JP2008031360A - 水性樹脂分散体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】低温焼付けでのポリオレフィンに対する密着性に優れ、オレフィン系重合体に対する塗料、接着剤、インク等として有用な、水性樹脂分散体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】下記プロピレン系重合体(A1)及び(A2)が不飽和有機酸誘導体により変性されてなる変性プロピレン系重合体が、水に分散されてなる、水性樹脂分散体、及びその製造方法。
(A1):融点が無いか又は融点が75℃未満であり、重量平均分子量が10,000〜100,000であるプロピレン系重合体
(A2):融点が70℃以上120℃未満であり、重量平均分子量が100,000〜500,000であり、かつ(A1)の重量平均分子量の1.5倍以上であるプロピレン系重合体
【選択図】 なし

Description

本発明は、プロピレン系重合体を含む水分散体と、その製造方法に関する。
プロピレン重合体やプロピレン−α−オレフィン共重合体などのプロピレン系重合体は安価であり、しかも、機械的物性、耐熱性、耐薬品性、耐水性などに優れていることから、広い分野で使用されている。しかしながら、こうしたプロピレン系重合体は、分子中に極性基を持たないため一般に低極性であり、塗装や接着が困難であり改善が望まれていた。このため、プロピレン系重合体の成形体の表面を薬剤などで化学的に処理すること、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理などの手法で成形体表面を酸化処理することといった種々の手法が試みられてきている。しかるにこれらの方法では、特殊な装置が必要であるばかりでなく、塗装性や接着性の改良効果が必ずしも十分ではなかった。
そこで比較的簡便な方法でプロピレン系重合体に良好な塗装性や接着性を付与するための工夫として、いわゆる塩素化ポリプロピレンや酸変性プロピレン−α−オレフィン共重合体、さらに酸変性塩素化ポリプロピレンが開発されてきた。このような変性プロピレン系重合体を、ポリプロピレン等の成形体表面に表面処理剤、接着剤或いは塗料等として塗布するのである。変性プロピレン系重合体は通常、有機溶媒の溶液、又は水への分散体などの形態で塗布されるが、特に近年は安全衛生及び環境汚染の面から水分散体が好ましく用いられるようになっている。
例えば、酸変性塩素化ポリプロピレンを界面活性剤と塩基性物質を使用して水性化した水性樹脂(特許文献1)または酸変性ポリオレフィンを界面活性剤と塩基性物質を使用して水性化した水性樹脂(特許文献2、3)等がある。しかしこれらの方法では分散粒子径を細かくするには界面活性剤を大量に添加する必要があり、結果として、このような水性分散体を用いた塗料は耐水性や耐薬品性に乏しいという課題があった。また塗布後に界面活性剤が塗装表面へブリードアウトして外観不良が起こる場合もあり、さらなる改善が望まれていた。
また近年、環境への負荷やエネルギー問題等から、塗膜の乾燥温度、焼付け温度の低温化が望まれている。有機溶剤系のコーティング剤においては、ポリオレフィン系樹脂基材に対して60〜80℃程度の低温焼付けを行った場合でも高い密着性が得られるよう、高結晶性と低結晶性のポリオレフィン変性体を特定の比率で含有させたコーティング剤が提案されている(特許文献4、5)。
しかし水系のコーティング剤においては、水性樹脂を用いるため有機溶剤系コーティング剤に比べて乾燥性が悪いという課題があり、またプロピレン系重合体は一般に融点が高いため低温焼付けでの成膜性が十分でないという課題もあり、低温焼付けで高い密着性を出すことが困難であった。このため、有機溶剤系コーティング剤並みの低温乾燥、焼付け条件でポリオレフィン基材に高い密着性を示す水性樹脂分散体が望まれていた。
特開平3−182534号公報 特開平6−256592号公報 特開2004−002842号公報 特開平7−331159号公報 特開2006−104430号公報
本発明は、低温焼付けでの乾燥性、成膜性、プロピレン系重合体基材への接着性に優れ、オレフィン系重合体に対する接着剤、プライマー、塗料、インク等として有用な水性樹脂分散体と、その製造方法を提供するものである。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、不飽和有機酸誘導体により変性されてなる特定の低融点かつ低分子量のプロピレン系重合体と、同じく不飽和有機酸誘導体により変性されてなる特定の高融点かつ高分子量のプロピレン系重合体とを併用した水性樹脂分散体が、特異的に優れた性質を有することを見いだし、本発明に至った。
即ち本発明は、下記プロピレン系重合体(A1)及び(A2)、即ち
(A1):融点が無いか又は融点が75℃未満であり、重量平均分子量が10,000〜100,000であるプロピレン系重合体、
(A2):融点が70℃以上120℃未満であり、重量平均分子量が100,000〜500,000であり、かつ(A1)の重量平均分子量の1.5倍以上であるプロピレン系重合体、
が不飽和有機酸誘導体により変性されてなる変性プロピレン系重合体が水に分散されてなることを特徴とする水性樹脂分散体に関する。
また本発明は、前記重合体(A1)及び(A2)を(A1):(A2)=10:90〜90:10(重量比)で含む水性樹脂分散体に関する。
また本発明は、前記重合体(A1)及び(A2)は、混合された後、不飽和有機酸誘導体により変性されてなる水性樹脂分散体に関する。
また本発明は、前記重合体(A1)及び(A2)は、それぞれ不飽和有機酸誘導体により変性されたのち、混合されてなる水性樹脂分散体に関する。
また本発明は、前記不飽和有機酸誘導体が、不飽和カルボン酸、ジカルボン酸無水物、及びジカルボン酸無水物モノエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種である水性樹脂分散体に関する。
また本発明は、前記重合体(A1)及び/又は(A2)が、メタロセン触媒を用いて製造されてなる水性樹脂分散体に関する。
また本発明は、前記重合体(A1)及び/又は(A2)が、アイソタクチックブロックとアタクチックブロックを含むステレオブロックプロピレン系重合体であり、13C−NMRにて、頭−尾結合からなるプロピレン単位連鎖部のメチル基の炭素原子に由来するピークを観測し、mmmmで表されるペンタッドに帰属されるピークのピークトップのケミカルシフトを21.8ppmとした際に、19.8ppmから22.1ppmに現れるピークの総面積Sに対する、21.8ppmをピークトップとするピーク(mmmm)の面積Sの比率(S/S)が20%〜70%であり、かつ21.5〜21.7ppmをピークトップとするピーク(mmmr)の面積をSとしたとき4+2S/S>5である水性樹脂分散体に関する。
また本発明は、前記重合体(A1)及び/又は(A2)が、更に親水性高分子(B)と結合してなる水性樹脂分散体に関する。
また本発明は、前記親水性高分子(B)が、ポリアルキレン構造を有するポリエーテル樹脂である水性樹脂分散体に関する。
また本発明は、前記親水性高分子(B)が、前記重合体(A1)及び/又は(A2)にグラフト結合してなる水性樹脂分散体に関する。
更に本発明は、変性プロピレン系重合体が水に分散されてなる水性樹脂分散体の製造方法であって、上記プロピレン系重合体(A1)及び(A2)を混合したのち、不飽和有機酸誘導体によって変性し、次いで水に分散することを特徴とする水性樹脂分散体の製造方法に関する。
更に本発明は、変性プロピレン系重合体が水に分散されてなる水性樹脂分散体の製造方法であって、上記プロピレン系重合体(A1)及び(A2)をそれぞれ不飽和有機酸誘導体によって変性したのち混合し、次いで水に分散することを特徴とする水性樹脂分散体の製造方法に関する。
本発明の水性樹脂分散体は、低温焼付けでの乾燥性及び成膜性に優れる利点がある。そして得られる膜はポリオレフィン系基材、特にプロピレン系重合体基材に対して良好な密着性を示し、通常塗装や接着が困難な未処理ポリプロピレンのような難接着性の基材上にも形成しうる。この膜は更に、耐溶剤性(耐油性、耐GH性)、耐薬品性、耐水性、耐湿性に優れる。また本発明の重合体を他の樹脂と併用して複合水性樹脂分散体とすれば、他の樹脂に由来する物性値の向上、具体的には塗膜の強度、耐水性、耐候性、耐擦性、耐溶剤性などを向上させることができる。
従って本発明の水性樹脂分散体は、結晶性を有するポリオレフィン系基材に対する接着剤、表面処理剤、コーティング剤、塗料、インク等として極めて有用である。
本発明の水性樹脂分散体を用いたコーティング剤は有機溶剤系コーティング剤と遜色ない特性を有するので、従来は有機溶剤の溶液として塗布していた用途にも使用でき、安全衛生面でも好ましい。また有機溶剤溶液ではないのでVOC(揮発性有機化学物質)排出が低減でき環境面でも好ましい。更に実質的に塩素を含まないで優れた性質の水性樹脂分散体を得ることができる。塩素を含まない場合、ダイオキシン等や毒性等の問題が無く、環境面で非常に好ましい。
なかでも、後述する本発明の好ましい態様のプロピレン系重合体を用いれば、水への分散性に非常に優れた変性プロピレン系重合体を得ることができるので、分散粒子径が細かく、かつ安定に分散した水性樹脂分散体が得られる利点がある。そして、界面活性剤を実質的に添加することなく分散できるので、従来問題となっていた界面活性剤によるブリードアウトが抑制できる利点があり、優れた外観の塗布品が得られる。
また本発明の水性樹脂分散体の製造方法によれば、低温焼付けでの乾燥性及び成膜性に優れ、プロピレン系重合体基材に対して良好な密着性を示す優れた水性樹脂分散体を簡便に得ることができる。
なお本発明においては必ずしもすべての効果を発現することを必須とするものではなく、上記した1以上の効果があればよいものとする。
本発明の水性樹脂分散体は、下記プロピレン系重合体(A1)及び(A2)が不飽和有機酸誘導体により変性されてなる変性プロピレン系重合体が、水に分散されてなることを特徴とする。
(A1):融点が無いか又は融点が75℃未満であり、重量平均分子量が10,000〜100,000であるプロピレン系重合体
(A2):融点が70℃以上120℃未満であり、重量平均分子量が100,000〜500,000であり、かつ(A1)の重量平均分子量の1.5倍以上であるプロピレン系重合体
即ち、低融点かつ低分子量のプロピレン系重合体(A1)を不飽和有機酸誘導体により変性してなる変性プロピレン系重合体と、高融点かつ高分子量のプロピレン系重合体(A2)を不飽和有機酸誘導体により変性してなる変性プロピレン系重合体とが水に分散されてなる。なお本発明において分散とは、分散粒子が極めて小さく単分子で分散している状態、実質的には溶解と言えるような状態を含む概念である。
重合体(A1)及び(A2)の併用により優れた水性樹脂分散体が得られる理由は必ずしも明確でないが、低融点かつ低分子量のプロピレン系重合体(A1)を含むことで、比較的低温で樹脂粒子が溶融しやすくなり、低い乾燥温度、低い焼付け温度で樹脂粒子が溶融して膜を形成し、ポリオレフィン系基材への密着性が高まるのではないかと考えられる。そして高融点かつ高分子量のプロピレン系重合体(A2)が塗膜の強度を高め、凝集力、耐水性、耐溶剤性等に寄与するのではないかと考えられる。
本発明のプロピレン系重合体(A1)は、融点が無いか又は融点が75℃未満である。低温焼付けでの密着性を高めるために必要である。好ましくは、融点が無いか又は融点が70℃未満である。融点の下限値は特に無いが、通常50℃以上であることが好ましい。
本発明においてプロピレン系重合体の融点は、パーキンエルマー社製熱分析システム(DSC−7)を使用して、以下の方法で求められる。試料(約5〜10mg)を160℃で3分間融解後、10℃/分の速度で−20℃まで降温し、−20℃にて2分間保持した後、10℃/分で160℃まで昇温することにより融解曲線を得、最後の昇温段階における主吸熱ピークのピークトップ温度を融点として求めた。また本発明において「融点が無い」とは、上記測定方法で0℃から160℃の範囲において、吸熱量が0.5J/g以上の明確な吸熱ピークが観測されない状態を言う。
