JP2008101928A - アミノシラン被覆基材の製造方法およびアミノシラン被覆基材 - Google Patents

アミノシラン被覆基材の製造方法およびアミノシラン被覆基材 Download PDF

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Abstract

【課題】基材表面における、アミノ基を表出させた状態のアミノシランの密度を向上させることができるアミノシラン被覆基材の製造方法および該製造方法により得られるアミノシラン被覆基材の提供。
【解決手段】シランカップリング剤であるアミノシラン(A)を含有するアミノシラン溶液を用いて基材の表面に前記アミノシラン(A)を吸着させる工程を有し、前記アミノシラン溶液が、エーテル類、エステル類、炭素数4以上のアルコール類、ニトリル類、アルデヒド類、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、アミン類、24−クラウン−8−エーテルおよびその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物(B)を含有することを特徴とするアミノシラン被覆基材の製造方法。該製造方法により製造されるアミノシラン被覆基材。
【選択図】なし

Description

本発明は、ガラスなどの基材の表面にシランカップリング剤であるアミノシランを吸着させるアミノシラン被覆基材の製造方法およびアミノシラン被覆基材に関する。
従来、生体試料をスライドガラス表面で網羅的に分析するバイオチップ(以下バイオチップ)の製造においては、生体試料との親和性向上などのために、また、有機物と無機物を接着もしくは混合する際に接着性向上のために、バイオチップの基材を表面処理することが行われている。該表面処理方法としては、例えば、末端にアミノ基などを有するシランカップリング剤であるアミノシランを用いる方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。該方法によれば、表面がアミノシランで被覆されたアミノシラン被覆基材が得られる。該アミノシラン被覆基材の表面には、アミノシランのアミノ基が存在しており、該アミノ基が、前記親和性、接着性等のバイオチップの物性の向上に寄与する。
従来の代表的なアミノシラン処理方法は、ガラスなどの処理対象物を、アミノシランの溶液に浸す湿式コート法である。アミノシランを溶解する溶媒としては、メタノール/水が一般的である。また、アミノシランを溶解する溶媒として、トルエンを用いた例もある(例えば、非特許文献1参照。)。
特開2003−279572号公報 表面科学Vol.24、No.8、485−490、2003「TOF−SIMSによるバイオセンサ基板上のタンパク質分布の評価」
しかし、上述のような従来の方法で得られたアミノシラン被覆基材は、被覆前と比較して、前記親和性、接着性等の物性の変化量が充分なものではなかった。
その原因の1つとして、アミノシラン被覆基材表面におけるアミノシラン分子の吸着状態、すなわちアミノシランの配向性が考えられる。アミノシラン被覆基材表面において、アミノシランは、アミノ基側の末端およびSi原子側の末端のうちの少なくとも一方が基材表面に吸着し、基材表面に吸着していない側の末端が、基材と反対方向(大気界面方向)に配向していると考えられる。そして、これらのうち、大気界面方向に配向したアミノ基が、前記親和性、接着性等の物性の向上に大きく寄与すると考えられる。従来の方法で得られたアミノシラン被覆基材表面においては、基材表面に吸着したアミノシランのうち、アミノ基が大気界面方向に配向した状態のアミノシラン(アミノ基を表出させた状態のアミノシラン)の密度が低いために、物性の変化量が充分ではなかったのではないかと推測される。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、基材表面における、アミノ基を表出させた状態のアミノシランの密度を向上させることができるアミノシラン被覆基材の製造方法および該製造方法により得られるアミノシラン被覆基材を提供する。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、分子中に、負に帯電しやすい部位を有するか、塩基性であるか、またはアミノシランのアミノ基と相互作用する部位を有する特定の化合物をアミノシラン溶液中に含有させることにより前記課題が解決されることを見出し、該知見に基づいて本発明を完成させた。
すなわち、本発明の第一の態様は、シランカップリング剤であるアミノシラン(A)を含有するアミノシラン溶液を用いて基材の表面に前記アミノシラン(A)を吸着させる工程を有し、前記アミノシラン溶液が、エーテル類、エステル類、炭素数4以上のアルコール類、ニトリル類、アルデヒド類、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、アミン類、24−クラウン−8−エーテルおよびその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物(B)を含有することを特徴とするアミノシラン被覆基材の製造方法である。
本発明の第二の態様は、前記第一の態様のアミノシラン被覆基材の製造方法により製造されるアミノシラン被覆基材である。
本発明のアミノシラン被覆基材の製造方法によれば、基材表面における、アミノ基を表出させた状態のアミノシランの密度を向上させることができる。また、該製造方法により得られる本発明のアミノシラン被覆基材は、その表面に、高い密度で、アミノ基を表出させた状態のアミノシランが吸着したものである。
本発明のアミノシラン被覆基材の製造方法(以下、本発明の製造方法ということがある。)は、シランカップリング剤であるアミノシラン(A)を溶媒に溶解したアミノシラン溶液を用いて基材の表面に前記アミノシランを吸着させる工程を有する。
本発明において用いられるアミノシラン溶液は、少なくとも、アミノシラン(A)および化合物(B)を含有する。
