JP2008001890A - 無機皮膜付き製品並びにそのための無機塗料及びその製造方法 - Google Patents

無機皮膜付き製品並びにそのための無機塗料及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】無機皮膜付き製品について、優れた耐汚染性と製造コストの低廉化とを実現しつつ、より高い耐水性、平滑性及び光沢性を実現する。
【解決手段】無機塗料は下塗り用塗料2と上塗り用塗料3とからなる。下塗り用塗料2は、水ガラスと水ガラス用硬化材4と骨材とを含む。上塗り用塗料3は、水ガラスを含み、水ガラス用硬化材4を含まない。下塗り用塗料2の水ガラスはナトリウム水ガラス及びカリウム水ガラスを含む。第1工程において、基材1上に下塗り用塗料2を塗布し、下塗り層2aを形成する。第2工程において、下塗り層2a上に上塗り用塗料3を塗布し、上塗り層3aを形成する。第3工程において、下塗り層2a及び上塗り層3aを常温以上の温度に加熱して無機皮膜付き製品10を得る。
【選択図】図2

Description

本発明は無機皮膜付き製品並びにそのための無機塗料及びその製造方法に関する。
従来、基材上にガラス質の無機皮膜が形成された無機皮膜付き製品としては、無機塗料を施した製品や琺瑯製品が知られている。これら無機皮膜付き製品は、無機皮膜がガラス質であることから、皮膜が有機物からなる製品と比べ、耐候性、耐薬品性等に優れるという特質を有している。
これらのうち、無機塗料を施した製品は、基材として、珪酸カルシウム板、セメント板、スレート板等の無機質の基材が用いられ、水ガラスを含む無機塗料が用いられていた。この無機塗料を用いて製品を製造する場合、まず第1工程として、基材上に無機塗料を塗布し、基材上に塗り層を形成する。そして、第2工程として、基材と塗り層とを例えば140°Cに加熱するとともに、塗り層の脱アルカリ処理を行う。こうして、無機塗料を施した製品が得られる。
特に、特許文献1には、水ガラスと水ガラス用硬化材と骨材とを含む下塗り用塗料と、水ガラスと水ガラス用硬化材とを含む上塗り用塗料とからなる無機塗料が開示されている。特許文献1では、下塗り用塗料及び上塗り用塗料の水ガラス用硬化材として、亜鉛華が用いられている。この無機塗料を用いて製品を製造する場合、まず第1工程として、基材上に下塗り用塗料を塗布し、基材上に下塗り層を形成する。この後、第2工程として、下塗り層上に上塗り用塗料を塗布し、下塗り層上に上塗り層を形成する。そして、第3工程として、基材と下塗り層及び上塗り層とを例えば140°Cに加熱するとともに、下塗り層及び上塗り層の脱アルカリ処理を行う。こうして、無機塗料を施した製品が得られる。
他方、琺瑯製品は、基材として、鋼板等の金属質の基材が用いられ、琺瑯釉薬が用いられていた。琺瑯釉薬は、通常、硼珪酸フリットを水や粘土とともにスリップ状にしたものである。この琺瑯釉薬を用いて琺瑯製品を製造する場合、まず第1工程として、基材上に琺瑯釉薬を塗布し、基材上に釉薬層を形成する。そして、第2工程として、基材と釉薬層とを通常600°C程度以上の温度に加熱する。こうして、琺瑯製品が得られる。
特開2000−327949号公報
しかし、上記特許文献1開示の無機塗料等、水ガラスを含む従来の無機塗料を用いた無機皮膜付き製品は、無機皮膜の表面が凹凸を有するものとなっており、光沢のある表面性状を呈しない。特に、その製品は、例えばレンジフィルタ等のように、油汚れに対する耐汚染性が要求されるものに使用される場合、油汚れが表面から落ち難くなってしまっている。
一方、琺瑯製品である無機皮膜付き製品は、光沢のある表面性状を呈し、かつガラス質に基づく親水性によってある程度の油汚れに対する耐汚染性を発揮するものの、600°C程度以上の温度に加熱される必要性があり、製造コストの低廉化が困難である。
このため、出願人は、特願2004−348979号において、水ガラスと水ガラス用硬化材と骨材とを含む下塗り用塗料と、水ガラス及びシリカ微粒子を含み、水ガラス用硬化材を含まない上塗り用塗料とからなる無機塗料を提案した。この無機塗料によれば、無機皮膜付き製品について、光沢のある表面性状を呈し、かつ優れた親水性によって油汚れに対する優れた耐汚染性を発揮するとともに、製造コストの低廉化を実現することができる。
しかしながら、発明者らの試験結果によれば、上記提案の無機塗料では、基材上に形成された下塗り層及び上塗り層からなる塗り層が加熱時に発泡したり、得られる無機皮膜付き製品の無機皮膜にクラックを生じたりする場合があった。これでは、浴室、洗面、キッチン等の水廻りで使用できる程の十分な耐水性が得られない。また、この無機塗料では、無機皮膜付き製品の無機皮膜の平滑性や光沢性が十分でない場合もあった。
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、無機皮膜付き製品について、優れた耐汚染性と製造コストの低廉化とを実現しつつ、より高い耐水性、平滑性及び光沢性を実現することを解決すべき課題としている。
発明者らは、上記課題を解決するため、さらに鋭意研究を行なった。そして、本発明の課題解決のためには、上記提案における下塗り用塗料中の水ガラスを限定することが有効であることを発見し、本発明を完成させるに至った。
本発明の無機塗料は、水ガラスと水ガラス用硬化材と骨材とを含む下塗り用塗料と、水ガラスを含み、水ガラス用硬化材を含まない上塗り用塗料とからなり、
該下塗り用塗料の水ガラスはナトリウム水ガラス及びカリウム水ガラスを含むことを特徴とする。
