JP2008047316A - 燃料電池システム - Google Patents
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Abstract
【課題】デッドエンド方式を用いた燃料電池システムにおいて、セル間での発電量のばらつきを抑制する。
【解決手段】燃料電池2は、複数のセルが積層されて直列に接続された構造を有する。ここで、複数のセルは、セル15とセル積層体11とからなる。流路12から燃料電池2に入った水素は、供給マニホールド13を通じて各々のセルに供給される。そして、発電に必要な量が消費された後は、燃料オフガスとして排出マニホールド14に排出された後にセル15に流入する。これにより、燃料オフガスに含まれる不純物が、セル16に蓄積するのを防いで、セル15に蓄積されるようにすることができる。
【選択図】図2
【解決手段】燃料電池2は、複数のセルが積層されて直列に接続された構造を有する。ここで、複数のセルは、セル15とセル積層体11とからなる。流路12から燃料電池2に入った水素は、供給マニホールド13を通じて各々のセルに供給される。そして、発電に必要な量が消費された後は、燃料オフガスとして排出マニホールド14に排出された後にセル15に流入する。これにより、燃料オフガスに含まれる不純物が、セル16に蓄積するのを防いで、セル15に蓄積されるようにすることができる。
【選択図】図2
Description
本発明は、燃料電池システムに関し、特に、燃料オフガスの流路を閉じた状態で燃料電池を運転する燃料電池システムに関する。
燃料電池は、複数のセルが積層された燃料電池スタックを有する。セルは、例えば、膜−電極アッセンブリ(MEA:Membrane−Electrode Assembly)とセパレータとが積層されてなる。膜−電極アッセンブリは、イオン交換樹脂からなる電解質膜と、この電解質膜の一方の面に設けられたアノードと、電解質膜の他方の面に設けられたカソードとを有する。また、アノードおよびカソードは、それぞれ電解質膜に接して配置された触媒層を有する。各電極に反応ガスが供給されると、電極間で電気化学反応が起こり起電力を生じる。反応は、具体的には、アノードに水素(燃料ガス)が接触し、カソードに酸素(酸化剤ガス)が接触することによって起こる。
一般に、カソードには、コンプレッサによって外気から取り込まれた空気が供給される。一方、アノードには、高圧水素タンクに貯蔵された水素が供給される。このアノードへの水素の供給方法の1つに、いわゆるデッドエンド方式がある(例えば、特許文献1参照。)。この方式では、水素の流路が閉塞された状態で運転が行われ、アノードには、消費された水素に相当する量の水素が供給される。
デッドエンド方式による燃料電池システムの場合、時間の経過とともに、燃料ガスの流路に溜まる不純物の量が増えていく。例えば、カソードに供給される空気に含まれる窒素が、電解質膜を透過してアノード側に蓄積されるようになる。アノード側の圧力は、所定の値となるように調整されているので、窒素の量が増えると、相対的に水素の分圧が低下して、燃料電池の電圧低下を招く。そこで、特許文献1では、水素の流路から不純物を排出するパージ弁を設け、このパージ弁を開くことによって、電圧が回復するようにしている。
ところで、一般に、燃料電池スタックには、各セルに水素を分配する供給マニホールドと、各セルからの燃料オフガスをまとめて排出する排出マニホールドとが設けられている。また、各セルは、製造上のばらつきによって異なる圧損を有している。圧損の高いセルでは、圧損の低いセルに比べて、供給マニホールドからセル内部に水素が導入され難い。一方、各セルから排出マニホールドに排出された燃料オフガスは、圧損の高いセルの内部に吸い込まれやすい。このため、圧損の高いセルには不純物が堆積しやすく、このセルから電圧が低下することによって、セル間で発電量にばらつきが生じてしまうという問題があった。
特許文献1に記載の燃料電池システムでは、燃料電池スタックのガス出口側末端に配置されたセルの電圧を測定している。そして、この値を閾値と比較することによって、パージ弁を開くタイミングを決定している。しかしながら、特許文献1は、セルの圧損が異なることによる不純物堆積量の違いに着目していないため、セル間での発電量のばらつきを解消できないおそれがあった。
