JP2008063173A - ルチル型酸化チタン膜及びその製造方法、並びに光学材料 - Google Patents

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彦峰 高
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Abstract

【課題】厚膜で透明性に優れ、更には高屈折率のルチル型酸化チタン膜と、このようなルチル型酸化チタン膜を無機材料を原料として温和なプロセスにて製造する方法と、このルチル型酸化チタン膜を用いた光学材料を提供する。
【解決手段】波長550nmの平行光線透過率が60%以上で、膜厚が600nm以上のルチル型酸化チタン膜。このルチル型酸化チタン膜は、酸化チタン前躯体を、過酸化水素の存在下、pH7以上で溶解してチタンペルオキソ錯体溶液を調製する工程と、前記チタンペルオキソ錯体溶液を、pH2以下で分解及び重合して、ルチル型酸化チタン膜を形成する工程を経て製造される。
【選択図】図1

Description

本発明はルチル型酸化チタン膜及びその製造方法と、このルチル型酸化チタン膜を用いた光学材料に係り、特に、厚膜で透明性に優れ、更には高屈折率のルチル型酸化チタン膜と、このようなルチル型酸化チタン膜を無機材料を原料として温和なプロセスにて製造する方法と、このルチル型酸化チタン膜を用いた光学材料に関する。
エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイに用いられるエレクトロルミネッセンス素子においては、素子外部への光の取り出し効率を向上させるために、光取り出し膜を形成する技術が開発されている。この光取り出し膜にあっては、(1)エレクトロルミネッセンス素子を構成する透明基板以上の屈折率を有することにより、膜内部に光を閉じ込め、(2)さらに光をミー散乱させて導波路より光を取り出すために、厚膜化が必要である。
従来、高屈折率超平滑透明薄膜(膜厚1μm以上)を実現するために、有機ポリマー中に無機微粒子を分散させる湿式法や、スパッタ法等の気相合成法による製膜方法が開発されてきた。しかし、前者の方法では、高屈折率無機微粒子を有機ポリマー中に混ぜ込むために粘度が上昇し易く、高屈折率化のために重要な無機微粒子の混合割合に限界があり、屈折率が2以上の透明薄膜は得られなかった。また、後者の方法では、真空プロセスが必要となり、設備費用の増大や、膜の大型面積化が困難であるなど、実用上の問題点が多かった。
一方で、高屈折率無機材料として、ルチル型酸化チタンを成膜化する試みが行なわれている。例えば、J.Am.Chem.Soc.2004,126,7790-7791には、TiClを原料とし、水熱反応により膜厚500nmのルチル型TiO膜を形成する方法が記載されている。この方法では、3価のTiClを酸化するため、200℃といった高温での加圧プロセスが必要であった。また、得られた膜は、緻密さに欠け、表面平滑性に劣るため、本発明者らの検討によれば透明性が悪いという問題点があった。
また、特許2783417号公報には、TiOとSnOを原料として、ルチル型酸化チタンゾルを製造し、これをコーティング材として使用することが記載されているが、この方法では、ゾルをコートして厚膜を形成する際に、クラックが発生し易く、膜の均一性という点で問題があった。
特許2783417号公報 J.Am.Chem.Soc.2004,126,7790-7791
本発明は、厚膜で透明性に優れ、更には高屈折率のルチル型酸化チタン膜と、このようなルチル型酸化チタン膜を無機材料を原料として温和なプロセスにて製造する方法と、このルチル型酸化チタン膜を用いた光学材料を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、メタチタン酸等の酸化チタン前駆体をアルカリ条件下で過酸化水素水に溶解させて調製した溶液をpH酸性とし、この溶液中に基板を静置して加熱することにより、基板上に、ルチル型酸化チタンを析出させることができ、このプロセスにより形成されたルチル型酸化チタン膜は、厚膜であると共に、表面平滑で透明性に優れ、さらに高屈折率であることから、各種光学材料に有用であることを見出した。
