JP2008002959A - 生体物質相互作用検出・回収方法およびその装置 - Google Patents

生体物質相互作用検出・回収方法およびその装置 Download PDF

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【課題】 標的物質を含む試料溶液の選択とその試料溶液中の標的物質の回収を効率良く行うことができる生体物質相互作用検出・回収方法およびその装置を提供する。
【解決手段】 標的物質を含む試料溶液の検出を、固相表面に固定化された認識物質と前記標的物質との生体物質間の相互作用により生じる前記固相表面の物理的特性の変化に基づいて行う工程、微粒子担体に前記認識物質を備えた認識素子により前記標的物質を含むことが検出された前記試料溶液中の前記標的物質を捕捉する工程、前記認識素子を回収し前記認識素子に捕捉された前記標的物質を回収する工程を有することを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、試料中に含まれる生体物質を検出し、回収する方法に関する。
生命現象に関わる物質は多種多様で、様々な化学的特性を有している。従来、物質ごとの特性を利用した多種多様な検出、分離方法が考案され利用されてきた。
アミノ酸や糖の分離に最も用いられている方法として、液体クロマトグラフィーが挙げられる。この方法では、形状のバリエーションだけではなく、分離単体の種類や分離溶媒の種類が多様であるので、最適な条件下で実行することで多くの生化学物質や化学物質を分離することが可能である。あるいはこれに類似の技術で、溶液の搬送を電気浸透流で行う方法も利用されている。また、タンパク質やポリヌクレオチド(DNAやRNA)などの、電荷を持った高分子の分離には一般的に電気泳動が用いられる。電気泳動においても、分離単体の選択と、溶媒の選択(多くの場合、pHと静電力のコントロールを行う)により、一般的には、サイズの2%くらいまでの違いを識別し分離できる。あるいはチャージの違いで分ける等電点電気泳動では0.02pHの違いに対応する等電点の違いでタンパク質を分離できる。ポリヌクレオチドの分野で、DNAシーケンサーに用いられている技術では、類似配列のDNAに限れば、700bpと701bpのDNAを長さの差で分離することも可能である。
分離された物質を同定する方法として、質量分析やDNAシーケンサーを用いた方法が挙げられる。質量分析法は、試料に高電圧を印加、真空中でイオン化し質量数電荷比(m/z)によって電気、磁気的な作用により分離、検出する手法である。質量数電荷比(m/z)とその検出強度からマススペクトが得られ、既知物質おもにタンパク質の同定や未知物質の構造決定および構成分子を決定することができる。
タンパク質を高感度に検出する方法として、イムノアッセイが挙げられる。この方法は臨床検査にも応用されており、タンパク質だけではなく抗体が認識することができる化合物の検出も可能である。細胞中で発現しているmRNAを解析する方法としては網羅的に解析するDNAチップやmRNAがPCRにて増幅する速度から被検出対象mRNAの濃度を検出するリアルタイムPCR法が有効である。
上記したように、生化学研究の分野は様々な分離法や検出法に支えられて発展してきた。生命の構成要素を成分ごとに分離し、それらの特性を明らかにすることで、生命現象全体が再構築できると考えられていたからである。
一方で、近年のゲノム研究をはじめとするオーミクス研究では、生体の構成要因は遺伝子だけでも数万に及び、それ以外に、ゲノム情報によらずに関係し合う化学物質や物質間の相互作用は膨大な数にのぼることが明らかになりつつある。このため、生命現象は物質の複雑な相互作用の結果であるという古典的な解釈が再浮上している。
前記生体物質の相互作用を検出する方法としては、溶液系の反応場で検出する方法と固相表面を反応場として検出する方法がある。
前者の方法では、物質間が相互作用した際に生じる熱量を測定する等温滴定カロリメトリー法や核磁気共鳴法(NMR)によって分子の構造変化をモニターする方法、蛍光共鳴エネルギー転移法が挙げられる。
後者の方法では、表面プラズモン共鳴法や水晶振動子を利用した方法が挙げられる。表面プラズモン共鳴センサーは、金属薄膜に全反射する光を入射した際に生じる微弱なエネルギー波(エバネッセント波)が誘電体と接触している金属表面における粗密波と共鳴することで全反射光が減衰する現象(SPR現象)を応用し、生体物質間の相互作用による金属薄膜表面の誘電率変化をSPR現象の減衰ピークの生じる角度変化によって検出する。水晶振動子は、水晶板の圧電効果を利用し、水晶板に一定の電圧を印加することで一定の周波数で発振する素子を用いる。水晶板表面に負荷される質量や粘性および弾性の変化によって周波数が変化し、生体物質が相互作用した際に生じる質量負荷の変化を周波数として検出することができる。この他に、表面の屈折率を計測するエリプソメーター、二面編波式干渉法、表面弾性波を利用した方法がある。
上記生体物質の相互作用の検出、さらに、先に述べた物質の検出、同定及び分離方法には各種のものがあるが、次のような問題点がある。
生体物質の分離方法において、電気泳動では担体と相互作用をする物質を分離し、クロマトグラフィーは分離部(カラム)にてその担体と溶媒界面における媒質の分配に依存し分離される。このため、分離する媒質の物質数が少ないと、媒質が担体に吸着されてしまい、回収できないことが頻繁に起きる。クロマトグラフィーや電気泳動の担体体積と表面積を小さくすることである程度解決できるが、分離する試料体積も少なくする必要があり、限界がある。この限界に挑んでいるのがナノクロマトグラフィーやナノ電気泳動である。分子数が数分子まで少なくなると、吸着の問題以外にも、確率論的なエラーも増えるので確実に分子を分離することが更に難しくなる。特にクロマトグラフィーは統計的に十分な分子が統計的に十分な数の相互作用積とインタラクションすることを前提としており、分離すべき分子の数が少なくなったからといって担体の相互作用積すなわちカラム表面積を少なくしたのでは、分離すべき分子と担体の相互作用積の衝突確率が低下してしまい、分離が不正確になる。
