JP2008031360A - 水性樹脂分散体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下記プロピレン系重合体(A1)及び(A2)が不飽和有機酸誘導体により変性されてなる変性プロピレン系重合体が、水に分散されてなる、水性樹脂分散体、及びその製造方法。
(A1):融点が無いか又は融点が75℃未満であり、重量平均分子量が10,000〜100,000であるプロピレン系重合体
(A2):融点が70℃以上120℃未満であり、重量平均分子量が100,000〜500,000であり、かつ(A1)の重量平均分子量の1.5倍以上であるプロピレン系重合体
【選択図】 なし
Description
即ち本発明は、下記プロピレン系重合体(A1)及び(A2)、即ち
(A1):融点が無いか又は融点が75℃未満であり、重量平均分子量が10,000〜100,000であるプロピレン系重合体、
(A2):融点が70℃以上120℃未満であり、重量平均分子量が100,000〜500,000であり、かつ(A1)の重量平均分子量の1.5倍以上であるプロピレン系重合体、
が不飽和有機酸誘導体により変性されてなる変性プロピレン系重合体が水に分散されてなることを特徴とする水性樹脂分散体に関する。
また本発明は、前記重合体(A1)及び(A2)は、混合された後、不飽和有機酸誘導体により変性されてなる水性樹脂分散体に関する。
また本発明は、前記重合体(A1)及び(A2)は、それぞれ不飽和有機酸誘導体により変性されたのち、混合されてなる水性樹脂分散体に関する。
また本発明は、前記重合体(A1)及び/又は(A2)が、メタロセン触媒を用いて製造されてなる水性樹脂分散体に関する。
また本発明は、前記親水性高分子(B)が、ポリアルキレン構造を有するポリエーテル樹脂である水性樹脂分散体に関する。
また本発明は、前記親水性高分子(B)が、前記重合体(A1)及び/又は(A2)にグラフト結合してなる水性樹脂分散体に関する。
更に本発明は、変性プロピレン系重合体が水に分散されてなる水性樹脂分散体の製造方法であって、上記プロピレン系重合体(A1)及び(A2)をそれぞれ不飽和有機酸誘導体によって変性したのち混合し、次いで水に分散することを特徴とする水性樹脂分散体の製造方法に関する。
本発明の水性樹脂分散体を用いたコーティング剤は有機溶剤系コーティング剤と遜色ない特性を有するので、従来は有機溶剤の溶液として塗布していた用途にも使用でき、安全衛生面でも好ましい。また有機溶剤溶液ではないのでVOC(揮発性有機化学物質)排出が低減でき環境面でも好ましい。更に実質的に塩素を含まないで優れた性質の水性樹脂分散体を得ることができる。塩素を含まない場合、ダイオキシン等や毒性等の問題が無く、環境面で非常に好ましい。
なお本発明においては必ずしもすべての効果を発現することを必須とするものではなく、上記した1以上の効果があればよいものとする。
(A1):融点が無いか又は融点が75℃未満であり、重量平均分子量が10,000〜100,000であるプロピレン系重合体
(A2):融点が70℃以上120℃未満であり、重量平均分子量が100,000〜500,000であり、かつ(A1)の重量平均分子量の1.5倍以上であるプロピレン系重合体
即ち、低融点かつ低分子量のプロピレン系重合体(A1)を不飽和有機酸誘導体により変性してなる変性プロピレン系重合体と、高融点かつ高分子量のプロピレン系重合体(A2)を不飽和有機酸誘導体により変性してなる変性プロピレン系重合体とが水に分散されてなる。なお本発明において分散とは、分散粒子が極めて小さく単分子で分散している状態、実質的には溶解と言えるような状態を含む概念である。
本発明においてプロピレン系重合体の融点は、パーキンエルマー社製熱分析システム(DSC−7)を使用して、以下の方法で求められる。試料(約5〜10mg)を160℃で3分間融解後、10℃/分の速度で−20℃まで降温し、−20℃にて2分間保持した後、10℃/分で160℃まで昇温することにより融解曲線を得、最後の昇温段階における主吸熱ピークのピークトップ温度を融点として求めた。また本発明において「融点が無い」とは、上記測定方法で0℃から160℃の範囲において、吸熱量が0.5J/g以上の明確な吸熱ピークが観測されない状態を言う。
本発明のプロピレン系重合体(A2)は、融点が70℃以上120℃未満である。塗膜の強度を高め、高い耐水性、耐溶剤性等を持つためには70℃以上とする必要がある。好ましくは重合体(A1)よりも融点が高温である。より好ましくは下限値が75℃である。一方、低温での焼付けを行うためには120℃未満とする必要がある。好ましい上限値は110℃未満、より好ましくは100℃未満、更に好ましくは90℃未満である。
一方、重合体(A1)及び(A2)をそれぞれ不飽和有機酸誘導体により変性したのち混合した場合は、通常、上記(A1)及び(A2)の分子量分布を足し合わせた、高分子量域と低分子量域に2つのピークがある二峰性の形状を示す。
目的やコスト等、必要に応じていずれかの方法を選べばよいが、通常、重合体(A1)及び(A2)を混合した後、不飽和有機酸誘導体により変性を行う方が簡便であり、分散粒子径がやや小さい傾向がある。
以下、より詳細に説明する。
プロピレン系重合体(A1)、(A2)は、分子量、融点以外の点では基本的に同様のものを用いうるので、以下では両者について説明する。
プロピレン系重合体としては、公知の各種プロピレン系重合体を用いることができ、特に限定されないが、例えば、プロピレンの単独重合体、プロピレンとその他のコモノマー、例えばエチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、シクロペンテン、シクロヘキセン、及びノルボルネンなどの炭素数2以上のα−オレフィンコモノマーから選ばれる1種以上との共重合体を用いることができる。α−オレフィンコモノマーとして好ましくは炭素数2〜8のα−オレフィンコモノマーであり、より好ましくは炭素数2〜6のα−オレフィンコモノマーである。
