第1の実施の形態.
図1は、本実施の形態に係る固定子63を概念的に示す。但し、所定の方向91に沿って分解して示している。なお、図1では、本実施の形態に係るアキシャルギャップ型モータ(以下、単に「モータ」と略称する)の回転軸92が付されている。
固定子63は、コア631、巻線A11〜A13,B11〜B13及び磁性体板71を備え、本実施の形態に係るモータの電機子として機能する。
コア631は、板61と、複数の磁心111〜114,121〜124,131〜134とを備える。板61は、表面61aを有し、所定の方向91に対して垂直である。複数の磁心111〜114,121〜124,131〜134は、この順で表面61a上に回転軸92の周りで周方向に沿って環状に配置されており、いずれも所定の方向91に沿って突出する。
図1では、コア631がさらに段部115,116,125,126,135,136を備える場合が示されている。段部115は磁心111と磁心112との間に、段部116は磁心112と磁心113との間にそれぞれ位置する。段部125は磁心121と磁心122との間に、段部126は磁心122と磁心123との間にそれぞれ位置する。段部135は磁心131と磁心132との間に、段部136は磁心132と磁心133との間にそれぞれ位置する。
段部115,116,125,126,135,136のいずれについても、表面61aとは反対側の頂面115a,116a,125a,126a,135a,136aは、磁心111〜114,121〜124,131〜134の表面61aとは反対側の頂面111a〜114a,121a〜124a,131a〜134aよりも、板61に近い。
段部115,116,125,126,135,136は、磁性材料で形成されていても良いし、非磁性材料で形成されていても良い。
上記したコア631に対して、巻線A11〜A13,B11〜B13を次の態様で配置する。
巻線A11は磁心111〜113を纏めて囲んで配置され、巻線A12は磁心121〜123を纏めて囲んで配置され、巻線A13は磁心131〜133を纏めて囲んで配置される。巻線A11〜A13はいずれも表面61aに沿って配置される。
巻線B11は磁心123,124,131を纏めて囲んで配置され、巻線B12は磁心133,134,111を纏めて囲んで配置され、巻線B13は磁心113,114,121を纏めて囲んで配置される。
巻線A11〜A13の配置に際し、巻線A11〜A13の各々を上述した態様で磁心に巻回しても良いし、予め巻回された巻線A11〜A13の各々を上述した態様で磁心に嵌め込んでも良い。図1では後者の場合が示されている。巻線B11〜B13についても同様である。例えば、巻線A11,B11はU相、巻線A12,B12はV相、巻線A13,B13はW相が配置され、3相スター結線または3相デルタ結線にて結線されている。
このような巻線A11〜A13,B11〜B13の配置は4極の分布巻である。分布巻で配置することは、発生する磁束が高周波成分を顕著に含まない点で望ましい。
巻線A11〜A13,B11〜B13は、それぞれが個別に絶縁体によって囲まれていても良い。これによれば、巻線A11〜A13,B11〜B13に応力がかかることによる巻線A11〜A13、B11〜B13の変形や破損が回避される。しかも巻線A11〜A13,B11〜B13と磁心111〜114,121〜124,131〜134、巻線同士のそれぞれの間の絶縁が確保される。
巻線A11〜A13,B11〜B13には丸線や平角線が採用できる。例えば平角線を採用した場合には、丸線に比べて巻線の占積率が向上し、以って固定子が小型化される点で特に望ましい。更には表皮効果の影響が低減される点でも望ましい。
巻線A11〜A13,B11〜B13をコア631に配置する際には、軸方向に同一形状である磁心111〜114,121〜124,131〜134の板61とは反対側が開放されているので、巻線A11〜A13,B11〜B13の配置を容易に行うことができる。特に、予め所定の形状に巻回された巻線A11〜A13,B11〜B13を磁心111〜114,121〜124,131〜134に挿入することが容易となり、平角線の採用が可能になる。なお、巻線A11〜A13と巻線B11〜B13は、異なる段に重ねて設けられているが、磁心間の全てに巻線を挿入し、コイルエンド(巻線の内周部及び外周部)で異なる相の巻線が重なり合う部分は上下に曲げて整形しても良い。
次に、巻線A11〜A13,B11〜B13が配置されたコア631に対して、磁性体板71を次の態様で配置する。当該配置の際には、磁性体板71をコア631に例えば固着させるが、コア631は磁性体板71よりも質量が大きいため安定性が良い。
磁性体板71は、複数の磁性体7111〜7122がこの順に回転軸92の周りで周方向に沿って環状に配置されて構成されており、いずれの一の磁性体7111〜7122においても、当該一の磁性体は他の磁性体のいずれとも、その間に空隙7111b〜7122bを有する。具体的には、磁性体7111は、これと隣接する磁性体7112との間に空隙7111bを有する。磁性体7112〜7122の間にも同様にして空隙7112b〜7122bを有する。図1では、空隙7111b〜7122bの各々の外郭が、磁性体板71の中心から見た動径方向に沿って延在している場合が示されている。
図2は、本実施の形態に係る磁性体板71を上面側(後述する回転子31側)から見た平面図である。
回転軸92の周りで周方向に沿って相互に隣接して配置された各磁性体の組が薄肉部(薄肉連結部)7111c〜7122c,7111d〜7122dによって相互に連結されている。具体的には、回転軸92に接近した内周部において複数の内周側薄肉連結部7111d〜7122dによって相互に連結され、回転軸92から内周側薄肉連結部7111d〜7122dよりも離隔した外周部において複数の外周側薄肉連結部7111c〜7122cによって相互に連結されている。すなわち、各空隙7111b〜7122bの内周側の外郭が各内周側薄肉連結部7111d〜7122dによって形成され、各空隙7111b〜7122bの外周側の外郭が各外周側薄肉連結部7111c〜7122cによって形成されている。このようにして、全ての磁性体7111〜7122が連結されることで一体の磁性体板71を形成している。
