JP2008039032A - 電食防止用絶縁転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】転がり軸受を回転支持部に組み込んだ場合に、係止溝11、11とハウジング12との間で放電現象が生じる事を防止できる構造を実現する。
【解決手段】外輪3bの外周面13及び軸方向両端面14、14に加えて、上記両係止溝11、11にも絶縁層6aを形成する。これにより、上記ハウジング12の一部とこれら両係止溝11、11とが隣接しても、これらハウジング12の一部表面と両係止溝11、11との間で放電現象が生じる事を防止できる。
【選択図】図3
【解決手段】外輪3bの外周面13及び軸方向両端面14、14に加えて、上記両係止溝11、11にも絶縁層6aを形成する。これにより、上記ハウジング12の一部とこれら両係止溝11、11とが隣接しても、これらハウジング12の一部表面と両係止溝11、11との間で放電現象が生じる事を防止できる。
【選択図】図3
Description
この発明は、一般産業用汎用モータや発電機用ジェネレータ(風力発電機等)、鉄道車両用主電動機、医療機器(CTスキャナ装置等)の回転支持部に組み込んだ状態で使用する、電食防止用絶縁転がり軸受の改良に関する。
電動モータや発電機等、各種電気機器等の回転軸を支承する為の転がり軸受の場合、対策を講じないと、転がり軸受自体に、帰路電流、モータ軸電流等の電流が流れてしまう。転がり軸受に電流が流れた場合、電流の通路となる部分の腐食が進む、所謂電食が発生して、転がり軸受の寿命を著しく短縮してしまう。この様な電食の発生を防止する為、転がり軸受を構成する外輪や内輪の表面に絶縁層を形成する事で、転がり軸受に電流が流れない様にする電食防止用絶縁転がり軸受が、例えば特許文献1〜3に記載されている様に、従来から知られている。
これら各特許文献に記載された絶縁型の転がり軸受は何れも、転がり軸受を構成する軌道輪のうちで、相手部材に嵌合支持する部分に、セラミックス、合成樹脂等の絶縁層を形成して成るもので、例えば図6に示す様に構成されている。転がり軸受は、内輪1の外周面に形成した内輪軌道2と外輪3の内周面に形成した外輪軌道4との間に複数の転動体5を設ける事で、上記内輪1と外輪3との相対的回転を自在としている。そして、この外輪3の外周面及び軸方向両端面に、セラミックス溶射層である絶縁層6を形成している。この様な電食防止用絶縁転がり軸受の場合、上記外輪3を金属製のハウジングに内嵌支持した状態では、上記絶縁層6が、これら外輪3とハウジングとを絶縁する。この結果、これら外輪3とハウジングとの間に電流が流れなくなり、上記転がり軸受の構成各部材1、3、5に、上述した様な電食が発生しなくなる。
一方、図7、8に示す様に、転がり軸受に、密封装置であるシールリング7、7或はシールド板8、8を設ける構造がある。このうちの図7に示す構造の場合、シールリング7、7は、金属製の芯金9によりゴム等の弾性材10を補強して成る。そして、これら両シールリング7、7の外周縁部を、外輪3aの両端部内周面に形成した係止溝11、11に係止すると共に、上記両シールリング7、7の内周縁部を、内輪1aの両端部外周面の一部にそれぞれ全周に亙り摺接させている。又、上記図8に示す構造の場合、シールド板8、8は、全体を略円輪状に形成した金属板から成り、外周縁部を外輪3aの両端部内周面に形成した係止溝11、11に係止すると共に、内周縁部を内輪1aの両端部外周面に近接させている。図7、8に示した構造の場合、シールリング7、7或はシールド板8、8を設ける事により、外輪3aと内輪1aとの間に存在し各転動体5を設置した空間と、外部空間とを遮断している。
従来、上述の様な図7、8に示した構造に、前述の図6に示した様な絶縁層6を形成する場合、図9に示す様に、係止溝11、11を絶縁層6により被覆していなかった。この為、図10に示す様に、外輪3aを、回転支持部を構成する金属製のハウジング12に、このハウジング12の一部と上記両係止溝11、11とが隣接する様に組み込んだ状態では、絶縁層6を被覆していない係止溝11、11の表面と、このハウジング12の一部表面との距離が近くなる。この場合、このハウジング12の一部表面と上記両係止溝11、11との間で、放電現象が生じる可能性がある。特に、電位差が大きい(例えば、1500V以上の)場合には、この様な放電現象が生じ易い。そして、この放電現象が生じた場合には、転がり軸受に電流が流れ、前述した様な電食が生じる可能性がある。
又、近年、シール性向上の為、上記両係止溝11、11に係止するシールリング7、7の弾性材10に、カーボンブラックやシリカを添加する事が行なわれている。例えば、この弾性材10として、アクリロニトリルブタジエンゴム等にカーボンブラックを添加して、摩擦特性、耐摩耗性、耐熱性を向上させる事が行なわれている。但し、カーボンブラックは導電性を有する為、上述の様に、係止溝11、11に絶縁層6を被覆していない場合には、これら両係止溝11、11から、上記両シールリング7、7を通じて電流が流れ易くなる。
又、上記両係止溝11、11に金属製のシールド板8、8を係止する場合も、これら両シールド板8、8の内周縁部が、内輪1aの両端部外周面と近接している為、やはり、これら両シールド板8、8を通じて電流が流れ易くなる。この様に、シールリング7、7或はシールド板8、8を通じて電流が流れる場合には、これらシールリング7、7の内周縁部、或は、シールド板8、8の内周縁部と上記内輪1aの両端部外周面との間で、電食が生じる可能性がある。そして、この様な部分で電食が生じた場合には、シール性が低下し、転がり軸受の寿命低下に繋がる。
