JP2008101518A - 燃料ポンプ - Google Patents

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文康 杉山
Koji Kato
浩二 加藤
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Abstract

【課題】インペラを回転したときのキャビテーションによるベーパーを有効利用して、燃料の流動抵抗の低減を図る。また、燃料流動性の高い被膜層を形成して、ベーパーを捕捉していない部分においても、燃料の流動抵抗を低減する。
【解決手段】燃料を導入する流路入口及び燃料を吐出する流路出口を有するケーシング内にインペラが設けられており、当該ケーシング内には、インペラの外周部の羽根溝に対応する略C字状をなすポンプ流路が形成されており、インペラの回転によって流路入口からポンプ流路に導入した燃料をポンプ流路内を流れる過程で昇圧したのち流路出口から吐出させる燃料ポンプにおいて、ポンプ流路表面の少なくとも一部に、インペラを回転したときのキャビテーションのベーパーを捕捉可能な微細凹凸を形成したことを特徴とする。微細凹凸の表面には、これの凹凸形状を維持する膜厚の燃料流動性の高い被膜層をコーティングしている。
【選択図】図3

Description

本発明は、自動車などに用いられるウエスコ式の燃料ポンプに関し、詳しくは、燃料ポンプ内を流動する燃料の流動抵抗を低減して、燃料の輸送効率の向上を図った燃料ポンプに関する。
燃料ポンプ内を燃料が流動するとき、燃料ポンプ内のポンプ流路などの表面と燃料との間には流動抵抗が生じる。この流動抵抗が大きいと、燃料の円滑な流動が阻害されて燃料ポンプの性能が低減する要因の1つとなる。そこで、燃料の流動抵抗の低減を図る技術が種々提案されており、この種の技術として、例えば特許文献1ないし特許文献3がある。
特許文献1では、流動抵抗の低減が実現し難い流速の比較的低い層流領域を主な対象にして、燃料の流路表面に燃料の塊が入り込めない程の微細な凹凸を形成している。微細な凹凸の形成された流路表面の表面エネルギーは小さく、当該微細な凹凸は燃料が流路表面に付着し難い超撥水面となる。これにより、乱流だけでなく流速の遅い層流領域においても流動抵抗の低減を図っている。特許文献2では、ジェットポンプの内壁面に、燃料の流動方向に沿った細い溝状のリブレットを形成することで、例えば乱流境界層を整流させて摩擦抵抗(流動抵抗)の低減を図っている。特許文献3では、流体の流路表面にフルオロアルキルシランを主成分とする低表面エネルギー物質をコーティングして、流路表面の撥液性を高くした撥液性薄膜を形成することで、流動抵抗の低減等を図っている。
ところで、燃料を導入する流路入口及び燃料を吐出する流路出口を有するケーシング内にインペラが設けられ、ケーシング内にインペラの外周部の羽根溝に対応する略C字状をなすポンプ流路が形成され、インペラの回転によって流路入口からポンプ流路に導入した燃料をポンプ流路内を流れる過程で昇圧したのち流路出口から吐出させる燃料ポンプにおいては、インペラを回転して燃料が攪拌されると、キャビテーションが発生する。とくに高温環境などで燃料ポンプを駆動するとキャビテーションが発生し易い。このキャビテーションによるベーパー(気泡)が溜まると、燃料の流動が阻害される所謂ベーパーロックが発生して燃料ポンプの機能低下や動作不良を誘発たり、ベーパーが崩壊するときの衝撃力によって部材が破損するなどの問題がある。そのため、インペラ回転時のキャビテーションによるベーパーを的確に排除するために、この種の燃料ポンプにはベーパー排出口が必須となる。本出願人は、このような燃料ポンプとして種々のもの、例えば特許文献4を提供している。
特開2000−87921号公報 特開平8−135600号公報 特開平11−315994号公報 特開平6−229390号公報
しかしながら、特許文献1では、流路表面に流体の塊が入り込まない程度の微細凹凸を形成して超撥水面とすることで流動抵抗の低減を図ってはいるが、当該微細凹凸はとくに表面加工が施されている訳ではなく、塊状ではない流体が微細凹凸の凹みに入り込むことによって流体の滞留が生じてしまい、結果として層流層域での流動抵抗の低減を担保できないおそれがある。特許文献2では、乱流の制御には有効であるが、層流領域の制御には効果がなく、確実性に欠ける。特許文献3では、撥液性を向上させることである程度流動抵抗の低減に効果があるものの、流路表面の表面エネルギー等の観点からその効果には限界がある。また、これらの技術をインペラを内蔵する燃料ポンプに適用したとしても、キャビテーションによるベーパーまでは考慮されていない。
本発明者らは、上記のような問題点に鑑みて、流動抵抗の低減とベーパーの発生に対する対応とを同時に実現できないかと鋭意検討の結果、本来的に燃料ポンプにとってその存在が好ましくないベーパーを逆に有効利用することにより、燃料の流動抵抗の低減を実現できることを知見し本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の解決しようとする課題は、インペラを回転したときのキャビテーションによるベーパーを有効利用して、燃料の流動抵抗の低減を図ることにある。本発明の解決しようとする課題は、燃料流動性の高い被膜層を形成して、ベーパーを捕捉していない部分においても、燃料の流動抵抗を低減することにある。
