JP3154689B2 - 半導体レーザ励起スラブ固体レーザ装置 - Google Patents

半導体レーザ励起スラブ固体レーザ装置

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JP3154689B2
JP3154689B2 JP14379998A JP14379998A JP3154689B2 JP 3154689 B2 JP3154689 B2 JP 3154689B2 JP 14379998 A JP14379998 A JP 14379998A JP 14379998 A JP14379998 A JP 14379998A JP 3154689 B2 JP3154689 B2 JP 3154689B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は半導体レーザ装置を
励起源とし且つスラブ型結晶を用いた半導体レーザ励起
スラブ固体レーザ装置に関し、特に、100W級の半導
体レーザ励起固体レーザ装置を実現する場合に適用して
有用なものである。
【0002】
【従来の技術】加工用の赤外域固体レーザ装置として
は、従来、ランプ励起固体レーザ装置が開発され商品化
されている。
【0003】1μm帯を有する波長は石英ファイバ(光
ファイバ)の透過特性の最低損失域に存在するため、波
長が1μm近傍の高出力固体レーザビームの光ファイバ
伝送が可能となり、狭隘部の加工、3次元加工、遠距離
での加工、放射線環境下での加工が可能である。例え
ば、固体レーザ装置であるNd:YAGレーザ装置の発
振波長は1.064 μmであるため、このYAGレーザ装置
のレーザビームを光ファイバで伝送して、上記のような
各種の加工を行うことができる。
【0004】また、ガスレーザ加工で用いられる門型の
加工機のみならず、光ファイバの先端をロボットアーム
に接続することにより、固体レーザ装置によるレーザ加
工のフレキシビリティは拡大する。更には、レーザ加工
のみならず、その他の工業分野や、医療、計測分野での
固体レーザ装置の利用が期待されている。
【0005】ところで、ランプ励起固体レーザ装置は励
起ランプの全周から放射される光を反射円筒鏡で固体結
晶へ集光することにより、この光が固体結晶中にドープ
されたレーザ媒質に吸収されてレーザ媒質が光励起する
ものであり、前記励起ランプと固体結晶とで構成される
レーザヘッドと、このレーザヘッドを挟んで対向するよ
うに配置された一対の反射ミラー(部分透過の出力ミラ
ーと全反射ミラー)で構成される共振器とを組み合わせ
ることによって、光励起されたレーザ媒質からのレーザ
発振を可能としたものである。
【0006】しかし、このような従来のランプ励起固体
レーザ装置では、励起ランプの放射光は幅の拡い波長分
布を有しておりレーザ発振(固体レーザ媒質の励起)に
必要な波長成分は極わずかであるため、発振効率が悪い
ということが問題点の一つであった。また、励起ランプ
の寿命が短いために、励起ランプの交換等のメンテナン
スを頻繁に行う必要があることも問題点であった。
【0007】そこで、近年、半導体レーザ(Laser Diod
e ;以下LDとも称する)装置の開発の進展と共にLD
装置を励起源とした固体レーザ装置の開発が進み、この
LD励起固体レーザ装置が上記従来のランプ励起固体レ
ーザ装置の問題点を解決することができる固体レーザ装
置として注目されている。即ち、励起源をランプに代え
てLD装置とすることにより、この励起源LD装置の発
振波長を固体レーザ媒質の吸収波長に同調させることが
可能であるため、励起源LD装置からの励起光エネルギ
ーが固体レーザ媒質の励起に100%程度寄与して、固
体レーザ媒質の励起効率が増加する。
【0008】このため、LD励起固体レーザ装置は従来
のランプ励起固体レーザ装置に比べて高効率発振が可能
となり、また、励起源が固体素子化できるため長寿命化
も可能となる。従って、LD励起固体レーザ装置は次世
代レーザとしての期待が大きい。しかし、現在、実用化
に至っているのはレーザ出力が数W〜数10Wのもので
あるため、更に高出力なLD励起固体レーザ装置の実用
化が望まれている。
【0009】そこで、更に高出力なLD励起固体レーザ
装置を開発するには、大きな2つの課題がある。第1の
課題は励起源LD装置の高出力化であり、第2の課題は
固体レーザビームの高品質化である。具体的には次の通
りである。
【0010】 第1課題(励起源LD装置の高出力
化)について 一つのLD素子から取り出せるレーザ出力には限界があ
り、LD発光端面の光損傷以上にはレーザ出力を取り出
せない。例えば100Wの固体レーザビームを発振させ
るには、光−光変換効率を20%とすると500Wのレ
ーザ出力を取り出せる励起源LD装置が必要になるが、
現状、一つのLD素子ではこのようなレーザ出力を得る
ことはできず、一つのLD素子で得られるのは数Wであ
る。そこで、何らかの方法によって励起源LD装置の高
出力化を図る必要があるが、現在主流となっているの
は、一次元LDアレイ素子を二次元アレイ状に集積し
(二次元LDアレイ素子)、この集積したLD素子数分
のレーザ出力を合計して高出力化を図るという方法であ
る。
【0011】しかし、この方法で問題となるのは、二次
元LDアレイ素子を構成する各一次元LDアレイ素子の
冷却方法である。つまり、LD素子の電気−光変換効率
は100%ではなく略50%であり、LD素子に供給さ
れた電力の略50%は熱となる。そして、LD素子の発
振波長には温度依存性があり、例えばAlGaAs一次
元LDアレイ素子では発振波長が1℃当たり0.3nm
変化する。
【0012】二次元LDアレイ素子を構成する各一次元
LDアレイ素子の冷却が均一で温度上昇が均一であれ
ば、後述する特開平9−181376号公報に開示され
ているように、この温度上昇に応じた発振スペクトルの
波長シフト量を考慮して一次元LDアレイ素子を選択す
ることによって固体レーザ媒質の吸収波長(YAGレー
ザ媒質では808〜809nm)に同調させることがで
きる。しかし、各一次元LDアレイ素子の冷却が均一で
なく、LD素子温度に例えば10℃のばらつきが存在す
ると、上記の温度依存性から、発振波長として3nmの
ばらつきが存在することになるため、一部の一次元LD
アレイ素子の発振波長が固体レーザ媒質の吸収波長から
逸脱することになり、LD励起固体レーザ装置の発振効
率の低下につながる。従って、二次元LDアレイ素子を
構成する各一次元LDアレイ素子を均一に冷却すること
が必要になる。
【0013】そこで、かかる課題の解決を目的とした固
体レーザ励起用LD装置が、特開平9−181376号
公報に開示されている。この励起源LD装置について、
図面に基づき以下に説明する。図22は従来の励起源L
D装置の斜視図、図23及び図24は前記励起源LD装
置の製造プロセスを示す工程図である。
【0014】図22に示すように、水路16aを有する
マイクロチャンネル16が多数積み上げられると共に、
これらのマイクロチャンネル16の間に、絶縁体17と
一次元LDアレイ素子1とが重なり合わないように平面
的に並べて介装され、また、マイクロチャンネル16と
一次元LDアレイ素子1とが電気的及び物理的に接着さ
れており、このことによって、多数の一次元LDアレイ
素子1からなる二次元LDアレイ素子が構成され、且
つ、多数のマイクロチャンネル16からなるパラレルの
直接冷却構造が構成されている。
【0015】更に、積層されたマイクロチャンネル16
の両側面(水路16aの入口側及び出口側)には、絶縁
材からなるマニホールド18,19が一直に取り付けら
れている。また、一次元LDアレイ素子1の上下面には
図示しない電極(陽極、陰極)がそれぞれ配置されてい
る。なお、一次元LDアレイ素子1は例えば数μm×数
100μmの断面積を持った数10個の活性媒質を一次
元に配列したものである。
【0016】また、マイクロチャンネル16と一次元L
Dアレイ素子1とを接着する接着剤としては導電性の高
い材料が用いられる。マイクロチャンネル16は導電性
の材料で一体物として成形されて接合部はなく、その水
路16aは冷却水を一方向にのみ通過させる単一流路で
ある。なお、図22中の7,8は駆動電流の流入方向と
流出方向、9,10は冷却水の注入方向と注出方向であ
る。
【0017】ここで、励起源LD装置2の製造プロセス
を図23及び図24に基づいて説明する。
【0018】まず、図23(a)に示すように、マイク
ロチャンネル16を水平に置き、更に、図23(b)に
示すように、マイクロチャンネル16上の一次元LDア
レイ素子1が設置されるスペース以外の面には絶縁シー
ト(商品名:カプトン、厚さ0.3 mm)17を貼付し、
一次元LDアレイ素子1が設置されるスペースにはイン
