JP2007533750A - 緩和なチオール分解条件下で遊離可能なポリマー結合体 - Google Patents

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Abstract

医薬又は蛋白質のような、アミン−又はヒドロキシル−含有化合物から誘導される配位子に結合された、脂質、又はポリエチレングリコールのような親水性ポリマーを有する式(I):
Figure 2007533750

の結合体は貯蔵の条件下で安定であり、かつ、緩和なチオール分解条件下で開裂が可能であり、望ましくない副生物を生成することなく、アミン−又はヒドロキシル−含有化合物をその本来の形態で再生する。

Description

本発明は、医薬又は蛋白質のようなアミン−又はヒドロキシル−含有化合物から誘導される配位子に、開裂可能な結合をした、脂質、又はポリエチレングリコールのような親水性ポリマーを有する結合体に関する。本結合体は、緩和なチオール分解条件下で開裂でき、アミン−又はヒドロキシル−含有化合物を本来の形態で再生する。
文献
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Shen,W.C.、Wang,J.及びShen,D.によるReversible lipidization of polypeptides in drug delivery[Proceed.Intern.Sym.Control.Rel.Bioact.Mater、24巻:202−203(1997)];
Zalipsky,S.によるReleasable linkage and compositions containing same[米国特許第6,342,244号(2002年1月)];
Zalipsky,S.らによるNew detachable poly(ethylene glycol) conjugates:Cysteine−cleavable lipopolymers regenerating natural phospholipid,diacylphosphatidyl ethanolamine[Bioconjugate Chem.、10巻:703−707(1999)];
Zalipsky,S.らによるPolymer−protein conjugates as macromolecular prodrugs:Reversible PEGylation of proteins.[Proc. Int’l.Symp.Control.Re.Bioact.Mater.、28巻:73−74(2001)];
Zalipsky,S.らによるReversible PEGylation:Thiolytic regeneration of active protein from its polymer conjugates[PEPTIDES:THE WAVE OF THE FUTURE、M.Lebl及びA.Houghten編、953−4、American Peptide Soc.(2001)]
ポリエチレングリコール(PEG)のような親水性ポリマーは、ポリペプチド、医薬及びリポソームのような種々の基質の免疫原性を低減及び/又は血液循環寿命を改良するためにその基質の修飾用に用いられている。例えば、非経口投与された蛋白質は免疫原性であり得て、生体内で迅速に分解され得る。従って、患者において治療に有用な蛋白質の血中濃度を得ることは困難であり得る。それらの困難を克服するための取り組みとして蛋白質へのPEGの結合化が記載されている。米国特許第4,179,337号においてDavisらは、より少ない免疫原性を有し、実質的な割合の生理的活性を維持するPEG−蛋白質結合体を生成するために、酵素及びインシュリンのような蛋白質にPEGを結合させることを開示している。Veroneseら[Applied Biochem.and Biotech.、11巻:141−152頁(1985年)]は、リボヌクレアーゼ及びスーパーオキシドジスムターゼを改変するためにポリエチレングリコール類をクロロギ酸フェニルで活性化することを開示している。米国特許第4,766,106号及び第4,917,888号においてKatreらは、ポリマー結合化により蛋白質を可溶化することを開示している。米国特許第4,902,502号(Niteckiら)及びPCT出願公開WO90/13540(Enzon,Inc.)には、免疫原性を低減させ、半減期を長くするために、組み換え型蛋白質へのPEG及び他のポリマーの結合化が記載されている。
リポソームの血液循環寿命を改良することにおける使用のためのPEGも記載されている(米国特許第5,103,556号)。細網内皮系により認識され除去されることからリポソームをマスクする又は遮蔽するために、PEGが脂質の頭部極性基に共有結合されている。
蛋白質のような生物学的に活性な分子の、ポリマーでの修飾は、その分子の活性をしばしば低減するので、開裂可能な結合を有する蛋白質−ポリマー結合体が用いられている。Garman(米国特許第4,935,465号)は、可逆的な結合基により蛋白質に結合された水溶性ポリマーで修飾された蛋白質を記載している。遊離可能なPEG鎖を有するリポソームも記載されており、PEG鎖は、pHにおける変化のような適する刺激にさらされたときにリポソームから遊離される(WO98/16201)。
いくつかの場合において、リポソーム又は分子からのポリマーの遊離は、その分子又は脂質の構造における変化をもたらす。それらの化学的に修飾された構造は、生体内で予測できない、潜在的に負の効果を有し得る。
PEG−医薬結合体の開裂が医薬を遊離する結合化戦略が米国特許第6,342,244号及び第6,214,330号に記載されている。前者には、チオキノンメチドのような副生物の遊離を有する、ジチオベンジル部分の開裂が記載されている。後者には、クマリンのような副生物の遊離を有する、加水分解に不安定なアリールエーテルの開裂が記載されている。
一般的に、貯蔵条件下で結合が安定であるが、生体内で開裂可能であり、望ましくない副生物の生成がなく、結合された分子をその最初の形態で遊離する、開裂可能な結合体を提供することが望ましい。
発明の概要
従って、親水性ポリマーに共有的に、しかし可逆的に結合された配位子を有する結合体を提供することが本発明の目的である。その配位子は、アミン−又はヒドロキシ−含有化合物から誘導される。その結合が開裂されると、その配位子はその本来の形態で再生される。
一つの面において、本発明は、一般構造I:
Figure 2007533750

[構造中、RXはアミン−又はヒドロキシル−含有配位子であり、Xは酸素、第一級窒素又は第二級窒素であり、
Mは、シス−CR=CR−、−CR−及び−CR−CR−(式中、R、R、R及びRの各々は、H、メチル、置換メチル、フルオロ及びクロロから独立して選ばれ、メチルは、ヒドロキシル、フルオロ又はクロロで置換され得る)から選ばれ、
D形状構造は、M及びジスルフィド基S−Sがシス−1,2−配向又はオルト配向で結合している5−又は6−員環を表し、
は、水素、又は前記環上の、R、OR、C(O)OH、C(O)OR、OC(O)OR、C(O)NR、OC(O)NR、シアノ、ニトロ、ハロゲン及び更なる縮合環(式中、Rは、更にハロゲンで置換され得るC−Cヒドロカルビルである)から選ばれる一つ以上の置換基を表し、
Lは、更にアリール又はアラルキルで置換され得る、線状の又は分岐状のC−Cアルキル基であり、
L及びRは一緒に環を形成し得て、
Lに、Rに、又は5−もしくは6−員環に結合した脂質又は親水性ポリマーを更に有する]
を有する結合体を包含する。
本結合体は典型的には、L又はRに結合した親水性ポリマーを有する。選ばれた態様では、L及びRは環を形成しない。
親水性ポリマーは、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリ(ヒドロキシプロピル)オキサゾリン、ポリ(ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリ(ヒドロキシプロピル)メタクリレート、ポリ(ヒドロキシエチル)アクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアスパルタミド及びそれらのコポリマーであることができ、好ましい親水性ポリマーは、ポリエチレングリコールのようなポリエーテルである。
5−又は6員環は、好ましくは芳香環、より好ましくはベンゼン環である。一つの態様では、Mがシス−CR=CR−であり、結合体が構造Ia:
Figure 2007533750