なおプロピレン系重合体は直鎖状であっても分岐状であってもよい。
プロピレン単独重合体又は共重合体の最も好ましい形態のひとつとしては、立体規則性として全体又は部分的にアイソタクチック構造を有するものである。例えば通常のアイソタクチックポリプロピレンは勿論のこと、特開2003−231714号公報やUS4,522,982号公報に記載されているような、アイソタクチックブロックポリプロピレンや、ステレオブロックポリプロピレン等も使用しうる。
より好ましくは、13C−NMRにて、頭−尾結合からなるプロピレン単位連鎖部のメチル基の炭素原子に由来するピークを観測し、mmmmで表されるペンタッドに帰属されるピークのピークトップのケミカルシフトを21.8ppmとした際に、19.8ppmから22.1ppmに現れるピークの総面積Sに対する、21.8ppmをピークトップとするピークの面積S1の比率(S1/S)が20%〜70%の範囲である。下限値の好ましい値は30%、さらに好ましくは35%である。上限値の好ましい値は65%、さらに好ましくは60%、より好ましくは55%である。下限値より高いほどべたつき度合いが小さくなる傾向があり、また上限値より低いほど結晶化度が低くなり水性樹脂分散体の調製が容易になる傾向がある。
本発明のプロピレン系重合体の製法については、本発明の要件を満たす重合体を製造できれば特に限定されず、いかなる製法であってもよい。例えばラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、配位重合などが挙げられ、それぞれリビング重合的であってもよい。
以下、不飽和有機酸誘導体によって変性されたプロピレン系重合体を不飽和有機酸変性プロピレン系重合体と称する。不飽和有機酸誘導体とは、不飽和基を含む有機酸、又はそのエステル化物、無水物等の総称である。不飽和有機酸誘導体としては、不飽和カルボン酸、ジカルボン酸無水物、及びジカルボン酸無水物モノエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。反応性が高く、これらの基を有する不飽和化合物も多くプロピレン系重合体へ共重合又はグラフト反応させるのも容易であるし、後述する親水性高分子とも結合しやすく、好ましい。例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸又はその無水物或いは無水物モノエステル、イタコン酸又はその無水物或いは無水物モノエステル、クロトン酸、スチレンスルホン酸などが挙げられる。なかでも好ましいのは、マレイン酸又はその無水物或いは無水物モノエステルである。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお(メタ)アクリル酸とはアクリル酸とメタクリル酸の総称である。
グラフト重合に用いるラジカル重合開始剤としては、通常のラジカル開始剤から適宜選択して使用することができ、例えば有機過酸化物、アゾニトリル等を挙げることができる。有機過酸化物としては、ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンなどのパーオキシケタール類、クメンヒドロパーオキシドなどのハイドロパーオキシド類、ジ(t−ブチル)パーオキシドなどのジアルキルパーオキサイド類、ベンゾイルパーオキシドなどのジアシルパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボナートなどのパーオキシエステル類が使用できる。アゾニトリルとしてはアゾビスブチロニトリル、アゾビスイソプロピルニトリル等が挙げられる。なかでもベンゾイルパーオキシド及びt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボナートが特に好ましい。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
不飽和有機酸変性プロピレン系重合体の製法については、本発明の要件を満たす重合体を製造できれば特に限定されず、いかなる製法であってもよい。例えば、溶液変性法(溶液中で加熱攪拌して反応する方法)、溶融変性法(無溶媒で溶融加熱攪拌して反応する方法、又は、押し出し機で加熱混練して反応する方法)等が挙げられる。溶液中で製造する場合の溶媒としては、プロピレン系重合体の製造法で挙げた溶媒を同様に用いることができる。
本発明の不飽和有機酸変性プロピレン系重合体としては、具体的には、無水マレイン酸変性プロピレン系重合体及びその塩素化物、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体及びその塩素化物、無水マレイン酸変性プロピレン−ブテン共重合体及びその塩化物、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン−ブテン共重合体及びその塩化物、アクリル酸変性プロピレン系重合体及びその塩素化物、アクリル酸変性エチレン−プロピレン共重合体及びその塩素化物、アクリル酸変性プロピレン−ブテン共重合体及びその塩化物などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。このうち特に好ましいものは、無水マレイン酸変性プロピレン系重合体、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性プロピレン−ブテン共重合体である。