本発明の無機塗料は以下の本発明の無機皮膜付き製品の製造方法に用いられる。すなわち、本発明の製造方法は、基材上に水ガラスと水ガラス用硬化材と骨材とを含む下塗り用塗料を塗布し、該基材上に下塗り層を形成する第1工程と、該下塗り層上に水ガラスを含み、水ガラス用硬化材を含まない上塗り用塗料を塗布し、該下塗り層上に上塗り層を形成する第2工程と、該下塗り層及び該上塗り層を常温以上の温度で加熱して無機皮膜付き製品を得る第3工程とを備え、
前記下塗り用塗料の水ガラスはナトリウム水ガラス及びカリウム水ガラスを含むことを特徴とする。
本発明の無機塗料の下塗り用塗料は水ガラス用硬化材を含むものの、上塗り用塗料は水ガラス用硬化材を含まない。水ガラス用硬化材を含まない上塗り用塗料からなる上塗り層は、第3工程において、加熱により水ガラス中の水分が除去されるのであるが、下塗り用塗料のみから形成した無機皮膜と、この下塗り用塗料及び水ガラス用硬化材を加えた上塗り用塗料から形成した無機皮膜とは、水ガラス用硬化材が溶出したり、化学変化したりするので、耐水性、耐候性が低い。すなわち、水ガラス用硬化材が表面に露出していないことが無機皮膜の耐候性を保証するために重要である。
発明者らの試験によれば、上塗り層は、自身が水ガラス用硬化材を有していなくても、下方の下塗り用塗料からなる下塗り層中の水ガラス用硬化材の影響によって硬化される。第2工程及び第3工程中に下塗り層中の水ガラス用硬化材が上塗り層内部に突出すると考えられるからである。また、第3工程中に下塗り層中のアルカリイオンが水ガラス用硬化材の作用で不溶化、すなわち非イオン化されることで、下塗り層中のアルカリイオン濃度が低下することが駆動力となり、上塗り層から下塗り層にアルカリイオンが移動し、SiO2濃度の非常に高い上塗り層が形成される。こうして、無機皮膜は極めて高い耐水性を発現すると考えられる。
このため、得られる無機皮膜付き製品は、光沢のある表面性状を呈し、かつ優れた親水性によって油汚れに対する優れた耐汚染性を発揮することができる。
なお、特開2000−109722号公報には、水ガラスとシリカ微粒子とを含み、水ガラス用硬化材を含まない無機塗料が開示されている。この無機塗料は、水ガラスの水酸基がシリカ微粒子の水酸基と脱水反応を生じることによって硬化する。しかしながら、この無機塗料によって得られた無機皮膜は、発明者らの試験結果によれば、水に溶解してしまうおそれがあるのである。シリカ微粒子のみでは水ガラスの硬化が不充分であり、耐水性、耐候性が著しく劣る。水ガラスの硬化を充分に行なわせ、耐水性、耐候性を向上させるためには、水ガラス用硬化材を含む下塗り層上に水ガラスを含む上塗り層を施す必要がある。
さらに、本発明の無機塗料は、下塗り用塗料の水ガラスがナトリウム水ガラス及びカリウム水ガラスを含む。発明者らの試験結果によれば、この無機塗料を用いれば、基材上に形成された下塗り層及び上塗り層からなる塗り層が加熱時に発泡し難く、かつ得られる無機皮膜付き製品の無機皮膜にクラックを生じ難い。発明者らによれば、この原因は以下のように考察される。
すなわち、ナトリウム水ガラスは、水ガラス用硬化材との相性がよく、耐水性に優れた無機皮膜を形成する一方、硬化温度を高くすると発泡しやすくなるとともに、無機皮膜にクラックをやや生じ易い特性を有している。他方、カリウム水ガラスは、水ガラス用硬化材との相性が悪く、無機皮膜の耐水性は十分でない一方、硬化温度を高くしても発泡し難く、かつ無機皮膜にクラックを生じ難い特性を有している。硬化温度を高くすれば、耐水性を底上げしたり、皮膜の硬度を増したりするなどの効果が生じる。但し、カリウム水ガラスのみで硬化温度を高くしても十分な耐水性は得られない。下塗り用塗料は、これらナトリウム水ガラス及びカリウム水ガラスを含むことから、互いに自己の欠点を補い、優れた無機皮膜を形成できると考察される。
また、ナトリウム水ガラスは平滑性及び光沢性が十分でない皮膜を形成し易い一方、カリウム水ガラスは平滑性及び光沢性に優れた皮膜を形成し易い。このため、カリウム水ガラスを含む下塗り用塗料は、無機皮膜の平滑性及び光沢性も向上させることができる。
このため、本発明の無機塗料及び製造方法によれば、下塗り層及び上塗り層からなる塗り層を例えば200°C以上のより高温で加熱しても塗り層の発泡を抑制することができるため、耐水性に優れ、かつ平滑性及び光沢性に優れた無機皮膜付き製品を製造することができる。また、第1工程から第2工程までの時間管理を比較的緩くしたり、40〜150°Cの予熱をかけながら第1工程及び/又は第2工程を行ったりしても、優れた無機皮膜付き製品を安定して製造することができる。
さらに、本発明の製造方法では、第3工程において常温以上の温度に加熱するだけであり、エネルギーの消費量が琺瑯製品を製造するよりも少ない。また、本発明の製造方法においては、上塗り用塗料が高価な水ガラス用硬化材を含まない点においてもコストダウンが実現されている。
こうして、本発明の無機皮膜付き製品が得られる。この無機皮膜付き製品は、基材と、該基材上に形成された無機皮膜とからなる無機皮膜付き製品であって、
前記無機皮膜は、前記基材上に形成され、水ガラス用硬化材が残留された状態で、骨材と硬化された水ガラスとを含む下層と、該下層上に形成され、水ガラス用硬化材を有さない状態で、硬化された水ガラスを含む上層とからなり、
前記下層の水ガラスはナトリウム水ガラス及びカリウム水ガラスを含むことを特徴とする。
したがって、本発明の無機塗料や製造方法によれば、無機皮膜付き製品について、優れた耐汚染性と製造コストの低廉化とを実現しつつ、より高い耐水性、平滑性及び光沢性を実現することができる。
