JP2008056760A - 医療用コーティング剤、ゴム成形品および表面改質方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ゴム成形品の表面に、人体に対して影響がなく、ゴムからの溶出を防ぐとともに、表面に強度および滑り性を与え、殺菌条件にも耐えうる耐湿熱性を有する皮膜を形成して、医療用に適したゴム成形品を提供すること;そのような皮膜の形成に適した医療用コーティング剤;およびゴム成形品の表面改質方法を提供する。
【解決手段】 (A)数平均分子量500〜20,000のポリカーボネートジオール、および(B)フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、もしくはそれらのオリゴマーである1種または2種以上の芳香族ポリイソシアネート;ならびに/あるいは(A)と(B)を反応させて得られるプレポリマーを含む医療用ゴム成形品用コーティング剤;それを用いるゴム成形品の表面改質方法;およびそれによって得られたゴム成形品。
【選択図】 なし
【解決手段】 (A)数平均分子量500〜20,000のポリカーボネートジオール、および(B)フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、もしくはそれらのオリゴマーである1種または2種以上の芳香族ポリイソシアネート;ならびに/あるいは(A)と(B)を反応させて得られるプレポリマーを含む医療用ゴム成形品用コーティング剤;それを用いるゴム成形品の表面改質方法;およびそれによって得られたゴム成形品。
【選択図】 なし
Description
本発明は、天然ゴムまたは合成ゴムを成形・加硫して得られるゴム成形品からの不純物の溶出を抑制し、かつ該ゴム成形品に強度および表面の滑り性を付与することを目的とし、特に高温高湿条件に耐えうるように表面を改質された医療用ゴム成形品に関し、また、そのような表面改質に適した医療用コーティング剤、ならびにそのような医療用ゴム成形品を与える表面改質方法に関する。
一般に天然ゴムおよび合成有機ゴムの成形品は、加硫促進剤、老化防止剤、プロセス油、充填剤等の各種配合剤を配合して成形・加硫されている。そのため、ゴム成形品は、人体に必ずしも安全とは言えない不純物を少なからず含んでいる。このようなゴム成形品を注射器のパッキンや医薬品容器の栓など、医薬品、血液などに接する用途に使用する場合、このような不純物の溶出や充填材などの脱落に、特に注意が必要となる。こうした溶出・脱落の防止のため、特に医薬品用容器に使用するゴム栓には、その表面に、化学的に安定なプラスチックフィルムをラミネートする方法が一般的である。例えば、特許文献1,2などに記載されているような、フッ素樹脂をラミネートする方法である。
しかしながら、プラスチックフィルムをラミネートする方法においては、製品の形状に応じた金型設計および成形条件の設定が必要であり、特に薬栓のような複雑な形状の成形品へのラミネートは、困難を極める。また、プラスチックフィルムとゴムとの密着性は必ずしも良好ではなく、その密着性を改良するために、プラスチックフィルムの一方の面にプライマー処理を施す必要があるため、必ずしも安価な方法ではない。さらに、これらのプライマーには、必ずしも医療用ゴム栓に処理をするには安全ではない成分を含むものもある。
一方、有機ゴムの表面に、官能基を有するポリシロキサンを塗布して架橋・接着させることにより、皮膜を形成させる表面改質方法(特許文献3)も提案されている。しかしながら、通常の架橋ポリシロキサンで形成される皮膜は機械的に弱く、またプライマーを用いないと有機ゴムへの接着性も十分ではない。一方、特殊な炭素官能性基を導入したポリシロキサンを用いると、接着性は改善されるが、処理剤が高価なものになる。
