JP2008056951A - ナノコロイド粒子及びその製造方法、共役ジエンのジアセトキシ化反応用触媒、及び不飽和グリコールのジカルボン酸ジエステルの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】第16族元素を含有するアルコキシド化合物及びハロゲン化合物のうち少なくとも一方を原料として用いる。
【選択図】なし
Description
また、元素周期表の複数の族の中から選択される元素を、それらの族の番号を列記して表記する場合がある。例えば、第9族及び第10族から選択される元素は、「第9族・第10族元素」という。
(1)液相で調製するため、操作が簡単であり、粒子径、形状、組成等のデザインが可能である。
(2)粒子が均質で結晶性が良いため、触媒反応時における成分の溶出が抑制でき、触媒反応成績のばらつきも少ない。
(3)触媒反応の場が均一系であるので、基質(反応物)との接触効率が良く、反応熱の放散や反応生成物の拡散などの点でも有利である。
(4)触媒の担持・焼成工程や、水素による還元工程等が不要である。
ナノコロイド粒子の合成法としては、種々の方法が知られている。例えば、第15族元素であるビスマスの原料として塩化ビスマスを用い、第16族元素であるテルルの原料としてテトラエトキシテルルを用いて、水素化ホウ素ナトリウムで還元することによりテルル化ビスマスナノコロイド粒子を合成する方法が知られている(例えば特許文献2)。この特許文献2には、得られたナノコロイド粒子を熱電変換材料に利用できる旨が記載されており、具体例として熱センサーや熱電冷却装置が挙げられている。
即ち、本発明の目的は、元素周期表の第9族及び第10族から選択される元素と第16族から選択される元素とを共に含有する、新規なナノコロイド粒子を提供するとともに、そのナノコロイド粒子を安定的に製造することが可能な方法を提供することに存する。
また、本発明の別の目的は、当該ナノコロイド粒子を用いて、共役ジエンのジアセトキシ化反応用の有効な触媒を提供すること、及び、不飽和グリコールのジカルボン酸ジエステルを効率的に製造するための方法を提供することに存する。
また、このナノコロイド粒子は、共役ジエンのジアセトキシ化反応用の触媒として、優れた性能を発現する。
更に、このナノコロイド粒子を触媒として用いることにより、不飽和グリコールのジカルボン酸ジエステルを効率的に製造することが可能となる。
本発明のナノコロイド粒子は、元素周期表の第9族及び第10族から選択される元素(第9族・第10族元素)と、元素周期表の第16族から選択される元素(第16族元素)とを、共に含有するものである。本発明のナノコロイド粒子において、これらの第9族・第10族元素及び第16族元素は、通常は合金の状態で存在する。
また、本発明において「元素周期表」とは、いわゆる長周期型の周期表を意味する。
また、本発明における「第9族」、「第10族」、「第16族」等の表記は、IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry)が推奨する第1〜18族の表記に従ったものである。
第10族元素としては、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)等の金属元素が挙げられる。
第16族元素としては、酸素(O)、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)、ポロニウム(Po)等の元素が挙げられる。
また、本発明のナノコロイド粒子が含有する第16族元素も、一種のみでもよく、二種以上でもよいが、通常は一種のみである。
第3の元素は、上述の第9族・第10族元素及び第16族元素とともに、合金の形態を採ることが好ましい。
なお、第3の元素としては、何れか一種の元素を単独で用いてもよく、二種以上の元素を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
但し、本発明のナノコロイド粒子が第3の元素を含有する場合でも、その含有量は微量であることが好ましい。
表面保護材として用いられる有機物としては、本発明のナノ粒子を構成する原子と電子の授受を行なうことで、ナノ粒子に結合できるものであればよい。具体的に、アミン類、ホスフィン類、アルコール類等の塩基性官能基を有するものは、ナノ粒子表面のカチオン部分と結合できるので好ましい。また、カルボン酸等の酸性官能基を有するものは、ナノ粒子表面のアニオン部分と結合できるので好ましい。また、ナノ粒子に結合する部位を1分子内に多数有する、高分子状の有機物であってもよい。