また、本発明の無機皮膜付き製品は、優れた耐汚染性と製造コストの低廉化とを実現しつつ、より高い耐水性、平滑性及び光沢性を実現することができる。また、この無機皮膜付き製品は、安価に製造可能である。このため、この無機皮膜付き製品は、優れた美観を呈しつつ、浴室、洗面、キッチン等の水廻りで十分な実使用が可能である。
下塗り用塗料に含まれる水ガラス用硬化材としては、メタリン酸アルミニウム(Al(PO33)、トリポリリン酸二水素アルミニウム(AlH2310・H2O)、第三リン酸アルミニウム(オルソリン酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、AlPO4)、第二リン酸アルミニウム(Al2(HPO43)、第一リン酸アルミニウム(リン酸二水素アルミニウム、重リン酸アルミニウム、モノリン酸アルミニウム、Al(H2PO43)、リン酸ジルコニウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸亜鉛カルシウム、リン酸アンモニウム、リン酸鉄、リン酸チタニウム、リン酸硼素、酸化マグネシウム、珪弗化カリウム、珪弗化カルシウム、活性亜鉛華、塩基性炭酸亜鉛、金属アルミニウム粉末、珪弗化ナトリウム、珪弗化亜鉛、水酸化アルミ二ウム、塩化アルミニウム、ゼオライト、Na人工ゼオライト、Fe人工ゼオライト、メタカオリン、亜鉛華(酸化亜鉛)、酸化カルシウム、カオリナイト、スポジュメン粉末、珪弗化鉛、珪弗化銅、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸二石灰、珪酸マグネシウム、フェロシリコン、マンガンシリコン、シリコンナイトライト、シリコンカーバイト、シリコンボライト、シリコンホスフェート、第一リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、ベントナイト、雲母、セピオライト、鹿沼土、珪藻土、アロフェン、硼酸ジルコニウム、硼酸ナトリウム、硼酸カリウム、硼酸珪素、硼酸カルシウム、酢酸、酢酸アンモニウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸アルミニウム、酢酸マンガン、酢酸亜鉛、蓚酸アルミニウム、蓚酸アンモニウム、蓚酸カルシウム、蓚酸マグネシウム、蓚酸鉄(II)、蓚酸マンガン(II)、蓚酸チタンカリウム、蓚酸カリウムチタン、蓚酸亜鉛、メタノール、エタノール、プロパノール、焼石膏、フリット等であるリン酸化合物、水酸化物、酸化物等を採用することができる。
下塗り用塗料が骨材を含むことにより、耐水性及び耐候性のある無機皮膜が得られる。下塗り用塗料に含まれる骨材としては、珪石粉末(二酸化珪素)、ジルコニア(酸化ジルコニウム)、ジルコン(珪酸ジルコニウム)、マグネシア(酸化マグネシウム)、スピネル、炭化珪素、酸化チタン、アルミナ(酸化アルミニウム)、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム等の酸化物、炭酸化物、炭化物、窒化物、金属粉末、珪酸系鉱物、顔料等を採用することができる。
下塗り塗料の調合の際に分散剤を添加することもできる。分散剤を添加することで、分散性の向上や粘性の調整が可能となり、下塗り用塗料を取り扱い易くなる。分散剤としては、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム等の無機分散剤を採用することができる。
下塗り用塗料が顔料を含む場合、その顔料も無機顔料であることが好ましい。これにより皮膜の無機性を維持できるからである。
発明者らの試験結果によれば、下塗り用塗料の水ガラスは、ナトリウム水ガラスとカリウム水ガラスとの混合比がK2O/Na2Oのモル比で0.0178〜0.1781であることが好ましい。カリウム水ガラスが少なすぎると、塗り層が発泡しやすく、高い温度で硬化させることができない。逆に、カリウム水ガラスが多すぎると、水ガラス用硬化材が効きにくく、耐水性が低下する。このため、下塗り用塗料中のナトリウム水ガラスとカリウム水ガラスとの混合比がこの範囲内であれば、本発明の効果をより確実に奏することができる。
下塗り用塗料の水ガラスはリチウム水ガラスを含むことがより好ましい。すなわち、リチウム水ガラスは、水ガラス用硬化材との相性がカリウム水ガラス程悪くなく、高いレベリング性を有している。このため、下塗り用塗料がナトリウム水ガラス及びカリウム水ガラス以外にリチウム水ガラスを含めば、無機皮膜の耐水性が向上し、かつ平滑性及び光沢性がより向上する。但し、リチウム水ガラスは、硬化温度が比較的低く、無機皮膜にクラックを生じ易い特性を有しているため、過剰な含有は耐水性や耐汚染性の低下等を招くおそれがある。
上塗り用塗料にシリカ微粒子を含ませてもよい。シリカ微粒子としては、アエロジル、シリカフューム、コロイダルシリカ、マイクロシリカ等を採用することができる。シリカ微粒子は、平均粒径が1μm以下であることが好ましい。この場合、無機皮膜付き製品の表面性状に光沢性をもたせることができる。また、シリカ微粒子を含ませると、塗料の粘性が上がるため、粘性の度合いを調整することができる。
上塗り塗料に顔料を含ませる場合、その顔料は無機顔料であることが好ましい。これにより皮膜の無機性を維持できるからである。下塗り塗料が顔料を含んで有色の塗膜を形成するものであれば、上塗り塗料が顔料を含まずに透明なガラス膜を形成するものであっても、有色の無機皮膜付き製品となる。また、上塗り塗料の調合の際に上記分散剤を添加することもできる。分散剤を添加することで、分散性の向上や粘性の調整が可能となり、上塗り用塗料を取り扱い易くなる。
