JP2008105954A - 骨髄赤血球前駆細胞分化促進剤 - Google Patents

骨髄赤血球前駆細胞分化促進剤 Download PDF

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Abstract

【課題】骨髄赤血球前駆細胞の分化促進剤を提供すること。
【解決手段】アラニン、セリン、グルタミン、チロシン及びアスパラギンからなる群から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含有する骨髄赤血球前駆細胞の分化促進剤、及び該分化促進剤を含有する貧血治療剤を提供する。この分化促進剤は、安全性が高く、経口投与可能で、かつ、汎用性のある優れたものである。
【選択図】なし

Description

本発明は、骨髄赤血球前駆細胞の分化促進剤、これを用いた貧血治療剤に関するものである。
赤血球造血は赤血球数の恒常性維持のために必須のプロセスである。赤血球の平均寿命はヒトでは約120日であり、老化赤血球は循環系から継続的に除かれるため、毎日、約千億個の赤血球が成人体内で新たに産生されている。赤血球の発生についてはよく研究されており、数多くの解説書に記載されているが、代表例として非特許文献1より概要を抜粋すると以下のようになる。
骨髄中には様々な血球系に分化が可能な多能性幹細胞が存在し、多能性幹細胞の一部は赤血球系への分化の方向が決定された赤血球前駆細胞に分化する。赤血球前駆細胞として同定される最も幼若なものは、BFU-E(burst forming unit-erythroid)と、やや分化の進んだCFU-E(colony forming unit-erythroid)である。CFU-E以降は、前赤芽球、好塩基性赤芽球、多染性赤芽球、正染性赤芽球へと分裂しながら分化し、脱核して網状赤血球から赤血球に成熟する。BFU-E、CFU-Eの段階になると、赤血球系への分化の方向が完全に決定されており、赤血球以外の血球系に分化することはない。このため、BFU-E、CFU-E数が増加すると、赤血球造血が促進する。このBFU-E数を増加させるアミノ酸としてアスパラギン酸が報告されているが(非特許文献2)、他のアミノ酸に関しては直接CFU-E、BFU-E数を増加させるアミノ酸は報告されていない。
赤血球造血は、主に造血因子のエリスロポエチン(Erythropoetin;EPO)によって恒常性が維持されている。EPOは主に腎臓で産生され、血液中を循環し、骨髄中のCFU-Eに作用して増殖、分化を刺激することで赤血球造血を促進する。EPOが正常レベルに産生されず不足すると、CFU-Eが減少し、赤血球造血が低下、貧血になる。貧血はヘモグロビン濃度が不十分で身体の酸素輸送要求を満足できない病的状態であり、労作意欲の低下、易疲労感、息切れ、立ちくらみ、動悸等の臨床症状を呈するため、症状を改善することが望まれる。各種の疾患がEPO不足による貧血をもたらすことが知られるが、最も古典的な例は腎臓病である。慢性腎不全患者は腎臓が損傷することによりEPO産生が低下するため、貧血を呈する。慢性腎不全患者のうちの多くは、腎機能代替のため頻繁な透析を必要とする透析患者であるが、透析患者の9割は貧血である。現在、貧血の治療法として、組換えヒトEPO(rHuEPO)の投与が広く用いられている。透析患者の9割はrHuEPO投与されており、それらのうち多くは貧血改善効果が認められている。
rHuEPOの貧血改善効果は高いが、臨床使用の拡大に伴い、いくつかの問題点が挙げられている。1つは長期治療のコストである。典型的rHuEPO投与量は最大で9000国際単位/週、薬価で約12,000円であるが、貧血の原疾患が治療されない限り投与は長期にわたり、コスト面における患者、保険制度の負担は大きい。また、EPOは静脈内投与を必要とするために、投与の度の通院など、患者の負担が大きいことも問題である。さらに、rHuEPOの投与によって血液中EPO濃度が上昇するにもかかわらず、EPOに対する反応が弱く、貧血改善に高投与量rHuEPOが必要、または、ほとんど貧血改善のみられない患者(これらの患者はEPO不応答性患者と呼ばれる)も1〜2割程度存在することが知られている。EPO不応答性患者の貧血改善には、EPOと異なる作用機序でCFU-Eを増加する骨髄赤血球前駆細胞の分化促進剤が有効であると考えられる。また骨髄赤血球前駆細胞の分化促進剤を併用することでrHuEPO投与必要量を減少させる効果も期待される。
