JP2008021879A - 端面励起微細ロッド型レーザ利得モジュール - Google Patents
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Abstract
【課題】レーザ利得媒質の冷却効率の向上と、出力されるレーザ光のビーム品質の向上とを実現可能な端面励起微細ロッド型レーザ利得モジュールを提供する。
【解決手段】端面励起微細ロッド型レーザ利得モジュール1は、矩形断面を有する微細なロッド形状のレーザ利得媒質10と、レーザ利得媒質10を冷却するヒートシンク20と、レーザ利得媒質10の端面11a、11bから励起光を入射する第1、2励起光源30、31とを備える。
ヒートシンク20は、内部に冷媒を流通させる冷却空間29を有し、レーザ利得媒質10の端面11a、11bを夫々冷却空間29の外側に露出させつつ、端面11a、11bの近傍を各々液密保持して、レーザ利得媒質10の端面11a、11bの近傍以外の部分を冷却空間29内に位置させている。レーザ利得媒質10は、対向する2つの側面12c、12dに低熱伝導材料からなる低熱伝導層50、51が形成されている。
【選択図】図1
【解決手段】端面励起微細ロッド型レーザ利得モジュール1は、矩形断面を有する微細なロッド形状のレーザ利得媒質10と、レーザ利得媒質10を冷却するヒートシンク20と、レーザ利得媒質10の端面11a、11bから励起光を入射する第1、2励起光源30、31とを備える。
ヒートシンク20は、内部に冷媒を流通させる冷却空間29を有し、レーザ利得媒質10の端面11a、11bを夫々冷却空間29の外側に露出させつつ、端面11a、11bの近傍を各々液密保持して、レーザ利得媒質10の端面11a、11bの近傍以外の部分を冷却空間29内に位置させている。レーザ利得媒質10は、対向する2つの側面12c、12dに低熱伝導材料からなる低熱伝導層50、51が形成されている。
【選択図】図1
Description
本発明は端面励起微細ロッド型レーザ利得モジュールに関する。
特許文献1に従来の端面励起微細ロッド型レーザ利得モジュールが開示されている。このレーザ利得モジュールは、矩形断面を有する微細なロッド形状のレーザ利得媒質と、レーザ利得媒質を冷却するヒートシンクと、レーザ利得媒質の長手方向にある2つの端面の少なくとも一方から励起光を入射するように配置された励起光源とを備える。
より詳しくは、レーザ利得媒質は、Nd:YAG、Yb:YAG、Yb:KYW、Yb:KGWその他のレーザ結晶からなる。その断面は、各辺の長さが0.5〜1.2mm程度であり、その長さは、20〜80mm程度である。
レーザ利得媒質としては、近年、構造が比較的単純なYb:YAG結晶が注目されている。Yb:YAG結晶は、準4準位系であり、原子量子効率(入力したエネルギーに対する出力されるエネルギーの割合)が高いことから、高効率動作が可能である。また、Yb:YAG結晶は、ホスト媒質であるYAGの熱伝導率が高いことから、励起に付随する発熱が小さく、レーザ利得媒質の発熱による悪影響を抑制することが可能であり、出力されるレーザ光のビーム品質の向上が期待できる。
ヒートシンクは、例えば、内部に水等の冷媒を流通させる冷却空間を有する銅製の箱体である。その外表面は、レーザ利得媒質の長手方向に平行な4つの側面のうちの少なくとも1つの側面に当接固定されている。ヒートシンクの外表面とレーザ利得媒質の側面とは、接着剤又はゴム等のパッキング(以下、「接着剤等」という。)により接合されている。
励起光源は、例えば、フラッシュランプ、半導体レーザ(LD)等であり、光ファイバーやレンズ等を介して、レーザ利得媒質の長手方向にある2つの端面の少なくとも一方に、斜め方向から励起光を入射するように配置されている。励起光源としては、フラッシュランプと比較して、半導体レーザの方が装置の小型化や長寿命化を図ることができるというメリットがある。また、半導体レーザは、発振スペクトルが狭いため、レーザ利得媒質の吸収スペクトル幅に重ねることで高吸収効率を得ることができることから、フラッシュランプと比較して、レーザ結晶の発熱による損失を大幅に低減することが可能である。