本発明は、このような知見に基いて達成されたものであり、以下を要旨とする。
(1) 波長550nmの平行光線透過率が60%以上で、膜厚が600nm以上のルチル型酸化チタン膜。
(2) 屈折率が2.1以上である(1)に記載のルチル型酸化チタン膜。
(3) 酸化チタン前躯体を、過酸化水素の存在下、pH7以上で溶解してチタンペルオキソ錯体溶液を調製する工程と、前記チタンペルオキソ錯体溶液を、pH2以下で分解及び重合して、ルチル型酸化チタン膜を形成する工程とを含むルチル型酸化チタン膜の製造方法。
(4) 分解及び重合する時間が20時間以上である(3)に記載のルチル型酸化チタン膜の製造方法。
(5) 分解及び重合する温度が50〜100℃である(3)又は(4)に記載のルチル型酸化チタン膜の製造方法。
(6) (3)〜(5)のいずれかに記載のルチル型酸化チタン膜の製造方法で製造されたルチル型酸化チタン膜。
(7) (1),(2)又は(6)に記載のルチル型酸化チタン膜を用いた光学材料。
本発明のルチル型酸化チタン膜は、厚膜でしかも透明性に優れ、更には高屈折率であるため、各種光学材料用途に有用である。しかも、本発明のルチル型酸化チタン膜の製造方法によれば、このようなルチル型酸化チタン膜を、無機材料を原料として温和なプロセスで製造することができる上に、大面積化も容易で、大型ルチル型酸化チタン膜も比較的安価に製造することができる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
[ルチル型酸化チタン膜]
本発明のルチル型酸化チタン膜は、波長550nmの平行光線透過率が60%以上で、膜厚が600nm以上であり、好ましくは、屈折率が2.1以上であるものである。
<結晶型>
本発明の酸化チタン膜はルチル型の結晶を有する。
結晶型がルチル型であることは、X線回折(XRD,Rigaku 2500,40kV,300mA)及び透過電子顕微鏡(TEM,400kV,JEM4010)を用いて評価することによって確認することができる。後述の実施例においても、この方式を採用している。
<平行光線透過率>
本発明のルチル型酸化チタン膜は、波長550nmの平行光線透過率が60%以上、好ましくは65%以上であり、このような高い透明性を有するものであれば、光学膜として有効に使用することができる。
ルチル型酸化チタン膜の平行光線透過率が60%未満の場合は、表面の凹凸や内部の空隙が大きいことが考えられ、光学膜としての耐久性や機械強度に欠けるばかりか、そこに散乱粒子等を分散させて所望の散乱プロファイルを得ることが困難である。
ルチル型酸化チタン膜の平行光線透過率は高い程好ましい。
なお、ルチル型酸化チタン膜の平行光線透過率は、例えば、JASCO(日本分光)社製紫外可視分光光度計型番:V−560を用いて測定することができる。後述の実施例においても、この方式を採用している。
<膜厚>
本発明のルチル型酸化チタン膜は、膜厚が600nm以上の厚膜である。好ましくはこの膜厚は1μm以上である。膜厚がこれよりも薄いと、光学的な厚さが十分でなく、可視光を内部に導波させる効率が悪化する。さらに、散乱機能を付与させる場合、粒子径が小さくなるため必要な散乱強度が得られない。本発明のルチル型酸化チタン膜の膜厚の上限には特に制限はないが、通常10μm以下である。ルチル型酸化チタン膜の膜厚が厚すぎると膜質が低下したり、製造にも時間がかかり好ましくない。
なお、ルチル型酸化チタン膜の膜厚は例えば、電子顕微鏡(装置:FE−SEM,JSM−6700F,JEOL)を用いる断面観察により測定することができる。後述の実施例においても、この方式を採用している。
<屈折率>