を有する。
この態様では、R及びRの各々は好ましくは水素である。好ましくは、親水性ポリマーはLに結合しており、Rに結合していない。
は、例えば、水素、又はR、OR、C(O)OH、C(O)OR、OC(O)OR、C(O)NR、OC(O)NR、シアノ、ニトロ、フルオロ、クロロ(式中、Rは、更にハロゲンで置換され得るC−Cヒドロカルビルである)から選ばれる単一の置換基であることができる。好ましくは、Rは、水素、又はR、OR、C(O)OR、C(O)OH、シアノ、ニトロ、フルオロ及びクロロ(式中、Rはメチル又はエチルである)から選ばれる単一の置換基である。選ばれた態様において、Rは水素である。
好ましくは、Lは構造、−CR−CR−を有し、−CRがジスルフィド基に結合しており、R及びRは、H、アルキル、アリール及びアラルキルから独立して選ばれ、R及びRは、H及びメチルから独立して選ばれる。好ましくは、R及びRの各々は、水素、メチル、エチル及びプロピルから独立して選ばれる。より好ましくは、RはHであり、Rは、水素、メチル、エチル及びプロピルから成る群から選ばれる。選ばれた態様では、RはHであり、Rは、CH、C及びCから成る群から選ばれる。
上記構造Iの一つの態様では、L及びRは、シス−1,2−配向又はオルト配向で5−又は6−員環に結合しており、L及びRは一緒に5−乃至7−員環の一つを更に形成している。そのような態様において、親水性ポリマーは5−又は6−員環(すなわち、「D形状構造」、好ましくはベンゼン環)に結合し得るか、又はL及びRにより形成された更なる5−乃至7−員環の一つに結合し得る。
Xにより表される配位子は典型的には脂質又は生物学的に活性な化合物である。選ばれた態様において、その配位子は、例えばポリペプチド、アミン含有医薬又はアミン含有脂質であることができるアミン含有配位子である。アミン含有脂質は好ましくは、二つの炭化水素の尾部基を有する燐脂質である。配位子がポリペプチドから誘導される場合、そのポリペプチドは、例えば酵素又はサイトカインであることができる。
関連する面において、本発明は、アミン−又はヒドロキシル−含有分子の、構造II:
Figure 2007533750

[構造中、Zは、ヒドロキシル基又はアミノ基により置換され得る脱離基であり、
Mは、シス−CR=CR−、−CR−及び−CR−CR−(式中、R、R、R及びRの各々は、H、メチル、置換メチル、フルオロ及びクロロから独立して選ばれ、メチルはヒドロキシル、フルオロ又はクロロで置換され得る)から選ばれ、
D形状構造は、M及びジスルフィド基S−Sがシス−1,2−配向又はオルト配向で結合している5−又は6−員環を表し、
は、水素、又は前記環上の、R、OR、C(O)OH、C(O)OR、OC(O)OR、C(O)NR、OC(O)NR、シアノ、ニトロ、ハロゲン及び更なる縮合環(式中、Rは、更にハロゲンで置換され得るC−Cヒドロカルビルである)から選ばれる一つ以上の置換基を表し、
Lは、更にアリール又はアラルキルで置換され得る、線状の又は分岐状のC−Cアルキル基であり、
L及びRは一緒に環を形成し得て、
Lに、Rに、又は5−もしくは6−員環に結合した脂質又は親水性ポリマーを更に有する]
を有する化合物との反応により得られる結合体を提供する。
構造IIの好ましい態様、すなわち、変数M、L及びR並びに脂質又は親水性ポリマーに関して、は、上記の構造Iに関して記載したそれらに対応する。例えば、一つの態様では、本化合物は構造IIa:
Figure 2007533750

(式中、5−又は6−員環はベンゼン環であり、Mはシス−CR=CR−である)
を有する。
脱離基Zは、好ましくは、クロリド、p−ニトロフェノール、o−ニトロフェノール、N−ヒドロキシテトラヒドロフタルイミド、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシグルタルイミド、N−ヒドロキシノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、3−ヒドロキシピリジン、4−ヒドロキシピリジン、2−ヒドロキシピリジン、1−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルベンゾトリアゾール、イミダゾール、トリアゾール、N−メチルイミダゾール、ペンタフルオロフェノール、トリフルオロフェノール及びトリクロロフェノールから成る群から選ばれる。
他の面において、本発明は、先に記載した構造Iを有する結合体を血流に投与し、それにより、生体内で、前記結合体のチオール開裂反応によりアミン−又はヒドロキシル−含有分子RXHが前記結合体から遊離されることによる、血流にアミン−又はヒドロキシル−含有分子RXHを投与する方法を提供する。本結合体の好ましい態様は、先に記載した通りである。本方法は、開裂反応により遊離される蛍光部分の検出により、前記分子の遊離をモニターすることを更に含み得る。
更なる面において、本発明は、親水性ポリマー鎖の表面被覆を有し、先に記載した構造I(構造中、RXはアミン−又はヒドロキシル−含有脂質、好ましくは燐脂質を表す)を有する脂質−ポリマー結合体を含有するリポソームを提供する。構造I中の他の変数の好ましい態様は先に記載した通りである。本リポソームは、閉じ込められた治療剤を含有し得る。関連する面において、本発明は、そのようなリポソームを含有し、親水性ポリマーに安定して結合した小胞体形成脂質をさらに含有するリポソーム組成物を提供する。好ましくは、親水性ポリマーに結合した脂質の総モル%は1%乃至約20%である。本リポソーム組成物の好ましい態様では、小胞体形成脂質に安定して結合している親水性ポリマーは、構造Iの結合体に含有された親水性ポリマーよりも短い。
又、先に記載された結合体、及び塩水、緩衝液等のような医薬的に容認できる運搬物質を含有する組成物も提供される。
本発明のそれらの及び他の目的及び特徴は、下記の、発明の詳細な記載を添付図面と組み合わせて読むと、より完全に認識されるであろう。
発明の詳細な記載
I.定義
本明細書において用いられている「ポリペプチド」、特定の長さに関する限定がない、アミノ酸のポリマーである。従って、例えば用語、ペプチド、オリゴペプチド、蛋白質及び酵素がポリペプチドの定義内に含まれる。この用語には又、ポリペプチドの発現後修飾、例えばグリコシル化、アセチル化、燐酸化等も含まれる。
本明細書に用いられている「親水性ポリマー」は、室温において、ある程度の水への溶解度をそのポリマーに与える、水中に可溶性の部分を有するポリマーをいう。例としての親水性ポリマーには、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピル−メタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチル−アクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアスパルタミド、前記ポリマー類のコポリマー類及びポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシドコポリマーが含まれる。それらのポリマーの多くの性質及び反応は米国特許第5,395,619号及び第5,631,018号に記載されている。
「反応性官能基を有するポリマー」又は「結合のための結合機構を有するポリマー」は、共有結合を形成するために他の化合物との反応のために、修飾された、典型的には(しかし、必ずではない)末端部分において修飾されたポリマーをいう。そのような反応性官能基を有するためにポリマーを官能化するのに有効な反応技法は、当業者により容易に決定され、及び/又は例えば、米国特許第5,613,018号;ZalipskyらによるEur.Polymer.J.、19巻(12):1177−1183(1983);又はZalipskyらによるBioconj.Chem.4巻(4):296−299(1993)に開示されている。
本明細書において用いられている「アルキル」は、いずれかの炭素原子から一つの水素原子の除去によりアルカンから誘導され、かつ式C2n+1を有する基をいう。分岐状のアルカン類の末端炭素原子からの一つの水素原子の除去により誘導される基は、ノルマルアルキル(n−アルキル)基:H[CH]の部分集合を形成する。基RCH−、RCH−(RはHではない)及びRC−(RはHではない)は、それぞれ第一級、第二級及び第三級アルキル基を表す。
「低級アルキル」は、1−6の、より好ましくは1−4の、炭素原子を有するアルキル基をいう。
「ヒドロカルビル」は、炭素及び水素から成る基、すなわち、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル及び非複素環アリールを包含する。
「アリール」は、単一環(例えばフェニル)、2つの縮合環(例えばナフチル)又は3つの縮合環(例えばアントラシル又はフェナントリル)を有する置換された又は非置換の一価の芳香族基をいう。この用語は一般的に、フリル、ピロール、ピリジル及びインドールのような、芳香環中に一つ以上の窒素、酸素又は硫黄原子を有する芳香環基であるヘテロアリール基を含む。「置換された」は、アリール基における一つ以上の環水素が弗素、塩素又は臭素のようなハロゲン化物で、一つ又は二つの炭素原子を有する低級アルキル基で、又はニトロ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、メトキシ、ハロメトキシ、ハロメチルもしくはハロエチルで置き代えられていることを意味する。
「アラルキル」とは、アリール基、例えばベンジル及びフェネチルで更に置換されている低級アルキル(好ましくはC−C、より好ましくはC−C)置換基をいう。
「脂肪族ジスルフィド」結合とはR’−S−S−R’’(R’ 及びR’’の各々は、さらに置換され得る、線状の又は分岐状のアルキル鎖である)の形態の結合をいう。
本明細書に用いられている「安定な」結合とは、本明細書で記載されているジスルフィド結合よりも、生体内で、かなり、より安定である官能基を含む結合をいう。例には、アミド類、エーテル類及びアミン類が含まれるが、それらに限定されない。
「小胞体形成脂質」とは、二重層膜の内部の疎水性領域と接触している疎水性部分と、二重層膜の外部の極性表面に配向した極性頭部基部分を有している、疎水性部分及び極性の頭部基部分を有する両親媒性脂質をいい、燐脂質により例示されるように、水中で二重層小胞体を即座に形成し得るか、又は脂質二重層に安定に組み込まれる。そのような小胞体形成脂質は典型的には一つ又は二つの疎水性アシル炭化水素鎖又は一つのステロイド基を含み、極性頭部基においてアミン、酸、エステル、アルデヒド又はアルコールのような化学的に反応性の基を有し得る。例には、2つの炭化水素鎖が典型的には長さが約14−22炭素原子であり、不飽和の種々の程度を有する、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルイノシトール(PI)及びスフィンゴミエリン(SM)のような燐脂質が含まれる。他の小胞体形成脂質には、セレブロシド類及びガングリオシド類のような糖脂質、及びコレステロールのようなステロール類が含まれる。
II.本発明の、貯蔵安定で生体内開裂可能な結合体
A.構造
本発明は、生物学的に活性な分子又はリポソームの脂質構成成分のような分子が、生体内で開裂可能な結合により更なる部分に結合している結合体を提供する。典型的には、分子の薬理学的な性質を高めるために、例えば免疫原性を低減させるために及び/又は投与後の人体内における溶解度又は循環時間を増大させるために、結合部分が提供される。次に、その結合は生体内で開裂され、生物学的に活性な最初の形態でその分子が遊離する。
しばしば、本結合体は、ポリエチレングリコール(PEG)に結合された、蛋白質又は他のアミン−もしくはヒドロキシル−含有分子を有する。しかし、結合体、例えば、高められた胃腸管系の及びBBB輸送のために脂質−蛋白質結合体又は脂質−医薬結合体、表面改質されたリポソームにおける使用のための脂質−ポリマー結合体等、は、実際には適する官能基を有する2つの分子の間で生成され得る。
一つの面において、本発明は、脂質又はポリマーに結合された下記の一般構造I:
Figure 2007533750