本発明は、こうした問題点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、デッドエンド方式を用いた燃料電池システムにおいて、セル間での発電量のばらつきを抑制することにある。
本発明の他の目的および利点は以下の記載から明らかとなるであろう。
本発明の第1の態様は、積層されて直列に接続された複数のセルと、前記セルの各々に燃料ガスを分配する供給マニホールドと、前記セルの各々から燃料オフガスが排出される排出マニホールドとを備えた燃料電池を有し、
前記燃料オフガスの流路を閉じた状態で前記燃料電池を運転する燃料電池システムにおいて、
前記複数のセルは、第1のセルと、前記第1のセルよりガス流路抵抗の小さい第2のセルとからなり、
前記第2のセルの中で最もガス流路抵抗の大きいセルのガス流路抵抗をrとし、前記第1のセルおよび前記第2のセルのガス流路抵抗を合成した値をRとし、前記複数のセルの総数をn(nは2以上の整数)とすると、
r<nR
であることを特徴とするものである。
前記燃料オフガスの流路を閉じた状態で前記燃料電池を運転する燃料電池システムにおいて、
前記複数のセルは、第1のセルと、前記第1のセルよりガス流路抵抗の小さい第2のセルとからなり、
前記第2のセルの中で最もガス流路抵抗の大きいセルのガス流路抵抗をrとし、前記第1のセルおよび前記第2のセルのガス流路抵抗を合成した値をRとし、前記複数のセルの総数をn(nは2以上の整数)とすると、
r<nR
であることを特徴とするものである。
本発明の第2の態様は、積層されて直列に接続された複数のセルと、前記セルの各々に燃料ガスを分配する供給マニホールドと、前記セルの各々から燃料オフガスが排出される排出マニホールドとを備えた燃料電池を有し、
前記燃料オフガスの流路を閉じた状態で前記燃料電池を運転する燃料電池システムにおいて、
前記セルの各々には、前記供給マニホールドと前記排出マニホールドの間に位置するセル流路が設けられていて、
前記複数のセルは、前記供給マニホールドと前記セル流路を接続する連通部の容積がV1である第1のセルと、前記連通部の容積がV2(V1<V2)である第2のセルとからなり、
前記第2のセルの中で最もガス流路抵抗の大きいセルのガス流路抵抗をrとし、前記第1のセルおよび前記第2のセルのガス流路抵抗を合成した値をRとし、前記複数のセルの総数をn(nは2以上の整数)とすると、前記容積V1は、
r<nR
の関係が成立するようにして決定されることを特徴とするものである。
前記燃料オフガスの流路を閉じた状態で前記燃料電池を運転する燃料電池システムにおいて、
前記セルの各々には、前記供給マニホールドと前記排出マニホールドの間に位置するセル流路が設けられていて、
前記複数のセルは、前記供給マニホールドと前記セル流路を接続する連通部の容積がV1である第1のセルと、前記連通部の容積がV2(V1<V2)である第2のセルとからなり、
前記第2のセルの中で最もガス流路抵抗の大きいセルのガス流路抵抗をrとし、前記第1のセルおよび前記第2のセルのガス流路抵抗を合成した値をRとし、前記複数のセルの総数をn(nは2以上の整数)とすると、前記容積V1は、
r<nR
の関係が成立するようにして決定されることを特徴とするものである。
本発明の第1の態様および第2の態様において、前記第1のセルは、カソードの触媒層がカーボン担体でないことが好ましい。この場合、前記触媒層は、白金黒、白金微粒子層または白金合金微粒子層とすることができる。
本発明の第1の態様および第2の態様において、前記第1のセルには、燃料オフガスをパージするパージ手段が接続していることが好ましい。特に、第2の態様においては、前記第1のセルの前記セル流路に、前記パージ手段が接続していることが好ましい。
また、前記第1のセル内の燃料オフガスに含まれる燃料ガス以外の成分の量を推定または計測する手段をさらに有し、前記成分の量が所定値以上となったときに、前記パージ手段を作動させることがより好ましい。
また、前記第1のセル内の燃料オフガスに含まれる燃料ガス以外の成分の量を推定または計測する手段をさらに有し、前記成分の量が所定値以上となったときに、前記パージ手段を作動させることがより好ましい。
本発明の第1の態様によれば、燃料電池を構成するセルが、第1のセルと、第1のセルよりガス流路抵抗の小さい第2のセルとからなり、第2のセルの中で最もガス流路抵抗の大きいセルのガス流路抵抗をrとし、第1のセルおよび第2のセルのガス流路抵抗を合成した値をRとし、複数のセルの総数をn(nは2以上の整数)とすると、
r<nR