本発明のルチル型酸化チタン膜の屈折率は、好ましくは2.1以上、より好ましくは2.3以上、さらに好ましくは2.5以上であり、通常2.9以下である。屈折率が2.1よりも小さいと、例えばOLEDの光取り出し膜の場合、屈折率2.0のITO膜より導波を十分に移動させることができず、ITO膜の内部で導波光は吸収されて消費され、光を取り出す効率が上がらない。即ち、この場合、ITOよりも十分に屈折率が高いことが必要であり、従って、屈折率は2.1以上であることが好ましい。なお、ルチル型酸化チタン膜の屈折率は、可視光(例えば波長550nm)の屈折率であり、例えば、次のようにして求めることができる。
まず、X線回折(XRD,Rigaku2500,40kV,300mA)及び透過電子顕微鏡(TEM,400kV,JEM4010)を用いて評価することによって膜がルチル型であることを確認する。また、XRDの結果から、ルチルの結晶性を判断し、ルチルとアモルファス相の割合を計算する。更に、走査型電子顕微鏡(FE−SEM,JSM−6700F,JEOL)で得られた表面と断面の写真から空孔率を計算する。これらのデータを基にして、ルチル型酸化チタンの理論屈折率(2.61〜2.90、出典:理化学辞典)とアモルファス酸化チタン相の屈折率(一般的には1.9)から、ルチル型酸化チタン膜の屈折率を計算により求めることができる。後述の実施例においても、この方式を採用している。
<膜面積>
本発明のルチル型酸化チタン膜の膜面積には特に制限はないが、OLEDディスプレーや照明に用いる場合、工業的な価値を考えると、その幅として55cm(LCDの第3世代設備に対応)以上であることが望まれる。
スパッタや蒸着などの真空技術で、このような大面積のルチル型酸化チタン膜を製造するにはコスト負荷が大きく、実用的ではないが、後述する本発明のルチル型酸化チタン膜の製造方法によれば、適当な浸漬槽を準備すれば良く、大面積化に容易かつ安価に対応することができる。
[ルチル型酸化チタン膜の製造方法]
上述の本発明のルチル型酸化チタン膜の製造方法は特に制限されるものではないが、好ましくは、酸化チタン前躯体を、過酸化水素の存在下、pH7以上で溶解してチタンペルオキソ錯体溶液を調製する工程と、前記チタンペルオキソ錯体溶液を、pH2以下で分解及び重合して、ルチル型酸化チタン膜を形成する工程とを含む本発明のルチル型酸化チタン膜の製造方法により製造される。
<チタンペルオキソ錯体溶液の調製>
(酸化チタン前躯体)
酸化チタン前躯体としては、β−チタン酸、チタン酸、アモルファス酸化チタン、オキシ硫酸チタン、フッ化チタンアンモニア、フッ化チタン、チタンアルコキシド、四塩化チタン、三塩化チタン及びその他のチタンの水溶性塩、好ましくはβ−チタン酸、チタン酸、アモルファス酸化チタン、オキシ硫酸チタン、更に好ましくはβ−チタン酸、チタン酸が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
酸化チタン前駆体の使用量は過酸化水素(水溶液)に対して0.05〜20重量%、特に0.1〜4重量%であることが好ましい。
酸化チタン前駆体の使用量が多すぎると、反応時間が長くなって、好ましくなく、少なすぎると、チタンペルオキソ錯体溶液の濃度が低くなり、膜形成効率が悪くなる。
(過酸化水素)
過酸化水素は濃度3重量%以上、好ましくは30重量%以上、例えば30〜35重量%の過酸化水素水として用いる。
過酸化水素水の使用量は、酸化チタン前躯体に対して500〜200000重量%、特に2500〜100000重量%であることが好ましい。
過酸化水素の使用量が多すぎると、チタンペルオキソ錯体溶液の濃度が低くなり、膜形成効率が悪くなる。少なすぎると、酸化チタン前躯体の溶解に長時間を要し、好ましくない。
(溶液pH)
溶液はpH7以上、好ましくは8以上、更に好ましくは9以上とする。このpHが低すぎると、反応速度が遅くなり、好ましくない。溶液のpHを7以上にするためには、アンモニア、NaOH、KOHなどのアルカリ性物質を入れてpHを調節すればよい。このアルカリ性物質の添加量はpHの値が上記の値になるように調整すれば良い。なお、溶液のpHの上限は通常11以下である。