を有するジスルフィド含有結合体を提供する。
本構造Iでは、RXはアミン−又はヒドロキシル−含有配位子を表し、Xは、本結合体の開裂の後に遊離される分子(例えばRXH又はRXH)から誘導される酸素、第一級窒素又は第二級窒素である。前記分子は、蛋白質、ポリペプチド又は小さな分子の医薬化合物のような生物学的に活性な化合物であることができる。代替としては、その配位子は、アミン含有脂質、典型的には燐脂質、例えば二つの炭化水素の尾部基を有するホスファチジルエタノールアミン、から誘導され得る。
式Iにおける“D”形状構造は5−又は6−員環を表す。その環は、飽和され得ており、例えば、シクロヘキサン、シクロペンタン、又はテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ピペリジン、ピロリジンもしくはモルホリンのような複素環であることができる。その代替として、その環は、不飽和であり得て、例えばシクロヘキセンであることができる。その環は、好ましくは芳香環、例えばベンゼン、ナフタレン又はアントラセンであり、より好ましくはベンゼンである。又、一つ以上の環原子(基S−S及びMが結合している原子を除いて)が、窒素、酸素又は硫黄で置換されている複素芳香環も含まれる。好ましい単環系には、ピリジン、ピリミジン、2,4−イミダゾール、2,4−チアゾール及び2,4−オキサゾール、並びに2,5−ピロール、2,5−フラン及び2,5−チオフェンが含まれる。その環は好ましくは炭素環である。その環は最も好ましくはベンゼン環である。
基M及びジスルフィド基(−S−S−)は、シス−1,2−配向又はオルト配向で5−又は6−員環に結合されている。M自体は、シス−CR=CR−、−CR−及び−CR−CR−(式中、R、R、R及びRの各々は、H、メチル、置換メチル、フルオロ及びクロロから独立して選ばれ、メチルはヒドロキシル、フルオロ又はクロロで置換され得る)から選ばれる。好ましくは、R、R、R及びRの各々は、H及びメチルから独立して選ばれ、一つの態様では、R、R、R及びRの各々はHである。
好ましい態様では、前記環はベンゼン環であり、Mはシス−CR=CR−であり、構造Ia:
Figure 2007533750

