現在、照明光源(ランプ)として電球や蛍光灯が広く用いられている。近年、電球や蛍光灯に比べて長寿命、小型、低消費電力であるLEDを照明光源として用いた照明装置(LED照明装置)が開発されている。さらに、LED照明装置は、応答速度が速く、電気的な制御が簡単であるため、照明光に情報を付加することで照明光による情報(光信号)の送信を行う情報送信機能(光信号送信機能)をLED照明装置に持たせることが提案されている。
図6および図7を用いて、従来の情報送信機能をLED照明装置に持たせてなる光送信装置およびそれを用いた光通信システムについて説明する。
図6は、従来の照明機能および情報送信機能を有する光送信装置を用いた光通信システムの構成を示すブロック図である。
図6に示すように、従来の光通信システム100は、送信しようとするデータ信号を光信号に変換し、該光信号を光受信装置102に送信するための光送信装置101と、該光送信装置101から送信される光信号を受信し、データ信号に復調するための光受信装置102とからなる。
光送信装置101は、分配器104、制御部105、LEDドライバ106、および白色発光素子107からなる。白色発光素子107は、赤色光を発光するための赤色LED108と、緑色光を発光するための緑色LED109と、青色光を発光するための青色LED110とからなる。
送信しようとするデータ信号は、分配器104および制御部105に入力されるようになっている。制御部105は、上記データ信号を受信すると、分配器104およびLEDドライバ106に対してそれぞれの動作を開始させる指示信号を送信する。分配器104は、制御部105からの指示信号に応じてその動作を開始すると、上記データ信号を、青色LED用データ信号、緑色LED用データ信号、赤色LED用信号の3つのデータ信号に分配(分割)してLEDドライバ106へ送る。LEDドライバ106は、制御部105からの指示信号に応じてその動作を開始すると、分配器104から送られた上記3つのデータ信号に基づいて赤色LED108、緑色LED109、および青色LED110のそれぞれをオン/オフ制御することによって、上記データ信号を、赤色LED108、緑色LED109、および青色LED110のそれぞれから発光された光に対して変調する。これにより、赤色LED108、緑色LED109、および青色LED110のそれぞれにより光受信装置102に対して光信号(変調された光)が送信される。
光受信装置102は、光送信装置101から送信された光信号を受信する受光センサ112と、復調器130と、制御部131とからなる。
受光センサ112は、3つのフォトダイオード117、118、および119を備えている。さらに、受光センサ112は、フォトダイオード117の受光面上に形成され、赤色光を透過する赤色フィルタ113と、フォトダイオード118の受光面上に形成され、緑色光を透過する緑色フィルタ114と、フォトダイオード119の受光面上に形成され、青色光を透過する緑色フィルタ115と、赤色フィルタ113上、緑色フィルタ114上、および青色フィルタ115上に形成され、赤外光を遮光する赤外カットフィルタ116を備えている。これにより、赤色LED108により送信された光信号は、赤外カットフィルタ116および赤色フィルタ113を介してフォトダイオード117に入射し、フォトダイオード117で電気信号に変換される。また、緑色LED109により送信された光信号は、赤外カットフィルタ116および緑色フィルタ114を介してフォトダイオード118に入射し、フォトダイオード118で電気信号に変換される。さらに、青色LED110により送信された光信号は、赤外カットフィルタ116および青色フィルタ115を介してフォトダイオード119に入射し、電気信号に変換される。
復調器130は、フォトダイオード117,118,119のそれぞれにより変換された電気信号を、分配器104により3分割される前のデータ信号に復調するためのものである。制御部131は、復調器130を制御するためのものである。
次に、図7を用いて、従来の受光センサ112の構成についてさらに詳細に説明する。図7は、受光センサ112の構成を示す断面図である。
図7に示すように、受光センサ112は、基板122と、基板122に形成されているフォトダイオード117,118,119と、フォトダイオード117,118,119の受光面上に形成されたシリコン酸化膜126と、シリコン酸化膜126を介してフォトダイオード117,118,119の受光面上に形成されている赤色フィルタ113、緑色フィルタ114、および青色フィルタ115を備えている。
基板122は、高濃度の不純物を含むn型シリコン基板120と、n型シリコン基板120上に成長された低濃度の不純物を含むn型シリコンからなるN型エピタキシャル層121とからなる。また、N型エピタキシャル層121には、p型シリコンからなり、フォトダイオード117,118,119のそれぞれのアノードとして機能する3つのP型アノード123が並設されている。3つのP型アノード123は各々、基板122の表面から深い位置まで形成されている深いP型拡散部124と、基板122の表面から浅い位置まで形成されているP型拡散部125とからなる。
また、N型半導体基板120におけるN型エピタキシャル層121と逆側の面(裏面)上には、フォトダイオード117,118,119のカソードとして機能するカソード電極127が、金(Au)の蒸着により形成されている。
また、N型エピタキシャル層121におけるN型半導体基板120と逆側の面上には、シリコン酸化膜126が形成されている。3つのP型アノード123のそれぞれの上には、シリコン酸化膜126を介して赤色フィルタ113、緑色フィルタ114、および青色フィルタ115が形成されている。すなわち、フォトダイオード117の受光面上には、シリコン酸化膜126を介して赤色フィルタ113が形成されており、フォトダイオード118の受光面上にはシリコン酸化膜126を介して緑色フィルタ114が形成されており、フォトダイオード119の受光面上には、シリコン酸化膜126を介して青色フィルタ115が形成されている。赤色フィルタ113、緑色フィルタ114、および青色フィルタ115は、シリコン酸化膜126の上にフィルタ113〜115の基材となる樹脂を乗せ、赤色、緑色、および青色の染料で樹脂を染色する方法等によって形成されている。
上記の基板122、シリコン酸化膜126、赤色フィルタ113、緑色フィルタ114、および青色フィルタ115によって、フォトダイオードチップが構成されている。
さらに、カソード電極127におけるN型半導体基板120と逆側の面上には、金属フレーム128がダイボンドされている。また、フォトダイオードチップ全体を覆うように透明樹脂129が成形(モールド)されている。さらに、透明樹脂129の表面上における、赤色フィルタ113、緑色フィルタ114、および青色フィルタ115を覆う領域には、赤外光を遮光するための赤外カットフィルタ116が貼り付けられている。
