JP2008083038A - 導電材料製構造物の損傷検出方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】導電材料製構造物に生じる損傷を非破壊的に簡便に検出できる損傷の検出方法を提供する。
【解決手段】第一〜第四の工程からなり、被測定物表面に複数の電位差測定用端子を所定の間隔で配置し、電流を供給しながら、各端子間に生じる電位差を測定して損傷発生の有無、発生位置を簡便に検出する。第一の工程では、電位差測定用端子を被測定物の長手方向に直線状に一列、粗い間隔で配置し、各端子間に生じる電位差を測定する。得られた電位差分布から、損傷発生の有無、発生位置を粗く評価する。第一の工程で損傷ありと評価された場合には、該領域にさらに測定用端子をより狭い間隔で追加配置し、より精度高く損傷発生の位置を検出する。
【選択図】図2

Description

本発明は、鋼構造物に生じる損傷を非破壊的に検出する導電材料製構造物の損傷検出方法に係り、とくに電位差法を利用して、装置および配管等の実導電材料製構造物に使用中に生じる、肉厚減少等の損傷を非破壊的に、その発生位置を効率よく特定し、さらにその損傷度合いを精度高く検出する、導電材料製構造物の損傷検出方法に関する。
石油プラントや電力プラント等では、金属製の装置および配管等(以下、装置等ともいう)が強い腐食環境や侵食環境に晒される場合が多く、装置等を構成する金属材料には、疲労、応力腐食(SCC)、硫化物応力腐食(SSCC)による割れ、亀裂や、あるいは粒界腐食等の腐食や侵食により、肉厚減少、浸炭等による材質劣化等の損傷が生じる場合がある。これら金属材料に生じた損傷は、装置等の破壊原因となることが多いため、装置等の安全確保という観点から早期に検知する必要がある。
装置等の損傷の検知方法として、従来から超音波探傷法、X線透過法等の非破壊検査方法が提案されている。しかし、これらの検知方法には、曲がりや溶接部等が存在すると測定できないという、測定個所の制限があり、さらに損傷の度合いおよびその変化量を精度高く得ることが難しいことや、あるいは測定が複雑でかつ解析が難しいため、測定・解析の実施にあたっては有資格者の協力を必要とすることなどの問題があった。
また、比較的精度高く、亀裂等の欠陥の大きさ、形状に関する情報が得られる非破壊検査方法として、電位差法がある。亀裂等の欠陥を含む被測定材に電流を流した際に、欠陥は寸法に応じた電気抵抗を有し、欠陥を挟む両側でこれに対応した電位差が生じる。電位差法は、被測定物に電流を流し、この欠陥を挟む位置での電位差を測定し、その結果から予め求めた校正曲線を利用して、被測定物に含まれる欠陥の形状、寸法に関する情報を得ようとするものである。なお、電位差法には、直流を利用した直流電位差法と交流を利用した交流電位差法がある。
例えば、特許文献1には、直流電位差法による三次元亀裂の非破壊検査方法が提案されている。特許文献1に記載された技術は、基板表面の電位差分布を測定し、これら測定値と仮定した形状の亀裂から求められる仮想的な電位差分布との差を比較し、測定値と計算値との差が小さくなるように亀裂形状を変化させて亀裂の形状を推定するものであり、任意の縦横比の三次元亀裂の形状、寸法、傾きを定量評価できるとしている。なお、特許文献1に記載された技術によれば、超音波探傷法、X線透過法などの適用が困難な溶接部への適用が容易となるとしている。しかし、特許文献1に記載された方法では、構造物の肉厚変化については、精度よく測定することはできないという問題があった。
電位差法を利用して、構造物の肉厚変化、構造欠陥の検知を行なう検知装置が、例えば特許文献2に提案されている。特許文献2に記載された検知装置では、溶接等による測定端子の設定を行なうことなく簡便に、測定端子間の電位差を測定することができ、腐食等の環境下における構造物の肉厚変化、構造欠陥の検知を行なうことができるとしている。
また、特許文献3には、電位差法を利用した、きずの非破壊検査方法が提案されている。特許文献3に記載された技術では、被測定物表面に複数の電位差測定用端子をマトリックス状に所定の間隔で離隔して配置し、該被測定物に電流を供給しながら、各電位差測定用端子間に生じる電位差または電位差変化率分布を求め、予め関連づけられた電位差分布または電位差変化率分布ときずの寸法形状との関係を参照して、被測定物に含まれるきずの位置、寸法形状さらにはきずの進展状況を検知できるとしている。
特許第3167449号公報 国際公開WO 00/50907号パンフレット 特開2005−208039号公報
しかしながら、特許文献2に記載された検知装置では、測定面上に設定した各端子間の電位差を測定するため、全面腐食の場合のような構造物の肉厚全体が変化する場合には有効であるが、局部腐食や小さな腐食の肉厚変化のような損傷の検出には、精度が不十分で、最近の更なる検出精度向上要求に対応できないという問題を残していた。
また、特許文献3に記載された技術は、予め損傷の種類、損傷の存在・発生等が確認・予測されている部位での、損傷のモニタリングには好適である。しかし、実構造物では、予め損傷が存在することや、また使用中にどこに損傷が発生するのか、また、どんな損傷が発生するのか、といった損傷の種類、発生場所等の特定はほとんどできていないのが現状である。特許文献3に記載された技術を利用して、使用中の実構造物で損傷を検出するためには、予め、広範囲な対象領域に、多数の測定端子を設置し、多数の測定を繰返し実施する必要がある。しかし、多数の測定端子を設置し、多数の測定を繰返し実施することは、多大の労力と設備とを必要とし、測定作業のコストが高騰するという問題があった。