また、検出、同定又は分離された生体物質の機能解析は別の手法を用いて解析されてきた。例えば物質間相互作用を解析する場合、表面プラズモン共鳴や水晶振動子といった手法によって行われてきた。
このような問題に対して、表面プラズモン共鳴センサーを用いて、認識物質に対し相互作用した物質の活性を測定した後、センサー上で捕捉した物質を回収して質量分析法にて同定する報告がされている(非特許文献1)。
しかし、固相表面と液相間との反応はLangmuirの法則に従う平衡反応であると同時に、ごく限られた領域の検出部で物質を捕捉、回収したのでは元の試料中に被検出対象分子濃度が濃くない限り、他の分析に耐えうるサンプル量を得ることは困難となる。また、物質間相互作用反応は平衡であることから、抗原抗体反応、DNAの相補鎖同士のハイブリダイゼーションおよび一般的にアプタマーと呼ばれているある特定分子に対し特異的に結合するポリヌクレオチドであれば結合定数も強く、非常に安定した結合体を形成するが、結合能が低い物質間相互作用においてはほとんどが試料中に未反応で残ってしまい、回収が困難である。
また、極性脂質を基本構成成分とする生体物質、たとえば脂質膜やそれに含まれる糖鎖、脂質膜中に存在することで正常に機能する膜タンパク質などは成分ごとに単離してしまうことによって、本来の機能を示さない。さらに脂質膜にはそれ自体を反応場とすることが知られており、脂質膜と相互作用している状態で初めて機能を発現する生体物質がある。このように極性脂質を基本構成成分とする認識物質に機能を持つ生体物質を解析する場合には、相互作用解析、具体的には結合の有無やその親和性を解析し、それと同時に構造解析などの機能解析を行う必要がある。
脂質膜以外にもDDS技術や医療用デバイス、人工臓器といった技術分野において細胞膜を構成するphosphatidylcholineの極性基と同一の構造をもつ2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの重合体(以下「MPCポリマー」とする。)のような生体適合性ポリマーやミセル、リポソーム試薬が開発されており、その生体物質の非特異的吸着や適合性を評価する方法が求められている。
Analytical Chemistry 71,2858-2865 (1999)
そこで、本発明は、標的物質を含む試料溶液の選択とその試料溶液中の標的物質の回収を効率良く行うことができる生体物質相互作用検出・回収方法およびその装置を提供することを目的とする。
本発明の生体物質検出・回収方法は、請求項1に記載の通り、標的物質を含む試料溶液の検出を、固相表面に固定化された認識物質と前記標的物質との生体物質間の相互作用により生じる前記固相表面の物理的特性の変化に基づいて行う工程、微粒子担体に前記認識物質を備えた認識素子により前記標的物質を含むことが検出された前記試料溶液中の前記標的物質を捕捉する工程、前記認識素子を回収し前記認識素子に捕捉された前記標的物質を回収する工程を有することを特徴とする。
また、請求項2に記載の本発明は、請求項1記載の生体物質検出・回収方法において、前記生体物質間相互作用を水晶振動子の周波数変化によって検出することを特徴とする。
また、請求項3に記載の本発明は、請求項1記載の生体物質検出・回収方法において、前記生体物質間相互作用を表面プラズモン共鳴法センサ表面の誘電率変化により検出することを特徴とする。
また、請求項4に記載の本発明は、請求項1記載の生体物質検出・回収方法において、前記認識素子を遠心分離によって回収することを特徴とする。
また、請求項5に記載の本発明は、請求項1記載の生体物質検出・回収方法において、前記微粒子担体を常磁性微粒子であり、磁場を用いて前記認識素子とともに捕捉された前記標的物質を回収することを特徴とする。
また、本発明の生体物質解析方法は、請求項6に記載の通り、請求項1記載の生体物質検出・回収方法により回収された前記認識素子に捕捉された前記標的物質を解離させ前記標的物質を分離する工程及び分離された前記標的物質を質量分析方法によって解析する工程からなることを特徴とする。
また、本発明の生体物質解析方法は、請求項7に記載の通り、請求項1記載の生体物質検出・回収方法により回収された前記標的物質が捕捉された前記認識素子を分光学的手法によって構造解析を行う工程からなることを特徴とする。
また、本発明の生体物質検出・回収装置は、請求項8に記載の通り、試料溶液中の標的物質と相互作用する認識物質を固定化するための固相表面より構成される検出部を備え、前記固相表面の物理的特性の変化に基づき前記標的物質を検出するための検出手段、前記標的物質が含まれることを検出された前記試料溶液を、認識素子担体である微粒子から構成される認識素子と混合するための混合手段及び前記試料溶液から前記標的物質が捕捉された認識素子を回収するための遠心分離手段を備えたことを特徴とする。
また、本発明の生体物質検出・回収装置は、請求項9に記載の通り、試料溶液中の標的物質と相互作用する認識物質を固定化するための固相表面を備え、前記固相表面の物理的特性の変化に基づき前記標的物質を検出するための検出手段、前記標的物質が含まれることを検出された前記試料溶液を、常磁性体の微粒子担体に認識物質を固定化した認識素子と混合するための混合手段及び前記試料溶液から前記標的物質を捕捉した認識素子を磁力により回収するための磁力分離手段を備えたことを特徴とする。
また、請求項10に記載の本発明は、請求項8又は9記載の生体物質検出・回収装置において、前記検出手段は、水晶振動子のセンサーであることを特徴とする。
