分析装置「JY 38S」を使用して分析した。
(水分散試験における上澄み液の電気伝導度の測定)
篩により分級して重量メジアン径9μmに整粒した後(ただし、洗浄後の蛍光体粒子の重量メジアン径が9μmの場合は、この操作は行わない。)、この蛍光体粒子を蛍光体重量の10倍量の水に入れ、スターラーを用いて10分間撹拌して分散させた。1時間放置後、蛍光体が沈降していることを確認し、上澄み液の電気伝導度を測定した。
電気伝導度は東亜ディケーケー社製電気伝導度計「EC METER CM−30G」を用いて、測定した。洗浄及び測定は室温で行った。
なお、各実施例及び各比較例で洗浄及び蛍光体の水分散試験に使用している水の電気伝導度は、0.03mS/mである。
(発光スペクトルの測定)
蛍光体の発光スペクトルは、励起光源として150Wキセノンランプを、スペクトル測定装置としてマルチチャンネルCCD検出器C7041(浜松フォトニクス社製)を備える蛍光測定装置(日本分光社製)用いて測定した。励起光源からの光を焦点距離が10cmである回折格子分光器に通し、波長465nmの励起光のみを光ファイバーを通じて蛍光体に照射した。励起光の照射により蛍光体から発生した光を焦点距離が25cmである回折格子分光器により分光し、300nm以上、800nm以下の波長範囲においてスペクトル測定装置により各波長の発光強度を測定し、パーソナルコンピュータによる感度補正等の信号処理を経て発光スペクトルを得た。
(発光ピーク波長、相対発光ピーク強度及び相対輝度の測定)
発光ピーク波長は、得られた発光スペクトルから読み取った。
また、相対発光ピーク強度は、下記の参考例1の蛍光体の発光ピーク強度を基準とした相対値で表した。
また、JIS Z8724に準拠して算出したXYZ表色系における刺激値Yから、下記の参考例1における蛍光体の刺激値Yの値を100%とした相対輝度を算出した。なお、輝度は励起青色光をカットして測定した。
参考例1
金属元素組成比がEu:Ca:Al:Si=0.008:0.992:1:1(モル比)となるように、Ca(CERAC社製200mesh pass)、AlN(トクヤマ社製グレードF)、Si(宇部興産社製SN−E10)、及びEu(信越化学社製)をアルゴン雰囲気中で秤量し、アルミナ乳鉢を用いて混合した。得られた原料混合物を窒化ホウ素製ルツボへ充填し、雰囲気加熱炉中にセットした。装置内を1×10−2Paまで真空排気した後、排気を中止し、装置内へ窒素を0.1MPaまで充填した後、1600℃まで昇温し、1600℃で5時間保持した。得られた焼成物をアルミナ乳鉢で粉砕し、粒径100μm以下のものを採取することにより蛍光体を得た。励起波長465nmにおける、この蛍光体の発光ピーク波長は648nmであった。
(色度座標の測定)
発光スペクトルの480nm〜800nmの波長領域のデータから、JIS Z8701で規定されるXYZ表色系における色度座標xとyを算出した。
(式[A]の値の算出)
焼成容器の質量(g)、及び蛍光体原料(g)の質量を測定し、下記式[A]に代入することにより、式[A]の値を算出した。
(蛍光体原料の質量)/{(焼成容器の質量)+(蛍光体原料の質量)} …[A]
(加熱工程における1分当たりの温度変化の測定)
焼成容器の側壁の温度を、10秒間間隔でタングステン−レニウム合金熱電対を用いて測定した。なお、温度計は、焼成容器の外側壁で、蛍光体原料を充填した高さの、1/2の高さの位置に設置した。得られた測定値から1分間当たりの温度変化を下記式[B]により求めた。
温度変化(℃/分)=時刻T分での温度 − 時刻(T−1)分での温度 …[B]
実施例1
(合金の製造)
金属元素組成比がAl:Si=1:1(モル比)となるように各原料金属を秤量し、黒鉛ルツボに充填し、高周波誘導式溶融炉を用いてアルゴン雰囲気下で原料金属を溶融した。その後、ルツボから金型へ注湯して凝固させ、金属元素組成比がAl:Si=1:1である合金(母合金)を得た。
続いて、Eu:Sr:Ca:Al:Si=0.008:0.792:0.2:1:1(モル比)となるよう母合金、その他原料金属を秤量した。炉内を真空排気した後、排気を中止し、炉内にアルゴンを所定圧まで充填した。この炉内でカルシアルツボを用いて母合金を溶解し、次いで、原料金属であるSr、Eu、及びCaを加えた。全成分が融解されて溶湯が誘導電流により撹拌されるのを確認した後、ルツボから水冷された銅製の金型(厚さ40mmの板状)へ溶湯を注湯して凝固させた。
得られた厚み40mmの板状合金についてICP法で組成分析を行った。板状合金の重心付近一点と、板状合金の端面付近一点から約10gサンプリングし、ICP法により元素分析を行ったところ、
板状合金の中心部 Eu:Sr:Ca:Al:Si=0.009:0.782:0.212:1:0.986、
板状合金の端面 Eu:Sr:Ca:Al:Si=0.009:0.756:0.210:1:0.962
であり、分析精度の範囲において実質的に同一組成であった。従って、Euを始め、各々の元素が均一に分布していると考えられた。
得られた合金はSr(Si0.5Al0.5と類似した粉末X線回折パターンを示し、AlB型のアルカリ土類シリサイドと呼ばれる金属間化合物と同定された。
(粉砕工程)
得られた合金を、アルミナ乳鉢を用いて窒素雰囲気中でその粒径が約1mm以下になるまで粉砕した。得られた合金粉末を超音速ジェット粉砕機(日本ニューマチック工業株式会社、PJM−80SP)を用いて、窒素雰囲気中(酸素濃度2体積%)、粉砕圧力0.15MPa、原料供給速度0.8kg/時でさらに粉砕した。