更に、上述の様な導電性を有するシールリング7、7或はシールド板8、8を使用した場合、ハウジング12とこれらシールリング7、7或はシールド板8、8との間で放電現象が生じる可能性がある。そして、この様な放電現象が生じた場合には、シールリング7、7或はシールド板8、8と内輪1aとの間だけではなく、係止溝11、11を通じて外輪3a側に電流が流れ、外輪3a、転動体5、内輪1aの各構成部材間でも、前述した電食が発生する可能性がある。
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、転がり軸受を回転支持部に組み込んだ場合に、係止溝とこの係止溝を形成した軌道輪を嵌合する相手部材との間で放電現象が生じる事を防止でき、更には、シールリングとして導電性を有する弾性材を使用したり、金属製のシールド板を使用した場合でも、これらシールリング或はシールド板と軌道輪と両軌道輪との間で電流が流れない様にして、重要部分である各軌道面と各転動体との転がり接触部で電食が生じる事を防止できる構造を実現すべく発明したものである。
本発明の電食防止用絶縁転がり軸受は、1対の軌道輪と、複数個の転動体と、密封装置とを備える。
このうちの両軌道輪は、互いに同心に配置されたもので、それぞれが金属製である。
又、上記各転動体は、それぞれが金属製で、上記両軌道輪の互いに対向する面に形成された1対の軌道面同士の間に転動自在に設けられている。
又、上記密封装置は、上記両軌道輪のうちの一方の軌道輪のうちで軌道面を形成した部分の両端部表面にそれぞれ形成した係止溝に係止され、上記各転動体を設置した空間と外部とを遮断する。
そして、上記両軌道輪のうちの少なくとも一方の軌道輪の表面のうちで軌道面を設けた面以外の面を、絶縁性の皮膜により被覆している。
特に、本発明の電食防止用絶縁転がり軸受に於いては、上記一方の軌道輪に形成された上記両係止溝にも、絶縁性の皮膜を被覆している。
このうちの両軌道輪は、互いに同心に配置されたもので、それぞれが金属製である。
又、上記各転動体は、それぞれが金属製で、上記両軌道輪の互いに対向する面に形成された1対の軌道面同士の間に転動自在に設けられている。
又、上記密封装置は、上記両軌道輪のうちの一方の軌道輪のうちで軌道面を形成した部分の両端部表面にそれぞれ形成した係止溝に係止され、上記各転動体を設置した空間と外部とを遮断する。
そして、上記両軌道輪のうちの少なくとも一方の軌道輪の表面のうちで軌道面を設けた面以外の面を、絶縁性の皮膜により被覆している。
特に、本発明の電食防止用絶縁転がり軸受に於いては、上記一方の軌道輪に形成された上記両係止溝にも、絶縁性の皮膜を被覆している。
上述の様な構成を有する本発明は、請求項2に記載した様に、上記密封装置が、導電性を有する弾性材を備えるシールリング、或は、金属製のシールド板である場合に、本発明を好ましく適用できる。
又、上記絶縁性の皮膜は、請求項3に記載した様な、セラミックス製の絶縁層、或は、請求項7に記載した様な、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の合成樹脂製の絶縁層とする事が好ましい。
このうちのセラミックス製の絶縁層として好ましくは、この絶縁層を構成するセラミックスがアルミナ(Al2O3 )を99重量%以上含有するものを使用する。この場合、上記絶縁層のうち、上記軌道輪の表面のうちの軌道面を設けた面以外の面に形成した絶縁層は、セラミックス溶射層の表面を研磨する事により形成する。更に、このセラミックス溶射層の厚さを、隣り合う面同士の間の折れ曲がり連続部を除いて0.4mm以下とし、このセラミックス溶射層を研磨して得られた上記絶縁層の厚さを0.25mm以上とする。
又、絶縁性の皮膜がセラミックス製の絶縁層である場合に、この絶縁層を、請求項4、5に記載した様に、酸化チタン(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)のうちの何れかを含有するアルミナの溶射層としても良い。
このうちの酸化チタンを含有する場合には、アルミナの含有量を99重量%以上とし、この酸化チタンの含有量を、0.01〜0.2重量%とする。
又、上記ジルコニアを含有する場合には、アルミナの含有量を97重量%以上とし、このジルコニアの含有量を、0.5〜2.5重量%とする。
尚、この様な組成を有するセラミックス溶射層の場合も、上記軌道輪の表面のうちの軌道面を設けた面以外の面に形成する際には、セラミックス溶射層の表面を研磨する事により形成する事が好ましい。又、この場合も、このセラミックス溶射層の厚さを、隣り合う面同士の間の折れ曲がり連続部を除いて0.4mm以下とし、このセラミックス溶射層を研磨して得られた上記絶縁層の厚さを0.25mm以上とする事が好ましい。
このうちの酸化チタンを含有する場合には、アルミナの含有量を99重量%以上とし、この酸化チタンの含有量を、0.01〜0.2重量%とする。
又、上記ジルコニアを含有する場合には、アルミナの含有量を97重量%以上とし、このジルコニアの含有量を、0.5〜2.5重量%とする。