又、自己の血液を採取し、将来の使用のために貯蔵している人(自己血液貯蔵者)に対して、血液採取後に迅速に造血作用を促進させる手段にも利用できる。
特許文献1は、L-アルギニン、L-グルタミン、L-バリン、L-イソロイシン及びL-ロイシンの5種類のアミノ酸を、一定の割合で混合した混合アミノ酸を、1日4g以上アスリートに摂取した結果、赤血球、ヘモグロビン及びヘマトクリットが有意に増加(造血)したことを示しているが、貧血症に対する有用性、骨髄赤血球前駆細胞に対する作用についての記載はない。また、L-グルタミン単独での効果も不明である。
特許文献2は、鎌状赤血球患者にL-グルタミンを投与するとNAD産生量が増加し、これが酸化ストレスに弱い赤血球の保護薬として有効である事を示しており、赤血球を亢進する効果ではない。従って、臨床例5名の内、1例で実際にRBCとHemoglobinの向上が確認されたことを報告しているが、赤血球造血によるものではない。
非特許文献3は、鎌状赤血球を取り出し、in vitro実験でL−ホモセリン、L−アスパラギン、L−グルタミンの3種類のアミノ酸を単独、或いは混合で添加培養すると鎌状形成を阻害する事を示しているが、これは鎌状赤血球患者の赤血球のみに対する保護作用であって、直接赤血球造血を亢進する作用ではない。
特許文献3はエリスロポエチン溶液製剤の安定化剤としてロイシン、トリプトファン、セリン、グルタミン酸及びアルギニンの内、1または2以上のアミノ酸を含む溶液中でのエリスロポエチン残存率がアミノ酸無添加に比べ上昇している事を示しているが、これは保存溶液中でのエリスロポエチンの安定化を示したもので、造血を亢進する効果を示しているわけでは無い。
非特許文献4は鎮静催眠剤であるクロルプロマジン(chlorpromazine:CPZ)存在下で起きる溶血現象を、アミノ酸のアラニン、グリシン、バリン、ロイシン及びフェニルアラニンがこの順に抑制効果があることをin vitro実験で示したものであるが、これはCPZによる赤血球の損傷を保護する作用であり、これらのアミノ酸が直接赤血球造血を亢進する効果を示しているわけでは無い。
特許文献4はチロシンを含むアミノ酸18種類を成分とする癌用アミノ酸輸液剤が担癌状態での貧血症状を改善した事を示しているが、赤血球造血を亢進する作用についての具体的記載はない。また、チロシン単独での効果も不明である。
特開2002-3372号公報 米国特許5693671号公報 特開2004-196824号公報 特開平6-40900号公報 血液学 中外医学社(1991年8月1日発行) ELSEFVIER 119,159-170(2000) Blood, Vol.45, No.1 (January), 1975; 45-48 Biol. Pharm. Bull.18(11)1535-1538(1995)
本発明は、骨髄赤血球前駆細胞の分化促進剤を提供することを目的とする。
本発明は、又、貧血治療剤を提供することを目的とする。
本発明は、又、エリスロポエチン様物質効果増強剤を提供することを目的とする。
本発明は、又、エリスロポエチン様物質投与量減量剤を提供することを目的とする。
本発明は、又、自己血液貯蔵者用造血促進剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決できる薬剤を探索、検討した結果、アミノ酸であるアラニン、セリン、グルタミン、チロシン及びアスパラギンに、CFU-E増加作用があることを新たに見出し、本発明を完成するに至った。
