(発明の詳細な説明)
本発明は、血小板、赤血球、内皮細胞(HuVEC)、腎臓細胞、気管支気道細胞、末梢気道細胞、前立腺細胞、肝細胞、または胸部細胞上では有意なCS1タンパク質発現が検出されないという本発明者らの発見に一部分基づいている。CS1発現はリンパ特異的で、多発性骨髄腫患者および形質細胞性白血病患者を含む患者の細胞上で検出される。発現は、形質細胞上でのみ検出され、骨髄試料の他の細胞型では有意なレベルで検出することはできない。したがって、本発明は、骨髄腫、多発性骨髄腫、骨の「孤立性」骨髄腫、髄外性形質細胞腫、形質細胞性白血病、マクログロブリン血症(ヴァルデンストレームマクログロブリン血症を含む)、重鎖病、原発性アミロイドーシス、および意味不明の単クローン性高ガンマグロブリン血症(MGUS)を含む形質細胞新生物が挙げられるが、これに限定されない癌を処置するための治療薬剤として抗CS1抗体を使用することの実現可能性を実証したものである。また、慢性リンパ球性白血病(CLL)を含む、免疫グロブリンの発現上昇に関連する非形質細胞性新生物も、抗CS1療法による恩恵を受ける。
さらに、以前の研究によって、CS1タンパク質は、インビトロでPWM(ヤマゴボウマイトジェン)によって活性化された末梢血B細胞、記憶/エフェクター対ナイーブ末梢血BおよびTリンパ球のサブセット、または末梢血のCD14+単球/マクロファージで発現されることが明らかにされた。また、以前の研究では、免疫グロブリン産生におけるCS1の役割は明らかになっていない。その結果、CS1と自己免疫疾患との間の相関関係はこれまで確認されていない。また、本発明は、CS1のRNAおよびタンパク質発現が、自己抗体産生に関与し、自己免疫疾患の発症に重要な役割を果たすと考えられている細胞サブセットである、活性化された末梢血B細胞において強力に上方制御されているという本発明者らの発見にも一部分基づいている。さらに、本発明によって、SLE患者の末梢血Bリンパ球におけるCS1 RNAの発現が、IBDに苦しむ患者におけると同様、同年齢の健康な成人のB細胞と比較して高いことが明らかにされている。本発明は、CS−1が関節リウマチ(RA)滑膜中の湿潤性形質細胞上で発現されることを明らかにしている。本発明は、CS1が抗体産生に関与していること、および、CS1に対する抗体が、健康な成人および狼瘡患者のB細胞によって分泌されるIgMおよびIgGを減少させることも明らかにしている。次に、本発明のデータは、CS1が、自己免疫疾患、特に、SLE、IBD、およびRAの成立に重要な役割を果たしていることを示唆している。寒冷凝集素症、免疫性水疱症(水疱性類天疱瘡、天疱瘡、疱疹状皮膚炎、線状IgA症、および後天性表皮水疱症を含む)、混合型クリオグロブリン血症、高ガンマグロブリン血症、シェーグレン症候群、自己免疫性貧血、ぜんそく、重症筋無力症、多発性硬化症、心筋または心膜の炎症、アトピー性皮膚炎、乾癬、粘液水腫性苔癬、およびゴーシェ病を含む、免疫グロブリン、B細胞、および/またはB細胞産物の増加に関連するその他の疾患も、抗CS1処置から利益を受ける。
さらに、骨髄腫および形質細胞性白血病を含む自己免疫疾患および形質細胞癌を処置するために抗CS1抗体を用いることの実現可能性を調べるための研究はこれまで行われてこなかった。理想的な治療用抗体は、主に標的細胞に結合しなければならない。別の細胞や組織に結合すると、それらの細胞や組織に潜在的損傷をもたらし、および/または治療用抗体を枯渇させて、所望の処置効果を達成するためには、過剰量の抗体を患者に送達することが必要となる可能性がある。より重要なのは、血小板に結合する抗体には、例えば、血小板活性化(過剰な凝固をもたらす可能性がある)、または血小板減少(血液凝固ができなくなる可能性がある)などの副作用があるかもしれないことである。したがって、抗体が多様な細胞や組織に結合する場合、特に、血小板に結合する場合には、通常、その抗体を治療薬剤として使用するのは適当ではない。本発明は、血小板、赤血球、HuVEC、腎臓細胞、気管支気道細胞、小気道細胞、前立腺細胞、肝細胞および胸部細胞の上では有意なCS1タンパク質発現が検出されないという本発明者らの発見に一部分基づいている。したがって、本発明は、自己免疫疾患、および骨髄腫および形質細胞性白血病を含む形質細胞癌を処置するための治療薬剤として抗CS1抗体を使用することの実現可能性を実証した。
したがって、本発明は、CS1に結合するアンタゴニストに関する。このような実施形態の例示的実施形態には、中和抗CS1抗体および抗体フラグメントが含まれる。これらの抗体は、CS1の少なくとも1つの生物活性を中和する。これらの抗体は、CS1に結合し、そして(a)リンパ球による免疫グロブリンの分泌および/または産生を阻害すること、および(b)CS1を発現する細胞の溶解を誘導することからなる群より選択される1つ以上の活性の能力をもつ。
上記に概説した目的に従って、本発明は、例えば自己免疫疾患などのさまざまな疾患、およびさまざまな型の骨髄腫を含む、さまざまな規定の癌症状を処置するための新規の方法を提供する。また、そのような疾患を診断および予後評価する方法、およびそのような症状を調節する組成物をスクリーニングする方法も提供する。本発明は、例えば上記疾患において選択的に発現されるマーカーのモニタリングおよびスクリーニングを含むような処置の治療効果をモニターする方法も提供する。
特に、SLE、RA、およびIBDなどの自己免疫疾患、ならびに骨髄腫および形質細胞性白血病などの癌症状において選択的に発現されるマーカーを同定することによって、その発現を診断、予後、または治療の方法に利用することが可能になる。そのため、本発明は、それらマーカーを選択的に同定するのに有用なさまざまな組成物(例えば核酸、ポリペプチド、抗体、および低分子アゴニスト/アンタゴニスト)を定義する。それらマーカーは、実際には非常に異なった処置を必要とする可能性がある疾患のサブセットを分子的に特徴付けるのに有用であり得る。さらに、それらマーカーは、自己免疫疾患、骨髄腫、および形質細胞性白血病に関連した病気、例えば、そのような症状におけると同様の組織に感染する病気、または類似した誘導/維持機構をもつ病気においても重要である。例えば、腫瘍の過程または特徴も標的とすることができる。診断的および予後的な用途は、例えば、サブセットに関連するが別の病気に対して、自己免疫疾患、骨髄腫および形質細胞性白血病のステージを見分けるため、またはそのような症状の治療対策を決定するために利用可能にされる。検出方法は、核酸に基づき得る(例えばPCRもしくハイブリダイゼーション技術)か、またはタンパク質に基づき得る(例えばELISA、画像化、IHCなど)。診断は、定性的でも定量的でもよく、発現レベルの上昇または低下を検出することができる。
(定義)
用語「CS1タンパク質」または「CS1ポリヌクレオチド」または「CS1関連転写物」は:(1)CS1遺伝子(表2)のヌクレオチド配列またはこれと会合(CS1遺伝子(表2)のヌクレオチド配列またはこれと会合するヌクレオチド配列およびその保存的に改変された改変体によってコードされるアミノ酸配列を含む免疫原に対して惹起された結合パートナー(例えば、ポリクローナル抗体)へのCS1遺伝子(表2)の結合)するヌクレオチド配列に対して、好ましくは少なくとも約25、50、100、200、500、1000、またはそれより多いヌクレオチドの領域にわたって約60%より大きい(65%、70%、75%、80%、85%、90%)ヌクレオチド配列の同一性を有し、好ましくは約92%、94%、96%、97%、98%、99%、またはそれより大きいヌクレオチド配列の同一性を有し;(3)ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でCS1(表2)およびその保存的に改変された改変体の核酸配列またはその相補体と特異的にハイブリダイズするか;あるいは(4)CS1遺伝子(表2)のヌクレオチド配列もしくはこれと会合するヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して、好ましくは少なくとも約25、50、100、200、500、1000、またはそれより多いアミノ酸の領域にわたって約60%より大きい(65%、70%、75%、80%、85%)アミノ酸配列の同一性を有し、好ましくは90%、91%、93%、95%、97%、98%、99%、またはそれより大きいアミノ酸配列の同一性を有する、核酸ならびにポリペプチドの多型改変体、アレル、変異体、および種間のホモログをいう。ポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列は、代表的には、哺乳動物に由来し、この哺乳動物としては、霊長類(例えば、ヒト)、げっ歯類(例えば、ラット、マウス、ハムスター)、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、または他の哺乳動物が挙げられるが、これらに限定されない。「CS1ポリペプチド」および「CS1ポリヌクレオチド」は、天然に存在する形態または組換え形態の両方を含む。
「全長」CS1タンパク質または「全長」CS1核酸は、通常、1つ以上の天然に存在する野生型CS1ポリヌクレオチド配列または野生型CS1ポリペプチド配列中に含まれるエレメントを含む、CS1ポリペプチド配列もしくはCS1ポリヌクレオチド配列、またはそれらの改変体をいう。「全長」は、選択的スプライシングを含む翻訳後のプロセシングもしくは翻訳後のスプライシングの種々の段階の前、またはその後であり得る。
本明細書中で使用される場合、「生物学的サンプル」は、例えば、CS1タンパク質、CS1ポリヌクレオチド、またはCS1転写物の核酸またはポリペプチドを含む生物学的組織または生物学的流体のサンプルである。このようなサンプルとしては、霊長類(例えば、ヒト)またはげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)から単離された組織が挙げられるが、これらに限定されない。生物学的サンプルとしてはまた、生検サンプルおよび剖検サンプルのような組織の切片、組織学的目的のために採取した凍結切片、記録用サンプル、血液、血漿、血清、痰、糞、涙、粘液、毛髪、皮膚などが挙げられ得る。生物学的サンプルとしてはまた、外植片ならびに患者の組織由来の初代細胞培養物および/または形質転換細胞培養物が挙げられる。生物学的サンプルは、代表的に、真核生物(最もの好ましくは、霊長類(例えば、チンパンジーまたはヒト)、ウシ、イヌ、ネコ、げっ歯類(例えば、モルモット、ラット、マウス、ウサギ)のような哺乳動物、またはトリ、爬虫類、または魚類)の生物体から得られる。家畜およびペットも目的とする。
「生物学的サンプルの提供」は、本発明に記載される方法で使用するための生物学的サンプルを得ることを意味する。ほとんどの場合、これは、動物からの細胞サンプルの取出しによって行われるが、予め単離された(例えば、別のヒトによって、別の時間にて、そして/または別の目的のために単離された)細胞を使用すること、またはインビボで本発明を実施することによっても達成され得る。処置または結果の履歴を有する記録用の組織または材料は、特に有用である。
2つ以上の核酸配列またはポリペプチド配列の文脈における、用語「同一」または「同一性」の%は、例えば、下記の初期設定のパラメータを使用したBLASTまたはBLAST2.0配列比較アルゴリズムを使用するか、手動のアラインメントおよび目視検査によって測定された場合、同一であるか、または特定の%でアミノ酸残基またはヌクレオチドと同一である(例えば、比較ウインドウまたは指定された領域において最大限に一致するように比較および整列を行った場合に、特定の領域について約70%の同一性、好ましくは、75%、80%、85%、90%、91%、93%、95%、97%、98%、99%、またはそれ以上の同一性である)2つ以上の配列または部分配列をいう。以下、このような配列を、「実質的に同一」であるという。この定義はまた、試験配列の相補体をいうか、またはこれに適用され得る。この定義はまた、欠失および/または挿入、置換、ならびに天然に存在する改変体(例えば、多型またはアレル改変体)、および人為的な改変体を含む。下記のように、好ましいアルゴリズムは、ギャップなどを説明し得る。好ましくは、同一性は、少なくとも約25アミノ酸長または25ヌクレオチド長である領域、より好ましくは約50〜100アミノ酸長または約50〜100ヌクレオチド長の領域にわたって存在する。
配列比較のために、代表的には、1つの配列は、参照配列として機能し、この参照配列は、試験配列と比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列および参照配列は、コンピュータに入力され、部分配列の座標が指定され、そして必要な場合には、配列アルゴリズムのプログラムパラメータが指定される。好ましくは、初期設定のプログラムパラメータが使用されても、代替的なパラメータが指定されてもよい。次いで、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列の配列同一性の%を計算する。
本明細書中で使用される場合、「比較ウインドウ」は、2つの配列が最適に整列された後に、ある配列が参照配列の同数の連続する位置と比較され得る、代表的に、約20〜600、通常は約50〜200、より通常には約100〜150からなる群より選択される連続する位置のセグメントに対する参照を含む。比較のための配列のアラインメントに関する方法は、周知である。比較のための最適な配列のアラインメントは、例えば、SmithおよびWaterman(1981)Adv.Appl.Math.2:482−489の局所相同性アルゴリズム、NeedlemanおよびWunsch(1970)J.Mol.Biol.48:443−453の相同性アラインメントアルゴリズム、PearsonおよびLipman(1988)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444−2448の類似性検索方法、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実行(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.Madison,WIのGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、または手動のアラインメントおよび目視検査(例えば、Ausubelら編、(1995年および補遺)、Current Protocols in Molecular Biology Wileyを参照のこと)によって行われ得る。
配列同一性の%および配列類似性の%を決定するのに適したアルゴリズムの好ましい例としては、Altschulら、(1977)Nuc.Acids Res.25:3389−3402およびAltschulら、(1990)、J.Mol.Biol.215:403−410に記載される、BLASTアルゴリズムおよびBLAST2.0アルゴリズムが挙げられる。BLASTおよびBLAST2.0は、本発明の核酸およびタンパク質の配列同一性の%を決定するために、本明細書中に記載されるパラメータと共に使用される。BLAST分析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationを通じて公的に利用可能である。このアルゴリズムは、データベース配列中の同じ長さのワードと整列された場合に、いくつかの正の値の閾値スコアTに適合するか、またはこれを満たす、クエリー配列中の長さWの短いワードを同定することによって、最初に高スコア配列対(HSP)を同定する工程を包含する。Tは、隣接するワードのスコア閾値をいう(Altschulら,前出)。これらの最初の隣接ワードヒットは、これらを含むより長いHSPを見出す検索を開始するためのシードとして機能する。このワードヒットは、累積アラインメントスコアが増加され得る限り、各配列に沿って両方向に伸長される。累積スコアは、例えば、ヌクレオチド配列に対してはパラメータM(一致する残基の対についてのリワードスコア(reward score);常に>0)およびN(ミスマッチの残基に対するペナルティスコア;常に<0)を使用して計算される。アミノ酸配列については、スコアリングマトリックスが使用されて、累積スコアが計算される。各方向におけるワードヒットの伸長は、以下の場合に中止される:累積アラインメントスコアがその最大達成値から量Xに低下した場合;1つ以上の負のスコアリング残基アラインメントの蓄積に起因して累積スコアが0以下になった場合;またはいずれかの配列の末端に達した場合。BLASTアルゴリズムのパラメータW、T、およびXは、アラインメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、初期設定として、11のワード長(W)、10の期待値(E)、M=5、N=−4、および両方の鎖の比較を使用する。アミノ酸配列では、BLASTPプログラムは、初期設定として、3のワード長、10の期待値(E)、ならびに50のBLOSUM62スコアリングマトリックス(HenikoffおよびHenikoff(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915−919を参照のこと)アラインメント(B)、10の期待値(E)、M=5、N=−4、および両方の鎖の比較を使用する。
BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計的分析を行う。例えば、KarlinおよびAltschul、(1993)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5787を参照のこと。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの基準は、2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の間の一致が偶然に起こる確率の指標を提供する最小確率和(smallest sum probability)(P(N))である。例えば、核酸は、試験核酸と基準核酸との比較における最小確率和が約0.2未満であり、より好ましくは約0.01未満であり、最も好ましくは約0.001未満である場合に、参照配列に類似すると見なされる。Log値は、負の大きな数(例えば、5、10、20、30、40、40、70、90、110、150、170など)であり得る。
2つの核酸配列が実質的に同一であることの指標は、第1の核酸によってコードされたポリペプチドが、第2の核酸によってコードされたポリペプチドに対して惹起された抗体と免疫学的に交差反応性であることである。したがって、ポリペプチドは、代表的に、例えば、2つのペプチドが保存的な置換によってのみ異なる場合、第2のポリペプチドと実質的に同一である。2つの核酸配列が実質的に同一であることの別の指標は、2つの分子またはその相補体がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることである。2つの核酸配列が実質的に同一であることのなお別の指標は、同じプライマーを使用してこれらの配列が増幅され得ることである。
「宿主細胞」は、発現ベクターを含み、そして発現ベクターの複製または発現を支持する天然に存在する細胞または形質転換細胞である。宿主細胞は、培養細胞、外植片、およびインビボの細胞などであり得る。宿主細胞は、E.coliのような原核細胞、酵母、昆虫、両生類のような真核細胞、またはCHO、HeLaおよび黒色腫のような哺乳動物細胞であり得る(例えば、American Type Culture Collection catalogまたはウェブサイトを参照のこと)。
用語「単離」、「精製」、または「生物学的に純粋」とは、ネイティブな状態において見出されるように、その材料に通常は伴う成分を実質的にか、または本質的に含まない物質をいう。純度および均一性は、代表的に、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーのような分析化学的技術を使用して決定される。調製物中に存在する優勢な種であるタンパク質または核酸は、実質的に精製される。特に、単離核酸は、天然にこの遺伝子に隣接し、そしてこの遺伝子によってコードされるタンパク質以外のタンパク質をコードするいくつかのオープンリーディングフレームから分離される。いくつかの実施形態において、用語「精製」は、核酸またはタンパク質が電気泳動ゲルに本質的に1つのバンドを生じることを示す。好ましくは、このことは、核酸またはタンパク質が、少なくとも約85%の純度、より好ましくは少なくとも95%の純度、最も好ましくは少なくとも99%の純度であることを意味する。他の実施形態において、「純度」または「精製」は、精製される組成物からの少なくとも1種の夾雑物または成分の除去を意味する。この意味において、精製は、精製された化合物が均一(例えば、100%の純度)であることを必要としない。
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーをいうために、本明細書中で交換可能に使用される。この用語は、1個以上のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工の化学的模倣物(mimetic)であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマー、改変された残基を含むもの、および天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用する。
用語「アミノ酸」とは、天然に存在するアミノ酸および合成アミノ酸ならびに天然に存在するアミノ酸と同様に機能する、アミノ酸アナログおよびアミノ酸模倣物をいう。天然に存在するアミノ酸は、遺伝暗号によってコードされるアミノ酸、および後に改変されるアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、およびO−ホスホセリン)である。アミノ酸アナログは、天然に存在するアミノ酸(と基本的化学構造例えば、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基(例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム)に結合されるα炭素)と基本化学構造が同一である化合物をいう。このようなアナログは、改変されたR基(例えば、ノルロイシン)または改変されたペプチド骨格を有し得るが、天然に存在するアミノ酸のようなある程度の基本化学構造を保持する。アミノ酸模倣物とは、あるアミノ酸の一般的な化学構造と異なるが、別のアミノ酸と同様に機能する構造を有する化学化合物をいう。
本明細書中で、アミノ酸は、その一般的に公知の三文字表記のいずれか、またはIUPAC−IUB Biochenmical Nomenclature Commissionが推奨する一文字表記のいずれかによって称される。同様に、ヌクレオチドは、一般に受け入れられている一文字表記によって称され得る。
「保存的に改変された改変体」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された改変体とは、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸、または核酸がアミノ酸配列をコードしない場合、本質的に同一であるか、または関連した(例えば、天然に隣接する)配列をいう。遺伝暗号の縮重に起因して、非常に多くの機能的に同一の核酸は、ほとんどのタンパク質をコードする。例えば、これらのGCA、GCC、GCG、およびGCUは、それぞれ、アミノ酸であるアラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンによって特定される各位置において、コドンは、コードされるポリペプチドを変更することなく、記載される対応する別のコドンに変更され得る。このような核酸のバリエーションは、「サイレントバリエーション(silent variation)」であり、保存的に改変されたバリエーションの1種である。ポリペプチドをコードする本明細書中に記載の各核酸配列はまた、核酸のサイレントバリエーションを記載する。特定の文脈において、核酸中の各コドン(通常メチオニンについてのみのコドンであるAUGおよび通常トリプトファンについてのみのコドンであるTGGを除く)は、機能的に類似する分子が得られるように改変され得る。したがって、ポリペプチドをコードする核酸のサイレントバリエーションは、発現産物に対しては記載される配列中に暗示的にあるが、必ずしも実際のプローブ配列に対してあるわけではない。
アミノ酸配列に関して、当業者は、コード配列中の単一のアミノ酸または少数の%のアミノ酸を変更するか、付加するか、もしくは欠失する核酸配列、ペプチド配列、ポリペプチド配列、もしくはタンパク質配列の個々の置換、欠失、または付加が、これらの変化が化学的に類似するアミノ酸によるアミノ酸の置換を生じる場合に、「保存的に改変された改変体」であることを認識する。機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的置換表は周知である。このような保存的に改変された改変体は、本発明の多型改変体、種間のホモログ、およびアレルに加えられ、これらを除外しない。代表的には、保存的置換としては、以下の相互置換が挙げられる:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、トレオニン(T);および8)シトシン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton、(1984)、Proteins:Structure and Molecular Properties Freemanを参照のこと)。
ポリペプチド構造のような高分子構造は、種々の組織化のレベルに関して記載され得る。この組織化の一般的考察については、例えば、Albertsら編、(2001)、Molecular Biology of the Cell(第4版)、Garland;ならびにCantorおよびSchimmel、(1980)、Biophysical Chemistry Part I:The Conformation of Biological Macromolecules Freemanを参照のこと。「一次構造」とは、特定のペプチドのアミノ酸配列をいう。「二次構造」とは、ポリペプチド内の局所的に順序立てられた三次元構造をいう。これらの構造は、一般的に、ドメインとして公知である。ドメインは、多くの場合、ポリペプチドの小型ユニット(compact unit)を形成し、そして代表的には、25アミノ酸長〜約500アミノ酸長である、ポリペプチドの部分である。代表的なドメインは、低組織化部分(例えば、β−シートおよびα−ヘリックスの伸び)から構成される。「三次構造」とは、ポリペプチドモノマーの完全な三次元構造をいう。「四次構造」とは、通常、独立した三次元ユニットの非共有結合による会合によって形成された三次元構造をいう。他の用語もまた、汎用される用語として公知である。
本明細書中で使用される、「核酸」、「オリゴヌクレオチド」、もしくは「ポリヌクレオチド」、または文法上の等価物は、少なくとも2つの互いに共有結合したヌクレオチドを意味する。オリゴヌクレオチドは、代表的に、約5、6、7、8、9、10、12、15、25、30、40、50、またはそれ以上のヌクレオチド長から約100ヌクレオチド長までである。核酸およびポリヌクレオチドは、より長い長さ(例えば、200、300、500、1000、2000、3000、5000、7000、10,000など)を含む、任意の長さのポリマーである。本発明の核酸は、一般的に、ホスホジエステル結合を含むが、いくつかの場合において、少なくとも1つの異なる結合(例えば、ホスホラミデート結合、ホスホロチオエート結合、ホスホロジチオエート結合、またはO−メチルホスホロアミダイト結合(Eckstein、(1992)、Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach Oxford Univ.Pressを参照のこと));ならびにペプチド核酸骨格およびペプチド核酸結合を有し得る核酸アナログが含まれる。他の核酸のアナログとしては、正の骨格(positive backbone)、非イオン性骨格、および非リボース骨格を有するアナログが挙げられる(米国特許第5,235,033号および同第5,034,506号、ならびにSanghviおよびCook編、(1994)、Carbohydrate Modifications in Antisense Research ACS Symposium Series 580の第6章および第7章に記載のアナログが挙げられる)。1つ以上の炭素環式糖を含む核酸もまた、核酸の1つの定義に含まれる。リボース−ホスフェート骨格の改変は、種々の理由(例えば、生理学的環境下においてこのような分子の安定性および半減期を増加させるためか、またはバイオチップにおけるプローブとして)に起因してなされ得る。天然に存在する核酸と核酸アナログとの混合物が作製され得るか;あるいは、異なる核酸アナログと、天然に存在する核酸と核酸アナログとの混合物との混合物が作製され得る。
種々の参考文献は、このような核酸アナログを開示し、これらのアナログとしては、例えば、以下を有するものが挙げられる:ホスホラミデート結合(Beaucageら、(1993)、Tetrahedron 49:1925−1963およびその参考文献;Letsinger、(1970)、J.Org.Chem.35:3800−3803;Sprinzlら、(1977)、Eur.J.Biochem.81:579−589;Letsingerら、(1986)、Nucl.Acids Res.14:3487−499;Sawaiら、(1984)、Chem.Lett.805;Letsingerら、(1988)、J.Am.Chem.Soc.110:4470−4471;ならびにPauwelsら、(1986)、Chemica Scripta 26:141−149)、ホスホロチオエート結合(Magら、(1991)、Nucleic Acids Res.19:1437−441;および米国特許第5,644,048号)、ホスホロジチオエート結合(Brillら、(1989)、J.Am.Chem.Soc.111:2321−2322)、O−メチルホスホロアミダイト結合(Eckstein、(1992)、Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach,Oxford Univ.Pressを参照のこと)、ならびにペプチド核酸骨格および結合(Egholm、(1992)、J.Am.Chem.Soc.114:1895−1897;Meierら、(1992)、Chem.Int.Ed.Engl.31:1008−1010;Nielsen、(1993)、Nature 365:566−568;Carlssonら、(1996)、Nature 380:207(これら全てが参考として援用される)を参照のこと)が含まれる。他のアナログ核酸には、正の骨格(Denpcyら、(1995)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:6097−101;非イオン性骨格(米国特許第5,386,023号,同第5,637,684号,同第5,602,240号,同第5,216,141号および同第4,469,863号;Kiedrowskiら、(1991)、Angew.Chem.Intl.Ed.English 30:423−426;Letsingerら、(1988)、J.Am.Chem.Soc.110:4470−4471;Letsingerら、(1994)、Nucleoside and Nucleotide 13:1597;SanghviおよびCook編、(1994)、Carbohydrate Modifications in Antisense Research ACS Symposium Series 580の第2章および第3章;Mesmaekerら、(1994)、Bioorganic and Medicinal Chem.Lett.4:395−398;Jeffsら、(1994)、J.Biomolecular NMR 34:17;Hornら、(1996)、Tetrahedron Lett.37:743)、および非リボース骨格(米国特許第5,235,033号および同第5,034,506号ならびにSanghviおよびCook編、(1994)、Carbohydrate Modifications in Antisense Research ACS Symposium Series 580の第6章およびに第7章に記載されるものが挙げられる)。1つ以上の炭素環式糖を含む核酸も核酸の1つの定義に含まれる(Jenkinsら(1995)Chem.Soc.Rev.pp 169−176を参照のこと)。いくつかの核酸アナログは、Rawls、(1997年6月2日、35ページ)、C&E Newsに記載されている。
ペプチド核酸アナログを含むペプチド核酸(PNA)が特に好ましい。ペプチド核酸は、ペプチド結合によって結合した反復N−(2−アミノイエチル)−グリシン単位から作製された骨格を有する。異なる塩基(プリンおよびピリミジン)は、メチレンカルボニル結合によって骨格に連結される。これらの骨格は、天然に存在する核酸の高荷電ホスホジエステル骨格と比較して、中性条件下で実質的に非イオン性である。これにより、少なくとも2つの利点が得られる。PNA骨格は、改善されたハイブリダイズ動態を示し、PNA鎖とDNA鎖との間よりも強いPNA/DNA鎖の間の結合を生じる。PNAは、ミスマッチと完全に一致した塩基対とでは融点(Tm)がより大きく異なる。DNAおよびRNAは、代表的には、内部ミスマッチのためにTmは2〜4℃低下する。非イオン性PNA骨格では、この低下は7〜9℃付近である。同様に、その非イオン性に起因して、これらの骨格に結合した塩基のハイブリダイゼーションは、塩濃度に対して、比較的、非感受性である。さらに、PNAは、細胞酵素によって分解されず、したがってより安定であり得る。
核酸は、規定されるように、一本鎖または二本鎖であり得るか、二本鎖配列または一本鎖配列の一部を含み得る。一本鎖の描写は相補鎖の配列も定義するので、本明細書中に記載の配列はまた配列の相補体を提供する。核酸は、DNA(ゲノムDNAおよびcDNAの両方)、RNA、または核酸がデオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドの組み合わせ、ならびに塩基(ウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、イソシトシン、イソグアニンなどが含まれる)の組み合わせを含み得るハイブリッドであり得る。「転写物」は、代表的には、天然に存在するRNA(例えば、プレmRNA、hnRNA、またはmRNA)をいう。本明細書中で使用される場合、用語「ヌクレオシド」は、ヌクレオチドならびにヌクレオシドおよびヌクレオチドのアナログ、ならびにアミノ改変ヌクレオシドのような改変ヌクレオシドを含む。さらに、「ヌクレオシド」には、天然に存在しないアナログ構造が含まれる。したがって、例えば、それぞれ塩基を含むペプチド核酸の個々の単位は、本明細書中においてヌクレオシドと称される。
「標識」または「検出可能な部分」は、顕微鏡手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、生理学的手段、化学的手段、または他の物理的手段によって検出可能な組成物である。一般的に、標識は、以下の3つのクラスに分類される:a)放射性同位体または重同位体であり得る同位体標識;b)抗体、抗原、またはエピトープタグであり得る免疫標識;およびc)着色色素または蛍光色素。標識は、CS1の核酸、タンパク質、および抗体に組み込まれ得る。例えば、標識は、直接的かまたは間接的のいずれかで検出可能なシグナルを生成し得るべきである。これらの検出可能な部分は、放射性同位体(3H、14C、32P、35S、または125Iなど)、高電子密度試薬、蛍光化合物もしくは化学発光化合物(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、またはルシフェリン)、または酵素(例えば、ELISAで一般的に使用されているもの)、ビオチン、ジゴキシゲニン、ハプテンおよびタンパク質、または検出可能にし得る他の実体(例えば、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、または西洋ワサビペルオキシダーゼ)であり得る。抗体と標識とを結合体化する方法は公知である。例えば、Hunterら、(1962)、Nature 144:945;Davidら、(1974)、Biochemistry 13:1014−1021;Painら、(1981)、J.Immunol.Meth.40:219−230;およびNygren、(1982)、J.Histochem.and Cytochem.30:407−412を参照のこと。