アミノシラン溶液は、アミノシラン(A)および化合物(B)のみからなるものであってもよく、他の成分を含有してもよい。例えば、化合物(B)がアミノシラン溶液の溶媒として利用できる場合は、アミノシラン溶液の溶媒として、化合物(B)のみを用いてもよく、化合物(B)とその他の溶剤とを併用してもよい。化合物(B)がアミノシラン溶液の溶媒として利用できない場合は、アミノシラン溶液は、アミノシラン(A)および化合物(B)以外に、溶媒を含有する必要がある。
化合物(B)は、エーテル類、エステル類、炭素数4以上のアルコール類、ニトリル類、アルデヒド類、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、アミン類、24−クラウン−8−エーテルおよびその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種である。
エーテル類は、分子内にエーテル部位(C−O−C)を有する化合物(ただし、本明細書および特許請求の範囲においては、24−クラウン−8−エーテルおよびその誘導体を除く。)である。
エーテル類としては、例えば一般的に有機溶剤として用いられている化合物が挙げられ、具体例としては、テトラヒドロフラン、ジヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジベンゾフラン等の環式エーテル;ブチルメチルエーテル等が挙げられる。
エステル類は、分子内にエステル部位を有する化合物である。エステル類としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酪酸エチル、蟻酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル;安息香酸エステル等の芳香族カルボン酸エステル;グリコールエステル等が挙げられる。
炭素数4以上のアルコール類としては、1価アルコールであってもよく、2価以上の多価アルコールであってもよい。また、鎖式アルコールであってもよく、脂環式アルコールであってもよい。
アルコール類の炭素数の上限は、特に限定されない。当該アルコール類を含有するアミノシラン溶液の粘度が低く、該アミノシラン溶液中におけるアミノシラン(A)の拡散性に優れることから、アルコール類の炭素数は、6以下が好ましい。
アルコール類としては、1−ブタノールおよびその構造異性体、1−ペンタノールおよびその構造異性体、1−ヘキサノールおよびその構造異性体等が好ましい。
アルコール類としては、特に、2−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノールまたは炭素数5もしくは6の1価アルコールが好ましい。これらのアルコールは水酸基に結合するアルキル基の電子供与性が高く、水酸基の酸素原子が負に帯電しやすく、後述するようにアミノ基と静電的に会合しやすいと考えられる。
ニトリル類は、シアノ基を有する化合物であり、例えばアセトニトリル、4−シアノ−4’−アルキルビフェニル等が挙げられる。4−シアノ−4’−アルキルビフェニルにおけるアルキル基は、炭素数が5〜12であることが好ましく、5〜8であることがより好ましい。
アルデヒド類は、ホルミル基(−CHO)を有する化合物であり、例えばジメチルホルムアミド、クロロホルム等が挙げられる。
アミン類としては、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環を有する環式アミンと、それ以外のアミンとに大別できる。
環式アミンとしては、ピリジン、ピペリジン、N−メチルピペリジン、ビピリジン等が挙げられる。
それ以外のアミンとしては、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン、エチレンジアミン、シクロヘキシルアミン、アニリンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
24−クラウン−8−エーテルの誘導体としては、ジベンゾ−24−クラウン−8−エーテル、ベンゾ−24−クラウン−8−エーテル、ナフト−24−クラウン−8−エーテル、4−ホルミルベンゾ−24−クラウン−8−エーテル、4−カルボキシベンゾ−24−クラウン−8−エーテル等が挙げられる。
上記のうち、エーテル類、エステル類、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、炭素数4以上のアルコール類、ニトリル類およびアルデヒド類は、液中において負に帯電しやすい部位を有する。負に帯電しやすい部位として、具体的には、例えばエーテル類におけるエーテル部位の酸素原子;エステル類、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドにおける二重結合を形成する酸素原子;炭素数4以上のアルコール類における水酸基;ニトリル類におけるシアノ基;アルデヒド類におけるホルミル基の酸素原子等が挙げられる。
該負に帯電しやすい部位は、正に帯電しやすいアミノ基と静電的に会合する作用を有すると考えられる。そのため、たとえばアミノシラン溶液中に基材を浸漬すると、アミノシラン分子のアミノ基が、基材、特にガラスなどの、その表面が負に帯電している基材の表面に吸着するのを抑制し、該アミノ基が大気界面方向に配向する割合が高まり、基材表面における、アミノ基を表出させた状態のアミノシランの密度が向上すると考えられる。
また、上記のうち、アミン類は、塩基性の化合物であるため、アミノシラン溶液を塩基性環境とし、アミノシランのアミノ基のイオン化を抑制する作用を有すると考えられる。アミノ基がイオン化すると、基材、特にガラスなどの、その表面が負に帯電している基材の表面に吸着しやすくなり、アミノ基を表出させることが難しいが、アミン類を含有させることにより、基材表面へアミノ基の吸着が抑制され、結果、基材表面における、アミノ基を表出させた状態のアミノシランの密度が向上すると考えられる。