本発明は、このような従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、使用中の、装置等の導電材料製構造物に生じる損傷を非破壊的に、しかも可能な限り少ない設備と少ない労力で簡便に、粗く検出し、しかるのちに検出した損傷部位の損傷の種類およびその損傷度合いを精度高く測定する、導電材料製構造物の損傷検出方法を提案することを目的とする。
本発明者らは、上記した目的を達成するため、導電材料製構造物、とくに鋼構造物に生じる損傷を非破壊的に、しかも高精度で検出できる電位差法に着目し、電位差法を利用し、発生する損傷を簡便に検知でき、しかる後に検出した損傷の種類およびその損傷度合いを、精度高く検出する方策について鋭意研究した。
その結果、電位差法における損傷の検出精度を使用中の実構造物における損傷の発生、進展に応じて、適正な精度に調整可能とすることが良いことに想到した。そしてまず、電位差測定用端子の間隔を可能な限り大きくし、測定対象領域を広くして、損傷の発生位置を粗く特定し、その後、損傷の発生を確認した部位で、電位差測定用端子の間隔をより狭く設定して、損傷の種類およびその度合いを精度高く測定することがよいことを思い付いた。さらに、本発明者らは、とくに鋼構造物の、例えば、長手方向(管状構造物では管軸方向)に直線状に一列、複数の電位差測定用端子を所定の間隔で配置しても、構造物全体に生じる損傷を検出することができることを知見した。例えば電位差測定用端子間の間隔を1mとし、100A鋼管の上部(±45°の範囲)に生じる深さ0.1mmの減肉が検出可能であることを見出した。上記した粗い測定で損傷の発生を確認した部位で、さらに、マトリックス状に電位差測定用端子を配置して、各測定端子間の電位差、変化率およびそれらの分布を測定すれば、被測定物の損傷の種類およびその度合い、さらにはその変化率が精度よく得られることを見出している。
本発明は、このような知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨はつぎのとおりである。
(1)被測定物である、導電材料製構造物表面に複数の電位差測定用端子を所定の間隔で離隔して配置し、該複数の電位差測定用端子を挟んで設けられた一対の電極を介して該導電材料製構造物に電流を供給しながら、前記複数の電位差測定用端子間に生じる電位差を測定して導電材料製構造物に発生する損傷を検出する導電材料製構造物の損傷検出方法であって、
前記複数の電位差測定用端子を該導電材料製構造物の長手方向に直線状に少なくとも一列、所定の間隔で離隔して配置して、該複数の電位差測定用端子の各端子間に生じる電位差を測定し、測定領域における電位差分布を求め、損傷発生の有無を評価する工程を行うことを特徴とする導電材料製構造物の損傷検出方法。
(2)(1)において、前記複数の電位差測定用端子を、前記導電材料製構造物の長手方向に直線状に少なくとも一列、所定の間隔で離隔して配置することに代えて、前記導電材料製構造物の長手方向に所定の格子間隔で千鳥格子状に少なくとも一列、配置することを特徴とする導電材料製構造物の損傷検出方法。
(3)(1)または(2)において、前記工程で損傷の発生ありと評価された場合には、前記損傷の発生位置を、直線状に配置した前記複数の電位差測定用端子のうちの、少なくとも隣接する二つの電位差測定用端子間の領域として特定することを特徴とする導電材料製構造物の損傷検出方法。
(4)(3)において、前記工程に引続きさらに、前記工程で損傷の発生位置として特定された、少なくとも隣接する二つの電位差測定用端子間に、さらに前記所定の間隔より狭い第二の所定の間隔で直線状に離隔して複数の電位差測定用端子を配置し、該複数の電位差測定用端子の各端子間に生じる電位差を測定し、測定領域における電位差分布を求め、損傷の発生位置を、前記第二の所定の間隔で直線状に配置された前記複数の電位差測定用端子のうちの、少なくとも隣接する二つの電位差測定用端子間として、さらに精度よく特定する第二の工程を行うことを特徴とする導電材料製構造物の損傷検出方法。
(5)(4)において、前記第二の工程に引続き、前記第二の工程で損傷の発生位置として特定された、前記少なくとも隣接する二つの電位差測定用端子間で、さらに複数の電位差測定用端子を、前記第二の所定の間隔より狭い第三の所定の間隔でマトリックス状に配置し、該複数の電位差測定用端子の各端子間に生じる電位差を測定して、測定領域における電位差分布を求め、損傷の種類を特定する第三の工程、を行うことを特徴とする導電材料製構造物の損傷検出方法。
(6)(5)において、前記第三の工程に引続いてさらに、前記第三の工程で損傷の種類を特性した、少なくとも一つのマトリックスを形成する電位差測定用端子間およびその周辺に、前記第三の所定の間隔より狭い第四の所定の間隔で、複数の電位差測定用端子を配置し、該複数の電位差測定用端子の各端子間に生じる電位差を測定し、測定領域における電位差分布を求め、前記損傷の度合いを測定する第四の工程を行うことを特徴とする導電材料製構造物の損傷検出方法。
(7)(1)ないし(6)のいずれかにおいて、前記複数の電位差測定用端子を配置することに加えて、さらに被測定物の損傷が発生しない領域表面または被測定物と同種材料の参照板上で、かつ前記一対の電極間に、参照電位差測定用の複数の参照用端子を直線状またはマトリックス状に所定の間隔で隔離して配置し、前記複数の電位差測定用端子の各端子間に生じる電位差を測定すると同時に、前記複数の参照用端子間の各端子間に生じる電位差を測定することを特徴とする導電材料製構造物の損傷検出方法。
(8)(1)ないし(7)のいずれかにおいて、各測定領域における前記電位差から、該測定領域における断面欠損ΔSを求め、該断面欠損ΔSからさらに、該測定領域における欠損深さを算出することを特徴とする導電材料製構造物の損傷検出方法。
(9)(1)ないし(7)のいずれかにおいて、各測定領域について求められた前記電位差分布から、予め関連づけられた電位差分布と被測定物の損傷度合いとの関係を参照して、該測定領域における損傷度合いを推定することを特徴とする導電材料製構造物の損傷検出方法。