本発明のプロピレン系重合体(A1)の重量平均分子量は10,000〜100,000である。低温焼付けでの密着性を高めるためには100,000以下とする必要がある。好ましい上限値は80,000であり、より好ましくは70,000であり、更に好ましくは60,000である。一方、塗膜強度を強く保ち、接着力を高めるためには10,000以上とする必要がある。好ましい下限値は20,000であり、より好ましくは30,000である。なお本発明における重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)で測定し各々のプロピレン系重合体の検量線で換算した値であり、GPC測定はオルトジクロロベンゼンなどを溶媒として、市販の装置を用いて従来公知の方法で行うことができる。
なお、一般に不飽和有機酸誘導体での変性により分子量は変性前に比べて低下するが、プロピレン系重合体(A1)の不飽和有機酸誘導体変性後の重量平均分子量も上記範囲であることが好ましい。
本発明のプロピレン系重合体(A2)は、融点が70℃以上120℃未満である。塗膜の強度を高め、高い耐水性、耐溶剤性等を持つためには70℃以上とする必要がある。好ましくは重合体(A1)よりも融点が高温である。より好ましくは下限値が75℃である。一方、低温での焼付けを行うためには120℃未満とする必要がある。好ましい上限値は110℃未満、より好ましくは100℃未満、更に好ましくは90℃未満である。
本発明のプロピレン系重合体(A2)の重量平均分子量は100,000〜500,000である。塗膜の強度を高め、高い耐水性、耐溶剤性等を持つためには100,000以上とする必要がある。好ましい下限値は120,000であり、より好ましくは150,000である。一方、低温での焼付けを行うためには500,000以下とする必要がある。好ましい上限値は400,000であり、より好ましくは300,000である。
また、(A2)の重量平均分子量Mw2は(A1)の重量平均分子量Mw1の1.5倍以上とする。強度が強く、高い接着力、耐溶剤性を有する塗膜を得るためには両者の重量平均分子量の比(Mw2/Mw1)を1.5倍以上とする必要がある。好ましくは2倍以上であり、より好ましくは3倍以上である。(Mw2/Mw1)の上限値は特に無いが、好ましくは20倍であり、より好ましくは15倍である。上限値より小さいほどより低温での乾燥、焼付けが行いやすい傾向にある。
プロピレン系重合体(A2)の不飽和有機酸誘導体による変性後の重量平均分子量は、変性前に比べて多少低下してもよい。通常、50,000以上であり、好ましくは60,000以上、より好ましくは80,000以上、更に好ましくは100,000以上である。但し通常、250,000以下であり、好ましくは200,000以下、より好ましくは150,000以下である。
また、重合体(A1)及び(A2)を混合した後、不飽和有機酸誘導体により変性を行った場合は、得られる変性プロピレン系重合体混合物の重量平均分子量は30,000以上であることが好ましい。より好ましくは50,000以上である。下限値より大きいほど塗膜強度が強く保たれ、接着力が高まる傾向にある。但し好ましくは150,000以下であり、より好ましくは120,000以下であり、更に好ましくは100,000以下である。上限値より小さいほどより低温での乾燥、焼付けが行いやすい傾向にある。
混合後に変性を行った場合には、得られる変性プロピレン系重合体混合物の分子量分布は、高分子量域と低分子量域に2つのピークがある二峰性の形状を示すとは限らず、分離が不十分なショルダーピークを有するピークとなる場合がある。また(A1)及び(A2)の分子量が互いに近い場合は実質的に1つのピークしか観察されない場合もありうる。
一方、重合体(A1)及び(A2)をそれぞれ不飽和有機酸誘導体により変性したのち混合した場合は、通常、上記(A1)及び(A2)の分子量分布を足し合わせた、高分子量域と低分子量域に2つのピークがある二峰性の形状を示す。
重合体(A1)及び(A2)の併用比率は、重量比で(A1):(A2)=10:90〜90:10の範囲が好ましい。重合体(A1)及び(A2)の合計量を100重量部として、重合体(A1)の量が10重量部以上であり90重量部以下であり、重合体(A2)の量が10重量部以上であり90重量部以下である。低温焼付け時の基材との密着性を上げるためには重合体(A1)の量が多いことが好ましい。より好ましくは重合体(A1)の量が30重量部以上であり、より好ましくは50重量部以上である。一方、塗膜の強度、耐水性、耐候性、耐擦性、耐溶剤性、耐ブロッキング性を高めるためには重合体(A1)の量を少なくすることが好ましい。より好ましくは重合体(A1)の量が85重量部以下であり、より好ましくは80重量部以下である。
本発明においては、重合体(A1)及び(A2)が不飽和有機酸誘導体によって変性され均一に水に分散されていればその形態は特に限定されない。例えば、重合体(A1)及び(A2)を混合した後、不飽和有機酸誘導体により変性を行う方法がある。この場合、重合体(A1)と(A2)とが同一粒子内に混合した粒子が水に分散された水性樹脂分散体が得られる。重合体(A1)と(A2)はそれぞれ合成後、溶融混練等で混合しつつ変性を行い、水に乳化・分散させてもよい。
或いは、重合体(A1)及び(A2)をそれぞれ不飽和有機酸誘導体により変性したのち混合する方法もある。重合体(A1)からなる粒子と(A2)からなる粒子とがそれぞれ別々に形成され、水に分散された水性樹脂分散体が得られる。
目的やコスト等、必要に応じていずれかの方法を選べばよいが、通常、重合体(A1)及び(A2)を混合した後、不飽和有機酸誘導体により変性を行う方が簡便であり、分散粒子径がやや小さい傾向がある。
重合体(A1)及び/又は(A2)は、不飽和有機酸誘導体によって変性された後、更に更に親水性高分子(B)と結合させることが好ましい。重合体の親水性が増すため、より微細な粒子径の水性樹脂分散体が得られる利点がある。結合形態は特に限定されないが、好ましくはグラフト結合である。
以下、より詳細に説明する。
[1]プロピレン系重合体
プロピレン系重合体(A1)、(A2)は、分子量、融点以外の点では基本的に同様のものを用いうるので、以下では両者について説明する。
プロピレン系重合体としては、公知の各種プロピレン系重合体を用いることができ、特に限定されないが、例えば、プロピレンの単独重合体、プロピレンとその他のコモノマー、例えばエチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、シクロペンテン、シクロヘキセン、及びノルボルネンなどの炭素数2以上のα−オレフィンコモノマーから選ばれる1種以上との共重合体を用いることができる。α−オレフィンコモノマーとして好ましくは炭素数2〜8のα−オレフィンコモノマーであり、より好ましくは炭素数2〜6のα−オレフィンコモノマーである。
またプロピレンと酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどのコモノマーとの共重合体なども用いることができる。なお単に共重合体という場合はランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。更に、これらプロピレン系重合体を塩素化した塩素化プロピレン系重合体も使用しうる。塩素化プロピレン系重合体の塩素化度は通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上であり、また塩素化度は通常50重量%以下であり、好ましくは30重量%以下である。しかしながら、環境への負荷、ポリオレフィン基材への密着性の点で実質上プロピレン骨格に塩素を含まないことがもっとも好ましい形態である。
具体的には、例えば、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−ヘキセン共重合体、塩素化ポリプロピレン、塩素化エチレン−プロピレン共重合体、塩素化プロピレン−ブテン共重合体などである。好ましくはプロピレン単独重合体又はプロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体であり、これらは塩素化されていてもよい。より好ましくは、プロピレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、塩素化ポリプロピレン、塩素化エチレン−プロピレン共重合体、又は塩素化プロピレン−ブテン共重合体である。更に好ましくは、プロピレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体である。好ましくはプロピレン系重合体のプロピレンの含有率が50mol%以上であり、より好ましくは60mol%以上であり、さらに好ましくは70mol%以上である。通常、プロピレンの含量が高いほどプロピレン系重合体基材への密着性が増す傾向がある。
これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なおプロピレン系重合体は直鎖状であっても分岐状であってもよい。
プロピレン単独重合体又は共重合体の最も好ましい形態のひとつとしては、立体規則性として全体又は部分的にアイソタクチック構造を有するものである。例えば通常のアイソタクチックポリプロピレンは勿論のこと、特開2003−231714号公報やUS4,522,982号公報に記載されているような、アイソタクチックブロックポリプロピレンや、ステレオブロックポリプロピレン等も使用しうる。
好ましくは、プロピレン系重合体(A1)は、アイソタクチックブロックとアタクチックブロックとを有するステレオブロックポリプロピレンの単独重合体又は共重合体である。最も好ましくはアイソタクチックブロックとアタクチックブロックとを有するステレオブロックポリプロピレン重合体である。
より好ましくは、13C−NMRにて、頭−尾結合からなるプロピレン単位連鎖部のメチル基の炭素原子に由来するピークを観測し、mmmmで表されるペンタッドに帰属されるピークのピークトップのケミカルシフトを21.8ppmとした際に、19.8ppmから22.1ppmに現れるピークの総面積Sに対する、21.8ppmをピークトップとするピークの面積Sの比率(S/S)が20%〜70%の範囲である。下限値の好ましい値は30%、さらに好ましくは35%である。上限値の好ましい値は65%、さらに好ましくは60%、より好ましくは55%である。下限値より高いほどべたつき度合いが小さくなる傾向があり、また上限値より低いほど結晶化度が低くなり水性樹脂分散体の調製が容易になる傾向がある。
更に好ましくは、同じく21.5〜21.7ppmをピークトップとするピーク(mmmr)の面積をSとしたとき4+2S/S>5である。ペンタッドの比率の測定方法は特開2003−231714号公報に記載の方法を用いることができる。
本発明のプロピレン系重合体の製法については、本発明の要件を満たす重合体を製造できれば特に限定されず、いかなる製法であってもよい。例えばラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、配位重合などが挙げられ、それぞれリビング重合的であってもよい。
配位重合の場合は、例えばチーグラー・ナッタ触媒により重合する方法又はシングルサイト触媒またはカミンスキー触媒により重合する方法が挙げられる。好ましい製法としては、シングルサイト触媒による製造方法を挙げることができる。この理由としては、一般にシングルサイト触媒がリガンドのデザインにより分子量分布や立体規則性分布がシャープであることなどが挙げられる。またシングルサイト触媒としては、例えばメタロセン触媒、ブルックハート型触媒を用い得るが、なかでも分子量分布が狭い、立体規則性分布が制御しやすい等の点でメタロセン触媒を用いることが好ましい。メタロセン触媒ではC対称型、C対称型、C2V対称型、C対称型など、重合するプロピレン系重合体の立体規則性に合わせて好ましい触媒を選択すればよい。好ましくはC対称型、C対称型のメタロセン触媒を用いることができる。