このような構成である従来のレーザ利得モジュールでは、励起光源からレーザ利得媒質の端面に励起光が入射されることにより、レーザ利得媒質の内側面で励起光が多重反射する。その結果、レーザ利得媒質内における励起光の伝搬距離が長くなり、強度分布が均一化されたレーザ光が発振される。こうして、このレーザ利得モジュールは、レーザ利得媒質の一方の端面からレーザ光を外部に出射することができる。
特開2004−273649号公報
しかし、上記従来のレーザ利得モジュールには、レーザ利得媒質の冷却効率及び出力されるレーザ光のビーム品質について、下記の通りの問題があった。
すなわち、このレーザ利得モジュールでは、ヒートシンクの外表面とレーザ利得媒質の側面とが接着剤等により接合されている。このため、レーザ利得媒質と冷媒との間に介在する接着剤等及びヒートシンクの外表面により熱伝導経路が長くなり、レーザ利得媒質の冷却効率を向上させることが難しかった。
また、このレーザ利得モジュールでは、ヒートシンクの外表面とレーザ利得媒質の側面との間に接着剤等を介在させて硬化させる際、接着剤等の体積が縮小し、それに伴ってレーザ利得媒質が歪み易かった。さらに、接着剤等の硬化後であっても、励起時の温度上昇により接着剤等からガス等が発生し、レーザ利得媒質が損傷する場合があった。
さらに、ヒートシンクの外表面とレーザ利得媒質の側面との間に接着剤等を均一に塗布するには高度な技術が必要であり、一度接着剤等が固化した後にはヒートシンクとレーザ利得媒質との間の位置関係の微調整が不可能であった。このため、このレーザ利得モジュールでは、ヒートシンクの外表面とレーザ利得媒質の側面とを接着剤等により接合する作業の簡略化が困難であり、接合品質がばらつき易いという問題があった。
このため、このレーザ利得モジュールでは、レーザ利得媒質の歪み、損傷又は接合品質のばらつき等に起因して、出力されるレーザ光の強度分布が歪み易い。その結果、出力されるレーザ光のビーム品質が低下してしまう不具合が生じるおそれがあった。また、この不具合を解決するために出力されるレーザ光を多数のシリンドリカルレンズ等によって複雑に熱レンズ補償しなければならず、装置の複雑化及び高騰化を招来してしまう。
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、レーザ利得媒質の冷却効率の向上と、出力されるレーザ光のビーム品質の向上とを実現可能な端面励起微細ロッド型レーザ利得モジュールを提供することを解決すべき課題としている。
発明者らは、上記問題を解決するため、検討を行った。そして、レーザ利得媒質の冷却効率の向上のためには、レーザ利得媒質の大部分をヒートシンクの冷却空間内に配置し、直接冷媒で冷却することが最も効果的であると考え、試験研究を実施した。
しかしながら、レーザ利得媒質の大部分を直接冷媒で冷却するだけでは、レーザ利得媒質の冷却効率の向上を図ることはできても、出力されるレーザ光のビーム品質が悪化するという問題に直面した。なぜなら、レーザ利得媒質が矩形断面を有する微細なロッド形状であることにより、冷媒中に浮いた状態のレーザ利得媒質の温度分布が2次元的に変化してしまうため、レーザ利得媒質の屈折率の分布も2次元的に変化するものとなり、出力されるレーザ光の強度分布も2次元的に歪んでしまう。このため、レーザ利得媒質の端面から出射されたレーザ光をやはり複数のシリンドリカルレンズ等により熱レンズ補償しなければならず、装置の複雑化及び高騰化が避けられない。さらに、熱レンズ補償しても、レーザ光の強度分布の2次元的な歪みを完全に補償することが難しい。