上記課題を解決する目的を達成するために、請求項1に記載の本発明は、燃料を導入する流路入口及び燃料を吐出する流路出口を有するケーシング内にインペラが設けられており、当該ケーシング内には、前記インペラの外周部の羽根溝に対応する略C字状をなすポンプ流路が形成されており、前記インペラの回転によって流路入口からポンプ流路に導入した燃料をポンプ流路内を流れる過程で昇圧したのち流路出口から吐出させる燃料ポンプにおいて、前記ポンプ流路表面の少なくとも一部に、前記インペラを回転したときのキャビテーションのベーパーを捕捉可能な微細凹凸を形成したことを特徴とする。
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の燃料ポンプにおいて、前記ポンプ流路の中途部には、前記ベーパーを前記ケーシング外へ排出するためのベーパー排出口が設けられている。そして、前記微細凹凸が、前記ポンプ流路の流路入口からベーパー排出口の間に形成されていることを特徴とする。
請求項3に記載の本発明は、請求項1または2に記載の燃料ポンプにおいて、前記ケーシングにおけるインペラとの摺接面、及び前記インペラにおけるケーシングとの摺接面にも、前記微細凹凸が形成されていることを特徴とする。つまり、インペラは平板円形の部材であって、ケーシングによって内包された状態で設けられている。そしてポンプ流路は、ケーシングにおけるインペラとの対向する面のうち、インペラの外周部の羽根溝に対応する部分に略C字状に凹み形成されることでインペラと一定の空隙を有しており、このポンプ流路の形成された部分以外の水平面がインペラと当接した状態となっている。そして、燃料ポンプを駆動してインペラが回転したとき、前記当接面においてケーシングとインペラとが摺接する摺接面となる。但し、インペラの回転時は、厳密にはケーシングとインペラとが互いに若干離間した状態となることもあるが、本発明においては、この若干離間した状態も含めて摺接していると定義する。
請求項4に記載の本発明は、請求項3に記載の燃料ポンプにおいて、前記ケーシングにおけるインペラとの摺接面のうち前記ポンプ流路の周縁部分、及び前記インペラにおけるケーシングとの摺接面のうち前記ポンプ流路の周縁部分に対向する部分に、それぞれ前記微細凹凸の非形成領域を有することを特徴とする。
請求項5に記載の本発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の燃料ポンプにおいて、前記微細凹凸の凹凸高さが10nm〜30μmであって、各凹凸の隣接間隔が500nm〜10μmであることを特徴とする。
請求項6に記載の本発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の燃料ポンプにおいて、前記微細凹凸のスキューネスがRsk>0であることを特徴とする。ここで、スキューネスとは凹凸表面の高さ方向の特徴平均パラメータであって、平均からの分布の非対称性を表したものであり、Rskは粗さ曲線のスキューネス(ゆがみsk)を示す。Rskは、基準長さ(lr)における凹凸高さZ(x)の3乗平均を、粗さ曲線の2乗平均平方根(Rq)の3乗で割ることで求められる(図7(a)参照)。つまり、Rskは、次式により求めることができ、
Figure 2008101518

このときの粗さ曲線の二乗平均平方根(Rq)は、次式で表される。
Figure 2008101518
上記の数式により求められたRskが正の場合には、平均線より下方にテールが長く分布のピークは下方に傾く。一方、Rskが負の場合には平均線より上方にテールが長く分布のピークは上方に傾く。つまり、Rskが正の分布は凹凸の山頂が尖った形状を示し、Rskが負の分布は凹凸の谷が尖った形状を示している(図7(b)参照)。
請求項7に記載の本発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の燃料ポンプにおいて、前記微細凹凸は、前記ケーシングのみ若しくは前記ケーシング及び前記インペラを表面加工することによって形成されており、該微細凹凸の表面に、これの凹凸形状を維持する膜厚の燃料流動性の高い被膜層をコーティングしていることを特徴とする。
請求項8に記載の本発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の燃料ポンプにおいて、前記ケーシングのみ若しくは前記ケーシング及び前記インペラの表面が燃料流動性の高い被膜層によってコーティングされており、前記微細凹凸が、前記被膜層を加工することにより形成されていることを特徴とする。
請求項9に記載の本発明は、請求項7または8に記載の燃料ポンプにおいて、前記被膜層は、フッ素樹脂からなることを特徴とする。
請求項10に記載の本発明は、請求項7または8に記載の燃料ポンプにおいて、前記被膜層は、エーテル結合を有する素材により形成されていることを特徴とする。
請求項11に記載の本発明は、請求項7または8に記載の燃料ポンプにおいて、前記被膜層は、親油成分と撥油成分との複合層であることを特徴とする。親油成分と撥油成分との複合層としては、親油成分をベースとしてこれに撥油成分が分散した形態、撥油成分をベースとしてこれに親油成分が分散した形態や(請求項7に相当)、親油成分をベースとしてこれの上に撥油成分の山を形成した形態、撥油成分をベースとしてこれの上に親油成分の山を形成した形態などを挙げることができる(請求項8に相当)。
請求項12に記載の本発明は、請求項9ないし11のいずれかに記載の燃料ポンプにおいて、前記ケーシングはアルミニウム合金等の金属成形品であって、該ケーシング表面には硬質な酸化皮膜であるアルマイト層が形成されている。そのうえで前記被膜層は、前記アルマイト層上に形成されていることを特徴とする。