また、請求項11に記載の本発明は、請求項8又は9記載の生体物質検出・回収装置において、前記検出手段は、表面プラズモン共鳴センサーであることを特徴とする。
また、請求項12に記載の本発明は、請求項8又は9に記載の生体物質検出・回収装置において、前記検出手段の前記検出部と前記混合手段とは、前記試料溶液を搬送するための流路により接続されていることを特徴とする。
また、請求項13に記載の本発明は、請求項8又は9に記載の生体物質検出・回収装置において、前記検出手段の前記検出部と前記混合手段との間に、前記試料溶液を排出するための他の流路を備えたことを特徴とする。
本発明により、生命機能の一端を担う生化学物質の相互作用が検出できると同時に、回収することができる。これにより、生体物質間の相互作用を検出した条件と同等に調整された試料によって、様々な分析を行う事が可能となる。
また、粒子により構成された認識素子を使用することにより、固相表面と液相の平衡状態において捕捉できる標的物質を使用する場合に比べ、結合積が増えより効率的に試料溶液中の標的物質を回収することができる。この結果、相互作用の測定と標的物質の回収を効率的に行うことができ、回収された標的試料は他の分析手段に使用することができる。
また、標的物質を捕捉した認識素子は遠心分離により容易に回収することができる。また、認識素子を構成する微粒子担体として、常磁性粒子を用いるようにすれば磁場を用いて回収することができる。
認識物質と相互作用する標的物質を検出し効率的に標的物質を回収できるので、標的物質を質量分析によって同定標的物質の同定、解析が可能となる。
固相表面での生体物質間相互作用は、水晶振動子センサーや表面プラズモンセンサーを利用できるため、容易にシステムを構築することが可能となる。
上述の通り、本発明は、標的物質を含む試料溶液の検出を、固相表面(本明細書において、固相表面あるいは固相表面に設けられた電極を含む。)に固定化された認識物質と前記標的物質との生体物質間の相互作用により生じる前記固相表面の物理的特性の変化に基づいて行う工程、微粒子担体に前記認識物質を備えた認識素子により前記標的物質を含むことが検出された前記試料溶液中の前記標的物質を捕捉する工程、前記認識素子を回収する工程及び前記認識素子に捕捉された前記標的物質を回収する工程を有するものである。
尚、本明細書において、生体物質というのは、核酸、mRNAなどのRNA、アミノ酸、ジペプチド、トリペプチドなどのオリゴペプチド、タンパク質などのポリペプチド、単糖、2単糖やオリゴ糖、多糖類などの糖類、ステロイドなどのホルモン類、ノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニンなどの神経伝達物質、そのほか内分泌攪乱剤、各種薬剤、カリウム、ナトリウム、塩化物イオン、水素イオンなど生命現象にかかわる物質をいうものとする。この中には、近年急速に発展しているDrug Delivery System(以下「DDS」とする。)と呼ばれる技術や人工臓器および医療用デバイスの開発によって、様々な高子ポリマー修飾薬剤や脂質分子やそのアナログ分子、生体適合性ポリマーなども含む。
以下に、各工程について説明する。
(標的物質を含む試料溶液の検出工程)
本発明における検出手段は、固相表面を反応検出場とし、標的物質と認識物質との生体物質間の相互作用により生じる固相表面の物理的特性を測定することができるセンサーであればよく、水晶振動子、表面プラズモン、エリプソメトリー、二面編波式干渉法および表面弾性波を利用したセンサーを使用することができる。
検出手段として水晶振動子を使用する場合には、水晶板の両面に設けられた電極のうちの一方の電極に、認識物質を固定化し、認識物質が固定化されている水晶板の片側を試料溶液に浸し、前記両電極に電圧を所定周波数で印加するようにし、その際に、電極上の認識物質と標的物質との相互作用による水晶板の周波数変動を両電極を介して測定すればよい。
また、検出手段として、表面プラズモンセンサーを使用する場合には、プリズム底面に金属層を設け、認識物質を積層し、プリズム底面を試料溶液を浸漬させ誘電率の変化を測定する。具体的には、表面プラズモン共鳴現象の減衰ピークの生じる角度変化を測定すればよい。
前記検出手段の固相表面に、被検出対象である標的物質を特異的に認識する認識物質を固定化しておき、標的物質を含む試料溶液が認識物質と相互作用することにより、検出手段の物理的特性が変化し、認識物質と標的物質の相互作用、即ち、試料溶液中に標的物質を含むことを検出することができる。この際、試料溶液中の標的物質と認識物質との反応は平衡であるために、標的物質のほとんどが未反応で試料中に残っているため後の工程により回収することができる。尚、本明細書における認識物質は生体物質とする。そして、この認識物質に結合し得る物質を標的物質とする。
上記検出手段における試料溶液中の標的物質の有無や濃度等の閾値は測定目的や標的物質の種類に応じて適宜設定する。
また、上記工程の後に、標的物質を含まない試料溶液についてはドレイン等を介して排出する工程を設けることが好ましい。複数の試料溶液を連続して検出する場合に、標的物質を含まない溶液を排出すれば作業効率が高めることができるからである。
(標的物質を捕捉する工程)
認識物質と標的物質の相互作用をセンサーで検出後、標的物質を回収するために微粒子を担体とし認識物質をこれに固定化した認識素子を添加する。認識素子は微粒子が担体であることから標的物質との衝突確率が高く、試料中の標的物質のほとんどが認識素子に捕捉される。認識素子を捕捉した微粒子の特性によって磁場、遠心もしくは電気泳動等の方法で容易に回収することができる。微粒子の担体として、金属やポリマー粒子を用いることができる。また、その大きさは、認識物質を固定化できる程度の大きさであれば特に制限はないが、その外径として10nm〜10μmのものを使用することが好ましい。
