以下、図面を参照しながら、本発明による実施形態の液晶表示装置を説明する。本発明による液晶表示装置は、少なくとも反射光を用いて表示を行うことができる表示装置であり、一般的な反射型液晶表示装置だけでなく、画素電極に反射電極領域と透過電極領域とが形成されている、半透過型や両用型と称されるタイプの液晶表示装置を含む。
なお、本明細書における画素電極は単一の電極層で形成されたものに限らず、画素ごとに設けられ対応する表示信号電圧が供給される複数の電極層を備えてもよい。すなわち、以下で例示する両用型液晶表示装置のように、反射電極層で反射電極領域を構成し、透明電極層で透過電極領域を構成してもよい。さらに、例えば、透明電極と反射膜との組み合わせで、反射電極領域を構成してもよい。また、画素電極は、単一の金属膜に孔(透光部)を設けた画素電極(すなわち、半透過導電性膜から形成された電極)であってもよい。なお、この構成では、金属膜の透光部には電極層は存在しないが、その孔が十分に小さい場合には透光部の周辺の金属膜(電極層)からの電界が十分に作用し、液晶層に印加される電圧に金属層の孔は実質的に影響しないので、この金属膜から形成された画素電極も反射電極領域と透過電極領域(孔に対応)とを有するものとする。
透過電極領域と反射電極領域とを有する液晶表示装置は、反射型液晶表示装置に比べて、周囲光が暗い環境下でも高品位の表示を行えるという利点がある。また、使用環境に応じて、バックライトをON/OFFすることによって、透過モードによる表示の利用を選択することが出来るものもある。
(実施形態1)
まず、特に45Hz以下の低周波駆動を行ってもフリッカが視認され難い液晶表示装置の画素配列および駆動方法を説明する。
まず、図1を参照しながら、本発明の実施形態1による反射型液晶表示装置100の構造を説明する。なお、反射型液晶表示装置100は、低周波駆動回路(不図示)を備えている。低周波駆動回路の好ましい実施形態については後述する。
反射型液晶表示装置100は、複数の行および複数の列を有するマトリクス状に配列された複数の反射画素電極(以下、簡単のために「反射電極」と称する。)10と、行方向に延びる複数の走査線(ゲートライン)32と、列方向に延びる複数の信号線(ソースライン)34と、反射電極10のそれぞれに対応して設けられた複数のTFT20とを有している。反射電極10は、TFT20を介して、走査線32および信号線34とに接続されている。
この液晶表示装置100は、複数の走査線32に走査信号電圧を順次供給することによって、複数の反射電極10の中から同じ走査線32に接続されている画素電極10の群を順次選択し、選択された群の反射電極10に、信号線34を介して表示信号電圧を供給することによって表示を行う。すなわち、この液晶表示装置100は、線順次駆動される。
本明細書において、個々の走査線が選択されている期間を水平走査期間と呼び、表示面全面に亘る所定の群の走査線を走査するのに要する期間を垂直走査期間と呼ぶ。1フレームごとに全ての走査線を走査する場合(すなわち、書き換え周期が60Hzの場合)は、1フレーム周期が1垂直走査期間に対応し、1フレームを複数のフィールドに分割して駆動する場合には、各フィールドに対応する全ての走査線を走査するのに要する1フィールド周期が、1垂直走査期間に対応する。本発明による液晶表示装置は、画素電極のそれぞれに供給される表示信号電圧は45Hz以下の周波数で書き換えられる。すなわち、液晶表示装置100は、垂直走査期間が1/45秒以上となるように低周波数で駆動される。
また、複数の画素電極は、複数の行のそれぞれおよび複数の列のそれぞれにおいて、液晶層に印加される電圧の極性が一定数の画素電極ごとに異なるように配置されており、いわゆるドット反転駆動される。以下の実施形態では、なお、1画素ごと(上記一定数が1に相当)に反転駆動される構成を例示するが、例えば、R・G・Bの連続する3つの画素ごと(上記一定数が3に相当)に反転駆動されてもよい。
反射型液晶表示装置100では、ドット反転駆動を実現するために、図1に示したように、TFT20に対して反射電極10を千鳥状に配列している。すなわち、ある走査線32に接続されたTFT20は、その走査線32に隣接する一対の行に属する反射電極10のうちの一方の行(図1中では例えば上側の行)に属する反射電極10に接続されたTFT20と他方の行(図1中では例えば下側の行)に属する反射電極10に接続されたTFT20とを交互に有している。
このように配置すると、走査線32が選択される度に全ての信号線34に印加される表示信号電圧の極性を反転し、さらに次の垂直走査期間で同一反射電極10に印加される表示信号電圧の極性を反転させることよって、ドット反転駆動を実現することができる。すなわち、TFT20の千鳥配列とゲートライン反転駆動とを組み合わせるによって、実質的なドット反転駆動が実現される。すなわち、本実施形態1の液晶表示装置100は、従来のゲートライン反転駆動用の回路構成でドット反転駆動を行うことができる。
なお、ここでは簡単のために、「信号線34に印加する表示信号電圧の極性」という表現をしたが、現実に反転されるべきは、「信号線34に接続された画素電極10で駆動される「液晶層に印加する電圧の極性」であり、「対向電極の電位を基準とした画素電極の電位の極性」ということになる。以下でも、簡単のために、「画素電極10に印加される表示信号電圧」を「液晶層に印加される電圧」と同様に用いることがある。
TFTの千鳥配列を有する本実施形態1の液晶表示装置100と従来のTFT配列の液晶表装置について、中間調を表示した状態で、フリッカが視認されない対向ずれ量を調べた結果を表1に示す。画素ピッチは、いずれも、60μm×RGB×180μmとした。
従来の配列の液晶表示装置については、70Hz駆動ですら、約250mVの対向ずれが生じると、フリッカが視認された。また、書き換え周波数を5Hz程度まで低下させた場合には、対向ずれ量が約30mV程度でも走査線1ライン毎の濃淡が視認されてしまう。しかも書き換え周期(垂直走査周期)が200msと比較的遅いので、垂直走査周期で濃淡の線が交互に入れ替わる様子が目視で認識されてしまう。
これに対し、千鳥配列を採用した本発明の液晶表示装置100では、例えば5Hzの周期で書き換えを行った場合に、150mVを超える対向ずれが生じるとフリッカが視認されるが、縦横ともに隣接画素の極性が異なるために縞模様となっては現れず、画面全体のザラツキ感および明暗のわずかな周期的繰返しとして現れるに過ぎなかった。このように、表示品位に影響を与える対向ずれ量は、約150mV程度なので、量産レベルでも調整可能範囲内にあり、オフセット電圧の調整によって表示上の不具合の発生を回避できる。
このように、TFTの千鳥配列とゲートライン反転駆動とを組み合わせることによって、低周波駆動を行ってもフリッカが視認されない低消費電力で且つ、高品位の表示が可能な液晶表示装置が得られる。
液晶表示装置100では、走査線32に対してTFTを千鳥配列しゲートライン反転駆動した場合を例示したが、図2に示す液晶表示装置200のように信号線34に対してTFT20を千鳥状に配列し、ソースライン反転駆動を行っても、実質的なドット反転駆動を実現することができる。図2に示した液晶表示装置200では、ある信号線34に接続されたTFT20は、その信号線34に隣接する一対の列に属する反射電極10のうちの一方の列(図2中では例えば左側の列)に属する反射電極10に接続されたTFT20と、他方の列(図2中では例えば右側の列)に属する反射電極10に接続されたTFT20とを交互に有している。
このように配置すると、それぞれの垂直走査期間内では隣接する信号線34に印加される表示信号電圧の極性を互いに逆にし、且つ、次の垂直走査期間では、それぞれの信号線34に印加される表示信号電圧の極性を反転するように駆動することによって、ドット反転駆動を実現することができる。すなわち、TFT20の千鳥配列とソースライン反転駆動とを組み合わせるによって、実質的なドット反転駆動が実現される。すなわち、本実施形態1の液晶表示装置200は、従来のソースライン反転駆動用の回路構成でドット反転駆動を行うことができる。
但し、ソースライン反転駆動では、対向電極は直流駆動されるので、液晶層に印加される駆動電圧の振幅は、信号線34から供給される表示信号電圧の振幅によって与えられ無ければならず、対向電極の電圧と信号線34の表示信号電圧との差が液晶層に印加される駆動電圧の振幅となるゲートライン反転駆動に比べて、表示信号電圧の振幅を大きくする必要がある。すなわち、ソースドライバの駆動回路には高い耐圧が要求されるので、ソースライン反転駆動は、ゲートライン反転駆動よりも消費電力が大きく、ゲートライン反転駆動の方が好ましい。
