JP2008069183A - 唾液腺腺管上皮由来幹細胞及びその用途 - Google Patents

唾液腺腺管上皮由来幹細胞及びその用途 Download PDF

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Abstract

【課題】 肝細胞へ分化可能な幹細胞を提供すること。
【解決手段】 唾液腺腺管上皮に由来し、生体外での培養により、アルファフェトプロテイン陽性細胞、アルブミン陽性細胞、アミラーゼ陽性細胞、インスリン陽性細胞及びグルカゴン陽性細胞へ分化し得る幹細胞を提供した。
【効果】 本発明により、肝細胞へ分化可能な幹細胞が初めて提供された。本発明の肝細胞は、肝臓のみならず、膵臓や唾液腺のような複数の臓器細胞に分化可能である。また、本発明の幹細胞は、成体からも調製することができる。しかも、唾液腺から細胞を調製することは、腹部や胸部にある内臓から細胞を調製する場合に比べて、危険性及び患者の負担がはるかに小さい。このため、本発明の幹細胞は、移植を受ける患者自身から容易に調製することができ、移植の際に問題となる拒絶反応を容易かつ確実に回避することができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、唾液腺腺管上皮由来幹細胞及びその臓器再生のための移植用細胞としての用途に関する。
再生医療に有用なポテンシャルを有する幹細胞についての研究が盛んになされている。今日までに報告された代表的な幹細胞として、間葉系細胞、神経幹細胞、造血幹細胞、そして膵幹細胞が挙げられる。
間葉系幹細胞はヒト成体骨髄液より分離された(非特許文献1)。この細胞は脂肪細胞、軟骨細胞、骨細胞へのin vitroに於ける分化誘導が可能である。神経幹細胞(非特許文献2)については1992年に成体の中枢神経系からの最初の分離の報告がなされており、2001年には成体の皮膚真皮から神経細胞に分化可能な幹細胞の分離(非特許文献3)が報告されている。
造血幹細胞は既に多くの研究がなされているが、その分化機能について報告されたのは比較的新しい。1999年に骨髄細胞が肝細胞に分化することがPetersenらによって明らかにされ(非特許文献4)、翌年にはマウス造血幹細胞をc-kittil、Thy-llow、Linneg、Sca-1+にてsortingした細胞分画が、幹細胞に分化転換することが示されている(非特許文献5)。この他にも造血幹細胞には分化転換能があると考えられており、心筋(非特許文献6)や、さらには肺胞上皮、腸管上皮、皮膚(非特許文献6)への分化も報告されている。
以上のように、間葉系もしくは外胚葉系の細胞についての幹細胞研究は進んでいるが、内胚葉系幹細胞の報告は未だ少ない。肝幹細胞についてはその存在は確実視されているが、未だ確定的な幹細胞の報告はない。膵臓についてはCorneliusらのグループが成体マウス膵臓より膵島産生幹細胞(islet producing stem cells (IPSCs)の分離を行っており、さらにIPSCsよりin vitroにて作成した膵島の移植実験を報告している(非特許文献7)。この細胞についても、α、β、δ細胞への分化は確認されているが、その他の細胞への分化能は確認されていない。膵島よりネスチン陽性にて分離した幹細胞が膵臓の内、外分泌及び肝臓の表現型へと分化したとの報告はあるが(非特許文献8)、分化マーカーの免疫組織学的検索は示されていない。
ES細胞(胚性幹細胞)から、肝臓もしくは膵臓細胞の誘導も試みられており、実際に膵臓のα、β細胞については分化誘導が可能である(非特許文献9)。しかし肝細胞への誘導については未だ報告はない。
Pittenger, M. F. et al., Science 284, 143(1999) Gage, P.H., science 287, 1433-1438(2000) Toma, J.G.et al., Nature Cell Biology, 3, 778-784(2001) Petersen B.E. et al., Science 284, 1168(1999) Lagasse, E. et al., Nature Medicine 6, 1229-1234(2000) Orlic, D. et al., Nature 410, 701-705(2001) Ramiya, V.K. et al., Nature Medicine 6, 278-282(2000) Zulewski, H. et al., Diabetes 50, 521-533(2001) Lumeisky, N, et al., Science 292, 1389-1394(2001)