より詳細には、CFU-Eを測定する方法には、メチルセルロース半固形培地を用いたインビトロコロニーアッセイ法が一般的に用いられており、CFU-E増加作用を発見するには最も適した実験系である。本発明者はこの方法を用い、単離したマウス骨髄細胞にアラニン、セリン、グルタミン、チロシン及びアスパラギンを各600μM添加時のCFU-Eコロニー数を測定した結果、非添加時と比べ、CFU-E数が有意に増加することを見出した。ラット経口投与では、これらのアミノ酸を単独で1.2g/kgの単回投与を行うと、血液中濃度が600μM程度に達することから、経口投与では、投与量依存的なCFU-E数増加が期待される。ヒトにおいても、経口投与により、血液中の各アラニン、セリン、グルタミン、チロシン及びアスパラギンに濃度依存的なCFU-E数増加が期待される。
よって、以下に示す発明を提供する。
(1)アラニン、セリン、グルタミン、チロシン及びアスパラギンからなる群から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含有する骨髄赤血球前駆細胞の分化促進剤。
(2)上記(1)記載の分化促進剤を含有する貧血治療剤。
(3)血液・腹膜透析時の投与用である(2)記載の貧血治療剤。
(4)経口投与用である(2)記載の貧血治療剤。
(5)経腸投与用である(2)記載の貧血治療剤。
(6)腎性貧血の治療用である(2)〜(5)のいずれかに記載の貧血治療剤。
(7)エリスロポエチン不応答性患者用である(2)〜(5)のいずれかに記載の貧血治療剤。
(8)更にエリスロポエチン様物質を組み合わせてなる請求項2〜7のいずれか1項記載の貧血治療剤。
(9)エリスロポエチン様物質が、エリスロポエチンである(8)記載の貧血治療剤。
(10)エリスロポエチン様物質が、エリスロポエチンミミックペプチドである(8)記載の貧血治療剤。
(11)エリスロポエチン様物質が、エリスロポエチン産生促進剤である(8)記載の貧血治療剤。
(12)配合剤であることを特徴とする(8)〜(11)のいずれかに記載の貧血治療剤。
(13)アラニン、セリン、グルタミン、チロシン及びアスパラギンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有してなる薬剤とエリスロポエチン様物質を含有してなる薬剤とからなるキットであることを特徴とする(8)記載の貧血治療剤。
(14)エリスロポエチン様物質が、エリスロポエチンである(13)記載の貧血治療剤。
(15)エリスロポエチン様物質が、エリスロポエチンミミックペプチドである(13)記載の貧血治療剤。
(16)エリスロポエチン様物質が、エリスロポエチン産生促進剤である(13)記載の貧血治療剤。
(17)アラニン、セリン、グルタミン、チロシン及びアスパラギンからなる群から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含有するエリスロポエチン様物質効果増強剤。
(18)エリスロポエチン様物質が、エリスロポエチンである(17)記載の効果増強剤。
(19)エリスロポエチン様物質が、エリスロポエチンミミックペプチドである(17)記載の効果増強剤。
(20)エリスロポエチン様物質が、エリスロポエチン産生促進剤である(17)記載の効果増強剤。
(21)アラニン、セリン、グルタミン、チロシン及びアスパラギンからなる群から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含有するエリスロポエチン様物質投与量減量剤。
(22)エリスロポエチン様物質が、エリスロポエチンである(21)記載の投与量減量剤。
(23)エリスロポエチン様物質が、エリスロポエチンミミックペプチドである(21)記載の投与量減量剤。
(24)エリスロポエチン様物質が、エリスロポエチン産生促進剤である(21)記載の投与量減量剤。
(25)アラニン、セリン、グルタミン、チロシン及びアスパラギンからなる群から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含有する、自己血液貯蔵者用造血促進剤。
本発明による赤血球前駆細胞の分化促進剤は、アラニン、セリン、グルタミン、チロシン及びアスパラギンからなる群から選ばれる少なくとも1種、つまり1種又は2種以上の組み合わせを有効成分とする。アラニン、セリン、グルタミン、チロシン及びアスパラギンとしては、生理学的に許容可能なその塩でもよい。塩としては、塩酸塩、グルタミン酸塩などがあるがこれらに限定されない。有効成分の異性体に関しては、L-体、D-体、およびDL体いずれも使用可能であるが、天然に存在するという観点からL-体が好ましい。