ジウムシート(11mm×6mm×0.01mm)21を配
置する。
【0019】次に、図23(c)に示すように、インジ
ウムシート21の上に一次元LDアレイ素子1を積層
し、更に、図23(d)に示すように、一次元LDアレ
イ素子1の上にインジウムシート21を積層する。続い
て、図23(e)に示すように、一次元LDアレイ素子
1及びインジウムシート21を間に挟んでマイクロチャ
ンネル16を積層する。同様のプロセスを繰り返すこと
により、固体レーザ媒質を励起するのに必要な分だけの
一次元LDアレイ素子1等を積層して、二次元LDアレ
イ素子を構成すると共にマイクロチャンネル群からなる
パラレルの直接冷却構造を構成する。
【0020】その後、図24(a)に示すように、この
積層したもの(例えば42スタック、180mmのも
の)を、水路方向と垂直な面の合せを行った後、二つの
支持ブロック23で挟み、この支持ブロック23の両端
にボルト25を貫通し、このボルト25にナット24を
螺合して締め付ける。この締め付けトルクはLD素子内
の多層膜等を圧力により損傷させないように管理され
る。
【0021】更に、図24(b)に示すように、これら
をホットプレート等の加熱板26に載せて、N2 +H2
雰囲気中で200℃まで加熱し、融点156℃のインジ
ウムシート21を溶融させ、その後、加熱を停止して冷
却することにより、インジウムシート21を再び固化し
て導電性接着剤として機能させる。かくして励起源LD
装置2の本体部が製造される。同様にして、この励起源
LD装置本体部を2セット分を作成する。最後に、図2
4(c)に示すように、アクリル又はテフロンよりなる
マニホールド18,19を、マイクロチャンネル群の入
口側の面と出口側の面とにそれぞれ接着する。
【0022】従って、上記構成の励起源LD装置2で
は、図22に示すように、矢印9方向よりマニホールド
18内に冷却水が供給されると、この冷却水はマニホー
ルド18から各マイクロチャンネル16の水路16aに
分流して並列的に流れた後、マニホールド19内で集合
して矢印10方向に排出される。即ち、各マイクロチャ
ンネル16に対して冷却水がほぼ同一距離を同一時間で
同一方向に流れるため、この均一な冷却水によって、各
マイクロチャンネル16の間に介装された各一次元LD
アレイ素子1を均一に冷却することができる。このた
め、励起源LD装置2の発振特性がそろい、LD励起固
体レーザ装置の発振効率が向上して高出力化が図れる。
【0023】 第2課題(固体レーザビームの高品質
化)について 固体レーザビームの高品質化では、従来、固体結晶とし
てロッド型結晶が用いられてきた。例えば、YAGレー
ザ装置では図25に示すようなロッド型YAG結晶31
が用いられてきた。この場合、図25(a)に示すよう
に、ロッド型YAG結晶31の全周に励起光34を照射
して、ロッド型YAG結晶31の長手方向に固体レーザ
ビーム33を発振するようにする。また、ロッド型YA
G結晶31の全周を冷却水によって冷却する。
【0024】しかし、ロッド型YAG結晶31を用いて
高出力発振を行うと、図25(b)に示すように、ロッ
ド型YAG結晶31内に径方向の温度分布を生起し、こ
のことによって図25(c)に示すように、ロッド型Y
AG結晶31内の熱レンズ効果により、共振器32(部
分透過の反射ミラー33aと全反射ミラー32b)から
取り出したYAGレーザビーム33の発散角θが増大す
る。その結果、レーザビームの特徴の一つである指向性
が劣化し、レーザビームの輝度(ビーム径×ビーム拡が
りの立体角)が低下する。このため、レーザビームの各
種応用に際しても、空間の長距離伝搬性や高エネルギー
密度化といったレーザビームの特徴を最大限に生かすこ
とができなくなる。
【0025】従って、高出力の固体レーザビームが発振
可能であって、しかも、固体レーザビームの高品質化が
可能となるような対策が必要である。そこで、この対策
としてスラブ型結晶が用いられる。即ち、LD励起に限
らずランプ励起でも開発されているスラブ型結晶を用
い、このスラブ型結晶においてジグザグ光路伝搬による
熱レンズ光学補償を行うことにより、発散角の拡がりを
抑えた高品質の固体レーザビームを取り出すことが可能
となる。
【0026】つまり、図26に示すように、YAGレー
ザ装置では横断面が矩形状のスラブ型YAG結晶41を
用いる。図26(a)に示すように、スラブ型YAG結
晶41の両側面41a,41bに半導体レーザビーム等
の励起光34を照射して、スラブ型YAG結晶41の長
手方向にYAGレーザビーム42を発振するようにす
る。また、スラブ型YAG結晶41の両側面41a,4
1bを冷却水によって冷却する。
【0027】この場合、図26(b)に示すように板厚
t方向に温度分布を生じるが、図26(c)に示すよう
にスラブ型YAG結晶41内では、光が板厚t方向に反
射して往復するジグザグ光路となるため、スラブ型YA
G結晶41内の熱レンズ効果による影響が平均化され
て、共振器43(部分透過の反射ミラー43aと全反射
ミラー43b)から取り出したYAGレーザビーム42
の発散角θは小さくなる。
【0028】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来技術では、LD励起スラブ固体レーザ装置の高出力化
を図るには、励起源LD装置の冷却や、固体レーザ装置
の励起(半導体レーザビームの照射)や、スラブ型結晶
の冷却に関して、まだ、次のようないくつかの課題があ
る。
【0029】 励起源LD装置の冷却に関する課題 図22に示す従来の励起源LD装置2では、冷却水が各
マイクロチャンネ16の水路16a内に流入したとき、
冷却水の流れに乱れを生じ、また、その乱れ具合も各水
路16aごとに異なる。更には、入口側のマニホールド
18内における冷却水の速度分布が均一ではない。即
ち、中央部の主流と両側の流れとの速度差が比較的大き
い(主流の流速>両側の流速)。しかも、マニホールド
18の両側面付近では、この側面との摩擦で冷却水の流
速が低下することによって境界層が発生する。
【0030】これらのことは、各マイクロチャンネル1
6の水路16aを流れる冷却水の流速分布の不均一を招
き、その結果、各一次元LDアレイ素子1の温度にばら
つきが生じて、各一次元LDアレイ素子1の発振特性の
ばらつきを招くことになり、ひいてはLD励起スラブ固
体レーザ装置の出力低下につながる。
【0031】 固体レーザ装置の励起(半導体レーザ
ビームの照射)に関する課題 例えば図27に示すように励起源LD装置2(図22参
照)から発振される半導体レーザビームをスラブ型YA
G結晶41に照射して励起させる場合、詳細は後述する
が、ジグザグ光路伝搬による熱レンズ光学補償が有効に
行われて高品質のYAGレーザビーム42を得るために
は、スラブ型YAG結晶41の厚み方向の温度分布は中
心部をピークとした対称の温度分布(図26(b)参
照)とし、側面幅方向や長手方向の温度分布は均一とす
る必要があるが、そのためには、半導体レーザビームを
単にスラブ型YAG結晶41の両側面41a,41bに
照射するだけではなく、半導体レーザビームの照射幅に
ついても考慮する必要がある。
【0032】また、半導体レーザビームの拡がりや反射
(透過板からの反射;詳細後述)のために半導体レーザ
ビームの一部或いは全部がスラブ型結晶に照射されない
場合には、LD励起スラブ固体レーザ装置は発振効率が
低下する或いは発振しなくなる。更には、半導体レーザ
ビームが励起源LD装置にダイレクトに反射してくる
と、励起源LD装置に悪影響を及ぼすことにもなる。従
って、このような半導体レーザビームの拡がりや反射に
着目して、半導体レーザビームの照射部の構造に工夫を
施す必要がある。
【0033】また、図27(b)中に一点鎖線で示すよ
うに、スラブ型YAG結晶41は励起源LD装置2から
発振された半導体レーザビームの照射による発熱で長手
方向に伸びる際に、側面41a側と側面41b側との伸
長差から、厚み方向に(図27中上下方向)に曲がって
しまう。このようにスラブ型YAG結晶41が曲がって
しまうと、スラブ型YAG結晶41内において光がジグ
ザグに伝播する際に、光の反射角度を一定(30.9°) に
維持できなくなるため、YAGレーザビーム42の発散
角が大きくなって品質が低下してしまう。
【0034】 スラブ型結晶の冷却に関する課題 上記のように、ジグザグ光路伝搬による熱レンズ光学補
償が有効に行われて高品質の固体レーザビームを得るた
めには、スラブ型結晶の厚み方向の温度分布は中心部を
ピークとした対称の温度分布とし、側面幅方向や長手方
向の温度分布は均一とする必要があるが、このために
は、スラブ型結晶の両側面のみを冷却し、その他の部分
は断熱する必要がある。
