JP2008030970A - 着火薬、イニシエータ、ガス発生器、エアバッグ装置及びシートベルト装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】燃料成分としてMgAl合金又はMgAl系合金を含み、酸化剤として過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩を含み、更に樹脂バインダーとしてシリコーン樹脂を含む着火薬の摩擦感度を低減して、量産時等における取り扱い性を高めた着火薬と、この着火薬を有するイニシエータと、このイニシエータを備えてなるガス発生器と、このガス発生器を備えたエアバッグ装置及びシートベルト装置とを提供する。
【解決手段】燃料成分として、Mg含有量20〜70重量%の、MgAl合金及び/又はMgAl系合金の粉末を含み、酸化剤として過塩素酸塩と硝酸カリウムとを含む着火薬。この着火薬が装填されたイニシエータ。このイニシエータを備えてなるガス発生器。過塩素酸塩の一部を硝酸カリウムで置換することにより、着火薬本来の着火性能を低下させることなく、機械的エネルギー感度、例えば摩擦感度を低減させることができる。
【選択図】図1
【解決手段】燃料成分として、Mg含有量20〜70重量%の、MgAl合金及び/又はMgAl系合金の粉末を含み、酸化剤として過塩素酸塩と硝酸カリウムとを含む着火薬。この着火薬が装填されたイニシエータ。このイニシエータを備えてなるガス発生器。過塩素酸塩の一部を硝酸カリウムで置換することにより、着火薬本来の着火性能を低下させることなく、機械的エネルギー感度、例えば摩擦感度を低減させることができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、着火薬と、この着火薬を用いたイニシエータと、このイニシエータを備えたガス発生器とに関する。このガス発生器は、例えば自動車等のエアバッグ装置やシートベルト装置に組み込まれるものである。
自動車等の高速移動体に設けられるエアバッグ装置は、袋状のエアバッグをインフレータと称されるガス発生器によって急速に膨張させるよう構成されている。このガス発生器は、ガス発生剤と、このガス発生剤のガス発生反応を開始させるイニシエータとを備えている。このイニシエータは、反応薬剤と、この反応薬剤の反応を開始させるための抵抗発熱体としてのフィラメント(ブリッジワイヤ)とを備えている(例えば米国特許第5404263号)。
この従来例に係るイニシエータの一例について第1図を参照して説明する。
このイニシエータ10は、後部(第1図においては下部。)が開放した略カップ形状のケーシング12を有している。このケーシング12内に着火薬14が収容されている。ケーシング12の後部は焼結ガラス等よりなる絶縁材16によって閉鎖されている。このケーシング12内には、該絶縁材16を貫通した1対の電極18,20の先端側が臨んでいる。
この電極18,20の先端部同士の間にフィラメント22が架設されている。このフィラメント22の両端側は各電極18,20の先端面に溶接されている。このフィラメント22は、ケーシング12内において着火薬14に接している。
なお、該電極18,20同士並びにケーシング12は、電気的に接触しないよう互いに離間して配置されている。
このように構成されたイニシエータ10においては、一方の電極18が電圧昇圧回路等を備えた制御回路24を介して自動車のバッテリ26の正極に接続され、他方の電極20が自動車の車体に接続(アース接続)される。なお、該バッテリ26の負極は自動車の車体に接続されている。
車両衝突時等の緊急時には、制御回路24内のスイッチ素子がONになり、各電極18,20を介してバッテリ26からフィラメント22に電圧が印加される。これにより、該フィラメント22が発熱して着火薬14が点火され、反応を開始する。そして、この着火薬14の反応により高圧ガスや熱が生じ、これによりガス発生器のガス発生剤がガス発生反応を引き起こす。