請求項13に記載の本発明は、請求項項1ないし6のいずれかに記載の燃料ポンプにおいて、前記ケーシングのみ若しくは前記ケーシング及び前記インペラは親油性又は撥油性の樹脂成形品であって、前記微細凹凸が、前記ケーシングのみ若しくは前記ケーシング及び前記インペラを基材とした表面に、これを組成する樹脂とは反対の性質を持つ撥油性又は親油性の樹脂を被覆し、該被覆層の一部を除去して基材を露出させることにより形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、ポンプ流路表面の少なくとも一部に微細凹凸を形成している。これにより、インペラを回転したときのキャビテーションによるベーパーの一部が当該微細凹凸に捕捉されることによってポンプ流路表面の撥油性が向上し、以って流動抵抗が低減される。
この機構について図8〜図10を参照しながら説明する。図8に示すような物質Aと物質Bとの複合界面の場合においては、平滑な物質Aにおける液体の接触角をθ、平滑な物質Bにおける液体の接触角をθ、接触面における物質Aの割合をQ、接触面における物質Bの割合をQとして、Cassie-baxterの定理:
Figure 2008101518

が適用される。このとき、Q+Q=1である。
そして、物質Bが空気の場合は接触角θが180度なのでcosθ=−1であり、Q=1−Qからcosθ=Q(1+cosθ)−1となる。
ここで、複合界面の空気(物質B)の割合が多くなり、物質Aの占める面積割合が0に近づくとQ≒0より、cosθ≒−1となる。したがって、cosθの大きさに関わらず接触角は180度に近づく。つまり、ポンプ流露表面に微細凹凸を形成してここにベーパーが捕捉されると、ポンプ流露表面における気泡の面積割合が大きくなって撥油性が向上するのである。
また、一般的に液体に溶け込んでいる気体は気化している方が安定な状態であるため、気泡が大きいほど安定する。これは、気泡の持つエネルギーが小さい方が安定であるからである。ここで、半径rの気泡の持つ体積エネルギーU(r)は、体積Vに比例して小さくなるので、次式で表される。
Figure 2008101518

aは正の比例定数
また、気泡は液体と接する界面が小さい、すなわち界面エネルギーが小さい方が安定するので球体になるよう働き、この界面エネルギーU(r)は界面の面積に比例するので、半径rの界面エネルギーU(r)は次式で表される。
Figure 2008101518

bは正の比例定数
したがって、気泡の持つ総エネルギーU(r)は、U(r)とU(r)の和である。
この式で描かれるグラフが図9である。図9によく示されるように、気泡の総エネルギーは半径が2b/aになるまで増加していることから、気泡の半径が小さいうちは気泡の半径がより小さい程安定であることがわかり、半径がこの範囲の気泡は総エネルギーをより小さくするために縮もうとする傾向にある。一方、半径が2b/a以上になると、半径rが大きくなるに伴って総エネルギーは小さくなっていく。したがって、半径が2b/aよりも大きい気泡は、エネルギーをより小さくするために膨らもうとする傾向になる。この半径2b/aを臨界半径という。つまり、上記の機構を纏めると、臨界半径より小さい気泡は縮んで消滅する傾向にあるが、臨界半径より大きい気泡は膨らむ傾向にあるということができる。このことから、気泡が臨界半径を超えているか否かが重要であることがわかる。
そして、半径rの気泡が生成するためには、外部からのエネルギーが必要である。このとき、臨界半径以上の大きさの半径の気泡でなければ、上述のとおり生成した気泡は縮んで消滅してしまうので、臨界半径での気泡のエネルギー2b/a(これをエネルギー障壁と呼ぶ)以上のエネルギーを受けなければならない。そこで、ポンプ流路表面に凹凸を形成していると、図10によく示されるように、同じ体積の気泡であっても界面の面積が小さくなり、臨界半径のエネルギー障壁を小さくできる。これにより、半径の小さな気泡でも縮んで消滅することはなく、確実に微細凹凸にベーパーが捕捉された状態を維持でき、撥油性を担保することができるのである。
微細凹凸に捕捉されたベーパーが溶解又は崩壊したり燃料の流圧によって取り除かれたとしても、インペラを回転している限りキャビテーションが発生するので、これによる新たなベーパーが直ぐに供給捕捉されるので、ベーパーを発生させるための特別な機構等は不要である。このように、キャビテーションによるベーパーを有効利用しているので、ベーパーロックの発生も抑止できる。この微細凹凸をポンプ流路の流路入口からベーパー排出口の間に形成していれば、ベーパーの最も集中する部分においてこれを効率よく捕捉し、撥油性を有意に向上できる。もちろん、余分なベーパーは、従来とおりベーパー排出口から排出される。
ケーシングにおけるインペラとの摺接面、及びインペラにおけるケーシングとの摺接面にも微細凹凸を形成していれば、インペラを回転した時にケーシングとインペラとが若干離間した状態となって、この隙間から燃料やベーパーがインペラの径方向内方に漏れ出すことがあっても、この部分でもベーパーを捕捉できるので、さらに撥油性を向上できる。
このとき、ケーシングにおけるインペラとの摺接面のうちポンプ流路の周縁部分、及びインペラにおけるケーシングとの摺接面のうちポンプ流路の周縁部分に対向する部分に、それぞれ微細凹凸の非形成領域を形成しておけば、ポンプ流路周縁ではケーシングとインペラとが平滑面で当接した状態となるので、ポンプ流路から径方向内方への燃料及びベーパーの漏れを抑制できる。つまり、微細凹凸の非形成領域がシール部として作用する。そのうえで、微細凹凸の非形成領域より径方向内方域に形成された微細凹凸が、シール部を超えて漏れ出したベーパーを捕捉することになる。
