JP2008001969A - Fe3Al基金属間化合物,その製造方法 - Google Patents

Fe3Al基金属間化合物,その製造方法 Download PDF

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Takayuki Takasugi
隆幸 高杉
Yasuyuki Konno
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Abstract

【課題】強度が高められたFe3Al基金属間化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】すなわち,本発明によれば,Al:23〜33at%と,NbとZrの合計:0.5〜2at%を含有し,残部がFe及び不可避不純物からなる鋳塊に対して均質化熱処理を施した後,1173〜1473Kで第1熱間圧延し,873〜1073Kで第2熱間圧延し,1073〜1373Kで再結晶熱処理する工程を備えるFe3Al基金属間化合物の製造方法が提供される。
【選択図】図6

Description

本発明は,Fe3Al基金属間化合物と,その製造方法に関する。
Fe3Al基金属間化合物は,軽量で耐酸化性及び耐硫化性に優れている上,構成元素が低価格であることからステンレス鋼やNi基超合金の代替材料としての用途が期待されており,これまで数多くの研究がなされてきた(例えば,非特許文献1〜3を参照。)
D.G. Morris, M.A. Munoz-Morris, C. Baudin, Acta Materialia, 52 (2004) 2827-2836. A. Wasilkpwska, M. Bartsch, F. Stein, M. Palm, G. Sauthoff, U. Messerschmidt, Materials Science and Engineering A381 (2004) 1-15. Y.D. Huang, L. Froyen, Intermetallics, 10 (2002) 473-484.
しかし,Fe3Al基金属間化合物は,(1)室温や高温での強度が十分に大きくないという問題と,(2)室温での延性が十分ではないという問題を有しており,実用化に向けて,これらの問題が解決されることが望まれている。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり,強度が高められたFe3Al基金属間化合物の製造方法を提供するものである。
課題を解決するための手段及び発明の効果
すなわち,本発明によれば,Al:23〜33at%と,NbとZrの合計:0.5〜2at%を含有し,残部がFe及び不可避不純物からなる鋳塊に対して均質化熱処理を施した後,1173〜1473Kで第1熱間圧延し,873〜1073Kで第2熱間圧延し,1073〜1373Kで再結晶熱処理する工程を備えるFe3Al基金属間化合物の製造方法が提供される。
本発明者らは,上記組成の鋳塊に対して上記熱処理及び圧延を行うことによって,強度が高められたFe3Al基金属間化合物を製造することができることを見出し,本発明の完成に到った。
また,本発明者らは,Zrの含有量を0.1〜2at%にするか,又はNbの含有量を0.6〜2at%にした場合,Fe2Nb相やFe2Zr相からなる第2相粒子の析出によって室温での強度がさらに高められたFe3Al基金属間化合物を得ることができることを見出した。
また,本発明者らは,Zrの含有量を0.25〜2at%にするか,又はNbの含有量を1〜2at%にした場合,Fe2Nb相やFe2Zr相からなる第2相の割合(第2相体積率)を1%以上にすることができ,その結果,高温での強度及び伸びが高められたFe3Al基金属間化合物を得ることができることを見出した。
さらに,本発明者らは,Zrの含有量を0.25〜2at%にした場合,室温や高温での強度に加えて,室温での延性も高められたFe3Al基金属間化合物を得ることができることも見出した。