を与える。
構造I及びIaに関して、Rは、水素、又は5−もしくは6−員環上の、R、OR、C(O)OH、C(O)OR、OC(O)OR、C(O)NR、OC(O)NR、シアノ、ニトロ、ハロゲン及び更なる縮合環(式中、Rは、更にハロゲンで置換され得るC−Cヒドロカルビル、好ましくはC−Cヒドロカルビルである)から選ばれる一つ以上の置換基を表す。ハロゲンは好ましくはフルオロ又はクロロであり、Rは好ましくは0乃至2つのハロゲン置換基を有する。
好ましくは、更なる縮合環は、存在する場合、5つ乃至7つの環原子、好ましくは5つ又は6つの環原子を有する。いずれの安定な縮合環系も含まれ得る。例には、ナフタレン、2,6−又は2,7−ベンズイミダゾール、2,6−又は2,7−ベンゾチアゾール及び2,6−又は2,7−ベンゾオキサゾール、2,4−又は2,6−インドール、キノリン、並びに5−環又は6−環における一つ以上の非縮合化炭素原子が窒素で置換されている類似体が含まれるが、それらに限定されない。
選ばれた態様では、Rは、先に記載したように、水素、又はR、OR、C(O)OH、C(O)OR、OC(O)OR、C(O)NR、OC(O)NR、シアノ、ニトロ及びハロゲン(式中、Rは、先に定義した通りである)から選ばれる単一の置換基である。更なる態様では、Rは、水素であるか、又はR、OR、C(O)OR、シアノ、ニトロ、カルボキシル、フルオロ及びクロロ(式中、Rは、メチル又はエチルである)から選ばれる単一の置換基である。一つの態様では、Rは水素である。
Lは、さらにアリールで置換され得る、線状の又は分岐状のC−Cアルキル基を表す。好ましくは、Lは構造、−CR−CR−を有し、−CRがジスルフィド基に結合しており、R及びRは、H、アルキル、アリール及びアラルキルから独立して選ばれ、R及びRは、H及びメチルから独立して選ばれる。
構造Iにおいて、L及びRは一緒に環を、好ましくは5−乃至7−員環の一つを形成し得る。その場合、R及びジスルフィド基(−S−S−)は、好ましくは、シス−1,2−配向又はオルト配向で5−又は6−員環(Iaにおいてベンゼン環)に結合している。
本結合体は、構造Iにおける、Lに、Rに、又は5−もしくは6−員環に結合した、脂質又は親水性ポリマー、すなわち、配位子RXが結合される部分、を更に有する。脂質又は親水性ポリマーがRで表される場合に、結合の可能な部位の例は下記の構造(i−iv)で表される。例えば、脂質又は親水性ポリマーは、下記の構造(i)におけるようにLの末端に結合され得るか、又は直接[例えば構造(ii)]又は置換基Rを介して[例えば構造(iv)]、5−又は6−員環に結合され得る。又、R及びL自体が結合して環を形成[構造(iii)]し、Rがこの環に結合(典型的にはR又はLのいずれかへの結合によって)する態様も含まれる。
選ばれた態様[例えば、(i)及び(ii)]では、R及びLは環を形成しない。更なる態様では、RはLの末端に結合している[下記の構造(i)]。
Figure 2007533750
LがRに結合して環を形成するか否かは、その結合体が、開裂時に2つの又は3つのフラグメント(そのうちの一つは、その本来の形態での分子、RXH又はRXHである)を生成するか否かを決定する。上記構造により示されているように、波線が、起り得る開裂の位置を表す場合、構造(i−ii)は開裂時に3つのフラグメントを生成し、結合体(iii−iv)は開裂時に2つのフラグメントを生成する。本発明のこの面については、後に、より詳細に記載する。
更に後にも記載されているように、結合体の開裂の速度を調節するために、ジスルフィド基の隣の位置におけるLの置換の変形体(例えば、Lが−CR−CR−である場合、R及び/又はRの変形体)が用いられ得る。例えば、開裂の、より迅速な速度を達成するために、R及びRは水素である。開裂の、より遅い速度は、R及びRの1つ又は両方についてアルキル、アラルキル又はアリール基を選ぶことにより、ジスルフィドを立体的に妨げることにより達成される。好ましくは、R及びRは、水素及び低級(C乃至C)アルキルから独立して選ばれる。選ばれた態様において、R及びRの各々は、水素、メチル、エチル及びプロピルから独立して選ばれる。
脂質又は親水性ポリマーは、典型的には、アミド、エステル、カルバメート又はそれらの硫黄類似体(アミド類及びカルボネート類が好ましい)のような安定な結合基を介して構造Iに結合される。そのような結合基による結合の方法は、本技術分野でよく知られている。例えば、そのような基を介してPEGを種々の部分に結合させる方法は、例えば、Zalipskyら、1999,2001;Zalipsky,2002;Robertsら、2002;Molineux,2002,2003;Harrisら、2003;及び他の文献に記載されている。
親水性ポリマー又は脂質は、又、標的化部分、典型的には遊離の末端に結合された標的化部分も有し得る。そのような標的化部分には、共有の米国特許第6,660,525号に記載されたものが含まれ、それらの記載を引用により本明細書に組み込む。標的化部分の非限定的な例には、上皮癌及び骨髄幹細胞を標的にするためには抗体、葉酸塩;肝細胞を標的にするためには燐酸ピリドキシル、ガラクトース;肝細胞及び血管内皮細胞を標的にするためにはアポリポ蛋白質;脳内皮細胞を標的にするためにはトランスフェリン;腫瘍上皮細胞を標的にするためにはVEGF;血管内皮細胞を標的にするためにはVCAM−1又はICAM−1;好中球及び白血球を標的にするためにはMac−1;CD4+リンパ球を標的にするためにはHIV GP120/41又はHIV GP120 C4ドメインペプトマー;活性化血小板を標的にするためにはフィブロネクチン;及びアテローム性動脈硬化性プラークにおける内皮細胞及び平滑筋細胞を標的にするためにはオステオポンチンが含まれる。
種々の官能性側基を有するポリペプチド配位子のようないくつかの配位子では、複数のポリマーRが配位子に結合され得る。それらは、単独での又は生体内でより安定な結合と組み合わされて、先に示された複数の構造Iを介して結合され得る。そのポリマーの分子量の選択は、その配位子に結合したポリマー鎖の数に依存し得て、より大きな分子量のポリマーは、結合されたポリマー鎖の数が小さい場合にしばしば選ばれ、又、逆も同じである。
図1は、本発明による例示的な結合体の構造を示している。その結合体は、上記構造Iaの一つの態様であり、R乃至Rの各々が水素である。従って、その結合体は、ジチオシンナメート(DTC)構造に基づいている。
その結合体におけるRは、式、CHO(CHCHO)(式中、nは好ましくは約10乃至約2,300であり、それは約440ダルトン乃至約100,000ダルトンの分子量に相当する)より表され得る親水性ポリマーであるメトキシ−ポリエチレングリコール(mPEG)である。そのポリマーの分子量の選択は、結合された配位子の選択に、ある程度依存している。リポソームにおける使用のために、配位子がアミン含有脂質から誘導される態様では、PEG分子量の好ましい範囲は約750ダルトン乃至約10,000ダルトン、より好ましくは約2,000ダルトン乃至約5,000ダルトンである。配位子がアミン含有ポリペプチドから誘導される態様では、PEG分子量の好ましい範囲は約2,000ダルトン乃至約40,000ダルトン、より好ましくは約2,000ダルトン乃至約20,000ダルトンである。Rは種々の親水性ポリマー及び脂質から選択され得ることが認識されるであろう。例示的なポリマーは先に記載されている。
この結合体において、Lは−CR−CR−であり、式中、R乃至Rは水素であり、Rは変わり得る。先に記載したように、Rは水素、アルキル、アリール又はアラルキルであり得る。この結合体におけるXRは一級アミン含有分子、例えば医薬又は蛋白質である。mPEGが、ウレタン(カルバメート)基を介してLの末端に結合している。
B.合成
図2は、下記の実施例1−6にも記載されている、例示的なPEG−蛋白質結合体の合成のための例示的方法を示している。その技法は、例えば、異なる分子R又はポリマーRの置換により、又は結合基及び/又は環における置換を変えることにより、有機合成及び生物結合化学の技術における熟練者により容易に変えられ得る。
先に記載したように、好ましい態様では、ジスルフィドが結合される環はベンゼン環であり、Mはシス−オレフィンを含む。この態様によるシス−メルカプト桂皮酸は、公表された操作(Panetta及びRapoport,1982)により、オルトエステル置換アルキンのチオフェノールへの付加により合成され得る。この操作は、下記の実施例1に記載されているように、チオフェノール(1)及びオルトプロピオール酸トリエチルからシス−メルカプト桂皮酸(2)を製造するために用いられた。
図2において、結合基Lの結合は、その遠位末端において、更なる結合のために有用な官能基、この場合はアミノ基、を有するアルカンチオールとの反応により達成される。示された作用剤、2−メルカプトプロピルアミンヒドロクロリド(3、R=CH)は、対応するアミノアルコールから、Owen,1967年の方法により製造され得る。種々のR基を有する類似のアミノアルキルチオール誘導体が同様の様式で製造され得る。
混合されたジスルフィド(4)は、例えば、MukaiyamaらによるTetrahedron Letters、56巻:5907−5908(1968)の方法により、アミノアルカンチオールの、アジドカルボン酸ジエチルのような活性化剤との反応、続いて芳香族チオールとの反応により生成され得る。代替として、S.J.BroisらによるJ.Am.Chem.Soc.、92巻:7629−31(1970)に記載されているように、アミノアルカンチオールで活性化されたジスルフィドを生成するために塩化メトキシカルボニルスルフェニルが用いられ得る。その活性化されたジスルフィドは芳香族チオールと反応され得て、ジスルフィド(4)を生成する(Zalipskyら、1999参照)。
次に、R部分の結合のために、この場合、ウレタン(カルバメート)結合によるPEGの結合のために、Lの末端アミノ基が用いられる。それは、種々の公表された手順[例えば、Zalipsky及びMenon−Rudolph、“Poly(ethylene glycol):Chemistry and Biological Applications”、J.M.Harris及びS.Zalipsky編、Amer.Chem.Soc.、ワシントンDC、318−341頁(1997)における]により、mPEG−クロロホルメートとの反応により達成され得る。ポリマーのクロロホルメートは、ZalipskyらによるBiotechnol.Appl.Biochem.、15巻:100(1992)により、無水mPEG−OH溶液のホスゲン化により生成され得る。代替としては、前記結合は、又、公知の方法により、mPEG−スクシンイミジルカーボネート及び末端アミンの反応により形成され得る[例えば、H.C.ChiuらによるBioconjugate Chem.、4巻:290−295(1993);Zalipskyら、1992;及びZalipsky及びMenon−Rudolph、1997;先に引用した両方を参照]。
次に、標準法により、蛋白質(又は、結合される他の分子、例えばアミン含有−又はヒドロキシ−含有医薬)を遊離カルボキシル基に結合させる。例えば、カルボジイミド媒介エステル化操作を用いて、その酸を、そのN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(5)に変換し得る[例えば、G.W.AndersonらによるJ.Amer.Chem.Soc.、86巻:1839(1964)を参照]。代替として、それは、作用剤、O−(N−スクシンイミジル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェートを用いて達成され得る[R.KnorrらによるTetrahedron Lett.、30巻(15):1927−30(1989);M.WilchekらによるBioconjugate Chem.、5巻:491(1994)]。
蛋白質のアミノ基をN−ヒドロキシスクシンイミドエステルと反応させるための多くの一般的な手順がある。代表的な操作については、例えば、ZalipskyらによるBiotechnol.Appl.Biochem.、15巻:100(1992)又はH.C.ChiuらによるBioconjugate Chem.、4巻:290(1993)を参照。
そのような反応の種々のパラメーター、例えば、NHS作用剤の量、蛋白質におけるアミノ基の数、反応緩衝液のpH、温度及び反応継続時間、に依存して、種々の程度のPEG化を有するある範囲の蛋白質−ポリマー結合体種を得ることができる。必要な場合、一般式、(mPEG)−蛋白質の結合体混合物が種々のクロマトグラフ技術により分別され得る。例えば、イオン交換クロマトグラフィーにより、1:1結合体(すなわちn=1の場合)を単離することはしばしば可能である。
先の合成に関して、本発明は又、アミン−、ヒドロキシ−又はカルボキシル−含有化合物の、一般的な構造式II:
Figure 2007533750