微細凹凸のスキューネスがRsk>0、すなわちRskが正の分布であれば、凹凸の山頂が尖った形状を示す。この場合、図11によく示されるように、同じ体積のベーパーを捕捉しても、凹凸の山頂が尖っている方(図11(a))が、凹凸の谷が尖っている方(図11(b))よりも液体(燃料)と気泡(ベーパー)との界面が小さくなる。これによりベーパーの形状が安定すると共に、接触角が大きくなるので高い撥油性を実現できる。また、界面が小さいことによって、捕捉されているベーパーが燃料の流圧により取り除かれることも少なくできる。
ケーシングやインペラに、フッ素樹脂、エーテル結合を有する素材、または親油成分と撥油成分との複合層などの燃料流動性の高い被膜層をコーティングしておけば、ベーパーを捕捉し切れなかった凹凸部分があっても、当該部分の燃料流動性は高くなっているので、流動抵抗を低減できる。
このとき、ケーシングをアルミニウム合金等の金属成形品として、該ケーシング表面には酸化皮膜であるアルマイト層を形成しておけば、ケーシングの耐食性、耐摩耗性、耐衝撃性などを向上することができる。
ケーシングやインペラを親油性又は撥油性の樹脂成形品として、これを組成する樹脂とは反対の性質を持つ撥油性又は親油性の樹脂によって微細凹凸を形成しておけば、わざわざ被膜層をコーティングする必要がなく、生産効率を向上できる。
以下に、本発明の実施の形態を適宜図面を参照しながら説明するが、これに限定されることはない。燃料ポンプを断面図で示した図1において、円筒状をした金属製ハウジング1には、モータ部2が組み込まれており、このモータ部2の下側にポンプ部3が組み込まれている。ハウジング1の上端部には合成樹脂製モータカバー5が取り付けられている。またハウジング1の下端部にはアルミニウム合金製のポンプカバー6、合成樹脂製のプレート24及びアルミニウム合金製のポンプボデー7が取り付けられている。このハウジング1内のモータカバー5とポンプカバー6との間にモータ室8が形成されている。なおポンプカバー6、プレート24及びポンプボデー7によって本発明でいうケーシングが構成されている。
モータ部2において、モータ室8にはアーマチュア10が配置されている。アーマチュア10のシャフト12の上下端部は、モータカバー5及びポンプカバー6にそれぞれ軸受13、14を介して回転可能に支持されている。ハウジング1の内周面には、一対のマグネット15がアーマチュア10の外周面に対し所定の間隔を隔てて固定されている。
ポンプ部3において、ポンプカバー6とプレート24との間及びプレート24とポンプボデー7との間の各空間部には、それぞれ上下のインペラ25・25が配設されている。両インペラ25は、アーマチュア10のシャフト12の下端部に連結されており、モータ部2の駆動によって回転駆動させられる。またインペラ25は、図4に平面図で示されているように円板状をなし、その表裏両面の外周部に設けられた多数の羽根溝25aが形成されている。
また図1において、ポンプボデー7には流路入口となる燃料吸入口26が設けられていると共に、ポンプカバー6には燃料吐出口27が設けられている。ポンプ部3のケーシング、インペラ25の外周部の羽根溝25aに対応する略C字状をなす下段と上段のポンプ流路29、30が形成されている。具体的には、ポンプ部3を拡大断面図で示した図2において、下段ポンプ流路29は、ポンプボデー7の溝部31とプレート24の溝部33とにより形成されている。また、上段ポンプ流路30は、プレート24の溝部35とポンプカバー6の溝部37とにより形成されている。図3は、ポンプボデー7の平面図であり、ポンプカバー6の下面及びプレート24の上下両面の各溝部も略同様に図示される。
下段ポンプ流路29の始端は燃料吸入口26と連通され、下段ポンプ流路29の終端と上段ポンプ流路30の始端とは連通口28により連通され、上段ポンプ流路30の終端は燃料吐出口27と連通されている。つまり、燃料吸入口26から燃料吐出口27までが、ほぼ螺旋状をなすように連通されている。このとき、下段ポンプ流路29を流れる燃料は低圧であり、上段ポンプ流路30を流れる燃料は高圧となるように構成されている。なお、図1において、燃料吸入口26、燃料吐出口27及び連通口28が同一線上にあるように示されているが、実際は相互に所定角度ずつずれた位置関係をなしている。
また、ポンプボデー7には、下段ポンプ流路29の内部とその外部とを連通する小孔状のベーパー排出口39が、流路内周側でかつ下流側に偏った位置に設けられている。そして、図3及び図4によく示されるように、下段ポンプ流路29のうち流路入口となる燃料吸入口26からベーパー排出口39に至る部分、すなわちポンプボデー7の溝部31及びプレート24の溝部33のうち燃料吸入口26とベーパー排出口39との間に微細な凹凸40が形成されている。また、インペラ25を回転したとき、ポンプボデー7及びプレート24と下段側のインペラ25とが互いに摺接する対向水平面(摺接面)であって、下段ポンプ流路29の周縁から一定距離を隔てた径方向内方域にも微細凹凸40が形成されている。さらに、下段側のインペラ25におけるポンプボデー7及びプレート24との摺接面のうち、ポンプ流路29の周縁部分に対向する部分にも、微細凹凸40が形成されている。換言すれば、ポンプボデー7及びプレート24における下段側のインペラ25との摺接面のうち下段ポンプ流路29の周縁部分、及び下段側のインペラ25におけるケーシングとの摺接面のうち下段ポンプ流路29の周縁部分に対向する部分は、それぞれ微細凹凸40の非形成領域となっている。さらに、微細凹凸40の表面は、流動抵抗低減加工も施されている。微細凹凸40は、インペラを回転したときのキャビテーションによるベーパーを捕捉するための領域であり、微細凹凸40の非形成領域は、ベーパーがケーシングの径方向内方へ漏れ出すことを抑制するシール部41として作用する領域である。
