JP2008095366A - 木造建築構造材の補強方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】寺社建築などの伝統的木造建築物や比較的規模の大きい在来法の軸組み住宅などにおける軸組部材、特に梁材や桁材などの曲げ部材に発生した、材軸方向に対して直交する方向ないしそれに近い方向に生じた割れや亀裂等の傷を補強対象とする構造的補強方法を提供する。
【解決手段】
木造建築構造材1の補強必要箇所2を中心としてその左右両側の位置に材面とほぼ直角方向に雌ネジボルト3を埋め込み、加熱すると収縮する形状記憶合金で製作した接合具4を、前記左右の雌ネジボルト3、3間へボルト5により取り付け、しかる後に前記接合具4を形状記憶合金の収縮温度まで加熱して緊張力を発生させる。
【選択図】図2
Description
木造建築構造材に発生した上記のような割れや亀裂に対して、従来一般に実施される補強方法としては、ボルト接合法とかドリフトピン接合法などであるが、施工性とコスト面および外観の意匠的美観の面で適当でない場合が多い。すなわち、ボルトやドリフトピンを通す孔あけや、接合鋼板を差し込むスリットの加工などに手間が多く掛かるし、構造材の表面にボルトやドリフトピンの頭が多く露出して見栄えを損なうことが多い。
特許文献2に開示された木造建築構造材等の接合方法は、構造材の突き合わせ面に対して垂直方向に横穴を堀り、その孔から構造材の突き合わせ面に沿って縦溝を形成し、前記の横穴および縦溝に沿ってほぼT字形状の接合用治具を装着して構造材の突き合わせを行い、更に前記接合用治具を通じて接着剤を注入充填して接合する方法が記載されている。
また、下記の特許文献4に開示された木造建築構造材等の補強方法は、構造材の補強要求箇所の表面に繊維補強シートを巻き付け、更に接着剤を塗布して補強する方法が記載されている。
上記特許文献2の接合方法は、新築工事では多くの施工実績がある。しかし、基本的には新築時の二つの構造材の突き合わせ接合のための技術であり、構造材に発生した割れや亀裂などに対する補強、修復には適用が困難な技術である。
特許文献4に開示された補強方法も、上記特許文献2、3と同様、接着剤を使用するので、一旦施工すると構造材の分離、解体は不可能という問題点がある。その上、構造材に繊維補強シートを巻き付けるので、同繊維補強シートはもろに外観に露出して、構造材の外観を損ねるから、屋根裏など人目につかない部分にしか適用しがたい技術である。
本発明の更なる目的は、通常の大工仕事のレベルで現場施工が容易に可能であり、しかも既に発生した割れや亀裂の隙間(傷口)を強制的に塞ぐ修復力を導入することができ、施工後に、必要に応じて分離、解体、付け替えなどすることが容易に可能で、構造材のリニューアル、リユースに適する木造建築構造材の補強方法を提供することである。
木造建築構造材1の補強必要箇所2を中心としてその左右両側の位置に材面とほぼ直角方向に雌ネジボルト3を埋め込み、加熱すると収縮する形状記憶合金で製作した接合具4を、前記左右の雌ネジボルト3、3間へボルト5により取り付け、しかる後に前記接合具4を形状記憶合金の収縮温度まで加熱して緊張力を発生させることを特徴とする。
木造建築構造材1の補強必要箇所2を中心としてその左右両側に一定の長さ域まで補強用ボルト8を設置可能な幅及び深さのボルト用欠き込み10を形成すると共に、同ボルト用欠き込み10の両端部にナット9及び座金を設置可能な幅及び深さのナット用欠き込み11を形成し、また、前記ボルト用欠き込み10の中央部には加熱装置を使用・設置可能な幅及び深さのスペース12を形成し、加熱すると収縮する形状記憶合金で製作した補強用ボルト8の両端にナット9を取り付け、前記両端のナット用欠き込み11、11の内法間隔に略密接に収まる長さに両端のナットの位置を調整した補強用ボルト8を前記ボルト用欠き込み10およびナット用欠き込み11の中へ設置し、しかる後に前記スペース12を利用して加熱装置により補強用ボルト8を形状記憶合金の収縮温度まで加熱して緊張力を発生させることを特徴とする。