このイニシエータ10を備えたガス発生器の一例について第2図を参照して説明する。このガス発生器30は、上側ハウジング32及び下側ハウジング34よりなる外殻体と、該外殻体内に設置された円筒状の仕切部材36とからなる容器を有する。仕切部材36の一端は下側ハウジング34の底面の開口を通り、下方に突出している。この開口の内周面と仕切部材36の外周面とはレーザービーム溶接等により溶接されている。この仕切部材36の内側に点火剤(ブースタプロペラント)40が収容され、仕切部材36の外周側にガス発生剤(メインプロペラント)42が収容されている。
この仕切部材36の該一端にイニシエータ10が設置されている。該イニシエータ10により点火剤40が点火されると、ガスが仕切部材36の開口44から噴出してガス発生剤42が点火し、大量のガスが急速に発生し、このガスがメッシュ等よりなるフィルタ46を通り、開口48を通ってガス発生器30外に噴出し、エアバッグを膨張させる。なお、第2図はガス発生器の一例であって、図示以外の形状のガス発生器も多数種類用いられている。
特表2003−527276号には、Mg10〜50重量%、Al50〜90重量%なる組成のMgAl合金粉末を燃料成分として含み、酸化剤として硝酸ストロンチウム、アルカリ金属硝酸塩、及びそれらの組み合わせを配合してなる着火薬が記載されている。
なお、着火薬の酸化剤としては、過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩も有効であり、本出願人は先に、Mg:55〜70重量%、Al:残部である組成を有したMgAl合金、及び/又は、Ca、Mn、Li、Si、Sb、Sr、Zn、Zr、Sc、Y、Sn、Ba及び希土類金属よりなる群から選ばれる少なくとも1種:0.5〜10重量%、残部:Mg及びAlである組成を有したMgAl系合金の粉末を燃料成分として含み、酸化剤としては、KClO4、KClO3、KIO4、KIO3、KMnO4、K2Cr2O7、NH4ClO4、NH4NO3及びSr(NO3)2よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む着火薬を提案した(特願2005−164226号)。この着火薬は更にシリコーン樹脂等の樹脂バインダーを含む。
米国特許第5404263号
特表2003−527276号
特願2005−164226号
燃料成分としてMgAl合金又はMgAl系合金を含み、酸化剤として過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩を含み、更に樹脂バインダーとしてシリコーン樹脂を含む着火薬(以下「MAPP系着火薬」と称す場合がある。)は、着火性能に優れるものの、機械的エネルギー、例えば摩擦衝撃等に対する感度が高いため、量産時等において安全に取り扱えるように、摩擦感度を低減させる必要がある。
本発明は、MAPP系着火薬の摩擦等の機械的エネルギーに対する感度を低減して、量産時等における取り扱い性を高めた着火薬と、この着火薬を有するイニシエータと、このイニシエータを備えてなるガス発生器と、このガス発生器を備えたエアバッグ装置及びシートベルト装置とを提供することを目的とする。
請求項1の着火薬は、燃料成分として、Mg含有量20〜70重量%の、MgAl合金及び/又はMgAl系合金の粉末を含み、酸化剤として過塩素酸塩と硝酸カリウムとを含むことを特徴とするものである。
請求項2の着火薬は、請求項1において、過塩素酸塩が過塩素酸カリウムであることを特徴とするものである。
請求項3の着火薬は、請求項1又は2において、酸化剤中の過塩素酸塩と硝酸カリウムとの合計に対する硝酸カリウムの含有割合が5〜30重量%であることを特徴とするものである。
請求項4の着火薬は、請求項1ないし3のいずれか1項において、燃料成分としてホウ素粉末又はタングステン粉末を含むことを特徴とするものである。
請求項5の着火薬は、請求項1ないし4のいずれか1項において、燃料成分10〜60重量部に対し酸化剤を40〜90重量部(合計100重量部)含むことを特徴とするものである。
請求項6の着火薬は、請求項1ないし5のいずれか1項において、樹脂バインダー又はゴムバインダーを含有することを特徴とするものである。