磁性体板71は、表面61aとは反対側から磁心111〜114,121〜124,131〜134に被せられる。この際、磁性体7111〜7114,7115〜7118,7119〜7122が磁心111〜114,121〜124,131〜134にそれぞれ被さる。
いずれの一の磁性体7111〜7114,7115〜7118,7119〜7122においても、それが被さる一の磁心111〜114,121〜124,131〜134とは反対側の面7111a〜7114a,7115a〜7118a,7119a〜7122aの面積が、当該一の磁心の頂面111a〜114a,121a〜124a,131a〜134aの面積よりも大きい。
このようにして製造された固定子63の斜視図が図3に示されている。また、その側面図が図4に示されている。図3及び図4には回転子も示されているが、これについては後述する。
上述した固定子63にかかる技術によれば、磁性体7111〜7114,7115〜7118,7119〜7122を磁心111〜114,121〜124,131〜134に被せる前に巻線A11〜A13,B11〜B13を磁心111〜114,121〜124,131〜134に配置するので、巻線A11〜A13,B11〜B13の配置を容易に行うことができる。
しかも、磁性体7111〜7114,7115〜7118,7119〜7122の面7111a〜7114a,7115a〜7118a,7119a〜7122aの面積が磁心111〜114,121〜124,131〜134の頂面111a〜114a,121a〜124a,131a〜134aの面積よりもそれぞれ大きいので、電機子が界磁子と対向する面積を増すため、磁束の多くを磁心111〜114,121〜124,131〜134へと導くことができる。
また、空隙7111b〜7122bにおいて磁気抵抗が増加するので、磁束が一の磁性体7111〜7122から他の磁性体へと短絡して流れることが低減される。
更には、上述した技術により製造された固定子63によれば、磁性体板71すなわち磁性体7111〜7114,7115〜7118,7119〜7122が磁心111〜114,121〜124,131〜134に被せられており、かつ磁性体の面7111a〜7114a,7115a〜7118a,7119a〜7122aの面積が磁心の頂面111a〜114a,121a〜124a,131a〜134aの面積よりもそれぞれ大きいので、少なくとも磁性体板71を被せた側から巻線B11〜B13がはみ出たり、抜け落ちたりしない。
図3及び図4には、本実施の形態に係るモータの斜視図及び側面図が概念的に示されている。但し、図3では、回転子31が所定の方向91に沿って分解して示されている。当該モータは上記固定子63と回転子31とを備える。
回転子31は、基体62、及び磁石621〜624を備え、本実施の形態に係るモータの界磁子として機能する。基体62は、所定の方向91に沿った回転軸92を中心として回転可能であって、板61とは反対側から磁性体板71に対向して配置される。
磁石621〜624は、基体62の磁性体板71側の面上に磁性体板71に対向して配置される。詳細には、磁石621〜624は、固定子63に対向する側であって、回転軸92の周りで周方向に沿って環状に配置される。更に具体的には、磁石621〜624は、いずれも磁性体板71側において磁極を有し、隣接する磁石で磁極の極性が異なる。回転子31は、固定子63で発生した磁束が磁石621〜624に作用して回転する。
本実施の形態に係るモータにおいて、この磁石621〜624は、それぞれ界磁用の磁石(界磁用磁石)として機能し、固定子63に設けられた磁性体板71と距離δだけ離隔して配置されている。
磁性体板71の空隙7111b〜7122bの幅tssl(図3)は、磁性体板71と磁石621〜624との互いに近い面の距離δ(図3)の2倍よりも大きいことが望ましい。磁性体板71において隣接する磁性体7111〜7122の間にある空隙7111b〜7122bを介して、磁束が当該磁性体の一方から他方へと短絡することが妨げられるからである。これは、磁束が磁性体板71の一の磁性体7111〜7122からそれに隣接する他の磁性体へと、空隙7111b〜7122bを介して流れるよりも、磁石621〜624へ流れる方が、磁気抵抗が小さいからである。
図5は、本実施の形態に係るモータにおける磁石621〜624と磁性体板71との位置関係を回転軸92に平行な方向に沿って基体62側から示す模式図である。磁石621〜624と磁性体板71とを区別するために、磁石621〜624の外郭が実線、磁性体板71の外郭が破線で示されている。
磁石621〜624は、外周側薄肉連結部7111c〜7122c及び内周側薄肉連結部7111d〜7122dと回転軸92に平行な方向に沿って対向する位置をそれぞれ避けて、磁性体板71(すなわち固定子63)と対向するように配置されている。具体的には、磁石621〜624は、磁性体板71(すなわち固定子63)のうち、内周側薄肉連結部7111d〜7122dよりも回転軸92から離隔し、かつ外周側薄肉連結部7111c〜7122cよりも回転軸92に接近した部分と対向している。すなわち、固定子63に対して回転子31が回転軸92を中心として相対的に回転した場合にも、常に磁石621〜624と薄肉連結部7111c〜7122c,7111d〜7122dとは回転軸92と平行な方向に沿って対向しない。
上述した固定子63と回転子31とを備えたモータに係る技術によれば、固定子63に設けられた磁性体板71のうち、磁性体7111〜7122を相互に連結する薄肉連結部7111c〜7122c,7111d〜7122dが、回転軸92に平行な方向で回転子31の磁石621〜624と対向しない。このため、薄肉連結部7111c〜7122c,7111d〜7122dに漏れ磁束が通って薄肉連結部7111c〜7122c,7111d〜7122dに吸引力が集中するような不具合を解消することができる。したがって、薄肉部における応力の集中や変形を抑制することができる。
また、固定子63に設けられた磁性体板71では、内周側薄肉連結部7111d〜7122d及び外周側薄肉連結部7111c〜7122cによって磁性体7111〜7122が内周側及び外周側でそれぞれ相互に連結され、回転子31の磁石621〜624が、内周側薄肉連結部7111d〜7122dよりも外周側でかつ外周側薄肉連結部7111c〜7122cよりも内周側で固定子63と対向する。このように磁性体板71等の径方向のサイズを調整する簡単な構成で、薄肉部における応力の集中や変形を抑制することができる。
第2の実施の形態.