尚、この様な組成を有するセラミックス溶射層の場合も、上記軌道輪の表面のうちの軌道面を設けた面以外の面に形成する際には、セラミックス溶射層の表面を研磨する事により形成する事が好ましい。又、この場合も、このセラミックス溶射層の厚さを、隣り合う面同士の間の折れ曲がり連続部を除いて0.4mm以下とし、このセラミックス溶射層を研磨して得られた上記絶縁層の厚さを0.25mm以上とする事が好ましい。
更に、上述した請求項3〜5に記載した各発明を実施する場合には、請求項6に記載した様に、絶縁層であるセラミックス溶射層の厚さ寸法に関する精度と、このセラミックス溶射層を構成するアルミナの付着効率の向上とを目的として、粒径が10〜50μmで、平均粒径が15〜25μmであるアルミナを使用する事が好ましい。
一方、上記軌道輪の表面のうちで軌道面を設けた面以外の面及び両係止溝を被覆する絶縁性の被膜を、合成樹脂製の絶縁層とした場合、この合成樹脂として、前述のPPS以外に、例えば、芳香族ポリアミド樹脂、脂肪族ポリアミド樹脂等が挙げられる。
又、上記絶縁層の強度を向上させるべく、上記合成樹脂に繊維材を混合する事もできる。この繊維材としては、例えば、ガラス繊維、セラミックス繊維、岩石繊維、スラッグ繊維等が挙げられる。
又、上記絶縁層の耐衝撃性を向上させるべく、上記合成樹脂に弾性材を混合する事もできる。この弾性材として、例えば、エチレン・プロピレン・ジエン三元重合体(EPDM)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等が挙げられる。
更に、上記絶縁層の絶縁性能をより向上させるべく、上記合成樹脂に充填材を添加する事もできる。この充填材として、例えば、炭化珪素(SiC )、窒化アルミニウム(AlN )、ベリリア(BeO )、窒化ホウ素(BN)、アルミナ(Al2O3 )等の粉体、繊維或はウイスカ等が挙げられる。
又、上記絶縁層の強度を向上させるべく、上記合成樹脂に繊維材を混合する事もできる。この繊維材としては、例えば、ガラス繊維、セラミックス繊維、岩石繊維、スラッグ繊維等が挙げられる。
又、上記絶縁層の耐衝撃性を向上させるべく、上記合成樹脂に弾性材を混合する事もできる。この弾性材として、例えば、エチレン・プロピレン・ジエン三元重合体(EPDM)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等が挙げられる。
更に、上記絶縁層の絶縁性能をより向上させるべく、上記合成樹脂に充填材を添加する事もできる。この充填材として、例えば、炭化珪素(SiC )、窒化アルミニウム(AlN )、ベリリア(BeO )、窒化ホウ素(BN)、アルミナ(Al2O3 )等の粉体、繊維或はウイスカ等が挙げられる。
上述の様に構成する本発明の電食防止用絶縁転がり軸受によれば、転がり軸受を回転支持部に組み込んだ場合に、係止溝とこの係止溝を形成した軌道輪を組み込む相手部材との間で放電現象が生じる事を防止できる。即ち、係止溝にも絶縁層を被覆している為、この係止溝の表面と相手部材の表面との距離が近くても、これら各面同士の間で放電現象が生じる事を防止できる。
又、請求項2に記載した様に、上記係止溝に係止する密封装置として、導電性を有する、例えばカーボンブラックを添加した弾性材を備えるシールリングを使用している場合、或は、金属製のシールド板を使用している場合でも、これらシールリング或はシールド板を通じて、電流が流れる事を防止できる。又、仮に、上記相手部材の表面とこれらシールリング或はシールド板との間で放電現象が生じても、軌道輪側に電流が流れる事はない。従って、少なくとも両軌道輪と転動体との間で、電食が生じる事を防止できる。
又、請求項2に記載した様に、上記係止溝に係止する密封装置として、導電性を有する、例えばカーボンブラックを添加した弾性材を備えるシールリングを使用している場合、或は、金属製のシールド板を使用している場合でも、これらシールリング或はシールド板を通じて、電流が流れる事を防止できる。又、仮に、上記相手部材の表面とこれらシールリング或はシールド板との間で放電現象が生じても、軌道輪側に電流が流れる事はない。従って、少なくとも両軌道輪と転動体との間で、電食が生じる事を防止できる。
又、請求項3に記載した発明の場合には、アルミナを99重量%以上含有するセラミックス溶射層を使用しているが、この様なセラミックス溶射層は、比較的電気抵抗値が大きい(優れた絶縁性を有する)。従って、研磨後の絶縁層の厚さを0.25mm以上確保すれば、例えば、一般産業用汎用モータ等の回転支持部の電食防止効果を十分に確保できる。
又、研磨後の絶縁層の厚さを0.25mm以上確保する為には、研磨前のセラミックス溶射層の厚さを0.4mm以下としても、十分に研磨代を確保できる。そして、このセラミックス溶射層の厚さを0.4mm以下に抑えられれば、隣り合う面同士の間の折れ曲がり連続部を覆ったセラミックス溶射層の厚さを0.5mm未満(更には0.48mm以下)に抑えられる。厚さが0.5mm(更には0.48mm)程度のセラミックス溶射層であれば、厚さ寸法が過大であるとは言えず、そのままであっても(研磨により厚さ寸法を小さくしなくても)、割れ、欠け等の損傷を発生しにくい。従って、上記セラミックス溶射層のうちで上記折れ曲がり連続部を被覆した部分を研磨する手間を省略して、コスト低減を図れる。又、コスト低減は、上記セラミックス溶射層の厚さを小さく{従来は0.5mm以上であったもの(一般的には0.6〜0.7mm程度)を0.4mm以下に}抑えられる事によっても図れる。