上述したように、TFTの千鳥配列とライン反転駆動とを組み合わせることによって、低周波駆動を行ってもフリッカが視認されない高品位の表示を実現することができる。
しかしながら、図1および図2に示したように、反射電極(画素電極)10とTFT20との配置関係を一定に保ったまま千鳥配列を形成すると、隣接する2つの反射電極10の配置が互いに異なる。例えば、上記図1の場合は、隣接する2つの反射電極10の一方は、他方を180°回転した配置となっている。図2の場合、2つの反射電極10の一方は、他方を信号線34を鏡映軸として鏡映操作したものになる。従って、これらの図1および図2に示されているように180°回転および鏡映操作に対して対称性を有していないと、反射電極10の配置がTFT20の千鳥配列にともなって一定の配置からずれることになる。その結果、反射電極10の不規則な配列(すなわち画素の不規則な配列)がギザギザの線として視認されることがある。これは、書き換え周波数が45Hz以下の場合に顕著となる。
これを防止するためには、互いに合同な形状の反射電極10を行方向および列方向に実質的に一直線状に配置することによって解決することができる。すなわち、全ての反射電極10の形状を互いに合同な形状とし、行方向への並進操作によって実質的に互いに重なり、且つ、列方向への並進操作によって実質的に互いに重なるように配置すればよい。反射電極10が完全に一直線状に配置されていない場合でも、反射電極10の幾何学的な重心が行および列方向に実質的に一直線状に配置されていればギザギザとして視認されにくい。
図1および図2に示した液晶表示装置100および200では、反射電極10はTFT20を覆わないように矩形の一部が欠けた形状を有しているが、例えば、TFT20を覆う矩形の反射電極とすることによって、45Hz以下の低周波駆動を行ってもギザギザを視認されないようにできる。
ここでは、反射型液晶表示装置を例示したが、画素電極10を半透過導電性膜(例えば、複数のピンホールを有するAl膜)で形成した半透過電極を有する半透過型液晶表示装置についても同様に適用でき、同様の効果を得ることができる。
(透過反射両用液晶表示装置)
次に、TFTの千鳥配列を採用した場合の画素電極10の配列の好ましい例を透過反射両用液晶表示装置(以下、「両用型液晶表示装置」という。)について説明する。以下で例示する両用型液晶表示装置は、それぞれの画素電極が反射電極領域と透過電極領域とを有し、且つ、それぞれの画素が反射電極領域で反射された光を用いて反射モードで表示を行う反射部と、透過電極領域を透過した光を用いて透過モードで表示を行う透過部とを有している。すなわち、ピンホールを有する金属膜を用いて画素電極を形成した半透過型液晶表示装置では、ピンホールを通過した光と金属膜で反射された光とを分離して視認されることがないのに対し、両用型液晶表示装置では、透過部と反射部とが分離して視認される。
図3(a)に示す本発明による両用型液晶表示装置300は、走査線32に対してTFT20を千鳥状に配列した構成を有しており、図1に示した液晶表示装置100と同様に、ゲートライン反転駆動によって、実質的にドット反転駆動される。両用型液晶表示装置300の画素電極10は、反射電極領域10aと透過電極領域10bとを有しており、透過電極領域10bは、互いに合同な形状を有し、行方向(ピッチPx)への並進操作によって実質的に互いに重なり、且つ、列方向(ピッチPy)への並進操作によって実質的に互いに重なるように配置されている。すなわち、透過電極領域10bは行方向および列方向に一直線状に配列されている。
図3(b)は、従来の一般的な設計手順に従って得られる千鳥配列を有する液晶表示装置300’を示しており、TFT20と画素電極10との配置関係が一定に保たれている。液晶表示装置300’では、透過電極領域10bが行方向に沿って不規則に配置され、互いに隣り合う透過電極領域10b間における重心のずれは約Py/2であり、行方向ピッチPxよりも大きいので、透過モードの表示においてギザギザとして視認される。また、図示した例では、画素電極10は反射電極領域10aに包囲された唯一の透過電極領域10bを有するので、透過電極領域10bの幾何学的な重心の不規則な変化は、反射電極領域10aの幾何学的な重心の変化をもたらすので、反射モードの表示においてもギザギザが視認される。
これに対し、図3(a)に示した液晶表示装置300は、透過電極領域10bは行方向に沿って一直線に配置されているので、透過モードの表示がギザギザに視認されることがない。なお、行方向に沿った重心の変動幅(変動方向は列方向)が行方向のピッチの半分以下であれば視認されにくくすることができる。勿論、透過電極領域10bの幾何学的な重心が一直線状に配列されていることが好ましく、例示したように、互いに合同な形状を有する透過電極領域10bが一直線状に配列されていることがさらに好ましいことは勿論である。
両用型液晶表示装置、特に反射電極領域10aに包囲された唯一の透過電極領域10bを有する液晶表示装置においては、透過電極領域10bの配置が表示品位に影響を与えやすいので、透過電極領域10bが上記の関係を満足することが好ましい。勿論、反射電極領域10aも上記の関係を満足することが好ましいことは言うまでも無い。
透過電極領域10bおよび/または反射電極領域10aの不規則な配置がギザギザとして視認される問題は、書き換え周波数が45Hz以下の低周波駆動において顕著となるが、60Hz以上の駆動において表示品位の低下を招くので、低周波駆動される液晶表示装置に限られず、TFTの千鳥配列を有する両用型液晶表示装置について上記の効果を得ることができる。また、上述した液晶表示装置100と同様に、低周波駆動を行っても、フリッカが視認されにくく高品位の表示を提供することができる。
次に、図4および図5を参照しながら、両用型液晶表示装置300の構造をさらに説明する。液晶表示装置300の模式的な断面図を図4に示し、その上面図を図5に示す。図4は、図5中のIV−IV線に沿った断面図に相当する。
液晶表示装置300は、2枚の絶縁性基板(例えばガラス基板)11と12と、これらの間に設けられた液晶層42とを有している。
絶縁性基板11の液晶層42側には、カラーフィルタ18および対向電極(共通電極)19が形成されている。さらに、絶縁性基板11の上面には、入射光の状態を制御するための位相差板15、偏光板16、および反射防止膜17がこの順で設けられている。反射防止膜17は、省略しても良い。また、絶縁性基板11の液晶層42側の最表面には、配向膜(不図示)が設けられている。絶縁性基板12の外側にも位相差板および偏光板、さらにバックライト(いずれも不図示)が設けられている。
絶縁性基板12上の液晶層42側には、TFT20と、走査線32と、信号線34と、走査線32および信号線34とTFT20を介して接続された画素電極10が形成されている。画素電極10は、反射電極領域10aと透過電極領域10bとを有している。
TFT20は、走査線32の一部として形成されたゲート電極32aと、それを覆うように形成されたゲート絶縁膜21と、その上に形成された半導体層(例えばアモルファスシリコン層)22と、これらの上に形成されたソース電極24およびドレイン電極25とを有している。半導体層22とソース電極24およびドレイン電極25との間には、コンタクト層23が形成されている。ソース電極24は、ITO層24aとTa層24bとの2層構造を有し、これは、信号線34と一体に形成されている。ドレイン電極25も同様に、ITO層25aとTa層25bとの2層構造を有し、ITO層25aの延長部分は、透過電極領域10bおよび補助容量電極35を形成している。
TFT20を覆うように絶縁膜(例えばSiN膜)26および層間絶縁膜(感光性樹脂膜)27が形成されており、層間絶縁膜27の表面の一部には微細な凹凸が形成されている。層間絶縁膜27の上に形成されている反射電極(反射電極領域10aに対応)29は、層間絶縁膜27の凹凸を反映した表面形状を有しており、入射光を適度に拡散反射する。この反射電極29は、Mo膜29a上にAl膜29bが形成された2層構造を有している。反射電極29は、絶縁膜26および層間絶縁膜27に形成された開口部27aとコンタクトホール27bとにおいて、ITO層25aと接触している。開口部27a内の反射電極29が形成されていない領域が透過電極領域10bとして機能する。
図5に示したように、任意の1本の走査線32に接続されたTFT20は、その走査線32の上部の行に属する画素電極10に接続されたTFT20と、その走査線32の下部の行に属する画素電極10に接続されたTFT20とを交互に有している。従って、TFT20と画素電極10の透過電極領域10bの幾何学的重心との距離は、交互に異なるように配置されており、この構成によって、透過電極領域10bが行方向に沿って上記の条件を満足するように規則的に配列されている。