(標的物質を回収する工程)
回収された認識素子から、認識物質と標的物質の結合を解離させ、認識素子を回収することで残った標的物質を得ることができる。これによって、標的物質は質量分析、電気泳動、DNAシーケンサーまたはアミノ酸配列分析等を使用して測定するために十分なサンプル量を確保することができる。
次に、上述した固相表面に認識物質を固定化する方法および微粒子担体への認識物質の装飾方法を説明する。
固相表面の検出部に認識物質を固定化する方法として、化学的もしくは生物学的に特異的な結合によって固定化する方法と非特異吸着を用いて固定化する方法がある。非特異吸着は硫酸と過酸化水素水の混合液であるピランハ溶液での酸洗浄やプラズマアッシングによって洗浄化した固相表面に、認識物質溶液をキャストして表面に認識物質を直接固定化する。
化学的な結合によって固定化する方法としては、固相表面に様々な官能基を導入して、認識物質を固定化する。代表的な固定化方法を下記に挙げる。
(i)アミド結合:カルボキシル基が導入されている固相表面をカルボジイミドで処理し、カルボキシル基を活性エステルの形にして認識物質中のアミノ基を反応させて固定化する。
(ii)アルデヒド結合:カルボキシル基が導入された固相表面に、カルボジイミドにてカルボキシル基を活性エステルの形にした後、ヒドラジンを反応させる。この表面に認識物質中のアルデヒド基が反応し、アルデヒド結合により固定化する。
(iii)ジスルフィド結合:チオール基がされている固相表面に2,2-Dipyridyl disulfideを反応させる事でdithiopyridyl基を導入する。この後、チオール基を有する分子が反応するとジスルフィド結合が形成され、固定化することができる。
表面に官能基を導入する方法としては、Siを主体とする基板であればシランカップリング処理を用い、金属である場合にはアルキルチオール化合物による自己組織化膜を形成することで可能となる。また、BIACORE社から販売されている表面プラズモンセンサーのチップSensor Chip CM5(商品名)のようにデキストランのような高物質中に各官能基を導入しておき、表面をコートする方法や、官能基を導入してあるポリマーをフィルムとして表面をコートする方法もある。
また、上記方法にてアビジンもしくはストレプトアビジンを固定化し、認識物質にビオチンを導入したものを用いれば、アビジン−ビオチン相互作用にて認識物質を固定化することができる。脂質膜基本構成とした認識物質を検出器固相表面に固定化する方法としては、リポソームに調整した認識物質を固定化する方法(非特許文献2:Biochemistry 38,15659-15665(1999)、非特許文献3:Journal of Medical Chemistry 43,2083-2086(2000)、)、Langmuir-Blodgett膜を形成し固定化する方法や疎水性表面にSmall Unilamellar Vesicle(以下「SUV」とする。)に調整したリポソームを接触させることによる単層膜での固定化方法(非特許文献4:Biochimica et Biophysica Acta 1462,89-108(1999)、非特許文献5:Analytical Biochemistry 226,342-348(1995))、SiO2といった親水性表面やBiacore社の表面プラズモンチップでSensor Chip L1(登録商標)を用いて二重膜として固定化する方法(非特許文献6:Langmuir 20,7526-7513(2004)、非特許文献7:FEBS Letter 559,96-98(2004))、脂質膜をフィルムで固定化する方法(非特許文献8:Analytical Chemistry 62,1431-1438(1990))が挙げられる。
この他に、固相表面が金属である場合、認識物質中のチオール基を用いて金属表面に固定化することも可能である。
上記方法にてポリヌクレオチドを認識物質として固定化する場合には、化学合成時に5’末端に各官能基を導入しておけばよい。
認識物質を微粒子担体に修飾して認識素子を形成する方法について説明する。
本発明において使用する粒子はポリスチレンビーズのような樹脂由来の粒子や、主に希土類の常磁性粒子、そして金属微粒子が挙げられる。微粒子担体に認識物質を装飾する方法として、上述した固相表面への固定化方法を用いることができる。また、これらの粒子の一例として、Polyscience社、DYNAL BIOTECH社等から一般的に販売もされており、入手することが可能である。
脂質膜を基本構成とする認識物質を微粒子担体に修飾する方法としては、前記した固相表面への固定化方法を用いても良いが、(非特許文献9:Langmuir 17,2283-2286(2001))記載の方法や、リポソーム形成時に微粒子溶液を用いて形成し、微粒子をリポソームに内包される方法を用いることもできる。
また、本発明の生体物質解析方法は、上述した生体物質検出・回収方法の後に、認識素子に捕捉された標的物質を解離させ標的物質を分離する工程と、分離された標的物質を質量分析方法によって解析する工程を行うか、或いは、標的物質が捕捉された認識素子を分光学的手法によって構造解析を行うものである。これにより、少量の試料を有効に活用して生体物質の解析を行うことができる。
次に、本発明の生体物質検出・回収装置について説明する。
本発明は、試料溶液中の標的物質と相互作用する認識物質を固定化するための検出部を固相表面に備え、前記固相表面の物理的特性の変化に基づき前記標的物質を検出するための検出手段、前記標的物質が含まれることを検出された前記試料溶液を、認識素子担体である微粒子から構成される認識素子と混合するための混合手段及び前記試料溶液から前記標的物質が捕捉された認識素子を回収するための遠心分離手段を備えるものである。
