IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11nの規格に基づいた無線通信が広く行われている。
IEEE 802.11nでは無指向性のアンテナを利用して情報の送受信が行われるようになされており、受信システムの物理レイヤでは、電波の受信時に電波の到来角を検出することができる。しかしながら、受信システムで受信する電波が、送信側から直接届いたものであるか、壁などに反射して届いたものであるかを判別することは容易ではない。例えば、図1に示されるように、送信システム1から送信された電波は、ある到来角で受信システム2により受信されるが、その電波の一部が、たとえば、壁などの障害物3により反射されて、異なる角度から入射された場合、受信システム2により受信される電波は、2つ以上の到来角を有することとなる。
IEEE 802.11nでは、無線通信による高速なデータ転送を実現するための方式として、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式が用いられる。OFDM 変調方式は、マルチキャリア変調方式で、数10から数100または数千の直交した搬送波周波数を持つデジタル変調波を多重した信号を送信する方式である。
すなわち、OFDMの技術に基づいて、上述したように、受信システムの物理レイヤでは、電波の受信時に電波の到来角を検出することができるようになされている。例えば、空間スペクトラムを求めることにより電波の到来角を検出することができるようになされている。
また、希望信号と干渉信号が混在する中で希望信号を抽出したり、チャネルのインパルス応答を測定したりする際に、信号の到来方向を測定する必要性が生じる場合があるので、より詳細に信号の到来角を測定するためのアルゴリズムも存在する。 アレーアンテナを用いて信号の到来方向を推定するアルゴリズムには、例えば、フーリエ変換法、最大エントロピー法、固有値展開に基づく方法などがある。 固有値展開に基づく方法の一つに、MUSIC(MUltiple SIgnal Classi_cation)アルゴリズムを用いて電波の到来角を検出する方法がある(例えば、非特許文献1参照)。
次に、空間スペクトラムを求めることにより電波の到来角を検出する技術と、MUSICアルゴリズムを用いて電波の到来角を検出する技術について説明する。
図2に、M+1個のアンテナ素子からなるアレーアンテナの構成を示す。
アンテナ0からアンテナMで示されるM+1個のアンテナ素子において、アンテナ0の位置を基準として、アンテナ1乃至アンテナMは、それぞれ、距離d1,d2,・・・,dMだけ離れて配置されている。
アレーアンテナで信号の到来角を推定するためにはアンテナ素子の位置と到来波の関係を明らかにする必要がある。
今、アンテナ0には、次の式(1)で表される信号が到達するものとする。
ここで、v(t)は複素帯域信号、s(t)は複素ベースバンド信号、ωc=2πfcはキャリアの角周波数である。そして、式(1)で表された信号と同一の信号は、行路差l1をもってアンテナ1でも受信される。φを信号の到来方向とすると、行路差l1は、次の式(2)で与えられる。
そして、この行路差による到来時間差τは、次の式(3)で与えられる。
ここで、cは光速、λはキャリアの波長である。
したがって、アンテナ1における受信信号は、次の式(4)に示される。
ここで、一般的に、信号s(t)の周期に対してτは非常に短いため、無視することができる。したがって、式(4)は、次の式(5)に書き換えることができる。
1番目のアンテナの周波数変換後の複素ベースバンド信号は、次の式(6)で与えられ、同様にm番目のアンテナの複素ベースバンド信号は、次の式(7)で与えられる。
したがって、各アンテナの受信信号を離散フーリエ変換することにより、次の式(8)および式(9)を得ることができる。
以上の演算処理により、受信信号の空間スペクトラムを得ることができるので、これにより、受信信号の到来角φを求めることができる。
図3に、アンテナ数8であり、半波長等間隔にそれぞれのアンテナが配置されたアレーアンテナに対して、障害物や干渉物のない状態において正面から信号が到来した場合、すなわち、到来角φ=0度における場合の空間スペクトルの一例を示す。
次に、MUSICによる到来方向推定について説明する。
L波の無相関な信号が、図2を用いて説明した、M+1個(ただし、L≦M)のアンテナ素子からなるアレーアンテナに到来した場合、それぞれの到来方向をφlとすると、m番目のアンテナ素子の受信信号rm(t)は、次の式(10)で表される。
ここで、Plのルートは、l波目の信号の電力、sl(t)は、l波目の送信信号,dmは、0番目のアンテナからm番目のアンテナまでの距離、φlは、l番目の信号の到来角、λは波長、nmはm番目のアンテナで受信した際に発生する雑音である。
受信信号の相互相関行列Rは、雑音の分散をσ2とすると、次の式(11)で表される。式(11)において、以下の式(12)、式(13)、および、式(14)が成り立つ。
MUSIC法を用いて到来方向推定を行うには、アレーアンテナの入力信号の相関行列の固有値・固有ベクトルを求めなければならない。ここで、相関行列Rの固有値を、λ0≧λ1≧・・・≧λMとし、SDSHの固有値を、υ0≧υ1≧・・・≧υMとすると、次の式(15)の関係が成り立つ。
すなわち、雑音の分散σ2より大きな固有値の個数が、アンテナアレイに入射した到来信号の数であると推定することが出来る。
例えば、受信信号の相関行列の固有値が、図4に示されるような状態である場合、雑音の分散σ2より大きな固有値の個数は4つであるので、到来信号の数は4であると推定できる。
そして、q0,q1,・・・,qM を、相関行列Rの固有値λ0,λ,・・・,λM に対応した固有ベクトルとすると、次の式(16)に示される関係が導かれる。
そして、MUSICスペクトラムは、次の式(17)で定義される。
MUSICスペクトラムは、式(16)に示される関係から、L個のピークを有する。そして、そのピークに対応するφの値が信号の到来角である。
図5に、3素子アレーアンテナにおいて、到来角10度および30度の信号が受信されている場合における、MUSIC アルゴリズムを適用した場合のシミュレーション結果を示す。このシミュレーションにおいては、雑音は考慮されていないものとする。