第1の実施の形態に係るモータでは、固定子63側に磁性体板71が設けられたが、第2の実施の形態に係るモータでは、固定子63から磁性体板71を除いたものを固定子64として採用する一方で、回転子31に対して磁性体板72を追加したものを回転子32として採用している。以下、第2の実施の形態に係るモータについて、主に第1の実施の形態に係るモータと異なる点について説明する。
図6及び図7は、本実施の形態に係る固定子64及び回転子32をそれぞれ概念的に示す。但し、所定の方向91に沿って分解して示している。なお、図6及び図7では、本実施の形態にかかるモータの回転軸92が付され、第1の実施の形態に係る固定子63及び回転子31と同様な部分については同様な符号が付されている。
固定子64は、第1の実施の形態に係る固定子63から磁性体板71を除いたもので、その他の部分は、第1の実施の形態に係る固定子63と同様な構成を有する。すなわち、固定子64は、コア631、及び巻線A11〜A13,B11〜B13を備え、本実施の形態に係るモータの電機子として機能する。
回転子32は、第1の実施の形態に係る回転子31に対して固定子64に対向する側に磁性体板72を追加したもので、その他の部分は、第1の実施の形態に係る回転子31と同様な構成を有する。すなわち、固定子64は、基体62、磁石621〜624、及び磁性体板72を備え、本実施の形態に係るモータの界磁子として機能する。
磁性体板72は、複数の磁性体721〜724がこの順に回転軸92の周りで周方向に沿って環状に配置されて構成されており、いずれの一の磁性体721〜724においても、当該一の磁性体は他の磁性体のいずれとも、その間に空隙721b〜724bを有する。具体的には、磁性体721は、これと隣接する磁性体722との間に空隙721bを有する。磁性体722〜724の間にも同様にして空隙722b〜724bを有する。図7では、空隙722b〜724bの各々の外郭が、磁性体板72の中心から見た動径方向に沿って延在している場合が示されている。
図8は、本実施の形態に係る磁性体板72を上面側(磁石621〜624側)から見た図である。
回転軸92の周りで周方向に沿って相互に隣接して配置された各磁性体の組が薄肉部(薄肉連結部)721c〜724c,721d〜724dによって相互に連結されている。具体的には、回転軸92に接近した内周部において複数の内周側薄肉連結部721d〜724dによって相互に連結され、回転軸92から内周側薄肉連結部721d〜724dよりも離隔した外周部において複数の外周側薄肉連結部721c〜724cによって相互に連結されている。すなわち、各空隙721b〜724bの内周側の外郭が各内周側薄肉連結部721d〜724dによって形成され、各空隙721b〜724bの外周側の外郭が各外周側薄肉連結部721c〜724cによって形成されている。このようにして、全ての磁性体721〜724が連結されることで一体の磁性体板72を形成している。
磁性体板72は、基体62とは反対側(固定子64側)から磁石621〜624に被せられ、磁心111〜114,121〜124,131〜134と空隙を介して対向する。具体的には、磁石621〜624に固定子64側から磁性体721〜724がそれぞれ被せられる。
磁性体板72が磁石621〜624に被せられることにより、回転子32において磁束が一の磁性体721〜724から他の磁性体へと短絡して流れることが低減される。これは、空隙721b〜724bにおいて磁気抵抗が増加するからである。しかも、固定子64から流れる磁束の多くが磁性体板72すなわち磁性体721〜724を介して磁石621〜624へと導かれる。よって、当該モータの駆動の効率が良くなる。
磁性体板72を磁石621〜624を被せることに代えて、磁性体721〜724の一部が例えば一体成形されたものを磁石621〜624に被せても良い。
しかしながら、磁石621〜624に磁性体721〜724をそれぞれ被せる際に磁性体板72を採用することは、磁性体板72を例えば一体成形することができ、モータの製造工程及びその構造が簡略化される点で望ましい。また、界磁用磁石の減磁耐力を増し、磁石内部の渦電流損失を低減する。なお、磁性体板は圧粉鉄心を用いると好適である。界磁子は、電機子の電流に同期して回転するため、渦電流損が鉄損の大部分を占めるからである。圧粉鉄心は、ヒステリシス損が多く、渦電流損が小さいことが特徴である。
図9には、本実施の形態に係るモータの側面図が概念的に示されている。
回転子32は、固定子64に対向する側に磁性体板72を有し、当該磁性体板72は、回転軸92に平行な方向で固定子64に対向する。具体的には、固定子64に設けられた磁心111〜114,121〜124,131〜134と距離δ2だけ離隔している。
上述した磁性体板71の空隙7111b〜7122bの幅tssl(図3)、及び磁性体板71と磁石621〜624との互いに近い面の距離δ(図3)の設定と同様に、磁性体板72の空隙721b〜724bの幅(図8)は、磁性体板72と固定子64(ここでは、磁心111〜114,121〜124,131〜134)との互いに近い面の距離δ2(図9)の2倍よりも大きいことが望ましい。
図10は、本実施の形態に係るモータにおける磁性体板72と磁心111〜114,121〜124,131〜134との位置関係を回転軸92に平行な方向に沿って基体62側から示した模式図である。磁性体板72と磁心111〜114,121〜124,131〜134とを区別するために、磁性体板72の外郭が実線、磁心111〜114,121〜124,131〜134の外郭が破線で示されている。
磁心111〜114,121〜124,131〜134は、外周側薄肉連結部721c〜724c及び内周側薄肉連結部721d〜724dと回転軸92と平行な方向に沿って対向する位置をそれぞれ避けて、磁性体板72(すなわち回転子32)と対向するように配置されている。
具体的には、磁心111〜114,121〜124,131〜134は、磁性体板72(すなわち回転子32)のうち、内周側薄肉連結部721d〜724dよりも回転軸92から離隔し、かつ外周側薄肉連結部721c〜724cよりも回転軸92に接近した部分と対向している。すなわち、固定子63に対して回転子31が回転軸92を中心として相対的に回転した場合にも、常に磁心111〜114,121〜124,131〜134と薄肉連結部721c〜724c,721d〜724dとは回転軸92と平行な方向に沿って対向しない。
上述した固定子64と回転子32とを備えたモータに係る技術によれば、回転子32に設けられた磁性体板72のうち、複数の磁性体721〜724を相互に連結する薄肉連結部721c〜724c,721d〜724dが、回転軸92に平行な方向に沿って磁心111〜114,121〜124,131〜134と対向しない。このため、薄肉連結部721c〜724c,721d〜724dに漏れ磁束が通って薄肉連結部721c〜724c,721d〜724dに吸引力が集中するような不具合を解消することができる。したがって、薄肉部における応力の集中や変形を抑制することができる。
また、回転子32に設けられた磁性体板72では、薄肉連結部721c〜724c,721d〜724dによって複数の磁性体721〜724が内周側及び外周側でそれぞれ相互に連結され、磁心111〜114,121〜124,131〜134が、内周側薄肉連結部721d〜724dよりも外周側でかつ外周側薄肉連結部721c〜724cよりも内周側で回転子32と対向する。このように磁性体板72等の径方向のサイズを調整する簡単な構成で、薄肉部における応力の集中や変形を抑制することができる。
第3の実施の形態.