このため、発明者らは、レーザ利得媒質の大部分が冷媒中に浮いた状態で、レーザ利得媒質の屈折率の分布の2次元的な変化を抑制すべく鋭意研究し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の端面励起微細ロッド型レーザ利得モジュールは、矩形断面を有する微細なロッド形状のレーザ利得媒質と、該レーザ利得媒質を冷却するヒートシンクと、該レーザ利得媒質の長手方向にある2つの端面の少なくとも一方から励起光を入射するように配置された励起光源とを備えた端面励起微細ロッド型レーザ利得モジュールにおいて、
前記ヒートシンクは、内部に冷媒を流通させる冷却空間を有し、前記レーザ利得媒質の2つの前記端面を夫々該冷却空間の外側に露出させつつ、該端面の近傍を各々液密保持して、該レーザ利得媒質の該端面の近傍以外の部分を該冷却空間内に位置させるものであり、
該レーザ利得媒質は、長手方向に平行な4つの側面のうち、対向する2つの該側面に低熱伝導材料からなる低熱伝導層が形成されていることを特徴とする。
前記ヒートシンクは、内部に冷媒を流通させる冷却空間を有し、前記レーザ利得媒質の2つの前記端面を夫々該冷却空間の外側に露出させつつ、該端面の近傍を各々液密保持して、該レーザ利得媒質の該端面の近傍以外の部分を該冷却空間内に位置させるものであり、
該レーザ利得媒質は、長手方向に平行な4つの側面のうち、対向する2つの該側面に低熱伝導材料からなる低熱伝導層が形成されていることを特徴とする。
このような構成である本発明の端面励起微細ロッド型レーザ利得モジュールでは、励起光源からレーザ利得媒質の端面に励起光が入射されることにより、レーザ利得媒質の内側面で励起光が多重反射する。その結果、レーザ利得媒質内における励起光の伝搬距離が長くなり、強度分布が均一化されたレーザ光が発振される。こうして、このレーザ利得モジュールは、レーザ利得媒質の一方の端面からレーザ光を外部に出射することができる。
ここで、このレーザ利得モジュールにおいて、ヒートシンクは、内部に冷媒を流通させる冷却空間を有し、レーザ利得媒質の2つの端面を夫々冷却空間の外側に露出させつつ、端面の近傍を各々液密保持して、レーザ利得媒質の端面の近傍以外の部分を冷却空間内に位置させるものである。つまり、レーザ利得媒質は、ヒートシンクに両端支持された状態で冷却空間内の冷媒中に浮いた状態となる。そして、レーザ利得媒質は、長手方向に平行な4つの側面のうち、対向する2つの側面に低熱伝導材料からなる低熱伝導層が形成されている。このため、このレーザ利得モジュールは、レーザ利得媒質の長手方向に平行な4つの側面のうち、低熱伝導層が形成されていない2つの側面を直接冷媒で冷却することができ、その結果、レーザ利得媒質の冷却効率の向上を図ることができる。
この際、レーザ利得媒質は、低熱伝導層の効果により、低熱伝導層が形成されている2つの側面から冷媒に熱が伝わり難くなっている。このため、レーザ利得媒質の断面における温度分布は、中央の温度が最も高く、直接冷媒に接する2つの端面の温度が最も低いという1次元的な温度分布になる。このため、冷媒中に浮いた状態のレーザ利得媒質の屈折率の分布は1次元的に変化することとなり、レーザ利得媒質の端面から出射されたレーザ光を1つのシリンドリカルレンズにより熱レンズ補償することが可能となる。このため、このレーザ利得モジュールは、装置の簡略化及び低廉化が可能となる。
また、このレーザ利得モジュールは、従来のレーザ利得モジュールと異なり、ヒートシンクの外表面とレーザ利得媒質の側面とを接着剤等により接合していないことから、接着剤等によるレーザ利得媒質の歪み、損傷又は接合品質のばらつきといった不具合も生じず、その結果、出力されるレーザ光のビーム品質も向上する。
したがって、本発明の端面励起微細ロッド型レーザ利得モジュールは、レーザ利得媒質の冷却効率の向上と、出力されるレーザ光のビーム品質の向上とを実現可能である。
