JP2008080695A - 吐出検査装置および吐出検査方法 - Google Patents

吐出検査装置および吐出検査方法 Download PDF

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Abstract

【課題】インク滴の吐出に伴って発生する電圧変化を正しく検出することによって、インク滴の吐出の有無判定を正しく行えるようにする吐出検査装置および吐出検査方法を提供する。
【解決手段】吐出検査前の記録ヘッドと対向電極間の電圧変化を検出し、検出した電圧変化を支配的に発生させている周波数を抽出する。そして、抽出した支配的な周波数に基づいて、記録ヘッドから記録液を繰返し吐出する際の繰返しの継続時間を設定し、設定された継続時間分繰返し記録液を吐出する。こうすれば吐出される記録液によって発生する電圧変化が原理的に有すべき主たる周波数成分を、電圧ノイズについての支配的な周波数成分と異なる周波数成分とすることができる。従って、記録液の吐出に伴って発生する電圧変化は電圧ノイズに起因して発生する電圧変化に埋もれたり、影響を受けたりすることがない。
【選択図】図6

Description

本発明は、記録ヘッドと当該記録ヘッドに対向する対向電極との間に印加された電圧に発生する電圧変化を用いて、記録ヘッドに設けられたノズルからの記録液の吐出の有無を判定する吐出検査を行う吐出検査装置および吐出検査方法に関する。
記録ヘッドから記録液の一つとしてのインクを吐出して、印刷用紙に画像などを印刷するインクジェット記録装置では、記録ヘッドに設けられたノズルからインク滴が吐出されないと画像が正しく印刷されないことになる。従って、ノズルから確実にインク滴が吐出されるか否かを検査する技術が従来から提案され、例えば、帯電したインク滴を吐出したとき、記録ヘッドの電圧の変化を検出してインク滴の吐出の有無を判定する技術が開示されている(例えば特許文献1または特許文献2参照)。
特開昭59−178256号公報 特開2004−195760号公報
特許文献1または特許文献2に開示された技術のように、インク滴の吐出によって発生する記録ヘッドの電圧変化を用いてノズルからのインク滴の吐出の有無を検査する場合は、インク滴の吐出によって発生する電圧の変化を正しく検出する必要がある。ところで、ノズルから吐出されるインク滴は、写真画像のような高精細の画像を印刷するべく微小な大きさのインク滴である場合が多く、従って、このような微小な大きさのインク滴の吐出に伴って発生する電圧変化は小さい値である場合が多い。
このように小さい値の電圧変化に対して、例えばインクジェット記録装置外からの電界ノイズや、インクジェット記録装置内で発生する電界ノイズなどに起因して発生する電圧が、無視できないノイズとして実際に記録ヘッドの電圧に混入することがある。このような場合、吐出検査のために行ったインク滴の吐出に伴って発生した電圧変化が、このような電圧ノイズに埋もれてしまい、そのためノズルからのインク滴の吐出の有無を正しく判定することができなくなってしまうという課題がある。
しかしながら、特許文献1または特許文献2に開示された従来の技術では、このようなインクジェット記録装置外からの電界ノイズやインクジェット記録装置内で発生する電界ノイズに起因して発生する記録ヘッドの電圧変化など、インク滴の吐出以外の要因による記録ヘッドの電圧変化についての開示は無く、従って、このような課題に対する解決手段についても特段開示がなされていない。
本発明は、このような課題を解決し、インク滴の吐出に伴って発生する電圧変化を検出し易くすることによって、インク滴の吐出の有無判定を正しく行えるようにする吐出検査装置および吐出検査方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために本発明の第1の吐出検査装置は、記録ヘッドと当該記録ヘッドに対向する対向電極との間に印加された電圧に発生する電圧変化を用いて、前記記録ヘッドに設けられたノズルからの記録液の吐出の有無を判定する吐出検査を行う吐出検査装置であって、前記印加された電圧に発生する前記吐出検査前の電圧変化を検出する検査前電圧変化検出部と、前記検出した吐出検査前の電圧変化を、所定の分析方法を用いて周波数分析し、当該周波数分析の結果に基づいて、前記吐出検査前における電圧変化を支配的に発生させている支配的周波数を特定する支配的周波数特定部と、前記ノズルから前記記録液が吐出すべき吐出圧力を、前記記録液に繰返し発生させる吐出圧力発生部と、前記記録液に前記吐出圧力を繰返し発生させる継続時間を、予め定められた複数の継続時間から設定する継続時間設定部と、を備え、前記継続時間設定部は、前記支配的周波数特定部が特定した前記支配的周波数に基づいて前記継続時間を設定し、前記吐出圧力発生部は、前記設定された継続時間、前記記録液に前記吐出圧力を繰返して発生させることを特徴とする。
この構成による本発明の第1の吐出検査装置によれば、吐出検査前に印加された電圧に発生する電圧変化を検出し、検出した電圧変化を周波数分析(例えばフーリエ変換)して電圧変化を支配的に発生させている支配的周波数を抽出する。こうすることによって、ノイズによって発生する記録ヘッドからの記録液の吐出以外の電圧変化について、その支配的な周波数を抽出することができる。ところで、記録ヘッドから設定された継続時間分繰返し記録液を吐出すると、このとき印加された電圧に発生する電圧変化には、原理的に有すべき主たる周波数が存在することになる。そこで、記録ヘッドから記録液を繰返し吐出する際の繰返しの継続時間を、前記支配的周波数特定部が特定した前記支配的周波数に基づいて設定する。例えば、この記録液の吐出による電圧変化に存在する主たる周波数がノイズについての支配的な周波数から最も離れるように、予め定められた複数の継続時間から、記録液への吐出圧力を継続して発生させる継続時間を設定すれば、記録液の吐出に伴って発生する電圧変化は、ノイズと異なる周波数を有することになるので、ノイズに起因して発生する電圧変化に埋もれるなどの影響が受けにくくなるのである。この結果、記録液の吐出に伴って発生する電圧変化は、吐出検査前の電圧変化の影響が抑制されて検出され易くなるので、ノズルからの記録液の吐出の有無判定を正しく行えることになる。
なお、記録液の吐出によって発生する電圧変化が原理的に有すべき主たる周波数については、後述する本発明についての実施形態例の説明において行う(図4、図5参照)。
また、少なくとも互いに異なる中心周波数を有する複数のバンドパスフィルタを有し、当該複数のバンドパスフィルタのうち、前記記録液が繰返し吐出したとき前記電圧変化に存在する主たる周波数との差が最も小さい中心周波数を有するバンドパスフィルタを用いて、前記印加された電圧に発生する電圧変化をフィルタするフィルタ部をさらに備えることが好ましい。
こうすれば、例えば、複数のバンドパスフィルタのうち、記録液の吐出に伴って発生する電圧変化が有する主たる周波数に最も近い周波数を中心周波数とするバンドパスフィルタを用いて印加された電圧に発生する電圧変化をフィルタすることによって、フィルタされた後の電圧変化は、おおよそ記録液の吐出に伴って発生する記録ヘッドの電圧変化のみとすることができる。この結果、吐出検査前の電圧変化の影響が抑制されることから、記録液の吐出に伴って発生する電圧変化の検出が容易になることが期待できる。
また、前記継続時間設定部は、前記吐出圧力を発生させる繰返し回数を前記継続時間として設定することとしてもよい。
吐出圧力を1回発生させる単位時間が予め判明している場合は、継続時間に代えて吐出圧力を発生させる繰返し回数を継続時間とする。こうすれば、1回分の吐出圧力を発生させている途中で、圧力の発生を中止することがないので、吐出検査に際して常に同じ量の記録液を吐出することができる。従って、吐出検査に際して記録液を安定して吐出することができることから、電圧変化を安定して発生させることができる。この結果、記録液の吐出に伴って発生する電圧変化を検出し易くすることが期待できる。
また、前記吐出検査の検査結果に基づいて、前記吐出検査が正しく行われた否かを判定する吐出検査正否判定部をさらに備え、前記吐出継続時間設定部は、前記前記吐出検査正否判定部の判定結果に応じて、前記設定した継続時間を変更することとしてもよい。
例えば、ノイズによって印加された電圧に発生する電圧変化(以降「電圧ノイズ」と呼ぶ)の支配的な周波数が複数存在した場合、設定すべき継続時間も複数存在することがある。このような場合、一旦設定した継続時間によって繰返し記録液を吐出した場合であっても、電圧ノイズの影響を抑制することができない場合が起こり得る。このため、電圧ノイズの影響を受けて発生する電圧変化を用いて行う吐出検査は正しく行われないことになる。このような場合、吐出検査の検査結果に基づいて、吐出検査が正しく行われたか否かを判定し、判定結果に応じて一旦設定した継続時間を変更するのである。
