JP2008069060A - 接合体および接合体の製造方法並びにスラスタ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属部材3が、熱膨張率が4.5〜19[×10−6/K] の範囲のものであり、セラミックス基複合部材2が、セラミックス繊維と前記セラミックス繊維に付着されたセラミックスマトリックスとからなる熱膨張率が3〜6[×10−6/K]の範囲のものであって、ロウ材4の溶融温度における嵌合部2aの外面と接合部3aの内面との距離Dが15〜500μmの範囲であるものであり、ロウ材4がTi、Zr、Hfの少なくともいずれか1種を含むものである、金属部材3とセラミックス基複合部材2とがロウ材により接合された接合体1とする。
【選択図】図1
Description
この問題を解決するために、CMCからなるスラストチャンバを、金属部材からなるスラスタ本体の接続部にロウ付け接合することが考えられる。ロウ材としては、例えば、Ti基ろうやAg基ろう、Al基ろうなどが挙げられる(例えば、特許文献2参照)。
また、本発明は、軽量で、容易に製造でき、十分な気密性および接合強度を有するスラスタを提供することを目的とする。
さらに、本発明は、容易に接合でき、十分な気密性および接合強度が得られるセラミックス基複合部材と金属部材との接合方法を提供することを目的とする。
また、上記の接合体においては、前記金属部材と前記セラミックス基複合部材とが前記ロウ材を介して接合されているオーヴァーラップ領域の前記嵌合部のはめ込まれる方向の長さが、4〜12mmの範囲のものであるものとすることができる。
また、上記の接合体においては、前記セラミックス基複合部材が、円筒状部品であるものとすることができる。
また、上記の接合体の製造方法においては、前記セラミックス基複合部材が、円筒状部品である方法とすることができる。
また、上記の接合体の製造方法においては、 前記嵌合部を前記接合部にはめ込む嵌合工程と、前記接合部の内壁縁部に前記ロウ材を設置するロウ材設置工程と、前記ロウ材を溶融させて、前記接合部と前記嵌合部との間に溶融した前記ロウ材を浸透させる浸透工程とを備える方法とすることができる。
また、本発明の接合体では、金属部材は、熱膨張率が3〜6[×10−6/K]の範囲のものであり、セラミックス基複合部材は、セラミックス繊維とセラミックスマトリックスとからなる熱膨張率が4.5〜19[×10−6/K] の範囲のものであって、ロウ材の溶融温度における前記嵌合部の外面と前記接合部の内面との距離が15〜500μmの範囲であるものであり、ロウ材は、Ti、Zr、Hfの少なくともいずれか1種を含むものであるので、十分な気密性および接合強度が得られる。
また、本発明のスラスタは、本発明のいずれかの接合体を備えたものであるので、軽量で、容易に製造でき、十分な気密性および接合強度を有するものとなる。
以下、図面を参照して、本発明に係る接合体および接合体の製造方法の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の接合体の一部を拡大して示した概略断面図である。図1に示す接合体1は、円筒状部品であり、金属部材3とセラミックス基複合部材2とが、ロウ材4を用いて接合されてなるものである。
なお、接合体1がスラスタに用いられるものである場合には、金属部材3を構成する材料は、インバー効果を有する合金などの耐熱性に優れた金属であることが望ましく、例えば、Ti、SUS304(日本工業規格(JIS))、HRA929(商品名:日立金属株式会社製)、Alloy909(商品名:日立金属株式会社製)、KOVAR(商品名:ウェスティングハウス株式会社製)などを用いることが望ましい。
セラミックス基複合部材2は、熱膨張率が3〜6[×10−6/K]の範囲のものであって、図2に示すセラミックス基複合材料(CMC)20からなるものである。CMC20は、図2に示すように、セラミックス繊維21とセラミックスマトリックス22とからなるものである。セラミックス繊維21としては、C繊維やSiC繊維などからなる所定の繊維束を軸方向と円周方向に繊維を配向させた2次元織物が用いられている。また、セラミックスマトリックス22は、CやSiC、Si3N4などからなるものであり、セラミックス繊維21に付着されている。