得られた合金粉末の重量メジアン径D50、QD、及び粒度分布を測定したところ、重量メジアン径D50は14.2μm、QDは0.38であり、また、10μm以下の合金粒子の割合は全体の28.6%、45μm以上の合金粒子の割合は2.9%であった。また、この合金粉末の酸素含有率は0.3重量%、窒素含有率は0.3重量%以下(検出限界以下)だった。
また、得られた合金粉末について、アルゴン気流中で融点測定を行ったところ、融解開始温度は1078℃付近であり、融点は1121℃であった。
(一次窒化工程)
得られた合金粉末40gを内径54mmの窒化ホウ素製ルツボに充填し、管状電気炉内で窒素含有アルゴンガス(窒素:アルゴン=2:98(体積比))2L/分流通下、常圧下で、室温から950℃までは昇温速度4℃/分で加熱し、950℃から1100℃までは昇温速度2℃/分で加熱し、最高到達温度(1100℃)で5時間保持した。その後、窒素含有アルゴンガス(窒素:アルゴン=2:98(体積比))2L/分の流通下、950℃まで5℃/分で冷却し、その後、約10℃/分で室温になるまで放冷し、窒素含有合金を製造した。
得られた窒素含有合金を取り出して秤量した。重量増加率は4.5重量%、全金属元素含有率は95.7重量%であった。さらに、得られた窒素含有合金について、前述の方法により、窒素含有率、及び酸素含有率を求めた。その結果を表7に示す。
なお、本実施例の一次窒化工程における温度は、炉内温度、即ち、焼成装置において設定することができる温度を示している。以下の各実施例及び各比較例においても同様である。
(二次窒化工程)
一次窒化工程で得られた窒素含有合金を、窒素気流中、粒径が53μm以下になるまでアルミナ乳鉢を用いて粉砕し、目開き53μmの篩いを通過したものを採取した。得られた合金粉末を内径54mmの窒化ホウ素製ルツボに充填し、これを熱間等方加圧装置(HIP)内にセットした。前記装置内を5×10−1Paまで真空排気した後、300℃に加熱し、300℃で真空排気を1時間継続した。その後、窒素を1MPaまで充填して、室温付近まで冷却した。その後、0.1MPaまで放圧し、再び1MPaまで窒素を充填する操作を二回繰り返し、加熱開始前に約0.1MPaに調圧した。次いで、炉内温度が950℃になるまで昇温速度600℃/時で加熱した。この時、内圧は、約0.5MPaまで上昇した。炉内温度が950℃から1100℃になるまで、昇温速度66.7℃/時で加熱し、1100℃で30分間保持した。その後、温度を1100℃に保ったまま、窒素圧力を約3時間かけて140MPaまで昇圧し、さらに、その後、約1時間かけて炉内温度が1900℃に、炉内圧力が190MPaになるまで昇温及び昇圧し、この状態で2時間保持した。続いて、3時間かけて400℃以下になるまで冷却して放冷した。12時間後、室温付近まで冷却した蛍光体を得た。なお、上記で記載の温度は炉内温度であり、即ち、焼成装置(本実施例においては、HIP)において設定することができる温度である(以下の実施例についても、特に断りのない限り、同様とする)。
得られた蛍光体をアルミナ乳鉢で粉砕し、発光特性(発光ピーク波長、相対発光ピーク強度、相対輝度、及び色度座標)について測定を行った。得られた結果を表9に示す。
なお、この実施例において、前記式[A]の値は0.50(容器質量40g,原料質量40g)であり、加熱工程における、1分間当たりの温度変化は2℃/分以下であった。
実施例2
(後処理工程)
実施例1で得られた蛍光体を、室温において、重量比で10倍量の水に入れ、スターラーを用いて10分間攪拌し、分散させた。1時間静置後、蛍光体が沈降していることを確認し、濾過することにより、蛍光体を分離した。この操作を15回繰り返した。吸引濾過を行うことにより、得られた蛍光体を脱水した後、重量比で10倍量の0.5N塩酸に入れ、スターラーを用いて10分間攪拌し、分散させた。1時間静置後、濾過することにより蛍光体を分離し、さらに重量比で10倍量の水に分散させて濾過する操作を3回繰り返した。前述した通りに電気伝導度の測定を行ったところ、上澄み液の電気伝導度は1.90mS/mであった。脱水した後、120℃で12時間乾燥し、蛍光体を得た。
得られた蛍光体について重量メジアン径D50を測定したところ、12.7μmであった。得られた蛍光体について、発光特性を測定した。その結果を表9に示す。実施例1で得られた蛍光体に洗浄処理を施すことにより、相対発光ピーク強度及び相対輝度が向上していることがわかる。また、式[A]の値及び加熱工程における1分間当たりの温度変化を表8に示す。
実施例3
一次窒化工程の加熱条件を、最高到達温度を1050℃、最高到達温度での保持時間を10時間としたこと以外は実施例1と同様に行った。得られた窒素含有合金について重量増加率、及び全金属元素含有率を算出し、その結果を表7に示す。
続いて、実施例1と同様に二次窒化工程を行って蛍光体を得た。得られた蛍光体について、発光特性を測定した。その結果を表9に示す。また、式[A]の値及び加熱工程における1分間当たりの温度変化を表8に示す。
実施例4
実施例3で得られた蛍光体を、実施例2と同様の方法で、水で15回、0.5N塩酸で1回洗浄した。続いて、上澄みの電気伝導度が1.52mS/mになるまで水で5回洗浄した。その後、分級を行うことにより、粒径範囲が3μm以上30μm以下である蛍光体を得た。