また、ゴム製品の表面に非粘着性および滑り性を与えるために、ポリブタジエン系、ポリエステル系などの変性ウレタンエマルションを塗布してポリウレタン皮膜を設ける方法(特許文献4)、またはさらにその上に合成樹脂層を設ける方法(特許文献5)により、簡便に表面改質をする方法も提案されている。しかし、殺菌条件に耐えられる塗膜を形成することは容易ではない。また、このような水性エマルションでは、ゴムに対する濡れ性が悪く、塗膜形成の際に撥いてしまう。これを改善するために界面活性剤、増粘剤等を添加する方法も考えられるが、医薬品にとっては不純物となりうる成分として残留してしまうため、好ましくはない。そのうえ、界面活性剤として特に有効な、ペルフルオロアルキルカルボン酸塩のようなフッ素系界面活性剤は、高価である。
本発明の課題は、ゴム成形品の表面に、人体に対して影響がなく、ゴムからの溶出を防ぐとともに、表面に強度および滑り性を与え、殺菌条件にも耐えうる耐湿熱性を有する皮膜を、簡便かつ安価に形成して、特に医療用に適したゴム成形品を提供することである。本発明のさらなる課題は、そのような皮膜の形成に適した医療用コーティング剤、および医療用ゴム成形品の表面改質方法を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために研究を重ねた結果、ゴム成形品の表面に、特定のウレタン皮膜を形成させる表面改質方法を見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、ゴム成形品の、少なくとも内容物に接する表面に、
(A)数平均分子量500〜20,000のポリカーボネートジオール;および
(B)フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、もしくはそれらのオリゴマーである1種または2種以上の芳香族ポリイソシアネート;ならびに/あるいは
(A)と(B)を反応させて得られるプレポリマー
を含むコーティング剤を塗布し、硬化させて、該表面にポリウレタンを主成分とする皮膜を設けたことを特徴とする、表面改質された医療用ゴム成形品に関し;
また、そのような表面改質に適した医療用コーティング剤;および医療用ゴム成形品の表面改質方法に関する。
(A)数平均分子量500〜20,000のポリカーボネートジオール;および
(B)フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、もしくはそれらのオリゴマーである1種または2種以上の芳香族ポリイソシアネート;ならびに/あるいは
(A)と(B)を反応させて得られるプレポリマー
を含むコーティング剤を塗布し、硬化させて、該表面にポリウレタンを主成分とする皮膜を設けたことを特徴とする、表面改質された医療用ゴム成形品に関し;
また、そのような表面改質に適した医療用コーティング剤;および医療用ゴム成形品の表面改質方法に関する。
本発明によって、ゴム成形品の表面に、人体に対する影響が少なく、ゴムからの有害成分の溶出を防ぐとともに、表面に強度および滑り性を与え、殺菌条件にも耐えうる耐湿熱性を有する皮膜を、簡便かつ安価に形成した、表面処理された医療用ゴム成形品が得られる。
本発明の表面処理方法は、複雑な形状の成形品に対しても均一に塗布することが可能なため、金型や成形品の形状に対する制約がなく、広範囲の医療用ゴム成形品に適用できる。そのうえコーティング剤が、皮膜形成のために従来法で用いられる素材に比べて安価であり、周知の方法で成形した各種の医療用ゴム成形品に、前処理なくコーティングして皮膜を形成できるので、経済的にも有利である。
本発明の医療用コーティング剤は、ゴム成形体の表面にコーティングすることによって、医療用の好適なゴム成形品を得ることができるコーティング剤であって、(A)成分と(B)成分を含むか、(A)成分と(B)成分を反応させて得られるプレポリマーを含む。あるいは上記プレポリマーを、(A)成分および/または(B)成分とともに含んでいてもよい。