次に微細凹凸40について説明する。流動抵抗低減加工の施された微細凹凸40の形成方法としては、大きく分けて3通りある。1つは、図5(a)に示されるような、基材となるポンプボデー7及びインペラ25の表面を切削加工などによって微細凹凸を形成した後、これの表面に燃料流動性の高い被膜層をコーティングする方法。別の1つは、図5(b)に示されるような、基材の表面に燃料流動性の高い被膜層をコーティングした後、この被膜層を切削加工などによって微細凹凸を形成する方法。さらに別の1つは、図5(c)に示されるような、基材の表面に特定の物性を有する素材からなる被膜層をコーティングし、その上から被膜層とは逆の物性を有する素材によって突部(山)を形成して燃料流動性の高い微細凹凸とする方法である。図5(d)は、図5(c)に示す形態の応用例であって、基材自体を特定の物性を有する素材により成形し、その上に基材とは逆の物性を有する素材によって突部(山)を形成して燃料流動性の高い微細凹凸とする方法である。
このとき、アルミニウム合金製のポンプボデー7及びプレート24においては、被膜層をコーティングする前に、アルマイト処理により酸化皮膜(Al)であるアルマイト層(図示せず)を形成しておくことが好ましい。アルマイト処理は陽極酸化処理とも称され、陽極酸化によって基材表面に硬質な酸化皮膜を生成させる表面処理である。この酸化皮膜であるアルマイト層は、基材中のアルミニウムが反応して生成していく。これによって、耐食性、耐摩耗性などの向上を図ることができる。
微細凹凸40は、ベーパーを確実に捕捉し、かつ捕捉状態を保持できる大きさに設計される。具体的には、各凹凸高さ(深さ)は10nm〜30μm、好ましくは50nm〜10μm、より好ましくは100nm〜1μm、さらに好ましくは200nm〜500nmである。また、各凹凸の隣接間隔は500nm〜10μm、好ましくは550nm〜5μm、より好ましくは600nm〜1μmである。各凹凸高さや凹凸の隣接間隔が小さすぎると、ベーパーを確実に捕捉できずに撥油性を有効に発現できず、また凹凸の成形も困難となる。一方、各凹凸高さや凹凸の隣接間隔が大きすぎると、ベーパーを確実に捕捉はできるが、燃料の流圧によって捕捉されたベーパーが容易に剥がれてしまう。このとき、さらに撥油性を高めるため、凹凸の各山頂が尖った状態に形成しておく。その基準としては、スキューネスがRsk>0となる範囲である。
(スキューネスと接触角との関係)
スキューネス(Rsk)の値により、接触角がどのように変化するかを以下の条件により試験した。これの結果を図12に示す。
<試験片>
材質:SUS440C
形状:50×50×5mmの平板材
<凹凸形成条件>
加工方法:フェムト秒レーザー加工
装置:Spectra-Physics製 Hurricane Ti Sapphireレーザー(1W)
中心波長:800nm
パルス時間幅:〜100fs
繰り返し周波数:10Hz
パルスエネルギー最大:3mj/pulse
<凹凸形状>
溝ピッチ:約700nm
溝深さ:試験片A;約200nm
試験片B;約400nm
溝パターン:試験片A;直線状
試験片B;格子状
<測定条件>
接触角:液適法
スキューネス:JIS B0651に準拠した面粗さ計を用いて
JIS B0601に準拠した測定条件にて得られた輪郭曲線により算出
図12に示す結果からも明らかなように、Rsk>0の範囲の方がRsk<0の範囲よりも接触角が大きくなっている。したがって、微細凹凸40の形状をRsk>0となるように設計することで、高い揮発性を発現できることがわかった。
(第1実施形態)
まず、図5(a)に示す実施の形態について説明する。本実施形態は、アルミニウム合金で形成されたポンプボデー7及びプレート24に微細凹凸40を形成する場合に適用される。なお、以下においては、ポンプボデー7やプレート24、及びインペラ25などの微細凹凸40を形成する部材を、基材20として説明する。まず、鋳造など周知の方法で所定形状に形成された基材20の所定部位に、切削加工、フェムト秒レーザーや超短波エキシマレーザーなどのレーザー加工、又はフォトエッチングなどによって微細凹凸40を形成する。
なお、フェムト秒レーザーは、フェムト(10−15)秒という極めて短い時間に光エネルギーを集中させたレーザーによる加工方法であり、チタンサファイアレーザーが一般的である。また、超短波エキシマレーザーは、波長193nmのレーザー光を使用する加工方法であり、アルゴンとフッ素のガスから産み出される。また、フォトエッチングは、一般的な切削加工やレーザー加工とは異なり、精密写真技術と金属の腐食作用を利用した金属の加工方法であり、紫外線、フィルムマスク、光反応性耐蝕皮膜、金属腐食溶液を使用して加工を行うものである。
次いで、燃料流動性の高い被膜層21を、好ましくは化学蒸着(CVD)、真空蒸着やイオンプレーティングなどの各種蒸着によりコーティングする。他にも、ディッピング、スプレー塗布などでも構わない。このとき、被膜層21の膜厚は、微細凹凸40の凹凸形状が維持される範囲内で適宜調整すればよい。被膜層21は燃料流動性の高い素材を使用する。具体的には、フッ素樹脂やエーテル結合を有する合成樹脂、親油成分に撥油成分を分散させたもの、又は撥油成分に親油成分を分散させたものを挙げることができる。