得られた蛍光体について重量メジアン径D50を測定したところ、7.7μmであった。得られた蛍光体について、発光特性を測定した。その結果を表9に示す。得られた蛍光体は、実施例3で得られた蛍光体よりも相対発光ピーク強度及び相対輝度が向上していることがわかる。また、式[A]の値及び加熱工程における1分間当たりの温度変化を表8に示す。
実施例5
一次窒化工程において、加熱雰囲気を窒素含有アルゴンガス(窒素:アルゴン=7:93(体積比))2L/分流通下としたこと以外は実施例3と同様に窒素含有合金を製造した。得られた窒素含有合金について重量増加率、及び全金属元素含有率を求めた。その結果を表7に示す。実施例3と比較して、炉内の窒素濃度を上げたことにより重量増加率が大きく、かつ、全金属元素含有率が小さくなっていることがわかる。
続いて、実施例1と同様に二次窒化工程を行って蛍光体を得た。得られた蛍光体について、発光特性を測定した。その結果を表9に示す。実施例3で得られた蛍光体よりも発光特性が向上していることがわかる。また、式[A]の値及び加熱工程における1分間当たりの温度変化を表8に示す。
実施例6
一次窒化工程において、加熱雰囲気を窒素含有アルゴンガス(窒素:アルゴン=4:96(体積比))2L/分流通下としたこと以外は実施例3と同様に窒素含有合金を製造した。得られた窒素含有合金について重量増加率、及び全金属元素含有率を求めた。その結果を表7に示す。
続いて、実施例1と同様に二次窒化工程を行って蛍光体を得た。得られた蛍光体について、発光特性を測定した。その結果を表9に示す。また、式[A]の値及び加熱工程における1分間当たりの温度変化を表8に示す。
実施例7
一次窒化工程において、加熱雰囲気を窒素含有アルゴンガス(窒素:アルゴン=5:95(体積比))2L/分流通下、最高到達温度(1050℃)での保持時間を5時間としたこと以外は実施例3と同様に窒素含有合金を製造した。得られた窒素含有合金について重量増加率、及び全金属元素含有率を算出し、その結果を表7に示す。
続いて、実施例1と同様に二次窒化工程を行って蛍光体を得た。得られた蛍光体について、発光特性を測定した。その結果を表9に示す。また、式[A]の値及び加熱工程における1分間当たりの温度変化を表8に示す。
実施例8
一次窒化工程において、加熱雰囲気を窒素含有アルゴンガス(窒素:アルゴン=5:95(体積比))2L/分流通下としたこと以外は実施例3と同様に蛍光体を製造した。得られた窒素含有合金について重量増加率、及び全金属元素含有率を求めた。その結果を表7に示す。
続いて、実施例1と同様に二次窒化工程を行って蛍光体を得た。得られた蛍光体について、発光特性を測定した。その結果を表9に示す。また、式[A]の値及び加熱工程における1分間当たりの温度変化を表8に示す。
実施例9
実施例1と同様にして製造した合金粉末を用いて、以下の条件で一次窒化工程を行った。合金粉末40gを内径54mmの窒化ホウ素製ルツボに充填し、雰囲気焼成炉を使用して、室温から900℃までは、真空中、昇温速度20℃/分で加熱した。900℃で、窒素含有アルゴンガス(窒素:アルゴン=5:95(体積比))をゲージ圧で0.01MPaまで充填した。この圧力を保持したまま、窒素含有アルゴンガス(窒素:アルゴン=5:95(体積比))1L/分流通下、900℃から1050℃まで昇温速度2℃/分で昇温し、最高到達温度1050℃で4時間保持した。次いで、200℃以下になるまで約2時間かけて冷却した後、室温になるまで放冷し、窒素含有合金を製造した。得られた窒素含有合金について重量増加率、及び全金属元素含有率を算出し、その結果を表7に示す。
続いて、実施例1と同様に二次窒化工程を行って蛍光体を得た。得られた蛍光体について、発光特性を測定した。その結果を表9に示す。また、式[A]の値及び加熱工程における1分間当たりの温度変化を表8に示す。
実施例10
一次窒化工程において、加熱雰囲気を窒素気流中、最高到達温度を1030℃、最高到達温度での保持時間を8時間としたこと以外は、実施例1と同様に行い、窒素含有合金を製造した。
得られた窒素含有合金について、窒素・酸素の含有量の分析を行ったところ、窒素含有率は1.10重量%、酸素含有率は1.66重量%であった。また、重量増加率は、約3重量%、全金属元素含有率は97重量%であった。
また、前記の窒素・酸素の含有量の分析結果、及びICP法分析結果から、得られた窒素含有合金の元素組成比は、Al:Si:Ca:Sr:Eu:N:O=1:0.922:0.214:0.734:0.008:0.11:0.14であることがわかった。
得られた窒素含有合金を実施例1と同様に二次窒化工程を行い、蛍光体を製造した。
また、得られた蛍光体の発光特性についても測定した。その結果を表9に示す。
次いで、得られた蛍光体について実施例4と同様に洗浄処理を行った後、酸素含有率、窒素含有率及びNI/NPを求めた。その結果を表9に示す。また、式[A]の値及び加熱工程における1分間当たりの温度変化を表8に示す。
実施例11
実施例1で得られた合金粉末に対して以下の条件で一次窒化工程を行ったこと、及び一次窒化工程終了後、粉砕処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様に蛍光体を製造した。