本発明で用いられる(A)成分は、分子末端にヒドロキシル基を有するポリカーボネートである。ポリカーボネートジオールとしては、ビスフェノールAポリカーボネートジオール、ビスフェノールFポリカーボネートジオールのような芳香族ポリカーボネートジオール;1,4−ブチレンポリカーボネートジオール、1,5−ペンチレンポリカーボネートジオール、1,6−ヘキシレンポリカーボネートジオール、1,4−ブチレングリコールと1,6−ヘキシレングリコールを、炭酸ジメチル、炭酸ジフェニルのような炭酸エステルと共縮合して得られるポリカーボネートジオールのような脂肪族ポリカーボネートジオール;1,4−ジ(メチレン)シクロヘキサンポリカーボネートジオール、デカヒドロナフタレンポリカーボネートジオール、水添ビスフェノールAポリカーボネートジオールのような脂環式ポリカーボネートジオール;ビスフェノールAと1,6−ヘキシレングリコールを炭酸エステルと共縮合して得られるポリカーボネートジオールのような芳香族・脂肪族共重合ポリカーボネートジオール;1,6−ヘキシレングリコールと1,4−シクロヘキサンジメタノールを炭酸エステルと共縮合して得られるポリカーボネートジオールのような脂肪族・脂環式共重合ポリカーボネートジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノールとビスフェノールAを炭酸エステルと共縮合して得られるポリカーボネートジオールのような脂環式・芳香族共重合ポリカーボネートジオール;芳香族・脂肪族・脂環式共重合ポリカーボネートジオールなどが例示され、柔軟で取扱いが容易なことから、脂肪族ポリカーボネートジオール、脂環式ポリカーボネートジオールまたは脂肪族・脂環式共重合ポリカーボネートジオールが好ましく、常温ないし100℃以下で液状であり、ポリウレタン原料として取扱いが容易なこと、ならびにコーティング剤の塗膜強度、ゴム成形品の変形への追随性および滑り性がバランスよく得られることから、脂肪族・脂環式共重合ポリカーボネートジオールが特に好ましい。(A)成分は、ゴム成形品に塗布する際に塗装に適する粘度の溶液が得られ、被膜の形成性および被膜の堅牢性が優れていることから、数平均分子量が500〜20,000であり、800〜5,000が好ましい。
本発明において、被膜のゴムへの密着性および追随性を向上させるために、(A)成分に、その10重量%を限度として、アクリルポリオール、ポリブタジエンジオール、水添ポリブタジエンジオール、ポリイソプレンジオールおよび水添ポリイソプレンジオールからなる群より選ばれるポリオールを併用することができる。これらのうち、アクリルポリオールは、水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマーと水酸基を有しない(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体であり、分子中に平均2個以上、好ましくは平均2〜4個の水酸基を含有する。(A)成分とこれらのポリオールを含めたポリオール1分子あたりの水酸基の数は、柔軟な被膜が得られることから、2.0〜2.2個の範囲が好ましい。
本発明で用いられる(B)成分は、(A)成分と反応してポリウレタンを形成するもので、良好な被膜形成性、および被膜の優れた耐熱性および滑り性を得るために、特定の芳香族イソシアネートを用いる。すなわち、(B)成分としては、p−またはm−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,6−ナフタレンジイソシアネート、2,6−ナフタレンジイソシアネート、2,7−ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;ならびにこれらの芳香族ジイソシアネートのイソシアヌレート体、アロファネート体、ビウレット体などが例示され、入手しやすく、機械的強度の優れた被膜が得られることから、p−フェニレンジイソシアネートおよび1,5−ナフタレンジイソシアネートが好ましく、p−フェニレンジイソシアネートが特に好ましい。(B)成分の1分子あたりの平均官能基数は、優れた塗膜強度およびゴムへの追随性を得るために、2.0〜3.0が好ましい。
本発明においては、上記(A)成分と(B)成分の代わりに、両成分を反応させて得られるプレポリマーを用いることができる。取扱いおよび塗装が容易で、未反応物の揮散やブリードを防止でき、被膜の品質が安定することから、このようなプレポリマーを主成分として用いることが好ましい。また、本発明においては、上記プレポリマーを、(A)成分および/または(B)成分と併用しても差支えない。