(10)(1)ないし(9)のいずれかにおいて、前記電位差を、基準時からの電位差変化率とし、前記電位差分布を、基準時からの電位差変化率分布とすることを特徴とする導電材料製構造物の損傷検出方法。
(11)(10)において、前記電位差変化率分布から、該測定領域における損傷の変化率を検出することを特徴とする導電材料製構造物の損傷検出方法。
(12)(1)ないし(11)のいずれかにおいて、前記電流が、直流または直流パルスであることを特徴とする導電材料製構造物の損傷検出方法。
(13)(1)ないし(12)のいずれかにおいて、前記電位差測定端子または前記参照用端子が、前記導電材料製構造物表面または前記参照板表面に固定可能な固定部と電位差を測定するセンサー部とからなり、該センサー部が前記固定部に設けられたセンサー部保持用穴に着脱自在に保持されることを特徴とする導電材料製構造物の損傷検出方法。
(14)(13)において、前記センサー部が、伸縮可能に形成されたセンシングピンと該センシングピンと電気的に導通した接続端子と、それらを一体的に保持する保持部とからなり、該保持部は前記センサー部保持用穴に脱着可能で、かつ該保持部の長さ方向の所定の位置に、該長さ方向と垂直な方向に少なくとも1条の溝を有することを特徴とする導電材料製構造物の損傷検出方法。
(15)導電材料製構造物の損傷検出用電位差測定用端子であって、前記導電材料製構造物表面に固定可能な固定部と電位差を測定するセンサー部とからなり、前記固定部がセンサー部保持用穴を有し、前記センサー部を着脱可能に保持し、前記センサー部が伸縮可能に形成されたセンシングピンと該センシングピンと電気的に導通した接続端子と、それらを一体的に保持する保持部とからなり、該保持部が前記固定部のセンサー部保持用穴に脱着可能に形成され、かつ該保持部の長さ方向の所定位置に、該長さ方向と垂直な方向に少なくとも一条の溝を有することを特徴とする電位差測定用端子。
本発明によれば、使用中の、装置等の実導電材料製構造物に生じる損傷を非破壊的に、しかも簡便に検出でき、実構造物における損傷の発生場所を粗く特定でき、損傷のスクリーニング検査として利用できるとともに、必要に応じて損傷の種類および損傷度合いを高い精度で検出でき、産業上格段の効果を奏する。また、本発明によれば、必要に応じて検出精度を調整できるため、可能な限り少ない設備と少ない労力で、所望の情報を確保することができ、実構造物の安全性の確認が容易にできるという効果もある。また、本発明によれば、曲がりや溶接部等が存在しても問題なく、それら部位を含めて損傷を検出できるという効果もある。
本発明で使用する損傷検出のための損傷検出用装置は、とくに限定する必要はないが、図1に示すように、電源1と、電源1から被測定物Wに電流を印加するための少なくとも一対の電極11、11と、複数の電位差測定用端子2と、電位差測定手段3と、演算手段4と、データ保存手段5と、あるいはさらに表示手段(図示せず)を有する装置とすることが好ましい。なお、本発明で使用する損傷検出用装置では、被測定物の損傷が発生しない領域表面に複数の参照用端子(図示せず)を有することが好ましい。参照用端子は、被測定物の温度変化など、損傷以外の原因による抵抗変化(電位差の変化)を消去するために設けられる。なお、この複数の参照用端子は、被測定物と同一環境下に置かれた、被測定物と同種材料で損傷のない参照板上に、好ましくはマトリックス状に複数配設してもよい。その場合は、被測定物と同一の電流が流れるようにするため、参照板を絶縁することが必要となる。
本発明では、まず、被測定物である、導電材料製構造物W表面の所望の電位差測定領域に、複数の電位差測定用端子2を、所定の間隔で離隔して配置する。なお、電位差測定用端子2は、被測定物表面に、圧接、溶接、圧着、接着等の接合手段で、接合、配設することが好ましい。なお、接合は、接触抵抗が変化しなければとくにその方法は限定されない。
そして、この電位差測定領域の両端部近傍には、一対の電極11、11が溶接等の接合手段で配設される。一対の電極11、11には、電流供給用電線が配線され、電源1から電流が供給可能とされる。なお、参照用端子を配設する場合には、電位差測定領域と参照用端子を配設する領域とは離れている場合が多いため、電位差測定領域と参照用端子を配設する領域とが電気的に直列に接続されるように電極11、11を配置することが好ましい。
配設された複数の電位差測定用端子2i、2j、2k、…、あるいはさらに、配設された複数の参照用端子には、電位差測定用リード線を介して電位差測定手段3の測定端が接続される。電位差測定用リード線の材質は使用環境において使い分けることが好ましい。
なお、電位差測定用端子2または参照用端子は、一体型として、被測定物表面に、接合、配設してもよいが、測定の簡便さ、測定条件の均一性の観点から、固定部とセンサー部とに分離でき、固定部が被測定物表面に固定され、センサー部が着脱自在となる端子とすることが好ましい。なお、電位差測定用端子と参照用端子とは同じものが使用できるため、以下、電位差測定用端子についてのみ説明する。
着脱自在な電位差測定用端子2としては、図10(a)、(b)に示すように、固定部201とセンサー部202とからなる構成の端子とすることが好ましい。固定部201は、接着等の方法で構造物表面に固定される。そのため、下面側は、例えば図10(a)に示すように、構造物表面に固定可能なように、構造物表面の形状に合致した形状とすることが固定強度を高める観点から好ましい。また、固定部201の中央部には、センサー部保持用穴201aが設けられる。センサー部保持用穴201aは、センサー部202を着脱自在に挿入、保持固定する。なお、固定部201には、ねじ孔201bを設けることが好ましい。ねじ孔201bには、保持固定用ピンが螺入されセンサー部の位置を所定の位置に一定に保持する。ねじ孔201bは、センサー部保持用穴201aと垂直な方向で該センサー部保持用穴201aに連通するように設けられることは言うまでもない。なお、固定部は、装置等の導電材料製構造物における被測定部の環境に合致した材料で構成する必要があるが、所望の形状に容易に製造できる簡便さ、加工性、絶縁性の観点から樹脂(プラスチックス)製とすることが好ましい。なお、高温に晒される環境下で測定する場合は耐熱性を有する樹脂(プラスチックス)製とすることは言うまでもない。