反射電極29(反射電極領域10a)と対向電極19との間の液晶層42によって反射モードの表示が行われ、透過電極領域10bと対向電極19との間の液晶層によって透過モードの表示が行われる。透過モードで表示を行う透過部(透過領域)の液晶層42の厚さは、反射モードで表示を行う反射部(反射領域)の液晶層42の厚さよりも、概ね層間絶縁膜27の厚さ分だけ大きい。このような構造を有することによって、透過モードと反射モードの表示をそれぞれ最適化することができる。勿論、透過部の液晶層42の厚さが反射部の液晶層42の厚さの2倍であることが好ましい。
液晶表示装置300は、画素電極10と対向電極19とこれらの間の液晶層42とによって形成される液晶容量CLCと電気的に並列に接続された補助容量CCSを有している。補助容量は、走査線32と同一工程で形成される補助容量配線33と、ゲート絶縁膜21と、ゲート絶縁膜21を介して補助容量配線33と対向する位置に形成されているITO層25a(補助容量電極)とで形成されている。補助容量CCSは、画素開口率を実質的に低下させないように、反射電極29の下部に形成されていることが好ましい。
また、補助容量を設けることによって、対向電圧のずれを小さくできるので、フリッカの発生を更に抑制することができる。大きな容量を有する補助容量を形成しフリッカの発生を抑制するという観点からは、補助容量CCSの値は大きい方が好ましい。ここでは、反射電極領域10aの面積を画素電極10の面積の60%とし、書き換え周波数を5Hzとしたときに画素の充電率(電圧保持率)として99%得るために、補助容量CCSの値は0.96pFとした。この補助容量CCSの値の液晶容量CLCの値0.48pFに対する割合は、2.00である。上述した液晶表示装置100および200についても同様に補助容量CCSを設けることが好ましい。
なお、両用型液晶表示装置300は走査線32に対してTFT20を千鳥状に配列した例を示したが、液晶表示装置200のように信号線34に対してTFT20を千鳥状に配列してもよい。また、両用型液晶表示装置における画素電極の配置は上記の例に限られず、例えば、図6に示すように、画素電極10の透過電極領域10bを透過電極領域10b’と10b”に分割してもよい。勿論、透過電極領域10bを分割する数は3以上でも良い。この場合、透過電極領域10b’および10b”を含む透過電極領域10bが全体として上記条件を満足することが好ましく、透過電極領域10b’および10b”のそれぞれが上述の条件を満足するように配置されることがさらに好ましい。
両用型液晶表示装置300における各構成要素の構造や材料は上記の例に限られず、公知の種々の構造および材料を用いることができる。さらに、TFT20に換えてFETなどの他の3端子素子をスイッチング素子として用いることができる。また、両用型液晶表示装置300の製造方法も公知のプロセスで実行することができる(例えば、特開2000―305110号公報参照)。
(低周波駆動回路)
次に、低周波駆動を実行するための回路構成の好ましい実施形態を説明する。
図7に本実施形態1の液晶表示装置1のシステムブロック図を示す。液晶表示装置1は、上記の液晶表示装置100、200および300を代表している。
液晶表示装置1は、液晶パネル2と低周波駆動回路8とを有している。液晶パネル2は、上述した液晶表示装置100、200および300を例示して説明した構成を備えている。低周波駆動回路8は、ゲートドライバ3、ソースドライバ4、コントロールIC5、画像メモリ6、および同期クロック発生回路7を有している。
走査信号ドライバとしてのゲートドライバ3は液晶パネル2の各走査線32に、選択期間と非選択期間とのそれぞれに応じた電圧の走査信号を出力する。データ信号ドライバとしてのソースドライバ4は液晶パネル2の各信号線34に、選択されている走査線32上にある画素電極のそれぞれに供給する画像データを表示信号として交流駆動で出力する。コントロールIC5は、コンピュータなどの内部にある画像メモリ6に蓄えられている画像データを受け取り、ゲートドライバ3にゲートスタートパルス信号GSPおよびゲートクロック信号GCKを配信し、ソースドライバ4にRGBの階調データ、ソーススタートパルス信号SP、およびソースクロック信号SCKを配信する。
周波数設定手段としての同期クロック発生回路7は、コントロールIC5が画像メモリ6から画像データを読み出すための同期クロックや、出力するゲートスタートパルス信号GSP、ゲートクロック信号GCK、ソーススタートパルス信号SP、およびソースクロック信号SCKを生成するための同期クロックを発生する。本実施の形態では、上記各信号を液晶パネル2の画面の書き換え周波数に合わせるための、同期クロックの周波数設定をここで行うようにしている。ゲートスタートパルス信号GSPの周波数は上記書き換え周波数に相当し、同期クロック発生回路7では少なくとも1つの書き換え周波数を30Hz以下に設定することができ、また、30Hz以上をも含めて任意の複数通りの書き換え周波数を設定することができるようになっている。
同図では、同期クロック発生回路7が外部から入力される周波数設定信号M1、M2に応じて書き換え周波数の設定を変えるようになっている。周波数設定信号の数は任意でよいが、例えばこのように2種類の周波数設定信号M1、M2があるとすると、表2に示すように書き換え周波数を4通りに設定することができる。
なお、書き換え周波数の設定はこの例のように同期クロック発生回路7に複数の周波数設定信号が入力されるようになっていてもよいし、同期クロック発生回路7に書き換え周波数調整用のボリュームや選択用のスイッチなどが備えられていてもよい。勿論使用者が設定しやすいように液晶表示装置1の筐体外周面に書き換え周波数調整用のボリュームや選択用のスイッチなどが備えられていてもよい。同期クロック発生回路7は少なくとも外部からの指示に応じて書き換え周波数の設定が変えられる構成であればよい。あるいは、表示する画像に合わせて自動で書き換え周波数が切り換わるように設定することも可能である。
ゲートドライバ3は、コントロールIC5から受け取ったゲートスタートパルス信号GSPを合図に液晶パネル2の走査を開始し、ゲートクロック信号GCKに従って各走査線32に順次選択電圧を印加していく。ソースドライバ4は、コントロールIC5から受け取ったソーススタートパルス信号SPを基に、送られてきた各画素の階調データをソースクロック信号SCKに従ってレジスタに蓄え、次のソーススタートパルス信号SPに従って液晶パネル2の各信号線34に階調データを書き込む。
上述した補助容量CCSを備える構成の液晶パネル2(例えば液晶表示装置300の液晶パネル)における、1画素についての等価回路を図8(a)、(b)に示す。図8(a)は、対向電極19と画素電極10とで液晶層42を挟持することにより形成した液晶容量CLCと、補助容量用電極パッドと補助容量配線33とでゲート絶縁膜21を挟持することにより形成した補助容量CCSとをTFT20に接続し、対向電極19および補助容量配線33を一定の直流電位とした等価回路である。図8(b)は、上記液晶容量CLCの対向電極19にバッファを介して交流電圧Vaを印加し、上記補助容量CCSの補助容量配線33にバッファを介して交流電圧Vbを印加するようにした等価回路である。交流電圧Vaと交流電圧Vbとは電圧振幅が等しく、位相が揃っている。従って、この場合は対向電極19の電位と補助容量配線33の電位とは互いに同位相で振動する。また、図8(a)のように液晶容量CLCと補助容量CCSとが並列に接続されている構成で、一定の直流電位に代えてバッファを介した共通の交流電圧を印加する場合もある。
これらの等価回路において、走査線32に選択電圧を印加してTFT20をON状態とし、信号線34から液晶容量CLCと補助容量CCSとに表示信号を印加する。次に、走査線32に非選択電圧を印加してTFT20をOFF状態とすることにより、画素は液晶容量CLCと補助容量CCSとに書き込まれた電荷を保持する。ここで、画素の補助容量CCSを形成する補助容量配線33を走査線32との間に容量結合を生じない位置に設けてあるので(例えば図5参照)、上記容量結合を無視して等価回路を図示している。この状態で同期クロック発生回路7により液晶容量CLCの電荷、すなわち液晶パネル2の画面を45Hz以下の書き換え周波数で書き換える設定を行えば、オンゲート構造で補助容量CCSを形成していた場合と異なり、走査線32の電位変動による液晶容量CLCの電極である画素電極10の電位変動は抑制される。