加熱すると収縮する形状記憶合金で製作したカスガイ16を、木造建築構造材1の補強必要箇所2を中心としてその左右両側に等しく跨る配置で打ち込み、しかる後に前記カスガイ16を加熱装置により形状記憶合金の収縮温度まで加熱して緊張力を発生させることを特徴とする。
また、上述したように木造建築構造材1に与える断面欠損は、雌ネジボルト3を埋め込むか、ボルト用欠き込み10等を形成し、或いは彫り下げ凹面6を形成し、若しくはカスガイ16を打ち込む程度であって、傷の発生を最少限度に止めるので、強度の低下が少ない。
しかも接着剤を使用しないから、補強を施工した後にも、必要に応じて補強用ボルト8や接合具4、カスガイ16などの要素を取り外したり、付け替えることが可能であり、建築物や木造建築構造材1の解体も容易であるから、構造材1のリサイクル、リユースに好都合である。
その上、請求項2、4に係る発明のように、補強施工部分の開口面部を同材質の木板カバー7で材面と面一となるように塞いで覆い隠す仕上げを行うことにより、木造建築構造材1の外観意匠に傷跡を視認させないですみ、美観の向上や保持にすこぶる有益である。
或いは木造建築構造材1の補強必要箇所2を中心としてその左右両側に一定の長さ域までボルト用欠き込み10を形成し、同ボルト用欠き込み10の両端部にナット用欠き込み11を形成し、更に前記ボルト用欠き込み10の中央部には加熱装置用のスペース12を形成する。そして、加熱すると収縮する形状記憶合金で製作した補強用ボルト8の両端にナット9を取り付けて前記ボルト用欠き込み10およびナット用欠き込み11の中へ設置し、しかる後に加熱装置により補強用ボルト8を形状記憶合金の収縮温度まで加熱して緊張力を発生させる。
又は加熱すると収縮する形状記憶合金で製作したカスガイ16を、木造建築構造材1の補強必要箇所2を中心としてその左右両側に等しく跨る配置で打ち込み、しかる後に前記カスガイ16を加熱装置により形状記憶合金の収縮温度まで加熱して緊張力を発生させる。 なお、彫り下げて凹面6を形成して、雌ネジボルト3の上端、および雌ネジボルト3へ取り付けたボルト5の頭、並びに雌ネジボルト3、3間へ取り付けた接合具4、或いは補強用ボルト8を材面よりも沈み込ませ、接合具4、補強用ボルト8を加熱して緊張力を発生させた後に、前記彫り下げ凹面6の開口面部を、同材質の木板カバー7で木造建築構造材1の材面と面一となるように塞いで覆い隠す。
先ず図1A、Bは、請求項1に係る発明の実施例1を示したもので、木造建築物の梁材や桁材など、特に言えば曲げを受ける木造建築構造材1に発生した割れや亀裂の如き補強必要箇所2を中心としてその左右両側の好ましくは対称的位置に、材面とほぼ直角方向に雌ネジボルト3を埋め込む。雌ネジボルト3は、既に公知であるとおり、外周面に雄ネジが形成され、中心部に雌ネジ孔3aを有する構造である。その埋め込み法は、例えば埋め込み予定位置に予め外周面の雄ネジ外径よりも少し小径(例えば雄ネジの谷径ぐらい)の下孔をドリルであけ、その下孔へ雄ネジをねじ込む方法で、同雌ネジボルト3の上端が木造建築構造材1の材面とほぼ面一となる程度にまで埋め込む。
以上の準備が整った後に、上記接合具4を形状記憶合金の収縮温度まで加熱して緊張力を発生させ、前記緊張力により当該木造建築構造材1に発生した割れや亀裂を塞いで補強する。