特許文献1には、図6に示す光送信装置101と同様に、送信しようとするデータを3つに分配して、赤色LED、緑色LED、および青色LEDの各々に割り当てる割当器と、該割当器で割り当てられたデータにより変調されて発光する赤色LED、緑色LED、および青色LEDとを備える照明光送信装置が開示されている。
さらに、特許文献1には、上記照明光送信装置からの光をそれぞれ赤フィルタ、緑フィルタ、青フィルタを介して受光する光電気変換器、および復調器を備える照明光受信装置、並びに、該照明光受信装置および上記照明光送信装置からなる照明光通信システムが開示されている。
なお、特許文献2には、バイアス条件によって可視光の波長を識別するカラーセンサーが開示されている。また、特許文献3には、光電変換用の受光基板上に、低屈折率層および高屈折率層からなる多層膜の赤外カットフィルタを形成した受光素子が開示されている。また、特許文献4には、可視光領域の光信号を色分解して電気信号に変換する複数の光電変換要素を含む複数のセンサアレイと、赤外線を電気信号に変換する複数の光電変換要素を含むセンサアレイが並置して配列されているイメージセンサが開示されている。
特開2003−318836号公報(平成15年11月7日公開)
特開2000−223734号公報(平成12年8月11日公開)
特開平6−77507号公報(平成6年3月18日公開)
特開平6−217079号公報(平成6年8月5日公開)
しかしながら、図5に示す光通信システムや特許文献1に開示されている照明光通信システムのような、照明光源(赤色LED、緑色LED、および青色LED)からの可視光を用いて情報を送信する従来の光通信システムでは、情報の送信を行うためには照明光源(赤色LED、緑色LED、および青色LED)が点灯されている必要があるので、照明光源を消灯しているときには情報の送信を行うことができない。すなわち、上記従来の光送信装置は、照明光源によって照明される空間(被照明空間)を暗い状態に保ったままでは、情報の送信を行うことができない。これは、情報の送信時に被照明空間を暗い状態に保ちたい場合には問題となる。特に、室内の天井などに上記従来の光送信装置を設置し、夜間に、上記光送信装置から光受信装置を備えるパーソナル・コンピュータ(以下「パソコン」と略記する)などの情報機器にデータの送信を行う際には、室内を暗い状態に保ったままでデータを送信したい場合がある。
また、特許文献2〜4には、照明用の可視光を用いた光通信についても、赤外光を用いた光通信についても、何ら開示も示唆もされていない。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、照明用の可視光を用いて情報の通信を行う光送信装置および光受信装置において、被照明空間内を暗い状態に保ったままで情報の通信を行うことができる、光送信装置および光受信装置、並びに、該光送信装置を用いた光送信システムおよび光通信システムを提供することにある。
本発明に係る光送信装置は、上記課題を解決するために、可視光を発光する可視光発光素子を備え、該可視光によって照明を行うと共に、該可視光を情報に応じて変調することで情報を送信する光送信装置において、少なくとも上記可視光発光素子の消灯時に赤外光を発光する赤外発光素子と、上記赤外光を情報に応じて変調することで情報を送信する変調手段とをさらに備えることを特徴としている。
上記構成によれば、可視光を発光する可視光発光素子の消灯時には、可視光発光素子によって発光された可視光によって照明を行いながら、上記可視光に情報を変調して送信することができる。さらに、上記構成によれば、可視光発光素子の消灯時、すなわち照明を行っていない時には、赤外発光素子によって発光された赤外光に情報を変調して送信することができる。これにより、被照明空間を照明する可視光を使用することなく、情報を送信することができる。それゆえ、被照明空間内(室内など)にいる人が眠っている夜間時や被照明空間に人がいない時などのように被照明空間内を暗い状態に保ちたい時に、被照明空間内を暗い状態に保ったままで情報の通信を行うことができる。
本発明に係る光送信装置は、上記可視光発光素子の消灯時には上記赤外発光素子を発光させ、上記可視光発光素子の発光時には上記赤外発光素子を消灯させるように上記赤外発光素子を制御する制御手段をさらに備えることが好ましい。
上記構成によれば、上記可視光発光素子の発光時には上記赤外発光素子を消灯させるので、照明時に赤外発光素子から発光された赤外光が人の目に入って目を傷めることを回避できる。
本発明に係る光送信装置において、上記可視光発光素子は、赤色光を発光する赤色発光素子と、緑色光を発光する緑色発光素子と、青色光を発光する青色発光素子とを含み、全体として白色光を発光することが好ましい。
上記構成によれば、赤色光、緑色光、および青色光を用いて3種類の情報を同時に出力できる。それゆえ、1つの情報を3分割して3つの情報とし、これら3つの情報を同一の光受信装置に対してパラレルに送信することで、通信を3倍に高速化できる。また、3種類の光受信装置に対して異なる情報を同時に送信することもできる。さらに、上記構成の可視光発光素子は、可視領域全体にわたって比較的均一な波長スペクトルを持つ白色光を発光できるので、より自然光に近い照明を行うことができる。
なお、本願明細書において「白色光」とは、人間の肉眼では色を感じることのない可視光を指し、より詳細には、人間の網膜の3種類の錐体(赤、青、緑)に対して均等に刺激を与える可視光を指すものとする。
本発明に係る光送信装置において、上記可視光発光素子および上記赤外発光素子はそれぞれ、発光ダイオードであることが好ましい。
上記構成によれば、発光ダイオードを用いたことで、電球や蛍光灯などの照明装置と比較して、長寿命で、小型で、低消費電力の装置を実現できる。また、上記構成によれば、発光ダイオードを用いたことで、発光素子として有機EL素子などを用いた場合と比較して、長寿命の光送信装置を実現できる。さらに、発光ダイオードは、応答速度が速く、電気的な制御が簡単であるため、高速の情報が可能な光送信装置を簡素な構成で実現できる。
本発明に係る光送信装置において、上記赤外発光素子は、面発光ダイオードであることが好ましい。
面発光ダイオードは、光エネルギーが一点に集中する点発光ダイオードと比較して、光エネルギーが分散している。このため、上記構成によれば、赤外光が人の目に入ったとしても、目の網膜上での光エネルギーを低減し、目を傷付けることを回避できる。
本発明に係る光送信装置は、外部から電力線を介して情報を受信する電力線搬送通信手段をさらに備え、上記可視光および赤外光の変調は、上記電力線搬送通信手段で受信された情報に応じて行われる構成であってもよい。
