上記の特許文献1のように、基板に塗装する柄模様の位置ずれを防ぐための工夫は従来から種々検討されているが、基板を送るタイミングと塗装を開始するタイミングを一致させる調整は難しく、柄模様の塗装位置ずれを完全に防ぐことはできない。
従って、基板の表面に柄模様が位置ずれして塗装されたときには、この塗装位置ずれを迅速に検出して判定し、塗装位置ずれによる不良発生の個数を最小限に抑えることが必要である。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、基板に対する柄模様の塗装の位置ずれを容易に且つ迅速に判定することができる塗装建築板及び塗装建築板の塗装位置ずれ判定方法を提供することを目的とするものである。
本発明の請求項1に係る塗装建築板は、基板1の一方の端縁に係合片2を設けると共に、基板1同士の接続時に他の基板1の係合片2の背面側に係合される受け係合片3を基板1の他方の端縁に突設し、係合片2及び受け係合片3を設けた端縁と直交する端縁を先頭にして基板1を送りながら、基板1のこの先頭側の端縁から後端縁へと順に基板1の表面に柄模様4を塗装して形成される塗装建築板であって、受け係合片3の表面に、塗装位置確認用のマーク5が、柄模様4の塗装と同時に、柄模様4と所定の相対的な位置関係で塗装して形成されていることを特徴とするものである。
この発明によれば、受け係合片3に塗装された塗装位置確認用マーク5の位置によって、基板1に対する柄模様4の塗装位置を確認することができ、塗装位置ずれの発生の有無を容易に且つ迅速に判定することができるものである。しかも受け係合片3は、塗装建築板を家屋の外壁などに施工するにあたって、基板1同士を接続する際に、他の基板1の係合片2に隠れて見えなくなるものであり、受け係合片3に塗装した塗装位置確認用マーク5で外観を損なうようなことはないものである。
また請求項2の発明は、請求項1において、塗装位置確認用マーク5は、基板1の送り方向の先頭側の端縁から、受け係合片3に沿った所定長さで形成されていることを特徴とするものである。
この発明によれば、受け係合片3に塗装された塗装位置確認用マーク5の長さや、塗装位置確認用マーク5の塗装位置によって、基板1に対する柄模様4の塗装位置を確認することができ、塗装位置ずれの発生の有無を容易に且つ迅速に判定することができるものである。
また請求項3の発明は、請求項2において、塗装位置確認用マーク5は、基板1の表面に対する柄模様4の塗装位置のずれが許容される寸法の長さで形成されていることを特徴とするものである。
この発明によれば、塗装位置確認用マーク5が、受け係合片3の先頭側の端縁を含む範囲で塗装されているときには柄模様4の塗装位置ずれは合格の範囲にあると判定することができ、塗装位置確認用マーク5が、受け係合片3に塗装されていないとき、あるいは受け係合片3の先頭側の端縁を含まない範囲で塗装されているときには、基板1に対する柄模様4の塗装位置ずれは不合格と判定することができるものである。
また請求項4の発明は、請求項2において、塗装位置確認用マーク5は、基板1の表面に対する柄模様4の塗装位置のずれが許容される寸法より長く形成されていることを特徴とするものである。
この発明によれば、塗装位置確認用マーク5が、受け係合片3に先頭側の端縁から所定長さで塗装されているときには、基板1に対する柄模様4の塗装位置ずれを合格と判定し、塗装位置確認用マーク5が、受け係合片3に先頭側の端縁から所定長さよりも短い長さで塗装されているとき、あるいは受け係合片3の先頭側の端縁を含まない範囲で塗装されているときには、基板1に対する柄模様4の塗装位置ずれを不合格と判定することができるものである。
本発明の請求項5に係る塗装建築板の塗装位置ずれ判定方法は、基板1の表面に塗装して請求項1又は2に記載の塗装建築板を製造するにあたって、受け係合片3に塗装された塗装位置確認用マーク5に基づいて、基板1に対する柄模様4の塗装位置ずれの合格・不合格を判定することを特徴とするものである。
この発明によれば、塗装位置確認用マーク5の長さや位置を検知することによって、基板1に対する柄模様4の塗装位置ずれを容易に且つ迅速に判定することができるものであり、塗装不良の発生を少なくすることができるものである。