接合具4を加熱する手段としては、図示することは省略したが、巻き付けベルトタイプに構成した電熱ヒーターを接合具4(図1C、Dの場合は形状記憶合金で製作した部分4a)の外周へ巻き付けておき、通電により加熱する方法を好適に実施できる。あるいは予め木造建築構造材1の表面へ敷き込んで養成を行い、しかる上で、火災バーナーで加熱する手段も実施可能である。
なお、図1A、Bおよび図1C、Dの実施例では接合具4を2本使用した構成を示すが、この限りではない。木造建築構造材1に発生した割れや亀裂の如き補強必要箇所2の症状に応じて、および木造建築構造材1の幅寸の大きさに応じて、1本或いは2本以上、必要な本数だけ使用して実施することができる。この点は以下に説明する各実施例に共通する事項である。
即ち、木造建築構造材1の補強必要箇所2を中心としてその左右両側にほぼ等しく一定の長さ域にまで、補強用ボルト8を設置可能な幅及び深さのボルト用欠き込み10を形成する。そして、同ボルト用欠き込み10の両端部には、ナット9と座金13を設置可能な幅及び深さのナット用欠き込み11を形成する。また、前記ボルト用欠き込み10の中央部には、後述の加熱装置を使用したり設置することが可能な幅及び深さのスペース12を形成する。
例えば補強用ボルト8の外径が12mmで、全長が600mm程度である場合に、ボルト用欠き込み10の幅寸は約14mm、深さは約40mm程度、ナット用欠き込み11の幅寸および深さはそれぞれ約50mm程度、そして、加熱装置を使用したり設置するスペース12の幅及び深さもそれぞれ50mmで、長さは100mm〜200mm程度に形成される。
その際に、加熱装置としては、図示を省略したが、やはり巻き付けベルトタイプの電熱ヒータを予め補強用ボルト8の特には形状記憶合金で製作した部分8aの外周へ上記スペース12内へ収まる形態、大きさに巻き付けておいて、ボルト用欠き込み10等の中へ設置する。
こうして補強用ボルト8を設置した後に、前記加熱装置を通電により発熱させて補強用ボルト8を形状記憶合金の収縮温度まで加熱して緊張力を発生させ、補強必要箇所2を、その割れや亀裂を塞ぎつつ補強、補修する。補強用ボルト8の他の加熱方法としては、上記スペース12の底面へ鉄板のような防熱シートを敷き込み、補強用ボルト8を上方からバーナーで直接加熱して形状記憶合金を収縮させる方法も実施可能である。
いずれにしても、補強用ボルト8は、その形状記憶合金の部分8aを設定値まで収縮させて緊張力を発生させるので、その両端のナット9を締め込む作業は一切必要とせず、施工の手間が大いに省ける。また、ナット用欠き込み11は、座金13とナット9が収まる程度に局限した幅および深さに形成すれば足り、木造建築構造材1の断面欠損を最少限度に抑制することができる。
そこで本実施例4は、目視確認によって緊張力の大きさを確認ないし算定して、補強必要箇所2の補強、補修の実効性を検査可能に構成したことである。
即ち、ボルト用欠き込み10へ設置する補強用ボルト8の少なくとも一方の端部、図示例では左端部のナット9の座金13とナット用欠き込み11と間にバネ用座金14を用いて複数枚の皿バネ15を重ねてセットする。その上で、補強用ボルト8をその形状記憶合金の収縮温度まで加熱して緊張力を発生させると、前記皿バネ15は緊張力の大きさに比例して圧縮されるから、その変位量を測定すると、応力計算式により緊張力の大きさをほぼ正確に算定し確認、検査することができるのである。
この木造建築構造材の補強方法は、加熱すると収縮する形状記憶合金で製作した複数のカスガイ16を、木造建築構造材1の補強必要箇所2を中心としてその左右両側に等しく跨る配置で打ち込み、しかる後に各カスガイ16を加熱装置により形状記憶合金の収縮温度まで加熱して緊張力を発生させることを特徴とする。図示例ではカスガイ16を3本打ち込んでいるが、この限りではない。木造建築構造材1の補強必要箇所2の症状に応じて1本或いは2本又は3本以上を使用して実施することができる。