請求項7の着火薬は、請求項6において、樹脂バインダーがシリコーン樹脂であり、ゴムバインダーがフッ素ゴムであることを特徴とするものである。
請求項8のイニシエータは、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の着火薬を備えてなるものである。
請求項9のガス発生器は請求項8に記載のイニシエータを備えてなるものである。
請求項10のエアバッグ装置は、請求項9に記載のガス発生器を備えてなるものである。
請求項11のシートベルト装置は、シートベルトと、緊急時にガス発生器からのガス圧により該シートベルトにプリテンションを付与するプリテンショナとを備えてなるシートベルト装置において、該ガス発生器が請求項9に記載のガス発生器であることを特徴とするものである。
本発明者は、種々の研究の結果、MAPP系着火薬の酸化剤の過塩素酸塩の一部を硝酸カリウムで置き換えることにより、着火薬本来の着火性能を低下させることなく、機械的エネルギー感度、例えば摩擦感度を低減させることができることを見出した。
本発明はかかる知見に基づくものであり、酸化剤として過塩素酸塩と共に硝酸カリウムを配合することにより、取り扱い性と着火性能に優れた着火薬を提供する。
なお、着火薬の摩擦感度が低下すると、管理コストを低減でき、イニシエータを安価に製造することができる。
本発明はかかる知見に基づくものであり、酸化剤として過塩素酸塩と共に硝酸カリウムを配合することにより、取り扱い性と着火性能に優れた着火薬を提供する。
なお、着火薬の摩擦感度が低下すると、管理コストを低減でき、イニシエータを安価に製造することができる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
なお、本発明において、燃料成分や酸化剤の粉末の平均粒径は、例えばレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置により計測された値である。
なお、本発明において、燃料成分や酸化剤の粉末の平均粒径は、例えばレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置により計測された値である。
本発明の着火薬は、燃料成分としてMgAl合金粉末及び/又はMgAl系合金粉末を含むものである。
このMgAl合金粉末の組成は、Mg20〜70重量%、Al30〜80重量%、好ましくはMg35〜65重量%、Al35〜65重量%である。このようにMg含有量を20重量%以上とすることにより、着火薬の着火時間を短くすることができる。また、Mg含有量を70重量%以下とすることにより、MgAl合金が破砕し易いものとなり、着火薬の製造コスト低減を図ることができる。
このMgAl合金に対しさらにCa、Mn、Li、Si、Sb、Sr、Zn、Zr、Sc、Y、Sn、Ba及び希土類金属の少なくとも1種の金属(以下、この金属を添加金属ということがある。)を添加したMgAl系合金の粉末も同様の作用効果を有する。また、この添加金属を添加することにより、着火薬の点火時間を短くかつ安定化できると共に、高温での着火性能も向上する。さらに、この添加金属を添加することにより、合金の粉砕性も向上する。
この添加金属は、MgAl系合金中において、0.5〜10重量%となるように添加されることが好ましい。添加金属を添加する場合においても、MgAl系合金中のMg含有量は20〜70重量%であり、好ましくは30〜60重量%である。また、添加金属以外の残部におけるMgとAlとの比率は、Mg/(Mg+Al)の重量比率で好ましくは0.4〜0.7、より好ましくは0.40〜0.65である。
なお、上記の添加金属のうちでも特に好適なものはCaである。
上記の合金は、溶製後、例えばボールミルを用い、好ましくは窒素、アルゴンなどの非酸化性雰囲気中で微粉砕される。粉末の平均粒径は10μm以下、1〜10μm、特に5〜9μmであることが好ましい。