(式中、M、R及びLは先に記載した通りであり、Zは脱離基である)を有する化合物との反応により得られる結合体を含有する組成物を含み、構造式IIを有する化合物は、Lに、Rに、又は先に記載されているように、前記のD形状構造により表される5−又は6−員環に結合した脂肪又は親水性ポリマーをさらに有する。
脱離基Zは、DSPE、ポリペプチド又はアミン含有医薬のようなアミン−又はヒドロキシ−含有配位子化合物との反応により置換される。脱離基は、前記配位子化合物における置換基の反応性によって選択される。適する脱離基には、クロリド、p−ニトロフェノール、o−ニトロフェノール、N−ヒドロキシテトラヒドロフタルイミド、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシ−グルタルイミド、N−ヒドロキシノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、3−ヒドロキシピリジン、4−ヒドロキシピリジン、2−ヒドロキシピリジン、1−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルベンゾトリアゾール、イミダゾール、トリアゾール、N−メチル−イミダゾール、ペンタフルオロフェノール、トリフルオロフェノール及びトリクロロフェノールが含まれる。典型的には、そのような反応は、配位子へのエステル又はアミド結合を形成する。
C.結合体の開裂
先に記載したように、結合体の開裂は、ジスルフィド結合の開裂により開始される。それは生体内での、システイン又はグルタチオンのような内発性作用剤により開始されるチオール分解機構により生じる。開裂の速度は、ジスルフィド基の隣の結合基の構造を変えることにより調節され得て、開裂速度は、後に記載する方法を用いて生体外で評価され得る。
開裂反応は、結合体の構造に依存して、最初に2つ又は3つの開裂生成物を生成し得る。例えば、図3は、図1のmPEG−DTC−(NH−配位子)結合体のチオール分解開裂の、3フラグメント開裂反応における機構を示している。o−ジチオシンナミル部分のジスルフィド基は、例えば、システイン(示されているように)又は他の天然に存在する還元剤の存在下で、チオール分解により開裂される。結合体の開裂及び分解に十分なチオール分解条件を人為的に引き起こすために又は開裂を促進するために外来の還元剤も与えられ得る。
図3に示されているように、開裂時に、5−又は6−員環(図3ではベンゼン環)における生成したチオール基が、閉環反応において、アミド部分からのアミン含有配位子を置換する。アミン含有化合物は、その本来の、修飾されていない形態で再生される。R、すなわちこの場合はmPEG、は、そのとき、チオール含有開裂剤、システインに結合されているLに結合されたままである。閉環反応において生成された三番目の物質は、その結合体の置換に依存して、公知の安定な化合物であるチオクマリン、又はその誘導体である。
図4は、L及びRが結合している態様における結合体の、2−フラグメント開裂をもたらす開裂を示している。図1Cの態様では、結合体は、ジチオシンナミル基において再び構造化されている。前記構造(iv)におけるようにRは芳香環に結合されている。例えば、Rは、図1におけるように、カルバメートを介して結合されたPEGであることができる。
代替として、Rは、前記構造(iii)におけるように、L−R環に結合され得る。開裂時に、結合された分子は、同様の機構により、その本来の形態(例えば、RNH)で再び遊離される。二番目のフラグメントは、開裂剤の残基(図4において、システインとして示されている)とポリマー又は他の基Rとの両方に結合されたチオクマリン誘導体である。
生物学的に適切な条件下での結合体のチオール分解開裂は、システイン、グルタチオン又はアルブミンのような生理的に存在するチオールとのインキュベーションにより示され得る[ZalipskyらによるProceed.Int’l.Symp.Control Rel.Bioact.Mater.、28巻:73(2001)]。遊離蛋白質又は他の遊離された分子の発生はSDS−PAGEによりモニターされ得る。開裂の速度は、時間とともに消失する結合体種の濃度を観察することにより、又は遊離蛋白質(又は他の遊離された分子)が出現するときに、それを測定することにより、モニターされ得る。チオクマリン誘導体は発色性であると一般的に報告されているので、遊離されたチオクマリン又はその誘導体は同様に一般的に容易に検出され得る。チオクマリンの遊離の速度は、蛍光分光法により観察され得る。
結合された分子が結合された形態において生物学的に不活性である場合、生物学的活性の復活を観察することにより開裂をモニターすることができる[例えば、PEPTIDES:THE WAVE OF THE FUTURE(M.Lebl、R.A.Houghton編、Amer.Peptide Soc.、2001、953頁)におけるZalipskyらによる“Reversible PEGylation:thiolytic regeneration of active protein from its polymer conjugates”;R.B.GreenwaldらによるBioconjugate Chem.、14巻:395(2003)を参照]。チオール分解開裂の速度は、ジスルフィド結合の隣のR基、例えば、メチルからイソプロピル、tert−ブチル等まで、のサイズを大きくすることにより、かなり低減され得る。
本結合体は、還元剤の不存在下で貯蔵される場合に安定性であるという利点、及びチオールのような適する還元剤の存在下では、医薬として有用な速度で開裂するという利点を提供する。特に、貯蔵安定性は、開裂可能なフェニルエステルに基づく、Greenwaldらによる米国特許第6,214,340に記載された結合体の貯蔵安定性より優れている。前記エステル類は、一般的にアルキルエステル類より速い速度で加水分解を受ける(例えば、Quickら、1978;Blayら、1988;1992年3月を参照)。周囲貯蔵条件下で、そのような加水分解が起こり得て、ましてや還元性開裂は起こり得る。
III.本結合体の例示的適用
A.本発明のmPEG−脂質結合体を含有するリポソーム組成物
一つの態様では、アミン含有配位子化合物はアミン含有脂質である。本明細書において言及される脂質は、典型的には、少なくともおよそ8つの炭素原子を有する少なくとも一つの炭化水素鎖(“尾部”)、より好ましくは約8−24の炭素原子を有する一つのアシル炭化水素鎖、を有する水不溶性分子を意図する。好ましい脂質は、アミン含有極性頭部基とアシル鎖を有する脂質である。例示的脂質は、ステアロイルアミンのような単一のアシル鎖又は2つのアシル鎖を有する燐脂質類である。アミン含有頭部基を有する好ましい燐脂質にはホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジルセリンが含まれる。単数の又は複数の脂質尾部は、好ましくは約12乃至約24の炭素原子を有し、完全に飽和され得るか又は部分的に飽和され得る。一つの好ましい脂質は、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)である。しかし、当業者は、この記載の範囲内に包含される広範囲の脂質を認識するであろう。又、脂質は、本来、アミン基を含有し得るか又はアミン基を含有するために誘導化され得ることを認識するであろう。先に記載したような炭化水素鎖を有しない他の脂質部分、例えばコレステロールアミンも適している。
一つの態様では、本発明の結合体はリポソーム中に配合される。リポソームは種々の治療目的のために、そして特に、全身的適用により治療剤を標的領域又は細胞に運ぶために用いられる閉鎖脂質小胞体である。特に、ポリエチレングリコール(PEG)のような親水性ポリマー鎖の表面被覆を有するリポソームは、ポリマー被覆を有しないリポソームよりも長い血液循環寿命を提供するので、医薬運搬体として望ましい。ポリマー被覆におけるポリマー鎖はリポソームを遮蔽し、リポソームのまわりに、水溶媒和したポリマー鎖の「硬いブラシ」を生成する。このように、そのポリマーは、血液蛋白質に対するバリヤーとして作用し、血液蛋白質の結合、並びに大食細胞及び細網内皮系の他の細胞による取り込み及び除去に対してのリポソームの認識を防ぐ。
典型的には、ポリマー鎖の表面被覆を有するリポソームは、脂質混合物中に約1乃至約20モル%の脂質−ポリマー結合体を含有させることにより製造される。脂質−ポリマー結合体の実際の量は、ポリマーの分子量により、より多量又はより少量にされ得る。
種々の態様において、先に記載した1乃至約20モル%の脂質におけるポリマー鎖が、本明細書に示された開裂可能な結合構造により、又は好ましい態様では、そのような結合の、生体内で、より安定である結合との組み合わせにより、脂質に結合される。その場合、より高い分子量のポリマー鎖は、好ましくは本明細書に示される開裂可能な結合構造により結合され、より短いポリマー鎖は、より安定な結合により結合される。
他の態様では、ポリマー鎖のいくらか又はすべてが、遊離末端において、先に記載したように標的化部分を有する。
本発明のポリマー−脂質結合体、好ましくはR及び/又はR(構造IについてのLの定義において)が水素でないポリマー−脂質結合体、を含有するリポソームは、ポリマーと脂質が脂肪族ジスルフィド結合により結合されているポリマー−脂質結合体を含有するリポソームよりも長い血液循環寿命を有する。
重要なことに、本発明のポリマー−脂質結合体の開裂は、非修飾形態における最初の脂質の再生をもたらす。天然でない修飾された脂質は生体内で望ましくない作用を有し得るので、その再生は望ましい。同時に、本結合体は還元剤の不存在下で貯蔵されるときに安定である。
B.ポリペプチド結合体
他の態様では、本発明は、アミン含有配位子化合物がポリペプチドである、先に記載した結合体を包含する。本発明のポリマー−ポリペプチド結合体の製造についての好ましい合成反応技法では、図2において5で示されているようなmPEG−DTC−脱離基化合物が、実施例1−5に記載された合成経路のような合成経路により製造される。前記脱離基は、例えば、示されているように、N−ヒドロキシスクシンイミド、ニトロフェニルカーボネート又は先に記載した他のいずれかであることができる。ジスルフィドの隣のR基は、H、CH、C等であることができ、ジスルフィド開裂の望ましい速度により選ばれる。次に、mPEG−DTC−NHS化合物、5、又は同等物は、ポリペプチドにおけるアミン部分に結合され、ウレタン(カルバメート)結合を形成する。
PEGのようなポリマー鎖の、ポリペプチドへの結合は、しばしば、ポリペプチドの酵素活性又は他の生物学的活性、例えば受容体結合を低減させる。しかし、ポリペプチドのポリマー修飾は、そのポリペプチドの増大した血液循環寿命という利点を提供する。本発明において、ポリマー−ポリペプチド結合体は、患者に投与される。本結合体が循環すると、血中システイン及び他の生体内チオール類のような生理学的還元条件にさらされることにより、ポリペプチドからの親水性ポリマー鎖の開裂が開始される。ポリペプチドから親水性ポリマー鎖が遊離されると、ポリペプチドの生物学的活性が次第に復活する。このように、ポリペプチドは最初、生体分布のために十分な血液循環寿命を有し、ポリマー鎖が開裂すると、時間をかけて、その完全な生物学的活性をとり戻す。