また重合は溶液重合、スラリー重合、バルク重合、気相重合などいずれの重合形態でもよい。溶液重合やスラリー重合の場合、溶媒としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族系炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式脂肪族系炭化水素、塩化メチレン、四塩化炭素、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒類などが挙げられる。なかでも芳香族系炭化水素、脂肪族系炭化水素、及び脂環族系炭化水素が好ましく、より好ましくはトルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、シクロペンタン、及びシクロヘキサンである。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の低融点かつ低分子量のプロピレン系重合体(A1)は、例えば特開2003−231714号公報に記載されたようなメタロセン触媒を用いる場合、通常、芳香族炭化水素系有機溶媒、又は脂肪族炭化水素系有機溶媒中、高温条件下でプロピレン等のモノマーを重合することにより得られる。一方、高融点かつ高分子量のプロピレン系重合体(A2)は、通常、(A1)よりも低温の条件下でプロピレン等のモノマーを重合することにより得られる。
[2]変性プロピレン系重合体
以下、不飽和有機酸誘導体によって変性されたプロピレン系重合体を不飽和有機酸変性プロピレン系重合体と称する。不飽和有機酸誘導体とは、不飽和基を含む有機酸、又はそのエステル化物、無水物等の総称である。不飽和有機酸誘導体としては、不飽和カルボン酸、ジカルボン酸無水物、及びジカルボン酸無水物モノエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。反応性が高く、これらの基を有する不飽和化合物も多くプロピレン系重合体へ共重合又はグラフト反応させるのも容易であるし、後述する親水性高分子とも結合しやすく、好ましい。例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸又はその無水物或いは無水物モノエステル、イタコン酸又はその無水物或いは無水物モノエステル、クロトン酸、スチレンスルホン酸などが挙げられる。なかでも好ましいのは、マレイン酸又はその無水物或いは無水物モノエステルである。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお(メタ)アクリル酸とはアクリル酸とメタクリル酸の総称である。
不飽和有機酸変性プロピレン系重合体の製造方法は特に限定されないが、例えば、ラジカル重合開始剤の存在下、予め重合したプロピレン系重合体に、有機酸基を有するラジカル重合性化合物をグラフト重合して得ることができる。この場合、ラジカル重合性の不飽和有機酸誘導体を用いる。
グラフト重合に用いるラジカル重合開始剤としては、通常のラジカル開始剤から適宜選択して使用することができ、例えば有機過酸化物、アゾニトリル等を挙げることができる。有機過酸化物としては、ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンなどのパーオキシケタール類、クメンヒドロパーオキシドなどのハイドロパーオキシド類、ジ(t−ブチル)パーオキシドなどのジアルキルパーオキサイド類、ベンゾイルパーオキシドなどのジアシルパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボナートなどのパーオキシエステル類が使用できる。アゾニトリルとしてはアゾビスブチロニトリル、アゾビスイソプロピルニトリル等が挙げられる。なかでもベンゾイルパーオキシド及びt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボナートが特に好ましい。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ラジカル重合開始剤とグラフト共重合単位の使用割合は、通常、ラジカル重合開始剤:グラフト共重合単位=1:100〜2:1(モル比)の範囲である。好ましくは1:20〜1:1の範囲である。
不飽和有機酸変性プロピレン系重合体の製法については、本発明の要件を満たす重合体を製造できれば特に限定されず、いかなる製法であってもよい。例えば、溶液変性法(溶液中で加熱攪拌して反応する方法)、溶融変性法(無溶媒で溶融加熱攪拌して反応する方法、又は、押し出し機で加熱混練して反応する方法)等が挙げられる。溶液中で製造する場合の溶媒としては、プロピレン系重合体の製造法で挙げた溶媒を同様に用いることができる。
反応温度は、通常50℃以上300℃以下であり、好ましくは80〜230℃の範囲である。反応時間は、溶液変性法で通常1〜20時間程度であり、溶融変性法であれば滞留時間は10秒〜10分程度となる。
本発明の不飽和有機酸変性プロピレン系重合体としては、具体的には、無水マレイン酸変性プロピレン系重合体及びその塩素化物、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体及びその塩素化物、無水マレイン酸変性プロピレン−ブテン共重合体及びその塩化物、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン−ブテン共重合体及びその塩化物、アクリル酸変性プロピレン系重合体及びその塩素化物、アクリル酸変性エチレン−プロピレン共重合体及びその塩素化物、アクリル酸変性プロピレン−ブテン共重合体及びその塩化物などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。このうち特に好ましいものは、無水マレイン酸変性プロピレン系重合体、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性プロピレン−ブテン共重合体である。
不飽和有機酸変性プロピレン系重合体中の不飽和有機酸基の量は、プロピレン系重合体1g当たり0.01〜5mmol、即ち0.01〜5mmol/gの範囲にある事が好ましい。より好ましい下限値は0.03mmol/gであり、さらに好ましくは0.05mmol/gである。より好ましい上限値は1mmol/gであり、更に好ましくは0.5mmol/gである。下限値より高いほど有機酸の結合量が増し重合体の親水性が増すため分散粒子径が小さくなる傾向にあり、上限値より低いほど、基材である結晶性のプロピレン系重合体に対する密着性、塗膜の耐水性などが増す傾向にある。
本発明においては、本発明の目的を害しない範囲において他の官能基を有していても良い。官能基としては、カルボン酸エステル基、水酸基、アミノ基、エポキシ基、アミド基、イソシアネート基、シリル機などが挙げられる。これらの官能基の含有量は、プロピレン系重合体1g当たり2mmol以下、即ち2mmol/g以下の範囲にある事が好ましい。より好ましい上限値は1mmol/gであり、更に好ましくは0.5mmol/gである。ポリオレフィン基材への密着性を高く維持するためには上限値より少ない方が好ましい。
これら官能基は、ラジカル重合性不飽和基と官能基を有する単量体を不飽和有機酸誘導体と同時に変性することによっても得られるし、あらかじめ不飽和有機酸誘導体によって変性されたプロピレン重合体にさらに変性をすることによっても得ることができる。ラジカル重合性不飽和基と官能基を有する単量体としては、具体的には(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルエステル、メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルエステル、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
[3]親水性高分子
重合体(A1)及び/又は(A2)は、不飽和有機酸誘導体によって変性された後、更に更に親水性高分子(B)と結合させることが好ましい。重合体の親水性が増すため、より微細な粒子径の水性樹脂分散体が得られる利点がある。結合形態は特に限定されないが、好ましくはグラフト結合である。
本発明において親水性高分子とは、25℃の水に10重量%の濃度で溶解させたときに不溶分が1重量%以下の高分子を言う。親水性高分子(B)としては、本発明の効果を著しく損なわない限り、特に限定されず用いることができ、合成高分子、半合成高分子、天然高分子のいずれも用いることができる。また親水性高分子が反応性基を有していてもよい。
合成高分子としては、特に限定されないが例えばポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が使用できる。天然高分子としては、特に限定されないが例えばコーンスターチ、小麦デンプン、甘蔗デンプン、馬鈴薯デンプン、タピオカデンプン、米デンプンなどのデンプン、ふのり、寒天、アルギン酸ソーダなどの海藻、アラビアゴム、トラガントゴム、こんにゃくなどの植物粘質物、にかわ、カゼイン、ゼラチンなどの動物性タンパク、プルラン、デキストリンなどの発酵粘質物、等が使用できる。半合成高分子としては、特に限定されないが例えばカルボキシルデンプン、カチオンデンプン、デキストリンなどのデンプン質、ビスコース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース、等が使用できる。
なかでも好ましくは、親水性度合いの制御がしやすく、特性も安定している合成高分子である。より好ましくは、ポリ(メタ)アクリル樹脂などのアクリル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、及びポリビニルピロリドン樹脂、ポリエーテル樹脂である。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも親水性の高い、ポリアルキレン構造を有するポリエーテル樹脂が最も好ましい。
本発明に用いうるアクリル系樹脂は、通常、不飽和カルボン酸若しくはそのエステル又は無水物を、ラジカル重合、アニオン重合、又はカチオン重合により重合することで得られる。変性プロピレン系重合体との結合方法は、限定はされないが、例えば、変性プロピレン系重合体に直接ラジカルグラフト重合する方法、水酸基、アミノ基、グリシジル基、(無水)カルボン酸基等の反応性基を有するアクリル系樹脂を、変性プロピレン系重合体と反応させる方法、等が挙げられる。
親水性を示す不飽和カルボン酸若しくはそのエステル又は無水物としては、好ましくは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル四級化物、(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
また、親水性を示す範囲内で疎水性ラジカル重合性化合物(疎水性モノマー)を共重合することができる。共重合可能な疎水性モノマーとしては、例えば炭素原子数1〜12のアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーや、炭素原子数1〜12の炭化水素基を有する重合性ビニルモノマーなどが挙げられる。
本発明に用いるポリビニルアルコール樹脂は、通常、酢酸ビニルを重合させポリ酢酸ビニルを得た後、ケン化することで得られる。ケン化度は完全ケン化でも部分ケン化でもよい。
本発明に用いるポリビニルピロリドン樹脂は、通常、ビニルピロリドンを重合させることで得られる。
本発明に用いるポリエーテル樹脂は、通常、環状アルキレンオキサイドまたは環状アルキレンイミンを開環重合することで得られる。変性プロピレン系重合体との結合方法は限定はされないが、例えば、変性プロピレン系重合体中で環状アルキレンオキサイドを開環重合する方法、開環重合等により得られたポリエーテルポリオールやポリエーテルアミンなどの反応性基を有する親水性高分子を、変性プロピレン系重合体と反応させる方法、等が挙げられる。ポリエーテルアミンは、ポリエーテル骨格を有する樹脂の片末端又は両末端に、反応性基としての1級アミノ基を有する化合物である。ポリエーテルポリオールはポリエーテル骨格を有する樹脂の両末端に、反応性基としての水酸基を有する化合物である。親水性を示すポリアルキレンオキサイドやポリアルキレンイミンとして好ましくは、ポリエチレンオキサイド、プロピレン系重合体オキサイド、ポリエチレンイミンが挙げられる。