以上の通り、肝細胞へ分化可能な幹細胞は未だ得られていない。従って、肝臓を含む、複数の臓器細胞に分化可能な幹細胞も得られていない。また、幹細胞を、再生医療用途に用いる場合、移植による拒絶反応を防止する観点から、患者自身の細胞を移植することが最も好ましい。従って、成体からも調製することが可能な幹細胞が得られれば再生医療にとって特に有利である。
本発明の目的は、肝細胞へ分化可能な幹細胞を提供することである。また、本発明の目的は、肝臓を含む、複数の臓器細胞に分化可能な幹細胞を提供することである。さらに、本発明の目的は、成体からも調製することができる、肝細胞へ分化可能な幹細胞を提供することである。
本願発明者らは、鋭意研究の結果、唾液腺腺管上皮から、肝細胞、膵臓細胞及び唾液腺細胞へ分化可能な幹細胞を分離することに成功し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、唾液腺腺管上皮に由来し、生体外での培養により、アルファフェトプロテイン陽性細胞、アルブミン陽性細胞、アミラーゼ陽性細胞、インスリン陽性細胞及びグルカゴン陽性細胞へ分化し得る幹細胞を提供する。また、本発明は、上記本発明の幹細胞を含む、臓器再生のための移植用細胞を提供する。
本発明により、肝細胞へ分化可能な幹細胞が初めて提供された。本発明の肝細胞は、肝臓のみならず、膵臓や唾液腺のような複数の臓器細胞に分化可能である。また、本発明の幹細胞は、成体からも調製することができる。しかも、唾液腺から細胞を調製することは、腹部や胸部にある内臓から細胞を調製する場合に比べて、危険性及び患者の負担がはるかに小さい。このため、本発明の幹細胞は、移植を受ける患者自身から容易に調製することができ、移植の際に問題となる拒絶反応を容易かつ確実に回避することができる。従って、本発明の幹細胞は、肝臓再生等の、再生医療に大いに貢献するものと考えられる。
本発明の幹細胞は、下記実施例に詳述するように、顎下腺の主排泄導管を結紮し、結紮により萎縮した顎下腺において盛んに増殖する腺管上皮から分離された、唾液腺腺管上皮由来のものである。なお、下記実施例に記載する幹細胞は、結紮した唾液腺から分離されたが、結紮していない通常の唾液腺の腺管上皮も少なくともある程度は増殖しているので、結紮していない通常の唾液腺の腺管上皮から分離することもできる。
本発明の細胞は、(1)増殖能、(2)自己保持能、(3)多分化能(複数の分化した娘細胞を生み出せる)を有しており、最も未分化な幹細胞(actual stem cells)である(Potten, C.S. et al., Development 110, 1001, 1990)。上記(1)、(2)、(3)の各能力についてさらに詳細に述べると、(1)コラーゲン被覆プレート上の培養において、対数増殖期に於ける本細胞の倍加時間(doubling time)は、約18時間である。(2)培養系において、本細胞は、第5日目以降よりクラスターを形成し、各種分化マーカーを出現させる。それら終分化に達した細胞群が、蓄積した細胞外基質と共にプレート面から剥離した後も、ごく少数の細胞は依然プレート面に残っており、再び増殖を開始する。この現象から、生体外(in vitro)に於ける分化誘導時においても、幹細胞の維持が行われていると考えられる。(3)本発明の細胞は既に分離から9ヶ月が経過しているが、その間の長期継代培養期間中において、多分化能を喪失していない。これらのことより、本発明の細胞が、幹細胞であることは明らかである。