本発明の赤血球前駆細胞の分化促進剤は、公知のまたは将来開発されるような様々な医薬製剤の形態、例えば、経口投与、腹腔内投与、経皮的投与、皮下投与、経静脈投与、吸入投与等、各種の投与形態に調製することができる。本発明の赤血球前駆細胞の分化促進剤はアラニン、セリン、グルタミン、チロシン及びアスパラギンを単独で用いることができるが、アラニン、セリン、グルタミン、チロシン及びアスパラギンを1つもしくは2つ以上を組み合わせた成分を有効成分とする医薬製剤として、公知の又は将来開発される方法を適宜採用して、様々の形態とすることができる。本発明の赤血球前駆細胞の分化促進剤は、更に、アルギニンと併用することができる。このように、アルギニンと併用あるいは配合すると、更に分化促進効果が増強される。
本発明による赤血球前駆細胞の分化促進剤の投与法としては、それぞれ特に制限はないが、好ましくは経口投与がのぞましい。この場合、投与量は投与する患者の貧血指標となるヘモグロビン濃度、年齢等によって異なるが、一般成人の場合、1日あたり0.1〜12g程度、より好ましくは0.5〜6g程度である。
本発明の赤血球前駆細胞の分化促進剤は、赤血球造血の低下に起因する各種疾患の治療または予防に用いる医薬品の有効成分や食品、メディカルフードの構成成分として使用することができる。本発明の赤血球前駆細胞の分化促進剤が有効であることが期待される疾患は、腎性貧血、鉄欠乏性貧血、溶血性貧血、再生不良性貧血、悪性貧血、失血性貧血、及び抗がん剤治療にともなう貧血である。これらのうち、腎性貧血特に、EPO不応答性の腎性貧血の治療に有用である。
本発明におけるEPO不応答性とは、効果が期待される量のEPOを投与しても十分な効果が発現しない状態をいい、特にEPOの投与量に限定されるものではない。一般に、EPO不応答性患者の定義は人種、生活習慣等によって異なるが、本発明は特にこれらの定義にも限定されるものではない。例えば、日本では、EPO必要投与量が9000以上国際単位/週であり、4〜8週間でHt値の上昇が3%未満である場合においてEPO不応答性と考えられている。米国ではガイドライン上、EPOを300-450国際単位/kg/週で4〜6ヶ月投与してもHbが10〜12g/dlに到達しないものと定められているが(Am J Kidney Dis 30 Suppl.3 1997)、一般的な用法用量では、150-300国際単位/kg/週で2ヶ月投与してもHbが2g/dl上昇せず、Hbが10〜12g/dlに到達しない者をEPO不応答性患者と扱っている(EPOGEN添付文書)。また欧州ではガイドライン上、300国際単位/kg/週以上皮下投与しても目標とするHt値に到達しない患者と定められている(Nephrol Dial Transplant (1999) 14 Suppl5 : 25-27)。上記以外の国においても、推奨される最大用法用量でも貧血改善効果が期待できない場合についてEPO不応答性患者と定められる。このようなEPO不応答性患者においては、本発明の赤血球前駆細胞の分化促進剤の投与が必須である。
EPO不応答性以外のEPO投与患者のうちEPO必要投与量が、例えば日本の場合に、1500〜9000国際単位/週の患者においては、本発明の赤血球前駆細胞の分化促進剤による貧血改善の増強が期待される。従って、EPO単独貧血改善治療時のEPOの必要投与量を減少することが期待される。本発明の赤血球前駆細胞の分化促進剤の投与によるEPO増強及びEPO減量は、EPO投与開始時の通常EPO投与量では、通常期間では充分な貧血改善(4〜8週間でHt値の上昇が約3%未満)が認められない場合から有効であることが期待され、その後EPOの投与量を通常投与される最高投与量においても通常期間では充分な貧血改善が認められない場合まで、有効であることが期待される。以上の、EPO増強及びEPO減量投与法としては、経口投与および、非経口投与を用いることができる。また、本発明の赤血球前駆細胞の分化促進剤の投与により、腎性貧血患者のうち、透析導入されていない患者及び透析導入されている患者について、貧血改善が期待されるが、投与法としては、経口投与および、非経口投与を用いることができる。