本発明のコ−ティング剤の、ゴム成形品の表面改質に用いるコーティング剤の作業性を改善するために、(A)(B)成分に、さらに(C)分子中に活性水素を含まない有機溶媒を配合してもよい。有機溶媒としては、取扱いが容易で、かつ塗布後に残留有機溶媒の量がコーティング層の5,000ppm以下、好ましくは1,000ppm以下になるように、加熱により容易に除去できることから、沸点が30〜180℃の範囲のものが好ましく、また極力毒性の低い有機溶媒を選択することが特に好ましい。(C)成分としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、2,2−ジメトキシプロパン、1,1−ジエトキシプロパンなどのエーテル類;およびn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族または脂環式炭化水素系溶媒などが挙げられ、1種を単独で、もしくは2種以上を混合して使用することができる。
以下の記載を含めて、数式中、A、B、Cはそれぞれ(A)、(B)、(C)成分に対応する当量または重量であり、(A)成分に他のポリオールを併用する場合は、B/A当量比に関しては、Aにそれらのポリオールの当量を加える。また、コーティング剤の一部または全部として(A)成分と(B)成分を反応させて得られるプレポリマーを用いた場合、プレポリマーのうちポリカーボネートジオールに由来する部分を(A)の量、ポリイソシアネートに由来する部分を(B)の量として計算する。
(B)成分の配合量は、優れた塗膜強度およびゴムへの追随性を得るために、(A)と(B)の当量比が通常0.5≦B/A≦4.0の範囲になる量であり、医療用として使用する場合に、医薬品に対し悪影響を及ぼす成分の不純物となりうる成分を副生しないことから、上記当量比が0.5≦B/A≦2.0の範囲が好ましい。さらに、医療用のゴム栓、ゴムパッキンまたはゴム管などに使用する場合に、医薬品に対し悪影響を及ぼす成分が残存せず、また塗布装置が簡便で取扱いが容易なことから、無触媒湿気硬化法が特に好ましい。この場合、空気中の水分(湿気)によって急速に硬化できること、および皮膜形成が容易であり、かつ硬化後に未反応のイソシアナト基が残存しないことから、上記当量比は、1.0<B/A≦2.0になる量が特に好ましい。
(C)成分の配合量は、良好な作業性を得るために、(A)成分と(B)成分の合計量の、(C)成分に対する重量比率が、0.5≦(A+B)/(A+B+C)×100≦70の範囲が好ましく、3.0≦(A+B)/(A+B+C)×100≦30の範囲になる量がさらに好ましい。
本発明によって表面を改質するゴム成形品は、成形して架橋された天然または合成有機ゴムであり、ポリブタジエン、ブタジエンとアクリロニトリル、スチレン、メタクリル酸、ジビニルベンゼンの1種または2種以上との共重合ゴム、ポリイソプレン、ポリクロロプレンのようなジエン系ゴム;エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴムのようなオレフィン系ゴム;イソブチレン−イソプレン共重合ゴム、イソブチレン−塩素化イソプレン共重合ゴム、イソブチレン−臭素化イソプレン共重合ゴムのようなブチル系ゴム;ウレタンゴム;アクリルゴムなどが例示される。
成形は、プレス成形、射出成形、押出成形など、任意の方法で行ってよい。成形品の形状としては、栓、パッキン、シート、膜状物、管、容器など、任意の形状のものに、本発明の方法を適用できる。特に、複雑な構造の栓などに、本発明の方法による表面改質が特に有効である。