唾液腺腺管上皮から分離された細胞を、単一細胞から生体外でプレート培養すると、当初は分化マーカーを発現していないが、コンフルーエンシーを経過して細胞が積層し始める頃から、分化マーカーを発現する種々の細胞が出現し始める。分化マーカーを発現する細胞は、主として、細胞が積層している部分(コード及びクラスター部分)に存在する。発現される分化マーカーは、アルファフェトプロテイン(AFP)、アルブミン、アミラーゼ、インスリン及びグルカゴンである(なお、言うまでもなく、これらの全ての分化マーカーを単一の細胞が発現しているのではなく、これらの各種分化マーカーをそれぞれ発現する、異なる複数の細胞を含む細胞群が生じる)。上記マーカーのうち、AFP及びアルブミンは肝臓への分化マーカーであり、インスリン及びグルカゴンは、膵臓(膵臓内分泌(ランゲルハンス島))への分化マーカーであり、アミラーゼは唾液腺及び膵臓(外分泌)への分化マーカーである。従って、本発明の幹細胞は、少なくとも、肝臓、膵臓及び唾液腺に分化できる多能性(multipotential)幹細胞である。なお、上記した種々の分化マーカーを発現する種々の細胞は、本発明の幹細胞を同一の、通常の培養条件で培養することにより出現するもので、これらの細胞を出現させるためにEGF等の増殖因子を培地に添加する必要はない。
また、下記実施例において、本発明の幹細胞は、成体から得られた。再生医療のために細胞を移植する場合、移植による拒絶反応を防止する観点から、患者自身の細胞を移植することが最も好ましい。本発明の幹細胞は、成体から得ることができるので、移植を受ける患者自身から調製することができ、移植するのに非常に有利である。なお、本発明の幹細胞は、成体のみならず、未成熟な子から得ることもできる。また、下記実施例において、本発明の幹細胞は、ラット及びマウスから得られたが、唾液腺を有する、ヒトを含む他の哺乳動物から得ることもできる。
本発明の細胞は、唾液腺腺管上皮から分離された細胞のみならず、その初代培養細胞や、これを継代培養した細胞であって、上記各種分化マーカーを発現する各種細胞を生じることができる幹細胞が本発明の範囲内に入ることは言うまでもない。
本発明の幹細胞は、少なくとも肝臓、膵臓及び唾液腺に分化することができるので、本発明の幹細胞を移植してこれらの臓器の再生を行うことが可能である。幹細胞の移植は、幹細胞の浮遊液を宿主体に注入することにより容易に行うことができる。注入は、脾臓内や、再生しようとする臓器若しくはその近傍、又は静脈内等に対して行うことができる。また、注入する幹細胞の数は、特に限定されず、症状や宿主の体重、投与方法等に応じて適宜選択できるが、通常、102〜1010個程度である。
下記実施例に具体的に記載されるように、肝臓の2/3を切除した動物の脾臓に本発明の幹細胞の浮遊液を投与することにより、肝臓を再生することができた。そして、再生した肝臓を構成する細胞には、投与した幹細胞由来の細胞が含まれていることが遺伝子検査により確認された。従って、本発明の幹細胞は、少なくとも、肝臓の再生のための移植用細胞として用いることができる。また、本発明の幹細胞を培養することにより発現される上記分化マーカーから明らかなように、本発明の幹細胞から膵臓細胞を生じることも可能であり、従って、本発明の幹細胞は、膵臓の再生やI型糖尿病の治療に用いることもできる。
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
実施例1 幹細胞の調製
(1) 唾液腺腺管上皮細胞分画のin vivoに於ける増殖法
4〜5週齢の雄ラットの唾液腺の主排泄導管を下記に記載するように結紮した。主唾液腺には、耳下腺、顎下腺、舌下腺の3つがあるが、最も明瞭で腺容積の大きな顎下腺を選択した。
ラットはペントバルビタール腹腔内投与にて麻酔を行った。ラットを解剖台上にて固定の上、頚部を伸展させ頚部皮膚を正中切開した。皮膚を反転すると、正中腺にて左右の接着している顎下腺が確認された。腺組織を被包している結合織を剥離し、左右の顎下腺をそれぞれ反転した。顎下腺の反転により、図1のような頚部解剖図が得られた。顎下腺の主排泄導管は、外上顎動脈と、外頚静脈の分枝である前顔面静脈に並走した後、二腹筋前枝下に潜っているので、これら大血管には触れずに主排泄導管のみを二重結紮した。結紮終了後は左右の顎下腺を元の位置に戻し、顎下腺を被包している結合織を縫合の後、皮膚縫合を行った。