図11は、本実施の形態にかかる固定子65Aを概念的に示す。但し、所定の方向91に沿って分解して示している。固定子65Aは、コア651、巻線A31〜A36及び磁性体板73Aを備える。
コア651は、板61と、複数の磁心231〜236とを備える。板61は、表面61aを有し、所定の方向91に対して垂直である。複数の磁心231〜236は、この順で表面61a上に回転軸92の周りで周方向に沿って環状に配置されており、いずれも所定の方向91に沿って突出する。
巻線A31は磁心231の周りに表面61aに沿って配置される。巻線A32〜A36についても同様にして磁心232〜236に配置される。
巻線A31〜A36の配置に際し、巻線A31〜A36の各々を上述した態様で磁心に巻回しても良いし、予め巻回された巻線A31〜A36の各々を上述した態様で磁心に嵌め込んでも良い。図11では後者の場合が示されている。例えば、巻線A31〜A36は、U相、V相、W相、U相、V相、W相の順に配置され、3相スター結線または3相デルタ結線にて結線されている。本構成は6つのコイルで4極の磁界を発生する4極の集中巻である。
第1の実施の形態の説明と同様に、巻線A31〜A36の各々が個別に絶縁体で囲まれていても良い。また、巻線A31〜A36には平角線を採用しても良い。
磁性体板73Aは、複数の磁性体731〜736がこの順に回転軸92の周りで周方向に沿って環状に配置されており、いずれの一の磁性体731〜736においても、当該一の磁性体は他の磁性体のいずれとも、その間に空隙731b〜736bを有する。具体的には、磁性体731は、これと隣接する磁性体732との間に空隙731bを有する。磁性体732〜736の間にも同様にして空隙732b〜736bを有する。図11では、空隙731b〜736bの各々の外郭が、磁性体板73Aの中心から見た動径方向に沿って延在している場合が示されている。
図12は、本実施の形態に係る磁性体板73Aを上面側(回転子32A側)から見た図である。
回転軸92の周りで周方向に沿って相互に隣接して配置された各磁性体の組が薄肉部(薄肉連結部)731c〜736c,731d〜736dによって相互に連結されている。具体的には、回転軸92に接近した内周部において複数の内周側薄肉連結部731d〜736dによって相互に連結され、回転軸92から内周側薄肉連結部731d〜736dよりも離隔した外周部において複数の外周側薄肉連結部731c〜736cによって相互に連結されている。すなわち、各空隙731b〜736bの内周側の外郭が各内周側薄肉連結部731d〜736dによって形成され、各空隙731b〜736bの外周側の外郭が各外周側薄肉連結部731c〜736cによって形成されている。このようにして、全ての磁性体731〜736が連結されて一体の磁性体板73Aを形成している。
磁性体板73Aは、表面61aとは反対側から磁心231〜236に被せられる。この際、磁性体731〜736が磁心231〜236にそれぞれ被さる。
いずれの一の磁性体731〜736においても、それが被さる一の磁心231〜236とは反対側の面731a〜736aの面積が、当該一の磁心231〜236の一の磁性体731〜736側の面31a〜36a(図11において面34aは巻線A31で隠れているため、符号34aは付されていない)の面積よりも大きい。
このようにして製造された固定子65Aの側面図が図13に示されている。図13には回転子も示されているが、これについては後述する。
上述した固定子65Aにかかる技術によれば、第1の実施の形態で説明した固定子63と同様の効果が得られる。
固定子65Aに対して、第2の実施の形態(図7)と同様な構成を有する回転子32Aを配置することで、モータを構成することができる。具体的には、図13で示されるように固定子65Aに対して回転子32Aが、板61とは反対側から磁性体板73Aに対向して配置される。つまり、回転子32Aは、固定子65Aに対向する側に磁性体板72Aを有し、当該磁性体板72Aは、回転軸92に平行な方向に沿って固定子65Aに対向する。より詳細には、固定子65Aに設けられた磁性体板73Aと距離δ3だけ離隔している。上述した第1及び第2の実施の形態と同様に、磁性体板72A,73Aの空隙721b〜724b,731b〜736bの幅は、距離δ3の2倍よりも大きいことが望ましい。
磁性体板72Aと磁性体板73Aとの位置関係は、磁性体板72Aの内半径Rrと外半径Rro、及び磁性体板73Aの内半径Rsiと外半径Rsoを適宜調整して、内半径Rrよりも内半径Rsiの方が大きく、外半径Rroよりも外半径Rsoの方が小さくなる範囲で、以下のように設定されている。
図14は、本実施の形態に係るモータにおける磁性体板72Aと磁性体板73Aとの位置関係を回転軸92と平行な方向に沿って磁石621〜624側から示した模式図である。磁性体板72Aと磁性体板73Aとを区別するために、磁性体板72Aの外郭が実線、磁性体板73Aの外郭が破線で示されている。