コーティング剤の調製およびゴム成形品の表面改質は、たとえば次のように行うことができる。すなわち、(A)、(B)成分および必要に応じて配合される(C)成分その他の成分を、(A)成分と(B)成分が同一容器にならないように別個の容器に保存する。たとえば(B)成分を除く全成分を混合して1個の容器に、(B)成分を別の容器に保存する。これらを、使用直前に混合して、(A)成分と(B)成分を反応させるとともに、ゴム成形品の表面の改質すべき部分に塗布する工程;および硬化させることにより、ゴム成形品の表面に皮膜を形成させる工程を含む方法により、改質を行うことができる。または、上記の両液を、改質すべき表面に同時に塗布し、以下、同様にして皮膜を形成してもよい。本発明においては、原料が固体であっても取扱いが容易なこと、および反応熱の除去が容易なことから、(A)成分と(B)成分を、(C)成分の存在または非存在下に反応させてプレポリマーを形成させ、それをコーティング剤として用いることが好ましい。
硬化は、必要に応じて予備加熱して溶媒を除去した後、通常、無触媒で80〜200℃に1分から2時間加熱することによって行う。または無触媒で、空気中の水分による硬化を行うこともできる。
硬化したコーティング剤は、ゴム成形品の表面の少なくとも1面、すなわち内容物に接触する面、たとえばゴム栓、ゴムパッキンまたはゴム管の内表面を覆い、ゴム成形品からその有害な成分の溶出や、充填剤の脱落を防ぐとともに、平滑で滑り性の良好なコーティング層を形成する。硬化したコーティング層の厚さは、通常0.1〜50μmで充分であり、5〜30μmが好ましい。コーティング層は、耐湿熱性に優れ、通常の滅菌条件、たとえば温度120℃、湿度100%RHで2時間の加熱に耐える。
表面改質は、内容物などに接する少なくとも1面だけ、たとえばゴム栓、ゴムパッキン、ゴム管などの内面だけに行ってもよく、安全上の配慮や、処理の便宜から、その他の面を含めて、たとえば全表面に行ってもよい。ここでいう面とは、平面でも、湾曲面でもよい。
以下、実施例によって、本発明をさらに詳細に説明する。実施例および比較例において、部は重量部を示す。本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
コーティング剤の調製
実施例1
不活性ガス雰囲気下で、1,4−ブチレングリコールと1,6−ヘキシレングリコールを炭酸ジメチルと共縮合して得られた脂肪族共重合ポリカーボネートジオール(Mn=2,000)242.8部、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート57.2部、およびメチルエチルケトン700部を、還流装置の付いた容器に入れ、80℃で5時間加熱還流を行い、ウレタン化反応を行った。JIS K1603に準ずる方法でNCO量を測定し、NCO量が3〜5%の範囲に入ったことを確認して、コーティング剤を調製した。これをただちに評価に供した。
実施例1
不活性ガス雰囲気下で、1,4−ブチレングリコールと1,6−ヘキシレングリコールを炭酸ジメチルと共縮合して得られた脂肪族共重合ポリカーボネートジオール(Mn=2,000)242.8部、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート57.2部、およびメチルエチルケトン700部を、還流装置の付いた容器に入れ、80℃で5時間加熱還流を行い、ウレタン化反応を行った。JIS K1603に準ずる方法でNCO量を測定し、NCO量が3〜5%の範囲に入ったことを確認して、コーティング剤を調製した。これをただちに評価に供した。
実施例2
不活性ガス雰囲気下で、実施例1で用いたのと同じ脂肪族共重合ポリカーボネートジオール(Mn=2,000)261.9部、p−フェニレンジイソシアネート38.1部、およびメチルエチルケトン700部を、還流装置の付いた容器に入れ、実施例1と同様の方法でコーティング剤を調製した。これをただちに評価に供した。
不活性ガス雰囲気下で、実施例1で用いたのと同じ脂肪族共重合ポリカーボネートジオール(Mn=2,000)261.9部、p−フェニレンジイソシアネート38.1部、およびメチルエチルケトン700部を、還流装置の付いた容器に入れ、実施例1と同様の方法でコーティング剤を調製した。これをただちに評価に供した。
実施例3