例えば、吐出検査の検査結果が、通常不吐出が起こり得ないノズルが不吐出と判定されたり、通常起こり得ない連続数の不吐出ノズルが発生したと判定されたりしている検査結果であれば、この判定結果に基づいて継続時間を変更する。こうすることで、記録液の吐出に伴って発生する電圧変化に対する電圧ノイズの影響がより少なくなるように抑制できることが期待できることから、記録液の吐出に伴って発生する電圧変化が検出し易くなるので、吐出検査は正しく行えることになる。
上記課題を解決するために本発明の第2の吐出検査装置は、記録ヘッドと当該記録ヘッドに対向する対向電極との間に印加された電圧に発生する電圧変化を用いて、前記記録ヘッドに設けられたノズルからの記録液の吐出の有無を判定する吐出検査を行う吐出検査装置であって、前記印加された電圧に発生する前記吐出検査前の電圧変化を検出する検査前電圧変化検出部と、前記検出した吐出検査前の電圧変化を、所定の分析方法を用いて周波数分析し、当該周波数分析の結果に基づいて、前記吐出検査前における電圧変化を支配的に発生させている支配的周波数を特定する支配的周波数特定部と、互いに異なる中心周波数を有する複数のバンドパスフィルタを有し、当該複数のバンドパスフィルタのうち、前記支配的周波数特定部が特定した支配的周波数との差が最も大きい中心周波数を有するバンドパスフィルタを用いて、前記印加された電圧に発生する電圧変化をフィルタするフィルタ部と、を備えることを特徴とする。
この構成による本発明の第2の吐出検査装置によれば、吐出検査前に印加された電圧に発生する電圧変化を検出し、検出した電圧変化を周波数分析(例えばフーリエ変換による分析)して電圧変化を支配的に発生させている支配的周波数を抽出する。こうすることによって、ノイズによって発生する記録ヘッドからの記録液の吐出以外の電圧変化について、その支配的な周波数を抽出することができる。そして、抽出した支配的周波数に基づいて、複数のバンドパスフィルタのうち、支配的周波数から最も離れた中心周波数を有するバンドパスフィルタを用いて、吐出検査において印加された電圧に発生する電圧変化をフィルタする。こうすれば、バンドパスフィルタによってフィルタした電圧変化は、電圧ノイズについての支配的な周波数を抑制し、記録液の吐出によって発生する周波数がおおよそ存在する電圧変化とすることができる。従って、フィルタした後の電圧変化を用いれば、記録液の吐出に伴って発生する電圧変化が検出し易くなることが期待できる。
ここで、前記ノズルから前記記録液が吐出すべき吐出圧力を、前記記録液に繰返し発生させる吐出圧力発生部と、前記記録液に前記吐出圧力を繰返し発生させる継続時間を、予め定められた複数の継続時間から設定する継続時間設定部と、をさらに備え、前記継続時間設定部は、前記記録液が繰返し吐出したとき前記電圧変化に存在する主たる周波数と、前記フィルタ部が用いるバンドパスフィルタの中心周波数との差が最も小さくなるように前記継続時間を設定し、前記吐出圧力発生部は、前記設定された継続時間、前記記録液に前記吐出圧力を繰返して発生させることとしてもよい。
この構成によれば、設定された継続時間分繰返し吐出される記録液によって印加された電圧に発生する電圧変化が原理的に有すべき主たる周波数を、おおよそバンドパスフィルタの中心周波数とすることができる。従って、記録液の吐出に伴って発生する電圧変化以外の電圧変化分は抑制されるので、記録液の吐出に伴って発生する電圧変化は電圧ノイズに起因して発生する電圧変化に埋もれたり、影響を受けたりすることがない。この結果、フィルタ後の電圧変化を用いれば、記録液の吐出に伴って発生する電圧変化が検出し易くなるので、ノズルからの記録液の吐出の有無判定は正しいものになることが期待できる。
また、前記継続時間設定部は、前記吐出圧力を発生させる繰返し回数を前記継続時間として設定することとしてもよい。
吐出圧力を1回発生させる単位時間が予め判明している場合は、継続時間に代えて吐出圧力を発生させる繰返し回数を継続時間とする。こうすれば、1回分の吐出圧力を発生させている途中で、圧力の発生を中止することがないので、吐出検査に際して常に同じ量の記録液を吐出することができる。従って、吐出検査に際して記録液を安定して吐出することができることから、電圧変化も安定して発生し、その結果、記録液の吐出に伴って発生する電圧変化が検出し易くなる。
また、前記吐出検査の検査結果に基づいて、前記吐出検査が正しく行われた否かを判定する吐出検査正否判定部をさらに備え、前記フィルタ部は、前記吐出検査正否判定部の判定結果に応じて、前記設定した中心周波数を変更することとしてもよい。
例えば、電圧ノイズの支配的な周波数が複数存在した場合、設定すべき中心周波数も複数存在することがある。このような場合、一旦設定した中心周波数を有するバンドパスフィルタによってフィルタした電圧変化であっても、電源ノイズの影響を抑制することができない場合が起こり得る。このため、印加された電圧に発生する電圧変化を用いて行う吐出検査は正しく行われないことになる。このような場合、吐出検査の検査結果に基づいて、吐出検査が正しく行われたか否かを判定し、判定結果に応じて一旦設定した中心周波数を変更するのである。
例えば、吐出検査の検査結果が、通常不吐出が起こり得ないノズルが不吐出と判定されたり、通常起こり得ない連続数の不吐出ノズルが発生したと判定されたりしている検査結果であれば、吐出検査が正しく行われていないと判定し、この判定結果に応じて中心周波数を変更する。こうすることで、記録液の吐出に伴って発生する電圧変化に対する電圧ノイズの影響がより少なくなるように抑制できることが期待できることから、記録液の吐出に伴って発生する電圧変化が検出し易くなるので、吐出検査は正しく行えることになる。
本発明の第1の吐出検査装置を方法の発明として捉えることもできる。すなわち、記録ヘッドと当該記録ヘッドに対向する対向電極との間に印加された電圧に発生する電圧変化を用いて、前記記録ヘッドに設けられたノズルからの記録液の吐出の有無を判定する吐出検査を行う吐出検査方法であって、前記印加された電圧に発生する前記吐出検査前の電圧変化を検出する検査前電圧変化検出工程と、前記検出した吐出検査前の電圧変化を、所定の分析方法を用いて周波数分析し、当該周波数分析の結果に基づいて、前記吐出検査前の電圧変化を支配的に発生させている支配的周波数を特定する支配的周波数特定工程と、前記ノズルから前記記録液が吐出すべき吐出圧力を、前記記録液に繰返し発生させる吐出圧力発生工程と、前記記録液に前記吐出圧力を繰返し発生させる継続時間を、予め定められた複数の継続時間から設定する継続時間設定工程と、を備え、前記継続時間設定工程は、前記支配的周波数特定工程が特定した前記支配的周波数に基づいて前記継続時間を設定し、前記吐出圧力発生工程は、前記設定された継続時間、前記記録液に前記吐出圧力を繰返して発生させることを特徴とする。
また、本発明の第2の吐出検査装置を方法の発明として捉えることもできる。すなわち、記録ヘッドと当該記録ヘッドに対向する対向電極との間に印加された電圧に発生する電圧変化を用いて、前記記録ヘッドに設けられたノズルからの記録液の吐出の有無を判定する吐出検査を行う吐出検査方法であって、前記印加された電圧に発生する前記吐出検査前の電圧変化を検出する検査前電圧変化検出工程と、前記検出した吐出検査前の電圧変化を、所定の分析方法を用いて周波数分析し、当該周波数分析の結果に基づいて、前記吐出検査前における電圧変化を支配的に発生させている支配的周波数を特定する支配的周波数特定工程と、互いに異なる中心周波数を有する複数のバンドパスフィルタを有し、当該複数のバンドパスフィルタのうち、前記支配的周波数特定工程が特定した支配的周波数との差が最も大きい中心周波数を有するバンドパスフィルタを用いて、前記印加された電圧に発生する電圧変化をフィルタするフィルタ工程と、を備えることを特徴とする。
本発明の第1および第2の吐出検査方法によれば、上述した本発明の第1および第2の吐出検査装置と同様の作用効果を得ることができる。なお、これらの吐出検査方法は、上述した種々の態様を有する吐出検査装置において実行してもよいし、他の態様を有する吐出検査装置において実行してもよい。また、上述した吐出検査装置の各機能を実現するような工程を追加してもよい。
以下、本発明の吐出検査装置の実施例について、これを搭載した一実施形態としての記録装置を用いて説明する。図1は本発明の吐出検査装置が組み込まれた記録装置としてのインクジェットプリンタ10の概略構造を示したものである。このインクジェットプリンタ10は、記録液としてのY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色インクが収納されたインクカートリッジ11〜14を装着したキャリッジ20が図面左右方向に移動し、一方記録媒体としての印刷媒体25が図面上下方向に移動するとき、キャリッジ20の図面裏面側に設けられた記録ヘッド30からインク滴を吐出して、プラテン28によって図面裏面側から支持された印刷媒体25に、所定の画像等を印刷するものである。