本発明の一実施形態のFe3Al基金属間化合物の製造方法は,Al:23〜33at%と,NbとZrの合計:0.5〜2at%を含有し,残部がFe及び不可避不純物からなる鋳塊に対して均質化熱処理を施した後,1173〜1473Kで第1熱間圧延し,873〜1073Kで第2熱間圧延し,1073〜1373Kで再結晶熱処理する工程を備える。本明細書において,「〜」は,その端の点を含む。
1.鋳塊作製
本実施形態の対象である鋳塊は,Al:23〜33at%と,NbとZrの合計:0.5〜2at%を含有し,残部がFe及び不可避不純物からなる。この鋳塊は,大部分が,Fe3Al相(D03相)であり,NbやZrの含有量に応じて少量のFe2Nb相やFe2Zr相(C14型ラーベス相)を含む。
Alの含有量は,23〜33at%である。図1に示すFe−Al2元系状態図(「Alloy Phase Diagrams, Vol.1, edited by T. B. Massalski, J.L. Murray, L. H. Bennett, H. Baker (American Society for Metals, Metals Park, OH, 1986),p.112.」から引用)から分かるように,Alの含有量がこの範囲であれば,本実施形態のFe3Al基金属間化合物のマトリックスが,Fe3Al相になるからである。
Alの具体的な含有量は,例えば,23,23.5,24,24.5,25,25.5,26,26.5,27,27.5,28,28.5,29,29.5,30,30.5,31,31.5,32,32.5又は33at%である。Alの含有量の範囲は,上記具体的な含有量として例示した数値の何れか2つの間であってもよい。
NbとZrの含有量の合計は,0.5〜2at%である。この範囲でNbとZrの少なくとも一方を含有させることによって,本実施形態のFe3Al基金属間化合物の強度が向上するからである。
NbとZrの含有量の合計の具体的な値は,例えば,0.5,0.6,0.7,0.75,0.8,0.9,1,1.1,1.2,1.25,1.3,1.4,1.5,1.6,1.7,1.75,1.8,1.9又は2at%である。NbとZrの含有量の合計の範囲は,上記具体的な値として例示した数値の何れか2つの間であってもよい。
Nbの具体的な含有量は,例えば,0,0.1,0.2,0.25,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.75,0.8,0.9,1,1.1,1.2,1.25,1.3,1.4,1.5,1.6,1.7,1.75,1.8,1.9又は2at%である。Nbの含有量の範囲は,上記具体的な含有量として例示した数値の何れか2つの間であってもよい。
Zrの具体的な含有量は,例えば,0,0.1,0.2,0.25,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.75,0.8,0.9,1,1.1,1.2,1.25,1.3,1.4,1.5,1.6,1.7,1.75,1.8,1.9又は2at%である。Zrの含有量の範囲は,上記具体的な含有量として例示した数値の何れか2つの間であってもよい。
NbとZrの含有量の具体的な組合せは,例えば,0と0.5,0と0.75,0と1,0と1.25,0と1.5,0と1.75,0と2,0.25と0.25,0.25と0.5,0.25と0.75,0.25と1,0.25と1.25,0.25と1.5,0.25と1.75,0.5と0,0.5と0.25,0.5と0.5,0.5と0.75,0.5と1,0.5と1.25,0.5と1.5,0.75と0,0.75と0.25,0.75と0.5,0.75と0.75,0.75と1,0.75と1.25,1と0,1と0.25,1と0.5,1と0.75,1と1,1.25と0,1.25と0.25,1.25と0.5,1.25と0.75,1.5と0,1.5と0.25,1.5と0.5,1.75と0,1.75と0.25又は2と0at%である。
好ましくは,Zrの含有量が0.1〜2at%であるか,又はNbの含有量が0.6〜2at%である。この何れかの条件が満たされる場合に,Fe2Nb相やFe2Zr相からなる第2相粒子が析出して,Fe3Al相のマトリックス中に分散し,第2相粒子がマトリックス中に分散することによって,強度がさらに高められたFe3Al基金属間化合物が得られるからである。