前記検出手段は、生体物質検出・回収方法のところで説明した検出手段と同じである。尚、検出手段を試料溶液の量によっては容器内に設けるようにしてもよい。前記混合手段は、認識素子を試料溶液に加え混合できるものであればよく、また、遠心分離手段についても、遠心分離により認識素子を回収できるものであればよく、いずれも市販されているものを使用することができる。
上記検出手段の検出部から混合手段への試料溶液の移動は、手作業によっても行うことができるが好ましくは検出手段を容器内に設け、この容器と混合手段とを流路により接続してポンプ等を利用して移動できるように構成することが好ましい。検出を行った試料溶液をそのまま混合手段に移動することができ、作業効率がよいからである。また、前記容器又は前記流路をドレインに接続するようにしてもよい。検出により、不要と判断した試料溶液を排出できるからである。更に、電磁弁等により、前記ドレインへの切換ができるようにすれば、操作がより簡便となるため好ましい。
また、前記生体物質検出・回収装置において、認識素子として常磁性体を使用する場合には、上記装置の遠心分離手段に代えて磁場発生手段を設けるようにすればよい。これにより、磁場により認識素子を分離できるからである。
次に、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
(実施例1)
BSAを被測定対象物質のモデルタンパク質とし、相互作用の検出、回収後に質量分析法にて同定する例を示す。
具体的には抗BSA抗体を認識物質とし、水晶振動子微小天秤(以下、「QCM」とする。)センサーを相互作用の検出手段として採用し、粒径が1.0μmの常磁性粒子を認識素子担体としBSAを回収する。
QCMは基本周波数が27MHzのセンサーで、感度が0.64ng/cm2である。このQCMセンサー表面は発振するのに必要な金電極が配置され、検出部となっている。金電極検出部をオゾンプラズマにて洗浄後、10mMの10-Carboxy-1-decanethiolエタノール溶液で自己組織化膜を形成させ、カルボキシル基を導入する。カルボキシル基導入表面に100mg/mLの1-Ethyl-3-[3-dimethylamino]propyl]carbodiimide hydrochloride(EDC)と100mg/mL N-Hydroxysulfosuccinimide(NHS)を等量ずつ混合した溶液を反応させ、活性化エステルの形にする。続いて、10mM phosphate, 0.15M NaCl(pH7.5)溶液で1mg/mL 抗BSA抗体溶液を作成し、この抗BSA抗体溶液を表面に反応させアミド結合により抗BSA抗体を固定化する。
認識素子担体に用いる常磁性粒子もカルボキシル基が導入されているのを用いる。QCMセンサー表面に抗BSA抗体を固定化した方法と同様に、常磁性粒子にも抗BSA抗体を修飾し、認識素子とする。
図1は、実施例1の方法の説明及び使用する装置の概念図である。
図1の最上段部に符号101で示す容器には、試料溶液と洗浄および希釈用の緩衝液が導入される。この容器(101)内には、認識物質である抗BSA抗体(117)が検出部に固定化された水晶振動子(118)が設けられており、この水晶振動子(118)の検出部に試料溶液が導入される。
試料溶液として、標的物質であるBSAを含まない試料溶液A(111)とBSAを含む試料溶液B(114)の2種類を用いる。各試料溶液は10mM Phosphate,0.1M NaCl,0.01mg/mL SDS(pH7.5)緩衝液に懸濁された細胞抽出液とする。
試料溶液A(111)を水晶振動子(118)と接触させた結果、同溶液(111)中には抗BSA抗体に結合する物質(112、113)が存在していなかったため、QCMの周波数変化は生じない。このため試料溶液A(111)は、容器(101)の下流側に接続された流路(124)から試料ポンプ(102)を介して排出する。
一方、試料溶液B(114)にはBSA(115)が含まれているため、認識物質抗BSA抗体(117)と結合し(119)、QCMの周波数が減少する。
上記周波数変動について具体的に図2を用いて説明する。
図2は、認識物質と被検出対象標的物質の相互作用を水晶振動子(118)によって検出した場合の水晶振動子(118)の周波数変動の模式図である。
標的物質であるBSAを含まない試料A(111)50μlと、BSAを含む試料B(114)50μlとのそれぞれを抗BSA抗体固定化水晶振動子(118)により測定すると、試料A(111)においては周波数が変化しない(201)。これに対し、BSAを含む試料B(114)では符号202に示すように、抗BSA抗体と相互作用することによって周波数が減少する。つまり、試料B(114)にはBSAが含まれていることが確認できることになる。
上記検出手段におけるQCMの周波数減少が飽和した後、試料溶液B(114)を流路(123)を介して混合手段である第一撹拌(混合)槽(103)に移動した。
この第一撹拌槽(103)において、QCM測定後の試料溶液B(114’)と常磁性粒子(120)と認識物質である抗BSA抗体(117)から構成される認識素子(121)を懸濁する。ここで、認識素子(121)の濃度を100nMとなるようにした。第一撹拌槽(103)において、緩やかに撹拌し、十分な時間後には標的物質のBSA(115)と認識素子上に装飾された認識物質である抗BSA抗体(117)が結合し、認識素子(121)と標識物質BSA(115)が複合体を形成する。
次に、認識素子121に標的物質BSA(115)が捕捉された状態の試料溶液(114)を、磁力分離手段(第一分離槽)(104)に流路(125)を介して移動する。磁力分離手段(104)は、希土類のネオジウム磁石の磁力発生手段(105)をその側方に設けて構成する。