上記構成によれば、情報を光送信装置に送信するための特別な配線などを新たに用意することなく、電力供給のために一般的な建物に既に設置されている電力線を介して情報を光送信装置に送信することができる。このため、光送信装置に容易に情報を送信することができる。
本発明に係る光送信装置は、外部の制御装置から赤外線通信によって制御信号を受信する赤外線受信手段と、上記赤外線受信手段で受信された制御信号に応じて、上記可視光発光素子によって発光される可視光の色調および明るさの少なくとも一方を調整する調整手段とをさらに備える構成であってもよい。
上記構成によれば、外部の制御装置から照明光の色調および明るさの少なくとも一方を調整することができる。すなわち、例えば、照明光の色調補正や、照明光の好きな色への調光、照明光の明るさ調整などを自動で行うことができる。
本発明に係る光送信システムは、上記赤外線受信手段および調整手段を備える光送信装置と、上記光送信装置に対して赤外線通信によって上記制御信号を送信する制御装置とを含んでいることを特徴としている。
上記構成によれば、システム内の制御装置から照明光の色調および明るさの少なくとも一方を調整することができる。すなわち、例えば、照明光の色調補正や、照明光の好きな色への調光、照明光の明るさ調整などを自動で行うことができる。
本発明に係る光送信システムにおいて、上記制御装置は、上記可視光の色調および明るさの少なくとも一方を検知する光検知手段を備え、該光検知手段によって検知された可視光の色調および明るさの少なくとも一方に応じて、上記可視光発光素子によって発光される可視光の色調および明るさの少なくとも一方を制御する制御信号を送信する構成であることが好ましい。
上記構成によれば、光検知手段によって検知された照明光の色調および明るさの少なくとも一方に基づいて、状況に応じた、照明光の色調補正や、照明光の好きな色への調光、照明光の明るさ調整などを行うことができる。
本発明に係る光受信装置は、上記の課題を解決するために、可視光によって照明を行うことができる光送信装置から、情報に応じて変調された上記可視光および赤外光をそれぞれ受光する受光手段と、該受光手段で受光された可視光および赤外光のそれぞれから上記情報を復調する復調手段とを備えることを特徴としている。
上記構成によれば、光送信装置において可視光による照明が行われていない時には、光送信装置から、情報に応じて変調された赤外光を受光し、復調することができる。これにより、被照明空間内が暗い状態であっても情報の受信を行うことができる。
本発明に係る光受信装置において、上記受光手段は、可視光を受光するための可視光受光素子と、赤外光を受光するための赤外光受光素子と、可視光を選択的に透過する干渉フィルタとを含み、上記干渉フィルタは、上記可視光受光素子の受光面上に設けられ、上記赤外光受光素子の受光面上には設けられていないことが好ましい。
上記構成によれば、上記可視光受光素子の受光面上に可視光を選択的に入射させることができるので、上記可視光受光素子の受光面上に、ノイズ成分となる近赤外線や紫外線が入射することを回避できる。したがって、可視光に変調された情報を可視光受光素子で確実に受信できる。
なお、本願明細書において、「可視光を選択的に透過する」とは、透過光のピーク波長が380nm〜750nmの可視領域にあり、このピーク波長の強度に対して、透過光における85%以上の強度の波長領域が400nm〜700nmの可視領域にあることを意味するものとする。
本発明に係る光受信装置において、上記干渉フィルタは、二酸化シリコン層と二酸化チタン層または五酸化タンタル層とを積層することによって形成されていることが好ましい。
上記構成によれば、より選択性良く可視光を透過する干渉フィルタを実現できる。したがって、可視光に変調された情報を可視光受光素子で、より確実に受信できる。また、上記シリコン酸化および二酸化チタンは、比較的安価に、容易に入手することができる材料であるため、上記干渉フィルタを安価に容易に製造できる。
本発明に係る光受信装置において、上記可視光受光素子は、第1の受光素子、第2の受光素子、および第3の受光素子を含み、上記第1の受光素子の受光面上には、赤色光を透過する赤色フィルタが設けられ、上記第2の受光素子の受光面上には、緑色光を透過する緑色フィルタが設けられ、上記第3の受光素子の受光面上には、青色光を透過する青色フィルタが設けられ、上記赤外光受光素子の受光面上には、上記赤色フィルタ、緑色フィルタ、および青色フィルタが設けられていないことが好ましい。
上記構成によれば、第1の受光素子、第2の受光素子、および第3の受光素子によってそれぞれ赤色光、緑色光、および青色光を受信できるので、赤色光、緑色光、および青色光を用いて送信された3種類の情報を同時に受信できる。したがって、1種類の可視光しか受光できない場合と比較して、3倍速い速度で情報の受信を行うことができる。
本発明に係る光受信装置において、上記赤外光受光素子のピーク感度波長が、750nm以上1100nm以下であり、上記第1の受光素子のピーク感度波長が、580nm以上700nm以下であり、上記第2の受光素子のピーク感度波長が、500nm以上580nm以下であり、上記第3の受光素子のピーク感度波長が、400nm以上500nm以下であることが好ましい。
上記構成によれば、赤外光受光素子、第1の受光素子、第2の受光素子、および第3の受光素子のそれぞれにおいて、580nm以上700nm以下の光(赤色光)、500nm以上580nm以下の光(緑色光)、400nm以上500nm以下の光(青色光)、および750nm以上1100nm以下の近赤外光、を効率良く電気信号に変換することができる。
本発明に係る光受信装置において、上記赤色フィルタ、緑色フィルタ、および青色フィルタは、顔料を感光性樹脂中に分散させてなる顔料分散型感光性樹脂で形成されていることが好ましい。
上記構成によれば、上記赤色フィルタ、緑色フィルタ、および青色フィルタを、フォトリソグラフィなどを使用して容易にすることができるため、製造工程を簡素化し、製造コストを安価にすることができる。
本発明に係る光通信システムは、上記の課題を解決するために、本発明に係る光送信装置と、該光送信装置から可視光および赤外光をそれぞれ受光する本発明に係る光受信装置とを備えることを特徴としている。
上記構成によれば、可視光発光素子の消灯時には、光送信装置で照明を行いながら、可視光を用いて光送信装置から光受信装置へ情報を送信することができる。さらに、上記構成によれば、可視光発光素子の消灯時、すなわち照明を行っていない時には、光送信装置内の赤外発光素子によって発光された赤外光を用いて光送信装置から光受信装置へ情報を送信することができる。それゆえ、被照明空間内を暗い状態に保ったままで、情報の通信を行うことができる。
本発明は、以上のように、照明用の可視光を用いて情報の通信を行う光送信装置および光受信装置において、被照明空間内を暗い状態に保ったままで情報の通信を行うことができる、光送信装置および光受信装置、並びに、該光送信装置を用いた光送信システムおよび光通信システムを提供できるという効果を奏する。