45Hz以下の低周波駆動とすることによって、走査信号の周波数が減少して走査信号ドライバの消費電力が十分に低減されるとともに、表示信号の極性反転周波数が減少し、データ信号ドライバ、図7の構成の場合はソースドライバ4の消費電力が十分に低減される。また、画素電極10の電位変動が抑制されることによって、チラツキのない安定した表示品位が得られる。
以上の構成の液晶表示装置1で低周波駆動を行った場合の走査信号波形、表示信号波形、画素電極10の電位、および反射電極29による反射光強度を図9(a)から(e)に示す。画面の書き換え周波数は60Hzの10分の1である6Hzとした。詳しくは、6Hzに相当する書き換え周期167msecのうち、走査線32の1本当たりの選択期間を0.7msec、非選択期間を166.3msecとした。信号線34に供給する表示信号を1走査信号ごとに極性を反転させ、かつ、1つの画素には書き換えごとに極性反転した表示信号が入力されるように駆動を行った。
図9(a)は、注目している画素の走査線32よりも1ライン上の走査線32に出力される走査信号波形を、図9(b)は注目している画素(自段)の走査線32に出力される走査信号波形を、図9(c)は注目している画素の信号線34に出力される表示信号波形を、図9(d)は注目している画素の画素電極10の電位を示す。図9(a)および(d)から分かるように、1ライン上の走査線32に選択電圧が印加されているときに、画素電極10の電位は安定している。このとき反射電極29からの反射光強度を測定したところ、図9(e)に示すように反射光強度の変化はほとんど確認されなかった。また、目視による評価の結果でも、チラツキがなく均一で良好な表示品位が得られることが確認された。画素電極10の透過電極領域10bを用いた透過モードの表示についても同様の結果が得られた。
次に、さらに液晶表示装置1の消費電力を測定したところ、画面の書き換え周期を16.7msec(書き換え周波数60Hz)として駆動したときに160mWであったのに対し、画面の書き換え周期を167msec(書き換え周波数6Hz)として駆動したときには40mWとなり、大きく低減することが確認された。
書き換え周波数を45Hz以下に設定する例として、図9では6Hzを挙げたが、書き換え周波数の好ましい範囲は0.5Hz以上45Hz以下である。
この理由を図10(a)および(b)を参照しながら説明する。図10(a)および(b)は、液晶層42に用いた液晶材料(メルク社製ZLI−4792)について、書き込み時間を一定(例えば100μsec)に固定したときの液晶電圧保持率Hrの駆動周波数(書き換え周波数)依存性を測定した結果である。図10(b)は図10(a)のうち駆動周波数が0Hz〜5Hzの領域を拡大した図である。
図10(b)から分かるように、液晶電圧保持率Hrは約97%となる1Hzあたりから低下し、約92%となる0.5Hzより低くなると急激に低下する。液晶電圧保持率Hrがあまり小さくなると、液晶層42やTFT20の漏れ電流に起因して画素電極10の電位が変動して明るさが変化し、チラツキが生じることになる。また、ここで議論している書き込みから1sec〜2sec後といった時間領域ではTFT20のOFF抵抗値は大きく変動することはない。従って、表示のチラツキは液晶電圧保持率Hrに大きく依存する。
このことから、書き換え周波数を45Hz以下としながら、下限を0.5Hzとして画素電極10の電位変動を十分に抑制する。これにより、十分な低消費電力化と確実な画素のチラツキ防止とを達成することができる。さらに好ましくは、書き換え周波数を15Hz以下として消費電力を極めて大きく低減しながら、下限を1Hzとして画素電極10の電位変動を極めて小さくなるように抑制する。これにより、極めて大きな低消費電力化と、より確実な画素のチラツキ防止とを達成することができる。
また、前述したように、同期クロック発生回路7は書き換え周波数を複数通りに設定可能である。従って、例えば静止画や動きの少ない画像を表示する場合には書き換え周波数を45Hz以下に設定して低消費電力化を図り、動画を表示する場合には書き換え周波数を45Hz以上に設定してスムーズな表示を確保するなど、表示する画像の状態に適した書き換え周波数の設定を行うことができる。このような複数の書き換え周波数のそれぞれを、15Hz、30Hz、45Hz、60Hzといったように最も低い書き換え周波数の整数倍の関係に設定すれば、全ての書き換え周波数に共通の基準同期信号を使用することができるのに加えて、書き換え周波数を切り換えた場合に供給する表示信号の間引きあるいは追加を簡単に行うことができる。さらに、この例のように15Hzの2倍の30Hz、また15Hzの4倍の60Hzといったように書き換え周波数のそれぞれを、最も低い書き換え周波数の2の整数乗倍の関係に設定すれば、最も低い周波数の論理信号を2の整数乗分の1で分周することにより周波数変換を行う通常の簡単な分周回路を用いて、書き換え周波数のそれぞれを生成することができる。
また、液晶表示装置1では、液晶パネル2の表示内容を異なる画像に更新する周期、すなわち各画素に異なる画像のデータを供給して表示状態の更新を行わせるための表示信号を供給する周期を決めるリフレッシュ周波数が設定される。書き換え周波数とリフレッシュ周波数との関係を以下のように特定することにより、液晶パネル2の特性を向上させることができる。
例えば、複数種類の書き換え周波数のうち少なくとも最も低いものをリフレッシュ周波数の2以上の整数倍に設定すれば、そのように設定した書き換え周波数では前の更新から次の更新までの同一の表示内容に対して、書き換え周波数に基づいた各画素の選択回数が2以上の整数回となる。リフレッシュ周波数を3Hzとすれば、図9の例において6Hzの書き換え周波数はリフレッシュ周波数の2倍となるので、前の更新から次の更新までに同じ画素に正極性の表示信号と負極性の表示信号とを1回ずつ供給することができる。従って、同一の表示内容に対して、交流駆動によって画素電極10の電位の極性を反転させて表示することができ、液晶パネル2に用いられる液晶材料の信頼性が向上する。
また、同期クロック発生回路7を、リフレッシュ周波数の変更に合わせて、少なくとも最も低い書き換え周波数を、変更後のリフレッシュ周波数の2以上の整数倍に変更することができるようにすれば、リフレッシュ周波数を変更しても、そのように設定を変更した書き換え周波数では液晶パネル2での同一の表示内容に対して、交流駆動によって画素電極10の電位の極性を反転させて表示することができる。従って、液晶パネル2に用いられる液晶の信頼性を容易に維持することができる。例えば、リフレッシュ周波数を3Hzから4Hzに変更した場合、6Hz、15Hz、30Hz、45Hzといった書き換え周波数を、8Hz、20Hz、40Hz、60Hzといった書き換え周波数に変更することができるようになっている。さらに、上記条件を満たした状態で最も低い書き換え周波数を6Hzのように2以上の整数に設定すれば、リフレッシュ周波数が1Hz以上となって画面の表示内容を1秒間に1回以上更新することができるので、液晶パネル2の画面に時計を表示する場合に、秒表示を正確に1秒間隔で行うことができる。
以上に述べたように、本実施の形態の液晶表示装置1によれば、スイッチング素子を有する構成において、良好な表示品位を保ったまま低消費電力化を達成することができる。また、液晶表示装置1として、反射モードで表示を行うことができる液晶表示装置を用いることによって、45Hz以下の駆動による低消費電力化の割合が大きくなる。
本発明の液晶表示装置に用いられる低周波駆動のための回路構成は、上記の例に限られず、コントローラやソースドライバに、フレームメモリを設け、クロック周波数を低くすることによっても実現できる。
このように、本発明の実施形態1によると45Hz以下の低周波駆動を行ってもフリッカが視認されない、低消費電力で且つ高品位の表示が可能な液晶表示装置が提供される。また、本発明による両用型液晶表示装置は、スイッチング素子の千鳥配列を採用した構成において、少なくとも透過電極領域のギザギザが視認されることがなく、高品位の表示を行うことができる。
(実施形態2)
本発明の実施形態2による液晶表示装置は、両用型液晶表示装置であって、反射部の電極電位差と透過部の電極電位差とがほぼ等しくなるようにしたものである。ここで、電極電位差とは、表示用の強制的な電圧を印加しない状態で液晶層に印加される直流電圧をいう(以下同じ)。実施形態2による両用型液晶表示装置においては、反射部と透過部とにおける電極電位差がほぼ等しいので、両用型液晶表示装置に特有の電極電位差に起因するフリッカの発生が抑制される。
まず、図14および図15を参照しながら、公知の両用型液晶表示装置における、電極電位差に起因するフリッカの問題を説明する。