【0035】また、スラブ型結晶の両側に透過板を設け
て水路を形成する場合(詳細後述)、スラブ型結晶側及
び透過板側において冷却水を確実にシールする必要があ
り、且つ、シール部材は容易に着脱できることが望まし
い。
【0036】また、スラブ型結晶から前記水路を流れる
冷却水への熱伝達率はできるだけ高くし、また、前記温
度分布の観点からスラブ型結晶の側面をできるだけ均一
に冷却することが必要である。
【0037】以上、〜の課題の課題のうち、特に、
本発明では上記の課題を解決することを目的とする。
【0038】即ち、本発明は上記従来技術に鑑み、スラ
ブ型結晶内の温度分布をジグザグ光路伝搬による熱レン
ズ光学補償が有効に行われる状態に維持し、冷媒を確実
にシールし、また、シール部材の着脱が容易であり、ス
ラブ型結晶から冷媒への熱伝達率が高く、或いは、スラ
ブ型結晶の側面を均一に冷却することが可能なスラブ型
結晶の冷却構造を有するLD励起スラブ固体レーザ装置
を提供することを課題とする。
【0039】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する
明の半導体レーザ励起スラブ固体レーザ装置は、半導体
レーザ装置を励起源とし且つスラブ型結晶を用いた半導
体レーザ励起スラブ固体レーザ装置において、前記半導
体レーザ装置から発振された半導体レーザビームは前記
スラブ型結晶の側面に照射し、且つ、前記側面に沿って
形成した冷媒流路に冷媒を流して前記スラブ型結晶を冷
却するよう構成すると共に、前記スラブ型結晶の側面幅
方向の両端面には、前記冷媒をシールし、前記両端面を
断熱し、且つ、前記半導体レーザビームを吸収して発熱
することのないシール部材を設け、スラブホルダーを構
成する一方の部材のスラブ型結晶挿入部の側面を斜面構
造とし、且つ、前記スラブホルダーを構成する他方の蓋
としての部材のスラブ型結晶挿入部の側面も斜面構造と
して、前記両部材を合体させたときに前記シール部材を
前記両側面で締め付けて前記スラブ型結晶及びスラブホ
ルダーに密着させるように構成したことを特徴とする。
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づき詳細に説明する。
【0047】図1は本発明の実施の形態に係るLD励起
スラブYAGレーザ装置の全体構成を示す系統図、図2
は前記LD励起スラブYAGレーザ装置の本体部を一部
破断して示す側面図(図3のF方向矢視図)、図3は図
2のA−A線矢視断面図、図4は図2のB−B線矢視断
面拡大図、図5は前記LD励起スラブYAGレーザ装置
に備えた励起源LD装置の本体部を示す拡大斜視図、図
6は前記励起源LD装置のマニホールドに備えた整流板
の拡大斜視図、図7は図3のスラブホルダー部を抽出し
て示す拡大図、図8はコリメートレンズを備えた場合の
構成を示す要部断面図である。
【0048】図9は半導体レーザビームの照射幅がスラ
ブ型YAG結晶の側面幅よりも狭い場合の状態を示す説
明図、図10はスラブ型YAG結晶の側面幅全面に半導
体レーザビームを照射した場合のスラブ型YAG結晶内
の温度分布と屈折率分布とを示す説明図、図11はスラ
ブ型YAG結晶の側面幅よりも半導体レーザビームの照
射幅の方が狭い場合(集光照射の場合)のスラブ型YA
G結晶内の温度分布と屈折率分布とを示す説明図であ
る。
【0049】図12は図2のD−D線矢視断面拡大図、
図13は図4のE部拡大図、図14は透過板ホルダーの
表面図(図7のF方向矢視図)、図15は前記透過板ホ
ルダーの裏面図、図16(a),(b),(c),
(d)は図14のG−G線矢視断面図、H−H線矢視断
面図、J−J線矢視断面図及びK方向矢視図、図17
(a),(b)は図14のL−L線矢視断面図及びM−
M線矢視断面図、図18は図17(a)のN1部及びN
2部拡大図、図19(a),(b),(c)は透過板の
正面図、側面図及び裏面図、図20は前記LD励起スラ
ブYAGレーザ装置の本体部を光軸調整台に取り付けた
状態を示す側面図、図21は前記マニホールド内を流れ
る冷却水の流速分布試験結果を示す説明図である。
【0050】<構成>図1に示すように、本実施の形態
に係るLD励起スラブYAGレーザ装置51は、装置本
体部52と、冷却水循環系統53とから構成されてい
る。装置本体部52には、スラブ型YAG結晶82を保
持するスラブホルダー部54と、励起源としてスラブホ
ルダー部54の両側に配設された一対の励起源LD装置
56とを有している。これら一対の励起源LD装置56
は対称形であり同一の構成である。
【0051】冷却水循環系統53は、一方の励起源LD
装置56へ冷却水を循環する第1冷却水ループ57と、
他方の励起源LD装置56へ冷却水を循環する第2冷却
水ループ58と、スラブホルダー部54へ冷却水を循環
する第3冷却水ループ59の3系統を有しており、これ
らが各々個別に温調冷却水循環器60に接続されてい
る。
【0052】そして、第1冷却水ループ57で循環され
る冷却水によって、一方の励起源LD装置56の二次元
LDアレイ素子を構成する各一次元LDアレイ素子(図
1では図示せず)が冷却され、第2冷却水ループ58で
循環される冷却水によって、他方の励起源LD装置56
の二次元LDアレイ素子を構成する各一次元LDアレイ
素子(図1では図示せず)が冷却され、また、第3冷却
水ループ59で循環される冷却水によって、スラブホル
ダー部54のスラブ型YAG結晶82が冷却されるよう
になっている。なお、第3冷却水ループ59では、冷却
水を途中で分流してスラブ型YAG結晶82の両側面を
それぞれ冷却した後、再び合流させるようになってい
る。
【0053】冷却水としては電気的絶縁性を高めるため
に純水が用いられている。なお、冷却水以外にも冷媒と
してはアルコール等を用いることできるが、一般には水
(純水)が用いられる。
【0054】以下、図2,図3等に基づいて装置本体部
52の構成を詳細に説明する。
【0055】図2及び図3に示すように、励起源LD装
置56の中央部には励起源LD装置本体部65が設けら
れている。この励起源LD装置本体部65は、多数の一
次元LDアレイ素子64を積層してなる二次元LDアレ
イ素子61と、多数のマイクロチャンネル63を積層し
てなるマイクロチャンネル群62とからなる。
【0056】即ち、図5に示すように、水路63aを有
するマイクロチャンネル63と一次元半導体レーザアレ
イ素子64とが、YAGレーザビームの光軸方向(矢印
X方向)に交互に積層されて、二次元LDアレイ素子6
1とマイクロチャンネル群62とが構成されており、こ
のマイクロチャンネル群62の各マイクロチャンネル6
3の水路62aがパラレルになると共に各水路62aを
流れる冷却水によって各一次元LDアレイ素子64を直
接的に冷却する構造となっている。なお、積層される一
次元LDアレイ素子64の素子数は、固体レーザ装置5
1の出力に応じた数であり、例えば42素子とする。
【0057】マイクロチャンネル63の間には、一次元
LDアレイ素子64の他、この一次元LDアレイ素子6
4と重なり合わないようにして平面的に並べられた絶縁
材66が介装されている。また、各一次元LDアレイ素
子64は導電性の接着材によってマイクロチャンネル6
3に電気的及び物理的に接着されており、これらの一次
元LDアレイ素子64に対し、図示しない電極を介し
て、一次元LDアレイ素子64の積層方向(矢印X方
向)に通電されるようになっている。このため、マイク
ロチャンネル16の材質としては導電性と熱伝導性とに
優れたものを選択する必要があり、本実施の形態では銅
が選択されている。なお、励起源LD装置本体部65の
製造プロセスは、図22に示す従来の励起源LD装置2
の本体部と同様である。
【0058】しかし、従来の励起源LD装置2では、一
次元LDアレイ素子1の配置に特に注意が払われていな
かったのに対して、本励起源LD装置56では、図3及
び図5に示すように、各マイクロチャンネル63の水路
63aの入口から所定の距離Lまでの区間を助走区間6
7とし、この助走区間67が設けられた位置に一次元L
Dアレイ素子64がそれぞれ配置されている。
【0059】この助走区間67の距離Lは、各マイクロ
チャンネル63の水路63aに流入した冷却水の流れが
安定するまでの距離となっている。つまり、各マイクロ
チャンネ63の水路63a内に冷却水が流入したとき、
この冷却水の流れに乱れを生じ、また、その乱れ具合も
各水路63aごとに異なる。しかし、これらの冷却水は
何れも各水路63内を流れて行くうちに流れが安定し、
均一な流れとなる。そこで、上記のように各マイクロチ
ャンネル63の水路63aに流入した冷却水の流れが安
定するまでの区間を助走区間67とし、この助走区間6
7を設けた位置に一次元LDアレイ素子64が配置され