両側顎下腺導管の二重結紮施術後6日目にラットを脱血屠殺し、両側の顎下腺を摘出した。主排泄導管を結紮された顎下腺は、同時期の正常対照ラットの顎下腺に比べ明らかに萎縮していた。これらの結紮後萎縮顎下腺を組織学的に検討すると、腺房細胞のほとんどが脱落しており、また管腔構造を形成する腺管上皮細胞の顕著な増殖が観察された。
(2) 導管結紮処理唾液腺組織の消化、細胞分離法
(1)にて得られた導管結紮顎下腺を使用した。ラット屠殺後に摘出し回収した10〜12個の顎下腺(5〜6ラット)は、径2mm大になるまで細切した。細切した組織はEGTA緩衝液(1L中、NaCl 8g, KCl 0.4 g, NaH2PO4 69 mg, Na2HPO4 75 mg, HEPES 2.38 g, EGTA 0.19 g, NaHCO3 0.35 g,グルコース 0.9 g, フェノールレッド 6 mg)30mlと共に50ml遠心管に移し、37℃で20分間、10回/分の速度で回転振盪した。インキュベーション後、組織細片液は遠心(100xg、5分、室温)し、上清は捨てた。得られたペレットは60mlの消化液(digestion medium)(60 ml中、DMEM/F12:1;1 60 ml, コラゲナーゼ 100 mg, ヒアルロニダーゼ 80 mg)に分散した後、50ml遠心管に移し、37℃で40分間、10回/分の速度で回転振盪した。インキュベーション後、組織細片液は遠心(100xg、5分、室温)し、上清は捨てた。得られたペレットは60mlの分散液(dispersion medium)(60 ml中、DMEM/F12:1;1 60 ml,ディスパーゼ 80 mg(1000U/ml))に分散した後、50ml遠心管に移し37℃で60分間、10回/分の速度で回転振盪した。回転振盪の途中で数回、10mlピペットにてピペッティングを行い、組織細片液を機械的に分散させた。インキュベーション後、組織細片液は細胞濾過器を通して細胞浮遊液を得た。細胞浮遊液は遠心(100xg、5分、4℃)し、これより細胞ペレットを得た。細胞ペレットは10mlのDMEM/F-12に懸濁し、培地にて3回洗浄した。
細胞数のカウントと、細胞生存率のチェックを行った。10個の腺組織から得られた細胞の総数は2.0〜2.5 x 107個程度であった。また細胞の生存率は、95%以上であった。
(3) 唾液腺腺管上皮細胞の初代培養及びセルラインの作成法
(2)で得られた細胞懸濁液を2.0〜5.0 x 105/100 mmディッシュの濃度にて播いて初代培養を開始した。培養用のディッシュには、I型コラーゲン被覆ディッシュを使用した。初代培養用培地としては、ウィリアムのE培地に、10 ng/ml組換えヒトEGF(上皮成長因子)、10% FBS(ウシ胎児血清)、10-8 mol/Lインスリン、10-6 mol/Lデキサメタゾン、100 U/mLペニシリンG、100μU/mlストレプトマイシンを添加した培地を使用した。
(2)より得られた細胞懸濁液は、完全な単一細胞懸濁液にまで全細胞が分散されておらず、初代培養の開始時には、数個から成る細胞塊がそのままプレート面に接着した部位が何ヶ所も観察された。またプレート面に接着しない細胞も存在するが、それらは唾液腺組織内に浸潤したリンパ球等の炎症細胞であると考えられた。非接着性細胞は、培地交換の際に全て吸引除去した。
プレート面に接着した上皮細胞塊のうちのいくつかは旺盛な増殖能を示し、それらは敷石状の細胞から成るコロニーを形成した。各コロニーを形成する細胞の数が数十個以上になるまでコロニーが成長した段階で、クローニングリングを用いてコロニーのピックアップ(P2)を行った。コロニーを形成する細胞は、PBSにて2回洗浄し、0.03%トリプシン-EDTA処理にてプレート面より剥離させた。ピックアップした細胞は、I型コラーゲン被覆24ウェルプレートに移して培養を継続した。
24ウェル一面に増殖した細胞は、35mmディッシュ(P3)、60mmディッシュ(P4)と順次細胞数を増やし、最終的に100 mmディッシュ(P5)にまでサイズを拡大した。100 mmディッシュに拡大した時点で初代培養用培地よりEGFを抜き、以後はそれをこの細胞の維持培地とした。EGF除去後も培養には全く支障は生じなかった。