ポリマー鎖のいくらか又はすべてが、遊離末端において、先に記載したように、標的化部分を有し得る。
種々の態様において、ポリマー鎖は、本明細書に示されている開裂可能な結合化構造により、又はそのような結合の、生体内でより安定な結合との組み合わせにより、ポリペプチドに結合される。後者の取り組みは、可逆的結合での、生物学的活性のために必須なポリペプチドにおけるアミノ基へのPEG鎖の結合をさせ、より安定な結合での、ペプチド活性に必須でないアミノ基への結合をさせる。
先に記載した親水性ポリマーのいずれも使用のために企図されることが認識されるであろう。好ましい態様では、そのポリマーはポリアルキレングリコール、好ましくはポリエチレングリコール(PEG)、である。そのポリマーの分子量は、ポリペプチド、ポリペプチドにおける反応性アミンの数及びポリマー修飾結合体の望ましいサイズにより選ばれる。
使用のために企図されるポリペプチドは限定されず、天然産又は組換えにより生成されたポリペプチドであることができる。小さなヒト組換え型ポリペプチドが好ましく、10−30KDaの範囲のポリペプチドが好ましい。例示的ポリペプチドには、腫瘍壊死因子(TNF)、インターロイキン類及びインターフェロン類のようなサイトカイン類、エリスロポエチン(EPO)、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、酵素等が含まれる。ウイルスの表面が、本明細書に記載されているような開裂可能な結合により結合されている一つ以上のポリマー鎖を含有するように改質されているウイルス性ポリペプチドも企図される。セルトランスフェクション用の遺伝子を含有するウィルスの改質は、ウィルスの循環時間を延長し、その免疫原性を低減させ、それにより外来遺伝子の供給を改良する。
C.アミン含有医薬結合体
本発明の更なる他の態様では、前記の構造Iのアミン含有配位子はアミン含有医薬から誘導される。例えば、治療薬の、PEGでの修飾は、その医薬の血液循環寿命を改良するために、かつ免疫原性を低減させるために有効である。
本結合体は、特定の医薬を提供するのに必要な修飾を用いて先に記載された反応技法のいずれかにより製造される。広範囲の治療薬が反応性アミン部分を有し、本発明は、そのような医薬を、限定なく企図している。例には、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ドキソルビシン及びシプロフロキサシンが含まれる。
下記の実施例は、本明細書に記載された発明を更に説明するものであり、決して本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
実施例1:シス−メルカプト桂皮酸(2)の製造(図2を参照)
本化合物は、以下に記載するような、J.A.Panetta及びH.Rapoport[J.Org.Chem.、47巻:2626−2628(1982)]により公表された操作により合成され得る。
新たに蒸留したチオフェノール(1;図2参照)(2.0g、18ミリモル)、オルトプロピオン酸トリエチル[H.StetterらによるSynthesis 207(1973年)の操作により製造される](3.27g、19ミリモル)及びピバル酸(1.6g、15ミリモル)のp−シメン、10ml中溶液を還流で26時間加熱した。溶媒を除去し、残渣を、溶離剤としてヘキサン/エーテル(9/1)を用いる、シリカゲルにおけるクロマトグラフにかけ、2.79g(75%の収率)の2−メルカプト桂皮酸エチルが淡黄色の液体として得られた:IR 3000、1720、1600、1495、1440cm−1;NMRδ7.65(d,1H)、7.1−7.45(m,4H)、5.55(d,1H)、4.05(q,2H)、1.15(t,3H);質量スペクトル C1112Sについての計算値 質量/電荷 208.0558(M+)、実測値208.0560
先の合成された2−メルカプト桂皮酸エチル(1g、5.4ミリモル)を95%エタノール、10ml中に溶解し、KOH(0.75g、13.4ミリモル)を添加した。その反応混合物を還流で2時間加熱し、次に25℃に冷却し、5%の水性HClで酸性にした。その水性相をエーテルで抽出(3×20ml)し、合わせた有機画分を水(20ml)及びブライン(20ml)で洗滌し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮し、0.85g(87%)の結晶質の桂皮酸2を得た。融点128−129℃;UVλmax=250nm(ε=7350M−1・cm−1)及び275(9700);NMR δ7.8(d,1H)、7.15−7.45(m,4H)、5.5(d,1H);分析 CSについての計算値:C、60.0;H、4.5、実測値:C、60.2;H、4.6
実施例2:2−メルカプトプロピルアミン塩酸塩(3、R=CH )の製造
本化合物は対応するアミノアルコールから、例えばT.C.OwenのJ.Chem.Soc.C1373−1376(1967)により記載された操作により製造することができる。簡単に説明すると、本化合物を硫酸でエステル化し、硫酸アミノアルキルにし、続いて、二硫化炭素及びアルカリで環化し、チアゾリジンチオンを得て、次に、それを加水分解し、本生成物を得る。種々のR置換基を有する類似のアミノアルカンチオール誘導体が同様な方法で製造され得る。
ジチオ桂皮酸(DTC)結合化合物の生成:
実施例3:混合された二硫化物2−アミノプロピルジチオ桂皮酸(4)の合成
T.MukaiyamaらによるTetrahedron Letters、56:5907−5908(1968)に記載された操作により、2−メルカプトプロピルアミン塩酸塩(3)(実施例2)の、アジドカルボン酸ジエチルとの反応、続いてシス−メルカプト桂皮酸(2)(実施例1)との反応により、混合された二硫化物(4)を得た。代替として、S.J.Broisらによる、J.Am.Chem.Soc.、92巻:7629−31(1970)において記載されているように、(3)を、メトキシカルボニルスルフェニルクロリドと反応し得て、2−(メトキシカルボニルジチオ)プロピルアミン塩酸塩を生成し、続いて、メルカプト桂皮酸(2)との反応により、混合された二硫化物(4)を生成した[S.ZalipskyらによるBioconjugate Chem.、10巻:703−7(1999)参照]。
実施例4:m−PEG−ウレタン結合ジチオ桂皮酸(mPEG−DTC、5a)の合成
この変換は、2−アミノプロピルジスルファニル桂皮酸(4)(実施例3)の、mPEG−クロロホルメートとの反応により達成され得る。例えば、S.Zalipsky及びS.Menon−RudolphによるPoly(ethylene glycol):Chemistry and Biological Applications、J.M.Harris及びS.Zalipsky編、Amer.Chem.Soc.、ワシントンDC、1997年、318−341頁を参照。S.ZalipskyらによるBiotechnol.Appl.Biochem.、15巻:100−114(1992)により、mPEGクロロホルメートは、無水mPEG−OH溶液のホスゲン化により容易に生成される。
代替としては、ウレタン結合は、H.−C.ChiuらによるBioconjugate Chem.、4巻:290−295(1993);先に引用したZalipskyら(1992)による文献;又は先に引用したZalipskyら(1997)による文献の操作により、2−アミノプロピルジスルファニル桂皮酸(4)(実施例3)の、mPEG−スクシンイミジルカーボネートとの反応により生成され得る。
実施例5:mPEG−DTC NHSエステル(5)の合成
mPEG−ウレタン結合ジチオ桂皮酸(5a)は、本技術分野で公知の、例えば、G.W.AndersonらによるJ.Amer.Chem.Soc.、86:1839(1964);R.KnorrらによるTetrahedron Lett.、30巻:1927(1989);又はM.WilchekらによるBioconjugate Chem.、5巻:491(1994)に記載されているようなエステル化操作を用いて、そのN−ヒドロキシスクシンイミドエステルに変換され得る。
実施例6:mPEG−DTC−蛋白質結合体(6)の製造
N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(5)は、種々の公表された操作により、蛋白質のアミノ基と、典型的には、中性又は塩基性のpH(pH7−9)における水性緩衝液中で反応され得る。代表的な操作については、先に引用されたS.Zalipskyら(1992);H.C.ChiuらによるBioconjugate Chem.4巻:290(1993)を参照。mPEG作用剤と、蛋白質におけるアミノ基との比、反応緩衝液のpH、温度及び反応の継続時間のような種々の反応パラメーターにより、種々の程度のPEG化を有する、ある範囲の結合体種を得ることができる。一般式、(mPEG)−蛋白質の結合体混合物が種々のクロマトグラフ技術により分別され得る。n=1を有する(mPEG)−蛋白質結合体を、例えば、イオン交換クロマトグラフィーにより精製することはしばしば可能である。
実施例7:mPEG−DTC−蛋白質結合体のチオール分解開裂
生物学的関連条件下でのチオール分解に応答しての脱PEG化は、システイン、グルタチオン又はアルブミンのような生理的に存在するチオールとともに前記結合体をインキュベーションすることにより示され得る[S.ZalipskyらによるProceed.Int’l.Symp.Control Rel.Bioact.Mater.、28巻:73(2001)]。開裂可能なPEG−蛋白質結合体の、遊離蛋白質への変換は、例えば、SDS−PAGEにより、モニターすることができる。反応の速度は、時間に伴う前記結合体種の消失として、その結合体種の濃度を測定することにより、又は出現しているときに遊離蛋白質を測定することにより、追跡することができる。前記結合体がPEG化の結果として生物学的活性がない場合、開裂条件下での蛋白質の生物学的活性の復活の時間経過を測定することができる[Peptides:The Wave of the Future、M.Lebl及びR.A.Houghton編、Amer.Peptide Soc.、2001、953頁における、S.ZalipskyらによるReversible PEGylation:thiolytic regeneration of active protein from its polymer conjugates;R.B.GreenwaldらによるBioconjugate Chem.、14巻:395(2003)]。
例14
本発明を特定の態様に関して記載したが、当業者には、本発明から逸脱することなく種々の変更及び改変がなされ得ることが明らかであろう。
ジチオシンナミル(DTC)がメトキシ−ポリエチレングリコール(mPEG)部分及びアミン含有配位子に結合している、本発明の一つの態様による結合体を示す。 mPEG−DTC−NHSエステル結合体の合成のための合成反応技法を示す。 図1のmPEG−DTC−蛋白質結合体のチオール分解開裂及び得られる生成物を示す。 本発明の他の結合体のチオール分解開裂及び得られる生成物を示す。