又、研磨後の絶縁層の厚さを0.25mm以上確保する為には、研磨前のセラミックス溶射層の厚さを0.4mm以下としても、十分に研磨代を確保できる。そして、このセラミックス溶射層の厚さを0.4mm以下に抑えられれば、隣り合う面同士の間の折れ曲がり連続部を覆ったセラミックス溶射層の厚さを0.5mm未満(更には0.48mm以下)に抑えられる。厚さが0.5mm(更には0.48mm)程度のセラミックス溶射層であれば、厚さ寸法が過大であるとは言えず、そのままであっても(研磨により厚さ寸法を小さくしなくても)、割れ、欠け等の損傷を発生しにくい。従って、上記セラミックス溶射層のうちで上記折れ曲がり連続部を被覆した部分を研磨する手間を省略して、コスト低減を図れる。又、コスト低減は、上記セラミックス溶射層の厚さを小さく{従来は0.5mm以上であったもの(一般的には0.6〜0.7mm程度)を0.4mm以下に}抑えられる事によっても図れる。
又、請求項4、5に記載した電食防止用絶縁転がり軸受の発明によれば、アルミナの溶射層に、酸化チタン、ジルコニアのうちの何れかを含有する事により、絶縁性能の確保と、耐久性の確保と、低コスト化と、良好な外観の確保とを、高次元で並立させる事ができる。
特に、アルミナの含有量を99重量%以上とし、アルミナの溶射層に含有する酸化チタンを、0.01〜0.2重量%、或は、アルミナの含有量を97重量%以上とし、アルミナの溶射層に含有するジルコニアの含有量を、0.5〜2.5重量%とすれば、良好な外観の確保をより図り易くなる。即ち、アルミナを主成分とするセラミックス溶射層のうち、酸化チタン等を含まないホワイトアルミナの場合には、絶縁性能が優れている反面、封孔処理に伴って外観が悪化する。これに対して、上述した発明の場合には、0.01重量%以上の酸化チタン、或は、0.5重量%以上のジルコニアを含有している為、上記封孔処理に拘らず、外観悪化に結び付く様な色むらは発生しない。即ち、セラミックス溶射層内部に存在する微細な空隙を合成樹脂により塞ぐ為の封孔処理に伴って、この合成樹脂の一部が上記セラミックス溶射層の表面に表れる。表面の色彩が純白に近い、ホワイトアルミナの場合、この様に表面に表れた合成樹脂により、表面に色むらを生じて、製品の外観を悪くする。これに対して、0.01重量%以上の酸化チタンを含有したグレイアルミナ、或は、0.5重量%以上のジルコニアを含有したものの場合には、表面の色彩がグレー(灰色)がかっている為、上記封孔処理に使用する合成樹脂として、適切な(灰色系統の)色彩のものを使用すれば、表面に、製品の外観を悪くする程の色むらを生じる事はない。
特に、アルミナの含有量を99重量%以上とし、アルミナの溶射層に含有する酸化チタンを、0.01〜0.2重量%、或は、アルミナの含有量を97重量%以上とし、アルミナの溶射層に含有するジルコニアの含有量を、0.5〜2.5重量%とすれば、良好な外観の確保をより図り易くなる。即ち、アルミナを主成分とするセラミックス溶射層のうち、酸化チタン等を含まないホワイトアルミナの場合には、絶縁性能が優れている反面、封孔処理に伴って外観が悪化する。これに対して、上述した発明の場合には、0.01重量%以上の酸化チタン、或は、0.5重量%以上のジルコニアを含有している為、上記封孔処理に拘らず、外観悪化に結び付く様な色むらは発生しない。即ち、セラミックス溶射層内部に存在する微細な空隙を合成樹脂により塞ぐ為の封孔処理に伴って、この合成樹脂の一部が上記セラミックス溶射層の表面に表れる。表面の色彩が純白に近い、ホワイトアルミナの場合、この様に表面に表れた合成樹脂により、表面に色むらを生じて、製品の外観を悪くする。これに対して、0.01重量%以上の酸化チタンを含有したグレイアルミナ、或は、0.5重量%以上のジルコニアを含有したものの場合には、表面の色彩がグレー(灰色)がかっている為、上記封孔処理に使用する合成樹脂として、適切な(灰色系統の)色彩のものを使用すれば、表面に、製品の外観を悪くする程の色むらを生じる事はない。
但し、上記酸化チタンを、0.2重量%、或は、上記ジルコニアを2.5重量%を越えて含有させると、必要とする絶縁性能を確保する為に要する、上記セラミックス溶射層の厚さが大きくなる。そこで、上記酸化チタンの含有量を0.01〜0.2重量%、或は、上記ジルコニアの含有量を0.5〜2.5重量%の範囲に規制する。
尚、セラミックス溶射層中に於ける、上記酸化チタンの含有量を0.2重量%以下、或は、上記ジルコニアの含有量を2.5重量%以下に抑える事により、溶射層形成時の材料(アルミナ粒)の歩留が多少は悪化する。但し、請求項6に記載した様に、粒径が10〜50μmで、平均粒径が15〜25μmであるアルミナを使用すれば、上記セラミックス溶射層を構成するアルミナの付着効率を向上させる事と合わせて、上記セラミックス溶射層の厚さ寸法に関する精度を向上させ、コスト上昇を抑えられる。即ち、付着効率の向上による材料費の節約と、寸法精度の向上による仕上加工の容易化(仕上加工時間の短縮化)とにより、電食防止用絶縁転がり軸受の製造コストの低廉化を図れる。
更に、アルミナの溶射層に、高強度、高靱性を有するジルコニアを含有させた場合には、このアルミナの溶射層の密着力を向上させる事ができる。この為、耐久性を十分に確保できる。