重合体(A1)及び/又は(A2)は、不飽和有機酸誘導体によって変性された後、更に更に親水性高分子(B)と結合させることが好ましい。重合体の親水性が増すため、より微細な粒子径の水性樹脂分散体が得られる利点がある。結合形態は特に限定されないが、好ましくはグラフト結合である。
また、親水性を示す範囲内で疎水性ラジカル重合性化合物(疎水性モノマー)を共重合することができる。共重合可能な疎水性モノマーとしては、例えば炭素原子数1〜12のアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーや、炭素原子数1〜12の炭化水素基を有する重合性ビニルモノマーなどが挙げられる。
本発明に用いるポリビニルピロリドン樹脂は、通常、ビニルピロリドンを重合させることで得られる。
ラジカルグラフト反応によれば、炭素−炭素共有結合による結合が形成される。
反応性基を利用した反応は、変性プロピレン系重合体と親水性高分子(B)の双方に反応性基を有していてそれらを反応させて結合させるものであり、共有結合又はイオン結合が形成される。この反応としては、例えば(無水)カルボン酸基とヒドロキシル基の(開環)エステル化反応、カルボン酸基とエポキシ基との開環反応、1級又は2級アミノ基とエポキシ基との開環反応、(無水)カルボン酸基と1級又は2級アミノ基の(開環)アミド化反応又はイミド化反応、カルボン酸基と3級アミノ基の4級アンモニウム化反応、カルボン酸基とイソシアナート基のアミド化反応、1級又は2級アミノ基とイソシアナート基のウレア化反応、ヒドロキシ基とイソシアナート基のウレタン反応等が挙げられる。なかでも無水カルボン酸基と1級又は2級アミノ基の開環アミド化反応又はイミド化反応が反応性の高さの点で好ましく、更には、イミド化よりもアミド化の方がNH基とCOOH基の親水基が基中に残るため乳化の容易さの点で好ましい。各反応の反応率は1〜100%の間で任意に選べばよく、好ましくは50〜100%、さらに好ましくは70〜100%である。カルボン酸基が二塩基酸もしくはその無水物である場合は、二塩基酸もしくはその無水物一当量に対し、一当量反応させても二当量反応させてもよい。
変性プロピレン系重合体と親水性高分子(B)を結合させ重合体(C)を製造する方法としては、通常、変性プロピレン系重合体存在下で親水性モノマーを重合し、変性プロピレン系重合体に結合した親水性高分子(B)を形成する方法(R1)、又は予め重合した親水性高分子(B)を変性プロピレン系重合体に結合させる方法(R2)が挙げられ、変性プロピレン系重合体や親水性高分子の種類及び組合せ、目的とする重合体の特性等に応じて適宜選択すればよい。
本方法では、変性プロピレン系重合体存在下で親水性モノマーを重合することで変性プロピレン系重合体に結合した親水性高分子(B)を得る。親水性モノマーの重合方法としては、例えば付加重合、縮合重合、開環重合などを用いうる。このとき重合後に親水性高分子を形成しうる範囲であれば疎水性モノマーを共重合させてもよい。
反応温度は、通常0〜200℃の範囲であり、好ましくは30〜150℃の範囲である。反応時間は、溶液変性法で通常1〜20時間程度であり、溶融変性法であれば滞留時間は10秒〜10分程度となる。
本方法では、予め重合した親水性高分子(B)を変性プロピレン系重合体に結合させる。この場合親水性高分子(B)としては[3]で挙げたものを用いうる。
具体的には、例えば、まず親水性モノマーを重合して親水性高分子とする際に分子内に不飽和二重結合を残しておき、次いでラジカル重合性開始剤を用いて変性プロピレン系重合体にグラフト重合させる方法がある。
また、まず末端に反応性基を有する親水性高分子を重合し、次いでこれを変性プロピレン系重合体に結合させる方法がある。末端に反応性基を有する親水性高分子は、開始剤や連鎖移動剤として反応性基を有する化合物を用いて親水性モノマーを重合することで得られる。もしくはエポキシ化合物等の親水性開環重合モノマーを開環重合することによっても得られる。このとき用いうる親水性モノマーとしては、[4−1]で挙げた各種親水性モノマーを同様に用いうる。これらはいずれも、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
反応温度は、通常0〜200℃の範囲であり、好ましくは30〜150℃の範囲である。反応時間は、溶液変性法で通常1〜20時間程度であり、溶融変性法であれば滞留時間は10秒〜10分程度となる。
本発明の水性樹脂分散体の製造方法は特に限定されないが、例えば、前述の変性プロピレン系重合体(重合体(C)により変性したプロピレン系重合体である場合を含む)に水以外の溶媒を加えて溶解させた後に水を添加して分散体とする方法、変性プロピレン系重合体が溶融する温度以上で溶融させた後に水を添加して分散体とする方法、などが挙げられる。
特に、親水性高分子が結合した重合体(C)は水への分散性に非常に優れるので、分散粒子径が細かく、かつ樹脂が安定に分散している利点がある。従ってこれを用いると優れた外観の塗布品が得られる。
本発明の水性樹脂分散体は、全体に対しての固形分は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは20重量%以上である。また好ましくは60重量%以下であり、より好ましくは50重量%以下である。固形分の量が少ないほど粘度が低く種々の塗布方法に適用でき使用しやすく、また分散体としての安定性も高い傾向にある。ただし、例えばプライマーや接着剤として使用する際に、塗布後の水の乾燥にあまり多量のエネルギーと時間をかけないためには固形分が多い方が好ましい。