ている。
【0060】また、図4に示すように、マイクロチャン
ネル群62において、YAGレーザビームの光軸方向
(矢印X方向)の両端部に位置する複数のマイクロチャ
ンネル63に対しては一次元LDアレイ素子64が介装
されておらず、これらのマイクロチャンネル63はダミ
ーチャンネル68となっている。この理由については後
述する。
【0061】図2及び図3に示すように、マイクロチャ
ンネル群62からなパラレルの直接冷却構造部の入口側
と出口側には、絶縁材であるアクリルよって構成された
マニホールド69とマニホールド70とがそれぞれ設け
られている。また、入口側のマニホールド69の上流端
部には、マニホールド69に対して垂直にLD素子冷却
水入口71が設けられ、出口側のマニホールド70の下
流端部には、マニホールド70に対して垂直にLD素子
冷却水出口72が設けられている。
【0062】即ち、冷却水は、図2、図3中に矢印で示
すように、LD素子冷却水入口71からマニホールド6
9内に流入し、この流入方向と直交する方向にマニホー
ルド69内を流れた後、マイクロチャンネル群62の各
マイクロチャンネル63の水路63aに分かれて流入
し、ここで、各水路63a内を真っ直ぐ平行に流れて各
一次元LDアレイ素子64をそれぞれ冷却した後、マニ
ホールド70内へ流出して合流し、更に、このマニホー
ルド70を流れてLD素子冷却水出口72から排出され
るようになっている。
【0063】入口側のマニホールド69は、両側面69
c,69dの間隔が上流側のLD素子冷却水入口71か
ら下流側のマイクロチャンネル群62に向って拡がる拡
散部69aと、前記間隔が一定の平行部69bとから構
成されている。
【0064】このため、LD素子冷却水入口71からマ
ニホールドマニホールド69内に流入した冷却水は、拡
散部69aで両側面69c,69dの拡がりに沿って拡
散し、平行部69bに至る。その後、平行部69bにお
いて冷却水は平行な流れとなるが、このとき、両側面6
9c,69d付近では、両側面69c,69dとの摩擦
で冷却水の流速が低下することによって、図2中に2点
鎖線で示すように境界層73a,73bが発生し、これ
らの境界層73a,73bがマイクロチャンネル群62
に近づくにしたがって発達する。
【0065】これらの境界層73a,73bおける冷却
水と他の部分の冷却水とでは流速差が大きいため、これ
らの冷却水によって一次元LDアレイ素子64を冷却し
た場合には、両端部の一次元LDアレイ素子64とその
他の部分の一次元LDアレイ素子64との温度差が非常
に大きくなってしまう。そこで、上記のように両端部に
位置する複数のマイクロチャンネル63はダミーチャン
ネル68としている(図4参照)。即ち、境界層73
a,73bによって冷却水の流速が主流の流速よりも低
下する領域には、一次元LDアレイ素子64を設けない
ダミーのマイクロチャンネル63を配置して、これらの
マイクロチャンネル63の水路63a内を流れる低流速
の冷却水は一次元LDアレイ素子64の冷却に関与しな
いようにしている。
【0066】なお、ダミーチャンネル68となるマイク
ロチャンネル63の具体的な数は、境界層73a,73
bの厚さ(図2中の矢印X方向の幅)と、1つのマイク
ロチャンネル63の厚さとによって決められる。例え
ば、水路63aの入口における境界層73a,73bの
厚さが4mmであり、1つのマイクロチャンネル63の
厚さが3mmであるとすれば、両端部の2つのマイクロ
チャンネル63をダミーチャンネル68とすればよい。
【0067】また、マニホールド69の拡散部69aと
平行部69bには、冷却水の流速分布を均一にするため
に、整流板74,75と整流板76とがそれぞれ設けら
れている。マニホールド69内では、中央部の主流は速
く、両側部の流れは遅い流速分布となる。従って、この
ようなマニホールド69内における流速分布を均一にし
て、図2中に二点鎖線で示すように各マイクロチャンネ
ル63の水路63aににおける冷却水の流速分布110
を均一にするために、整流板74,75,76が設けら
れている。なお、流速分布110は図2中の左右方向が
マイクロチャンネル位置、図2中の上下方向が流速であ
る。
【0068】図6に示すように、平行部69bの整流板
76は、アクリルで形成された長方形状の真っ直ぐな板
であって、平行部69bにおける冷却水の流れに直交す
るように配設されると共に、多数のパンチ孔76aが千
鳥格子状に開けられた多孔板となっており、これらの孔
76aのピッチや大きさが適宜調節されて、主流と両側
の流れとに適度な圧力損失を生じさせるようになってい
る。即ち、整流板76の中央部は流れにくく、両側部は
流れ易くなっている。
【0069】拡散部69aの整流板74,75は、アク
リルで形成された長方形状の板を拡散部69aの拡がり
に応じた曲率で湾曲させたものであって、下流側に凸と
なるように配設されると共に、上記の整流板76と同様
に、多数の孔74a,75aが千鳥格子状にそれぞれ開
けられた多孔板となっており、これらの孔74a,75
aのピッチや大きさが適宜調節されて、主流と両側の流
れとに適度な圧力損失を生じさせるようになっている。
即ち、整流板74,75の中央部は流れにくく、両側部
は流れ易くなっている。また、上記のように整流板7
4,75を湾曲させているのは、拡散部69aの拡がり
に沿って拡散する冷却水の流線方向に対し何れの位置で
も直交するようにして条件が同じになるようにするため
である。
【0070】なお、整流板74,75,76としては多
孔板に限定するものではなく、メッシュであってもよ
い。
【0071】また、図2に示すように、出口側のマニホ
ールド70は、両側面70c,70dの間隔が下流側の
LD素子冷却水出口72に向かって狭まる縮流部70a
と、マイクロチャンネル群62(マイクロチャンネル6
3の水路63a;図3参照)を出た冷却水が縮流部70
aに至るまでの助走区間として設けた前記間隔が一定の
平行部70bとから構成されている。
【0072】一方、図7に示すように、スラブホルダー
部54には、スラブホルダー80と透過板ホルダー81
とが設けられている。
【0073】スラブホルダー80は、金属製の2枚の板
状部材80a,80bを合体したものであり、その中央
部に挿入されたスラブ型YAG結晶82を保持してい
る。透過板ホルダー81は、金属製の板状部材であって
スラブホルダー80の両側に一対設けられており、それ
ぞれの中央部に挿入された透過板(石英板)83を保持
している。そして、これら一対の透過板ホルダー81が
Oリング84を介してスラブホルダー80を挾持した状
態で一体的に結合されて、スラブホルダー部54が構成
されている。
【0074】スラブ型YAG結晶82の図7中左右両側
には二次元LDアレイ素子61が位置しており、これら
の二次元LDアレイ素子61の各一次元LDアレイ素子
64から発振された半導体レーザビーム85が、透過板
83を透過してスラブ型YAG結晶82の両側面82
a,82bに照射されるようになっている。
【0075】なお、励起源LD装置56の光軸と、スラ
ブ型YAG結晶82の光軸とを一致させて直交させるた
めに、図3に示すピン穴104がスラブホルダー部54
と両側のマニホールド69,70部とを貫通して4箇所
に設けられ、これらのピン穴104に図2に示すように
4本のピン105がそれぞれ挿通されている。このた
め、励起源LD装置56の光軸とスラブ型YAG結晶8
2の光軸とを確実且つ容易に一致させて直交させること
ができる。
【0076】また、図7に示すように、半導体レーザビ
ーム85の照射幅と、スラブ型YAG結晶82の側面8
2a,82bの幅とが一致するように、一次元LDアレ
イ素子64(二次元LDアレイ素子61)とスラブ型Y
AG結晶82との距離xが調節されている。即ち、半導
体レーザビーム85は比較的大きな発散角(10〜20
°程度)を有しており、伝搬するにしたがってその幅が
拡がっていく。このため、側面82a,82bの位置で
丁度半導体レーザビーム85の幅(照射幅)が側面82
a,82bの幅と一致するように、一次元LDアレイ素
子64とスラブ型YAG結晶82との距離xが調節され
ている。
【0077】或いは、図8に示すように、一次元LDア
レイ素子64(二次元LDアレイ素子61)とスラブ型
YAG結晶82との間にコリメートレンズ(シリンドリ
カルレンズ)111を設け、このコリメートレンズ11
1で半導体レーザビーム85の拡がりを抑えて、半導体
レーザビーム85の照射幅とスラブ型YAG結晶82の
側面82a,82bの幅とを一致させるようにしてもよ
い。
【0078】しかしながら、個々のLD素子ごとの半導
体レーザビームの発散角にはばらつきがあり、また、前
記発散角は10〜20°と比較的大ききため、一次元L
