JP2008075185A - 新聞巻取紙およびその評価方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】傾斜紙庫に格納した互いに隣接する新聞巻取紙が接触面において摩擦によって剥離し難いように、紙の厚さ方向にみた繊維の配列が新聞巻取紙の自由端側表面から巻取り方向に向かって埋没するように配列させる。
新聞巻取紙を形成する新聞用紙の紙面に粘着性物質を接着させた状態から該粘着性物質を上方に引き剥がし、紙の縦方向(MD方向)に沿って該新聞用紙の紙面に紙層の剥離を生じさせ、剥離長を測定し評価を行う。
【選択図】図1
Description
図1は新聞巻取紙を傾斜紙庫に保管している状態を示す概略図である。
傾斜紙庫には斜面に沿って複数の新聞巻取紙が並べられ、斜面の最下方に位置するもの、つまり、搬出口に最も近い位置にあるものから順次搬出コンベア等に乗せられて輪転機に送られるようになっている。
そして、最下方に位置するものが搬出された後に傾斜紙庫に残った新聞巻取紙は斜面を利用して自重で転がり、傾斜面の途中に設置されたストッパーによって停止する。
この時、斜面には複数本の新聞巻取紙が保管されており、一本搬出する毎に、その上方に位置する複数の新聞巻取紙は互いに接触しながら転がり降りることになり、かつ、図1に矢印で示すように接触面における隣り合う新聞巻取紙同士は上から押されながら互いに擦れ合い、転がり降りることになる。
このため、新聞巻取紙同士が互いに接している部分には、上から押されることによる剪断力或いは擦れ合うことによる摩擦力や引張り力等、複雑な負荷がかかり、紙面に紙層の剥離が生じたり、甚だしきは紙が切断してしまう断紙に至ることさえある。
しかも、近年、新聞用紙においては、紙継ぎ回数を減少させるために新聞巻取紙の連数を増加させる傾向にあり、その重量も増加している。そのため新聞巻取紙同士の接触面に加わる摩擦力や剪断力は益々が大きくなり、傾斜紙庫における新聞巻取紙の紙層の剥離や断紙の発生頻度は上がっている。特に印刷から配達までのスピードが求められる新聞においては印刷工程におけるトラブルは致命傷になり、かかるトラブルの多発は是が非でも避けなければならない。
また、新聞用紙の紙面に粘着異物が存在すると新聞巻取紙が互いに接触した時、粘着異物を起点とした剥離が発生する。粘着異物を除去する方法として、古紙脱墨パルプ(DIP)の製造時に粘着異物除去剤を加える方法(特許文献3)、DIP製造時に高密度化剤と凝集剤を加える方法(特許文献4)等も提案されている。
更に、新聞用紙の表面にシリカゾルまたはコロイダルシリカを主体とする無機系表面処理剤を塗工して粘着異物を被覆する方法(特許文献5)も提案されている。
しかし、何れの方法によっても依然として傾斜紙庫における剥離等の発生を完全に抑えることはできていないのが実態である。
即ち、例えば、新聞巻取紙は紙庫に保管している間に紙が空気中の水分を吸収して表面に吸湿皺等が発生する可能性がある。この吸湿皺等によって部分的かつ微妙な凸凹が発生した新聞巻取紙を傾斜紙庫で取扱う場合、皺等で部分的に盛り上がった箇所があると、そこに集中的に力が加わり、大きな摩擦力や引張り力が加わり剥離や断紙が発生するのではないかと推測した。
また、本発明は、新聞巻取紙を形成する新聞用紙の紙面に粘着性物質を接着させ、該粘着性物質を、新聞巻取紙の自由端側から固定端側へ向かう方向に引き剥がしたときの剥離長lと、固定端側から自由端側へ向かう方向に引き剥がしたときの剥離長mを、l>mとなるようにし、好ましくはm/lが1/3以下となるようにしたもの、また、剥離長mが60mm以下となるようにしたものである。加えて、前記粘着性物質を接着させる紙面が、抄紙工程においてワイヤーパートからプレスパートに新聞用紙が移動する際にワイヤーに接する面となるように巻き取るとさらに好ましい。
更に、本発明の新聞巻取紙の評価方法は、新聞巻取紙の紙面における剥離の発生を評価する方法であって、新聞巻取紙を形成する新聞用紙の紙面に粘着性物質を接着させた状態から該粘着性物質を上方に引き剥がし、紙の縦方向(MD方向)に沿って該新聞用紙の紙面に紙層の剥離を生じさせ、剥離長を測定することを特徴とする。
また、本発明の新聞巻取紙の評価方法によれば、新聞巻取紙の剥離や断紙の発生の可能性を簡単かつ直接的に評価できる。
本発明の新聞巻取紙は、剥離や断紙の防止効果を向上させたものであるが、本発明の新聞巻取紙を説明する前に、新聞用紙の性質について簡単に説明する。