ロータリーキルン内の雰囲気全体をアルゴンに置換し、直径90mm、全長1500mmであるアルミナ製炉心管を傾斜角1.9°に設定した。炉心管に対して向流方向で窒素(0.7L/分)、水素(0.2L/分)、及びアルゴン(5L/分)を含有する混合ガス流通下、炉心管を5rpmで回転させながら、スクリューフィーダーを用いて合金粉末を400g/時で連続して供給した。ヒーター温度を1100℃とした。この時、合金粉末の均熱帯(ここでは、炉心管の中央部150mm程度を指す。)滞留時間は3分間であった。炉心管から出てきた一次窒化工程終了後の窒素含有合金を雰囲気がアルゴンに置換された容器に回収後、急冷したところ、粉末状であることが確認された。
得られた窒素含有合金について、窒素及び酸素の含有量の分析を行ったところ、窒素含有率は3.7重量%、酸素含有率は1.2重量%であった。
また、得られた窒素含有合金の粉末X線回折パターンを図6に示す。AlB型のアルカリ土類シリサイドと呼ばれる金属間化合物の一つであるSr(Si0.5Al0.5と類似した粉末X線回折パターンが主相であり、その他に、SrSi(PDF No.16−0008)、SrSi(PDF No.19−1285)等の金属間化合物が検出された。
続いて、得られた窒素含有合金について実施例1と同様に二次窒化工程を行って蛍光体を製造した。得られた蛍光体について、発光特性を測定し、その結果を表9に示す。
また、得られた蛍光体について実施例2と同様に洗浄処理を行った後、酸素含有率及び窒素含有率を求めた。その結果を表9に示す。また、式[A]の値及び加熱工程における1分間当たりの温度変化を表8に示す。
実施例12
実施例1で得られた合金粉末40gを内径54mmの窒化ホウ素製ルツボに入れ、雰囲気焼成炉を用いて一次窒化工程を行った。炉内を真空にし、室温から900℃まで昇温速度20℃/分で加熱した。次いで、窒素含有アルゴンガス(窒素:アルゴン=5:95(体積比))をゲージ圧で0.01MPaまで充填した。圧力を保持したまま、窒素含有アルゴンガス(窒素:アルゴン=5:95(体積比))1L/分流通下、900℃から1050℃まで昇温速度2℃/分で加熱し、1050℃で4時間保持した。続いて、900℃まで冷却した後、雰囲気ガスを窒素に置換して、900℃から1050℃まで昇温速度2℃/分で加熱し、1050℃で4時間保持した。サンプル温度が200℃になるまで約2時間かけて冷却し、室温付近になるまで放冷した。
得られた窒素含有合金について酸素含有率、及び窒素含有率を算出し、その結果を表7に示す。
また、得られた窒素含有合金の粉末X線回折パターンを図7に示す。粉末X線回折パターンにおいて、SrSi(PDF No.16−0008)、SrSi(No.19−1285)等の金属間化合物とともに、Sr(Si0.5Al0.5と類似した相が検出された。
次いで、得られた窒素含有合金について、室温から1900℃までの温度範囲を600℃/時で昇温したこと以外は実施例1と同様に二次窒化工程を行ない、さらに実施例4と同様に洗浄処理、及び分級処理を行った。得られた蛍光体について、発光特性を測定し、その結果を表9に示す。また、酸素含有率、窒素含有率及びNI/NPを求め、その結果を表9に示す。また、式[A]の値及び加熱工程における1分間当たりの温度変化を表8に示す。また、得られた蛍光体の粉末X線回折パターンを図11に示す。
実施例13
実施例1で得られた合金粉末40gを内径54mmの窒化ホウ素製ルツボに入れ、雰囲気焼成炉を用いて一次窒化工程を行った。室温から900℃まで真空中で昇温速度20℃/分で加熱し、900℃で窒素含有アルゴンガス(窒素:アルゴン=5:95(体積比))をゲージ圧で0.01MPaまで充填した。圧力を保持したまま、窒素含有アルゴンガス(窒素:アルゴン=5:95(体積比))1L/分流通下、900℃から1050℃まで昇温速度2℃/分で加熱し、1050℃で3時間保持した。その後、室温まで放冷し、再び窒素含有アルゴンガス(窒素:アルゴン=5:95(体積比))1L/分流通下、900℃から1050℃まで昇温速度2℃/分で加熱し、1050℃で3時間保持した。その後、室温まで冷却し、雰囲気ガスを窒素に置換して、900℃から1050℃まで昇温速度2℃/分で加熱し、1050℃で3時間保持した。200℃まで約2時間かけて冷却し、室温付近になるまで放冷した。
得られた窒素含有合金について酸素含有率、及び窒素含有率を算出し、その結果を表7に示す。
また、得られた窒素含有合金の粉末X線回折パターンを図8に示す。粉末X線回折パターンにおいて、SrSi(PDF No.16−0008)、SrSi(PDF No.19−1285)等の金属間化合物が検出された。
得られた窒素含有合金142gを直径85mmの窒化ホウ素製ルツボに充填し、室温から1900℃まで昇温速度600℃/時で加熱したこと以外は実施例1と同様に二次窒化工程を行ない、さらに実施例4と同様に洗浄処理、及び分級処理を行った。得られた蛍光体について、発光特性を測定した。その結果を表9に示す。また、酸素含有率、窒素含有率及びNI/NPを求めた。その結果を表9に示す。また、式[A]の値及び加熱工程における1分間当たりの温度変化を表8に示す。また、得られた蛍光体の粉末X線回折パターンを図12に示す。
実施例14
実施例1で得られた合金粉末に対して以下の条件で一次窒化工程を行ったこと、及び一次窒化工程終了後、粉砕処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様に蛍光体を製造した。