本発明に用いる親水性高分子(B)は変性プロピレン系重合体と反応しうる反応性基を1以上有しているのが好ましい。反応性基としては、例えばカルボン酸基、ジカルボン酸無水物基、及びジカルボン酸無水物モノエステル基、水酸基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基などが挙げられるが、好ましくはアミノ基を有する。アミノ基はカルボン酸基、無水カルボン酸基、グリシジル基、イソシアネート基など多種の反応性基と反応性が高いので変性プロピレン系重合体と親水性高分子を結合させやすい。アミノ基は1級、2級、3級のいずれでもよいが、より好ましくは1級アミノ基である。
反応性基は1以上あればよいが、より好ましくは反応性基を1つのみ有する。反応性基が2以上あると、変性プロピレン系重合体と結合させる際に3次元網目構造となりゲル化してしまう可能性がある。ただし反応性基を複数有していても、他より反応性の高い反応性基が1つのみであればよい。例えば複数の水酸基と、それより反応性の高い1つのアミノ基を有する親水性高分子は好ましい例である。ここで反応性とは変性プロピレン系重合体の有する反応基との反応性である。
本発明における親水性高分子(B)は、GPCで測定しポリスチレンの検量線で換算した重量平均分子量Mwが200〜100,000であることが好ましい。下限値のより好ましい値は300、さらに好ましくは500である。上限値のより好ましい値は50,000であり、さらに好ましくは10,000である。Mwが下限値より高いほどグラフト重合体の親水性が増し分散粒子径が小さくなり安定に分散する傾向にあり、また上限値より低いほど粘度が低く樹脂分散体を調製しやすい傾向にある。なおGPC測定は、THFなどを溶媒として、市販の装置を用いて従来公知の方法で行われる。
プロピレン系重合体に結合させる親水性高分子(B)の量は、変性プロピレン系重合体1g当たり0.01〜5mmol、即ち0.01〜5mmol/gの範囲にある事が好ましい。より好ましい下限値は0.05mmol/gであり、さらに好ましくは0.1mmol/gである。より好ましい上限値は1mmol/gであり、更に好ましくは0.5mmol/gである。下限値より高いほどグラフト重合体の親水性が増し分散粒子径が小さくなり安定に分散する傾向にあり、上限値より低いほど、基材である結晶性のプロピレン系重合体に対する密着性が増す傾向にある。
変性プロピレン系重合体と親水性高分子(B)とは、変性プロピレン系重合体に親水性高分子(B)がグラフト結合したグラフト共重合体、変性プロピレン系重合体の片末端又は両末端に親水性高分子(B)が結合した状態を含む変性プロピレン系重合体と親水性高分子(B)とのブロック共重合体、があり得るが、好ましくはグラフト共重合体である。親水性高分子(B)の含有量が制御しやすく、またブロック共重合体に比べて親水性高分子(B)の含有量を上げやすい利点がある。
親水性高分子(B)は変性プロピレン系重合体に対して、種々の反応形態により結合させることができる。その形態は特に限定されないが、例えば、ラジカルグラフト反応や反応性基を利用した反応である。
ラジカルグラフト反応によれば、炭素−炭素共有結合による結合が形成される。
反応性基を利用した反応は、変性プロピレン系重合体と親水性高分子(B)の双方に反応性基を有していてそれらを反応させて結合させるものであり、共有結合又はイオン結合が形成される。この反応としては、例えば(無水)カルボン酸基とヒドロキシル基の(開環)エステル化反応、カルボン酸基とエポキシ基との開環反応、1級又は2級アミノ基とエポキシ基との開環反応、(無水)カルボン酸基と1級又は2級アミノ基の(開環)アミド化反応又はイミド化反応、カルボン酸基と3級アミノ基の4級アンモニウム化反応、カルボン酸基とイソシアナート基のアミド化反応、1級又は2級アミノ基とイソシアナート基のウレア化反応、ヒドロキシ基とイソシアナート基のウレタン反応等が挙げられる。なかでも無水カルボン酸基と1級又は2級アミノ基の開環アミド化反応又はイミド化反応が反応性の高さの点で好ましく、更には、イミド化よりもアミド化の方がNH基とCOOH基の親水基が基中に残るため乳化の容易さの点で好ましい。各反応の反応率は1〜100%の間で任意に選べばよく、好ましくは50〜100%、さらに好ましくは70〜100%である。カルボン酸基が二塩基酸もしくはその無水物である場合は、二塩基酸もしくはその無水物一当量に対し、一当量反応させても二当量反応させてもよい。
[4]変性プロピレン系重合体が更に親水性高分子(B)と結合してなる重合体(C)
変性プロピレン系重合体と親水性高分子(B)を結合させ重合体(C)を製造する方法としては、通常、変性プロピレン系重合体存在下で親水性モノマーを重合し、変性プロピレン系重合体に結合した親水性高分子(B)を形成する方法(R1)、又は予め重合した親水性高分子(B)を変性プロピレン系重合体に結合させる方法(R2)が挙げられ、変性プロピレン系重合体や親水性高分子の種類及び組合せ、目的とする重合体の特性等に応じて適宜選択すればよい。
[4−1]重合体(C)の製造方法(R1)
本方法では、変性プロピレン系重合体存在下で親水性モノマーを重合することで変性プロピレン系重合体に結合した親水性高分子(B)を得る。親水性モノマーの重合方法としては、例えば付加重合、縮合重合、開環重合などを用いうる。このとき重合後に親水性高分子を形成しうる範囲であれば疎水性モノマーを共重合させてもよい。
具体的には、例えば、親水性ラジカル重合性不飽和化合物をラジカル重合開始剤の存在下で重合して親水性高分子(B)を形成するとともに変性プロピレン系重合体に結合させる方法がある。親水性ラジカル重合性不飽和化合物としては、特に限定されないが、例えば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル四級化物、ビニルピロリドンなどが挙げられる。共重合可能な疎水性モノマーとしては(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、酢酸ビニルが挙げられる。
または、ラジカル重合性不飽和化合物をラジカル重合開始剤の存在下で重合して高分子を形成するとともに変性プロピレン系重合体に結合させ、次いで高分子を親水性に変性し親水性高分子(B)とする方法がある。例えば(メタ)アクリル酸t−ブチルを重合後、酸性下で加水分解しポリ(メタ)アクリル酸に変性する方法、酢酸ビニルを重合後、ケン化してポリビニルアルコールに変性する方法などが挙げられる。共重合可能な疎水性モノマーとしては(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、酢酸ビニルが挙げられる。
或いは、変性プロピレン系重合体の反応性基を開始末端として、親水性ラジカル重合性不飽和化合物や親水性開環重合モノマー等を重合して親水性高分子(B)を得る方法がある。親水性ラジカル重合性不飽和化合物としては上述のものを同様に用いうる。親水性開環重合モノマーとしてはエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エチレンイミンなどが挙げられる。共重合可能な疎水性モノマーとしては、トリメチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトンなどが挙げられる。これらはいずれも、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
反応方法については、本発明の要件を満たす重合体を製造できれば特に限定されず、いかなる方法であってもよい。例えば、溶液変性法や溶融変性法が挙げられる。溶液中で製造する場合の溶媒としては、[1]プロピレン系重合体の製造法で挙げた溶媒を同様に用いることができる。
反応温度は、通常0〜200℃の範囲であり、好ましくは30〜150℃の範囲である。反応時間は、溶液変性法で通常1〜20時間程度であり、溶融変性法であれば滞留時間は10秒〜10分程度となる。
[4−2]重合体(C)の製造方法(R2)
本方法では、予め重合した親水性高分子(B)を変性プロピレン系重合体に結合させる。この場合親水性高分子(B)としては[3]で挙げたものを用いうる。
具体的には、例えば、まず親水性モノマーを重合して親水性高分子とする際に分子内に不飽和二重結合を残しておき、次いでラジカル重合性開始剤を用いて変性プロピレン系重合体にグラフト重合させる方法がある。
また、まず末端に反応性基を有する親水性高分子を重合し、次いでこれを変性プロピレン系重合体に結合させる方法がある。末端に反応性基を有する親水性高分子は、開始剤や連鎖移動剤として反応性基を有する化合物を用いて親水性モノマーを重合することで得られる。もしくはエポキシ化合物等の親水性開環重合モノマーを開環重合することによっても得られる。このとき用いうる親水性モノマーとしては、[4−1]で挙げた各種親水性モノマーを同様に用いうる。これらはいずれも、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
反応方法については、本発明の要件を満たす重合体を製造できれば特に限定されず、いかなる方法であってもよい。例えば、溶液変性法や溶融変性法が挙げられる。溶液中で製造する場合の溶媒としては、[1]プロピレン系重合体の製造法で挙げた溶媒を同様に用いることができる。
反応温度は、通常0〜200℃の範囲であり、好ましくは30〜150℃の範囲である。反応時間は、溶液変性法で通常1〜20時間程度であり、溶融変性法であれば滞留時間は10秒〜10分程度となる。
[5]水性樹脂分散体とその製造方法
本発明の水性樹脂分散体の製造方法は特に限定されないが、例えば、前述の変性プロピレン系重合体(重合体(C)により変性したプロピレン系重合体である場合を含む)に水以外の溶媒を加えて溶解させた後に水を添加して分散体とする方法、変性プロピレン系重合体が溶融する温度以上で溶融させた後に水を添加して分散体とする方法、などが挙げられる。
なかでも、変性プロピレン系重合体に水以外の溶媒を加え、必要に応じ加熱して溶解させた後に水を添加する方法ではより粒径の細かい水分散体が作りやすく、更に好ましい。溶媒への溶解時、又は水の添加時の温度は、通常30〜150℃である。また水以外の溶媒に一旦溶解する場合は、水を添加した後に溶媒を留去してもよい。樹脂分散体における水以外の溶媒の比率は、最終的には通常40%以下とする。好ましくは20%以下とし、さらに好ましくは10%以下とし、特に好ましくは1%以下とする。
本方法に用いられる水以外の溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ヘキサン、オクタン、デカン等の脂肪族系炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式脂肪族系炭化水素、塩化メチレン、四塩化炭素、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等のアルコール類、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−メトキシプロパノール、2−エトキシプロパノール、ジアセトンアルコール等の2以上の官能基を持つ有機溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒類などが挙げられる。
なかでも水に1質量%以上溶解する溶媒が好ましく、さらに好ましくは5質量%以上溶解するものであり、例えば、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、シクロヘキサノン、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、シクロヘキサノール、テトラヒドロフラン、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−メトキシプロパノール、2−エトキシプロパノール、ジアセトンアルコールが好ましい。