この補強方法に使用するカスガイ16は、その全体を形状記憶合金で製作する場合のほか、木造建築構造材1へ打ち込む爪の部分だけを高強度の鋼材で製作し、中間部の図5Bに範囲Kで支持した収縮部分を形状記憶合金で製作して両者を一体的に接合した構成で実施することもできる。
カスガイ16を、形状記憶合金が収縮する温度まで加熱する方法としては、例えば温度調節が可能な家庭用アイロンを押し当て加熱する方法などを実施することができる。
2 補強必要箇所
3 雌ネジボルト
4 接合具
5 ボルト
6 彫り下げ凹面
7 木板カバー
8 補強用ボルト
10 ボルト用欠き込み
11 ナット用欠き込み
12 スペース
9 ナット
15 皿バネ
16 カスガイ
Claims (6)
- 木造建築構造材の補強必要箇所を中心としてその左右両側の位置に材面とほぼ直角方向に雌ネジボルトを埋め込み、加熱すると収縮する形状記憶合金で製作した接合具を、前記左右の雌ネジボルト間へボルトにより取り付け、しかる後に前記接合具を形状記憶合金の収縮温度まで加熱して緊張力を発生させることを特徴とする、木造建築構造材の補強方法。
- 木造建築構造材のうち雌ネジボルトを埋め込み、形状記憶合金で製作した接合具を前記左右の雌ネジボルト間へ取り付けるのに必要な範囲の材面を一定の深さまで彫り下げて凹面を形成し、雌ネジボルトの上端、および雌ネジボルトへ取り付けたボルトの頭、並びに雌ネジボルト間へ取り付けた接合具のそれぞれを材面よりも沈み込ませ、接合具を形状記憶合金の収縮温度まで加熱して緊張力を発生させた後に、前記彫り下げ凹面の開口面部を、同材質の木板カバーで木造建築構造材本来の材面と面一となるように塞いで覆い隠すことを特徴とする、請求項1に記載した木造建築構造材の補強方法。
- 木造建築構造材の補強必要箇所を中心としてその左右両側に一定の長さ域まで、補強用ボルトを設置可能な幅及び深さのボルト用欠き込みを形成すると共に、同ボルト用欠き込みの両端部にナットを設置可能な幅及び深さのナット用欠き込みを形成し、また、前記ボルト用欠き込みの中央部には加熱装置を使用・設置可能な幅及び深さのスペースを形成し、加熱すると収縮する形状記憶合金で製作した補強用ボルトの両端にナットを取り付け、前記両端のナット用欠き込みの内法間隔に略密接に収まる長さに両端のナットの位置を調整した補強用ボルトを前記ボルト用欠き込みおよびナット用欠き込みの中へ設置し、しかる後に前記スペースを利用して加熱装置により補強用ボルトを形状記憶合金の収縮温度まで加熱して緊張力を発生させることを特徴とする、木造建築構造材の補強方法。
- 補強用ボルトを形状記憶合金の収縮温度まで加熱して緊張力を発生させた後、ボルト用欠き込みとナット用欠き込み、および加熱装置を使用・設置可能なスペースの開口面部を、同材質の木板カバーで木造建築構造材本来の材面と面一となるように塞いで覆い隠すことを特徴とする、請求項3に記載した木造建築構造材の補強方法。
- 補強用ボルトの少なくとも一方の端部に取り付けるナットの内側に複数の皿バネを重ねてセットし、補強用ボルトを形状記憶合金の収縮温度まで加熱して緊張力を発生させた際に、前記皿バネが圧縮された変位量を測定して緊張力の大きさを算定し確認することを特徴とする、請求項3に記載した木造建築構造材の補強方法。
- 加熱すると収縮する形状記憶合金で製作したカスガイを、木造建築構造材の補強必要箇所を中心としてその左右両側に等しく跨る配置で打ち込み、しかる後に前記カスガイを加熱装置により形状記憶合金の収縮温度まで加熱して緊張力を発生させることを特徴とする、木造建築構造材の補強方法。
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