尚、セラミックス溶射層中に於ける、上記酸化チタンの含有量を0.2重量%以下、或は、上記ジルコニアの含有量を2.5重量%以下に抑える事により、溶射層形成時の材料(アルミナ粒)の歩留が多少は悪化する。但し、請求項6に記載した様に、粒径が10〜50μmで、平均粒径が15〜25μmであるアルミナを使用すれば、上記セラミックス溶射層を構成するアルミナの付着効率を向上させる事と合わせて、上記セラミックス溶射層の厚さ寸法に関する精度を向上させ、コスト上昇を抑えられる。即ち、付着効率の向上による材料費の節約と、寸法精度の向上による仕上加工の容易化(仕上加工時間の短縮化)とにより、電食防止用絶縁転がり軸受の製造コストの低廉化を図れる。
更に、アルミナの溶射層に、高強度、高靱性を有するジルコニアを含有させた場合には、このアルミナの溶射層の密着力を向上させる事ができる。この為、耐久性を十分に確保できる。
一方、絶縁性の皮膜を合成樹脂製の絶縁層とした場合で、この絶縁層に、前述した様な繊維材を混合した場合には、この絶縁層の強度を確保して、耐クリープ性を向上させられる。又、この絶縁層に、前述した様な弾性材を混合した場合には、耐衝撃性を向上させられる。又、この絶縁層に、前述した様な充填材を添加した場合には、絶縁性能の向上を図れると共に、伝熱性を向上させて転がり軸受内の温度上昇を抑える事ができる。
[実施の形態の第1例]
図1〜3は、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本発明の特徴は、外輪3bを金属製のハウジング12に嵌合した場合でも、このハウジング12の表面とこの外輪3bの両端部内周面に形成した係止溝11、11との間で放電現象が生じる事を防止すべく、上記両係止溝11、11にも絶縁層6aを被覆する点にある。その他の構造及び作用は、前述の図6〜8に示した従来構造と同様である。この為、上記図6〜8に示した構造と同様の部分及び重複する図示を省略或は簡略にし、以下、本例の特徴部分及び従来構造と異なる部分を中心に説明する。
図1〜3は、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本発明の特徴は、外輪3bを金属製のハウジング12に嵌合した場合でも、このハウジング12の表面とこの外輪3bの両端部内周面に形成した係止溝11、11との間で放電現象が生じる事を防止すべく、上記両係止溝11、11にも絶縁層6aを被覆する点にある。その他の構造及び作用は、前述の図6〜8に示した従来構造と同様である。この為、上記図6〜8に示した構造と同様の部分及び重複する図示を省略或は簡略にし、以下、本例の特徴部分及び従来構造と異なる部分を中心に説明する。
本例の場合、上記外輪3bの外周面13及びこの外輪3bの軸方向両端面14、14に加えて、上記両係止溝11、11の表面にも、セラミックス製の絶縁層6aを被覆している。この絶縁層6aは、アルミナを99重量%以上含むセラミックスの溶滴を上記外周面13及び軸方向両端面14、14、更には両係止溝11、11に、例えばプラズマ溶射により噴射して成る、セラミックス溶射層である。この様なセラミックス溶射層である、上記絶縁層6aは、上記外周面13、軸方向両端面14、14及び両係止溝11、11の他、この外周面13の軸方向両端縁とこれら軸方向両端面14、14の外周縁とを連続させる、断面四分の一円弧状の折れ曲がり連続部15、15の表面も覆っている。又、上記軸方向両端面14、14の内周縁と上記両係止溝11、11の軸方向両端縁との連続部も、上記絶縁層6aにより覆っている。
従って、本例の場合、上記外輪3bの表面のうち、上記外周面13から、折れ曲がり連続部15、15、軸方向両端面14、14、両係止溝11、11までの部分を、上記絶縁層6aにより覆っている。又、これら両係止溝11、11の表面で上記絶縁層6aにより覆う部分は、これら両係止溝11、11の軸方向内側の側面16の内周縁までとしている。
又、上記両係止溝11、11を除く上記各面13、14、15を覆っている、上記絶縁層6aの厚さ寸法T13、T14、T15(図2参照)のうち、上記外周面13及び軸方向両端面14、14の表面を覆っている部分の厚さ寸法T13、T14に関しては、0.4mm以下に抑えている。そして、これら各部分の厚さ寸法T13、T14を0.4mm以下に抑える事により、上記両折れ曲がり連続部15、15の表面を覆っている部分の厚さ寸法T15を、0.5mm未満(好ましくは0.48mm以下)に抑えている。
又、上記各面13、14、15を覆う絶縁層6aのうち、上記外周面13及び軸方向両端面14、14の表面を覆っている部分を研磨する事により、これら各部分を平滑面とし、これら各面13、14と上記外輪3bを内嵌固定する、相手部材であるハウジング12(図3)の内面とが密に当接する様にしている。この様な研磨に伴って、上記各面13、14を覆っている上記絶縁層6aの表面部分(図2の斜格子部分)が、図2に示した研磨取代δ分だけ除去されて、この絶縁層6aの厚さ寸法が、セラミックス溶射層を形成した状態よりも薄くなっている。但し、上記研磨取代δを除去した後の厚さt13(=T13−δ)、t14(=T14−δ)に関しても、0.25mm以上確保している。これに対して、上記絶縁層6aのうちで上記両折れ曲がり連続部15、15の表面を覆っている部分に関しては、コスト低減の為に、研磨する事なく、そのままの(セラミックスの溶滴を噴射したままの)状態としている。