なお、保持固定用ピン201cは、長手方向にねじ孔201bに螺合するねじを螺設され、さらに先端部に鋼球(硬球)を配しさらにばね等を内蔵して伸縮可能に構成されることが好ましく、これにより、センサー部202を着脱容易に保持固定できる。なお、図10(a)に示す固定部201は、センサー部202が1個のみ設置可能な構成であるが、本発明ではこれに限定されない。センサー部202を複数設置可能なようにセンサー部保持用穴201aを複数個配設した固定部としてもよい。
また、センサー部202は、図10(b)に示すように、センシングピン202aと、接続端子202bと、保持部202cとからなる構成とすることが好ましい。センシングピン202aは、銅、鋼等の導電性材料(表面に金めっき等のめっきを施してもよい)からなり、ばね等を内蔵し伸縮可能に形成され、測定位置におけるセンシングピン202aと構造物表面との接触状態を一定にすることが好ましい。なお、センシングピン202aの先端は、接触抵抗が変化しないように、複数の突起状を呈する形状とすることが好ましい。また、接続端子202bは、電位差測定手段と接続するための端子であり、センシングピン202aと電気導通を有し、センシングピン202aで得た各電位差測定端子における電位差を測定可能とする。また、保持部202cは、センシングピン202aと接続端子202bとを一体的に保持する。保持部202cには、長さ方向に、該長さ方向と垂直な方向に少なくとも1条の溝202dを有する。この溝202dと、固定部に付設されたねじ孔に螺入された保持固定用ピン先端部の鋼球(硬球)とにより、センサー部202を固定部201に、着脱自在に保持固定することができる。
電位差測定手段3は、測定する一対の端子間に接続され、それら端子間の電位差を測定する。該端子間の電位差測定が終了したのち、ついで接続する端子を切り替えて、異なる一対の端子間の電位差を測定する。電位差測定手段3の測定端の切替は、切替スイッチ等の切替手段(図示せず)により手動あるいは予めプログラムされた順序に従って自動的に切り替えることが好ましい。なお、電位差の測定に際しては、被測定物の温度変化など、損傷以外の原因による抵抗変化を消去するために、上記したように複数の参照用端子を設け、参照用端子間の電位差を電位差測定用端子間の測定と同時に測定しておくことが好ましい。
なお、本発明で使用する損傷検出用装置では、演算手段4を有することが好ましい。演算手段4は、電位差測定手段3により測定された各電位差測定用端子間の電位差、あるいはさらに参照用端子間の電位差を入力データとして各種演算を実行し、各電位差測定用端子間の電位差の変化量、電位差変化率およびそれらの分布を算出し、表示手段(図示せず)に出力し、各種の帳票作成を遂行できるようにすることが好ましい。演算手段は、上記した演算が遂行できるものであればよく、その種類はとくに限定されない。
さらに、本発明で使用する損傷検出用装置では、入力データおよび演算結果が保存可能なデータ保存手段5を有することが好ましい。データ保存手段5は、上記したデータが保存可能な記憶手段(メモリー)であればよく、とくにその種類を限定する必要はない。
本発明では、第一の工程として、使用中の導電材料製構造物表面に配置した、複数の電位差測定用端子の各端子間に生じる電位差を測定し、測定領域における電位差分布を求め、損傷発生の有無を評価する工程を行う。この第一の工程は、使用中の被測定物(導電材料製構造物)に生じた損傷の有無を評価する、スクリーニング検査を目的とする。なお、第一の工程では、損傷の発生位置を、直線状に配置した複数の電位差測定用端子のうちの、少なくとも隣接する二つの電位差測定用端子間の位置として粗く特定することが好ましい。
そのため、第一の工程では、各電位差測定用端子間の電位差の測定は、損傷が生じる可能性のある広い領域を測定領域として、該測定領域内で、被測定物(導電材料製構造物)の長手方向(管状構造物であれば管軸方向)に、直線状に少なくとも一列、粗い間隔(所定の間隔)で離隔して配置した、複数の電位差測定用端子を用いて行う。なお、第一の工程における所定の間隔Lは、1m程度とすることが好ましい。
被測定物Wである導電材料製構造物として配管を例にして、複数の電位差測定用端子2の配置の一例を、図2に示す。本発明では、これに限定されないことは言うまでもない。図2に示す例は、配管の下部にのみ、電位差測定用端子を取り付けているが、これによっても、全周に生じる損傷を検出できる。例えば、電位差測定用端子間の間隔を1mとすると、100A鋼管の上部(±45°の範囲)に生じる深さ0.1mmの減肉が検出可能となる。さらにこの程度の電位差測定用端子間の間隔とすることにより、広い領域を、少ない測定用端子の配置で、損傷の有無を検出することが可能となり、測定のための作業が低減される。
本発明における第一の工程では、設定した各電位差測定端子間に生じる電位差あるいはさらに参照用端子間に生じる電位差を同時に、基準時以降任意の時間に測定し、各測定端子間の電位差、および電位差の変化率を算出する。
測定により得られた測定端子間の電位差Viは、次(1)式
Vi=ρLI/Si ……(1)
(ここで、Vi:i刻(測定時)の測定端子間の電位差、ρ:被測定物の抵抗率、L:測定端子間の距離、I:印可電流値、Si:測定時断面積)