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図1ないし図3に基づいて説明すると以下の通りである。
本実施の形態にかかる光通信システムは、白色光によって照明を行うことができ、かつ、情報に応じて変調した白色光または赤外光を発光することで情報の送信を行うことができるものである。
図1は、本実施の形態にかかる光通信システム1の構成を示すブロック図である。図1に示すように、光通信システム1は、外部から入力されたデータ信号を光信号に変換し、該光信号を光受信装置3に送信するための光送信装置2と、該光送信装置2から送信される光信号を受信し、該光信号をデータ信号に復調して出力するための光受信装置3とを備えている。
光送信装置2は、被照明空間内の位置、例えば室内の天井などに設置され、可視光としての白色光によって上記被照明空間の照明を行う照明機能を備えている。さらに、光送信装置2は、上記白色光を情報に応じて変調することで情報を送信する可視光通信機能を備えている。光送信装置2は、分配器4、制御部(制御手段)5、LEDドライバ(変調手段)6、白色光を発光する白色発光素子(可視光発光素子)7、赤外LED(赤外発光素子)11、および照明スイッチ21を備えている。
白色発光素子7は、赤色光(ピーク波長が580nm以上700nm以下の光)を発光するための赤色LED(赤色発光素子)8と、緑色光(ピーク波長が500nm以上580nm以下以下の光)を発光するための緑色LED(緑色発光素子)9と、青色光(ピーク波長が400nm以上500nm以下の光)を発光するための青色LED(青色発光素子)10とからなり、全体として白色光を発光するものである。白色発光素子7は、赤色LED8、緑色LED9、および青色LED10を同時に点灯させることにより、これら赤色LED8、緑色LED9、および青色LED10から発光される赤色光、緑色光、および青色光の総和(全体)として、白色光を出力するものである。このため、白色発光素子7は、被照明空間を照明する白色照明光源として使用することができる。すなわち、光送信装置2は、赤色LED8、緑色LED9、および青色LED10を同時に点灯させることにより、白色光によって照明を行うことができる。
赤外LED11は、データ送信用の赤外光を発光するためのものである。赤外LED11としては、一般的に使用されている赤外光を発光するLEDを制限なく使用することが可能であるが、アイセーフ(目の安全)を考慮して、点発光ダイオードよりも面発光ダイオードを使用することが好ましい。面発光ダイオードは、光エネルギーが一点に集中する点発光ダイオードと比較して、光エネルギーが分散している。このため、面発光ダイオードは、目の網膜上での光エネルギーを低減し、目を傷付ける可能性を抑えることができる。なお、本実施形態では、赤外LED11として、750nm以上1100nm以下のピーク波長を持つ近赤外光を発光する赤外LEDを用いた。
赤外LED11は、後述するように、照明がオフのとき、すなわち白色発光素子7(青色LED8、緑色LED9、および赤色発光LED10)が消灯しているときのみ、データ送信用の赤外光を発光するように、制御部5およびLEDドライバ6によって制御されている。
照明スイッチ21は、照明を行うか否か、すなわち白色発光素子7を発光させるか消灯させる(発光させない)かを制御するものである。照明スイッチ21は、白色発光素子7を発光させるオン状態と、白色発光素子7を消灯させるオフ状態との間で手動または自動で切り替えられる。
送信しようとするデータ信号は、光送信装置2の外部から分配器4および制御部5に入力されるようになっている。制御部5は、上記データ信号を受信すると、分配器4に対してその動作を開始させる指示信号を送信する。
分配器4は、制御部5からの指示信号に応じてその動作を開始すると、照明スイッチ21がオン状態である場合には、外部から光送信装置2に送信されてきたデータ信号を受信し、赤色LED8、緑色LED9、および青色LED10のそれぞれに対応した3つのデータ信号に分割し、LEDドライバ6へ送る。分配器4は、照明スイッチ21がオフ状態である場合には、外部から光送信装置2に送信されてきたデータ信号を分割することなくそのままLEDドライバ6へ送る。
制御部5は、さらに、照明スイッチ21がオン状態であるかオフ状態であるかに応じて、LEDドライバ6を制御する。より詳細には、制御部5は、照明スイッチ21がオン状態である場合には、分配器4で分割された3つのデータ信号に応じて赤色LED8、緑色LED9、および青色LED10のそれぞれを発光させる動作を行うように、かつ、赤外LED11を消灯させる動作を行うように、LEDドライバ6に指示する。また、制御部5は、照明スイッチ21がオフ状態である場合には、分配器4から送られたデータ信号に応じて赤外LED11を発光させる動作を行うように、かつ、赤色LED8、緑色LED9、および青色LED10を消灯させる動作を行うように、LEDドライバ6に指示する。
LEDドライバ6は、制御部5からの指示に応じて、赤色LED8、緑色LED9、および青色LED10と、赤外LED11との何れかを、オン(発光)/オフ(消灯)制御(駆動)するものである。
より詳細には、LEDドライバ6は、照明スイッチ21がオン状態である場合には、制御部5からの指示に応じて、赤色LED8、緑色LED9、および青色LED10のそれぞれを発光させ、赤外LED11を消灯させる。さらに、LEDドライバ6は、照明スイッチ21がオン状態である場合には、分配器4で分割された3つのデータ信号に応じて赤色LED8、緑色LED9、および青色LED10のそれぞれをオン/オフ制御することによって赤色LED8、緑色LED9、および青色LED10のそれぞれから発光される3種類の可視光を変調する。これにより、光送信装置2は、データ信号に応じて変調された3種類の可視光(赤色光、緑色光、および青色光)を光信号(情報)としてパラレルに送信できる。
このように、光送信装置2では、被照明空間を照明する白色発光素子7(赤色LED8、緑色LED9、および青色LED10)を発光させることにより、可視光の光信号を送信できる。したがって、被照明空間を照明しながら情報を送信することができる。また、この情報の送信は、3種類の可視光の光信号をパラレルに送信することによって行われるので、1種類の光信号を送信する場合と比較して3倍の速度で情報を送信できる。
赤色LED8、緑色LED9、および青色LED10による可視光の光信号による情報の送信は、照明スイッチ21がオン状態で、すなわち白色発光素子7によって白色照明が行われている状態で行われる。このため、可視光のオン/オフが人の目には認識することができない程度の高速で可視光を変調することが好ましい。従って、例えば、1Mbps程度の高速で光信号による情報の送信が行われることが好ましい。