キャリッジ20は、キャリッジベルト41に固定され、キャリッジベルト41がキャリッジモータ40によって駆動されるのに伴って、フレーム17に固定されたガイド21に沿って移動する。また印刷媒体25は、フレーム17に固定された駆動モータ26により駆動される図示しない紙送りローラなどによって、図面上下方向に移動する。このとき、記録ヘッド30に設けられた各色インクを吐出するための複数のノズルから、印刷する画像に相応した所定のインク滴が吐出されることによって画像が正しく印刷できる。従って、インク滴が吐出されないと正しく画像を印刷することができないことになる。
このため、インクジェットプリンタ10では、電源投入時や、印刷ジョブの開始前、印刷ジョブの途中、印刷ジョブの終了時などといった所定の時期で、検査を行うべき検査タイミングが到来した場合に、記録ヘッド30に設けられた複数のノズルに対して、ノズルからインク滴が吐出するか否かを検査する吐出検査が行われる。吐出検査では、インクジェットプリンタ10に設けられた検査ボックス70の位置にキャリッジ20を移動し、所定の吐出検査処理を行って各ノズルからのインク滴の吐出の有無を検査する。そして、検査の結果、インク滴が吐出しない不吐出のノズルが有った場合は、インクジェットプリンタ10に設けられたクリーニングボックス18の位置にキャリッジ20を移動し、ノズル内のインクを吸引するなどの所定のクリーニング処置を行ってノズルをクリーニングする。
上述した一連の動作についての主な制御は、フレーム17に取り付けられたメイン基板50に設けられた主制御回路50aと、キャリッジ20に取り付けられたサブ基板60に設けられた副制御回路60aとによって行われる。これらの基板は、フレキシブル基板45によって接続され、それぞれの基板間でデータがやり取りされることによって主制御回路と副制御回路とが連携動作し、インク滴の吐出検査を実施する。
主制御回路50aには、インクジェットプリンタ10の諸動作を制御するためのCPU51と、これらの動作に関するプログラムを記録したROM52と、動作に際して必要なデータを一時的に記憶したり読み出したりするためのRAM53と、データを書き込み消去可能なフラッシュメモリ54と、副制御回路60aとの間でのデータのやり取りや、ユーザーのパーソナルコンピュータ(PC)90など外部機器との情報のやり取りを行うためのインターフェイス(I/F)55とが備えられている。
一方、副制御回路60aには、吐出検査に関する所定の動作を実行するためのロジック回路などが構成されたASIC61が備えられている。従って、CPU51がROM52に記録された処理ルーチンプログラムを読み出し、ASIC61との間で種々の信号データを授受することによって、CPU51とASIC61は所定の動作を実行して、吐出検査を実施するのである。
次に、図2を用いてインクジェットプリンタ10に組み込まれた吐出検査装置の仕組みについて具体的に説明する。図2は、記録ヘッド30に設けられた複数のノズルそれぞれからインクを吐出させるべくインクに圧力を加え、インク滴の吐出の有無を判定するための装置構成を示す模式図である。キャリッジ20が検査ボックス70に対して所定の位置に移動すると、例えばインクカートリッジ11から図示しない供給経路によって記録ヘッド30に供給されたインクが、インク滴39として記録ヘッド30から吐出される。
吐出されたインク滴39は、検査ボックス70に設けられた電極部材71に着弾する。電極部材71はメッシュ状のSUS板などの金属材料で形成され、インク滴39の着弾受け領域となっている。着弾したインク滴39は、その後この電極部材71を透過し、スポンジ状の樹脂等で形成されたインク吸収体72に吸収される。このように、電極部材71にはインクが堆積しないように構成されている。また電極部材71は、フレーム17と結線部材66によって電気的に接続されている。
ASIC61は、吐出検査に際して、フレーム17に回路の一端が接続(接地)されている電圧発生回路62を動作させ、フレーム17に対する所定の電圧を生成した後、所定の抵抗値を有する抵抗64を通し、結線部材65を用いて記録ヘッド30に電圧Veを印加する。もとより、記録ヘッド30において電圧Veが印加される部分は、インクと電気的に導通状態にある部分(例えばノズルプレート34)である。このように、電圧Veが印加されることによって、電極部材71は記録ヘッド30に対向する対向電極として機能する。
本実施形態では、記録ヘッド30に印加する電圧は、フレーム17に対してプラス電位としている。従って、フレーム17と電気的に接続された検査ボックス内の電極部材71との間において、記録ヘッド30側から電極部材71側への印加方向となる電圧が発生する。この結果、記録ヘッド30はプラス帯電し、電極部材71はマイナス帯電する状態となる。
記録ヘッド30からインク滴39が吐出すると、インク滴39は記録ヘッド30から帯電したプラス電荷を奪う。すると、奪われたプラス電荷を補充すべく抵抗64にプラス電荷が流れる。そのため、抵抗64にこのようにプラス電荷が流れることによって電圧降下が発生し、記録ヘッド30の電圧が変化(減少)する。そこで、このように変化する電圧について、コンデンサー68を介することによって直流分をカットし、電圧の変化分のみをプラスマイナスの電圧振幅を有する出力信号として取り出す。記録ヘッド30に印加される電圧Veは、通常ASIC61の作動電圧より高電圧(例えば数十ボルト〜百ボルト)である。従って、このようにコンデンサー68を介することによって、電圧の変化分のみがASIC61に入力されるようにできることから、ASIC61の耐電圧値を抑制することもできる。
その後、この出力信号はASIC61に入力され、必要に応じて増幅された後、電圧変化量を表す電圧振幅の値を閾値と比較し、ノズルからのインク滴の吐出の有無を判定する。もとより、本実施形態の場合は、マイナス側の電圧振幅が閾値以上であれば吐出有りと、閾値以内であれば吐出無しと判定するのである。インク滴の吐出の有無の判定結果は、ノズル毎にRAM53に記録される。
ところで、記録ヘッドに印加された電圧には、インクジェットプリンタ10の外部からの電界ノイズやインクジェットプリンタ10の内部に発生する電界ノイズ等に起因して、記録ヘッド30の電圧を変化させてしまうことがある。そのため、吐出検査においては、インク滴の吐出によって発生する電圧変化に、この電界ノイズに起因して発生する電圧変化(以降「電圧ノイズ」とも呼ぶ)が重畳することから、インク滴の吐出によって発生する電圧変化(以下「吐出電圧変化」)を検出するために閾値を設けるのである。従って、閾値は、電圧ノイズの影響を受けないようにするべく、通常、吐出電圧変化についてのマイナス側の最大電圧変化量が越える値を設定する。
しかしながら、発生する電圧ノイズには、通常プラス側とマイナス側の両方に電圧が変化する電圧振幅が存在する。このため、例えば、吐出電圧変化がマイナス側へ最大になるときに、これに重畳する電圧ノイズの電圧振幅がプラス側に最大になった場合、吐出電圧変化が電圧ノイズによって減少してしまう。このような場合、吐出検査の判定対象となる記録ヘッド30の電圧変化量が、閾値を越えない状態になることが起こり得ることから、吐出の有無判定が正しく行われないことになってしまう。本発明は、このような状態を回避するためになされたもので、吐出電圧変化を検出し易くすることによって、インク滴の吐出の有無判定を正しく行わせようとするものである。
記録ヘッド30に設けられている複数のノズルのそれぞれには、ノズル別にインクを吐出するために圧力を発生させる圧力発生機構(図2の下側円内参照)が形成されている。すなわち、圧電素子32に電圧をかけると、圧電素子32が変形して部材33を矢印方向(図面下側)へ押し下げ、例えばインクカートリッジ11から供給されたインク38を加圧するように構成されている。この結果、ノズルプレート34に設けられたノズル35から、インクがインク滴39として吐出されるのである。従って、検査対象のノズルに対応した圧電素子に電圧をかけることで、そのノズルについてインク滴の吐出の有無を検査することができる。
圧電素子を変形させる電圧はドライバー基板31から圧電素子の駆動信号として出力される。ドライバー基板31は、記録ヘッド30の近傍でキャリッジ20内に設けられ、サブ基板60と図示しない結線部材によって結線され、ASIC61からの出力信号を受けて動作する。
次に、ノズルに対応した圧電素子がどのように駆動(変形)されるのかについて説明する。図3は、圧電素子の駆動方法を説明するための説明図である。本実施形態では、記録ヘッド30には、Y、M、C、K、各色に対応したノズル列35Y、35M、35C、35Kが設けられ、それぞれのノズル列にはn=1〜180まで180個のノズルが形成されている。このように、本実施形態では記録ヘッド30には合計720個の検査対象ノズルが形成されている。そして、検査対象のノズルからインク滴を吐出させるために、YMCKのノズル列ごとに、検査対象ノズルに対応する圧電素子に対して、圧電素子を変形駆動するヘッド駆動信号DRVn(n=1〜180)を出力する。
ヘッド駆動信号DRVnは、以下のように生成される。メイン基板50では、一画素分に相当する画像を印刷するための区間(キャリッジ20が一画素の間隔を横切る時間でセグメントとも呼ぶ)に、PvとP1、P2、P3の合計4つのパルス信号を有する単位信号(図3の吹き出し部分)が繰返し存在する原信号ODRVと、印刷信号PRTnが生成される。