このようなCMC20の中でも特に、セラミックス繊維21とセラミックスマトリックス22のいずれもがCからなるものやSiCからなるもの、セラミックス繊維21がCからなり、セラミックスマトリックス22がSiCからなるものなどを用いることが好ましい。
オーヴァーラップ長d3が上記範囲未満であると、接合面積が不足して、十分な気密性および接合強度が得られない場合がある。また、オーヴァーラップ長d3が上記範囲を超えると、接合面積が多すぎて、金属部材3とセラミックス基複合部材2との熱伸び差に起因する熱応力によるロウ材4への負荷が大きくなり、ロウ材4の剥離や接合強度の低下が生じる恐れがあるため、好ましくない。
また、Zrを含むロウ材4としては、Zrを0.5〜5at%含むAgロウあるいはNiロウ等などが挙げられる。
また、Hfを含むロウ材4としては、Hfを0.5〜5at%含むAgロウあるいはNiロウ等などが挙げられる。
また、ロウ材4としては、金属部材3とセラミックス基複合部材2との熱伸び差に追従可能であるAgろうを用いることが望ましい。
さらに、ロウ材4には、Inが添加されていてもよい。Inを添加することで、融点の低いロウ材4とすることができ、好ましい。
ここで、本実施形態においては、下記の式(1)を用いて、図1に示すセラミックス基複合部材2の嵌合部2aの外形d2と金属部材3の接合部3aの内径d1とのロウ材4の溶融温度における寸法差の1/2(クリアランスD)が所定の範囲となるように、金属部材3の接合部3aの内径d1を決定する。なお、下記の式(1)を用いて、クリアランスDが所定の範囲となるように、セラミックス基複合部材2の嵌合部2aの外形d2を決定してもよい。
また、例えば、セラミックス基複合部材2として、セラミックス繊維およびセラミックスマトリックスが共にSiCからなるCMC(熱膨張率=3.00[×10−6/K])を用い、金属部材3として熱膨張率が18.7[×10−6/K]であるステンレスを用い、ロウ材として溶融温度が720℃であるTB-629T からなるものを用いた場合、室温でのクリアランスは、−153.7〜330.8μmとされ、好ましくは−113.4〜14.7μmとされる。
具体的には、例えば、接合部3a内の所定の位置に、嵌合部2aが必要以上に挿入されることを防止するストッパーを設置し、接合部3aの内壁縁部の斜面3b上に嵌合部2aを載置した状態で、ロウ材4を溶融させる熱処理を行なうことによってオーヴァーラップ長d3を調整してもよい。この場合、ロウ材4を溶融させる熱処理によって金属部材3が膨張すると、接合部3a内にロウ材4とともに嵌合部2aが進入していき、嵌合部2aの進入が所定の位置となると、ストッパーによって嵌合部2aの進入が阻止され、オーヴァーラップ長d3が所定の長さとなる。
なお、オーヴァーラップ長d3を調整するための熱処理は、上述したように、ロウ材4を溶融させるための熱処理であってもよいが、セラミックス基複合部材2の嵌合部2aを金属部材3の接合部3aにはめ込むためだけに行なわれる熱処理であってもよい。
また、本実施形態の接合体1は、金属部材3の熱膨張率が3〜6[×10−6/K]の範囲のものであり、セラミックス基複合部材2の熱膨張率が4.5〜19[×10−6/K] の範囲のものであり、金属部材3とセラミックス基複合部材2との熱膨張率の差が小さいので、金属部材3とセラミックス基複合部材2との熱伸び差に起因する熱応力が小さいものとなり、十分な気密性および接合強度を有するものとなる。
さらに、本実施形態の接合体1において、オーヴァーラップ長d3が4〜12mmの範囲である場合、金属部材3とセラミックス基複合部材2との熱伸び差に起因するセラミックス基複合部材2およびロウ材4への負荷をより一層小さくすることができるので、より一層気密性が高く、接合強度に優れたものとすることができる。