さらに、100mmディッシュに増殖した上皮細胞より、単一細胞培養を行った。腺管上皮細胞は、0.03%トリプシン-EDTAにて剥離後、ピペッティングに機械的に分散させ、細胞濾過器(孔径40μm)を通した。細胞は初代培養の時とは異なり、単一細胞にまで分散が可能であった。細胞は1.0 x 102/100 mmディッシュ程度にまで薄めて播き、各々が単一細胞にてプレートに接着したのを確認した。一部の細胞は脱落したが、コロニーの形成部位も数カ所に見られた。これらコロニー形成部位より細胞をピックアップし、35mmディッシュにて培養を継続した。以後は培養のサイズを拡大してセルラインとした。上記方法により2つのセルラインを得た。さらに、得られた2つのセルライン(Aライン及びBライン)のうち、Nラインから継代培養を行い、SN-1(subculture of N line-1)からSN-4の4つのサブクローンを得た。
実施例2 細胞の性質
実施例1で得られたセルラインを2 x 105細胞/100 mmディッシュの濃度でプレートすると、3日後(day 3)には単層に増殖してコンフルーエント(1.0 x 106細胞/ディッシュ)になった。コンフルーエンシー後(day 5-)より徐々に単層の各所にて細胞が積層し始め、二層の部位(コード、cord)が形成され始めた。さらに、cordの一部には細胞塊(クラスター、cluster)が形成された。この後、単層細胞は次第に脱落した。コード及びクラスター形成部位は暫く残るが、こちらも培養がday 15以上に及ぶと徐々に脱落し、day30以降には完全にプレートから剥離した。全てのコード及びクラスター剥離後は、少数の細胞のみがディッシュ上に残された。これらの細胞はさらに培養を継続すると、再び増殖してコロニーを形成し、単層を形成した。その後もコードとクラスターの形成が初回と同様に観察され、以後も同様のサイクルを繰り返した。
免疫細胞染色法又はフローサイトメトリーにより、細胞が発現するマーカーについて調べた。染色に用いた蛍光標識抗体は、いずれも市販のものであり、方法のプロトコールも市販の蛍光標識抗体又は市販のフローサイトメトリー装置に添付の指示書に従って行った。すなわち、免疫細胞染色は、DAKO社の免疫組織/細胞染色ガイドに従って行った。また、フローサイトメトリーは、BD Phermingen社のFCM staining protocolに従って行った。使用した抗体の一覧を下記に示す。なお、「抗ラット」の記載のない抗体は、全て製造者の情報又はその抗体を用いた論文の情報より、ラットと反応することを確認している。
抗体一覧
ウサギ抗ヒトAFPポリクローナル抗体(A008. code number) DAKO社製
マウス抗ラットインスリン/プロインスリンモノクローナル抗体(5E4/3) Biogenesis社製
マウス抗ラットインテグリンα6β1モノクローナル抗体(MAB1410. Catalog number) Chemicon社製
ヤギ抗ヒトアミラーゼポリクローナル抗体(C-20) Santa Cruz社製
マウス抗ラットCD34モノクローナル抗体(ICO115) Santa Cruz社製
ウサギ抗c-kitポリクローナル抗体(H-300) Santa Cruz社製
ウサギ抗ラットアルブミンポリクローナル抗体 ICT社製
ウサギ抗ヒトグルカゴンポリクローナル抗体(A0565) DAKO社製
抗CK19モノクローナル抗体(catalog number NCL-CK19/ clone b170) Novocastra Laboratories Ltd社製
抗ラットネスチンモノクローナル抗体(catalog number 556309/ clone Rat401)
BD PharMingen社製
抗ラットCD45モノクローナル抗体(catalog number 22134D/ clone OX-1) BD PharMingen社製
抗ラットThy-1モノクローナル抗体(catalog number 22212D/ clone OX-7) BD PharMingen社製