「エフェクター」、「エフェクター部分」、または「エフェクター成分」は、抗体に対して、リンカーまたは化学結合を介して共有結合(連結または結合体化)されるか、イオン結合、ファンデルワールス結合、静電結合、または水素結合を介して非共有結合(連結または結合体化)される分子である。「エフェクター」は、例えば、放射性化合物、蛍光化合物、酵素もしくは基質、エピトープタグのようなタグ、毒素;活性化可能な部分、化学療法剤;リパーゼ;抗生物質;化学誘因部分、免疫調節物質(micA/B)、または例えば、「強力な(hard)」β放射線を放射する放射性同位体が挙げられる検出部分を含む種々の分子であり得る。
「標識核酸プローブまたは標識オリゴヌクレオチド」は、プローブの存在がこのプローブに結合した標識の存在を検出することによって検出され得るように、例えば、リンカーもしくは化学結合を介して標識に共有結合されるか、イオン結合、ファンデルワールス結合、静電結合、または水素結合を介して標識に非共有結合されるものである。あるいは、高親和性相互作用を使用した方法により、結合パートナーの対の一方が他方(例えば、ビオチン、ストレプトアビジン)に結合する同一の結果を達成し得る。
本明細書中で使用される場合、「核酸プローブまたはオリゴヌクレオチド」は、1つ以上の化学結合の型を介して(通常は相補的な塩基対形成を介して(例えば、水素結合形成を介して))相補配列の標的核酸に結合し得る核酸である。本明細書中で使用される場合、プローブとしては、天然(例えば、A、G、C、またはT)または改変塩基(7−デアザグアノシン、イノシンなど)が挙げられ得る。さらに、プローブ中の塩基は、ホスホジエステル結合以外の連結(好ましくは、ハイブリダイズを機能的に妨害しないもの)によって接続され得る。したがって、例えば、プローブは、構成塩基がホスホジエステル結合よりもむしろペプチド結合によって接続されるペプチド核酸であり得る。プローブは、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに依存して、プローブ配列との完全な相補性を欠く標的配列と結合し得る。プローブは、好ましくは、例えば、同位体、発色団、ルミフォア、色原体で、直接的に標識されるか、または例えば、後にストレプトアビジン複合体が結合し得るビオチンで、間接的に標識される。プローブの有無についてのアッセイにより、選択した配列または部分配列の有無を検出し得る。診断または予後は、ゲノムレベルまたはRNAもしくはタンパク質の発現レベルに基づき得る。
用語「組換え」は、例えば、細胞、核酸、タンパク質、またはベクターに関して使用される場合、細胞、核酸、タンパク質、またはベクターが、異種の核酸もしくはタンパク質の導入またはネイティブな核酸もしくはタンパク質の変更によって改変されていること、あるいは細胞がこのようにして改変された細胞に由来することを示す。したがって、例えば、組換え細胞は、天然(非組換え)形態の細胞内で見出されない遺伝子を発現するか、その他にネイティブな遺伝子を異常に発現するか、過小発現するか、または全く発現しない。本明細書中の用語「組換え核酸」は、一般的には核酸の操作(例えば、ポリメラーゼおよびエンドヌクレアーゼを使用)により最初にインビトロで形成された、天然において通常では見出されない形態の核酸を意味する。この様式では、異なる配列の作動可能な連結が、行われる。したがって、直鎖形態の単離された核酸、または通常では接続されないDNA分子をライゲーションすることによってインビトロで形成された発現ベクターは、両方とも本発明の目的のための組換えと見なされる。一旦組換え核酸が作製され、そして宿主細胞または宿主生物に再導入されると、この核酸は、例えば、インビトロ操作よりもむしろインビボでの宿主細胞の細胞機構を使用して非組換え的に複製されるが、一旦組換えで生成されるが次いで非組換え的に複製されるこのような核酸はさらに、本発明の目的のための組換えと見なされることが理解される。
同様に、「組換えタンパク質」は、例えば、上記のような組換え核酸の発現による組換え技術を使用して作製されたタンパク質である。組換えタンパク質は、少なくとも1つ以上の特徴によって天然に存在するタンパク質と区別される。これらのタンパク質は、その野生型宿主中で通常は会合しているタンパク質および化合物のいくつかまたはほとんどからの単離または精製が可能であり、したがって実質的に純粋であり得る。単離されたタンパク質は、所与のサンプル中の総タンパク質の好ましくは少なくとも約0.5重量%、より好ましくは少なくとも約5重量%を構成するその天然状態で通常は会合している物質の少なくともいくつかを含んでいない。実質的に純粋なタンパク質は、総タンパク質の少なくとも約75重量%を構成し、少なくとも約80重量%が好ましく、少なくとも約90重量%が特に好ましい。この定義は、異なる生物または宿主細胞におけるある生物由来のCS1タンパク質の産生を含む。あるいは、これらのタンパク質は、タンパク質が増加した濃度レベルで作られるように、誘導プロモーターまたは高発現プロモーターの使用によって通常見られるよりもかなり高い濃度で作製され得る。あるいは、以下で議論されるように、タンパク質は、エピトープタグの付加またはアミノ酸の置換、挿入、および欠失があるように、通常は天然で見出されない形態であり得る。
核酸の一部に関して使用される場合、用語「異種」は、核酸が、天然において互いに同一の関係で通常は見出されない2つ以上の部分配列を含むことを示す。例えば、この核酸は、代表的に、組換え的に生成され、新規の機能的核酸を作製するために配列された無関係の遺伝子からの2つ以上の配列(例えば、ある供給源由来のプロモーターおよび別の供給源由来のコード領域)を有する。同様に、異種タンパク質とは、多くの場合、天然において互いに同一の関係で見出されない2つ以上の部分配列(例えば、融合タンパク質)をいう。
「プロモーター」は、代表的には、核酸の転写を導く核酸制御配列のアレイである。本明細書中で使用される場合、「プロモーター」は、転写開始部位付近の必要な核酸配列(例えば、ポリメラーゼII型プロモーターの場合、TATAエレメント)を含む。プロモーターはまた、必要に応じて、転写開始部位から数千塩基対も離れて存在することができる遠位エンハンサーまたはリプレッサーエレメントを含む。「構成的」プロモーターは、ほとんどの環境条件および発生条件下で活性なプロモーターである。「誘導性」プロモーターは、環境的調節または発生調節下で活性である。用語「作動可能に連結された」とは、核酸発現制御配列(プロモーターまたは転写因子結合部位のアレイなど)と第2の核酸配列との間の機能的結合をいい、例えば、この発現制御配列は、この第2の配列に対応する核酸の転写を導く。
「発現ベクター」は、宿主細胞中で特定の核酸の転写を可能にする一連の特定の核酸エレメントを有する組換えまたは合成によって生成された核酸構築物である。発現ベクターは、プラスミド、ウイルス、または核酸フラグメントの一部であり得る。代表的に、発現ベクターは、プロモーターに作動可能に連結された転写されるべき核酸を含む。
語句「と選択的に(または特異的に)ハイブリダイズする」とは、配列が複合混合物(例えば、全細胞またはライブラリーDNAもしくはライブラリーRNA)中に存在する場合のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下での特定のヌクレオチド配列への選択的な分子の結合、二重鎖形成、またはハイブリダイズをいう。
語句「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、プローブが、代表的には核酸の複合混合物中で、その標的部分配列とハイブリダイズするが他の配列とはハイブリダイズしない条件をいう。ストリンジェントな条件は配列依存的であり、異なる環境下では異なる。より長い配列は、より高い温度にて特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションに対する広範な指針は、Tijssen、(1993)、Hybridization with Nucleic Probes(Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology)(第24巻)Elsevierの「Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays」に見出される。一般的に、ストリンジェントな条件は、定義されたイオン強度、pHにおける特定の配列についての融点(Tm)よりも約5〜10℃低く選択される。Tmは、標的に相補的なプローブの50%が平衡状態で標的配列とハイブリダイズする(定義されたイオン強度、pH、および核酸濃度での)温度である(標的配列が過剰に存在する場合、Tmでは、50%のプローブが、平衡状態で占有される)。ストリンジェントな条件は、塩濃度がpH7.0〜8.3において約1.0M未満のナトリウムイオンであり、代表的には約0.01〜1.0Mのナトリウムイオン濃度(または他の塩)であり、そして温度が、短いプローブ(例えば、約10〜50ヌクレオチド)に対しては少なくとも約30℃であり、長いプローブ(例えば、約50ヌクレオチド超)に対しては少なくとも約+60℃である条件である。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドのような脱安定剤(destabilizing agent)の添加によって達成され得る。選択的ハイブリダイゼーションまたは特異的ハイブリダイゼーションのために、正のシグナルは、代表的に、バックグラウンドの少なくとも2倍、好ましくはバックグラウンドハイブリダイゼーションの10倍である。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は、以下のとおりであり得る:50%ホルムアミド、5×SSC、および1%のSDS(42℃でインキュベーション)または5×SSC、1%のSDS(65℃でインキュベーション)ならびに65℃にて0.2×SSCおよび0.1%のSDSでの洗浄。PCRについて、約36℃が低いストリンジェンシーの増幅に対しては代表的であるが、アニーリング温度はプライマーの長さに依存して約32℃〜48℃の間で変化し得る。高いストリンジェンシーのPCR増幅について、約62℃が代表的であるが、高ストリンジェンシーのアニーリング温度は、プライマーの長さおよび特異性に依存して約50℃〜65℃の範囲であり得る。高いストリンジェンシーの増幅または低いストリンジェンシーの増幅のための代表的なサイクル条件は、90℃〜95℃で30〜120秒の変性段階、30秒間〜120秒間持続するアニーリング段階、および約72℃で1〜2分間の伸長段階を含む。低いストリンジェンシーの増幅反応および高いストリンジェンシーの増幅反応についてのプロトコールおよび指針は、例えば、Innisら、(1990)、PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications Academic Press,NYに提供されている。
ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしない核酸は、これらがコードするポリペプチドが実質的に同一である場合、なお実質的に同一である。このことは、例えば、核酸のコピーが遺伝暗号によって許容される最大限のコドン縮重を使用して作製される場合に起こる。このような場合、核酸は、代表的には中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする。「中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」の例としては、37℃における40%のホルムアミド、1MのNaCl、1%のSDSの緩衝液中でのハイブリダイゼーションおよび45℃における1×SSCでの洗浄が挙げられる。正のハイブリダイゼーションは、代表的に、バックグラウンドの少なくとも2倍である。代替的なハイブリダイゼーション条件および洗浄条件が利用されて、類似するストリンジェンシーの条件が提供され得る。ハイブリダイゼーションのパラメータを決定するためのさらなる指針は、多くの参考文献(例えば、Ausubelら編、(1991および補遺)、Current Protocols in Molecular Biology Wiley)に提供されている。
語句「細胞形態学の変化」または「細胞の特徴の変化」とは、インビトロまたはインビボでの細胞の形態学または増殖特性の任意の変化(例えば、細胞の生存度、細胞増殖、成長因子もしくはケモカイン因子の分泌、細胞形態学の変化、炎症特異的マーカーの増加もしくは喪失、適切な動物宿主に注射した場合の炎症の誘導もしくは抑制能力、および/または適切な宿主における疾患状態(例えば、自己免疫障害および癌性の状態)の誘導)をいう。例えば、Freshney、(1994)、Culture of Animal Cells a Manual of Basic Technique(第2版)Wiley−Lissのpp.231−241を参照のこと。
「疾患細胞」とは、新規の遺伝物質の取り込みを必ずしも含まない自発的または誘導性の表現型の変化をいう。例えば、骨髄腫形成は、形質転換ウイルスの感染および新規のゲノムDNAの組み込みまたは外来DNAの取り込みによって引き起こされ得るが、骨髄腫形成はまた、自発的に生じるかまたは薬剤への曝露後に生じ、それにより既存遺伝子の発現または変化を誘導し得る。腫瘍増殖は、形態学的変化、異常な細胞増殖、および/または非形態学的変化のような、表現型およびタンパク質発現の変化に関連する。Freshney、(2000)、Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique(第4版)Wiley−Lissを参照のこと。同様に、自己免疫疾患プロセスの影響を受けた細胞もまた、表現型およびタンパク質発現の変化に関連する。
分子、抗体、薬物、薬学的に活性な薬剤、または薬学的処方物の「有効」量は、分子、抗体、薬物、薬剤、または処方物の所望の効果を提供するのに十分な量を意味する。
「被験体」または「患者」は、本明細書中で交換可能に使用され、これらは、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトをいう。
本明細書中で使用される場合、用語「抗体」または「免疫グロブリン」とは、免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされる1つ以上のポリペプチドからなるタンパク質をいう。認識されている免疫グロブリン遺伝子としては、κ定常領域遺伝子、λ定常領域遺伝子、α定常領域遺伝子、γ定常領域遺伝子(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、δ定常領域遺伝子、ε定常領域遺伝子、およびμ定常領域遺伝子ならびに無数の免疫グロブリン可変V領域遺伝子(下に示すように、H(重)およびL(軽)鎖の両方にV遺伝子は存在する)が挙げられる。全長免疫グロブリン「軽鎖」(約25Kdまたは214アミノ酸)は、NH2末端(約110アミノ酸)にて可変領域遺伝子(V−κまたはV−λ)、そしてCOOH末端にてκ定常領域遺伝子またはλ定常領域遺伝子によってそれぞれコードされる。全長免疫グロブリン「重鎖」(約50Kdまたは446アミノ酸)は、同様に、可変領域遺伝子(約116アミノ酸)および他の上記の定常領域遺伝子の1つ(例えば、γ(約330アミノ酸をコードする))によってコードされる。
免疫グロブリンの1つの形態は、抗体の基本構造単位を構成する。この形態は四量体であり、免疫グロブリン鎖の2つの同一の対(各対は1つの軽鎖および1つの重鎖を有する)からなる。各対では、軽鎖および重鎖の可変領域は一緒になって抗原への結合を担い、これらの定常領域は抗体エフェクター機能を担う。四量体抗体に加えて、免疫グロブリンは、例えば、Fv、Fab、および(Fab’)2ならびに二機能性ハイブリッド抗体(例えば、Lanzavecchiaら、Eur.J.Immunol.17、105(1987))および一本鎖(例えば、Hustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,85、5879−5883(1988)およびBirdら、Science、242、423−426(1988)(本明細書中で参考として援用される))が挙げられる種々の他の形態で存在し得る。(一般的に、Hoodら、「Immunology」、Benjamin、N.Y.,第2版(1984)、ならびにHunkapillerおよびHood、Nature、323、15−16(1986)(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。
免疫グロブリンの軽鎖または重鎖の可変領域は、3つの超可変領域によって中断されている、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる「フレームワーク」領域からなる。フレームワーク領域およびCDRの範囲は、正確に規定されている(「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、E.Kabatら、U.S.Department of Health and Human Services(1983)を参照;これは、本明細書において参考として援用される)。さまざまな軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は、一つの種内で比較的保存されている。本明細書において、「ヒトのフレームワーク領域」とは、天然に存在するヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域に実質的に(約85%またはそれ以上、通常は90〜95%またはそれ以上)同一なフレームワーク領域である。ある抗体のフレームワーク領域、すなわち、構成軽鎖および重鎖のフレームワーク領域を組み合わせたものは、CDRを配置し整列させる働きをする。CDRは、抗原のエピトープへの結合に主に関与する。
抗体はまた、例えば、種々のペプチダーゼでの消化によって産生された多くの十分に特徴づけられたフラグメントとして存在する。したがって、例えば、ペプシンは、ヒンジ領域中のジスルフィド結合の下で抗体を消化して、F(ab)’2(それ自体がジスルフィド結合によってVH−CH1に接続された軽鎖であるFabの二量体)を産生する。F(ab)’2は、穏やかな条件下で還元されて、ヒンジ領域中のジスルフィド結合が破壊され、それにより、F(ab)’2二量体はFab’単量体へと変換され得る。Fab’単量体は、本質的に、ヒンジ領域の一部を有するFabである(Paul編、(1999)Fundamental Immunology(第4版)Ravenを参照のこと)。種々の抗体フラグメントは、インタクトな抗体の消化に関して定義されるが、当業者は、このようなフラグメントが化学的にか、または組換えDNA法の使用によってde novoで合成され得ることを認識する。したがって、本明細書中で使用される場合、用語「抗体」はまた、全抗体の修飾によって産生された抗体フラグメント、組換えDNA法を使用してde novoで合成した抗体フラグメント(例えば、単鎖Fv)、またはファージディスプレイライブラリーを使用して同定した抗体フラグメントを含む(例えば、McCaffertyら、(1990)、Nature 348:552−554を参照のこと)。
「キメラ抗体」は、(a)抗原結合部位(可変領域)が、異なるかもしくは変更されたクラスおよび/または種の定常領域、またはキメラ抗体に新規の性質を付与する完全に異なる分子(例えば、酵素、毒素、ホルモン、成長因子、薬物、エフェクター機能、化学誘因物質、免疫調節因子など)に連結されるように定常領域またはその一部が変更されているか、置換されているか、または交換された抗体分子;あるいは(b)可変領域またはその一部が、異なるかもしくは変更された抗原特異性を有する可変領域によって変更されているか、置換されているか、または交換された抗体分子である。
用語「ヒト化抗体」または「ヒト化免疫グロブリン」とは、ヒトフレームワーク、非ヒト抗体由来の少なくとも1つ、好ましくは全ての相補性決定領域(CDR)を含み、存在する任意の定常領域がヒト免疫グロブリン定常領域と実質的に同一(すなわち、少なくとも約85%〜90%同一、好ましくは少なくとも95%同一)である免疫グロブリンをいう。したがって、おそらくCDRを除くヒト化免疫グロブリンの全ての部分は、1つ以上のネイティブなヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と実質的に同一である。例えば、Queenら、米国特許第5,5301,101号;同第5,585,089号;同第5,693,761号;同第5,693,762号;および同第6,180,370号(これらおよび他の米国特許/特許出願は、その全体が参考として援用される)を参照のこと。
抗体(例えば、組換え抗体、モノクローナル抗体、またはポリクローナル抗体)の調製のための多くの技術が公知である。例えば、KohlerおよびMilstein、(1975)、Nature 256:495−497;Kozborら、(1983)、Immunology Today 4:72;Coleら、(1985)、Reisfeld and Sell、(1985)、Monoclonal Antibodies and Myeloma Therapy Lissのpp.77−96;Coligan、(1991)、Current Protocols in Immunology Lippincott;HarlowおよびLane、(1988)、Antibodies:A Laboratory Manual CSH Press;ならびにGoding、(1986)、Monoclonal Antibodies:Principles and Practice(第2版)、Academic Pressを参照のこと。単鎖抗体の産生のための技術(米国特許第4,946,778号)は、本発明のポリペプチドに対する抗体を産生するために適合され得る。また、トランスジェニックマウス、または他の哺乳動物のような他の生物が使用されて、ヒト化抗体が発現され得る。あるいは、ファージディスプレイ技術が使用されて、選択した抗原に特異的に結合する抗体およびヘテロマーFabフラグメントが同定され得る。例えば、McCaffertyら、(1990)、Nature 348:552−554;Marksら、(1992)、Biotechnology 10:779−783を参照のこと。
用語「エピトープ」とは、免疫応答を誘発し、そして抗体によって特異的に結合され得るタンパク質の任意の部分(決定基)をいう。エピトープ決定基は、通常、アミノ酸またはGAG側鎖のような分子の活性な表面集団からなり、そして通常、特異的な三次元構造特性および特異的な電荷特性を有する。一方の抗体の結合を減少させるか、または排除するタンパク質中のアミノ酸変異がまた、他方の抗体の結合を減少されるか、または排除する場合および/または抗体がタンパク質への結合に関して競合する場合(すなわち、一方の抗体のタンパク質への結合が他方の抗体の結合を減少または消滅させる場合)、2つの抗体は、実質的に同一のタンパク質のエピトープ(またはタンパク質の重複エピトープ)に結合するといわれる。2つの抗体が同じエピトープに対して実質的に結合するか否かの決定は、当該分野で公知の方法(例えば、競合アッセイ)によって行なわれる。対照抗体(例えば、本明細書中に記載される抗CS1抗体の1つ)と任意の試験抗体との間の抗体競合研究の実施において、対照抗体を、検出可能な標識(例えば、ビオチン、酵素標識、放射性標識、または蛍光標識)で最初に標識して、その後の同定を可能にし得る。対照(標識された)抗体と実質的に同じエピトープに結合する試験(標識されていない)抗体は、対照抗体の結合を遮断し得るはずであり、それにより対照抗体の結合を減少させるはずである。
例示的な実施形態において、抗体がLucモノクローナル抗体の同じエピトープに実質的に結合する場合(Lucモノクローナル抗体とは本発明の産生された抗CS1モノクローナル抗体をいう)、この抗体は、Lucモノクローナル抗体が結合するCS1エピトープと重複するCS1のエピトープと結合するはずである。重複領域は、1個のアミノ酸残基から数百個のアミノ酸残基までの範囲であり得る。次いで、この抗体は、CS1へのLucモノクローナル抗体の結合と競合し、そして/またはこれを遮断し、それにより、競合アッセイにおいてCS1へのLucモノクローナル抗体の結合を、好ましくは少なくとも約50%減少させるはずである。
エピトープが、少なくとも105M−1の結合親和性、好ましくは106M−1〜107M−1の結合親和性、より好ましくは108M−1〜109M−1の結合親和性、さらにより好ましくは1010M−1またはそれより強い結合親和性で抗体に結合する場合、エピトープは、抗体によって認識される。
用語「に由来する」は、「から得られる」、「によって産生される」、または「から伝わる」を意味する。
(CS1抗原および抗体)
配列番号2は、全長野生型ヒトCS1のアミノ酸配列を示す。「機能的に活性な」CS1フラグメントまたはCS1誘導体は、抗原活性、免疫原性活性、天然の細胞基質に結合する能力などのような全長野生型CS1タンパク質に関連する1つ以上の機能活性を示す。CS1のタンパク質、誘導体、およびフラグメントの機能活性は、当業者に公知である種々の方法によってアッセイされ得る(Current Protocols in Protein Science,Coliganら編、John Wiley & Sons,Inc.,Somerset、New Jersey(1998))。本明細書中の目的のために、機能的に活性なフラグメントとしてはまた、結合ドメインのようなCS1ポリペプチドの1つ以上の構造ドメインを含むフラグメントが挙げられる。タンパク質ドメインは、PFAMプログラムを使用して同定され得る(Bateman A.ら、Nucleic Acids Res.27:260−2(1999))。
CS1ポリペプチド誘導体は、代表的に、一定の程度の配列同一性または配列類似性を、配列番号2またはそのフラグメントと共有する。CS1誘導体は、当該分野で公知である種々の方法によって産生され得る。これらを生じる操作は、遺伝子レベルまたはタンパク質レベルで起こり得る。例えば、クローニングされたCS1遺伝子配列(例えば、配列番号1)は、制限エンドヌクレアーゼを使用して適切な部位で切断され(Wellsら、Philos.Trans.R.Sot.London SerA 317:415(1986))、次いでさらに酵素的に修飾され、所望される場合、その後単離し、インビトロでライゲーションされ、発現されて所望の誘導体を産生し得る。あるいは、CS1遺伝子は、インビトロまたはインビボで変異されて、翻訳配列、開始配列、および/もしくは終止配列が作製され、そして/または破壊されるか、あるいはコード領域中のバリエーションを生じ、そして/または新規の制限エンドヌクレアーゼ部位が形成されるか、もしくは先在するエンドヌクレアーゼ部位が破壊されて、さらなるインビトロ修飾が促進され得る。化学的変異誘発、インビトロ部位特異的変異誘発(Carterら,Nucl.Acids Res.13:4331(1986))、またはTABリンカー(Pfizer,Inc.から入手可能)の使用のような種々の変異誘発技術が、当該分野で公知である。
1つの局面において、本発明の抗体は、CS1の生物活性の少なくとも1つ、好ましくは全てを中和する。CS1の生物活性としては、以下が挙げられる:1)その細胞基質(例えば、そのリガンド)の結合活性(例えば、これらの中和抗体は、そのリガンドの少なくとも1つ、好ましくは全てに対するCS1の結合と競合し得るか、または完全に遮断し得るべきである);2)シグナル伝達活性;および3)CS1によって誘導される細胞応答。
本発明は、以下のハイブリドーマ細胞株を提供する:Luc2、Luc3、Luc15、Luc22、Luc23、Luc29、Luc32、Luc34、Luc35、Luc37、Luc38、Luc39、Luc56、Luc60、Luc63、Luc69、LucX.1、LucX.2またはLuc90。ハイブリドーマ細胞株Luc90は、登録番号PTA 5091としてAmerican Type Culture Collection(ATCC)(P.O.Box 1549、Manassas、VA 20108)に寄託された。このハイブリドーマ細胞株の寄託は、2003年3月26日にATCCによって認められた。ハイブリドーマ細胞株Luc63もまた、上に記載される住所のATCCに寄託された。Luc63抗体の寄託は、2004年5月6日にATCCによって認められた。
本発明は、以下のハイブリドーマ細胞株によって産生されたモノクローナル抗体を提供する:Luc2、Luc3、Lucl5、Luc22、Luc23、Luc29、Luc32、Luc34、Luc35、Luc37、Luc38、Luc39、Luc56、Luc60、Luc63、Luc69、LucX.1、LucX.2またはLuc90(ATCC登録番号PTA 5091)。これらのモノクローナル抗体は、本明細書中で以下、それぞれ以下の抗体として名付けられる:Luc2、Luc3、Luc15、Luc22、Luc23、Luc29、Luc32、Luc34、Luc35、Luc37、Luc38、Luc39、Luc56、Luc60、Luc63、Luc69、LucX.1、LucX.2およびLuc90。
本発明は、本明細書中に記載されるLucモノクローナル抗体のいずれか1つと同一のエピトープに実質的に結合する抗体(好ましくは、モノクローナル抗体)を提供する。
本発明は、1つ以上の上記のLucモノクローナル抗体と同一のエピトープに実質的に結合しない抗体(好ましくは、モノクローナル抗体)を提供する。
抗体競合の評価のための種々の免疫学的スクリーニングアッセイが使用されて、本発明の抗体と同一のエピトープと実質的に結合するか、または本発明の抗体と異なるエピトープに結合する抗体が同定され得る。
対照抗体と任意の試験抗体(種またはアイソタイプに無関係)との間の抗体競合研究の実施では、対照抗体は、検出可能な標識(例えば、ビオチンまたは酵素標識(さらにまたは放射性標識))で最初に標識されて、その後の同定が可能となり得る。この場合において、非標識抗体を、CS1タンパク質を発現する細胞と予め混合するか、またはインキュベートする。次いで、標識された抗体は、プレインキュベートされた細胞に添加される。結合した標識の強度が、測定される。標識された抗体が重複エピトープへの結合によって標識されていない抗体と競合する場合、この強度は、陰性対照である標識されていない抗体(CS1に結合しない既知の抗体)による結合と比較して減少する。
アッセイは、抗体の競合に基づいた一定範囲の免疫学的アッセイのいずれか1つであり得、対照抗体は、その標識を検出する手段(例えば、ビオチン化抗体の場合のストレプトアビジンの使用、酵素標識と結合した発色基質の使用(例えば、ペルオキシダーゼ酵素との3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)基質の使用)、または放射性標識もしくは蛍光標識の単純な検出)によって検出される。対照抗体と同一のエピトープに結合する抗体は、結合に関して有効に競合し得、それにより、結合した標識の減少によって証明されるように、対照抗体の結合を著しく(例えば、少なくとも50%)減少させ得る。
完全に無関係な抗体の非存在下における(標識)対照抗体の反応性は、対照高値である。対照低値は、標識されていない試験抗体とCS1発現細胞とをインキュベートし、その後、細胞/抗体混合物と正確に同じ型の標識された対照抗体とをインキュベートすることによって競合が生じ、そして標的抗体の結合を減少させる場合に得られる。試験アッセイにおいて、試験抗体の存在下における標識された抗体の反応性の著しい減少は、実質的に同一のエピトープを認識する試験抗体の指標である。
あらゆる種を起源とするCS1に対する抗体は、本発明に含まれる。天然の抗体の非限定的な例としては、ヒト、ニワトリ、ヤギ、およびヒト抗体を産生するように遺伝子操作されたトランスジェニックげっ歯類を含むげっ歯類(例えば、ラット、マウス、ハムスター、およびウサギ)由来の抗体が挙げられる(例えば、Lonbergら、WO93/12227;米国特許第5,545,806号;およびKucherlapatiら、WO91/10741;米国特許第6,150,584号(これらは、その全体が本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)。天然の抗体は、ポリペプチド(好ましくは、ヒトポリペプチド)のような抗原を用いて免疫された後の宿主動物によって産生された抗体である。好ましい実施形態において、本発明の抗体は、CS1に結合し、そして/またはCS1を中和する単離された天然の抗体である。
遺伝子的に変更された抗CS1抗体は、上記の天然の抗体と機能的に等価であるべきである。改良された安定性および/または治療有効性を提供する改変抗体が、好ましい。改変抗体の例としては、アミノ酸残基の保存的置換、および抗原結合の有用性を著しく不利に変更しないアミノ酸の1つ以上の欠失または付加を伴う抗体が挙げられる。置換は、治療有用性が維持される限り、1つ以上のアミノ酸残基の変化または改変から領域の完全な再設計までの範囲であり得る。本発明の抗体は、翻訳後に改変(例えば、アセチル化および/またはリン酸化)されても、合成によって改変(例えば、標識基の結合)されてもよい。好ましい遺伝子的に変更された抗体は、キメラ抗体およびヒト化抗体である。
キメラ抗体は、2つの異なる抗体に由来し、好ましくは別の種に由来する可変領域および定常領域を有する抗体である。好ましくは、キメラ抗体の可変領域はマウスに由来し、定常領域はヒトに由来する。
1つの実施形態において、マウス可変領域は、本明細書中に記載されるモノクローナル抗体のいずれか1つに由来する。キメラ抗体を産生するために、2つの異なる種に由来する部分(例えば、ヒト定常領域およびマウス可変領域またはマウス結合領域)は、従来技術によって化学的に1つに接続されても、遺伝子操作技術を使用して単一の連続するタンパク質として調製されてもよい。キメラ抗体の軽鎖部分および重鎖部分の両方のタンパク質をコードするDNA分子は、連続するタンパク質として発現され得る。キメラ抗体を作製する方法は、米国特許第5,677,427号;米国特許第6,120,767号;および米国特許第6,329,508号(これらの各々は、その全体が本明細書中に参考として援用される)に開示される。
本発明で使用される遺伝子的に改変された抗体としては、CS1を中和するヒト化抗体が挙げられる。1つの実施形態において、このヒト化抗体は、マウスドナー免疫グロブリンのCDR、重鎖フレームワークおよび軽鎖フレームワーク、ならびにヒトアクセプター免疫グロブリンの定常領域を含む。1つの例において、ヒト化抗体は、本明細書中に記載されるいずれか1つの抗体のヒト化バージョンである。ヒト化抗体を作製する方法は、米国特許第5,530,101号;同第5,585,089号;同第5,693,761号;同第5,693,762号;および同第6,180,370号(これらの各々は、その全体が本明細書中に参考として援用される)に開示される。
抗CS1完全ヒト抗体もまた、本発明に含まれる。本発明の好ましい実施形態において、完全ヒト抗体は、本明細書中に記載されるCS1活性を中和する単離されたヒト抗体である。
CS1に対する完全ヒト抗体は、種々の技術によって産生される。1つの例は、トリオーマ法である。このアプローチで使用される基本的アプローチおよび細胞融合パートナーの例(SPAZ−4)は、Oestbergら、Hybridoma 2:361−367(1983);Oestberg、米国特許第4,634,664号;およびEnglemanら、米国特許第4,634,666号(これらの各々は、その全体が本明細書中に参考として援用される)に記載されている。