原信号ODRVは、ノズル内でインクが固まらないように圧電素子を微振動させてインクを振動させるためのパルス信号Pvと、それぞれノズルからインク一滴分のインク滴を吐出させるパルス信号P1、P2、P3とを有している。パルス信号P1のみでは小さいサイズのドットが、パルス信号P1とP2とでは中サイズのドットが、またパルス信号P1とP2とP3とでは大きいサイズのドットが、それぞれ印刷媒体に形成される。
印刷信号PRTn(n=1〜180)は、YMCK各ノズル列について、180個のノズルのうち、インク滴を吐出させるべきノズルを特定するとともに、原信号ODRVにおけるパルス信号を選択する信号である。従って、印刷信号PRTnは印刷実行時には、印刷データ(ドット有無やその階調値)に基づいて、インクを吐出すべきノズルや出力すべきパルス信号を選択する信号となるが、吐出検査時には検査のためにインクを吐出すべきノズルを特定するとともに、出力すべきパルス信号を選択する信号となる。
これらの信号は、前述したようにASIC61を介してドライバー基板31に設けられたマスク回路に出力される。マスク回路は、原信号のうち、印刷信号PRTnによって選択されたパルス信号が、同じく印刷信号PRTnによって特定されたノズルに対応する圧電素子に出力されるように回路構成されている。つまり、マスク回路によって、選択された検査対象ノズルに対応した圧電素子に、Pv、P1、P2、P3のパルス信号のうち印刷信号によって選択されたパルス信号が出力されるように構成され、マスク回路からヘッド駆動信号DRVnとして出力される。こうしてヘッド駆動信号DRVnは生成されるのである。
吐出検査では、このように生成されたヘッド駆動信号が検査対象ノズルに対応する圧電素子に出力され、その後、次の検査対象ノズルが選択されるごとにヘッド駆動信号が対応する圧電素子に出力されるという手順が順次繰り返される。そして、この手順がYMCKすべてのノズル列に適用されることによって、すべてのノズルについて対応する圧電素子が順次駆動され、吐出検査が行われるのである。
このような仕組みを有するインクジェットプリンタ10に組み込まれた吐出検査装置は、基本的にCPU51がROM52、RAM53、およびASIC61と連携動作することで、本発明の吐出検査装置として機能する。つまり、図2に示したように、CPU51は、検査前電圧変化検出部51a、支配的周波数抽出部51b、継続時間設定部51c、吐出圧力発生部51d、フィルタ部51e、吐出検査正否判定部51fとして機能するのである。
ここで、このような各機能部が実施する吐出検査に関する手順内容を説明する前に、繰返しインク滴(記録液)を吐出する継続時間によって、記録ヘッドに発生する電圧変化が原理的に有すべき主たる周波数について、図4および図5を用いて具体的に説明する。
図4は、吐出検査の対象ノズルとしてノズルn=1が選択され、選択されたノズルに対してインク滴の吐出有無を検出する場合を示したタイミングチャートである。本実施形態では、1つのノズルに対して、8セグメントの期間を吐出検査期間として吐出検査されるものとする。そして、基本的に以下に説明する検査手順が、ノズルn=2以降の総てのノズルについて順次繰返されるのである。
図4(a)に示したタイミングチャートは、吐出検査開始(時間T=0)から2セグメントの期間(時間T=t1まで)をインクに吐出圧力を繰返して発生させる吐出圧力発生期間とした場合を示したものである。印刷信号PRT1によって、この期間、原信号ODRVのうちパルス信号P1、P2、P3の3つのパルス信号を出力するヘッド駆動信号DRV1が生成される。これによって、ノズルn=1に対応する圧電素子が2セグメントの期間継続して駆動される。つまり、3つのパルス信号が2セグメント間圧電素子を駆動することによって合計6回圧電素子が繰返して駆動され、この結果、インク滴が6回吐出することになる。その後、総てのパルス信号が出力されない状態が6セグメント間(時間T=t1〜t3)続き、ノズルn=1についての吐出検査が終了する。
ところで、P1からP3の各パルス信号を欠けることなくヘッド駆動信号を出力させるためには、図から明らかなように、原信号ODRVと印刷信号PRT1、PRT2とが同期していることが必要である。このため、本実施形態では、ラッチ(LAT)信号を基準として原信号ODRVと印刷信号PRTnとの同期が取られているものとする。LAT信号は、プリンタにおける諸動作の基準となる信号の一つとして通常用いられるもので、1セグメントの周期で出力される所定のパルス幅をもったパルス信号である。もとよりLAT信号以外の信号(例えばクロック信号)を用いても差し支えない。
こうして、ノズルn=1に対応する圧電素子が検査開始(T=0)から時間t1まで2セグメント間ヘッド駆動信号DRV1によって駆動され、ノズルからインク滴が吐出すると、図2において説明したように記録ヘッド30はプラス帯電しているので、帯電したインク滴39は記録ヘッド30から吐出回数に応じた量のプラス電荷を奪い去る。すると、奪われたプラス電荷を補うべく、電圧発生回路62から抵抗64を通してプラス電荷が補充される。この結果、抵抗64に電流が流れることから、記録ヘッド30の電圧はインク滴の吐出回数に応じて漸次減少する。
減少する電圧の大きさは、このように奪われるプラス電荷量に依存するため、吐出するインク滴の吐出回数におおよそ依存する。ところで、吐出検査において吐出の有無判定の精度を向上するためには電圧変化は大きいことが望ましい。また、記録ヘッド30の電圧変化に存在すべき主たる正弦波(後述する)を安定して発生させるために、記録ヘッド30から連続してインク滴を吐出させることが望ましい。従って、本実施形態では、吐出検査時における駆動信号は、P1、P2、P3総てのパルス信号が1セグメント間に存在する信号になるように印刷信号PRTnを出力するのである。
その後、ノズルn=1は時間t1からt3までの6セグメント間吐出駆動されないためインク滴は吐出されず、その結果記録ヘッド30と電極部材71との間の電圧は徐々に上昇増加し、その後、吐出検査の開始時に印加した電圧Veまで回復する。電圧の回復(増加)時間は、抵抗64(図2)を流れるプラス電荷の減少量に依存することになる。本実施形態では、電圧の減少時間とほぼ同じであるものとして扱う。従って、2セグメント後となる時間t2において電圧Veまで回復するものとして扱う。
こうして変化する記録ヘッド30の電圧について、コンデンサー68(図2)を介することによって直流分をカットし、電圧の変化分のみをプラスマイナスする電圧振幅を有する出力信号として取り出す。取り出した出力信号は、図4(a)に示したように、1周期がほぼ時間t2となる周波数を持つおおよそ正弦波の形状を呈する。つまり、ノズルから吐出するインク滴によって発生する記録ヘッドの電圧変化として、2セグメント間吐出圧力を発生継続した場合は、原理的に1周期が時間t2となる周波数を主たる周波数とする正弦波の形状を有する出力信号が得られることになる。なお、得られた出力信号が閾値を越えれば、インク滴の吐出有りと判定される。
一方、図4(b)に示したタイミングチャートは、吐出検査開始(時間T=0)から4セグメントの期間(時間T=t2まで)を、インクに吐出圧力を繰返して発生させる吐出圧力発生継続期間とした場合を示したものである。印刷信号PRT1によって、この期間、原信号ODRVのうちパルス信号P1、P2、P3の3つのパルス信号を出力するヘッド駆動信号DRV1が生成される。これによって、ノズルn=1に対応する圧電素子が4セグメントの期間継続して駆動される。つまり、3つのパルス信号が4セグメント間圧電素子を駆動することによって合計12回圧電素子が繰返して駆動され、この結果、インク滴が12回吐出するのである。その後、総てのパルス信号が出力されない状態が4セグメント間(時間T=t2〜t3)続き、ノズルn=1についての吐出検査が終了する。
2セグメント間吐出圧力を継続して発生した場合は、時間t1以降、図中破線で示したように記録ヘッドの電圧は増加に転ずるが、時間t2まで4セグメント間ヘッド駆動信号DRV1によって圧電素子を駆動した場合は、インク滴が時間t1以降さらに継続して繰返し吐出されるので、記録ヘッド30の電圧はインク滴の吐出回数に合わせてさらに減少する。
その後、ノズルn=1は時間t2からt3までの4セグメント間駆動されないためインク滴は吐出されず、その結果記録ヘッド30の電圧は徐々に上昇増加し、4セグメント後の時間t3においてほぼ電圧値Veまで回復する。
こうして変化する記録ヘッド30の電圧について、コンデンサー68(図2)を介することによって直流分をカットし、電圧の変化分のみをプラスマイナスする電圧振幅を有する出力信号として取り出す。取り出した出力信号は、図4(b)に示したように、1周期がほぼ時間t3となる周波数を持つおおよそ正弦波の形状を呈する。つまり、ノズルから吐出するインク滴によって発生する記録ヘッドの電圧変化として、4セグメント間吐出圧力を継続発生した場合は、原理的に1周期が時間t3となる周波数を主たる周波数とする正弦波の形状を有する出力信号が得られることになる。なお、得られた出力信号が閾値を越えれば、インク滴の吐出有りと判定される。