本発明の請求項6に係る塗装建築板の塗装位置ずれ判定方法は、基板1の表面に塗装して請求項3に記載の塗装建築板を製造するにあたって、塗装位置確認用マーク5が、受け係合片3の上記の先頭側の端縁を含む範囲で塗装されているときに、基板1に対する柄模様4の塗装位置ずれを合格と判定し、塗装位置確認用マーク5が、受け係合片3に塗装されていないとき、あるいは受け係合片3の上記の先頭側の端縁を含まない範囲で塗装されているときに、基板1に対する柄模様4の塗装位置ずれを不合格と判定することを特徴とするものである。
この発明によれば、塗装位置確認用マーク5の塗装状態を検知するだけで、基板1に対する柄模様4の塗装位置ずれを容易に且つ迅速に判定することができるものであり、塗装不良の発生を少なくすることができるものである。
本発明の請求項7に係る塗装建築板の塗装位置ずれ判定方法は、基板1の表面に塗装して請求項4に記載の塗装建築板を製造するにあたって、塗装位置確認用マーク5が、受け係合片3に上記の先頭側の端縁から所定長さで塗装されているときに、基板1に対する柄模様4の塗装位置ずれを合格と判定し、塗装位置確認用マーク5が、受け係合片3に上記の先頭側の端縁から所定長さよりも短い長さで塗装されているとき、あるいは受け係合片3の上記の先頭側の端縁を含まない範囲で塗装されているときに、基板1に対する柄模様4の塗装位置ずれを不合格と判定することを特徴とするものである。
この発明によれば、塗装位置確認用マーク5の塗装状態を検知するだけで、基板1に対する柄模様4の塗装位置ずれを容易に且つ迅速に判定することができるものであり、塗装不良の発生を少なくすることができるものである。
本発明の請求項8に係る塗装建築板の塗装位置ずれ判定方法は、基板1の表面に塗装して請求項1乃至4のいずれか1項に記載の塗装建築板を製造するにあたって、塗装位置確認用マーク5が、受け係合片3の突出幅方向で所定の位置に塗装されているときに、基板1に対する柄模様4の塗装位置ずれを合格と判定し、塗装位置確認用マーク5が、受け係合片3の突出幅方向で所定の位置から外れて塗装されているときに、基板1に対する柄模様4の塗装位置ずれを不合格と判定することを特徴とするものである。
この発明によれば、塗装位置確認用マーク5の塗装状態を検知することによって、基板1の送り方向と垂直な幅方向での柄模様4の塗装位置ずれを容易に且つ迅速に判定することができるものであり、塗装不良の発生を少なくすることができるものである。
また請求項9の発明は、請求項5乃至8のいずれかにおいて、インクジェットプリンター13に基板1を通過させて、基板1の表面に柄模様4を塗装すると同時に受け係合片3に塗装位置確認用マーク5を塗装することによって、塗装建築板を製造するようにしたことを特徴とするものである。
この発明によれば、インクジェットプリンター13で基板1に柄模様4を塗装するにあたって、基板1の送りに対するインクジェットプリンター13からの塗料の噴射のタイミングのずれを、塗装位置確認用マーク5の塗装状態で容易に且つ迅速に判定することができるものであり、塗装不良の発生を少なくすることができるものである。
本発明によれば、受け係合片3に塗装された塗装位置確認用マーク5の位置や長さによって、基板1に対する柄模様4の塗装位置を確認することができ、塗装位置ずれの発生の有無を容易に且つ迅速に判定することができるものであり、しかも受け係合片3は、基板1同士を接続する施工を行なう際に、他方の基板1の係合片2に隠れるものであって、受け係合片3に塗装した塗装位置確認用マーク5で外観を損なうようなことはないものである。
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
基板1は例えば窯業系の矩形の板として形成されるものであり、長手側での一方の側端に係合片2が、他方の側端に受け係合片3がそれぞれ全長に亘って一体に突設してある。この基板1から作製される塗装建築板を外壁材などとして家屋の外壁などの下地8に取付施工する場合、複数の基板1上下あるいは左右に並べて接続するが、図9に示すように、隣合う一方の基板1の受け係合片3の前面側に、他方の基板1の係合片2を係合させて接続を行なうものであり、従って受け係合片3は他方の基板1の係合片2の裏側に隠れて外部に露出することがなくなる部分である。また、基板1の表面(前面)には、多数の凸部7aと、凸部7a間の凹部7bとからなる凹凸7が模様形状で形成してある。