CS1に対するヒト抗体はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の少なくとも1セグメントをコードする導入遺伝子を有する非ヒトトランスジェニック動物から産生され得る。これらの性質を有する動物の作製および性質は、例えば、Lonbergら、WO93/12227;米国特許第5,545,806号;Kucherlapatiら、WO91/10741;米国特許第6,150,584号(これらは、その全体が本明細書中に参考として援用される)に詳細に記載される。
種々の組換え抗体ライブラリー技術もまた利用されて、完全ヒト抗体が産生され得る。例えば、1つのアプローチは、Huseら、Science 246:1275−1281(1989)に概説される一般的プロトコールにしたがって、ヒトB細胞からDNAライブラリーをスクリーニングすることである。CS1またはそのフラグメントに結合する抗体が、選択される。次いで、このような抗体(またはその結合フラグメント)をコードする配列は、クローニングされ、そして増幅される。Huseによって記載されたプロトコールは、ファージディスプレイ技術と組み合わせて、さらに有効になる。例えば、Dowerら、WO 91/17271およびMcCaffertyら、WO 92/01047;米国特許第5,969,108号(これらの各々は、その全体が本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。これらの方法において、メンバーがその外部表面上に異なる抗体を提示するファージライブラリーが、産生される。抗体は、通常、FvフラグメントまたはFabフラグメントとして提示される。所望の特異性を有する抗体を提示するファージは、CS1またはそのフラグメントに対する親和性を向上させることによって選択される。
Coia Gら、J.Immunol.Methods 1:254(1−2):191−7(2001);Hanes J.ら、Nat.Biotechnol.18(12):1287−92(2000);Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.95(24):14130−5(1998);Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.94(10):4937−42(1997)(これらの各々は、その全体が本明細書中に参考として援用される)に記載されるように、真核生物リボソームもまた、標的抗原(例えば、CS1)に対してスクリーニングすることによって抗体ライブラリーを提示し、そして結合ヒト抗体を単離するための手段として使用され得る。
酵母システムもまた、抗体などの哺乳動物の細胞表面タンパク質または分泌タンパク質をスクリーニングするのに適切である。抗体ライブラリーは、標的抗原に対するヒト抗体を得る目的のために酵母細胞の表面上に提示され得る。このアプローチは、Yeungら、Biotechnol.Prog.18(2):212−20(2002);Boeder,E.T.ら、Nat.Biotechnol.15(6):553−7(1997)(これらの各々は、その全体が本明細書中で参考として援用される)に記載される。あるいは、ヒト抗体ライブラリーは、細胞内で発現され、そして酵母ツーハイブリッドシステムを介してスクリーニングされ得る(WO0200729A2(これは、その全体が本明細書中に参考として援用される))。
CS1に対する結合特異性を保持する抗CS1抗体のフラグメントもまた、本発明に含まれる。これらの抗原結合フラグメントの例としては、本明細書中に記載される任意の抗CS1抗体の部分的もしくは完全な重鎖または軽鎖、可変領域、あるいはCDR領域が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の好ましい実施形態において、上記抗体フラグメント(抗原結合フラグメント)は、短縮鎖である(カルボキシル末端で切断)。好ましくは、これらの短縮鎖は、1つ以上の免疫グロブリン活性(例えば、補体結合活性)を有する。短縮鎖の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:Fabフラグメント(VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる);Fdフラグメント(VHおよびCH1ドメインからなる);Fvフラグメント(抗体の単鎖のVLおよびVHドメインからなる);dabフラグメント(VHドメインからなる);単離されたCDR領域;二価フラグメントである(Fab’)2フラグメント(ジスルフィド結合によってヒンジ領域で連結された2つのFabフラグメントが挙げられる)。これらの短縮鎖は、従来の生化学的技術(例えば、酵素切断)または組換えDNA技術によって産生され得、これらの技術の各々は、当該分野において公知である。これらのポリペプチドフラグメントは、当該分野で周知の方法による インタクトな抗体のタンパク質分解性の切断、または部位特異的変異誘発を使用したベクター中の所望の位置(例えば、Fabフラグメントを産生するためのCH1または(Fab’)2フラグメントを産生するためのヒンジ領域の後)における終止コドンの挿入によって、産生され得る。単鎖抗体は、VLコード領域およびVHコード領域と、VLタンパク質フラグメントおよびVHタンパク質フラグメントを連結するペプチドリンカーをコードするDNAとを接続することによって産生され得る。
免疫グロブリン関連遺伝子は、別々の機能的領域(それぞれ1つ以上の異なる生物活性を有する)を含むので、抗体フラグメントの遺伝子は、他の遺伝子由来の機能的領域(例えば、酵素、米国特許第5,004,692号(これは、その全体が本明細書中に参考として援用される))と融合して、新規の性質を有する融合タンパク質(例えば、免疫毒素)または結合体が産生され得る。
本発明は、免疫毒素における抗CS1抗体の使用を含む。抗体を含む免疫毒素である結合体は、当該分野で広範に記載されている。この毒素は、従来のカップリング技術によって抗体にカップリングされ得るか、またはタンパク質毒素部分を含む免疫毒素は、融合タンパク質として産生され得る。本発明の結合体は、このような免疫毒素を得るための対応する方法で使用され得る。このような免疫毒素の例示は、Byers,B.S.ら、Seminars Cell Biol 2:59−70(1991)およびFanger,M.W.ら、Immunol Today 12:51−54(1991)に記載される。
組換えDNA技術が使用されて、任意の発現系(細菌、酵母、昆虫細胞、植物細胞、および哺乳動物細胞(例えば、NSO細胞)のような原核生物発現系および真核生物発現系が挙げられる)において、組換え抗CS1抗体、およびキメラ抗CS1抗体もしくはヒト化抗CS1抗体、または任意の他の遺伝子的に変更された抗CS1抗体、ならびにそれらのフラグメントもしくは結合体が産生され得る。
一旦産生されると、本発明の完全な抗体、その二量体、各軽鎖および重鎖、または他の免疫グロブリン形態は、当該分野で標準的な手順(硫酸アンモニウム沈殿、親和性カラム、カラムクロマトグラフィ、ゲル電気泳動などが挙げられる)によって精製され得る(一般的に、Scopes,R.,Protein Purification(Springer−Verlag、N.Y.,1982)を参照のこと)。薬学的使用に関して、少なくとも約90〜95%の均一性を有する実質的に純粋な免疫グロブリンが好ましく、98〜99%またはそれ以上の均一性を有することが最も好ましい。一旦精製(部分的か、または望ましくは均一に)されると、ポリペプチドは、治療(体外が含まれる)に、またはアッセイ手順、免疫蛍光染色などの開発および実施に使用され得る(一般的に、Immunological Methods、第I巻および第II巻(LefkovitsおよびPernis編、Academic Press、NY、1979年および1981年)を参照のこと)。実施例に記載されるように、単離されたかまたは精製された抗CS1抗体は、そのCS1の生物活性を中和する能力についてさらにスクリーニングされ得る。
(CS1の構造モデル)
ヒトCS1遺伝子のオープンリーディングフレーム(配列番号1)は、335アミノ酸残基のポリペプチド(配列番号2)をコードする。予測されたタンパク質の配列は、推定シグナルペプチド配列、および約225アミノ酸残基の細胞外ドメイン、その後に約25アミノ酸残基の1個の膜貫通ドメインおよび約85アミノ酸残基の細胞内ドメインをもっていた。細胞外ドメインは、7つの推定N結合型グリコシル化部位を含んでいた。CS1の予測されたタンパク質配列の相同性は、それがIgスーパーファミリーの一員であることを示している。CS1タンパク質配列のアラインメントは、他のCD2サブセットの受容体と比較して多くの保存残基を含む類似した構造を示している。細胞質領域は、2B4およびSLAMに見られる新規のチロシンモチーフのうち2つを含んでいる。
CS1の細胞外ドメインの構造モデルは、2つの免疫グロブリン様ドメインからなると予測されている。CD2(PDBコード:1HNF)におけると同様、N末端ドメイン1(Vドメイン)は、免疫グロブリン様ドメインのVサブセットの一員であり、ドメイン2(C2ドメイン)はC2サブセットの一員である。細胞外ドメインは、そのC末端で、ほぼ226位のアミノ酸残基で始まる膜貫通ドメインを結合している。
Vドメイン(約23位のアミノ酸残基から約122位のアミノ酸残基まで)において、このドメインの中心にあるTrp−53は保存されていて、その直近のすべての残基は、CD2の残基(Leu−90およびVal−105)と同じであるか、または、保存的に(CD2ではPheがTyr−120に)置換されている。CD2におけると同様、Vドメインにはドメイン内ジスルフィド架橋がない。C2ドメイン(約128位のアミノ酸残基から約225位のアミノ酸残基まで)では、2つのドメイン内ジスルフィド結合が保存されており(Cys−151−Cys−195;Cys−145−Cys 215)、前者の直近にあるすべての残基は、ドメインの中心において、CD2の残基(Pro−131)と同じであるか、または、保存的に置換されている(CD2におけるIle、Leu、およびIleに対し、CS1では、それぞれVal−133、Ile−161、Leu−180)。また、ドメイン間のリンカー領域(約123位のアミノ酸残基から約127位のアミノ酸残基まで)は、CS1およびCD2の間で長さが一致しており、いくらかの保存を示す(CS1におけるVal−Tyr−Glu−His−Leuに対しCD2ではIle−Gln−Glu−Arg−Val)。
7つのN結合型グリコシル化部位と考えられる部位があり、2つ(Asn−56およびAsn−98)はVドメインに、そして5つ(Asn−142、Asn−148、Asn−172、Asn−176、およびAsn−204)はC2ドメインに存在する。
CS1と、CD抗原性によって規定されるタンパク質との間にある配列およびモチーフに関する構造の類似性は、CS1タンパク質が、炎症、癌、および免疫疾患などの病気の標的である可能性があることを示唆している。Luc抗体など、抗CS1抗体の治療への使用には、免疫グロブリン産生の阻害、リンパ球が自己免疫疾患および癌においてCS1タンパク質を発現する機能を阻害することが含まれる。
(CS1核酸の使用)
上記したように、CS1配列は、まず、表2のCS1配列との実質的な核酸配列および/またはアミノ酸配列の相同性または結合によって同定される。このような相同性は、全体的な核酸またはアミノ酸の配列に基づくことができ、通常、相同性プログラムまたはハイブリダイゼーション条件のいずれかを用いて決定される。一般的には、mRNA上で連結された配列は、同じ分子に見出される。
配列の同一性の%は、BLASTのようなアルゴリズムを使用して決定され得る。好ましい方法は、初期設定パラメータに設定された(それぞれ1および0.125に設定された重複スパンおよび重複フラクションで)WU−BLAST−2のBLASTNモジュールを利用する。アラインメントは、整列されるべき配列へのギャップの導入を含み得る。さらに、記載される核酸よりも多いかまたは少ないヌクレオチドを含む配列のために、相同性の%は、ヌクレオシドの総数に対する相同なヌクレオシドの数に基づいて決定され得る。したがって、例えば、同定した配列よりも短い配列の相同性は、より短い配列中のヌクレオシドの数を使用して決定される。
1つの実施形態において、核酸の相同性は、ハイブリダイゼーション研究によって決定される。したがって、例えば、高ストリンジェンシーの下で記載される核酸またはその相補体とハイブリダイズするか、または天然に存在するmRNAにおいても見出される核酸は、相同な配列と見なされる。別の実施形態において、より低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件が使用される;例えば、中程度かまたは低いストリンジェンシーの条件が、使用され得る(Ausubel、前出およびTijssen、前出を参照のこと)。
本発明のCS1核酸配列(例えば、表2中の配列)は、より大きな遺伝子のフラグメントであり得る(例えば、これらは核酸セグメントである)。本文脈中の「遺伝子」は、コード領域、非コード領域、ならびにコード領域と非コード領域との混合物を含む。したがって、本明細書中に提供される配列を使用し、より長い配列または全長配列のいずれかをクローニングする周知の技術を使用して、CS1遺伝子の、いずれかの方向に伸長された配列が得られ得る(Ausubelら、前出を参照のこと)。多くが、インフォマティクスによって行なわれ、多くの配列は、1つの遺伝子に対応する複数の配列を含むように集団化され得る(例えば、UniGeneのようなシステム)。
本発明のCS1核酸は、いくつかの方法で使用される。1つの実施形態において、CS1に対する核酸プローブが、作製され、そして以下に概説されるスクリーニング法および診断法または投与(例えば、遺伝子治療、ワクチン、RNAi、および/またはアンチセンスの用途)のために使用されるバイオチップに接着される。あるいは、CS1タンパク質のコード領域を含むCS1核酸は、再びスクリーニング目的または患者への投与のために、CS1タンパク質の発現のための発現ベクター中におかれ得る。
別の実施形態において、CS1核酸(図面に概説される核酸配列および/またはその相補体の両方)の核酸プローブが、作製される。バイオチップに接着される核酸プローブは、CS1核酸(例えば、標的配列(例えば、サンドイッチアッセイにおけるサンプルの標的配列または他のプローブ配列に対する標的配列のいずれか))と実質的に相補的であるように設計され、このことにより、標的配列と本発明のプローブとのハイブリダイゼーションが生じる。下記に概説されるように、この相補性は、完全である必要はなく、標的配列と本発明の一本鎖核酸との間のハイブリダイゼーションを妨害する任意の数の塩基対ミスマッチが存在し得る。しかし、変異の数が非常に多く、それによってハイブリダイゼーションが最も低いストリンジェントのハイブリダイゼーション条件下でさえ起こり得ない場合、この配列は相補的標的配列ではない。したがって、本明細書中の「実質的に相補的な」は、本明細書中に概説されるように、プローブが、通常の反応条件下(特に、高いストリンジェンシーの条件)で標的配列とハイブリダイズするのに十分に相補的であることを意味する。
核酸プローブは、一般的に、一本鎖であるが、部分的に一本鎖であり得、そして部分的に二本鎖であり得る。プローブの鎖形成性(strandedness)は、標的配列の構造、組成、および性質によって決定される。一般的に、核酸プローブは、約8〜100塩基長の範囲であり、約10〜80塩基の範囲が好ましく、約30〜50塩基の範囲が特に好ましい。すなわち、一般的には全遺伝子を使用しない。いくつかの実施形態において、数百塩基までの非常に長い核酸が、使用され得る。
別の実施形態において、1つの配列あたり1つを超えるプローブが使用され、重複プローブまたは標的の異なる部分に対するプローブとともに使用される。すなわち、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のプローブ(3つが好ましい)が使用されて、特定の標的に対して重複性が構築される。プローブは、重複している(例えば、共通のいくつかの配列を有する)か、または個別であり得る。いくつかの場合において、PCRプライマーが使用されて、感度をより高くするためにシグナルが増幅され得る。
核酸は、広範な種々の方法で固体支持体に接着され得るか、または固定化され得る。「固定化される」および本明細書中の文法上の等価物は、核酸プローブと固体支持体との間の会合または結合が、概説される結合、洗浄、分析、および除去の条件下で安定であるために十分であることを意味する。結合は、代表的に、共有結合または非共有結合であり得る。「非共有結合」および本明細書中の文法上の等価物は、静電気的、親水性、および疎水性の相互作用の1つ以上を意味する。分子(例えば、ストレプトアビジン)の支持体への共有結合(covalent attachment)およびビオチン化プローブのストレプトアビジンの非共有結合は、非共有結合に含まれる。「共有結合」および本明細書中の文法上の等価物は、2つの部分(固体支持体およびプローブ)が少なくとも1つの結合(σ結合、π結合、および配位結合が含まれる)によって結合されることを意味する。共有結合は、プローブと固体支持体との間で直接形成され得るか、架橋リンカーによってか、または固体支持体もしくはプローブのいずれかもしくは両方の分子への特定の反応基の導入によって形成され得る。固定化はまた、共有結合的相互作用と非共有結合的相互作用との組み合わせを含み得る。
一般的に、プローブは、広範な種々の方法においてバイオチップに接着され得る。本明細書中に記載されるように、核酸は、最初に合成されて、次いでバイオチップに接着され得るか、またはバイオチップ上で直接合成され得る。
バイオチップは、適切な固体基質を含む。「基質」、「固体支持体」、または本明細書中の他の文法上の等価物は、核酸プローブの接着または会合のために改変され得、そして少なくとも1つの検出方法に従う物質を意味する。多くの場合、基質は、個々の分離および同定に適切な個別の各部位を含み得る。考えられる基質の数は非常に多く、ガラスおよび修飾されたガラスまたは官能化ガラス、プラスチック(アクリル、ポリスチレン、およびスチレンと他の物質とのコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、テフロン(登録商標)Jなどが挙げられる)、多糖類、ナイロンもしくはニトロセルロース、樹脂、シリカもしくはシリカベースの物質(シリコーンおよび修飾されたシリコーンが挙げられる)、炭素、金属、無機ガラス、プラスチックなどが挙げられるが、これらに限定されない。一般的に、基質は、光学的に検出を可能にし、感知可能に蛍光を発しない。WO 0055627を参照のこと。
一般的に、基質は平面であるが、基質の他の形状は、同様に使用され得る。例えば、サンプルの容量を最小限にするために、プローブは、フロースルーサンプル分析用チューブの内面に配置され得る。同様に、基質は可撓性である(例えば、可撓性の発泡体(特定のプラスチックから作製された独立気泡発泡体が挙げられる))。
1つの実施形態において、バイオチップおよびプローブの表面は、化学官能基で誘導体化されて、次いでこれら2つは結合され得る。したがって、例えば、バイオチップは、化学官能基(アミノ基、カルボキシル基、オキソ基、およびチオール基が挙げられるが、これらに限定されないアミノ基が特に好ましい)で誘導体化される。これらの官能基を使用して、プローブは、プローブ上の官能基を使用して接着され得る。例えば、アミノ基を含む核酸は、例えば、周知のリンカー(例えば、周知のホモ二官能性リンカーまたはヘテロ二官能性リンカー)を使用して、アミノ基を含む表面に接着され得る(1994 Pierce Chemical Company catalog、架橋リンカーについての技術的部分、155〜200ページを参照のこと)。さらに、いくつかの場合において、アルキル基(置換ヘテロアルキル基およびヘテロアルキル基が含まれる)のようなさらなるリンカーが、使用され得る。
この実施形態において、オリゴヌクレオチドが合成され、次いで固体支持体表面に接着される。5’末端または3’末端のいずれかが、固体支持体に接着され得るか、内部ヌクレオシドへの結合を介して接着され得る。別の実施形態において、固体支持体への固定は非常に強力であり得るが、非共有性である。例えば、ストレプトアビジンで共有結合的にコーティングされた表面に結合し、接着を生じるビオチン化オリゴヌクレオチドが、作製され得る。
あるいは、オリゴヌクレオチドは、表面上に合成され得る。例えば、光重合化合物および光重合技術を利用する光活性化技術が、使用される。別の実施形態において、核酸は、WO 95/25116;WO 95/35505;米国特許第5,700,637号および同第5,445,934号ならびにそれらに記載される引用文献(それらの全ては、明白に参考として援用される)に記載されるような公知の光リソグラフィー技術を使用して合成され得;接着のこれらの方法は、Affymetrix GENECHIP(登録商標)(DNAマイクロアレイチップ)技術の基礎をなす。
多くの場合、増幅ベースのアッセイは、CS1結合性配列の発現レベルを測定するために行なわれ得る。これらのアッセイは、代表的には逆転写と組み合わせて行なわれる。このようなアッセイにおいて、CS1結合性核酸配列は、増幅反応(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応、または、PCR)においてテンプレートとして作用する。定量的増幅において、増幅産物の量は、最初のサンプル中のテンプレートの量に比例する。適切な対照との比較は、CS1結合性RNAの量の測定を提供する。定量的増幅の方法は、周知である。定量的PCRの詳細なプロトコールは、例えば、Innisら、(1990)、PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications Academic Pressに提供される。
いくつかの実施形態において、TAQMAN(登録商標)(蛍光オリゴヌクレオチドプローブ)ベースのアッセイが使用されて、発現が測定される。TAQMAN(登録商標)ベースのアッセイは、5’の蛍光色素および3’の消光剤を含む蛍光性オリゴヌクレオチドプローブを使用する。プローブは、PCR産物とハイブリダイズするが、3’末端の遮断剤によってそれ自体は、伸長され得ない。その後のサイクルでPCR産物が増幅する場合、ポリメラーゼ(例えば、AMPLITAQ(登録商標)(DNAポリメラーゼ))の5’ヌクレアーゼ活性により、TAQMAN(登録商標)プローブが切断される。この切断によって5’の蛍光色素と3’の消光剤が分離し、それにより、増幅の関数として蛍光の増加を生じる(例えば、Perkin−Elmerによって提供された文献を参照のこと)。
他の適切な増幅方法としては、リガーゼ連鎖反応(LCR)(WuおよびWallace、(1989)、Genomics 4:560−569、Landegrenら、(1988)、Science 241:1077−1080およびBarringerら、(1990)、Gene 89:117−122を参照のこと)、転写増幅(transcription amplification)(Kwohら、(1989)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173−1177)、自律配列複製(self−sustained sequence replication)(Guatelliら、(1990)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874−1878)、ドットPCR、リンカーアダプターPCRなどが挙げられるが、これらに限定されない。
(核酸からのCS1タンパク質の発現)
1つの実施形態において、例えば、CS1タンパク質をコードするCS1核酸が使用されて、次いで下記の診断アッセイ用の試薬の開発に使用され得るCS1タンパク質を発現する種々の発現ベクターが作製される。タンパク質を発現するための発現ベクターおよび組換えDNA技術は、周知である(例えば、Ausubel,前出およびFernandezおよびHoeffler編、(1999)、Gene Expression Systems Academic Pressを参照のこと)。発現ベクターは、自律複製型の染色体外ベクターまたは宿主ゲノムに組み込まれるベクターのいずれかであり得る。一般的に、これらの発現ベクターは、CS1タンパク質をコードする核酸に作動可能に連結された転写調節核酸および翻訳調節核酸を含む。用語「制御配列」とは、特定の宿主生物中での作動可能に連結されたコード配列の発現のために使用されるDNA配列をいう。原核生物に適切な制御配列としては、例えば、プロモーター、必要に応じたオペレーター配列、およびリボソーム結合部位が挙げられる。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサーを使用することが公知である。
核酸は、これが別の核酸配列と機能的関係におかれた場合に、「作動可能に連結される」。例えば、プレシーケンスまたは分泌リーダーのためのDNAは、これがポリペプチドの分泌に関与する前タンパク質として発現される場合に、ポリペプチドのためのDNAに作動可能に連結されるか;プロモーターまたはエンハンサーは、これらが配列の転写に影響を与える場合に、コード配列に作動可能に連結されるか;またはリボゾーム結合部位は、これが翻訳を促進するように配置された場合に、コード配列に作動可能に連結される。一般的に、「作動可能に連結される」は、連結されたDNA配列が連続し、分泌リーダーの場合、連続し、かつ読み取り状態(reading phase)にあることを意味する。しかし、エンハンサーは連続する必要はない。代表的に、連結工程は、従来の制限酵素認識部位でのライゲーションによって達成される。このような部位が存在しない場合、従来の慣例にしたがって、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたは合成オリゴヌクレオチドリンカーが、使用される。転写調節核酸および翻訳調節核酸は、一般的に、CS1タンパク質の発現のための使用される宿主細胞に適切である。種々の宿主細胞のための、適切な発現ベクターおよび適切な調節配列の多くの型が、公知である。
一般的に、転写および翻訳調節配列としては、プロモーター配列、リボゾーム結合部位、転写開始および終止配列、翻訳開始配列および翻訳終止配列、ならびにエンハンサーまたはアクチベーター配列が挙げられ得るが、これらに限定されない。1つの実施形態において、調節配列は、プロモーター配列ならびに転写開始配列および転写終止配列を含む。
プロモーター配列は、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターのいずれかであり得る。プロモーターは、天然に存在するプロモーターまたはハイブリッドプロモーターのいずれかであり得る。1つを超えるプロモーターのエレメントを組み合わせたハイブリッドプロモーターもまた公知であり、そして本発明に有用である。
発現ベクターは、さらなるエレメントを含み得る。例えば、発現ベクターは、2つの複製系を有し得、したがって2つの生物中(例えば、発現のための哺乳動物細胞または昆虫細胞ならびにクローニングおよび増幅のための原核生物宿主中)でこのベクターが保持され得る。さらに、発現ベクターを組み込むために、発現ベクターは、多くの場合、宿主細胞ゲノムに相同な少なくとも1つの配列を含み、好ましくは発現構築物に隣接した2つの相同配列を含む。組み込みベクターは、ベクター中での封入のために、適切な相同配列を選択することによって宿主細胞中の特定の遺伝子座へ方向付けられ得る。ベクターを組み込むための構築物が、利用可能である。例えば、FernandezおよびHoeffler、前出;ならびにKitamuraら、(1995)、Proc.Natl Acad.Sci.USA 92:9146−9150を参照のこと。
さらに、別の実施形態において、発現ベクターは、形質転換宿主細胞の選択を可能にするための選択マーカー遺伝子を含む。選択遺伝子は周知であり、使用する宿主細胞によって変わる。
通常、本発明のCS1タンパク質は、CS1タンパク質の発現を誘導するか、またはそれもたらすのに適切な条件下で、CS1タンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞を培養することによって産生される。CS1タンパク質発現に適切な条件は、発現ベクターおよび宿主細胞の選択によって変化し、慣習的な実験または最適化によって容易に確認される。例えば、発現ベクター中での構成的プロモーターの使用は、宿主細胞の成長および増殖を最適化する必要がある一方で、誘導性プロモーターの使用は、誘導のための適切な成長条件を必要とする。さらに、いくつかの実施形態において、回収のタイミングは、重要である。例えば、昆虫細胞発現で使用されるバキュロウイルスシステムは、溶菌ウイルスであり、従って、回収時期の選択は、生成物の収率に極めて重要であり得る。
適切な宿主細胞としては、酵母、細菌、古細菌、真菌、昆虫、および動物の細胞(哺乳動物細胞が挙げられる)が挙げられる。Saccharomyces cerevisiaeおよび他の酵母、E.coli、Bacillus subtilis、Sf9細胞、C129細胞、293細胞、アカパンカビ、BHK細胞、CHO細胞、COS細胞、HeLa細胞、HUVEC(ヒト臍静脈内皮細胞)、THP1細胞(マクロファージ細胞株)、ならびに種々の他のヒト細胞およびヒト細胞株が、特に目的とされる細胞である。
1つの実施形態において、上記CS1タンパク質は、哺乳動物細胞中で発現される。哺乳動物発現系が使用され得、そしてこの発現系としては、レトロウイルス系およびアデノウイルス系が挙げられる。1つの発現ベクター系は、一般的に、PCT/US97/01019およびPCT/US97/01048に記載されるようなレトロウイルスベクター系である。ウイルス遺伝子は、多くの場合、高度に発現され、広範な宿主範囲を有するので、哺乳動物ウイルス遺伝子に由来するプロモーターが、哺乳動物プロモーターとして特に使用されるプロモーターである。例としては、SV40初期プロモーター、マウス哺乳動物腫瘍ウイルスLTRプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター、単純ヘルペスウイルスプロモーター、およびCMVプロモーター(例えば、FernandezおよびHoeffler、前出を参照のこと)が挙げられる。代表的に、哺乳動物細胞によって認識される転写終結配列およびポリアデニル化配列は、翻訳終止コドンに対して3’側に存在し、従ってプロモーターエレメントと共にコード配列に隣接する調節領域である。転写ターミネーターおよびポリアデニル化シグナルの例としては、SV40由来のものが挙げられる。
哺乳動物宿主ならびに他の宿主中に異種核酸を導入する方法が、利用可能であり、そしてこの方法は、使用される宿主細胞によって変わる。この技術としては、デキストラン媒介性トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介性トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、ウイルス感染、リポソーム中へのポリヌクレオチドのカプセル化、および核へのDNAの直接的なマイクロインジェクションが挙げられる。
別の実施形態において、CS1タンパク質は、細菌系において発現される。バクテリオファージ由来のプロモーターもまた、使用され得る。さらに、合成プロモーターおよびハイブリッドプロモーターもまた、有用である;例えば、tacプロモーターは、trpプロモーター配列およびlacプロモーター配列のハイブリッドである。さらに、細菌プロモーターとしては、細菌RNAポリメラーゼに結合して転写を開始する能力を有する天然に存在する非細菌起源のプロモーターが挙げられ得る。機能的プロモーター配列に加えて、有効なリボゾーム結合部位が、望ましい。発現ベクターは、細菌中でCS1タンパク質を分泌するシグナルペプチド配列を含み得る。タンパク質は、成長培地中に分泌される(グラム陽性菌)か、または細胞の内膜と外膜との間に位置する細胞膜周辺腔に分泌される(グラム陰性菌)。細菌発現ベクターはまた、形質転換された細菌株の選択を可能にするための選択マーカー遺伝子を含み得る。適切な選択遺伝子としては、アンピシリン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、およびテトラサイクリンのような薬物に対する耐性を細菌に付与する遺伝子が挙げられる。選択マーカーとしてはまた、生合成遺伝子(例えば、ヒスチジン、トリプトファン、およびロイシンの生合成経路における生合成遺伝子)が挙げられる。これらの構成要素は、発現ベクター中に構築される。細菌用の発現ベクターは周知であり、そしてとりわけ、これらとしては、Bacillus subtilis、E.coli、Streptococcus cremoris、およびStreptococcus lividansのためのベクターが挙げられる(例えば、FernandezおよびHoeffler、前出)。細菌発現ベクターは、塩化カルシウム処理およびエレクトロポレーションなどのような技術を使用して、細菌宿主細胞に形質転換される。
1つの実施形態において、CS1タンパク質は、例えば、昆虫細胞を形質転換するための発現ベクター(特に、バキュロウイルスベースの発現ベクター)を使用して、昆虫細胞中で産生される。
別の実施形態において、酵母細胞中にCS1タンパク質を産生する。酵母発現系は周知であり、そしてこれは、Saccharomyces cerevisiae、Candida albicansおよびC.maltosa、Hansenula polymorpha、Kluyveromyces fragilisおよびK.lactis、Pichia guillerimondiiおよびP.pastoris、Schizosaccharomyces pombe、ならびにYarrowia lipolyticaのための発現ベクターを含む。
CS1タンパク質はまた、利用可能な技術を使用して、融合タンパク質として作製され得る。したがって、例えば、モノクローナル抗体の作製のために、所望のエピトープが小さい場合、CS1タンパク質は、キャリアタンパク質と融合されて、免疫原を形成し得る。あるいは、CS1タンパク質は、発現を増加させるためかまたは他の理由のために、融合タンパク質として作製され得る。例えば、CS1タンパク質がCS1ペプチドである場合、ペプチドをコードする核酸は、発現を目的として他の核酸に連結され得る。検出エピトープタグとの融合が、なされ得る(例えば、FLAG、His6、myc、HAなど)。
さらに別の実施形態において、CS1タンパク質は、発現後に精製または単離される。CS1タンパク質は、どのような他の成分がサンプル中に存在するのか、および精製される産物に対する要件(例えば、天然の高次構造または変性)に依存して、種々の方法によって単離または精製され得る。標準的な精製方法としては、硫酸アンモニウム沈殿、電気泳動技術、分子技術、免疫学的技術、およびクロマトグラフ技術(イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、および逆相HPLCクロマトグラフィーが挙げられる)、およびクロマトフォーカシングが挙げられる。例えば、CS1タンパク質は、標準的な抗CS1タンパク質抗体カラムを使用して精製され得る。タンパク質濃縮と組み合わせた限外濾過技術およびダイアフィルトレーション技術はまた、有用である。例えば、Walsh、(2002)、Proteins:Biochemistry and Biotechnology Wiley;Hardinら編、(2001)、Cloning,Gene Expression and Protein Purification Oxford Univ.Press;Wilsonら編、(2000)、Encyclopedia of Separation Science Academic Press;およびScopes、(1993)、Protein Purification Springer−Verlagを参照のこと。必要な精製の程度は、CS1タンパク質の用途に依存して変わる。いくつかの例において、精製は必要とされない。