(調製条件)
チタンペルオキソ錯体は、酸化チタン前駆体と過酸化水素水とアルカリ性物質とを混合してpH7以上の条件で下記の温度及び時間反応させることにより調製することができる。
温度:0〜15℃、好ましくは3〜10℃
時間:30分〜10時間
なお、この場合、混合溶液はそのまま放置してもよいが、好ましくは攪拌する。
(希釈)
上述のようにして調製されたチタンペルオキソ錯体溶液は必要に応じて希釈しても構わない。
この場合、希釈溶媒としては、水又はアルコール、好ましくは水が用いられる。
(酸化チタン前躯体濃度)
膜形成に供するチタンペルオキソ錯体溶液の酸化チタン前躯体由来成分の濃度は0.001〜10重量%とすることが好ましく、特に0.01〜1重量%とすることが好ましい。この濃度が低すぎる場合に、出発原料の割合が低く、溶液の過飽和度が小さいために、膜の析出速度が遅くなる。逆に、濃度が高すぎる場合に、過飽和度は高く、溶液中に大量の沈殿が生じ、膜構造の制御などが難しくなる。
<ルチル型酸化チタン膜の形成>
ルチル型酸化チタン膜の形成工程は、上述のようにして調製されたチタンペルオキソ錯体溶液を、pH2以下の条件で分解及び重合する工程である。この分解及び重合工程は具体的には、pH2以下に調整したチタンペルオキソ錯体溶液(以下「反応溶液」と称す場合がある。)中にルチル型酸化チタン膜を形成する基板を浸漬して実施される。
<pH条件>
反応溶液はpH2以下、好ましくはpH1.5、更に好ましくはpH1以下とする。このpHが2より大きいと、酸化チタン膜の析出速度は速いが、アモルファスからルチル型への変換に長時間が必要となる。反応溶液のpHの下限は通常0.1以上であるが、溶液のpHが0.5以下であると、溶液は安定で、酸化チタンの析出には長時間の処理が必要となる。
溶液のpHを調整するためには、硝酸、硫酸、塩酸、好ましくは硝酸、塩酸等の酸の1種又は2種以上をチタンペルオキソ錯体溶液に加えて、所望のpHに調節すれば良い。
(基板)
ルチル型酸化チタン膜を形成する基板としては、特に制限はなく、本発明では高温での加熱は必要としないため、ガラス、透明導電膜付きガラス、プラスチックなど、任意のものを用いることができる。
基板は、予め、アセトン、エタノール、水などで洗浄する前処理を施すことが好ましい。また、この前処理は、基板表面に自己組織膜などを用いて改質する処理であってもよい。
(基板に対する反応溶液の量)
反応溶液の使用量は、基板の膜形成面を浸漬することができるような量であればよく、特に制限はない。好ましくは膜形成面をほぼ鉛直方向とした状態で、基板の一部を反応溶液に浸漬しうるような反応溶液量とする。
(浸漬方法)
基板は、反応溶液中に、膜形成面がほぼ鉛直方向となるように立設した状態で浸漬する。或いは、膜形成面を下向きにしてほぼ水平方向に静置して浸漬してもよい。
基板の膜形成面を水平に上向きにすると、反応溶液中での析出物が基板上に堆積し、膜のモルフォロジーが異なるものが形成されたり、膜と基板との密着性が低下する問題が生じる。
(浸漬時間)
浸漬時間は20時間以上が好ましく、更に好ましくは3〜6日である。
(浸漬温度)
浸漬温度(基板浸漬時の反応溶液の温度)は50〜100℃が好ましく、更に好ましいのは80〜100℃である。浸漬温度が50℃よりも低い場合は反応速度が遅く、膜生成時間が長すぎる問題がある。一方、反応溶液は常圧の水溶液であるので、100℃を超える溶液とすることは困難である。
(ルチル型酸化チタン析出のメカニズム)
本発明のルチル型酸化チタン膜によるルチル型酸化チタン析出によるメカニズムは次の通りである。
Figure 2008063173
酸化チタン前駆体として水に可溶性の酸化チタン前駆体を用いると、式(1)に示すように、チタンイオンと過酸化水素とが反応して過酸化チタン酸の錯イオン(チタンペルオキソ錯体)が生成する。