エリスロポエチン様物質とは、生体内に投与・摂取等された場合に、生体内でエリスロポエチン様作用を発揮・誘導する物質をいう。
例えば、エリスロポエチン、エリスロポエチンミミックペプチド、エリスロポエチン産生促進剤などを含むが、特にそれらに限定されるものではない。
エリスロポエチンとは、天然型、遺伝子組み換え型、修飾型のいずれでもよい。例えば遺伝子組み換え型であれば、ヒト肝細胞のmRNAに由来するヒトエリスロポエチンcDNAの発現により、チャイニーズハムスター卵巣細胞で産生される165個のアミノ酸残基(C809H1301N2290240S5;分子量:18,235.96)からなる糖タンパク(分子量:約30,000)である、エポエチンアルファ(遺伝子組み換え)(Epoetin Alfa(genetical recombination))やエポエチンベータ(遺伝子組み換え)(Epoetin Beta(genetical recombination))などでも良い。
エリスロポエチンミミックペプチドとは、EPO受容体に結合し、そして活性化し、またはEPOアゴニストとして働くペプチドをいう。例えば、WO96/40749に開示されている、アミノ酸配列X3X4GPX6TWX7X8を含み、ここに各々のアミノ酸は標準的な一文字省略で示され;X3はC;X4はR、H、LまたはW;X5はM、F、またはI;X6は20の遺伝的にコードされたL−アミノ酸から独立して選択され;X7はD、E、I、LまたはV;およびX8はCである長さ10〜40アミノ酸残基のペプチドを含む。
更に詳細には、EPOミミックペプチドは、下記の要件を満たすペプチドを成分として有するものをいう。
1.エリトロポエチン受容体に結合し、アミノ酸配列X3X4GPX6TWX7X8を含み、ここに、各々のアミノ酸は標準的な一文字省略で示され、X6は20の遺伝的にコードされたL−アミノ酸のいずれかから独立して選択され;X3はC;X4はR,H,LまたはW;X5はM,FまたはI;X7はD,E,I,LまたはV;およびX8はCである長さ10〜40アミノ酸残基のペプチド。
2.各々のアミノ酸が標準的な一文字省略によって示されるアミノ酸配列 YX2X3X4X5GPX6TWX7X8からなり、X2およびX6の各々は20の遺伝的にコードされたL−アミノ酸のいずれかから独立して選択され;X3はC;X4はR,H,LまたはW;X5はM,FまたはI,X7はD,E,I,LまたはV;およびX8はCである1記載のペプチド。
3.アミノ酸配列 X1YX2X3X4X5GPX6TWX7X8X9X10X11よりなり、ここに、各々のアミノ酸は標準的な一文字省略によって示され、X1,X2,X6,X9,X10およびX11の各々は20の遺伝的にコードされたL−アミノ酸のいずれかから独立して選択され;X3はC;X4はR,H,LまたはW;X5はM,FまたはI;X7はD,E,I,LまたはV;およびX8はCである2記載のペプチド。
4.X4がRまたはH;X5がFまたはM;X6がI,L,T,M,EまたはV;X7がDまたはV;X9がG,K,L,Q,R,SまたはT;およびX10がA,G,P,RまたはYである3記載のペプチド。
5.X1がD,E,L,N,S,TまたはV;X2がA,H,K,L,M,SまたはT;X4がRまたはH;X9がK,R,SまたはT;およびX10がPである4記載のペプチド。
6.下記よりなる群から選択される1記載のペプチド。
Figure 2008105954
Figure 2008105954
7.下記よりなる群から選択される1記載のペプチド。
Figure 2008105954
8.該アミノ酸配列が環化される1のペプチド。
9.下記よりなる群から選択される8記載のペプチド。
Figure 2008105954
10.該アミノ酸配列がダイマー化された1記載のペプチド。
11.該ペプチドが下記のアミノ酸配列からなる10記載のペプチド。
Figure 2008105954
更にEPOミミックペプチドには、AFFYMAX社が開発したHEMATIDETMも含まれる。