図14に示す両用型液晶表示装置500は、酸化インジウムと酸化スズとを主成分とする柱状結晶質の酸化物(以下「ITO」という)から形成された透明共通電極512を有する対向側基板510と、各々が画素P’を規定するマトリックス状に配置された複数の画素電極525を有する素子側基板520と、それらの両基板の間に狭持された液晶層530とを備えている。各画素電極525は、画素P’の反射部R’を規定する反射電極(反射電極領域)524と、画素P’の透過部T’を規定する透明電極(透過電極領域)522とで構成されている。反射電極524はAl層から形成されており、透明電極522はITO層から形成されている。すなわち、反射部R’の液晶層は、Al層とITO層とに挟まれており、透過部T’の液晶層は、ITO層の間に挟まれている。 反射部R’では、対向側基板510の透明共通電極512と素子側基板520の反射電極524との間に電圧が印加され、対向側基板510から入射した外部光が素子側基板520の反射電極524で反射して対向側基板510から出射することにより表示が行われる。一方、透過部T’では、対向側基板510の透明共通電極522と素子側基板520の透明電極522との間に電圧が印加され、液晶パネル後方に配置されたバックライト光源からの補助光が透過して対向側基板510から出射することにより表示が行われる。なお、反射電極524は、表面に微細な凹凸を有する層間絶縁膜523上を被覆するように形成されており、その結果、反射電極524の表面も微細な凹凸を有し、それによって反射光の進行方向が制御されている。すなわち、反射電極524は、適度な指向性を持って反射する。
両用型の液晶表示装置500の画素電極525は、上述したように、反射部R’の反射電極524と透過部T’の透明電極522とが異なる電極材料(仕事関数が異なる材料)で形成されている。その結果、図15に示すように、各々の電極電位が異なるために反射部R’と透過部T’のそれぞれで生じる電極電位差(表示用の強制的な電圧を印加しない状態で液晶層に印加される直流電圧)が異なるものとなる(図中、電極電位差AおよびB)。
従って、それぞれの電極に同じ電圧を印加しても、画素P’内の反射部R’と透過部T’とにおいて、それぞれの液晶層に印加される電圧が異なるものとなって、1つの画素P’内で均一な電圧が印加されない。すなわち、透過部T’における引込み電圧および電極電位差Aを相殺するようにオフセット電圧を設定しても、反射部R’には電極電位差B−電極電位差Aに相当する「対向ずれ」が存在し、その結果、フリッカが観察されることがある。
なお、反射部R’における電極電位差Bは、液晶層を介して互いに対向する電極を構成している材料の電極電位(または仕事関数)によって大きく影響されるが、たとえ同じ材料を用いても、電極の液晶層側表面に形成される配向膜の材料などが異なると、電極電位差が発生することがある。従って、ITO層間に液晶層が挟まれた構成を有する透過部T’の電極電位差Aは電極電位差Bよりも小さいものの、一般的にゼロではない。
以下、図11および図12を参照しながら、本発明の実施形態2による両用型液晶表示装置400の構成と動作を説明する。図11および図12は、液晶表示装置400の1つの画素Pに対向する構成を模式的に示す図であり、図11は、図12中のXI−XI線に沿った断面図に対応する。
液晶表示装置400は、相互に対向した対向側基板(他方の基板)410および素子側基板(一方の基板)420と、それらの間に狭持された液晶層430と、を備えている。
対向側基板410は、ガラス基板で対向側基板本体411が形成されており、その基板外側には、入射光の状態を制御するための位相差板、偏光板、および反射防止膜(いずれも図示せず)が順に設けられている。一方、基板内側には、カラー表示用のRGBのカラーフィルタ(図示せず)、ITO等からなる透明共通電極412およびラビング処理された配向膜(図示せず)が順に設けられている。
素子側基板420は、ガラス基板で素子側基板本体421が形成されており、その基板内側には、相互に並行して延びるように複数本のゲートバスライン(走査線)427が設けられている。また、その上を覆うように絶縁層(ゲート絶縁層;図示せず)が設けられている。その絶縁層上には、ゲートバスライン427が延びる方向と直交する方向に相互に並行して延びるように複数本のソースバスライン(信号線)428が設けられている。ゲートバスライン427とソースバスライン428との各交差部には、3端子の非線形スイッチング素子であるTFT素子429が設けられている。TFT素子429のゲート電極429aはゲートバスライン427に接続されており、ソース電極429bはソースバスライン428に接続されている。TFT素子429のドレイン電極429cは絶縁層上に設けられた例えばITO(仕事関数が約4.9eV)からなる略矩形の透明電極422に接続されている。
透明電極422上には、表面に微細な凹凸が形成された層間絶縁膜423が設けられており、その表面を被覆するように、例えばAl(仕事関数が約4.3eV)からなる反射電極424が設けられている。反射電極424には矩形状に開口して透明電極422が露出した部分があり、その開口周縁がコンタクト部424aとなって透明電極422と反射電極424とが電気的に接続されている。
露出された透明電極(透過電極領域)422が透過部Tを規定し、透明電極422を取り囲むように配置された反射電極(反射電極領域)424が反射部Rを規定する。すなわち、透明電極422と反射電極424により1つの画素電極425が構成され、また、反射部Rおよび透過部Tにより1つの画素Pが構成されている。
本実施形態による液晶表示装置400においては、反射電極424の表面はInZnOx(酸化インジウム(In2O3)と酸化亜鉛(ZnO)とを主成分とする酸化物、仕事関数が約4.8eV)からなる非晶質透明導電膜426で被覆されており、それによって、反射部Rにおいて対向側基板410の透明共通電極412および素子側基板420の非晶質透明導電膜426間で液晶層430に印加される電圧である電極電位差と、透過部Tにおいて対向側基板410の透明共通電極412および素子側基板420の透明電極422間で液晶層430に印加される電圧である電極電位差と、がほぼ等しくされている。具体的には、反射電極424を被覆する非晶質透明導電膜426の仕事関数と透明電極422の仕事関数との差が0.3eV以内となるようにされている。なお、Alの反射電極424をInZnOxで被覆したものとすれば、Alエッチング用の弱酸のエッチング液で両者を同時にエッチングにより形成させることができる。
素子側基板420の最上層である画素電極425上には、ラビング処理された配向膜(図示せず)が設けられている。
液晶層430は、電気光学特性を有するネマチック液晶等からなる。
以上の構成の液晶表示装置400は、対向側基板410から入射した外部光を反射部Rの反射電極424で反射させて対向側基板410から出射させると共に、素子側基板420後方に設けられたバックライト(図示せず)の補助光を素子側基板420から入射して透過部Tの透明電極422を透過させて対向側基板410から出射させるものであって、各画素P毎に両基板の電極間に印加する電圧を制御することで液晶層430の液晶の配向状態を変化させ、それによって対向側基板410から出射される光の量を調節して表示を行うものである。
上記構成の両用型の液晶表示装置400によれば、反射電極424が非晶質透明導電膜426で被覆されていることにより、反射部Rの電極電位差と透過部Tの電極電位差とがほぼ等しくなるようにされ、すなわち、反射部Rに対応した液晶層430の部分と透過部Tに対応した液晶層430の部分とで印加される直流電圧がほぼ等しくされているので、表示動作において、これらの電極に電圧が印加されても1つの画素P内でほぼ均一な電圧が印加され、それによって良好な表示品位を得ることができる。
上述したように、図14に示した従来構造の両用型液晶表示装置500では、画素電極525における反射電極524の電極材料の仕事関数と透明電極522の電極材料の仕事関数とが大きく異なるため(例えば、AlとITOの場合、仕事関数の差は0.6eV以上)、反射部R’と透過部T’とで電極電位差が大きく異なる。一方、オフセット電圧は、全画素P’に対して1つしか設けることができない。従って、透過部T’および反射部R’のどちらか一方については、電極電位差および引込み電圧を相殺して、液晶層530に実効値として直流電圧成分が印加されないように、最適オフセット量を設定できるが、透過部Tおよび反射部Rのうち他方については、液晶層530に実効値として直流電圧成分が印加される。すなわち、その部分で液晶層530に印加される交流電圧の波形が非対称になる。この状態での表示を目視にて確認すると、フリッカが発生して表示品位が著しく低いものとなる。また、直流電圧成分が長時間印加されると液晶材料の信頼性にも悪影響が及ぼされる。