で表わされる。
また、電位差の変化率としては、温度、印可電流のばらつきによる誤差を除去するため、次(2)式
FC={(Vi/Bi)×(B/V0)−1}×1000 ……(2)
(ここで、Vi:i刻(測定時)の測定端子間の電位差、Bi:i刻(測定時)の参照端子間電位差、V0 :0刻(基準:測定開始)時の測定端子間の電位差、または、予め求めておいた公称肉厚での測定端子間の電位差、B:0刻(基準:測定開始)時の参照端子間電位差)
で定義される電場指紋係数FCを用いることが好ましい。
第一の工程では、得られた電位差分布および/または電位差の変化率から、損傷の発生の有無、損傷発生の位置を把握する。なお、電位差分布が一様でないおよび/または電位差の変化率(電場指紋係数FC)に変化が生じた場合を、「損傷の発生有り」と評価する。そして、電位差が公称肉厚での測定端子間の電位差より変化が生じたおよび/または電位差の変化率(電場指紋係数FC)に変化が生じた、少なくとも隣接する二つの電位差測定用端子の間を、損傷発生の位置(領域)として、粗く特定する。
なお、被測定物に生じる損傷が減肉(欠損)、腐食であると判明している場合には、第一の工程で、得られた電位差または電位差の変化率(電場指紋係数FC)から、粗い精度ではあるが、減肉深さをある程度、推定することができる。
測定開始時の電位差V0、および測定時の電位差Viから、隣接する二つの電位差測定用端子間の距離当りの平均断面欠損ΔSは、次(3)式
ΔS=S0×(Vi−V0)/Vi ……(3)
(ここで、V0 :0刻(基準:測定開始)時の測定端子間の電位差、S0:初期断面積(測定開始時))
で表わされる。このΔSから、測定時の肉厚(損傷の度合い)に換算することが可能である。
また、得られた電場指紋係数FCから、隣接する二つの電位差測定用端子間の距離当りの平均断面欠損ΔSは、次(4)式
ΔS=S×FC/(FC+1000) ……(4)
(ここに、S:初期断面積)
で表わせる。このΔSから、損傷の度合い(欠損深さd)をある程度、推定することもできる。
隣接する二つの電位差測定用端子間の所定の間隔を大きく設定する第一の工程では、測定用端子間の一部が損傷(減肉)しているような場合には、得られた損傷の度合い(減肉深さd)は実際の損傷の度合い(欠損深さ)を過少評価することになる。そこで、本発明では、隣接する二つの電位差測定用端子間のある一部(配管の場合には、管外径Dに相当する範囲)のみ損傷(減肉)した場合を想定し、修正した損傷の度合い(欠損深さd’)を求めることが好ましい。
すなわち、得られたFCから、次(5)式
FC’=L×FC/l ……(5)
(ここで、L:隣接する二つの電位差測定用端子間の間隔、l:想定損傷(減肉)幅(外径Dとする))
を用いて、修正断面欠損ΔS’を求め、推定欠損深さd’(損傷の度合い)を求めることが好ましい。なお、修正断面欠損ΔS’は、次(6)式
ΔS’=S×FC’/(FC’+1000) ……(6)
(ここで、S:初期断面積)
で表わされる。
例えば、管状構造物(配管:外径r、内径r’)の内面に生じる減肉の場合には、推定欠損深さd’(損傷の度合い)は、修正断面欠損ΔS’を用いて、次(7)式
d’=−πr’+√{(πr’)+πΔS’}/π ……(7)
(ここで、r’:管内径)
から算出できる。
本発明における第一の工程では、得られた推定欠損深さd’(損傷の程度)から、必要最小肉厚等を基準として定められた閾値(所定の欠損深さ)との関係で、さらに詳細な測定の必要性、すなわち第二の工程以降の必要性を検討することが好ましい。
なお、第一の工程では、設置する複数の電位差測定用端子は、被測定物(導電材料製構造物)の長手方向に直線状に少なくとも一列配置することに代えて、被測定物の長手方向に所定の格子間隔で千鳥格子状に少なくとも一列、配置することにしてもよい。なお、千鳥格子の所定の格子間隔は、1m程度とすることが好ましい。
本発明では、上記した第一の工程で、少なくとも隣接する二つの電位差測定用端子間に、損傷ありと評価され、さらに詳細な測定が必要と判定された場合には、第一の工程に引続き、第二の工程を実施することが好ましい。第二の工程では、損傷の発生位置をさらに精度高く特定することを目的とする。なお、上記した第一の工程で、損傷なしと評価された場合には、第二の工程以降の工程は行わない。
本発明の第二の工程では、第一の工程で損傷の発生位置として特定された、少なくとも隣接する二つの電位差測定用端子間に、さらに第一の工程における所定の間隔より狭い間隔(第二の所定の間隔という)で直線状に離隔して、複数の電位差測定用端子を配置する。なお、第二の所定の間隔は、第一の所定の間隔の1/2〜1/10程度とすることが好ましい。この状況を図2と同様に配管の場合を例として、図3に示す。図3では、損傷の発生位置として特定された、隣接する二つの電位差測定用端子2i,2j間に、4個の電位差測定用端子2i,2i,2i,2iを、第二の所定の間隔だけ離隔して、直線状に被測定物(配管)の長手方向に、設置した場合を示す。
そして、第二の工程では、設置したこれら複数の電位差測定用端子の各端子間、例えば、2i−2i間、2i−2i間、2i−2i間、2i−2i間、に生じる電位差を測定し、測定領域における電位差分布を求める。なお、電位差の測定は、測定用端子の設置後の一回に限定することなく、その後間歇的または連続的に継続して測定してもよい。
第二の工程では、得られた電位差分布から、損傷の発生位置を、追加設置した複数の電位差測定用端子のうちの少なくとも隣接する二つの電位差測定用端子間の位置として特定する。第二の工程においても第一の工程と同様に、電位差分布に変化が生じている箇所を、損傷の発生位置として把握する。第二の工程では、追加設置する電位差測定端子間の間隔(第二の所定の間隔)を第一の工程に比べて小さくするので、損傷の発生位置は、第一の工程に比べて精度高く特定することができる。