Dアレイ素子64から発振される半導体レーザビーム8
5の照射幅とスラブ型YAG結晶82の側面82a,8
2bの幅とを、全ての一次元LDアレイ素子64におい
て完全に一致させることは困難であり、一部の一次元L
Dアレイ素子64では半導体レーザビーム85の照射幅
の方が、側面82a,82bの幅よりも多少大きくなっ
てしまう。従って、このままでは半導体レーザビーム8
5の一部が側面82a,82bから外れてYAGレーザ
媒質の励起に寄与しなくなってしまい、励起効率が低下
してしまう。
【0079】そこで、図7に示すように、半導体レーザ
ビーム85がスラブ型YAG結晶82の側面82a,8
2bへ照射されるまでの伝搬光路中に反射面87を設
け、この反射面87で、半導体レーザビーム85の拡が
りによって側面82a,82bから外れてしまう半導体
レーザビーム85の一部を側面82a,82bへと反射
させるようになっている。なお、反射面87はOリング
押え88の一部であり、このOリング押え88の内周面
が研磨されて反射面87となっている。
【0080】また、反射面87(即ちOリング押え8
8)は、スラブ型YAG結晶82の周囲を囲むように設
けられており、図4に示すように、スラブ型YAG結晶
82の長手方向(矢印X方向)の両側でも、スラブ型Y
AG結晶82の側面82a,82bから前記長手方向に
外れる半導体レーザビーム85の一部を、側面82a,
82bへと反射させるようになっている。
【0081】ところで、図9に示すように、スラブ型Y
AG結晶82と二次元LDアレイ素子61との間隔を狭
めて、或いはレンズで半導体レーザビーム85を集光し
て、半導体レーザビーム85の照射幅W1をスラブ型Y
AG結晶82の側面82a,82bの幅W2よりも小さ
くすれば、半導体レーザビーム85を全て側面82a,
82bに照射することができるが、このようにした場合
にはYAGレーザビームの品質が低下してしまう。
【0082】つまり、半導体レーザビーム85をスラブ
型YAG結晶82の側面82a,82bの全体に照射し
た場合には、この側面幅全体が励起して発熱するため、
図10(a)に示すようにスラブ型YAG結晶82の側
面幅方向(図10中左右方向)が均一の温度分布にな
り、図10(b)に示すように前記側面幅方向が均一の
屈折率分布となる。これに対して、半導体レーザビーム
85の照射幅を側面82a,82bの幅よりも小さくし
た場合には、前記側面幅方向の両端部は励起せずに発熱
しないため、図11(a)に示すように前記側面幅方向
が均一の温度分布にはならず、図11(b)に示すよう
に前記側面幅方向が均一の屈折率分布にはならない。従
って、この場合にはジグザグ光路伝搬による熱レンズ光
学補償が不十分となり、YAGレーザビームの品質が低
下してしまう。
【0083】このため、スラブ型YAG結晶82の側面
幅全体に半導体レーザビーム85を照射する必要があ
る。そこで、上記にように、半導体レーザビーム85の
照射幅とスラブ型YAG結晶82の側面82a,82b
の幅とをできるだけ一致させると共に、スラブ型YAG
結晶82の側面82a,82bから外れた半導体レーザ
ビーム85の一部は反射面87によって側面82a,8
2bへと反射されるように構成されている。
【0084】また、図7に示すように、各一次元LDア
レイ素子64から発振された半導体レーザビーム85が
スラブ型YAG結晶82へ照射されるまでの伝搬光路中
に透過板83を配設して、この透過板83とスラブ型Y
AG結晶82の側面82a,82bとの間に水路90が
形成されている。そして、この水路90は流路断面積が
水路系で最も小さくなるように構成され、且つ、水路9
0を流れる冷却水の流動状態が乱流となるように水路幅
が調節(例えば1mm程度に設定)されて流速が調節さ
れている。前記水路系は、透過板ホルダー81、透過板
83、スラブ型YAG結晶82及びスラブホルダー80
によって構成された水路90,91,92からなってい
る。
【0085】詳述すると、図14〜図17に示すよう
に、透過板ホルダー81の中央部には透過板83を収容
して保持するための長方形状の孔81aが形成されると
共に、この孔81aの両側には孔81aに沿って凹部8
1b,81cがそれぞれ形成されており、また、凹部8
1b,81cの端には流入孔81dと流出孔81eとが
それぞれ形成されている。そして、図7に示すように、
透過板ホルダー81の凹部81b,81cとスラブホル
ダー80の側面とによって水路91,92がそれぞれ構
成されている。
【0086】一方、図2に示すように、励起源LD装置
56の出口側マニホールド70の上流部の右側にはスラ
ブ結晶冷却水入口94が設けられ、入口側マニホールド
69の下流部の左側にはスラブ結晶冷却水出口95が設
けられている。そして、図12に示すようにスラブ結晶
冷却水入口94はスラブホルダー81の流入孔81dに
通じており、図4に示すようにスラブ結晶冷却水出口9
5はスラブホルダー81の流出孔81eに通じている。
【0087】従って、図7中に矢印で示すように、スラ
ブ結晶冷却水入口94(図3参照)から流入した冷却水
は、水路91、水路90、水路92を順に流れて、スラ
ブ結晶冷却水出口95(図3参照)から排出される。な
お、スラブ型YAG結晶82の一方の側面82a側と他
方の側面82b側とでは、図3に示すようにスラブ結晶
冷却水入口94とスラブ結晶冷却水出口95とが逆に設
けられており、図7中に矢印で示すように冷却水の流れ
る方向が逆になっている。
【0088】そして、この水路系において、上記のよう
に水路90の流路断面積が最も小さくなるように構成さ
れている。これは水路90において冷却水の流速が最も
速くなるようにしてスラブ型YAG結晶82から冷却水
への熱伝達率を高めるためである。また、上記のように
水路90を流れる冷却水の流動状態が乱流となるように
水路90の水路幅が設定されているが、これは層流の熱
伝達率に比べて乱流の熱伝達率の方が格段に高いためで
ある。
【0089】また、図19に示すように、透過板83は
長方形状に形成されており、裏面(スラブ型YAG結晶
側の面)の長手方向両端部には斜面構造の接触面83
a,83bが形成されている。一方、図18に示すよう
に、透過板ホルダー81の孔81aの周縁の長手方向両
端部には、斜面構造の接触面81f,81gが形成され
ている。そして、透過板83の接触面83a,83bと
透過板ホルダー81の接触面81f,81gとを面接触
させることにより、透過板83の図18中上下位置を規
定して、水路90の幅(即ち透過板83とスラブ型YA
G結晶82との間隔)を例えば1mmに正確に保持して
いる(図13参照)。
【0090】これは、透過板83の裏面側にOリング等
のシール部材を介装して透過板ホルダー81で支持する
ようにすると、前記シール部材が変形して水路90の幅
を正確に保持できないためである。水路90の幅を正確
に保持することができないと、水路90の各部において
スラブ型YAG結晶82の冷却にアンバランスが生じ、
その結果、スラブ型YAG結晶82内の温度分布に影響
を与えてYAGレーザビームの品質低下を招いてしま
う。従って、このような不具合を防止するために、上記
のように透過板83と透過板ホルダー81とを面接触と
している。
【0091】しかも、図19に示すように、透過板83
の裏面には、長手方向の両端にのみ接触面83a,83
bが形成され、その他の部分には接触面が形成されてい
ない。また、図14に示すように、透過板ホルダー81
の孔81の周縁にも、長手方向の両端にのみ接触面81
f,81gが形成され、その他の部分には接触面が形成
されていない。即ち、透過板83は長手方向両端の接触
面83a,83bでのみ透過板ホルダー81に支持され
ている。
【0092】これは、水路90(図7、図13参照)に
おける冷却水の流れに影響を与えないためである。つま
り、図7又は図19(c)に矢印で示すように、水路9
0において冷却水は透過板83の側面幅方向に流れるよ
うになっており、このことから、透過板83の側面幅方
向に接触面を形成して透過板ホルダー81と面接触させ
るように構成すると、当該面接触部に段差ができて冷却
水の流れが乱されてしまう。このため、上記のように透
過板83は冷却水の流れに影響を与えない長手方向両端
の接触面83a,83bでのみ透過板ホルダー81の接
触面81f,81gに面接触して支持されるように構成
されている。
【0093】また、図19(c)に示すように透過板8
3の四隅83c,83d,83e,83fにはOリング
を装着可能な曲率が施されており、図7又は図13に示
すように透過板83の全周にはOリング97が装着され
ている。一方、図13に示すように透過板ホルダー81
のOリング97との接触面81hは斜面構造となってい