又、前記両係止溝11、11を覆う絶縁層6aに就いては、少なくとも0.25mm以上の厚さを確保する事が好ましい。即ち、これら両係止溝11、11は、上記外周面13及び軸方向両端面14、14に比べて形状が複雑である為、上記絶縁層6aの厚さを規制する事は難しい。従って、上記両係止溝11、11の表面を覆う絶縁層6aの厚さにばらつきが生じ易い。但し、近年の溶射技術の向上により、或る程度厚さを規制する事は可能である。この為、溶射の際に注意して、上記両係止溝11、11を覆う絶縁層6aの厚さを、0.25mm以上とする事が好ましい。この様に、0.25mm以上の膜厚を確保できれば、十分な絶縁性能を確保できる。
尚、上記両係止溝11、11に係止する密封装置が、芯金9により弾性材10を補強して成るシールリング7、7(図7参照)の場合、上記両係止溝11、11に係止されるのは、上記弾性材10部分である。従って、前記ハウジング12に内嵌支持される部分である上記外周面13及び軸方向両端面14、14と比べて、絶縁層6aが多少厚くても、割れや欠け等の損傷が生じにくい。従って、上記両係止溝11、11に上記両シールリング7、7を係止する場合には、これら両係止溝11、11を覆う絶縁層6aの厚さは、次述する機能的な問題がない範囲で、大きくなっても良い。これに対して、例えば、シールド板8、8(図8参照)を係止する場合等には、絶縁層6aに割れや欠け等の損傷が生じる可能性がある為、溶射方法を工夫したり、溶射層に研磨を施す等して、上記両係止溝11、11を覆う絶縁層6aの厚さを、0.5mm以下に抑える事が好ましい。
又、上記両係止溝11、11に係止する部材が、上記シールリング7、7とシールド板8、8との何れであっても、溶射後の寸法を考慮した上で、溶射前の上記両係止溝11、11の寸法を規制する事が好ましい。即ち、上述した様に、これら両係止溝11、11に絶縁層6aを溶射する場合、厚さを規制する事が難しい。従って、予め、溶射層がどの様に形成されるかを調べた上で、絶縁層6aを形成する前の上記両係止溝11、11の寸法を規制し、溶射後でも、上記シールリング7、7或はシールド板8、8を係止する上で、機能的に問題が生じない様にする。例えば、絶縁層6aを形成した後の係止溝11、11の両内側面で上記両部材7、8を係止する部分の間隔が大き過ぎたり、或は、これら両部材7、8を係止する部分の間隔が狭過ぎない様にする。そして、これらシールリング7、7或はシールド板8、8を十分に奥まで進入させる事ができず、これらシールリング7、7或はシールド板8、8が外れ易くなったり、或は、これらシールリング7、7或はシールド板8、8を係止する際に、過大な力が必要となる事を防止する。
上述の様に構成する本例の電食防止用絶縁転がり軸受によれば、転がり軸受を回転支持部に組み込んだ場合に、係止溝11、11とこれら両係止溝11、11を形成した外輪3bを嵌合するハウジング12との間で放電現象が生じる事を防止できる。即ち、前述した従来構造の場合には、図10(B)に示す様に、係止溝11、11に絶縁層を形成していない為、ハウジング12の一部表面と、外輪3aの表面のうちで、絶縁層により被覆されていない部分(即ち、係止溝11の軸方向端縁)との距離L1 が短くなる。この為、電位差が、例えば1500V以上と大きい場合には、上記ハウジング12の一部表面と上記両係止溝11、11の表面との間で、放電現象が生じる可能性がある。これに対して、本例の場合、係止溝11、11を絶縁層6aにより覆っている為、図3(B)に示す様に、外輪3bをハウジング12に、このハウジング12の一部と上記両係止溝11、11とが隣接する様に組み込んでも、このハウジング12の一部表面と、この外輪3bの表面のうちで、絶縁層6aにより被覆されていない部分(即ち、係止溝11の側面16の内周縁)との距離L2 を、上記図10に示した構造の距離L1 よりも大きくできる。従って、上記ハウジング12の一部表面と上記両係止溝11、11の表面との間で、放電現象が生じる事を防止できる。
又、本例の場合、例えば、シールリング7、7として、導電性を有するカーボンブラックを添加したアクリロニトリルブタジエンゴム製の弾性材10を使用したり、金属製のシールド板8、8を使用した場合でも、少なくとも外輪3b側に電流が流れる事を防止できる。即ち、上記両係止溝11、11を絶縁層6aにより覆わずに、導電性を有するシールリング7、7或は金属製のシールド板8、8を使用した場合、これらシールリング7、7或はシールド板8、8の表面とハウジング12の表面との間で生じる放電現象により、これらシールリング7、7或はシールド板8、8を通じて電流が流れ易くなる。これに対して、本例の場合、これらシールリング7、7或はシールド板8、8を係止する上記両係止溝11、11を絶縁層6aにより覆っている為、上記放電現象を防止して、上記シールリング7、7或はシールド板8、8を通じて電流が流れる事を防止できる。
但し、上述の様に、導電性を有するシールリング7、7或は金属製のシールド板8、8を、上記両係止溝11、11に係止した状態では、これらシールリング7、7或はシールド板8、8の外周縁部のうち、これら両係止溝11、11から露出した部分と上記ハウジング12の表面との距離が短くなる。この場合でも、この距離は、前述の図10(B)に示した構造での、ハウジング12の表面と係止溝11、11の表面との距離L1 よりも大きい。従って、このハウジング12の表面と上記シールリング7、7或はシールド板8、8との間で、放電現象は生じにくい。又、仮に、上記ハウジング12の表面と上記シールリング7、7或はシールド板8、8との間で放電現象が生じても、上記係止溝11、11を絶縁層6aにより覆っている為、電流が外輪3b側に流れる事は無い。従って、上記シールリング7、7或はシールド板8、8の内周縁部と内輪の両端部外周面との間で放電現象が生じる可能性があるが、外輪軌道4若しくは内輪軌道と各転動体との接触部で電食が生じる事はない。