であるので、第1のセルに燃料オフガスを積極的に流入させて、第1のセルに不純物が濃縮されるようにすることができる。これにより、第2のセルに不純物が蓄積されるのを防げるので、セル間での発電量のばらつきを抑制することが可能となる。
r<nR
であるので、第1のセルに燃料オフガスを積極的に流入させて、第1のセルに不純物が濃縮されるようにすることができる。これにより、第2のセルに不純物が蓄積されるのを防げるので、セル間での発電量のばらつきを抑制することが可能となる。
本発明の第2の態様によれば、燃料電池を構成するセルが、供給マニホールドとセル流路を接続する連通部の容積がV1である第1のセルと、連通部の容積がV2(V1<V2)である第2のセルとからなり、容積V1は、第2のセルの中で最もガス流路抵抗の大きいセルのガス流路抵抗をrとし、第1のセルおよび前記第2のセルのガス流路抵抗を合成した値をRとし、複数のセルの総数をn(nは2以上の整数)とすると、
r<nR
の関係が成立するようにして決定されるので、第1のセルに燃料オフガスを積極的に流入させて、第1のセルに不純物が濃縮されるようにすることができる。これにより、第2のセルに不純物が蓄積されるのを防げるので、セル間での発電量のばらつきを抑制することが可能となる。
r<nR
の関係が成立するようにして決定されるので、第1のセルに燃料オフガスを積極的に流入させて、第1のセルに不純物が濃縮されるようにすることができる。これにより、第2のセルに不純物が蓄積されるのを防げるので、セル間での発電量のばらつきを抑制することが可能となる。
図1〜図6を用いて、本実施の形態における燃料電池システムについて説明する。尚、図1〜図3と図5において、同じ符号を付した部分は同じものであることを示している。
図1は、本実施の形態における燃料電池システムの構成図の一例である。この燃料電池システムは、車載用および据え置き型などの種々の用途に適用可能である。
図1に示すように、燃料電池システム1は、燃料電池2と、燃料電池2に圧縮空気を供給するコンプレッサ3と、燃料電池2から排出された酸化剤オフガスに含まれる水分を回収して、燃料電池2に供給する空気を加湿する加湿器4と、コンプレッサ3から燃料電池2に供給される空気の圧力を調整する空気調圧弁5と、乾燥した水素を高圧状態で貯蔵する水素タンク6と、水素タンク6から燃料電池2に供給される水素の圧力を調整する水素調圧弁7と、燃料電池2から排出される燃料オフガスの流路10に設けられたパージ弁8とを有する。パージ弁8を開くことによって、燃料オフガスをパージすることができる。
燃料電池システム1では、アノード(図示せず)への水素の供給は、デッドエンド方式によって行われる。すなわち、パージ弁8を閉じると、燃料オフガスの流路10が閉塞されて、水素の供給は、水素タンク6からの供給のみによって行われる。このようなデッドエンド方式によれば、供給された水素は、燃料電池2での反応によって全て消費される。そして、消費された分の水素のみが、新たにアノードに供給されることになる。
尚、アノードに供給する燃料ガスは、水素に限られるものではない。例えば、アノードに供給する水素源として、炭化水素系化合物の改質反応によって生成する改質ガスを利用することもできる。この場合、炭化水素系化合物としては、メタンを主成分とする天然ガス、メタノールなどのアルコールまたはガソリンなどが用いられる。そして、使用する炭化水素系化合物の種類に応じて、改質反応に適した触媒や温度が選択される。これにより、水素、二酸化炭素および水を含む水素リッチな改質ガスが生成される。
図2は、図1の燃料電池2におけるガスの流れを模式的に示した図である。矢印は、ガスの流れる方向を示している。
図2において、燃料電池2は、複数のセルが積層されて直列に接続されたスタック構造を有している。ここで、複数のセルは、セル15とセル積層体11とからなる。セル15は、本発明における第1のセルに対応し、本実施の形態では単一のセルである。一方、セル積層体11は、同種のセル16が複数積層されたものである。ここで、同種のセルは、同じ形状のセルであって、製造上のばらつきにより圧損に違いが生じたセルを含む。また、セル16は、本発明における第2のセルに対応する。但し、セル16の総数は、1以上であればよく、図2の例に限られるものではない。
流路12から燃料電池2に入った水素は、供給マニホールド13を通じて各々のセルに供給される。そして、発電に必要な量が消費された後は、燃料オフガスとして、各々のセルから排出マニホールド14に排出される。