好ましくは,Zrの含有量が0.25〜2at%であるか,又はNbの含有量が1〜2at%である。この何れかの条件が満たされる場合に,Fe2Nb相やFe2Zr相からなる第2相の割合(第2相体積率)を1%以上にすることができ,その結果,高温での強度及び伸びが高められたFe3Al基金属間化合物が得られるからである。
また,好ましくは,Zrの含有量が0.25〜2at%である。この条件が満たされる場合,室温での延性が高められたFe3Al基金属間化合物が得られるからである。
鋳塊の具体的な組成は,例えば,
76.5Fe−23Al−0.5Zr,
(元素の前の数字は,at%を意味する。以下,同じ。)
76.5Fe−23Al−0.25Nb−0.25Zr,
76.5Fe−23Al−0.5Nb,
71.5Fe−28Al−0.5Zr,
71.5Fe−28Al−0.25Nb−0.25Zr,
71.5Fe−28Al−0.5Nb,
66.5Fe−33Al−0.5Zr,
66.5Fe−33Al−0.25Nb−0.25Zr,
66.5Fe−33Al−0.5Nb,
76Fe−23Al−1Zr,
76Fe−23Al−0.5Nb−0.5Zr,
76Fe−23Al−1Nb,
71Fe−28Al−1Zr,
71Fe−28Al−0.5Nb−0.5Zr,
71Fe−28Al−1Nb,
66Fe−33Al−1Zr,
66Fe−33Al−0.5Nb−0.5Zr,
66Fe−33Al−1Nb,
75Fe−23Al−2Zr,
75Fe−23Al−1Nb−1Zr,
75Fe−23Al−2Nb,
70Fe−28Al−2Zr,
70Fe−28Al−1Nb−1Zr,
70Fe−28Al−2Nb,
65Fe−33Al−2Zr,
65Fe−33Al−1Nb−1Zr又は
65Fe−33Al−2Nbである。
本実施形態の鋳塊は,原料金属(Fe,Al,Nb,Zr)をアーク溶解炉で溶解し,これを鋳造することによって作製することがコスト等の面から好ましいが,これ以外の方法で作製してもよい。
2.均質化熱処理工程
次に,作製した鋳塊に対して均質化熱処理を施す。これによって,鋳塊全体の組成が均質化される。均質化熱処理は,できるだけ高い温度で行うことが好ましく,できるだけ長い時間行うことが好ましい。より高い温度で行うと,均質化が起こりやすく,より長時間行うと,均質度が向上するからである。
均質化熱処理は,例えば,1173〜1673Kで行われる。この程度の範囲であれば,鋳塊を溶融させることなく,その組成を均質化させることができ,かつ,均質化に時間がかかりすぎないからである。
均質化熱処理の具体的な温度は,例えば,1173K,1198K,1223K,1248K,1273K,1298K,1323K,1348K,1373K,1398K,1423K,1448K,1473K,1498K,1523K,1548K,1573K,1598K,1623K,1648K又は1673Kである。均質化熱処理の温度の範囲は,上記具体的な温度として例示した数値の何れか2つの間であってもよい。
均質化熱処理を行う時間は,特に限定されず,鋳塊全体の組成を均質化するのに必要な時間だけ行えばよい。均質化熱処理を行う時間は,例えば,24時間であるが,これよりも短くても長くてもよい。
3.第1及び第2熱間圧延工程
次に,鋳塊に均質化熱処理を施した試料に対して,1173〜1473Kで第1熱間圧延し,873〜1073Kで第2熱間圧延する。
鋳塊に均質化熱処理を施した試料は,一般に,結晶粒が大きく,又,引け巣等の鋳造欠陥が残存しており加工性が悪い。そこで,加工性を確保するために,第1熱間圧延は,1173〜1473Kという比較的高い温度で行う。しかし,このような高い温度で熱間圧延を行うと,圧延によって結晶組織が破壊されると共に破壊された結晶組織の再結晶が起こり,再結晶粒が大きく成長する。従って,前記温度での熱処理では,結晶粒をある程度小さくすることができるもののそれ以上に小さくすることは難しい。「熱間圧延」には,所定温度に加熱した試料を圧延する場合と,試料を所定温度に加熱しながら圧延を行う場合の何れもが含まれる。後者の場合,例えば,圧延は,ヒーターを内蔵したローラーを用いて行う。なお,いずれの圧延方法においても,圧延中の試料温度の低下を抑制するために,ステンレス等の金属で試料を包んで圧延する(このような圧延は,一般にシース圧延と称される。)ことが好ましい。シース圧延によれば,圧延中の試料割れが防止でき,圧延性を向上させることができる。試料を包むための金属の種類は,限定されないが,熱間圧延温度で酸化せず,かつ試料と反応しないものが好ましい。