本発明の水性樹脂分散体には、必要に応じて塩基性物質を添加することができる。特に、親水性高分子を結合せずに水分散を行う場合は、変性プロピレン系重合体の持つ有機酸基を塩基性物質によって中和することによって親水性を高めることが好ましい。塩基性物質としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、モルホリンなどの有機塩基が挙げられる。なかでもジメチルエタノールアミン、2−メチル−2−アミノ−プロパノールなど、水酸基とアミノ基を有するアルカノールアミンが好ましい。また、塗布乾燥後の皮膜の耐水性などを高めるためには、塩基性物質は乾燥条件で揮発することが好ましく、沸点が200℃以下であることが好ましく、より好ましくは150℃以下である。沸点の下限は特に定められないが、保存中に揮発するのを防ぐためには沸点は0℃以上が好ましく、より好ましくは50℃以上である。
以上のように本発明によれば、界面活性剤を用いることなく水性樹脂分散体を得ることができ、従って従来界面活性剤によって引き起こされていたブリードアウトを抑制できるのが利点の一つである。ただし他の目的、例えば塗布する基材への濡れ性の向上などを目的として、用途等に応じて必要により界面活性剤を含有させてもよい。界面活性剤としては例えばカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などを使用することができる。界面活性剤としては、通常、炭素数4以上のアルキル基、アルケニル基、アルキルアリール基又はアルケニルアリール基を疎水基として有するものを用いる。好ましくは炭素数8以上であり、より好ましくは炭素数12以上である。ただし通常、炭素数30以下である。
界面活性剤量は少ない方が好ましく、水性樹脂分散体の界面活性剤含有量が、重合体100質量部に対し10質量部以下であることが好ましい。より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。最も好ましくは界面活性剤を実質的に含まないことである。実質的に界面活性剤を含まないとは重合体100質量部に対して1質量部未満であることを言う。
ただしノニオン性界面活性剤は他の界面活性剤に比べて耐水性を低下させにくいのでノニオン性界面活性剤は多少多めに含んでもよい。例えば重合体100重量部に対してノニオン性界面活性剤以外の界面活性剤は5重量部以下とすべき場合、ノニオン性界面活性剤は10重量部以下としてもよい。
また、塩素化ポリオレフィンを用いなくとも界面活性剤量を低減でき、環境負荷を低減できる点も本発明の利点の一つである。
本発明の水性樹脂分散体には、ポリオレフィン基材への密着性以外の機能を付与するために、必要に応じて上記変性プロピレン系重合体に加えて他の水性樹脂を配合することも可能である。具体的な例としてはアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の水性樹脂が挙げられる。これら樹脂と変性プロピレン系重合体を含む水性樹脂分散体の形態は特に限定されない。例えば、これら樹脂と変性プロピレン系重合体とをそれぞれ乳化して混合する方法、或いはこれら樹脂と変性プロピレン系重合体とを混合後、乳化する方法がある。
本発明のアクリル樹脂としては、(メタ)アクリル系重合体であれば特に限定されないが、アクリル酸及び/又はそのエステルの単独重合体又は共重合体、メタクリル酸及び/又はそのエステルの単独重合体又は共重合体を言う。なお(メタ)アクリルとはアクリル及び/又はメタクリルを指す。 (メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、炭素原子数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマ−、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等、又は、炭素原子数6〜12のアリ−ル基またはアラルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、例えば(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。
本発明のウレタン樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば(i)1分子中に平均2個以上の活性水素を含有する成分と(ii)多価イソシアネート成分とを反応させて得られるウレタンポリマー、または、上記(i)成分及び(ii)成分をイソシアネート基過剰の条件下で反応させて得られるイソシアネート基含有プレポリマーとジオール等の鎖伸長剤とを反応させて得られるウレタンポリマーが挙げられる。これらのウレタン系重合体中には酸成分(酸残基)を含有させてもよい。
前記(i)成分の1分子中に平均2個以上の活性水素を含有する成分としては、特に限定されるものではないが、水酸基性の活性水素を有するものが好ましい。このような化合物の具体例としては、次のようなものが挙げられる。
(5)ポリカーボネートジオール:一般式HO−R−(O−C(O)−O−R)x−OH(式中、Rは炭素原子数1〜12の飽和脂肪酸ジオール残基、xは分子の繰り返し単位の数を示し、通常5〜50の整数である。)で示される化合物等。これらは、飽和脂肪族ジオールと置換カーボネート(炭酸ジエチル、ジフェニルカーボネートなど)とを水酸基が過剰となる条件で反応させるエステル交換法、前記飽和脂肪族ジオールとホスゲンを反応させるか、または必要に応じて、その後さらに飽和脂肪族ジオールを反応させる方法などにより得ることができる。