フッ素樹脂は、撥油性が高いので被膜表面から油滴を浮かせる反発力を有し、これを微細凹凸40の表面にコーティングすることで燃料をはじき、燃料流動性が向上する。そのフッ素樹脂としては、例えばパーフルオロアルコキシアルカン(PFEP)、テトラフロオロエチレンコポリマー(TEFC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などを挙げることができる。
エーテル結合を有する合成樹脂としては、パーフルオロポリエーテル化合物(PFPE)などを挙げることができる。このようなエーテル結合を含む樹脂は、エーテル結合部分で分子鎖が容易に回転し易く、基材との結合部が柔軟で分子鎖自体が容易に屈曲することで可動範囲が大きいため、油滴の流動を妨げにくく燃料流動性が高い。
エーテル結合を有する合成樹脂としてパーフルオロポリエーテル化合物を使用する場合は、基材20と被膜層21とをリン酸基を介して結合させることが好ましい。この場合の結合層は、パーフルオロポリエーテル化合物末端のリン酸基が、基材表面の自然酸化膜と結合した分子構造となっているので、基材20と被膜層21との密着性が向上する。具体的には、パーフルオロポリエーテル化合物に溶媒としてのパーフルオロヘキサン混合液を塗布し、室温下で乾燥することで得られる。
また、親油成分に撥油成分を分散させたもの、又は撥油成分に親油成分を分散させたものの場合、撥油成分としては上記フッ素樹脂を使用する。親油成分としては、編成オルガノポリシロキサンなどのシリコーン樹脂、無機酸化ケイ素(SiO)、ポリプロピレン(PP)などのメチル基修飾ポリマー、又はニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)などの金属やその酸化物を使用できる。
親油親油成分は油滴になじみ易いので、被膜表面に燃料を引きつける吸引力を付与する。一方、撥油成分は上述の通り被膜表面に燃料を浮かせる反発力を付与する。したがって、親油成分(又は撥油成分)に撥油成分(又は親油成分)が分散された被膜層21を形成することによって、燃料に対して吸引力及び反発力に相反する2つの力が常に作用することになる。これによって、燃料は反発力によって浮き上がりつつ吸引力によって下方へと引きつけられるため、燃料の流圧などによって被膜表面に残存することなく容易に滑りながら離散することができるので、燃料の流動抵抗を低減を図ることができる。
このような分散型被膜層21の一例として、例えば撥油成分であるテトラフルオロエチレンコポリマーに対し、親油成分である変性シリコーンを0.02〜50重量%の割合で分散させる。また、その逆でもよい。テトラフルオロエチレンコポリマーに変性シリコーンを分散させる場合は、被膜層21と基材20との密着性を向上させるために、基材20とテトラフルオロエチレンコポリマーとがシランカップリング剤で結合された結合層を形成しておくことが好ましい。具体的には、テトラフルオロエチレンコポリマーに所定量の変性シリコーンを分散させた主剤に、硬化剤としての脂肪族ポリイソシアネートと、密着性を向上させるためのシランカップリング剤としてのオルガノシランと、溶媒としてのアセトンや酢酸ブチルなどのケトン系溶剤との混合液剤を塗布し、焼成することによってコーティングできる。
このように、上記3パターン(厳密には4パターン)の被膜層21は、それぞれ高い燃料流動性を発揮する。したがって、微細凹凸40にベーパーが捕捉されていない部分が生じても、被膜層21の存在により微細凹凸40のみによっても燃料の流動抵抗を低減できるようになっている。
(第2実施形態)
図5(b)に示す第2実施形態は、微細凹凸40を形成するための加工の対象が異なる以外は、先の第1実施形態と同様である。すなわち、先の第1実施形態で説明した4パターンのうちのいずれかの被膜層21を、基材20表面の所定部位にコーティングする。このとき、基材20は表面加工のされていない。次いで、形成された被膜層21の表面をレーザー加工や切削加工などで加工することで、微細凹凸40を形成している。または、基材20の上に、被膜層21をナノインプリントによって直接微細凹凸40を形成することもできる。ナノインプリントとは、エンボス技術を発展させた技術であり、ナノサイズの微細な凹凸パターンを形成したモールドを熱した状態で、基板20上の被膜層21へ5−10MPa程度の押圧でプレスすることで凹凸を形成する方法である。ナノインプリントであれば、高精度化でありながら安価に大量生産できる点で好ましい。
第1実施形態では被膜層21の膜厚を基材20に形成した凹凸を埋めてしまわない範囲に設定する必要があるので、高度な調整が必要となって生産性に多少の問題がある。これに対し第2実施形態であれば、被膜層21自体に微細凹凸40を形成しているので、被膜層21の膜厚は最低限凹凸を形成できる程度以上とすることのみで足りるので、確実に凹凸形状を確保しながら生産性も良好にできる。その他は、先の第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
(第3実施形態)
図5(c)に示す第3実施形態は、基材20上に親油成分によって被膜層21を形成し、さらに被膜層21の上に撥油成分によって突部(山)22を形成している。または、撥油成分の被膜層21と親油成分の山22であってもよい。これら親油成分及び撥油成分としては、先の第1実施例で挙げたものと同一の素材を使用できる。