これにより標的物質であるBSA(115)と認識素子(121)で形成された複合体(122)は磁場によってトラップすることができる。また、認識素子(121)と結合していない物質(116)は、第一分離槽の下流側の流路(126)から分岐された流路(127)及びポンプ(102)を介して排出するようにする。
磁場発生手段(105)の磁場を所定の時間経過後に開放し、BSA(115)を捕捉した認識素子(121)を流路(126)を介して第二撹拌槽(106)に移動する。第二撹拌槽(106)には、10mMのGly-HCl緩衝液(pH2.0)が導入され、抗原抗体反応が解離され、BSA(115)は認識素子(121)から解離する。
試料溶液B(114)は、次に流路(128)を介して第二分離槽(107)に移動する。第二分離槽(107)も、第一分離槽(104)同様に側方に磁力分離手段(105)を備えており、磁力分離手段(105)により解離された認識素子(121)のみがトラップされ、標的物質であるBSA(115)を純粋に回収することができる。
回収されたBSAをトリプシン分解酵素により、12時間分解後MALDI(マトリックス支援レーザー脱離イオン化法)-TOF(飛行時間型)マススペクトルを測定し、ペプチドマップフィンガープリントを行った結果を図3に示す。
符号301で示すスペクトルは、単に水晶振動子センサーの表面で捕捉したBSAを回収し、測定した結果である。この方法では十分なサンプル量を確保できずスペクトルを得ることができないことがわかる。
これに対し、本実施例の方法によって回収されたBSAを測定した結果、符合302に示すように各ペプチドを同定することができる。符号302のスペクトルにおいて、各番号はアミノ酸配列からのフラグメント由来のピークであることを示し、*のピークはジスルフィド架橋により結合されたタンパク質溶解フラグメントであることがわかる。
このように、本実施例により、物質間相互作用をモニターすると同時に被検出対象標的物質を他の手法解析に使用することができる十分量を回収できることがわかる。
尚、本実施例1では標的物質を回収するための認識素子担体を常磁性粒子とし、磁場を用いて回収を行う例を示したが、ポリスチレンや金属粒子を用いる場合、その回収方法は遠心分離法、電気泳動法およびクロマトグラフィーを用いることで同様の結果を得ることができる。
本実施例1では相互作用解析は単純化するために検出のみとしたが、様々な濃度の試料をセンサー上にアプライすることによって結合(解離)定数を求めるアフィニティー解析やその結合および解離速度から速度論解析を行うこともできる。
(実施例2)
次に、標的物質をMellitinとし、認識物質として中性脂質であるDimyristoyl phosphatidylcholine(以下、「DMPC」とする。)と酸性脂質であるDimyristoyl phosphatidylglycerol(以下、「DMPG」とする。)を採用し、標的物質を含む試料溶液を表面プラズモン共鳴(以下、「SPR」とする。)センサーによって検出し、標的物質が検出された試料溶液から標的物質を各認識物質の脂質膜のリポソームにより回収後、円偏光二色性法および固体高分解能核磁気共鳴法(以下、「NMR」とする。)によってMellitinおよび各脂質膜の構造解析を行った。Melittinはミツバチ毒の主成分で脂質膜の融合や破壊を引き起こすアミノ酸残基26の両親媒性ペプチドである。
図4は、本実施例の方法の説明及び使用する装置の概念図装置である。
図4の上部に示される流路(421)には測定用の緩衝液と試料溶液を導入できるように構成される。流路(421)は、流路(421)及び流路(422)に分岐され、一方はSPRセンサー(411)を備えた検出手段(401)に接続され、他方は混合手段である混合槽(403)に接続される。尚、流路の分岐箇所には図示しないが電磁切換弁が設けられ、流路(421)又は流路(422)への試料溶液の移動を任意に切り換えることができるように構成される。標的物質(414)が検出された試料溶液は、認識素子を混合するための混合槽(403)に移動できるように構成される。
混合槽(403)は、流路(423)を介して遠心分離手段(404)に接続される。
遠心分離手段(404)は、流路(424)を介して回収手段(402)に接続し、上清がポンプ(402)とドレインを介して外部に排出できるようにするとともに、沈殿物を試料として回収できるように構成される。
検出手段(401)において認識物質(416)であるDMPCもしくはDMPG膜に対して、標的物質であるMellitin(414)の相互作用を動力学的解析により検出が行われる。
検出手段(401)について以下に詳述する。
SPRセンサー(411)表面に認識物質(416)であるDMPCもしくはDMPGを単層膜として固定化する。固定化の方法は次の通りである。
SPRセンサー(411)の固相表面が金であるため、これをオゾンプラズマで10秒間処理し、さらにピランハ溶液(30%過酸化水素水と濃硫酸の混合溶液)で10分間洗浄する。続いて、トルエンに溶解した5mMのn-Octadecanethiol溶液をセンサー表面に置き、1時間室温で放置することで、n-Octadecanethiolの自己組織化膜(412)が形成される。n-Octadecanethiolの自己組織化膜(412)ではメチル基が表面側にあるためSPRセンサー(411)表面が疎水性に改質される。次に認識物質(416)であるDMPCもしくはDMPGは、50nmのサイズのSUVに調整しておき、0.5mMのSUV濃度で疎水性に改質されたSPRセンサー(411)表面に反応させることで、認識物質(416)である各極性脂質の単相膜(416)としてSPRセンサー(411)表面に固定化することができる。
尚、SUVのサイズの調整は、各極性脂質を有機溶媒(DMPCの場合はクロロホルム、DMPGではクロロホルムとエタノールの混合溶液)に溶解し、極性脂質溶液をガラス上で真空乾燥させることで各脂質のフィルムを作製する。このフィルムを測定緩衝液で懸濁すると、各脂質の多重ベシクル小胞(以下、「MLV」とする。)を得ることができる。MLVを超音波処理することでSUVにし、所望のフィルターを通すことにより行うことができる。