前記(i)成分と反応させる(ii)多価イソシアネート成分としては、1分子中に平均2個以上のイソシアネート基を含有する脂肪族、脂環族または芳香族の化合物が使用できる。
本発明のポリエステル樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えばアジピン酸、コハク酸、セバシン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等のジカルボン酸及び/又はその無水物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール等のジオール化合物又はエーテル基含有ジオール(ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等)とを重縮合させて得られたものが挙げられる。
これらを界面活性剤の存在下または非存在下で水性エマルジョン化することによってポリエステル樹脂の水分散体が得られる。その製造方法は特に限定されないが、前述のアクリル樹脂の水分散体の製造方法に準じて製造しうる。市販品として入手可能なものとしては、東洋紡社製のバイロナールMD−1200、MD−1245などがあげられる。
本発明のエポキシ樹脂はエポキシ基を1分子中に1個以上有する重合体であれば特に限定されず、例えば多価フェノールをアルカリの存在下にエピクロルヒドリンと反応させることにより製造することができるフェノールの多価グリシジルエーテルや、このようなフェノールの多価グリシジルエーテルと上記の多価フェノールとを反応させて得られるエポキシ基含有重合体などが挙げられる。
また、エポキシ樹脂としては、フェノール系ノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル及び多価アルコールのポリグリシジルエーテルも用いることができる。上記の多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセロール、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−2,2−プロパン、ソルビトール等が挙げられる。
市販品として入手可能な代表的なものとしては、フェノールノボラック樹脂にエピクロヒドリンを付加して得られるノボラック型エポキシ樹脂を界面活性剤(乳化剤)で強制的にエマルション化した、長瀬ケムテック株式会社製デコナールEM150、ジャパンエポキシレジン株式会社製エピレッツ6006W70、5003W55、東都化成株式会社製WEX−5100、等が挙げられる。
本発明の水性樹脂分散体には顔料を加えることができる。顔料を含む水性樹脂分散体は塗料として好適である。使用しうる顔料は特に限定されないが、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄、酸化クロム、紺青、ベンガラ、黄鉛、黄色酸化鉄等の無機顔料やアゾ系顔料、アントラセン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、インジゴ系顔料、フタロシアニン系顔料等の有機顔料等の着色顔料;タルク、炭酸カルシウム、クレイ、カオリン、シリカ、沈降性硫酸バリウム等の体質顔料;導電カーボン、アンチモンドープの酸化スズをコートしたウイスカー等の導電顔料;アルミニウム、銅、亜鉛、ニッケル、スズ、酸化アルミニウム等の金属または合金等の無着色或いは着色された金属製光輝材などを挙げることができ、1種または2種以上を併用してもよい。
本発明の水性樹脂分散体には、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、必要に応じて種々の添加剤を含有させることができる。例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐候安定剤、耐熱防止剤等の各種安定剤;酸化チタン、有機顔料等の着色剤;顔料、カーボンブラック、フェライト等の導電性付与剤、染料、顔料分散剤、レべリング剤、消泡剤、増粘剤、防腐剤、防かび剤、防錆剤、濡れ剤等の各種添加剤を配合使用してもよい。
また耐水性、耐溶剤性などの各種の塗膜性能をさらに向上させるために。架橋剤を分散体中の樹脂100重量部に対して0.01〜100重量部添加することができる。架橋剤としては自己架橋性を有する架橋剤、カルボキシル基と反応する官能基を分子内に複数固有する化合物、多価の配位座を有する金属錯体等を用いることができ、このうちイソシアネート化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン基含有化合物、ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤等が好ましい。またこれらの架橋剤を組み合わせて使用してもよい。
本発明の水性樹脂分散体はポリオレフィン等の基材に対して、低温焼付けで優れた密着性を示し、得られる膜は耐溶剤性(耐油性、耐GH性)、耐薬品性、耐水性、耐湿性に優れるものとなる。基材上に樹脂層を形成する方法としては、特に限定されることなく公知の方法が使用しうるが、例えば、水性樹脂分散体をスプレーで塗布する方法、ローラーで塗布する方法、刷毛で塗布する方法、グラビアコーター、バーコーター、スピンコーターなどによって塗布する方法などが挙げられる。一般に自動車や家電部品などの射出成型体に対してはスプレー塗布が適し、フィルムやシートのような基材に対してはグラビアコーター、バーコーターなどが適している。
[物性測定方法及び評価方法]
(1)物性測定方法
(1−1)立体規則性