一旦発現され、必要に応じて精製されると、CS1タンパク質および核酸は、多くの用途において有用である。これらは、免疫選択試薬、ワクチン試薬、スクリーニング因子、治療用実体として使用されてもよく、抗体産生のために使用されてもよく、転写インヒビターまたは翻訳インヒビターなどとして使用されてもよい。
(CS1タンパク質の改変体)
本明細書中で決定されるように、天然に存在する配列のアミノ酸改変体もまた、CS1タンパク質の1つの実施形態に含まれる。好ましくは、この改変体は、好ましくは約75%を超えて野生型配列と相同であり、より好ましくは約80%超、さらにより好ましくは約85%超、最も好ましくは90%超が野生型配列と相同である。いくつかの実施形態において、相同性は、約93%〜95%程度の高さであるか、または98%程度の高さである。核酸に関しては、この文脈における相同性は、配列類似性または配列同一性を意味し、同一性が好ましい。この相同性は、核酸相同性について上記に概説されるように、標準的な技術を使用して決定される。
本発明のCS1タンパク質は、野生型アミノ酸配列より短くても長くてもよい。したがって、1つの実施形態において、本明細書中の野生型配列の一部またはフラグメントは、CS1タンパク質の定義の範囲内に含まれる。さらに、上記に概説されるように、本発明のCS1核酸が使用されて、さらなるコード領域が得られ、したがってさらなるタンパク質配列が得られ得る。
1つの実施形態において、CS1タンパク質は、野生型配列と比較した場合、CS1タンパク質の誘導体または改変体である。すなわち、以下でより完全に概説されるように、誘導体CS1ペプチドは、多くの場合、少なくとも1つのアミノ酸の置換、欠失、または挿入を含み、アミノ酸の置換が、特に好ましい。アミノ酸の置換、挿入、または欠失は、CS1ペプチド内の多数の残基位置で起こり得る。
アミノ酸配列改変体もまた、本発明のCS1タンパク質の1つの実施形態に含まれる。これらの改変体は、代表的に、以下の3つの分類の1つ以上に含まれる:置換型改変体、挿入型改変体、または欠失型改変体。これらの改変体は、通常、上記に概説されるように、改変体をコードするDNAを産生するためのカセット変異誘発もしくはPCR変異誘発または他の技術を使用する、CS1タンパク質をコードするDNA中のヌクレオチドの部位特異的変異誘発、およびその後の組換え細胞培養におけるDNAの発現によって調製される。しかし、約100〜150残基までを有する変異CS1タンパク質フラグメントは、確立された技術を使用したインビトロ合成によって調製され得る。アミノ酸配列改変体は、この改変の所定の性質(CS1タンパク質のアミノ酸配列の天然に存在するアレルまたは種間のバリエーションとは別の特徴)によって特徴付けられる。改変体は、代表的に、天然に存在するアナログと類似の定性的生物活性を示すが、特徴が改変された改変体もまた、選択され得る。
アミノ酸配列バリエーションの導入部位または導入領域は、多くの場合、予め決定されるが、変異自体が、予め決定される必要はない。例えば、所与の部位での変異の実行を最適化にするために、ランダム変異誘発が、標的コドンまたは標的領域で行われ得、そして発現したCS1改変体は、所望の活性の最適な組み合わせについてスクリーニングされ得る。公知の配列を有するDNA中の所定の部位において置換変異を行うための技術は、周知である(例えば、M13プライマー変異誘発およびPCR変異誘発)。変異のスクリーニングは、多くの場合、CS1タンパク質活性のアッセイを使用して行われる。
アミノ酸置換は、代表的には1残基であり;挿入は、通常、約1〜20アミノ酸の規模であるが、非常に大きな挿入が、許容され得る。欠失は、一般的には約1〜20残基の範囲であるが、いくつかの場合において、欠失は、非常に大きくてよい。
置換、欠失、挿入、またはその組み合わせが使用されて、最終的な誘導体に到達し得る。一般的に、これらの変化は分子の変化を最小化するために、数個のアミノ酸において行われる。しかし、より大きな変化が、特定の環境下で許容され得る。CS1タンパク質の特徴において、小さい変更が望まれる場合、置換は、一般的に、記載されるアミノ酸置換の関係に従って行われる。
改変体は、代表的に、同一の定性的生物活性を本質的に示し、そして天然に存在するアナログと同一の免疫応答を誘発するが、改変体はまた、必要に応じてCS1タンパク質の特徴を改変するように選択される。あるいは、改変体は、CS1タンパク質の生物活性が変化するように設計され得る。例えば、グリコシル化部位は、付加されても変更されても、除去されてもよい。
機能または免疫学的同一性における大幅な変化は、ときとして上記される置換より保存的でない置換を選択することによってなされる。例えば、変化領域のポリペプチド骨格構造(例えば、αヘリックス構造またはβシート構造);標的部位での分子の電荷もしくは疎水性;または側鎖の大部分に、より著しく影響を与える置換が、行われ得る。一般的に、ポリペプチドの性質に最も大きい変化を生じると予想される置換は、以下の置換である:(a)親水性残基(例えば、セリンまたはトレオニン)が、疎水性残基(例えば、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、バリン、またはアラニン)で置換されること(またはその逆);(b)システインまたはプロリンが、別の残基で置換されること(またはその逆);(c)正電荷の側鎖を有する残基(例えば、リジン、アルギニン、またはヒスチジン)が、負電荷の残基(例えば、グルタミン酸またはアスパラギン酸)で置換されること(またはその逆);(d)かさ高い側鎖を有する残基(例えば、フェニルアラニン)が、側鎖を含まない残基(例えば、グリシン)で置換されること(またはその逆);または(e)ペプチド結合の回転自由度を変化させるプロリン残基が、組み込まれるか、または置換されること。
改変体は、代表的に、類似の定性的生物活性を示し、そして天然に存在するアナログと同一の免疫応答を誘発するが、改変体はまた、必要に応じて皮膚CS1タンパク質の特徴を改変するように選択される。あるいは、改変体は、CS1タンパク質の生物活性が変更されるように設計され得る。例えば、グリコシル化部位は、変更されても除去されてもよい。
CS1ポリペプチドの共有結合の改変は本発明の範囲内に含まれる。共有結合改変の1つの型は、CS1ポリペプチドの標的化アミノ酸残基と、CS1ポリペプチドの選択された側鎖またはN末端残基もしくはC末端残基と反応し得る有機誘導体化剤との反応が含まれる。二官能性剤による誘導体化は、例えば、以下で十分に記載されるように抗CS1ポリペプチド抗体を精製するための方法またはスクリーニングアッセイにおいて使用するために、CS1ポリペプチドを水不溶性支持マトリックスまたは水不溶性支持表面に架橋するのに有用である。一般的に使用される架橋剤としては、例えば、1,1−ビス(ジアゾアセチル)−2−フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(例えば、4−アジドサリチル酸とのエステル)、ホモ二官能性イミドエステル(3,3’−ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)のようなジスクシンイミジルエステルが挙げられる)、二官能性マレイミド(例えばビス−N−マレイミド−1,8−オクタン)、およびメチル−3−((p−アジドフェニル)ジチオ)プロピロイミデートのような薬剤が挙げられる。
他の改変としては、グルタミニル残基およびアスパラギニル残基の、それぞれ対応するグルタミル残基およびアスパルチル残基への脱アミド化、プロリンおよびリジンのヒドロキシル化、セリニル残基、トレオニル残基、またはチロシル残基の水酸基のリン酸化、リジン側鎖、アルギニン側鎖、およびヒスチジン側鎖のアミノ基のメチル化(例えば、pp.79−86、Creighton、(1992)、Proteins:Structure and Molecular Properties Freeman)、N末端アミンのアセチル化、ならびにC末端カルボキシル基のアミド化が挙げられる。
本発明の範囲内に含まれるCS1ポリペプチドの共有結合改変の別の型は、このポリペプチドのネイティブなグリコシル化様式の変更を含む。「天然のグリコシル化様式の変更」は、本明細書中の目的のために、ネイティブなCS1ポリペプチド配列に見出される1つ以上の炭水化物部分の欠失および/またはネイティブなCS1ポリペプチド配列中に存在しない1つ以上のグリコシル化部位の付加を意味することを意図する。グリコシル化パターンは、多くの方法で変更され得る。CS1関連配列を発現する異なる細胞型は、異なるグリコシル化様式を生じ得る。
CS1ポリペプチドへのグリコシル化部位の付加はまた、そのアミノ酸配列を変更することよって行われ得る。この変更は、例えば、(O結合グリコシル化部位について)ネイティブな配列のCS1ポリペプチドへの1つ以上のセリン残基またはトレオニン残基の付加、またはそれらによる置換によってなされ得る。CS1アミノ酸配列は、特に、所望のアミノ酸に翻訳されるコドンが生成されるように予め選択した塩基でCS1ポリペプチドをコードするDNAを変異することによるDNAレベルでの変化によって、必要に応じて変更され得る。
CS1ポリペプチドの炭水化物部分の数を増加させる別の手段は、グリコシドのポリペプチドへの化学的カップリングまたは酵素的カップリングによるものである。例えば、WO 87/05330;AplinおよびWriston、(1981)、CRC Crit.Rev.Biochem.のpp.259−306を参照のこと。
CS1ポリペプチドに存在する炭水化物部分の除去は、化学的にまたは酵素的に達成されても、グリコシル化の標的として作用するアミノ酸残基をコードするコドンの変異的置換によって達成されてもよい。化学的脱グリコシル化技術が適用可能である。例えば、SojarおよびBahl、(1987)、Arch.Biochem.Biophys.259:52−57およびEdgeら、(1981)、Anal.Biochem.118:131−137を参照のこと。ポリペプチドの炭水化物部分の酵素的切断は、種々のエンドグリコシダーゼおよびエキソグリコシダーゼの使用によって行われ得る。例えば、Thotakuraら、(1987)、Meth.Enzymol.138:350−359を参照のこと。
CS1ポリペプチドの共有結合改変の別の型は、米国特許第4,640,835号;同第4,496,689号;同第4,301,144号;同第4,670,417号;同第4,791,192号または同第4,179,337号に示される様式での種々の非タンパク質性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはポリオキシアルキレン)の1つへのCS1ポリペプチドの連結を含む。
本発明のCS1ポリペプチドはまた、別の異種ポリペプチドまたは異種アミノ酸配列に融合したCS1ポリペプチドを含むキメラ分子を形成する方法で改変され得る。1つの実施形態において、このようなキメラ分子は、抗タグ抗体が選択的に結合し得るエピトープを提供するタグポリペプチドとCS1ポリペプチドとの融合を含む。エピトープタグは、一般的に、CS1ポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシル末端におかれる。CS1ポリペプチドのこのようなエピトープタグ化形態の存在は、タグポリペプチドに対する抗体を使用して検出され得る。また、エピトープタグの提供は、抗タグ抗体またはエピトープタグに結合するアフィニティーマトリックスの別の型を使用したアフィニティー精製によってCS1ポリペプチドが容易に精製されることを可能にする。代替的な実施形態において、キメラ分子は、免疫グロブリンまたは免疫グロブリンの特定の領域とのCS1ポリペプチドの融合を含み得る。キメラ分子の二価形態のために、このような融合は、IgG分子のFc領域への融合であり得る。
種々のタグポリペプチドおよびそれらの各抗体が、利用可能である。例としては、以下が挙げられる:ポリ−ヒスチジンタグ(poly−his)またはポリ−ヒスチジン−グリシン(poly−his−gly)タグ;HIS6および金属キレート化タグ、fluHAタグポリペプチドおよびその抗体12CA5(Fieldら、(1988)、Mol.Cell.Biol.8:2159−2165);c−mycタグならびにその8F9抗体、3C7抗体、6E10抗体、G4抗体、B7抗体、および9E10抗体(Evanら、(1985)、Molecular and Cellular Biology 5:3610−3616);ならびに単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグおよびその抗体(Paborskyら、(1990)、Protein Engineering 3(6):547−553)。他のタグポリペプチドとしては、以下が挙げられる:Flag−ペプチド(Hoppら、(1988)、BioTechnology 6:1204−1210);KT3エピトープペプチド(Martinら、(1992)、Science 255:192−194);チューブリンエピトープペプチド(Skinnerら、(1991)、J.Biol.Chem.266:15163−15166);ならびにT7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ(Lutz−Freyermuthら、(1990)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:6393−6397)。
下記に概説されるように、クローニングされ、そして発現される他の生物(例えば、チンパンジー、カニクイザルおよびアカゲザル)由来のCS1タンパク質もまた、含まれる。したがって、プローブ配列またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の縮重プライマー配列が使用されて、ヒトまたは他の生物由来の他の関連CS1タンパク質が見出され得る。特に有用なプローブおよび/またはPCRプライマー配列は、CS1核酸配列の固有の領域を含む。好ましいPCRプライマーは、約15〜35ヌクレオチド長であり、約20〜30ヌクレオチド長が好ましく、必要に応じてイノシンを含み得る。PCR反応の条件は、十分に記載されている(例えば、Innis,PCR Protocols、前出)。
さらに、さまざまな生物に由来するアミノ酸部分を含むよう構築されたキメラCS1タンパク質が含まれる。例えば、キメラCS1タンパク質は、ヒトCS1の1〜67位のアミノ酸をマウスCS1の68〜224位のアミノ酸に融合することによって、またあるいは、ヒトCS1の1〜151位のアミノ酸をマウスCS1の149〜224位のアミノ酸に融合することによって、また、さらにあるいは、ヒトCS1の1〜169位のアミノ酸をマウスCS1の167〜224位のアミノ酸に融合することによって構築される。逆に、キメラCS1タンパク質は、マウスCS1の1〜67位のアミノ酸をヒトCS1の68〜227位のアミノ酸に融合することによって、またあるいは、マウスCS1の1〜131位のアミノ酸をヒトCS1の135〜227位のアミノ酸に融合することによって、また、さらにあるいは、マウスCS1の1〜166位のアミノ酸をヒトCS1の170〜227位のアミノ酸に融合することによっても構築される。
さらに、表2の核酸によってコードされるタンパク質よりも長いCS1タンパク質は、例えば、伸長配列の解明、エピトープまたは精製タグの付加、他の融合配列の付加などによって、作製され得る。
CS1核酸によってコードされるCS1タンパク質を同定することもできる。したがって、本明細書中に概説するように、CS1タンパク質は、配列表の配列またはその相補体とハイブリダイズする核酸によってコードされる。
(CS1タンパク質への結合パートナー)
(CS1抗体)
本発明のCS1抗体は、CS1タンパク質に特異的に結合する。本明細書中の「特異的に結合する」は、抗体が、少なくとも約0.1mMのKd、より通常には少なくとも約1μMのKd、好ましくは少なくとも約0.1μMまたはそれ以下のKd、最も好ましくは0.01μMまたはそれ以下のKdでタンパク質に結合することを意味する。多くの場合、特定の標的に結合するが関連配列に結合しない選択性もまた、重要である。
1つの実施形態において、CS1タンパク質が、結合パートナー(例えば、免疫グロブリンの抗体)を産生するために使用される場合、CS1タンパク質は、全長タンパク質と少なくとも1つのエピトープまたは決定基を共有する必要がある。本明細書中の「エピトープ」または「決定基」は、代表的に、MHCに関連して、抗体またはT細胞受容体を産生および/または結合するタンパク質部分を意味する。したがって、ほとんどの場合、より小さなCS1タンパク質に対して作製された抗体は、全長タンパク質(特に、線状エピトープ)に結合し得る。別の実施形態において、エピトープは固有である;すなわち、固有のエピトープに対して産生された抗体は、交差反応性をほとんど示さないか、または全く示さない。さらに別の実施形態において、このエピトープは、表に示されるタンパク質配列から選択される。
ポリクローナル抗体を調製する方法が存在する(例えば、Coligan、前出およびHarlowおよびLane、前出)。ポリクローナル抗体は、例えば、免疫化剤、および所望される場合にはアジュバントの、1回または複数回の注射によって哺乳動物中で惹起され得る。代表的に、免疫化剤および/またはアジュバントは、複数回の皮下注射または腹腔内注射によって哺乳動物に注射される。免疫化剤は、表2の核酸によってコードされるタンパク質またはそのフラグメントもしくはその融合タンパク質を含み得る。これは、免疫される哺乳動物で免疫原性を示すことが公知のタンパク質と免疫化剤とを結合体化するのに有用であり得る。このような免疫原性タンパク質の例としては、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、および大豆トリプシンインヒビターが挙げられるが、これらに限定されない。利用され得るアジュバントの例としては、フロイント完全アジュバントおよびMPL−TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコレート)が挙げられる。種々の免疫化プロトコールが、使用され得る。
あるいは、抗体は、モノクローナル抗体であり得る。モノクローナル抗体は、KohlerおよびMilstein、(1975)、Nature 256:495に記載のようなハイブリドーマ法を使用して調製され得る。ハイブリドーマ法において、マウス、ハムスター、または他の適切な宿主動物は、代表的に、免疫化剤に特異的に結合する抗体を産生するか、またはこれを産生し得るリンパ球を誘発するための免疫化剤によって免疫される。あるいは、リンパ球は、インビトロで免疫され得る。免疫化剤は、代表的に、表の核酸によってコードされたポリペプチドまたはそのフラグメントまたは融合タンパク質を含む。一般的に、ヒト起源の細胞が望ましい場合に、末梢血リンパ球(「PBL」)が使用され、または非ヒト哺乳動物の供給源が望ましい場合に、脾臓細胞またはリンパ節細胞が使用される。次いで、リンパ球は、ポリエチレングリコールのような適切な融合剤を使用して不死化細胞株と融合されて、ハイブリドーマ細胞を形成する(例えば、Goding、(1986)、Monoclonal Antibodiesのpp.59−103:Principles and Practice Academic Press)。不死化細胞株は、通常、形質転換された哺乳動物細胞(特に、げっ歯類起源、ウシ起源、またはヒト起源の細胞)である。通常、ラット細胞株またはマウス細胞株が、利用される。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは融合していない不死化細胞の成長または生存を阻害する1種以上の物質を含む適切な培養培地中で培養され得る。例えば、親細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマ用の培養培地は、代表的に、HGPRT欠損細胞の増殖を妨害する物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含む(「HAT培地」)。
1つの実施形態において、上記抗体は、二重特異性抗体である。二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有するか、または同じ抗原上の2つのエピトープに対する結合特異性を有する、モノクローナル抗体(好ましくは、ヒト抗体またはヒト化抗体)である。1つの実施形態において、一方の結合特異性は、表の核酸によってコードされるタンパク質またはそのフラグメントに対する特異性であり、他方は、別の抗原(好ましくは細胞表面タンパク質、細胞表面受容体、または細胞表面受容体サブユニット(好ましくはCS1特異的である抗原))に対する特異性である。あるいは、四量体型技術は、多価試薬を作製し得る。
別の実施形態において、抗体は、低レベルのフコースを有するか、またはフコースを欠く。フコースを欠く抗体は、特に低い抗体用量で、ADCC(抗体依存性細胞媒介性細胞傷害)活性の増強と相関した。Shields,R.L.ら、(2002)、J.Biol.Chem.277:26733−26740;Shinkawa,T.ら、(2003)、J.Biol.Chem.278:3466。フコースを含まない抗体を調製する方法は、ラット骨髄腫YB2/0細胞(ATCC CRL 1662)における増殖を含む。YB2/0細胞は、ポリペプチドのフコシル化に必要な酵素(α1,6−フコシルトランスフェラーゼ)をコードする低レベルのFUT8 mRNAを発現する。
ADCC活性を増加させるための代替的な方法としては、CS1抗体のFc部分の変異(特に、FcγR受容体の抗体親和性を増加させる変異)が挙げられる。変異したFcと増加したFcγR結合との間の相関は、標的化された細胞傷害性細胞ベースのアッセイを使用して実証された。Shields,R.L.ら、(2001)、J.Biol.Chem 276:6591−6604;Prestaら、(2002)、Biochem Soc.Trans.30:487−490。Fc領域の特異的な変異によるADCC活性を増加させるための方法は、234、235、239、240、241、243、244、245、247、262、263、264、265、266、267、269、296、297、298、299、313、325、327、328、329、330および332からなる群より選択される位置での少なくとも1つのアミノ酸置換を含むFc改変体を包含し、Fc領域中の残基の番号付けは、KabatにおけるようなEUインデックスの番号付けである。好ましい実施形態において、Fc改変体は、L234D、L234E、L234N、L234Q、L234T、L234H、L234Y、L234I、L234V、L234F、L235D、L235S、L235N、L235Q、L235T、L235H、L235Y、L235I、L235V、L235F、S239D、S239E、S239N、S239Q、S239F、S239T、S239H、S239Y、V240I、V240A、V240T、V240M、F241W、F241L、F241Y、F241E、F241R、F243W、F243L、F243Y、F243R、F243Q、P244H、P245A、P247V、P247G、V262I、V262A、V262T、V262E、V263I、V263A、V263T、V263M、V264L、V264I、V264W、V264T、V264R、V264F、V264M、V264Y、V264E、D265G、D265N、D265Q、D265Y、D265F、D265V、D265I、D265L、D265H、D265T、V266I、V266A、V266T、V266M、S267Q、S267L、E269H、E269Y、E269F、E269R、Y296E、Y296Q、Y296D、Y296N、Y296S、Y296T、Y296L、Y296I、Y296H、N297S、N297D、N297E、A298H、T299I、T299L、T299A、T299S、T299V、T299H、T299F、T299E、W313F、N325Q、N325L、N3251、N325D、N325E、N325A、N325T、N325V、N325H、A327N、A327L、L328M、L328D、L328E、L328N、L328Q、L328F、L328I、L328V、L328T、L328H、L328A、P329F、A330L、A330Y、A330V、A330I、A330F、A330R、A330H、I332D、I332E、I332N、I332Q、I332T、I332H、I332Y、およびI332Aからなる群より選択される少なくとも1つの置換を含み、Fc領域中の残基の番号付けは、KabatにおけるようなEUインデックスの番号付けである。Fc改変体はまた、V264L、V264I、F241W、F241L、F243W、F243L、F241L/F243L/V262I/V264I、F241W/F243W、F241W/F243W/V262A/V264A、F241L/V262I、F243L/V264I、F243L/V262I/V264W、F24lY/F243Y/V262T/V264T、F241E/F243R/V262E/V264R、F241E/F243Q/V262T/V264E、F241R/F243Q/V262T/V264R、F241E/F243Y/V262T/V264R、L328M、L328E、L328F、I332E、L3238M/I332E、P244H、P245A、P247V、W313F、P244H/P245A/P247V、P247G、V264I/I332E、F241E/F243R/V262E/V264R/I332E、F241E/F243Q/V262T/V264E/I332E、F241R/F243Q/V262T/V264R/I332E、F241E/F243Y/V262T/V264R/I332E、S298A/I332E、S239E/I332E、S239Q/I332E、S239E、D265G、D265N、S239E/D265G、S239E/D265N、S239E/D265Q、Y296E、Y296Q、T299I、A327N、S267Q/A327S、S267L/A327S、A327L、P329F、A330L、A330Y、I332D、N297S、N297D、N297S/I332E、N297D/I332E、N297E/I332E、D265Y/N297D/I332E、D265Y/N297D/T299L/I332E、D265F/N297E/I332E、L328I/I332E、L328Q/I332E、I332N、I332Q、V264T、V264F、V240I、V263I、V266I、T299A、T299S、T299V、N325Q、N325L、N325I、S239D、S239N、S239F、S239D/I332D、S239D/I332E、S239D/I332N、S239D/I332Q、S239E/I332D、S239E/I332N、S239E/I332Q、S239N/I332D、S239N/I332E、S239N/I332N、S239N/I332Q、S239Q/I332D、S239Q/I332N、S239Q/I332Q、Y296D、Y296N、F241Y/F243Y/V262T/V264T/N297D/I332E、A330Y/I332E、V264I/A330Y/I332E、A330L/I332E、V264I/A330L/I332E、L234D、L234E、L234N、L234Q、L234T、L234H、L234Y、L234I、L234V、L234F、L235D、L235S、L235N、L235Q、L235T、L235H、L235Y、L235I、L235V、L235F、S239T、S239H、S239Y、V240A、V240T、V240M、V263A、V263T、V263M、V264M、V264Y、V266A、V266T、V266M、E269H、E269Y、E269F、E269R、Y296S、Y296T、Y296L、Y296I、A298H、T299H、A330V、A330I、A330F、A330R、A330H、N325D、N325E、N325A、N325T、N325V、N325H、L328D/I332E、L328E/I332E、L328N/I332E、L328Q/I332E、L328V/I332E、L328T/I332E、L328H/I332E、L328I/I332E、L328A、I332T、I332H、I332Y、I332A、S239E/V264I/I332E、S239Q/V264I/I332E、S239E/V264I/A330Y/I332E、S239E/V264I/S298A/A330Y/I332E、S239D/N297D/I332E、S239E/N297D/I332E、S239D/D265V/N297D/I332E、S239D/D265I/N297D/I332E、S239D/D265L/N297D/I332E、S239D/D265F/N297D/I332E、S239D/D265Y/N297D/I332E、S239D/D265H/N297D/I332E、S239D/D265T/N297D/I332E、V264E/N297D/I332E、Y296D/N297D/I332E、Y296E/N297D/I332E、Y296N/N297D/I332E、Y296Q/N297D/I332E、Y296H/N297D/I332E、Y296T/N297D/I332E、N297D/T299V/I332E、N297D/T299I/I332E、N297D/T299L/I332E、N297D/T299F/I332E、N297D/T299H/I332E、N297D/T299E/I332E、N297D/A330Y/I332E、N297D/S298A/A330Y/I332E、S239D/A330Y/I332E、S239N/A330Y/I332E、S239D/A330L/I332E、S239N/A330L/I332E、V264I/S298A/I332E、S239D/S298A/I332E、S239N/S298A/I332E、S239D/V264I/I332E、S239D/V264I/S298A/I332E、およびS239D/264I/A330L/I332Eからなる群より選択され得、Fc領域中の残基の番号付けは、KabatにおけるようなEUインデックスの番号付けである。本明細書中に参考として援用されるPCT WO2004/029207(2004年4月8日)も参照のこと。
抗体に関連するADCC活性は、上清中の乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の放出(損傷の際に原形質膜に急速に放出される)の測定によってモニタリングされ得、そして定量化され得る。
抗体処置を用いて細胞の細胞傷害性を促進するための他の代替的な実施形態は、抗体結合細胞に細胞死をもたらすシグナル伝達カスケードの抗体媒介性刺激を含む。さらに、先天性免疫系の抗体媒介性刺激(例えば、NK細胞による)はまた、腫瘍細胞またはウイルス感染細胞の死をもたらし得る。
(診断用途のためのCS1配列の検出)
1つの局面において、遺伝子のRNA発現レベルは、自己免疫障害または癌(例えば、骨髄腫)の表現型における異なる細胞状態について決定される。発現プロフィールを得るために、正常組織(例えば、障害を受けていない)および患部組織中の遺伝子の発現レベル(および、いくつかの場合、以下に概説されるように、予後に関する障害の重症度の変化について)は、評価される。特定の細胞状態または発生の時点の遺伝子発現プロフィールは、本質的に、細胞の状態の「フィンガープリント」である。2つの状態は、同様に発現される特定の遺伝子を有し得る一方で、多くの遺伝子の評価は、細胞状態を反映する遺伝子発現プロフィールの作製を同時に可能にする。異なる状態の細胞における発現プロフィールの比較により、これらの状態の各々における遺伝子の重要な情報(遺伝子の上方制御および下方制御の両方を含む)が得られる。次いで、診断が、実施されるか、または確認されて、組織サンプルが正常組織または患部組織の遺伝子発現プロフィールを有するか否かが決定され得る。このことは、関連する状態の分子的な診断を提供する。
「差別的発現」または本明細書中で使用される文法上の等価物は、細胞および組織内ならびにそれらの間の一過性および/または細胞の遺伝子発現パターンの定性的相違または定量的相違をいう。したがって、差別的に発現される遺伝子は、例えば、正常組織と患部組織との間でその発現が定性的に変化し得る(活性化または不活化が含まれる)。遺伝子は、別の状態に対して特定の状態でオンまたはオフになり得るので、2つ以上の状態を比較することができる。定量的に調節された遺伝子は、状態内または細胞型内で標準的な技術で検出可能な発現パターンを示す。いくつかの遺伝子は、一方の状態または細胞型で発現するが、その両方では発現しない。あるいは、発現の相違は、例えば、発現が増減する(例えば、遺伝子発現は、上方制御され、増加した転写物の量を生じるか、または下方制御され、減少した転写物の量を生じる)という点で、定量的であり得る。発現が異なる程度は、以下に概説されるように、Affymetrix GENECHIP(登録商標)(DNAマイクロチップアレイ)発現アレイの使用によるような、標準的な特徴付け技術を介する定量化に十分な大きさであることを必要とする。Lockhart、(1996)、Nature Biotechnology 14:1675−1680を参照のこと。他の技術としては、定量逆転写酵素PCR、ノーザン分析、およびRNase保護が挙げられるが、これらに限定されない。上記に概説されるように、好ましくは、発現の変化(例えば、上方制御または下方制御)は、少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約100%、より好ましくは少なくとも約150%、より好ましくは少なくとも約200%であり、300%から少なくとも1000%までが特に好ましい。
評価は、遺伝子転写物レベルまたはタンパク質レベルで行われ得る。遺伝子発現の量は、遺伝子転写物のRNA等価物またはDNA等価物に対する核酸プローブを使用してモニタリングされ得、そして遺伝子発現レベルまたは最終遺伝子産物自体(タンパク質)の量は、例えば、CS1タンパク質に対する抗体および標準的な免疫アッセイ(ELISAなど)または他の技術(質量分析、二次元ゲル電気泳動アッセイなどが挙げられる)によってモニタリングされ得る。CS1に対応するタンパク質(例えば、疾患の表現型において重要であると同定されたタンパク質)は、疾患の診断試験で評価され得る。別の実施形態において、遺伝子発現のモニタリングは、多くの遺伝子について同時に行われる。複数のタンパク質発現のモニタリングも、同じく行われ得る。
この実施形態において、CS1核酸プローブは、特定の細胞中のCS1配列の検出および定量化のために、本明細書中に概説されるようにバイオチップに接着される。アッセイは、以下の実施例にさらに記載される。PCR技術が使用されて、より高い感度が提供され得る。
1つの実施形態において、CS1をコードする核酸が、検出される。CS1タンパク質をコードするDNAまたはRNAが検出され得るが、CS1タンパク質をコードするmRNAを検出する方法が特に目的とされる。mRNAを検出するためのプローブは、そのmRNAと相補的であり得、かつハイブリダイズするヌクレオチド/デオキシヌクレオチドプローブであり、そしてこのプローブとしては、オリゴヌクレオチド、cDNA、またはRNAが挙げられるが、これらに限定されない。プローブはまた、本明細書中に定義されるように、検出可能な標識を含む必要がある。1つの方法において、mRNAは、ナイロンメンブレンのような固体支持体上への試験されるべき核酸の固定およびプローブとサンプルとのハイブリダイゼーションの後に検出される。非特異的結合プローブを除去するための洗浄後、この標識は検出される。別の方法において、このmRNAの検出は、インサイチュで行われる。この方法において、透過処理された細胞サンプルまたは組織サンプルは、プローブを標的mRNAにハイブリダイズさせるのに十分な時間、検出可能に標識された核酸プローブに接触される。非特異的結合プローブを除去するための洗浄後、標識は検出される。例えば、骨髄腫タンパク質をコードするmRNAに対して相補的であるジゴキシゲニン標識リボプローブ(RNAプローブ)は、ジゴキシゲニンと抗ジゴキシゲニン二次抗体との結合によって検出され、そしてこのプローブを、ニトロブルーテトラゾリウムおよび5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェートで発色される。