本発明のナノ粒子と結合する部分以外の有機物の構造は特に限定しないが、本発明のナノコロイド粒子を触媒用途に使用するのであれば、水溶液中での反応に使用する場合は親水性基を有するもの、油中での反応に使用する場合には疎水性基を有するものが用いられる。触媒活性を考えると、基質が近づいた時には離れ易いように、比較的弱くナノ粒子表面に結合する有機物が好ましく、その一方でナノ粒子同士の凝集を防ぐため、ナノ粒子表面から離れたままにならない有機物が好ましい。
このような観点から、表面保護材としては、塩基能を有する高分子が良好に用いられる。中でも、ポリビニルピロリドン又はポリビニルアルコールが好ましく、ポリビニルピロリドンが特に好ましい。
この三層コアシェル型のナノ粒子は、三種類の金属粒子が混合すること無く、一つの金属粒子を他の金属が覆う層構造を有している。また、白金の原料としてはヘキサクロロ白金(IV)酸等の金属塩の水溶液を、パラジウムの原料としては塩化パラジウム等の金属塩の水溶液を、ロジウムの原料としては塩化ロジウム(III)の水溶液を用いている。
しかし、ナノ粒子が共役ジエンのアセトキシ化活性といった触媒機能を発現するのは、ロジウム等の第9族元素又はパラジウム等の第10族元素と、テルル等の第16族元素がナノ粒子中で均一に混ざり合ったアロイ状態か、2種類の元素が結晶内で各々決まった格子位置に配置する金属間化合物の場合であり、コアシェル構造では高い活性を期待できないからである。
本発明のナノコロイド粒子を製造する方法は特に制限されないが、通常は液相合成により作製される。
一般に、2種類以上の元素からなるナノコロイド粒子を合成する場合には、粒子原料として各元素を含む化合物を用いて、これらを溶液中で予め混合した後、同時に還元或いは熱分解を行なうことにより、目的のナノ粒子を得るという方法が採られる。従って、粒子原料として用いる化合物の性質が重要である。
本発明のナノコロイド粒子を製造する際には、第16族元素の原料として、第16族元素を含有するアルコキシド化合物及び/又はハロゲン化合物を用いる方法が好ましい。以下、この方法(これを適宜「本発明のナノコロイド粒子の製造方法」或いは単に「本発明の製造方法」という。)について、順を追って説明する。
本発明の製造方法では、上述の様に、第16族元素の原料として、第16族元素を含有するアルコキシド化合物及び/又はハロゲン化合物を用いることを特徴としている。
従来、セレンやテルル等のカルコゲン(第16族元素)は酸化され易いので、それらの化合物は不安定であり、更に周期表の族が離れたロジウム又はパラジウム等とナノ粒子を構成させるのは困難であると考えられていた。反応系中に粒子表面の保護材を加えることにより、粒子同士の凝集や肥大化を防ぐこともできるが、保護材と粒子表面との結合があまりに強固だと、たとえナノ粒子が形成されたとしても、その後の触媒反応に使用することができない等の課題があった。
これに対し、本発明者らは、第16族元素の原料として、第16族元素を含有するアルコキシド化合物及び/又はハロゲン化合物を使用することにより、予想外にも、第9族・第10族元素及び第16族元素を共に含有するナノコロイド粒子(本発明のナノコロイド粒子)を、安定且つ効率的に合成できることを見出したのである。
また、第16族元素を含有するハロゲン化合物の例としては、テルル(Te)を例に採ると、塩化テルル(II)、塩化テルル(IV)、臭化テルル(IV)、ヨウ素テルル(IV)等のハロゲン化テルルなどが挙げられる。また、これらの化合物中のテルル(Te)を他の第16族元素に換えた化合物も、第16族元素を含有するハロゲン化合物の例として挙げることができる。これらのハロゲン化合物は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
第16族元素の原料としては、アルコキシド化合物のみを用いてもよく、ハロゲン化合物のみを用いてもよく、アルコキシド化合物とハロゲン化合物とを併用してもよい。
第3の元素の原料の使用比率は、製造するナノコロイド粒子における第3の元素の含有率に応じて、適宜選択すればよい。
表面保護材の使用比率は、製造するナノコロイド粒子における、表面保護材とナノ粒子との比率に応じて、適宜選択すればよい。
本発明の製造方法では、上述の原料(第9族・第10族元素の原料と第16族元素の原料)を用いて液相合成で反応を行なうことにより、ナノコロイド粒子を製造する。液相合成の主な手法としては、同時還元法と熱分解法とが挙げられるが、何れを採用することもできる。
同時還元法では、用いる原料の還元速度を合わせる必要がある。一方、熱分解法では、用いる原料の熱分解速度を合わせる必要がある。