なお、本発明において、燃料成分は上記MgAl合金粉末及び/又はMgAl系合金粉末のみからなるものであっても良く、MgAl合金粉末及び/又はMgAl系合金以外の燃料成分を含むものであっても良い。MgAl合金粉末及び/又はMgAl系合金以外の燃料成分としてはホウ素(B)粉末又はタングステン(W)粉末を用いることができ、MgAl合金粉末及び/又はMgAl系合金の一部をB粉末又はW粉末に置換することにより摩擦感度が低減するという効果が奏される。この場合、燃料成分全体に占めるB粉末の割合は10重量%以下、W粉末の割合は50重量%以下であることが好ましい。この割合が多過ぎると着火性能が低下する。
なお、B粉末、W粉末の平均粒径は、10μm以下、1〜10μm、特に5〜9μmであることが好ましい。
本発明において、酸化剤としては、過塩素酸塩と硝酸カリウム(KNO3)とを用いる。ここで過塩素酸塩としては、過塩素酸カリウム(KClO4)、過塩素酸アンモニウム(NH4ClO4)、過塩素酸ナトリウム(NaClO4)、過塩素酸マグネシウム(Mg(ClO4)2)、過塩素酸バリウム(Ba(ClO4)2)等の1種又は2種以上が挙げられるが、中でもKClO4が好適である。
酸化剤に占める硝酸カリウムの割合は多過ぎると過塩素酸塩による優れた着火性能が損なわれ、少な過ぎると硝酸カリウムを併用することによる摩擦感度等の機械的エネルギーに対する感度低減効果を十分に得ることができない。従って、酸化剤中の硝酸カリウムの含有割合は、下記式で算出される過塩素酸塩と硝酸カリウムとの合計に対する硝酸カリウムの重量割合で、5〜30重量%、特に5〜20重量%であることが好ましい。
硝酸カリウムの割合(重量%)
=硝酸カリウム重量/(過塩素酸塩重量+硝酸カリウム重量) ×100
硝酸カリウムの割合(重量%)
=硝酸カリウム重量/(過塩素酸塩重量+硝酸カリウム重量) ×100
酸化剤としては、過塩素酸塩と硝酸カリウム以外の成分、例えばKClO3、KIO4、KIO3、KMnO4、K2Cr2O7、NH4NO3及びSr(NO3)2等の1種又は2種以上を含んでいても良い。ただし、本発明の効果がより一層顕著となることから、酸化剤はその80重量%以上、特に100重量%が硝酸カリウムと過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩とで構成されることが好ましい。
この酸化剤についても、その平均粒径は、10μm以下、1〜10μm、特に5〜9μmであることが好ましい。
この酸化剤の粉砕は、ボールミル、ジェットミル等で行うことができる。酸化剤はその成分毎に別々に粉砕した後混合しても良いし、予め所定の配合比率で混合した上で一緒に粉砕しても良い。
本発明では、前述の燃料成分10〜60重量部に対し90〜40重量部の割合(合計で100重量部)で酸化剤を配合することが好ましい。この割合よりも燃料成分が多く酸化剤が少なくても、また逆に酸化剤が多く燃料成分が少なくても、いずれの場合も着火性能が低下し、着火に要する時間が長くなる。
本発明の着火薬は、上記の着火成分、即ち燃料成分と酸化剤のみからなるものであっても良いが、好ましくは更にシリコーン樹脂等の樹脂バインダー又はフッ素ゴム等のゴムバインダーを含む。シリコーン樹脂等の樹脂バインダー又はフッ素ゴム等のゴムバインダーを配合することにより、着火薬が取り扱い易いものとなる。
この場合、樹脂バインダー又はゴムバインダーの配合量は、上記の着火成分100重量部に対し0.5〜20重量部、特に1〜15重量部程度が好適である。樹脂バインダー又はゴムバインダーの配合量が多過ぎると着火薬の着火性能が低減し、少な過ぎると、樹脂バインダー又はゴムバインダーを配合したことによる取り扱い性の向上効果を十分に得ることができない。
このような着火薬は、例えば前記第1図のようにイニシエータ中に填装される。このイニシエータは例えば前記第2図のようにガス発生器に組み込まれる。ただし、イニシエータやガス発生器の構成は特に限定されるものではなく、図示以外の種々のものにも適用することができる。
次に、第1図のイニシエータ10を備えたガス発生器と、このガス発生器を備えたエアバッグ装置及びシートベルト装置との一例について第3〜5図を参照して説明する。
第3図は第2図のガス発生器を備えたエアバッグ装置の縦断面図である。