又、絶縁性能の確保は、上記絶縁層6aを構成するセラミックス溶射層として、アルミナを99重量%以上含有するものを使用する事により図れる。即ち、アルミナを99重量%以上含有するセラミックス溶射層は電気抵抗値が大きい(優れた絶縁性を有する)為、使用状態での絶縁層6aの厚さを0.25mm以上確保すれば、電位差が大きくても、電食防止効果を十分に確保できる。
又、前記外輪3bの外周面13及び軸方向両端面14、14を覆う絶縁層6aの場合、研磨後のこの絶縁層6aの厚さを0.25mm以上確保する為には、研磨前のセラミックス溶射層の厚さを0.4mm以下としても、十分に(最大で0.15mm程度の)研磨代を確保できる。即ち、前記外輪3bの外周面13を覆う絶縁層6aの表面と、前記ハウジング12の内面とを均一に当接させて、上記外輪3bの姿勢を安定させると共に、上記絶縁層6aの一部に過大な力が加わる事を防止する為には、上記外周面13及び軸方向両端面14、14の表面を覆っている部分を研磨する必要がある。この場合でも、必要な研磨代は0.15mm以下であるから、上記研磨前のセラミックス溶射層の厚さを0.4mm以下に抑えても、研磨後の絶縁層6aの厚さを0.25mm以上確保できる。
そして、上記各面13、14を覆うセラミックス溶射層の厚さを0.4mm以下に抑えられれば、前述した通り、前記両折れ曲がり連続部15、15の表面を覆っている部分の厚さ寸法T15を、0.5mm(更には0.48mm)以下に抑えられる。即ち、上記両折れ曲がり連続部15、15には、上記外周面13に径方向外方から噴射するセラミックス溶滴、及び、上記軸方向両端面14、14に軸方向外方から噴射するセラミックス溶滴が付着する。この為、上記両折れ曲がり連続部15、15を覆うセラミックス溶射層の厚さ寸法は、上記外周面13及び上記軸方向両端面14、14を覆うセラミックス溶射層の厚さ寸法よりも大きくなる。この場合でも、上記厚さ寸法T15を0.5mm以下に抑えれば、上記両折れ曲がり連続部15、15を覆っているセラミック溶射層に、割れや欠け等の損傷が生じにくくできる。
[実施の形態の第2例]
図4は、本発明の実施形態の第2例を示している。本例の場合、外輪3cの外周面13、軸方向両端面14、14及び両折れ曲がり連続部15、15、更には係止溝11、11を、例えば、PPS樹脂等の合成樹脂製の絶縁層6bにより被覆している。本例の場合には、上記外輪3cの外周面13及び軸方向両端面14、14に、それぞれ凹部17、17を形成している。そして、上記絶縁層6bを上記各面13、14、15、11に被覆した状態で、この絶縁層6bのうちで、上記各凹部17、17と整合する位置に形成された凸部18、18が、これら各凹部17、17と係合する。この結果、上記外輪3cの各面13、14、15、11と上記絶縁層6bとの結合力を高められ、この絶縁層6bのこれら各面13、14、15、11からの分離を防止できる。
図4は、本発明の実施形態の第2例を示している。本例の場合、外輪3cの外周面13、軸方向両端面14、14及び両折れ曲がり連続部15、15、更には係止溝11、11を、例えば、PPS樹脂等の合成樹脂製の絶縁層6bにより被覆している。本例の場合には、上記外輪3cの外周面13及び軸方向両端面14、14に、それぞれ凹部17、17を形成している。そして、上記絶縁層6bを上記各面13、14、15、11に被覆した状態で、この絶縁層6bのうちで、上記各凹部17、17と整合する位置に形成された凸部18、18が、これら各凹部17、17と係合する。この結果、上記外輪3cの各面13、14、15、11と上記絶縁層6bとの結合力を高められ、この絶縁層6bのこれら各面13、14、15、11からの分離を防止できる。
上記外輪3cの各面13、14、15、11に上記絶縁層6bを被覆する方法として、例えば、この外輪3cにこの絶縁層6bをモールド成形により固設する方法がある。この場合、モールド成形時に、この絶縁層6bの一部が上記各凹部17、17に入り込み、上記各凸部18、18が形成される。
又、上述の様に絶縁層6bを合成樹脂製とした場合も、上記外輪3cの外周面13、軸方向両端面14、14及び折れ曲がり連続部15、15、更には係止溝11、11に被覆する絶縁層6bの(凸部18、18を除く)厚さを、それぞれ適正に規制すれば、絶縁性能の確保と、割れ等の損傷の防止とを高次元で両立させる事ができる。例えば、上記各面13、14、15、11のそれぞれの厚さを、0.2〜1.0mm、好ましくは0.25〜0.5mmとする。その他の構造及び作用は、上述の第1例と同様である。
本発明の効果を確認する為に行なった実験に就いて説明する。この実験では、転がり軸受の外輪の係止溝に絶縁層を被覆した試料(実施例)と、被覆していない試料(比較例)とをそれぞれ3個ずつ(合計6個)用意し、それぞれの耐電圧を調べた。試験軸受として、何れの場合も、呼び番号6316(外径170mm、内径80mm、幅39mm)の深溝型玉軸受を使用した。又、絶縁層は、アルミナを99重量%以上含有するセラミックスの溶射層とした。更に、実施例の係止溝の絶縁層の厚さは、250μm (0.25mm)以上とした。尚、何れの試験軸受の場合も、上記外輪の外周面及び軸方向両端面を、厚さが0.25〜0.4mmの絶縁層により覆った。そして、この様に構成される試験軸受を、それぞれ前述の図3(B)に示した構造の様に、ハウジングの一部と係止溝とが隣接する様に組み込み、このハウジングと係止溝との間で放電現象が生じる電圧を調べた。この実験の結果を、図5に示す。この図5から明らかな様に、係止溝に絶縁層を形成していない比較例の場合、電位差が1500V程度で放電現象が生じるものがあった。これに対して、係止溝に絶縁層を形成した実施例の場合、電位差が2000V以上、更には2500V程度であっても、放電現象の発生を防止できた。