溶媒溶解状態および溶融状態にしたのち、水を添加し水性樹脂分散体を製造する装置としては、特に限定されないが、例えば、撹拌装置付き反応釜、一軸または二軸の混練機などが使用できる。その際の攪拌速度は装置の選択に伴い多少異なるが、通常、10〜1000rpmの範囲である。
特に、親水性高分子が結合した重合体(C)は水への分散性に非常に優れるので、分散粒子径が細かく、かつ樹脂が安定に分散している利点がある。従ってこれを用いると優れた外観の塗布品が得られる。
水性樹脂分散体における重合体(樹脂)の分散粒子径は、体積換算として粒径が細かい方から累積で50%の粒子径(50%粒子径、又は50%平均粒子径と称する。)を求めた場合、通常50%粒子径で3μm以下であり、好ましくは1μm以下である。本発明によれば、50%粒子径が0.5μm以下とすることができ、より好ましくは0.3μm以下、更に好ましくは0.2μm以下とすることができる。同じく90%粒子径を求めた場合、更に好ましくは90%粒子径を1μm以下とすることができ、特に好ましくは0.5μm以下とすることができる。分散粒子径を小さくすることで、分散安定性を向上させ、凝集が起きにくく、より安定に分散できる。また90%粒子径と50%粒子径の比が小さくなることは、粒度分布が狭くなることを意味し結果として分散安定性が向上する。
なお、本発明において分散とは、分散粒子が極めて小さく単分子で分散している状態、実質的には溶解と言えるような状態を含む概念である。従って、分散粒子径の下限値については特に制限はない。
本発明の水性樹脂分散体は、全体に対しての固形分は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは20重量%以上である。また好ましくは60重量%以下であり、より好ましくは50重量%以下である。固形分の量が少ないほど粘度が低く種々の塗布方法に適用でき使用しやすく、また分散体としての安定性も高い傾向にある。ただし、例えばプライマーや接着剤として使用する際に、塗布後の水の乾燥にあまり多量のエネルギーと時間をかけないためには固形分が多い方が好ましい。
<塩基性物質>
本発明の水性樹脂分散体には、必要に応じて塩基性物質を添加することができる。特に、親水性高分子を結合せずに水分散を行う場合は、変性プロピレン系重合体の持つ有機酸基を塩基性物質によって中和することによって親水性を高めることが好ましい。塩基性物質としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、モルホリンなどの有機塩基が挙げられる。なかでもジメチルエタノールアミン、2−メチル−2−アミノ−プロパノールなど、水酸基とアミノ基を有するアルカノールアミンが好ましい。また、塗布乾燥後の皮膜の耐水性などを高めるためには、塩基性物質は乾燥条件で揮発することが好ましく、沸点が200℃以下であることが好ましく、より好ましくは150℃以下である。沸点の下限は特に定められないが、保存中に揮発するのを防ぐためには沸点は0℃以上が好ましく、より好ましくは50℃以上である。
<界面活性剤>
以上のように本発明によれば、界面活性剤を用いることなく水性樹脂分散体を得ることができ、従って従来界面活性剤によって引き起こされていたブリードアウトを抑制できるのが利点の一つである。ただし他の目的、例えば塗布する基材への濡れ性の向上などを目的として、用途等に応じて必要により界面活性剤を含有させてもよい。界面活性剤としては例えばカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などを使用することができる。界面活性剤としては、通常、炭素数4以上のアルキル基、アルケニル基、アルキルアリール基又はアルケニルアリール基を疎水基として有するものを用いる。好ましくは炭素数8以上であり、より好ましくは炭素数12以上である。ただし通常、炭素数30以下である。
ノニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンセチルエ−テル、ポリオキシエチレンステアリエ−テル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエ−テル、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどが挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリル硫酸エーテルナトリウムなどが挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、例えば塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウなどが挙げられる。両性界面活性剤としては、例えばラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどが挙げられる。
また、上記の界面活性剤がラジカル重合性官能基を有する、いわゆる反応性界面活性剤なども使用できる。反応性界面活性剤を用いた場合はこの樹脂分散体を用いて形成した皮膜の耐水性を向上できる。代表的な市販反応性界面活性剤としては、エレミノールJS−2(三洋化成工業製)、ラテムルS−180(花王製)が挙げられる。
界面活性剤量は少ない方が好ましく、水性樹脂分散体の界面活性剤含有量が、重合体100質量部に対し10質量部以下であることが好ましい。より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。最も好ましくは界面活性剤を実質的に含まないことである。実質的に界面活性剤を含まないとは重合体100質量部に対して1質量部未満であることを言う。
界面活性剤量を減らすことにより、従来問題となっていたブリードアウトを抑制でき外観に優れた塗装品が得られる利点があり、本樹脂分散体を塗装の最表面の塗料として用いることができる。また界面活性剤を含有すると塗装の耐水性が低下しやすいためこの点でも界面活性剤量が少ないことが望ましい。
ただしノニオン性界面活性剤は他の界面活性剤に比べて耐水性を低下させにくいのでノニオン性界面活性剤は多少多めに含んでもよい。例えば重合体100重量部に対してノニオン性界面活性剤以外の界面活性剤は5重量部以下とすべき場合、ノニオン性界面活性剤は10重量部以下としてもよい。
また、塩素化ポリオレフィンを用いなくとも界面活性剤量を低減でき、環境負荷を低減できる点も本発明の利点の一つである。
[5−1]他の樹脂の併用
本発明の水性樹脂分散体には、ポリオレフィン基材への密着性以外の機能を付与するために、必要に応じて上記変性プロピレン系重合体に加えて他の水性樹脂を配合することも可能である。具体的な例としてはアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の水性樹脂が挙げられる。これら樹脂と変性プロピレン系重合体を含む水性樹脂分散体の形態は特に限定されない。例えば、これら樹脂と変性プロピレン系重合体とをそれぞれ乳化して混合する方法、或いはこれら樹脂と変性プロピレン系重合体とを混合後、乳化する方法がある。
樹脂の含有量は、変性プロピレン系重合体と上記他の樹脂との質量比が90:10〜10:90の範囲が好ましい。即ち変性プロピレン系重合体と他の樹脂との合計量を100質量部として、変性プロピレン系重合体の量が10質量部以上が好ましく、90質量部以下が好ましい。変性プロピレン系重合体の量が10質量部未満では、ポリオレフィン系基材に対する密着性が不十分となりやすい。より好ましくは15質量部以上とし、更に好ましくは20質量部以上とする。変性プロピレン系重合体の量が90質量部より大きいと、樹脂添加による塗膜の強度、耐水性、耐候性、耐擦性、耐溶剤性等の向上が不十分となる。より好ましくは85質量部以下、更に好ましくは80質量部以下とする。
(D−1)アクリル樹脂
本発明のアクリル樹脂としては、(メタ)アクリル系重合体であれば特に限定されないが、アクリル酸及び/又はそのエステルの単独重合体又は共重合体、メタクリル酸及び/又はそのエステルの単独重合体又は共重合体を言う。なお(メタ)アクリルとはアクリル及び/又はメタクリルを指す。 (メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、炭素原子数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマ−、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等、又は、炭素原子数6〜12のアリ−ル基またはアラルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、例えば(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。
或いは、ヘテロ原子を含有する炭素原子数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル類、例えば(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−2−アミノエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸とポリエチレンオキサイドの付加物等、フッ素原子を含有する炭素原子数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル類、例えば(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パ−フルオロエチルエチル等、(メタ)アクリルアミド系モノマー、例えば(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルジメチルアミド等が、それぞれ挙げられる。
(D−2)ポリウレタン樹脂
本発明のウレタン樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば(i)1分子中に平均2個以上の活性水素を含有する成分と(ii)多価イソシアネート成分とを反応させて得られるウレタンポリマー、または、上記(i)成分及び(ii)成分をイソシアネート基過剰の条件下で反応させて得られるイソシアネート基含有プレポリマーとジオール等の鎖伸長剤とを反応させて得られるウレタンポリマーが挙げられる。これらのウレタン系重合体中には酸成分(酸残基)を含有させてもよい。
なお、イソシアネート基含有プレポリマーの鎖伸長方法は公知の方法によればよく、例えば、鎖伸長剤として、水、水溶性ポリアミン、グリコール類などを使用し、イソシアネート基含有プレポリマーと鎖伸長剤成分とを、必要に応じて触媒の存在下で反応させればよい。
前記(i)成分の1分子中に平均2個以上の活性水素を含有する成分としては、特に限定されるものではないが、水酸基性の活性水素を有するものが好ましい。このような化合物の具体例としては、次のようなものが挙げられる。
(1)ジオール化合物:エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサングリコール、2,5−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等。
(2)ポリエーテルジオール:前記のジオール化合物のアルキレンオキシド付加物、アルキレンオキシドや環状エーテル(テトラヒドロフランなど)の開環(共)重合体、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの(ブロックまたはランダム)共重合体、グリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリオクタメチレングリコール等。
(3)ポリエステルジオール:アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等のジカルボン酸(無水物)と上記(1)で挙げられたようなエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール等のジオール化合物とを水酸基過剰の条件で重縮合させて得られたものが挙げられる。具体的には、エチレングリコール−アジピン酸縮合物、ブタンジオール−アジピン縮合物、ヘキサメチレングリコール−アジピン酸縮合物、エチレングリコール−プロピレングリコール−アジピン酸縮合物、或いはグリコールを開始剤としてラクトンを開環重合させたポリラクトンジオール等が例示できる。