LEDドライバ6において赤色LED8、緑色LED9、および青色LED10のそれぞれから発光される3種類の可視光を変調するための光変調方式としては、一般的に使用されているさまざまな変調方式を用いることが可能であるが、例えば赤色LED8、緑色LED9、および青色LED10のオン/オフで光強度変調を行うOOK(On-Off-Keying)方式や、PPM(Pulse Position Modulation)方式などを用いることができる。
一方、LEDドライバ6は、照明スイッチ21がオフ状態である場合には、制御部5からの指示に応じて、赤色LED8、緑色LED9、および青色LED10のそれぞれを消灯させ、赤外LED11を発光させる。さらに、LEDドライバ6は、照明スイッチ21がオフ状態である場合には、分配器4から送られた分割されていないデータ信号に応じて赤外LED11をオン/オフ制御することによって赤外LED11から発光される赤外光を変調する。これにより、光送信装置2は、データ信号に応じて変調された1種類の赤外光を光信号(情報)として送信できる。
LEDドライバ6において赤外LED11から発光される赤外光を変調するための光変調方式としても、前述した可視光の変調方式と同様に、OOK方式やPPM方式などを使用することができる。
このように、光送信装置2では、被照明空間を照明する白色発光素子7(赤色LED8、緑色LED9、および青色LED10)の消灯時に、赤外光の光信号により情報を送信するようになっている。これにより、被照明空間を照明する可視光を使用することなく情報を送信することができる。それゆえ、被照明空間内(室内など)にいる人が眠っている夜間時や被照明空間に人がいない時などのように被照明空間内を暗い状態に保ちたい時に、被照明空間内を暗い状態に保ったままで情報の通信を行うことができる。
なお、可視光の光信号による情報の送信は、3つのLED(赤色LED8、緑色LED9、および青色LED10)からパラレルに行われるのに対し、赤外光の光信号による情報の送信は、1つのLED(赤外LED11)のみから行われる。このため、可視光の光信号による情報の送信速度と比較して、赤外光の光信号による情報の送信速度は1/3となる。しかしながら、赤外光の光信号による情報の送信は、被照明空間内(室内など)にいる人が眠っている夜間時や被照明空間に人がいない時などに行われるので、光受信装置3のユーザは、受信したデータを受信時にリアルタイムで利用するのではなく、受信後、時間がたってからまとめて利用することが多い。このため、赤外光の光信号による情報の送信時に、可視光の光信号による情報を送信する場合と比較して、情報の送信速度が1/3となることによる実用上の問題は生じない。
光受信装置3は、受光センサ(受光手段)12と、復調器(復調手段)30と、制御部31とを備えている。
受光センサ12は、光送信装置2から、情報に応じて変調された可視光(赤色光、緑色光、および青色光)および赤外光を受光して電気信号に変換し、該変換した電気信号を復調器30に送信するものである。受光センサ12は、赤色光を受光するためのフォトダイオード(可視光受光素子、第1の受光素子)17と、緑色光を受光するためのフォトダイオード(可視光受光素子、第2の受光素子)18と、青色光を受光するためのフォトダイオード(可視光受光素子、第3の受光素子)19と、赤外光を受光するためのフォトダイオード(赤外光受光素子)20とを備えている。
フォトダイオード20のピーク感度波長が750nm以上1100nm以下であり、フォトダイオード17のピーク感度波長が580nm以上700nm以下であり、フォトダイオード18のピーク感度波長が500nm以上580nm以下であり、フォトダイオード19のピーク感度波長が、400nm以上500nm以下であることが好ましい。このような4波長にピーク感度を持つフォトダイオード17〜20を用いることにより、フォトダイオード17〜20のそれぞれにおいて、580nm以上700nm以下の光(赤色光)、500nm以上580nm以下の光(緑色光)、400nm以上500nm以下の光(青色光)、および750nm以上1100nm以下の近赤外光を効率良く電気信号に変換することができる。上記要件を満たすフォトダイオード17〜19としては、例えば、それぞれ620nm、540nm、および460nmのピーク感度波長を持つフォトダイオードを用いることができる。
フォトダイオード17〜19の受光面上には、可視光を選択的に透過する干渉フィルタである可視光透過フィルタ16が設けられている。フォトダイオード17の受光面上には、可視光透過フィルタ16を介して、赤色光を透過する赤色フィルタ13が設けられている。フォトダイオード18の受光面上には、可視光透過フィルタ16を介して、緑色光を透過する緑色フィルタ14が設けられている。フォトダイオード19の受光面上には、可視光透過フィルタ16を介して、青色光を透過する青色フィルタ15が設けられている。フォトダイオード20の受光面上には、可視光透過フィルタ16、赤色フィルタ13、緑色フィルタ14、および青色フィルタ15は、設けられていない。
なお、可視光透過フィルタ16に代えて赤外光を遮断するフィルタを用いてもよいが、ノイズ成分となる紫外光がフォトダイオード17〜19に入射することを防止するために可視光透過フィルタ16を用いる方が好ましい。
これらにより、赤色光が受光センサ12に入射すると、赤色フィルタ13および可視光透過フィルタ16を透過し、フォトダイオード17の受光面により受光される。また、緑色光が受光センサ12に入射すると、緑色フィルタ14および可視光透過フィルタ16を透過し、フォトダイオード18の受光面により受光される。さらに、青色光が受光センサ12に入射すると、青色フィルタ15および可視光透過フィルタ16を透過し、フォトダイオード19の受光面により受光される。そして、赤外光が受光センサ12に入射すると、フォトダイオード20の受光面により受光される。
制御部31は、復調器30による復調を制御する。復調器30は、フォトダイオード17,18,19のそれぞれにより変換された電気信号を、光送信装置2の分配器4により入力される前のデータ信号に復調し、出力する。また、フォトダイオード20により変換された電気信号を、光送信装置2の分配器4により入力される前のデータ信号に復調し、出力する。これらにより、光受信装置3は、光受信装置2から可視光および赤外光に変調されて送信されたデータ信号をそれぞれ復元し、出力することができる。
次に、図2を用いて受光センサ12の構成について説明する。図2は、受光センサ12の構成を示す断面図である。