次に、認識物質としてDMPCを固定化したSPRセンサー(411)により、認識物質DMPC(416)とMelittin(414)との相互作用を測定し動力学解析を行った結果の模式図を図5に示す。
同図(a)は、SPRセンサー(411)に20μM,40μM,60μM,80μMのMellitin(414)の試料溶液(413)を導入してその経時変化を表している。
Mellitin濃度が20μMのシグナル変化(501)に比べ、40μMのシグナル変化(502)、60μMのシグナル変化(503)、80μMのシグナル変化(504)では濃度が高くなるにつれ、DMPCとMelittinとの相互作用が平衡に達し、シグナル変化が収束するまでの時間が短い事が分かる。
このシグナル変化を用いて動力学解析を行ったものを同図(b)に概念図として示す。
動力学解析方法は1対1の結合モデルで行う。SPRセンサー(411)上に固定化されている認識物質(A)とそれと相互作用する標的物質(B)は結合し複合体(C)を形成する過程はA+B⇔Cに従う平衡であり、その親和性は下記数1で定義される結合(解離)定数Ka(Kd)で定量化することができる(ここで、[A]、[B]、[C]はそれぞれのモル濃度を示す)。
この反応における結合速度定数k+と解離速度定数k-は下記数2で与えられる。
認識物質と標的物質の結合複合体(C)の生成濃度は下記数3で表される。
数3における[C](t→∞)は標的物質濃度が[B]の時に平衡に達した複合体Cの濃度である。複合体は時間に対し緩和時定数1/τを持つ一次の指数関数に従って形成されることが分かる。この1/τは標的物質濃度[B]に依存する。ここで、[C]/[C](t→∞)は水晶振動子の周波数変化ΔFであるΔF/ΔF(t→∞)と置き換えることができるため数3における認識物質と標的物質の複合体Cの濃度はシグナル変化として書くことができる。
図5(b)は図5(a)のシグナル変化を数(3)でフィットし、各Melittin濃度における1/τを求め、Melittin濃度に対してプロット(505)した図である。このプロットの回帰直線(506)の切片および傾きから、DMPCとMelittinの相互作用における結合速度定数k+、解離速度定数k-および結合(解離)定数Ka(Kd)を求めることができる。
図5で示した方法と同様、DMPGとMelittin間の結合速度定数k+、解離速度定数k-を求めた結果、Melittinの親和性は酸性脂質であるDMPGの方が中性脂質であるDMPCに比べ高いことがわかる。
次に、混合手段(403)における工程について説明する。
混合手段(403)において、粒径20nmの金製ナノ粒子(417)を担体とし、これをDMPCもしくはDMPGのリポソーム(416)内に含有することにより構成された認識素子(418)と試料溶液が混合される。この混合手段(403)において認識素子(418)と標的物質であるMelittin(414)が相互作用により結合し、複合体(419)を形成する。
具体的には、20μMのMelittin試料溶液(413)を混合槽(403)に導入し、各脂質の認識物質(416)と金ナノ微粒子の担体(417)で構成される認識素子(418)と混合し、認識素子(418)により標的物質Melittin(414)を捕捉して複合体(419)を形成させる。
認識素子(418)は、認識物質(416)の前記SUV作成方法において、認識物質(416)の脂質膜フィルムを緩衝液で懸濁しMLVを調製する工程において、緩衝液の代わりに20nmの粒径の金ナノ微粒子(417)溶液を用いることで調整することができる。その他の工程は前記方法と同じである。
これらの混合液は遠心分離手段(404)に移動し、認識素子−標的物質複合体(419)が遠心によって沈殿物として分離する。
具体的には、認識素子−Mellitin複合体(419)を13,000rpmで30分遠心後、沈殿物を緩衝液で再懸濁することで複合体(419)を回収する。
遠心分離後、上清液はドレインへ回収され、沈殿物は緩衝液に再懸濁される。再懸濁された認識素子−標的物質複合体(419)を回収する。
上記方法によって回収されたDMPCおよびDMPGと粒径20nmの金ナノ微粒子から構成される認識素子とMelittinとの結合複合体を円偏光二色性法および固体NMR法によって構造解析を行った。円偏光二色性法によって、Melittinの二次構造解析を行った結果、222nmにおけるellipticityから、DMPG膜に結合したMelittinではαへリックス構造をとっていることが確認できるのに対し、DMPC膜に結合したMelittinでは二次構造が溶液状態と変化がないことが分かる。また、固体NMR法は、Biochimica et Biophysica Acta 1558,34-44(2002)(非特許文献11)記載の方法にしたがって、31Pを観測核として測定した。結果、DMPCおよびDMPGの相転移点温度(Tm)がMelittinが結合した場合に変化していることがわかる。また、マジック角回転(MAS)法を用いて等方化学シフト値を比較すると、DMPCとDMPGともにMelittinが結合することで変化し、また、その変化量はDMPG膜のほうが大きいことが分かる。このことから、Melittinは酸性脂質であるDMPGに対して2次構造変化を伴うより安定した結合を行い、より大きな構造変化を誘起していることが示唆される。
このように、本発明を用いることで、脂質膜を認識物質とした物質間相互作用をモニターすると同時に被検出対象標的物質を認識物質のリポソームである認識素子に捕捉したサンプルによって円偏光二色性法および固体NMR法によって詳細な構造解析に使用することができる。また、動的光散乱やゼータ電位によって認識素子であるリポソームのサイズを計測し、Melittinの脂質膜に対する機能を知ることも可能である。