Claims (40)

  1. 構造I:
    Figure 2007533750

    [構造中、RXはアミン−又はヒドロキシル−含有配位子であり、Xは酸素、第一級窒素又は第二級窒素であり、
    Mは、シス−CR=CR−、−CR−及び−CR−CR−(式中、R、R、R及びRの各々は、H、メチル、置換メチル、フルオロ及びクロロから独立して選ばれ、メチルは、ヒドロキシル、フルオロ又はクロロで置換され得る)から選ばれ、
    D形状構造は、M及びジスルフィド基S−Sがシス−1,2−配向又はオルト配向で結合している5−又は6−員環を表し、
    は、水素、又は前記環上の、R、OR、C(O)OH、C(O)OR、OC(O)OR、C(O)NR、OC(O)NR、シアノ、ニトロ、ハロゲン及び更なる縮合環(式中、Rは、更にハロゲンで置換され得るC−Cヒドロカルビルである)から選ばれる一つ以上の置換基を表し、
    Lは、更にアリール又はアラルキルで置換され得る、線状の又は分岐状のC−Cアルキル基であり、
    L及びRは一緒に環を形成し得て、
    Lに、Rに、又は5−もしくは6−員環に結合した脂質又は親水性ポリマーを更に有する]
    を有する結合体。
  2. L及びRが環を形成しない、請求項1に記載の結合体。
  3. Lに又はRに結合した親水性ポリマーを有する、請求項2に記載の結合体。
  4. 5−又は6−員環が芳香環である、請求項2に記載の結合体。
  5. 芳香環がベンゼン環であり、Mがシス−CR=CR−であり、従って、前記結合体が構造Ia:
    Figure 2007533750