次に、この基板1の表面にインクジェットプリンター13で柄模様を塗装する方法について説明する。インクジェットプリンター13は、図2に概略構成を示すように、ノズルヘッド9、ノズルヘッド9に塗料を供給する塗料供給タンク11、ノズルヘッド9からの塗料の噴射を制御する印刷制御システム12などから形成されるものであり、インクジェットプリンター13は基板1を水平姿勢で送る送りコンベア14の上方に配置してある。
ノズルヘッド9はインクジェットプリンター13の下端に設けられているものであり、基板1の送り方向と垂直な方向に長いラインヘッドとして形成してある。ノズルヘッド9の下面には、ノズルヘッド9の長手方向に沿って多数の噴射ノズル10が設けてあり、高密度のdpiで塗装を行なうことができるようにしてある。ノズルヘッド9はイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色の塗料を噴出する4種類のノズルヘッド9y,9c,9m,9kから形成してあり、フルカラー印刷による塗装を行なうことができるようにしてある。塗料供給タンク11も同様に4種類のものからなるものであり、イエローの塗料を供給する塗料供給タンク11yはノズルヘッド9yに、シアンの塗料を供給する塗料供給タンク11cはノズルヘッド9cに、マゼンタの塗料を供給する塗料供給タンク11mはノズルヘッド9mに、ブラックの塗料を供給する塗料供給タンク11kはノズルヘッド9kにそれぞれ接続してある。そして各ノズルヘッド9y,9c,9m,9kは基板の送り方向に沿って配列してある。
印刷制御システム12は、各種のCPU、ROM、RAM等から構成されるものであり、印刷データ作成部、印刷制御部、噴射ノズル制御部等を備えて形成してある。印刷データ作成部は、原画をスキャナ等して得た柄模様パターンのデータを入力して保存するものであり、印刷制御部は、塗装を行なう基板1に応じた柄模様パターンのデータを印刷データ作成部から取り出し、この柄模様パターンのデータに基づいて、噴射ノズル制御部に制御信号を出力するものである。また噴射ノズル制御部はノズルヘッド9y,9c,9m,9kの各噴射ノズル10に接続してあり、噴射ノズル制御部から入力される制御信号に基づいて各噴射ノズル10を制御するものである。各噴射ノズル10は例えばピエゾ制御方式により噴射を制御されるようになっており、噴射ノズル制御部で各噴射ノズル10を制御することによって、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各塗料の噴射と停止を個別に制御して、柄模様パターンに対応したフルカラー印刷による柄模様4の塗装を行なうことができるものである。
そして、基板1を送りコンベア14で送ってノズルヘッド9y,9c,9m,9kの下を順に通過させ、この際に、印刷制御システム12で上記のように制御しながらノズルヘッド9y,9c,9m,9kの各噴射ノズル10から塗料を噴射させて、基板1の表面に塗着させることによって、基板1に柄模様4の塗装を施すことができるものである。ノズルヘッド9y,9c,9m,9kの各噴射ノズル10からの塗料の噴射は、基板1の送り方向の先頭側の端縁がノズルヘッド9y,9c,9m,9kの各噴射ノズル10の直下に達したときを基準にして開始されるように、基板1の送りに対して噴射のタイミングを合わせる必要があるが、例えば、基板1の到達をセンサーなどで検知し、このセンサーによる検出信号が印刷制御システム12の噴射ノズル制御部に入力されると、検出信号が入力されてから所定時間後にノズルヘッド9y,9c,9m,9kの各噴射ノズル10からの塗料の噴射が開始されるようにして、基板1の送りに対して噴射のタイミングを合わせるようにしてある。ここで図1の実施の形態では、柄模様4の塗装は基板1の凹凸7の凸部7aと同調する位置に行なうようにしてある。