別の実施形態において、本明細書中に記載される3つのタンパク質のクラス由来の種々のタンパク質(分泌タンパク質、膜貫通タンパク質、または細胞内タンパク質)は、診断アッセイで使用される。CS1タンパク質、抗体、核酸、改変タンパク質、およびCS1配列を含む細胞は、診断アッセイで使用される。これは、個々の遺伝子レベルまたは対応するポリペプチドレベルで行われ得る。1つの実施形態において、発現プロフィールは、好ましくは発現プロフィール遺伝子および/または対応するポリペプチドをモニタリングするための高処理スクリーニング技術と組み合わせて使用される。
本明細書中に記載され、そして定義されるように、CS1タンパク質は、SLE、RA、およびIBDのような自己免疫障害、ならびに骨髄腫および形質細胞性白血病のような癌性状態の疾患マーカーとして適用される。さらに、CS1は、予後または診断目的のマーカーとして適用される。推定の患部組織中のこれらのタンパク質の検出は、このような状態の検出予後、または診断、ならびに治療ストラテジーの選択を可能にする。1つの実施形態において、抗体が使用されて、CS1が検出される。好ましい方法は、ゲル(代表的に、変性および還元タンパク質ゲルであるが、ゲルの別の型(等電点電気泳動ゲルなどが含まれる)も可能である)での電気泳動によってサンプルからタンパク質を分離する。タンパク質の分離後、CS1は、例えば、CS1に対して惹起された抗体による免疫ブロッティングによって検出される。
別の方法では、CS1に対する抗体は、インサイチュ画像化技術(例えば、組織学)で適用される。例えば、Asaiら編、(1993)、Methods in Cell Biology:Antibodies in Cell Biology、(第37巻)、Academic Pressを参照のこと。この方法において、細胞は、骨髄腫タンパク質に対する1つから多数の抗体に接触される。非特異的な抗体結合を除去するための洗浄後、抗体の存在が検出される。1つの実施形態において、抗体は、検出可能な標識を含む二次抗体と共にインキュベートすることによって検出される。別の方法において、CS1に対する一次抗体は、検出可能な標識(例えば、基質に作用し得る酵素マーカー)を含む。別の実施形態において、複数一次抗体のそれぞれ1つは、異なる検出可能な標識を含む。この方法は、特に、CS1と上記される状態の他のマーカーとの同時スクリーニングで適用される。多くの他の組織学的画像化技術もまた、本発明によって提供される。
1つの実施形態において、上記標識を異なる波長の放射を検出し、そして区別する能力を有する蛍光光度計で検出する。さらに、蛍光標示式細胞分取器(FACS)が、この方法において使用され得る。
別の実施形態において、抗体は、血液、血清、血漿、糞、および他のサンプルから自己免疫障害(例えば、SLE、RA、およびIBD)および癌(例えば、骨髄腫および形質細胞性白血病)を診断するのに適用される。したがって、このようなサンプルは、CS1の存在について精査されるか、または試験されるべきサンプルとして有用である。抗体が使用されて、これまでに記載された免疫アッセイ技術(ELISA、免疫ブロッティング(ウェスタンブロッティング)、免疫沈降、およびBIACOREテクノロジーなどが挙げられる)によってCS1が検出され得る。逆に、抗体の存在は、内因性CS1タンパク質に対する免疫応答を示し得る。
別の実施形態において、標識されたCS1核酸プローブの組織アレイへのインサイチュハイブリダイゼーションが、行われる。例えば、患部組織および/または正常組織を含む組織サンプルのアレイが、作製される。次いで、インサイチュハイブリダイゼーション(例えば、Ausubel、前出を参照のこと)が、行われる。個体と標準との間のフィンガープリントを比較する場合、診断、予後、または予想は所見に基づき得る。診断を示す遺伝子は予後を示す遺伝子と異なり得、そして細胞の状態の分子プロフィールは、応答性の状態と不応性の状態との間の区別をもたらし得るか、または結果を予想し得ることがさらに理解される。
1つの実施形態において、CS1タンパク質、抗体、核酸、改変タンパク質、およびCS1配列を含む細胞は、予後のアッセイにおいて使用される。上記のように、長期の予後に関して疾患状態、臨床上の情報、病理学的情報、または他の情報に相関する遺伝子発現プロフィールが、作製され得る。再び、これは、タンパク質レベルまたは遺伝子レベルで行われ得、遺伝子の使用が好ましい。単一または複数の遺伝子は、種々の組み合わせで有用であり得る。上記のように、CS1プローブは、組織または患者におけるCS1配列の検出および定量化のためにバイオチップに接着され得る。このアッセイは、診断のために上記で概説されるように進行する。PCR法は、より高感度かつ正確な定量化を提供し得る。
予後のアッセイで有用な遺伝子は、患者の疾患の段階に従って異なって発現される遺伝子である。1つの実施形態において、この遺伝子は、患者の段階によって固有に発現され得る。別の実施形態において、この遺伝子は、患者の段階によって異なるレベルで発現され得る。例えば、骨髄腫において、患者は、疾患の範囲および位置にしたがって以下の3つの異なる段階に分類される:段階I、段階II、および段階III。段階Iでは、症状は、軽微であるか存在せず、多数の患者は骨髄腫の症状を示さない。陽性の診断は、腫瘍細胞の存在である;しかし、赤血球の数は、正常であるか正常範囲をわずかに下回り、血中のカルシウムの増加は検出不可能であり、血中および尿中のMタンパク質のレベルは非常に低く、そして検出可能な骨損傷は、X線では見ることができない。段階IIでは、癌細胞は、より多数で蔓延している。腎機能が、影響を受け得、ほとんどの患者について、予後の診断は、悪化する。段階IIIでは、貧血、高カルシウム血症、進行した骨損傷、および血中および尿中の高レベルのMタンパク質が生じる。自己免疫障害におけるタンパク質発現と異なる段階との相関はまた、このような障害の予後の決定で有用であることが明らかであり得る。固有に発現されるか、または段階によって異なる発現レベルを有する、異なる段階で発現される遺伝子の相関を使用して、患者の寛解誘導の実現可能性が決定され得る。これは、骨髄腫患者がほとんど症状を示さない、疾患のより初期の段階で特に有用である。さらに、β−2ミクログロブリン(腎臓損傷の指標)ならびに高レベルの血清アルブミンおよび乳酸デヒドロゲナーゼなどの長期合併症の発症を示す発現された遺伝子もまた、予後のツールとして有用であり得る。
固有に発現されるか、または段階によって異なる発現レベルを有する、異なる段階で発現される遺伝子の相関はまた、本発明に開示される治療法を使用する処置の有効性を決定するためにモニタリングされ得る。例えば、本発明のアンタゴニストによって治療された患者は、マーカー(例えば、CS1または障害特異的マーカーと組み合わせたCS1が挙げられる)のモニタリング(例えば、骨髄腫の処置についてのMタンパク質のモニタリング)によって、このアンタゴニストの治療の有効性についてモニタリングされ得る。これらの特異的マーカーのモニタリングは、本発明の治療効力の決定、ならびに本発明の異なる指標についての投薬量の決定および処置の方法の検討において重要である。
(インビボモデル系としての疾患障害の誘導)
(炎症性腸疾患)
インビボ実験モデルは、炎症性腸疾患の病理学的プロセスの調査のために開発された。Sartor RB,Aliment.Pharmacol.Ther.11:89−96(1997)。例えば、ノックアウトトランスジェニックマウスが、作製され得、このノックアウトトランスジェニックマウス中では、炎症性腸疾患遺伝子が破壊されているか、炎症性腸疾患遺伝子が挿入されている。ノックアウトトランスジェニックマウスは、相同組換えによるマーカー遺伝子または他の異種遺伝子の、マウスゲノム中の内因性炎症性腸疾患遺伝子部位への挿入によって作製され得る。このようなマウスはまた、内因性炎症性腸疾患遺伝子を炎症性腸疾患遺伝子の変異したバージョンで置換するか、または内因性炎症性腸疾患遺伝子を、例えば、発癌物質への曝露により変異させることによって作製され得る。
DNA構築物は、胚性幹細胞の核に導入される。新たに操作された遺伝子損傷を含む細胞は、宿主マウスの胚に注射され、この胚はレシピエントの雌に再移植される。これらの胚のいくつかは、部分的に変異細胞株に由来する生殖細胞を有するキメラマウスに成長する。したがって、キメラマウスの交配することによって、導入された遺伝子損傷を含む新規のマウス系統を得ることが可能である(例えば、Capecchiら、(1989)、Science 244:1288−1292を参照のこと)。キメラ標的化マウスは、Hoganら、(1988)、Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual CSH Press;およびRobertson編、(1987)、Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells:A Practical Approach IRL Press,Washington,D.C.に従って得られ得る。
他のモデルは、動物モデルの非遺伝子操作を使用して構築され得る。特に、1つのモデルが、低分子スクリーニングにおいて広範に使用されてきた。このモデルは、ハプテン2,4,−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)の溶液による単回結腸内攻撃誘発によって、ラットまたはマウスに大腸炎を誘導する。Morris GPら、Gastroenterology 96:795−803(1989);Boughton−Smith NK、Br.J.Pharmacol.94:65−72(1988)。TNBSによる処置は、2〜3日後に最下点に達し、そして21日目まで持続し得る激症性局所炎症反応を生じ、この反応は、攻撃誘発の強さに依存する。
TNBS処置によって生じた炎症反応は、クローン病の多数の巨視的特徴、組織学的特徴、および免疫学的特徴を再現すると考えられる。Grisham MBら、Gastroenterology 101:540−547(1991);Yamada Yら、Gastroenterology 102:524−534(1992);Torres MIら、Dig.Dis.Sci 44:2523−29(1999);Neruath M、Fuss I、Strober W、Int.Rev.Immunol.19:51−62(2000)。貫壁性炎症および腸壁の肥厚を伴う開放性潰瘍形成が、観察される。組織学的特徴としては、陰窩構造の歪み、陰窩萎縮、肉芽腫、巨細胞、基底リンパ球凝集、および炎症性浸潤の存在が挙げられる。
上記モデルは、結腸炎症を研究および検証し、炎症性腸疾患の局面に取り組むために使用された。Hoffman Pら、Gut 41:195−202(1997);Jacobson K、McHugh K、Collins SM、Gastroenterology 112:156−62(1997)。
他の動物モデルとしては、HLA−B27トランスジェニックラット(Hammer REら、Spontaneous inflammatory disease in transfenic rats expressing HLA−B27 and Human b2M:An animal model of HLA−B27 associated human disorders,Cell 63:1088−1112(1990))、トランスジェニックIL−2欠損マウス(Baumgart DCら、Mechansisms of intestinal epithelial cell injury and colitis in interleukin 2 deficient mice、Cell Immunol.187:52−66(1998))、mdr1a欠損マウス(Panwala CMら、A Novel Model of Inflammatory Bowel Disease:Mice deficient for the multiple drug resistance gene,mdr1a,spontaneously develop colitis、J.Immunol.161:5733−44(1998))、およびIL10欠損マウス(Freeman HJ、Studies on the interleukin−10 gene in animal models of colitis、Canadian Gastroenterology(2003))が挙げられる。
(骨髄腫)
インビボ実験モデルが、骨髄腫の病理学的プロセスの調査のために開発された。Sartor RB、Aliment.Pharmacol.Ther.11:89−96(1997)。例えば、ノックアウトトランスジェニックマウスが作製され得、このノックアウトトランスジェニックマウス中では、骨髄腫遺伝子が、破壊されるか、骨髄腫遺伝子が、挿入される。ノックアウトトランスジェニックマウスは、相同組換えによるマーカー遺伝子または他の異種遺伝子のマウスゲノム中の内因性骨髄腫遺伝子部位への挿入によって作製され得る。このようなマウスはまた、内因性骨髄腫遺伝子を骨髄腫遺伝子の変異したバージョンで置換するか、または、例えば、発癌物質への曝露により内因性骨髄腫遺伝子を変異させることによって作製され得る。
DNA構築物は、胚性幹細胞の核に導入される。新たに操作された遺伝子損傷を含む細胞は、宿主マウスの胚に注射され、この胚はレシピエント雌に再移植される。これらの胚のいくつかは、部分的に変異細胞株に由来する生殖細胞を有するキメラマウスに成長する。したがって、キメラマウスを交配することによって、導入された遺伝子損傷を含む新規のマウス系統を得ることが可能である(例えば、Capecchiら、(1989)、Science 244:1288−1292を参照のこと)。キメラ標的化マウスは、Hoganら、(1988)、Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual CSH Press;およびRobertson編、(1987)、Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells:A Practical Approach IRL Press,Washington,D.C.に従って得られ得る。
他のモデルは、動物モデルの非遺伝子操作を使用して構築され得る。例えば、C57BL/6JマウスへのB細胞腫瘍(例えば、LLC細胞)の注射は、肺転移を誘導し得る。他の動物モデルは、SCIDマウスを利用し、そして骨髄腫様特徴を誘導するために、B細胞腫瘍株(例えば、HsSultan細胞(ATCC)または多発性骨髄腫株(例えば、L363、LP−1、OPM−2、またはRPMI8226が挙げられるが、これらに限定されない)を注射する。さらに他の動物モデルとしては、ヒト胎児骨(FB)をNOD/SCIDマウスの皮下部位へ移植し、次いで多発性骨髄腫を有する患者から得られた原発性骨髄単核細胞をFBに接種することによって作製されたヒト多発性骨髄腫のNOD/SCIDマウスモデルが挙げられる。Shang−Yi H.ら、Amer.J.Invest.Pathol.164:747−756(2004)を参照のこと。マウス形質細胞腫モデル(その形成はプリスタンオイル(2,6,10,12−テトラメチルペンタデカン)処理によって誘導される)もまた、使用され得る。さらに、SCIDマウス、SCID/ベージュマウス、またはNOD/SCIDマウスの骨髄に骨髄腫細胞が直接注射されたマウスモデル(同所注射モデル)もまた、使用され得る。
骨髄腫細胞におけるような形質転換された細胞は、それらの正常な対応物よりも増加した量の特定の因子(本明細書中で以下、「骨髄腫特異的マーカー」)を放出する。例えば、骨髄腫細胞中の発現において、CD38、CD9、CD10、HLA−DR、およびCD20は、増加される。Ruiz−Arugelles GJおよびSan Miguel JF,Cell Surface Markers in Multiple Myeloma、Mayo Clin.Proc.69:684−90(1994)。
これらの因子の放出を測定する種々の技術は、Freshney、(1998)、前出に記載されている。Unkelessら、(1974)、J.Biol.Chem.249:4295−4305;StricklandおよびBeers、(1976)、J.Biol.Chem.251:5694−5702;Whurら、(1980)、Br.J.Cancer 42:305−312;Mihich編、(1985)、Biological Responses in Cancer PlenumのGullino「Angiogenesis,tumor vascularization,and potential interference with tumor growth」、pp.178−184;Freshney、(1985)、Cancer Res.5:111−130も参照のこと。
(処置方法)
(自己免疫疾患の処置)
1つの局面において、本発明は、白血球の増殖、付着、分化、活性化、および/または同時活性化を減少させる方法に関し、この方法は、白血球を本明細書中に記載されるCS1のアンタゴニストに接触させる工程を包含する。
別の局面において、本発明は、リンパ球(例えば、B細胞)による免疫グロブリンの分泌(または産生)を減少させる方法に関し、この方法は、白血球を本明細書中に記載されるCS1のアンタゴニストに接触させる工程を包含する。本発明のアンタゴニストは、免疫グロブリン(例えば、IgM、IgG、IgD、IgA、およびIgE)の産生を少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、または50%減少させ得る。変化の%は、抗体の第1の用量の投与前(0日目)の免疫グロブリン濃度を、投与後(x日目)の免疫グロブリン濃度から減算し、これを第1の用量前(0日目)の免疫グロブリン濃度で除算し、100を掛けることにより計算する(例えば、[(x日目−0日目)/0日目]×100)。
なお別の局面において、本発明は、CS1を発現する細胞のアポトーシスまたは細胞溶解を誘導する方法に関し、この方法は、細胞を本明細書中に記載されるCS1に対する抗体と接触させる工程を包含する。好ましい実施形態において、誘導は抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を介して達成される。一般に、本発明の抗体は、エフェクター細胞(ナチュラルキラー細胞またはマクロファージなど)の存在下で標的細胞(CS1を発現する細胞)の表面上の抗原に結合する。エフェクター細胞上のFc受容体は、結合した抗体を認識する。Fc受容体の架橋は、エフェクター細胞に細胞溶解またはアポトーシスによって標的細胞を死滅させるようにシグナルを伝達する。細胞溶解は、溶解した細胞からの標識もしくは乳酸デヒドロゲナーゼの放出のいずれかの検出、または標的細胞の生存性の減少の検出(例えば、アネキシンアッセイ)によって検出され得る。アポトーシスについてのアッセイは、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ媒介ジゴキシゲニン−11−dUTPニック末端標識(TUNEL)アッセイによって行われ得る(Lazebnikら、Nature:371、346(1994))。細胞傷害性はまた、当該分野で公知の検出キット(例えば、Roche Applied Science(Indianapolis、IN)の細胞傷害性検出キット)によって直接検出され得る。好ましくは、本発明の抗体は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、または80%の細胞傷害性を標的細胞に対して誘導する。この%は、実施例に開示される方法によって計算される。
上記アンタゴニストは、インビトロ(例えば、白血球が培養される細胞培養環境へアンタゴニストを添加することによる)、エキソビボ、またはインビボ(例えば、被験体へアンタゴニストを投与することによる)で白血球と接触させられ得る。
好ましい実施形態において、白血球は、a)活性化リンパ球(例えば、B細胞および/またはT細胞(好ましくは、CD19+B細胞および/またはCD3+T細胞));b)CD14+活性化細胞および/もしくはナイーブな細胞;c)活性化および/もしくは非活性化樹状細胞;ならびに/またはc)CD56+NKおよび/もしくはNKT細胞である。
好ましい局面において、本発明は、B細胞によって免疫グロブリン分泌を減少させる方法を、それを必要とする被験体において提供し、この方法は、被験体に有効量のCS1のアンタゴニストを投与する工程を包含する。
別の好ましい局面において、本発明は、CS1発現細胞の細部傷害性、細胞溶解、および/またはアポトーシスを、それを必要とする被験体において誘導する方法を提供し、被験体に有効量のCS1の抗体を投与する工程を包含する。
アンタゴニスト(好ましくは、本発明の抗体)は、自己免疫疾患(アジソン病、耳の自己免疫疾患、眼の自己免疫疾患(例えば、ブドウ膜炎)、自己免疫性肝炎、クローン病、糖尿病(I型)、精巣上体炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本病、溶血性貧血、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、乾癬、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、乾癬、シェーグレン症候群、脊椎関節症、甲状腺炎、潰瘍性大腸炎、および/または血管炎が挙げられるが、これらに限定されない)の予防または治療に使用され得る。
好ましい実施形態において、本発明の方法によって予防および/または処置され得る自己免疫疾患は、SLE、RA、またはIBDである。SLE、RA、またはIBDの症状が発症した被験体に投与された後、抗CS1抗体は、症状の重症度を軽減し得るはずである。あるいは、抗CS1抗体は、被験体がSLE、RA、またはIBDの任意の臨床症状を発症する前に被験体に投与され得る。このような抗体の予防的投与は、被験体が任意のSLE、RA、またはIBDを発症することを完全に予防するか、または少なくとも被験体の、抗体処置を行わない状態において見られるような重篤な症状を予防するはずである。SLE、RA、またはIBDの症状の重症度は、当該分野において公知であるSLE、RA、またはIBDの標準的な臨床試験(例えば、抗DNA抗体の血清レベル、タンパク尿、および患者の死亡率)によって、測定され得る。
治療方法は、通常、ヒト患者に適用されるが、他の哺乳動物に適用され得る。
(癌処置)
骨髄腫細胞の増殖を減少させるための治療方法もまた含まれ、この方法は、骨髄腫細胞を骨髄腫タンパク質のアンタゴニスト(好ましくは、本明細書中に記載されるCS1抗体のような抗体または他のアンタゴニスト)と接触させる工程を包含する。例えば、この抗体は、インビトロ(骨髄腫細胞を培養する細胞培養環境へのアンタゴニストの添加によるなど)、エキソビボ、またはインビボ(例えば、被験体へのアンタゴニストの投与による)で骨髄腫細胞と接触され得る。別の局面において、本発明は、骨髄腫細胞の増殖を減少させる方法を提供し、この方法は、有効量の骨髄腫タンパク質アンタゴニストを被験体に投与する工程を包含する。
1つの局面において、アンタゴニスト(好ましくは、本発明の抗体)は、骨髄腫の予防または処置のために使用され得る。骨髄腫の症状を発症した被験体に投与された後、上記抗体またはアタゴニストは、症状の重症度を軽減し得るはずである。あるいは、本発明の抗体は、被験体が骨髄腫の任意の臨床症状を発症する前に被験体に投与され得る。骨髄腫の症状の重症度は、当該分野において公知である骨髄腫の標準的な臨床試験(骨密度X線分析、β−2ミクログロブリンレベル、または高カルシウム血症など)によって測定され得る。治療方法は、通常、ヒト患者に適用されるが、他の哺乳動物に適用され得る。
なお別の局面において、本発明は、CS1を発現する細胞のアポトーシスまたは細胞溶解を誘導する方法に関し、細胞を本明細書中に記載されるCS1に対する抗体に接触させる工程を包含する。好ましい実施形態において、この誘導は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)によって行われる。一般的に、本発明の抗体は、エフェクター細胞(例えば、ナチュラルキラー細胞またはマクロファージ)の存在下で標的細胞(CS1を発現する細胞)の表面上の抗原に結合する。エフェクター細胞上のFc受容体は、結合した抗体を認識する。Fc受容体の架橋は、エフェクター細胞に細胞溶解またはアポトーシスによって標的細胞を死滅させるようにシグナルを伝達する。細胞溶解は、溶解細胞からの標識もしくは乳酸デヒドロゲナーゼの放出の検出、または標的細胞の生存性の減少の検出(例えば、アネキシンアッセイ)によって検出され得る。アポトーシスについてのアッセイは、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ媒介ジゴキシゲニン−11−dUTPニック末端標識(TUNEL)アッセイによって行われ得る(Lazebnikら、Nature:371、346(1994))。細胞傷害性はまた、当該分野で公知の検出キット(Roche Applied Science(Indianapolis,IN)の細胞傷害性検出キット)によって直接検出され得る。好ましくは、本発明の抗体は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、または80%の細胞傷害性を標的細胞に対して誘導する。この%は、実施例に開示される方法によって計算される。
上記アンタゴニストは、インビトロ(例えば、白血球が培養される細胞培養環境へアンタゴニストを添加することによる)、エキソビボ、またはインビボ(例えば、被験体へアンタゴニストを投与することによる)で白血球と接触させられ得る。
好ましい実施形態において、白血球は、a)活性化リンパ球(例えば、B細胞および/またはT細胞(好ましくは、CD19+B細胞および/またはCD3+T細胞));b)CD14+活性化細胞および/もしくはナイーブな細胞;c)活性化および/もしくは非活性化樹状細胞;ならびに/またはc)CD56+NKおよび/もしくはNKT細胞である。
好ましい局面において、本発明は、B細胞によって免疫グロブリン分泌を、それを必要とする被験体において減少させる方法を提供し、この方法は、被験体に有効量のCS1のアンタゴニストを投与する工程を包含する。このようなB細胞による免疫グロブリン分泌の減少は、骨髄腫の合併症(過粘稠血症候群が挙げられる)を軽減するのに役立ち得る。
本発明の別の好ましい態様は、CS1を発現する細胞の細胞傷害性、細胞溶解、および/またはアポトーシスを、それを必要とする被験体において誘導する方法を提供し、この方法は、有効量のCS1の抗体を被験体に投与する工程を包含する。
(治療薬の投与)
アンタゴニスト(例えば、本発明の抗体)を投与する種々の方法が存在する。非経口投与が好ましい。抗体は、ボーラスとして患者に対して静脈内に投与されても、長期間の連続注入によるか、筋肉内、皮下、腹腔内、または脳脊髄内の経路によって投与されてもよい。経口経路、局所経路、吸入経路、または当業者に公知の他の送達手段もまた、本発明に包含される。
本発明の薬学的組成物は、受容可能なキャリア(好ましくは、水性キャリア)に溶解したアンタゴニスト(例えば、抗体)、またはそのカクテルの溶液を共通して含有する。種々の水性キャリア(例えば、注射用水(WFI)またはリン酸、クエン酸、酢酸などによって、代表的にはpH5.0〜8.0、最も多くの場合にはpH6.0〜7.0に緩衝化され、そして/または等張にするための塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウムなど)を含む水)が、使用され得る。キャリアはまた、活性タンパク質を保護するために賦形剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリソルベート80、糖、またはアミノ酸)を含み得る。これらの処方物中のアンタゴニスト(例えば、抗体)の濃度は、約0.1〜100mg/mlで広範に変化するが、多くの場合、1〜10mg/mlの範囲である。処方されたモノクローナル抗体は、特に非経口投与に適し、そして静脈内注入として投与されても、皮下注射、筋肉内注射、または静脈内注射によって投与されてもよい。非経口的に投与可能な組成物を調製するための実際の方法は、当業者に公知であるか、または明らかであり、そして、例えば、Remington’s Pharmaceutical Science(第15版、Mack Publishing Company、Easton,Pa.,1980)(これは、本明細書中に参考として援用される)に、より詳細に記載される。本発明は、本明細書中に記載される抗体のいずれか1つを含有する薬学的組成物を提供する。
上記組成物は、CS1とその細胞基質との間の相互作用を阻害する工程、罹患細胞の付着を阻害する工程、または上記障害の臨床症状を防止するか、そして/もしくは軽減する工程を包含する予防的および/または治療的な処置のために投与され得る。これらの所望の効果のいずれか1つの達成に適した量は、「有効量」と定義される。この抗体は、単回または複数回の投与によって送達され得る。
疾患の処置を目的として、アンタゴニスト(例えば、抗体)の適切な投薬量は、疾患の重症度および経過、患者の臨床歴および応答、抗体の毒性、ならびに主治医の判断に依存する。このアンタゴニストは、患者に対して1回かまたは一連の処置にわたって、適切に投与される。最初の候補投薬量が、患者に投与され得る。適切な投薬量および処置レジメンは、当業者に公知である従来技術を使用して療法の進行をモニタリングすることによって確立され得る。
さらに、上記アンタゴニスト(例えば、抗体)は、実質的に純粋な形態で、単独で利用されても、当業者に公知である自己免疫疾患用治療剤と共に使用されてもよい。この抗体による処置と組み合わせて使用され得る他の療法としては、アンチセンス核酸分子または生物製剤(例えば、さらなる治療用抗体)の投与が挙げられる。したがって、本発明の処置は、この処置が自己免疫疾患の処置のための別の因子と連続的に施され得るか、またはそれと組み合わせて施され得る様式で処方される。自己免疫障害および骨髄腫を処置するために、この抗体は、多くの場合、抗体を1種以上の他の免疫抑制薬および免疫調節剤の後か、またはそれらと組み合わせて投与される。
(診断および/または予後(診断)の用途で使用するためのキット)
上記で示唆された診断用途および研究用途における使用のために、キットもまた、本発明によって提供される。診断用途および研究用途において、このようなキットは、以下の少なくとも1つを備える:アッセイ試薬、緩衝液、CS1特異的な核酸もしくは抗体、ハイブリダイゼーションプローブおよび/またはプライマー、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、ドミナント陰性なCS1ポリペプチドまたはポリヌクレオチド、CS1関連配列の低分子インヒビターなど。
さらに、上記キットは、本発明の方法の実施のための説明書(例えば、プロトコール)を含む説明書類を備え得る。説明書類は、代表的に、文書または印刷物を含むが、これらに限定されない。このような説明書を保存し、そしてそれらをエンドユーザーに伝達し得る媒体は、本発明によって意図される。このような媒体としては、電子的保存媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)および光学的媒体(例えば、CD ROM)などが挙げられるが、これらに限定されない。このような媒体は、このような説明書類を提供するインターネットサイトのアドレスを含み得る。
本発明はまた、CS1関連配列のモジュレーターをスクリーニングするためのキットを提供する。このようなキットは、容易に利用可能な材料および試薬から調製され得る。例えば、このようなキットは、以下の材料の1つ以上を備え得る:CS1会合性ポリペプチドまたはCS1会合性ポリヌクレオチド、反応チューブ、およびCS1関連活性試験のための説明書。必要に応じて、このキットは、生物学的に活性なCS1タンパク質を含む。広範なキットおよび構成要素は、このキットに関して意図されるユーザーおよびそのユーザーの特定のニーズに依存して、本発明にしたがって調製され得る。診断は、代表的に、複数の遺伝子または生成物の評価を包含する。代表的に、これらの遺伝子は、履歴または結果のデータで同定され得る疾患における重要なパラメータとの相関に基づいて選択される。
(実施例1:CS1の単離および同定)
CS1を、正常な健常成体の末梢血由来のB細胞サブセット(ナイーブ 対 記憶B細胞+プラスマB細胞(plasma B cells))のcDNAサブトラクションライブラリーから同定した。CS1は、記憶B細胞およびプラスマB細胞の間で優先的に発現した。サブトラクションライブラリーを、以下に記載されるプロトコールによって作製した。
(B細胞サブセットの単離:)
末梢血単核細胞(PBMC)を、標準的なFicoll−hypaque勾配を使用して9人の健常な成人ドナーから単離した。B細胞を、以下の標準的な陰性選択プロトコールによってPBMCから単離した。PBMCを、精製したマウス抗ヒトCD2、CD3、CD4、CD14、CD16、CD56、CD66、およびグリコホリンAの抗体カクテル中でインキュベートした。インキュベーションおよび洗浄の後、ヤギ抗マウス磁性Dynalビーズを、細胞1個あたり7〜10ビーズで添加した。その後、この抗体結合細胞を、標準的なDynal磁性ホルダーを使用して単離して、上清中に濃縮B細胞を遊離させた。次いで、回収した上清を、RPMI+10%ウシ胎仔血清(FBS)で洗浄した。
(B細胞サブセット(ナイーブB細胞 対 記憶B細胞+プラスマB細胞の分取))
Dynal濃縮B細胞を、標準的な染色プロトコールに従って、IgD−FITC、CD38−cychrome、CD19−APC、およびCD27−PEで染色した。ナイーブB細胞(IgD+CD19+CD38int/−CD27−)対記憶B細胞およびプラスマB細胞(IgD−CD19+CD38int/+CD27+)の2つの個別の集団を、spectra physics空冷アルゴンレーザ(488nm)および635nmのダイオードレーザならびにFITC(530/40nm)、PE(580/30nm)、APC(670/20nm)、およびサイクローム(PE−Cy5)(670/30nm)の検出のためのフィルターを備えるMoFlo High Performance Flow cytometer−MLSで分取した。分取したB細胞を、純度についてMoFlo cytometerで分析し、そして97%(記憶B細胞およびプラスマB細胞)および98%(ナイーブB細胞)の純度であることが見出された。分取した細胞を、Trizol中におき、そして−70℃で保存した。
(cDNAライブラリーの作製)
cDNAサブトラクションライブラリーを、標準的なRDA法(representational difference analysis)であるサブトラクティブハイブリダイゼーション(subtractive hybridization)プロトコールの使用によって、分取したB細胞サブセットから作製した。サブトラクションライブラリーは、ナイーブcDNAを2回差し引く場合は記憶B細胞+プラスマB細胞cDNAライブラリーを含み、そして記憶+プラスマcDNAを2回差し引く場合はナイーブB細胞cDNAライブラリーを含む。標準的な分子生物学技術を使用して、cDNAサブトラクションライブラリーを標準的なプラスミドベクターにライゲーションし、エレクトロコンピテントE.coli(DH−10B)細胞に形質転換した。形質転換E.coli細胞を、選択用抗生物質の存在下でLB寒天プレート上にプレートした。単一の細菌コロニー(それぞれ1つの特異的インサートを示す)を、標準的なコロニーPCRを使用して増幅した。
(差別的発現のスクリーニングおよび確認)
cDNAサブトラクションライブラリーのインサートを変性し、そして2つの同一のナイロンフィルターにブロッティングし、そして2つの異なる標識がなされた変性プローブ−(記憶+プラスマ)−(ナイーブcDNA)(2回差し引く)およびナイーブ−(記憶+プラスマ)cDNA(2回差し引く)と個別にハイブリダイズさせた。このインサートが2つのプローブのうちの1つに対して優勢に、そして選択的にハイブリダイズする場合、サブトラクションライブラリーのcDNAインサートをポジティブと見なした。CS1のcDNAクローンは、(記憶+プラスマ)−ナイーブcDNAプローブ(2回差し引く)と選択的にハイブリダイズした。
(CS1の同定)