不活性ガス雰囲気下で、1,4−シクロヘキサンジメタノールと1,6−ヘキシレングリコールを炭酸ジメチルと共縮合して得られた脂肪族・脂環式共重合ポリカーボネートジオール(Mn=2,000)252.0部、1,5−ナフタレンジイソシアネート48.0部、およびメチルエチルケトン700部を、還流装置の付いた容器に入れ、以下、実施例1と同様の方法でコーティング剤を調製した。これをただちに評価に供した。
不活性ガス雰囲気下で、1,4−シクロヘキサンジメタノールと1,6−ヘキシレングリコールを炭酸ジメチルと共縮合して得られた脂肪族・脂環式共重合ポリカーボネートジオール(Mn=2,000)252.0部、1,5−ナフタレンジイソシアネート48.0部、およびメチルエチルケトン700部を、還流装置の付いた容器に入れ、以下、実施例1と同様の方法でコーティング剤を調製した。これをただちに評価に供した。
実施例4
不活性ガス雰囲気下で、実施例3で用いたのと同じ脂肪族・脂環式共重合ポリカーボネートジオール(Mn=2,000)261.9部、p−フェニレンジイソシアネート38.1部、およびメチルエチルケトン700部を、還流装置の付いた容器に入れ、以下、実施例1と同様の方法でコーティング剤を調製した。これをただちに評価に供した。
不活性ガス雰囲気下で、実施例3で用いたのと同じ脂肪族・脂環式共重合ポリカーボネートジオール(Mn=2,000)261.9部、p−フェニレンジイソシアネート38.1部、およびメチルエチルケトン700部を、還流装置の付いた容器に入れ、以下、実施例1と同様の方法でコーティング剤を調製した。これをただちに評価に供した。
比較例1
不活性ガス雰囲気下で、アジピン酸とジエチレングリコールの縮合反応で得たポリエステルジオール(Mn=1,000)218.5部、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート81.5部、およびメチルエチルケトン700部を、還流装置の付いた容器に入れ、実施例1と同様の方法でコーティング剤を調製した。これをただちに評価に供した。
不活性ガス雰囲気下で、アジピン酸とジエチレングリコールの縮合反応で得たポリエステルジオール(Mn=1,000)218.5部、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート81.5部、およびメチルエチルケトン700部を、還流装置の付いた容器に入れ、実施例1と同様の方法でコーティング剤を調製した。これをただちに評価に供した。
比較例2
不活性ガス雰囲気下で、ポリプロピレングリコール(Mn=2,000)242.8部、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート57.2部、およびメチルエチルケトン700部を還流装置の付いた容器に入れ、実施例1と同様の方法でコーティング剤を調製した。これをただちに評価に供した。
不活性ガス雰囲気下で、ポリプロピレングリコール(Mn=2,000)242.8部、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート57.2部、およびメチルエチルケトン700部を還流装置の付いた容器に入れ、実施例1と同様の方法でコーティング剤を調製した。これをただちに評価に供した。
比較例3
不活性ガス雰囲気下で、実施例1で用いたのと同じポリカーボネートジオール(Mn=2,000)260.2部、ヘキサメチレンジイソシアネート39.9部、およびメチルエチルケトン700部を還流装置の付いた容器に入れ、実施例1と同様の方法でコーティング剤を調製した。これをただちに評価に供した。
不活性ガス雰囲気下で、実施例1で用いたのと同じポリカーボネートジオール(Mn=2,000)260.2部、ヘキサメチレンジイソシアネート39.9部、およびメチルエチルケトン700部を還流装置の付いた容器に入れ、実施例1と同様の方法でコーティング剤を調製した。これをただちに評価に供した。
評価
実施例1〜4および比較例1〜3で調製したコーティング剤を、下記のようにゴムシートおよびゴム栓に塗布し、硬化させて、それぞれの表面にポリウレタン皮膜を形成させ、試料とした。