    を有する、請求項4に記載の結合体。
  6. 及びRの各々が水素である、請求項5に記載の結合体。
  7. にでなくLに結合した親水性ポリマーを有する、請求項6に記載の結合体。
  8. が水素である、請求項7に記載の結合体。
  9. Lが構造、−CR−CR−を有し、−CRがジスルフィド基に結合しており、R及びRが、H、アルキル、アリール及びアラルキルから独立して選ばれ、R及びRが、H及びメチルから独立して選ばれる、請求項5に記載の結合体。
  10. 及びRの各々が、水素、メチル、エチル及びプロピルから独立して選ばれる、請求項9に記載の結合体。
  11. が水素であり、Rが、水素、メチル、エチル及びプロピルから成る群から選ばれる、請求項10に記載の結合体。
  12. L及びRがシス−1,2−配向又はオルト配向で5−又は6−員環に結合しており、L及びRが、更に5−乃至7−員環の一つを一緒に形成している、請求項1に記載の結合体。
  13. 5−又は6−員環に結合した親水性ポリマーを有する、請求項12に記載の結合体。
  14. 前記の更なる5−乃至7−員環の一つに結合した親水性ポリマーを有する、請求項12に記載の結合体。
  15. 構造:
    Figure 2007533750

    [構造中、RXはアミン−又はヒドロキシル−含有配位子であり、Xは酸素、第一級窒素又は第二級窒素であり、
    Mは、シス−CR=CR−、−CR−及び−CR−CR−(式中、R、R、R及びRの各々は、H、メチル、置換メチル、フルオロ及びクロロから独立して選ばれ、メチルは、ヒドロキシル、フルオロ又はクロロで置換され得る)から選ばれ、
    D形状構造は、M及びジスルフィド基S−Sがシス−1,2−配向又はオルト配向で結合している5−又は6−員環を表し、
    は、水素、又は前記環上の、R、OR、C(O)OH、C(O)OR、OC(O)OR、C(O)NR、OC(O)NR、シアノ、ニトロ、ハロゲン及び更なる縮合環(式中、Rは、更にハロゲンで置換され得るC−Cヒドロカルビルである)から選ばれる一つ以上の置換基を表し、
    Lは、更にアリール又はアラルキルで置換され得る、線状の又は分岐状のC−Cアルキル基であり、
    L及びRは一緒に環を形成し得て、
    Lに、Rに、又は5−もしくは6−員環に結合した脂質又は親水性ポリマーを更に有する]
    を有する結合体を血流に投与することを含む、血流に、アミン−又はヒドロキシル−含有分子RXHを投与する方法。
  16. L及びRが環を形成しない、請求項15に記載の方法。
  17. 親水性ポリマーがL又はRに結合している、請求項16に記載の方法。
  18. 前記の5−又は6−員環がベンゼン環であり、Mがシス−CR=CR−であり、従って、前記結合体が構造Ia:
    Figure 2007533750

    を有する、請求項16に記載の方法。
  19. 親水性ポリマーがRにでなくLに結合している、請求項18に記載の方法。
  20. が水素である、請求項19に記載の方法。
  21. Lが構造、−CR−CR−を有し、−CRがジスルフィド基に結合しており、R及びRが、H、アルキル、アリール及びアラルキルから独立して選ばれ、R及びRが、H及びメチルから独立して選ばれる、請求項18に記載の方法。
  22. 及びRの各々が、水素、メチル、エチル及びプロピルから独立して選ばれる、請求項21に記載の方法。
  23. L及びRがシス−1,2−配向又はオルト配向で5−又は6−員環に結合しており、L及びRが、更に5−乃至7−員環の一つを一緒に形成している、請求項15に記載の方法。
  24. 親水性ポリマーが5−又は6−員環に結合している、請求項23に記載の方法。
  25. 親水性ポリマーが前記の更なる5−乃至7−員環の一つに結合している、請求項23に記載の方法。
  26. 前記開裂反応により遊離された蛍光部分の検出により、前記分子の遊離をモニターすることをさらに含む、請求項15に記載の方法。
  27. 親水性ポリマー鎖の表面被覆を有し、構造I:
    Figure 2007533750

    [構造中、RXはアミン−又はヒドロキシル−含有脂質であり、Xは酸素、第一級窒素又は第二級窒素であり、
    Mは、シス−CR=CR−、−CR−及び−CR−CR−(式中、R、R、R及びRの各々は、H、メチル、置換メチル、フルオロ及びクロロから独立して選ばれ、メチルはヒドロキシル、フルオロ又はクロロで置換され得る)から選ばれ、
    D形状構造は、M及びジスルフィド基S−Sがシス−1,2−配向又はオルト配向で結合している5−又は6−員環を表し、
    は、水素、又は前記環上の、R、OR、C(O)OH、C(O)OR、OC(O)OR、C(O)NR、OC(O)NR、シアノ、ニトロ、ハロゲン及び更なる縮合環(Rは、更にハロゲンで置換され得るC−Cヒドロカルビルである)から選ばれる一つ以上の置換基を表し、
    Lは、更にアリール又はアラルキルで置換され得る、線状の又は分岐状のC−Cアルキル基であり、
    L及びRは一緒に環を形成し得て、
    Lに、Rに、又は5−もしくは6−員環に結合した親水性ポリマーを有する]
    を有する脂質−ポリマー結合体を含有するリポソーム。
  28. L及びRが環を形成せず、親水性ポリマーがLに結合している、請求項27に記載のリポソーム。
  29. 5−又は6−員環がベンゼン環であり、Mがシス−CR=CR−であり、従って、前記結合体が構造Ia:
    Figure 2007533750

    を有する、請求項27に記載のリポソーム。
  30. が水素である、請求項29に記載のリポソーム。
  31. Lが、構造、−CR−CR−を有し、−CRがジスルフィド基に結合しており、R及びRが、H、アルキル、アリール及びアラルキルから独立して選ばれ、R及びRが、H及びメチルから独立して選ばれる、請求項29に記載のリポソーム。
  32. 及びRの各々が、水素、メチル、エチル及びプロピルから独立して選ばれる、請求項31に記載のリポソーム。
  33. L及びRが、シス−1,2−配向又はオルト配向で5−又は6−員環に結合しており、L及びRが、更に5−乃至7−員環の一つを一緒に形成している、請求項26に記載のリポソーム。
  34. 親水性ポリマーが5−もしくは6−員環に結合しているか、又は前記の更なる5−乃至7−員環の一つに結合している、請求項33に記載のリポソーム。
  35. 閉じ込められた治療剤をさらに含有する、請求項27に記載のリポソーム。
  36. アミン−又はヒドロキシル−含有分子の、構造II:
    Figure 2007533750

    [構造中、Zは、ヒドロキシル基又はアミノ基により置換され得る脱離基であり、
    Mは、シス−CR=CR−、−CR−及び−CR−CR−(式中、R、R、R及びRの各々は、H、メチル、置換メチル、フルオロ及びクロロから独立して選ばれ、メチルは、ヒドロキシル、フルオロ又はクロロで置換され得る)から選ばれ、
    D形状構造は、M及びジスルフィド基S−Sがシス−1,2−配向又はオルト配向で結合している5−又は6−員環を表し、
    は、水素、又は前記環上の、R、OR、C(O)OH、C(O)OR、OC(O)OR、C(O)NR、OC(O)NR、シアノ、ニトロ、ハロゲン及び更なる縮合環(式中、Rは、更にハロゲンで置換され得るC−Cヒドロカルビルである)から選ばれる一つ以上の置換基を表し、
    Lは、更にアリール又はアラルキルで置換され得る、線状の又は分岐状のC−Cアルキル基であり、
    L及びRは一緒に環を形成し得て、
    Lに、Rに、又は5−もしくは6−員環に結合した脂質又は親水性ポリマーを更に有する]
    を有する化合物との反応により得られる結合体。
  37. L及びRが環を形成しない、請求項36に記載の結合体。
  38. Lに結合した親水性ポリマーを有する、請求項37に記載の結合体。
  39. 5−又は6−員環がベンゼン環であり、Mがシス−CR=CR−であり、従って、前記化合物が構造IIa:
    Figure 2007533750

    を有する、請求項38に記載の結合体。
  40. Lが、構造、−CR−CR−を有し、−CRがジスルフィド基に結合しており、R及びRが、H、アルキル、アリール及びアラルキルから独立して選ばれ、R及びRが、H及びメチルから独立して選ばれる、請求項39に記載の結合体。
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