上塗り用塗料の水ガラスはカリウム水ガラス及びリチウム水ガラスを含むことが好ましい。上記カリウム水ガラス及びリチウム水ガラスの特質から、上塗り用塗料がこれらを含めば、無機皮膜の平滑性及び光沢性がより向上する。また、これらを含む上塗り塗料によれば、予熱をかけながら上塗り層を形成しても無機皮膜の平滑性及び光沢性を損ない難いことから、上塗り層の定着性が上がり、生産性が向上する。
上塗り用塗料の水ガラスは、カリウム水ガラスとリチウム水ガラスとの混合比がLi2O/K2Oのモル比で0.0077〜0.2323であることが好ましい。リチウム水ガラスが少なすぎると、レベリング性向上の作用が得られない。逆に、リチウム水ガラスが多すぎると、塗り層に発泡が生じやすく、かつ無機皮膜にクラックが生じやすくなる。このため、上塗り用塗料中のカリウム水ガラスとリチウム水ガラスとの混合比がこの範囲内であれば、本発明の効果をより確実に奏することができる。
発明者らの試験結果によれば、下塗り用塗料は、(水ガラス用硬化材及び骨材)/(水ガラス中のSiO2分)の質量比で1.5〜3.7であることが好ましい。水ガラス用硬化材及び骨材(以下、「粉末状固形分」という。)が少なすぎると、無機皮膜にクラックを生じ易い。逆に、粉末状固形分が多すぎると、表面がザラザラとなり、平滑性及び光沢性が得られない。このため、下塗り用塗料中の粉末状固形分と水ガラス中のSiO2分との質量比がこの範囲内であれば、本発明の効果をより確実に奏することができる。
また、発明者らの試験結果によれば、水ガラス用硬化材は耐水性向上材であり、下塗り用塗料は、耐水性向上材/(水ガラス中のアルカリ酸化物分)の質量比で1.0〜3.0であることが好ましい。
下塗り用塗料に含まれる水ガラス用硬化材のうち、耐水性を格段に向上させる効果をもつものを耐水性向上材と呼ぶ。また、水ガラス中のアルカリ酸化物分とは、水ガラス中のアルカリ分を酸化物に換算した値である。耐水性向上材がこの質量比で1.0未満では十分な耐水性が得られない。一方、耐水性向上材がこの質量比で3.0を超えれば水ガラスと混合した際に塗料の粘度の増加が顕著になり、塗布し難い塗料となり、外観(平滑性)、耐水性、密着性及び耐久性に優れた無機皮膜が得られにくい。発明者らはメタリン酸アルミニウムを耐水性向上材として採用した場合にこの作用効果を確認している。
耐水性向上材は、以下のレベル1〜3のものであり得る。レベル1の耐水性向上材がレベル2の耐水性向上材より好ましく、レベル2の耐水性向上材がレベル3の耐水性向上材より好ましい。
(1)レベル1
メタリン酸アルミニウム(Al(PO33
(2)レベル2
トリポリリン酸二水素アルミニウム(AlH2310・H2O)、第三リン酸アルミニウム(オルソリン酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、AlPO4)、第二リン酸アルミニウム(Al2(HPO43)、第一リン酸アルミニウム(リン酸二水素アルミニウム、重リン酸アルミニウム、モノリン酸アルミニウム、Al(H2PO43)、リン酸ジルコニウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸亜鉛カルシウム、リン酸アンモニウム、リン酸鉄、リン酸チタニウム、リン酸硼素、酸化マグネシウム、珪弗化カリウム、珪弗化カルシウム
(3)レベル3
活性亜鉛華、塩基性炭酸亜鉛、金属アルミニウム粉末、珪弗化ナトリウム、珪弗化亜鉛、水酸化アルミ二ウム、塩化アルミニウム、ゼオライト、Na人工ゼオライト、Fe人工ゼオライト、メタカオリン
耐水性向上材は、メタリン酸アルミニウム(Al(PO33)、トリポリリン酸二水素アルミニウム(AlH2310・H2O)、第三リン酸アルミニウム(オルソリン酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、AlPO4)、第二リン酸アルミニウム(Al2(HPO43)、第一リン酸アルミニウム(リン酸二水素アルミニウム、重リン酸アルミニウム、モノリン酸アルミニウム、Al(H2PO43)、リン酸ジルコニウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸亜鉛カルシウム、リン酸アンモニウム、リン酸鉄、リン酸チタニウム、リン酸硼素、酸化マグネシウム、珪弗化カリウム及び珪弗化カルシウムの1種又は2種以上であることが好ましい。発明者らの試験結果によれば、耐水性向上材はメタリン酸アルミニウムであることが極めて好ましい。
特に、メタリン酸アルミニウムを含む場合とこれを含まない場合とにおいては、無機皮膜の耐水性、密着性及び耐久性に大きな差があり、メタリン酸アルミニウムを含む場合には、これらの性能において特段の効果を奏することが確認された。このため、水ガラス用硬化材の少なくとも一部はメタリン酸アルミニウムであることが好ましい。すなわち、メタリン酸アルミニウムは、水ガラスとの反応性が高すぎずかつ低すぎず、最適である。すなわち、メタリン酸アルミニウムは、常温で水ガラスとの反応が著しく進むことがない。このため、塗装に最適な粘度の塗料が得られる。また、時間とともにその塗料の粘度が増加していく速度も比較的遅いことから、塗料としての可使時間(ポットライフ)を長くすることができる。塗装後の加熱処理の際、メタリン酸アルミニウムと水ガラスとが下記の式1又は式2によって反応し、水ガラス中のアルカリ分を不溶化することで優れた耐水性を発現する。この結果、無機皮膜の耐水性、密着性及び耐久性が高くなる。