図2に示すように、受光センサ12は、1チップで構成されているものであり、前述した赤色フィルタ13、緑色フィルタ14、青色フィルタ15、および可視光透過フィルタ16と、前述したフォトダイオード17,18,19,20を含むシリコンからなる半導体基板21とを備えている。また、本実施の形態においては、フォトダイオード17,18,19とフォトダイオード20とは、1つの半導体基板21内に並設されている。このようにフォトダイオード17,18,19とフォトダイオード20とを1つの半導体基板21内に並設して1チップ化することにより、受光センサ12の小型化を図ることができる。なお、半導体基板21は、シリコン以外の半導体で形成してもよい。
フォトダイオード17,18,19,20のそれぞれは、キャリアを受け取って光を受光して光電流を発生させるためのp型シリコンからなる3つのP型拡散部24および1つのP型拡散部30と、P型拡散部24およびP型拡散部30で発生した光電流を出力するための、P型拡散部24上に形成されたアルミニウム(Al)などからなる図示しないアノードとを備えている。また、フォトダイオード17,18,19,20は、金(Au)などからなるカソード電極27を共通のカソードとして備えている。
半導体基板21は、n型シリコンからなるN型基板22と、N型基板22よりも不純物濃度が低いn型シリコンからなるN型エピタキシャル層23とからなる。フォトダイオード17,18,19,20のカソードとして機能するカソード電極27は、N型基板22におけるN型エピタキシャル層23が形成されている側と逆側の面上に、蒸着などにより形成されている。
P型拡散部24およびP型拡散部30は、N型エピタキシャル層23上に並設されている。P型拡散部24およびP型拡散部30は、N型基板22内で生成したキャリアを受け取って光電流を発生させるためのものであり、N型エピタキシャル層23上の一部領域(フォトダイオード17,18,19,20のそれぞれの受光面を形成すべき領域)に形成されている。P型拡散部24およびP型拡散部30とN型エピタキシャル層23とを合わせたものが平板状となるように、P型拡散部24およびP型拡散部30は、N型エピタキシャル層23に食い込む形態で形成されている。このP型拡散部24およびP型拡散部30におけるN型基板22と逆側の面が、フォトダイオード17,18,19,20のそれぞれの受光面として機能する。
P型拡散部24は、p型シリコンからなり、N型エピタキシャル層23に深く食い込む形態で形成されている深い拡散部25と、深い拡散部25と比較してN型エピタキシャル層23に浅く形成されている浅い拡散部26とからなる。P型拡散部30は、p型シリコンからなり、ほぼ均一な深さで形成されている。
N型エピタキシャル層23におけるP型拡散部24およびP型拡散部30で覆われていない領域並びにP型拡散部24およびP型拡散部30の全面に、シリコン酸化膜28が被膜されている。シリコン酸化膜28上における、フォトダイオード17,18,19,20のそれぞれの受光面の周囲には、遮光メタル29が形成されている。
遮光メタル29は、フォトダイオード17,18,19,20のそれぞれの受光面の周囲からフォトダイオード17,18,19,20に入射する光を遮光する。これにより、フォトダイオード17,18,19,20の周囲からフォトダイオード17,18,19,20に入射する光によるノイズの影響を低減することができる。また、遮光メタル29の材質は、金属からなる。このため、配線、表面電位シールドといった、電気的機能を有することもできる。
可視光透過フィルタ16は、シリコン酸化膜28を介してP型拡散部24を覆うように形成されている。すなわち、フォトダイオード17,18,19の受光面を覆うようにシリコン酸化膜28上に形成されている。また、可視光透過フィルタ16は、スパッタ蒸着法などにより高屈折材料の膜と低屈折材料の膜とを積層してなり、光の干渉作用を利用することにより可視光を透過する構成となっている。上記高屈折材料として、屈折率が2.4である二酸化チタン(TiO2)または、屈折率が2.16である五酸化タンタル(Ta2O5)を使用し、上記低屈折材料として屈折率が1.46である二酸化シリコン(SiO2;シリコン酸化物)を使用することが好ましい。これにより、さらに、可視光透過フィルタ16は、二酸化チタンまたは五酸化タンタルと二酸化シリコンとを、交互に数nm〜数百nmずつ、40〜70層、好ましくは50〜60層、積層してなることが好ましい。本実施形態では、可視光透過フィルタ16として、400〜700nmの可視光を透過し、300〜400nmの紫外光および700〜1100nmの近赤外線を透過しない干渉フィルタを用いている。
赤色フィルタ13、緑色フィルタ14、および青色フィルタ15のそれぞれは、染料で樹脂を染めたものであってもよいが、フォトリソグラフィ工程を用いて容易にパターニングできるという利点を有することから、本実施形態では、感光性樹脂中に顔料を分散させてなる顔料分散型感光性樹脂によって形成されている。
また、フォトダイオード20の受光面上には、可視光透過フィルタ16、赤色フィルタ13、緑色フィルタ14、および青色フィルタ15など、一部波長域の光を選択的に透過させるフィルタは、何も形成されていない。このため、赤外光(特に波長750nm〜1100nmの近赤外光)は、フィルタによって遮断されることなくフォトダイオード20に入射し、電気信号に変換される。なお、フォトダイオード20の受光面上に、可視光を遮断するフィルタ、例えば赤外光を選択的に透過する干渉フィルタを追加してもよい。これにより、ノイズ成分となる可視光がフォトダイオード20に入射することを防止することができる。
次に、本実施の形態にかかる受光センサ12の製造方法の一例について説明する。
まず、CZ法(チョクラルスキー法)などにより作成されたn型シリコン基板の片面を熱酸化することにより、n型シリコン基板の片面上にシリコン酸化膜を成長させる。
次に、n型エピタキシャル層23を上記n型シリコン基板中に形成する処理を行う。すなわち、上記n型シリコン基板に対して、エピタキシャル層形成処理を施すことによりn型エピタキシャル層を上記n型シリコン基板の表面に形成し、N型基板22とN型エピタキシャル層23とからなる積層構造を得る。
次いで、所要の箇所(P型拡散部24およびP型拡散部30を形成すべき領域以外の領域)のシリコン酸化膜をフォトリソグラフィ技術などを用いて取り除き、ボロンなどのp型不純物をイオン注入法により高いイオン注入エネルギーで打ち込む(注入する)ことで、n型エピタキシャル層23における所要の領域(深い拡散部25およびP型拡散部30を形成すべき領域)に拡散させ、深い拡散部25およびP型拡散部30を形成する。
さらに、ボロン等のp型不純物をイオン注入法により低いイオン注入エネルギーで打ち込むことで、n型エピタキシャル層23における所要の領域(浅い拡散部26を形成すべき領域)にp型不純物を拡散させる。このとき、p型不純物の拡散深さは、前記高いイオン注入エネルギーのイオン注入による拡散深さよりも浅くなる。p型不純物を拡散させることにより、P型拡散部24の浅い拡散部26が形成される。そして深い拡散部25および浅い拡散部26にスパッタ蒸着などによりAlなどを蒸着することにより図示しないアノード電極が形成される。