エアバッグ装置80は、第2図のガス発生器30と、このガス発生器30からのガスにより膨張するエアバッグ81と、該ガス発生器30及びエアバッグ81を保持するリテーナ82と、折り畳まれたエアバッグ81を覆うように該リテーナ82に装着されたモジュールカバー83等を備えている。
エアバッグ81は、膨張したときに車両乗員等と対向するフロント面及びこれと反対側のリア面を有し、該リア面に、ガス発生器30が挿入される開口(口元部)81aを備えている。
リテーナ82は、主板部82aと、該主板部82aの周縁部から下方へ曲成された脚片部82bとからなる。該主板部82aの中央部にはガス発生器差込口82cが設けられている。第3図に示すように、このガス発生器差込口82cに該主板部82aの裏面側からガス発生器30の先頭側が挿入されている。このガス発生器差込口82cの周縁部にエアバッグ81の口元部81aが重ね合わされ、取付リング84によって固定されている。ガス発生器30の先頭側は該口元部81aを介してエアバッグ81内に配置されている。
取付リング84からはボルト(スタッドボルト)84aが突設されており、このボルト84aが該口元部81aの周囲及びガス発生器差込口82cの周囲の各挿通孔(符号略)並びにフランジ69の挿通孔70に挿通されて該フランジ69の裏側に延出し、このボルト84aにナット84bが締め付けられことにより、エアバッグ81及びガス発生器30がリテーナ82に固定される。
このエアバッグ81を折り畳み、このエアバッグ81の折り畳み体を覆うようにモジュールカバー83が装着されることにより、エアバッグ装置80が構成される。
なお、この実施の形態では、該モジュールカバー83の裏面から下方へ脚片部83aが立設されており、この脚片部83aがリベット等の固着具83bによりリテーナ82の脚片部82bに固着されている。このモジュールカバー83は、エアバッグが膨張するときにこのエアバッグ81に押されて開裂するよう構成されている。符号83cは、この開裂を誘導するテアラインを示している。
かかる構成のガス発生器30及びエアバッグ装置80においては、イニシエータ10の電極18,20に通電されると、イニシエータ10内の着火薬14が反応し、これにより点火剤40が点火される。次いで、開口44を介して該点火剤40からの高温ガスによりガス発生剤42が点火され、ガスが発生する。このガスはフィルタ46を通過して開口48から即ちエアバッグ81内に噴出する。この結果、エアバッグ81が膨張する。このエアバッグ81は、モジュールカバー83を押し開けて車両乗員等に対向するように膨張展開し、該車両乗員等を保護する。
第4図はガス発生器を備えたシートベルト装置の全体図、第5図はこのシートベルト装置のリトラクタ(プリテンショナ)の分解斜視図である。
このシートベルト装置90のシートベルト91は、一端がリトラクタ92に巻き取り可能に連結され、他端はアンカ93によって車体に固定されている。シートベルト91の途中部分はショルダーアンカ94及びタング95にそれぞれ掛け通されている。該アンカ93はシートの車室側面側に配置されている。シートの該アンカ93と反対側のサイドには、タング95がラッチされるバックル装置96が設けられている。ショルダーアンカ94は、車室側面の上部に配置されている。
この実施の形態では、リトラクタ92は、車両緊急時にシートベルト91に対してプリテンションを加えるプリテンショナと、該シートベルト91から乗員に加えられる衝撃を吸収する衝撃吸収機構(EA機構)とが設けられている。以下に、第5図を参照してこのリトラクタ92の構成について説明する。
このリトラクタ92のベースフレーム97の内部にはスプール98が収納されており、このスプール98にシートベルト91の一端側が巻き付けられている。スプール98の回転に伴ってシートベルト91の巻き取り及び巻き出しが行われる。スプール98の軸心にはトーションバー99が配置されており、該トーションバー99の一端はロック機構部品100,101を介して支持部材102に支持されている。
トーションバー99は、EA機構の主要部品であり、シートベルト91の張力が所定値を超えると塑性捩れ変形し、これに伴ってスプール98が抗力を受けつつシートベルト91の巻き出し方向へ回転する。
