JP2008080677A - 補正値取得方法及び印刷方法 - Google Patents

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昌彦 吉田
Hiroichi Nunokawa
博一 布川
Bunji Ishimoto
文治 石本
Tatsuya Nakano
龍也 中野
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Abstract

【課題】補正値の取得の手間を軽減する。
【解決手段】本補正値取得方法は、基準パターンをスキャナで読み取る基準読み取りステップと、前記基準パターンとプリンタの印刷した第1テストパターンとを前記スキャナで読み取る第1読み取りステップと、前記プリンタの印刷した第2テストパターンを前記スキャナで読み取る第2読み取りステップとを有する補正値取得方法であって、検査対象となるプリンタ毎に、前記第1読み取りステップと前記第2読み取りステップとを繰り返し行い、前記第1読み取りステップの読み取り結果に基づいて、前記プリンタの第1補正値を取得し、前記基準読み取りステップの読み取り結果と前記第2読み取りステップの読み取り結果とに基づいて、前記プリンタの第2補正値を取得する。
【選択図】図14

Description

本発明は、補正値取得方法及び印刷方法に関する。
媒体(例えば紙や布など)を搬送方向に搬送するとともにヘッドにより媒体に印刷を行う印刷装置として、インクジェットプリンタが知られている。このような印刷装置では、媒体を搬送する際に搬送誤差が生じると、媒体上の正しい位置にヘッドがドットを記録できなくなる。特に、インクジェットプリンタでは、媒体上の正しい位置にインク滴が着弾しなくなると、印刷された画像に白スジや黒スジが生じ、画質が劣化するおそれがある。
そこで、媒体の搬送量を補正する方法が提案されている。例えば特許文献1では、テストパターンを印刷し、このテストパターンを読み取り、読取結果に基づいて補正値を算出し、画像を記録する際に補正値に基づいて搬送量を補正することが提案されている。
特開平5−96796号公報
特許文献1では、テストパターンを読み取った後、テストパターンの画像データをどのように処理しているのか、何も記載されていない。一方、スキャナでテストパターンを読み取るとき、スキャナの読み取り位置の誤差の影響によって、読み取られた画像が歪むおそれがある。歪んだテストパターンの画像データに基づいて補正値が算出されると、正しい補正値を取得することができなくなる。このため、スキャナの読み取り位置の誤差の影響を除去するために、基準となる基準シートをスキャナで読み取ることが考えられる。
ところで、補正の対象が複数ある場合、補正の対象に応じて複数のテストシートをスキャナで読み取ることになる。但し、補正の対象に関わらず毎回基準シートを読み取ることになると、基準パターンの画像処理の負荷が大きくなってしまう。
本発明は、画像処理の負荷を軽減することを目的とする。
上記目的を達成するための主たる発明は、基準パターンをスキャナで読み取る基準読み取りステップと、前記基準パターンとプリンタの印刷した第1テストパターンとを前記スキャナで読み取る第1読み取りステップと、前記プリンタの印刷した第2テストパターンを前記スキャナで読み取る第2読み取りステップとを有する補正値取得方法であって、検査対象となるプリンタ毎に、前記第1読み取りステップと前記第2読み取りステップとを繰り返し行い、前記第1読み取りステップの読み取り結果に基づいて、前記プリンタの第1補正値を取得し、前記基準読み取りステップの読み取り結果と前記第2読み取りステップの読み取り結果とに基づいて、前記プリンタの第2補正値を取得することを特徴とする。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
基準パターンをスキャナで読み取る基準読み取りステップと、
前記基準パターンとプリンタの印刷した第1テストパターンとを前記スキャナで読み取る第1読み取りステップと、
前記プリンタの印刷した第2テストパターンを前記スキャナで読み取る第2読み取りステップと
を有する補正値取得方法であって、
検査対象となるプリンタ毎に、前記第1読み取りステップと前記第2読み取りステップとを繰り返し行い、
前記第1読み取りステップの読み取り結果に基づいて、前記プリンタの第1補正値を取得し、
前記基準読み取りステップの読み取り結果と前記第2読み取りステップの読み取り結果とに基づいて、前記プリンタの第2補正値を取得する
ことを特徴とする補正値取得方法。
このような補正値取得方法によれば、第2補正値を取得する際に、基準パターンの読み取りを省略できるので、負荷を軽減できる。
かかる補正値取得方法であって、前記第1読み取りステップにおける読み取り解像度は、前記第2読み取りステップにおける読み取り解像度よりも、低い解像度であることが望ましい。このような場合に、特に有効である。
かかる補正値取得方法であって、前記第1読み取りステップ及び前記第2読み取りステップの前に、前記基準パターンの形成された基準シートが、前記第1読み取りステップの読み取り範囲及び前記第2読み取りステップの読み取り範囲をカバーするように前記スキャナに予め設けられることが望ましい。これにより、このような補正値取得方法によれば、補正値の取得の手間を軽減することができる。
かかる補正値取得方法であって、前記第1テストパターンは、媒体の搬送量を補正するためのテストパターンであり、前記第2テストパターンは、濃度ムラを補正するためのテストパターであり、前記第1補正値を取得した後、前記第1補正値により前記搬送量を補正しつつ前記第2テストパターンが印刷され、この第2テストパターンを利用して前記第2補正値を取得することが望ましい。これにより、第1補正値及び第2補正値の両方を正しい値で取得できる。
かかる補正値取得方法であって、前記第1補正値を取得する際に、前記第1テストパターンに含まれるラインの位置が算出されると共に、算出された位置が前記基準パターンの読み取り結果に基づいて修正され、前記第2補正値を取得する際に、前記第2読み取りステップで読み取られた前記第2テストパターンの画像データが前記基準パターンの読み取り結果に基づいて修正されることが望ましい。このように2つの補正値の算出の際における基準パターンの用い方が異なっていても、同じ基準パターンを用いることができれば、補正値の取得の手間を軽減することができる。
かかる補正値取得方法であって、前記基準パターンの形成された基準シートが設けられた治具が、前記スキャナに取り付けられており、前記治具は、テストシートの側辺を突き当てるための突き当て部と、前記側辺を前記突き当て部に突き当てたときに前記テストシートを前記スキャナの読み取り面に押さえるための押さえ部とを有することが望ましい。これにより、所望の姿勢でテストシートを位置決めできる。
基準パターンをスキャナで読み取る基準読み取りステップと、
前記基準パターンとプリンタの印刷した第1テストパターンとを前記スキャナで読み取る第1読み取りステップと、
前記プリンタの印刷した第2テストパターンを前記スキャナで読み取る第2読み取りステップと
を有する印刷方法であって、
検査対象となるプリンタ毎に、前記第1読み取りステップと前記第2読み取りステップとを繰り返し行い、
前記第1読み取りステップの読み取り結果に基づいて、前記プリンタの第1補正値を取得し、
前記基準読み取りステップの読み取り結果と前記第2読み取りステップの読み取り結果とに基づいて、前記プリンタの第2補正値を取得し、
前記第1補正値及び前記第2補正値を用いて印刷を行う
ことを特徴とする印刷方法。
このような印刷方法によれば、補正値の取得の手間を軽減することができる。
===印刷システム===
<全体構成>
図1は、印刷システムの外観構成を示した説明図である。この印刷システム100は、プリンタ1と、コンピュータ110と、表示装置120と、入力装置130と、記録再生装置140と、スキャナ150とを備えている。プリンタ1は、紙、布、フィルム等の媒体に画像を印刷する印刷装置である。コンピュータ110は、プリンタ1と通信可能に接続されており、プリンタ1に画像を印刷させるため、印刷させる画像に応じた印刷データをプリンタ1に出力する。
コンピュータ110にはプリンタドライバがインストールされている。プリンタドライバは、表示装置120にユーザインタフェースを表示させ、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換させるためのプログラムである。このプリンタドライバは、フレキシブルディスクFDやCD−ROMなどの記録媒体(コンピュータ読み取り可能な記録媒体)に記録されている。または、このプリンタドライバは、インターネットを介してコンピュータ110にダウンロードすることも可能である。なお、このプログラムは、各種の機能を実現するためのコードから構成されている。
<プリンタ1の構成>
図2は、プリンタ1の全体構成のブロック図である。また、図3Aは、プリンタ1の全体構成の概略図である。また、図3Bは、プリンタ1の全体構成の断面図である。
プリンタ1は、搬送ユニット20、キャリッジユニット30、ヘッドユニット40、検出器群50、及びコントローラ60を有する。外部装置であるコンピュータ110から印刷データを受信したプリンタ1は、コントローラ60によって各ユニット(搬送ユニット20、キャリッジユニット30、ヘッドユニット40)を制御する。コントローラ60は、コンピュータ110から受信した印刷データに基づいて、各ユニットを制御し、紙に画像を印刷する。プリンタ1内の状況は検出器群50によって監視されており、検出器群50は、検出結果をコントローラ60に出力する。コントローラ60は、検出器群50から出力された検出結果に基づいて、各ユニットを制御する。
搬送ユニット20は、媒体(例えば、紙Sなど)を所定の方向(以下、搬送方向という)に搬送させるためのものである。この搬送ユニット20は、給紙ローラ21と、搬送モータ22(図2A及び図2Bでは不図示、図8参照)と、搬送ローラ23と、プラテン24と、排紙ローラ25とを有する。給紙ローラ21は、紙挿入口に挿入された紙をプリンタ内に給紙するためのローラである。搬送ローラ23は、給紙ローラ21によって給紙された紙Sを印刷可能な領域まで搬送するローラであり、搬送モータ22によって駆動される。プラテン24は、印刷中の紙Sを支持する。排紙ローラ25は、紙Sをプリンタの外部に排出するローラであり、印刷可能な領域に対して搬送方向下流側に設けられている。この排紙ローラ25は、搬送ローラ23と同期して回転する。
なお、搬送ローラ23が紙Sを搬送するとき、紙Sは搬送ローラ23と従動ローラ26との間に挟まれている。これにより、紙Sの姿勢が安定する。一方、排紙ローラ25が紙Sを搬送するとき、紙Sは排紙ローラ25と従動ローラ27との間に挟まれている。排紙ローラ25は印刷領域よりも搬送方向下流側に設けられているので、従動ローラ27は、紙Sとの接触面が小さくなるように構成されている(図8参照)。このため、紙Sの下端が搬送ローラ23を通過して、紙Sが排紙ローラ25のみによって搬送されるとき、紙Sの姿勢は不安定になり易く、搬送特性も変化しやすい。
キャリッジユニット30は、ヘッドを所定の方向(以下、移動方向という)に移動(「走査」とも呼ばれる)させるためのものである。キャリッジユニット30は、キャリッジ31と、キャリッジモータ32とを有する。キャリッジ31は、移動方向に往復移動可能であり、キャリッジモータ32によって駆動される。また、キャリッジ31は、インクを収容するインクカートリッジを着脱可能に保持している。
ヘッドユニット40は、紙にインクを吐出するためのものである。ヘッドユニット40は、複数のノズルを有するヘッド41を備える。このヘッド41はキャリッジ31に設けられているため、キャリッジ31が移動方向に移動すると、ヘッド41も移動方向に移動する。そして、ヘッド41が移動方向に移動中にインクを断続的に吐出することによって、移動方向に沿ったドットライン(ラスタライン)が紙に形成される。
検出器群50には、リニア式エンコーダ51、ロータリー式エンコーダ52、紙検出センサ53、および光学センサ54等が含まれる。リニア式エンコーダ51は、キャリッジ31の移動方向の位置を検出する。ロータリー式エンコーダ52は、搬送ローラ23の回転量を検出する。紙検出センサ53は、給紙中の紙の先端の位置を検出する。光学センサ54は、キャリッジ31に取付けられている発光部と受光部により、紙の有無を検出する。そして、光学センサ54は、キャリッジ31によって移動しながら紙の端部の位置を検出し、紙の幅を検出することができる。また、光学センサ54は、状況に応じて、紙の先端(搬送方向下流側の端部であり、上端ともいう)・後端(搬送方向上流側の端部であり、下端ともいう)も検出できる。
コントローラ60は、プリンタの制御を行うための制御ユニット(制御部)である。コントローラ60は、インターフェース部61と、CPU62と、メモリ63と、ユニット制御回路64とを有する。インターフェース部61は、外部装置であるコンピュータ110とプリンタ1との間でデータの送受信を行う。CPU62は、プリンタ全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリ63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM等の記憶素子を有する。CPU62は、メモリ63に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路64を介して各ユニットを制御する。