以下に本発明の実施の形態を説明するが、本発明の構成要件と、明細書または図面に記載の実施の形態との対応関係を例示すると、次のようになる。この記載は、本発明をサポートする実施の形態が、明細書または図面に記載されていることを確認するためのものである。従って、明細書または図面中には記載されているが、本発明の構成要件に対応する実施の形態として、ここには記載されていない実施の形態があったとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件に対応するものではないことを意味するものではない。逆に、実施の形態が構成要件に対応するものとしてここに記載されていたとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件以外の構成要件には対応しないものであることを意味するものでもない。
本発明の一側面の情報処理装置は、IEEE 802.11nを適用して受信した情報を基に処理を実行する情報処理装置(例えば、図8の受信装置31または図15の送受信装置141、もしくは、そのうちの少なくとも一部により構成されるブロック)であって、受信信号を取得し、前記受信信号の電波の到来角を計測する到来角計測手段(例えば、図8または図15の到来角計測部44)と、前記受信信号の周波数に対する信号強度の関係から、フェージングの発生状況を解析することにより、前記到来角計測手段による前記到来角の計測結果の信頼性を推定する信頼性推定手段(例えば、図8または図15の到来角信頼性推定部45)と、前記到来角計測手段による前記到来角の計測結果を利用した処理を実行または制御する処理手段(例えば、図8または図15のデジタル信号処理部46)とを備え、前記処理手段は、前記推定手段により、前記到来角の計測結果の信頼性が高いと判断された場合、前記到来角計測手段による前記到来角の計測結果を利用した処理を実行または制御し、前記推定手段により、前記到来角の計測結果の信頼性が低いと判断された場合、前記到来角計測手段による前記到来角の計測結果を利用した処理を禁止する。
前記信頼性推定手段は、フェージングによるディップの発生(例えば、図10または図12におけるディップの深さα)に基づいて、前記到来角計測手段による前記到来角の計測結果の信頼性を推定することができる。
前記信頼性推定手段は、前記ディップを検出する検出手段(例えば、図13の信号強度解析部91)と、前記検出手段により検出された前記ディップの大きさと所定の閾値(例えば、図13の閾値記憶部93に記憶されている閾値)とを比較して、前記ディップが前記閾値よりも大きい場合、前記到来角の計測結果の信頼性が低いと推定する比較手段(例えば、図13の比較部94)とを備えることができる。
前記信頼性推定手段による前記到来角の計測結果の信頼性の推定結果を出力する出力手段(例えば、図14の到来角解析結果出力部126)を更に備えることができる。
前記受信信号を受信する受信手段(例えば、図8または図15のアンテナ41およびRxRF部42)を更に備えることができる。
前記処理手段による制御に基づいて、他の装置に情報を送信する送信手段(例えば、図15のアンテナ41およびTxRF部162)を更に備えることができる。
本発明の一側面の情報処理方法は、IEEE 802.11nを適用して受信した情報を基に処理を実行する情報処理装置(例えば、図8の受信装置31または図15の送受信装置141、もしくは、そのうちの少なくとも一部により構成されるブロック)の情報処理方法であって、受信信号を取得し(例えば、図16のステップS1の処理)、前記受信信号の電波の到来角を計測し(例えば、図16のステップS4の処理)、前記受信信号の周波数に対する信号強度の関係から、フェージングの発生状況を解析し(例えば、図17のステップS31乃至ステップS34の処理)、前記フェージングの発生状況に基づいて前記到来角の計測結果の信頼性を推定し(例えば、図17のステップS35乃至ステップS37の処理)、前記到来角の計測結果の信頼性が高いと判断された場合、前記到来角の計測結果を利用した処理を実行または制御し(例えば、図16のステップS7の処理)、前記到来角の計測結果の信頼性が低いと判断された場合、前記到来角の計測結果を利用した処理の実行を禁止する(例えば、図16のステップS8の処理)ステップを含む。
本発明の一側面のプログラムは、IEEE 802.11nを適用して受信した情報を基に実行される処理を制御する処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、取得された受信信号の電波の到来角の計測を制御し(例えば、図16のステップS4の処理)、前記受信信号の周波数に対する信号強度の関係から、フェージングの発生状況の解析を制御し(例えば、図17のステップS31乃至ステップS34の処理)、前記フェージングの発生状況に基づいて前記到来角の計測結果の信頼性を推定し(例えば、図17のステップS35乃至ステップS37の処理)、前記到来角の計測結果の信頼性が高いと判断された場合、前記到来角の計測結果を利用した処理の実行を制御し(例えば、図16のステップS7の処理)、前記到来角の計測結果の信頼性が低いと判断された場合、前記到来角の計測結果を利用した処理を禁止する(例えば、図16のステップS8の処理)ステップを含む処理をコンピュータに実行させる。
以下、図を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
ここでは、例えば、IEEE 802.11nの様な、データの送受信に複数のアンテナ用い、複数の搬送波を利用して通信を行うシステムを想定し、受信された信号の到来角によって、所定の処理を実行するアプリケーションを実行可能な、または、制御可能な装置について説明する。
この装置は、IEEE 802.11nで用いられるOFDM変調方式の性質に着目し、OFDM変調方式で生じる周波数選択性フェージングの状況を解析する機能を有する。この装置は、フェージングの状況を解析し、解析結果に基づいて、受信電波が送信側の装置から、例えば、壁などの障害物に反射されずに到達したか否かを判断することができる。