なお、特開2002−198596号公報に開示されている固体レーザ装置は、長方形断面を有するスラブ型レーザ利得媒質の長辺側の2つの側面を直接冷媒で冷却するものであり、レーザ利得媒質の短辺側の2つの側面のほぼ全面が断熱体を介して支持体により拘束支持されている。また、励起光は、レーザ利得媒質の長辺側の2つの側面から入射される構成である。このため、レーザ利得媒質の端面から励起光を入射し、レーザ利得媒質が両端支持されて冷媒中に浮いた状態となっている本発明のレーザ利得モジュールとは、構成が異なる。本発明のレーザ利得モジュールは、上述の構成により、この文献に開示された固体レーザ装置よりも装置の簡略化及び低廉化が可能である。
低熱伝導層を構成する材料としては、アクリル、ガラスその他の低熱伝導材料を採用することができる。それらの中でも、ガラスが比較的高い耐熱性を有することから特に好ましい。また、レーザ利得媒質に低熱伝導層を形成する方法としては、コーティングや、接着剤による接合等の一般的な方法を採用することができる。
ヒートシンクは、内部に冷媒を流通させる冷却空間を有し、レーザ利得媒質の2つの端面を夫々冷却空間の外側に露出させつつ、端面の近傍を各々液密保持して、レーザ利得媒質の端面の近傍以外の部分を冷却空間内に位置させるものであれば、どのような形状、材質のものでもかまわない。例えば、冷媒は、レーザ利得媒質の長手方向に沿って冷却空間内を流通するようにしてもよいし、レーザ利得媒質の長手方向と直交する方向に流通するようにしてもよい。さらに、冷媒は、レーザ利得媒質の長手方向と直交する方向であって、低熱伝導層が形成されていない2つの側面と平行な方向又は直交する方向に流通するようにしてもよい。
レーザ利得媒質としては、4準位系であるNd:YAG、Nd:YLF、Nd:YBO4や、準4準位系であるYb:YAG、Yb:KGW、Yb:KYW等のレーザ結晶を採用することができる。
本発明の端面励起微細ロッド型レーザ利得モジュールにおいて、前記レーザ利得媒質は、準4準位レーザ結晶からなることが好ましい。準4準位系であるYb:YAG結晶は、上述の通り、原子量子効率が高いことから、高効率動作が可能であり、ホスト媒質であるYAGの熱伝導率が高いことから、励起に付随する発熱が小さく、出力されるレーザ光のビーム品質の向上が期待できる。
冷媒としては、一般的な水や液体窒素等を採用することができるが、特に、本発明の端面励起微細ロッド型レーザ利得モジュールにおいて、前記冷媒が水であることが好ましい。この場合、常温での水の循環冷却によりレーザ利得モジュールを冷却することができるので、装置の低廉化が可能となる。また、レーザ利得モジュールに全反射用のコーティングをする必要もなくなる。
本発明の端面励起微細ロッド型レーザ利得モジュールにおいて、前記レーザ利得媒質は、断面が1.0mm×1.0mm以下の略正方形断面であることが好ましい。
発明者らは、この条件において、本発明の効果を確認している。このような大きさである矩形断面を有する微細なロッド形状のレーザ利得媒質を採用することにより、レーザ利得モジュールの簡略化及び小型化をより確実に実現できる。
以下、本発明を具体化した実施例1を図面を参照しつつ説明する。なお、図1〜図3において、右側が前方であり、左側が後方である。
図1〜図5に示すように、実施例1の端面励起微細ロッド型レーザ利得モジュール1は、レーザ利得媒質10と、レーザ利得媒質10を冷却するヒートシンク20と、第1励起光源30及び第2励起光源31とを備える。
レーザ利得媒質10は、準4準位系であるYb:YAG結晶レーザ結晶からなり、矩形断面を有する微細なロッド形状とされている。その断面の各辺の長さは、1.0mmであり、その長さは、30mmである。また、レーザ利得媒質10は、長手方向に平行な4つの側面12a〜12dのうち、水平方向で対向する2つの側面12c、12dに詳細を後述する低熱伝導層50、51が形成されている。
ヒートシンク20は、図2から図4に詳しく示すように、内部に冷媒としての水を流通させる冷却空間29を有する銅製の箱体である。