本発明においては、排出マニホールドに排出された燃料オフガスが、特定のセルに積極的に流入するようにする。図2の例では、燃料オフガスの出口側末端に位置するセル15に、他のセル16から排出された燃料オフガスが流入するようにしている。このようにすることによって、燃料オフガスに含まれる窒素などの不純物が、セル16に蓄積するのを防いで、セル15に蓄積されるようにすることができる。
図3(a)は、図2のA−A′線に沿う断面模式図であり、複数あるセル16の内で任意の1つについて示したものである。
図3(a)において、供給マニホールド13から導入された水素は、容積がV2である連通部17を通って、セル流路18よりアノード19に供給される。そして、アノード19で必要量が消費された後は、水素は、窒素などの不純物とともに、連通部20を通って排出マニホールド14に排出される。
図3(a)において、符号21は空気供給マニホールド、符号22は冷却水供給マニホールド、符号23は空気排出マニホールド、符号24は冷却水排出マニホールドである。但し、本実施の形態において、水素、空気および冷却水を供給または排出するマニホールドの位置は、この図の例に限られるものではない。
図3(b)は、図2のB−B′線に沿ったセル15の断面模式図である。図3(a)と同じ符号を付した部分は、同じものであることを示している。
図3(b)において、供給マニホールド13から導入された水素は、連通部25を通って、セル流路18よりアノード19に供給される。ここで、連通部25は、容積がV1(V1<V2)であり、図3(a)の連通部17より容積の小さい構造、具体的には、断面積の小さい構造となっている。これにより、セル流路18に流入する水素の量は、図3(b)に示すセル15の方が、図3(a)に示すセル16より少なくなる。
アノード19で必要量の水素が消費された後は、連通部20を通って、排出マニホールド14に燃料オフガスが排出される。ここで、セル15では、連通部25の容積が小さいことによって、セル流路18への水素の流量が少なくなるために、排出マニホールド14に排出される燃料オフガスの流速は、セル16の場合に比べて遅くなる。このため、セル16から排出マニホールド14に排出された燃料オフガスは、セル15の連通部20を通って、セル15のセル流路18に流入するようになる。これにより、燃料オフガスに含まれる窒素などの不純物が、セル16に蓄積するのを防いで、セル15に蓄積されるようにすることができる。このことについて、以下にさらに説明する。
セルの圧損は、供給マニホールドと排出マニホールドの圧力差を測定することにより求められる。そして、圧損は電流密度に比例することから、アノードへの水素の供給は、拡散によってではなく、流れ場が生じて起きていると考えられる。
各セルの圧損は、製造上のばらつきによって異なるので、圧損の高いセルでは、圧損の低いセルに比べて、供給マニホールドからセル内部に水素が導入され難い。一方、各セルから排出マニホールドに排出された燃料オフガスは、圧損の高いセルの内部に吸い込まれやすい。このため、従来の燃料電池では、圧損の高いセルに不純物が堆積しやすかった。これに対して、本発明では、他のセルより圧損の高いセルを故意に設け、このセルの内部に、他のセルから排出された燃料オフガスが流入するようにしている。
図3(b)の例では、連通部25の容積を小さくすることによって、セル15の圧損をセル16の圧損より高くしている。セル15では、供給マニホールド13から流入する水素の流量が少ないために、排出マニホールド14からもガスが吸い込まれる。すなわち、セル16から排出された燃料オフガスがセル15に流入するので、セル16に不純物が蓄積するのを防いで、セル15に蓄積されるようにすることができる。
セル15の圧損は、セル16の中で最も圧損の高いセルの圧損より高くする必要がある。つまり、本発明の特徴は、製造上の理由で生じる圧損のばらつきの範囲内ではなく、この範囲を超えた高い圧損のセルを故意に設ける点にある。これにより、圧損の高いセルに不純物を積極的に蓄積できるので、従来の燃料電池では不純物の蓄積が起こりやすいセルであっても、本発明によれば、蓄積を防いでセル電圧の低下を抑制することが可能となる。
図4は、図5(a)および(b)に示す燃料電池について、セル電圧の経時変化を測定した結果である。尚、この燃料電池は、図2の燃料電池と同様の構造であるが、燃料電池への配管の接続方法が異なっている。尚、図5(a)および(b)において、符号26は、燃料オフガスをパージするためのパージ弁である。