上述したように、無線通信による高速なデータ転送を実現するための方式として、OFDM 変調方式がよく知られている。この変調方式は、DFT(Discrete Fourier Transform;離散フーリエ変換)を利用しており、複数の搬送波を用いて情報を授受するので、周波数選択性フェージングに強い。
相対する2つの通信装置のアンテナ間に大きな障害がなく、強い反射波のない状況では、周波数選択性フェージングの影響をほとんど受けないため、周波数と電界強度の関係は、図6に示されるようになる。これに対して、OFDMを用いてデータを転送する際に伝送路中の障害物などによってマルチパスフェージングの影響を強く受ける場合、搬送波のいくつかが位相変動を起こす場合がある。この様な場合、図7に示すように、特定の周波数を持つ搬送波の受信電力が低下する現象が生じる。この様な現象は周波数選択性フェージングと称され、受信電力が大きく落ち込んだ部分はディップと称される。周波数選択性フェージングが生じると、特定の搬送波でのビット誤り率が上昇しバーストエラーを生じる。
IEEE 802.11nで用いられるOFDM変調方式においては、周波数選択性フェージングの発生による受信効率の低下を避けるために、空間的に離して配置した複数のアンテナで搬送波を受信し、受信電力の強い信号を利用して受信処理を行うアンテナダイバーシティや、同一のシンボルを複数の搬送波で転送する周波数ダイバーシティなどの手法が用いられる。
このようにして、IEEE 802.11nで用いられるOFDM変調方式においては、周波数選択性フェージング環境下でも高い受信効率を実現することができる。そして、以下に説明する装置においては、周波数選択性フェージングの状況の解析結果は、信号の受信状態の検出や受信効率の向上とは異なる目的のために利用される。
すなわち、以下に説明する装置においては、電波が到来する角度の検出結果の信頼性があるか否かを判断するために、周波数選択性フェージングの状況の解析結果が用いられるようになされている。
図8に、電波が到来する角度を計測し、計測結果に信頼性があるか否かを推定する機能を有する装置の一例である受信装置31のブロック図を示す。受信装置31は、電波の到来角の計測を行うとともに、OFDM変調方式で生じる周波数選択性フェージングの状況を解析して、到来角の計測結果の信頼性を求め、その結果に基づいて、到来角情報を利用するアプリケーションの動作を制御する。
受信装置31は、アンテナ41、RxRF部42、OFDM復調部43、電波到来角計測部44、到来角信頼性推定部45、および、デジタル信号処理部46を含んで構成されている。
アンテナ41は、図示しない送信装置から送信された信号を受信する。
RxRF部42は、アンテナ41から供給された受信チャンネルの信号を、IF(中間信号) に変換し、OFDM復調部43に供給する。
OFDM復調部43は、供給されたIF信号に対して、例えば、周波数オフセットや、GI(Guard Interval)除去、フーリエ変換、チャネル補償、デインターリーブ、ビタビ復号などの処理を施すことにより、信号の復調を行い、TS(トランスポートストリーム)と称されるデジタル信号を抽出する。TS 信号は、デジタル信号処理部46へ供給される。また、OFDM復調部43は、電波到来角計測の計測に必要な情報を電波到来角計測部44に供給する。電波到来角計測の計測に必要な情報は、電波到来角計測部44の計測方法によって異なるが、例えば、IF信号そのものであっても、フーリエ変換後のデータなど、復号処理途中のデータであってもよい。
電波到来角計測部44は、各搬送波の受信信号から電波の到来角を計測する。到来角の計測方法は、例えば、上述したように、空間スペクトラムを求めることにより電波の到来角を計測する方法を用いるなど、少なくとも、干渉物や障害物のない信号受信状態、すなわち、到来角が1つのみである場合に、正しい到来角を検出することが可能であれば、いずれの方法であっても良い。なお、複数の到来角を検出可能なMUSICアルゴリズムを用いて到来角を計測する必要はないが、電波到来角計測部44において実行される到来角の計測方法として、MUSICアルゴリズムを排除するものではない。電波到来角計測部44は、到来角の計測結果と、到来角の計測結果の信頼性を求めるために必要な情報を、到来角信頼性推定部45に供給する。
到来角信頼性推定部45は、各搬送波における信号強度を解析し、信号強度の分布状況から、電波到来角計測部44における到来角の計測結果の信頼性を推定する。
到来角の計測結果の信頼性の推定方法の詳細については後述する。計測された到来角とその信頼性の推定結果を示す情報は、到来角情報として、デジタル信号処理部46に供給される。
デジタル信号処理部46は、OFDM復調部43から供給された復調信号に所定の処理を施し、ユーザに各種サービスを提供するための処理を実行する。デジタル信号処理部46は、例えば、供給された復調信号を、音声情報や映像情報などに変換して再生出力したり、適切なデバイスへと出力する機能を有する。デジタル信号処理部46に供給される復調信号は、OFDM変調方式を用いて送受信された信号である。上述したように、OFDM変調方式においては、周波数選択性フェージングの発生による受信効率の低下を避けるために、空間的に離して配置した複数のアンテナで搬送波を受信し、受信電力の強い信号を利用して受信処理を行うアンテナダイバーシティや、同一のシンボルを複数の搬送波で転送する周波数ダイバーシティなどの手法が用いられているため、エラーの少ない良好な情報を取得することが可能なようになされている。
また、デジタル信号処理部46では、到来角の計測結果に信頼性があると推定される場合、到来角の計測結果に基づいて、特定の機能を実行するか、または、他の装置による特定の機能の実行を制御することができるようになされている。
上述したように、相対する2つの通信装置のアンテナ間に大きな障害がなく、強い反射波のない状況では、周波数選択性フェージングの影響は少ないため、周波数と電界強度の関係は、図6に示されるようになる。受信システムでの電波の受信状況がこのような場合は搬送波のほとんど全てが直接到来しているものと判断することができ、電波の到来角を利用してユーザに所定のサービスを提供するための処理を実行または制御してもエラーは発生しない。