上記温度範囲の下限の根拠は,1173Kより高い温度では,加工性が良くなり,第1熱間圧延が行いやすいことである。上記温度範囲の上限の根拠は,1473Kよりも低い温度では,再結晶組織の結晶粒の成長が進みすぎず,かつ試料が溶融しないことである。第1熱間圧延は,例えば,圧下量が小さい(例えば,1パスの圧下量0.1mm)圧延を複数回繰り返すことによって行うことができる。第1熱間圧延での圧下率は,特に限定されないが,圧下率が40%以上になるまで行うことが好ましい。この程度まで第1熱間圧延を行えば,試料中の結晶粒が第2熱間圧延に適する程度に小さくなるからである。圧下率の上限は,特にないが,割れを生じさせない程度であることが好ましい。「圧下率」とは,「(圧延前の厚さ−圧延後の厚さ)/圧延前の厚さ×100(%)」を意味している。
第1熱間圧延の具体的な温度は,例えば,1173K,1198K,1223K,1248K,1273K,1298K,1323K,1348K,1373K,1398K,1423K,1448K又は1473Kである。第1熱間圧延の温度の範囲は,上記具体的な温度として例示した数値の何れか2つの間であってもよい。
第1熱間圧延の具体的な圧下率は,例えば,40%,45%,50%,55%,60%,65%,70%,75%又は80%である。第1熱間圧延の圧下率の範囲は,上記具体的な圧下率として例示した数値の何れか2つの間であってもよく,例示した数値の何れか以上であってもよい。
結晶粒をさらに微細化し,加工性のよい試料を得るために,873〜1073Kで第2熱間圧延を行う。第1熱間圧延によって試料中の結晶組織がある程度微細化され,試料の加工性が向上しているので,第2熱間圧延は,比較的低い温度で行うことができる。比較的低い温度で熱間圧延を行うと,格子欠陥密度が比較的高い加工組織が残存するか,もしくは再結晶粒の成長があまり進まず,第1熱間圧延よりも,結晶粒を小さくすることができる。
上記温度範囲の下限の根拠は,873Kより高い温度では,加工性がよくなり,第2熱間圧延を容易に行うことができることである。上記温度範囲の上限の根拠は,1073Kよりも低い温度では,再結晶組織の結晶粒の成長が進みすぎないことである。第2熱間圧延は,例えば,圧下量が小さい(例えば,1パスの圧下量0.1mm)圧延を複数回繰り返すことによって行うことができる。第2熱間圧延での圧下率は,特に限定されないが,圧下率が40%以上になるまで行うことが好ましい。この程度まで第2熱間圧延を行えば,試料中の結晶粒が十分に小さくなるからである。圧下率の上限は,特にないが,割れを生じさせない程度であることが好ましい。
第2熱間圧延の具体的な温度は,例えば,873K,898K,923K,948K,973K,998K,1023K,1048K又は1073Kである。第2熱間圧延の温度の範囲は,上記具体的な温度として例示した数値の何れか2つの間であってもよい。
第2熱間圧延の具体的な圧下率は,例えば,40%,45%,50%,55%,60%,65%,70%,75%又は80%である。第2熱間圧延の圧下率の範囲は,上記具体的な圧下率として例示した数値の何れか2つの間であってもよく,例示した数値の何れか以上であってもよい。
第1熱間圧延と第2熱間圧延の温度の組合せは,例えば,1173Kと873K,1173Kと923K,1173Kと973K,1173Kと1023K,1173Kと1073K,1223Kと873K,1223Kと923K,1223Kと973K,1223Kと1023K,1223Kと1073K,1273Kと873K,1273Kと923K,1273Kと973K,1273Kと1023K,1273Kと1073K,1323Kと873K,1323Kと923K,1323Kと973K,1323Kと1023K,1323Kと1073K,1373Kと873K,1373Kと923K,1373Kと973K,1373Kと1023K,1373Kと1073K,1423Kと873K,1423Kと923K,1423Kと973K,1423Kと1023K,1423Kと1073K,1473Kと873K,1473Kと923K,1473Kと973K,1473Kと1023K,又は1473Kと1073Kである。