雰囲気ロータリーキルン全体を真空引きした後、窒素(2.5L/分)とアルゴン(2.5L/分)との混合ガスを導入することにより、ガス置換を行ない、直径90mm、全長1500mmであるアルミナ製炉心管を傾斜角1.9°に設定した。また、ヒーター温度を1100℃に設定した。炉心管に対して向流方向で窒素(0.7L/分)、水素(0.2L/分)、及びアルゴン(5L/分)を含有する混合ガス流通下、炉心管を5rpmで回転させながら、スクリューフィーダーを用いて合金粉末を220g/時で連続して供給した。この時、合金粉末の均熱帯滞留時間(フィード開始から排出開始までの時間×均熱帯長さ/炉心管全長)は約3分間であった。炉心管から出てきた一次窒化工程終了後の窒素含有合金を、雰囲気がアルゴンに置換された容器に回収し、急冷した。
一次窒化工程終了後の窒素含有合金について、分析を行ったところ、窒素含有率は8.9重量%、酸素含有率は2.9重量%であった。
また、得られた窒素含有合金の粉末X線回折パターンを図9に示す。図9から、SrSi(PDF No.16−0008)、SrSi(PDF No.19−1285)等の金属間化合物が検出されたことがわかる。
続いて、得られた窒素含有合金について、以下の条件で二次窒化工程を行った。前記HIP内を5×10−1Paまで真空排気した後、300℃に加熱し、300℃にて真空排気を1時間継続した。その後、室温で窒素雰囲気約49MPaまで昇圧した。次いで、900℃になるまで昇温速度600℃/時で加熱し、1100℃になるまで、昇温速度66.7℃/時で加熱した。この時、圧力は約140MPaであった。その後、約1.5時間かけて炉内温度を1900℃まで、内圧を190MPaまで昇温及び昇圧し、この状態で1時間保持し、室温まで放冷して蛍光体を得た。得られた蛍光体をアルミナ乳鉢で50μm以下まで解砕し、発光特性を測定した。その結果を表9に示す。また、式[A]の値及び加熱工程における1分間当たりの温度変化を表8に示す。また、実施例2と同様に蛍光体の洗浄処理を行った後、分析を行って酸素含有率、窒素含有率及びNI/NPを求めた。その結果を表9に示す。
実施例15
一次窒化工程終了後、得られた窒素含有合金について窒素雰囲気中でアルミナ乳鉢を用いて粉砕処理を行い、窒素雰囲気中で目開き53μmの篩いを通過させたこと以外は、実施例14と同様に二次窒化工程を行ない、蛍光体を製造した。
得られた蛍光体について、実施例14と同様に発光特性を測定した。その結果を表9に示す。また、実施例2と同様に蛍光体の洗浄処理を行った後、分析を行って酸素含有率、窒素含有率及びNI/NPを求めた。その結果を表9に示す。また、式[A]の値及び加熱工程における1分間当たりの温度変化を表8に示す。
実施例16
合金粉末の供給速度を71g/時、窒素(0.25L/分)及びアルゴン(5L/分)を含有する混合ガス流通下としたこと、並びにヒーター温度を1080℃として加熱処理を行ったこと以外は、実施例14と同様にして一次窒化工程を行った。この時、合金粉末の均熱帯滞留時間(フィード開始から排出開始までの時間×均熱帯長さ/炉心管全長)は約3分間であった。炉心管から出てきた一次窒化工程終了後の窒素含有合金を、雰囲気がアルゴンに置換された容器に回収し、急冷した。
一次窒化工程終了後の窒素含有合金について、分析を行ったところ、窒素含有率は5.5重量%、酸素含有率は2.8重量%であった。
この窒素含有合金について実施例14と同様に二次窒化処理を行ない、蛍光体を製造した。実施例14と同様に発光特性を測定した。その結果を表9に示す。また、実施例2と同様に蛍光体の洗浄処理を行った後、分析を行って酸素含有率、窒素含有率及びNI/NPを求めた。その結果を表9に示す。また、式[A]の値及び加熱工程における1分間当たりの温度変化を表8に示す。
実施例17
窒素(2.5L/分)とアルゴン(2.5L/分)との混合ガスを雰囲気ロータリーキルン全体に流通させながら、さらに、炉心管内に、傾斜した炉心管の下部から、窒素(2.5L/分)、アルゴン(2.5L/分)、水素(0.2L/分)の混合ガスを供給したこと、及び合金粉末の供給速度を0.3kg/時としたこと以外は実施例14と同様の条件で一次窒化工程を行った。
一次窒化工程終了後の窒素含有合金について、分析を行ったところ、窒素含有率は14.4重量%、酸素含有率は2.2重量%であった。
続いて、得られた窒素含有合金を実施例1と同様に粉砕した。得られた合金粉末の重量メジアン径D50は11.4μmであり、45μm以上の合金粒子の割合は1%以下、100μm以上の粒子の割合は0.1%未満、5μm以下の合金粒子の割合は12%、QDは0.36であった。
このようにして得られた窒素含有合金を実施例14と同様の条件で窒化し、実施例14と同様に発光特性を測定した。その結果を表9に示す。また、式[A]の値及び加熱工程における1分間当たりの温度変化を表8に示す。
実施例18
式[A]の値を0.50とした(蛍光体原料の焼成容器内充填率は35体積%だった。)こと以外は実施例17と同様の条件で蛍光体を製造した。得られた蛍光体の発光特性を実施例17と同様に測定した。その結果を表9に示す。
実施例19