上述した各例では、外輪に絶縁層を形成した構造に就いて説明したが、内輪に係止溝を有する場合には、絶縁層を内輪の内周面、軸方向両端面、及び、係止溝に形成する。又、本発明を適用できる転がり軸受は、上述した様な単列深溝型のラジアル玉軸受に限らず、アンギュラ型、複列等、他の型式のラジアル玉軸受や、円すいころ軸受、円筒ころ軸受、自動調心ころ軸受、スラスト玉軸受或いはスラストころ軸受等、他の型式の転がり軸受で実施する事もできる。スラスト転がり軸受で実施する場合に絶縁層は、内外両周面、軸方向片面及び係止溝に形成する。
1 内輪
2 内輪軌道
3、3a、3b、3c 外輪
4 外輪軌道
5 転動体
6、6a 、6b 絶縁層
7 シールリング
8 シールド板
9 芯金
10 弾性材
11 係止溝
12 ハウジング
13 外周面
14 端面
15 折れ曲がり連続部
16 側面
17 凹部
18 凸部
2 内輪軌道
3、3a、3b、3c 外輪
4 外輪軌道
5 転動体
6、6a 、6b 絶縁層
7 シールリング
8 シールド板
9 芯金
10 弾性材
11 係止溝
12 ハウジング
13 外周面
14 端面
15 折れ曲がり連続部
16 側面
17 凹部
18 凸部
Claims (7)
- 互いに同心に配置された、それぞれが金属製である1対の軌道輪と、これら両軌道輪の互いに対向する面に形成された1対の軌道面同士の間に転動自在に設けられた、それぞれが金属製である複数個の転動体と、上記両軌道輪のうちの一方の軌道輪のうちで軌道面を形成した部分の両端部表面にそれぞれ形成した係止溝に係止され、上記各転動体を設置した空間と外部とを遮断する密封装置とを備え、上記両軌道輪のうちの少なくとも一方の軌道輪の表面のうちで軌道面を設けた面以外の面を、絶縁性の皮膜により被覆した電食防止用絶縁転がり軸受に於いて、上記一方の軌道輪に形成された上記両係止溝にも、絶縁性の皮膜を被覆している事を特徴とする電食防止用絶縁転がり軸受。
- 密封装置が、導電性を有する弾性材を備えるシールリング、或は、金属製のシールド板である、請求項1に記載した電食防止用絶縁転がり軸受。
- 絶縁性の皮膜が、アルミナを99重量%以上含有するセラミックス製の絶縁層であり、この絶縁層のうち、軌道輪の表面のうちの軌道面を設けた面以外の面に形成した絶縁層は、セラミックス溶射層の表面を研磨する事により形成したものであり、このセラミックス溶射層の厚さは、隣り合う面同士の間の折れ曲がり連続部を除いて0.4mm以下であり、このセラミックス溶射層を研磨して得られた上記絶縁層の厚さは0.25mm以上である、請求項1又は請求項2に記載した電食防止用絶縁転がり軸受。
- 絶縁性の皮膜がセラミックス製の絶縁層であり、この絶縁層が、アルミナの含有量が99重量%以上で、酸化チタンを0.01〜0.2重量%含有する溶射層である、請求項1〜3のうちの何れか1項に記載した電食防止用絶縁転がり軸受。
- 絶縁性の皮膜がセラミックス製の絶縁層であり、この絶縁層が、アルミナの含有量が97重量%以上で、ジルコニアを0.5〜2.5重量%含有する溶射層である、請求項1又は請求項2に記載した電食防止用絶縁転がり軸受。
- 絶縁層であるセラミックス溶射層の厚さ寸法に関する精度と、このセラミックス溶射層を構成するアルミナの付着効率の向上とを目的として、粒径が10〜50μmで、平均粒径が15〜25μmであるアルミナを使用した、請求項3〜5のうちの何れか1項に記載した電食防止用絶縁転がり軸受。
- 絶縁性の皮膜が合成樹脂製の絶縁層である、請求項1又は請求項2に記載した電食防止用絶縁転がり軸受。
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US11/994,284 US8425120B2 (en) | 2005-10-27 | 2006-10-26 | Electrolytic erosion preventing insulated rolling bearing, manufacturing method thereof, and bearing device |
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JP (1) | JP2008039032A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2017053481A (ja) * | 2014-12-24 | 2017-03-16 | トーカロ株式会社 | 絶縁軸受、並びに軸受のコーティング方法 |
-
2006
- 2006-08-04 JP JP2006213136A patent/JP2008039032A/ja active Pending
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