上記した第二の工程に引続いて、本発明では、損傷の種類と、必要に応じてその度合いを評価する、第三の工程を実施する。
第三の工程では、第二の工程で損傷の発生が確認された、少なくとも隣接する二つの電位差測定用端子間にさらに、複数の電位差測定用端子を追加配置し、第二の工程、第一の工程と同様に、各端子間および/またはその周辺に生じる電位差を測定し、測定領域における電位差分布および/または電位差の変化率分布を求める。なお、第三の工程においては、追加する複数の電位差測定用端子は、既設置の電位差測定用端子とともにマトリックを形成するように配置される。
この第三の工程に使用する測定用端子の配置状況の一例を図3と同様に、配管の場合を例として、図4に示す。図4では、第二の工程で損傷の発生が確認された、少なくとも隣接する二つの電位差測定用端子、例えば2i3,2i4間で、13個の電位差測定用端子2i3a〜2i3d,2ii〜2iid、 2i4a〜2i4dを、マトリックス状に設置した場合を示す。
なお、第三の工程では、第一の工程と同様に、得られた各測定端子間の電位差(電位差変化率)を用いて上記した(1)〜(4)式により断面欠損を求め、得られた断面欠損から当該測定領域における損傷の度合いを推定することもできる。なお、測定された各測定端子間の電位差(電位差変化率)は、測定された端子間以外の周辺に存在する損傷の影響も受けるため、測定された電位差(電位差変化率)を用いて得られた断面欠損は見かけ上の断面欠損ΔS’であり、得られた各端子間のΔS’から、所定の端子間の真の断面欠損ΔSを求めておく必要がある。真の断面欠損ΔSは、次(8)式
ΔS=aΔS’+aΔS’+ aΔS’+……ai−1ΔS’i−1 ……(8)
(ここで、a、a……a:影響係数)
で定義できる。
また、本発明では、予め、測定端子間の電位差の変化の大きさ、または電位差の変化率と、既知の損傷度合いとの関係をシミュレーションにより求めておき、この関係を参照して、被測定物に含まれる損傷度合いを決定することもできる。また、例えば、有限要素法を用いて、損傷度合いと電位差との関係を予めマスターカーブとして作成しておいてもよい。
第三の工程で損傷の種類を特定され、孔食等、第三の工程で配置した複数の電位差測定用端子のうち、隣接する4つの電位差測定用端子囲まれる領域より十分小さい局部損傷であると評価された場合には、第三の工程に引続いて、第四の工程を行う。なお、上記した第三の工程で、局部損傷なしと評価された場合には、第三の工程以降の工程は行わない。局部損傷なしと評価された場合には、推定された損傷の度合いに応じて、被測定物の健全性、余寿命の推定を行うことが好ましい。
第四の工程では、第三の工程で局部損傷と評価された、少なくとも一つのマトリックスを形成する電位差測定用端子間およびその周辺に、さらに複数の電位差測定用端子を追加して設置し、各端子間に生じる電位差を測定し、測定領域における電位差分布および/または電位差の変化率分布を求める。第四の工程では、損傷の度合い(局部損傷の度合い)をさらに精度よく評価することを目的とする。
追加設置する複数の電位差測定用端子は、第四の所定の間隔で離隔して配置される。第四の所定の間隔は第三の所定の間隔より狭くし、局部損傷が生じている領域が判明するまで、間隔を測定ごとに変更し、繰返し測定することが好ましい。この第四の工程に使用する測定用端子の配置状況の一例を、図5に示す。図5では、第三の工程で局部損傷であると評価された、一つのマトリックスを形成する電位差測定用端子、例えば測定用端子2iib,2i4b,2i4c,2iicで囲まれる領域で、第四の所定の間隔だけ相互に離隔して、8個の電位差測定用端子を配置した場合を示す。なお、本発明では電位差測定用端子の配置は、これに限定されないことはいうまでもない。
第四の工程では、測定された電位差および/または電位差の変化率から、第三の工程と同様に、上記した(1)〜(4)式および(8)式により真の断面欠損ΔSを求め、真の断面欠損ΔSから当該測定領域における損傷の度合い(最小肉厚)を精度よく推定する。また、本発明の第四の工程では、第三の工程と同様に、予め、測定端子間の電位差の変化の大きさ、または電位差の変化率と、既知の損傷度合いとの関係をシミュレーションにより求めておき、この関係を参照して、被測定物に含まれる損傷度合い(最小肉厚)を決定することもできる。また、例えば、有限要素法を用いて、損傷度合いと電位差との関係を予めマスターカーブとして作成しておいてもよい。
第四の工程で、精度高く得られた損傷度合い(最小肉厚)に基づき、被測定物の健全性、余寿命の推定等を行うことができる。
被測定物として、炭素鋼製の鋼管(外径105mmφ×内径93mmφ×長さ2150mm)を選び、長手方向の一部に、外面から人工的に減肉した損傷部(減肉量:0.5mm、幅:50mm(長手方向)、80mm(周方向))を管上部の±45°の範囲内に導入し、その都度、次に示すような方法で各電位差測定端子間の電位差を測定した。なお、減肉量は、アンダーカットゲージで別途測定し、0.4〜0.6mmであった。
なお、被測定物の表面には、図6(a)に示すように、複数(5個)の電位差測定用端子を被測定物の長手方向(管軸方向)に直線状に、第一の所定の間隔(0.5m)だけ離隔して、スタッド溶接により接合して配置した。また、複数の電位差測定用端子が形成する領域に電流を供給するために、電位差測定用端子領域の端部周辺に一対の電極11、11(図2には図示せず)を設置した。なお、電位差測定用端子は、図10(a)、(b)に示す着脱自在の端子を使用し、耐熱樹脂製の固定部201を被測定物表面に接着剤で固定した。