実施例17で得られた一次窒化工程終了後の窒素含有合金を、アルミナ乳鉢を用いて500μm以下まで解砕した。次いで、粉砕部がジルコニアでライニングされたジェットミル(サンレックス工業製 ナノグラインディングミル NJ−50)を用いて、窒素雰囲気中(酸素濃度1体積%以下)、粉砕圧0.3MPa、原料供給速度0.3kg/時で粉砕した。得られた合金粉末を目開き53μmの篩いを通過させたところ、重量メジアン径D50が12.8μmであり、20μm付近に粒径分布のピークを有する合金粉末が得られた。得られた合金粉末の45μm以上の合金粒子の割合は6%、5μm以下の合金粒子の割合は18%、QDは0.60であった。
このようにして得られた窒素含有合金を実施例14と同様の条件で窒化することにより蛍光体を得た(但し、蛍光体原料の焼成容器内充填率は26体積%とした)。得られた蛍光体について実施例14と同様に発光特性を測定した。その結果を表9に示す。また、式[A]の値及び加熱工程における1分間当たりの温度変化を表8に示す。
また、得られた窒素含有合金10.16mgを窒化ホウ素製容器に入れ、窒素ガス100ml/分流通下、室温から1300℃まで昇温速度10℃/分で加熱した。前述のTG−DTA測定を行って、昇温中の重量変化を調べた。その結果を図5に示す。
Figure 2008106224
Figure 2008106224
Figure 2008106224
ここで、実施例17と実施例19とを比較すると、実施例17の方が、QDが小さく、得られた蛍光体の発光ピーク強度も実施例17の方が優れている。従って、二次窒化工程開始前の合金粉末の粒径分布がシャープであると発光特性が向上する傾向にあり、より好ましいことがわかる。
比較例1
一次窒化工程を行わなかったこと以外は、実施例1と同様に蛍光体の製造を試みたところ、黒色の塊が得られた。この合金塊について実施例1と同様に発光特性を測定してみたが発光は観測されなかった。得られた溶融合金塊について、窒素含有率、酸素含有率、及び全金属元素含有率等を測定した。その結果を表7及び表9に示す。
また、実施例1の粉砕工程で得られた一次窒化される前の合金粉末13mgを窒化ホウ素製容器に入れ、窒素ガス100ml/分流通下、室温から1300℃まで昇温速度10℃/分で加熱して、TG−DTA測定を行った。その結果、1090℃〜1100℃において、発熱が起こると共に重量が増加した。TG−DTA測定中の重量変化速度を図10に示す。図10から、加熱開始後、113分前後(1100℃付近)で瞬間的に重量が増加しているのがわかる。このピーク時(1100℃付近)における重量増加速度は、1628%/時であった。
また、式[A]の値及び加熱工程における1分間当たりの温度変化を表8に示す。実施例と比較して、本比較例では1分間当たりの温度変化が非常に大きくなっており、炉内にて急激な発熱反応が起きたものと推測される。
これらのことから比較例1では、急激な発熱によって、合金粉末が瞬間的に融解し、比表面積が減少して窒化が進行しなかったものと考えられる。
比較例2
一次窒化工程を窒素気流中、1030℃で2時間行ったこと以外は、実施例1と同様に行い、窒素含有合金を製造した。得られた窒素含有合金について、窒素含有率、及び酸素含有率の分析を行ったところ、窒素含有率は0.64重量%、酸素含有率は1.39重量%であった。また、重量増加率、及び全金属元素含有率についても算出した。その結果を表7に示す。
得られた窒素含有合金について実施例1と同様に二次窒化工程を行ない、蛍光体の製造を試みて、発光特性を実施例1と同様に評価したが、発光が観測されなかった。その結果を表9に示す。得られた蛍光体の窒素含有率は22重量%であった。
また、式[A]の値及び加熱工程における1分間当たりの温度変化を表8に示す。実施例と比較して、本比較例では1分間当たりの温度変化が非常に大きくなっており、炉内にて急激な発熱反応が起きたものと推測される。
比較例2は、一次窒化工程の温度が低く、時間も短かったことから、一次窒化工程において窒化反応が充分に進行していなかったため、二次窒化工程における窒化反応の速度を適切に制御できず、発光特性が低下したものと考えられる。従って、特性の高い蛍光体を得るためには、一次窒化工程を適切な条件で行う必要があると考えられる。
実施例20
赤色蛍光体として、実施例1で得られた蛍光体(Sr0.792Ca0.2AlSiN:Eu0.008と、緑色蛍光体として、CaSc:Ce0.01と(以下、蛍光体(A)と称する場合がある。)を用いて、以下のような手順により、図2(b)に示す構成の白色発光装置を作製した。
第1の発光体としては455nm〜460nmの波長で発光する青色LED〔22〕(Cree社製C460−EZ)を用いた。この青色LED〔22〕を、フレーム〔24〕の凹部の底の電極〔27〕に、接着剤として銀ペーストを使ってダイボンディングした。次に、ワイヤ〔25〕として直径25μmの金線を使用して青色LED〔22〕とフレーム〔24〕の電極〔26〕とを結線した。
上記2種の蛍光体(赤色蛍光体及び緑色蛍光体)の蛍光体混合物とシリコーン樹脂(東レダウ社製 JCR6101UP)とを、蛍光体−シリコーン樹脂混合物中の各蛍光体の含有量が、赤色蛍光体0.8重量%、緑色蛍光体6.2重量%の割合となるように、良く混合し、この蛍光体−シリコーン樹脂混合物(蛍光体含有組成物)を、上記フレーム〔24〕の凹部内に注入した。
これを150℃で2時間保持し、シリコーン樹脂を硬化させることにより、蛍光体含有部〔23〕を形成して表面実装型白色発光装置を得た。なお、本実施例の説明において、図2(b)に対応する部位の符号を〔〕内に示す。