さらに、本実施形態の接合体1において、ロウ材4が、Ti−Cu−Niおよび/またはAg−Cu−Tiを含有するものである場合、ロウ材4のセラミックス基複合部材2に対する濡れ性および密着性がより一層優れたものとなるので、金属部材3とセラミックス基複合部材2とがより優れた気密性および接合強度で接合されたものとなる。
なお、図1に示す例では、接合部3aの内壁縁部には、外側から内側に向かって傾斜した斜面3bが形成されていたが、本発明は、図1に示す例に限定されるものではなく、例えば、接合部の内壁縁部には、外側から内側に向かって下る階段状の段差が設けられていてもよい。この場合においても、接合部3aの内壁縁部に設置されたロウ材4を溶融させた際に、ロウ材4が接合部3aの内壁縁部から外面側にこぼれることを防止できる。
また、図1に示す例では、セラミックス基複合部材2は円形の筒状ものとされていたが、セラミックス基複合部材の形状は、金属部材の接合部にはめ込まれる嵌合部を有するものであればいかなるものであってもよい。
以下、図面を参照して、本発明に係るスラスタの一実施形態について説明する。
図3は、本発明のスラスタの一例の一部を拡大して示した概略図である。図3に示すスラスタ10は、金属部材3とセラミックス基複合部材2とがロウ材4を用いて接合されてなる図1に示す接合体1からなる円筒状部品を備えたものである。図3に示す例においては、スラストチャンバ23およびノズル5は、接合体1のセラミックス基複合部材2から構成されている。また、接合体1の金属部材3は、スラスタ本体の接続部である。
また、図3に示すスラスタ10は、金属部材3とセラミックス基複合部材2とがロウ材4を用いて接合されてなる接合体1を備えているので、従来の機械的な接合方法を用いたものと比較して、接合部の軽量化が可能で、接合が容易なものとなる。
これに対し、金属部材3とセラミックス基複合部材2とをロウ材4を用いて接合する場合、接合のために増加する重量は、ロウ材の重量約38gのみである。
よって、ロウ材4を用いて接合する場合、接合のために増加する重量を、スラストチャンバにフランジ形状の接合部を形成し、金属部材にボルトで固定する場合の約1/20とすることができる。
次に、本発明の実施例について説明する。
「実施例1」
内形30.107mmの円形の筒状の金属部材3と、ロウ材の溶融温度におけるクリアランスDが112.5μmとなる外径30.0mmの円形の筒状のセラミックス基複合部材2とを用意した。そして、金属部材3の接合部3a内におけるオーヴァーラップ長が9mmとなる位置に、セラミックス基複合部材2の嵌合部2aが必要以上に挿入されることを防止するストッパーを設置し、接合部3aの内壁縁部の斜面3b上に嵌合部2aを載置した。次いで、金属部材3の内壁縁部に設けられた斜面3b上にペースト状とされた所定量のロウ材4を設置した。続いて、金属部材3およびセラミックス基複合部材2を200℃に加熱する熱処理を行なうことにより金属部材3を膨張させて、接合部3a内に嵌合部2aを進入させた。その後、ロウ材を750℃に加熱して溶融させて、セラミックス基複合部材2と金属部材3との間に溶融したロウ材を浸透させた。そして、1時間ロウ材の融点温度を保持した後、1℃/分の冷却速度で冷却して図1に示す接合体1を得た。
また、セラミックス基複合部材としては、セラミックス繊維がSiCからなりセラミックスマトリックスがSiCからなるCMC(熱膨張率=3.00[×10−6/K])を用いた。
また、ロウ材としては、溶融温度が720℃であるTB−629T(商品名:東京ブレイズ株式会社製)を用いた。
金属部材としてHRA929(商品名:日立金属株式会社製)(熱膨張率=7.70[×10−6/K] at500℃)を用い、金属部材3の内径を30.122mmとし、ロウ材の溶融温度におけるクリアランスDを112.5μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、図1に示す接合体1を得た。