(4)ポリエーテルエステルジオール:エーテル基含有ジオール(前記(2)のポリエーテルジオールやジエチレングリコール等)または、これと他のグリコールとの混合物を上記(3)で例示したような(無水)ジカルボン酸に加えてアルキレンオキシドを反応させてなるもの、例えば、ポリテトラメチレングリコール−アジピン酸縮合物等。
(5)ポリカーボネートジオール:一般式HO−R−(O−C(O)−O−R)x−OH(式中、Rは炭素原子数1〜12の飽和脂肪酸ジオール残基、xは分子の繰り返し単位の数を示し、通常5〜50の整数である。)で示される化合物等。これらは、飽和脂肪族ジオールと置換カーボネート(炭酸ジエチル、ジフェニルカーボネートなど)とを水酸基が過剰となる条件で反応させるエステル交換法、前記飽和脂肪族ジオールとホスゲンを反応させるか、または必要に応じて、その後さらに飽和脂肪族ジオールを反応させる方法などにより得ることができる。
上記の(1)から(5)に例示したような化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記(i)成分と反応させる(ii)多価イソシアネート成分としては、1分子中に平均2個以上のイソシアネート基を含有する脂肪族、脂環族または芳香族の化合物が使用できる。
脂肪族ジイソシアネート化合物としては、炭素原子数1〜12の脂肪族ジイソシアネートが好ましく、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネートなどが挙げられる。脂環式ジイソシアネート化合物としては、炭素原子数4〜18の脂環式ジイソシアネートが好ましく、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネートなどが挙げられる。芳香族イソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
また、ウレタン系重合体中に酸残基を含むものは、界面活性剤を使用せずにもしくはその量が少なくても水中に分散させることが可能となるので塗膜の耐水性が良くなることが期待される。酸残基の含有量としては、ウレタン系重合体の酸価として、25〜150(mgKOH/g)、好ましくは、30〜100(mgKOH/g)の範囲であるのが好適である。酸価が25未満では水分散性を不十分となりやすく、界面活性剤の併用が必要となることが多い、一方酸価が150より大きいと塗膜の耐水性が劣る傾向となる。
ウレタン系重合体中に酸基を導入する方法は、従来から用いられている方法が特に制限なく使用できるが、例えばジメチロールアルカン酸を前記(2)から(4)に記載したグリコール成分の一部もしくは全部と置き換えることによって予めポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリエーテルエステルジオールなどにカルボキシル基を導入しておくことにより、酸基を導入する方法が好ましい。ここで用いられるジメチロールアルカン酸としては、例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸などを挙げることができる。
(D−3)ポリエステル樹脂
本発明のポリエステル樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えばアジピン酸、コハク酸、セバシン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等のジカルボン酸及び/又はその無水物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール等のジオール化合物又はエーテル基含有ジオール(ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等)とを重縮合させて得られたものが挙げられる。
具体的には、エチレングリコール−アジピン酸縮合物、ブタンジオール−アジピン縮合物、ヘキサメチレングリコール−コハク酸縮合物、エチレングリコール−プロピレングリコール−フタル酸縮合物、ポリエチレングリコール−アジピン酸縮合物などがある。
これらを界面活性剤の存在下または非存在下で水性エマルジョン化することによってポリエステル樹脂の水分散体が得られる。その製造方法は特に限定されないが、前述のアクリル樹脂の水分散体の製造方法に準じて製造しうる。市販品として入手可能なものとしては、東洋紡社製のバイロナールMD−1200、MD−1245などがあげられる。
(D−4)エポキシ樹脂
本発明のエポキシ樹脂はエポキシ基を1分子中に1個以上有する重合体であれば特に限定されず、例えば多価フェノールをアルカリの存在下にエピクロルヒドリンと反応させることにより製造することができるフェノールの多価グリシジルエーテルや、このようなフェノールの多価グリシジルエーテルと上記の多価フェノールとを反応させて得られるエポキシ基含有重合体などが挙げられる。
ここで用いることができる多価フェノールとしては、例えばビス(4−ヒドロキシフエニル)−2,2−プロパン、4,4'−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、1,5−ジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。
これらの多価フェノールに代えて、そのフェニル核の二重結合の一部又は全部に対し水素を付加した水添化合物も使用できる。
また、エポキシ樹脂としては、フェノール系ノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル及び多価アルコールのポリグリシジルエーテルも用いることができる。上記の多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセロール、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−2,2−プロパン、ソルビトール等が挙げられる。
これらを界面活性剤の存在下または非存在下で水性エマルジョン化することによってエポキシ樹脂の水分散体が得られる。その製造方法は特に限定されないが、前述のアクリル樹脂の水分散体の製造方法に準じて製造しうる。
市販品として入手可能な代表的なものとしては、フェノールノボラック樹脂にエピクロヒドリンを付加して得られるノボラック型エポキシ樹脂を界面活性剤(乳化剤)で強制的にエマルション化した、長瀬ケムテック株式会社製デコナールEM150、ジャパンエポキシレジン株式会社製エピレッツ6006W70、5003W55、東都化成株式会社製WEX−5100、等が挙げられる。
これら水性樹脂を製造するための重合方法としては、特に限定されないが、例えば溶液重合、バルク重合、乳化重合、もしくは懸濁重合等の方法を用いうる。溶液重合、バルク重合で得られた樹脂を水性エマルジョン化し水分散体とするためには溶液の存在下もしくは不存在下で、コロイドミルなどの機械力により、乳化・分散を行い、その後に必要に応じて残留溶剤を減圧下もしくは大気圧下で留去すればよい。乳化重合又は懸濁重合を用いれば直接水性エマルジョンとしてポリマーを得ることができる。
[5−2]顔料の添加
本発明の水性樹脂分散体には顔料を加えることができる。顔料を含む水性樹脂分散体は塗料として好適である。使用しうる顔料は特に限定されないが、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄、酸化クロム、紺青、ベンガラ、黄鉛、黄色酸化鉄等の無機顔料やアゾ系顔料、アントラセン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、インジゴ系顔料、フタロシアニン系顔料等の有機顔料等の着色顔料;タルク、炭酸カルシウム、クレイ、カオリン、シリカ、沈降性硫酸バリウム等の体質顔料;導電カーボン、アンチモンドープの酸化スズをコートしたウイスカー等の導電顔料;アルミニウム、銅、亜鉛、ニッケル、スズ、酸化アルミニウム等の金属または合金等の無着色或いは着色された金属製光輝材などを挙げることができ、1種または2種以上を併用してもよい。
水性樹脂分散体に対する顔料の添加量は、重量比でプロピレン系重合体100重量部に対して、10重量部以上が好ましい。より好ましくは50重量部以上とする。但し400重量部以下が好ましく、より好ましくは200重量部以下である。下限値より添加量が多いほど発色性、隠蔽性が高くなる傾向にあり、上限値より少ないほど密着性が高くなる傾向にある。
このとき顔料分散剤を用いてもよい。例えば、ジョンソンポリマー社製のジョンクリルレジン等の水性アクリル系樹脂;ビックケミー社製のBYK−190等の酸性ブロック共重合体;スチレン−マレイン酸共重合体;エアプロダクツ社(エアープロダクト社)製のサーフィノールT324等のアセチレンジオール誘導体;イーストマンケミカル社製のCMCAB−641−0.5等の水溶性カルボキシメチルアセテートブチレート等を挙げることができる。これらの顔料分散剤を用いることで、安定な顔料ペーストを調製することができる。
<その他添加剤>
本発明の水性樹脂分散体には、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、必要に応じて種々の添加剤を含有させることができる。例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐候安定剤、耐熱防止剤等の各種安定剤;酸化チタン、有機顔料等の着色剤;顔料、カーボンブラック、フェライト等の導電性付与剤、染料、顔料分散剤、レべリング剤、消泡剤、増粘剤、防腐剤、防かび剤、防錆剤、濡れ剤等の各種添加剤を配合使用してもよい。
消泡剤としては例えばエアープロダクト社製のサーフィノール104PA及びサーフィノール440等が挙げられる。
また耐水性、耐溶剤性などの各種の塗膜性能をさらに向上させるために。架橋剤を分散体中の樹脂100重量部に対して0.01〜100重量部添加することができる。架橋剤としては自己架橋性を有する架橋剤、カルボキシル基と反応する官能基を分子内に複数固有する化合物、多価の配位座を有する金属錯体等を用いることができ、このうちイソシアネート化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン基含有化合物、ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤等が好ましい。またこれらの架橋剤を組み合わせて使用してもよい。
本発明の水性樹脂分散体をプライマー、塗料、インキ等の用途に使用した場合、乾燥速度を上げたり或いは仕上がり感の良好な表面を得る目的で、水以外の親水性有機溶媒を配合することができる。親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類及びそのエーテル類、等が挙げられる。また樹脂分散体の安定性を損なわない範囲で上記以外の有機もしくは無機の化合物を樹脂分散体に添加することもできる。
本発明の樹脂分散体はプライマー、塗料、インキ、接着剤等に用いることができ、特に塗料、プライマーとして有用に用いることができる。用途としては自動車内装用・外装用等の自動車用塗料・プライマー、携帯電話・パソコン等の家電用塗料、建築材料用塗料等に用いることができる。
[6]水性樹脂分散体の塗布
本発明の水性樹脂分散体はポリオレフィン等の基材に対して、低温焼付けで優れた密着性を示し、得られる膜は耐溶剤性(耐油性、耐GH性)、耐薬品性、耐水性、耐湿性に優れるものとなる。基材上に樹脂層を形成する方法としては、特に限定されることなく公知の方法が使用しうるが、例えば、水性樹脂分散体をスプレーで塗布する方法、ローラーで塗布する方法、刷毛で塗布する方法、グラビアコーター、バーコーター、スピンコーターなどによって塗布する方法などが挙げられる。一般に自動車や家電部品などの射出成型体に対してはスプレー塗布が適し、フィルムやシートのような基材に対してはグラビアコーター、バーコーターなどが適している。