(1)メチルイソブチルケトンを添加することにより、固形分濃度を15%に調整したコーティング剤に、100mm×100mm(厚さ1mm)のブチルゴムシートを浸漬し、80℃で1時間加熱して溶媒を除去した後、さらに120℃で2時間加熱して硬化反応を行い、厚さ約25μmの皮膜を形成させた。
(2)メチルイソブチルケトンを添加することにより、固形分濃度10%に調整したコーティング剤を、図1に断面形状と寸法を示す、医薬用ゴム栓の形状に成形したブチルゴム成形品に、エアスプレーで塗布し、80℃で1時間加熱して溶媒を除去した後、さらに100℃で2時間加熱して硬化させ、厚さ約10μmの皮膜を形成させた。
実施例1〜4および比較例1〜3で調製したコーティング剤を、下記のようにゴムシートおよびゴム栓に塗布し、硬化させて、それぞれの表面にポリウレタン皮膜を形成させ、試料とした。
(1)メチルイソブチルケトンを添加することにより、固形分濃度を15%に調整したコーティング剤に、100mm×100mm(厚さ1mm)のブチルゴムシートを浸漬し、80℃で1時間加熱して溶媒を除去した後、さらに120℃で2時間加熱して硬化反応を行い、厚さ約25μmの皮膜を形成させた。
(2)メチルイソブチルケトンを添加することにより、固形分濃度10%に調整したコーティング剤を、図1に断面形状と寸法を示す、医薬用ゴム栓の形状に成形したブチルゴム成形品に、エアスプレーで塗布し、80℃で1時間加熱して溶媒を除去した後、さらに100℃で2時間加熱して硬化させ、厚さ約10μmの皮膜を形成させた。
ポリウレタン皮膜を形成したゴムシートについて、外観、摩擦力および耐湿熱性の評価を行った。また、ポリウレタン皮膜を形成したゴム栓について、外観および耐湿熱性の評価を行った。ただし、比較例3については、皮膜の状態が著しく悪く、他の評価ができなかった。
評価方法は、下記のとおりである。
外観:ゴムシートおよびゴム栓の、それぞれ乾燥硬化後の状態を観察した。
○ ハジキ、斑がなく、均一な硬化塗膜を形成した。
△ ハジキ、斑がなく、均一な硬化塗膜にはなるが、ベタツキ感があった。
× ハジキ、斑があり、均一な硬化塗膜とならなかった。
摩擦力:JIS K7125に準ずる方法で、静摩擦力を評価した。
23℃、65%RH、荷重500g;
試験片:63mm×63mm;
試験対象物:ガラス板。
ブランク測定値(参考): >50N
耐湿熱性:120℃×100%RH(約0.2MPa)、1時間(オートクレープ)
○ 変化なし
△ 部分的剥離、発泡、ピンホール、クラックが発生した。
× 一部もしくは全部が、変形または脱落した。
溶出試験:日本薬局法(第14改正)に記載された「輸液用ゴム栓試験法」に準じて行った。
評価方法は、下記のとおりである。
外観:ゴムシートおよびゴム栓の、それぞれ乾燥硬化後の状態を観察した。
○ ハジキ、斑がなく、均一な硬化塗膜を形成した。
△ ハジキ、斑がなく、均一な硬化塗膜にはなるが、ベタツキ感があった。
× ハジキ、斑があり、均一な硬化塗膜とならなかった。
摩擦力:JIS K7125に準ずる方法で、静摩擦力を評価した。
23℃、65%RH、荷重500g;
試験片:63mm×63mm;
試験対象物:ガラス板。
ブランク測定値(参考): >50N
耐湿熱性:120℃×100%RH(約0.2MPa)、1時間(オートクレープ)
○ 変化なし
△ 部分的剥離、発泡、ピンホール、クラックが発生した。
× 一部もしくは全部が、変形または脱落した。
溶出試験:日本薬局法(第14改正)に記載された「輸液用ゴム栓試験法」に準じて行った。
実施例3、4および比較例1で調製したコーティング剤を、前述のようにゴム栓状成形品の表面に塗布し、硬化させることにより、同様の皮膜を形成させて、溶出試験を行った。比較のために、無処理のゴム栓をも、溶出試験に供した。その結果は、表2に示すとおりであった。