磁性体板73Aは、外周側薄肉連結部721c〜724c及び内周側薄肉連結部721d〜724dと回転軸92と平行な方向に沿って対向する位置をそれぞれ避けて、磁性体板72Aと対向するように配置されている。
具体的には、磁性体板73Aは、磁性体板72Aのうち、内周側薄肉連結部721d〜724dよりも回転軸92から離隔し、かつ外周側薄肉連結部721c〜724cよりも回転軸92に接近した部分と対向している。すなわち、固定子65Aに対して回転子32Aが回転軸92を中心として相対的に回転した場合にも、常に磁性体板73Aと薄肉連結部721c〜724c,721d〜724dとは回転軸92と平行な方向に沿って対向しない。
図15は、図14のX−X断面図、すなわち2つの磁性体板72A,73Aに着目して、回転軸92を含む面で切った断面図であり、図16は、磁性体板72Aの裏面(磁性体板73A側から見た面)を示す模式図である。
磁性体板72Aの裏面には、回転軸92に平行な方向に沿って磁性体板73Aの薄肉連結部731c〜736c,731d〜736dと対向する部分付近に、回転軸92を中心とした略同心円状に配置された溝部721r〜724r,721s〜724sが設けられている。具体的には、磁性体板72Aの裏面のうち、磁性体板72Aが回転軸92を中心として回転する際に磁性体板73Aの内周側薄肉連結部731d〜736dが相対的に通過する軌跡と回転軸92に平行な方向に沿って対向する部分を含む領域に溝部(内周側溝部)721s〜724sが設けられ、磁性体板72Aが回転軸92を中心として回転する際に磁性体板73Aの外周側薄肉連結部731c〜736cが相対的に通過する軌跡と回転軸92に平行な方向に沿って対向する部分を含む領域に溝部(外周側溝部)721r〜724rが設けられている。より詳細には、磁性体721に内周側溝部721sと外周側溝部721rとが設けられ、磁性体722に内周側溝部722sと外周側溝部722rとが設けられ、磁性体723に内周側溝部723sと外周側溝部723rとが設けられ、磁性体724に内周側溝部724sと外周側溝部724rとが設けられている。
なお、溝部721r〜724r,721s〜724sの断面形状は、矩形状のものに限られず、例えば、半円形状などその他の形状であっても良い。
溝部721r〜724r,721s〜724sの存在により、回転子32Aの磁性体板72Aと固定子65Aの磁性体板73Aとの間における回転軸92に平行な方向に沿った距離が、薄肉連結部731c〜736c,731d〜736d付近において、残余の部分よりも相対的に大きくなる。なお、磁性体板72Aでは、外周側溝部721r〜724rよりも外側、及び内周側溝部721s〜724sより内側は磁気的な機能は有さず、複数の磁性体721〜724を連結するための薄肉連結部721c〜724c,721d〜724dを設けるためにのみ存在する。従って、磁石621〜624は、外周側溝部721r〜724rと内周側溝部721s〜724sとの間(すなわち外周側溝部721r〜724rよりも回転軸92に近接し、かつ内周側溝部721s〜724sよりも回転軸92から離隔した位置)にあるのが良い。
上述した固定子65Aと回転子32Aとを備えたモータに係る技術によれば、固定子65Aに設けられた磁性体板73Aと回転子32Aとの間の回転軸92に平行な方向に沿った距離が、薄肉連結部731c〜736c,731d〜736d付近において他の部分よりも相対的に大きい。このような簡単な構成で、薄肉連結部731c〜736c,731d〜736dに漏れ磁束が通って薄肉連結部731c〜736c,731d〜736dに吸引力が集中するような不具合を解消することができる。すなわち、薄肉部における応力の集中や変形を抑制することができる。
また、回転子32Aにも磁性体板73Aを設け、回転子32A及び固定子65Aに設けられた磁性体板72A,73Aのそれぞれにおいて、薄肉連結部721c〜724c,721d〜724d,731c〜736c,731d〜736dによって複数の磁性体721〜724,731〜736が内周側及び外周側でそれぞれ相互に連結されている。そして、回転子32Aの磁性体板72Aが、回転子32Aの磁性体板72Aの内周側薄肉連結部721d〜724dよりも外周側でかつ外周側薄肉連結部721c〜724cよりも内周側で固定子65Aの磁性体板73Aと回転軸92と平行な方向に沿って対向している。更に、回転子32Aの磁性体板72Aのうち、固定子65Aの磁性体板73Aの薄肉連結部731c〜736c,731d〜736dと対向する部分付近に溝部721r〜724r,721s〜724sが設けられている。このような構成を採用することで、界磁子の薄肉部を電機子の磁性体板と対向させず、電機子に設けられた磁性体板と界磁子との間の回転軸と平行な方向に沿った距離を電機子の薄肉部付近において他の部分よりも相対的に大きくすることが容易に可能となる。このため、薄肉部における応力の集中や変形を容易に抑制することができる。
第4の実施の形態.