図4は、ヘッド41の下面におけるノズルの配列を示す説明図である。ヘッド41の下面には、ブラックインクノズル群Kと、シアンインクノズル群Cと、マゼンタインクノズル群Mと、イエローインクノズル群Yが形成されている。各ノズル群は、各色のインクを吐出するための吐出口であるノズルを90個備えている。
各ノズル群の複数のノズルは、搬送方向に沿って、一定の間隔(ノズルピッチ:k・D)でそれぞれ整列している。ここで、Dは、搬送方向における最小のドットピッチ(つまり、紙Sに形成されるドットの最高解像度での間隔)である。また、kは、1以上の整数である。例えば、ノズルピッチが90dpi(1/90インチ)であって、搬送方向のドットピッチが360dpi(1/360インチ)である場合、k=4である。
各ノズル群のノズルは、下流側のノズルほど小さい数の番号が付されている(♯1〜♯90)。つまり、ノズル♯1は、ノズル♯90よりも搬送方向の下流側に位置している。なお、前述の光学センサ54は、紙搬送方向の位置に関して、一番上流側にあるノズル♯90とほぼ同じ位置にある。
各ノズルには、それぞれインクチャンバー(不図示)と、ピエゾ素子が設けられている。ピエゾ素子の駆動によってインクチャンバーが伸縮・膨張し、ノズルからインク滴が吐出される。
<プリンタ1の印刷動作>
プリンタ1は、紙Sに印刷を行う際に、移動方向に移動するヘッド41のノズルからインクを吐出して紙にドットを形成するドット形成動作と、搬送ユニット20によって紙Sを搬送方向に搬送する搬送動作と、を交互に繰り返す。ドット形成動作の際には、ノズルからインクが断続的に吐出され、移動方向に沿う複数のドットから構成されるドット列が形成される。このドット列のことを「ラスタライン」とも言う。
まず、通常印刷について説明する。通常印刷は、インターレース印刷と呼ばれる印刷方法により行われる。ここで、『インターレース印刷』とは、1回のパスで記録されるラスタライン間に、記録されないラスタラインが挟まれるような印刷を意味する。また、『パス』とはドット形成処理を指し、以下の説明で『パスn』とはn回目のドット形成処理を意味する。
図5A及び図5Bは、通常印刷の説明図である。図5Aは、パスn〜パスn+3におけるヘッドの位置とドットの形成の様子を示し、図5Bは、パスn〜パスn+4におけるヘッドの位置とドットの形成の様子を示している。
説明の便宜上、複数あるノズル群のうちの一つのノズル群のみを示し、ノズル群のノズル数も少なくしている。また、ヘッド41(又はノズル群)が紙に対して移動しているように描かれているが、同図はヘッド41と紙との相対的な位置を示すものであって、実際には紙が搬送方向に移動される。また、説明の都合上、各ノズルは数ドット(図中の丸印)しか形成していないように示されているが、実際には、移動方向に移動するノズルから間欠的にインク滴が吐出されるので、移動方向に多数のドットが並ぶことになる(このドットの列がラスタラインである)。もちろん、画素データに応じて、ドットが非形成のこともある。
同図において、黒丸で示されたノズルはインクを吐出可能なノズルであり、白丸で示されたノズルはインクを吐出不可なノズルである。また、同図において、黒丸で示されたドットは、最後のパスで形成されるドットであり、白丸で示されたドットは、それ以前のパスで形成されたドットである。
このインターレース印刷では、紙が搬送方向に一定の搬送量Fで搬送される毎に、各ノズルが、その直前のパスで記録されたラスタラインのすぐ上のラスタラインを記録する。このように搬送量を一定にして記録を行うためには、(1)インクを吐出可能なノズル数N(整数)はkと互いに素の関係にあること、(2)搬送量FはN・Dに設定されること、が条件となる。ここでは、N=7、k=4、F=7・Dである(D=1/360インチ)。
但し、この通常印刷のみでは、搬送方向に連続してラスタラインを形成できない箇所がある。そこで、先端印刷及び後端印刷と呼ばれる印刷方法が、通常印刷の前後に行われる。
図6は、先端印刷及び後端印刷の説明図である。最初の5回のパスが先端印刷であり、最後の5回のパスが後端印刷である。
先端印刷では、印刷画像の先端付近を印刷する際に、通常印刷時の搬送量(7・D)よりも少ない搬送量(1・D又は2・D)にて、紙が搬送される。また、先端印刷では、インクを吐出するノズルが一定していない。後端印刷では、先端印刷と同じように、印刷画像の後端付近を印刷する際に、通常印刷時の搬送量(7・D)よりも少ない搬送量(1・D又は2・D)にて、紙が搬送される。また、後端印刷では、先端印刷と同じように、インクを吐出するノズルが一定していない。これにより、先頭ラスタラインから最終ラスタラインまでの間に、搬送方向に連続して並ぶ複数のラスタラインを形成することができる。
通常印刷だけでラスタラインが形成される領域を「通常印刷領域」と呼ぶ。また、通常印刷領域よりも紙の先端側(搬送方向下流側)に位置する領域を「先端印刷領域」と呼ぶ。また、通常印刷領域よりも後端側(搬送方向上流側)に位置する領域を「後端印刷領域」と呼ぶ。先端印刷領域には、30本のラスタラインが形成される。同様に、後端印刷領域にも、30本のラスタラインが形成される。これに対し、通常印刷領域には、紙の大きさにもよるが、およそ数千本のラスタラインが形成される。
通常印刷領域のラスタラインの並び方には、搬送量に相当する個数(ここでは7個)のラスタライン毎に、規則性がある。図6の通常印刷領域の最初から7番目までのラスタラインは、それぞれ、ノズル♯3、ノズル♯5、ノズル♯7、ノズル♯2、ノズル♯4、ノズル♯6、ノズル♯8、により形成され、次の8番目以降の7本のラスタラインも、これと同じ順序の各ノズルで形成されている。
一方、先端印刷領域及び後端印刷領域のラスタラインの並びには、通常印刷領域のラスタラインと比べると、規則性を見出し難い。
<スキャナの構成>
図7Aは、スキャナ150の断面図である。図7Bは、上蓋151を外した状態のスキャナ150の上面図である。
スキャナ150は、上蓋151と、原稿5が置かれる原稿台ガラス152と、この原稿台ガラス152を介して原稿5と対面しつつ副走査方向に移動する読取キャリッジ153と、読取キャリッジ153を副走査方向に案内する案内部154と、読取キャリッジ153を移動させるための移動機構155と、スキャナ150内の各部を制御するスキャナコントローラ(不図示)とを備えている。読取キャリッジ153には、原稿5に光を照射する露光ランプ157と、主走査方向(図7Aにおいて紙面に垂直な方向)のラインの像を検出するラインセンサ158と、原稿5からの反射光をラインセンサ158へ導くための光学系159とが設けられている。図中の読取キャリッジ153の内部の破線は、光の軌跡を示している。
===搬送誤差===
<紙の搬送について>
図8は、搬送ユニット20の構成の説明図である。
搬送ユニット20は、コントローラ60からの搬送指令に基づいて、所定の駆動量にて搬送モータ22を駆動させる。搬送モータ22は、指令された駆動量に応じて回転方向の駆動力を発生する。搬送モータ22は、この駆動力を用いて搬送ローラ23を回転させる。つまり、搬送モータ22が所定の駆動量を発生すると、搬送ローラ23は所定の回転量にて回転する。搬送ローラ23が所定の回転量にて回転すると、紙は所定の搬送量にて搬送される。
紙の搬送量は、搬送ローラ23の回転量に応じて定まる。本実施形態では、搬送ローラ23が1回転すると、紙が1インチ搬送されるものとする(つまり、搬送ローラ23の周長は、1インチである)。このため、搬送ローラ23が1/4回転すると、紙が1/4インチ搬送される。
したがって、搬送ローラ23の回転量が検出できれば、紙の搬送量も検出可能である。そこで、搬送ローラ23の回転量を検出するため、ロータリー式エンコーダ52が設けられている。
ロータリー式エンコーダ52は、スケール521と検出部522とを有する。スケール521は、所定の間隔毎に設けられた多数のスリットを有する。このスケール521は、搬送ローラ23に設けられている。つまり、スケール521は、搬送ローラ23が回転すると、一緒に回転する。そして、搬送ローラ23が回転すると、スケール521の各スリットが検出部522を順次通過する。検出部522は、スケール521と対向して設けられており、プリンタ本体側に固定されている。ロータリー式エンコーダ52は、スケール521に設けられたスリットが検出部522を通過する毎に、パルス信号を出力する。搬送ローラ23の回転量に応じてスケール521に設けられたスリットが順次検出部522を通過するので、ロータリー式エンコーダ52の出力に基づいて、搬送ローラ23の回転量が検出される
そして、例えば搬送量1インチで紙を搬送する場合、搬送ローラ23が1回転したことをロータリー式エンコーダ52が検出するまで、コントローラ60が搬送モータ22を駆動する。このように、コントローラ60は、目標とする搬送量(目標搬送量)に応じた回転量になることをロータリー式エンコーダ52が検出するまで、搬送モータ22を駆動して、紙を目標搬送量にて搬送する。
<搬送誤差について>
ところで、ロータリー式エンコーダ52は、直接的には搬送ローラ23の回転量を検出するのであって、厳密にいえば、紙Sの搬送量を検出していない。このため、搬送ローラ23の回転量と紙Sの搬送量が一致しない場合、ロータリー式エンコーダ52は紙Sの搬送量を正確に検出することができず、搬送誤差(検出誤差)が生じる。搬送誤差としては、DC成分の搬送誤差及びAC成分の搬送誤差の2種類がある。
DC成分の搬送誤差とは、搬送ローラが1回転したときに生じる所定量の搬送誤差のことである。このDC成分の搬送誤差は、製造誤差等によって搬送ローラ23の周長が個々のプリンタ毎に異なることが原因と考えられる。つまり、DC成分の搬送誤差は、設計上の搬送ローラ23の周長と実際の搬送ローラ23の周長が異なるために生じる搬送誤差である。このDC成分の搬送誤差は、搬送ローラ23が1回転するときの開始位置に関わらず、一定になる。但し、実際のDC成分の搬送誤差は、紙の摩擦等の影響によって、紙の総搬送量に応じて異なる値になる(後述)。言い換えると、実際のDC成分の搬送誤差は、紙Sと搬送ローラ23(又は紙Sとヘッド41)との相対位置関係に応じて異なる値になる。
AC成分の搬送誤差とは、搬送時に用いられる搬送ローラの周面の場所に応じた搬送誤差のことである。AC成分の搬送誤差は、搬送時に用いられる搬送ローラの周面の場所に応じて、異なる量になる。つまり、AC成分の搬送誤差は、搬送開始時の搬送ローラの回転位置と搬送量に応じて、異なる量になる。
図9は、AC成分の搬送誤差の説明用グラフである。横軸は、基準となる回転位置からの搬送ローラ23の回転量である。縦軸は、搬送誤差を示す。このグラフを微分すれば、その回転位置で搬送ローラが搬送しているときに生じる搬送誤差が導き出される。ここでは、基準位置における累積搬送誤差をゼロとし、DC成分の搬送誤差もゼロとしている。
搬送ローラ23が基準位置から1/4回転すると、δ_90の搬送誤差が生じ、紙は1/4インチ+δ_90にて搬送される。但し、搬送ローラ23が更に1/4回転すると、-δ_90の搬送誤差が生じ、紙は1/4インチ−δ_90にて搬送される。
AC成分の搬送誤差が生じる原因としては、例えば、以下の3つが考えられる。
まず第1に、搬送ローラの形状による影響が考えられる。例えば、搬送ローラが楕円形状や卵型である場合、搬送ローラの周面の場所に応じて、回転中心までの距離が異なっている。そして、回転中心までの距離が長い部分で媒体を搬送する場合、搬送ローラの回転量に対する搬送量が多くなる。一方、回転中心までの距離が短い部分で媒体を搬送する場合、搬送ローラの回転量に対する搬送量が少なくなる。
第2に、搬送ローラの回転軸の偏心が考えられる。この場合も、搬送ローラの周面の場所に応じて、回転中心までの長さが異なっている。このため、たとえ搬送ローラの回転量が同じであっても、搬送ローラの周面の場所に応じて、搬送量が異なることになる。
第3に、搬送ローラの回転軸と、ロータリー式エンコーダ52のスケール521の中心との不一致が考えられる。この場合、スケール521が偏心して回転することになる。この結果、検出部522が検出するスケール521の場所に応じて、検出されたパルス信号に対する搬送ローラ23の回転量が異なることになる。例えば、検出されるスケール521の場所が搬送ローラ23の回転軸から離れている場合、検出されたパルス信号に対する搬送ローラ23の回転量が少なくなるため、搬送量が少なくなる。一方、検出されるスケール521の場所が搬送ローラ23の回転軸から近い場合、検出されたパルス信号に対する搬送ローラ23の回転量が多くなるため、搬送量が多くなる。
上記の原因のため、AC成分の搬送誤差は、図9に示す通り、ほぼサインカーブになる。
<本実施形態で補正する搬送誤差>
図10は、101.6mm×152.4mm(4インチ×6インチ)の大きさの紙を搬送する際に生じる搬送誤差のグラフ(概念図)である。グラフの横軸は、紙の総搬送量を示している。グラフの縦軸は、搬送誤差を示している。図中の点線は、DC成分の搬送誤差のグラフである。図中の実線の値(トータルの搬送誤差)から図中の点線の値(DC成分の搬送誤差)を引けば、AC成分の搬送誤差が求められる。AC成分の搬送誤差は、紙の総搬送量に関わらず、ほぼサインカーブになる。一方、点線で示されるDC成分の搬送誤差は、紙の摩擦等の影響によって、紙の総搬送量に応じて異なる値になる。
既に説明したように、AC成分の搬送誤差は、搬送ローラ23の周面の場所に応じて異なる。このため、たとえ同じ紙を搬送する場合であっても、搬送開始時の搬送ローラ23の回転位置が異なれば、AC成分の搬送誤差が異なるため、トータルの搬送誤差(グラフの実線で示す搬送誤差)は異なることになる。これに対し、DC成分の搬送誤差はAC成分の搬送誤差とは異なり搬送ローラの周面の場所とは無関係なので、たとえ搬送開始時の搬送ローラ23の回転位置が異なっていても、搬送ローラ23が1回転したときに生じる搬送誤差(DC成分の搬送誤差)は同じになる。