同時還元法では、粒子生成反応速度を制御するための手法として、原料の種類や濃度の調整、反応温度の調整等、複数の手法があるが、熱分解法では、粒子生成反応速度を制御するための手法として、原料の種類を調整するという手法しかない。
従って、本発明の製造方法では、液相合成の手法として同時還元法を用いることが好ましい。
還元方法としては、原料の混合溶液中に還元剤を加える方法が好ましい。還元剤としては、ヒドラジン、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム等が挙げられる。これらは何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。中でも、還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを用いると、良好なナノコロイド粒子が形成されるので好ましい。
還元剤の使用量は特に制限されないが、第9族・第10族元素の原料及び第16族元素の原料の合計モル数以上の量が少なくとも必要である。好ましくは原料のモル数の1倍以上1000倍以下、更に好ましくは2倍以上、100倍以下である。還元剤の使用比率が多過ぎると、ナノ粒子中に還元剤の成分が混入する可能性があり、少な過ぎると、反応が進行しない原料のせいで粒子の組成にばらつきを生じる可能性がある。
反応溶媒の種類は、反応原料や反応生成物と好ましからぬ反応を生じるものでない限り、特に制限されないが、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒などが挙げられる。中でもエタノールが好ましい。なお、これらの反応溶媒は何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上述の原料(第9族・第10族元素の原料及び第16族元素の原料、並びに必要に応じて用いられる、第3の元素の原料と表面保護材)を、通常は反応溶媒中で混合する。特に、各原料を個別に反応溶媒に予め溶解させて各々溶液とした上で、それらの溶液を混合することが好ましい。
次いで、上述の原料の混合液と還元剤とを混合する。通常は、原料の混合液に対して還元剤を徐々に加えて混合することが好ましい。
また、上述の混合時には適宜、攪拌を加えることが好ましい。
反応終了後、得られた反応液からナノコロイド粒子を分離してもよい。ナノコロイド粒子の分離は、例えば、反応溶液の限外濾過等のフィルタリングにより達成できる。
本発明のナノコロイド粒子の用途は特に制限されず、各種の用途が考えられるが、中でも不飽和グリコールのジカルボン酸ジエステル合成用の触媒としての用途が好ましい。特に、共役ジエンのジアセトキシ化反応用触媒としての用途が好適である。
共役ジエンとしては、ブタジエン;イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、ピペリレン等のアルキル置換ブタジエン;シクロペンタジエン等の環状ジエン等が挙げられる。中でもブタジエンが好ましい。これらの共役ジエンは、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
なお、原料の共役ジエンは、必ずしも純粋なものである必要はなく、窒素ガス等の不活性ガスや、メタン、エタン、ブタン等の飽和炭化水素、又は、ブテン等の不飽和炭化水素を含むものであってもよい。
また、カルボン酸の他に、別の反応溶媒を加えてもよい。反応溶媒としては、反応不活性な(即ち、反応原料や反応生成物に対して活性を有さない)有機溶媒が用いられる。反応溶媒に使用される有機溶媒の種類としては、飽和炭化水素、エステル類等が挙げられる。これらの有機溶媒は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
但し、別の反応溶媒を使用する場合でも、反応媒体(即ち、反応系中に存在するカルボン酸及び反応溶媒)の合計量の50重量%以上は、原料のカルボン酸であることが好ましい。
分子状酸素としては、安全上の理由から、純粋な酸素よりも、窒素等の不活性ガスで希釈されたもの、例えば空気を用いることが好ましい。
分子状酸素の使用量は、反応等量以上であればよく、その上限は特に制限はされない。
本発明の不飽和グリコールのジカルボン酸ジエステルの製造方法における触媒(本発明の触媒)の状態としては、懸濁槽式の方式を採用することができる。
<RhTeナノ粒子の合成>