スプール98の一端(第5図における左端)にはギア103が設けられている。このギア103は、第5図の下段左端に示されているリターンスプリングカバー104内のギア(図示略)と係合している。このリターンスプリングカバー104内のリターンスプリング(図示略)により、スプール98はシートベルト91を巻き取る方向に付勢されている。
第5図において該リターンスプリングカバー104の右隣に示されているプリテンショナカバー105と、第5図の下段右端に示されているプリテンショナプレート106との間には、パイプ107が設けられている。このパイプ107の一端側にガス発生器108が取り付けられている。また、このパイプ107の内部には、スプリング109、ピストン110及び複数のボール111が配列されている。パイプ107の他端近傍の側面には切り欠き状の開口部(符号略)が形成されている。該パイプ107の他端側にはガイドブロック112が嵌め込まれている。
プリテンショナカバー105にはピン113が設けられており、このピン113に対し、外歯及び内歯を有するリングギア114が保持されている。パイプ107は、このリングギア114の外周を周回するように配設されている。なお、パイプ107は、その前記一端側から他端側へ向う方向がスプール98のシートベルト巻き取り回転方向となるように配置されている。前記開口部はリングギア104の外周面と対面するよう配置されており、この開口部に露出した先頭のボール111が該リングギア104の外歯に係合している。
前記ギア103の根元部115には、該リングギア114の内歯と噛合可能なピニオン116が設けられている。リングギア114がピン113に保持された状態にあるときには、該リングギア114とピニオン116とは噛合していない。
ガス発生器108がガス噴出作動すると、パイプ107内にガスが供給され、このガス圧によりボール111が該パイプ107の前記他端側、即ちスプール98のシートベルト巻き取り回転方向へ移動する。この際、先頭のボール111がリングギア114を押圧することによりピン113が折れて該ピン113によるリングギア114の保持が解除され、該リングギア114がピニオン116に噛合する。
この結果、スプール98が該ピニオン116、リングギア114及びボール111を介してガス発生器108からのガス圧によりシートベルト巻き取り回転方向へ付勢され、該スプール98にシートベルト91が巻き取られる。これにより、シートベルト91にプリテンションが加えられる。
この実施の形態では、ガス発生器108は、略円筒形のハウジングを備え、このハウジング内にガス発生剤及び第1図のイニシエータ10が収容されている。
かかる構成のガス発生器108及びシートベルト装置90においては、イニシエータ10に通電されると、着火薬14が反応し、これによりガス発生剤が点火され、ガスが発生する。そして、このガス圧によりガス発生器108からパイプ107内にガスが噴出する。この結果、リトラクタ92のプリテンショナ機構が前述のように作動してシートベルト91にプリテンションが加えられる。
上記の各実施の形態は本発明の一例であり、本発明は図示以外の形態をもとりうる。例えば、本発明のイニシエータは上記以外の各種のガス発生器に組み込むことができる。また、このガス発生器は上記以外の各種のエアバッグ装置及びシートベルト装置に組み込むことができる。
以下、実施例及び比較例について説明する。
なお、以下において、MgAl合金粉末としては、Mg:50重量%、Al:50重量%のMgAl合金をボールミルで平均粒径約7μmに粉砕したものを用いた。また、酸化剤としては、KClO4とKNO3(ただし、比較例1ではKClO4のみ)をそれぞれ別々にボールミルで平均粒径約7μmに粉砕したものを用いた。
なお、以下において、MgAl合金粉末としては、Mg:50重量%、Al:50重量%のMgAl合金をボールミルで平均粒径約7μmに粉砕したものを用いた。また、酸化剤としては、KClO4とKNO3(ただし、比較例1ではKClO4のみ)をそれぞれ別々にボールミルで平均粒径約7μmに粉砕したものを用いた。