式1…Na2O・xSiO2+Al(PO33+H2O→Na2AlP310+xSiO2・H2Ogel
式2…Na2O・xSiO2+Al(PO33+H2O→リン酸ナトリウム系化合物+xSiO2(Al含)・H2Ogel
なお、式2のリン酸ナトリウム系化合物は、リン酸ナトリウム、結晶水を有するリン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、結晶水を有するリン酸水素ナトリウム等であり得る。また、SiO2(Al含)・H2Ogelは、Al3+がガラス骨格として含まれたシリカゲルを示す。
発明者らの試験結果によれば、骨材の一部は、平均粒径/厚みの扁平率が10以上である扁平状微粒子であることが好ましい。このような扁平状微粒子を採用すれば、スレート板と同様、キズの原因となる突起が扁平状微粒子上を滑るため、キズ付きが軽減されると考えられる。
また、発明者らの試験結果によれば、下塗り用塗料は、扁平状微粒子を1〜10質量%含むことが好ましい。扁平状微粒子の添加量が1質量%未満では、無機皮膜の耐キズ性が低く、無機皮膜にキズが付き易い。一方、扁平状微粒子の添加量が10質量%を超えても、耐キズ性向上の効果が低下する。また、扁平状微粒子の添加量が10質量%を超えれば、クラックの耐性の低下、塗料粘度の増加等から、無機皮膜の性能が低下する。発明者らは板状アルミナを扁平状微粒子として採用した場合にこの作用効果を確認している。
また、扁平状微粒子は、平均粒径が0.5〜5μmであることが好ましい。平均粒径が0.5μm未満であれば耐キズ性の効果が低く、平均粒径が5μmを超えれば扁平状微粒子が突起によって割れ易く、逆に耐キズ性が損なわれる。
扁平状微粒子は板状アルミナであることが好ましい。板状アルミナは上記の扁平状微粒子の条件を満たし易く、耐キズ性に優れた無機皮膜が得られる。また、板状アルミナは耐アルカリ性を有し、水ガラスと混ぜても溶解せず、かつ水ガラスとの密着性に優れ、耐クラック、チッピング防止の点で優れた無機皮膜が得られる。
上塗り用塗料は、下方の下塗り層中の水ガラス用硬化材の影響で硬化される必要性から、薄い上塗り層とされることが好ましい。具体的には、上塗り層の厚みは0.1μm〜10μmであることが好ましい。上塗り層の厚みが0.1μm未満では無機皮膜の光沢が損なわれる。また、上塗り層の厚みが10μmを超えれば、硬化が不十分になって耐水性が損なわれる。上塗り層の厚みが10μmを超えれば、加熱処理の際に上塗り層中のカリウムイオンやリチウムイオンが下塗り層に移動し難く、上塗り層中にカリウムイオンやリチウムイオンが残留し、耐水性が低下することも予測される。上塗り層の厚みは1μm〜8μmであることがより好ましい。
基材としては、珪酸カルシウム板、セメント板、スレート板等の無機質のものばかりでなく、鋼板、アルミニウム板、ステンレス板、亜鉛メッキ鋼板等の金属質のものの他、木材等の耐熱温度の低いものも採用することができる。ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル、FRP等の樹脂材料を基材として採用することもできる。また、プライマー層、釉薬層等を塗布した基材も採用することができる。
本発明の製造方法は、第3工程において、100°C以上の温度に加熱することが好ましい。140°C〜300°Cの温度で加熱することがより好ましい。発明者らの試験結果によれば、これにより無機塗料から水をより確実に蒸発させることができ、耐水性を向上させることができる。板状アルミナを扁平状微粒子として採用する場合には、加熱脱水による収縮クラックの発生が抑制されることから、水分をより蒸発させ易くするため、200°C〜300°Cの温度で加熱することがさらに好ましい。
加熱処理を行うことで、水ガラス中の水分が蒸発して水ガラス中のSiO2分が脱水縮合して強固なガラスを形成し、耐水性が向上する。同時に、水ガラス用硬化材、特に耐水性向上材が水ガラス中のアルカリ成分を不溶化することでも耐水性が向上する。さらに、上塗り層は、水ガラス用硬化材を含まないものの、下塗り層の表面に存在する水ガラス用硬化材の影響によってアルカリ成分が不溶化されるとともに、下塗り層中のアルカリイオンが水ガラス用硬化材の作用で不溶化、すなわち非イオン化されることで下塗り層中のアルカリイオン濃度が低下することが駆動力となり、上塗り層から下塗り層にアルカリイオンが移動し、SiO2濃度の非常に高い上塗り層が形成される。こうして、本発明に係る無機皮膜は極めて高い耐水性を発現すると考えられる。
また、本発明の製造方法では、第3工程後、脱アルカリ処理が不要となる。これは、加熱処理による耐水性向上効果(水ガラスの脱水縮合、水ガラス用硬化材によるアルカリ成分の不溶化、上塗り層中のアルカリ成分の下塗り層への移動)により、高い耐水性をもつ無機皮膜が得られるからである。脱アルカリ処理を行わなければ、上塗り層の表面が荒らされることがない。また、脱アルカリ処理に伴う洗浄、乾燥等も行う必要がなく、優れた生産性を発揮することができる。但し、硬化温度が低い場合(200°C未満)には、アルカリ成分が比較的溶出しやすいため、第3工程後、脱アルカリ処理を行うことによって耐水性を向上させることができる。