第1熱間圧延と第2熱間圧延の圧下率の組合せは,例えば,40%と40%,40%と50%,40%と60%,40%と70%,40%と80%,50%と40%,50%と50%,50%と60%,50%と70%,50%と80%,60%と40%,60%と50%,60%と60%,60%と70%,60%と80%,70%と40%,70%と50%,70%と60%,70%と70%,70%と80%,80%と40%,80%と50%,80%と60%,80%と70%又は80%と80%である。
4.再結晶熱処理工程
次に,第2熱間圧延後の試料に対して,1073〜1373Kで再結晶熱処理を行う。このような温度で熱処理を行うことによって,第2熱間圧延によって変形された結晶組織が再生され,加工硬化が除去され,延性が向上するからである。上記温度範囲の下限の根拠は,1073Kより高い温度では,再結晶が十分に起こることである。上記温度範囲の上限の根拠は,1373Kよりも低い温度では,試料が溶融せず,かつ再結晶組織の結晶粒の成長が進みすぎないことである。
再結晶熱処理の具体的な温度は,例えば,1073K,1098K,1123K,1148K,1173K,1198K,1223K,1248K,1273K,1298K,1323K,1348K又は1373Kである。再結晶熱処理の温度の範囲は,上記具体的な温度として例示した数値の何れか2つの間であってもよい。
再結晶熱処理を行う時間は,特に限定されず,必要な延性が得られる程度に再結晶が起こる程度の時間であればよい。この時間は,熱処理後にビッカース硬さを測定する等によって適宜決定することができる。一般に,熱処理の温度が高ければ,再結晶に必要な時間は短くなり,温度が低ければ,再結晶に必要な時間は長くなる。再結晶熱処理を行う具体的な時間は,例えば,0.5h,1h,1.5h,2h,2.5h又は3hであるが,これより長くても短くてもよい。再結晶熱処理を行う時間の範囲は,上記具体的な時間として例示した数値の何れか2つの間であってもよい。
再結晶熱処理の温度と時間の組合せは,例えば,1073K−0.5h,1073K−1h,1073K−1.5h,1073K−2h,1073K−2.5h,1073K−3h,1123K−0.5h,1123K−1h,1123K−1.5h,1123K−2h,1123K−2.5h,1123K−3h,1173K−0.5h,1173K−1h,1173K−1.5h,1173K−2h,1173K−2.5h,1173K−3h,1223K−0.5h,1223K−1h,1223K−1.5h,1223K−2h,1223K−2.5h,1223K−3h,1273K−0.5h,1273K−1h,1273K−1.5h,1273K−2h,1273K−2.5h,1273K−3h,1323K−0.5h,1323K−1h,1323K−1.5h,1323K−2h,1323K−2.5h,1323K−3h,1373K−0.5h,1373K−1h,1373K−1.5h,1373K−2h,1373K−2.5h又は1373K−3hである。
以上の工程によって,本実施形態のFe3Al基金属間化合物の製造が完了する。
以下,本発明の具体例について説明する。
1.鋳塊作製工程
表1に示す8種類の組成になるようにFe,Al,Nb及びZrを秤量し,アーク溶解炉で溶解し,鋳造により,厚さ約10mmの鋳塊からなる試料を作製した。(使用した地金の純度は,Feが99.99%,Alが99.99%,Nbが99.9%,Zrが99.6%であった。)
アーク溶解炉の雰囲気は,まず,溶解室内を真空排気し,その後不活性ガス(アルゴンガス)に置換した。電極は,非消耗タングステン電極を用い,鋳型には水冷式銅ハースを使用した。
2.均質化熱処理工程
次に,上記工程で得られた表1の各試料に対して均質化熱処理を行った。均質化熱処理は,真空中で1373K−24hの条件で行った。
3.第1及び第2熱間圧延工程