ヒートシンク20の上面20aには、冷媒を冷却空間29の上方に流入させる流入孔21a、21bが配設され、ヒートシンク20の下面20bには、冷媒を冷却空間29の下方から流出させる流出孔22a、22bが配設されている。そして、冷媒循環装置(図示しない)が流入孔21a、21b及び流出孔22a、22bに接続されており、冷却空間29内の上方から下方に冷媒を流通させ、レーザ利得媒質10を冷却することが可能となっている。なお、冷却空間29内を流通する冷媒としての水の温度は、常温程度でも充分にレーザ利得媒質10を冷却することができる。
ヒートシンク20の前面20cの中央には、レーザ利得媒質10の前方の端面11aを挿通させて、端面11aを冷却空間29の前方外側に露出させた状態とする挿通孔20eが形成され、ヒートシンク20の後面20dの中央には、レーザ利得媒質10の後方の端面11bを挿通させて、端面11bを冷却空間29の後方外側に露出させた状態とする挿通孔20fが形成されている。
これによりヒートシンク20は、レーザ利得媒質10の2つの端面11a、11bを挿通孔20e、20fを介して夫々冷却空間29の外側に露出させつつ、端面11a、11bの近傍を各々液密保持して、レーザ利得媒質10の端面11a、11bの近傍以外の部分を冷却空間29内に位置させている。つまり、レーザ利得媒質10は、ヒートシンク20の前面20c及び後面20dに両端支持された状態で冷却空間29内の冷媒中に浮いた状態となっている。なお、端面11a、11bの近傍を各々液密保持する方法としては、接着剤、シーラント、ゴムパッキン、その他の一般的なシール材料等を使用することができる。
第1励起光源30は、図1に示すように、半導体レーザ30aと光ファイバ30bとレンズ30c、30dとを備え、レーザ利得媒質10の長手方向にある前方の端面11aに励起光を斜め方向から入射するように配置されている。第2励起光源31は、半導体レーザ31aと光ファイバ31bとレンズ31c、31dとを備え、レーザ利得媒質10の長手方向にある後方の端面11bに、励起光を斜め方向から入射するように配置されている。
低熱伝導層50、51は、図1、図4及び図5に示すように、ガラスからなる矩形断面の微細なロッド形状のものがレーザ利得媒質10の水平方向で対向する2つの側面12c、12dに、接着、圧着等の手段で接合されることによって形成されている。低熱伝導層50、51は、断面が1.0×1.0mmの矩形断面であり、長さはレーザ利得媒質10の冷却空間29内に位置する部分の長さとほぼ同じである。このため、低熱伝導層50、51は、レーザ利得媒質10の水平方向で対向する側面12c、12dの全域を覆っている。
このような構成である実施例1のレーザ利得モジュール1では、図1に示すように、第1、2励起光源30、31からレーザ利得媒質10の端面11a、11bに励起光が入射されることにより、レーザ利得媒質10の内側面で励起光が多重反射する。その結果、レーザ利得媒質10内における励起光の伝搬距離が長くなり、強度分布が均一化されたレーザ光が発振される。こうして、このレーザ利得モジュール1は、レーザ利得媒質10の後方の端面11bからレーザ光70を外部に出射することが可能となっている。
ここで、実施例1のレーザ利得モジュール1において、ヒートシンク20は、内部に冷媒を流通させる冷却空間29を有し、レーザ利得媒質10の2つの端面11a、11bを夫々冷却空間29の外側に露出させつつ、端面11a、11bの近傍を各々液密保持して、レーザ利得媒質10の端面11a、11bの近傍以外の部分を冷却空間29内に位置させている。つまり、レーザ利得媒質10は、ヒートシンク20の前面20c及び後面20dに両端支持された状態で冷却空間29内の冷媒中に浮いた状態となっている。そして、レーザ利得媒質10は、水平方向で対向する2つの側面12c、12dに低熱伝導材料であるガラスからなる低熱伝導層50、51が形成されている。このため、このレーザ利得モジュール1は、レーザ利得媒質10における低熱伝導層50、51が形成されていない2つの側面12a、12bを直接冷媒で冷却することができており、その結果、レーザ利得媒質10の冷却効率の向上を図ることができている。