従って、2セグメント間吐出圧力を継続発生したときに呈する正弦波(図中、破線)に対して、おおよそ2倍の時間を1周期とする周波数を有する出力信号が得られることになる。言い換えれば、吐出圧力の発生回数を変化させることによって、インク滴がノズルから吐出されたときに生ずる記録ヘッド30の電圧変化について、その変化分である出力信号が有する周波数を変更することが可能となる。これを、図5にて説明する。
図5は、図4にて説明したように、2セグメント間吐出圧力を継続発生したときに出力信号が有する主たる周波数が周波数f2であり、4セグメント間吐出圧力を継続発生したときに出力信号が有する主たる周波数が周波数f4であることを示している。f2は、前述した説明から1周期が時間t2であるので、f2=1/t2(Hz/秒)で求められる。またf4は、同じく前述した説明から1周期が時間t3であるので、f4=1/t3(Hz/秒)で求められる。
このように、吐出圧力発生の継続時間つまり吐出圧力発生回数によって、出力信号が有する主たる周波数が原理的に決まることになる。また、図4の説明から明らかなように、出力信号が有する主たる周波数は、吐出圧力発生の継続時間の逆数になることから、出力信号が有する主たる周波数と吐出圧力発生の継続時間との関係は、図5に示した破線のようになる。ちなみに、1セグメントが1ミリ秒であったと仮定すると、f2は2ミリ秒の逆数で500Hz/秒、f4は4ミリ秒の逆数で250Hz/秒となる。また、吐出圧力発生の継続時間が3セグメントの場合は、出力信号が有する主たる周波数は、3ミリ秒の逆数で、333Hz/秒となる。
ところで、出力信号が有する主たる周波数が原理的に決まる吐出圧力発生の継続時間には、実際には設定可能範囲が存在する。例えば図4に示した場合では、吐出時間が4セグメントより多い数のセグメント、つまり1ノズルあたりの吐出検査期間の半分より長くなると、前述したように電圧が吐出検査前の状態まで戻らないことになるので、出力信号は正弦波の形状を呈さなくなる。このため、主たる周波数は吐出時間によって原理的に定まるという状態にはならないことになる。また、説明は省略するが、吐出回数が一定回数を超えると、インク滴の吐出回数が増えても補充される電荷量が増えない状態が発生する場合もあり、この場合も出力信号は正弦波の形状を呈さなくなってしまう。
また1ノズルあたりの吐出時間が、例えば1セグメント以下という短い時間になると、インク滴の吐出回数が少ないために、インク滴の吐出に伴って発生する電圧変化が小さくなってしまうことになるので、閾値を用いての吐出検査ができないに状態になってしまう。このように、吐出圧力発生の継続時間については、継続時間の設定可能範囲が存在することになるのである。
そこで、本実施形態では、1ノズルあたりの吐出検査時間は8セグメントであることとし、このときの継続時間の設定可能範囲は2セグメントから4セグメントまでの範囲であるものとする。従って、以降説明する実施例においては、2セグメント、3セグメント、4セグメントの3つの継続時間が予め設定されているものとする。もとより、1ノズルあたりの吐出検査時間および継続時間の設定可能範囲は、実際には、インク滴のサイズや1セグメント当たりの時間、1セグメントにおけるインク滴の吐出回数、あるいは記録ヘッドに印加する電圧や補充電荷の流れ具合などによって変化するものであり、予め設定される継続時間もこれに合わせて複数設定されるものである。
(第1の吐出検査装置の実施例)
それでは、本発明の吐出検査装置において、吐出検査装置に構成された各機能部が第1の吐出検査装置として実施する吐出検査に関する手順内容について、図6を用いてその一実施例を説明する。図6は、第1の吐出検査装置が構成する各機能部が行う手順を示したブロック図である。
まず、検査前電圧検出部51aは、記録ヘッド30の電圧を、吐出検査開始前に検出すし、検出した吐出検査前電圧を電圧変化として取り出す。具体的には、CPU51が、記録ヘッド30の電圧についての電圧変化を、コンデンサー68を介して、周波数分析できる時間分に相当する所定の時間分、出力信号として取り出すのである。取り出された出力信号は、直流分がカットされ、プラス側およびマイナス側双方に振幅を有する所定の時間分の信号となる。
次に、支配的周波数抽出部51bは、まず取り出された出力信号について周波数分析を行い、周波数毎の電圧値として分析する。周波数分析の方法としては、フーリエ解析を用いたフーリエ分析の手法など、周知な分析方法を用いればよい。そして、分析の結果から、支配的周波数を抽出する。本実施形態では、周波数毎の電圧値のうち、最大電圧値となる周波数を支配的周波数として抽出する。CPU51が、ROM52に予め格納された周波数分析プログラムを読み出して出力信号を周波数分析する。そして分析結果から、電圧値が最大値となる周波数を抽出するのである。
その後、継続時間設定部51cは、抽出された支配的周波数に基づいて、吐出圧力発生を継続する継続時間を設定する。CPU51は、吐出電圧変化の主たる周波数が、支配的周波数から最も離れた周波数になるように、予め定められた複数の継続時間から吐出圧力発生の継続時間を設定する。本実施例では、予め定められた複数の継続時間がROM52に格納され、CPU51が、この格納された複数の時間から1つを選択することで設定する。
継続時間の設定の様子を図7を用いて説明する。図7(a)は、検査前の電圧ノイズを周波数分析した状態を示したもので、横軸は周波数、縦軸は周波数の大きさを示す電圧値である。図7(a)では、周波数Nf1にて電圧値が最大となることを示すことから、抽出される支配的周波数はNf1となる。続いて、図7(b)に示したように、支配的周波数Nf1に対して、予め設定された複数の継続時間のうちで、継続時間に対応する主たる周波数のうち最も離れている周波数はf2となることから、継続時間として2セグメントが設定されるのである。
図6に戻り、続いて吐出圧力発生部51dは、検査対象ノズルの吐出検査時において、設定された継続時間分圧電素子を繰返し駆動する。CPU51は、吐出検査のために、印刷信号PRTnによって原信号ODRVをマスクしたヘッド駆動信号DRVnを、設定された継続時間圧電素子に出力させて、検査対象ノズルに対応する圧電素子を繰返し駆動する。
一方、フィルタ部51eは、設定された継続時間によって原理的に定まる周波数を通過させるフィルタを用いて、検査対象ノズルからインク滴が吐出したときに発生する電圧変化の出力信号をフィルタする。こうすることによって、フィルタ後の出力信号は、吐出電圧変化のみの出力信号が得られる確率が高くなる。
本実施例では、フィルタとしてオペアンプによるバンドパスフィルタを用いることとする。従って、バンドパスフィルタの中心周波数は、設定された継続時間によって原理的に定まる周波数と一致していることが好ましい。バンドパスフィルタについて、具体的に図8を用いて説明する。
図8は、ASIC61内にバンドパスフィルタ69が形成されている吐出検査装置の概略構成を示す模式図である。基本的に図2に示した吐出検査装置と同じ構成要素については、同じ符号を付して示した。吐出検査においては、記録ヘッド30からインク滴39が吐出すると、ノズルプレート34から電荷を奪い去るため印加電圧Veが変化する。この電圧変化についてコンデンサー68を介して直流分をカットした出力信号Aが、ASIC61に取り込まれ、その後、出力信号Aは、バンドパスフィルタ69によってフィルタされた出力信号Bとなる。
バンドパスフィルタ69は、本実施例では図中吹き出し部に示したように、3つの抵抗(R1、R2、R5)と2つのコンデンサー(C)、およびオペアンプから回路構成された周知のフィルタ構成を有している。この場合、中心周波数f0は、次式(1)によって求められた値となる。
f0=1/2πC×{1/R5×(1/R1+1/R2)}1/2 …(1)
従って、抵抗R1、R2、R5の抵抗値もしくはコンデンサーCの容量値を調節することによって、中心周波数f0を、設定された継続時間によって原理的に定まる周波数とほぼ一致させることができる。そこで、本実施例では、これらの抵抗R1、R2、R5のうち少なくとも1つの抵抗の抵抗値を複数種類用意し、これらを電気的に切り替えて変更できるように回路構成して、互いに異なる中心周波数を有する複数のバンドパスフィルタを構成する。こうすれば、図7(b)に示した場合では、CPU51は、例えば抵抗R5の抵抗値を、複数の抵抗値を切り替えて調節することによって、中心周波数f0を周波数f2にほぼ一致させることができる。
また、バンドパスフィルタ69をサブ基板60に構成し、各抵抗のうち少なくとも1つをボリュームで構成したり、コンデンサーをバリコンにしたりして、インクジェットプリンタ10のユーザーが、抵抗値もしくは容量値を調節することとしてもよい。この場合、インクジェットプリンタ10に通知手段(例えば表示装置)を備え、この表示装置を用いて吐出圧力発生回数の継続時間をユーザーに通知することが好ましい。こうすれば、ユーザーが表示された継続時間から、調節すべき中心周波数を知覚することができる。