プロピレン系重合体の立体規則性[mmmm]は、NMR装置(日本電子(株)製、400MHz)にて13C−NMRスペクトル測定法により測定した。試料350〜500mgを、10mmφのNMR用サンプル管中で、約2.2mlのオルトジクロロベンゼンを用いて完全に溶解させた。次いで、ロック溶媒として約0.2mlの重水素化ベンゼンを加え、均一化させた後、130℃でプロトン完全デカップリング法により測定を行った。測定条件は、フリップアングル90°、パルス間隔5T1以上(T1は、メチル基のスピン格子緩和時間のうち最長の値)とした。プロピレン系重合体において、メチレン基及びメチン基のスピン格子緩和時間はメチル基のそれよりも短いので、この測定条件では、すべての炭素の磁化の回復は99%以上である。20時間以上の積算を行い測定した。
はじめに試料20mgを30mlのバイアル瓶に採取し、安定剤としてBHTを0.04重量%含有するオルトジクロロベンゼン20gを添加した。135℃に加熱したオイルバスを用いて試料を溶解させた後、孔径3μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)フィルターにて熱濾過を行い、ポリマー濃度0.1重量%の試料溶液を調製した。次に、カラムとしてTSKgel GM H−HT(30cm×4本)及びRI検出器を装着したウォーターズ(Waters)社製GPC150CVを使用し、GPC測定を行った。測定条件としては、試料溶液のインジェクション量:500μl、カラム温度:135℃、溶媒:オルトジクロロベンゼン、流量:1.0ml/minを採用した。
プロピレン系重合体の融点は、パーキンエルマー社製熱分析システム(DSC−7)を使用して、以下の方法で求めた。試料(約5〜10mg)を160℃で3分間融解後、10℃/分の速度で−20℃まで降温し、−20℃にて2分間保持した後、10℃/分で160℃まで昇温することにより融解曲線を得、最後の昇温段階における主吸熱ピークのピークトップ温度を融点として求めた。
重合体200mgとクロロホルム4800mgを10mlのサンプル瓶に入れて50℃で30分加熱し完全に溶解させる。材質NaCl、光路長0.5mmの液体セルにクロロホルムを入れ、バックグラウンドとした。次に溶解した重合体溶液を液体セルにいれて、日本分光(株)製FT−IR460plusを用い、積算回数32回にて赤外線吸収スペクトルを測定した。例えば無水マレイン酸のグラフト率は、無水マレインをクロロホルムに溶解した溶液を測定し検量線を作成したものを用いて計算した。そしてカルボニル基の吸収ピーク(1780cm−1付近の極大ピーク、1750〜1813cm−1)の面積から、別途作成した検量線に基づき、重合体中の酸成分含有量を算出し、これをグラフト率(重量%)とした。
日機装(株)社製ナノトラック EX−150を用いて測定した。分散体の密度を0.9g/cm3、形状を球形、分散媒を水として測定時間120秒にて測定し、50%粒子径(体積平均粒子径)、90%粒子径を求めた。
(2−1)保存安定性評価
試料を50gのガラスサンプル瓶に入れ、40℃で1ヶ月間保存した後の外観の観察、及び平均粒径の変化(凝集による平均粒径の増加)を評価した。
△ :外観に大きな異状は見られず、平均粒径の変化が20%以上50%未満である
× :外観に大きな異状があるか、又は、平均粒径の変化が50%以上である
(3)水性樹脂分散体の塗料用プライマーとしての評価
自動車外装用グレードのプロピレン系重合体(エクソン(株)製、8224)を70mm×150mm×3mmにインジェクション成型した基板を作成し、基板表面をイソプロピルアルコールで清拭した。ここに試料を、塗布後の乾燥重量が約5g/m2となるように噴霧塗布し、この塗布後の試験片をセーフベンドライヤー中で60℃で5分間乾燥させた。次にこの塗膜上に、規定量の硬化剤を配合し専用シンナーで粘度調整を行ったアクリルポリオールウレタン塗料(レタンPG80III:関西ペイント(株)製)を、塗布量が30〜40g/m2になるように噴霧塗布し、セーフベンドライヤー中において60℃で20分間焼き付けた。
試験片に、JIS K5400に記載されている碁盤目試験の方法に準じて25マス(5×5)の碁盤目を付け、セロハンテープ(ニチバン(株)品)を貼り付けた後速やかに90°方向に引っ張って剥離させた。これを3回繰り返す。25個の碁盤目のうち剥離されなかった碁盤目数で初期密着性を評価した。
初期密着性試験において、アクリルポリオールウレタン塗料(レタンPG80III)に替えてピール剥離測定用の2液ウレタン塗料を用い、塗布量が200〜300g/m2になるように基板に噴霧塗布し、セーフベンドライヤ−中で60℃で20分間焼き付けた以外は初期密着性試験と同様にして試験片を作製した。
続いてこの試験片を40℃にて24時間養生した後、23℃にて24時間静置した。
試験片に10mm幅に切れ目を入れ、剥離速度50mm/分で180°剥離試験を行い、ピール剥離強度を測定した。
初期密着性試験と同様に作製した塗装板の端をカッターで切り落とし塗装断面が剥き出しになった試験片を、20℃に保ったレギュラーガソリンとエタノールとの混合液(体積比:レギュラーガソリン/エタノール=9/1)中に浸漬して、塗膜に剥離が生じるまでの時間を測定し、以下の判定基準に従い評価した。
△ :30秒以上1分未満で塗膜が剥離する
× :30秒以内に塗膜が剥離する
初期密着性試験と同様に、試料を基板に塗布乾燥して作製した塗装板を、40℃で3日間放置し、塗装外観の目視及び指触により、塗膜表面への界面活性剤のブリードアウトを評価した。
△ :界面活性剤がわずかにブリードアウトしている
× :界面活性剤が多くブリードアウトしていて、指で触るとべたつく
(4−1)ピール剥離強度試験