また、上記のうち、24−クラウン−8−エーテルおよびその誘導体は、アミノシランのアミノ基を特異的に包接することにより、基材表面へアミノ基の吸着を抑制する作用を有すると考えられる。すなわち24−クラウン−8−エーテルおよびその誘導体は、環状のポリエーテルであり、その環の空孔内にイオン化したアミノ基を取り込み、錯体を形成する。そのため、基材表面へアミノ基の吸着が抑制され、結果、基材表面における、アミノ基を表出させた状態のアミノシランの密度が向上すると考えられる。
本発明においては、また、アミノシラン分子が、基材表面の法線方向に配向した状態で吸着するため、アミノシラン分子が、基材界面の二次元方向に高密度に吸着可能となり、これによっても、基材表面における、アミノ基を表出させた状態のアミノシランの密度が向上する。
上記本発明の製造方法による効果には、化合物(B)が、アミノ基のイオン化を促進しないこと、アミノシランのアミノ基との間に相互作用を生じること等により、アミノ基の基材表面への吸着を抑制することが重要な役割を果たしていると推測される。
たとえば、本発明の製造方法において、化合物(B)を用いず、たとえばメタノールのみを用いた場合には、本発明の効果は得られない。これは、メタノールが、比較的負に帯電しにくいため、アミノシランのアミノ基との間に相互作用を生じないためと推測される。また、化合物(B)を用いず、酢酸等のカルボン酸のみを用いた場合にも、本発明の効果は得られない。これは、酸性化合物であるカルボン酸では、アミノシランのアミノ基との間に相互作用は生じるものの、アミノ基のイオン化を促進してしまうためと推測される。
本発明において、化合物(B)としては、比較的安価であること、入手容易であること、安全性が高いこと、また、アミノシラン溶液の安定性が高く、洗浄・取り扱い困難なシランカップリング剤の凝集物を生じにくいこと等の点から、環式エーテル、脂肪族カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステル、炭素数4以上のアルコール類、アセトニトリル、4−シアノ−4’−アルキルビフェニル、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ピリジン、24−クラウン−8−エーテルおよびその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記に挙げた中でも、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、安息香酸エステル、ブタノールおよびその構造異性体、ペンタノールおよびその構造異性体、炭素数6のアルコール、4−シアノ−4’−アルキルビフェニル、N−メチルピロリドン、ピリジンならびに24−クラウン−8−エーテルおよびその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
特に、t−ブタノール、ピリジン、N−メチルピロリドン、ならびに24−クラウン−8−エーテルおよびその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、なかでも、t−ブタノール、ピリジン、ならびに24−クラウン−8−エーテルおよびその誘導体が好ましい。
アミノシラン溶液中、化合物(B)の含有量は特に制限はない。たとえば、化合物(B)が液状である場合は、アミノシラン溶液の溶媒として、化合物(B)を用いることができる。また、化合物(B)と、後述する他の溶剤とを併用してもよく、この場合は、化合物(B)として、固体のものを用いることができる。
化合物(B)の含有量としては、特に、本発明の効果に優れることから、アミノシラン(A)のアミノ基に対して等モル量以上10倍モル量以下であることが好ましく、たとえば等モル量から2倍モル量でも十分な効果が得られる。
アミノシラン(A)としては、一般的にシランカップリング剤として用いられているアミノシラン(アミノ基置換有機基含有シラン)を用いることができる。該アミノシランとしては、下記一般式(I)で表される化合物が挙げられる。
R−Si(X)(X)(X) …(I)
式(I)中、Rは、少なくとも1つのアミノ基を有する有機基である。Rは、少なくとも末端にアミノ基を有することが好ましく、例えば、直鎖または分岐鎖のアルキル基の、末端の炭素原子に結合した水素原子がアミノ基で置換されたアミノアルキル基;該アミノアルキル基の炭素鎖の途中に、2級アミンまたは3級アミンによる分岐を含む基等が挙げられる。Rの具体例としては、例えば、3−アミノプロピル基、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル基などが好ましく挙げられる。
〜Xは、それぞれ独立に、無機材料と反応する加水分解性基またはアルキル基であって、X〜Xの内の少なくとも1つが加水分解性基である。
加水分解性基としては、ハロゲン原子またはアルコキシ基が好ましい。該ハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。該アルコキシ基としては、炭素数1〜2のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基またはエトキシ基がより好ましい。
〜Xのうちの1つまたは2つはアルキル基であってもよい。該アルキル基としては、炭素数1〜2のアルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
本発明においては、X〜Xの全部が加水分解性基であることが好ましく、X〜Xの全部がアルコキシ基であることがより好ましい。
アミノシラン(A)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
アミノシラン溶液中、アミノシラン(A)の含有量は、アミノシラン溶液中、0.01〜10体積%が好ましく、0.1〜1体積%がより好ましい。
アミノシラン溶液は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分として、アミノシラン(A)および化合物(B)以外の他の成分を含有してもよい。