その後、前述したように、この出力信号Bは必要に応じて増幅された後、電圧変化量を表す電圧振幅の値を閾値と比較し、ノズルからのインク滴の吐出の有無を判定する。このとき、支配的周波数から最も離れた周波数を吐出電圧変化の主たる周波数としても、吐出の有無判定が正しく行えない場合が存在する。例えば、図7(a)に示したように、2番目に大きな電圧値を有する周波数Nf2が、周波数f2に近い場合は、支配的周波数Nf1の影響は抑制されるものの、周波数Nf2が吐出電圧変化に影響を与えてしまうことになるからである。
そこで、図6に戻り、吐出検査正否判定部51fは、検査対象ノズルについて行われた吐出の有無の判定結果から、吐出検査が正しく行われた否かを判定する。そして、正否判定結果を継続時間設定部51cに渡す。継続時間設定部51cは、渡された正否判定結果に基づいて、吐出検査が正しく行われていない場合は、継続時間を変更するのである。
具体的には、CPU51は、RAM53に記録された各ノズルについての吐出有無判定結果を随時読み出し、例えば、起こりえない連続数の吐出無しノズルが発生していた場合は、吐出検査が正しく行われていないと判定する。そして、この判定結果に基づいて、CPU51はASIC61を介して出力する印刷信号PRTnを変更して、圧電素子を駆動するヘッド駆動信号DRVnを変更し、繰返し回数を変更する。その後、改めて吐出検査が行われ、吐出検査結果が正しいと判定されると吐出検査は終了する。
以上説明した第1の吐出検査装置についての実施例によれば、インク滴の吐出によって発生する電圧変化に重畳し、インクジェットプリンタ10の外部もしくは内部からの電界ノイズに起因して生じる電圧ノイズを抑制することができる。この結果、記録ヘッドの電圧変化を用いてノズルからのインク滴の吐出の有無判定を正しく行うことができる。
(第2の吐出検査装置の実施例)
次に、本発明の吐出検査装置において、吐出検査装置に構成された各機能部が第2の吐出検査装置として行う吐出検査の手順内容について、図9を用いてその一実施例を説明する。図9は、第2の吐出検査装置が構成する各機能部が行う手順を示したブロック図である。
まず、検査前電圧検出部51aは、記録ヘッド30の電圧を、吐出検査開始前に検出すし、検出した吐出検査前電圧を電圧変化として取り出す。次に、支配的周波数抽出部51bは、取り出された電圧変化から、支配的周波数を抽出する。検査前電圧検出部51aと支配的周波数抽出部51bの手順は、前述した第1の吐出検査装置における手順と同じであるためここでの説明は省略する。
その後、第2の吐出検査装置では、フィルタ部51eが、検査対象ノズルからインク滴が吐出したときに発生する電圧変化の出力信号をフィルタするためのバンドパスフィルタの中心周波数を、抽出された支配的周波数から最も離れるように設定する。
本実施例では、異なる中心周波数を有する2つのバンドパスフィルタが予めASIC61内に形成されているものとし、このうちの1つを選択して設定することとする。もとより、形成されているバンドパスフィルタの数は2つに限るものでなく2以上の複数であればよい。また。形成される場所もASIC61内ではなく、サブ基板60上に形成されることとしてもよい。
2つのバンドパスフィルタについて、具体的に図10を用いて説明する。なお、図10は第2の吐出検査装置の概略構成を示す模式図であり、ASIC61内の構成以外は、図8に示した吐出検査装置と基本的に同じ構成である。
図10に示したように、ASIC61内には、2つのバンドパスフィルタ69aと69bが形成されている。また、これらの2つのバンドパスフィルタを切り替えるためのスイッチ80が設けられ、このスイッチ80をフィルタ選択信号が制御するように構成されている。バンドパスフィルタ69aの中心周波数はfaであり、バンドパスフィルタ69bの中心周波数はfbであるものとする。なお、バンドパスフィルタ69aおよび69bは、図8の吹き出し部に示した周知のフィルタ構成を有している。
もとより、2つのバンドパスフィルタ69aおよび69bをサブ基板60に構成することとしてもよい。また、前述した第1の吐出検査装置におけるバンドパスフィルタと同様に、1つのフィルタ回路を構成する複数の抵抗のうち少なくとも1つの抵抗の抵抗値を複数用意し、これらを切り替えるように構成することとしてもよい。
CPU51は、フィルタ選択信号によってスイッチ80を制御し、このように形成された2つのバンドパスフィルタから、支配的周波数から遠い方の中心周波数を有するバンドパスフィルタを選択する。本実施例では、中心周波数faのバンドパスフィルタが選択されたものとして扱う。そして選択した中心周波数faを継続時間設定部51cに渡す。
図9に戻り、次に、継続時間設定部51cは、渡された中心周波数faに基づいて、吐出圧力発生を継続する継続時間を設定する。CPU51は、吐出電圧変化の主たる周波数が、中心周波数にできるだけ一致するように、継続時間の設定可能範囲から吐出圧力発生の継続時間を設定する。
継続時間の設定は、図5の破線で示したグラフに示したように周波数とセグメントの関係に基づいて行われる。例えば、周波数faがf3と同じであると仮定すると、グラフから吐出圧力発生継続時間は3セグメントとなる。こうして、CPU51は周波数faに対応するセグメント数を設定する。
続いて吐出圧力発生部51dは、検査対象ノズルの吐出検査時において、設定された継続時間分圧電素子を繰返し駆動する。CPU51は、吐出検査のために、印刷信号PRTnによって原信号ODRVをマスクしたヘッド駆動信号DRVnを、設定された継続時間圧電素子に出力させて、検査対象ノズルに対応する圧電素子を繰返し駆動する。従って、吐出電圧変化の主たる周波数を、中心周波数faに可能な限り一致させることができるのである。
その後、フィルタ部51eは、支配的周波数から離れた中心周波数を有するバンドパスフィルタを用いて、検査対象ノズルからインク滴が吐出したときに発生する電圧変化の出力信号をフィルタする。こうすることによって、フィルタ後の出力信号は、吐出電圧変化のみの出力信号が得られる確率が高くなるのである。
その後、前述したように、フィルタ後の出力信号は必要に応じて増幅され、電圧変化量を表す電圧振幅の値を閾値と比較し、ノズルからのインク滴の吐出の有無を判定する。このとき、前述した第1の吐出検査装置の場合と同様に、支配的周波数から最も離れた中心周波数のバンドパスフィルタを用いたとしても、吐出の有無判定が正しく行えない場合が存在する。例えば、図7(a)に示したように、2番目に大きな電圧値を有する周波数Nf2が、周波数faに近い場合は、支配的周波数Nf1の影響は抑制されるものの、周波数Nf2が吐出電圧変化に影響を与えてしまうことになるからである。
そこで、検査結果正否判定部51fは、検査対象ノズルについて行われた吐出の有無の判定結果から、吐出検査が正しく行われた否かを判定する。そして、正否判定結果をフィルタ部51eに渡す。フィルタ部51eは、渡された正否判定結果に基づいて、吐出検査が正しく行われていない場合は、用いるバンドパスフィルタを変更するのである。
具体的には、CPU51は、RAM53に記録された各ノズルについての吐出有無判定結果を随時読み出し、例えば、発生確率が極めて低い連続数の吐出無しノズルが発生していた場合は、吐出検査が正しく行われていないと判定する。そして、この判定結果に基づいて、CPU51はフィルタ選択信号を用いてスイッチ80を切り替え、バンドパスフィルタ69bを選択する。その後、改めて吐出検査が行われ、吐出検査結果が正しいと判定されると吐出検査は終了する。
以上説明した第2の吐出検査装置についての実施例によれば、インクジェットプリンタ10の外部もしくは内部からの電界ノイズに起因して生じる電圧ノイズが、インク滴の吐出によって発生する電圧変化に重畳することを抑制することができる。この結果、記録ヘッドの電圧変化を用いてノズルからのインク滴の吐出の有無判定を正しく行えるようにすることができる。
以上、本発明について、一実施形態としてのインクジェットプリンタに搭載された第1の吐出検査装置および第2の吐出検査装置について、それぞれ実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施の形態および実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な態様で実施し得ることは勿論である。以下変形例を挙げて説明する。
(変形例)
上記第1の吐出検査装置の実施例では、バンドパスフィルタの中心周波数を吐出電圧変化が有する主たる周波数にほぼ一致させて出力信号をフィルタすることとしたが、バンドパスフィルタを用いて出力信号をフィルタする処理を行わないこととしてもよい。
設定された吐出圧力発生継続時間によってインクが吐出したときに発生する吐出電圧変化が、電圧ノイズに含まれる周波数毎の電圧値の状態によって影響を受けない場合がある。例えば、吐出電圧変化が有する主な周波数が、支配的周波数から大きく離れている場合である。このような場合は、バンドパスフィルタによって出力信号をフィルタしなくても、吐出電圧変化を用いて吐出有無判定を正しく行うことができる。