ホモポリプロピレン(日本ポリプロ(株)製、MA3U)を成形した厚み100μmのフィルムを準備した。このフィルムに、試料100重量部にイソプロピルアルコール50重量部を加えて希釈したものをバーコーター(16番)で塗工した後、80℃で2分間乾燥した。プロピレン系重合体の塗工量は約3g/m2であった。塗膜上に、試料を塗工していない同じポリプロピレンフィルムを重ね合わせ、ヒートシールの設定温度を60℃、80℃、100℃と変えて、圧力2kg/cm2、加圧時間3秒間でヒートシールを行った。
試料が塗布されたフィルムの上に未塗布のポリプロピレンフィルムを重ね合わせ、常温において加重0.1kg/cm2で1時間荷重をかけた後に。フィルムを取り出し手で剥離試験を行った。ブロッキングの度合いを以下の基準で評価した。
× :剥離時にかなり抵抗があり剥がれにくいか、又は剥がれない
1,000ml丸底フラスコに、脱塩水110ml、硫酸マグネシウム・7水和物22.2g及び硫酸18.2gを採取し、攪拌下に溶解させた。この溶液に、市販の造粒モンモリロナイト16.7gを分散させ、100℃まで昇温し、2時間攪拌を行った。その後、室温まで冷却し、得られたスラリーを濾過してウェットケーキを回収した。回収したケーキを1,000ml丸底フラスコ内で脱塩水500mlにて再度スラリー化し、濾過を行った。この操作を2回繰り返した。最終的に得られたケーキを、窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥し、化学処理モンモリロナイト13.3gを得た。
別のフラスコに、トリイソブチルアルミニウム0.2mmolを採取し、ここで得られた粘土スラリー19ml及びジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)ハフニウム131mg(57μmol)のトルエン希釈液を加え、室温で10分間撹拌し、触媒スラリーを得た。(触媒の製造方法の詳細については特開2004−002310を参照)。
重合時の全圧及び温度を表−1に記載の条件とした以外は製造例1−1と同様にして、プロピレン系重合体を得た。得られたプロピレン系重合体の物性を表−1に記す。
また併せて市販のプロピレン系重合体の物性を参考例1〜4として示す。参考例1(クラリアント社製リコセンPP1502)は、メタロセン触媒によって製造されたプロピレン系重合体である。参考例2(宇部興産社製ウベタックUT2115)は、非晶質プロピレン系重合体である。参考例3(日本ポリプロ社製ウィンテックWFX6)は、メタロセン触媒によって製造されたプロピレン系重合体である。参考例4(三洋化成工業社製ユーメックス1010)は、熱減成による低分子プロピレン系重合体の無水マレイン酸変性体(酸価52mgKOH/g、無水マレイン酸として5重量%)である。
還流冷却管、温度計、攪拌機のついたガラスフラスコ中に、製造例1−1で得られたプロピレン系重合体40g、製造例1−5で得られたプロピレン系重合体160g、及びトルエン300gを入れ、容器内を窒素ガスで置換し、110℃に昇温した。昇温後、無水マレイン酸10gを加え、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボナート(日本油脂社製、パーブチルI)5gを加え、7時間同温度で攪拌を続けて反応を行った。反応終了後、系を室温付近まで冷却し、アセトンを加えて、沈殿したポリマーを濾別した。さらにアセトンで沈殿・濾別を繰り返し、最終的に得られたポリマーをアセトンで洗浄した。洗浄後に得られたポリマーを減圧乾燥することにより、白色粉末状の無水マレイン酸変性ポリマーが得られた。この変性ポリマーの赤外線吸収スペクトル測定を行った結果、無水マレイン酸基の含量(グラフト率)は、1.1重量%(無水マレイン酸基として0.11mmol/g)であった。また重量平均分子量は56,000であり、得られた無水マレイン酸変性プロピレン系重合体の物性を表−2に記す。
成分(A1)、(A2)としてのプロピレン系重合体の種類と量、無水マレイン酸、パーブチルI、トルエンの量を表−2に記載の条件とした以外は製造例2−1と同様にして、無水マレイン酸変性プロピレン重合体を得た。得られた無水マレイン酸変性プロピレン系重合体の物性を表−2に記す。
還流冷却管、温度計、攪拌機のついたガラスフラスコ中に、製造例2−1で得られた無水マレイン酸変性プロピレン系重合体100g(無水マレイン酸基の含量12mmol)及びトルエン250gを加え、110℃に昇温し、完全に溶解した。次いで、ポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)ブロック共重合体(分子量1000)15.0g(15.0mmol、プロピレン系重合体100重量部に対し15重量部に相当)をトルエン22.5gに溶解した溶液を加え、110℃で3時間反応させた。
無水マレイン酸変性プロピレン系重合体の種類と量、成分(B)としてのポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)ブロック共重合体の量を表−3に記載の条件とした以外は実施例1と同様にして、水性樹脂分散体を得た。得られた水性樹脂分散体の物性を表−3に記す。
比較例6の水性樹脂分散体は、樹脂が凝集したためが50%粒子径が著しく大きく、90%粒子径は測定不能であった。比較例7の水性樹脂分散体は、凝集物が多量に見られ、粒子径は測定不能であった。
還流冷却管、温度計、攪拌機のついたガラスフラスコ中に製造例2−13で得られた無水マレイン酸変性プロピレン系重合体20gとトルエン80gを入れて110℃に昇温し完全に溶解させた。50℃まで冷却した後、ポリオキシエチレンセチルエーテル(ノニオン系界面活性剤、花王(株)製エマルゲン220、HLB=14.2)5gと、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(ノニオン系界面活性剤、花王(株)製エマルゲン147、HLB=16.3)5gを添加し溶解した後、35℃まで冷却した。