また、AC成分の搬送誤差を補正しようとする場合、コントローラ60は、搬送ローラ23の回転位置を検出する必要がある。しかし、搬送ローラ23の回転位置を検出するためには、ロータリー式エンコーダ52に原点センサを更に用意する必要があり、コストアップとなる。
そこで、以下に示す本実施形態の搬送量の補正では、DC成分の搬送誤差を補正することにしている。
一方、DC成分の搬送誤差は、紙の総搬送量(言い換えると、紙Sと搬送ローラ23との相対位置関係)に応じて異なる値になる(図10の点線参照)。このため、より多くの補正値(後述するPF補正値(搬送量を補正するための補正値))を搬送方向の位置に応じて用意できれば、きめ細かく搬送誤差を補正することができる。そこで、本実施形態では、搬送ローラ23の1回転分に相当する1インチの範囲ごとではなく、1/4インチの範囲ごとに、DC成分の搬送誤差を補正するための補正値(PF補正値)を用意している。
===濃度ムラ(バンディング)===
プリンタが印刷を行うとき、搬送誤差が生じると共に、濃度ムラも生じる。ここでは、説明の簡略化のため、単色印刷された画像中に生じる濃度ムラの発生原因について説明する。なお、多色印刷の場合、以下に説明する濃度ムラの発生原因が色毎に生じている。
以下の説明において、「単位領域」とは、紙等の媒体上に仮想的に定められた矩形状の領域を指し、印刷解像度に応じて大きさや形が定められる。例えば、印刷解像度が360dpi(移動方向)×360dpi(搬送方向)の場合、単位領域は、約70.56μm×70.56μm(≒1/360インチ×1/360インチ)の大きさの正方形状の領域になる。理想的にインク滴が吐出されると、この単位領域の中心位置にインク滴が着弾し、その後インク滴が媒体上で広がって、単位領域にドットが形成される。なお、一つの単位領域には、画像データを構成する一つの画素が対応している。また、各単位領域に画素が対応付けられるので、各画素の画素データも、各単位領域に対応付けられることになる。
また、以下の説明において、「列領域」とは、移動方向に並ぶ複数の単位領域によって構成される領域をいう。例えば印刷解像度が360dpi×360dpiの場合、列領域は、搬送方向に70.56μm(≒1/360インチ)の幅の帯状の領域になる。移動方向に移動するノズルから理想的にインク滴が断続的に吐出されると、この列領域にラスタラインが形成される。なお、列領域には、移動方向に並ぶ複数の画素が対応付けられることになる。
図11Aは、理想的にドットが形成されたときの様子の説明図である。同図では、理想的にドットが形成されているので、各ドットは単位領域に正確に形成され、ラスタラインは列領域に正確に形成される。図中、列領域は、点線に挟まれる領域として示されており、ここでは1/360インチの幅の領域である。各列領域には、その領域の着色に応じた濃度の画像片が形成されている。ここでは、説明の簡略化のため、ドット生成率が50%となるような一定濃度の画像を印刷するものとする。
図11Bは、濃度ムラの説明図である。ここでは、ノズルから吐出されたインク滴の飛行方向のばらつきにより、2番目の列領域に形成されたラスタラインが、3番目の列領域側(搬送方向上流側)に寄って形成されている。なお、搬送誤差の影響によってヘッドに対する紙の位置がずれることによっても、ラスタラインがずれて形成されることがある。また、5番目の列領域に向かって吐出されたインク滴のインク量が少なく、5番目の列領域に形成されるドットが小さくなっている。
本来であれば同じ濃度の画像片が各列領域に形成されるべきであるにもかかわらず、列領域に応じて画像片に濃淡が発生する。例えば、2番目の列領域の画像片は比較的淡くなり、3番目の列領域の画像片は比較的濃くなる。また、5番目の列領域の画像片は、比較的淡くなる。
そして、このようなラスタラインからなる印刷画像を巨視的に見ると、キャリッジの移動方向に沿う縞状の濃度ムラが視認される。この濃度ムラは、印刷画像の画質を低下させる原因となる。
図11Cは、本実施形態の印刷方法によりドットが形成されたときの様子の説明図である。本実施形態では、濃く視認されやすい列領域に対しては、淡く画像片が形成されるように、その列領域に対応する画素の画素データ(CMYK画素データ)の階調値を補正する。また、淡く視認されやすい列領域に対しては、濃く画像片が形成されるように、その列領域に対応する画素の画素データの階調値を補正する。例えば、図中の2番目の列領域のドットの生成率が高くなり、3番目の列領域のドットの生成率が低くなり、5番目の列領域のドットの生成率が高くなるように、各列領域に対応する画素の画素データの階調値が補正される。これにより、各列領域のラスタラインのドット生成率が変更され、列領域の画像片の濃度が補正されて、印刷画像全体の濃度ムラが抑制される。
ところで、図11Bにおいて、3番目の列領域に形成される画像片の濃度が濃くなる理由は、3番目の列領域にラスタラインを形成するノズルの影響によるものではなく、隣接する2番目の列領域にラスタラインを形成するノズルの影響によるものである。このため、3番目の列領域にラスタラインを形成するノズルが別の列領域にラスタラインを形成する場合、その列領域に形成される画像片が濃くなるとは限らない。つまり、同じノズルにより形成された画像片であっても、隣接する画像片を形成するノズルが異なれば、濃度が異なる場合がある。このような場合、単にノズルに対応付けた補正値では、濃度ムラを抑制することができない。そこで、本実施形態では、列領域毎に設定される補正値(後述するBRS補正値(濃度ムラを補正するための補正値))に基づいて、画素データの階調値を補正している。
===スキャナの読取位置の誤差===
ここでは、720dpi(主走査方向)×720dpi(副走査方向)の解像度で画像を読み取ることを前提にして説明を行う。
図12は、スキャナの読み取り位置の誤差のグラフである。グラフの横軸は、読み取り位置(理論値)を示している(すなわち、グラフの横軸は、読取キャリッジ153の位置(理論値)を示している)。グラフの縦軸は、読み取り位置の誤差(読み取り位置の理論値と実際の読み取り位置との差)を示している。このグラフによれば、例えば、読取キャリッジ153を1インチ(=25.4mm)移動させると、約60μmの誤差が生じることになる。
仮に、読み取り位置の理論値と実際の読み取り位置が一致していれば、基準位置(読み取り位置がゼロの位置)を示す画素から副走査方向に720画素離れた画素は、基準位置からちょうど1インチ離れた位置の画像を示すはずである。しかし、グラフに示すような読み取り位置の誤差が生じた場合、基準位置を示す画素から副走査方向に720画素離れた画素は、基準位置から1インチ離れた位置よりも60μmだけ更に離れた位置の画像を示すことになる。
また、仮に、グラフの傾きがゼロであれば、1/720インチ毎に等間隔に、画像が読み取られるはずである。しかし、グラフの傾きがプラスの位置では、1/720インチよりも長い間隔で画像が読み取られることになる。また、グラフの傾きがマイナスの位置では、1/720インチよりも短い間隔で画像が読み取られることになる。
図13Aは、スキャナの読み取り位置が正確な場合の原稿と画像データの関係の説明図である。なお、読取キャリッジ153は、原稿に対して、図中の縦方向に相対的に移動する。また、画像データの示す画像は、1/720インチ(主走査方向)×1/720インチ(副走査方向)の大きさの正方形状の画素がマトリクス状に並べられて構成されている。
ここでは、説明の簡略化のため、原稿は、高さが約2000/720インチの正三角形とする。また、説明の都合上、この正三角形の高さの半分の位置(正三角形の頂点から1000/720インチ離れた位置)には、白ラインが形成されている。以下の説明では、読み取り位置の副走査方向の基準は正三角形の頂点の位置とし、また、画像データにおける画素の位置の基準は正三角形の頂点の画素とする。
スキャナ150の読み取り位置が正確な場合、原稿は、読取キャリッジ153が副走査方向に1/720インチ移動する毎に、等間隔に、読み取られる(左図参照)。このように読み取られた画像データの画像は、原稿の示す画像の通りになる(右図参照)。なお、原稿中の白ラインは、1001回目の読み取り時に読み取られ、基準画素から1000画素離れた画素の画素データとして読み取られている。
図13Bは、スキャナの読み取り位置に誤差がある場合の原稿と画像データの関係の説明図である。ここでは、基準位置に近い位置では1/720インチよりも短い間隔で(即ち密に)画像が読み取られ、基準位置から遠い位置では1/720インチよりも長い間隔で(即ち粗く)画像が読み取られる(左図参照)。このように読み取られた画像データの画像は、原稿の示す形状から変形している(右図参照)。なお、1001回目の読み取り時には、原稿中の白ラインよりも上の位置の画像が読み取られる(左図参照)。また、原稿中の白ラインは、約1200回目の読み取り時に読み取られ(左図参照)、基準画素から約1200画素離れた画素の画素データとして読み取られている(右図参照)。この結果、画像データにおける白ラインは、原稿の白ラインよりも、相対的に下側に位置している。
ところで、後述するように、本実施形態では、搬送量を補正するためのPF補正値や、濃度ムラを補正するためのBRS補正値を算出する際に、プリンタが印刷したパターンをスキャナが読み取っている。しかし、スキャナの読み取り位置に誤差があると、パターンを正確に読み取ることができず、この結果、補正値を正確に算出できなくなる。そこで、スキャナ150によって読み取られた画像データに基づいて補正値を算出する際に、スキャナ150の特性を考慮する必要がある。
===本実施形態の概略===
図14は、本実施形態の全体の流れのフロー図である。これらの処理は、プリンタ製造工場の検査工程において行われる。
まず、検査者は、スキャナ150に治具(後述)を取り付ける(S100)。この治具には、基準パターン(後述)の形成された基準シート(後述)が貼付されている。次に、コンピュータ110は、スキャナ150に基準パターンを読み取らせ、基準パターンのラインの位置を算出する(S200)。このときの読取結果は、S500の「BRS補正値の取得処理」で用いられる。そして、検査者は、検査対象となるプリンタ1をコンピュータ110に取り付ける(S300、図1参照)。
プリンタの取り付け後、コンピュータ110は、搬送量を補正するためのPF補正値の取得処理を行う(S400)。PF補正値の取得処理の後、取得したばかりのPF補正値によって搬送量を補正しながら、濃度ムラを補正するためのBRS補正値の取得処理を行う(S500)。なお、PF補正値の取得処理の際には、スキャナ150がPF補正用パターン(後述)を読み取ると共に基準パターンを読み取ることになる。一方、BRS補正値の取得処理の際には、スキャナ150は基準パターンを読み取らずにBRS補正用パターン(後述)だけを読み取り、この読取結果とS200の読取結果とを利用することになる。
そして、他のプリンタの検査を更に行う場合には(S600でYES)、S300〜S500の処理を繰り返し行う。S300〜S500の処理を繰り返し行う場合であっても、スキャナ150に治具が取り付けられたままの状態になっている。
なお、検査を終えたプリンタのメモリ63には、PF補正値とBRS補正値が記憶されており、このプリンタが工場から出荷され、プリンタを購入したユーザへ届く。ユーザが印刷を行うとき、PF補正値によって搬送量が補正されつつ、BRS補正値によって濃度ムラが補正され、高画質な印刷結果が得られる。
以下、図14の各処理について説明する。
===治具の取り付け(S100)===
図15Aは、スキャナ150に取り付ける治具16の説明図である。図15Bは、スキャナ150に取り付けられた治具16を副走査方向から見た様子の説明図である。図15Cは、スキャナ150に取り付けられた治具16を上方から見た様子の説明図である。
治具16は、スキャナ150の原稿台ガラス152上でテストシートTSを位置決めするものである。この治具16は、突起部161と、側面162と、側面163と、押さえ面164と、傾斜面165とを有する。この治具16は、突起部161が原稿台ガラス152に突き当たる状態で、固定具160によってスキャナ150に取り付けられる。治具16は一方向に長い形状をしており、治具16の長手方向がスキャナ150の副走査方向と平行になるように、治具16がスキャナ150に取り付けられる。
突起部161は治具16の長手方向に沿って設けられている。このため、治具16がスキャナ150に取り付けられると、突起部161の一側面である突き当て部161Aは、スキャナ150の副走査方向に沿うようになる。また、治具16がスキャナ150に取り付けられたとき、突起部161があるため、原稿台ガラス152と押さえ面164との間に隙間ができる。
原稿台ガラス152にテストシートTSをセットするとき(後述)、検査者は、原稿台ガラス152と押さえ面164との間の隙間にテストシートTSの側辺を滑り込ませ、テストシートTSの側辺を突き当て部161Aに突き当てる。これにより、テストシートTSの側辺が副走査方向とほぼ平行になる。テストシートTSの側辺が突き当て部161Aに突き当たるとき、押さえ面164がテストシートTSを上方から押さえる。これにより、テストシートTSをスキャナ150に読み取らせるとき、テストシートTSが原稿台ガラス152から浮き上がることを抑制できる。