β−チタン酸などの水不溶性の酸化チタン前駆体を用いた場合には、式(2)に示すように、アルカリ性の過酸化水素溶液中でチタン酸が徐々に反応してチタンの錯イオン(チタンペルオキソ錯体)が生成する。
チタンペルオキソ錯体は不安定であるので、溶液の条件によって組成などが変わる。例えば、酸性の溶液にはTi(O2+として存在することが知られている。また、これらのチタンペルオキソ錯体イオンは分解、重合により固体の酸化チタンとして析出する。
析出物は析出当初はアモルファスであるが、これは不安定であるので、溶解−再析出というメカニズムで結晶化し、二酸化チタンの熱力学的安定相であるルチル型になる。
[光学材料]
本発明のルチル型酸化チタン膜が適用される光学材料としては特に制限はないが、本発明により提供されるルチル型酸化チタン膜は、厚膜で透明性に優れ、更には高屈折率で、大面積化も容易であるため、OLED照明、OLEDディスプレー、フレキシブルディスプレー、あるいはITO側より光を取り出す自発光デバイス(SED,PDP、LED等)等において、光取り出し率向上のための光取り出し膜として、工業的に極めて有用であり、従って、本発明の光学材料としては、これらの光学材料が挙げられる。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
β−チタン酸(HTiO、キシダ化学製)1.5gを、過酸化水素水(過酸化水素濃度35重量%、キシダ化学製)50mlとアンモニア水(アンモニア濃度28重量%、キシダ化学製)15mlの混合溶液に加え、pH9.5の溶液とし、これを氷浴中で温度を3〜7℃に保持しながら、マグネティックスターラーで1.5〜2時間攪拌し、黄色透明の溶液を得た。これをチタンペルオキソ錯体ストック溶液とした。
得られたチタンペルオキソ錯体ストック溶液を約2ml採り、超純水で総量が約70mlになるまで希釈した。希釈後のチタンペルオキソ錯体ストック溶液のβ−チタン酸由来成分濃度は約0.05重量%である。これに硝酸(硝酸濃度60重量%、キシダ化学製)を加えてpHを1.00にし、更に超純水を加えて総量を100mlとし、これを反応溶液とした。この反応溶液のpHも1.00である。
フッ素ドープした酸化スズ膜付のガラス基板(FTO−glass、F:SnO)をアセトン、エタノール、純水の順番で超音波を用いて洗浄した後、ガラスビーカーの壁に、基板の板面がほぼ鉛直方向となるようにロールテープで固定した。このビーカー内に上記反応溶液を注ぎ入れ、ほぼ鉛直方向に立設した基板の一部を反応溶液に浸漬した。ラップを用いて、このビーカーを封止した後、乾燥機に入れて、95℃にて72時間放置した。その後、基板を溶液から取り出して、純水を用いて洗浄を行い、50℃の乾燥機において空気中で乾燥し、基板上に生成した二酸化チタン膜を得た。
得られた二酸化チタン膜を、XRDで測定したところ、ルチル型であった。膜は(101)と(002)面に配向しており、アナターゼ相は検出されなかった。
また、断面TEM写真から、膜がルチル結晶であること、この結晶は単結晶であり、膜全体が均一かつ緻密であること、基板の近傍には微粒子層が観察され、その上に配向したナノロッドのようにルチル結晶が成長していることが観察された。このことから膜の生長メカニズムを考えると、最初にナノ粒子からシード(seed)を形成し、その後、配向性膜に成長したと考えられる。
さらに、SEM写真から、膜表面に非常に細かい粒子が現れ、部分的には柱状の様子であることが観察された。膜表面には大きなクラックはなく、断面から、膜厚は約2000nmであることが確認された。膜と基板との密着性も良好であった。
平行光線透過率を測定すると、可視領域では約70〜80%であり、波長550nmでは約70%であった。
また、吸収端から光学的にバンドギャップを計算すると約3.18であり、ルチル結晶の値にほぼ一致した。
XRD測定とSEMによる構造解析から概算される屈折率は少なくとも2.1以上であった。