次に,均質化熱処理後の試料に対して,第1及び第2熱間圧延を行った。第1及び第2熱間圧延は,図2(a)に示すプロセスに従って実施した。第1及び第2熱間圧延とも圧延中の試料温度の低下を防ぎ,圧延割れを抑制するために市販のステンレスパイプに試料を入れて行った。具体的には,第1熱間圧延は,1373K,40〜50パスで(パス数は,試料によって異なる。),全圧下率(各パスでの圧下率の合計)が60%になるまで行った。第1熱間圧延後の試料の厚さは,約4mmであった。
第2熱間圧延は,973K,30〜40パスで,全圧下率が60%になるまで行った。第2熱間圧延後の試料の厚さは,約1.6mmであった。
第2熱間圧延後の試料の外観写真の一例を図2(b)に示す。図2(b)に示すように上記第1及び第2熱間圧延によって試料が良好に圧延されて板状になったことが分かる。
4.再結晶熱処理工程
次に,熱間圧延後の試料に対して,熱処理を施した。熱処理は,873K−1h,973K−1h,1073K−1h,1173K−1h,1273K−1h,1373K−1h,1473K−1h,1573K−1hの8つの条件で行った。
4−1.ビッカース硬さ測定
次に,それぞれの条件で熱処理を行った試料について,室温で,ビッカース硬さ測定を行った。その結果を図3(a),(b)に示す。図3(a),(b)は,表1の各試料についての熱処理温度と,熱処理後のビッカース硬さとの関係を示すグラフである。図3(a),(b)には,熱処理を行わなかった試料についてビッカース硬さ測定を行った結果も併せて示した。
図3(a),(b)を参照すると,全体的な傾向として,1073K辺りまでは,ビッカース硬さが徐々に小さくなり,1073K〜1373Kではビッカース硬さがほぼ一定になり,1373Kを超えるとビッカース硬さが徐々に大きくなっていることが分かる。この結果は,1073Kより低い温度での熱処理では再結晶が十分に起こらない場合があり,1073K以上の温度での熱処理で再結晶が十分に起こることを示していると考えられる。実際に,0.5Nb試料では,973Kでの熱処理では再結晶が十分に起こっていないことが確認され,全ての試料において1073Kでの熱処理で再結晶が十分に起こっていることが確認された。
また,1373Kよりも高い温度では,熱処理の温度が高い程,ビッカース硬さが大きくなっているが,これは,1373Kよりの高い温度での熱処理では,第2相粒子がマトリックスに固溶することによる硬化,及び,高温熱処理によって試料中に導入される過剰な熱空孔による硬化に起因していると推察される。
従って,図3(a),(b)より,1073K〜1373Kでの再結晶熱処理が好ましいことが分かる。
4−2.SEM像撮影及び解析
次に,表1の各試料に1073K−1hの熱処理を施した試料(以下,「1073K熱処理試料」と呼ぶ)と,1273K−1hの熱処理を施した試料(以下,「1273K熱処理試料」と呼ぶ)について,SEM−BEI(電子顕微鏡反射電子像Scanning Electron Microscope-Backscattering Electron Image)と,SEM−SEI(電子顕微鏡二次電子像Scanning Electron Microscope-Secondary Electron Image)とを撮影した。1073K熱処理試料と,1273K熱処理試料についてのSEM像は,互いに類似していたので,ここでは,1073K熱処理試料についてのSEM像を示す。図4は,SEM−BEIであり,図5は,SEM−SEIを示す。
図4を参照すると,0.5Nb試料以外のSEM−BEIには,黒っぽいマトリックス中に白っぽい粒が分散して析出していることが分かる。この粒は,Fe2Nb又はFe2Zrからなる第2相である。Nb又はZrの添加量と,第2相の含有割合の関係を調べるために,図4のSEM−BEIを用いて,点算法により各試料の第2相体積率を求めた。また,1273K熱処理試料についても同様に第2相体積率を求めた。その結果を表2に示す。
表2を参照すると,(1)Nb又はZrの添加量が大きいものほど,第2相体積率が大きくなること,(2)同じ添加量で比較したとき,Zrを添加した場合の方が,Nbを添加した場合よりも第2相体積率が大きくなることが分かる。
表2に示すように0.5Nb試料では,第2相の析出が起こっていないが,1.5Nb試料では,第2相の析出が起こっているので,0.6at%程度以上のNbが添加された試料では,いくらかの第2相の析出が起こると考えられる。また,Nbが添加されているか否かに関わらず,0.1at%以上のZrが添加された全ての試料では,第2相の析出が起こっている。