側面162と押さえ面164の間で面取りがされ、傾斜面165が形成されている。この傾斜面165は、治具16をスキャナ150に取り付けたとき、押さえ面164から離れた部分ほど(突き当て部161Aから離れた部分ほど)、原稿台ガラス152との間隔が広がっている。このため、検査者がテストシートをセットするとき、原稿台ガラス152と押さえ面164との間の狭い隙間にスムーズに滑り込ませることができる。
治具16の底面には基準シートSSが貼付されている。治具16をスキャナ150に取り付けると、基準シートSSが原稿台ガラス152と対向し、スキャナ150が基準シートを読み取り可能になる。
図16は、基準シートSSの説明図である。基準シートSSの大きさは、10mm×300mmであり、基準シートSSは細長い形をしている。基準シートSSには、基準パターンとして36dpi間隔(1/36インチ間隔)にて多数のラインが形成されている。基準シートSSは繰り返し使用されるため、紙ではなく、PETフィルムから構成される。また、基準パターンは、レーザー加工により高精度に形成されている。
治具16がスキャナ150に取り付けられると、基準シートSSは、長辺がスキャナ150の副走査方向に平行になり、すなわち基準シートSSの各ラインがスキャナ150の主走査方向に平行になる。このため、スキャナ150の原稿台ガラス152の副走査方向全般にわたって、基準シートSSが原稿台ガラス152と対向する状態になる。なお、テストシートTSの側辺を突き当て部161Aに突き当てたとき、テストシートTSの側辺は、基準シートSSの長辺と平行になる。
===基準パターンのライン位置算出処理(S200)===
図17は、基準パターンのライン位置算出処理のフロー図である。各処理は、コンピュータ110にインストールされた画像処理プログラムによって実現される。
まず、コンピュータ110は、スキャナ150に基準パターンを読み取らせる(S201)。スキャナ150は、2880dpi(主走査方向)×2880dpi(副走査方向)の解像度で基準シートSSを読み取り、基準パターンの画像データを取得する。画像データは、x方向(主走査方向に対応する方向)とy方向(副走査方向に対応する方向)の2次元に並ぶ画素の画素データから構成される。つまり、画像データの示す基準パターンの画像はy方向に長い画像になり、基準パターンのラインの画像は、x方向に沿う画像になる。なお、画像データを構成する各画素データは、モノクロデータであり、256階調の階調値を有する。
スキャナの読み取り位置に誤差があるため(図12参照)、この誤差の影響を受けた状態で基準パターンが読み取られる。このため、基準シートの基準パターンは36dpi間隔にて等間隔に形成されているが、画像データの示す基準パターンのラインは、等間隔にはならず、実際の基準パターンと異なっている。
次に、コンピュータ110は、2次元の画像データのx方向に並ぶ画素の画素データの階調値を平均化する。これにより、y方向の1次元の画像データが作成される(S202)。この1次元の画像データは、y方向に2880dpiで並ぶ画素の画素データから構成される。
図18は、1次元の画像データのグラフである。グラフの縦軸は階調値であり、横軸は画素のy方向の位置を示している。なお、最初の画素のy方向の位置は0であり、この画素から100画素離れた画素のy方向の位置は100である。
36dpi間隔のラインからなる基準パターンが2880dpiの解像度で読み取られたため、ラインの位置を示すピークが約80画素ごとにグラフ上に現れている。但し、スキャナ150の読み取り位置に誤差があるため、ピークの間隔は必ずしも80画素にはなっていない。そこで、コンピュータは、以下のS203〜S206の処理によって、画像データ上のラインの位置を算出する。
まず、コンピュータ110は、最初のピークの前後の80画素(図18の点線の範囲)の画素データを演算範囲として取り出す(S203)。
図19Aは、演算範囲の画素データの説明図である。y方向の整数の位置に、離散的に画像データ(階調値)がある。コンピュータ110は、これらの画素データの最小値を求め、各画素データを最小値で減算する。これにより、画素データの最小値は0になる。
次に、コンピュータは、画素データの正規化を行う(S204の一部)。正規化は、80個の画素データの階調値の合計を求め、各画素データの階調値を合計値で割ることによって実現される。これにより、正規化後の80個の画素データの階調値の合計は1になる。
図19Bは、正規化後の画素データの説明図である。コンピュータ110は、ラインの位置として、正規化後の画素データの重心位置を算出する(S204)。画素データの重心位置は、画素毎に画素データの階調値とy方向の位置とを乗算し、その総和を算出することによって求められる。
そして、コンピュータ110は、算出された重心位置を、ラインの位置として記憶する(S205)。ところで、画素データはy方向の整数位置に対応しているが、画素データの重心位置は必ずしも整数位置にはならない。このため、演算範囲中のピークの画素の位置をラインの位置とする場合よりも、画素データの重心位置をラインの位置とする本実施形態の方が、精度良く画像データ上のラインの位置を算出できる。
コンピュータ110は、S203〜S205の処理を繰り返し行い、画像データ上のラインの位置を全て算出する(S206)。なお、次の演算範囲は、直前に算出した重心位置から80画素分だけ離れた位置を中心にした前後の80画素の画素データとなる(S203)。
仮にスキャナ150の読み取り位置に誤差が無ければ、算出されたラインの位置の間隔は、80(画素)になるはずである。しかし、実際には読み取り位置の誤差があるため、算出されたラインの位置の間隔は80(画素)にならない。
但し、算出されたラインの位置は、スキャナ150の読み取り位置の誤差を反映した情報になる。このため、算出されたラインの位置はコンピュータ110に記憶され、後述するRBS補正値の取得処理(S500)の際に使用される。
===PF補正値の取得処理(S400)===
図20は、PF補正値の取得処理のフロー図である。なお、PF補正値とは、搬送量を補正するための補正値である。各処理は、コンピュータ110にインストールされたPF補正用プログラムによって実現される。
まず、コンピュータ110が印刷データをプリンタ1に送信し、プリンタ1がテストシートにPF補正用のテストパターンを印刷する(S401)。次に、検査者はテストシートをスキャナ150にセットし、スキャナ150にテストパターンと基準パターンとを読み取らせ、画像データを取得する(S402)。そして、コンピュータ110は、取得した画像データを解析し、PF補正値を算出する(S403〜S406)。そして、コンピュータ110は、補正データをプリンタ1に送信し、プリンタ1のメモリ63にPF補正値を記憶させる(S407)。プリンタに記憶されるPF補正値は、個々のプリンタの搬送特性を反映したものになる。
なお、PF補正値を記憶したプリンタは、梱包されてユーザの下に届けられる。ユーザがプリンタで画像を印刷する際に、プリンタはPF補正値に基づいて紙を搬送し、これにより搬送誤差が軽減される。
以下、PF補正値の取得処理における各処理について説明する。
<PF補正用パターンの印刷(S401)>
図21は、PF補正用パターンの印刷の様子の説明図である。PF補正用のパターンの印刷されるテストシートTS1の大きさは、101.6mm×152.4mm(4インチ×6インチ)である。図中の右側には、テストシートTS1に印刷されるPF補正用パターンが示されている。図中の左側の長方形は、各パスにおけるヘッド41の位置(テストシートTS1に対する相対位置)が示されている。
テストシートTS1が搬送され続けると、テストシートTS1の下端が搬送ローラ23を通過する。テストシートTS1の下端が搬送ローラ23を通過する時に最上流ノズル♯90と対向するテストシートTS1の位置が、「NIPライン」として図中に点線で示されている。つまり、図中においてヘッド41がNIPラインよりも上にあるパスでは、搬送ローラ23と従動ローラ26との間でテストシートTS1が挟まれた状態(「NIP状態」とも言う)で、印刷が行われる。また、図中において、ヘッド41がNIPラインよりも下にあるパスでは、搬送ローラ23と従動ローラ26との間にテストシートTS1がない状態(排紙ローラ25と従動ローラ27だけでテストシートTS1を搬送する状態であり「非NIP状態」とも言う)で、印刷が行われる。
PF補正用パターンは、複数のラインとから構成される。各ラインは、いずれも移動方向に沿って形成されている。NIPラインよりも上端側には、多数のラインが形成される。NIPラインよりも上端側のラインについて、上端側から順にi番目のラインのことを「Li」と呼ぶ。また、NIPラインよりも下端側には、2つのラインが形成される。NIPラインよりも下端側の2つのラインのうち、上端側のラインをLb1と呼び、下端側のライン(一番下のライン)をLb2と呼ぶ。特定のラインは、他のラインよりも長く形成されている。例えば、ラインL1及びラインLb2は、他のラインと比べて、長く形成されている。これらのラインは、以下のようにして形成される。
まず、テストシートTS1が所定の印刷開始位置まで搬送された後、パス1において、ノズル♯90のみからインク滴が吐出され、ラインL1が形成される。パス1の後、コントローラ60は、搬送ローラ23を1/4回転させて、テストシートTS1を約1/4インチだけ搬送する。搬送後、パス2において、ノズル♯90のみからインク滴が吐出され、ラインL2が形成される。以下、同様の動作が繰り返し行われ、約1/4インチ間隔でラインL1〜ラインL20が形成される。このように、NIPラインよりも上端側にあるラインL1〜ラインL20は、ノズル♯1〜ノズル♯90のうちの最上流ノズル♯90により形成される。これにより、NIP状態で、できる限り多くのラインをテストシートTS1に形成することができる。なお、ラインL1〜ラインL20はノズル♯90のみによって形成される。
テストシートTS1の下端が搬送ローラ23を通過した後、パスnにおいて、ノズル♯90のみからインク滴が吐出され、ラインLb1が形成される。パスnの後、コントローラ60は、搬送ローラ23を1回転させて、テストシートTS1を約1インチだけ搬送する。搬送後、パスn+1において、ノズル♯3のみからインク滴が吐出され、ラインLb2が形成される。仮にノズル♯1が用いられると、ラインLb1とラインLb2との間隔が非常に狭くなり(約1/90インチ)、後でラインLb1とラインLb2との間隔を測定する際に、測定しにくくなるためである。
ところで、テストシートTS1の搬送が理想的に行われた場合、ラインL1〜ラインL20におけるライン同士の間隔は、ちょうど1/4インチになるはずである。しかし、搬送誤差があると、ライン間隔は1/4インチにならない。仮に理想的な搬送量よりも多くテストシートTS1が搬送されると、ライン間隔は広がる。逆に、理想的な搬送量よりも少なくテストシートTS1が搬送されると、ライン間隔が狭まる。つまり、ある2つのラインの間隔は、一方のラインが形成されるパスと他方のラインが形成されるパスとの間に行われる搬送処理での搬送誤差を反映している。このため、2つのラインの間隔を測定すれば、一方のラインが形成されるパスと他方のラインが形成されるパスとの間に行われる搬送処理での搬送誤差を測定することが可能になる。
同様に、ラインLb1とラインLb2との間隔は、テストシートTS1の搬送が理想的に行われた場合(正確には、更にノズル♯90とノズル♯3のインクの吐出が同じである場合)、ちょうど3/90インチになるはずである。しかし、搬送誤差があると、ライン間隔は3/90インチにならない。このため、ラインLb1とラインLb2の間隔は、非NIP状態における搬送処理での搬送誤差を反映していると考えられる。このため、ラインLb1とラインLb2との間隔を測定すれば、非NIP状態における搬送処理での搬送誤差を測定することが可能になる。
<PF補正用パターンの読み取り(S402)>
PF補正用パターンの印刷後、検査者は、テストシートTS1をスキャナ150にセットする。このとき、検査者は、テストシートTS1の側辺を治具16の突き当て部161Aに突き当て(図15B参照)、治具16からはみ出す部分を別の治具で押さえつけて、テストシートTS1の全面を原稿台ガラス152に密着させる。治具16を用いてテストシートTS1をセットすることによって、PF補正用パターンのラインは主走査方向とほぼ平行になり、各ラインは副走査方向に並ぶようになる。
そして、コンピュータ110は、スキャナ150にPF補正用パターンを読み取らせ、画像データを取得する。このとき、コンピュータ110は、PF補正用パターンだけでなく、基準シートSSの基準パターンも一緒に読み取らせる。
このときの読み取り解像度は、720dpi(主走査方向)×720dpi(副走査方向)である。このときの副走査方向の解像度はS200での読み取り解像度よりも低いため、読み取り時間はS200のときよりも短くなる。また、副走査方向の読み取り範囲はテストシートTSの副走査方向の長さ分だけでよいので、S200のときよりも短くなり、読み取り時間がS200のときよりも短くなる。
図22は、読み取り結果の画像データの説明図である。図に示すように、基準パターンの画像と、PF補正用パターンの画像とを取得することができる。なお、図中の点線で示す範囲は、次のラインの位置の検出(S403)において、PF補正用パターンのラインの位置の検出に用いられる画像データの範囲を示している。
<ラインの位置の検出(S403)>
画像データを取得した後、コンピュータ110は、画像データに基づいて、PF補正用パターンのラインの位置と、基準パターンのラインの位置を算出する。例えばPF補正用パターンのラインの位置を算出する場合、図22に示す範囲の画像データを抽出し、抽出した画像データに基づいて、PF補正用パターンのラインの位置を算出する。