そして、一旦スプールロールに巻き取られた親巻きはワインダーパートで目的の幅に切断され、客先に応じた巻径に巻取り所定の新聞巻取紙に仕上げられる。
これはJ/W比を加減した場合、ランダム点(R)を境にしてMD方向への繊維の配向が進み、繊維配向比が大きくなるのが主因と考えられる。
即ち、J/W比がランダム点(R)を境にして大きくなっても小さくなってもMD方向の引張り強度は増加する。
また、この時、繊維(パルプ)の向きを紙の厚さ方向に見た場合、J/Y比がランダム点(R)より大きくなると、ワイヤー速度(W)に対するパルプスラリー速度(J)が大きくなるのでニップ部Nに押し付けられた紙料はワイヤーに面する部分がワイヤーとの摩擦で引き留められ、紙の内部の紙料が下流に向かって押される押し地合となるため、繊維(パルプ)は図5(A)に示すように表面から下流側中央に向かって埋没するように配列する。(以下、MD方向の繊維と区別するため、紙の厚さ方向に見た繊維の並びを「配列」と言う)
逆に、J/Y比がランダム点(R)より小さくなると、ワイヤー速度(W)に対するパルプスラリー速度(J)が小さくなるので、ニップ部Nにおいて紙料はワイヤーに面する部分がワイヤーとの摩擦で引っ張られ、紙の内部の紙料が上流に向かって引き止められる引き地合となるため、繊維パルプは図5(B)に示すように表面から上流側中央に向かって埋没するように配列することになる。
前述した如く、例えば図5(A)のように繊維が配列している場合、新聞巻取紙を形成する新聞用紙1の紙面において、図中矢印Aの方向に力が加わると、繊維が起き上がるように力が加わるため、次々と連鎖的に繊維が起き上がり紙面から離脱されるので剥離が生じやすく、剥離が生じた場合の剥離長も長くなる。
一方、新聞用紙1の紙面において、図中矢印Bの方向に力が加わると、繊維はその軸方向に引っ張られるだけであり、連鎖的に繊維が紙面から離脱する現象が生じないので、剥離は生じ難く、剥離が発生した場合の剥離長も短くなる。
この剥離長は短くなれば剥離の発生が断紙につながる可能性が低くなり、この傾向は、繊維配列の程度が大きくなるほど強く現れる。
従って、本発明は、隣接する新聞巻取紙が接触面において摩擦によって繊維の端部が引き起こされて剥離し難いように、紙の厚さ方向に見た繊維の配列が新聞巻取紙の自由端(新聞巻取紙の巻取りの最終端)側表面から巻取り方向に向かって埋没するように繊維を配列させたことを特徴としている。
そして、繊維を新聞巻取紙の自由端側表面から巻取り方向に向かって埋没するように配列させるためにはJ/W比、パルプスラリーの噴出し角度等を調整する。
従って、抄紙機で抄造した紙は一旦スプールロールで親巻きにされ、ワインダーで巻き戻す形となるので、通常、紙の裏面が巻取紙の外面となり、抄紙工程における下流に位置する部分が巻取紙の自由端となるので、紙料がワイヤーに面する部分でワイヤーとの摩擦で引っ張られ、紙の内部の紙料が上流に向かって引き止められる引き地合となるように抄造する。
勿論、巻き替え等により新聞巻取紙の自由端と固定端を逆転させる場合は予め繊維が押し地合となるようにJ/W比、パルプスラリーの噴出し角度等を調整する。
ここで、抄紙工程においてワイヤーパートからプレスパートに新聞用紙が移動する際にワイヤーに接する面を新聞用紙の裏面といい、その反対面、つまり、プレスパートに移動する際にフェルトに接する面を表面という。図4の場合、No.2ワイヤーに接する面を裏面、No.1ワイヤーに接する面を表面という。
図2に示すように、新聞巻取紙を形成する新聞用紙1の紙面に例えば粘着テープ等のような片面又は両面に粘着剤の層を有する粘着性物質10を接着させた状態から、この粘着性物質10を上方に引き剥がし、MD方向に沿って新聞用紙1の紙面に紙層の剥離を生じさせた場合、新聞巻取紙の自由端側から固定端側へ向かう方向に剥離を生じさせたときの剥離長をl、新聞巻取紙の固定端側から自由端側へ向かう方向に剥離を生じさせたときの剥離長をmとしたとき、l>mとなるような繊維配列となるようにしており、かつ、その繊維配列は、好ましくはm/lが1/3以下であることが望ましい。
また、図2に示すように例えば粘着テープ等のように片面又は両面に粘着剤の層を有する、幅18mmの粘着性物質10を接着させた状態から、この粘着性物質10を上方に引き剥がし、MD方向に沿って新聞用紙1の紙面に紙層の剥離を生じさせた場合、新聞巻取紙の自由端側から固定端側へ向かう方向に剥離を生じさせたときの剥離長をl、新聞巻取紙の固定端側から自由端側へ向かう方向に剥離を生じさせたときの剥離長をmとしたとき、l>mとなるような繊維配列を有する新聞巻取紙であり、且つmが60mm以下となるような繊維配列としている。