この際、レーザ利得媒質10は、低熱伝導層50、51の効果により、低熱伝導層50、51が形成されている2つの側面12c、12dから冷媒に熱が伝わり難くなっている。このため、レーザ利得媒質10の断面における温度分布は、中央の温度が最も高く、直接冷媒に接する2つの端面12a、12d側の温度が最も低いという上下方向で1次元的に変化する温度分布となり、水平方向では、温度変化が生じ難くなっている。このため、冷媒中に浮いた状態のレーザ利得媒質10の屈折率の分布は、1次元的に変化する(つまり、上下方向に変化する)こととなり、レーザ利得媒質10の端面11bから出射されたレーザ光70を1つのシリンドリカルレンズ(図示しない)により熱レンズ補償することが可能となっている。このため、このレーザ利得モジュール1は、装置の簡略化及び低廉化が可能となっている。
また、このレーザ利得モジュール1は、従来のレーザ利得モジュールと異なり、ヒートシンク20の外表面とレーザ利得媒質10のすくなくとも1つの側面とを接着剤等により接合していないことから、ヒートシンク20の外表面と接着することによるレーザ利得媒質10の歪み、損傷又は接合品質のばらつきといった不具合も生じなくなっており、その結果、出力されるレーザ光70のビーム品質も向上する。
ここで、図6に示すマッハツェダー干渉計によって、実施例1のレーザ利得モジュール1の結晶内温度分布および温度上昇を測定した。具体的には、図2〜図4に示すヒートシンク20で冷却された状態のレーザ利得媒質10を図6に示すマッハツェダー干渉計にセットして、CCDカメラで干渉縞を測定した。その結果、図7に示すように、上下方向で1次元的に変化し、水平方向ではほぼ変化が生じていない横縞状の干渉縞が得られた。これに対して、ヒートシンクの外表面とレーザ利得媒質の少なくとも一つの側面とを接着した従来のレーザ利得モジュールを同様に評価したところ、図8に示すように、上下方向及び水平方向で2次元的に変化する干渉縞が得られた。これらの結果から、実施例1のレーザ利得モジュール1は、従来のレーザ利得モジュールとは異なり、レーザ利得媒質10の屈折率の分布が1次元的に変化していることが解る。
したがって、実施例1の端面励起微細ロッド型レーザ利得モジュール1は、レーザ利得媒質の冷却効率の向上と、出力されるレーザ光のビーム品質の向上とを実現することができている。
また、このレーザ利得モジュール1において、レーザ利得媒質10は、準4準位レーザ結晶からなっている。そして、準4準位系であるYb:YAG結晶は、原子量子効率が高いことから、高効率動作が可能であり、ホスト媒質であるYAGの熱伝導率が高いことから、励起に付随する発熱が小さく、出力されるレーザ光のビーム品質の向上が可能となっている。
さらに、このレーザ利得モジュール1において、冷媒が水であることから、常温での水の循環冷却によりレーザ利得モジュール1を冷却することができているので、装置の低廉化が可能となっている。また、レーザ利得モジュール1に全反射用のコーティングをする必要もなくなっている。
また、このレーザ利得モジュール1において、レーザ利得媒質は、断面が1.0mm×1.0mm以下の略正方形断面である。このような大きさである矩形断面を有する微細なロッド形状のレーザ利得媒質10を採用していることにより、レーザ利得モジュール1の簡略化及び小型化をより確実に実現できている。
以上において、本発明を実施例1に即して説明したが、本発明は上記実施例1に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
本発明は端面励起微細ロッド型レーザ利得モジュールに利用可能である。
1…端面励起微細ロッド型レーザ利得モジュール
10…レーザ利得媒質
12a、12b、12c、12d…レーザ利得媒質の長手方向に平行な側面
11a、11b…レーザ利得媒質の長手方向にある端面
20…ヒートシンク
29…冷却空間