第3の実施の形態に係るモータでは、回転子32Aの磁性体板72Aの内半径Rrよりも固定子65Aの磁性体板73Aの内半径Rsiの方が大きく、磁性体板72Aの外半径Rroよりも磁性体板73Aの外半径Rsoの方が小さくなるように設定され、磁性体板72Aの裏面に溝部721r〜724r,721s〜724sが設けられた。
これに対して、第4の実施の形態に係るモータでは、第3の実施の形態に係るモータと比較して、回転子32Bの磁性体板72Bの内半径Rrよりも固定子65Bの磁性体板73Bの内半径Rsiの方が小さく、磁性体板72Bの外半径Rroよりも磁性体板73Bの外半径Rsoの方が大きくなるように磁性体板のサイズが変更され、回転子32Bの磁性体板72Bには溝部が設けられず、固定子65Bの磁性体板73Bに溝部が設けられている。以下、第4の実施の形態に係るモータについて、主に第3の実施の形態に係るモータと異なる点について説明する。
本実施の形態に係る回転子32B及び固定子65Bは、図7及び図11に示すように、第3の実施の形態に係る回転子32A及び固定子65Aと同様な構成を有している。
固定子65Bに対して、回転子32Bを配置することで、モータを構成することができる。具体的には、図17で示されるように固定子65Bに対して回転子32Bが、板61とは反対側から磁性体板73Bに対向して配置される。つまり、回転子32Bは、固定子65Bに対向する側に磁性体板72Bを有し、当該磁性体板72Bは、回転軸92に平行な方向に沿って固定子65Bに対向する。より詳細には、固定子65Bに設けられた磁性体板73Bと距離δ4だけ離隔している。上述した第1〜第3の実施の形態と同様に、磁性体板72B,73Bの空隙721b〜724b,731b〜736bの幅は、距離δ4の2倍よりも大きいことが望ましい。
磁性体板72Bと磁性体板73Bとの位置関係は、磁性体板72Bの内半径Rrと外半径Rro、及び磁性体板73Bの内半径Rsiと外半径Rsoを適宜調整して、内半径Rrよりも内半径Rsiの方が小さく、外半径Rroよりも外半径Rsoの方が大きくなる範囲で、以下のように設定されている。
図18は、本実施の形態に係るモータにおける磁性体板72Bと磁性体板73Bとの位置関係を回転軸92と平行な方向に沿って磁石621〜624側から示した模式図である。磁性体板72Bと磁性体板73Bとを区別するために、磁性体板72Bの外郭が実線、磁性体板73Bの外郭が破線で示されている。
磁性体板72Bは、外周側薄肉連結部731c〜736c及び内周側薄肉連結部731d〜736dと回転軸92と平行な方向に沿って対向する位置をそれぞれ避けて、磁性体板73Bと対向するように配置されている。
具体的には、磁性体板72Bは、磁性体板73Bのうち、内周側薄肉連結部731d〜736dよりも回転軸92から離隔し、かつ外周側薄肉連結部731c〜736cよりも回転軸92に接近した部分と対向している。すなわち、固定子65Bに対して回転子32Bが回転軸92を中心として相対的に回転した場合にも、常に磁性体板72Bと薄肉連結部731c〜736c,731d〜736dとは回転軸92に平行な方向に沿って対向しない。
図19は、図18のY−Y断面図、すなわち2つの磁性体板72B,73Bに着目して、回転軸92を含む面で切った断面図であり、図20は、磁性体板73Bの表面(回転子32B側の面)を示す模式図である。
磁性体板73Bの表面には、回転軸92に平行な方向に沿って磁性体板72Bの薄肉連結部721c〜724c,721d〜724dと対向する部分付近に、回転軸92を中心とした略同心円状に配置された溝部731r〜736r,731s〜736sが設けられている。具体的には、磁性体板73Bの表面のうち、磁性体板72Bが回転軸92を中心として回転する際に磁性体板72Bの内周側薄肉連結部721d〜724dが通過する軌跡と回転軸92に平行な方向に沿って対向する部分を含む領域に溝部(内周側溝部)731s〜736sが設けられ、磁性体板72Bが回転軸92を中心として回転する際に磁性体板72Bの外周側薄肉連結部721c〜724cが通過する軌跡と回転軸92に平行な方向に沿って対向する部分を含む領域に溝部(外周側溝部)731r〜736rが設けられている。より詳細には、磁性体731に内周側溝部731sと外周側溝部731rとが設けられ、磁性体732に内周側溝部732sと外周側溝部732rとが設けられ、磁性体733に内周側溝部733sと外周側溝部733rとが設けられ、磁性体734に内周側溝部734sと外周側溝部734rとが設けられ、磁性体735に内周側溝部735sと外周側溝部735rとが設けられ、磁性体736に内周側溝部736sと外周側溝部736rとが設けられている。
なお、溝部731r〜736r,731s〜736sの断面形状は、矩形状のものに限られず、例えば、半円形状などその他の形状であっても良い。具体的には、薄肉連結部721c〜724c,721d〜724dと磁性体板73Bとの間の距離が、常にδ(ここではδ4)を超える値であり、望ましくは2δ(ここではδ4の2倍)以上である。
溝部731r〜736r,731s〜736sの存在により、固定子65Bの磁性体板73Bと回転子32Bの磁性体板72Bとの間における回転軸92に平行な方向に沿った距離が、薄肉連結部721c〜724c,721d〜724d付近において、残余の部分よりも相対的に大きくなる。
上述した固定子65Bと回転子32Bとを備えたモータに係る技術によれば、回転子32Bに設けられた磁性体板72Bと固定子65Bとの間における回転軸92に平行な方向に沿った距離が、薄肉連結部721c〜724c,721d〜724d付近において、残余よりも相対的に大きい。このため、簡単な構成で、薄肉連結部721c〜724c,721d〜724dに漏れ磁束が通って薄肉連結部721c〜724c,721d〜724dに吸引力が集中するような不具合を解消することができる。すなわち、薄肉部における応力の集中や変形を抑制することができる。
また、固定子65Bにも磁性体板73Bを設け、回転子32B及び固定子65Bに設けられた磁性体板72B,73Bのそれぞれにおいて、薄肉連結部721c〜724c,721d〜724d,731c〜736c,731d〜736dによって複数の磁性体721〜724,731〜736が内周側及び外周側でそれぞれ相互に連結されている。そして、固定子65Bの磁性体板73Bが、回転子32Bの磁性体板73Bの内周側薄肉連結部731d〜736dよりも外周側でかつ外周側薄肉連結部731c〜736cよりも内周側で回転子32Bの磁性体板72Bと回転軸92に平行な方向に沿って対向している。更に、固定子65Bの磁性体板73Bのうち、回転子32Bの磁性体板72Bの薄肉連結部721c〜724c,721d〜724dと対向する部分付近に溝部731r〜736r,731s〜736sが設けられている。このような構成を採用することで、電機子の薄肉部を界磁子の磁性体板と対向させず、界磁子に設けられた磁性体板と電機子との間の回転軸と平行な方向に沿った距離を界磁子の薄肉部付近において他の部分よりも相対的に大きくすることが容易に可能となる。このため、薄肉部における応力の集中や変形を容易に抑制することができる。
その他.