まず、図5(a)に示すように、弁27を開いて、供給マニホールド13と排出マニホールド14の両方からセル内に水素が流入するようにした(測定a)。すると、図4に示すように、時間の経過とともに各セルに電圧の低下が見られた。これは、全てのセルについて、排出マニホールド14から水素が流入するので、不純物が排出されずに各セルに蓄積されるためと考えられる。尚、図4において、セル(1)〜セル(4)は、図3(a)と同様の構造であり、セル(5)は、図3(b)と同様の構造である。
次に、図5(b)に示すように、弁27を閉じて、供給マニホールド13からセル内に水素が流入するようにした(測定b)。その結果、図4に示すように、電圧の低下は、連通部の容積が小さいセル(5)について見られたが、他のセル(1)〜(4)には殆ど見られなかった。このことから、セル(5)に不純物が蓄積される一方で、他のセル(1)〜(4)への不純物の蓄積は抑制されていることが分かった。
次に、セル15とセル16のガス流路抵抗に基づいて、セル15の連通部25の容積について考察する。
本実施の形態においては、セル15を除いた他のセル、すなわち、セル積層体11を構成するセル16の中で、最もガス流路抵抗の大きいセルのガス流路抵抗をrとし、セル15を含む全てのセルのガス流路抵抗を合成した値をRとし、全てのセルの総数をn(nは2以上の整数)とすると、
r<nR
の関係が成立するようにして、セル15の連通部25の容積を決定する。但し、
R=1/(1/r1+1/r2+1/r3+・・・+1/rn)
である。
r<nR
の関係が成立するようにして、セル15の連通部25の容積を決定する。但し、
R=1/(1/r1+1/r2+1/r3+・・・+1/rn)
である。
図6は、各セルについて、ガスの流量と圧損との関係の一例を示したものである。この図において、セル(6)〜(10)は、図3(a)と同様の構造であり、セル(11)は、図3(b)と同様の構造である。また、積層セルの直線の傾きは、セル(6)〜(11)のガス流路抵抗を合成した値Rに、セルの総数nを乗ずることにより得られる。ここで、n=6である。また、セル(6)〜(11)のガス流路抵抗を、それぞれr6、r7、r8、r9、r10およびr11とすれば、
R=1/(1/r6+1/r7+1/r8+1/r9+1/r10+1/r11)
である。
R=1/(1/r6+1/r7+1/r8+1/r9+1/r10+1/r11)
である。
図6より、r8<r6<r7<r9<r10<r11であるから、セル(6)〜(10)の内で、ガス流路抵抗が最も大きいのはセル(10)である。したがって、セル(10)のガス流路抵抗r10は、上記のrに対応する。よって、セル(11)における連通部の容積は、
r<nR
の関係が成立するようにして決定される。
r<nR
の関係が成立するようにして決定される。
本実施の形態においては、セル15のカソードに、水素欠や異常電位によって劣化し難い触媒層、具体的には、カーボン担体でない触媒層を用いることが好ましい。これは、次の理由による。
本実施の形態では、セル15に燃料オフガスを流入させて、不純物がセル15に蓄積されるようにしている。このため、セル15では、水素濃度が低くて窒素濃度が高い状態になる。ここで、触媒層にカーボンを用いた場合には、常温でアノードが水素欠状態になると、カーボンと水の反応(C+2H2O→CO2+4H++4e-)が進行することによって、カソードでカーボンの酸化が起こる。また、窒素濃度が高くなると、カソード側およびアノード側で電位が上昇するため、上記と同様にカーボンの酸化が起こりやすい。カーボン担体でない触媒層を用いることにより、こうした反応が起こるのを防げるので、セル15が劣化するのを抑制することができる。カーボン担体でない触媒層としては、例えば、白金黒、白金微粒子層または白金合金微粒子層などを挙げることができる。
尚、全てのセルについて、カソードの触媒層にカーボン担体でないものを用いるのは、触媒としての性能が低下することによって、燃料電池の発電効率の低下を招く点から好ましくない。不純物を積極的に蓄積させるセルにのみカーボン担体でない触媒層を使用し、他のセルにはカーボン担体の触媒層を使用することによって、他のセルの発電性能が低下するのを防いで、燃料電池全体の発電性能の向上を図ることができる。