また、上記第1の吐出検査装置の実施例では、1つの回路構成を有するバンドパスフィルタを用い、バンドパスフィルタを構成する抵抗値や容量値を調節することで、バンドパスフィルタの中心周波数を吐出電圧変化が有する主たる周波数にほぼ一致させて出力信号をフィルタすることとした。本変形例では、複数の異なる中心周波数を有するバンドパスフィルタを予め形成し、これらのうちから、吐出電圧変化が有する主たる周波数に最も近い周波数を中心周波数として有するバンドパスフィルタを用いてフィルタすることとしてもよい。こうすれば、バンドパスフィルタの数は増えるものの、中心周波数を調節するために、例えばバンドパスフィルタを構成する抵抗について多くの抵抗値を用意しないので、回路規模を大きくすることなくバンドパスフィルタを構成することができる。
上記第2の吐出検査装置の実施例では、吐出電圧変化が有する主たる周波数が、用いるバンドパスフィルタの中心周波数にほぼ一致させるように吐出圧力を繰返し発生する継続時間を設定することとしたが、継続時間を特段設定する処理を行わないこととしてもよい。
電圧ノイズに含まれる周波数成分が、設定されたバンドパスフィルタによってフィルタされ、インク滴が吐出したときに発生する吐出電圧変化が、電圧ノイズに含まれる周波数毎の電圧値の影響を殆ど受けない場合がある。例えば、吐出電圧変化が有する主な周波数が、支配的周波数から大きく離れている場合である。このような場合は、継続時間の設定可能範囲で予め定められているどの継続時間でも良く、従って継続時間をバンドパスフィルタの中心周波数に一致させなくても、吐出電圧変化を用いて吐出有無判定を正しく行うことができる。
また、上記第2の吐出検査装置の実施例では、2つのバンドパスフィルタを形成することとしているが、このとき、それぞれのバンドパスフィルタの中心周波数faとfbを、予め定められた継続時間における最大と最小の継続時間について吐出電圧変化が有する主たる周波数と一致させることとしてもよい。
上述した図7の説明から明らかなように、支配的周波数から最も離れた周波数として設定される周波数は、予め定められた継続時間のうちの最大セグメント数か最小セグメント数のどちらかが選択されることになる。そこで、予めこの選択されるセグメント数に応じて出力信号が原理的に有する主たる周波数が、バンドパスフィルタの中心周波数になるようにすれば、選択されたバンドパスフィルタの中心周波数と出力信号が有する主たる周波数を一致させることができる。
例えば図7に示した場合では、周波数faとfbとを、周波数f2とf4とに一致させるようにする。つまり、周波数faをf2とした場合は、周波数fbをf4とする。こうすれば、フィルタ後の出力信号には吐出電圧変化が減衰することなく存在することになるので、吐出有無判定の精度を高めることができる。
また、上記実施例では、周波数毎の電圧値のうち、最大電圧値を呈する周波数を支配的周波数として抽出したが、とくにこれに限らず、周波数毎の電圧値に存在するピーク電圧の大きい方から複数のピーク電圧値に対応する周波数を抽出し、これらの周波数を単純平均した周波数としてもよい。あるいは、これらの周波数を各電圧値で重み付けした平均周波数としてもよい。
また、上記実施例では、吐出圧力発生の継続時間をセグメント単位のセグメント数としたが、これに限らず、例えば、パルス信号の出力数としてもよい。こうすれば、吐出圧力の発生時間継続時間を細かく設定することができるので、吐出電圧変化が有する主たる周波数を細かく調節することが可能となる。例えば、前述した第1の吐出検査装置の実施例においては、継続時間の設定可能範囲を4セグメント(つまりパスル信号12個分)からパルス信号14個分というように拡大することが可能である。また、前述した第2の吐出検査装置の実施例においては、選択されたバンドパスフィルタの中心周波数に対して、吐出電圧変化が有する主たる周波数をさらに近づけることが可能となる。
あるいは、吐出圧力発生の継続時間を実時間としてもよい。実施例では、パルス信号の出力が途中で途切れることなく出力されるように、LAT信号に同期してセグメント単位で継続時間を設定するものとしたが、パルス信号が途中で切れても、実際に途切れたパルス信号に応じてインク滴が吐出されるなど、インク滴の吐出に対して影響が無い場合は、継続時間を実時間とすることが好ましい。
このように継続時間をパルス信号の出力数としたり、実時間としたりする場合は、このような継続時間にあわせてパルス信号が選択されたヘッド駆動信号がマスク回路から出力されるように、ASIC61からマスク回路に印刷信号PRTnを出力すればよい。
また、上記実施例では、フィルタ部は、出力信号をバンドパスフィルタを用いてフィルタすることとしたが、バンドパスフィルタ以外のフィルタを用いてフィルタすることとしてもよい。例えば、ハイカットフィルタとローカットフィルタとを用いてバンドパスフィルタを構成することとしてもよい。こうすれば、上記実施例においては説明を省略したが、通過域を自由に設定することができるので、出力信号を適切にフィルタして電圧ノイズをさらに抑制できることが期待できる。
上記実施形態では、記録ヘッド30と電極部材71との間に吐出検査用の電圧を印加する際、記録ヘッド30側がプラス電位になるように印加したが、電極部材71側がプラス電位になるように印加することとしてもよい。こうすれば、記録ヘッド30付近に高い電圧を生成する回路を形成することが困難な構成を有するインクジェットプリンタのような場合など、記録ヘッド30側に高い電圧を印加できない場合であれば、例えば検査ボックス70の周辺などキャリッジ20以外の場所に電圧発生回路62を形成することによって、測定端子間に吐出検査用の電圧を印加することができる。なお、この場合、インク滴が吐出したとき、出力信号の振幅電圧は逆に振れる。つまり、上記実施形態ではノズルからインク滴が吐出されると電圧がマイナスの方向に振れたが、この場合は、プラスの方向に出力信号の電圧が振れることになるため、増幅後の出力信号について、プラス側に閾値を設定して、吐出判定を行えばよい。
また、上記実施形態では、記録ヘッド30側の電圧を検出するものとしたが、電極部材71側の電圧を検出することとしてもよい。記録ヘッド30から奪われた電荷は、インク滴の着弾とともに対向電極となる電極部材71に移動することから、電極部材71側においても、記録ヘッド30と同様に電圧変化が生ずる。従って、電極部材71側の電圧を検出しても、記録ヘッド30からインク滴の吐出の有無を検査することができる。もとより、電極部材71に生ずる電圧変化の方向は、記録ヘッド30から奪われた電荷が付着するため、記録ヘッド30とは逆の方向の電圧変化が生じることは言うまでもない。
このように、電極部材71側の電圧を検出するようにすれば、電圧を検出するための回路やバンドパスフィルタを、ASIC61や基板60に構成する必要が無い。従ってキャリッジ20を軽くしたり小さくしたりすることができるのでキャリッジ20の走査に伴う負荷(例えばキャリッジモータ40の駆動力)を軽減することができる。なお、この場合も、上述したように、記録ヘッド30と電極部材71との間に吐出検査用の電圧を印加する際、電極部材71側がプラス電位になるように印加することとしてもよい。こうすれば、電圧発生回路62をキャリッジ20に設ける必要が無いので、さらにキャリッジを軽くできるので、キャリッジ20の走査に伴う負荷を軽減することができる。
また、上記実施形態では、インクジェットプリンタ10に、インク滴39の着弾受け領域であって吐出検査のための専用領域となる検査ボックス70を設け、この検査ボックス70内の電極部材71を、記録ヘッド30の対向電極として吐出検査を行うこととしたが、これ以外を吐出検査領域としてもよい。例えば、図1において、インクジェットプリンタ10に設けられたクリーニングボックス18を吐出検査領域としてもよい。この場合、クリーニングボックス18内に、電極部材71に相当する対向電極を設けておけばよい。また、印刷媒体25を図面裏面から支持するプラテン28を吐出検査領域としてもよい。プラテン28には、説明は省略するが、インクミストを吸収するための電極が溝部を形成して設けられている場合があり、この電極を対向電極として用いることができる。また、フチなし印刷の場合、この溝部がインク滴の着弾領域にもなることからも吐出検査領域として好適である。あるいは、図示しないが、ノズル先端におけるインクのメニスカス増粘を抑制するためのフラッシングを行う際のフラッシング領域に対向電極を設けることで、フラッシング領域を吐出検査領域としてもよい。
こうすれば、インクジェットプリンタ10内に吐出検査のための専用の領域を設ける必要が無いので、吐出検査領域を設けるためにインクジェットプリンタを大きくすることを回避することができる。また、インクジェットプリンタに既に備えられている部材を吐出検査のための部材と兼用することができるので、インクジェットプリンタのコストアップを抑制することができる。
また、上記実施形態では、圧電素子を駆動して、ノズルからインク滴を吐出させることとしたが、発熱抵抗体(例えばヒータなど)に電圧をかけてインクを加熱し、発生した気泡によりインクを加圧してインク滴を吐出させるものとしてもよい。こうすれば、圧電素子を用いないインクジェットプリンタにも、本発明のノズル検査装置を適用することができる。