一対の電極11、11間には、直流パルス(パルス高さ:30A、パルス時間:1.7s)を印加した。電流差測定手段として、直流電位差計を使用して、各測定用端子間をペアーとして各ペアーの電位差を測定し、測定領域の電位差分布を求めた。なお、各測定用端子には予め測定用リード線が取り付けられ、切替スイッチにより切替可能に設定されることはいうまでもない。
測定された、各電位差測定端子間の電位差をもとに、測定領域の電位差分布を求めた。得られた電位差分布を図6(b)にしめす。
図6(b)から、隣接する二つの電位差測定端子22,23間で電位差の変化が認められ、その間で損傷が発生していると推定した。そして、(2)、(5)、(6)式を用いて、断面欠損を求め、損傷が減肉0.1〜0.6mm程度であることを推定した。
このように大きく離隔した間隔で直線状に複数の電位差測定用端子を設置することにより、程度が小さい損傷の発生およびその位置を粗い精度ではあるが特定でき、損傷のスクリーニング検査法として有効であることを確認した。
ついで、第二の工程として、この損傷の存在が確認された、隣接する二つの電位差測定端子22,23間に、図7(a)に示す要領で、複数(4個)の電位差測定用端子を、被測定物の長手方向(管軸方向)に直線状に、第二の所定の間隔(10cm)だけ離隔して、スタッド溶接により接合して配置し、同様に、各電位差測定端子間の電位差を測定した。測定された、各電位差測定端子間の電位差をもとに、測定領域の電位差分布を求めた。得られた電位差分布を図7(b)に示す。
図7(b)から、隣接する二つの電位差測定端子222,223間で電位差の変化が認められ、その間のどこかに損傷が存在すると推定した。この第二の工程では、第二の所定の間隔(10cm)の範囲の精度で、すなわち第一の工程に比べ精度高く、存在する損傷の位置を特定でき、精度高く損傷の検出が可能となる。
ついで、第三の工程として、第二の工程で損傷が存在すると確認できた、隣接する二つの電位差測定端子222,223間に、図8(a)に示す要領で、複数(10個)の電位差測定用端子を、マトリックス状に、第三の所定の間隔(5cm)だけ離隔して、管周方向、管長手方向に配置した。そして、第一、第二の工程におけると同様に、各電位差測定端子間の電位差を測定した。得られた各電位差測定端子間の電位差をもとに、測定領域の電位差分布を求めた。得られた電位差分布を図8(b)、(c)に示す。
図8から、電位差測定端子222,225間の上部(0°)に、減肉による局部損傷が存在すると推定した。ついで、存在する局部損傷の程度を、測定された電位差分布から、(3)式、(8)式を用いて、真の断面欠損を求めた。その結果、局部損傷は、真の断面欠損から換算される減肉深さは0.5mmの局部減肉と推定した。
この第三の工程では、被測定物中に存在する損傷の種類を特定するとともに、その損傷が電位差測定用端子で形成されるマトリックスと同程度あるいはそれより大きい領域にわたっても、その損傷の度合いをある程度精度高く、検出することが可能となる。
ついで、第四の工程として、第三の工程で局部損傷が確認された、電位差測定端子222b,225b間およびその周辺に、図9に示す要領で、複数(7個)の電位差測定用端子を、第四の所定の間隔(2.5cm)だけ離隔して、配置した。そして、第三の工程におけると同様に、各電位差測定端子間の電位差を測定した。得られた各電位差測定端子間の電位差をもとに、測定領域の電位差分布を求めた。得られた電位差分布から、(3)式 、(8)式を用いて、真の断面欠損を求めた。その結果、真の断面欠損から換算される最小肉厚は0.6mmであると推定した。なお、この値は、アンダーカットゲージで確認した値と一致した。
本発明で使用する損傷検出用装置の概略構成を模式的に示す説明図である。 本発明の第一の工程で使用する、好ましい電位差測定用端子の配置の一例を示す説明図である。 本発明の第二の工程で使用する、好ましい電位差測定用端子の配置の一例を示す説明図である。 本発明の第三の工程で使用する、好ましい電位差測定用端子の配置の一例を示す説明図である。 本発明の第四の工程で使用する、好ましい電位差測定用端子の配置の一例を示す説明図である。 (a)本発明の実施例の第一の工程での電位差測定用端子の配置および(b)得られた、第一の工程での、測定領域における電位差分布を示すグラフである。 (a)本発明の実施例の第二の工程での電位差測定用端子の配置および(b)得られた、第二の工程での、測定領域における電位差分布を示すグラフである。 (a)本発明の実施例の第三の工程での電位差測定用端子の配置および(b)得られた、第三の工程での、測定領域(222,225間)における電位差分布(c)得られた第三の工程での、測定領域(222,225間)における電位差分布を示すグラフである。 本発明の実施例の第四の工程での電位差測定用端子の配置状況を模式的に示す説明図である。 着脱自在の電位差測定用端子を構成する、(a)固定部、(b)センサー部の構造の一例を模式的に示す説明図である。
符号の説明
1 電源
11、12 電極
2、2a、2b、……2z 電位差測定用端子
3 電位差測定手段
4 演算手段
5 データ保存手段
201 固定部
202 センサー部

Claims (15)

  1. 被測定物である、導電材料製構造物表面に複数の電位差測定用端子を所定の間隔で離隔して配置し、該複数の電位差測定用端子を挟んで設けられた一対の電極を介して該導電材料製構造物に電流を供給しながら、前記複数の電位差測定用端子間に生じる電位差を測定して導電材料製構造物に発生する損傷を検出する導電材料製構造物の損傷検出方法であって、
    前記複数の電位差測定用端子を該導電材料製構造物の長手方向に直線状に少なくとも一列、所定の間隔で離隔して配置して、該複数の電位差測定用端子の各端子間に生じる電位差を測定し、測定領域における電位差分布を求め、損傷発生の有無を評価する工程を行うことを特徴とする導電材料製構造物の損傷検出方法。