次に、N型エピタキシャル層23におけるP型拡散部24およびP型拡散部30で覆われていない領域、並びにP型拡散部24およびP型拡散部30の全面に、CVD(化学気相成長)法によりシリコン酸化膜28を成長させ、熱処理を行う。これにより、N型エピタキシャル層23におけるP型拡散部24およびP型拡散部30で覆われていない領域、並びにP型拡散部24およびP型拡散部30の全面に、シリコン酸化膜28が再度形成される。
次に、遮光メタル29を形成すべき領域のシリコン酸化膜28をフォトリソグラフィ技術などにより取り除く。さらに、蒸着などによりアルミニウムなどの電極材料(導電材料)を、シリコン酸化膜28およびシリコン酸化膜28が取り除かれた領域(遮光メタル29を形成すべき領域)の全面に形成する。次いで、既存のパターニング技術を用いて電極材料のパターニング(部分的除去)を行うことで、遮光メタル29を半導体基板21上に形成する。この後、半導体基板21の裏面(シリコン酸化膜17側と反対側の面)に金(Au)等の電極材料を蒸着し、カソード電極27を形成する。
さらに、シリコン酸化膜28上および遮光メタル29上に、二酸化シリコン(SiO2)層(いわゆるシリコン酸化膜)と、二酸化チタン(TiO2)層または五酸化タンタル(Ta2O5)層とを数nm〜数百nmの厚さで50〜60層交互にスパッタ蒸着により積層することにより、シリコン酸化膜28および遮光メタル29上に干渉フィルタを形成する。次いで、P型拡散部30上およびパッド部(不図示)の干渉フィルタを除去する。この除去方法としては、感光性樹脂によるリフトオフ法もしくはドライエッチング法などを用いることができる。また、上記干渉フィルタを形成する前にP型拡散部30上およびパッド部(不図示)の領域を金属材料によりマスクしておき、上記干渉フィルタを形成後、金属材料を取り除く方法などを用いることもできる。これにより、可視光透過フィルタ16が形成される。
この後、赤色顔料を感光性樹脂中に分散させてなる顔料分散型感光性樹脂を可視光透過フィルタ16上の全面に塗布する。次いで、フォトリソグラフィ技術(感光性樹脂をパターン露光した後、露光された部分あるいは露光されなかった部分の感光性樹脂を現像液によって除去する)により感光性樹脂のパターニングを行った後、熱処理を行い、赤色フィルタ13を形成する。同様にして、緑色顔料を感光性樹脂中に分散させてなる顔料分散型感光性樹脂、および青色顔料を感光性樹脂中に分散させてなる顔料分散型感光性樹脂をそれぞれ用いて、緑色フィルタ14および青色フィルタ15を形成する。
上記赤色顔料を含む顔料分散型感光性樹脂は、それによって形成される赤色フィルタ13の透過光のピーク波長がフォトダイオード17のピーク感度波長(例えば620nm)に適合する(すなわちフォトダイオード17のピーク感度波長に近くなる)ように上記赤色顔料の配合が調整されている。同様に、上記緑色顔料を含む顔料分散型感光性樹脂は、それによって形成される緑色フィルタ14の透過光のピーク波長がフォトダイオード18のピーク感度波長(例えば540nm)に適合する(すなわちフォトダイオード18のピーク感度波長に近くなる)ように上記緑色顔料の配合が調整されている。さらに、上記青色顔料を含む顔料分散型感光性樹脂は、それによって形成される青色フィルタ15の透過光のピーク波長がフォトダイオード19のピーク感度波長(例えば460nm)に適合する(すなわちフォトダイオード19のピーク感度波長に近くなる)ように上記青色顔料の配合が調整されている。
以上の工程により、本実施の形態の受光センサ12は製造される。
また、本実施の形態において、n型シリコンからなる半導体基板21およびp型シリコンからなるP型拡散部24,30によりフォトダイオード17,18,19,20が形成されているが、p型シリコンからなる半導体基板にn型シリコンからなる拡散部を形成することによりフォトダイオードを形成することもできる。
さらに、本実施の形態において、P型拡散部24は、深い拡散部25と浅い拡散部26とから構成された形状を有している。これにより、フォトダイオード17,18,19の短波長の光に対する感度を向上することができる。しかしながら、P型拡散部24は、一回の拡散技術により形成される、P型拡散部30と同様の形状の拡散部としてもよい。
さらに、本実施の形態では、受光センサ12を図1に示す復調器30および制御部31とは別個の素子(ディスクリート素子)として形成していたが、図1に示す復調器30および制御部31を半導体基板21上に形成することにより、受光センサ12を図1に示す復調器30および制御部31と1つのIC(集積回路)上に集積してもよい。この場合、集積したIC上に、可視光透過フィルタ16、赤色フィルタ13、緑色フィルタ14、および青色フィルタ15を形成することができる。
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態にかかる光通信システムについて図3に基づいて説明する。図3は、本実施の形態に係る光通信システムの概略構成を示す模式図である。なお、説明の便宜上、前記実施の形態1にて示した各部材と同一の機能を有する部材には、同一の符号を付記し、その説明を省略する。
本実施の形態に係る光通信システムは、図3に示すように、部屋の天井に設置された光送信装置2Aと、電池駆動装置であるリモートコントローラ(以下「リモコン」と略記する)51、携帯電話機52、およびゲーム機53とを備えている。
光送信装置2Aは、実施の形態1に係る光送信装置2に対して、電力線搬送通信装置(電力線搬送通信手段)50を追加した構成である。電力線搬送通信装置50は、電力線54を介して外部の電力線搬送通信装置55と電力線搬送通信を行うものであり、電力線搬送通信によって外部の電力線搬送通信装置55から電力線54を介してデータ信号を受信し、光送信装置2A内の分配器4および制御部5(図1参照)へ送る。また、光送信装置2Aには、電力線54から電力(図3では100Vの交流電圧)が供給されるようになっている。上記構成によれば、データ信号を光送信装置2Aに送信するための特別な配線などを新たに設けることなく、光送信装置2Aへの電力供給のために既に設置されている電力線54を介してデータ信号を光送信装置2Aに送信できる。光送信装置2Aは、この電力線54を介して受信したデータ信号を3種類の可視光または赤外光に変調してリモコン51、携帯電話機52、およびゲーム機53の少なくとも1つへ送信する。