次に,図5を参照すると,全ての試料において,再結晶組織が観察できることが分かる。図5のSEM−SEIを用いて,切片法により各試料の平均粒径を求めた。また,1273K熱処理試料についても同様に平均粒径を求めた。その結果を表3に示す。
表3を参照すると,全体的な傾向として,(1)Nb又はZrの添加量が大きいものほど,平均粒径が小さくなること,(2)同じ添加量で比較したとき,Zrを添加した場合の方が,Nbを添加した場合よりも平均粒径が小さくなることが分かる。
表2及び表3を照らし合わせると,全体的な傾向として,第2相体積率が大きなものほど平均粒径が小さくなっていることが分かる。このことは,第2相の粒子がマトリックス中に分散して存在することによってピンニング効果によってマトリックスの再結晶が抑制され,その結果,平均粒径が小さくなったことを示唆している。
4−3.室温引張試験
次に,熱処理を行っていない試料,1073K熱処理試料及び1273K熱処理試料について,室温,真空中,歪み速度1.66×10-4-1で引張試験を行った。試験片には,ゲージ部が長さ10mm,幅2mm,厚さ1mmのものを用いた。
図6(a),(b)に,表1の各試料についての,熱処理条件と降伏応力の関係を示すグラフを示し,図7(a),(b)に,表1の各試料についての,熱処理条件と最大引張強度の関係を示すグラフを示す。また,図6(a),(b)及び図7(a),(b)の元データを表4に示す。
図6(a),(b)及び図7(a),(b)には,2元系Fe3Al試料(NbとZrの何れも含まない試料。)についてのデータも併せて示した。この試料のデータは,C.G. McKamey, J.A. Horton and C.T. Liu. Scripta METALLURGICA, 22(1988), 1679-1681.に記載されているものを引用した。
図6(a),(b)及び図7(a),(b)を参照すると,0.5Nb試料については,降伏応力と最大引張強度の両方が,2元系Fe3Al試料と同程度か若干改善された程度であり,0.5Nb試料以外の全ての試料については,降伏応力と最大引張強度の両方が,2元系Fe3Al試料よりも高くなっていることが分かる。0.5Nb試料以外の全ての試料では,第2相中にマトリックス粒子が分散しており,それによって,降伏応力と最大引張強度の両方が,改善されたと考えられる。
次に,図8(a),(b)に,表1の各試料についての,熱処理条件と伸びの関係を示すグラフを示す。また,図8(a),(b)の元データを表5に示す。
図8(a),(b)には,2元系Fe3Al試料についてのデータも併せて示した。この試料のデータは,C.G. McKamey, J.A. Horton and C.T. Liu. Scripta METALLURGICA, 22(1988), 1679-1681.に記載されているものを引用した。
図8(a),(b)を参照すると,Zrの含有量が0.25at%以上の全ての試料において,2元系Fe3Al試料よりも伸びが向上していることが分かる。伸びが向上した要因は必ずしも明らかではないが,0.25at%以上のZrの添加によってFe2Zr相が比較的高い割合で析出し(表2を参照),(1)析出したFe2Zr相によるピンニング効果によってマトリックスの結晶粒の平均粒径が比較的小さくなり(表3を参照),このために粒界面積が増加し,粒界での転位の発生頻度が増えることや(2)析出したFe2Zr相とマトリックスとの界面が転位の発生源となり可動転位が活動することなどが,伸びが向上した要因であると推測される。
4−4.高温引張試験
次に,1073K熱処理試料について,873K,真空中,歪み速度1.66×10-4-1で引張試験を行った。試験片には,ゲージ部が長さ10mm,幅2mm,厚さ1mmのものを用いた。
図9に,表1の各試料についての,降伏応力,最大引張強度及び伸びを示す。また,図9の元データを表6に示す。
図9には,参考として2元系Fe3Al試料の圧縮データも併せて示した。この試料のデータは,M. Palm. Intermetallics, 13(2005), 1286-1295.に記載されているものを引用した。