抗ラットラミニンポリクローナル抗体(/catalog number Z0097/) DAKO社製
20代継代培養以降の細胞について、免疫細胞染色を行った。その結果、プレート後day 5-にてアルブミン陽性細胞が観察されたが、肝上皮細胞(oval cell)の代表的マーカーであるCK19陽性細胞は見られなかった。唾液腺(及び膵臓)外分泌腺細胞マーカーであるアミラーゼ陽性細胞も、アルブミンと同じくday 5以降に確認された。一部には、複数個のアミラーゼ陽性細胞から成る腺房様構造も観察された。同時に検索を行った膵内分泌細胞マーカーであるインスリン及びグルカゴンについても、陽性細胞が確認された。インスリンとグルカゴンの二重染色では、各々の陽性細胞が互いに接着し、クラスターの形成が見られた。さらに、肝細胞のpotential幹細胞のマーカーであるAFP陽性細胞も観察された。また、膵臓の幹細胞として考えられているネスチン(nestin)陽性細胞も観察された。これら分化マーカー陽性細胞の分布は、全てコード及びクラスター部位に限定されていた。これらの陽性細胞は、上記した4つのサブクローンのプレート5日以降(day 5-)の全てにおいて観察された。これらより、上記方法により唾液腺腺管上皮から分離された個々の細胞は全て多能性(multipotent)であると考えられる。
また、肝幹細胞の候補に挙げられている肝上皮細胞及び肝前駆細胞(再生肝中)にて報告されているマーカーについて検索を行った。免疫細胞染色及びフローサイトメトリー分析により、プレート後12〜24時間の細胞を調べたところ、肝前駆細胞にて報告されている(VLA-6)(α6β1インテグリン)の発現が確認された。同時にVLA-6のリガンドであるラミニンの発現も認められた。肝上皮細胞の代表的マーカーであるAFP及びCK19の発現はなかった。また、造血幹細胞及び肝上皮細胞にて報告のある表面抗原についても検索を行ったが、Thy-1+細胞の割合が2.5%、c-kit+細胞の割合が5%程度であった。CD34に関しては、c-kit+細胞集団が同時にCD34弱陽性を示した。CD45陽性細胞は全く存在していなかった。
さらに、実施例1で得られた細胞が、組織幹細胞の形質として知られているサイドポピュレーション(side-population(SP))形質を示すか否かを調べるために、常法によりHoechst 33342(商品名)染色を行ったところ、SP分画の存在が確認された。50μMのベラパミル(verapamil)存在下で、SP分画の完全な消失は見られなかったが、Hoechst 33342陽性の細胞集団において、Hoechst 33342強度の増強が見られた。以上より、本発明の細胞は、Hoechst 33342染色に関してベラパミル感受性であり、SP細胞の特徴であるHoechst dye efflux componentが存在することがわかった。
実施例3 生体への細胞移植(その1)
実施例1(2)で調製した、導管結紮処理唾液腺組織を消化した細胞懸濁液を雌ラットに移植した。雌ラットは、2AAF/PHプロトコールに従い、細胞移植6日前より2 mg/日の2-アセチルアミノフルオレンを投与開始し、2/3部分肝切除の後に細胞移植を行った。細胞移植は、細胞懸濁液をレシピエント(被移植動物)の脾臓に注入することにより行った。注入した総細胞数は、約8.0 x 106個であった。レシピエント肝におけるドナー細胞の検出は、常法により、Y染色体上のSRY遺伝子を、DNAプローブを用いたin situハイブリダイゼーションで検出することにより行った。レシピエントは雌ラットであり、ドナーは雄ラットであるので、Y染色体上に存在する遺伝子は、レシピエントには存在せず、ドナーにのみ存在する。従って、SRY遺伝子が細胞中に検出されれば、その細胞はドナー由来であることがわかる。このcross-sex移植は、雄SDラットから雌SDラットへと、雄LEAラットから雌LECラットの2つのモデルにつて行った。