電波の到来角を利用して所定のサービスをユーザに提供することが可能なシステムとしては、例えば、図示しない送信装置をリモートコントローラ、または、リモートコントローラの機能を有する装置であるものとし、受信装置31が、例えば、テレビジョン受像機、オーディオプレイヤ、または、エアーコンディショナー(エアコン)などの被制御装置であるか、これらの被制御装置に送信される制御信号を受信して被制御装置に供給する装置であるか、または、これらの被制御装置に送信される制御信号を受信して被制御装置を制御する装置であるものとしたシステムなどが考えられる。これらのシステムにおいては、リモートコントローラとして用いられる送信装置の向きと被制御装置に対する制御の内容とを対応付けることにより、リモートコントローラのボタンの数を減少させたり、送信するコマンドの種類を減らすようにすることができる。
具体的には、例えば、被制御装置がオーディオプレイヤであるとき、再生位置の巻き戻し、または、早送りを実行するために、送信装置に早送りと巻き戻しのそれぞれを指令するためのボタンを用意するのではなく、所定のボタンを押下しながら、送信装置を右に傾けたときに早送り、左に傾けたときに巻き戻しが指令されるようにしても良い。また、同様にして、被制御装置がテレビジョン受像機であるとき、送信装置の向きとチャンネルや音量の変化とを対応付けて指令することができるようにしても良いし、被制御装置がエアーコンディショナーであるとき、送信装置の向きと設定温度などの設定変更の指示とを対応付けて指令することができるようにしても良い。受信装置31は、電波到来角の変化を検出し、電波到来角の計測結果の信頼性が高いときのみ、対応する指令を受けて、動作の実行を制御することができるものとする。
また、信号の到来角を利用したアプリケーションを実行する送受信のシステムの他の例としては、例えば、送信アンテナと受信アンテナが正対している、すなわち、電波到来角が0度である場合にのみ、特定の処理を行うシステムなども考えられる。例えば、図示しない送信装置をリモートコントローラ、または、リモートコントローラの機能を有する装置であるものとし、受信装置31が、例えば、録画装置、録画装置を制御する機能を有する装置、または、録画装置を制御する制御信号を受信する機能を有する装置などであるものとして、リモートコントローラとして用いられる送信装置を受信装置31の正面から受信装置31に向けた場合(すなわち、到来角が0度のとき)に、例えば、録画開始および終了時刻やチャンネル情報など、録画処理に必要な情報が受信装置31に送信されるものとしたり、通常は指向性を有することなく無線通信を行う装置において、所望の場合にのみ、指向性を有する情報の送受信を行うように(例えば、到来角が0度のとき以外は、受信信号をキャンセルするように)制御させるようにすることができる。
例えば、図示しないリモートコマンダから、所定のパラメータを送信信号の到来角に基づいて変更させる指令を受けた場合、デジタル信号処理部46では、到来角の計測結果の信頼性が高いときのみ、到来角に基づいてパラメータの設定を変更する。また、図示しないリモートコマンダから、到来角0度のときのみ送受信可能な情報を取得した場合、デジタル信号処理部46では、到来角の計測結果の信頼性が高く、到来角の計測結果が0度またはその近傍の所定範囲の値であったときのみ、受信された情報に基づいた処置が実行される。
このようにすることにより、送信するべき情報以外に通信状態を検証したり電波到来角の計測結果の信頼性を検証するための信号を別途送受信することなく、必要な情報を送信するのみで、その送信信号を受信した装置において、電波到来角の計測とその信頼性の推定を実行することができる。
次に、到来角信頼性推定部45による到来角の計測結果の信頼性の推定方法について説明する。
相対する2つの通信装置のアンテナ間に大きな障害がなく、強い反射波のない状況では、周波数選択性フェージングの影響は少ないため、周波数と電界強度の関係は、上述した図6を用いて説明したようになる。電波の受信状況がこのような場合は、搬送波のほとんど全てが直接到来しているものと判断することができ、電波到来角計測部44において計測された電波の到来角は正しいものであると推定される。すなわち、デジタル信号処理部46が、電波到来角計測部44において検出された電波の到来角を利用した処理を実行するか、または、実行を許可しても、エラーが発生しない。
また、送信側アンテナ61から送出された送信電波の一部が、障害物63によって、他の電波とは異なる角度をもって受信側アンテナ62に受信された場合、上述したディップが発生する。例えば、図9に示されるように、送信側アンテナ61および受信側アンテナ62の2つのアンテナの間に障害物63が存在するものの、2つのアンテナから距離が離れているような場合、遅延波の伝搬距離が長くなるために、遅延波の信号の減衰が大きくなり、その遅延量も大きくなるので、障害物63の存在が通信に与える影響は小さいものでしかなく、図10に示されるように、ディップの深さαの値が小さなディップが検出されるのみである。
図10に示されるように、ディップの深さαの値が小さなディップが検出される場合においては、周波数選択性フェージングの影響が少ないと判断することができるため、デジタル信号処理部46において、電波の到来角を応用したサービスを実行するか、または、実行を許可しても、エラーが発生することはない。このような場合においては、到来角信頼性推定部45は、電波到来角計測部44において検出された電波の到来角の計測結果の信頼性が高いと判断する。
また、例えば、図11に示される様に、障害物63が受信側アンテナ62に近い場合などには、遅延波の遅延波の伝搬距離が短くなり、遅延波の信号の減衰が小さく、遅延量も小さいため、フェージングの影響を強く受けることになり、図12に示されるように、深さαの値の大きなディップが複数検出される。
このような場合には、デジタル信号処理部46において実行される処理に、電波の到来角の情報を利用すると、エラーが発生してしまう可能性が高くなってしまう。到来角信頼性推定部45は、電波到来角計測部44において検出された電波の到来角の計測結果の信頼性が低いと判断し、デジタル信号処理部46に対して、電波の到来角を応用したサービスを提供するための処理を実行しないか、または、他の装置に対して電波の到来角を応用したサービスを提供するための処理の実行を禁止するように制御する。