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は上記説明した内容のものに限定されるものではない。
◎例えば、上記第3の実施の形態では、磁性体板72Aの裏面に、回転軸92に平行な方向に沿って磁性体板73Aの薄肉連結部731c〜736c,731d〜736dと対向する部分付近に、回転軸92を中心とした略同心円状に配置された溝部721r〜724r,721s〜724sが設けられていたが、これに限られず、例えば、溝部721r〜724r,721s〜724sを設ける代わりに、磁性体板73Aのうち、薄肉連結部731c〜736c,731d〜736dにおける回転軸92と平行な方向に沿った厚みが、残余の部分の厚みよりも薄く、かつ磁性体板73Aの回転子32Aに対向する面が、薄肉連結部731c〜736c,731d〜736dを含む領域において反エアギャップ側(電機子と界磁子とが短距離で対向している部分にあたる空隙の反対側、ここでは回転子32Aの反対側)に凹んだ凹み部(すなわち段差)を有するようにしても良い。このような構成によっても、磁性体板73Aと回転子32Aとの間の回転軸92に平行な方向に沿った距離を、薄肉連結部731c〜736c,731d〜736d付近において他の部分よりも相対的に大きくすることができる。
◎また、上記第4の実施の形態では、磁性体板73Bの裏面に、回転軸92に平行な方向に沿って磁性体板72Bの薄肉連結部721c〜724c,721d〜724dと対向する部分付近に、回転軸92を中心とした略同心円状に配置された溝部731r〜736r,731s〜736sが設けられていたが、これに限られず、例えば、溝部731r〜736r,731s〜736sを設ける代わりに、磁性体板72Bのうち、薄肉連結部721c〜724c,721d〜724dにおける回転軸92と平行な方向に沿った厚みが、残余の部分の厚みよりも薄く、かつ磁性体板72Bの固定子65Bに対向する面が、薄肉連結部721c〜724c,721d〜724dを含む領域において反エアギャップ側(ここでは固定子65Bの反対側)に凹んだ凹み部(すなわち段差)を有するようにしても良い。このような構成によっても、磁性体板72Bと固定子65Bとの間の回転軸92に平行な方向に沿った距離を、薄肉連結部721c〜724c,721d〜724d付近において他の部分よりも相対的に大きくすることができる。
◎また、上記第1の実施の形態では、磁石621〜624の固定子63側に磁性体が設けられていなかったが、これに限られず、例えば、図7及び図8で示す磁性体板72から薄肉連結部721c〜724c,721d〜724dを除いた磁性板721〜724が、磁石621〜624に対して固定子63側からそれぞれ被せられて、回転軸92の周りで周方向に沿って環状に配置されても良い。このとき、第1の実施の形態の磁石621〜624と同様な態様で、磁性板721〜724が、薄肉連結部7111c〜7122c,7111d〜7122dと回転軸92に平行な方向に沿って対向する位置をそれぞれ避けて、固定子63と対向するように構成されても、第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
◎また、上記第3の実施の形態では、磁性体板72Aにおいて磁性体板721〜724が薄肉連結部721c〜724c,721d〜724dによって相互に連結されていたが、これに限られず、例えば、図7及び図8で示す磁性体板72Aから薄肉連結部721c〜724c,721d〜724dを除いた磁性体板721〜724が、磁石621〜624に対して固定子65A側からそれぞれ被せられて、回転軸92の周りで周方向に沿って環状に配置されても良い。このような構成であっても、第3の実施の形態と同様に、固定子65Aに設けられた磁性体板73Aと回転子32Aとの間の回転軸92に平行な方向に沿った距離が、薄肉連結部731c〜736c,731d〜736d付近において他の部分よりも相対的に大きくなる。
◎また、上記各実施の形態に係る磁石、磁心の数については、上述したものに限られず、回転軸92の周りの周方向に沿って環状に配置される限り、適宜その数を増減させても良い。
◎また、上記第1〜第4の実施の形態では、磁性体板71,72,72A,72B,73A,73Bの空隙が、その外郭が磁性体板の中心から見た動径方向に沿って設けられていたが、これに限られず、例えば、その外郭が、磁性体板の中心から見た動径方向に対して傾いていることが、いわゆるスキューによる効果を発揮し、コギングトルクを低減する点で望ましく、このような構成を採用しても、上記第1〜第4の実施の形態と同様な効果が得られる。
また、磁性体板72,72A,72Bについては、空隙721b〜724bの幅を広くすることで、磁性体の中央へと磁束が集中し易くすることができ、ギャップ磁束密度を向上せしめ、トルクを向上させることができるとともに、上記第1〜第4の実施の形態と同様な効果も得られる。
◎また、上記第3の実施の形態では、回転子32Aに磁性体板72Aを設け、当該磁性体板72Aに溝部721r〜724r,721s〜724sを設けたが、これに限られず、例えば、図21に示すように、第3の実施の形態に係る回転子32Aから磁性体板72Aを除いた回転子33Aを採用し、図22〜図24に示すように、回転子33Aの磁石621A〜624Aのうち、固定子65Aの磁性体板73Aの薄肉連結部731c〜736c,731d〜736dと回転軸92と平行な方向に沿って対向する部分付近に外周側及び内周側溝部621r〜624r,621s〜624sを設けても、上記第3の実施の形態と同様な効果が得られる。なお、図21は、当該変形例に係るモータを概念的に示す側面図であり、図22は、磁石621A〜624Aと磁性体板73Aとの位置関係を回転軸92に沿って基体62側から示した模式図であり、図23は、図22のX'−X'断面図であり、図24は、磁石621A〜624Aを下方(固定子65A側)から見た図である。
すなわち、回転子33Aのうち、固定子65Aの磁性体板73Aの薄肉連結部731c〜736c,731d〜736dと回転軸92と平行な方向に沿って対向する付近に溝部を設ければ、電機子と界磁子との間の回転軸と平行な方向に沿った距離を薄肉連結部731c〜736c,731d〜736d付近において他の部分よりも相対的に大きくすることが容易に可能となる。その結果、薄肉部における応力の集中や変形を容易に抑制することができる。