なお、ラインの位置の算出方法は、前述のS200でのラインの算出方法と同様であるので、ここでは説明を省略する。前述のラインの算出方法と同様に、画素データの重心位置に基づいてラインの位置を算出しているため、画素の位置(整数の位置)よりも詳細な位置をラインの位置として算出することができる。
ところで、仮にスキャナ150の読み取り位置に誤差が無ければ、基準パターンのラインの位置の間隔は、等間隔になるはずである。しかし、実際には読み取り位置の誤差があるため、算出されたラインの位置の間隔は等間隔(20画素分の間隔)にならない。但し、基準パターンのラインの位置は、スキャナ150の読み取り位置の誤差を反映した情報になる。
一方、仮にスキャナ150の読み取り位置に誤差が無かったとしても、PF補正用パターンのラインの位置の間隔は、必ずしも等間隔(180画素分の間隔)にはならない。これは、PF補正用パターンを印刷するときに、搬送誤差が生じているためである。言い換えると、PF補正用パターンのラインの位置は、搬送誤差だけでなく、スキャナ150の読み取り位置の誤差の影響も受けている。このため、単純にPF補正用パターンのラインの位置に基づいて搬送誤差を求めることはできない。
<ラインの位置の修正(S404)>
そこで、コンピュータ110は、算出されたPF補正用パターンのラインの位置を、基準パターンのラインの位置に基づいて修正する(S404)。
図23は、PF補正用パターンのラインの位置の修正の概念図である。ここでは、PF補正用パターンのi番目のラインは、基準パターンのj−1番目のラインと、基準パターンのj番目のラインとの間に位置する。以下の説明では、PF補正用パターンのi番目のラインの位置を「S(i)」とし、基準パターンのj番目のラインの位置を「K(j)」とする。また、基準パターンのj−1番目のラインとj番目のラインとの間隔(y方向の間隔)を「L」とし、基準パターンのj−1番目のラインとPF補正用パターンのi番目のラインとの間隔(y方向の間隔)を「L(i)」とする。
まず、コンピュータ110は、次式に基づいて、間隔Lに対する間隔L(i)の比率Hを算出する。
H=L(i)/L
={S(i)−K(j−1)}/{K(j)−K(j−1)}
ところで、実際の基準シートSS上の基準パターンは等間隔であるので、基準パターンの1番目のラインの絶対位置をゼロとすれば、読み取り位置誤差が無かった場合における基準パターンのラインの位置を算出できる。例えば、読み取り位置誤差が無かった場合、基準パターンの2番目のラインのy方向の位置は20(画素)であり、基準パターンのn番目のラインのy方向の位置は20(画素)×(n−1)である。そこで、読み取り位置誤差が無かった場合における基準パターンのj−1番目のラインの位置を「20×(j−2)」とし、読み取り位置誤差が無かった場合におけるPF補正用パターンのi番目のラインの位置を「R(i)」とすると、次式のようにしてR(i)を算出できる。
R(i)=20×H+20×(j−2)
このようにして、コンピュータ110は、PF補正用パターンの各ラインの位置を修正する。
<仮補正値の算出(S405)>
次に、コンピュータ110は、1/4インチの搬送量に対する補正値(仮補正値)を算出する。各仮補正値は、理論上のライン間隔(180画素分)と実際のライン間隔との差に基づいて、算出される。
パスiとパスi+1との間で行われた搬送動作に対する仮補正値C(i)は、「180(画素)」から「R(i+1)−R(i)」を引いた値(画素数)に相当する。例えば、パス1とパス2との間で行われた搬送動作に対する仮補正値C(1)は、「180−{R(2)−R(1)}」の画素数に相当する。コンピュータ110は、このようにして仮補正値C(1)〜C(19)を算出する。
但し、NIPラインよりも下(搬送方向上流側)にあるラインLb1及びLb2を用いて補正値を算出する場合、理論上のライン間隔は24画素として計算する。コンピュータ110は、このようにして、非NIP状態での補正値Cbを算出する。
図24は、仮補正値C(i)の対応する範囲の説明図である。もし仮に、PF補正用パターンを印刷するときのパス1とパス2との間の搬送動作の際に、仮補正値C(1)に1/720インチを掛けた値を目標搬送量から引けば、実際の搬送量がちょうど1/4インチになったはずである。同様に、もし仮に、PF補正用パターンを印刷するときのパスnとパスn+1との間の搬送動作の際に、補正値Cbに1/720インチを掛けた値を目標搬送量から引けば、実際の搬送量がちょうど1インチになったはずである。
<PF補正値の算出(S406)>
ところで、本実施形態のロータリー式エンコーダ52は原点センサを備えていないので、コントローラ60は、搬送ローラ23の回転量は検出できるが、搬送ローラ23の回転位置までは検出していない。このため、搬送開始時の搬送ローラ23の回転位置をプリンタ1は保証することがでない。つまり、印刷する度に、搬送開始時の搬送ローラ23の回転位置が異なるおそれがある。一方、PF補正用パターンにおける隣接する2つの罫線の間隔は、1/4インチにて搬送するときのDC成分の搬送誤差の影響だけではなく、AC成分の搬送誤差の影響も受けている。
従って、目標搬送量を補正する際に、仮補正値Cをそのまま適用してしまうと、AC成分の搬送誤差の影響のため、搬送量が正しく補正されないおそれがある。例えば、PF補正用パターンの印刷時と同じようにパス1とパス2との間で1/4インチの搬送量の搬送動作を行う場合であっても、搬送開始時の搬送ローラ23の回転位置がPF補正用パターンの印刷時と異なるのであれば、目標搬送量を仮補正値C(1)で補正しても、搬送量は正しく補正されない。もし、搬送開始時の搬送ローラ23の回転位置がPF補正用パターンの印刷時と比べて180度異なっていると、AC成分の搬送誤差の影響のため、搬送量は正しく補正されないどころか、むしろ搬送誤差が悪化することもあり得る。
そこで、本実施形態では、DC成分の搬送誤差だけを補正するようにするため、次式のように4個の仮補正値Cを平均化することによって、DC成分の搬送誤差を補正するための補正量Caを算出している。
Ca(i)={C(i−1)+C(i)+C(i+1)+C(i+2)}/4
ここで、DC成分の搬送誤差を補正するための補正値Caを上式によって算出できる理由を説明する。
前述した通り、パスiとパスi+1との間で行われた搬送動作の仮補正値C(i)は、「180(画素)」から「R(i+1)−R(i)」を引いた値(画素数)に相当する。そうすると、補正値Caを算出するための上式は、次式のような意味になる。
Ca(i)=[720(画素)−{R(i+3)−R(i−1)}]/4
つまり、補正値Ca(i)は、理論上1インチ離れるべき2つのライン(ラインLi+3とラインLi−1)の間隔と1インチ(720画素に相当)との差を4で割った値(画素数)である。このため、補正値Ca(i)に1/720インチ(1画素分に相当する搬送量)を掛けた値は、紙Sを1インチ(搬送ローラ23の1回転分の搬送量)にて搬送したときに生じる搬送誤差の1/4を補正する値になる。そして、紙Sを1インチにて搬送したときに生じる搬送誤差は、DC成分の搬送誤差であり、この搬送誤差の中にはAC成分の搬送誤差は含まれない。
ゆえに、4個の仮補正値Cを平均化して算出される補正値Ca(i)は、AC成分の搬送誤差の影響を受けず、DC成分の搬送誤差を反映した値になる。
図25は、PF補正用パターンのラインと補正値Caとの関係の説明図である。図に示すように、補正値Ca(i)は、ラインLi+3とラインL−1の間隔に応じた値になる。例えば、補正値Ca(2)は、ラインL5とラインL1の間隔に応じた値になる。また、PF補正用パターンのラインは、ほぼ1/4インチ毎に形成されているため、補正値Caは、1/4インチ毎に算出することができる。このため、各補正値Ca(i)は、理論上1インチ離れるべき2つのラインの間隔に応じた値になるにも関わらず、各補正値Caの適用範囲を1/4インチにすることができる。つまり、本実施形態では、DC成分の搬送誤差を補正するための補正値を、搬送ローラ23の1回転分に相当する1インチの範囲毎ではなく、1/4インチの範囲毎に設定することができる。これにより、総搬送量に応じて変化するDC成分の搬送誤差(図10の点線を参照)を、きめ細かく補正することができる。
なお、パス2とパス3との間で行われる搬送動作の補正値Ca(2)は、補正値C(1)〜C(4)の総和を4で割った値(補正値C(1)〜C(4)の平均値)として算出される。言い換えると、補正値Ca(2)は、パス1で形成されるラインL1と、ラインL1を形成してから1インチ搬送した後のパス5で形成されるラインL5との間隔に応じた値になる。
また、補正値Ca(i)を算出する際にi−1がゼロ以下になる場合、補正値C(i−1)はC(1)を適用する。例えば、パス1とパス2との間で行われる搬送動作の補正値Ca(1)は、{C(1)+C(1)+C(2)+C(3)}/4として算出される。また、補正値Ca(i)を算出する際にi+1が20以上になる場合、補正値Caを算出するためのC(i+1)はC(19)を適用する。同様に、i+2が20以上になる場合、C(i+2)はC(19)を適用する。例えば、パス19とパス20との間で行われる搬送動作の補正量Ca(19)は、{C(18)+C(19)+C(19)+C(19)}/4として算出される。
コンピュータ110は、このようにして補正値Ca(1)〜補正値Ca(19)を算出する。これにより、DC成分の搬送誤差を補正するための補正値が、1/4インチの範囲ごとに求められる。
<PF補正値の記憶(S407)>
次に、コンピュータ110は、補正値をプリンタ1のメモリ63に記憶する(S407)。メモリ63に記憶される補正値は、NIP状態における補正値Ca(1)〜Ca(19)と、非NIP状態における補正値Cbである。また、各補正値を適用する範囲を示すための境界位置情報も、各補正値に関連付けられてメモリ63に記憶される。例えば、補正値Ca(1)の境界位置情報は、ラインL1とラインL2との間に相当する範囲を示すことになる。
プリンタ製造工場では、製造されるプリンタ毎に、各プリンタの個体の特徴を反映したテーブルがメモリ63に記憶される。そして、このテーブルを記憶したプリンタは、梱包されて出荷される。
<搬送量の補正(参考)>
参考までに、PF補正値を用いた搬送動作について説明する。但し、PF補正値を用いた搬送動作は、次の「BRS補正値の取得処理」やユーザ下での印刷動作の際に行われるものであり、上記の「PF補正値の取得処理」の際に行われるわけではない。
図26Aは、第1ケースでの補正値の説明図である。搬送動作前のノズル♯90の位置(紙に対する相対位置)が補正値Ca(i)の適用範囲の上端側の境界位置と一致し、搬送動作後のノズル♯90の位置が補正値Ca(i)の適用範囲の下端側の境界位置と一致している。このような場合、コントローラ60は、補正値としてCa(i)をそのまま用いる。
図26Bは、第2のケースでの補正値の説明図である。第2のケースでは、搬送動作前後のノズル♯90の位置が、ともに補正値Ca(i)の適用範囲内にある。このような場合、コントローラ60は、当初の目標搬送量F(インチ)と適用範囲の搬送方向長さL(インチ)との比F/LをCa(i)で掛けた値を補正値にする。そして、コントローラ60は、補正値Ca(i)×(F/L)に1/720インチを掛けた値を目標搬送量F(インチ)から引き、この値を目標にして搬送モータ22を駆動して、紙を搬送する。
図26Cは、第3のケースでの補正値の説明図である。第3のケースでは、搬送動作前のノズル♯90の位置が補正値Ca(i)の適用範囲内にあり、搬送動作後のノズル♯90の位置が補正値Ca(i+1)の適用範囲内にある。ここで、目標搬送量Fのうちの補正値Ca(i)の適用範囲内での搬送量をF1とし、補正値Ca(i+1)の適用範囲内での搬送量をF2とする。このような場合、コントローラ60は、Ca(i)をF1/Lで掛けた値と、Ca(i+1)をF2/Lで掛けた値との和を補正値とする。
図26Dは、第4のケースでの補正値の説明図である。第4のケースでは、補正値Ca(i+1)の適用範囲を通過するように紙が搬送される。このような場合、コントローラ60は、Ca(i)をF1/Lで掛けた値と、Ca(i+1)と、Ca(i+2)をF2/Lで掛けた値との和を補正値にする。
このように、コントローラが当初の目標搬送量Fを補正して、補正後の目標搬送量に基づいて搬送ユニットを制御すると、実際の搬送量が当初の目標搬送量Fになるように補正され、DC成分の搬送誤差が補正される。
なお、非NIP状態で搬送を行うときには、補正値Cbに基づいて目標搬送量を補正している。非NIP状態での搬送量がFの場合、コントローラ60は、補正値CbにF/Lで掛けた値を補正値にする。
このように目標搬送量を補正すれば、DC成分の搬送誤差を補正しながら紙Sを搬送することができる。
===BRS補正値の取得処理(S500)===
図27は、BRS補正値の取得処理のフロー図である。なお、BRS補正値とは、濃度ムラを補正するための補正値である。各処理は、コンピュータ110にインストールされたBRS補正用プログラムによって実現される。
まず、コンピュータ110が印刷データをプリンタ1に送信し、プリンタ1がテストシートにBRS補正用のテストパターンを印刷する(S501)。次に、検査者はテストシートをスキャナ150にセットし、スキャナ150にテストパターンを読み取らせ、テストパターンの画像データを取得する(S502)。次に、コンピュータ110は、S200で取得した基準パターンのラインの位置情報に基づいて、テストパターンの画像データを修正する。そして、コンピュータ110は、修正後のテストパターンの画像データを解析し、列領域毎にBRS補正値を算出する。そして、コンピュータ110は、補正データをプリンタ1に送信し、プリンタ1のメモリ63にBRS補正値を記憶させる。プリンタに記憶されるBRS補正値は、個々のプリンタの濃度ムラ特性を反映したものになる。