水性樹脂分散体を塗布した後、ニクロム線、赤外線、高周波等によって加熱する通常の方法に従って塗膜を硬化させて、所望の塗膜を表面に有する積層体を得ることができる。塗膜の硬化条件は、基材の材質、形状、使用する水性樹脂分散体の組成等によって適宜選ばれる。硬化温度に特に制限はないが、実用性を考慮して通常、40℃以上、好ましくは50℃、さらに好ましくは60℃以上である。ただし通常150℃以下、好ましくは100℃以下とし、より好ましくは80℃以下とする。本発明の水性樹脂分散体は、比較的低温で塗布乾燥した場合でも高い接着力を有する。特に60〜80℃程度が適する。
積層されるプロピレン系重合体層の膜厚は、基材の材質、形状、使用する水性樹脂分散体の組成等によって適宜選びうるが、通常0.1μm以上であり、好ましくは1μm以上、更に好ましくは3μm以上である。但し通常500μm以下であり、好ましくは300μm以下、更に好ましくは100μm以下である。
次に本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に制限されるものではない。
[物性測定方法及び評価方法]
(1)物性測定方法
(1−1)立体規則性
プロピレン系重合体の立体規則性[mmmm]は、NMR装置(日本電子(株)製、400MHz)にて13C−NMRスペクトル測定法により測定した。試料350〜500mgを、10mmφのNMR用サンプル管中で、約2.2mlのオルトジクロロベンゼンを用いて完全に溶解させた。次いで、ロック溶媒として約0.2mlの重水素化ベンゼンを加え、均一化させた後、130℃でプロトン完全デカップリング法により測定を行った。測定条件は、フリップアングル90°、パルス間隔5T以上(Tは、メチル基のスピン格子緩和時間のうち最長の値)とした。プロピレン系重合体において、メチレン基及びメチン基のスピン格子緩和時間はメチル基のそれよりも短いので、この測定条件では、すべての炭素の磁化の回復は99%以上である。20時間以上の積算を行い測定した。
(1−2)分子量
はじめに試料20mgを30mlのバイアル瓶に採取し、安定剤としてBHTを0.04重量%含有するオルトジクロロベンゼン20gを添加した。135℃に加熱したオイルバスを用いて試料を溶解させた後、孔径3μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)フィルターにて熱濾過を行い、ポリマー濃度0.1重量%の試料溶液を調製した。次に、カラムとしてTSKgel GM H−HT(30cm×4本)及びRI検出器を装着したウォーターズ(Waters)社製GPC150CVを使用し、GPC測定を行った。測定条件としては、試料溶液のインジェクション量:500μl、カラム温度:135℃、溶媒:オルトジクロロベンゼン、流量:1.0ml/minを採用した。
分子量の算出に際しては、標準試料として市販の単分散のポリスチレンを使用し、該ポリスチレン標準試料及びプロピレン系重合体の粘度式から、保持時間と分子量に関する校正曲線を作成し、プロピレン系重合体の分子量の算出を行った。粘度式としては[η]=K・Mαを使用し、ポリスチレンに対してはK=1.38E−4、α=0.70を、プロピレン系共重合体に対してはK=1.03E−4、α=0.78を使用した。
(1−3)融点
プロピレン系重合体の融点は、パーキンエルマー社製熱分析システム(DSC−7)を使用して、以下の方法で求めた。試料(約5〜10mg)を160℃で3分間融解後、10℃/分の速度で−20℃まで降温し、−20℃にて2分間保持した後、10℃/分で160℃まで昇温することにより融解曲線を得、最後の昇温段階における主吸熱ピークのピークトップ温度を融点として求めた。
(1−4)グラフト率
重合体200mgとクロロホルム4800mgを10mlのサンプル瓶に入れて50℃で30分加熱し完全に溶解させる。材質NaCl、光路長0.5mmの液体セルにクロロホルムを入れ、バックグラウンドとした。次に溶解した重合体溶液を液体セルにいれて、日本分光(株)製FT−IR460plusを用い、積算回数32回にて赤外線吸収スペクトルを測定した。例えば無水マレイン酸のグラフト率は、無水マレインをクロロホルムに溶解した溶液を測定し検量線を作成したものを用いて計算した。そしてカルボニル基の吸収ピーク(1780cm−1付近の極大ピーク、1750〜1813cm−1)の面積から、別途作成した検量線に基づき、重合体中の酸成分含有量を算出し、これをグラフト率(重量%)とした。
(1−5)分散粒子径
日機装(株)社製ナノトラック EX−150を用いて測定した。分散体の密度を0.9g/cm、形状を球形、分散媒を水として測定時間120秒にて測定し、50%粒子径(体積平均粒子径)、90%粒子径を求めた。
(2)水性樹脂分散体の評価
(2−1)保存安定性評価
試料を50gのガラスサンプル瓶に入れ、40℃で1ヶ月間保存した後の外観の観察、及び平均粒径の変化(凝集による平均粒径の増加)を評価した。
○ :外観に異状なく、平均粒径の変化が20%未満である
△ :外観に大きな異状は見られず、平均粒径の変化が20%以上50%未満である
× :外観に大きな異状があるか、又は、平均粒径の変化が50%以上である
(3)水性樹脂分散体の塗料用プライマーとしての評価
(3−1)初期密着性試験
自動車外装用グレードのプロピレン系重合体(エクソン(株)製、8224)を70mm×150mm×3mmにインジェクション成型した基板を作成し、基板表面をイソプロピルアルコールで清拭した。ここに試料を、塗布後の乾燥重量が約5g/mとなるように噴霧塗布し、この塗布後の試験片をセーフベンドライヤー中で60℃で5分間乾燥させた。次にこの塗膜上に、規定量の硬化剤を配合し専用シンナーで粘度調整を行ったアクリルポリオールウレタン塗料(レタンPG80III:関西ペイント(株)製)を、塗布量が30〜40g/mになるように噴霧塗布し、セーフベンドライヤー中において60℃で20分間焼き付けた。
続いてこの試験片を40℃にて24時間養生した後、23℃にて24時間静置した。
試験片に、JIS K5400に記載されている碁盤目試験の方法に準じて25マス(5×5)の碁盤目を付け、セロハンテープ(ニチバン(株)品)を貼り付けた後速やかに90°方向に引っ張って剥離させた。これを3回繰り返す。25個の碁盤目のうち剥離されなかった碁盤目数で初期密着性を評価した。
(3−2)ピール剥離強度試験
初期密着性試験において、アクリルポリオールウレタン塗料(レタンPG80III)に替えてピール剥離測定用の2液ウレタン塗料を用い、塗布量が200〜300g/mになるように基板に噴霧塗布し、セーフベンドライヤ−中で60℃で20分間焼き付けた以外は初期密着性試験と同様にして試験片を作製した。
続いてこの試験片を40℃にて24時間養生した後、23℃にて24時間静置した。
試験片に10mm幅に切れ目を入れ、剥離速度50mm/分で180°剥離試験を行い、ピール剥離強度を測定した。
(3−3)耐ガソホ−ル性試験
初期密着性試験と同様に作製した塗装板の端をカッターで切り落とし塗装断面が剥き出しになった試験片を、20℃に保ったレギュラーガソリンとエタノールとの混合液(体積比:レギュラーガソリン/エタノール=9/1)中に浸漬して、塗膜に剥離が生じるまでの時間を測定し、以下の判定基準に従い評価した。
○ :1分以上塗膜の剥離が見られない
△ :30秒以上1分未満で塗膜が剥離する
× :30秒以内に塗膜が剥離する
(3−4)界面活性剤のブリードアウト
初期密着性試験と同様に、試料を基板に塗布乾燥して作製した塗装板を、40℃で3日間放置し、塗装外観の目視及び指触により、塗膜表面への界面活性剤のブリードアウトを評価した。
○ :界面活性剤のブリードアウト無し
△ :界面活性剤がわずかにブリードアウトしている
× :界面活性剤が多くブリードアウトしていて、指で触るとべたつく
(4)水性樹脂分散体のヒートシール接着剤としての評価
(4−1)ピール剥離強度試験
ホモポリプロピレン(日本ポリプロ(株)製、MA3U)を成形した厚み100μmのフィルムを準備した。このフィルムに、試料100重量部にイソプロピルアルコール50重量部を加えて希釈したものをバーコーター(16番)で塗工した後、80℃で2分間乾燥した。プロピレン系重合体の塗工量は約3g/mであった。塗膜上に、試料を塗工していない同じポリプロピレンフィルムを重ね合わせ、ヒートシールの設定温度を60℃、80℃、100℃と変えて、圧力2kg/cm、加圧時間3秒間でヒートシールを行った。
得られた積層フィルムを15mm幅に切断し、剥離速度300mm/分で180°(T字)剥離試験を行い、ピール剥離強度を測定した。ピール剥離強度が高いほどヒートシールでの接着性が高いことを表す。
(4−2)ブロッキング性
試料が塗布されたフィルムの上に未塗布のポリプロピレンフィルムを重ね合わせ、常温において加重0.1kg/cmで1時間荷重をかけた後に。フィルムを取り出し手で剥離試験を行った。ブロッキングの度合いを以下の基準で評価した。
○ :剥離時に全く抵抗が無くいか、軽く剥がれる
× :剥離時にかなり抵抗があり剥がれにくいか、又は剥がれない
[製造例1−1:プロピレン系重合体の製造]
1,000ml丸底フラスコに、脱塩水110ml、硫酸マグネシウム・7水和物22.2g及び硫酸18.2gを採取し、攪拌下に溶解させた。この溶液に、市販の造粒モンモリロナイト16.7gを分散させ、100℃まで昇温し、2時間攪拌を行った。その後、室温まで冷却し、得られたスラリーを濾過してウェットケーキを回収した。回収したケーキを1,000ml丸底フラスコ内で脱塩水500mlにて再度スラリー化し、濾過を行った。この操作を2回繰り返した。最終的に得られたケーキを、窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥し、化学処理モンモリロナイト13.3gを得た。
得られた化学処理モンモリロナイト4.4gに、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.4mmol/ml)20mlを加え、室温で1時間攪拌した。この懸濁液にトルエン80mlを加え、攪拌後、上澄みを除いた。この操作を2回繰り返した後、トルエンを加えて、粘土スラリー(スラリー濃度=99mg粘土/ml)を得た。
別のフラスコに、トリイソブチルアルミニウム0.2mmolを採取し、ここで得られた粘土スラリー19ml及びジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)ハフニウム131mg(57μmol)のトルエン希釈液を加え、室温で10分間撹拌し、触媒スラリーを得た。(触媒の製造方法の詳細については特開2004−002310を参照)。
次いで、内容積24リッターの誘導攪拌式オートクレーブ内に、トルエン11L、トリイソブチルアルミニウム3.5mmol及び液体プロピレン2.64Lを導入した。室温で、上記触媒スラリーを全量導入し、60℃まで昇温し重合時の全圧を0.65MPaで一定に保持しながら、同温度で2時間攪拌を継続した。攪拌終了後、未反応プロピレンをパージして重合を停止した。オートクレーブを開放してポリマーのトルエン溶液を全量回収し、溶媒ならびに粘土残渣を除去したところ、7.9重量%のプロピレン系重合体のトルエン溶液を11kg得た。得られたプロピレン系重合体の重量平均分子量Mwは250,000、立体規則性[mmmm]は50%であった。得られたプロピレン系重合体の物性を表−1に記す。
[製造例1−2〜1−6:プロピレン系重合体の製造]
重合時の全圧及び温度を表−1に記載の条件とした以外は製造例1−1と同様にして、プロピレン系重合体を得た。得られたプロピレン系重合体の物性を表−1に記す。
また併せて市販のプロピレン系重合体の物性を参考例1〜4として示す。参考例1(クラリアント社製リコセンPP1502)は、メタロセン触媒によって製造されたプロピレン系重合体である。参考例2(宇部興産社製ウベタックUT2115)は、非晶質プロピレン系重合体である。参考例3(日本ポリプロ社製ウィンテックWFX6)は、メタロセン触媒によって製造されたプロピレン系重合体である。参考例4(三洋化成工業社製ユーメックス1010)は、熱減成による低分子プロピレン系重合体の無水マレイン酸変性体(酸価52mgKOH/g、無水マレイン酸として5重量%)である。