親油成分によって被膜層21を形成し、撥油成分によって山22を形成する場合を例に挙げて微細凹凸40の形成方法について説明する。先ず基材20上に親油成分を蒸着や塗布などして被膜層21をコーティングする。次いで、同様に被膜層21上に撥油成分をコーティングする。そして最後に、撥湯成分をレーザー加工や切削加工などによって所定箇所を削除して被膜層21を表面に露呈させる。このとき残った撥油成分が山22となって微細凹凸40が現出することになる。または、基材20上に被膜層21をコーティングした後、所定箇所をマスキングした状態で、撥油成分を塗布などすることで、山22を形成することもできる。
このような微細凹凸40であれば、凹凸の山と谷(底)とが親油性と撥油性の相反する物性を有している。例えば親油成分によって被膜層21を形成し、撥油成分によって山22を形成した場合、谷底部分に露呈している親油性の被膜層21によって燃料が引きつけられるが、撥油性の山22によって反発力を受けるので、燃料は凹凸表面を滑らかに流動していくことになる。これにより、燃料の流動抵抗を低減することができる。
(第4実施形態)
図5(d)に示す第4実施形態は、上述のとおり先の第3実施形態の応用例であり、合成樹脂製のインペラ25に微細凹凸40を形成する場合に適用可能である。第4実施形態で注目される点は、基材20自体を親油成分又は撥油成分で成形しており、その上に基材20とは反対の物性を有する素材、すなわち撥油成分又は親油成分により山22を形成している点である。つまり、先の第3実施形態における被膜層21が基材20となった構成となっている。その製造方法としては、例えば第1実施形態と同様の親油成分により基材20を射出成形などの周知の方法によって成形する。次いで第1実施形態と同様の撥油成分により、第3実施形態と同様の方法で山22を形成することで得られる。また、これとは逆に、撥油成分で基材20を成形し、親油成分で山22を形成することもできる。その他は、先の第3実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
これら第1ないし第4の実施の形態で形成される微細凹凸40の凹凸パターンとしては、図6に示すような例とすることができる。具体的には、図6(a)は、微細凹凸40の実施例1を示しており、ケーシング中央を中心とした周回状に凹凸パターンが形成されており、微細凹凸40が燃料の流れ方向と平行になっている。これによれば、ポンプ流路29を流動する燃料を整流することもできる。図6(b)は、微細凹凸40の実施例2を示しており、ケーシングの径方向に沿って並列した凹凸パターンが形成されており、微細凹凸40が燃料の流れ方向と垂直になっている。
その他にも、図6(c)は微細凹凸40の実施例3を示しており、凹凸パターンが格子状に形成されている。図6(d)は微細凹凸40の実施例4を示しており、凹凸パターンが直線状に形成されている。図6(e)は微細凹凸40の実施例5を示しており、凹凸パターンがスパイラル状に形成されている。図6(c)は微細凹凸40の実施例6を示しており、凹凸パターンが粒状に形成されている。
そのうえで本実施の形態に係る燃料ポンプは、自動車等のバッテリ(図示省略)を電源としてモータ部2の駆動によって、ポンプ部3のインペラ25が回転させられる。これにより、燃料タンク内の燃料が燃料吸入口26より下段ポンプ流路29に汲み上げられる。この汲み上げられた燃料は、インペラ25の回転により下段ポンプ流路29を通って連通口28より上段ポンプ流路30に送られた後、その上段ポンプ流路30を経てポンプカバー6の燃料吐出口27より吐出されてモータ室8に入り、その後モータカバー5の燃料出口20から吐出される。
そして、インペラ25の回転によって発生したキャビテーションのベーパーの一部が、下段ポンプ流路29の燃料吸入口26からベーパー排出口の間に形成された微細凹凸40に捕捉され、その余のベーパーはベーパー排出口39からケーシング外部に排出される。このように、ベーパーが微細凹凸40に捕捉されることで燃料の流動抵抗が低減すると共に、ベーパー排出口39から排出すべきベーパーの量も減少するので、ベーパーが上段ポンプ流路30へ流入することも、効果的に抑制できる。また、ポンプ流路29の周縁には微細凹凸の非形成領域であるシール部41が形成されているので、ベーパーのケーシング径方向内方への漏れ出しを抑制しているが、このシール部41を超えて漏れ出したベーパーも、シール部41より径方向内方に設けた微細凹凸40に捕捉されるので、当該部分の流動抵抗も低減できるようになっている。
(その他変形例)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、その他にも本発明の趣旨を超えない範囲で種々の変更ができる。例えば、微細凹凸40をポンプ流路29のみに形成し、ケーシングとインペラ25との摺接面に形成していなくてもよい。微細凹凸40をケーシングとインペラとの摺接面全体に形成して、シール部41のない状態でもよい。微細凹凸40は、ポンプ流路29の全体に亘って形成してもよい。また、微細凹凸40は、上段側のインペラ25周辺に形成してもよい。つまり、プレート24の溝部35とポンプカバー6の溝部37(上段ポンプ流路30)や、ポンプカバー6及びプレート24と上段側のインペラ25との摺接面にも微細凹凸40を形成してもよい。上段側のインペラ25周辺にも微細凹凸40を形成していれば、ベーパー排出口39から排出し切れなかったベーパーを確実に捕捉して、その有効利用を図ることができる。
ケーシングを構成しているポンプカバー6、ポンプボデー7、及びプレート24は合成樹脂により成形することもでき、この場合は、図5(d)に示す上記第4実施形態によって微細凹凸40を形成することもできる。