この実施例1で形成されたルチル型酸化チタン膜の走査電子顕微鏡(SEM)写真を図1(a)〜(c)に、XRDパターンを図1(d)に示す。
また、このルチル型酸化チタン膜の断面の透過電子顕微鏡(TEM)写真を図2に、紫外〜可視光吸収スペクトルを図3(a)に、吸収端付近の吸収係数とエネルギーとの関係を図3(b)に示す。
[実施例2]
基板の浸漬温度を80℃とした以外は実施例1と同様にして、基板上に生成した二酸化チタン膜を得た。得られた二酸化チタン膜を、XRDで測定したところ、ルチル型であった。
[実施例3]
基板の浸漬温度を95℃とした以外は実施例1と同様にして、基板上に生成した二酸化チタン膜を得た。得られた二酸化チタン膜を、XRDで測定したところ、ルチル型であった。
[実施例4]
反応溶液のpH調整に、硝酸に変えて硫酸を用いた以外は実施例1と同様にして、基板上に生成した二酸化チタン膜を得た。得られた二酸化チタン膜を、XRDで測定したところ、ルチル型であった。
[実施例5]
反応溶液のpH調整に、硝酸に変えて塩酸を用いた以外は実施例1と同様にして、基板上に生成した二酸化チタン膜を得た。得られた二酸化チタン膜を、XRDで測定したところ、ルチル型であった。
[実施例6]
フッ素ドープした酸化スズ膜付のガラス基板に変えて、ポリエチレンテレフタレート基板を用いた以外は実施例1と同様にして、基板上に生成した二酸化チタン膜を得た。得られた二酸化チタン膜を、XRDで測定したところ、ルチル型であった。
[比較例1]
反応溶液のpHを1.5に変更した以外は実施例1と同様にして、基板上に生成した二酸化チタン膜を得た。得られた二酸化チタン膜を、XRDで測定したところ、アモルファスであった。平行光線透過率を測定すると、可視領域では70〜80%であり、波長550nmでは77%であった。屈折率は1.9程度と予想される。
[比較例2]
反応溶液のpHを2に変更した以外は実施例1と同様にして、基板上に生成した二酸化チタン膜を得た。得られた二酸化チタン膜を、XRDで測定したところ、アモルファスであった。平行光線透過率を測定すると、可視領域では70〜83%であり、波長550nmでは83%であった。屈折率は1.9程度と予想される。
[比較例3]
基板の浸漬時間を19時間に変更した以外は実施例1と同様にして、基板上に生成した二酸化チタン膜を得た。得られた二酸化チタン膜を、XRDで測定したところ、アモルファスであった。屈折率は1.9程度と予想される。
図1(a)〜(c)は、実施例1で形成されたルチル型酸化チタン膜の走査電子顕微鏡(SEM)写真であり、図1(d)は、XRDパターンを示すチャートである。 実施例1で形成されたルチル型酸化チタン膜の断面の透過電子顕微鏡(TEM)写真である。 図3(a)は、実施例1で形成されたルチル型酸化チタン膜の紫外〜可視光吸収スペクトルを示すチャートであり、図3(b)は、吸収端付近の吸収係数とエネルギーとの関係を示すグラフである。

Claims (7)

  1. 波長550nmの平行光線透過率が60%以上で、膜厚が600nm以上のルチル型酸化チタン膜。
  2. 屈折率が2.1以上である請求項1に記載のルチル型酸化チタン膜。
  3. 酸化チタン前躯体を、過酸化水素の存在下、pH7以上で溶解してチタンペルオキソ錯体溶液を調製する工程と、
    前記チタンペルオキソ錯体溶液を、pH2以下で分解及び重合して、ルチル型酸化チタン膜を形成する工程
    とを含むルチル型酸化チタン膜の製造方法。
  4. 分解及び重合する時間が20時間以上である請求項3に記載のルチル型酸化チタン膜の製造方法。
  5. 分解及び重合する温度が50〜100℃である請求項3又は4に記載のルチル型酸化チタン膜の製造方法。
  6. 請求項3ないし5のいずれか1項に記載のルチル型酸化チタン膜の製造方法で製造されたルチル型酸化チタン膜。
  7. 請求項1,2又は6に記載のルチル型酸化チタン膜を用いた光学材料。
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