ポジティブクローンで形質転換した細菌細胞を増殖させ、そしてDNAを、製造者のプロトコール(Qiagen、Valencia、Calfornia)にしたがって、Qiagen(登録商標)Mini−Prepキット(インビトロ診断用調製物)を使用して単離した。精製プラスミドを配列決定し、そしてDNA配列の同一性を、NCBIデータベースを検索することによって決定した。
(CS1遺伝子発現の特徴付けおよび確認)
選択したポジティブクローン(CS1を含む)の優先的発現を、ドットブロット分析によって確認した。分取したナイーブB細胞 対 記憶B細胞+プラスマB細胞から単離した等量の(非サブトラクション)cDNA(20ng)を、ナイロンフィルターにスポットし、そしてポジティブクローンのために標識cDNAインサートとハイブリダイズした。これらのアッセイでは、cDNAを、2つの個別の分類(n=9(健常成体)およびn=10健常成体、それぞれ純度は97%超および98%超)から得た末梢血B細胞サブセットから合成した。フィルターを洗浄し、そしてハイブリダイズしたプローブからのシグナルをオートラジオグラフィーによって検出した。cDNAが、分取したナイーブB細胞 対 記憶B細胞+プラスマB細胞の両方のセットにわたって、記憶B細胞+プラスマB細胞のcDNAに優先的にハイブリダイズする場合、クローンをポジティブと見なした。このデータは、CS1がプラスマB細胞および記憶B細胞中で優勢に発現されることを示した。
(CS1はリンパ組織で主に発現される)
ドットブロットを、Clontech(Palo Alto,California)から購入し、以下の組織から作製したpolyA+RNAから合成したcDNAから調製した:脾臓、リンパ節、骨髄、小腸、脳、肺、骨格筋、心臓、腎臓、および肝臓。ドットブロットを、製造者の推奨(Boehringer−Mannheim DIGキット)にしたがって、ジゴキシゲニン(DIG)標識CS1 DNAを使用して精査し、そして化学発光(アルカリホスファターゼ標識抗DIG抗体およびCDP−Star)によって可視化した。この結果は、CS1が主にリンパ組織(脾臓、リンパ節、骨髄、および小腸−おそらくパイエル板中の残存リンパ球による)で発現され、他の非リンパ器官(脳、肺、骨格筋、心臓、腎臓、および肝臓)では存在しないか発現が低いことを示す。
(実施例2:CS1の示差的発現)
(ヒト細胞)
末梢血単核細胞(PBMC)を、標準的なFicoll−hypaque勾配からの単離によって得た。次いで、単離したPBMCを、新鮮な培養培地に2×106細胞/mlで再懸濁した。PBMCを、3μg/mlの濃度で3日間、フィトヘムアグルチニン(PHA)によってか、または10μg/mlの濃度で8日間、アメリカヤマゴボウマイトジェン(PWM)によって刺激した。非刺激対照PBMCを、いかなる刺激も与えずに調製した。細胞を、10% FBS、ペニシリン、ストレプトマイシン、およびグルコース添加剤を含むRPMI培地において、37℃の7% CO2中で培養した。
(マウス細胞)
脾臓を、2匹のBalb/cマウスから得た。脾臓を、100ミクロンのフィルターに入れた。細胞をばらばらにし、PBSで洗浄し、1,500rpmで10分間遠心分離した。赤血球を、2mlの溶解緩衝液にて37℃で2分間溶解した。細胞を、2回洗浄し、10mlの培地に再懸濁し、そして計数した。非刺激細胞の一部を、直接凍結した。残りの細胞を、5μg/mlの濃度のcon Aで3日間か、または1μg/mlの濃度のLPSで3日間刺激した。細胞を、10%FBS、抗生物質、およびグルコース添加剤を含むDMEM培地中で培養した。
(狼瘡患者 対 年齢適合健常個体由来のBリンパ球)
B細胞を、FITC標識抗ヒトCD19抗体で細胞を染色することよって、狼瘡患者および健常な個体の末梢血単核細胞から分取した。細胞を、実施例1に記載のように、MoFLo High Performance Flow Cytometer−MLSで分取した。細胞を、RNA分析のために、滅菌培地に回収した。
(リアルタイムPCRのための全RNAの単離)
細胞を1回洗浄し、TrizolTM(Life Technologies,Gaithersburg,Maryland)に入れ、そして全RNAを、製造者のプロトコールにしたがって単離した。全RNAを、RNaseを含まないDNase(GenHunter,Nashville,Tennessee)で処理した。DNase消化RNAを、フェノール/クロロホルムで抽出し、エタノールで一晩沈殿させた。RNAを、75%エタノールで洗浄し、そしてヌクレアーゼを含まない水に溶解した。単離したRNAを定量し、そしてその完全性を、アガロースゲルで分析した。
(リアルタイムPCR)
全RNA(2μg)を、標準的なTaqman逆転写試薬(Applied Biosystems,Foster City,California)を使用することによって、100μlの反応混合物中の狼瘡患者 対 健常な個体の分取Bリンパ球から逆転写した。PCR反応を、Applied BiosystemsのSYBRグリーンPCRマスターミックスを使用して準備した。CS1プライマーを、狼瘡患者および健常個体のcDNA中でのCS1の発現レベルを試験するためにミックス中に組み込んだ。CS1プライマーを、公開された配列(Genbank登録番号XM−001635、AF390894)から設計した。β−アクチンプライマーおよび18S rRNAプライマーを、正規化の対照として使用した。Applied Biosystemsから購入した Primer Expressソフトウェアを使用してプライマーを設計した。PCR増幅産物は、CS1プライマーについては85bpであり、β−アクチンプライマーについては84bpであり、そして18S rRNAプライマーについては61bpであった。リアルタイムPCRを、推奨プロトコールを使用してApplied BiosystemsのGeneAmp 5700 SDSシステムで行った。
(新規のマウスLy9のリアルタイムPCR)
全RNA(2μg)を、標準的なTaqman逆転写試薬(Applied Biosystems)を使用して100μlの反応混合物中でconA、LPS、および非刺激サンプルから逆転写した。PCR反応を、Applied BiosystemsのSYBRグリーンPCRマスターミックスを使用して準備した。新規のマウスLy9に特異的なプライマーを、公開された配列(Genbank登録番号AF467909)から設計し、刺激cDNAサンプル 対 非刺激cDNAサンプルにおける発現レベルを試験するために、この混合物に組み込んだ。18S rRNAプライマーを、正規化のために使用した。Applied Biosystemsから購入したPrimer Expressソフトウェアを使用してプライマーを設計した。PCR増幅産物は、マウスLy9プライマーについては65bpであり、そして18S rRNAプライマーについては61bpであった。リアルタイムPCRを、推奨プロトコールを使用して、Applied BiosystemsのGeneAmp5700配列検出システムで行った。
(マイクロアレイアッセイ:サンプル調製、標識マイクロチップ、およびフィンガープリント)
活性化白血球集団および非活性化白血球集団の発現プロフィールを、遺伝子チップを使用して、決定し、かつ分析した。特注のAffymetrix GeneChip(登録商標)オリゴヌクレオチドマイクロアレイは、約35,000個の固有のmRNA転写物の調査を可能にする。
RNAを、記載されるように、単離し、そして遺伝子チップ分析を行った(Henshallら、(2003)、Cancer Research 63:4196−4203;Henshallら、(2003)、Oncogene 22:6005−12;Glynneら、(2000)、Nature 403:672−676;Zhaoら、(2000)、Genes Dev.14:981−993(その全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。
・QiagenのRNEASY(登録商標)(全RNAからのポリA+ mRNAの精製)キットでの全RNAからのポリA+ mRNAの精製または全RNAの浄化
oligotex懸濁液を37℃に加熱し、そしてRNAに添加する直前に混合した。溶出緩衝液を、70℃でインキュベートした。緩衝液中に沈殿が存在する場合、2×結合緩衝液を、65℃に温め得ることに留意のこと。全RNAを、Oligotex Handbookの16ページの表2にしたがって、DEPC処理水、2×結合緩衝液、およびOligotexと混合した。この混合物を、65℃で3分間インキュベートし、その後室温で10分間インキュベートした。
チューブを、14,000g〜18,000gで2分間遠心分離した。遠心分離機が「穏やかな設定」を有する場合、これを使用すべきであることに留意のこと。上清を、Oligotexペレットを破壊することなく除去した。少量の溶液を、Oligotexの喪失を減少させるためにのこし得る。上清を、一定の満足な結合およびポリA+ mRNAの溶出が起きたことを確信するまで、保持するべきである。
ペレットを洗浄緩衝液OW2に穏やかに再懸濁し、スピンカラム上にピペッティングする。スピンカラムを、最大速度(可能な場合、穏やかな設定)で1分間遠心分離した。遠心分離後、スピンカラムを、新規の回収チューブに移し、洗浄緩衝液OW2に穏やかに再懸濁し、本明細書中にされるように再び遠心分離した。
スピンカラムを新規のチューブに移し、20〜100μlの予め加熱(70℃)した溶出緩衝液で溶出した。Oligotex樹脂を、上下にピペッティングすることによって穏やかに再懸濁し、次いで上記のように遠心分離した。溶出手順を、新鮮な溶出緩衝液を使用して繰り返した。その他に、溶出容量を小さくする必要がある場合、第1の溶出のみを使用し得る。
吸光度を、ブランクとして希釈した溶出緩衝液を使用して読み取った。
・エタノール沈殿
cDNA合成を進行させる前に、mRNAを沈殿させた。いくつかの残存成分またはOligotex精製手順からの溶出緩衝液は、mRNAの下流の酵素反応を阻害する。
0.4倍容量の7.5M NH4OAc+2.5倍容量の冷100%エタノールを溶出物に添加した。この溶液を、−20℃で1時間から一晩(または−70℃で20〜30分間)沈殿させた。沈殿溶液を、14,000〜16,000×gにて4℃で30分間遠心分離した。ペレットを、0.5mlの80%エタノール(−20℃)で洗浄し、次いで14,000〜16,000×gにて室温で5分間遠心分離した。80%エタノール洗浄を、1回繰り返した。ペレットを、フード(hood)で乾燥させた。(急激に吸引しないこと)。ペレットを、1μg/μlの濃度のDEPC H2Oに懸濁した。
・QiagenのRNeasyキットを使用して全RNAを浄化する工程
100μgを超えないRNAを、RNeasyカラムに添加すればよい。サンプル容量を、RNaseを含まない水で100μlに調整し、350μlの緩衝液RLTを、サンプルに添加し、次いで250μlのエタノール(100%)をサンプルに添加した。溶液を、ピペッティング(遠心分離しないこと)によって混合し、次いでサンプルを、RNeasyミニスピンカラムに付与した。ミニスピンカラムを、10,000rpm超で15秒間遠心分離した。収率について問題ある場合、流出物(flowthrough)は、再度カラムに適用され得、そして再度遠心分離され得る。
カラムを、新規の2ml回収チューブに移し、500μlの緩衝液RPEを添加し、そして10,000rpm超で15秒間遠心分離した。流出物を破棄した。500μlの緩衝液RPEをミニスピンカラムに再度添加し、10,000rpm超で15秒間遠心分離した。流出物を再度破棄し、最大速度で2分間遠心分離して、カラムの膜を乾燥させた。このカラムを、新規の1.5ml回収チューブに移し、30〜50μlのRNaseを含まない水をカラムの膜に直接適用した。カラムを、10,000rpm超で1分間遠心分離し、溶出を繰り返した。
吸光度の読み取りを、行った。必要に応じて、溶出液を、酢酸アンモニウムおよび2.5倍容量の100%エタノールで沈殿させてもよい。
(Gibcoの「SUPERSCRIPT(登録商標)Choice System for cDNA Synthesis」キットを使用してcDNAを作製する工程)
・第1のcDNA鎖の合成
5μgの全RNAまたは1μgのポリA+ mRNAを、出発物質として使用した。全RNAのために、2μlのSUPERSCRIPT(登録商標)RT(cDNA合成のために逆転写酵素を使用するキット)を使用した(ポリA+ mRNAのために1μlのSUPERSCRIPT(登録商標)RTを使用する)。第1の鎖の合成混合物の最終容量は、20μlであるべきである。RNAの容量は、10μlを超えない容量でなければならない。RNAを、1μlの100pmol T7−T24オリゴと70℃で10分間インキュベートした。氷上で、7μlの(4μlの5×第1の鎖の緩衝液、2μlの0.1M DTT、および1μlの10mM dNTP)混合物を添加した。混合物を、37℃で2分間インキュベートし、次いでSUPERSCRIPT(登録商標)RTを添加した。
混合物を、37℃で1時間インキュベートした。
・第2の鎖の合成
第1の鎖の反応物を氷上においた。
混合物に、以下を添加した:
91μlのDEPC H2O
30μlの5×第2の鎖の緩衝液
3μlの10mM dNTP混合物
1μlの10U/μl E.coli DNAリガーゼ
4μlの10U/μl E.coli DNAポリメラーゼ
1μlの2U/μl RNase H
2つを超えるサンプルが存在する場合、上記を混合物にすべきである。添加した混合物を、16℃で2時間インキュベートした。
2μlのT4 DNAポリメラーゼを添加し、16℃で5分間さらにインキュベートした。10μlの0.5M EDTAを添加して、反応を停止した。
・cDNAの浄化
ゲルチューブ中でのフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)精製を使用して、cDNAを浄化した。
PLG(フェーズロックゲル)チューブを、最大速度で30秒間遠心分離し、新規のPLGチューブに移した。同容量のフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコールを添加し、激しく振盪した(ボルテックスしないこと)。チューブを最大速度で5分間遠心分離した。上部の水相の溶液を、新規のチューブに移した。水溶液を、7.5倍容量の5MのNH4Oacおよび2.5倍容量の100%エタノールの添加によってエタノール沈殿を行った。直ちに、このチューブを、最大速度にて室温で20分間遠心分離した。この上清を除去し、ペレットを80%冷エタノールで2回洗浄した。できる限りエタノールを除去し、次いでペレットを風乾させた。このペレットを、3μlのRNaseを含まない水に再懸濁した。
・インビトロ転写(IVT)およびビオチンによる標識
1.5μlのcDNAを、薄壁PCRチューブにピペッティングした。NTP標識混合物を、室温でPCRチューブに添加した。
NTP標識混合物:
2μlのT7 10×ATP(75mM)(Ambion)
2μlのT7 10×GTP(75mM)(Ambion)
1.5μlのT7 10×CTP(75mM)(Ambion)
1.5μlのT7 10×UTP(75mM)(Ambion)
3.75μlの10mM Bio−11−CTP
0.75μlの10mM Bio−16−UTP
2μlの10×T7転写緩衝液(Ambion)
2μlの10×T7酵素混合物(Ambion)
全反応の最終容量は、20μlであった。チューブを、PCR機器中で、37℃で6時間インキュベートした。
(IVT産物のRNeasy浄化)
手順については上記を参照のこと。
標識cRNAを、エタノール沈殿させ、断片化ステップに適合する容量に再懸濁した。
・断片化
約15μgの標識RNAを、以下の技術を使用して断片化した。断片化反応容量を、ハイブリダイゼーション形成緩衝液によってマグネシウムが沈殿する問題に起因して、約10μlの容量に最小化するが、20μlを超えないようにした。
このRNAを、1×断片化緩衝液中での94℃で35分間のインキュベーションによって断片化した。
5×断片化緩衝液:
200mMのTris−酢酸(pH8.1)
500mMのKOAc
150mMのMgOAc
標識RNA転写物を、断片化の前後に分析した。サンプルを、65℃で15分間加熱し、転写物のサイズ範囲の適切な見解を得るために1%アガロース/TBEゲルで電気泳動を行った。
・マイクロチップアレイ
全ての実験で使用したEOS HuO3マイクロチップアレイは、ヒトゲノムの第1のドラフトに基づいた既知のエクソンおよびFGENESH推定のエクソンの両方を含む46,000個の固有の配列を示す59,680個のプローブセットを備える、特別に生産されたAffymetric GENECHIP(登録商標)オリゴヌクレオチドアレイである。Hu03プローブセットは、完全に一致するプローブのみからなり、ほとんどのプローブセットは6〜7個のプローブを有する。
・マイクロチップアレイ上のハイブリダイゼーション
200μl(10μgのcRNA)のハイブリダイゼーション混合物を、チップ上にピペッティングした。複数のハイブリダイゼーションが行われる場合(5チップセットによる循環など)、300μlまたはそれ以上の最初のハイブリダイゼーション混合物を作製することが勧められる。
ハイブリダイゼーション混合物:断片化標識RNA(最終濃度50ng/μl)
50pMの948−b対照オリゴ
1.5pMのBioB
5pMのBioC
25pMのBioD
100pMのCRE
0.lmg/mlのニシン精子DNA
0.5mg/mlのアセチル化BSA
上記を1×MESハイブリダイゼーション緩衝液で300μlにする。
フィコエリトリンと結合体化したストレプトアビジンを使用して、ハイブリダイゼーションのシグナルを可視化した。
・遺伝子発現データの正規化
遺伝子発現データを、所望のγ分布に実験による強度の経験累積分布をマッピングするための逆γ関数を使用して、固定γ分布に対する各アレイからのプローブレベル強度のデータをフィットさせることによって正規化した。この手順は、1つまたは2つのパラメータよりもむしろ強度の全分布を固定するという点で、よりストリンジェントであること以外は、他のチップあたりの正規化手順(例えば、標準値へ各チップの平均およびSDを固定する工程)に類似する。チップあたりの正規化の目的は、非生物学的因子(すなわち、技術上のノイズ)に起因するという想定の下にチップ間の変動を除去することである。分布についての尺度母数を選択して、任意の平均値300を有する分布を入手し、そして0.81の形状パラメータを選択して、良好なサンプル中で認められる経験的な分布の代表的な形状を再現した。
平均強度の1つの基準を、構成プローブの強度のTukeyの3項平均を使用して各プローブセットについて計算した。3項平均は、外れ値の影響に耐える中心傾向の基準である。最後に、バックグラウンドを、それぞれの平均強度基準に適用して、非特異的ハイブリダイゼーションを補正した。乱雑な配列を含む491個のプローブセットからなる「ヌル」プローブセットの平均強度基準を、チップ上の他のプローブセット全てから差し引いた。
本明細書中で使用した製品についての解説書は、その全体が本明細書中に援用される。
(本明細書中に提供される標識化プロトコール)
ハイブリダイゼーション反応:
非ビオチン化IVT(RNeasyカラムで精製された)から開始する(組織からIVTへの工程については実施例1を参照のこと)
IVTアンチセンスRNA;4μg: μl
ランダムヘキサマー(1μg/μl):4μl
H2O: μl
全容量:14μl
−70℃で10分間インキュベートする。氷上に置く。
逆転写:
5×第1の鎖の緩衝液(BRL):6μl
0.1M DTT:3μl
50×dNTP混合物:0.6μl
H2O:2.4μl
Cy3 dUTPまたはCy5 dUTP(1mM):3μl
SS RT II(BRL):1μl
全容量:16μl
−ハイブリダイゼーション反応物に添加する
−30分間、42℃でインキュベートする
−1μlのSSIIを添加し、さらに1時間静置する
氷上に置く
−50×dNTP混合物(25mMの冷dATP、dCTP、およびdGTP、10mMのdTTP:それぞれ25μlの100mMのdATP、dCTP、およびdGTP;10μlの100mM dTTP、15μlのH2Oに対して)
RNA分解:
−1.5μlの1M NaOH/2mM EDTAを添加し、65℃で10分間インキュベートする
H2O 86μl
10NのNaOH 10μl
50mMのEDTA 4μl
U−Con30
1サンプルあたり500μlのTEを7000gで10分間スピンし、精製のために流出物を保存する。
Qiagen精製:
−u−con回収物質を500μlの緩衝液PBに懸濁する
−w/ノーマルQiagenプロトコールを進める
DNAse消化:
−1μlの100倍希釈のDNAse/30μlのRxを添加し、そして37℃で15分間インキュベートする
−5分間、95℃で酵素を変性させる
サンプル調製:
−以下を添加する:
Cot−1 DNA:10μl
50×dNTPs:1μl
20×SSC:2.3μl
ピロリン酸ナトリウム:7.5μl
10mg/mlニシン精子DNA(1μlの10倍希釈物)
最終容量:21.8μl
−speed vacで乾燥させる
−15μlH2Oに再懸濁する
−0.38μlの10% SDSを添加する
−2分間、95℃で加熱する
−室温で20分間、徐々に冷却する
スライドに置き、64℃で一晩ハイブリダイズさせる。
ハイブリダイゼーション後の洗浄工程:
3×SSC/0.03% SDS:37.5mlの20×SSC+0.75mlの10% SDSを含む250mlのH2Oで2分間
1×SSC:12.5mlの20×SSCを含む250mlのH2Oで5分間
0.2×SSC:2.5mlの20×SSCを含む250mlのH2Oで5分間
スライドを、1000RPMで1分間の遠心分離で乾燥させる
適切な光電子増倍管設定および蛍光チャネルでスキャンする。
(CS1は白血球中で過剰発現するが、種々の型の非リンパ組織では過剰発現しない)
CS1の発現プロフィールを評価するために、白血球および他の組織から単離したmRNAを、リアルタイムPCRによって分析した。この結果は、mRNA発現レベルがほとんどの他の正常な成体組織のmRNA発現レベルよりも白血球においてずっと高いことを示す。ベースラインのレベルを上回るCS1発現を示さない他の正常な成体組織には、脂肪、副腎、大動脈、大動脈弁、虫垂、冠状動脈、膀胱、骨、骨髄、乳房、気管支、子宮頸部、脳、脊髄、横隔膜、子宮内膜、精巣上体、食道、胆嚢、神経節、心臓、喉頭、唇、肝臓、肺、筋肉、子宮筋層、迷走神経、網、口腔粘膜、卵巣、膵臓、副甲状腺、咽頭粘膜、胎盤、前立腺、網膜、唾液線、皮膚、胃、滑膜、精巣、胸腺、甲状腺、舌、気管、臍帯、尿管、子宮、膣、または静脈が含まれていた。CS1 mRNAは、結腸(2/11)、腎臓(1/20)、小腸(1/3)、脾臓、および扁桃腺(2/4)の選択されたサンプル中で発現した。この結果は、CS1は白血球で主に発現され、自己免疫疾患の良好な標的であることを示した。
(CS1発現は複数の活性化白血球集団で増加する)
CS1発現と白血球の活性化との間の相関を評価するために、CS1 mRNA発現を、複数の活性化白血球集団および複数の非活性化白血球集団において分析した。この結果は、対応する非活性化対照集団と比較して、活性化B細胞、成熟DC細胞、活性化CD3細胞(低レベルから中程度の増加)、活性化CD4細胞(低レベルの増加)、および活性化CD8細胞(ドナーに依存して、低レベルから中程度の増加)でCS1発現が増加したことを示す。これらの結果は、CS1の過剰発現が数種の白血球サブセットの活性化と相関することを示した。
(実施例3:CS1に対するモノクローナル抗体の生成のための抗原の産生)
(クローニング)
ヒトCS1の細胞外ドメイン(ECD)を、CS1の細胞外ドメイン(CS1 ECD)に隣接するプライマーを使用して、Raji細胞から単離した。PCR産物をゲル精製し、そしてIgG3の定常領域(ヒトFc−γ3)をコードするベクターにライゲーションした。CS1 ECD−Fcγ3を含むプラスミドを大量に精製し、そしてDNA配列決定によって確認した。
(CS1 ECD−Fcγ3の安定なトランスフェクション)
50μgのCS1 ECD−Fcγ3プラスミドを、Fsp1酵素で線状化し、そしてこのDNAを、エタノール中で沈殿させ、洗浄し、そして500μlの滅菌PBSに再懸濁した。NSO細胞を冷PBSで2回洗浄し、1mlのPBSあたり2×107個の細胞を再懸濁した。1×107個の細胞の量を、トランスフェクションに使用した。
500μlのNSO細胞を、500μlのPBS中のDNAと合わせた。細胞を、BioRad Gene pulerによって1.5Vかつ3μFにてエレクトロポレーションに供した。細胞を100mlのDMEM完全培地に添加し、そして10個の96ウェルプレートにプレートした。1μg/mlのミコフェノール酸選択培地を、トランスフェクションから24時間後に添加した。ポジティブトランスフェクト体を、10日後にスクリーニングし、48ウェルプレートおよび24ウェルプレート中に増やした。ポジティブトランスフェクト体を再度スクリーニングし、そして高産生のものをタンパク質精製のために増やした。
(CS1 ECD−Fcγ3タンパク質の精製)
CS1−ECDFcγ3融合タンパク質を発現する安定なトランスフェクト体を、グルコース添加剤を含む600mlのDMEM完全培地中で5日間増やした。融合タンパク質を、プロテインG Sepharoseカラムで精製し、そして1×PBSに対して透析した。CS1 ECD−Fcγ3の還元形態および非還元形態を、Coomassieによって分析した。CS1 ECD Fcγ3をまた、抗HuIgGを使用するウェスタンブロットによって分析し、そしてN末端配列決定によって確認した。精製CS1−Fc−γ3融合タンパク質を使用して、マウスを免疫した。
(CS1 ECD−myc−GPI融合タンパク質の産生)
CS1の細胞外ドメイン(ECD)を、CS1の細胞外ドメインに隣接するプライマーを使用して、Raji細胞から単離した。PCR産物をゲル精製し、そして細胞表面発現のためのmycタグおよびグリコシルホスファチジルイノシトール連結を発現するベクター(myc−GPIベクター)中にライゲーションした。CS1 ECD−myc−GPIを含むプラスミドを大量に精製し、そしてDNA配列決定によって確認した。
(CS1 ECD−myc−GPIの安定なトランスフェクション)
50μgのCS1 ECD−myc−GPIプラスミドを、Fsp1酵素で線状化し、そしてこのDNAをエタノール中に沈殿させ、洗浄し、そして500μlの滅菌PBSに再懸濁した。NSO細胞を、冷PBSで2回洗浄し、1mlのPBSあたり2×108個を再懸濁した。1×108個の細胞の量を、トランスフェクションに使用した。
500μlのNSO細胞を、500μlのPBS中のDNAと合わせた。細胞を、BioRad Gene pulerによって1.5Vかつ3μFにてエレクトロポレーションに供した。細胞を、1μg/mlのミコフェノール酸選択培地と共に5% CO2中にて37℃で増殖させ、その後96ウェルプレートにサブクローニングした。ポジティブトランスフェクト体を、抗myc抗体でスクリーニングした。高産生のCS1 ECD−myc−GPIトランスフェクト体を選択し、そしてインビトロアッセイのために増やした。
(実施例3:抗CS1モノクローナル抗体の産生)
(ヒトCS1の免疫原)
精製した組換えヒトCS1 ECD−γ3融合タンパク質を使用して、足蹠を介してBalb/cマウスを免疫した(CS1 ECDとは、上記されるCS1の細胞外ドメインをいう)。簡単に述べれば、マウスを、後足蹠において、全容量が25μlの10μgのタンパク質と同量のRibiアジュバントとで免疫した。足蹠における免疫を、4〜5日間隔で4回行った。
(a.細胞融合)
CS1−ECD−γ3で免疫した2匹のマウスを屠殺した。膝窩大腿および仙骨のリンパ節を、マウスから取り出した。リンパ球をこの組織から単離し、そしてハイブリドーマを、標準的な手順によって作製した。簡単に述べれば、ハイブリドーマを、リンパ球とマウス骨髄腫細胞株(NSO細胞)との間のポリエチレングリコール(PEG)1500媒介性の融合によって作製した。融合細胞を、1プレートあたり107個の細胞の密度で96ウェルプレートにプレートした。融合細胞の選択を、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)培地を使用して行った。
(b.ハイブリドーマのスクリーニング)
ハイブリドーマによって分泌された抗体の特異性を、フローサイトメトリー(FACS)ベースのCS1発現細胞への結合アッセイによって決定した。FACSアッセイを、標準的なプロトコールを使用して行った。表面CS1細胞外ドメインを発現するNSOの安定なトランスフェクト体(2×105個)を、50μlのハイブリドーマ培養上清を含む50μlの氷冷PBSに氷上で1時間再懸濁した。強い洗浄後、細胞を、フィコエリトリンと結合体化したヤギ抗マウスIgG特異的抗体と氷上で1時間インキュベートした。細胞を再び洗浄し、そして細胞表面結合抗体を、Becton Dickinson FACScanを使用するFACSによって検出した。表1に示すように、抗体(Luc2、Luc3、Lucl5、Luc20、Luc22、Luc23、Luc29、Luc32、Luc34、Luc35、Luc37、Luc38、Luc39、Luc56、Luc60、Luc63、またはLuc90)は、CS1でトランスフェクトしたNSO−CS1細胞に強く結合したが、NSO−FcRnに結合しなかった。抗ヒトCS1抗体は、K562細胞およびDaudi細胞(ネイティブなCS1を発現することが公知である)に結合したが、陰性対照であるJurkat細胞に結合しなかった。これらのデータは、産生された抗CS1抗体がCS1と特異的に結合し得ることを示す。CS1−γ3融合タンパク質へのLuc抗体の結合 対 陰性対照であるAR−G3(γ3融合タンパク質)へのLuc抗体の結合についてのアッセイ(ELISAによる)からの結果もまた、表に示した。Luc抗体は、CS1−γ3に特異的に結合し、そして陰性対照であるAR−γ3融合タンパク質に結合しなかった。
(産生した抗CS1モノクローナル抗体のアミノ酸配列)
抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を、標準的な技術を使用してクローニングした。簡単に述べれば、1×10
6個〜5×10
6個の細胞由来の全RNAを使用し、SMART RACE cDNA増幅キット(BD Biosciences Clontech)を使用してcDNAを調製し、そして可変領域を、マウス重鎖定常領域およびマウス軽鎖定常領域に相補的な遺伝子特異的プライマーを使用してPCRで増幅した。
抗体Luc90、Luc63、およびLuc34の成熟重鎖ならびに成熟軽鎖のアミノ酸配列を、表4に示す。表4は、以下を提供する:Luc90の重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号3)および軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号4);Luc63の重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号5)および軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号6);ならびにLuc34の重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号7)および軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号8)。配列番号9、配列番号10および配列番号11は、それぞれ、Luc90重鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列を示す。配列番号12、配列番号13および配列番号14は、それぞれ、Luc90軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列を示す。配列番号15、配列番号16および配列番号17は、それぞれ、Luc63重鎖のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列を示す。配列番号18、配列番号19および配列番号20は、それぞれ、Luc63軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列を示す。配列番号21、配列番号22および配列番号23は、それぞれ、Luc34重鎖のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列を示す。配列番号24、配列番号25および配列番号26は、それぞれ、Luc34軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列を示す。
(表4:CS1抗体のアミノ酸配列)
(実施例4:CS1抗体の特徴付け)
フローサイトメトリー競合アッセイを使用して、15の異なる抗CS1モノクローナル抗体のエピトープ特異性を決定した。表面CS1を発現するNSOの安定なトランスフェクト体(2×10
5個)を、50μlの抗CS1抗体(Luc23、Luc29、Luc34、Luc35、Luc37、Luc38、Luc63、およびLuc90の対合組み合わせ(pairwise combination)を含む)と共に氷上で1時間インキュベートした。並行して、アイソタイプの対照抗体(AIP−13)を、陰性対照として使用した。ビオチン化抗CS1モノクローナル抗体(Luc23、Luc34、Luc37、Luc38、Luc63、およびLuc90)を、1μg/mlにて細胞/抗体混合物と一緒に氷上でさらに30分間インキュベートした。強い洗浄後、細胞を、フィコエリトリンと結合体化したストレプトアビジンと一緒に氷上で1時間インキュベートした。細胞を洗浄し、そして細胞表面結合ビオチン化抗体を、Becton Dickinson FACScanを使用したFACSによって検出した。
非標識抗体(Luc23、Luc34、Luc37、Luc38、Luc63、およびLuc90)を、互いに15μg/ml、3μg/ml、および0.6μg/mlの濃度で競合する能力について試験し、そして競合抗体または遮断抗体を、1μg/mlで添加した。AIP−13を、陰性対照として使用した。なぜならば、AIP−13は、CS1と結合せず、そしていかなるLuc抗体とも競合しないからである。MFIの顕著な減少は、対照抗体のMFIと比較して、Mab 対 非標識抗CS1 Mabに基づき、ビオチン化抗CS1による細胞表面CS1に対する少なくとも50%の競合を示した。
この競合アッセイは、いくつかのLuc抗体が別のエピトープに接触することを示した。Luc38は、Luc37、23、90、および63のエピトープとは異なったエピトープに接触する。Luc63は、Luc37、23、90、および38のエピトープとは別の異なった重複しないエピトープに接触する。Luc90は、Luc37、23、63、および38のエピトープとは別の異なった重複しないエピトープに接触する。Luc23は、Luc90、63、および38のエピトープとは異なった別の重複しないエピトープに接触する。Luc37は、Luc90、63、および38によって接触されるエピトープとは異なった、さらに別の重複しないエピトープに接触する。Luc63は、Luc34と重複するエピトープに接触し、一方、Luc90は、Luc34と重複するエピトープに接触する。Luc37は、Luc23のエピトープと重複するエピトープに接触する。Luc34は、すべてのLuc抗体の結合を遮断するか、顕著に低下させて、広範な露出されたエピトープに接触し得るか、または、CS1に対して高い親和性を有するかのいずれかである。Luc37、Luc23、およびLuc38は、Luc34抗体によるCS1への結合を遮断しない。Luc37、Luc23、およびLuc38に対するエピトープをCS1の二次構造の中に「埋め込む」ことができるか、または、CS1に対する親和性を、Luc34抗体の親和性よりも低くすることができる。