これに対し、本実施形態2の液晶表示装置400では、反射電極424を被覆する非晶質透明導電膜(ここではInZnOx)426の電極電位と透明電極(ここではITO)422の電極電位とがほぼ等しく、それによって反射部Rの電極電位差と透過部Tの電極電位差とがほぼ等しくされているので、この電極電位差および引込み電圧を1つのオフセット電圧にて相殺し、液晶層430に実効的な直流電圧成分が印加されることを防止することが可能となり、反射部Rおよび透過部Tの両方ともにフリッカが観察されない良好な表示品位を得ることができる。また、液晶層430に直流電圧が印加されないので、液晶材料の信頼性の低下を防止することもできる。
また、本実施形態の液晶表示装置400では、反射電極424を被覆する非晶質透明導電膜426の仕事関数と透明電極422の仕事関数との差が0.3eV以内とされているので、反射電極424を被覆する非晶質透明導電膜426の電位と透明電極422の電極電位とがほぼ等しいことによる作用効果が十分に得られることとなる。
以下に、非晶質透明導電膜と透明電極との仕事関数差を変更した液晶表示装置について行った試験について説明する。Alの反射電極を被覆する非晶質透明導電膜をInZnOxとし、且つ透明電極をITOとし、透明電極の成膜条件を変更することにより非晶質透明導電膜と透明電極との仕事関数差をそれぞれ0.1eV、0.2eV、0.3eVおよび0.4eVとした本実施形態と同様の構成の4つの液晶表示装置を準備し、各々、反射部の液晶層に直流電圧成分が印加されないようにオフセット電圧を設定したときの表示品位を目視にて評価した。駆動周波数は、一般的な60Hzとした。その結果を表3に示す。
この試験結果では、非晶質透明導電膜と透明電極との仕事関数差が0.3eV以下の場合、反射部および透過部のいずれにおいても輝度変化が無く良好な表示品位であったのに対し、仕事関数差が0.4eVの場合、透過部で若干のフリッカの発生があった。これは、この仕事関数差が0.3eV以下であれば、反射部および透過部のそれぞれの電極電位差を1つのオフセット電圧の印加で相殺することができる程度に両方の電極電位差がほぼ等しくなるのに対し、仕事関数差が0.4eVでは、反射部および透過部のそれぞれの電極電位差の差がやや大きいために、それらの電極電位差を1つのオフセット電圧の印加で相殺することが困難となるためであると考えられる。従って、非晶質透明導電膜と透明電極との仕事関数差は、0.4eVより小さいことが好ましく、0.3eV以下であることがさらに好ましい。
さらに、本実施形態の液晶表示装置400では、反射電極424を被覆する非晶質透明導電膜426の膜厚は1nm以上20nm以下に設定してある。非晶質透明導電膜426の膜厚を上記範囲とすることによって、均一な膜厚の形成が可能であると共に、良好な表示品位を得ることができる。反射電極424を非晶質透明導電膜426で被覆することにより反射部Rと透過部Tとで電極電位差をほぼ等しいものとすることができるが、膜厚が数百nmもの非晶質透明導電膜426を形成すると、非晶質透明導電膜426による光吸収により反射電極424での反射光が弱いものとなり、また、非晶質透明導電膜426表面で反射する光と反射電極424表面で反射する光との干渉により出射光が着色され、表示品位が低いものとなってしまう。
以下に、非晶質透明導電膜の膜厚を変更した液晶表示装置について行った試験について説明する。Alの反射電極を被覆する非晶質透明導電膜をInZnOxとし、且つ透明電極をITOとし、非晶質透明導電膜の膜厚をそれぞれ5nm、10nm、15nm、20nmおよび30nmとした本実施形態と同様の構成の5つの液晶表示装置を準備し、各々の波長と反射率との関係について調べた。その結果を図13に示す。参考のために、非晶質透明導電膜を設けていない、すなわち、膜厚0nmのデータも示している。
図13によれば、非晶質透明導電膜の膜厚が厚くなるほど反射率が低くなり、また、光の波長が短くなるほど反射率が低くなるということが分かる。
両用型の液晶表示装置では、反射電極の色味が表示品位に直接影響するため、反射電極上の非晶質透明導電膜の膜厚制御が重要となる。上記の5つの液晶表示装置について、各々の表示品位を目視にて確認した。その結果を表4に示す。
この試験結果では、非晶質透明導電膜の膜厚が20nm以下の場合、膜厚が薄ければ薄いほど着色が少なく表示品位が良好であったのに対し、膜厚が30nmの場合、表示に著しい着色が確認された。これは、この膜厚が20nm以下であれば、光の干渉の影響が小さいのに対し、膜厚が30nmでは、その影響が大きいためであると考えられる。従って、非晶質透明導電膜の膜厚は、30nmより薄いことが好ましく、20nm以下とすることがさらに好ましい。なお、非晶質透明導電膜の膜厚が1nmであっても、反射部と透過部とで電極電位差をほぼ等しくする効果が奏されることは確認しているが、膜厚がそれよりも薄くなるとスパッタリングによる膜厚のコントロールが困難となる。従って、非晶質透明導電膜の膜厚は1nm以上であることが好ましい。
ところで、両基板間への液晶材料の注入工程時やシール樹脂材料からの流出等により液晶層430に不純物(イオン性不純物)が混入する場合がある。交流駆動の液晶表示装置の場合、両基板の電極の電極材料が相違するとそれらの間に電極電位差が発生し、不純物が静電引力によりいずれかの基板に吸着され、そして、表示領域に不純物が吸着していない部分と吸着した部分とが生じ、前者では液晶層に所定の電圧が印加されるのに対し、後者では液晶層に所定の電圧が印加されないこととなる。この場合、各部分ごとに異なるオフセット電圧を設定する必要が生じるが、オフセット電圧は1つしか設けることができないため、不純物が吸着した部分の表示にフリッカが発生する。このフリッカは、シール樹脂材料からの不純物の流出による影響が大きいために表示領域の周縁部において顕著に観察される。
しかしながら、本実施形態の液晶表示装置400においては、例えば、反射電極を被覆する非晶質透明導電膜426をInZnOx、透明電極422をITO、透明共通電極412をITOとすることによって、画素電極425の電極電位と透明共通電極412の電極電位とをほぼ等しくすれば、不純物の基板への吸着が抑えられ、それによって不純物の基板への吸着に起因するフリッカを抑止することができると共に高い表示品位を得ることができる。
なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、他の構成のものであってもよい。
例えば、本実施形態では、Alを用いて反射電極424を形成した例を示したがAgを用いても良く、また、Al/Mo等の積層構造としてもよい。また、透明共通電極412、透明電極422および非晶質透明導電膜426の材料として示したITOおよびInZnOxも単なる例示に過ぎず、他のものであってもよい。
また、本実施形態では、反射電極424を非晶質透明導電膜426で被覆したものとしたが、特にこれに限定されるものではなく、ITO等の結晶質の透明導電膜で被覆したものとしてもよい。
また、本実施形態では、スイッチング素子をTFT素子129としたが、特にこれに限定されるものではなく、2端子の非線形素子であるMIM素子(Metal Insulator Metal)を用いたものであってもよい。なお、MIMを用いる場合には、正および負の引込み電圧が生じ、互いに相殺する。従って、MIM型液晶表示装置では、その分だけオフセット電圧の設定値がTFT型と変わることになる。
また、本実施形態では、反射電極424を非晶質透明導電膜426で被覆することにより反射部Rの電極電位差と透過部Tの電極電位差とがほぼ等しくなるようにしたが、特にこれに限定されるものではなく、例えば、反射電極に表面処理(例えば、酸素プラズマ、UVオゾン等による表面処理)を施すことにより、反射電極の仕事関数を透明電極のものに近づけ、それによって反射部と透過部の電極電位差をほぼ等しくするようにしてもよい。また、反射電極および透明電極の両表面を厚さ0.4nm程度の金の薄膜で被覆することにより、反射電極および透明電極の仕事関数を同一のものにし、それによって反射部および透過部の電極電位差をほぼ等しくするようにしてもよい(なお、0.4nm程度の金の薄膜は透明電極の透過率に影響を及ぼさない)。また、反射電極上に所定の絶縁膜等を形成したり、あるいは、配向膜等の所定の有機材料を塗布することにより、反射電極の仕事関数(見掛け上の仕事関数)を透明電極のものに近づけ、それによって反射部および透過部の電極電位差をほぼ等しくするようにしてもよい。
(実施形態3)
次に、図16〜図20を参照しながら、本発明の実施形態3による液晶表示装置600の構成と動作を説明する。以下で例示する液晶表示装置600は、それぞれの画素が反射部と透過部とを有する両用型表示装置であって、反射部と透過部との電極電位の違いを電気的に補償できる構成を備えている点で、上述の液晶表示装置400と異なっている。