また、上記実施形態では、インクジェットプリンタによって印刷媒体にインク滴を吐出する吐出検査装置を、一つの実施形態として説明したが、本発明はこれに限るものではないことは勿論である。例えば、ガラス基板や樹脂基板に記録液を吐出して配線パターンの形成を行うインクジェット記録装置など、インクジェット方式を用いて記録液を吐出することによって、画像や図形、文字などを記録媒体に記録する装置でも同様に実施できるものである。
本発明の一実施形態となるインクジェットプリンタの概略構造図。 本発明の一実施形態としての吐出検査装置の構成を説明するための模式図。 記録ヘッド内のインクに圧力を発生させる駆動方法を説明する説明図。 (a)(b)とも、記録ヘッドの電圧変化が原理的に有すべき主たる周波数 を説明するためのタイミングチャート。 記録ヘッドの電圧変化が原理的に有すべき主たる周波数の説明図。 第1の吐出検査装置の実施例を示す機能構成ブロック図。 (a)(b)とも、継続時間の設定の様子を説明する説明図。 第1の吐出検査装置の構成を説明するための模式図。 第2の吐出検査装置の実施例を示す機能構成ブロック図。 第2の吐出検査装置の構成を説明するための模式図。
符号の説明
10…インクジェットプリンタ、11〜14…インクカートリッジ、17…フレーム、18…クリーニングボックス、20…キャリッジ、21…ガイド、25…印刷媒体、26…駆動モータ、28…プラテン、30…記録ヘッド、31…ドライバー基板、32…圧電素子、33…部材、34…ノズルプレート、35…ノズル、35Y,35M,35C,35K…ノズル列、38…インク、39…インク滴、40…キャリッジモータ、41…キャリッジベルト、45…フレキシブル基板、50…メイン基板、50a…主制御回路、51…CPU、51a…検査前電圧変化検出部、51b…支配的周波数抽出部、51c…継続時間設定部、51d…吐出圧力発生部、51e…フィルタ部、51f…吐出検査正否判定部、52…ROM、53…RAM、54…フラッシュメモリ、60…サブ基板、60a…副制御回路、61…ASIC、62…電圧発生回路、64…抵抗、65…結線部材、66…結線部材、68…コンデンサー、69…バンドパスフィルタ、69a…バンドパスフィルタ、69b…バンドパスフィルタ、70…検査ボックス、71…電極部材、72…インク吸収体、80…スイッチ。

Claims (10)

  1. 記録ヘッドと当該記録ヘッドに対向する対向電極との間に印加された電圧に発生する電圧変化を用いて、前記記録ヘッドに設けられたノズルからの記録液の吐出の有無を判定する吐出検査を行う吐出検査装置であって、
    前記印加された電圧に発生する前記吐出検査前の電圧変化を検出する検査前電圧変化検出部と、
    前記検出した吐出検査前の電圧変化を、所定の分析方法を用いて周波数分析し、当該周波数分析の結果に基づいて、前記吐出検査前の電圧変化を支配的に発生させている支配的周波数を特定する支配的周波数特定部と、
    前記ノズルから前記記録液が吐出すべき吐出圧力を、前記記録液に繰返し発生させる吐出圧力発生部と、
    前記記録液に前記吐出圧力を繰返し発生させる継続時間を、予め定められた複数の継続時間から設定する継続時間設定部と、
    を備え、
    前記継続時間設定部は、前記支配的周波数特定部が特定した前記支配的周波数に基づいて前記継続時間を設定し、
    前記吐出圧力発生部は、前記設定された継続時間、前記記録液に前記吐出圧力を繰返して発生させることを特徴とする吐出検査装置。
  2. 請求項1に記載の吐出検査装置であって、
    少なくとも互いに異なる中心周波数を有する複数のバンドパスフィルタを有し、当該複数のバンドパスフィルタのうち、前記記録液が繰返し吐出したとき前記電圧変化に存在する主たる周波数との差が最も小さい中心周波数を有するバンドパスフィルタを用いて、前記印加された電圧に発生する電圧変化をフィルタするフィルタ部をさらに備えることを特徴とする吐出検査装置。
  3. 請求項1または2に記載の吐出検査装置であって、
    前記継続時間設定部は、前記吐出圧力を発生させる繰返し回数を前記継続時間として設定することを特徴とする吐出検査装置。
  4. 請求項1ないし3のいずれか一項に記載の吐出検査装置であって、
    前記吐出検査の検査結果に基づいて、前記吐出検査が正しく行われた否かを判定する吐出検査正否判定部をさらに備え、
    前記吐出継続時間設定部は、前記前記吐出検査正否判定部の判定結果に応じて、前記設定した継続時間を変更することを特徴とする吐出検査装置。
  5. 記録ヘッドと当該記録ヘッドに対向する対向電極との間に印加された電圧に発生する電圧変化を用いて、前記記録ヘッドに設けられたノズルからの記録液の吐出の有無を判定する吐出検査を行う吐出検査装置であって、
    前記印加された電圧に発生する前記吐出検査前の電圧変化を検出する検査前電圧変化検出部と、
    前記検出した吐出検査前の電圧変化を、所定の分析方法を用いて周波数分析し、当該周波数分析の結果に基づいて、前記吐出検査前における電圧変化を支配的に発生させている支配的周波数を特定する支配的周波数特定部と、
    互いに異なる中心周波数を有する複数のバンドパスフィルタを有し、当該複数のバンドパスフィルタのうち、前記支配的周波数特定部が特定した支配的周波数との差が最も大きい中心周波数を有するバンドパスフィルタを用いて、前記印加された電圧に発生する電圧変化をフィルタするフィルタ部と、
    を備えることを特徴とする吐出検査装置。
  6. 請求項5に記載の吐出検査装置であって、
    前記ノズルから前記記録液が吐出すべき吐出圧力を、前記記録液に繰返し発生させる吐出圧力発生部と、
    前記記録液に前記吐出圧力を繰返し発生させる継続時間を、予め定められた複数の継続時間から設定する継続時間設定部と、
    をさらに備え、
    前記継続時間設定部は、前記記録液が繰返し吐出したとき前記電圧変化に存在する主たる周波数と、前記フィルタ部が用いるバンドパスフィルタの中心周波数との差が最も小さくなるように前記継続時間を設定し、
    前記吐出圧力発生部は、前記設定された継続時間、前記記録液に前記吐出圧力を繰返して発生させることを特徴とする吐出検査装置。
  7. 請求項5または6に記載の吐出検査装置であって、
    前記継続時間設定部は、前記吐出圧力を発生させる繰返し回数を前記継続時間として設定することを特徴とする吐出検査装置。
  8. 請求項5ないし7のいずれか一項に記載の吐出検査装置であって、
    前記吐出検査の検査結果に基づいて、前記吐出検査が正しく行われた否かを判定する吐出検査正否判定部をさらに備え、
    前記フィルタ部は、前記吐出検査正否判定部の判定結果に応じて、前記用いるバンドパスフィルタを変更することを特徴とする吐出検査装置。
  9. 記録ヘッドと当該記録ヘッドに対向する対向電極との間に印加された電圧に発生する電圧変化を用いて、前記記録ヘッドに設けられたノズルからの記録液の吐出の有無を判定する吐出検査を行う吐出検査方法であって、
    前記印加された電圧に発生する前記吐出検査前の電圧変化を検出する検査前電圧変化検出工程と、
    前記検出した吐出検査前の電圧変化を、所定の分析方法を用いて周波数分析し、当該周波数分析の結果に基づいて、前記吐出検査前の電圧変化を支配的に発生させている支配的周波数を特定する支配的周波数特定工程と、
    前記ノズルから前記記録液が吐出すべき吐出圧力を、前記記録液に繰返し発生させる吐出圧力発生工程と、
    前記記録液に前記吐出圧力を繰返し発生させる継続時間を、予め定められた複数の継続時間から設定する継続時間設定工程と、
    を備え、
    前記継続時間設定工程は、前記支配的周波数特定工程が特定した前記支配的周波数に基づいて前記継続時間を設定し、
    前記吐出圧力発生工程は、前記設定された継続時間、前記記録液に前記吐出圧力を繰返して発生させることを特徴とする吐出検査方法。
  10. 記録ヘッドと当該記録ヘッドに対向する対向電極との間に印加された電圧に発生する電圧変化を用いて、前記記録ヘッドに設けられたノズルからの記録液の吐出の有無を判定する吐出検査を行う吐出検査方法であって、
    前記印加された電圧に発生する前記吐出検査前の電圧変化を検出する検査前電圧変化検出工程と、
    前記検出した吐出検査前の電圧変化を、所定の分析方法を用いて周波数分析し、当該周波数分析の結果に基づいて、前記吐出検査前における電圧変化を支配的に発生させている支配的周波数を特定する支配的周波数特定工程と、
    互いに異なる中心周波数を有する複数のバンドパスフィルタを有し、当該複数のバンドパスフィルタのうち、前記支配的周波数特定工程が特定した支配的周波数との差が最も大きい中心周波数を有するバンドパスフィルタを用いて、前記印加された電圧に発生する電圧変化をフィルタするフィルタ工程と、
    を備えることを特徴とする吐出検査方法。
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