3つのモノクローナル抗体の相対的親和性をまた、Biacore分析によって試験した。ヒトCS1−Fc融合タンパク質と抗ヒトCS1モノクローナルマウス抗体Luc34.1、Luc63.2、およびLuc90H1との間のSPRKinetics測定によるCS1 MAbの動態解析を、BIAcore2000(BIAcore,Sweden)を使用して行った。再生条件を、異なるフローセルに10000RUを超える各抗体を固定し、そしてその表面上へCS1−Fcを注入し、次いで最良の緩衝液が各抗体からのCS1−Fcのクリアランスを最適化することが見出されるまで、一連の異なる緩衝液を試験することによって確立した。10mMグリシン(pH2.0)の緩衝液は、最適な再生緩衝液であることが見出され、そして直ちに10サイクルのCS1−Fc注入および緩衝液再生に対してその再現性を試験した。この緩衝液は、抗体表面の再現可能性(reproducibly)を再生するのに適切であることが見出された。したがって、10mMグリシン(pH2.0)を、CS1−Fcおよび抗体BIAcore実験のための再生緩衝液に指定した。
自家産生CS1抗体を、BIAcoreアミンカップリング試薬(N−エチル−N’−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド、EDC;N−ヒドロキシスクシンイミド、NHS;および塩酸エタノールアミン(pH8.5))によって99.4RU〜133.7RUの範囲の低反応単位(RU)で研究用グレードのCM5センサーチップに固定した。アッセイを、室温で流速30μl/分にて行った。3分間のCS1−Fcの会合段階の後に、各結合サイクルの解離をモニタリングするために、1サイクルごとに異なるCS1−Fc濃度のランニング緩衝液(10mM Hepes、300mM塩化ナトリウム、3mM EDTA、0.05% P−20(pH7.4))を10分間注入した。再生表面を、10mMグリシン(pH2.0)を使用して再生させた。各CS−Fcと抗体対との結合速度を、BIAevaluateプログラムを使用して、12種の異なる濃度(1024nM、512nM、256nM、128nM、64nM、32nM、16nM、8nM、4nM、2nM、1nM、0.5nM)のCS1−Fcから2連で収集したセンサーグラム(senorgram)データの大域分析から計算した。二重参照(double referencing)を各分析に適用して、基準表面および緩衝液のみの対照によるバックグラウンド応答を排除した。結合親和性(KD)を、BIAevaluateソフトウェアによる二価分析物モデルを使用して、一連の分析物濃度から得たセンサーグラムの会合段階および解離段階を同時にフィットさせることによって得た。実験を3回行って、データの標準偏差を調べた。
Luc90.H1、Luc63.2、およびLuc34.1の結合親和性が以下に要約されている。Luc90.H1は、これら3つの抗体の中で最も高い親和性を有する。Luc90.H1の結合親和性はLuc63.2より5.5倍高く、Luc34.1より28倍高い。
(抗CS1抗体による免疫組織学的染色)
CS1で形質転換された細胞も、抗CS1抗体による免疫組織学的染色について調べられた。10μg/mlの量の抗CS1モノクローナル一次抗体を、CS1でトランスフェクションされた細胞に添加した。そして、細胞を血清でブロックし、ビオチン−抗マウスIgと一緒にインキュベートした。次に、アビジン−ペルオキシダーゼを細胞と混合して、AEC(標準的なペルオキシダーゼ試薬)で発色させた。AECの赤色で陽性染色を示す一方、被検細胞の核をヘマトキシリン(青)で対比染色した。これらのデータによって、CS1でトランスフェクションされた細胞が、抗CS1抗体であるLuc23、Luc38、およびLuc63により陽性に染色されることが示され、産生された抗CS1抗体が、細胞表面上に発現したCS1と結合できることが示された。したがって、抗CS1抗体は、溶液中での末梢血液細胞表面における発現の検出だけでなく、一般的には組織切片(例えば、患者のリンパ節または組織生検)を解析するのに用いられる免疫組織化学検査法(IHC)による検出において利用するのにも適している。
炎症を起こした扁桃腺の免疫組織学的染色が、2つの抗CS1抗体、Luc90およびLuc63を用いて例示された。CD138による染色によって、形質細胞および上皮細胞が染色される。染色の重複パターンから、CS1抗体が炎症を起こした扁桃腺の形質細胞を染色することは明らかである。
慢性関節リウマチ患者の関節から採取された滑膜組織の免疫組織学的染色が、抗CS1Luc63を用いて実証された。CD138による染色から分かるように、形質細胞は滑膜に浸透した。染色の重複パターンから、抗CS1抗体が、慢性関節リウマチ患者の関節の形質細胞を染色することは明らかである。
これらの結果は、CS1を発現する形質細胞が、炎症を起こした扁桃腺、およびリウマチ性関節炎患者の関節にも存在したことを示しており、抗CS1抗体を、これらの病気の処置に実際に使用できることを示唆している。
(CS1タンパク質の発現パターン)
産生されたLuc抗体を用い、FACS解析によって、CS1タンパク質の発現をさらに調べた。標準的なフィコール・ハイパーク勾配遠心(Ficoll Hypaque gradient centrifugation)法によって、健康な個体および狼瘡患者からPBMCを単離した。標準的な手順に従って示されたように、PBMCを抗体で染色した。PBMCをヤマゴボウマイトジェン(PWM)で活性化させるために、PWMを1:100の希釈率でPBMCに添加し、その後7%のCO2中に37℃で8日間置いた。PWMで刺激された細胞を回収し、抗体染色の前に洗浄した。本明細書で用いられたマウス抗CS1抗体はLuc90(IgG2b)、Luc63、Luc38、およびその他の産生された抗CS1のLuc抗体である。アイソタイプ対照抗体は、アイソタイプ適合マウスIgG抗体であった。
これらの結果によって、CS1が、活性化B細胞、CD8+T細胞(活性化およびナイーブとも)、NK細胞(CD3−CD56+)、NKT細胞(CD56+CD3+)、CD14+/lo白血球(単球および/またはマクロファージ)、およびCD4+T細胞(インビトロ活性化細胞上では低レベル)で陽性に発現することが示された。CS1は、健康な成人および狼瘡患者に由来する、これらの細胞集団で発現した。健康な成人から採取された非活性化CD4+T細胞、血小板、HuVEC、腎臓細胞、気管支気道細胞、小気道細胞、前立腺細胞、肝細胞、および胸部細胞では、CS1タンパク質の有意な発現が検出されなかった。
活性化B細胞の染色は、PWMによって活性化されたPBMCの染色によって示されるが、非活性PBMCのアイソタイプ対照染色は、バックグラウンドの蛍光として示された。理想的に治療抗体が主に標的細胞に結合し、他の細胞および組織、特に血小板には結合しないので、CS1の発現パターンは有意である。データは、抗CS1抗体が治療抗体の適当な候補であることを示唆している。
(実施例5:CS1抗体のヒト化)
本実施例では、マウス抗CS1モノクローナル抗体Luc63(MuLuc63)のヒト化について説明する。MuLuc63のヒト化は、実質的にQueen、C.らの手順(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:10029−10033(1989))に従って行われた。まず、MuLuc63のVHおよびVLのアミノ酸配列それぞれに相同性が高いヒトのVHおよびVLのセグメントを同定した。次に、CDR配列を、CDRの構造を維持するのに重要なフレームワークのアミノ酸とともに、選択されたヒトのフレームワーク配列の中に移植した。得られたヒト化モノクローナル抗体(HuLuc63)をマウス骨髄腫細胞株NS0の中で発現させた。ヒト化HuLuc63抗体は、ELISAアッセイにおいて、同じアッセイでMuLuc63について測定されたEC50値66.1ng/mlと同様なEC50値70.1ng/mlで組換えヒトCS1に結合し、HuLuc63がヒトCS1に対する高い結合親和性を保持していることを示した。
(MuLuc63可変領域cDNAのクローニングおよび配列決定)
TRIzol試薬(Life Technologies,Inc.,Rockville,MD)を用いて、MuLuc63を産生する約5×107個のハイブリドーマ細胞から全RNAを抽出した。供給業者のプロトコールに従って、SMART RACE cDNA増幅キット(BD Biosciences Clontech,Palo Alto,CA)を用いて2本鎖cDNAを合成した。重鎖および軽鎖に対する可変領域cDNAを、マウスγ鎖およびκ鎖のC領域のそれぞれにアニールする3’プライマー、およびSMART RACE cDNA増幅キットに提供されていた5’ユニバーサルプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)によって増幅した。VHのPCRでは、3’プライマーは5’−AGCTGGGAAGGTGTGCACAC−3’という配列である。VLのPCRでは、3’プライマーは5’−TTCACTGCCATCAATCTTCC−3’という配列である。配列決定を行うために、VHおよびVLのcDNAをpCR4Blunt−TOPOベクター(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)にサブクローニングした。DNAの配列決定は、製造業者の指示に従い、蛍光ジデオキシ鎖のターミネーター(Applied Biosystems,Foster City,CA)を用いるPCRサイクル配列決定反応によって行われた。
4つのプラスミドクローンが、重鎖および軽鎖それぞれについて配列決定された。典型的なマウス重鎖および軽鎖の可変領域と相同性がある独自の配列を同定した。このcDNA配列を、MuLuc63の重鎖および軽鎖のV領域の推定アミノ酸配列とともに表5および表6に示す。
表5は、それぞれのシグナルペプチド配列(配列番号29および34)を含む、Luc63の重鎖可変領域(配列番号27)および軽鎖可変領域(配列番号28)を提供する。配列番号30〜32および35〜37は、それぞれ重鎖および軽鎖の可変領域のCDRを示している。配列番号33は、Luc63の重鎖可変領域のCDR2におけるNYTからNYA(イタリック体)への単一のアミノ酸変異を示している。
表6は、マウスLuc63の重鎖可変領域(配列番号38)、ヒト重鎖可変領域のフレームワーク配列(配列番号39)、ヒトJH1cDNA(配列番号40)、およびヒト化Luc63重鎖可変領域(配列番号41)を提示する。また、マウス軽鎖可変領域(配列番号42)、ヒト軽鎖可変領域のフレームワーク(配列番号43)およびヒト化Luc63軽鎖可変領域(配列番号44)も提示される。
(HuLuc63のV領域の設計)
抗体V領域のヒト化は、Queen,C.ら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:10029−10033(1989))によって概説されているように行われた。まず、MuLuc63の可変領域の分子モデルを、コンピュータープログラムABMODおよびENCAD(Levitt,M.,J.Mol.Biol.168:595−620(1983))を用いて構築した。次に、ヒト抗体cDNA配列に対するホモロジー検索に基づいて、ヒトVH配列E55 3−14(Cuisinierら,Eur.J.Imm.23:110−118(1993))およびJセグメントJH1(Ravetch,J.V.ら、Cell 27: 583−591(1981))を選択して、HuLuc63の重鎖可変領域のフレームワークを提示した。HuLuc63の軽鎖可変領域については、cDNAのVL配列III−2R(Manheimer−Loryら,J.Exp.Med.174:1639−1652(1991))が用いられた。MuLuc63のVHとアクセプターのヒトフレームワークとの間のフレームワークアミノ酸の同一性は81.6%(71/87)であったが、MuLuc63VLとアクセプターのヒトフレームワークとの間の同一性は76.3%(61/80)であった。MuLuc63、HuLuc63、およびVHおよびVLに対するヒトアクセプターのアミノ酸配列のアラインメントは、それぞれ表7および表8に示されている。表7は、VH領域のアミノ酸配列のアラインメントを示している。MuLuc63およびHuLuc63のVH領域のアミノ酸配列(それぞれ配列番号45および47)、ならびにヒトE55 3−14およびJH1セグメント(配列番号46)が1文字コードで示されている。CDR配列は、カバット(Kabat)(Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th ed.,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991))の定義の基づいており、MuLuc63のVH配列中に下線で示されている。ナンバリングもKabatに従っている。ヒトのVHセグメント中のCDR配列は、図では省かれている。HuLuc63のVH配列中に一本線の下線を施したアミノ酸は、CDR配列と接触すると推定されていたため、対応するマウス残基と置換した。N結合型グリコシル化部位(NYT)の可能性がある部位を除去するためにCDR2中に作出したトレオニン(T)のアラニン(A)への変異は、2重下線で示されている。表8は、VL領域のアミノ酸配列のアラインメントを示している。MuLuc63およびHuLuc63のVL領域のアミノ酸配列(それぞれ配列番号48および50)、ならびにヒトIII−2Rの配列(配列番号49)が1文字コードで示されている。カバット(Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991))の定義に基づくCDR配列を、MuLuc63のVL配列中に下線で示し、ナンバリングもカバットに従っている。ヒトVLセグメント中のCDR配列は、図では省かれている。HuLuc63のVL配列中に一本線の下線を施したアミノ酸は、CDR配列に接触すると推定されていたため、対応するマウス残基と置換した。
コンピューターモデルがCDRとの顕著な接触を示唆したフレームワーク位置において、MuLuc63のV領域に由来するアミノ酸で、本来のヒトのフレームワークアミノ酸を置換した。これは、重鎖の28位、48位、49位、66位および68位の残基で行われた(表7)。軽鎖については、60位の残基で置換が行われた(表8)。ここで用いられたナンバリング方式はカバットの方式(Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991))であることに留意すべきである。
さらに、MuLuc63のアミノ酸配列を調べたところ、VH領域のCDR2にN結合型グリコシル化が可能な部位が明らかになった。このようなN結合型グリコシル化部位は一般的なN−X−T/Sという配列を持っている(ここで、N=アスパラギン、X=任意のアミノ酸、およびS/T=セリンまたはトレオニンである)。可変ドメインにN結合型グリコシル化の存在は、HuLuc63を治療用抗体として開発する過程で、望ましくない効果を有する可能性があるため、ヒト化設計においてトレオニンをアラニンで置換する変異によって、CDR2(N−Y−T)中のグリコシル化部位の可能性がある部位を除去した。
(HuLuc63のVH遺伝子およびVL遺伝子の構築)
HuLuc63のVHおよびVLのそれぞれをコードする遺伝子を、シグナルペプチド、スプライス供与体シグナル、および後に哺乳類の発現ベクターにクローニングするための適当な制限酵素部位を含むミニエクソンとして設計した。VHおよびVLのミニエクソンにおけるスプライス供与体シグナルは、それぞれ、対応するヒト生殖細胞系のJH6配列およびJK4配列に由来していた。HuLuc63のVHミニエクソンおよびVLミニエクソンのシグナルペプチド配列は、それぞれ、対応するMuLuc63のVH配列およびVL配列に由来していた。Luc63のVH遺伝子およびVL遺伝子のヌクレオチド配列が、推定アミノ酸配列とともに、表5および表6に示されている。
HuLuc63のVH遺伝子およびVL遺伝子を、長さ33から43塩基の範囲で重複する合成オリゴヌクレオチドの伸長およびPCR増幅によって構築した(Stemmerら、Gene 164:49−53(1995))。PCR増幅したフラグメントをQiaquick PCR精製キット(Qiagen)によって精製し、MluIおよびXbaIで消化した。HuLuc63のVH遺伝子をpHuHCg1.Dにサブクローニングして、プラスミドpHuHCg1.D−HuLuc63を作製した。HuLuc63のVL遺伝子を、κ軽鎖発現ベクターであるpOKT3.Vk.rgの誘導体であるpHuCkappa.rgpt.dE(Cole,M.S.ら,J.Immunol.159:3613−3621(1997))にサブクローニングして、プラスミドpHuCkappa.rgpt.dE−HuLuc63を作製した。
(HuLuc63の発現)
組織培養細胞の一時的形質転換によって、HuLuc63のIgG1/κ抗体を産生した。ヒト胚腎臓細胞株293−H(Invitrogen,Carlsbad,CA)を、10%FBS(HyClone,Logan,UT)および非必須アミノ酸(Invitrogen)を含むDMEM(BioWhittaker,Walkersville,MD)中で維持した。標準培地(DMEM+10%FBS+非必須アミノ酸)を用いて形質転換する前日に、293−H細胞を、6ウェルプレートに1ウエル当たり1×106個の細胞を容積2.5mlでプレートした。トランスフェクションの日に、ウエル当たり4μgのプラスミドDNAを、250μlのハイブリドーマSFM(H−SFM,Invitrogen)で希釈した。ウエル当たり10μlのリポフェクタミン2000試薬(LF2000、Invitrogen)を、H−SFM250μlに希釈した。希釈したDNAを、希釈LF2000と混合して、20分間インキュベートし、DNA−LF2000複合体を形成させた。500μlのDNA−LF2000複合体を、各ウエルに添加し、プレートを前後に揺動させて混合した。細胞は、解析用に上清を回収する前に5日間インキュベートした。
HuLuc63の発現をサンドウィッチELISAによって測定した。Immulon 4HBXプレート(Thermo Labsystems,Franklin,MA)を、pH9.4の炭酸ナトリウム−重炭酸緩衝液0.2M中で、1.8μg/mlのヤギ抗ヒトIgG Fcγ鎖特異的ポリクローナル抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.,West Grove,PA)100μl/ウエルによって4℃で一晩被覆し、洗浄用緩衝液(0.1%Tween 20を含むPBS)で洗浄して、TBS中150μl/ウエルのSuperBlock Blocking Buffer(Pierce Chemical Company, Rockford,IL)を用いて、室温で30分間ブロックした。洗浄用緩衝液で洗浄してから、HuLuc63を含む試料をELISA緩衝液(1%BSAおよび0.1%Tween 20を含むPBS)で適当に希釈し、ウエル当たり100μlをELISAプレートに塗布した。標準として、ヒト化抗CD33 IgG1/κモノクローナル抗体HuM195(Co,M.S.ら,J.Immunol.,148: 1149−1154(1992))を用いた。プレートを室温で1時間インキュベートし、洗浄用緩衝液で洗浄した後、希釈度1:1000のHRP結合体化ヤギ抗ヒトκ鎖ポリクローナル抗体(SouthernBiotech,Birmingham,AL)をウエル当り100μl用いて、結合抗体を検出した。室温で1時間インキュベートし、洗浄用緩衝液で洗浄した後、100μl/ウエルのABTS基質(KPL,Inc.,Gaithersburg,MD)を加えて発色させた。100μl/ウエルの2%シュウ酸を添加して発色を停止させた。VersaMaxマイクロプレート読み取り装置(Molecular Devices Corporation,Sunnyvale,CA)を用いて、415nmでの吸光度を読み取った。
(MuLuc63およびHuLuc63の結合特性)
直接結合ELISA法によって、ヒトCS−1に対するMuLuc63およびHuLuc63の親和性を解析した。96ウエルのELISAプレート(Immulon 4 HBXプレート、Thermo Labsystems,Franklin,MA)のウエルを、室温で一晩、PBS中1μg/mlの可溶性ヒトCS1−ヒトFcγ3の融合タンパク質100μlで被覆した。洗浄緩衝液で洗浄した後、ウエルを、150μlのSuperblock Blocking Bufferで室温にて30分間、ブロックした。一時的に発現したHuLuc63抗体または精製したMuLuc63抗体をELISA緩衝液に適当に希釈して、ELISAプレートに塗布した(ウエル当たり100μl)。ELISAプレートを室温で1時間インキュベートして、洗浄緩衝液で洗浄した。次いで、ELISA緩衝液で1:1000に希釈した100μlのHRP結合体化ヤギ抗ヒトCκ抗体またはHRP結合体化ヤギ抗マウスCκ抗体(どちらもSouthern Biotechから入手)を、それぞれ、HuLuc63プレートおよびMuLuc63プレートの各ウエルに添加し、室温で1時間インキュベートした。洗浄緩衝液で洗浄した後、100μlのABTS基質(KPL)を各ウエルに添加した。2%のシュウ酸をウエル当たり100μl添加して、発色を停止させた。VERSAMaxマイクロプレート読み取り装置を用いて、415nmでの吸光度を読み取った。ELISA結合実験の結果、MuLuc63およびHuLuc63が、濃度依存的にヒトCS1−Fcγ3に結合することが示された。GraphPad Prismコンピューターソフトウェア(GraphPad Software Inc.,San Diego,CA)を用いて得られたHuLuc63のEC50値は70.1ng/mlであった。これはmuLuc63について得られたEC50値66.1ng/mlと類似しており、マウス抗CS1モノクローナル抗体MuLuc63のヒト化に成功したこと、HuLuc63がヒトCS1に対して高い結合親和性を保持したことを示している。
(実施例6 自己免疫疾患におけるCS1の役割)
(CS1は、非刺激細胞と比較して、刺激T細胞および刺激B細胞において大量に発現する)
CS1の発現を測定するために、ヤマゴボウマイトジェン(PWM)刺激剤およびフィトヘムアグルチニン(PHA)刺激剤を用いて、末梢血Tリンパ球およびBリンパ球を刺激するようインビトロアッセイを設定した。並行して、刺激を与えない非刺激対照用末梢血単球を調製した。ポリA+mRNAを単離し、これらの試料から標準的な技術を用いてcDNAを合成した。CS1特異的オリゴヌクレオチドプライマー(上記参照)を用いてPCRによりCS1遺伝子を増幅し、Biorad Gel Doc 2000を用いて発現を定量した。シグナル強度を、対照であるヒトβ−アクチンに対して標準化した。リアルタイムPCR解析によって、CS1が、未刺激細胞と比較して、活性化末梢血B細胞においては約23倍の上方制御、および活性化末梢血Tリンパ球においては約30倍の上方制御を示すことが示された。
(CS1は、同年齢の健康な成人の末梢血Bリンパ球と比較して、狼瘡患者の末梢血Bリンパ球において上方制御されている)
健常な個体と比較して、狼瘡患者におけるCS1発現を評価するために、健常な成人に対し、狼瘡患者のCD19+細胞を細胞選別して、末梢血Bリンパ球のプールを単離した。ポリA+mRNAを単離し、標準的な技術を用いてcDNAを合成した。CS1に特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いてリアルタイムPCRによってCS1発現を評価した。リアルタイムPCRデータによって、健常個体と比較すると、CS1は、狼瘡患者由来のBリンパ球においては約2倍上方制御されることが示された。β−アクチンで標準化して、健常個体のcDNAと比較すると、狼瘡患者由来のBリンパ球のcDNAでは、CS1遺伝子が2.3倍増加していた。18S rRNAプライマーで標準化すると、CS1は、それぞれのcDNA試料において1.8倍増加していた。
(活性化B細胞および活性化T細胞における新規マウスLy9の上方制御)
新規マウスLy9は、ヒトCS1の相同分子種であると提唱されている(Tovarら,Immunogenetics 54:394−402(2002))。活性化B細胞および活性化T細胞におけるマウスの新規Ly9の発現を、リアルタイムPCRを用いて調べた。それらのデータは、新規マウスLy9が活性化B細胞および活性化T細胞中で上方制御されることを示した。
新規マウスLy9の発現をABI GeneAmp 5700配列検出システム(Sequence Detection System)を用いて解析した(実施例2参照)。18S rRNAプライマー用いて標準化すると、Ly9遺伝子は、非刺激脾臓cDNAと比較して、conAで刺激したcDNA中では3倍に増加し、LPSで刺激したcDNA中では6倍に上方制御された。
(炎症性腸疾患組織におけるCS1の上方制御)
正常な組織と対比した、IBD組織(クローン病および潰瘍性大腸炎)におけるIBDモジュレータータンパク質の発現を、上記のようにマイクロチップアレイ上で測定した。複数の組織に由来するcRNAを用いて、オリゴヌクレオチドマイクロアレイを検索した。より具体的には、インビトロ転写アッセイ(IVT)によって、9つのIBDおよび9つの適合する隣接する正常な腸の検体、ならびに24個の結腸上皮試料から、cRNAを作製した。オリゴヌクレオチドマイクロアレイに対するcRNAのハイブリダイゼーションを、遺伝子の発現レベルに直接比例する平均蛍光強度法(AI)によって測定した。
IBDにおける遺伝子発現レベルを成人の非病原性組織および器官と比較して、データを解析した。正常な組織と比較して、炎症性腸疾患組織における遺伝子発現の顕著な増加によって同定された遺伝子の1つがCS1であった。マイクロアレイ解析によって、CS1遺伝子の発現が、健康な成人の結腸上皮細胞と比較して、潰瘍性大腸炎およびクローン病で増加することが示された。
炎症性腸疾患患者におけるCS1発現を、健常個体と比較してさらに評価するために、3人の健康な成人に由来する正常な大腸の試料と比べて、2人のクローン病患者および3人の潰瘍性大腸炎患者の大腸患部に由来する試料を脱凝集、洗浄して、TRIZOL(登録商標)に入れた。製造業者のプロトコールに従って、全RNAを単離した。全RNAはRnaseフリーDnase(GenHunter)で処理した。Dnaseで消化したRNAを、フェノール/クロロホルムで抽出して、エタノールで一晩沈殿させた。75%エタノールでRNAを洗浄し、ヌクレアーゼフリー水に溶解させた。RNAを定量して、RNAの完全性をアガロースゲル上で分析した。リアルタイムPCRのデータは、CS1が、健常個体(n=3)由来の正常な大腸のプールと比較して、クローン病患者(n=2)に由来する病変部大腸では7倍および6倍に上方制御され、潰瘍性大腸炎患者(n=3)に由来する病変部大腸では13倍、14倍および46倍に上方制御されることを示した。
(実施例7 癌細胞におけるCS1の発現)
(CS1タンパク質の発現パターン:)
CS1タンパク質の発現を、FACS解析により産生したLuc抗体を用いて調べた。細胞株を、抗CS1 Luc90.H1抗体またはマウスIgG2bアイソタイプ対照抗体とともに、氷上で30分間インキュベートした。細胞をPBSで洗浄してから、フィコエリトリン(PE)を結合した抗マウスIgを細胞に添加して、氷上で30分間インキュベートした。細胞を洗浄して、FACS Caliber(Becton Dickinson)上でフローサイトメトリーによって解析した。これらのデータは、CS1がARH−77白血病系列細胞、CESS Bリンパ芽細胞株およびIM9 Bリンパ芽細胞株、ならびに骨髄腫細胞株であるL363、LP1、およびOPM2の中で発現することを示している。
多発性骨髄腫患者(n=21骨髄試料)、MGUS患者(意味不明の単クローン性免疫グロブリン血症;n=1)、形質細胞性白血病患者(n=1)、骨髄から動員したCD34+幹細胞(n=5)、正常な骨髄細胞(n=3)、正常なリンパ節組織(n=1)、慢性リンパ芽球性白血病患者(CLL;n=15)、急性骨髄性白血病患者(AML;n=11)、非ホジキンリンパ腫患者(NHL;n=1)、およびホジキンリンパ腫患者(n=1)に由来する試料を、FITCを結合体化した、CS1(Luc90またはLuc63)、CD45−PerCP、CD38−PE、および/またはCD138−PEに対する抗体とともにインキュベートして、骨髄細胞をFACS解析について上記に詳述したように処理した。本明細書で用いられるマウス抗CS1抗体は、Luc90(IgG2b)、Luc63(IgG2a)、Luc38(IgG2b)および他の産生された抗CS1 Luc抗体である。アイソタイプ対照抗体はアイソタイプ適合マウスIgG抗体であった。
骨髄吸引物をCleveland Clinicの多発性骨髄腫患者から採取した。骨髄腫細胞株(LP1、L363、OPM2、NCI−H929、RPMI8226、およびU266B1)、白血病細胞株ARH−77、Bリンパ芽球株(IM9、CESS)、および骨髄細胞を、標準的な染色プロトコールに従って、アイソタイプ対照抗体(Becton Dickinson)と対比して、抗CS1モノクローナル抗体で染色した。細胞を洗浄し、染色用緩衝液(RPMI、ヒト細胞については10%FBS、またはDMEM、10%FBS)に入れ、抗CS1対アイソタイプ対照抗体を、細胞100万個当り抗体0.5〜1μg添加して最終容量を0.1mlとした。患者の試料については、赤血球を溶解し、細胞を遠心分離によって沈殿させてから、染色用緩衝液に再懸濁した。FITCに直接結合体化していない抗体については、第2段階の抗体を細胞100万個当り抗体0.5〜1μg添加して、最終容量を0.1mlとした。Becton Dickinson FACSCaliber上でCellQuestソフトウェアを用いてFACS解析を行うため、細胞を洗浄して染色用緩衝液に再懸濁した。形質漿細胞と区別するため、多発性骨髄腫細胞を抗CD45、抗syndecan−1(CD138)、および抗CD38モノクローナル抗体で染色した。抗syndecan−1(CD138)は、形質細胞を特異的に染色し、その他の白血球は染色しない。
結果は、CS1が10人の多発性骨髄腫患者に由来する形質細胞(例えばCD138+細胞)、および形質細胞性白血病患者に由来する形質細胞、ならびにいくつかの骨髄腫細胞株(L363、LP1、およびOPM2)で高発現することを示している。多発性骨髄腫患者に由来する全部で21の異なった骨髄試料をフロー法(flow)によって測定し、21試料中の21すべてで、事実上すべての骨髄形質細胞がCS1を発現する。CS1は、ARH−77白血病細胞およびBリンパ芽球腫細胞株(IM9およびCESS)でも発現される。
(実施例8 骨髄腫患者に由来する形質細胞におけるCS1発現)
多発性骨髄腫患者に由来する骨髄試料をCD138−PE、CD45PerCP、Luc90−FITC、および/またはIgG2b−FITC(アイソタイプ対照抗体)で染色し、上記したようにFACSによって解析した(実施例5参照)。リンパ球、単球、顆粒球、赤血球系細胞、形質細胞、および芽細胞を含むよう、細胞をゲートした。データは、CS1が多発性骨髄腫患者に由来する形質細胞(例えばCD138+細胞)上で発現することを示した。
(実施例9:抗CS1モノクローナル抗体は、活性化末梢血B細胞によるIgMの分泌を減少させる)
正常な成人に由来する末梢血単核細胞を、標準的なフィコール勾配遠心法によって単離し、10μg/mlのヤマゴボウマイトジェン(GIBCO/BRL,England,the United Kingdom)とともにインキュベートしてから、総容量1mlの24ウェルプレートで平板培養した。100μg/mlまたは10μg/mlモノクローナル抗体(マウス抗ヒトCS1(Luc63)またはマウスIgGアイソタイプ対照)を試料ウエルに添加した。細胞および抗体を、7%CO2中37℃で8日間インキュベートした。培養液から上清を単離し、上記したように、ELISA法によってIgMをアッセイした。結果は、100μg/mlまたは10μg/mlのアイソタイプ対照とともに、または抗体なしでインキュベートした細胞によるIgM分泌と比較すると、100μg/mlまたは10μg/mlのLuc63抗体は、末梢血単核細胞のIgM分泌を減少させることを示した。
(抗CS1モノクローナル抗体は、自己免疫疾患患者の活性化末梢血B細胞によるIgM分泌を減少させる:)
末梢血単核細胞の細胞培養液の上清を上記したように単離し、ELISA法によってアッセイした。Immulon−1プレートを、PBS中1μg/mlのマウス抗ヒトIgMモノクローナル抗体(カタログ番号05−4900、Zymed Laboratories,Inc.,South San Francisco,California)100μlで被覆した。プレートをELISA緩衝液(‘EB’=PBS+0.1%BSA+0.05%Tween20)によって1時間ブロックした。培養上清を、さまざまな希釈度(EB中)で1ウエル当たり100μlにして添加した。上清および標準的なヒトIgM(カタログ番号009−000−012,Jackson Laboratory,Bar Harbor,Maine)を室温で1〜2時間インキュベートした。捕捉したヒトIgMを、製造業者のプロトコールに従って、ヤギ抗ヒトIgM−HRPポリクローナル抗体(カタログ番号2020−05,Southern Biotech Association,Birmingham,Alabama)、およびHRP基質によって発色させた。結合したIgMを、分光測定法(405nm OD)によって、標準的なELISAプレート読み取り装置上で可視化した。データは、狼瘡患者のPBMCのIgM分泌量が、アイソタイプ対照抗体で処理した場合の0.18μg/mlから、抗CS1抗体(Luc90H1)で処理した場合の0.10μg/mlに減少したことを示した。IgMを0.12μg/mlで分泌した陽性対照抗CD2抗体は、抗CS1が、IgM産生を減少させる点では、抗CD2抗体よりもさらに強力であることを示した。
(抗CS1モノクローナル抗体は、健康な成人および自己免疫疾患患者に由来する末梢血B細胞によるIgG産生を減少させる)
健康な成人および自己免疫疾患(狼瘡)患者に由来する末梢血B細胞によるIgG産生を、IgM産生と同様に解析した。結果は、抗CS1抗体(Luc90H.1)で処理してから9日後の健康な成人の末梢血単核細胞による全産生量が、IgG2bアイソタイプ対照と比較すると、約23%減少したことを示した。抗CS1抗体(Luc90H.1)で処理してから9日後の狼瘡患者の末梢血単核細胞によるIgG全産生量は、IgG2bアイソタイプ対照と比較すると、約56%減少した。表3Aおよび3Bは、多数の作製した抗CS1抗体によるIgG産生の阻害をまとめている。表3Aに示されているように、Luc90.H1は、リポ多糖およびヤマゴボウマイトジェンで活性化したPBMCによるIgG産生を、約40%減少させた。Luc34.1は、ヤマゴボウマイトジェンで活性化したPBMCによるIgG産生を約38%減少させた。表3Bに示されているように、Luc90.H1は、健康な成人のPBMCおよび成熟型B細胞株(IM9細胞)によるIgG産生を約48%減少させた。Luc34.1は、健康な成人のPBMCによるIgG産生を約53%減少させた。Luc63.2は、PBMCおよびIM9細胞のIgG産生を約47%減少させた。これらの実験から、Luc90H.1、Luc34.1、およびLuc63.2が最も優れた機能的抗体であることが明らかである。エピトープマッピングから、Luc90およびLuc63は、重複型エピトープをもたない。
実験結果は、抗CS1抗体が、インビトロにおいて末梢血B細胞によるIgGおよびIgMの産生を減少させることを示した。
(実施例10:SCID−HuPBMCマウスモデルにおけるCS1モノクローナル抗体によるインビボでのIgGの減少)
(SCID−HuPBMCマウスモデル)
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、標準的なフィコール−パーク(Amersham Biosciences)密度勾配法によって単離し、1ml当たり2×107個のPBMCになるようリン酸塩緩衝溶液(PBS)に再懸濁した。再懸濁したPBMC(1ml)を、C.B−17SCIDマウスの腹腔内(i.p.)に注射した。PBMC注射の2〜3週間後、血清試料をマウスから採取し、ELISAによってヒトIgGを測定した。移植したマウス(血清中に>1μg/mlのヒトIgGを産生)を無作為に処理群に分けてから、マウス抗ヒトCS1モノクローナル抗体(Luc90.H1またはLuc63.2.22)、マウスアイソタイプ対照抗体(それぞれIgG2bまたはIgG2a)、またはPBSで処置した。マウスに、PBS500μl中の200μgの抗体を、3〜4日毎に3または4回用量投与した。マウス血清を、標準的なプロトコールを用いELISAによって、ヒトIgGについて解析した。