実施例2では相互作用解析は単純化するために検出のみとしたが、様々な濃度の試料をセンサー上にアプライすることによって結合(解離)定数を求めるアフィニティー解析やその結合および解離速度から速度論解析を行うこともできる。
また、水晶振動子の計測では、特願2005-192612に示されるような水晶振動子の基本波の共振点付近のコンダクタンスの最大値の1/2になる周波数(F1、F2)およびこのオーバートーンのF1、F2を用いて質量負荷、粘性負荷および粘弾性負荷を解析する方法や、Q-sence AB社が提案しているQCM-Dと呼ばれる測定方法により、質量付加の正確な測定、固定化されたフィルム膜の粘弾性変化および溶液の粘性変化を測定することにより、より正確な相互作用解析が行えることは言うまでもない。また、その他の手法、例えばエリプソメーターや二面編波式干渉法といった方法でも計測は可能である。
本発明は、生化学研究等の研究・開発分野やこれに関する製品の分野において広く利用することができる。
実施例1の方法の説明及び使用する装置の概念図 認識物質と被検出対象標的物質の相互作用を水晶振動子によって検出した場合の水晶振動子の周波数変動の模式図 実施例1の方法及び単に水晶振動子センサーにより回収されたBSAをトリプシン分解酵素により、MALDI-TOFマススペクトルを測定し、ペプチドマップフィンガープリントを行った結果を示すグラフ 実施例2の方法の説明及び使用する装置の概念図装置 認識物質としてDMPCを固定化したSPRセンサーにより、認識物質DMPCとMelittinとの相互作用を測定し動力学解析を行った結果の模式図
符号の説明
101 容器
102 試料ポンプ
103 第一撹拌槽(混合手段)
104 第一分離槽
105 磁力発生手段
107 第二分離槽
111 試料溶液A
112,113 抗BSAに結合する物質
114 試料溶液B
115 BSA
117 抗BSA抗体
118 水晶振動子
120 常磁性粒子
121 認識素子
123,124,125,126,127,128 流路
401 検出手段
402 回収手段
403 混合槽(混合手段)
404 遠心分離手段
411 SPRセンサー
412 自己組織化膜
413 試料溶液
414 標的物質
416 認識物質
417 微粒子担体
419 複合体
421,422,423,424 流路

Claims (13)

  1. 標的物質を含む試料溶液の検出を、固相表面に固定化された認識物質と前記標的物質との生体物質間の相互作用により生じる前記固相表面の物理的特性の変化に基づいて行う工程、微粒子担体に前記認識物質を備えた認識素子により前記標的物質を含むことが検出された前記試料溶液中の前記標的物質を捕捉する工程、前記認識素子を回収し前記認識素子に捕捉された前記標的物質を回収する工程を有することを特徴とする生体物質検出・回収方法。
  2. 前記生体物質間相互作用を水晶振動子の周波数変化によって検出することを特徴とする請求項1記載の生体物質検出・回収方法。
  3. 前記生体物質間相互作用を表面プラズモン共鳴法センサ表面の誘電率変化により検出することを特徴とする請求項1記載の生体物質検出・回収方法。
  4. 前記認識素子を遠心分離によって回収することを特徴とする請求項1記載の生体物質検出・回収方法。
  5. 前記微粒子担体を常磁性微粒子であり、磁場を用いて前記認識素子とともに捕捉された前記標的物質を回収することを特徴とする請求項1記載の生体物質検出・回収方法。
  6. 請求項1記載の生体物質検出・回収方法により回収された前記認識素子に捕捉された前記標的物質を解離させ前記標的物質を分離する工程及び分離された前記標的物質を質量分析方法によって解析する工程からなることを特徴とする生体物質解析方法。
  7. 請求項1記載の生体物質検出・回収方法により回収された前記標的物質が捕捉された前記認識素子を分光学的手法によって構造解析を行う工程からなることを特徴とする生体物質解析方法。
  8. 試料溶液中の標的物質と相互作用する認識物質を固定化するための固相表面より構成される検出部を備え、前記固相表面の物理的特性の変化に基づき前記標的物質を検出するための検出手段、前記標的物質が含まれることを検出された前記試料溶液を、認識素子担体である微粒子から構成される認識素子と混合するための混合手段及び前記試料溶液から前記標的物質が捕捉された認識素子を回収するための遠心分離手段を備えたことを特徴とする生体物質検出・回収装置。
  9. 試料溶液中の標的物質と相互作用する認識物質を固定化するための固相表面を備え、前記固相表面の物理的特性の変化に基づき前記標的物質を検出するための検出手段、前記標的物質が含まれることを検出された前記試料溶液を、常磁性体の微粒子担体に認識物質を固定化した認識素子と混合するための混合手段及び前記試料溶液から前記標的物質を捕捉した認識素子を磁力により回収するための磁力分離手段を備えたことを特徴とする生体物質検出・回収装置。
  10. 前記検出手段は、水晶振動子のセンサーであることを特徴とする請求項8又は9記載の生体物質検出・回収装置。
  11. 前記検出手段は、表面プラズモン共鳴センサーであることを特徴とする請求項8又は9記載の生体物質検出・回収装置。
  12. 前記検出手段の前記検出部と前記混合手段とは、前記試料溶液を搬送するための流路により接続されていることを特徴とする請求項8又は9に記載の生体物質検出・回収装置。
  13. 前記検出手段の前記検出部と前記混合手段との間に、前記試料溶液を排出するための他の流路を備えたことを特徴とする請求項8又は9に記載の生体物質検出・回収装置。
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