また、EPO産生促進剤とは、生体内に投与することによって、生体内因性のEPOの産生を誘導する薬剤をいい、例えばHIF(Hypoxia-Inducible Factor)安定化剤などであり、HIF安定化作用を有するものであればどのような構造のものでもよい。例えば、具体的に、FibroGen社が開発したFG2216(日本名YM311)などをいう。また、低酸素誘発因子プロリン水酸化酵素阻害剤以外の作用機構を有するEPO産生促進薬剤であってもよい。
エリスロポエチン様物質投与量減量剤とは、エリスロポエチン様物質の必要投与量を減量できる剤をいう。
自己血液貯蔵者用造血促進剤とは、自己の血液を採取し、将来の使用のために貯蔵している人(自己血液貯蔵者)に対して、血液採取後に迅速に造血作用を促進させる剤をいう。
本発明の有効成分の医薬への適用方法としては、経口投与あるいは非経口投与を採用することができるが、投与に際しては、有効成分を、経口投与、注射などの投与方法に適した固体又は液体の医薬用無毒性担体と混合して、慣用の医薬製剤の形態で投与することができる。このような製剤としては、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤などの固形剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤などの液剤、凍結乾燥製剤などが挙げられ、これらの製剤は製剤上の常套手段により調製することができる。上記の医薬用無毒性担体としては、例えば、グルコース、乳糖、ショ糖、澱粉、マンニトール、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングルコール、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アミノ酸、ゼラチン、アルブミン、水、生理食塩水などが挙げられる。また、必要に応じて、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張化剤などの慣用の添加剤を適宜添加することもできる。
本発明により、安全性が高く、経口投与可能で、かつ、汎用性のある赤血球前駆細胞の分化促進剤が提供される。
本発明の赤血球前駆細胞の分化促進剤は、貧血患者の貧血の予防または治療を可能とし、貧血に伴う労作意欲の低下、易疲労感、息切れ、立ちくらみ、動悸等の臨床症状を改善することが期待される。さらに、経口投与とすれば、皮下または静脈注射の痛みを伴うことなく、また通院せずに在宅で毎日簡単に服用できることから、確実な貧血改善を奏することができると期待される。また、生体に存在するアミノ酸であることから服用に伴う副作用発現がなく、腎機能の悪化を懸念することなく治療できることが期待される。
例えば日本の基準で既にrHuEPOによる治療を受けている患者については、必要投与量が9000国際単位/週未満の患者に、本発明の有効成分を加えて投与することにより、EPO必要投与量が減少し、コスト面や、皮下または静脈注射による痛みなどの患者の負担を減らすことが期待される。また、EPO必要投与量が9000国際単位/週以上のEPO不応答性患者に対する貧血改善も期待される。また、今後、EPOミミックペプチドあるいはEPO産生促進剤による治療が普及した場合にも、本発明の有効成分を加えて投与することにより、必要投与量が減少するなど期待される。
〔実施例1〕アラニン、セリン、グルタミン、チロシン及びアスパラギンのCFU-E増加作用
インビトロマウスCFU-Eコロニーアッセイ法は以下の方法で行った。BDF-1マウス雄10週齢(日本チャールズリバー株式会社)を頚椎脱臼法で致死後、大腿骨から骨髄細胞を単離し、10%FCS(JRHバイオサイエンス)を含有するIMDM培地(インビトロジェン株式会社)に懸濁した。骨髄細胞を1500rpm、4℃、10分間遠心し、沈殿した骨髄細胞を、アミノ酸を含有しないIMDM培地に置換し、細胞数を測定した。直径3.5cmのディッシュ(ナルジェヌンクインターナショナル)に、通常アミノ酸組成の1/3濃度であるIMDM培地で骨髄細胞を懸濁したメチルセルロース半固形培地{1国際単位/ml rHuEPO(中外製薬株式会社)、100μM 2−メルカプトエタノール(和光純薬工業株式会社)、10%FCS(JRHバイオサイエンス)、0.8%メチルセルロース(ステムセルテクノロジー社 メチルセルロース含有IMDM溶液M3134)、1%BSA(シグマアルドリッチジャパン株式会社)、骨髄細胞2.5×105個/ml}を1ml加えた。(10%FCSを含有するアミノ酸組成が1/3濃度のIMDM培地と同等。)上記の組成に加え、アラニン、セリン、グルタミン、チロシン及びアスパラギンを各々最終濃度600μMとなるように追添加したものを調製し、37℃、5%CO2条件で48時間培養後、倒立顕微鏡を用いて、CFU-Eコロニー数を測定した。各条件についてN=4で行った。統計学的検定はUnpaired t-testで行った。