図13は、到来角信頼性推定部45の機能構成を示す機能ブロック図である。
到来角信頼性推定部45は、信号取得部81、ディップ解析処理部82、信号到来角情報取得部83、および、到来角情報出力部84の機能を有している。
信号取得部81は、電波到来角計測部44から、例えば、図6、図7、図10および図12を用いて説明したような、ディップを解析するために用いられる搬送波信号、または、搬送波信号を得るために必要な信号を取得し、ディップ解析処理部82に供給する。
ディップ解析処理部82は、受信信号のフェージングの解析を行うものであり、信号強度解析部91、閾値設定部92、閾値記憶部93、比較部94の機能を有している。
信号強度解析部91は、信号取得部81から供給された信号を基に搬送波信号の強度を解析し、図10および図12において説明したディップの深さαを検出し、比較部94に供給する。
具体的には、信号強度解析部91は、受信した全ての搬送波の信号強度を計測し、最も強い信号強度と、それ以外の強度信号との差をディップの深さαとして検出する。信号強度解析部91は、例えば、最も強い信号強度と最も弱い強度信号との差のみを検出するものであっても良いし、最も強い信号強度よりも所定の値以上弱い信号強度との差を検出するものであっても良いし、所定の単位計測時間において所定のサンプリングレートで取得されるそれぞれの信号強度との差を全て検出するものであっても良い。
閾値設定部92は、ディップの深さαを基に、到来角の解析結果に信頼性があるか否かを判定するための所定の閾値の値を設定し、閾値記憶部93に記憶する。閾値の値は、ユーザにより設定可能なようにしても良いし、装置により予め設定されるものであっても良いし、到来角の情報を用いる処理において必要とされている到来角の精度などに基づいて、デジタル信号処理部46の制御により設定されるものであっても良い。
閾値記憶部93は、閾値設定部92により設定された閾値を記憶する。
比較部94は、信号強度解析部91により検出されたディップの深さαと、閾値記憶部93により記憶されている閾値を比較し、比較結果をもとに、ディップの深さαが大きい場合には、この搬送波はマルチパスフェージングの影響を強く受けており、到来角の計測結果の信頼性はないと判断し、ディップ深さαが小さい場合には、到来角の計測結果の信頼性はあると判断し、判断結果を到来角情報出力部84に供給する。
比較部94により実行される比較処理は、例えば、信号強度解析部91により検出されたディップの深さαのうちの最も大きな値のものと所定の閾値とを比較するものであっても良いし、ディップの深さαの合計と所定の閾値とを比較するものであってもよいし、ディップの深さαのそれぞれと閾値とを比較して閾値以上の大きさであったディップの深さαの数を求めても良い。また、これ以外にも、例えば、閾値記憶部93に記憶される閾値を2つ用意し、第1の閾値以上となるディップの深さαのみを抽出し、抽出されたディップ深さαの合計を第2の閾値と比較するものとしても良い。
また、比較部94は、特に到来角の計測結果の信頼性がないと推定される場合、到来角の計測結果の信頼性が全くないのか、または、もう少し受信装置が移動したり、障害物が除去されたら信頼性が回復するレベルであるかなどをユーザが認識することが可能となるように、閾値との差を示す値や、最も大きなディップの深さαの値など、到来角の計測結果の信頼性の度合いを示すことが可能な情報を、到来角情報出力部84に供給するものとしても良い。
信号到来角情報取得部83は、電波到来角計測部44から、電波到来角の計測結果を取得し、到来角情報出力部84に供給する。
到来角情報出力部84は、ディップ解析処理部82の比較部94から供給された到来角の計測結果の信頼性の判定結果に基づいて、デジタル信号処理部46に対して、電波到来角の計測結果に信頼性がある場合には、信号到来角情報取得部83から供給された到来角の情報を供給し、電波到来角の計測結果に信頼性がない場合には、電波到来角の計測結果に信頼性がないことを通知する。
また、到来角情報出力部84は、特に到来角の計測結果の信頼性がないと推定される場合、到来角の計測結果の信頼性の度合いを示すことが可能な情報を、デジタル信号処理部46に供給しても良い。
図14は、デジタル信号処理部46の機能構成を示す機能ブロック図である。
デジタル信号処理部46は、復調信号処理部121、アプリケーション実行処理部122、到来角計測および信頼性推定制御部123、到来角情報取得部124、アプリケーション実行制御部125、並びに、到来角解析結果出力部126の機能を有している。
復調信号処理部121は、OFDM復調部43から供給された復調信号に所定の処理を施して、アプリケーション実行処理部122に供給する。具体的には、復調信号処理部121は、例えば、音声や映像を再生出力したり、適切なデバイスへと出力するために、供給された復調信号を、音声情報や映像情報へと変換し、アプリケーション実行処理部122に供給したり、他の装置から送信された制御信号に基づいた処理を実行させるために、供給された復調信号に適切な処理を施して、アプリケーション実行処理部122に供給する。
アプリケーション実行処理部122は、復調信号処理部121から供給された受信信号に対応する情報を基に、所定のアプリケーションを実行するか、または、他の装置において実行される所定のアプリケーションの動作を制御する。アプリケーション実行処理部122により実行または制御される処理には、例えば、上述したリモートコントローラと被制御装置において実行される制御処理などのような、信号の到来角を利用したアプリケーションも含まれる。アプリケーション実行処理部122は、自分自身、または、制御する他の装置により、信号の到来角を利用したアプリケーションの実行が開始されたとき、信号の到来角を利用したアプリケーションが実行されることを、到来角計測および信頼性推定制御部123に通知する。
到来角計測および信頼性推定制御部123は、アプリケーション処理部122により信号の到来角を利用したアプリケーションの実行が開始されたとき、電波到来角計測部44および到来角信頼性推定部45を制御して、電波の到来角の計測およびその信頼性の推定処理を実行させる。