リモコン51、携帯電話機52、およびゲーム機53は、実施の形態1に係る光送信装置3を含むものである。したがって、リモコン51、携帯電話機52、およびゲーム機53は、光送信装置2Aから出力された4波長の変調光(赤色光、緑色光、青色光、および赤外光)を受光センサ12で受光してデータ信号に復調し、復調されたデータ信号を、リモコン51、携帯電話機52、およびゲーム機53の本体部(光送信装置3以外の部分)に送ることができる。したがって、リモコン51、携帯電話機52、およびゲーム機53は、部屋のどこかに置いておくだけで、白色光による照明を行っているか否かにかかわらず、外部の電力線搬送通信装置55から電力線54を介して光送信装置2に送信されたデータ信号を受信することができる。
なお、上述した実施の形態では、光送信装置2Aは、データ転送の高速化のために、送信しようとするデータ信号を、赤色光用のデータ信号、緑色光用のデータ信号、および青色光用のデータ信号の3つに分配し、この分配したデータを電池駆動装置(リモコン51、携帯電話機52、およびゲーム機53の少なくとも1つ)に対して同時に送信していた。
しかしながら、本実施の形態においては、さらに、赤色光、緑色光、および青色光のそれぞれに3つの電池駆動装置(リモコン51、携帯電話機52、およびゲーム機53)に送信するデータ信号を専属に割当て、上記3つの電池駆動装置のそれぞれに、異なるデータを同時に送信してもよい。これにより、上述した実施の形態と比較してデータ送信速度は1/3になるものの、3つの電池駆動装置のそれぞれに、同時に異なるデータ信号を送信することができる。
また、上述した実施の形態では、電池駆動装置としてリモコン51、携帯電話機52、およびゲーム機53を用いていたが、PDA(Personal Digital Assistance;携帯情報端末)やノート型パソコンなどのような他の電池駆動装置を用いてもよい。また、電池駆動装置に代えて電力線54からの電力によって駆動される装置、例えば据置型パソコンなどを用いてもよい。
〔実施の形態3〕
本発明のさらに他の実施の形態にかかる光送信システムについて図4および図5を用いて説明する。図4および図5は、本実施の形態にかかる光送信システムの概略構成を示す模式図およびブロック図である。
図4に示すように、本実施の形態に係る光送信システム60は、天井等に設置された照明を行うことが可能な光送信装置2Bと、光送信装置2Bに対して赤外線通信によって制御信号を送信するパソコン62およびモニター63とを備えている。パソコン62およびモニター63は、互いに接続されており、図5に示すように、光送信装置2Bを制御する制御装置64を構成している。
光送信装置2Bは、図5に示すように、実施の形態2にかかる光送信装置2Aに対して、後述する外部のパソコン62内の赤外光発光装置62aから赤外線通信によって制御信号(補正のための信号)を受信する赤外光受光装置(赤外線受信手段)61を追加したものである。赤外光受光装置61は、例えば、フォトダイオード20および復調器30と同様の、近赤外領域に感度を持つフォトダイオードおよび復調器によって構成できる。
また、光送信装置2Bでは、制御部5が、赤外光受光装置61で受信された制御信号に応じて、白色発光素子7によって発光される白色光の色調および明るさの少なくとも一方を補正(調整)する。
モニター63は、光送信装置2Bから出力された白色光の色調および明るさの少なくとも一方を検知し、検知結果をパソコン62に送る受光装置(光検知手段)63aを備えている。受光装置63aは、光の色調および明るさを検知できるカラーセンサ(例えば受光センサ12からフォトダイオード20を取り除いた構成のセンサ)、可視領域に感度を持ち、光の明るさを検知できる光センサなどによって実現できる。
パソコン62は、モニター63内の受光装置63aによって検知された白色光の色調および明るさの少なくとも一方に応じて、光送信装置2B内の白色発光素子7によって発光される白色光の色調および明るさの少なくとも一方を制御する制御信号を生成する制御信号生成部62bと、制御信号生成部62bで生成された制御信号を赤外線通信によって光送信装置2Bへ送信する赤外光発光装置62aとを備えている。赤外光受光装置61は、例えば、赤外LED11およびLEDドライバ6と同様の、赤外LEDおよびLEDドライバによって構成できる。
以上のように、本実施形態にかかる光送信システム60では、受光装置63aにより光送信装置2Bによる照明の色調や明るさを感知し、照明光の色調および明るさの少なくとも一方を補正するための制御信号をパソコン62内の赤外光発光装置62aから、光送信装置2B内の赤外光受光装置61へ送信することにより、照明光の色調補正、ユーザの好きな色への調光(照明光の色調変更)、照明光の明るさ調整などを自動で行うことができる。
なお、上述した各実施の形態では、赤外LED11は、白色発光素子7の消灯時にのみ赤外光を発光するようになっていたが、赤外LED11は、白色発光素子7が発光しているかにかかわらず、赤外光を発光するものであってもよい。ただし、照明時に赤外LED11から発光された赤外光が人の目に入って目を傷めることを回避するために、赤外LED11が白色発光素子7の消灯時にのみ赤外光を発光するようになっていることが好ましい。
また、上述した各実施の形態では、白色発光素子7を発光させるか否かの制御は、照明スイッチ21によって行われるようになっていたが、光送信装置2外部からの制御信号、例えばパソコン62からの制御信号によって行われるようにしてもよい。また、制御部5を光送信装置2外部に設けてもよい。
また、上述した各実施の形態では、光送信装置は、光送信装置の外部から入力されたデータ信号(デジタル信号)を光に変調して送信するものであった。しかしながら、光送信装置は、光送信装置内部で生成されたデータ信号やアナログ信号、光送信装置の外部から入力されたアナログ信号などを光に変調して送信するものであってもよい。
また、上述した各実施の形態では、可視光発光素子および赤外光発光素子として(無機の)LEDを用いていたが、可視光発光素子および赤外光発光素子として、有機EL(電界発光)素子などのような他の発光素子を用いてもよい。ただし、電気的な制御が容易であり、応答速度が速く、かつ寿命が長いことから、可視光発光素子および赤外光発光素子として(無機の)LEDを用いることが好ましい。
また、白色発光素子7は、光送信装置を誘導灯や非常用照明器具等として使用する場合には、赤色光や緑色光を発光するものであってもよい。ただし、室内などの空間を照明する光として適している白色光を発光するもの(白色発光素子)であることが好ましい。また、白色発光素子として、赤色LED8、緑色LED9、および青色LED10を組み合わせた白色発光素子7に代えて、青色LEDの周囲に、青色光によって励起されてオレンジ色(青色の補色)を発する蛍光体を配置した蛍光体タイプの白色発光素子を用いてもよい。ただし、複数の光信号をパラレルに送信して高速の通信を実現するために、また、より自然光に近い照明を行うために、白色発光素子として、3色の発光素子を組み合わせたものを用いることが好ましい。また、白色発光素子として、4色以上の発光素子を組み合わせたものを用いてもよい。