各マウスについて、抗体の初回投与前(0日目)のヒトIgG濃度を、投与後(x日目)のヒトIgG濃度から引き算し、初回投与前(0日目)のヒトIgG濃度で割り算して、100倍して、例えば[(x日目−0日目)/0日目]×100によって、血清ヒトIgGのパーセント変化率を計算した。データを、各マウス群について平均パーセント変化として、標準誤差とともに表示する。ヒトIgG濃度は、各マウス群について標準誤差とともに平均濃度として示されている。ウェルチ(Welch)2標本t検定を用いて、処理群横断的にヒトIgGのパーセント変化率を比較した。
(抗CS1抗体は、インビボにおけるヒトIgG産生を減少させた)
これらのデータは、本発明の抗CS1抗体が、SCID−HuPBMC転移モデルにおいて、実質的にヒト免疫グロブリンの産生を減少させることを示している。図1Aに示されているように、Luc90.H1は、早くも4日目(抗体の初回投与による処理を行った4日後)に、PBS対照およびアイソタイプ対照においてIgG産生の増加を抑制した。このような減少が、7週間(32日)の試験期間にわたって継続した。例えば、18日目には、IgG2bアイソタイプ対照では、ヒトIgG産生が225%増加し、PBS対照では181%増加したが、Luc90H.1処理によって、ヒトIgG産生は14%減少した。Luc90H.1は、対照群におけるヒトIgG産生の181〜225%の増加を打ち消したばかりでなく、ヒトIgG産生をさらに14%減少させた。25日目には、Luc90H.1は、対照群におけるヒトIgG産生の3倍の増加を打ち消したばかりでなく、ヒトIgG産生をさらに24%減少させた。
Luc63.2も、インビボにおいてIgG産生を効率的に減少させた。図1Bに示されているように、Luc63.2は、対照群(PBSおよびIgG2aアイソタイプ対照)におけるIgG産生の37〜46%の増加を打ち消し、IgG産生をさらに59%減少させた。この同じ研究において、Luc90.H1をLuc63.2と比較すると、Luc90.H1は対照群(PBSおよびIgG2bアイソタイプ対照)における37〜114%の増加を打ち消して、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)による移植を受けたマウスによるIgG産生をさらに14%減少させた。
図1Cでは、SCIDHuPBMCモデルにおけるLuc90およびLuc63による処理によってIg産生が減少することがさらにまとめられている。アイソタイプ対照およびPBS対照によって処理したマウスにおけるIgG産生の増加を打ち消す一方で、Luc90は、IgG産生をさらに14%、22%、24%、および39%減少させ、Luc63はさらに40%および59%減少させた。したがって、ヒトPBMCを移植したSCIDマウス(SCID−HuPBMC)を抗Lucで処置すると、これらの動物の血清中に通常では観察されるヒト免疫グロブリンの増加が完全に打ち消されるばかりでなく、処理前のレベルと比較して、さらなる減少がもたらされると結論することができる。
(実施例11:抗CS1抗体のADCC活性)
(エフェクター細胞の調製:)
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)(エフェクター細胞)を、標準的なフィコール−パーク密度勾配法(Amersham Biosciences)を用いて、全血から単離した。細胞を洗浄して、1%ウシ血清アルブミン(BSA)を添加したRPMI培地に再懸濁した。
(標的細胞の調製)
細胞表面CS−1を発現する安定的形質転換体細胞(標的細胞)を洗浄して、1%BSAを添加したRPMI培地に再懸濁した。細胞を、全容量50μlにウエル当たり100,000個の細胞をプレートした。マウス抗ヒトCS−1モノクローナル抗体(Luc90.H1またはLuc63.2.22)またはアイソタイプ対照抗体(それぞれマウスIgG2bまたはマウスIgG2a)を、さまざまな濃度で標的細胞に添加し、最終容量を100μlとし、室温で30分間インキュベートした。
インキュベーション後、100μlのエフェクターPBMCを、最終容量200μlとなるように、20:1の比率で標的細胞に添加した。標的細胞およびエフェクター細胞を37℃で5時間または一晩インキュベートした。細胞を350×gで5分間遠心してから、ウエル当たり100μlの上清を採取して、光学的に透明な96ウエル平底マイクロタイタープレートに移した。
(乳酸脱水素酵素アッセイ:)
上清に含まれる乳酸脱水素酵素(LDH)活性を測定するために、細胞傷害性検出キット(Cytotoxicity Detection Kit)(Roche Applied Science,Indianapolis,IN)の反応混合物100μlを各ウエルに添加し、試料を15〜25℃で最大30分間インキュベートした。このインキュベーションの間、マイクロタイタープレートを光から保護した。試料の吸光度がELISA読み取り装置を用いて490nmで測定した。
細胞媒介性細胞傷害の割合を判定するために、次の等式を用いて、試料の平均吸光度を計算し、バックグラウンド対照を引き算した:
細胞傷害性(%)=(試料のLDH放出試料−SRエフェクター−SR標的)×100/(MR標的−SR標的)
SR:自発的放出
MR:最大放出
実験対照は、標的細胞のみの自発的放出またはエフェクター細胞のみの自発的放出であった。標的細胞は、2%Triton−X 100(1:1)溶液中でアッセイした。
(抗CS1抗体は抗体に由来する細胞傷害性(ADCC)を誘導する)
この実験は、抗CS1抗体Luc63.2およびLuc90が、PBMC(エフェクター細胞)存在下でCS1を発現する細胞の抗体由来細胞傷害性(ADCC)を誘導することを示した。その結果、Luc90が用量依存的に細胞傷害性を誘導することが示された。50μg/mlの量のLuc90は、標的細胞の細胞傷害性をほぼ50%誘導した。Luc63.2は、一般に、10〜50μg/mlの用量範囲で、標的細胞の60〜80%の細胞傷害性を誘導した。同様の結果が、さらに2つのドナーを用いて行われた実験から得られた。
(実施例12:低フコースCS1抗体によるADCC活性)
(Luc90の可変領域のcDNAのクローニング)
マウス可変領域(配列番号3および4)を、標準的な方法によって,Luc90ハイブリドーマ細胞株からクローニングした。簡単に言うと、全RNAを抽出し、供給業者のプロトコールに従って、SMART5’−RACE cDNA増幅キット(BD Biosciences Clontech,Palo Alto,CA)を用いて、2本鎖cDNAを合成した。可変領域cDNAのPCRフラグメントを、配列決定のために、pCR4Blunt−TOPOベクター(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)にクローニングした。重鎖および軽鎖のそれぞれについて、いくつかのプラスミドクローンの配列を決定した。典型的なマウス重鎖および軽鎖の可変領域に相同性をもつ独自の配列を同定した。
(キメラLuc90のVHおよびVLの発現ベクターの構築)
Luc90のVHおよびVLのそれぞれをコードする遺伝子を、シグナルペプチド、スプライス供与体シグナル、Kozak開始配列、およびその後、哺乳動物発現ベクターにクロンーニングするのに適した制限酵素部位を含むミニエクソンとして設計した。プライマーは、適当な制限部位、およびVH遺伝子またはVL遺伝子のいずれかを含有するTOPOベクターからのPCRに対して相補性を含むように設計した。PCR増幅したフラグメントを、Qiaquick PCR増幅キット(Qiagen)によって精製し、MluIおよびXbaIで消化した。Luc90のVH遺伝子をpHuHCg1.D(野生型)またはpHuHCg1.D.AA(BS変異体)にサブクローニングして、それぞれプラスミドpChiHuHCg1.D−MuLuc90VHおよびpChiHuHCg1.D.AA−MuLuc90VHを作製した。BS変異体は、Fc受容体との結合が打ち消されるように、IgG1のCH2領域に2つのアミノ酸変異(L234A/L235A)を含んでいる(Xuら,(2000)Cell Immunol.200:16−26)。Luc90のVL遺伝子を、pVkにサブクローニングして、プラスミドpChiVk−MuLuc90VLを作製した。単独プラスミド発現ベクターを、重鎖および軽鎖の遺伝子が単独プラスミドから発現され得るように作製した。重鎖ベクターをEcoRIで消化して全重鎖領域を除去してから、軽鎖ベクター中の単一のEcoRI部位にサブクローニングした。BS変異体の重鎖をpChiVk−MuLuc90VLベクターフラグメントと結合して、プラスミドpChiLuc90−BSKを作製したが、野生型重鎖をpChiVk−MuLuc90VLにサブクローニングして、プラスミドpChiLuc90−g1Kを作製した。
(キメラLuc90の発現)
キメラLuc90 IgG1/κ野生型抗体およびBS抗体は、Sp2/0細胞にpChiLuc90−g1KおよびpChiLuc90−BSKベクターをそれぞれ安定的にトランスフェクションして作製した。低フコース抗体は、YB2/0細胞にpChiLuc90−g1Kベクターを安定的にトランスフェクションして作製した。陽性クローンを、ミコフェノール酸培地を用いて選択し、ELISAによってスクリーニングした。野生型クローンAH4、BS変異体HG12および低フコースクローン5E4を、高発現により選択し、2%低Igウシ胎児血清を含むGibco Hybridoma無血清培地に適応させた。精製するために、2リットルの培養液をローラーボトル中で増殖させた。抗体を標準的なプロテイン−Gアフィニティーカラムクロマトグラフィーによって精製した。
その結果、抗CS1 Luc90キメラ抗体は、ヒトCS1を発現する安定した細胞株においてCS1を発現する細胞、および2種のヒト骨髄腫細胞株であるOPM2およびL363の抗体依存的な細胞の細胞傷害性を刺激することが示された。それぞれの場合において、細胞傷害性は、低レベルのフコースをもつ抗体によって(上記に詳しく説明されているようにYB2/0細胞における増殖を介して)顕著に高められる。
(実施例13:抗CS1抗体による骨髄腫の処置)
試験被験体の腹腔内に抗体を注射して、骨髄腫マウス腫瘍モデルに対するインビボでの抗CS1抗体による処置を行った。図2に示されているように、抗CS1抗体による処置(Luc63およびLuc90)は、アイソタイプ対照による処置を受けた動物と比較して、腫瘍の大きさを縮小させた。この研究では、1×107個の骨髄腫細胞(L363骨髄腫細胞株)をCB.17 SCIDマウスの腹腔内に注射した。2週間後、腫瘍サイズが約80mm3に達したら、マウスを、群当たり8マウスの4群に無作為に分けた。マウスを、抗CS1抗体(Luc63またはLuc90)またはアイソタイプ対照抗体(マウスIgG2aまたはマウスIgG2b)によって処置した。マウスには、マウス当たり200μgの抗体を、週当たり3用量で8用量投与した。その結果は、抗CS1抗体で処置したマウスでは、アイソタイプ対照抗体で処置したマウスと比較して、腫瘍体積が顕著に減少したことを示している。実験の25日目(用量5回投与後)までに、Luc63で処置したマウスでは、IgG2aアイソタイプ対照抗体で処置したマウス(平均腫瘍サイズ約800mm3)と比較して、平均腫瘍サイズが約100mm3であることが示される。Luc90で処置したマウスでは、IgG2bアイソタイプ対照抗体で処置したマウス(平均腫瘍サイズ約950mm3)と比較して、平均腫瘍サイズが約400mm3であることが示されている。抗CS1 Luc63抗体で処置されたマウスは、処理後2.5週間まで、測定可能な腫瘍がなく、この抗体の、腫瘍形成性細胞を消失させることにおける驚くべき効果を示している。
骨髄腫についてのさらに別のモデル系には、蛍光標識されたか、非標識の骨髄腫細胞株または成熟型B細胞株、例えばARH77、CESS、IM9、L363、LP1およびOPM2を、静脈内(i.v.)、腹腔内(i.p.)に移植されたか、または直接(同所的に)骨に注射されたSCIDマウスが含まれる。これらの細胞株は、骨髄腫動物モデル系におけるアンタゴニスト処置の効果を試験するために用いられる。これらの細胞株は、抗ヒトCS1抗体によって認識される抗原を発現する。動物を無作為に群に分け、抗ヒトCS1抗体または対照抗体(例えば、アイソタイプ対照抗体)による治療計画を行う。抗体は、例えば、1〜10mg/kgの用量を全部で9〜10回、3〜4日ごとに腹腔内に投与するなどして、いくつかの用量レベルで投与する。腫瘍サイズを、各処理群について35〜40日間、週2回測定する。骨髄腫の臨床症状を記録する。死亡日時を、各マウスについて記録する。
抗CS1抗体処置と化学療法との間で相乗効果が起こる可能性を判定するために動物試験を開始する。異種移植した腫瘍を、おおよそのサイズが50〜100mm3に達するまで増殖させてから、静脈内、腹腔内、または同所的に注射されたマウスについて、癌細胞を動物に移植することができる。その際、動物を無作為に群に分け、抗ヒトCS1抗体または対照抗体(例えば、アイソタイプ対照抗体)による処置計画を行う。あるいは、動物に対し、抗ヒトCS1抗体または対照抗体(例えば、アイソタイプ対照抗体)を用いる処置計画を、プレドニゾンおよびメルファランまたはその他のアルキル化剤(例えばシクロフォスファミドまたはクロラムブシル)の併用を含む標準的な化学療法剤、またはビンクリスチン、ドキソルビシンおよび高用量のデキサメタゾン(VAD)による処置、または当業者に公知の他の化学療法計画などと併用して行うことができる。抗体は、例えば、1〜10mg/kgの用量を全部で9〜10回、3〜4日ごとに腹腔内に投与するなどして、いくつかの用量レベルで投与する。化学療法は、例えば1mg/kg、または当業者に公知のその他の有効用量など、効果的な濃度で、3〜4日ごとに腹腔内に投与される。腫瘍サイズ(s.c.注射された動物)を、各処置群について35〜40日間、週2回測定する。ヒト免疫グロブリンを分泌する細胞株(IM9、CESS、ARH−77、およびLP−1)を注射されたマウスにおける血清免疫グロブリンを含む、骨髄腫の臨床症状を記録する。死亡日時を、各マウスについて記録する。化学療法の有無による抗体処置の有効性が評価される。
(実施例14:ヒト化抗CS1抗体による多発性骨髄腫の処置)
実施例13記載の例と同様、試験被験体の腹腔内に抗体を注射して、多発性骨髄腫瘍マウス腫瘍モデルに対するインビボでのヒト化抗CS1抗体による治療を行った。雌のICR/SCIDマウスに、(側腹部の)皮下に多発性骨髄腫株OPM−2を移植した(1000万細胞/動物)。腫瘍を確立させ、腫瘍が平均100mm3に達したところで、マウスを無作為に8群に分けた(それぞれマウス8匹からなる8群、平均腫瘍体積100mm3)。
次に、マウスに、以下の抗体を週3回腹腔内に投与して処理した。
第1群 リン酸緩衝食塩水対照(PBS)
第2群 10mg/kgのマウスLuc63抗体(MULuc63)
第3群 対照として、10mg/kgの無関連ヒト化IgG1抗体(cHUIgG1)
第4群 10mg/kgのヒト化Luc63(HULuc63)
第5群 3mg/kgのヒト化Luc63(HULuc63)
第6群 234位および235位の残基にアラニン変異を有するヒト化Luc63、10mg/kg(HuLuc63a,a)-この変異はIgG1 FcのFcRsへの結合に影響を与えるため、抗体依存性の細胞性細胞傷害性(ADCC)などのFc依存型機能を付与する抗体の能力に影響を与える。
この実験の結果を図3に示す。以前観察したように、10mg/kgのMULuc63抗体はインビボで腫瘍増殖を低下させるのに有効であった。46日目に(9回の抗体投与の最後から5日後)、8匹中5匹には、測定可能な腫瘍が存在しなかった。HULuc63は、3mg/kgでも10mg/kgでも、腫瘍増殖を低下させるのに効果的であったが、ヒト化抗体は、マウスにおいてはマウス抗体として効率的に作用しない。興味深いことに、234位および235位の残基を変異させたヒト化Luc63抗体は、このモデルにおいてはまったく有効性を示すことができなかった。実際、2つの対照群、PBSおよびヒト化IgG1(cHUIgG1)と同様に、腫瘍が大きくなりすぎたため(また、IACUC規則により、動物を殺処理する必要があったため)、HULuc63a,a変異体で処理した動物を、39日目(8回目の抗体投与の日)に殺処理しなければならなかった。HULuc63a,a変異体によって作成されたデータは、このモデルにおいて、抗体のFc部分が重要であることを示しており、Luc63抗体(およびそのヒト化型)が作用するメカニズムの1つは、ADCC(または恐らく受容体架橋結合)など、移入されたFc媒介型エフェクター機能を介していることを示唆している。
これらの結果は、この抗体のADCC活性を増大させることによって、人間の治療におけるCS1抗体の有効性を向上させることができることを示唆している。ADCC活性を増大させる方法は、実施例12の低フコース抗体を提供すること、およびCS1抗体のFc部分に突然変異を生じさせること、特に、各々が参考とため本明細書において援用される、米国特許第6,737,056B1号および米国特許出願第2004/0132101A1号に記載されているようなFcγR受容体に対する抗体親和性を増大させる変異を生じさせることを含む。
患者も、プレドニゾンおよびメルファランもしくは他のアルキル化剤(例えばシクロフォスファミドまたはクロラムブシル)の併用を含む標準的な化学療法剤、またはビンクリスチン、ドキソルビシン、および高用量デキサメタゾン(VAD)による処置、当業者に公知のサリドマイド、ベルケードまたはその他の化学療法計画などと組み合わせて抗ヒトCS1抗体による治療を受けることができる。
(実施例15:SCID−HuPBMCマウスモデルにおけるヒト化抗CS1抗体によるIgGのインビボにおける減少)
(SCID−HuPBMCマウスモデル)
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を標準的なフィコール−パーク(Amersham Biosciences)密度勾配法により単離し、リン酸塩緩衝溶液(PBS)に2×107PBMC/mlで再懸濁した。再懸濁されたPBMC(1ml)をC.B−17 SCIDマウスに腹腔内(i.p.)注射した。PBMC注射の2〜3週間後、血清試料をマウスから採取し、ELISA法によってヒトIgλについて測定した。移植を受けたマウス(血清中でヒトIgλを>1μg/ml産生する)を無作為に処置群に分けてから、ヒト化Luc63(HuLuc63)またはヒトIgG1アイソタイプ対照抗体で処理した。マウスに、500μlのPBS中200μgの抗体を3〜4日ごとに4用量の抗体を投与した。マウス血清を、標準的なプロトコールを用いたELISAによって、ヒトIgλについて解析した。ヒト化抗体は、カッパ軽鎖は持っているが、ラムダ軽鎖を持っていないため、ヒトIgλを検出することによって、マウスを処置するために用いられるヒト化抗体および対照ヒト抗体ではなく、注射したヒトB細胞によって産生される免疫グロブリンを測定する。
各マウスについて、抗体の初回投与前(0日目)のヒトIgλ濃度を、投与後(x日目)のヒトIgλ濃度から引き算し、初回投与前(0日目)のヒトIgλ濃度で割り算して、100倍して、例えば[(x日目−0日目)/0日目]×100によって、血清ヒトIgλのパーセント変化率を計算した。データを、実験の0日目と14日目を比較して、各マウス群について、標準誤差とともに平均パーセント変化として表示する。
(ヒト化抗CS1抗体は、インビボにおいてヒト免疫グロブリンの産生を低下させた)
これらのデータは、本発明の抗CS1抗体が、SCID−HuPBMC転移モデルにおいて、ヒト免疫グロブリンの産生を実質的に減少させることを示している。このモデルでは、アイソタイプ対照で処置されたマウスで見られるように、このモデルに内在する免疫グロブリン産生が約300%増加する。HuLuc63は、免疫グロブリン産生の約300%の増加を無効にして、さらに免疫グロブリンの2%の減少をもたらした。したがって、マウス抗ヒトCS1による処置と同様、ヒトPBMCを移植されたSCIDマウス(SCID−HuPBMC)をヒト化抗CS1 Luc63抗体によって処置すると、これらの動物の血清で正常には観察されるヒト免疫グロブリンの増加が完全に無効になるだけでなく、処理前のレベルに比較して、さらなる減少を生じさせるということが、結論付けられ得る。したがって、ヒト化抗CS1抗体は、ヒト免疫グロブリンの産生に関連する病気のヒト患者における有用な治療剤を提供する。
(実施例16:さらなる抗CS1モノクローナル抗体およびヒト化抗CS1モノクローナル抗体)
抗体の重鎖および軽鎖の可変領域を、標準的な技術を用いてクローニングした。簡単に述べると、1〜5×106個の細胞から得た全RNAを用い、SMART RACE cDNA増幅キット(BD Biosciences Clontech)を用いてcDNAを調製し、マウスの重鎖および軽鎖の定常領域に相補的な遺伝子特異的プライマーを用いて、可変領域をPCR増幅した。
抗体(Luc69、LucX.1およびLucX.2)の成熟型重鎖および成熟型軽鎖のアミノ酸を表9に示すが、そこには、Luc69の重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号51)および軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号52);LucX.1の重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号59)および軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号60);LucX.2の重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号67)および軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号68)が記載されている。配列番号53、54、および55は、それぞれ、Luc69の重鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列を示す。配列番号56、57、および58は、それぞれ、Luc69の軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列を示す。配列番号61、62、および63は、それぞれ、LucX.1の重鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列を示す。配列番号64、65、および66は、それぞれ、LucX.1の軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列を示す。配列番号69、70、および71は、それぞれ、LucX.2の重鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列を示す。配列番号72、73、および74は、それぞれ、LucX.2の軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列を示す。
表9の抗体Luc69、LucX.1およびLucX.2、ならびに表4のLuc90およびLuc34は、Queenらの米国特許第5,5301,101号、同第5,585,089号、同第5,693,761号、同第5,693,762号、および同第6,180,370号に教示されている方法に従ってヒト化される。
簡単に述べると、この方法は,ドナー(マウス)免疫グロブリンに由来する相補性決定領域(CDR)を1つ以上、およびヒト免疫グロブリンに由来するフレームワーク領域を提供することを包含する。好適な方法は、まずドナー免疫グロブリンのフレームワークまたは可変領域のアミノ酸配列を、ヒト免疫グロブリン鎖のコレクションの中の対応する配列と比較すること、およびコレクションから、より相同性の高い配列の1つをヒト免疫グロブリンとして選択することを包含する。ヒト免疫グロブリン、すなわちアクセプターである免疫グロブリンの配列は、典型的には、少なくとも10〜20以上の免疫グロブリンの可変領域配列のコレクションから選択され、通常、コレクション中の任意の配列のドナー免疫グロブリン配列に最も高い相同性をもつ。ヒト免疫グロブリンのフレームワーク配列は、典型的には、ドナー免疫グロブリンのフレームワーク配列に約65〜70%以上の相同性をもつ。ドナー免疫グロブリンは重鎖または軽鎖のいずれかであり得、ヒトのコレクションは同種の鎖を含む。ヒト化軽鎖または重鎖を用いて、部分長または完全長のヒト定常領域の有無に関わらず、2つの軽鎖/重鎖対を有する完全なヒト化免疫グロブリンまたは抗体を形成させることができる。
ヒト化可変領域を形成するため、以下のカテゴリにある場合、ヒトの受容体配列中のアミノ酸を、ドナー配列の対応するアミノ酸と置換する:(1)アミノ酸がCDRにある。上記比較工程と併用するか、またはそれとは別個に、アクセプター免疫グロブリン鎖の中の付加的アミノ酸を、CDR−ドナー免疫グロブリン鎖からのアミノ酸で置換することができる。より具体的には、ドナー免疫グロブリンの対応するアミノ酸による、アクセプター免疫グロブリンのヒトフレームワークアミノ酸のさらなる必要に応じての置換を、以下のカテゴリの1つ以上に該当する位置で行う:(2)アクセプター免疫グロブリンのヒトフレームワーク領域におけるアミノ酸は、その位置ではまれであり、ドナー免疫グロブリンにおける対応アミノ酸は、ヒト免疫グロブリン配列のその位置では一般的である、または(3)アミノ酸は、CDRの1つに直ぐ隣接している、または(4)アミノ酸が、抗原、またはドナー免疫グロブリンもしくはヒト化免疫グロブリンのCDRと相互作用することができると推定されている。さらに、(5)アクセプター免疫グロブリンにおけるアミノ酸が、その位置ではまれであり、ドナー免疫グロブリンにおける対応アミノ酸も、他のヒト配列と比較するとまれである場合、アクセプター配列中のアミノ酸を、必要に応じて、その位置でヒト配列にとっては一般的なアミノ酸で置換することができる。
インタクトな抗体に組み込まれると、ヒト化軽鎖および重鎖は、ヒトにおいて実質的に非免疫原性となって、CS1に対してドナー免疫グロブリンと実質的に同じ親和性を維持する。
いったん設計されると、結合フラグメントおよびその他の免疫グロブリン型を含む免疫グロブリンを、さまざまな組換えDNA技術、またはその他の技術によって簡単に作製することができる。好ましくは、合成によって、および適当な核酸配列を連結させることによって、究極的にはトランスフェクションされた細胞の中で発現する、所望のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを作出する。ヒト化抗CS1モノクローナル抗体は、本明細書に詳述されているように、モノクローナル抗体療法に感受性があるヒトの疾患を処置する上で特に有用であろう。
(実施例17:他の霊長類のCS1配列)
カニクイザル(cynos)、チンパンジーおよびアカゲザルなど、いくつかの非ヒト霊長類に由来するCS1細胞外ドメインのアミノ酸配列が決定されており、ヒト配列と比較された。アカゲザル由来の活性化PBMCの試料からアカゲザルの配列を決定した。あらかじめOKT3で刺激されていたPBMCの試料からチンパンジー配列を決定した。カニクイザル由来の活性化PBMCの試料からカニクイの配列を決定した。
Trizol LS試薬(Invitrogen)/クロロホルム抽出を利用して、組織試料からRNAを調製した後、RNAeasyマイクロキット(Qiagen)クリーンアップを行った。SMART RACE(Clontech)を用いて、第1鎖cDNAを調製した。各種について公開された配列に対して設計されたか、または、特異的な種の配列が利用できない場合にはヒトの配列を用いて設計されたプライマーを用いてPCRを行い、目的の領域をカバーするフラグメントを単離した。これらのフラグメントを、AB 3100 Genetic Analyzer上で配列決定するために、TOPOクローニング系(Invitrogen)にクローニングした。
種特異的配列が決定された場合、必要とされるフラグメントを、発現ベクターに必要な制限部位を含むクローニングプライマーを用いて、PCRした。それぞれの種の細胞外ドメインを、NEF39 HAPPFcベクター、NEF39 Fcベクター、またはNIF Fcベクターにサブクローニングし、完全長ORFは、NEF39 HA ICD4ベクターにサブクローニングした。核酸配列の翻訳からアミノ酸配列を決定した。表10(配列番号75、76、77および78)は、それぞれ、カニクイザル、アカゲザル、ヒトおよびチンパンジーに由来する各配列のアラインメントを示している。配列は、まずメチオニンから整列され、各シグナルペプチドを含んでいる。全種間で相同なアミノ酸残基を、*記号で示した。
(実施例18:CS1抗体のエピトープマッピング)
ヒト、マウス、またはヒト−マウスのキメラCS1−Fcタンパク質を構築して、サンドウィッチELISA法を用いて、さまざまな抗CS1抗体に結合する能力を評価した。抗CS1抗体のパネルは、ヒトCS1タンパク質には結合するが、マウスCS1タンパク質には結合しないことが示されている。
(CS1発現ベクター)
ヒトCS1の細胞外ドメイン(アミノ酸1−227)をNIF Fcベクターにサブクローニングして、マウスCS1の細胞外ドメイン(アミノ酸1−224)をNEF39Fcベクターにサブクローニングした。これらのベクターは、上流にクローニングされたCS1の細胞外ドメインと、ヒトガンマ1免疫グロブリン重鎖遺伝子とがインレームになった融合タンパク質を生成する。これによって、C末端にCS1細胞外ドメインおよびヒトFc“タグ”を含む分泌タンパク質を生成する。
(PCRおよび配列決定)
CS1細胞外ドメインのヒト/マウスキメラを、以前クローニングしたcDNAを供給源にもつヒトおよびマウスの配列の必要な結合部にまたがるキメラプライマーを用いてPCRによって生成した。これらのフラグメントを、ソーイング(sewing)PCRに用いて、発現ベクターに必要とされる制限部位とともにフラグメントを縫合した。これらのキメラフラグメントを、AB 3100 Genetic Analyzerで配列決定するために、TOPOクローニング系(Invitrogen)にクローニングするか、またはNIF Fc発現ベクターに直接クローニングした。配列決定したフラグメントを、発現ベクターNIF Fcにサブクローニングした。
キメラ構築物は、以下のように、表示されたヒトおよびマウスCS1由来のアミノ酸を含む。これらの配列は表11に示されている。
hu25/mu75:ヒトCS1の1位〜67位のアミノ酸を、マウスCS1の68位〜224位のアミノ酸に融合したもの(配列番号79)。
mu25/hu75:マウスCS1の1位〜67位のアミノ酸を、ヒトCS1の68位〜227位のアミノ酸に融合したもの(配列番号80)。
hu50/mu50:ヒトCS1の1位〜151位のアミノ酸を、マウスCS1の149位〜224位のアミノ酸と融合したもの(配列番号81)。
mu50/hu50:マウスCS1の1位〜131位のアミノ酸を、ヒトCS1の135位〜227位のアミノ酸に融合したもの(配列番号82)。
hu75/mu25:ヒトCS1の1位〜169位のアミノ酸を、マウスCS1の167位〜224位のアミノ酸に融合した(配列番号83)。
mu75/hu25:マウスCS1の1位〜166位のアミノ酸をヒトCS1の170位〜227位のアミノ酸と融合したもの(配列番号84)。
(一時的形質転換)
6ウェルプレートにウエル当たり2×105個の293/T細胞をプレートした。24時間後、0.15pmolのDNAを、製造業者の指示に従って、FuGene6(Roche)と混合して、細胞に加えた。24時間後、その細胞は、Ultra−low IgG血清(Invitrogen)とともに12mlの培地を含むT75フラスコに移した。3日後、上清を回収して、ELISAによってFcタグを検出することにより、CS1−Fc融合タンパク質が存在していることを確認し定量化した。
(エピトープマッピングELISA)
ヒト、マウス、またはヒト−マウスのキメラCS1−Fcタンパク質を、さまざまな抗CS1抗体を結合する能力について、サンドウィッチELISA法を用いて評価した。捕捉抗体である抗ヒトガンマ(Jackson Immunological)を、1.8μg/mlの炭酸緩衝液中でELISAプレート(Immulon 4 HBX−ThermoLabSystems)に一晩結合させた。ブロッキングした後、CS1構築物でトランスフェクションされた293/T細胞から100μlの上清を37℃で1時間インキュベートし、次いで、2μg/mlの抗CS1抗体とともにインキュベートした。そして、ホースラディッシュペルオキシダーゼに結合体化した抗マウス抗体を、0.5μg/mlでインキュベートし、その後、3,3’,5,5’ テトラメチルベンジジン(Sigma)で検出した。各アッセイは、少なくとも2回、2つの異なったトランスフェクションを用いて行った。
CS1抗体が、ヒトCS1には結合するが、マウスCS1には結合しないことは、以前から測定されている。しかし、この2つの種に由来するCS1の細胞外ドメインは、ヒトCS1とマウスCS1との間のキメラを作製して、抗体が結合するタンパク質の領域を局在化することが可能にするのに十分に類似している。ヒトおよびマウスのCS1の細胞外ドメインのキメラを含む発現構築物を293/T細胞にトランスフェクションして、それらのCS1抗体への結合能力について評価した。予想通り、CS1抗体は、ヒトCS1に結合したが、マウスCS1には結合せず、3つの異なるエピトープ群に該当することが判明した(表12)。
CS1抗体Luc34、LucX、Luc69、およびLuc90は、ヒトCS1の最初の151アミノ酸、およびマウスCS1の後半部を含むhu50/mu50に結合する。したがって、これらの抗体は、ヒトCS1細胞外ドメインの前半部に結合する。しかし、これらの抗体のいずれも、ヒトCS1の最初の67アミノ酸を含むhu25/mu75や、ヒトCS1の68位〜227位のアミノ酸を含むmu25/hu75のいずれにも結合しない。したがって、これらの抗体に対するエピトープは、これらの領域の両方で重複し、これらの構造体の接合部(67位〜68位のアミノ酸)に位置し得る。CS1抗体のLuc5およびLuc38は、ヒトCS1の最初の151アミノ酸を含むhu50/mu50、およびヒトCS1の68位〜227位のアミノ酸を含むmu25/hu75の両方に結合する。すなわち、これらの抗体はヒトCS1の68位〜151位のアミノ酸の間に結合する。調べたヒトCS1で、Luc4、Luc12、Luc23、Luc29、Luc32、Luc37、およびLuc63が結合する最小の領域はmu75/hu25である。すなわち、これらの抗体は、ヒトCS1細胞外ドメインのC末端の58アミノ酸に結合する。
本研究によって、CS1抗体結合部位が、以下の3つのエピトープクラスターに分類された。
(1)Luc90によって規定されるエピトープ。hu50/mu50(配列番号81)に結合する。このエピトープは、ヒトCS1の約23位のアミノ酸残基から約151位のアミノ酸残基までをカバーする。このエピトープは、細胞外ドメインのドメイン1(Vドメイン)の内部に存在する。このエピトープも、Luc34、LucX(LucX.1およびLucX.2を含む)、およびLuc69によって認識される。
(2)Luc38によって規定されるエピトープ。mu25/hu75(配列番号80)およびhu50/mu50(配列番号81)に結合する。このエピトープは、ヒトCS1の約68位のアミノ酸残基から約151位のアミノ酸残基までをカバーしている可能性がある。このエピトープはまた、Luc5によって認識される。
(3)Luc63によって規定されるエピトープ。mu75/hu25(配列番号84)に結合する。このエピトープは、ヒトCS1の約170位のアミノ酸残基から約227位のアミノ酸残基までをカバーする。このエピトープは、ヒトCS1のドメイン2(C2ドメイン)の内部に存在する。このエピトープはまた、Luc4、Luc12、Luc23、Luc29、Luc32、およびLuc37によって認識される。
上記の実施例が決して本発明の真の範囲を制限するものではなく、むしろ例示的目的で提示されていると理解される。本明細書で引用した全ての刊行物、一連の登録番号、および特許出願は、個別の刊行物、登録番号、または特許出願が具体的かつ個別に示され参考として援用される場合と同様に、本明細書において参考として援用される。