また、本実施形態に係る燃料ポンプは、インペラ25を上下に2枚配したものを例示したが、これに限定されることはなく、インペラ25が1枚構成や3枚構成の燃料ポンプに適用できることはいうまでもない。
燃料ポンプの断面図である。 ケーシングの要部拡大図である。 ポンプボデーの平面図である。 インペラの平面図である。 微細凹凸の要部拡大図である。 微細凹凸の各実施例を示すポンプボデーの平面図である。 スキューネスの理論を説明する参考図である。 複合界面における気泡の接触角度の理論を説明する参考図である。 泡のエネルギー曲線である。 凹凸界面に気泡が捕捉された状態を示す要部拡大図である。 Rskの値による凹凸形状を示す概念図である。 スキューネスと撥水性との相関性を示すグラフである。
符号の説明
1 ハウジング
2 モータ部
3 ポンプ部
6 ポンプカバー
7 ポンプボデー
20 基材
21 被膜層
22 山
24 プレート
25 インペラ
26 燃料吸入口(流路入口)
28 連通口
29・30 ポンプ流路
39 ベーパー排出口
40 微細凹凸



Claims (13)

  1. 燃料を導入する流路入口及び燃料を吐出する流路出口を有するケーシング内にインペラが設けられ、前記ケーシング内に前記インペラの外周部の羽根溝に対応する略C字状をなすポンプ流路が形成され、前記インペラの回転によって流路入口からポンプ流路に導入した燃料をポンプ流路内を流れる過程で昇圧したのち流路出口から吐出させる燃料ポンプにおいて、
    前記ポンプ流路表面の少なくとも一部に、前記インペラを回転したときのキャビテーションのベーパーを捕捉可能な微細凹凸を形成したことを特徴とする燃料ポンプ。
  2. 前記ポンプ流路の中途部には、前記ベーパーを前記ケーシング外へ排出するためのベーパー排出口が設けられており、
    前記微細凹凸は、前記ポンプ流路の流路入口からベーパー排出口の間に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料ポンプ。
  3. 前記ケーシングにおけるインペラとの摺接面、及び前記インペラにおけるケーシングとの摺接面にも、前記微細凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料ポンプ。
  4. 前記ケーシングにおけるインペラとの摺接面のうち前記ポンプ流路の周縁部分、及び前記インペラにおけるケーシングとの摺接面のうち前記ポンプ流路の周縁部分に対向する部分に、それぞれ前記微細凹凸の非形成領域を有することを特徴とする請求項3に記載の燃料ポンプ。
  5. 前記微細凹凸の凹凸高さが10nm〜30μmであって、各凹凸の隣接間隔が500nm〜10μmであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の燃料ポンプ。
  6. 前記微細凹凸のスキューネスがRsk>0であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の燃料ポンプ。
  7. 前記微細凹凸は、前記ケーシングのみ若しくは前記ケーシング及び前記インペラを表面加工することによって形成されており、
    該微細凹凸の表面に、これの凹凸形状を維持する膜厚の燃料流動性の高い被膜層をコーティングしていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の燃料ポンプ。
  8. 前記ケーシングのみ若しくは前記ケーシング及び前記インペラの表面は、燃料流動性の高い被膜層によってコーティングされており、
    前記微細凹凸は、前記被膜層を加工することにより形成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の燃料ポンプ。
  9. 前記被膜層は、フッ素樹脂からなることを特徴とする請求項7または8に記載の燃料ポンプ。
  10. 前記被膜層は、エーテル結合を有する素材により形成されていることを特徴とする請求項7または8に記載の燃料ポンプ。
  11. 前記被膜層は、親油成分と撥油成分との複合層であることを特徴とする請求項7または8に記載の燃料ポンプ。
  12. 前記ケーシングはアルミニウム合金等の金属成形品であって、該ケーシング表面には不動態酸化皮膜であるアルマイト層が形成されており、
    前記被膜層は、前記アルマイト層上に形成されていることを特徴とする請求項9ないし11のいずれかに記載の燃料ポンプ。
  13. 前記ケーシングのみ若しくは前記ケーシング及び前記インペラは親油性又は撥油性の樹脂成形品であって、
    前記微細凹凸が、前記ケーシングのみ若しくは前記ケーシング及び前記インペラを基材とした表面に、これを組成する樹脂とは反対の性質を持つ撥油性又は親油性の樹脂を被覆し、該被覆層の一部を除去して基材を露出させることにより形成されていることを特徴とする請求項項1ないし6のいずれかに記載の燃料ポンプ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010057319A (ja) * 2008-08-29 2010-03-11 Aisan Ind Co Ltd 燃料ポンプ
KR101011366B1 (ko) 2009-01-07 2011-01-28 현담산업 주식회사 자동차용 터빈형 전동기식 연료펌프의 펌프부 구조
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