到来角情報取得部124は、到来角信頼性推定部45から供給された到来角情報を取得し、アプリケーション実行制御部125および到来角解析結果出力部126に供給する。すなわち、到来角情報取得部124は、到来角信頼性推定部45の処理により到来角の計測結果の信頼性があると推定された場合には到来角の情報を取得し、到来角の計測結果の信頼性がないと推定された場合には信頼性がないことを示す通知を取得して、アプリケーション実行制御部125および到来角解析結果出力部126に供給する。また、到来角情報取得部124は、特に到来角の計測結果の信頼性がないと推定された場合、到来角の計測結果の信頼性の度合いを示すことが可能な情報を更に取得した場合、この情報も、アプリケーション実行制御部125および到来角解析結果出力部126に供給する。
アプリケーション実行制御部125は、到来角情報取得部124により取得された到来角情報を基に、アプリケーション実行処理部122による到来角の情報を利用したアプリケーションの実行を制御する。
すなわち、アプリケーション実行制御部125は、検出された電波の到来角の計測結果の信頼性が高い場合には、アプリケーション実行処理部122を制御して、電波到来角の情報を利用した処理の実行を許可するが、通信が周波数選択性フェージングの影響を強く受ける場合、検出された電波の到来角の計測結果の信頼性は低いため、アプリケーション実行処理部122を制御して、電波到来角の情報を利用した処理を禁止させるようにしたり、必要に応じて、ユーザに通知させるなどの処理を実行させる。
到来角解析結果出力部126は、到来角情報取得部124から供給された到来角情報を基に、または、アプリケーション実行処理部122の制御に基づいて、到来角の計測結果、または、到来角の計測結果の信頼性の推定結果を出力する。到来角解析結果出力部126による到来角の解析結果の出力は、到来角情報取得部124から到来角情報の供給を受けた場合に常時行われるものであっても、アプリケーション実行処理部122により実行されるアプリケーションの制御によるものであっても、それらの組み合わせであっても良い。
具体的には、到来角解析結果出力部126は、例えば、装置外部に備えられたLED(Light Emitting Diode)などの点灯、消灯、または、点滅、もしくは、これらの組み合わせなどを制御することにより、到来角の計測結果の信頼性に関する情報を、ユーザに常時通知することができるようにしても良い。また、到来角解析結果出力部126は、到来角の計測結果の信頼性がない場合にのみ、所定の表示装置を用いて、または、音声メッセージなどにより、到来角の計測結果の信頼性の度合いを示す情報をユーザに通知することができるようにしても良い。
例えば、ユーザは、エラーメッセージなどを参照して、受信装置31または図示しない送信装置の位置を変更したり、その間や周辺に存在する障害物などを取り除いたりすることが考えられる。このとき、到来角解析結果出力部126により、到来角の計測結果の信頼性の度合いを示す情報がユーザに通知されるようになされていた場合、ユーザによって行われた解決策によって到来角の情報の信頼性が回復されたか否かをユーザが確認することが可能である。
また、以上説明した処理においては、MAC層の技術にIEEE 802.1 に準じるものを想定している。IEEE 802.11においては、データフレームは、送信ノード(すなわち、図示しない送信装置)のみならず受信ノード(すなわち、受信装置31)からも送信される。すなわち、受信ノードから送信ノードに対して、データフレームの確認応答が送信される。また、通信装置として、送信ノードまたは受信ノードのいずれかの機能のみを有するものばかりでなく、両方の機能を有するものがあることは言うまでもない。したがって、上述した受信装置31と同様の処理は、情報の送受信が可能な送受信装置の受信処理においても実行可能である。
図15は、電波が到来する角度の検出結果の信頼性があるか否かを判断する機能を有する装置の異なる例である、送受信装置141の構成を示すブロック図である。
なお、図8を用いて説明した受信装置31における場合と対応する部分には同一の符号を付してあり、その説明は適宜省略する。
すなわち、送受信装置141は、新たに、OFDM符号化部161およびTxRF部162が設けられている以外は、基本的に、図8を用いて説明した受信装置31と基本的に同様の構成を有している。
OFDM符号化部161は、デジタル信号処理部46により実行される処理により生成された送信データに対して、畳み込み符号化、インタリーブ、逆フーリエ変換、GI挿入などの所定の処理を施し、生成された符号化データを、TxRF部162に供給する。
TxRF部162は、OFDM符号化部161から供給された符号化データを、送信チャネルのRF信号に変換し、アンテナ41に供給して送信させる。
そして、送受信装置141において、情報の受信、電波到来角の計測、および、検出された到来角の計測結果の信頼性の推定に関しては、図8を用いて説明した受信装置31における場合と基本的に同様の構成により、同様の処理が実行されるものである。
また、送受信装置141においては、デジタル信号処理部46により実行されるアプリケーションにより、他の装置に情報を送信することができるので、デジタル信号処理部46のアプリケーション実行処理部122は、所定の他の装置と情報を授受し、受信信号の到来角を利用する処理を実行して到来角の計測結果の信頼性が無いと判断された場合、その信号を送信した相手側の装置に対して、到来角の計測結果の信頼性がないのでアプリケーションを実行することができないことを示す情報を送信することが可能となる。また、そのときに、到来角の計測結果の信頼性の度合いを示す情報も、相手側の装置に対して送信するようにしても良い。
また、上述した受信装置31は、情報を受信し、その受信電波の到来角の検出、および、検出された到来角の計測結果の信頼性の推定を行うことが可能なようになされていた。したがって、例えば、リモートコマンダと、リモードコマンダからユーザ操作を示す情報を取得する、テレビジョン受像機やエアーコンディショナーなどの装置により構成されるシステムにおいて、電波到来角の情報を利用するサービスをユーザに提供することができるようになされていた場合、リモートコマンダが、図示しない送信装置に該当し、リモードコマンダからユーザ操作を示す情報を取得するテレビジョン受像機やエアーコンディショナーなどの被制御装置が、受信装置31に該当した。