図16に液晶表示装置600の模式的な等価回路図を示し、図17(a)および(b)に液晶表示装置600の1画素の構成を示す。図17(a)は平面図であり、図17(b)は図17(a)中の17B−17B’線に沿った断面図である。
図16に示したように、液晶表示装置600は、一般的なアクティブマトリクス駆動方式の液晶表示装置と同じ回路構成を有している。
複数の走査端子602のそれぞれには、行方向に延びる、走査線としてのゲートバスライン604が接続されており、複数の信号端子606のそれぞれには、信号線としてソースバスライン608が接続されている。これら両バスライン604および608の交差部の近傍に、スイッチング素子としていTFT614が設けられている。TFT614のゲート電極(不図示)は走査線604に接続されており、ソース電極(不図示)は信号線608に接続されている。また、TFT614のドレイン側には、液晶容量(画素電極)612および補助容量(補助容量電極)616が接続されており、これらが画素容量610を構成している。補助容量616の補助容量対向電極は、補助容量バスライン(補助容量対向電極線)620に共通に接続されている。液晶容量612は、画素電極612と対向電極(628または629)と、これらの間に設けられた液晶層664によって構成されている(図17(a)および(b)参照)。
液晶表示装置600の1画素の構成を図17(a)および(b)を参照しながらさらに詳しく説明する。
液晶表示装置600の画素電極612は、反射電極領域651と透過電極領域652とを有している。画素電極612の周縁部において、反射電極領域651は、走査線604および信号線608の一部と重なっており、画素開口率の向上に寄与している。画素電極612と液晶層664を介して対向する対向電極は、反射電極領域651に対向する第1対向電極628と、透過電極領域652に対向する第2対向電極629とを有している。このように、反射部および透過部のそれぞれに対応して2系統の対向電極628および629が設けられていることによって、反射部と透過部との電極電位の違いを電気的に補償できる。この動作については、後に詳述する。
図17(b)を参照しながら、液晶表示装置600の断面構造を説明する。なお、図17(b)において、基板622および624のそれぞれの外側表面に設けられる偏光板や照明装置、あるいは位相差板などは、省略している。
基板622は、透明絶縁性基板(例えばガラス基板)であり、この上にTFT614のゲート電極636が形成されている。ゲート電極636上にゲート絶縁膜638が設けられており、ゲート絶縁膜638上に、ゲート電極636に重畳して半導体層640が設けられている。半導体層640の両端部を覆うようにn+Si層642および644が設けられており、左側のn+Si層642上にソース電極646が、右側のn+Si層644上にドレイン電極648が設けられている。ドレイン電極は画素部にまで延設されており、画素電極612の透過電極領域652としても機能する。また、補助容量バスライン620はゲート絶縁膜638を介してドレイン電極648との間で補助容量616(図16参照)を形成する。
走査線604と信号線608を含む、これらの上に層間絶縁膜650が設けられている。層間絶縁膜650上には、Al、Alを含む合金層、あるいはAl/Moなどの積層膜が画素電極612として設けられており、この部分が反射電極領域651となる。また、層間絶縁膜650の一部を取り除いた開口部が設けられており、この部分をコンタクトホールとして、TFT614のドレイン電極648が画素電極(反射電極領域651を構成する合金層)612に接続されている。層間絶縁膜650の開口部内に露出されたドレイン電極648の延設部が透過電極領域652となる。さらに、画素電極612上に必要に応じて配向膜654が形成されている。これらをまとめてアクティブマトリクス基板622Sとする。
一方、基板624は透明絶縁性基板(例えばガラス基板)であって、その表面にはカラーフィルタ層(不図示)と、透明導電膜からなる対向電極628および629と、配向膜660とが設けられている。これらをまとめて対向基板624Sとする。
基板624Sと基板622Sとは、スペーサ662で互いの間隔を保持され、周辺部にてシール部材で接着されている。
従来の液晶表示装置の対向電極は、表示領域の全体に亘る一枚の透明導電層(例えばITO層)によって形成されているが、液晶表示装置600は、上述したように、第1対向電極628および第2対向電極629の2系統の対向電極を有している。第1対向電極628および第2対向電極629は、それぞれ、図18に模式的に示すように、走査線604と平行な方向に櫛歯状にパターニングされており、基板周辺にてそれぞれまとめられ、2つの群をなし、それぞれに異なるコモン信号(「共通電圧」ともいう。)を入力できるように、電気的に分離されている。また、図17(a)に示したように、第1対向電極628と第2対向電極629は、アクティブマトリクス基板622Sと貼り合せた際に、反射電極領域651および透過電極領域652にそれぞれの群が対向するように配置される。
対向基板624Sとアクティブマトリクス基板622Sとを貼り合わされた後、対向電極628および629にコモン信号を入力するために、対向電極628および629はそれぞれコモン転移(トランスファ)631を介して、アクティブマトリクス基板622に設けられたコモン信号の入力用配線(不図示)に接続され、コモン信号入力用配線の入力端子632および633からそれぞれに対応するコモン信号が入力される。なお、コモン転移を設けずに、同じ信号を入力しても良い。
次に、図19(a)および(b)、ならびに図20を参照しながら、液晶表示装置600の動作を説明する。図19(a)および(b)は、液晶表示装置600の1画素の等価回路を示しており、(a)はTFT614がオンの状態を(b)はTFT614がオフの状態をそれぞれ示している。図20は、画素の駆動に用いられる信号波形(a)〜信号波形(e)を示している。
信号波形(a)は、走査線に入力されるゲート信号(走査信号)Vgを示し、信号波形(b)はソース信号(表示信号またはデータ信号)Vsを示す。信号波形(c)は対向電極に入力されるコモン信号(共通信号)Vcom(Vcom1およびVcom2)を示す。Vcomは、Vsと同一周期で極性が逆となっている。これは、液晶層に印加される電圧(|Vs−Vcom|)の大きさを確保しつつ、Vsの絶対値(振幅)を小さくし、耐圧の低い駆動回路(IC)を利用するためである。
TFT614がオンの状態にある期間に、画素電極に電圧Vp(=Vs)が印加され、画素(液晶容量Clcおよび補助容量Cs)には|Vs−Vcom|が印加されることによって、液晶容量Clcおよび補助容量Csには、図19(a)に示すように、それぞれQlcおよびQsの電荷が充電される。このとき、ゲート電圧Vgh(オン電圧)が印加されているTFT614のゲート・ドレイン間容量Cgdには電荷Qgdが充電されることになる。
TFT614がオフになると、図19(b)に示す状態に遷移する。すなわち、ゲート電圧Vglが印加されているTFT614のゲート・ドレイン間容量Cgdに充電されている電荷がQgd’に変化し、その影響を受けて、液晶容量Clcおよび補助容量Csの電荷がそれぞれQlc’およびQs’に変化し、画素電極の電位がVpからVp’に変化する。従って、TFT614がオンからオフに切替わると、図20の信号波形(d)および信号波形(e)に示すように、画素に印加される電圧Vlcは低下する。
この低下する電圧を引込み電圧(dV)といい、表示信号電圧Vsを正負に切替わるごとに発生し、フリッカの原因となる。この引込み電圧を相殺するようにオフセット電圧を設定し、コモン信号Vcomを引込み電圧分だけ表示信号電圧のセンターレベルより下げることによって、フリッカを防止しているのは上述の通りである。
両用型液晶表示装置においては、引込み電圧に加えて、反射部と透過部とにおける電極電位差の違いによってもフリッカが生じる。例えば、ITO層とAl層とに挟まれた反射部の液晶層には、ITO層の間に挟まれた透過部の液晶層に比べ、余分に200〜300mV程度の直流電圧がかかっていることになり、最適なオフセット電圧(対向電圧)が反射部と透過部とで異なる。
本発明の実施形態3による液晶表示装置600は、図17および図18を参照しながら説明したように、反射電極領域651と透過電極領域652とに対応して、互いに電気的に独立した対向電極628および629を有しているので、図20の信号波形(c)に、Vcom1およびVcom2として示したように、互いに異なるセンター値を有するコモン信号をそれぞれの対向電極628および629に供給することができる。