る。そして、透過板83の全周と透過板ホルダー81の
間のOリング97が、透過板ホルダー81の孔81aの
周縁にボルトで固定されたOリング押え88で押さえら
れて潰されることにより、透過板ホルダー81と透過板
83とに密着して、水路90を流れる冷却水のシール構
造が構成されている。なお、Oリング押え88はOリン
グ97を押えるのと同時に、透過板83も押えるように
なっている。
【0094】また、図7に示すように、透過板83の励
起源LD装置側(二次元LDアレイ素子側)の面には、
半導体レーザビーム85の波長帯に対応した無反射コー
ティング膜(誘電体多層膜)93が施されている。一
方、透過板83のスラブ型YAG結晶側の面には、無反
射コーティング膜が施されていない。
【0095】透過板83の励起源LD装置側の面は空気
に接しており、空気と透過板83は屈折率が異なる。従
って、このままでは半導体レーザビーム85が透過板8
3の励起源LD装置側の面で反射されしまうため、スラ
ブ型YAG結晶82の側面82a,82bに照射されな
い、或いは、励起源LD装置側にダイレクトに戻って励
起源LD装置56に悪影響を及ぼす。
【0096】このため、上記のように、透過板83の励
起源LD装置側の面には半導体レーザビーム85を反射
しないように無反射コーティング膜93が施されてい
る。一方、透過板83のスラブ型YAG結晶側の面は冷
却水に接しており、水と透過板83は屈折率が近いた
め、この面では半導体レーザビーム85が反射されない
ので、この面には無反射コーティング膜を施す必要がな
い。
【0097】また、図7に示すように、スラブ型YAG
結晶82の側面幅方向(図7中上下方向)の両端面82
c,82dには、シール部材86a,86bが設けられ
ている。具体的には、スラブ型YAG結晶82の両端面
82c,82dにシール部材86a,86bを装着した
ものを、スラブホルダー80の中央部に挿入し、その
後、スペーサー用薄板96a,96bをシール部材86
a,86bとスラブホルダー80との隙間に挿入するこ
とにより、シール部材86a,86bをスラブ型YAG
結晶82及びスラブホルダー80に密着させてシール性
を向上させ、且つ、シール部材86a,86bの着脱が
容易な構造となっている。
【0098】なお、スラブホルダー80を構成する一方
の板状部材80aのスラブ型YAG結晶挿入部の側面8
0a−1を、図7中に一点鎖線で示すように斜面構造と
し、且つ、スラブホルダー80を構成する他方の蓋とし
ての板状部材80bのスラブ型YAG結晶挿入部の側面
80b−1も、図7中に一点鎖線で示すように斜面構造
として、両板状部材80a,80bを合体させたとき
に、シール部材86a,86bが前記側面80a−1,
80b−1に締め付けられることによりスラブ型YAG
結晶82及びスラブホルダー80に密着してシール機能
を発揮するような構造としてもよい。この場合にも、着
脱の容易性は維持される。
【0099】また、シール部材86a,86bとして
は、水路90を流れる冷却水をシールし、スラブ型YA
G結晶82の両端面82c,82dを断熱し、且つ、半
導体レーザビーム85を吸収して発熱することのない
(即ち半導体レーザビーム85を反射する)材質のもの
として、シリコン製で半透明のシール部材が用いられて
いる。
【0100】もし、シール部材86a,86bが黒色等
の部材であり半導体レーザビーム85を吸収して発熱す
るものである場合には、この発熱によってシール部材8
6が溶けてしまう虞があり、更には、スラブ型YAG結
晶82の温度分布に対して悪影響を及ぼすことになる。
即ち、スラブ型YAG結晶82の側面幅方向の温度分布
が変化して均一でなくなってしまう。
【0101】上記のようにスラブ型YAG結晶82内で
は光が厚さ方向(図7中左右方向)にジグザグに反射し
ながら長手方向(図7の紙面と直交する方向)に伝搬し
て熱レンズ光学補償が行われるため、側面幅方向の温度
分布が変化して均一でなくなってしまうと、充分な熱レ
ンズ光学補償を行うことができなくなってしまう。
【0102】このため、シール部材86a,86bには
半導体レーザビーム85を吸収して発熱することのない
ものを選択する必要がある。また、スラブ型YAG結晶
82の両端面82c,82d側から熱が放出されること
も、上記の理由から好ましくない。このため、両端面8
2c,82d側はシール部材86a,86bによって断
熱する必要がある。
【0103】また、図4に示すように、スラブ型YAG
結晶82の長手方向(矢印X方向)の両端部は、励起源
LD装置56から発振された半導体レーザビーム85が
照射されない非照射領域(非励起領域)82e,82f
となっている。この非照射領域82e,82fは、半導
体レーザビーム85の照射による発熱でスラブ型YAG
結晶82が長手方向に伸びる際に、厚み方向に曲がるこ
となく(図27(b)参照)長手方向に真直ぐに伸びる
ようにするために設けられた領域であり、計算で求めた
結果から、スラブ型YAG結晶82の全長の少なくとも
15%の領域である。即ち、非照射領域82e,82f
の長さL2はスラブ型YAG結晶82の全長L1の15
%以上であり、この非照射領域82e,82f以外の長
さL3の部分が照射領域(励起領域)82gとなってい
る。
【0104】なお、非照射領域82e,82fはスラブ
型YAG結晶全長の15%以上であればいくらでもよい
が、必要最小限以上に非照射領域82e,82fを大き
くしても、その分だけ無駄になるため、スラブ型YAG
結晶全長の15%とすることが最も望ましいといえる。
【0105】また、図20に示すように、光軸調整台1
00の両端部には共振器101を構成する部分透過の出
力ミラー101aと全反射ミラー101bとが設置され
ており、これら一対の反射ミラー101a,101bの
間に装置本体部52が設置されるが、このとき、共振器
101の光軸と、装置本体部52に設けられたスラブ型
YAG結晶82の光軸とを一致させる必要がある。
【0106】このため、図7に示すようにスラブホルダ
ー54の下端部にはピン穴102が2箇所に設けられて
おり、図20に示すように装置本体部52を光軸調整台
100に取り付ける際には、光軸調整台100の2箇所
に突設された図示しないピンにピン穴102を嵌合させ
ることによって、共振器101の光軸とスラブ型YAG
結晶82の光軸とを確実且つ容易に一致させることがで
きるようになっている。
【0107】<作用・効果>本実施の形態に係るLD励
起スラブYAGレーザ装置51によれば、特に、次のよ
うな作用・効果が得られる。
【0108】(1) また、スラブ型YAG結晶82の
側面幅方向の両端面82c,82dには、冷却水をシー
ルし、両端面82c,82dを断熱し、且つ、半導体レ
ーザビーム85を吸収して発熱することのないシール部
材86a,86bを設けたため、このシール部材86
a,86bによって冷却水をシールすると同時に、スラ
ブ型YAG結晶82の温度分布を、ジグザグ光路伝搬に
よる熱レンズ光学補償を行うのに適した状態に維持する
ことができる。このため、YAGレーザビームの品質が
向上する。
【0109】(2) また、シール部材86a,86b
とスラブホルダー80との隙間にスペーサ用薄板96
a,96bを挿入して、シール部材86a,86bをス
ラブ型YAG結晶82及びスラブホルダー80に密着さ
せるように構成したため、冷却水を確実にシールするこ
とができると共にシール部材86a,86bの着脱が容
易である。
【0110】(3) また、スラブホルダー80を構成
する一方の板状部材80aのスラブ型YAG結晶挿入部
の側面80a−1を斜面構造とし、且つ、スラブホルダ
ー80を構成する他方の蓋としての板状部材80bのス
ラブ型YAG結晶挿入部の側面80b−1も斜面構造と
して、両板状部材80a,80bを合体させたときにシ
ール部材86a,86bを前記両側面80a−1,80
b−1で締め付けてスラブ型YAG結晶82及びスラブ
ホルダー80に密着させるように構成した場合にも、冷
却水を確実にシールすることができると共にシール部材
86a,86bの着脱が容易である。
【0111】(4) また、透過板83とスラブ型YA
G結晶82の側面82a,82bとの間に形成した水路
90の流路断面積が水路系で最も小さくなるようにした
ことにより、水路系を流れる冷却水は水路90において
流速が最も速くなるため、スラブ型YAG結晶82から
冷却水への熱伝達率が高められて、スラブ型YAG結晶
82の冷却能力が向上する。
【0112】(5) また、水路90の流路幅を調節し
て冷却水の流速を調節することにより、この水路90に
おける冷却水の流れが乱流となるように構成したため、
層流場合に比べて格段に熱伝達率が高くなり、スラブ型
YAG結晶82の冷却能力がより向上する。