これに対して、送受信装置は、他の装置と相互に信号を送受信することが可能であるので、上述したシステムでリモートコマンダと被制御装置間で情報の授受が相互に行われる場合において、送受信装置141をリモートコマンダに適用することが可能である。
リモートコマンダの機能を有する送受信装置141は、随時、または、所定のタイミングで、図示しない被制御装置からの送信電波を基に、信電波の到来角の検出、および、検出された到来角の計測結果の信頼性の推定を行い、到来角の計測結果の信頼性が高いときのみ、例えば、リモートコマンダの向きの変化による、チャンネル、音量、または、温度、湿度などの設定の変更など、電波到来角の情報を利用するサービスの実行を可能なようにすることができる。
図16のフローチャートを参照して、受信装置31または送受信装置141において実行される、情報受信処理について説明する。
ステップS1において、アンテナ41は、信号を受信して、RxRF部42に供給する。RxRF部42は、受信RF信号をIF信号に変換して、OFDM復調部43に供給する。OFDM復調部43は、所定の処理により、受信信号を復調し、OFDM信号の復調搬送波を抽出し、デジタル信号処理部46に供給するとともに、電波の到来角の計測に必要な情報を、電波到来角計測部44に供給する。
ステップS2において、デジタル信号処理部46のアプリケーション実行処理部122は、信号の到来角を利用する処理が実行されるか否かを判断する。
ステップS2において、信号の到来角を利用する処理が実行されないと判断された場合、ステップS3において、デジタル信号処理部46の復調信号取得部121は、受信データを解析し、アプリケーション実行処理部122は、所定の処理を実行し、処理が終了される。
ステップS2において、信号の到来角を利用する処理が実行されると判断された場合、ステップS4において、デジタル信号処理部46のアプリケーション実行処理部122は、到来角計測および信頼性推定制御部123に、信号の到来角を利用する処理が実行されることを通知する。到来角計測および信頼性推定制御部123は、電波到来角計測部44および到来角信頼性推定部45を制御して、電波の到来角の計測およびその信頼性の推定処理の実行を開始させる。電波到来角計測部44は、信号の到来角を解析する。
ステップS5において、図17を用いて後述するディップ解析処理が実行される。
ステップS6において、到来角情報取得部124は、ステップS5において実行されるディップ解析処理の結果を取得し、アプリケーション実行制御部125に供給する。アプリケーション実行制御部125は、供給されたディップ解析処理の結果を基に、到来角の検出結果の信頼性は高いか否かを判断する。
ステップS6において、到来角の検出結果の信頼性は高いと判断された場合、ステップS7において、アプリケーション実行制御部125は、アプリケーション実行処理部122による到来角の情報を利用したアプリケーションの実行を許可し、到来角の情報を、アプリケーション実行処理部122に供給する。アプリケーション実行処理部122は、信号の到来角を利用した処理を実行するか、または、他の装置を制御して実行させ、処理が終了される。
ステップS6において、到来角の検出結果の信頼性は低いと判断された場合、ステップS8において、アプリケーション実行制御部125は、アプリケーション実行処理部122による到来角の情報を利用したアプリケーションの実行を許可しない。アプリケーション実行処理部122は、所定の代替処理を実行するか、または他の装置を制御して代替処理を実行させ、処理が終了される。
なお、所定の代替処理には、例えば、ユーザに対して、アプリケーションのエラーメッセージや、通信状況を改善するために受信装置の移動を促すメッセージなどを通知する処理や、所定の表示装置を用いて、または、音声メッセージなどにより、到来角の計測結果の信頼性の度合いを示す情報をユーザに通知する処理などがある。
このような処理により、信号の到来角を利用する処理が実行される場合、到来角の計測と、その計測結果の信頼度の推定が実行され、信頼度の高いときのみ、到来角の情報が利用されるので、障害物などの存在により発生する電波到来角の誤検出によるエラー処理を防止することが可能となる。
次に、図17のフローチャートを参照して、図16のステップS5において実行される、ディップ解析処理について説明する。
ステップS31において、到来角信頼性推定部45の信号取得部81は、電波到来角計測部44から、例えば、図6、図7、図10および図12を用いて説明したような、ディップを解析するために用いられる搬送波信号、または、搬送波信号を得るために必要な信号を取得し、ディップ解析処理部82に供給する。ディップ解析処理部82の信号強度解析部91は、受信した全ての搬送波の信号強度を取得する。
ステップS32において、信号強度解析部91は、取得した搬送波の信号強度の最大値を検出する。
ステップS33において、信号強度解析部91は、取得した搬送波の信号強度の最小値を検出する。
ステップS34において、信号強度解析部91は、信号強度の最大値と最小値の差分α、すなわち、図10および図12において説明したディップの深さαを算出し、比較部94に供給する。
ステップS35において、比較部94は、閾値記憶部93により記憶されている閾値Sを読み出して、信号強度解析部91により検出された差分αと、閾値記憶部93から読み出された閾値Sとを比較し、差分α<閾値Sであるか否かを判断する。
ステップS35において、差分α<閾値Sであると判断された場合、ステップS36において、比較部94は、到来角の計測結果の信頼性は高いものであると判断し、判断結果を到来角情報出力部84に供給して、処理は、図16のステップS5に戻り、ステップS6に進む。
ステップS35において、差分α<閾値Sではないと判断された場合、ステップS37において、比較部94は、到来角の計測結果の信頼性は低いものであると判断し、判断結果を到来角情報出力部84に供給して、処理は、図16のステップS5に戻り、ステップS6に進む。