第1工程及び第2工程は、基材を加温しながら行われることが好ましい。この場合、下塗り層や上塗り層が適度に乾燥して下塗り用塗料や上塗り用塗料が垂れ難く、下塗り層や上塗り層の膜厚を均一化できる。また、下塗り用塗料や上塗り用塗料の骨材が沈降し難くなる。発明者らの試験結果によれば、基材の加温温度は40〜90°Cであることが好ましい。基材の加温温度が40°Cより低ければ、下塗り用塗料や上塗り用塗料が垂れたり、塗装時間が長くなる。基材の加温温度が90°Cを超えれば、塗装面がざらつき易く、平滑な無機皮膜が得られ難い。
以下、図面を参照しつつ、本発明を試験品1〜50に基づいて説明する。
まず、図1(a)に示すように、ステンレス製の基材1(10cm×10cm)を用意した。また、無機塗料として、表1〜3に配合割合(質量部)を示す下塗り用塗料2及び上塗り用塗料3(図1(b)、(c)参照)を用意した。ここで、ナトリウム水ガラス3号は、SiO2が29.0質量%、Na2Oが9.5質量%、水が61.5質量%のものである。ナトリウム水ガラス4号は、SiO2が24.0質量%、Na2Oが6.5質量%、水が69.5質量%のものである。カリウム水ガラス2Kは、SiO2が20.5質量%、K2Oが9.0質量%、水が70.5質量%のものである。リチウム水ガラス75は、SiO2が20.0質量%、Li2Oが1.3質量%、水が78.7質量%のものである。各下塗り用塗料2及び各上塗り用塗料3は、それぞれアルミナ製のポット及びボールを用いて混合及び粉砕を行ったものである。また、顔料は無機顔料である。
Figure 2008001890
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表4〜6では、各下塗り用塗料2におけるナトリウム水ガラスとカリウム水ガラスとの混合比をK2O/Na2Oのモル比で、またリチウム水ガラスとナトリウム水ガラスとの混合比をLi2O/Na2Oのモル比で示す。また、各下塗り用塗料2における(水ガラス用硬化材及び骨材)/(水ガラス中のSiO2分)と、耐水性向上材/(水ガラス中のアルカリ酸化物分)との質量比もこれらの表に示す。
また、各上塗り用塗料3におけるリチウム水ガラスとカリウム水ガラスとの混合比をLi2O/K2Oのモル比でこれらの表に示す。
Figure 2008001890
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そして、第1工程として、図1(b)に示すように、基材1に対して下方から温風を吹きかけて基材1を65±5°Cに加温しつつ、基材1上に下塗り用塗料2をスプレーにより塗布し、基材1上に下塗り層2aを形成した。下塗り用塗料2の塗布量は1.5gであり、下塗り層2aの厚みは20〜40μmである。
次いで、第2工程として、図1(c)に示すように、基材1を同様に65±5°Cに加温しつつ、下塗り層2a上に上塗り用塗料3をスプレーにより塗布し、下塗り層2a上に上塗り層3aを形成した。上塗り用塗料3の塗布量は0.5gであり、上塗り層3aの厚みは1〜8μmである。
その後、第3工程として、基材1とともに下塗り層2a及び上塗り層3aを140〜260°Cで60分間加熱した。加熱温度は表7〜9に示すとおりである。
Figure 2008001890
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この間、図2に示すように、水ガラス用硬化材4を含まない上塗り層3aは、加熱により水ガラス中の水分が除去されるとともに、下方の下塗り層2a中の水ガラス用硬化材4の影響によって硬化する。下塗り層2a中の水ガラス用硬化材4が上塗り層3a内部に突出しているからであると考えられる。また、下塗り層2a中のアルカリイオンが水ガラス用硬化材4の作用で不溶化、すなわち非イオン化されることで、下塗り層2a中のアルカリイオン濃度が低下することが駆動力となり、上塗り層3aから下塗り層2aにアルカリイオンが移動し、SiO2濃度の非常に高い上塗り層3aが形成される。このことは、図3に示すように、試験品15において、上塗り層表面のK2O及びSiO2濃度をEDS(エネルギー分散型X線分析装置)(加速電圧10kv)で測定した値と、過熱温度との関係を示すグラフからもわかる。すなわち、図3に示すように、加熱温度の増加とともに、上塗り層表面のK2O濃度(●)は減少し、SiO2濃度(○)が増加することがわかる。こうして、無機皮膜は極めて高い耐水性を発現すると考えられる。また、上塗り層3aは、水ガラスのみで形成されているため、表面が平滑になる。
試験品1〜6については、第3工程後、90°C、3%のリン酸水溶液に8時間浸漬し、脱アルカリ処理を行うことも行った。脱アルカリ処理も行わない場合には、上塗り層3aの表面が荒らされることはない。
こうして、図2に示すように、試験品1〜26の無機皮膜付き製品10が得られる。この無機皮膜付き製品10は、基材1と、基材1上に形成されたガラス質の無機皮膜5bとからなる。無機皮膜5bは、下塗り層2aがガラス質とされた下層2bと、上塗り層3aがガラス質とされた上層3bとからなる。下層2bには水ガラス用硬化材4が残留されており、上層3bは水ガラス用硬化材4を有さない。
得られた無機皮膜付き製品10は、付着した油汚れを水又は少量の中性洗剤のみで容易に除去することができた。
この製造方法では、第3工程において常温以上の温度で加熱するだけであり、エネルギーの消費量が琺瑯製品を製造するよりも少ない。また、この製造方法においては、脱アルカリ処理を行わない場合には、それに伴う洗浄、乾燥等も行う必要がない。さらに、上塗り用塗料3が高価な水ガラス用硬化材4を含まない点においてもコストダウンが実現されている。