上記のように基板1の表面にインクジェットプリンター13で柄模様4を塗装する際に、同時に、基板1の受け係合片3に塗装位置確認用マーク5を塗装して形成するようにしてある。インクジェットプリンター13で柄模様4を塗装する際には、送りコンベア14で送られる基板1の先頭の端縁がノズルヘッド9の直下に達したときを基準にしたタイミングでノズルヘッド9からの塗料の噴射を開始して行なわれるが、基板1の先頭の端縁がノズルヘッド9の直下に達したときに、ノズルヘッド9からの塗料の噴射を開始して、受け係合片3に塗装位置確認用マーク5を塗装するようにしてある。上記のように複数のノズルヘッド9y,9c,9m,9kを用いて柄模様4をカラー塗装する場合、塗装位置確認用マーク5もこれらの複数のノズルヘッド9y,9c,9m,9kを用いて塗装するようにしてもよいが、一部のノズルヘッド9y,9c,9m,9kのみを用いて塗装位置確認用マーク5を塗装するようにしてもよい。
塗装位置確認用マーク5はこのように、基板1の先頭の端縁がノズルヘッド9の直下に達したときにノズルヘッド9からの塗料の噴射を開始して塗装することによって形成されるので、図1に示すように、基板1の送り方向(図1及び図3〜図6に矢印で示す)の先頭側の端縁から始まって、受け係合片3を設けた側の基板1の端縁に沿った所定長さで形成されるものである。そしてこの塗装位置確認用マーク5としては、受け係合片3の先頭側の端縁から短い寸法で形成される短寸法マーク5aと、受け係合片3の先頭側の端縁から長い寸法で形成される長寸法マーク5bを用いることができる。図1には短寸法マーク5aと長寸法マーク5bの両方を受け係合片3に形成しているが、いずれか一方のみを受け係合片3に形成すればよい。
まず塗装位置確認用マーク5として短寸法マーク5aを用いる場合について説明する。基板1に柄模様4を塗装するにあたって、基板1の送り方向で柄模様4が位置ずれしても、不良品とならず許容される範囲があるが、短寸法マーク5aは受け係合片3の先頭側の端縁からの長さL1が、柄模様4が基板1の送り方向で位置ずれしても許容される寸法で、形成されるものであり、例えば、受け係合片3の先頭側の端縁からL1=2mmの長さとなるように形成してある。短寸法マーク5aはこのように短い寸法で形成されるので、視覚にとらえ易いように、受け係合片3が張り出して突出する方向に幅広になるように形成するのが好ましい。
そして基板1に柄模様4を塗装するにあたって、インクジェットプリンター13に送りコンベア14で送られる基板1がセンサーで検知されると、この検知信号の入力に基づいたタイミングでノズルヘッド9から塗料が噴射され、基板1の表面に柄模様4が塗装されると共に、受け係合片3に塗装位置確認用マーク5として短寸法マーク5aが塗装されるが、基板1の送りとノズルヘッド9からの塗料の噴射のタイミングが合っていると、基板1の先頭側の端縁がノズルヘッド9の直下に達したときにノズルヘッド9からの塗料の噴射が開始されるので、図3(a)のように、受け係合片3には先頭側の端縁から始まる位置に短寸法マーク5aが塗装される。そしてこのように基板1の送りと塗料の噴射のタイミングが合っているときには、基板1の表面に塗装される柄模様4の位置ずれはないので、図3(a)のように凸部7aと同調した位置に柄模様4を塗装することができる。
ここで、短寸法マーク5aは必ずしも先頭側の端縁からL1=2mmの長さで受け係合片3に塗装されている必要はなく、受け係合片3の先頭側の端縁を含む位置に塗装されていればよい。短寸法マーク5aは、基板1に対する柄模様4の塗装位置が基板1の送り方向で位置ずれしても許容される寸法の長さL1で形成されているので、短寸マーク5aが受け係合片3の先頭側の端縁を含む位置に塗装されていれば、基板1の表面に塗装される柄模様4の位置ずれは許容範囲であり、塗装不良とはならない。
また基板1の送りとノズルヘッド9からの塗料の噴射のタイミングが合っていないとき、例えば基板1の先頭側の端縁がノズルヘッド9の直下を通過した後にノズルヘッド9からの塗料の噴射が開始されると、図3(b)のように、受け係合片3には先頭側の端縁から送り方向の後方位置に短寸法マーク5aが塗装される。そしてこのように塗料の噴射のタイミングが遅いときには、基板1の表面に塗装される柄模様4は基板1の送り方向の後方に位置ずれすることになるので、図3(b)のように凸部7aに対して後方にずれた位置で柄模様4が塗装される。