なお、BRS補正値を記憶したプリンタは、梱包されてユーザの下に届けられる。ユーザがプリンタで画像を印刷する際に、プリンタは、印刷すべき画像の画像データをBRS補正値に基づいて補正し、補正後の画像データに基づいて印刷を行う。これにより、印刷された画像は、濃度ムラの軽減した画像になる。
以下、BRS補正値の取得処理における各処理について説明する。
<BRS補正用パターンの印刷(S501)>
図28は、BRS補正用のテストパターンの説明図である。図29は、補正用パターンの説明図である。
テストシートTS2には、BRS補正用のテストパターンが印刷される。このテストパターンには、色別に4つの補正用パターンが含まれる。各補正用パターンは、5種類の濃度の帯状パターンと、上罫線と、下罫線と、左罫線と、右罫線とにより構成されている。帯状パターンは、それぞれ一定の階調値の画像データから生成されたものであり、左の帯状パターンから順に階調値76(濃度30%)、102(濃度40%)、128(濃度50%)、153(濃度60%)及び179(濃度70%)となり、順に濃い濃度のパターンになっている。なお、これらの5種類の階調値(濃度)を「指令階調値(指令濃度)」と呼び、記号でSa(=76)、Sb(=102)、Sc(=128)、Sd(=153)、Se(=179)と表す。
各帯状パターンは、先端印刷、通常印刷及び後端印刷により形成されるため、先端印刷領域のラスタラインと、通常印刷領域のラスタラインと、後端印刷領域のラスタラインとから構成されている。通常の印刷では通常印刷領域に数千個のラスタラインが形成されるが、補正用パターンの印刷では、通常印刷領域には8周期分のラスタラインが形成される。ここでは説明の簡略化のため図6の印刷によって補正用パターンが印刷されるものとして、帯状パターンが、先端印刷領域の30個のラスタライン、通常印刷領域の56個(7個×8周期)のラスタライン、及び、後端印刷領域の30個のラスタラインの計116個のラスタラインにより構成されるものとする。上罫線は、帯状パターンを構成する1番目のラスタライン(搬送方向最下流側のラスタライン)により形成される。下罫線は、帯状パターンを構成する最終ラスタライン(搬送方向最上流側のラスタライン)により形成される。
なお、BRS補正用のテストパターンを印刷するとき、プリンタ1は、前述のPF補正値によって搬送量を補正しながらテストシートを搬送している。但し、BRS補正用のテストシートTS2はA4サイズ(210mm×297mm)であり、PF補正用のテストシートTS1は4インチ×6インチ(101.6mm×152.4mm)であり、搬送方向の長さが異なっているため、テストシートTS1の補正値CaをテストシートTS2に適用しようとすると、そのままでは補正値Caの数が足りなくなる。
そこで、本実施形態では、プリンタ1は、複数のPF補正値のうちの一部の補正値を重複して繰り返し用いながら、各搬送動作の搬送量を補正する。具体的には、プリンタ1は、最初の数回の搬送動作ではPF補正値Ca(1)〜Ca(7)を用いて通常通りに(4インチ×6インチの印刷用紙に対する搬送動作と同様に)搬送量を補正して搬送動作を行い、その後の数回の搬送動作ではPF補正値Ca(8)を用いて搬送量を補正して搬送動作を行い、その後の搬送動作ではPF補正値Ca(9)〜(19)及びCbを用いて通常通りに搬送量を補正して搬送動作を行う。言い換えると、PF補正値Ca(8)の適用範囲が広く設定される。PF補正値Ca(8)を用いた搬送動作の際には、搬送ローラ23と排紙ローラ25の2つのローラによって安定して紙が搬送されており、ほぼ一定の搬送誤差が生じていると考えられる。このため、PF補正値Ca(8)を繰り返し用いて搬送量を補正しながらA4サイズの紙を搬送しても、搬送誤差をほぼ補正することができる。
<テストパターンの読み取り(S502)>
BRS補正用パターンの印刷後、検査者は、テストシートTS2をスキャナ150にセットする。このとき、検査者は、テストシートTS2の側辺を治具16の突き当て部161Aに突き当て(図15B参照)、治具16からはみ出す部分を別の治具で押さえつけて、テストシートTS2の全面を原稿台ガラス152に密着させる。治具16を用いてテストシートTS2をセットすることによって、補正用パターンのラスタラインは主走査方向とほぼ平行になり、各ラスタラインは副走査方向に並ぶようになる。
そして、コンピュータ110は、スキャナ150にテストパターンを読み取らせ、画像データを取得する。ここでは、コンピュータ110は、基準シートSSの基準パターンは一緒に読み取らなくても良い。
このときの読み取り解像度は、2880dpi(主走査方向)×2880dpi(副走査方向)である。このため、画像データの示す画像を構成する画素は、もしスキャナ150の読み取り位置に誤差がなければ、1/2880インチ(主走査方向)×1/2880インチ(副走査方向)の大きさに相当する。但し、読み取り位置の誤差のため、各画素の対応する副走査方向の長さは、長くなったり、短くなったりする。この結果、読み取り位置の誤差のため、画像データの示すテストパターンの画像は副走査方向(y方向)に歪んだ画像になっている。
<テストパターンの画像データの修正(S503)>
まず、コンピュータ110は、S200で取得した基準パターンのラインの位置情報に基づいて、「濃度算出位置」を算出する。「濃度算出位置」は、実際の1/2880インチ間隔(等間隔)の位置が画像データ上でどの位置にあるのかを示すものである。S200で取得した基準パターンのラインの位置は、実際の1/36インチ間隔の位置が画像データ上でどの位置にあるかを示しているので、濃度算出位置は、S200で取得した基準パターンのラインの位置を80分割することによって算出される。つまり、S200で取得した基準パターンの隣接する2つのラインの間の79点の位置を補間することにより、濃度算出位置が求められる。
仮にスキャナ150の読み取り位置に誤差がなければ、算出された濃度算出位置の間隔は、1(画素)になるはずである。しかし、実際には読み取り位置の誤差があるため、算出された濃度算出位置の間隔は1(画素)にならない。また、大抵の場合、濃度算出位置は整数にはならない。
次に、コンピュータ110は、濃度算出位置に相当する画素データを算出する。
図30Aは、修正前の画素データの説明図である。図中の横軸は、画素のy方向の位置を示している。横軸の目盛は、y方向の整数の位置を示しており、各画素の対応する位置を示している。なお、最初の画素のy方向の位置は0であり、この画素から100画素離れた画素のy方向の位置は100である。図中の縦軸は、画素データの示す階調値を示している。ここでは、2次元の画像データのy方向に並ぶ画素の画素データの階調値が、離散的なデータとして黒丸として示されている。
図30Bは、濃度算出位置に相当する画素データの算出方法の説明図である。図中の矢印の位置は、濃度算出位置を示している。既に説明したように、読み取り位置の誤差のため、濃度算出位置の間隔は1にならず、濃度算出位置は整数にならない。コンピュータ110は、直線補間によって、濃度算出位置に相当する階調値を算出する。
そして、1番目の濃度算出位置の階調値をy方向1番目の画素の画素データとし、n番目の濃度算出位置の階調値をy方向n番目の画素の画素データとし、画像データが修正される。この結果、画像データの画像の副走査方向(y方向)の歪が修正される。つまり、テストパターンの画像の副走査方向(y方向)の歪が修正される。
図30Cは、濃度算出位置に相当する画素データの算出の様子の説明図である。例えば22番目の濃度算出位置が「22.264」の場合、y方向の位置が「22」の画素Aの画素データと「23」の画素Bの画素データとに基づいて、この濃度算出位置の階調値が直線補間によって算出され、算出された階調値が画素Cの画素データになる。なお、画素Cの右隣の画素の画素データは、画素Aの右隣の画素の画素データと、画素Bの右隣の画素の画素データとに基づいて、直線補間によって算出されることになる。
<列領域毎の濃度の測定値の検出(S504)>
画像データの修正後、コンピュータ110は、画像データ上の補正用パターン(図29)の画像をトリミングする。そして、コンピュータ110は、トリミングした画像のy方向の画素数が116画素になるように、解像度変換する。この解像度変換により、y方向に並ぶ画素数と、補正用パターンを構成するラスタラインの数(116個)とが同数になる。この結果、解像度変換後の画像データ上でx方向に並ぶ画素の列が、列領域に対応することになる。例えば、1番上に位置するx方向の画素列は1番目の列領域に対応し、その下に位置する画素列は2番目の列領域に対応する。
次に、コンピュータ110は、各列領域における5種類の帯状パターンのそれぞれの濃度を測定する。x方向に並ぶ各画素列には5種類の濃度のパターンの部分がそれぞれ含まれているため、例えばある列領域の濃度30%のパターンの濃度を測定する場合、コンピュータ110は、その列領域に対応する画素列における濃度30%のパターンの画像を構成する画素の階調値を測定する。
図31は、シアンの5種類の帯状パターンの濃度の測定結果をまとめた測定値テーブルである。このように、コンピュータ110は、列領域毎に、5種類の帯状パターンの濃度の測定値を対応付けて、測定値テーブルを作成する。他の色についても、測定値テーブルが作成される。なお、以下の説明では、ある列領域について、階調値Sa〜Seの帯状パターンの測定値をそれぞれMa〜Meとしている。
図32は、シアンの濃度30%、濃度40%及び濃度50%の帯状パターンの測定値のグラフである。各帯状パターンは、それぞれ指令階調値で一様に形成されたにも関わらず、列領域毎に濃淡が生じている。この列領域の濃淡差が、印刷画像の濃度ムラの原因である。
<列領域毎の補正値の算出(S505)>
濃度ムラをなくすためには、各帯状パターンの測定値が一定になることが望ましい。そこで、階調値Sb(濃度40%)の帯状パターンの測定値を一定にするための処理について検討する。ここでは、階調値Sbの帯状パターンの全列領域の測定値の平均値Cbtを、濃度40%の目標値と定める。この目標値Cbtよりも測定値が淡い列領域iでは、階調値を濃くする方へ補正すれば良いと考えられる。一方、目標値Cbtよりも測定値が濃い列領域jでは、階調値を淡くする方へ補正すれば良いと考えられる。
そこで、コンピュータ110は、列領域毎に補正値を算出する。ここでは、ある列領域における指令階調値Sbに対する補正値の算出について説明する。以下に説明するように、図32の列領域iの指令階調値Sb(濃度40%)に対する補正値は、階調値Sb及び階調値Sc(濃度50%)の測定値に基づいて算出される。一方、列領域jの指令階調値Sbに対する補正値は、階調値Sb及び階調値Sa(濃度30%)の測定値に基づいて算出される。
図33Aは、列領域iにおける指令階調値Sbに対する目標指令階調値Sbtの説明図である。この列領域iでは、指令階調値Sbで形成された帯状パターンの濃度の測定値Mbは、目標値Mbtよりも小さい階調値を示す(この列領域の濃度は、平均濃度よりも淡い)。仮に、この列領域に目標値Mbtの濃度のパターンをプリンタに形成させるならば、プリンタドライバは、次式(直線BCに基づく直線補間)により算出される目標指令階調値Sbtに基づいて指令すればよいと考えられる。
Sbt=Sb+(Sc−Sb)×{(Mbt−Mb)/(Mc−Mb)}
図33Bは、列領域jにおける指令階調値Sbに対する目標指令階調値Sbtの説明図である。この列領域jでは、指令階調値Sbで形成された帯状パターンの濃度の測定値Mbは、目標値Mbtよりも大きい階調値を示す(この列領域の濃度は、平均濃度よりも濃い)。仮に、この列領域に目標値Mbtの濃度のパターンをプリンタに形成させるならば、プリンタドライバは、次式(直線BCに基づく直線補間)により算出される目標指令階調値Sbtに基づいて指令すればよいと考えられる。
Sbt=Sb−(Sb−Sa)×{(Mbt−Mb)/(Ma−Mb)}
このようにして目標指令階調値Sbtを算出した後、コンピュータ110は、次式により、この列領域における指令階調値Sbに対する補正値Hbを算出する。
Hb = (Sbt−Sb)/Sb
コンピュータ110は、列領域毎に、階調値Sb(濃度40%)に対する補正値Hbを算出する。同様に、階調値Sc(濃度50%)に対する補正値Hcを、各列領域の測定値Mcと、測定値Mb又はMdに基づいて、列領域毎に算出する。同様に、階調値Sd(濃度60%)に対する補正値Hdを、各列領域の測定値Mdと、測定値Mc又はMeに基づいて、列領域毎に算出する。また、他の色についても、列領域毎に、3つの補正値(Hb、Hc、Hd)を算出する。
ところで、通常印刷領域には、56個のラスタラインがあるが、7個のラスタライン毎に規則性がある。通常印刷領域の補正値の算出では、この規則性が考慮される。
コンピュータ110は、通常印刷領域の1番目の列領域(印刷領域全体の31番目の列領域)における補正値を算出するとき、前述の測定値Maには、通常印刷領域の1、8、15、22、29、36、43、50番目の8個の列領域の列領域の濃度30%の測定値の平均値が用いられる。同様に、通常印刷領域の1番目の列領域(印刷領域全体の31番目の列領域)における補正値を算出するとき、前述の測定値Mb〜Meには、通常印刷領域の1、8、15、22、29、36、43、50番目の8個の列領域の列領域の各濃度の測定値の平均値がそれぞれ用いられる。そして、このような測定値Ma〜Meに基づいて、前述の通りに、通常印刷領域の1番目の列領域の補正値(Hb、Hc、Hd)が算出される。このように、通常印刷領域の列領域の補正値は、7個おきの8個の列領域の各濃度の測定値の平均に基づいて、算出される。この結果、通常印刷領域では、1番目〜7番目の7個の列領域に対してだけ補正値が算出され、8番目〜56番目の列領域に対する補正値の算出は行なわれない。言い換えると、通常印刷領域の1番目〜7番目の7個の列領域に対する補正値が、8番目〜56番目の列領域に対する補正値にもなる。これらの補正値が、濃度ムラを補正するためのBRS補正値になる。