無水マレイン酸変性プロピレン系重合体の種類と量、成分(B)としてのポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)ブロック共重合体の量を表−3に記載の条件とした以外は実施例1と同様にして、水性樹脂分散体を得た。得られた水性樹脂分散体の物性を表−3に記す。
比較例9の水性樹脂分散体は、凝集物が多量に見られ、粒子径は測定不能であった。
実施例1〜4、比較例1〜5,8の水性樹脂分散体について、塗料用プライマーとしての評価を行った。結果を表−4に示す。実施例1〜4の水性樹脂分散体は、低温焼付けでの密着性、耐溶剤性に優れ、ブリードアウトも観察されなかった。比較例1〜5、8では密着性、耐溶剤性などが劣り、また界面活性剤を用いた比較例8はブリードアウトが観察された。
実施例2〜7、比較例1〜3,8の水性樹脂分散体について、ヒートシール接着剤としての評価を行った。結果を表−5に示す。実施例2〜7の水性樹脂分散体は、加熱温度が100℃未満の非常に低いヒートシール温度においても優れた接着性を示し、かつブロッキングも起こらなかった。比較例1〜3、8では低温ヒートシール性が不十分であるか、ブロッキングが発生した。
Claims (12)
- 下記プロピレン系重合体(A1)及び(A2)が不飽和有機酸誘導体により変性されてなる変性プロピレン系重合体が、水に分散されてなることを特徴とする、水性樹脂分散体。
(A1):融点が無いか又は融点が75℃未満であり、重量平均分子量が10,000〜100,000であるプロピレン系重合体
(A2):融点が70℃以上120℃未満であり、重量平均分子量が100,000〜500,000であり、かつ(A1)の重量平均分子量の1.5倍以上であるプロピレン系重合体 - 前記重合体(A1)及び(A2)を(A1):(A2)=10:90〜90:10(重量比)で含む、請求項1に記載の水性樹脂分散体。
- 前記重合体(A1)及び(A2)は、混合された後、不飽和有機酸誘導体により変性されてなる、請求項1又は2に記載の水性樹脂分散体。
- 前記重合体(A1)及び(A2)は、それぞれ不飽和有機酸誘導体により変性されたのち、混合されてなる、請求項1又は2に記載の水性樹脂分散体。
- 前記不飽和有機酸誘導体が、不飽和カルボン酸、ジカルボン酸無水物、及びジカルボン酸無水物モノエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の水性樹脂分散体。
- 前記重合体(A1)及び/又は(A2)が、メタロセン触媒を用いて製造されてなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の水性樹脂分散体。
- 前記重合体(A1)及び/又は(A2)が、アイソタクチックブロックとアタクチックブロックを含むステレオブロックプロピレン系重合体であり、13C−NMRにて、頭−尾結合からなるプロピレン単位連鎖部のメチル基の炭素原子に由来するピークを観測し、mmmmで表されるペンタッドに帰属されるピークのピークトップのケミカルシフトを21.8ppmとした際に、19.8ppmから22.1ppmに現れるピークの総面積Sに対する、21.8ppmをピークトップとするピーク(mmmm)の面積S1の比率(S1/S)が20%〜70%であり、かつ21.5〜21.7ppmをピークトップとするピーク(mmmr)の面積をS2としたとき4+2S1/S2>5である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の水性樹脂分散体。
- 前記重合体(A1)及び/又は(A2)が、更に親水性高分子(B)と結合してなる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の水性樹脂分散体。
- 前記親水性高分子(B)が、ポリアルキレン構造を有するポリエーテル樹脂である、請求項8に記載の水性樹脂分散体。
- 前記親水性高分子(B)が、前記重合体(A1)及び/又は(A2)にグラフト結合してなる、請求項8又は9に記載の水性樹脂分散体。
- 変性プロピレン系重合体が水に分散されてなる水性樹脂分散体の製造方法であって、
下記プロピレン系重合体(A1)及び(A2)を混合したのち、不飽和有機酸誘導体によって変性し、次いで水に分散することを特徴とする、水性樹脂分散体の製造方法。
(A1):融点が無いか又は融点が75℃未満であり、重量平均分子量が10,000〜100,000であるプロピレン系重合体
(A2):融点が70℃以上120℃未満であり、重量平均分子量が100,000〜500,000であり、かつ(A1)の重量平均分子量の1.5倍以上であるプロピレン系重合体 - 変性プロピレン系重合体が水に分散されてなる水性樹脂分散体の製造方法であって、
下記プロピレン系重合体(A1)及び(A2)をそれぞれ不飽和有機酸誘導体によって変性したのち混合し、次いで水に分散することを特徴とする、水性樹脂分散体の製造方法。
(A1):融点が無いか又は融点が75℃未満であり、重量平均分子量が10,000〜100,000であるプロピレン系重合体
(A2):融点が70℃以上120℃未満であり、重量平均分子量が100,000〜500,000であり、かつ(A1)の重量平均分子量の1.5倍以上であるプロピレン系重合体
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