まず、図2に示すように、新聞巻取紙を形成する新聞用紙1において新聞巻取紙の外面に位置する紙面に粘着テープ等の粘着性物質10をMD方向に沿って貼り付ける。
ついで、粘着性物質10における新聞用紙1の固定端側の一端10Bを新聞用紙1の紙面から上方に引き剥がす。このとき、新聞用紙1が粘着性物質10とともに持ち上げられないように固定しておく。
すると、新聞用紙1の紙面には、粘着性物質10の一端10Bから他端10Aに向かって紙層の剥離が発生する(図2(A))。
そして、剥離が生じた部分において、図2(A)におけるP2点からP1点までの長さを測定すれば、新聞用紙1の剥離長mを測定することができる。
なお、剥離長mを同じ紙面で複数回測定し、その平均値を使用して評価すれば、より評価精度を高めることができる。
最後に剥離長mと剥離長lの比率を算出する。
とくに、剥離長mおよび剥離長lをそれぞれ複数回測定し、各剥離長m、lの平均値を使用して剥離長mと剥離長lの比率を算出すれば、より評価精度を高めることができる。
実際の剥離発生の評価は、新聞巻取紙を納入し剥離発生率が2.5%未満の場合を合格とし剥離発生率が2.5%以上の場合を不合格とした。
なお、本実施例において、本発明による剥離評価は、新聞巻取紙を形成する新聞用紙の紙面を評価している。
新聞巻取紙よりサンプルを採取する。
18mm×100mmのメンディングテープ(住友スリーエム株式会社:製品名スコッチメンディングテープ:製品番号Cat No.810-1-18)を、サンプルの縦方向(MD方向)に沿って貼る。
サンプルとテープとの間に存在する空気を除去するために、貼り付けられたテープを、テープの色が白色から透明になるまで均一な力で押さえる。
サンプルの剥離開始点(テープの先端位置)に印を付ける。
印を付けていない方からテープを5cm程度勢いよく剥がし、サンプルに剥離を発生させる。
テープを垂直に保ったまま、さらに剥がす。この時、テープで引っ張られたサンプルが浮き上がらないように、剥離させる部分に沿って重りをのせ、サンプルを固定させる。
剥がれきった場所(図2ではP2点)から印(図2ではP1点)までの長さを測定し、記録する。
以上の作業を3回行い、測定値の平均を剥離長とする。
一方、比較例1〜12ではすべて剥離長mは60mmよりも大きく、m/lはすべて1/3(0.33)より大きい。そして、剥離発生率はすべて2.5以上となっている。
したがって、m/lが1/3前後で、剥離の生じやすさが大きく変化していることから、剥離長mと剥離長lの比を基準とした新聞巻取紙の剥離評価が可能であり、かつ、その基準値となるm/lが(省略)1/3であることが確認できる。また、剥離長mが60mm前後で、剥離の生じやすさが大きく変化していることから、剥離長mを基準とした剥離評価が可能であり、かつ、その基準が60mmであると判断できる。
10 粘着性物質
Claims (6)
- 傾斜紙庫に格納した互いに隣接する新聞巻取紙が接触面において摩擦によって剥離し難いように、紙の厚さ方向に見た繊維の配列が新聞巻取紙の自由端側表面から巻取り方向に向かって埋没するように配列させた
ことを特徴とする新聞巻取紙。 - 新聞巻取紙を形成する新聞用紙の紙面に粘着性物質を接着させ、該粘着性物質を、新聞巻取紙の自由端側から固定端側へ向かう方向に引き剥がしたときの剥離長lと、固定端側から自由端側へ向かう方向に引き剥がしたときの剥離長mを、l>mとなるようにしたことを特徴とする新聞巻取紙。ただし、l、mはともに新聞巻取紙の外面に位置する紙面において測定した値である。
- m/lが1/3以下となるようにした
ことを特徴とする請求項2記載の新聞巻取紙。 - 剥離長mが60mm以下となるようにした
ことを特徴とする請求項2記載の新聞巻取紙。 - 前記粘着性物質を接着させる紙面が、抄紙工程においてワイヤーパートからプレスパートに新聞用紙が移動する際にワイヤーに接する面である
ことを特徴とする請求項2〜4いずれか記載の新聞巻取紙。 - 新聞巻取紙を形成する新聞用紙の紙面に粘着性物質を接着させた状態から該粘着性物質を上方に引き剥がし、紙の縦方向(MD方向)に沿って該新聞用紙の紙面に紙層の剥離を生じさせ、剥離長を測定する
ことを特徴とする新聞巻取紙の評価方法。
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