<BRS補正値の記憶(S507)>
次に、コンピュータ110は、補正値をプリンタ1のメモリ63に記憶する。
図34は、シアンの補正値テーブルの説明図である。補正値テーブルには、先端印刷領域用、通常印刷領域用、後端印刷領域用の3種類ある。各補正値テーブルには、3つの補正値(Hb、Hc、Hd)が、列領域毎に対応付けられている。例えば、各列領域のn番目のラスタラインには、3つの補正値(Hb_n、Hc_n、Hd_n)が対応付けられている。3つの補正値(Hb_n、Hc_n、Hd_n)は、それぞれ、指令階調値Sb(=102)、Sc(=128)及びSd(=153)に対応する。なお、他の色の補正値テーブルも同様である。
プリンタ1のメモリ63に補正値を記憶させた後、BRS補正値取得処理は終了する。その後、プリンタ1とコンピュータ110との接続が外され、プリンタ1に対する他の検査を終えて、プリンタ1が工場から出荷される。プリンタ1には、プリンタドライバを記憶したCD−ROMも同梱される。
<濃度ムラの補正(参考)>
参考までに、BRS補正値を用いた印刷方法について説明する。但し、BRS補正値を用いた印刷方法は、ユーザ下での印刷動作の際に行われるものであり、上記の「PF補正値の取得処理」や「BRS補正値の取得処理」の際に行われるわけではない。
プリンタ1を購入したユーザは、自身の所有するコンピュータ110(もちろん、プリンタ製造工場のコンピュータとは別のコンピュータ)にプリンタ1を接続する。そして、同梱されているCD−ROMがコンピュータ110にセットされると、コンピュータ110にプリンタドライバがインストールされる。このとき、プリンタドライバは、プリンタ1に対して補正値の送信を要求し、プリンタから送られてくるBRS補正値をメモリに記憶する。
プリンタドライバは、ユーザからの印刷命令を受けると、解像度変換処理、色変換処理、濃度ムラ補正処理、ハーフトーン処理、ラスタライズ処理を行う。なお、BRS補正値は、この濃度ムラ補正処理に用いられる。以下、これらの処理について説明する。
解像度変換処理は、アプリケーションプログラムから出力された画像データ(テキストデータ、イメージデータなど)を、紙に印刷する際の解像度に変換する処理である。例えば、紙に画像を印刷する際の解像度が360×360dpiに指定されている場合、アプリケーションプログラムから受け取った画像データを360×360dpiの解像度の画像データに変換する。なお、解像度変換処理後の画像データは、RGB色空間により表される256階調のデータ(RGBデータ)である。
色変換処理は、RGBデータをCMYK色空間により表されるCMYKデータに変換する処理である。この色変換処理により、各画素についてのRGBデータが、インク色に対応するCMYKデータに変換される。なお、色変換処理後のデータは、CMYK色空間により表される256階調のCMYKデータである。
濃度補正処理は、各画素データの階調値を、その画素データの属する列領域の対応する補正値に基づいて補正する処理である。
図35は、シアンのn番目の列領域の濃度補正処理の説明図である。同図は、シアンのn番目の列領域に属する画素の画素データの階調値S_inを補正する様子を示している。なお、補正後の階調値はS_outである。
仮に補正前の画素データの階調値S_inが指令階調値Sbと同じであれば、プリンタドライバは、階調値S_inを目標指令階調値Sbtに補正すれば、その画素データの対応する単位領域に目標濃度Mbtの画像を形成することができる。つまり、補正前の画素データの階調値S_inが指令階調値Sbと同じであれば、指令階調値Sbに対応する補正値Hbを用いて、階調値S_in(=Sb)をSb×(1+Hb)に補正するのが良い。同様に、補正前の画素データの階調値Sが指令階調値Scと同じであれば、階調値S_in(=Sc)をSc×(1+Hc)に補正するのが良い。
これに対し、補正前の階調値S_inが指令階調値とは異なる場合、図に示すような直線補間によって、出力すべき階調値S_outが算出される。図中の直線補間では、各指令階調値(Sb、Sc、Sd)に対応する補正後の各階調値S_out(Sbt、Sct、Sdt)の間を直線補間している。
先端印刷領域の1番目〜30番目の各列領域の画素データに対しては、プリンタドライバは、先端印刷領域用の補正値テーブルに記憶されている1番目〜30番目の各列領域に対応する補正値に基づいて、濃度補正処理を行う。例えば、先端印刷領域の1番目の列領域の画素データに対しては、プリンタドライバは、先端印刷用の補正値テーブルの1番目の列領域の補正値(Hb_1、Hc_1、Hd_1)に基づいて、濃度補正処理を行う。
通常印刷領域の1番目〜7番目の各列領域(印刷領域全体の31番目〜38番目の各列領域)の画素データに対しては、プリンタドライバは、通常印刷領域用の補正値テーブルに記憶されている1番目〜7番目の各列領域に対応する補正値に基づいて、濃度補正処理を行う。但し、通常印刷領域には数千個の列領域が存在するが、通常印刷領域用の補正値テーブルには、7個分の列領域に対応する補正値しか記憶されていない。そこで、通常印刷領域の8番目〜14番目の各列領域の画素データに対しては、プリンタドライバは、通常印刷領域用の補正値テーブルに記憶されている1番目〜7番目の各列領域に対応する補正値に基づいて、濃度補正処理を行う。このように、通常印刷領域の列領域に対しては、プリンタドライバは、7個の列領域毎に、1番目〜7番目の各列領域に対応する補正値を繰り返して用いる。通常印刷領域では7個の列領域毎に規則性があるため、濃度ムラの特性も同じ周期で繰り返されると考えられるため、同じ周期で補正値を繰り返し用いることにより、記憶すべき補正値のデータ量を削減している。
なお、補正用パターンの通常印刷領域の列領域は56個であったが、ユーザ下で印刷される印刷画像の通常印刷領域の列領域の数は、これよりも多く、数千個にも及ぶ。このような通常印刷領域の搬送方向上流側(紙の後端側)に30個の列領域からなる後端印刷領域が形成される。
後端印刷領域では先端印刷領域と同様に、後端印刷領域の1番目〜30番目の各列領域の画素データに対しては、プリンタドライバは、後端印刷領域用の補正値テーブルに記憶されている1番目〜30番目の各列領域に対応する補正値に基づいて、濃度補正処理を行う。
以上の濃度補正処理により、濃く視認されやすい列領域に対しては、その列領域に対応する画素の画素データ(CMYKデータ)の階調値が低くなるように補正される。逆に、淡く視認されやすい列領域に対しては、その列領域に対応する画素の画素データの階調値が高くなるように補正される。なお、他の色の他の列領域に対しても、プリンタドライバは、同様に補正処理を行う。
ハーフトーン処理は、高階調数のデータを、プリンタが形成可能な階調数のデータに変換する処理である。例えば、ハーフトーン処理により、256階調を示すデータが、2階調を示す1ビットデータや4階調を示す2ビットデータに変換される。ハーフトーン処理では、ディザ法・誤差拡散法などを利用して、プリンタがドットを分散して形成できるように画素データを作成する。ハーフトーン処理されたデータは、前述のRGBデータと同等の解像度(例えば360×360dpi)を有している。また、ハーフトーン処理された画素データは、ドットの形成状態を表す。ハーフトーン処理後の画素データが2ビットデータの場合、その画素データは、ドットなし、小ドット形成、中ドット形成、大ドット形成を示す。
本実施形態では、プリンタドライバは、濃度補正処理によって補正された階調値の画素データに対して、ハーフトーン処理が行われることになる。この結果、濃く視認されやすい列領域では、その列領域の画素データの階調値が低くなるように補正されているので、その列領域のラスタラインを構成するドットのドット生成率が低くなる。逆に、淡く視認されやすい列領域では、ドット生成率が高くなる。
ラスタライズ処理は、マトリクス状の画像データを、プリンタに転送すべきデータ順に変更する処理である。ラスタライズ処理されたデータは、印刷データに含まれる画素データとして、プリンタに出力される。
このようにして生成された印刷データに基づいてプリンタが印刷処理を行えば、各列領域のラスタラインのドット生成率が変更され、列領域の画像片の濃度が補正されて、印刷画像全体の濃度ムラが抑制される。
ところで、仮にBRS補正用テストパターン印刷時と異なる搬送動作で印刷が行われると、隣接するラスタライン同士の距離が変化してしまい、異なる濃度ムラが生じるおそれがある。この結果、BRS補正用テストパターン印刷時と異なる搬送動作で印刷が行われると、せっかく取得したBRS補正値にて階調値を補正しても、濃度ムラを補正することができない。
そこで、本実施形態では、印刷データに基づいて印刷を行う際に、BRS補正用テストパターン印刷時と同様に、プリンタ1は、複数のPF補正値のうちの一部の補正値を重複して繰り返し用いながら、各搬送動作の搬送量を補正する。具体的には、プリンタ1は、最初の数回の搬送動作ではPF補正値Ca(1)〜Ca(7)を用いて通常通りに(4インチ×6インチの印刷用紙に対する搬送動作と同様に)搬送量を補正して搬送動作を行い、その後の数回の搬送動作ではPF補正値Ca(8)を用いて搬送量を補正して搬送動作を行い、その後の搬送動作ではPF補正値Ca(9)〜(19)及びCbを用いて通常通りに搬送量を補正して搬送動作を行う。
===その他の実施の形態===
上記の実施形態は、主としてプリンタについて記載されているが、その中には、印刷装置、記録装置、液体の吐出装置、印刷方法、記録方法、液体の吐出方法、印刷システム、記録システム、コンピュータシステム、プログラム、プログラムを記憶した記憶媒体等の開示が含まれていることは言うまでもない。
また、一実施形態としてのプリンタ等を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
===まとめ===
(1)上記の実施形態によれば、検査対象となるプリンタ毎に、PF補正値取得処理とBRS補正値取得処理とが繰り返し行われる。(図14のS400、S500参照)。そして、PF補正値取得処理の際にはテストパターンが720dpiの解像度にて読み取られ、BRS補正値取得処理の際にはテストパターンが2880dpiの解像度にて読み取られる。
ところで、BRS補正値取得処理の際には、2880dpiの解像度の画像データを処理するため、720dpiの解像度の画像データを処理するPF補正値取得処理と比べて、処理に負荷がかかる。このような状況において、高解像度(2880dpi)による基準パターンの画像処理が繰り返し行われると、画像処理時間が長くなってしまう。
そこで、本実施形態では、まず基準パターンの読み取りを2880dpiの解像度にて行い(図14のS200参照)、その後に、PF補正値取得処理とBRS補正値取得処理とを繰り返し行っている。
そして、PF補正値取得処理では、予め読み取られた基準パターンの画像データは利用せずに、基準パターンはPF補正用のテストパターンと共に読み取られ、プリンタ毎に基準パターンの画像処理が行われる。この理由は、PF補正値取得処理では、720dpiの解像度にて基準パターンが読み取られるため、画像処理の負荷が軽いためである。また、プリンタを検査する毎に基準パターンをテストパターンと共に読み取った方が、読み取り位置誤差の影響の修正を精度良く行なうことができるためである。なお、PF補正値取得処理の読み取り解像度が720dpiで十分な理由は、基準パターンのラインの位置を算出する際に画像データの重心位置を用いるため、低い解像度でも詳細なラインの位置を算出できるためである。
また、BRS補正値取得処理では、予め読み取られた基準パターンの読み取り結果(図14のS200参照)と、BRS補正用のテストパターンの読み取り結果とに基づいて、BRS補正値が算出される。これにより、BRS補正値取得処理の際に、基準パターンの画像処理が必要なくなるので、BRS補正値取得処理の処理時間を短縮できる。
なお、BRS補正値取得処理では、予め読み取られた基準パターンの読み取り結果(図14のS200参照)を利用するため、BRS補正用のテストパターンの読み取り時の読み取り位置誤差が、基準パターンの読み取り位置誤差と多少ずれているおそれがある。但し、BRS補正値取得処理では濃度の測定値に基づいて補正値を算出しており、多少の読み取り位置誤差があっても濃度の測定値は大きく変動しないと考えられる。このため、テストパターンの読み取り時の読み取り位置誤差が基準パターンの読み取り時の読み取り位置誤差と多少ずれていても、ラインの位置に基づいて算出されるようなPF補正値と比べて、BRS補正値への影響は少ない。つまり、BRS補正値取得処理では、予め読み取られた基準パターンの読み取り結果(図14のS200参照)を利用することが許容される。
(2)上記の実施形態によれば、PF補正用のテストパターンをスキャナ150で読み取るときの解像度(720dpi)は、BRS補正用のテストパターンをスキャナ150で読み取るときの解像度(2880dpi)よりも、低い解像度である。このため、BRS補正値算出処理の際に基準パターンの画像処理を行わないことによる処理時間短縮の効果は大きくなる。