得られた表面実装型発光装置を、その青色LED〔22〕に20mAの電流を通電して駆動し、発光させたところ、いずれの実施例の発光装置においても白色光が得られた。
得られた表面実装型白色発光装置について、発光スペクトルを測定した。その結果を図13に示す。得られた発光スペクトルより算出された各種発光特性の値(全光束、光出力、色度座標、色温度、色偏差、演色評価数)を表10に示す。なお、表10において、Tcpは相関色温度(単位K)を表し、Duvは色偏差を表す。
このように、本発明の蛍光体を任意の緑色蛍光体と組み合わせて使用することで、演色性の高い発光装置を得ることが出来る。
Figure 2008106224
本発明の発光装置の一実施例を示す模式的斜視図である。 図2(a)は、本発明の砲弾型発光装置の一実施例を示す模式的断面図であり、図2(b)は、本発明の表面実装型発光装置の一実施例を示す模式的断面図である。 本発明の照明装置の一実施例を示す模式的断面図である。 合金溶湯の微細化、凝固に好適なガスアトマイズ装置を示す模式図である。 実施例19で得られた窒素含有合金のTG−DTA分析結果を示すチャートである。 実施例11で得られた窒素含有合金の粉末X線回折パターンを示すチャートである。 実施例12で得られた窒素含有合金の粉末X線回折パターンを示すチャートである。 実施例13で得られた窒素含有合金の粉末X線回折パターンを示すチャートである。 実施例14で得られた窒素含有合金の粉末X線回折パターンを示すチャートである。 比較例1における一次窒化前の合金粉末のTG−DTA分析結果を示すチャートである。 実施例12で得られた蛍光体の粉末X線回折パターンを示すチャートである。 実施例13で得られた蛍光体の粉末X線回折パターンを示すチャートである。 実施例20で得られた表面実装型発光装置の発光スペクトルを示すチャートである。
符号の説明
1 蛍光体含有部(第2の発光体)
2 励起光源(第1の発光体)(LD)
3 基板
4 発光装置
5 マウントリード
6 インナーリード
7 励起光源(第1の発光体)
8 蛍光体含有樹脂部
9 導電性ワイヤ
10 モールド部材
11 面発光照明装置
12 保持ケース
13 発光装置
14 拡散板
22 励起光源(第1の発光体)(LED)
23 蛍光体含有部(第2の発光体)
24 フレーム
25 導電性ワイヤ
26 電極
27 電極
101 溶解室
102 誘導コイル
103 ルツボ
104 噴射ノズル
105 噴射室
106 回収室
107 サイクロン

Claims (27)

  1. 蛍光体原料を窒素含有雰囲気下で加熱する工程を有する蛍光体の製造方法であって、
    蛍光体原料の一部又は全部として、蛍光体を構成する金属元素を2種以上有する合金(以下、「蛍光体原料用合金」と称す。)を使用し、かつ、下記1)を満たすことを特徴とする蛍光体の製造方法。
    1)前記蛍光体原料用合金の一部又は全部が、全金属元素含有率が97重量%以下で
    ある窒素含有合金である
  2. 前記加熱工程において、前記蛍光体原料用合金の融点より100℃低い温度から該融点より30℃低い温度までの温度域における1分間当たりの温度変化が50℃以内となる条件下で加熱することを特徴とする請求項1に記載の蛍光体の製造方法。
  3. 下記2)〜4)のいずれか一つを満たすことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の蛍光体の製造方法。
    2)前記蛍光体原料用合金の融点より100℃低い温度から該融点より30℃低い温度
    までの温度域における昇温速度を9℃/分以下とする
    3)前記蛍光体原料として、前記蛍光体原料用合金と共に、前記蛍光体を構成する金属
    元素を1種又は2種以上含有する窒化物又は酸窒化物を用いる
    4)前記蛍光体原料用合金として、安息角が45度以下である蛍光体原料用合金粉末を
    用いる
  4. 前記加熱工程において、前記蛍光体原料を焼成容器内で加熱する方法であって、下記式[A]で表される、焼成容器の質量に対する蛍光体原料の質量の割合が0.1以上であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
    (蛍光体原料の質量)/{(焼成容器の質量)+(蛍光体原料の質量)} …[A]
  5. 前記窒素含有合金の窒素含有率が0.8重量%以上、27重量%以下であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
  6. 前記蛍光体原料用合金を、窒素含有雰囲気下で加熱することにより前記窒素含有合金を製造する工程(以下「一次窒化工程」と称す。)を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
  7. 前記窒素含有合金が下記式[7]を満足することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
    0.03≦NI/NP≦0.9 …[7]
    (式[7]において、
    NIは、窒素含有合金の窒素含有率(重量%)を表し、
    NPは、製造される蛍光体の窒素含有率(重量%)を表す。)