このような処理により、周波数に対する信号強度のディップが解析されて、簡単な処理で、到来角の計測結果の信頼性の有無を推定することができる。
なお、ここでは、信号強度の最大値と最小値の差分をディップの深さαとして、閾値Sと比較するものとしたが、例えば、ステップS35における比較処理は、複数のディップの深さαの合計と所定の閾値とを比較するものであってもよいし、ディップの深さαのそれぞれと閾値とを比較して閾値以上の大きさであったディップの深さαの数を求めても良い。また、これ以外にも、例えば、閾値記憶部93に記憶される閾値を2つ用意し、第1の閾値以上となるディップの深さαのみを抽出し、その合計を第2の閾値と比較するものとしても良い。
以上説明した構成によって、受信信号の強度からディップの発生を検出し、それを基に、例えば、空間スペクトラムを求めることなどにより検出された、受信電波の到来角の検出結果の信頼性の有無を判定することができる。
これにより、受信電波の到来角の情報を利用する処理、換言すれば、通信機器の相対的な角度によって異なるサービスを提供するシステムにおいて、到来角の計測結果の信頼性が十分高い場合に電波到来角に基づくサービスを実行し、到来角の計測結果の信頼性が十分でない場合、電波到来角に基づくサービスを実行せずに代替処理を実行させることができ、障害物などの存在により発生する電波到来角の誤検出によるエラー処理を防止することが可能となる。
また、以上の説明においては、受信装置31および送受信装置141を例として、受信電波の到来角の情報を利用するシステムにおいて、到来角の計測結果の信頼性が十分高い場合に電波到来角に基づくサービスを実行し、到来角の計測結果の信頼性が十分でない場合、電波到来角に基づくサービスを実行せずに代替処理を実行させることができる装置の構成および処理について説明したが、本発明は、それ以外の、少なくとも情報の受信機能を有する各種装置において適用可能であることはいうまでもない。
上述した一連の処理は、ソフトウェアにより実行することもできる。そのソフトウェアは、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、記録媒体などからインストールされる。この場合、例えば、図4を用いて説明した受信装置81または図15を用いて説明した送受信装置141は、図18に示されるようなパーソナルコンピュータ301により構成される。
図18において、CPU(Central Processing Unit)311は、ROM(Read Only Memory)312に記憶されているプログラム、または記憶部318からRAM(Random Access Memory)313にロードされたプログラムにしたがって、各種の処理を実行する。RAM313にはまた、CPU311が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
CPU311、ROM312、およびRAM313は、バス314を介して相互に接続されている。このバス314にはまた、入出力インタフェース315も接続されている。
入出力インタフェース315には、キーボード、マウスなどよりなる入力部316、ディスプレイやスピーカなどよりなる出力部317、ハードディスクなどより構成される記憶部318、モデム、ターミナルアダプタなどより構成されるネットワークインタフェース319、および、無線通信部320が接続されている。ネットワークインタフェース319は、インターネットを含むネットワークを介しての通信処理を行う。
無線通信部320は、図8または図15を用いて説明したアンテナ41、および、RXRF部42を有しているか、または、同様の機能を実行可能なようになされており、更に、必要に応じて、図15を用いて説明したTxRF部162を有しているか、または、同様の機能を実行可能なようになされている。OFDM復調部43、電波到来角計測部44、または、OFDM符号化部161の機能は、CPU311が有していても良いし、無線通信部320が有していても良い。そして、図13を用いて説明した到来角信頼性推定部45、および、図14を用いて説明したデジタル信号処理部46の機能を有するCPU311の制御に基づいて、上述した場合と同様の処理を実行する。
入出力インタフェース315にはまた、必要に応じてドライブ321が接続され、磁気ディスク331、光ディスク332、光磁気ディスク333、もしくは、半導体メモリ334などが適宜装着され、それらから読み出されたコンピュータプログラムが、必要に応じて記憶部318にインストールされる。
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、ネットワークや記録媒体からインストールされる。
この記録媒体は、図18に示されるように、装置本体とは別に、ユーザにプログラムを供給するために配布される、プログラムが記憶されている磁気ディスク331(フロッピディスクを含む)、光ディスク332(CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk)を含む)、光磁気ディスク333(MD(Mini-Disk)(商標)を含む)、もしくは半導体メモリ334などよりなるパッケージメディアにより構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに供給される、プログラムが記憶されているROM312や、記憶部318に含まれるハードディスクなどで構成される。
また、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
31 受信装置, 41 アンテナ, 42 RxRF部, 43 OFDM復調部, ,44 電波到来角計測部 45 到来角信頼性推定部, 46 デジタル信号処理部, 81 信号取得部, 823 ディップ解析処理部, 83 信号到来角情報取得部, 84 到来角情報出力部, 91 信号強度解析部, 92 閾値設定部, 93 閾値記憶部, 94 比較部, 121 復調信号取得部, 122 アプリケーション実行処理部, 123 到来角計測および信頼性推定制御部, 124 到来角情報取得部, 125 アプリケーション実行制御部, 126 到来角解析結果出力部, 141 送受信装置, 161 OFDM符号化部, 162 TxRF部