但し、必ずしも、PF補正用のテストパターンの読み取り解像度(720dpi)が、BRS補正用のテストパターンの読み取り解像度(2880dpi)よりも低い必要は無い。例えば仮に2つの読み取り解像度が同じだとしても、BRS補正値算出処理のための基準パターンの画像処理に時間がかかるのであれば、BRS補正値取得処理の際に、予め読み取られた基準パターンの読み取り結果を用いることが望ましい。
(3)上記の実施形態によれば、PF補正値取得処理においてPF補正値を算出する際に基準パターンの読み取り結果が用いられ(図20のS402〜S404参照)、BRS補正値取得処理においてBRS補正値を算出する際に基準パターンの読み取り結果が用いられる(図27のS503参照)。つまり、いずれの補正値を算出する際おいても、基準パターンの読み取り結果が用いられる。
一方、上記の本実施形態によれば、PF補正用のテストシートTS1の大きさは4インチ×6インチ(101.6mm×152.4mm)であり、BRS補正用のテストシートTS2の大きさはA4サイズ(210mm×297mm)であり、大きさが異なっている。このため、PF補正用のテストパターンの読み取り範囲と、BRS補正用のテストパターンの読み取り範囲とが異なっている(なお、読み取り範囲はテストシートの大きさに対応して設定され、読み取り範囲の特に副走査方向の長さが異なっている)。
このような状況において、本実施形態では、基準パターンの形成された基準シートSSは、PF補正用のテストパターンの読み取り範囲とBRS補正用のテストパターンの読み取り範囲の両方をカバーできるだけの長さ(300mm)になっており(図16参照)、両方の読み取り範囲をカバーできるようにスキャナ150に取り付けられている(図15A〜図15C参照)。
これにより、一旦スキャナへ基準シートSSを取り付ければ(図14のS100参照)、基準シートを交換することなく、BRS補正値取得のための基準パターンの読み取り(図17のS201参照)と、PF補正値取得のための基準パターンの読み取り(図20のS402)とを行うことができる。これにより、プリンタの検査工程の時間を短縮することができる。
(4)搬送量を補正する場合と補正しない場合とでは、ラスタラインの形成される位置が異なるため、濃度ムラの特性が異なると考えられる。このため、もし仮に、BRS補正値取得処理が先に行われ、その後にPF補正値取得処理が行われるとすると、PF補正値を用いて搬送量を補正して印刷をする際に、濃度ムラを精度良く除去できなくなると考えられる。すなわち、PF補正値により搬送量を補正してしまうと、搬送量を補正せずに取得したBRS補正値は役に立たなくなってしまう。
そこで、本実施形態によれば、プリンタの検査を行う際に、まずPF補正値取得処理が行われ、その後、PF補正値を用いて搬送量を補正しつつBRS補正値取得処理が行われる。これにより、高精度な印刷を可能にするPF補正値とBRS補正値の両方を取得することができる。
(5)上記の実施形態によれば、PF補正値取得処理とBRS補正値取得処理での基準パターンの用いられ方が異なっている。PF補正値取得処理では、基準パターンの読み取り結果は、PF補正用のテストパターンのラインの位置の修正に用いられる(図20のS404、図23参照)。一方、BRS補正値取得処理では、基準パターンの読み取り結果は、補正用パターンの画像データの修正に用いられる(図27のS503、図30B参照)。
上記の実施形態では、PF補正値取得処理とBRS補正値取得処理での基準パターンの用いられ方が異なっているにも関わらず、同じ基準パターンを用いることができるので、一旦スキャナへ基準シートSSを取り付ければ(図14のS100参照)、基準シートを交換することなく、BRS補正値取得のための基準パターンの読み取り(図17のS201参照)と、PF補正値取得のための基準パターンの読み取り(図20のS402)とを行うことができる。これにより、プリンタの検査工程の時間を短縮することができる。
(6)上記の実施形態では、基準シートの貼付された治具がスキャナに取り付けられている。この治具は、テストシートTSの側辺を突き当てるための突き当て部161Aと、側辺を突き当て部161Aに突き当てたときにテストシートTSをスキャナの読み取り面に押さえるための押さえ面164とを備えている。このような治具を用いることによって、テストシートを所望の姿勢で位置決めした状態で、テストシートTSをスキャナ150に読み取らせることができる。また、この治具によって基準シートSSとテストシートTSとをほぼ平行にできるので、PF補正用のテストパターンの読み取り範囲とBRS補正用のテストパターンの読み取り範囲の両方をカバーするように構成される基準シートSSを、過剰な長さにしなくて済む。
印刷システムの外観構成を示した説明図である。 プリンタ1の全体構成のブロック図である。 図3Aは、プリンタ1の全体構成の概略図である。また、図3Bは、プリンタ1の全体構成の断面図である。 ヘッド41の下面におけるノズルの配列を示す説明図である。 図5A及び図5Bは、通常印刷の説明図である。 先端印刷及び後端印刷の説明図である。 図7Aは、スキャナ150の断面図である。図7Bは、上蓋151を外した状態のスキャナ150の上面図である。 搬送ユニット20の構成の説明図である。 AC成分の搬送誤差の説明用グラフである。 101.6mm×152.4mm(4インチ×6インチ)の大きさの紙を搬送する際に生じる搬送誤差のグラフ(概念図)である。 図11Aは、理想的にドットが形成されたときの様子の説明図である。図11Bは、濃度ムラの説明図である。図11Cは、本実施形態の印刷方法によりドットが形成されたときの様子の説明図である。 スキャナの読み取り位置の誤差のグラフである。 図13Aは、スキャナの読み取り位置が正確な場合の原稿と画像データの関係の説明図である。図13Bは、スキャナの読み取り位置に誤差がある場合の原稿と画像データの関係の説明図である。 本実施形態の全体の流れのフロー図である。 図15Aは、スキャナ150に取り付ける治具16の説明図である。 図15Bは、スキャナ150に取り付けられた治具16を副走査方向から見た様子の説明図である。 図15Cは、スキャナ150に取り付けられた治具16を上方から見た様子の説明図である。 基準シートSSの説明図である。 基準パターンのライン位置算出処理のフロー図である。 1次元の画像データのグラフである。 図19Aは、演算範囲の画素データの説明図である。図19Bは、正規化後の画素データの説明図である。 PF補正値の取得処理のフロー図である。 PF補正用パターンの印刷の様子の説明図である。 読み取り結果の画像データの説明図である。 PF補正用パターンのラインの位置の修正の概念図である。 仮補正値C(i)の対応する範囲の説明図である。 PF補正用パターンのラインと補正値Caとの関係の説明図である。 図26Aは、第1ケースでの補正値の説明図である。図26Bは、第2のケースでの補正値の説明図である。図26Cは、第3のケースでの補正値の説明図である。図26Dは、第4のケースでの補正値の説明図である。 BRS補正値の取得処理のフロー図である。 BRS補正用のテストパターンの説明図である。 補正用パターンの説明図である。 修正前の画素データの説明図である。 濃度算出位置に相当する画素データの算出方法の説明図である。 濃度算出位置に相当する画素データの算出の様子の説明図である。 シアンの5種類の帯状パターンの濃度の測定結果をまとめた測定値テーブルである。 シアンの濃度30%、濃度40%及び濃度50%の帯状パターンの測定値のグラフである。 図33Aは、列領域iにおける指令階調値Sbに対する目標指令階調値Sbtの説明図である。図33Bは、列領域jにおける指令階調値Sbに対する目標指令階調値Sbtの説明図である。 シアンの補正値テーブルの説明図である。 シアンのn番目の列領域の濃度補正処理の説明図である。
符号の説明
1 プリンタ、
16 治具、160 固定具、161 突起部、161A 突き当て部、
162 側面、163 側面、164 押さえ面、165 傾斜面、
20 搬送ユニット、21 給紙ローラ、22 搬送モータ、23 搬送ローラ、
24 プラテン、25 排紙ローラ、26 従動ローラ、27 従動ローラ、
30 キャリッジユニット、31 キャリッジ、32 キャリッジモータ、
40 ヘッドユニット、41 ヘッド、
50 検出器群、51 リニア式エンコーダ、
52 ロータリー式エンコーダ、521 スケール、522 検出部、
53 紙検出センサ、54 光学センサ、
60 コントローラ、63 メモリ、
100 印刷システム、110 コンピュータ、
120 表示装置、130 入力装置、
140 記録再生装置、150 スキャナ、
151 上蓋、152 原稿台ガラス、153 読取キャリッジ、
154 案内部、155 移動機構、
157 露光ランプ、158 ラインセンサ、159 光学系、
SS 基準シート、TS テストシート

Claims (7)

  1. 基準パターンをスキャナで読み取る基準読み取りステップと、
    前記基準パターンとプリンタの印刷した第1テストパターンとを前記スキャナで読み取る第1読み取りステップと、
    前記プリンタの印刷した第2テストパターンを前記スキャナで読み取る第2読み取りステップと
    を有する補正値取得方法であって、
    検査対象となるプリンタ毎に、前記第1読み取りステップと前記第2読み取りステップとを繰り返し行い、
    前記第1読み取りステップの読み取り結果に基づいて、前記プリンタの第1補正値を取得し、
    前記基準読み取りステップの読み取り結果と前記第2読み取りステップの読み取り結果とに基づいて、前記プリンタの第2補正値を取得する
    ことを特徴とする補正値取得方法。
  2. 請求項1に記載の補正値取得方法であって、
    前記第1読み取りステップにおける読み取り解像度は、前記第2読み取りステップにおける読み取り解像度よりも、低い解像度である
    ことを特徴とする補正値取得方法。
  3. 請求項1又は2に記載の補正値取得方法であって、
    前記第1読み取りステップ及び前記第2読み取りステップの前に、前記基準パターンの形成された基準シートが、前記第1読み取りステップの読み取り範囲及び前記第2読み取りステップの読み取り範囲をカバーするように前記スキャナに予め設けられる
    ことを特徴とする補正値取得方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の補正値取得方法であって、
    前記第1テストパターンは、媒体の搬送量を補正するためのテストパターンであり、
    前記第2テストパターンは、濃度ムラを補正するためのテストパターであり、
    前記第1補正値を取得した後、前記第1補正値により前記搬送量を補正しつつ前記第2テストパターンが印刷され、この第2テストパターンを利用して前記第2補正値を取得する
    ことを特徴とする補正値取得方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の補正値取得方法であって、
    前記第1補正値を取得する際に、前記第1テストパターンに含まれるラインの位置が算出されると共に、算出された位置が前記基準パターンの読み取り結果に基づいて修正され、
    前記第2補正値を取得する際に、前記第2読み取りステップで読み取られた前記第2テストパターンの画像データが前記基準パターンの読み取り結果に基づいて修正される
    ことを特徴とする補正値取得方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の補正値取得方法であって、
    前記基準パターンの形成された基準シートが設けられた治具が、前記スキャナに取り付けられており、
    前記治具は、テストシートの側辺を突き当てるための突き当て部と、前記側辺を前記突き当て部に突き当てたときに前記テストシートを前記スキャナの読み取り面に押さえるための押さえ部とを有する
    ことを特徴とする補正値取得方法。
  7. 基準パターンをスキャナで読み取る基準読み取りステップと、
    前記基準パターンとプリンタの印刷した第1テストパターンとを前記スキャナで読み取る第1読み取りステップと、
    前記プリンタの印刷した第2テストパターンを前記スキャナで読み取る第2読み取りステップと
    を有する印刷方法であって、
    検査対象となるプリンタ毎に、前記第1読み取りステップと前記第2読み取りステップとを繰り返し行い、
    前記第1読み取りステップの読み取り結果に基づいて、前記プリンタの第1補正値を取得し、
    前記基準読み取りステップの読み取り結果と前記第2読み取りステップの読み取り結果とに基づいて、前記プリンタの第2補正値を取得し、
    前記第1補正値及び前記第2補正値を用いて印刷を行う
    ことを特徴とする印刷方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2018196956A (ja) * 2017-05-24 2018-12-13 セイコーエプソン株式会社 印刷装置、及び、印刷装置の制御方法
EP3624013A1 (en) 2018-09-12 2020-03-18 Seiko Epson Corporation Determining method of density correction value, printing apparatus, printing method, and method of correcting printing density

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