あるいは、例えば先頭側の端縁がノズルヘッド9の直下に達する前にノズルヘッド9からの塗料の噴射が開始されると、受け係合片3の前方位置で塗料が噴射されるので、図3(c)のように受け係合片3には短寸法マーク5aが塗装されない。そしてこのように塗料の噴射のタイミングが早いときには、基板1の表面に塗装される柄模様4は基板1の送り方向の前方に位置ずれすることになるので、図3(c)のように凸部7aに対して前方にずれた位置で柄模様4が塗装される。
このように、受け係合片3に基板1の送り方向の先頭側の端縁を含む位置において短寸法マーク5aが塗装されていれば、基板1の表面に塗装された柄模様4は送り方向で位置ずれがない(あるいは許容範囲である)と判定することができるものであり、また受け係合片3にその先頭側の端縁から外れた位置において短寸法マーク5aが塗装されているとき、あるいは受け係合片3に短寸法マーク5aが塗装されていないときは、基板1の表面に塗装された柄模様4は送り方向で位置ずれがあると判定することができるものである。そして短寸法マーク5aのこれらの確認は、視覚検査で行なうことができるものであり、柄模様4の位置ずれの有無の判定を短時間でかつ容易に行なうことができるものである。従って、インクジェットプリンター13で基板1に柄模様4を塗装した直後に、短寸法マーク5aの状態を視覚検査することによって、直ちに柄模様4の位置ずれの有無を判定することができ、柄模様4が位置ずれしていると判定されると、直ちに塗装ラインを停止するなどすることによって、柄模様4の位置ずれ不良が多量に発生することを防ぐことができるものである。
一方、上記の短寸法マーク5aによって、基板1の送り方向と垂直な幅方向での柄模様4の位置ずれを判定することもできる。例えば、受け係合片3の突出幅方向での短寸法マーク5aの位置を測定し、短寸法マーク5aの位置ずれが所定寸法以下であれば、柄模様4が幅方向に位置ずれしていないと判定することができ、短寸法マーク5aの位置ずれが所定寸法以上であれば、柄模様4が幅方向に位置ずれしていると判定することができる。この受け係合片3の幅方向での短寸法マーク5aの位置の測定は、定規を用いて行なう他、CCDカメラなどの光学式測定器を用いて自動的に行なうことも可能である。
また、図4の実施の形態では、基板1が幅方向に位置ずれしていず、正しい位置でインクジェットプリンター13に送られて短寸法マーク5aが塗装されるときには、図4(a)のように受け係合片3の幅方向の中央に短寸法マーク5aが形成されるようにしてある。そしてこの短寸法マーク5aと受け係合片3の突出先端との間の寸法W1と、短寸法マーク5aと受け係合片3の基部との間の寸法W2を、柄模様4が基板1の幅方向で位置ずれしても許容される寸法に形成してあり、例えば、W1=W2=2mmに設定してある。
このものにあって、短寸法マーク5aが受け係合片3の幅寸法内に塗装されていれば、基板1は幅方向が正しい位置でインクジェットプリンター13に送られているということであるので、基板1の表面に塗装される柄模様4の幅方向の位置ずれはなく(あるいは許容範囲)、図4(a)のように凸部7aと同調した位置に柄模様4を塗装することができる。
また図4(b)のように、短寸法マーク5aが受け係合片3の突出先端にかかるように塗装されていれば、基板1は受け係合片3と反対側に位置ずれした状態でインクジェットプリンター13に送られているということであるので、柄模様4は図4(b)のように受け係合片3の側に幅方向でずれた位置に塗装される。
また図4(c)のように、短寸法マーク5aが受け係合片3の基部にかかるように塗装されていれば、基板1は受け係合片3の側に位置ずれした状態でインクジェットプリンター13に送られているということであるので、柄模様4は図4(c)のように受け係合片3と反対側に幅方向でずれた位置に塗装される。