CFU-Eコロニーアッセイの結果を図1(A)に示す。図中、* P<0.05。データは平均値±SEMで示した。縦軸はコントロールのCFU-Eコロニー数を100%とした時の、相対値(%)である。
図1には、アラニン、セリン、グルタミン、チロシン及びアスパラギンを最終濃度600μMになるように添加した場合、CFU-E数がコントロールより1.5倍以上増加したことが示されている。このことから、アラニン、セリン、グルタミン、チロシン及びアスパラギンは骨髄細胞に直接作用し、CFU-E数を増加させることが明らかとなった。
EPOが十分量存在する条件でアラニン、セリン、グルタミン、チロシン及びアスパラギンがCFU-E数を増加したことから、EPO効果増強作用およびEPO投与量減量効果が期待できる。1U/mlのEPOが十分量であることは、図1(A)と同一条件で実施した図1(B)の結果で示したとおり、0.5U/ml以上で最大作用量であることから明らかである。(図1(B)の縦軸は2.5×105個の骨髄細胞あたりのCFU-Eコロニー数である。)EPOミミックペプチド、EPO産生促進剤との組み合わせも同様である。以下に詳しく述べる。
EPOは赤血球幹細胞膜上に存在するEPO受容体と結合することによって赤血球造血に作用すると考えられている。図1(B)に示されるように、EPOは濃度依存的に赤血球幹細胞CFU−Eを増加させ、それぞれ一定濃度に達すると最大活性となり、それ以上に濃度を高くしても最大活性のままである。本件発明で見出したアラニン、セリン、グルタミン、チロシン及びアスパラギンは、このような十分量のEPOが存在するにもかかわらず、同時に作用させるとCFU−Eを更に増加させる。このことから、EPOとアラニン、セリン、グルタミン、チロシン及びアスパラギンとは、作用点が異なること、両者が相乗効果を発揮することがわかる。
先に述べたように、EPO不応答性とは、効果が期待される量のEPOを投与しても十分な効果が発現しない状態をいうが、このようなEPO単独で効果が十分でない場合でも、アラニン、セリン、グルタミン、チロシン及びアスパラギンを単独、及び複数を投与することにより、EPOの最大活性を越えた高い効果を得ることができる。また、EPO不応答性以外の患者でも、EPO必要投与量が多い場合には、アラニン、セリン、グルタミン、チロシン及びアスパラギンを1つもしくは2つ以上を組み合わせた成分を併用することでEPO効果を増強し、その結果EPO投与量を低減することができる。すなわち、「EPO効果増強剤」あるいは「EPO投与量減量剤」として利用できる。
EPOとEPOミミックペプチドの作用点は、共通のEPO受容体であることから、以上述べたEPOとアラニン、セリン、グルタミン、チロシン及びアスパラギンとの関係は、EPOミミックペプチドでも全く同じといえる。すなわち、「EPOミミックペプチド効果増強剤」あるいは「EPOミミックペプチド投与量減量剤」として利用できる。
生体内ではEPOは腎臓で産生されているが、腎性貧血症などの疾患に伴い、赤血球造血に必要なEPOが不足した場合、医薬品としてのEPOが投与されている。しかし、腎性貧血症であっても、腎臓がEPOを産生できなくなったわけではなく、腎臓EPO産生促進剤を用いてEPO産生を増加させれば、EPO投与と同じ治療効果が期待できる。本件発明のアラニン、セリン、グルタミン、チロシン及びアスパラギンは、EPOが医薬品として投与されたEPOであっても、腎臓から産生促進された内因性EPOであっても同等であるので、前述したFG2216などのEPO産生促進剤との併用も可能である。その場合、図1で示される効果が期待され、単独投与よりも効果を増強すること、あるいは投与量を軽減することが可能となる。すなわち、「EPO産生促進剤効果増強剤」あるいは「EPO産生促進剤投与量減量剤」として利用できる。