該他の成分としては、たとえば、アミノ基以外の官能基を有するシランカップリング剤が挙げられる。該シランカップリング剤を含有することにより、基材表面にアミノ基以外の官能基を保持させたり、アミノシラン吸着後の空気中の親水性の汚れの吸着や汚染を防止することができる。アミノ基以外の官能基としては、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、メルカプト基、アクリロイル基、メタクリロイル基等が挙げられる。
また、アミノシラン溶液は、化合物(B)に含まれない溶剤を含有してもよい。該溶剤としては、アミノシラン(A)および(B)成分と混和性のあるものであればよく、たとえば水、炭素数1〜3のアルコール、トルエン、アセトン等が挙げられる。
アミノシラン溶液は、上記各成分を混合し、溶解することにより調製できる。
たとえば化合物(B)に含まれない溶剤を溶媒として用いてアミノシラン溶液を調製する場合、アミノシラン溶液は、該溶剤にアミノシラン(A)および化合物(B)を添加することにより調製できる。この場合、化合物(B)を添加するタイミングは、アミノシラン(A)の添加の前後どちらでもよい。
アミノシラン溶液には、アミノシラン(A)の加水分解性基の加水分解を促進させるため、水を添加することが好ましい。
アミノシラン溶液の調整時の温度は20〜30℃が好ましい。調製時は撹拌することが好ましい。
アミノシラン溶液を用いて基材の表面に前記アミノシランを吸着させる工程は、アミノシラン溶液と基材表面とを接触させることにより行うことができ、たとえば、アミノシラン溶液中に基材を浸漬する、基材表面にアミノシラン溶液を塗布する等の従来公知の方法が利用できる。
アミノシラン溶液中に基材を浸漬する場合の浸漬時間は、1分〜24時間が好ましく、5分〜20時間がより好ましく、10分〜16時間が特に好ましい。
基材としては、固体のものであればよく、特に限定されない。本発明においては、特に、本発明の効果が著しく発揮されることから、基材として、ガラス、特にソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス、合成石英のような負に帯電しやすい材質のものが好ましく用いられる。また、ガラス以外の無機材料、たとえば金属、金属酸化物、金属窒化物等の無機材料からなるもの、または、これらを任意の基材の表面にスパッタや蒸着などによりコーティングさせたもの等を用いることもできる。
基材の形状は、特に制限はなく、シート状、ビーズ状、粉状等、アミノシラン被覆基材の用途に応じて適宜設定すればよい。たとえばバイオチップ用途においては、ガラス基板等のシート状のものが好ましく用いられる。
基材は、固体表面の汚れを取り除き、また反応点(多くの場合水酸基)を活性化させるため、アミノシランを吸着させる前に、洗浄操作やアルカリ溶液による処理が施されることが好ましい。
本発明においては、前記アミノシランを吸着させる工程の後、アミノシラン溶液に含まれる溶媒や、メタノールなどのアルコールで、基材表面を洗浄する洗浄工程を有することが好ましい。これにより、基材上に過剰に吸着したアミノシランを洗い落すことができる。
また、上記洗浄工程後、基材を乾燥することが好ましい。洗浄工程で用いた溶媒が、乾燥ジミを残すことなく、均一に速やかに揮発するよう、遠心乾燥または蒸気乾燥によって乾燥させるのが望ましい。装置上の簡便性、また工程上の利便性からは、遠心乾燥を用いるのが望ましい。
本発明においては、前記アミノシランを吸着させる工程の後、前記基材を、減圧下に置く工程を有することが好ましい。これにより、アミノシランのSi原子側末端(例えば前記一般式(I)におけるXの加水分解性基)と基材表面との脱水縮合が促進され、基材表面における、アミノ基を表出させた状態のアミノシランの密度をさらに向上させることができる。
本工程において、減圧下に置く際の温度は、室温でもよく、加温してもよい。加温する場合、温度が高くなりすぎると、アミノシランの変性などが生じてしまい、基材表面での化学的機能を維持したままアミノ基を大気界面方向に配向させることが困難になる。そのため、加温する場合の温度は、120℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましい。
減圧の程度は、減圧に保つ時間との兼ね合いにもよるが、0.07MPa以下が好ましく、0.05MPa以下がより好ましい。0.02MPa以下が特に好ましく、この場合は1時間から2時間減圧下におくと良い。
減圧処理した後、基材を取り出すために減圧を解放するにあたっては、大気中の湿気や汚染物質を出来るだけ吸着しないよう、乾燥窒素ガス、乾燥空気、アルゴンガスなどを乾燥容器中に、埃を立てないように静かに送り込むのがよい。減圧解放後、試料測定のために一時的に大気中に曝されるのは問題ないが、工程途中品として保管する際には、再び減圧にするか、乾燥密封下に置くのが望ましい。保管は室温でもかまわないが、冷蔵保存がより望ましい。
上記本発明の製造方法により製造されるアミノシラン被覆基材においては、化合物(B)を用いない場合に比べて、基材表面における、アミノ基を表出させた状態のアミノシランの密度が高い。
基材表面における、アミノ基を表出させた状態のアミノシランの密度が高いかどうかは、当該アミノシラン被覆基材表面のアミノ基密度を定量することによって評価できる。
アミノシラン被覆基材表面のアミノ基密度の定量方法としては、下記工程A〜Eを含む定量方法が好ましく用いられる。
工程A:アミノシラン被覆基材上に、底面積100〜10000mm、高さ500μm以下の空間を形成する工程。
工程B:前記空間に、前記アミノシラン被覆基材表面のアミノ基と反応する反応性物質を含む液体を満たす工程。
工程C:前記アミノシラン被覆基材表面のアミノ基と前記反応性物質とを定量的に反応させる工程。
工程D:前記反応後の液体を回収する工程。
工程E:回収した前記液体中の前記反応性物質を定量し、反応前後の差分を求める工程。