Figure 2008031360
[製造例2−1:無水マレイン酸変性プロピレン系重合体の製造]
還流冷却管、温度計、攪拌機のついたガラスフラスコ中に、製造例1−1で得られたプロピレン系重合体40g、製造例1−5で得られたプロピレン系重合体160g、及びトルエン300gを入れ、容器内を窒素ガスで置換し、110℃に昇温した。昇温後、無水マレイン酸10gを加え、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボナート(日本油脂社製、パーブチルI)5gを加え、7時間同温度で攪拌を続けて反応を行った。反応終了後、系を室温付近まで冷却し、アセトンを加えて、沈殿したポリマーを濾別した。さらにアセトンで沈殿・濾別を繰り返し、最終的に得られたポリマーをアセトンで洗浄した。洗浄後に得られたポリマーを減圧乾燥することにより、白色粉末状の無水マレイン酸変性ポリマーが得られた。この変性ポリマーの赤外線吸収スペクトル測定を行った結果、無水マレイン酸基の含量(グラフト率)は、1.1重量%(無水マレイン酸基として0.11mmol/g)であった。また重量平均分子量は56,000であり、得られた無水マレイン酸変性プロピレン系重合体の物性を表−2に記す。
[製造例2−2〜2−15:無水マレイン酸変性プロピレン系重合体の製造]
成分(A1)、(A2)としてのプロピレン系重合体の種類と量、無水マレイン酸、パーブチルI、トルエンの量を表−2に記載の条件とした以外は製造例2−1と同様にして、無水マレイン酸変性プロピレン重合体を得た。得られた無水マレイン酸変性プロピレン系重合体の物性を表−2に記す。
Figure 2008031360
[実施例1:ポリアルキレングリコール変性プロピレン系重合体水性樹脂分散体の製造]
還流冷却管、温度計、攪拌機のついたガラスフラスコ中に、製造例2−1で得られた無水マレイン酸変性プロピレン系重合体100g(無水マレイン酸基の含量12mmol)及びトルエン250gを加え、110℃に昇温し、完全に溶解した。次いで、ポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)ブロック共重合体(分子量1000)15.0g(15.0mmol、プロピレン系重合体100重量部に対し15重量部に相当)をトルエン22.5gに溶解した溶液を加え、110℃で3時間反応させた。
冷却後トルエンを減圧留去し、黄色のポリマー113gを得た。得られた生成物の赤外吸収スペクトル分析を行った結果、1784cm−1付近の無水マレイン酸に相当するピークは消滅し、無水マレイン酸変性プロピレン系重合体とポリエーテルが結合していることが確認された。無水マレイン酸変性プロピレン系重合体にポリエーテルがグラフト結合したグラフト共重合体を形成している。
得られた変性ポリマー40gにテトラヒドロフラン(THF)160gを加え65℃で完全に溶解させた。純水200gを同温度で1時間かけて滴下し、半透明の淡黄色溶液を得た。これを50℃に冷却し、減圧度0.03MPaから0.0045MPaまで徐々に圧力を下げて樹脂固形分濃度が21重量%になるまでTHF及び水を減圧留去し、半透明淡黄色の水性樹脂分散体を得た。分散粒子径を測定した結果、50%粒子径は0.04μm、90%粒子径は0.09μmであった。得られた水性樹脂分散体の物性を表−3に記す。粒子径が小さく、貯蔵安定性も良好であった。
なお、本実施例で用いたポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)ブロック共重合体は、25℃の水に10重量%の濃度で溶解させたときに不溶分が1重量%以下であり、親水性高分子である。
[実施例2〜5、比較例1〜7:ポリアルキレングリコール変性プロピレン系重合体水性樹脂分散体の製造]
無水マレイン酸変性プロピレン系重合体の種類と量、成分(B)としてのポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)ブロック共重合体の量を表−3に記載の条件とした以外は実施例1と同様にして、水性樹脂分散体を得た。得られた水性樹脂分散体の物性を表−3に記す。
実施例2〜5の水性樹脂分散体はいずれも粒子径が小さく、貯蔵安定性も良好であった。
比較例6の水性樹脂分散体は、樹脂が凝集したためが50%粒子径が著しく大きく、90%粒子径は測定不能であった。比較例7の水性樹脂分散体は、凝集物が多量に見られ、粒子径は測定不能であった。
[比較例8:界面活性剤によるマレイン酸変性プロピレン系重合体水性樹脂分散体の製造]
還流冷却管、温度計、攪拌機のついたガラスフラスコ中に製造例2−13で得られた無水マレイン酸変性プロピレン系重合体20gとトルエン80gを入れて110℃に昇温し完全に溶解させた。50℃まで冷却した後、ポリオキシエチレンセチルエーテル(ノニオン系界面活性剤、花王(株)製エマルゲン220、HLB=14.2)5gと、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(ノニオン系界面活性剤、花王(株)製エマルゲン147、HLB=16.3)5gを添加し溶解した後、35℃まで冷却した。
ここに水100gを添加して十分撹拌した後、内部せん断型の乳化機クレアミックスCLM−0.8S(エム・テクニック社製)を用い、21000rpmで3分間乳化を行った。続いて系内に2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールを水で10重量%に希釈した水溶液を添加し、pH8に調整した。この粗乳化物を温度50℃、減圧度0.02MPaから0.0045MPaまで徐々に圧力を下げてトルエン及び水を留去し、濃度25重量%の乳白色の樹脂分散体を得た。
分散粒子径を測定した結果、50%粒子径は0.25μm、90%粒子径は3.1μmであった。結果を表−3に示す。50%粒子径、90%粒子径ともに実施例より著しく大きく、かつ貯蔵安定性も明らかに劣っていた。
[実施例6,7、比較例9:ポリアルキレングリコール変性プロピレン系重合体水性樹脂分散体の製造]
無水マレイン酸変性プロピレン系重合体の種類と量、成分(B)としてのポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)ブロック共重合体の量を表−3に記載の条件とした以外は実施例1と同様にして、水性樹脂分散体を得た。得られた水性樹脂分散体の物性を表−3に記す。
実施例6及び7は、それぞれ別々に無水マレイン酸変性したプロピレン系重合体を2種類用いて水性樹脂分散体としたものであるが、粒子径が小さく貯蔵安定性も良く、良好な物性が得られている。
比較例9の水性樹脂分散体は、凝集物が多量に見られ、粒子径は測定不能であった。
Figure 2008031360
[水性樹脂分散体の塗料用プライマーとしての評価]
実施例1〜4、比較例1〜5,8の水性樹脂分散体について、塗料用プライマーとしての評価を行った。結果を表−4に示す。実施例1〜4の水性樹脂分散体は、低温焼付けでの密着性、耐溶剤性に優れ、ブリードアウトも観察されなかった。比較例1〜5、8では密着性、耐溶剤性などが劣り、また界面活性剤を用いた比較例8はブリードアウトが観察された。
[水性樹脂分散体のヒートシール接着剤としての評価]
実施例2〜7、比較例1〜3,8の水性樹脂分散体について、ヒートシール接着剤としての評価を行った。結果を表−5に示す。実施例2〜7の水性樹脂分散体は、加熱温度が100℃未満の非常に低いヒートシール温度においても優れた接着性を示し、かつブロッキングも起こらなかった。比較例1〜3、8では低温ヒートシール性が不十分であるか、ブロッキングが発生した。
Figure 2008031360
Figure 2008031360

Claims (12)

  1. 下記プロピレン系重合体(A1)及び(A2)が不飽和有機酸誘導体により変性されてなる変性プロピレン系重合体が、水に分散されてなることを特徴とする、水性樹脂分散体。
    (A1):融点が無いか又は融点が75℃未満であり、重量平均分子量が10,000〜100,000であるプロピレン系重合体
    (A2):融点が70℃以上120℃未満であり、重量平均分子量が100,000〜500,000であり、かつ(A1)の重量平均分子量の1.5倍以上であるプロピレン系重合体
  2. 前記重合体(A1)及び(A2)を(A1):(A2)=10:90〜90:10(重量比)で含む、請求項1に記載の水性樹脂分散体。
  3. 前記重合体(A1)及び(A2)は、混合された後、不飽和有機酸誘導体により変性されてなる、請求項1又は2に記載の水性樹脂分散体。
  4. 前記重合体(A1)及び(A2)は、それぞれ不飽和有機酸誘導体により変性されたのち、混合されてなる、請求項1又は2に記載の水性樹脂分散体。
  5. 前記不飽和有機酸誘導体が、不飽和カルボン酸、ジカルボン酸無水物、及びジカルボン酸無水物モノエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の水性樹脂分散体。
  6. 前記重合体(A1)及び/又は(A2)が、メタロセン触媒を用いて製造されてなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の水性樹脂分散体。
  7. 前記重合体(A1)及び/又は(A2)が、アイソタクチックブロックとアタクチックブロックを含むステレオブロックプロピレン系重合体であり、13C−NMRにて、頭−尾結合からなるプロピレン単位連鎖部のメチル基の炭素原子に由来するピークを観測し、mmmmで表されるペンタッドに帰属されるピークのピークトップのケミカルシフトを21.8ppmとした際に、19.8ppmから22.1ppmに現れるピークの総面積Sに対する、21.8ppmをピークトップとするピーク(mmmm)の面積Sの比率(S/S)が20%〜70%であり、かつ21.5〜21.7ppmをピークトップとするピーク(mmmr)の面積をSとしたとき4+2S/S>5である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の水性樹脂分散体。
  8. 前記重合体(A1)及び/又は(A2)が、更に親水性高分子(B)と結合してなる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の水性樹脂分散体。
  9. 前記親水性高分子(B)が、ポリアルキレン構造を有するポリエーテル樹脂である、請求項8に記載の水性樹脂分散体。
  10. 前記親水性高分子(B)が、前記重合体(A1)及び/又は(A2)にグラフト結合してなる、請求項8又は9に記載の水性樹脂分散体。
  11. 変性プロピレン系重合体が水に分散されてなる水性樹脂分散体の製造方法であって、
    下記プロピレン系重合体(A1)及び(A2)を混合したのち、不飽和有機酸誘導体によって変性し、次いで水に分散することを特徴とする、水性樹脂分散体の製造方法。
    (A1):融点が無いか又は融点が75℃未満であり、重量平均分子量が10,000〜100,000であるプロピレン系重合体
    (A2):融点が70℃以上120℃未満であり、重量平均分子量が100,000〜500,000であり、かつ(A1)の重量平均分子量の1.5倍以上であるプロピレン系重合体
  12. 変性プロピレン系重合体が水に分散されてなる水性樹脂分散体の製造方法であって、
    下記プロピレン系重合体(A1)及び(A2)をそれぞれ不飽和有機酸誘導体によって変性したのち混合し、次いで水に分散することを特徴とする、水性樹脂分散体の製造方法。
    (A1):融点が無いか又は融点が75℃未満であり、重量平均分子量が10,000〜100,000であるプロピレン系重合体
    (A2):融点が70℃以上120℃未満であり、重量平均分子量が100,000〜500,000であり、かつ(A1)の重量平均分子量の1.5倍以上であるプロピレン系重合体
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