また、本実施の形態においては、燃料オフガスをパージするパージ手段を、不純物が蓄積されるセルに接続して設けることが好ましい。例えば、図2および図3(b)に示すように、セル15のセル流路18に、燃料オフガスをパージするための流路10を接続し、パージ弁8を流路10に設けることが好ましい。セル16から排出された燃料オフガスは、セル15に流入するので、燃料オフガスに含まれる不純物は、次第にセル15に濃縮される。パージ弁8を開くことによって、セル15から燃料オフガスがパージされるようにすれば、不純物を効率よく外部に排出することができる。尚、セル15においては、排出マニホールド14に接続する連通部20からガスが流入するので、供給マニホールド13に接続する連通部25の容積が小さくとも、パージには支障をきたさない。
さらに、本実施の形態においては、セル15内における不純物の量を推定または計測する手段が設けられていて、不純物の量が所定値以上となったときに、パージ手段が作動するようにすることが好ましい。本実施の形態では、セル15に不純物が濃縮されるようになっているので、セル15内の不純物の量を基準とすることで、適切なタイミングでパージすることが可能となる。ここで、不純物は、燃料オフガスに含まれる燃料ガス以外の成分とすることができる。具体的には、窒素、水および二酸化炭素などであり、これらの内の少なくとも1つの成分の量を推定または計測する。
例えば、不純物の堆積量の経時変化を予め把握しておき、所定時間が経過する毎にパージ弁8を開いてパージが行われるようにすることができる。また、セル15の電圧を測定し、この値が所定値以下となったときに、パージ弁8が開くようにすることもできる。さらに、セル15とセル16の両方の電圧を測定し、これらの電圧差が所定値以上となったときに、パージ弁8が開くようにすることもできる。
以上述べたように、本発明では、排出マニホールドから特定のセルに燃料オフガスを積極的に流入させて、このセルに不純物が濃縮されるようにしている。これにより、他のセルに不純物が蓄積されるのを防げるので、セル毎に発電量がばらついてしまうのを抑制できる。すなわち、製造上の理由に起因した圧損の違いによって、セル間で不純物の堆積量にばらつきが生じ、ひいては発電量にばらつきが生じるのを抑制できる。
本発明において、燃料オフガスが流入するセルの電圧は、時間とともに低下する。しかしながら、他のセルの電圧低下は抑制されるので、燃料電池全体として見れば、発電特性を向上させることができる。
また、本発明において、燃料オフガスが流入するセルを基準にパージするタイミングを決定すれば、燃料電池全体として適切なタイミングでパージすることが可能となる。すなわち、従来は、圧損の違いによってセル電圧の低下傾向が異なるために、最適なパージのタイミングは各セル毎に異なっていた。このため、燃料電池全体として適切なタイミングでパージを行うのは困難であった。しかし、本発明によれば、セル電圧の低下は、主として燃料オフガスが流入するセルで起こるので、このセルを基準として考えれば十分である。
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。
例えば、上記実施の形態では、燃料オフガスの出口側末端に位置するセルに不純物が蓄積されるようにした。しかしながら、本発明はこれに限られるものではなく、出口側末端以外に位置するセルに不純物が蓄積されるようにしてもよい。但し、パージ手段を設ける場合には、出口側末端に位置するセルに不純物が蓄積されるようにするのが、配管の接続を容易とし、また、パージを効率よく行える点から好ましい。
また、上記実施の形態においては、連通部の容積を小さくすることにより圧損の高いセルを作製したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、セル内における燃料ガスの流路長を長くすることによって、圧損の高いセルを作製することもできる。すなわち、本発明は、積層されて直列に接続された複数のセルと、セルの各々に燃料ガスを分配する供給マニホールドと、セルの各々から燃料オフガスが排出される排出マニホールドとを備えた燃料電池を有し、燃料オフガスの流路を閉じた状態で燃料電池を運転する燃料電池システムにおいて、複数のセルが、第1のセルと、第1のセルよりガス流路抵抗の小さい第2のセルとからなり、第2のセルの中で最もガス流路抵抗の大きいセルのガス流路抵抗をrとし、第1のセルおよび第2のセルのガス流路抵抗を合成した値をRとし、複数のセルの総数をn(nは2以上の整数)とすると、
r<nR