図9を参照すると,0.5Nb試料と0.5Nb0.1Zr試料では,降伏応力が,2元系Fe3Al試料と同程度か若干改善された程度であり,0.5Nb試料と0.5Nb0.1Zr試料以外の全ての試料では,降伏応力が,2元系Fe3Al試料よりも高くなっていることが分かる。
また,図9及び表6を参照すると,0.5Nb試料と0.5Nb0.1Zr試料では,最大引張強度が250MPa程度であったが,0.5Nb試料と0.5Nb0.1Zr試料以外の全ての試料では,最大引張強度が330MPa以上であったことが分かる。
また,図9及び表6を参照すると,0.5Nb試料と0.5Nb0.1Zr試料では,伸びが10%であったが,0.5Nb試料と0.5Nb0.1Zr試料以外の全ての試料では,伸びが20%以上であったことが分かる。
このように,高温引張試験では,0.5Nb試料及び0.5Nb0.1Zr試料以外の試料において良好な結果が得られた。以下,この要因について考察する。
表2に示すように,0.5Nb試料では第2相が析出しておらず,0.5Nb0.1Zr試料では第2相体積率が比較的小さい値(0.3%)になっている。一方,0.5Nb試料と0.5Nb0.1Zr試料以外の全ての試料では,第2相体積率が1%を超えている。高温引張試験の結果と,表2とを照らし合わせると,1%以上の割合で第2相が存在することが高温での強度及び伸びを向上させる要因になっていると考えられる。また,表2を参照すると,Zrの含有量を0.25〜2at%にするか,又はNbの含有量を1〜2at%にすれば第2相を1%以上の割合で存在させることができると考えられる。
参考図である,Fe−Al2元系状態図(「Alloy Phase Diagrams, Vol.1, edited by T. B. Massalski, J.L. Murray, L. H. Bennett, H. Baker (American Society for Metals, Metals Park, OH, 1986),p.112.」から引用)である。 (a)は,本発明の具体例での熱間圧延プロセスの概略図であり,(b)は,第2熱間圧延後の試料の外観写真の一例を示す。 (a),(b)は,本発明の具体例に係る,表1の各試料についての熱処理温度と,熱処理後のビッカース硬さとの関係を示すグラフである。 本発明の具体例に係る,表1の各試料に1073K−1hの熱処理を施した試料についてのSEM−BEIを示す。 本発明の具体例に係る,表1の各試料に1073K−1hの熱処理を施した試料についてのSEM−SEIを示す。 (a),(b)は,本発明の具体例に係る,表1の各試料についての室温での,熱処理条件と降伏応力の関係を示すグラフである。 (a),(b)は,本発明の具体例に係る,表1の各試料についての室温での,熱処理条件と最大引張強度の関係を示すグラフである。 (a),(b)は,本発明の具体例に係る,表1の各試料についての室温での,熱処理条件と伸びの関係を示すグラフを示す。 本発明の具体例に係る,表1の各試料についての873Kでの,降伏応力,最大引張強度及び伸びを示す。

Claims (6)

  1. Al:23〜33at%と,NbとZrの合計:0.5〜2at%を含有し,残部がFe及び不可避不純物からなる鋳塊に対して均質化熱処理を施した後,
    1173〜1473Kで第1熱間圧延し,873〜1073Kで第2熱間圧延し,
    1073〜1373Kで再結晶熱処理する工程を備えるFe3Al基金属間化合物の製造方法。
  2. Zrの含有量が0.1〜2at%であるか,又はNbの含有量が0.6〜2at%である請求項1に記載の方法。
  3. Zrの含有量が0.25〜2at%であるか,又はNbの含有量が1〜2at%である請求項1に記載の方法。
  4. Zrの含有量が0.25〜2at%である請求項1に記載の方法。
  5. 第1熱間圧延及び第2熱間圧延は,それぞれ圧下率40%以上で行う請求項1に記載の方法。
  6. 請求項1〜5の何れか1つの方法によって製造されたFe3Al基金属間化合物。
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