表1および表2の結果から、ゴムシートおよびゴム栓にウレタン皮膜を形成させることにより、形成・加硫したゴムからの溶出を抑制できた。しかしながら、(A)成分の代わりにポリエステルジオールを用いた比較例1、およびポリエーテルジオールを用いた比較例2のコーティング剤は、いずれも皮膜の耐湿熱性がなく、比較例1では、溶出試験の結果も充分ではなかった。また(B)成分の代わりに脂肪族ジイソシアネートを用いた比較例3では、不完全な皮膜しか得られなかった。それに対して、本発明のコーティング剤は、外観、耐摩擦性、耐湿熱性ともに優れたポリウレタン皮膜を形成することができ、溶出試験の結果も優れていた。
本発明の表面改質されたゴム成形品は、ゴムの機械的性質を保持しつつ、表面に、ゴムからの各種有害物質の溶出を防ぎ、かつ殺菌条件にも耐えうる耐湿熱性を有する皮膜を有する。このような性質から、注射液、点滴液、うがい薬、点眼薬のような液状医薬品;血液、涙液のような体液などに接する医療機器、器具、瓶などの部品、パッキン、栓など;医療機器などのゴム管;試薬や現像液に接する分析機器や容器の部品、パッキン、栓などに極めて好適である。
Claims (11)
- (A)数平均分子量500〜20,000のポリカーボネートジオール、および
(B)フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、もしくはそれらのオリゴマーである1種または2種以上の芳香族ポリイソシアネート;ならびに/あるいは
(A)と(B)を反応させて得られるプレポリマー
を含む、医療用ゴム成形品用コーティング剤。 - (A)が、脂肪族ポリカーボネートジオール、脂環式ポリカーボネートジオールまたは脂肪族・脂環式共重合ポリカーボネートジオールである、請求項1記載のコーティング剤。
- (B)が、p−フェニレンジイソシアネートである、請求項1または2記載のコーティング剤。
- (A)と(B)の当量比が、0.5≦B/A≦2.0の範囲である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコーティング剤。
- (A)と(B)を反応させて得られるプレポリマーを主成分として含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の医療用ゴム成形品用コーティング剤。
- さらに(C)沸点30〜180℃の範囲の、ケトン類、エステル類、エーテル類および脂肪族または脂環式炭化水素からなる群より選ばれる、分子中に活性水素を含まない有機溶媒またはその混合物を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のコーティング剤。
- ゴム成形品の、少なくとも内容物に接する表面に、
(A)数平均分子量500〜20,000のポリカーボネートジオール、および
(B)フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、もしくはそれらのオリゴマーである1種または2種以上の芳香族ポリイソシアネート;ならびに/あるいは
(A)と(B)を反応させて得られるプレポリマー
を含むコーティング剤を塗布し、硬化させて、該表面にポリウレタンを主成分とする皮膜を設けたことを特徴とする、表面改質された医療用ゴム成形品。 - ゴム栓である、請求項7記載の表面改質された医療用ゴム成形品。
- ゴムパッキンである、請求項7記載の表面改質された医療用ゴム成形品。
- ゴム管である、請求項7記載の表面改質された医療用ゴム成形品。
- ゴム成形品の表面の、少なくとも内容物に接する表面に、
(A)数平均分子量500〜20,000のポリカーボネートジオール、および
(B)フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、もしくはそれらのオリゴマーである1種または2種以上の芳香族ポリイソシアネート;ならびに/あるいは
(A)と(B)を反応させて得られるプレポリマー
を含むコーティング剤を塗布する工程と、硬化させて、該表面にポリウレタンを主成分とする皮膜を設ける工程を含むことを特徴とする、医療用ゴム成形品を与える表面改質方法。
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