エタノール(純正化学株式会社製、特級)500mLを、ドラフト中で10分間窒素バブリングして、溶存酸素を除去した。これを窒素雰囲気に保ったグローブボックス中に入れた。塩化ロジウム3水和物(NEケムキャット社製)5g、テルリウム(IV)エトキシド(アヅマックス株式会社製)10g、テトラヒドロほう酸ナトリウム(キシダ化学株式会社製、1級)25g、ポリビニルピロリドン(純正化学株式会社製K−30、分画分子量40000)10g、同様にグローブボックス中に入れた。
また、このRhTeナノ粒子を透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)で観察したところ、2nm程の微粒子が数十〜百nmの大きさに線状に繋がったナノ粒子であった。
また、このRhTeナノ粒子を元素分析したところ、その組成割合はRh58Te42であった。
23℃の室温下、50mL三口丸底フラスコ中、上述のRhTeナノ粒子80mgを20mLの酢酸(関東化学株式会社製)に分散させた。三口フラスコには予めガス吹き込み管と還流管を装着しておいた。還流管の上方はベントラインに繋げておき、余剰ガスを室外に導いた。三口フラスコをオイルバスに漬け、80℃まで昇温した。80℃に到達した時点でガス吹き込み管から窒素(毎分45mL)、酸素(毎分5mL)、ブタジエン(毎分20mL)の混合ガスを流し、反応を開始した。1時間後室温まで冷却し、ガスの流入を止めて反応を終了した。
また、ロジウム(Rh)1モル当たりのブタジエンのジアセトキシ化反応の速度は、毎時12400mmolであり、良好な触媒機能を示した。
<RhTeナノ粒子の合成>
合成に用いる試薬のうち、ポリビニルピロリドンの使用量を587mgに変更し、テトラヒドロほう酸ナトリウムの使用量を139mgに変更した以外は、実施例1と同様の方法で合成を行なうことにより、RhTeナノ粒子を得た。
また、このRhTeナノ粒子を透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)で観察したところ、2nm程の微粒子が数十〜百nmの大きさに線状に繋がったナノ粒子であった。
上述のRhTeナノ粒子について、実施例1と同様の方法により、ブタジエンのジアセトキシ化反応における触媒としての活性の評価をした。反応後、反応液を0.5mL抜き出してガスクロマトグラフィーで分析したところ、1,4−ジアセトキシブテン(シス異性体及びトランス異性体の混合物)が含まれていた。
また、ロジウム(Rh)1モル当たりのブタジエンのジアセトキシ化反応の速度は、毎時180mmolであり、良好な触媒機能を示した。
テルルの原料としてテルル酸(Strem社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で合成反応を行なったところ、ロジウムとテルルの合金は形成されなかった。また、その生成物について、実施例1と同様の方法によりブタジエンのジアセトキシ化反応における触媒活性の評価を行なったところ、触媒活性は見られなかった。
Claims (7)
- 元素周期表の第9族及び第10族から選択される元素(以下「第9族・第10族元素」という。)と、元素周期表の第16族から選択される元素(以下「第16族元素」という。)とを共に含有し、直径が1nm以上、100nm以下であることを特徴とする、ナノコロイド粒子。
- 前記第9族・第10族元素が、ロジウム、イリジウム、パラジウム及び白金からなる群より選択される元素であり、前記第16族元素が、テルル又はセレンであることを特徴とする、請求項1記載のナノコロイド粒子。
- 表面保護材を更に有することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のナノコロイド粒子。
- 前記第16族元素を含有するアルコキシド化合物及びハロゲン化合物のうち少なくとも一方を原料として製造されたものであることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載のナノコロイド粒子。
- 請求項1〜3の何れか一項に記載のナノコロイド粒子を製造する方法であって、前記第16族元素を含有するアルコキシド化合物及びハロゲン化合物のうち少なくとも一方を原料として用いることを特徴とする、ナノコロイド粒子の製造方法。
- 請求項1〜4の何れか一項に記載のナノコロイド粒子からなることを特徴とする、共役ジエンのジアセトキシ化反応用触媒。
- 請求項6記載の共役ジエンのジアセトキシ化反応用触媒を用いて共役ジエンのジアセトキシ化反応を行なう工程を少なくとも有することを特徴とする、不飽和グリコールのジカルボン酸ジエステルの製造方法。
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