このように、受け係合片3にその幅寸法内の位置において短寸法マーク5aが塗装されていれば、基板1の表面に塗装された柄模様4は幅方向で位置ずれがない(あるいは許容範囲である)と判定することができるものであり、また受け係合片3の突出先端や基部にかかる位置において短寸法マーク5aが塗装されているときは、基板1の表面に塗装された柄模様4は幅方向で位置ずれがあると判定することができるものである。そして短寸法マーク5aのこれらの確認は、視覚検査で行なうことができるものであり、柄模様4の位置ずれの有無の判定を短時間でかつ容易に行なうことができるものである。従って、インクジェットプリンター13で基板1に柄模様4を塗装した直後に、短寸法マーク5aの状態を視覚検査することによって、直ちに柄模様4の位置ずれの有無を判定することができ、柄模様4が位置ずれしていると判定されると、直ちに塗装ラインを停止するなどすることによって、柄模様4の位置ずれ不良が多量に発生することを防ぐことができるものである。
次に、塗装位置確認用マーク5として長寸法マーク5bを用いる場合について説明する。長寸法マーク5aは受け係合片3の送り方向の先頭側の端縁からの長さを、柄模様4が基板1の送り方向で位置ずれしても許容される寸法よりも大きな寸法に設定した直線として形成されるものであり、例えば、受け係合片3の先頭側の端縁からL2=100mmの長さとなるように設定してある。また長寸法マーク5bの先頭側の端縁と反対側の後端に、長寸法マーク5に直交する屈折部16を形成してあり、長寸法マーク5bの後端の位置が明確になるようにしてある。
そして基板1に柄模様4を塗装するにあたって、インクジェットプリンター13に送りコンベア14で送られる基板1がセンサーで検知されると、この検知信号の入力に基づいたタイミングでノズルヘッド9から塗料が噴射され、基板1の表面に柄模様4が塗装されると共に、受け係合片3に塗装位置確認用マーク5として長寸法マーク5bが塗装されるが、基板1の送りとノズルヘッド9からの塗料の噴射のタイミングが合っていると、基板1の先頭側の端縁がノズルヘッド9の直下に達したときにノズルヘッド9からの塗料の噴射が開始されるので、図5(a)のように、受け係合片3には先頭側の端縁から始まる位置に長寸法マーク5bが塗装される。このように基板1の送りと塗料の噴射のタイミングが合っているときには、受け係合片3に塗装される長寸法マーク5bの長さは設定されたL2=100mmの寸法に形成されるものであり、また基板1の表面に塗装される柄模様4の位置ずれはないので、図5(a)のように凸部7aと同調した位置に柄模様4を塗装することができる。
また基板1の送りとノズルヘッド9からの塗料の噴射のタイミングが合っていないとき、例えば先頭側の端縁がノズルヘッド9の直下を通過した後にノズルヘッド9からの塗料の噴射が開始されると、図5(b)のように、受け係合片3には先頭側の端縁から送り方向の後方へずれた位置から始まるように長寸法マーク5bが塗装される。そしてこのように塗料の噴射のタイミングが遅いときには、基板1の表面に塗装される柄模様4は基板1の送り方向の後方に位置ずれすることになるので、図5(b)のように凸部7aに対して後方にずれた位置で柄模様4が塗装される。
あるいは、例えば先頭側の端縁がノズルヘッド9の直下に達する前にノズルヘッド9からの塗料の噴射が開始されると、受け係合片3の前方位置で塗料が噴射され始めるので、図5(c)のように受け係合片3に塗装される長寸法マーク5bの長さは短くなる。そしてこのように塗料の噴射のタイミングが早いときには、基板1の表面に塗装される柄模様4は基板1の送り方向の前方に位置ずれすることになるので、図5(c)のように凸部7aに対して前方にずれた位置で柄模様4が塗装される。
このように、受け係合片3にその先頭側の端縁を含む位置から長寸法マーク5bが塗装されており、その長さが設定された寸法L2であれば、基板1の表面に塗装された柄模様4は送り方向で位置ずれがないと判定することができるものであり、また受け係合片3にその先頭側の端縁から外れた位置において長寸法マーク5bが塗装されているとき、あるいは受け係合片3に塗装された長寸法マーク5bの長さが設定された寸法L2よりも短いときは、基板1の表面に塗装された柄模様4は送り方向で位置ずれがあると判定することができるものである。