30、31…励起光源(30…第1励起光源、31…第2励起光源)
50、51…低熱伝導層
10…レーザ利得媒質
12a、12b、12c、12d…レーザ利得媒質の長手方向に平行な側面
11a、11b…レーザ利得媒質の長手方向にある端面
20…ヒートシンク
29…冷却空間
30、31…励起光源(30…第1励起光源、31…第2励起光源)
50、51…低熱伝導層
Claims (4)
- 矩形断面を有する微細なロッド形状のレーザ利得媒質と、該レーザ利得媒質を冷却するヒートシンクと、該レーザ利得媒質の長手方向にある2つの端面の少なくとも一方から励起光を入射するように配置された励起光源とを備えた端面励起微細ロッド型レーザ利得モジュールにおいて、
前記ヒートシンクは、内部に冷媒を流通させる冷却空間を有し、前記レーザ利得媒質の2つの前記端面を夫々該冷却空間の外側に露出させつつ、該端面の近傍を各々液密保持して、該レーザ利得媒質の該端面の近傍以外の部分を該冷却空間内に位置させるものであり、
該レーザ利得媒質は、長手方向に平行な4つの側面のうち、対向する2つの該側面に低熱伝導材料からなる低熱伝導層が形成されていることを特徴とする端面励起微細ロッド型レーザ利得モジュール。 - 前記レーザ利得媒質は、準4準位レーザ結晶からなる請求項1記載の端面励起微細ロッド型レーザ利得モジュール。
- 前記冷媒が水である請求項1又は2記載の端面励起微細ロッド型レーザ利得モジュール。
- 前記レーザ利得媒質は、断面が1.0mm×1.0mm以下の略正方形断面である請求項1乃至3のいずれか1項記載の端面励起微細ロッド型レーザ利得モジュール。
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JP2006193287A Pending JP2008021879A (ja) | 2006-07-13 | 2006-07-13 | 端面励起微細ロッド型レーザ利得モジュール |
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Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN102394463A (zh) * | 2011-11-18 | 2012-03-28 | 中国工程物理研究院应用电子学研究所 | 一种激光器用晶体的冷却系统 |
CN103050881A (zh) * | 2012-09-25 | 2013-04-17 | 武汉立德激光有限公司 | 高单脉冲峰值功率高重复频率的半导体双端面泵浦的yag绿激光器 |
KR101765447B1 (ko) * | 2015-07-13 | 2017-08-07 | 한국원자력연구원 | 고체 레이저 광펌핑 매질 온도차 조정 시스템 및 방법 |
CN113140950A (zh) * | 2021-03-29 | 2021-07-20 | 常州莱特康光电科技有限公司 | 激光增益单元、激光增益单元的制作方法及激光增益模块 |
US11349274B2 (en) | 2018-10-16 | 2022-05-31 | Lumentum Operations Llc | Amplifier assembly |
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2006
- 2006-07-13 JP JP2006193287A patent/JP2008021879A/ja active Pending
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CN113140950A (zh) * | 2021-03-29 | 2021-07-20 | 常州莱特康光电科技有限公司 | 激光增益单元、激光增益单元的制作方法及激光增益模块 |
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