上記定量方法は、簡単に記すと、基材表面の官能基と特異的に反応する低分子量化合物(プローブ)を作用させた後、基材表面の官能基との反応に寄与しなかったプローブを回収・定量することで、基材表面において化学的反応性を有した状態の官能基の密度を推測・定量するものである。この、化学的反応性を有した状態の官能基の密度を推測・定量するという点が非常に重要である。というのは、従来バイオチップに用いるガラス基板の製造や、ガラスや無機物膜などの固体表面の改質において、シランカップリング剤、なかでもアミノシランを吸着させた(コーティングした)ことを確認する手段として、一般的に水の接触角を測定する方法が用いられてきた。例えば基材がソーダライムガラスである場合、洗浄直後の接触角は10度未満であることが多く、アミノシランをコーティングした後は、およそ30度から70度へと、接触角が上昇することが多いため、これを以てコーティング完了と見なしていた。しかし、アミノシランのコーティング量が少ない場合でも、焼成条件などの要因によってアミノシランが変性し、これによって高い接触角を示すことがある。また、本来、アミノ基自身は、電気的中性であって極性を持たない官能基であるが、接触角を測定するために滴下された水と接触した瞬間、プロトン付加により親水性に変化し、これによって、接触角としては低い値となる。そのため、接触角の測定により、アミノシランのコーティング量を精確に評価することは難しい。これに対し、上記出願の定量方法によれば、アミノ基密度を精確に定量できる。
以下、上記定量方法をより詳細に説明する。
[工程A]
工程Aにおいては、アミノシラン被覆基材上に、底面積100〜10000mm、高さ500μm以下の空間(以下、微量容積空間ということがある。)を形成する。
該微量容積空間の高さは、500μm以下であればよいが、低いほど好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましい。該高さが低いほど、工程Bにおいて、アミノシラン被覆基材上のアミノ基と、該アミノ基と反応する反応性物質とが拡散距離以内に接近する機会が増大し、工程Cにおける定量的な反応を促進することが出来る。また、微量容積空間の容積が減ることで、工程Bにおいて使用する、反応性物質を含む液体の濃度を濃く出来、工程Eにおいて定量するまでの、吸着などによる誤差を少なくすることが出来る。
微量容積空間の高さの下限としては、特に制限はないが、工程Dにおける液体の回収のしやすさ、高速液体クロマトグラフィー(以下HPLC)のサンプリングのしやすさ等を考慮すると、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。
微量容積空間は、その空間内に反応性物質を含む液体を満たした際に、アミノ基と反応性物質との反応時間中は液体を保持し、液体が揮散しないような空間であればよい。このような空間は、例えば、図1に示すように、アミノシラン被覆基材11上に、スライドガラスなどのカバー部材12を、平均厚みが500μm以下のスペーサー部材13を介して重ねることによって形成できる。
[工程B]
工程Bにおいて、前記工程Aで形成した微量容積空間内に、アミノ基と反応する反応性物質を含む液体を満たす方法としては、どのような方法を用いてもよく、例えばスポイトやシリンジなど通常の手段を用いて行ってもよい。
[工程C]
工程Cにおいては、上記アミノシラン被覆基材上のアミノ基と反応性物質とを定量的に反応させる。
工程Cでは、アミノシラン被覆基材上のアミノ基と反応性物質との反応を充分に進行させることが必要であり、そのため、ある程度の反応時間が、工程Dを行う前に必要となる。この反応時間は、アミノシラン被覆基材上のアミノ基と、使用する反応性物質との反応性に依存する。
[工程D]
工程Dでは、上記工程C後の微量容積空間内の液体を回収する。
このとき回収する液体の量は、工程Eで当該液体中の反応性物質を定量し、差分を求めることができる量であればよく、定量に使用する装置の検出限界等を考慮して決定すればよい。
回収の方法は、種々存在するが、簡便には、上記微量容積空間が基材とカバーガラスで構成されている場合には、カバーガラスを開き、シリンジなどで回収することが可能ある。
[工程E]
工程Eでは、工程Dで回収した上記液体中の反応性物質を定量し、反応前の反応性物質の定量結果との差分を求める。
定量は、反応性物質を分離し、定量することが可能であればよく、公知の手法を用いて行うことができ、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)やガスクロマトグラフィー(GC)などを用いて行うことができる。
検出感度の点ではGCが優れているが、HPLCを用いるほうが、定量性の点で実績があり、波長254nmにおける光吸収を検出することで、より特異的に反応性物質を定量することができる。
[アミノ基と反応する反応性物質を含む液体]
アミノ基と反応する反応性物質としては、少なくともアミノ基と特異的に反応することが知られている官能基、およびHPLCなどの光学検出による試験装置で検出が可能なように、フェニル基などの光(紫外線)吸収特性もしくは蛍光特性をもつ部位を含む物質が好ましい。かかる物質として、具体的には、ニトロアリールハライド基を持つ4−フルオロ−7−ニトロベンゾフラザン(NBD−F)、4−クロロ−7−ニトロベンゾフラザン(NBD−Cl);酸クロリド基を持つ3−クロロカルボニル−6,7−ジメトキシ−1−メチル−2(1H)−キノキサリノン(DMEQ−COCl)、Sulforhodamine101AcidChloride、スクシイミド部位を持つ5−カルボキシフルオレセイン−アミノヘキシルアミダイト(5−FAM)、6−カルボキシテトラメチルローダミン(6−TAMRA);イソチオシアネート基を持つフルオレセインイソチオシアネート、フェニレンイソチオシアネート;その他、オルトフタルアルデヒドとN−アセチルシステインとの組み合わせや、ニンヒドリンなどが使用できるが、上記物質に限定されるものではない。
上記の中でも特にフェニレンイソチオシアネート(以下PITC)を用いることが好ましい。PITCは、アミノ基と特異的に反応する官能基と、紫外線を吸収するベンゼン環との、最小限の構成であるために、アミノ基が高密度でアミノシラン被覆基材表面に存在している場合でも、反応性物質自身の体積によって定量結果が飽和してしまうのを避けることができる。また、PITCは、アミノ酸のラベル化や蛋白質分析において特性がよく知られており、類似の分野で実績がある等の点からも好適である。