【0113】(6) また、透過板83のスラブ型YA
G結晶側の面を透過板ホルダー81に面接触として、水
路90の幅を一定に保持するように構成したため、常に
水路90の幅を一定(例えば1mm程度)に正確に保持
することができる。従って、水路90の各部においてス
ラブ型YAG結晶82の冷却にアンバランスが生じるこ
とはない。このため、スラブ型YAG結晶82の側面8
2a,82bを均一に冷却して、スラブ型YAG結晶8
2内の温度分布をジグザグ光路伝搬による熱レンズ光学
補償を行うのに適した状態に維持することができるた
め、YAGレーザビームの品質が向上する。
【0114】(7) また、透過板83の角にはOリン
グを装着可能な曲率を施して透過板83の全周にOリン
グ97を装着し、且つ、透過板ホルダー81のOリング
97との接触面を斜面構造として、透過板83の全周と
透過板ホルダー81との間のOリング97をOリング押
え88で押さえて潰すことにより冷却水のシール構造を
構成したため、Oリング97が透過板83と透過板ホル
ダー81とに密着して、冷却水を確実にシールすること
ができる。
【0115】また、本実施の形態に係るLD励起スラブ
YAGレーザ装置51によれば、更に、次のような作用
・効果が得られる。
【0116】(8) マイクロチャンネル群62を構成
する各マイクロチャンネル63の水路63aに流入した
冷却水の流れが安定するまでの区間を助走区間67と
し、この助走区間67を設けた位置に二次元LDアレイ
素子61を構成する各一次元LDアレイ素子64が配置
されているため、これら全ての一次元LDアレイ素子6
4が安定した均一な流れの冷却水によって冷却されるこ
とになる。
【0117】このため、各一次元LDアレイ素子64を
均一に冷却することができ、各一次元LDアレイ素子6
4は均一な温度となって発振特性がそろう。従って、こ
れらの一次元LDアレイ素子64から発振される半導体
レーザビーム85をスラブ型YAG結晶82に照射する
ことにより、YAGレーザ媒質の励起効率が向上して、
LD励起スラブYAGレーザ装置51の出力が向上す
る。
【0118】(9) また、入口側のマニホールド69
の平行部69bの両側面69c,69dで発生する境界
層73a,bによって冷却水の流速が主流の流速よりも
低下する領域には、一次元LDアレイ素子64を設けな
いダミーチャンネル68が配置されているため、境界層
73a,73bにおける低流速の冷却水はダミーチャン
ネル68の水路63aを流れて一次元LDアレイ素子6
4の冷却には関与ぜず、境界層73a,73b以外の冷
却水のみが一次元LDアレイ素子64を設けた各マイク
ロチャンネル63の水路63aを流れて各一次元LDア
レイ素子64を冷却することになる。
【0119】このため、各一次元LDアレイ素子64を
冷却する冷却水の流速が、より均一化されることにな
り、その結果、各一次元LDアレイ素子64はより均一
な温度となって、より発振特性がそろう。従って、YA
Gレーザ媒質の励起効率がより向上し、LD励起スラブ
YAGレーザ装置51の出力がより向上する。
【0120】なお、境界層73a,73bに対応する領
域にダミーチャンネル63を設けずにこの領域を単に塞
いだ場合には、この領域に隣接するマイクロチャンネル
63の水路63aに境界層73a,73bの冷却水が流
入することになり、結局、各一次元LDアレイ素子64
を均一に冷却することができなくなってしまう。従っ
て、このことからも、境界層73a,73bに対応する
領域にダミーチャンネル68を設けることは非常に有効
であることがわかる。
【0121】(10) また、入口側のマニホールド6
9には整流板74,75,76が設けられているため、
マニホールド69内を流れる冷却水の流速分布を均一に
することができる。
【0122】このため、更に、各マイクロチャンネル6
3の水路63aを流れる冷却水の流速分布を均一化する
ことができ、各一次元LDアレイ素子64の温度が均一
化されて発振特性がそろう。従って、更に、YAGレー
ザ媒質の励起効率が向上して、LD励起スラブYAGレ
ーザ装置51の出力が向上する。
【0123】なお、図21に示すように、マニホールド
69内のおける冷却水の流速分布試験を行った結果、マ
ニホールド69に整流板を設けない場合には、中央部の
主流と両側部の流れとの流速差が大きかったが(図21
中の白四角□)、マニホールド69に整流板74,7
5,76を設けた場合には、前記流速差が平均流速に対
して±3%以内となり、流速分布が均一となった(図2
1中の黒四角■)。このことからも整流板74,75,
76の有効性が確認された。
【0124】(11) しかも、マニホールド69の平
行部69bだけでなく拡散部69aにも整流板74,7
5を設けたことによって、3枚の整流板74,75,7
6で流速分布を均一にすることができる。即ち、平行部
69bに整流板を設けることは必要であるが、この平行
部69bにだけ整流板を設ける場合には、もっと多くの
整流板を設けなければ流速分布を均一にすることができ
ないが、主流と両側の流れとの流速差がまだあまり大き
くない拡散部69aにも整流板を設けることによって、
少ない枚数の整流板で流速分布を均一にすることができ
る。
【0125】(12) また、入口側のマニホールド6
9への冷却水の流入方向が、マイクロチャンネル63へ
と向かってマニホールド69内を流れる冷却水の流れ方
向と直交するようにLD素子冷却水入口71が設けられ
ているため、前記二方向が同方向である場合に比べて
(図22参照)、主流の速度成分を緩和させることがで
き、主流と両側の流れとの流速差を小さくするこができ
る。
【0126】(13) また、出口側のマニホールド7
0には、各マイクロチャンネル63の水路63aを出た
冷却水が縮流部70aに至るまでの助走区間として平行
部70bが設けられているため、各マイクロチャンネル
63の水路63aを流れる冷却水の流速分布を均一に維
持することができる。つまり、縮流部70aがあまり水
路63aの出口に近い位置にあると、各水路63aを流
れる冷却水の流速に影響を与えて流速分布が変わってし
まう。これに対して、助走区間として平行部70bを設
ければ、このような流速分布の変化がなく、各水路63
aを流れる冷却水の流速分布を均一に維持することがで
きる。
【0127】(14) 一次元LDアレイ素子64とス
ラブ型YAG結晶82との距離xを調節して、励起源L
D装置56から発振される半導体レーザビーム85の照
射幅と、スラブ型YAG結晶82の側面82a,82b
の幅とが一致するように構成したため、半導体レーザビ
ーム85がスラブ型YAG結晶82の側面幅全体に照射
されてこの側面幅全体が励起することになる。このた
め、スラブ型YAG結晶82の側面幅方向が均一の温度
分布となり、均一の屈折率分布となる。従って、このス
ラブ型YAG結晶82ではジグザグ光路伝搬による熱レ
ンズ光学補償が充分に行われて、YAGレーザビームの
品質が向上する。
【0128】(15) また、一次元LDアレイ素子6
4とスラブ型YAG結晶82との間にコリメートレンズ
111を設けて、励起源LD装置56から発振される半
導体レーザビーム85の照射幅と、スラブ型YAG結晶
82の側面82a,82bの幅とが一致するように構成
した場合にも、上記と同様に、半導体レーザビーム85
がスラブ型YAG結晶82の側面幅全体に照射されてこ
の側面幅全体が励起することになり、スラブ型YAG結
晶82の側面幅方向が均一の温度分布となって均一の屈
折率分布となるため、このスラブ型YAG結晶82では
ジグザグ光路伝搬による熱レンズ光学補償が充分に行わ
れて、YAGレーザビームの品質が向上する。
【0129】(16) 更には、励起源LD装置56か
ら発振された半導体レーザビーム85がスラブ型YAG
結晶82の側面82a,82bへ照射されるまでの伝搬
光路中に反射面87を設け、この反射面87で、半導体
レーザビーム85の拡がりによって側面82a,82b
から外れてしまう半導体レーザビーム85の一部を、側
面82a,82bへと反射させるように構成したため、
半導体レーザビーム85を全てYAGレーザ媒質の励起
に寄与させることができ、LD励起スラブYAGレーザ
装置51の出力が向上する。
【0130】(17) また、透過板83の励起源LD
装置側の面には無反射コーティング膜93を施したた
め、透過板83と、透過板83の励起源LD装置側の面
に接する空気との屈折率が異なっていても、半導体レー
ザビーム85は透過板83の励起源LD装置側の面で反
射されることなく透過板83を透過してスラブ型YAG
結晶82に照射される。このため、YAGレーザ媒質の
励起効率が向上する。また、半導体レーザビーム85が
ダイレクトに励起源LD装置56に戻って、励起源LD
装置56に悪影響を与える虞がない。