そして長寸法マーク5bの長さの測定は定規で測ったり、CCDカメラなどの光学式測定器を用いたりして、短時間でかつ容易に行なうことができるものであり、また受け係合片3の先頭側の端縁から外れた位置に長寸法マーク5aが塗装されているときは視覚で確認することができるものであり、柄模様4の位置ずれの有無の判定を短時間でかつ容易に行なうことができるものである。従って、インクジェットプリンター13で基板1に柄模様4を塗装した直後に、長寸法マーク5bを確認することによって、直ちに柄模様4の位置ずれの有無を判定することができ、柄模様4が位置ずれしていると判定されると、直ちに塗装ラインを停止するなどすることによって、柄模様4の位置ずれ不良が多量に発生することを防ぐことができるものである。
一方、上記の長寸法マーク5bによって、基板1の送り方向と垂直な幅方向での柄模様4の位置ずれを判定することもできる。すなわち、受け係合片3の突出幅方向での長寸法マーク5aの位置を測定し、長寸法マーク5bの位置ずれが所定寸法以下であれば、柄模様4が幅方向に位置ずれしていないと判定することができ、長寸法マーク5bの位置ずれが所定寸法以上であれば、柄模様4が幅方向に位置ずれしていると判定することができる。例えば、基板1が幅方向に位置ずれしていず、正しい位置でインクジェットプリンター13に送られて長寸法マーク5bが塗装されるときには、図5(a)のように受け係合片3の基部からW3(例えば5mm)の寸法で幅方向の中央側に長寸法マーク5bが形成されるようにし、受け係合片3の基部から長寸法マーク5bの塗装位置までの寸法を測定することによって、柄模様4の幅方向での位置ずれの有無を判定することができるものである。この受け係合片3の幅方向での長寸法マーク5bの位置の測定は、定規を用いて行なう他、CCDカメラなどの光学式測定器を用いて自動的に行なうことも可能である。
また、図6の実施の形態では、受け係合片3に2本の長寸法マーク5bを平行に塗装するようにしてある。この2本の長寸法マーク5bの間隔W4は、受け係合片3の突出幅寸法の1/3の寸法に設定してあり、基板1が幅方向に位置ずれしていず、正しい位置でインクジェットプリンター13に送られて長寸法マーク5bが塗装されるときには、図6(a)のように、外側の長寸法マーク5bと受け係合片3の突出先端との間の寸法W5と、内側の長寸法マーク5bと受け係合片3の基部との間の寸法W6は、それぞれW4と等しくなるようにしてある(W4=W5=W6)。
このものにあって、2本の長寸法マーク5b間の間隔と、外側の長寸法マーク5bと受け係合片3の突出先端との間の間隔、及び内側の長寸法マーク5bと受け係合片3の基部との間の間隔がそれぞれ等しくなるように、受け係合片3に長寸法マーク5bが塗装されていれば、基板1の表面に塗装される柄模様4の幅方向の位置ずれはないので、図6(a)のように凸部7aと同調した位置に柄模様4を塗装することができる。
また、図6(b)のように、2本の長寸法マーク5b間の間隔よりも、外側の長寸法マーク5bと受け係合片3の突出先端との間の間隔が狭く、内側の長寸法マーク5bと受け係合片3の基部との間の間隔が広くなるように、2本の受け係合片3に長寸法マーク5bが塗装されていれば、基板1が受け係合片3と反対側に位置ずれした状態でインクジェットプリンター13に送られているということであるので、柄模様4は図6(b)のように受け係合片3の側に幅方向でずれた位置に塗装される。
逆に図6(c)のように、2本の長寸法マーク5b間の間隔よりも、外側の長寸法マーク5bと受け係合片3の突出先端との間の間隔が広く、内側の長寸法マーク5bと受け係合片3の基部との間の間隔が狭くなるように、受け係合片3に長寸法マーク5bが塗装されていれば、基板1が受け係合片3の側に位置ずれした状態でインクジェットプリンター13に送られているということであるので、柄模様4は図6(c)のように受け係合片3と反対側に幅方向でずれた位置に塗装される。
このように、2本の長寸法マーク5b間の間隔よりも、外側の長寸法マーク5bと受け係合片3の突出先端との間の間隔が狭く、内側の長寸法マーク5bと受け係合片3の基部との間の間隔が広い場合や、2本の長寸法マーク5b間の間隔よりも、外側の長寸法マーク5bと受け係合片3の突出先端との間の間隔が広く、内側の長寸法マーク5bと受け係合片3の基部との間の間隔が狭い場合は、柄模様4は幅方向にずれた位置で塗装されていると判定することができるものである。そしてこのように間隔が等しいか等しくないかは、寸法を定規で測定したりする必要なく、目視によって容易に判断することができるものであり、柄模様4の位置ずれの有無の判定を短時間でかつ容易に行なうことができるものである。従って、インクジェットプリンター13で基板1に柄模様4を塗装した直後に、2本の長寸法マーク5bの確認を視覚検査することによって、直ちに柄模様4の位置ずれの有無を判定することができ、柄模様4が位置ずれしていると判定されると、直ちに塗装ラインを停止するなどすることによって、柄模様4の位置ずれ不良が多量に発生することを防ぐことができるものである。