反応性物質としてPITCを用いる場合には、上記工程Cにおける反応が進むための時間は1〜8時間程度が必要となる。アミノシラン被覆基材上のアミノ基とPITCとが完全に反応するには、室温で4時間ないし8時間を要するが、反応時間が過大に延長されると、PITCの自己分解や溶媒の揮発などの誤差因子が拡大するため、実用的にはアミノ基とPITCとの反応が充分に進行し、かつ、測定上の定量性を向上させるには、3時間程度の反応時間が好適である。
上記反応性物質を含む液体の溶媒は、反応性物質を均一に溶解するものであればよく、特に限定されない。好ましい具体例としては、アミノシラン被覆基材上のアミノ基および反応性物質との反応性が低いことから、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアルデヒド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
上記の中でも、ジメチルホルムアルデヒドおよび/またはN−メチルピロリドンが好適に用いられる。これらの溶媒は、揮発性が低いため上記工程BおよびDにおける正確な操作が容易であり、反応性物質の溶解性が高く、アミノシラン被覆基材表面に対する濡れ性が適度である。さらに、特にPITCをアミノ基反応物質として用いる場合には、PITCの機材表面のアミノ基との結合以外による分解を最小限に抑える目的で、無水グレードの溶媒が入手しやすい。
上記液体中に、さらに、3級アミンを含ませることも可能である。上記液体中に3級アミンを含ませると、アミノ基反応物質のアミノ基との反応性を向上させることが期待される。これは、3級アミンのような塩基性物質が共存していると、アミノ基のイソチオシアネート基に対する反応性が向上するからである。
該3級アミンとしては、特に、置換基がアルキル基である3級アミン(窒素原子に3つのアルキル基が結合した化合物)が好ましい。該3級アミンの置換基がアルキル基であると、光吸収が少ないため、上記工程EにおけるHPLC分析において分析を妨げにくい。このような物質としては、例えばトリエチルアミンなどが好適に使用できる。
3級アミンの使用量としては、上記溶液中の0.01〜1体積%が好ましい。0.01体積%以上であると、3級アミンを含ませることによる効果が充分に得られ、1体積%以下であると、反応性物質、特にPITCの自然分解を防止できる。
また、上記液体は、内部標準物質として、アミノ基と反応せず、基材表面への吸着が少なく、高速液体クロマトグラフィーで定量できる物質を含有していてもよい。上記液体が内部標準物質を含有すると、アミノシラン被覆基材上のアミノ基の定量性を向上させることが可能となる場合がある。
内部標準物質としては、例えば、トルエン、ピリジン、アセトアミノフェン、N−フェニルアセトアミン、ジメチルアニリンなどの物質を用いることが可能であるが、これらに限定されるものではない。
前記本発明のアミノシラン被覆基材の製造方法により製造されるアミノシラン被覆基材は、前記工程A〜Eを含む定量方法により求められるアミノ基密度が20%以上であることが好ましく、25%以上がより好ましく、28%以上がさらに好ましく、38%以上が特に好ましい。
アミノ基密度は、使用する化合物(B)の種類を調節することにより調節できる。たとえば化合物(B)として、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、i−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ピリジン、4−シアノ−4’−ペンチルビフェニルおよびジベンゾ−24−クラウン−8−エーテルからなる群から選択される1種以上を用いれば、20%以上のアミノ基密度を達成できる。
上記本発明のアミノシラン被覆基材の製造方法によれば、シランカップリング剤であるアミノシランを、アミノ基を表出させた状態で基材表面に吸着させることができる。また、アミノシランを、基材界面の二次元方向に高密度に吸着させることができる。そのため、該製造方法に得られるアミノシラン被覆基材は、表面のアミノ基密度が従来に比べて高く、バイオチップ等の用途における有用性の高いものである。
また、本発明のアミノシラン被覆基材の製造方法によれば、工程環境や操作条件の変動がアミノシランの吸着状態に与える影響を低減でき、たとえば作業環境によって、複数のアミノシラン被覆基材間の吸着量(被覆率)のバラツキや、同じアミノシラン被覆基材における被覆率の面内ムラ、アミノシランの局所的な凝集などの現象が生じるのを防止でき、アミノシランの吸着の均一性を向上させることができる。そのため、得られるアミノシラン被覆基材は、アミノシランの被覆率の均一性に優れたものである。
また、本発明のアミノシラン被覆基材の製造方法によれば、アミノシランの有機官能基であるアミノ基を、基材方向ではなく、大気界面方向に、より多く配向させることができ、これにより、基材表面の化学的・電気的性質を、従来法よりも確実に改質するという優れた効果をも奏する。
また、本発明のアミノシラン被覆基材の製造方法により、基材表面における接触角などの物理的性質と、接着性、DNA等の生体試料との親和性などの化学的性質とを独立に制御することが可能になる。従来、両者は製造条件によって同時にまたは二律背反に変化してしまうものであったため、本発明のもたらす効果は絶大である。
上記本発明の効果は、特に該固体がソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス、合成石英のような負に帯電しやすい物質である場合に著しく発揮される。
本発明のアミノシラン被覆基材の製造方法は、化合物(B)を添加するという簡便な手段により、従来の、シランカップリング剤であるアミノシランの溶液を用いて行う湿式コート法の工程に大きな変更を加えることなく、上記効果を達成できる。
本発明のアミノシラン被覆基材は、上記本発明のアミノシラン被覆基材の製造方法によって製造されるものである。
該アミノシラン被覆基材、例えばアミノシラン被覆ガラス基板もしくはアミノシラン被覆樹脂基板は、バイオチップ用途に用いた場合に、負に帯電しやすい試料、例えばタンパク質、DNA等の生体試料などを、より定量的に基材上に固定化することができる。