また、樹脂バインダーとしては、液性シリコーン樹脂バインダー1gに対して酢酸イソアミル約5mlを用いて溶解したものを用いた。このシリコーン樹脂バインダーは常温硬化型であり、溶剤が蒸発して時間が経過した後固化する。
実施例1〜5、比較例1
表1に示す配合で各成分を混合して乾燥させることにより着火薬を調合し、得られた着火薬について、摩擦感度と着火性能を下記方法により調べ、結果を酸化剤中のKNO3の割合と共に表1に示した。
表1に示す配合で各成分を混合して乾燥させることにより着火薬を調合し、得られた着火薬について、摩擦感度と着火性能を下記方法により調べ、結果を酸化剤中のKNO3の割合と共に表1に示した。
<摩擦感度>
JIS K4810(火薬類性能試験方法)により測定した。
<着火性能>
着火薬50mgを金属製カップに計量し、これに、φ20μmのニクロム線が溶接されたヘッダーを定押力(1000N)で圧入してイニシエータを組み立てた。このように組み立てられたイニシエータに1.2A×2msの定電流を流し、着火発火時の光を光センサにより検知することにより、着火に要する時間を測定し、これを着火性能の評価とした。なお、測定は7回行い、その平均値で示した。
JIS K4810(火薬類性能試験方法)により測定した。
<着火性能>
着火薬50mgを金属製カップに計量し、これに、φ20μmのニクロム線が溶接されたヘッダーを定押力(1000N)で圧入してイニシエータを組み立てた。このように組み立てられたイニシエータに1.2A×2msの定電流を流し、着火発火時の光を光センサにより検知することにより、着火に要する時間を測定し、これを着火性能の評価とした。なお、測定は7回行い、その平均値で示した。
表1より、酸化剤としてKClO4にKNO3を併用することにより、摩擦感度を低下させることができることが分かる。ただし、着火性能については、酸化剤中のKNO3の割合が多くなると低下する傾向にあることから、酸化剤中のKNO3の割合は5〜30重量%、特に5〜20重量%が好ましい。
10 イニシエータ
14 着火薬
30,108 ガス発生器
42 ガス発生剤
80 エアバッグ装置
90 シートベルト装置
14 着火薬
30,108 ガス発生器
42 ガス発生剤
80 エアバッグ装置
90 シートベルト装置
Claims (11)
- 燃料成分として、Mg含有量20〜70重量%の、MgAl合金及び/又はMgAl系合金の粉末を含み、酸化剤として過塩素酸塩と硝酸カリウムとを含むことを特徴とする着火薬。
- 請求項1において、過塩素酸塩が過塩素酸カリウムであることを特徴とする着火薬。
- 請求項1又は2において、酸化剤中の過塩素酸塩と硝酸カリウムとの合計に対する硝酸カリウムの含有割合が5〜30重量%であることを特徴とする着火薬。
- 請求項1ないし3のいずれか1項において、燃料成分としてホウ素粉末又はタングステン粉末を含むことを特徴とする着火薬。
- 請求項1ないし4のいずれか1項において、燃料成分10〜60重量部に対し酸化剤を40〜90重量部(合計100重量部)含むことを特徴とする着火薬。
- 請求項1ないし5のいずれか1項において、樹脂バインダー又はゴムバインダーを含有することを特徴とする着火薬。
- 請求項6において、樹脂バインダーがシリコーン樹脂であり、ゴムバインダーがフッ素ゴムであることを特徴とする着火薬。
- 請求項1ないし7のいずれか1項に記載の着火薬を備えてなるイニシエータ。
- 請求項8に記載のイニシエータを備えてなるガス発生器。
- 請求項9に記載のガス発生器を備えてなるエアバッグ装置。
- シートベルトと、緊急時にガス発生器からのガス圧により該シートベルトにプリテンションを付与するプリテンショナとを備えてなるシートベルト装置において、
該ガス発生器が請求項9に記載のガス発生器であることを特徴とするシートベルト装置。
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2007
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