また、回転子33Aの磁石621A〜624Aのうち、固定子65Aの磁性体板73Aの薄肉連結部731c〜736c,731d〜736dと回転軸92に平行な方向に沿って対向する部分付近に溝部を設ける代わりに、磁石を全く設けない領域を設けても良い。つまり、図25に示すように、固定子65Aの磁性体板73Aの薄肉連結部731c〜736c,731d〜736dと回転軸92と平行な方向に沿って対向する部分付近を避けるように、磁石を同心円状に配置するようにしても良い。なお、図25は、磁石の配置を下方(固定子65A側)から見た図である。
◎また、上記第4の実施の形態では、固定子65Bに磁性体板73Bを設け、当該磁性体板73Bに溝部731r〜736r,731s〜736sを設けたが、これに限られず、例えば、図26に示すように、第4の実施の形態に係る固定子65Bから磁性体板73Bを除いた固定子66Bを採用し、図27〜図29に示すように、固定子66Bの磁心231B〜236Bのうち、回転子32Bの磁性体板72Bの薄肉連結部721c〜724c,721d〜734dと回転軸92と平行な方向に沿って対向する部分付近に外周側及び内周側溝部231r〜236r,231s〜236sを設けても、上記第4の実施の形態と同様な効果が得られる。なお、図26は、当該変形例に係るモータを概念的に示す側面図であり、図27は、磁心231B〜236Bと磁性体板72Bとの位置関係を回転軸92と平行な方向に沿って基体62側から示した模式図であり、図28は、図27のY'−Y'断面図であり、図29は、磁心231B〜236Bを上方(回転子32B側)から見た図である。
すなわち、固定子66Bのうち、回転子32Bの磁性体板72Bの薄肉連結部721c〜724c,721d〜724dと回転軸92と平行な方向に沿って対向する付近に溝部を設ければ、電機子と界磁子との間の回転軸と平行な方向に沿った距離を薄肉連結部721c〜724c,721d〜724d付近において他の部分よりも相対的に大きくすることが容易に可能となる。その結果、薄肉部における応力の集中や変形を容易に抑制することができる。
◎また、上記第1〜第4の実施の形態では、単に4つの磁石621〜624を回転軸92の周りで周方向に沿って環状に配置した回転子31,32,32A,32Bを用いたが、これに限られない。例えば、図30に示すように、複数(例えば、2つ)の磁石621a,621bが、基体62の中心に設けられた軸孔PLの周囲で極性を対称(すなわちN極とS極)にして基体62上で環状に配置され、複数(例えば、2つ)の磁性体622a,622bが回転軸と平行な方向に沿って垂直に、上記複数の磁石621a,621bの隣接する各磁石間の隙間において延在して配置されるような回転子を用いても良い。なお、図30は、回転子における磁石621a,621b及び磁性体622a,622bの配置を下方(固定子側)から例示した図である。
このような回転子を用いると、逆突極性を有して所定の軸周りに回転可能な回転子として機能するため、リラクタンストルクを有効に利用でき、トルクや効率を高め、弱め磁束制御の効果を高めて運転領域を拡大することができる。
また、図30に示すような回転子に固定子側から図7で示したような磁性体板を被せる場合には、図7において各磁石621〜624に各磁性体板が被せられた態様と同様に、各磁石621a,621b及び各磁性体622a,622bにそれぞれ、相互に薄肉部によって連結された各磁性体が被さるように、磁石621a,621b及び磁性体622a,622bに固定子側から磁性体板が被せられる。上述したようなモータは何れもシングルギャップであるが、ダブルギャップ、すなわち、界磁子の両側に電機子がある形態、または、電機子の両側に界磁子がある形態にも適用可能である。このような形態においては、界磁子に働くスラスト力を、2つのギャップにてキャンセルすることができ、軸受損失の低減や軸受の長寿命化が可能である。
◎また、上述した何れのモータも、例えば圧縮機に搭載することができる。例えば図31には、第3の実施の形態にかかるモータを搭載した圧縮機の断面が示されている。図31に示される圧縮機について説明する。
圧縮機は、筒状の筐体80、吸入管81及び吐出管82を備える。吸入管81は、例えば筐体80の側面に接続される。吐出管82は、モータに対して吸入管81とは反対側に位置する。
当該筐体80内には、圧縮部84、モータ及びバランスウェイト83を有する。モータの回転軸92は筐体80が延在する方向に沿って延びる。
バランスウェイト83は、例えば回転子の固定子65Aとは反対側の面上の外径付近に載置されている。バランスウェイト83を載置することに代えて、回転子の基体62の固定子65A側に穴(これは、負のバランスウェイトと把握できる)を設けても良い。バランスウェイトを設けることに加えて、回転軸92に対して磁性体板72Aのバランスウェイト83とは反対側の部分の外径を大きくすることが望ましい。なお、実際には、バランスウエイト83と圧縮部84との間、すなわち、バランスウエイト83の反対側に、もう1つのバランスウエイトを設ける必要があるが、これは、クランク軸の根元付近のシャフトに設ける等、通常用いる技術を適用することができるため、説明は省略する。
吸入管81から吸入された冷媒は、圧縮部84においてモータの駆動により圧縮される。圧縮された冷媒は、吐出管82から排出される。
このような圧縮機によれば、冷媒等を効率良く圧縮することができる。しかも、固定子65Aと回転子との間の空隙が回転軸92に対して垂直であるので、圧縮機内に存在する潤滑油などの油が吐出管82から排出されることや、油が攪拌されることが低減される。
また、回転子に付着した油は、回転子が回転した際に遠心力によって圧縮機の側壁へと移動する。よって、吐出管82をモータに対して鉛直上方に設けた場合には、側壁に沿って油が鉛直下方へと移動し、以って吐出管82側へと油が移動することが妨げられる。
さらには、バランスウェイト83は回転子の表面の外径付近に載置されるので、バランスウェイト83の回転軸92方向への厚みを小さくすることができ、以って圧縮機が小型化される。
上述した何れのモータも、空調機に搭載して、ファンの回転に用いても良い。更には、自動車に搭載して、車輪を回転させても良い。