上記の図5及び図6の実施の形態では、長寸法マーク5bは、実線の直線として形成したが、これに限定されるものではなく、例えば図7(a)のように破線で長寸法マーク5bを形成するようにしてもよく、また図7(b)(c)のように帯状のべた塗りで長寸法マーク5を形成するようにしてもよい。
また上記の各実施の形態では、塗装位置確認用マーク5を、基板1の送り方向の先頭側の端縁から、受け係合片3に沿った所定長さで受け係合片3に形成するようにしたが、図8(a)に示すように、受け係合片3に塗装位置確認用マーク5をポイント5cとして塗装して形成するようにしてもよい。このポイント5cは、基板1に塗装される柄模様4と所定の相対的な位置関係を有するものであり、基板1の表面に位置ずれなく正確に柄模様4が塗装されるときに、受け係合片3の所定の位置(例えば受け係合片3の先頭側の端縁からL3の距離の位置で且つ、受け係合片3の基部からW7の距離の位置)にポイント5cが印刷されるようにしてある。
従ってこのものでは、インクジェットプリンター13で基板1に柄模様4を塗装した直後に、柄模様4と同時に受け係合片3に塗装されるポイント5cの位置を測定し、受け係合片3の先頭側の端縁からの距離がL3であり、且つ、受け係合片3の基部からの距離がW7であれば、柄模様4は位置ずれなく基板1に塗装されていると判定することができる。一方、ポイント5cの塗装位置が、受け係合片3の先頭側の端縁からL3の距離でない場合には、柄模様4は基板1の送り方向に位置ずれしていると判定することができ、また受け係合片3の基部からW7の距離でない場合には、柄模様4は基板1の幅方向に位置ずれしていると判定することができるものである。このポイント5cの塗装位置の検査は、定規で測定したり、CCDカメラなどの光学式測定器を用いたりして、短時間でかつ容易に行なうことができるものである。
ポイント5cの形状を図8(a)のように「+」形に形成することによって、受け係合片3の先頭側の端縁からの距離も受け係合片3の基部からの距離も正確に測定することができ、基板1の送り方向及び幅方向のいずれの方向へでも柄模様4のずれの判定を正確に行なうことができるものである。ポイント5cを図8(b)のように「L]形に形成したり、「T]形に形成したり、「●」形に形成したりしても同様である。また、柄模様4の位置ずれの判定を、基板1の送り方向あるいは、基板1の幅方向のいずれか一方のみでよい場合には、ポイント5cは「−」形であってもよい。
上記の各実施の形態では、インクジェットプリンター13を用いて基板1の表面に柄模様4を塗装すると同時に受け係合片3に塗装位置確認用マーク5を塗装する例を示したが、塗装の方法はインクジェットプリンター13を用いた方法に限定されるものではなく、フレキソロールやグラビアオフセットロールなどの塗装ロールを用いて塗装するようにしてもよい。このように塗装ロールを用いる場合は、塗装ロールに柄模様塗装用の版の他に、塗装位置確認用マーク5を塗装するための版を形成することによって、基板1の表面に柄模様4を塗装すると同時に受け係合片3に塗装位置確認用マーク5を塗装することができるものである。
ここで、上記の各実施の形態のように、塗装位置確認用マーク5は受け係合片3に塗装されるが、記述の図9に示すように、基板1とカラー塗装して作製される塗装建築板を外壁材などとして家屋の外壁などの下地8に取付施工する場合、隣合う一方の基板1の受け係合片3の前面側に、他方の基板1の係合片2を係合させるので、受け係合片3は他の基板1の係合片2の裏側に隠れて外部に露出することがなくなる部分である。従って、受け係合片3に塗装される塗装位置確認用マーク5は施工状態では外部に露出しないものであり、塗装位置確認用マーク5で外観を損なうようなことはないものである。