【0131】(18) また、スラブ型YAG結晶82
の長手方向両端部におけるスラブ型YAG結晶82の全
長の少なくとも15%の領域を、励起源LD装置56か
ら発振された半導体レーザビーム85が照射されない非
照射領域82としたことにより、スラブ型YAG結晶8
2は半導体レーザビーム85の照射による発熱で長手方
向に伸びる際に、厚み方向に曲がることなく長手方向に
真直ぐに伸びる。このため、YAGレーザビームの品質
を向上させることができる。
【0132】なお、本実施の形態ではYAGレーザ装置
の場合を例に挙げて説明したが、これに限定するもので
はなく、本発明は他の固体レーザ装置にも適用すること
ができる。
【0133】
【発明の効果】以上、発明の実施の形態と共に具体的に
説明したように、発明の半導体レーザ励起スラブ固体
レーザ装置は、半導体レーザ装置を励起源とし且つスラ
ブ型結晶を用いた半導体レーザ励起スラブ固体レーザ装
置において、前記半導体レーザ装置から発振された半導
体レーザビームは前記スラブ型結晶の側面に照射し、且
つ、前記側面に沿って形成した冷媒流路に冷媒を流して
前記スラブ型結晶を冷却するよう構成すると共に、前記
スラブ型結晶の側面幅方向の両端面には、前記冷媒をシ
ールし、前記両端面を断熱し、且つ、前記半導体レーザ
ビームを吸収して発熱することのないシール部材を設
け、スラブホルダーを構成する一方の部材のスラブ型結
晶挿入部の側面を斜面構造とし、且つ、前記スラブホル
ダーを構成する他方の蓋としての部材のスラブ型結晶挿
入部の側面も斜面構造として、前記両部材を合体させた
ときに前記シール部材を前記両側面で締め付けて前記ス
ラブ型結晶及びスラブホルダーに密着させるように構成
したことを特徴とする。
【0134】従って、発明の半導体レーザ励起スラブ
固体レーザ装置によれば、スラブホルダーを構成する一
方の部材のスラブ型結晶挿入部の側面を斜面構造とし、
且つ、スラブホルダーを構成する他方の蓋としての部材
のスラブ型結晶挿入部の側面も斜面構造として、前記両
部材を合体させたときにシール部材を前記両側面で締め
付けてスラブ型結晶及びスラブホルダーに密着させるよ
うに構成したため、冷媒を確実にシールすることができ
ると共にシール部材の着脱が容易である。
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るLD励起スラブYA
Gレーザ装置の全体構成を示す系統図である。
【図2】前記LD励起スラブYAGレーザ装置の本体部
を一部破断して示す側面図(図3のF方向矢視図)であ
る。
【図3】図2のA−A線矢視断面図である。
【図4】図2のB−B線矢視断面拡大図である。
【図5】前記LD励起スラブYAGレーザ装置に備えた
励起源LD装置の本体部を示す拡大斜視図である。
【図6】前記励起源LD装置のマニホールドに備えた整
流板の拡大斜視図である。
【図7】図3のスラブホルダー部を抽出して示す拡大図
である。
【図8】コリメートレンズを備えた場合の構成を示す要
部断面図である。
【図9】半導体レーザビームの照射幅がスラブ型YAG
結晶の側面幅よりも狭い場合の状態を示す説明図であ
る。
【図10】スラブ型YAG結晶の側面幅全面に半導体レ
ーザビームを照射した場合のスラブ型YAG結晶内の温
度分布と屈折率分布とを示す説明図である。
【図11】スラブ型YAG結晶の側面幅よりも半導体レ
ーザビームの照射幅の方が狭い場合(集光照射の場合)
のスラブ型YAG結晶内の温度分布と屈折率分布とを示
す説明図である。
【図12】図2のD−D線矢視断面拡大図である。
【図13】図4のE部拡大図である。
【図14】透過板ホルダーの表面図(図7のF方向矢視
図)である。
【図15】前記透過板ホルダーの裏面図である。
【図16】(a),(b),(c),(d)は図14の
G−G線矢視断面図、H−H線矢視断面図、J−J線矢
視断面図及びK方向矢視図である。
【図17】(a),(b)は図14のL−L線矢視断面
図及びM−M線矢視断面図である。
【図18】図17(a)のN1部及びN2部拡大図であ
る。
【図19】(a),(b),(c)は透過板の正面図、
側面図及び裏面図である。
【図20】前記LD励起スラブYAGレーザ装置の本体
部を光軸調整台に取り付けた状態を示す側面図である。
【図21】前記マニホールド内を流れる冷却水の流速分
布試験結果を示す説明図である。
【図22】従来の励起源LD装置の斜視図である。
【図23】前記励起源LD装置の製造プロセスを示す工
程図である。
【図24】前記励起源LD装置の製造プロセスを示す工
程図である。
【図25】ロッド型YAG結晶を用いたYAGレーザ装
置の概要を示す説明図である。
【図26】スラブ型YAG結晶を用いたYAGレーザ装
置の概要を示す説明図である。
【図27】LD励起スラブYAGレーザ装置の概要を示
す説明図である。
【符号の説明】
51 LD励起スラブYAGレーザ装置 52 装置本体部 53 冷却水循環系統 54 スラブホルダー部 56 励起源LD装置 57 第1冷却水ループ 58 第2冷却水ループ 59 第3冷却水ループ 60 温調冷却水循環器 61 二次元LDアレイ素子 62 マイクロチャンネル群 63 マイクロチャンネル 63a 水路 64 一次元LDアレイ素子 65 励起源LD装置本体部 66 絶縁材 67 助走区間 68 ダミーチャンネル 69 マニホールド 69a 拡散部 69b 平行部 69c,69d 側面 70 マニホールド 70a 縮流部 70b 平行部 70c,70d 側面 71 LD素子冷却水入口 72 LD素子冷却水出口 73a,73b 境界層 74,75,76 整流板 74a,75a,76a 孔 80 スラブホルダー 80a,80b 板状部材 81 透過板ホルダー 81a 孔 81b,81c 凹部 81d 流入孔 81e 流出孔 81f,81g 透過板との接触面 81h Oリングとの接触面 82 スラブ型YAG結晶 82a,82b 側面 82c,82d 端面 82e,82f 非照射領域 83 透過板 83a,83b 透過板ホルダーとの接触面 83c,83d,83e,83f 角 84 Oリング 85 半導体レーザビーム 86a,86b シール部材 87 反射面 88 Oリング押え 90,91,92 水路 93 無反射コーティング膜 94 スラブ結晶冷却水入口 95 スラブ結晶冷却水出口 96a,96b スペーサ用薄板 97 Oリング 100 光軸調整台 101 共振器 101a 出力ミラー 101b 全反射ミラー 102,104 ピン穴 105 ピン 111 コリメートレンズ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 渡辺 眞生 兵庫県神戸市兵庫区和田崎町一丁目1番 1号 三菱重工業株式会社 神戸造船所 内 (72)発明者 赤羽 崇 兵庫県神戸市兵庫区和田崎町一丁目1番 1号 三菱重工業株式会社 神戸造船所 内 (72)発明者 岡野 昌博 東京都千代田区丸の内二丁目5番1号 三菱重工業株式会社内 (56)参考文献 特開 平10−93169(JP,A) 特開 平6−350171(JP,A) 特開 平2−209779(JP,A) 特開 昭63−318179(JP,A) 特開 平4−214687(JP,A) 特開 平6−61549(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01S 3/04 - 3/0979

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 半導体レーザ装置を励起源とし且つスラ
    ブ型結晶を用いた半導体レーザ励起スラブ固体レーザ装
    置において、 前記半導体レーザ装置から発振された半導体レーザビー
    ムは前記スラブ型結晶の側面に照射し、且つ、前記側面
    に沿って形成した冷媒流路に冷媒を流して前記スラブ型
    結晶を冷却するよう構成すると共に、 前記スラブ型結晶の側面幅方向の両端面には、前記冷媒
    をシールし、前記両端面を断熱し、且つ、前記半導体レ
    ーザビームを吸収して発熱することのないシール部材を
    設け、スラブホルダーを構成する一方の部材のスラブ型結晶挿
    入部の側面を斜面構造とし、且つ、前記スラブホルダー
    を構成する他方の蓋としての部材のスラブ型結晶挿入部
    の側面も斜面構造として、前記両部材を合体させたとき
    に前記シール部材を前記両側面で締め付けて前記スラブ
    型結晶及びスラブホルダーに密着させるように構成した
    ことを 特徴とする半導体レーザ励起スラブ固体レーザ装
    置。
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