  2. 前記複数の電位差測定用端子を、前記導電材料製構造物の長手方向に直線状に少なくとも一列、所定の間隔で離隔して配置することに代えて、前記導電材料製構造物の長手方向に所定の格子間隔で千鳥格子状に少なくとも一列、配置することを特徴とする請求項1に記載の導電材料製構造物の損傷検出方法。
  3. 前記工程で損傷の発生ありと評価された場合には、前記損傷の発生位置を、直線状に配置した前記複数の電位差測定用端子のうちの、少なくとも隣接する二つの電位差測定用端子間の領域として特定することを特徴とする請求項1または2に記載の導電材料製構造物の損傷検出方法。
  4. 前記工程に引続きさらに、前記工程で損傷の発生位置として特定された、少なくとも隣接する二つの電位差測定用端子間に、さらに前記所定の間隔より狭い第二の所定の間隔で直線状に離隔して複数の電位差測定用端子を配置し、該複数の電位差測定用端子の各端子間に生じる電位差を測定し、測定領域における電位差分布を求め、損傷の発生位置を、前記第二の所定の間隔で直線状に配置された前記複数の電位差測定用端子のうちの、少なくとも隣接する二つの電位差測定用端子間として、さらに精度よく特定する第二の工程を行うことを特徴とする請求項3に記載の導電材料製構造物の損傷検出方法。
  5. 前記第二の工程に引続き、前記第二の工程で損傷の発生位置として特定された、前記少なくとも隣接する二つの電位差測定用端子間で、さらに複数の電位差測定用端子を、前記第二の所定の間隔より狭い第三の所定の間隔でマトリックス状に配置し、該複数の電位差測定用端子の各端子間に生じる電位差を測定して、測定領域における電位差分布を求め、損傷の種類を特定する第三の工程、を行うことを特徴とする請求項4に記載の導電材料製構造物の損傷検出方法。
  6. 前記第三の工程に引続いてさらに、前記第三の工程で損傷の種類を特性した、少なくとも一つのマトリックスを形成する電位差測定用端子間およびその周辺に、前記第三の所定の間隔より狭い第四の所定の間隔で、複数の電位差測定用端子を配置し、該複数の電位差測定用端子の各端子間に生じる電位差を測定し、測定領域における電位差分布を求め、前記損傷の度合いを測定する第四の工程を行うことを特徴とする請求項5に記載の導電材料製構造物の損傷検出方法。
  7. 前記複数の電位差測定用端子を配置することに加えて、さらに被測定物の損傷が発生しない領域表面または被測定物と同種材料の参照板上で、かつ前記一対の電極間に、参照電位差測定用の複数の参照用端子を直線状またはマトリックス状に所定の間隔で隔離して配置し、前記複数の電位差測定用端子の各端子間に生じる電位差を測定すると同時に、前記複数の参照用端子間の各端子間に生じる電位差を測定することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の導電材料製構造物の損傷検出方法。
  8. 各測定領域における前記電位差から、該測定領域における断面欠損ΔSを求め、該断面欠損ΔSからさらに、該測定領域における欠損深さを算出することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の導電材料製構造物の損傷検出方法。
  9. 各測定領域について求められた前記電位差分布から、予め関連づけられた電位差分布と被測定物の損傷度合いとの関係を参照して、該測定領域における損傷度合いを推定することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の導電材料製構造物の損傷検出方法。
  10. 前記電位差を、基準時からの電位差変化率とし、前記電位差分布を、基準時からの電位差変化率分布とすることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の導電材料製構造物の損傷検出方法。
  11. 前記電位差変化率分布から、該測定領域における損傷の変化率を検出することを特徴とする請求項10に導電材料製構造物の損傷検出方法。
  12. 前記電流が、直流または直流パルスであることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の導電材料製構造物の損傷検出方法。
  13. 前記電位差測定端子または前記参照用端子が、前記導電材料製構造物表面または前記参照板表面に固定可能な固定部と電位差を測定するセンサー部とからなり、該センサー部が前記固定部に設けられたセンサー部保持用穴に着脱自在に保持されることを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載の導電材料製構造物の損傷検出方法。
  14. 前記センサー部が、伸縮可能に形成されたセンシングピンと該センシングピンと電気的に導通した接続端子と、それらを一体的に保持する保持部とからなり、該保持部は前記センサー部保持用穴に脱着可能で、かつ該保持部の長さ方向の所定の位置に、該長さ方向と垂直な方向に少なくとも1条の溝を有することを特徴とする請求項13に記載の導電材料製構造物の損傷検出方法。
  15. 導電材料製構造物の損傷検出用電位差測定用端子であって、前記導電材料製構造物表面に固定可能な固定部と電位差を測定するセンサー部とからなり、前記固定部がセンサー部保持用穴を有し、前記センサー部を着脱可能に保持し、前記センサー部が伸縮可能に形成されたセンシングピンと該センシングピンと電気的に導通した接続端子と、それらを一体的に保持する保持部とからなり、該保持部が前記固定部のセンサー部保持用穴に脱着可能に形成され、かつ該保持部の長さ方向の所定位置に、該長さ方向と垂直な方向に少なくとも一条の溝を有することを特徴とする電位差測定用端子。
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