また、この製造方法では、無機塗料の下塗り用塗料2における水ガラスがナトリウム水ガラス及びカリウム水ガラスを含むため、基材1上に形成された下塗り層2a及び上塗り層3aからなる塗り層が加熱時に発泡し難く、かつ得られる無機皮膜付き製品10の無機皮膜5bにクラックを生じ難い。
したがって、実施例の無機塗料や製造方法によれば、無機皮膜付き製品10について、優れた耐汚染性と製造コストの低廉化とを実現しつつ、より高い耐水性、平滑性及び光沢性を実現することができる。
試験品1〜26の無機皮膜付き製品10について、加熱温度の相違毎に以下の耐水性、平滑性、クラックの有無、その他の確認試験を行った。
(耐水性)
各無機皮膜付き製品10を90°Cの温水に150時間浸し、無機皮膜5bの状態を確認した。×印は無機皮膜5bに剥がれが生じたことを示し、△印は穴が多くあいたり、変色が生じたりしたことを示す。無機皮膜5bに剥がれや穴等が生じなかったものについては、油性インクを表面に付着させ、アルコールで拭き取った後の性状を目視で判断した。○印は油性インクが少し残ったことを示し、◎印は油性インクがほとんど残らなかったことを示す。
(平滑性)
各無機皮膜付き製品10の無機皮膜5bの表面性状を目視及び手触りで判断した。×印は、マット調であり、手で触るとザラツキを感じる状態を示し、△印は、マット調であるが、手で触ってもザラツキを感じない状態を示し、○印は、光沢感があり、手で触ってもザラツキを感じない状態を示す。
(クラックの有無)
各無機皮膜付き製品10の無機皮膜5bの表面に油性インクを染み込ませ、アルコールで拭き取った後の性状を目視で判断した。×印はクラックが明瞭に確認できる状態を示し、△印は、クラックが僅かに存在するが、目立たない状態を示し、○印はクラックが全く認められない状態を示す。
(その他)
各無機皮膜付き製品10の無機皮膜5bの発泡の有無を目視で判断した。
再現性(歩留まり)とともに総合評価も下した。総合評価は優れたものから順に、「◎◎」、「◎」、「○」、「△」、「×」とした。結果を表7〜9に示す。
表7〜9より、下塗り用塗料2の水ガラスは、ナトリウム水ガラスとカリウム水ガラスとの混合比がK2O/Na2Oのモル比で0.0178〜0.1781であることが好ましいことがわかる。また、下塗り用塗料2の水ガラスはリチウム水ガラスを含むことがより好ましいことがわかる。さらに、下塗り用塗料2は、(水ガラス用硬化材4及び骨材)/(水ガラス中のSiO2分)の質量比で1.5〜3.7であることが好ましい。
また、上塗り用塗料3の水ガラスはカリウム水ガラス及びリチウム水ガラスを含むことが好ましいことがわかる。特に、上塗り用塗料3の水ガラスは、カリウム水ガラスとリチウム水ガラスとの混合比がLi2O/K2Oのモル比で0.0077〜0.2323であることが好ましい。
試験品1〜26と同様、表10〜12に配合割合(質量部)を示す下塗り用塗料2及び上塗り用塗料3も用意した。特に、表10〜12においては、種々の水ガラス用硬化材を用いた。また、珪石粉末等以外の骨材として、平均粒径が10μm、厚みが0.3μm(扁平率が33)の板状アルミナ、平均粒径が5μm、厚みが0.2μm(扁平率が25)の板状アルミナ、平均粒径が2μm、厚みが0.04μm(扁平率が50)の板状アルミナ、平均粒径が0.6μm、厚みが0.06μm(扁平率が10)の板状アルミナ、ワラストナイト(柱状粒子)、タルク(板状粒子)又はカオリン(板状粒子)を用いた。他の条件は試験品1〜26と同様である。
Figure 2008001890
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また、試験品1〜26と同様、表13〜15に各下塗り用塗料2及び各上塗り用塗料3中の特定成分のモル比等を示す。特に、表13〜15においては、板状アルミナ、ワラストナイト、タルク又はカオリンの質量%も示す。
Figure 2008001890
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そして、試験品1〜26と同様、試験品27〜50の無機皮膜付き製品10を得た。加熱温度は表16〜18に示すとおりである。試験品27〜50の無機皮膜付き製品10についても、試験品1〜26と同様、加熱温度の相違毎に耐水性、平滑性、クラックの有無、その他の確認試験を行った。特に、試験品40〜50については、垂直方向の荷重(g)を連続的に変化させながら0.05Rのダイヤモンド圧子を無機皮膜5bに押し当て、150mm/分の速度で引掻いた際の引掻き抵抗(g)を測定する耐キズ性を確認した。△印は幅の広いキズが付いたことを示し、○印は細いキズが付いたことを示し、◎印は細いキズが僅かに付いたことを示す。
試験品1〜26と同様、再現性(歩留まり)とともに総合評価を下した。結果も表16〜18に示す。
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表16〜18において、試験品35、39を見れば、耐水性向上材/(水ガラス中のアルカリ酸化物分)の質量比が1.0〜3.0を外れた下塗り用塗料2は、無機皮膜5bの耐水性や再現性を損なうことがわかる。
また、試験品27〜34を見れば、水ガラス用硬化材としてメタリン酸アルミニウムを採用すれば、無機皮膜5bが優れた耐水性、密着性及び耐久性を奏することがわかる。