最大作用濃度である1U/mlのEPO存在下におけるアラニン、セリン、グルタミン、チロシン及びアスパラギンのCFU-E増加作用を示す。コントロールを100%とした時の各アミノ酸添加によるCFU-E数の相対値を示す。 EPOの濃度存在性において0.5U/ml以上でEPOが最大作用量であることを示す。

Claims (25)

  1. アラニン、セリン、グルタミン、チロシン及びアスパラギンからなる群から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含有する骨髄赤血球前駆細胞の分化促進剤。
  2. 請求項1記載の分化促進剤を含有する貧血治療剤。
  3. 血液・腹膜透析時の投与用である請求項2記載の貧血治療剤。
  4. 経口投与用である請求項2記載の貧血治療剤。
  5. 経腸投与用である請求項2記載の貧血治療剤。
  6. 腎性貧血の治療用である請求項2〜5のいずれか1項記載の貧血治療剤。
  7. エリスロポエチン不応答性患者用である請求項2〜5のいずれか1項記載の貧血治療剤。
  8. 更にエリスロポエチン様物質を組み合わせてなる請求項2〜7のいずれか1項記載の貧血治療剤。
  9. エリスロポエチン様物質が、エリスロポエチンである請求項8記載の貧血治療剤。
  10. エリスロポエチン様物質が、エリスロポエチンミミックペプチドである請求項8記載の貧血治療剤。
  11. エリスロポエチン様物質が、エリスロポエチン産生促進剤である請求項8記載の貧血治療剤。
  12. 配合剤であることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項記載の貧血治療剤。
  13. アラニン、セリン、グルタミン、チロシン及びアスパラギンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有してなる薬剤とエリスロポエチン様物質を含有してなる薬剤とからなるキットであることを特徴とする請求項8記載の貧血治療剤。
  14. エリスロポエチン様物質が、エリスロポエチンである請求項13記載の貧血治療剤。
  15. エリスロポエチン様物質が、エリスロポエチンミミックペプチドである請求項13記載の貧血治療剤。
  16. エリスロポエチン様物質が、エリスロポエチン産生促進剤である請求項13記載の貧血治療剤。
  17. アラニン、セリン、グルタミン、チロシン及びアスパラギンからなる群から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含有するエリスロポエチン様物質効果増強剤。
  18. エリスロポエチン様物質が、エリスロポエチンである請求項17記載の効果増強剤。
  19. エリスロポエチン様物質が、エリスロポエチンミミックペプチドである請求項17記載の効果増強剤。
  20. エリスロポエチン様物質が、エリスロポエチン産生促進剤である請求項17記載の効果増強剤。
  21. アラニン、セリン、グルタミン、チロシン及びアスパラギンからなる群から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含有するエリスロポエチン様物質投与量減量剤。
  22. エリスロポエチン様物質が、エリスロポエチンである請求項21記載の投与量減量剤。
  23. エリスロポエチン様物質が、エリスロポエチンミミックペプチドである請求項21記載の投与量減量剤。
  24. エリスロポエチン様物質が、エリスロポエチン産生促進剤である請求項21記載の投与量減量剤。
  25. アラニン、セリン、グルタミン、チロシン及びアスパラギンからなる群から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含有する、自己血液貯蔵者用造血促進剤。
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