また、上記にも述べたように、本発明のアミノシラン被覆基材の製造方法によれば、基材表面の物理的性質と化学的性質とを独立に制御できる。そのため、本発明のアミノシラン被覆基材によれば、生体試料を含む溶液を基材表面に点着させるなどして基材表面にスポットと呼ばれる複数の分析点を形成する際の、スポットの形状安定性と、生体試料の基材表面上への固定化率とをも、独立に制御可能になる。
また、本発明のアミノシラン被覆基材においては、基材表面における、アミノ基を表出させた状態のアミノシランの密度が高いため、負に帯電しやすい粒子が吸着しやすい。そのため、該アミノシラン被覆基材は、そのような工程を利用したディスプレイ用基板の製造や機能性微粒子の基材上への吸着において、品質の均一化、安定化に効果を発揮する。
また、本発明のアミノシラン被覆基材においては、アミノシランが高い配向性で高密度に基材表面に吸着するため、有機材料と無機材料とを接着する場合に、それらをより強力かつ均一に接着できるという効果を発揮する。
さらに、本発明のアミノシラン被覆基材は、その表面上で、アミノ基を基点として有機化学反応を行い、分子伸張させる場合においても、従来法でコーティングした固体表面よりも高い活性が期待できる。また、そのために分子伸張の設計の自由度も高くなり、用途により敢えて表出させる官能基を微量にしたい場合でも、本来官能基が低密度である従来法でコーティングした固体表面に比較して、より精確な官能基数の制御が可能になると期待できる。
以下に、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
[実施例1]
基材として、ソーダライムガラス基板(横25×縦76mm、1mm厚、以下ガラス基板という。)を用意した。
ガラス基板を次の手順で洗浄した。すなわち、ガラス基板をステンレス製のラックに固定し、10質量%水酸化ナトリウム水溶液に浸して15分間超音波処理し、水で3回よくリンスし、メタノールでリンスし、遠心分離機(100rpm、2分)によって均一に乾燥させた。さらに、該ガラス基板にUV(254nm)を1時間照射し、当該基板上に残留する有機物の分解と水酸基の活性化を行った。
次に、アミノシラン溶液を次の手順で調製した。すなわち、溶媒としてピリジン70mLを染色壺に入れ、室温(27℃)下で、撹拌しながら、アミノシラン0.7mL、次いで蒸留水1.12mLを滴下し、そのまま1時間、該アミノシラン溶液の撹拌を続けた。
撹拌終了後、該アミノシラン溶液中に、洗浄済みのガラス基板を、縦方向に静かに溶液に差し入れた。染色壺に蓋をして終夜(16時間)静置した。

静置後、ガラス基板をアミノシラン溶液から取り出し、直ちにメタノールで3回リンスし、乾燥窒素ガスを用いてメタノールを吹き飛ばしてガラス基板を乾燥させ、乾燥シミの無いことを確認した。さらにガラス基板を耐真空のデシケーターに入れ、真空ポンプを繋いで、1時間真空ポンプを室温下で動作させ続けた。その後、乾燥窒素ガスにより慎重に真空を解除してアミノシラン被覆基材(以下、サンプル1という。)を得た。
サンプル1について、次の手順でその表面のアミノ基密度を測定した。
[アミノ基密度測定手順]
高速液体クロマトグラフ装置(以下、HPLC装置という。)を次の条件で準備した。
検出波長:254nm。
カラム:Imtakt社製 CadenzaCD−C18。
流速:1.0mL/分。
溶媒:HO/アセトニトリル=4/6(体積比)。
0.1%トリエチルアミン(v/v)を含むジメチルホルムアミド溶液(以下、DMF溶液という。)を用意し、フェニレンイソチオシアネート(以下、PITCという。)をDMF溶液で125000倍希釈し、テスト液1を得た。このテスト液1の100μLには、およそ6.75×10−9molのPITCが含まれていることになる。
次に、面積が10平方cmの長方形(縦2cm、横5cm)のカバーガラス(カバー部材12に相当。)と、該カバーガラスの片面の長辺方向両縁部に形成された高さ約20μmのスペーサー(スペーサー部材13に相当。)とからなるカバーを用意し、これを、図1に示したのと同様にして、サンプル1の上に置き、サンプル1とカバーガラスとの間に体積約20μLの空間(以下、空間1という。)を形成した。この空間1に、上記テスト液1を満たし、この時を時間0とし、各サンプルとカバーガラス全体をそれぞれ個別にポリプロピレン製の密閉容器に入れた。
テスト液1においては、調製後自然放置によってもPITCが分解していくため、これに起因する誤差を以下の手順によって差し引くことで、定量精度を確保した。すなわち、テスト液1の一部は調製後速やかに、空間1と同体積(20μL)ずつ、サンプル瓶4〜5本に小分けし(以下無操作テスト液という)、できるだけ速やかにHPLC分析した。
また、後述するように、サンプル1を空間1から回収するときの直前および/または直後などの、時間0から適当な時間が経過したときにも、無操作テスト液のHPLC分析を行った。すべてのHPLC分析が終了した後、無操作テスト液のPITCピークエリアを縦軸に取り、時間0からのHPLC分析時間までの経過時間を横軸に取り、指数関数で近似し、予測曲線とした。
サンプル1のPITCピークエリアと、予想曲線上のサンプル1の分析時刻(時間0からの経過時間)における予想曲線上のPITCピークエリアとの差を算出し、この差を予想曲線上のPITCピークエリアで除した値を、サンプル1の表面においてアミノシランのアミノ基とPITCとが反応した割合(以下、正味減少率という。)とした。
時間0から3時間が経過したとき、サンプル1の空間1からそれぞれテスト液1を次の方法で回収した。すなわち、カバーガラスの一辺にピンセットを当てて持ち上げ、持ち上げた辺と反対側の辺がガラス基板に接触したままの状態にすると、空間1中にあったテスト液1は、表面張力により、ガラス基板とカバーガラスとが接触している辺の周囲に集まるので、ここに20μL用のマイクロピペットの先端を当て慎重に吸いとった。
吸いとったテスト液1をHPLC用サンプル瓶に移し、HPLC分析してPITCのピークエリアを求め、上記の計算方法により正味減少率を評価した。