さらに、試験品40〜50を見れば、扁平率が10以上、平均粒径が0.5〜5μmの板状アルミナを骨材として採用することが好ましく、かつその添加量は1〜10質量%が好ましいことがわかる。図4に示す試験品40及び試験品42における垂直方向の荷重(g)と引掻き抵抗(g)との関係からもわかるように、扁平率が10以上、平均粒径が0.5〜5μmの板状アルミナを添加した場合、キズ付き時に圧子が滑って引掻き抵抗が低下し、キズ付き時の損傷を最小限に抑えるためであると考えられる。
以上において、本発明を試験品に即して説明したが、本発明は試験品に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
本発明は、レンジフィルタ、レンジフード、換気扇のファン、キッチンバック、キッチンシンク、ホワイトボード、建材等に利用可能である。
試験品1〜50に係り、図(a)は基板の断面図、図(b)は第1工程における基板及び下塗り用塗料の断面図、図(c)は第2工程における基板、下塗り層、及び上塗り用塗料又は上塗り層の断面図である。 試験品1〜50に係り、無機皮膜付き製品の略式断面図である。 試験品15において、上塗り層表面のK2O及びSiO2濃度をEDS(エネルギー分散型X線分析装置)で測定した値と、過熱温度との関係を示すグラフである。 試験品40と試験品42とにおける垂直荷重と引掻き抵抗との関係を示すグラフである。
符号の説明
5b…無機皮膜
10…無機皮膜付き製品
1…基材
4…水ガラス用硬化材
2…下塗り用塗料
2a…下塗り層
3…上塗り用塗料
3a…上塗り層
2b…下層
3b…上層

Claims (15)

  1. 水ガラスと水ガラス用硬化材と骨材とを含む下塗り用塗料と、水ガラスを含み、水ガラス用硬化材を含まない上塗り用塗料とからなり、
    該下塗り用塗料の水ガラスはナトリウム水ガラス及びカリウム水ガラスを含むことを特徴とする無機塗料。
  2. 前記下塗り用塗料の水ガラスは、ナトリウム水ガラスとカリウム水ガラスとの混合比がK2O/Na2Oのモル比で0.0178〜0.1781である請求項1記載の無機塗料。
  3. 前記下塗り用塗料の水ガラスはリチウム水ガラスを含む請求項1又は2記載の無機塗料。
  4. 前記上塗り用塗料の水ガラスはカリウム水ガラス及びリチウム水ガラスを含む請求項1乃至3のいずれか1項記載の無機塗料。
  5. 前記上塗り用塗料の水ガラスは、カリウム水ガラスとリチウム水ガラスとの混合比がLi2O/K2Oのモル比で0.0077〜0.2323である請求項4記載の無機塗料。
  6. 前記下塗り用塗料は、(水ガラス用硬化材及び骨材)/(水ガラス中のSiO2分)の質量比で1.5〜3.7である請求項1乃至5のいずれか1項記載の無機塗料。
  7. 水ガラス用硬化材は耐水性向上材であり、前記下塗り用塗料は、耐水性向上材/(水ガラス中のアルカリ酸化物分)の質量比で1.0〜3.0である請求項1乃至6のいずれか1項記載の無機塗料。
  8. 耐水性向上材は、メタリン酸アルミニウム(Al(PO33)、トリポリリン酸二水素アルミニウム(AlH2310・H2O)、第三リン酸アルミニウム(オルソリン酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、AlPO4)、第二リン酸アルミニウム(Al2(HPO43)、第一リン酸アルミニウム(リン酸二水素アルミニウム、重リン酸アルミニウム、モノリン酸アルミニウム、Al(H2PO43)、リン酸ジルコニウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸亜鉛カルシウム、リン酸アンモニウム、リン酸鉄、リン酸チタニウム、リン酸硼素、酸化マグネシウム、珪弗化カリウム及び珪弗化カルシウムの1種又は2種以上である請求項7記載の無機塗料。
  9. 耐水性向上材はメタリン酸アルミニウムである請求項8記載の無機塗料。
  10. 骨材の一部は、平均粒径/厚みの扁平率が10以上である扁平状微粒子である請求項1乃至9のいずれか1項記載の無機塗料。
  11. 前記下塗り用塗料は、扁平状微粒子を1〜10質量%含む請求項10記載の無機塗料。
  12. 扁平状微粒子は、平均粒径が0.5〜5μmである請求項11記載の無機塗料。
  13. 扁平状微粒子は板状アルミナである請求項12記載の無機塗料。
  14. 基材上に水ガラスと水ガラス用硬化材と骨材とを含む下塗り用塗料を塗布し、該基材上に下塗り層を形成する第1工程と、該下塗り層上に水ガラスを含み、水ガラス用硬化材を含まない上塗り用塗料を塗布し、該下塗り層上に上塗り層を形成する第2工程と、該下塗り層及び該上塗り層を常温以上の温度で加熱して無機皮膜付き製品を得る第3工程とを備え、
    前記下塗り用塗料の水ガラスはナトリウム水ガラス及びカリウム水ガラスを含むことを特徴とする無機皮膜付き製品の製造方法。
  15. 基材と、該基材上に形成された無機皮膜とからなる無機皮膜付き製品であって、
    前記無機皮膜は、前記基材上に形成され、水ガラス用硬化材が残留された状態で、骨材と硬化された水ガラスとを含む下層と、該下層上に形成され、水ガラス用硬化材を有さない状態で、硬化された水ガラスを含む上層とからなり、
    前記下層の水ガラスはナトリウム水ガラス及びカリウム水ガラスを含むことを特徴とする無機皮膜付き製品。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN116445020A (zh) * 2023-04-27 2023-07-18 上海电力大学 一种磷酸氢钛改性硅溶胶涂层及其制备方法

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