その結果、両方の移植モデルにて移植後2週目には、門脈三管領域周辺に管腔構造を形成し、卵形の核を持つ細胞集団の増殖(atypical ductular proliferation)が各所に見られた。これらの細胞はCK19陽性であり、肝上皮細胞と考えられる。また、同部位のSRY遺伝子のin situ ハイブリダイゼーションにて一部の細胞にシグナルが見られ、それらはドナー由来と考えられた。他に胆管上皮細胞に、またごく少数の肝細胞にもSRYシグナル陽性を認めた。移植後4週の肝組織では、ほとんど肝上皮細胞は消失していた。SRY陽性細胞は、胆管上皮細胞及び肝細胞の一部に変わらず認められた。このように、レシピエントの再生肝臓内にドナーの唾液腺腺管上皮由来の細胞が確認された。移植後1〜2週目には上皮細胞内に、また、移植後2週以降には形態学的に正常な胆管上皮細胞及び肝細胞の存在を確認した。移植後5週後までの組織学的検討では、脾臓、肝臓内に核異形等を呈する腫瘍細胞は見られなかった。また、in situハイブリダイゼーションと免疫組織化学の二重染色法により、抗ラットアルブミン陽性細胞の一部にSRY遺伝子陽性細胞を確認した。なお、免疫組織染色は、上記した市販のウサギ抗ラットアルブミンポリクローナル抗体を用い、DAKO社の免疫組織/細胞染色ガイドに従って行った。
以上のように、実施例1(2)で調製した、導管結紮処理唾液腺組織中に、生体内において肝細胞に分化する幹細胞が存在することが明らかになった。
実施例4 生体への細胞移植(その2)
実施例1(3)で調製した、長期(3ヶ月)に渡って継代培養した細胞の懸濁液を調製した。細胞懸濁液の調製は、1型コラーゲンプレート上にて3〜4日培養して増殖せしめた単層の細胞を、トリプシン-EDTA(0.05%トリプシン、0.53 mM EDTA)にて処理し、プレート面より剥離、分散することにより行った。これを実施例3と同様にして雌ラットに投与した。投与した細胞の総数は、約1.0 x 106個であった。
その結果、実施例3の場合と同じく、肝上皮細胞、胆管細胞及び肝細胞への分化が確認された。また、移植後5週目までの検討では、レシピエント肝臓内に結節形成や、核異形を示す細胞などの出現はマクロ及びミクロの病理学的検索にて見られなかった。また、SRY遺伝子in situハイブリダイゼーションと免疫組織化学の二重染色法により、抗ラットアルブミン陽性細胞の一部にSRY陽性を確認した。これらの所見より、本発明の肝細胞は長期培養後もアルブミン産生能を有する機能的な肝細胞への分化能を維持していると考えられた。
実施例5 生体への細胞移植(その3)
ラットに代えて、マウスを用い、実施例1(1)(2)及び実施例3と同様な操作を行った。顎下腺主排泄導管の結紮に供したマウスは、雄のC57BL/6NCrj(Charles River Japan Inc.より市販)であった。導管結紮6日後にはductal proliferationと腺細胞の消失が確認された。また、移植実験のレシピエントとしては雌のC57BL/6マウスを用いた。なお、実施例3と同じく、ドナー細胞の検出はY染色体上のsry遺伝子を検出することにより行った。すなわち、レシピエント細胞にはsry遺伝子は存在しないが、ドナー細胞にはsry遺伝子が存在するので、ある細胞がsry遺伝子陽性であれば、その細胞はドナー由来であることがわかる。
移植後2週目の肝臓にてsry遺伝子陽性のドナー細胞を確認した。また、これらの細胞はアルブミン陽性を示した。これらの結果は、実施例3及び4に記載したラットに於ける結果と同様であり、マウスにおいても多分化能を有する組織肝細胞が存在していることがわかった。
顎下腺の主排泄導管の結紮方法を説明するための図である。

Claims (6)

  1. 唾液腺腺管上皮に由来し、生体外での培養により、アルファフェトプロテイン陽性細胞、アルブミン陽性細胞、アミラーゼ陽性細胞、インスリン陽性細胞及びグルカゴン陽性細胞へ分化し得る幹細胞。
  2. 成体由来である請求項1記載の幹細胞。
  3. 請求項1又は2記載の幹細胞を含む、臓器再生のための移植用細胞。
  4. 前記臓器が肝臓又は膵臓である請求項3記載の細胞。
  5. 前記臓器が肝臓である請求項4記載の細胞。
  6. 移植を受ける個体由来である請求項3ないし5のいずれか1項に記載の細胞。
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