さらに、下記の計算によって、アミノ基密度(ガラス基板の表面を、アミノシランがどれだけ覆っているか)を評価した。すなわち、アミノシランの分子模型から、アミノシランのアルキル鎖部位がガラス基板表面の平面に対して垂直に存在していると仮定し、それをガラス基板表面の平面に垂直な上方から見た場合の、最も広い幅を0.5nmと見なし、これを1辺とする正方形の面積を、アミノシラン1分子がガラス基板表面を被覆する面積、と定義した。左記の状態を仮定した正方形が単層を成して理論密度で10cmのガラス基板表面に敷き詰められた場合、正方形の数は6.64×10−9molと推定された。この理論密度のことを以下細密アミノ基密度とする。
上記結果から、下記式により、各サンプルのアミノ基密度を算出した。その結果を表1に示す。
式:アミノ基密度=(テスト液1中のPITC濃度)×(テスト液1の投入容積)×(正味減少率)/(細密アミノ基密度)
[実施例2〜10、比較例1〜2]
アミノシラン溶液の溶媒として、それぞれ表1に示す化合物(B)を用いた以外は実施例1と同様にしてアミノシラン被覆基材を得、その表面のアミノ基密度を測定した。その結果を表1に示す。
[実施例11〜12]
アミノシラン溶液の溶媒としてメタノールを用いた以外は実施例1と同様にしてアミノシラン溶液を調製し、該アミノシラン溶液に、表1に示す化合物(B)を、アミノシランに対して1.5倍モルになるように添加した以外は実施例1と同様にしてアミノシラン被覆基材を得、その表面のアミノ基密度を測定した。その結果を表1に示す。
表1中、「5CB」は4−シアノ−4’−ペンチルビフェニルを示す。
Figure 2008101928
表1の結果から、実施例1〜12で得られたアミノシラン被覆基材は、比較例1〜2に比べてアミノ基密度が高く、いずれの例においても20%以上であった。この結果から、本発明によって、基材表面における、アミノ基を表出させた状態のアミノシランの密度を向上できることが確認できた。
比較例1と実施例5、8とを比較すると、いずれもアミノシラン溶液の溶媒として直鎖アルコールを用いたにもかかわらず、アミノ基密度に大きな差があった。また、この3者を比較すると、アルコールの負に帯電しやすさに影響する炭素鎖が長いほど、アミノ基密度が高くなっていた。これは、炭素鎖が4以上であると、また、その炭素鎖が長いほど、当該アルコールが負に帯電しやすくなり、アミノ基を表出させた状態とさせる作用が高いためと推測される。
実施例5〜7から、アミノシラン溶液の溶媒として用いたアルコールが、炭素鎖の炭素数が同じである構造異性体どうしであっても、分岐鎖であるi―ブタノールのほうが直鎖である1−ブタノールよりもアミノ基密度が高く、3級アルコールであるt−ブタノールはさらにアミノ基密度が高いことがわかる。この事実からも、溶媒が負に帯電しやすい部位をもっているほど、アミノ基を表出させた状態とさせる作用が高いといえる。
また、比較例1と実施例11〜12とを比較すると、いずれもアミノシラン溶液の溶媒としてメタノールを用いたにもかかわらず、アミノ基密度に顕著な差が見られ、特にジベンゾ−24−クラウン−8−エーテルを用いた実施例9は、アミノ基密度が非常に高かった。
アミノ基密度の測定の際に微量容積空間を形成する方法の一例を説明するための概略図である。
符号の説明
11…アミノシラン被覆基材、12…カバー部材、13…スペーサー部材。

Claims (5)

  1. シランカップリング剤であるアミノシラン(A)を含有するアミノシラン溶液を用いて基材の表面に前記アミノシラン(A)を吸着させる工程を有し、前記アミノシラン溶液が、エーテル類、エステル類、炭素数4以上のアルコール類、ニトリル類、アルデヒド類、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、アミン類、24−クラウン−8−エーテルおよびその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物(B)を含有することを特徴とするアミノシラン被覆基材の製造方法。
  2. 前記化合物(B)が、環式エーテル、脂肪族カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステル、炭素数4以上のアルコール類、アセトニトリル、4−シアノ−4’−アルキルビフェニル、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ピリジン、24−クラウン−8−エーテルおよびその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載のアミノシラン被覆基材の製造方法。
  3. 前記アミノシランを吸着させる工程の後、前記基材を、減圧下に置く工程を有する請求項1または2に記載のアミノシラン被覆基材の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のアミノシラン被覆基材の製造方法により製造されるアミノシラン被覆基材。
  5. 下記工程A〜Eを含む定量方法により求められるアミノ基密度が20%以上である請求項4に記載のアミノシラン被覆基材。
    工程A:アミノシラン被覆基材上に、底面積100〜10000mm、高さ500μm以下の空間を形成する工程。
    工程B:前記空間に、前記アミノシラン被覆基材表面のアミノ基と反応する反応性物質を含む液体を満たす工程。
    工程C:前記アミノシラン被覆基材表面のアミノ基と前記反応性物質とを定量的に反応させる工程。
    工程D:前記反応後の液体を回収する工程。
    工程E:回収した前記液体中の前記反応性物質を定量し、反応前後の差分を求める工程。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US9826876B2 (en) 2013-09-30 2017-11-28 Kimberly-Clark Worldwide, Inc. Low-moisture cloud-making cleaning article

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