  8. 前記窒素含有合金を蛍光体原料の一部又は全部として、窒素含有雰囲気下で加熱する工程(以下「二次窒化工程」と称す。)が、該窒素含有合金の融点より300℃以上高い温度で加熱する工程であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
  9. 前記二次窒化工程に先立ち、前記窒素含有合金を該窒素含有合金の融点より100℃以上低い温度まで冷却する工程を有することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
  10. 前記二次窒化工程に先立ち、前記窒素含有合金を粉砕する工程を有することを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
  11. 蛍光体原料を窒素含有雰囲気下で加熱する工程を有する蛍光体の製造方法であって、
    蛍光体原料の一部又は全部として、蛍光体原料用合金を使用し、かつ、
    前記蛍光体原料用合金の一部又は全部が、窒素含有率が10重量%以上である窒素含有合金であることを特徴とする蛍光体の製造方法。
  12. 蛍光体原料を窒素含有雰囲気下で加熱する工程を有する蛍光体の製造方法であって、
    蛍光体原料の一部又は全部として、蛍光体を構成する金属元素を2種以上有する合金(以下、「蛍光体原料用合金」と称す。)を使用し、かつ、
    前記加熱工程において、前記蛍光体原料用合金の融点より100℃低い温度から該融点より30℃低い温度までの温度域における1分間当たりの温度変化が50℃以内となる条件下で加熱することを特徴とする蛍光体の製造方法。
  13. 前記蛍光体が、少なくともSiを含む4価の金属元素Mと、Si以外の金属元素の1種以上とを含むことを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
  14. 前記蛍光体が、付活元素Mと、2価の金属元素Mと、少なくともSiを含む4価の金属元素Mとを含むことを特徴とする請求項13に記載の蛍光体の製造方法。
  15. 前記蛍光体が、2価の金属元素Mとしてアルカリ土類金属元素を含むことを特徴とする請求項14に記載の蛍光体の製造方法。
  16. 前記蛍光体が、さらに3価の金属元素Mを含むことを特徴とする請求項13ないし15のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
  17. 窒化物又は酸窒化物を母体とする蛍光体の製造原料としての合金であって、
    該合金が少なくとも1種の金属元素と、
    少なくとも1種の付活元素Mとを含有し、
    全金属元素含有率が97重量%以下であり、窒素を含有することを特徴とする窒素含有合金。
  18. 窒素含有率が0.8重量%以上、27重量%以下であることを特徴とする請求項17に記載の窒素含有合金。
  19. 下記式[7]を満足することを特徴とする請求項17又は請求項18に記載の窒素含有合金。
    0.03≦NI/NP≦0.9 …[7]
    (式[7]において、
    NIは、窒素含有合金の窒素含有率(重量%)を表し、
    NPは、窒化物又は酸窒化物を母体とする蛍光体の窒素含有率(重量%)を表す。)
  20. 少なくともSiを含む4価の金属元素Mと、Si以外の金属元素の1種類以上とを含むことを特徴とする請求項17ないし19のいずれか1項に記載の窒素含有合金。
  21. 付活元素M、2価の金属元素M、及び少なくともSiを含む4価の金属元素Mを含むことを特徴とする請求項20に記載の窒素含有合金。
  22. 2価の金属元素Mとしてアルカリ土類金属元素を含むことを特徴とする請求項21に記載の窒素含有合金。
  23. 更に3価の金属元素Mを含むことを特徴とする請求項21又は請求項22に記載の窒素含有合金。
  24. 付活元素MがCr、Mn、Fe、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbからなる群から選ばれる1種以上の元素であることを特徴とする請求項17ないし23のいずれか1項に記載の窒素含有合金。
  25. 2価の金属元素MがMg、Ca、Sr、Ba、及びZnからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、3価の金属元素MがAl、Ga、In、及びScからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、少なくともSiを含む4価の金属元素MがSi、Ge、Sn、Ti、Zr、及びHfからなる群から選ばれる1種以上の元素であることを特徴とする請求項23又は請求項24に記載の窒素含有合金。
  26. 2価の金属元素Mの50モル%以上がCa及び/又はSrであり、3価の金属元素Mの50モル%以上がAlであり、少なくともSiを含む4価の金属元素Mの50モル%以上がSiであることを特徴とする請求項25に記載の窒素含有合金。
  27. 付活元素MとしてEuを、2価の金属元素MとしてCa及び/又はSrを、3価の金属元素MとしてAlを、少なくともSiを含む4価の金属元素MとしてSiを含むことを特徴とする請求項25又は請求項26に記載の窒素含有合金。
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