図4は、接合体1のオーヴァーラップ領域6のせん断強度の測定方法を説明するための図である。図4に示すように、試験体である接合体1を冶具32上に載置し、アタッチメント31を介して図4に示す矢印の方向に荷重を負荷し、プラッグ・ワッシャー方式のせん断試験を行なった。
図5に示すように、実施例1および実施例2の接合体のオーヴァーラップ領域は、十分に高いせん断強度を有していることが確認できた。このことより、実施例1および実施例2の接合体が、十分な接合強度を有していることが確認できた。
図6は、接合体1の気密性の測定方法を説明するための図である。図6に示すように、実施例1および実施例2の接合体1のセラミックス基複合部材2側の端面と金属部材3側の端面とをシール剤33で密閉して、接合体1内にヘリウムガスを供給し、接合体1内の圧力を計測することによって接合体1の気密性を調べた。更に、微細な気密性について調べるために、ガス漏れ検知用の石鹸水を接合体1の外周部に塗布し、リークによる泡が発生するかどうかを確認した。
その結果、実施例1および実施例2の接合体1内の圧力が0.7MPa以下である場合には、リークが発生しないことが確認できた。このことから、実施例1および実施例2の接合体が、十分な気密性を有していることが確認できた。
Claims (9)
- 筒状の接合部を有する金属部材と、前記接合部にはめ込まれる嵌合部を有するセラミックス基複合部材とがロウ材を用いて接合されてなる接合体であって、
前記金属部材は、熱膨張率が4.5〜19[×10−6/K] の範囲のものであり、
前記セラミックス基複合部材は、セラミックス繊維と前記セラミックス繊維に付着されたセラミックスマトリックスとからなる熱膨張率が3〜6[×10−6/K]の範囲のものであって、前記ロウ材の溶融温度における前記嵌合部の外面と前記接合部の内面との距離が15〜500μmの範囲であるものであり、
前記ロウ材は、Ti、Zr、Hfの少なくともいずれか1種を含むものであることを特徴とする接合体。 - 前記ロウ材が、Ti−Cu−Niおよび/またはAg−Cu−Tiを含有することを特徴とする請求項1に記載の接合体。
- 前記金属部材と前記セラミックス基複合部材とが前記ロウ材を介して接合されているオーヴァーラップ領域の前記嵌合部のはめ込まれる方向の長さが、4〜12mmの範囲のものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の接合体。
- 前記セラミックス基複合部材が、円筒状部品であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の接合体。
- 請求項1〜請求項4のいずれかに記載の接合体を備えたことを特徴とするスラスタ。
- 筒状の接合部を有する金属部材と、前記接合部にはめ込まれる嵌合部を有するセラミックス基複合部材とをロウ材を用いて接合する接合体の製造方法であって、
前記金属部材として、熱膨張率が4.5〜19[×10−6/K] の範囲のものを用い、
前記セラミックス基複合部材として、セラミックス繊維と前記セラミックス繊維に付着されたセラミックスマトリックスとからなる熱膨張率が3〜6[×10−6/K]の範囲のものであって、前記ロウ材の溶融温度における前記嵌合部の外面と前記接合部の内面との距離が15〜500μmの範囲であるものを用い、
前記ロウ材として、Ti、Zr、Hfの少なくともいずれか1種を含むものを用いることを特徴とする接合体の製造方法。 - 前記ロウ材が、Ti−Cu−Niおよび/またはAg−Cu−Tiを含有することを特徴とする接合体の製造方法。
- 前記セラミックス基複合部材が、円筒状部品であることを特徴とする接合体の製造方法。
- 前記接合部の内壁縁部に前記ロウ材を設置するロウ材設置工程と、
前記ロウ材を溶融させて、前記接合部と前記嵌合部との間に溶融した前記ロウ材を浸透させる浸透工程とを備えることを特徴とする接合体の製造方法。
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