従って、図20の信号波形(d)および信号波形(e)に示すように、透過部の液晶層と反射部の液晶層に印加される実効電圧Vrmsを互いに等しく、かつ正負で対称にすることができるので、フリッカの発生を防止することができる。また、液晶層に直流電圧成分が印加され続けることによって生じる、液晶材料の劣化に起因する電圧保持率の低下を抑えることにもなり、パネル周辺部のシール近傍領域や、注入口付近での表示ムラやシミの発生を防ぐことが可能となる。
次に、図21から図23を参照しながら、実施形態3による他の液晶表示装置700の構成と動作を説明する。
液晶表示装置700は、上述した液晶表示装置600と同様に反射部と透過部とに対応した2つの対向電極(例えば櫛形状)を有する。液晶表示装置600と同様に、反射部に対応する対向電極を第1対向電極628、透過部に対応する対向電極を第2対向電極629とする(例えば図17および図18参照)。
液晶表示装置700は、さらに、反射電極領域と透過電極領域との各々に対応するTFTを有し、且つ、反射部および透過部に対応する2つの補助容量を有する。液晶表示装置700においても、反射部と透過部とのそれぞれに対応するオフセット電圧を設定することが可能で、1画素内で液晶層に印加される実効電圧Vrmsを均一にすることができ、フリッカの発生を抑制することができる。
図21に液晶表示装置700の1画素の構造を模式的に示す。画素710は、反射部710aと透過部710bとを有しており、反射電極(反射電極領域)718aと透明電極(透過電極領域)718bは、それぞれTFT716a、TFT716b、および補助容量(CS)722a、722bが接続されている。TFT716aおよびTFT716bのゲ−ト電極は共に走査線712に接続され、ソース電極は共通の(同一の)信号線714に接続されている。
補助容量722a、722bは、それぞれ補助容量配線724aおよび補助容量配線724bに接続されている。補助容量722aおよび722bは、それぞれ反射電極718aおよび透明電極718bに電気的に接続された補助容量電極と、補助容量配線724aおよび724bに電気的に接続された補助容量対向電極と、これらの間に設けられた絶縁層(不図示)によって形成されている。補助容量722aおよび722bの補助容量対向電極は互いに独立しており、それぞれ補助容量配線724aおよび724bから互いに異なる補助容量対向電圧が供給され得る構造を有している。反射部710aに対応する補助容量配線724aには、第1対向電極628と同じコモン信号が印加され、透過部710bに対応する補助容量配線724bには、第2対向電極629と同じコモン信号が印加される。
図22に液晶表示装置700の1画素分の等価回路を模式的に示す。電気的な等価回路において、反射部710aおよび透過部710bのそれぞれの液晶層を液晶層713aおよび713bとして表している。また、反射電極718aおよび透明電極718bと、液晶層713aおよび713bと、それぞれに対応する第1および第2対向電極によって形成される液晶容量をClca、Clcbとする。また、反射部710aおよび透過部710bの液晶容量Clca、Clcbにそれぞれ独立に接続されている補助容量722aおよび722bをCcsa、Ccsbとする。
反射部710aの液晶容量Clcaと補助容量Ccsaの一方の電極は、反射部710aを駆動するために設けたTFT716aのドレイン電極に接続されており、液晶容量Clcaおよび補助容量Ccsaの他方の電極は補助容量配線724aに接続されている。透過部710bの液晶容量Clcbと補助容量Ccsbの一方の電極は、透過部710bを駆動するために設けたTFT716bのドレイン電極に接続されており、液晶容量Clcbおよび補助容量Ccsbの他方の電極は補助容量配線724bに接続されている。TFT716aおよびTFT716bのゲート電極はいずれも走査線712に接続されており、ソース電極はいずれも信号線714に接続されている。
次に、図23を参照しながら、液晶表示装置700の動作を説明する。図23は液晶表示装置700を駆動するために用いられる各電圧の波形およびタイミングを模式的に示している。
(a)は、信号線714の信号波形Vs、(b)は補助容量配線724aの信号波形Vcsa、(c)は補助容量配線724bの信号波形Vcsb、(d)は走査線12の信号波形Vg、(e)は反射電極718aの信号波形Vlca、(f)は、透明電極718bの信号波形Vlcbをそれぞれ示している。また、反射部710aに対応する第1対向電極628および透過部710bに対応する第2対向電極629には、それぞれ、(b)の補助容量配線724aおよび(c)の補助容量配線724bの信号波形Vcsa、Vcsbと同じ入力信号が印加される。
まず、時刻T1のときVgの電圧がVgLからVgHに変化することにより、TFT716aとTFT716bが同時に導通状態(オン状態)となり、反射電極718aおよび透明電極718bに信号線714の電圧Vsが供給され、反射部710aおよび透過部710bの液晶容量ClcaおよびClcbが充電される。同様にそれぞれの補助容量CcsaおよびCcsbも充電される。
次に、時刻T2のとき走査線712の電圧VgがVgHからVgLに変化することにより、TFT716aとTFT716bが同時に非導通状態(オフ状態)となり、液晶容量ClcaおよびClcb、補助容量CcsaおよびCcsbはすべて信号線714と電気的に絶縁される。なお、この直後TFT716a、TFT716bの有する寄生容量等の影響による引込み現象のために、反射電極718aおよび透明電極718bの電圧Vlca、Vlcbは概ね同一の電圧Vdだけ低下する。
時刻T3、T4,T5のとき補助容量対向電極に印加されたVcsaおよびVcsbに追従し、反射電極718aおよび透明電極718bの電圧は、電圧Vlca、Vlcbとなる。
ここで、反射電極718aおよび透明電極718bの電圧Vlca、Vlcbを説明する。
(b)Vcsaと(c)Vcsbとして、同一電圧および同一振幅の信号を印加すると、反射電極718aがAlで形成されている場合、透明電極718bおよび対向電極628および629のITOと電極電位が異なるための電位差(直流電圧)がさらに加わり、反射電極718aに印加される電圧は、(e)Vlcaに示したように正電圧側にシフトした(オフセット電圧印加前)信号波形になり、フリッカが発生する。そこで、反射電極718aにかかる電圧を対向電極628にかかる電圧Vcsaのセンター値と一致するようにオフセット電圧を印加(オフセット電圧印加後)することで、電極電位差による直流電圧を相殺することによって、フリッカのない表示を得ることができる。
このように、反射部710aおよび透過部710bのそれぞれに対して、直流成分を相殺するように、対向電圧(補助容量対向電圧)を最適に設定することによって、フリッカの発生を抑制することができる。
上述したように、本発明の実施形態3による液晶表示装置600および700は、反射電極領域と透過電極領域にそれぞれ対向し、かつ電気的に独立した2つの対向電極を有し、反射電極領域に対向する対向電極に、透過電極領域に対向する対向電極に供給するコモン信号と極性・周期・振幅が同一で、センター値にオフセットDC電圧を持たせたコモン信号を入力することにより、反射部と透過部とにおける電極電位差の違いに起因するオフセットDC電圧を相殺することができる。
実施形態2による液晶表示装置400は、反射電極領域の電極構成を工夫することによって、反射部と透過部との電極電位差を小さくしたものであるのに対し、実施形態3による液晶表示装置600および700は、電極電位が互いに異なる電極領域を含む液晶層(反射領域および透過部)に、その電極電位差の差を相殺するような電圧を印加できる構成を備えている。従って、これらの構成を組み合わせて用いることによって、さらに、フリッカを視認され難くすることができる。
上述したように、実施形態2および実施形態3によると、両用型表示装置における、反射部と透過部とが互いに異なる電極電位差を有していることに起因する「対向ずれ」を解消又は補償することができる。しかしながら、実施形態1で説明したように、対向ずれを完全に解消するようにオフセット電圧を精密に制御することは難しく、特に、両用型表示装置において、反射領域と透過部における対向ずれ量を一致させることは難しい。従って、実施形態1と実施形態2および/または実施形態3とを組み合わせることが好ましい。特に、実施形態1で述べたように、液晶表示装置を低周波で駆動すると、僅かな対向ずれであっても視認されやすいので、実施形態2および実施形態3と実施形態1とを組み合わせることよって、フリッカを視認され難くできる。