の関係が成立するものであれば、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
r<nR
の関係が成立するものであれば、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、本発明におけるセル流路は、多孔質体流路であってもよく、溝流路であってもよい。例えば、膜−電極アッセンブリと、拡散層と、多孔質体流路と、セパレータとが積層されてなるセルにおいて、セパレータと拡散層の間に多孔質体流路を設け、この多孔質体流路から燃料ガスが触媒層に供給されるようにすることができる。また、セパレータに溝を設け、この溝を通って燃料ガスが供給されるようにしてもよい。さらに、圧損の高いセルのみを多孔質体流路とし、他のセルを溝流路とすることもできる。
1 燃料電池システム
2 燃料電池
3 コンプレッサ
4 加湿器
5 空気調圧弁
6 水素タンク
7 水素調圧弁
8,26 パージ弁
10,12 流路
11 セル積層体
13 供給マニホールド
14 排出マニホールド
15,16 セル
17,20,25 連通部
18 セル流路
19 アノード
21 空気供給マニホールド
22 冷却水供給マニホールド
23 空気排出マニホールド
24 冷却水排出マニホールド
27 弁
2 燃料電池
3 コンプレッサ
4 加湿器
5 空気調圧弁
6 水素タンク
7 水素調圧弁
8,26 パージ弁
10,12 流路
11 セル積層体
13 供給マニホールド
14 排出マニホールド
15,16 セル
17,20,25 連通部
18 セル流路
19 アノード
21 空気供給マニホールド
22 冷却水供給マニホールド
23 空気排出マニホールド
24 冷却水排出マニホールド
27 弁
Claims (6)
- 積層されて直列に接続された複数のセルと、前記セルの各々に燃料ガスを分配する供給マニホールドと、前記セルの各々から燃料オフガスが排出される排出マニホールドとを備えた燃料電池を有し、
前記燃料オフガスの流路を閉じた状態で前記燃料電池を運転する燃料電池システムにおいて、
前記複数のセルは、第1のセルと、前記第1のセルよりガス流路抵抗の小さい第2のセルとからなり、
前記第2のセルの中で最もガス流路抵抗の大きいセルのガス流路抵抗をrとし、前記第1のセルおよび前記第2のセルのガス流路抵抗を合成した値をRとし、前記複数のセルの総数をn(nは2以上の整数)とすると、
r<nR
であることを特徴とする燃料電池システム。 - 積層されて直列に接続された複数のセルと、前記セルの各々に燃料ガスを分配する供給マニホールドと、前記セルの各々から燃料オフガスが排出される排出マニホールドとを備えた燃料電池を有し、
前記燃料オフガスの流路を閉じた状態で前記燃料電池を運転する燃料電池システムにおいて、
前記セルの各々には、前記供給マニホールドと前記排出マニホールドの間に位置するセル流路が設けられていて、
前記複数のセルは、前記供給マニホールドと前記セル流路を接続する連通部の容積がV1である第1のセルと、前記連通部の容積がV2(V1<V2)である第2のセルとからなり、
前記第2のセルの中で最もガス流路抵抗の大きいセルのガス流路抵抗をrとし、前記第1のセルおよび前記第2のセルのガス流路抵抗を合成した値をRとし、前記複数のセルの総数をn(nは2以上の整数)とすると、前記容積V1は、
r<nR
の関係が成立するようにして決定されることを特徴とする燃料電池システム。 - 前記第1のセルは、カソードの触媒層がカーボン担体でないことを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池システム。
- 前記触媒層は、白金黒、白金微粒子層または白金合金微粒子層であることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池システム。
- 前記第1のセルには、燃料オフガスをパージするパージ手段が接続していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
- 前記第1のセル内の燃料オフガスに含まれる燃料ガス以外の成分の量を推定または計測する手段をさらに有し、
前記成分の量が所定値以上となったときに、前記パージ手段を作動させることを特徴とする請求項5に記載の燃料電池システム。
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