JP2007530080A - 心臓の電気生理学的安定性を評価し、心臓の振動を変化させるシステム及び方法 - Google Patents
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Abstract
ペーシング・パターンを心臓に供給する方法が開示される。本方法は、ペーシング・パターンに対する心臓の応答を測定すること、診断データを測定された応答から計算することを含む。測定された応答は、ペーシング・パターンの複数の心拍を表わす一連の心電図を含み、診断データは、時間領域及び周波数領域のうちの一つの領域のデータを含む。
Description
本発明は、心臓の電気生理学的安定性を評価し、心臓の振動を変化させるシステム及び方法に関する。
心臓疾患が死亡率に占める割合は、他のどの国よりも米国において高くなっている。米国では毎年、心臓突然死(SCD:Sudden Cardiac Death)で亡くなる人は約400,000人に達し、心不全で亡くなる人は約260,000人に達する。ほとんどの心臓突然死(SCD)は、心室頻拍(VT:Ventricular Tachycardia )または心室細動(VF:Ventricular Fibrillation)によって生じる。VT(心室頻拍)/VF(心室細動)に起因する心臓突然死(SCD)の危険にある患者を識別することは、大きく困難な取り組むべき作業として残されている。心不全が流行伝染病のような勢いで米国において広がりつつあるということも問題になっている。疾患の進行または疾患からの回復を追跡する方法によって、治療医に、誰に追加の治療を受けさせるべきか、あるいは誰に対する治療を変更すべきかについて注意を喚起することができる。
ペーシング・パターンを心臓に供給する方法が開示される。
共振ペーシング・パターンを患者の心臓に供給する方法。心臓は、振動を生成する複数の振動子を有する。共振ペーシング・パターンの変化が複数の振動子の各々と共振することにより、複数の振動子の各々の振動の位相を共振ペーシング・パターンに同期させる。
心臓に供給されるペーシング・パルスを生成するパルス発生器と、体内に設置され、共振ペーシング・パターンを有するペーシング・パルスを心臓に供給する電極とを含む心臓ペーシング装置。
非共振ペーシング・パターンを患者の心臓に供給する方法。心臓は、振動を生成する複数の振動子を有する。非共振ペーシング・パターンの変化が複数の振動子の各々と共振しないことにより振動の振幅を小さくする。
心臓に供給されるペーシング・パルスを生成するパルス発生器と、体内に設置され、非共振ペーシング・パターンを有するペーシング・パルスを心臓に供給する電極とを含む心臓ペーシング装置。
ペーシング・パターンを心臓に供給すること、ペーシング・パターンに対する心臓の応答を測定することであって、測定された応答は、ペーシング・パターンの複数の心拍を表わす一連の心電図を含む、測定すること、診断データを測定された応答から計算することであって、診断データは時間領域及び周波数領域のうちの一つの領域のデータを含む、計算することを含む方法。
心臓の複数の応答を測定することにより患者を特徴付けること、特徴付けに関する心臓の複数の応答を保存すること、ペーシング・パターンを心臓に供給するときに患者をモニターすること、心臓の振幅応答及び位相応答のうちの一つを制御することを含む方法。
心臓の複数の応答を収集することであって、複数の応答は心臓の連続かつ重複する心拍群に対応する、収集すること、複数の応答の各々の位相を求めること、複数の応答のうちの一つの応答の位相が先行する応答の位相に対して反転している場合に複数の心拍のうちの一つを取り除くことを含む方法。
本発明については、以下の説明及び添付図面を参照することにより一層深く理解することができ、これらの図では、同様の構成要素には同一の参照番号を付している。本発明は、系が不所望の挙動を示す可能性を検出して、定量化する診断方法を含む。本発明は更に、不所望の挙動による影響を最小化するための心臓ペーシングによる治療方法を含む。再分極相交互現象(repolarization alternans)は主要な不所望の挙動であり、かつ心臓の電気生理学的安定性が低下している兆候である。心臓の電気生理学的安定性の低下は、心室性頻拍の危険が高くなっていることを示し、かつ/あるいは心筋症が心不全を有する人の中で進行していることを示している。進行中の再分極相交互現象は不整脈が発現し易い状態でもあり、この状態によって心室性頻拍が発症し易くなる。
図1は、例示としての診断方法及び/又は治療方法1の概要を示し、この診断方法及び/又は治療方法により本発明の例示としての実施形態に使用する各ステップの概要が提供される。個別の例示としてのステップの各々について以下に更に詳細に記載する。ステップ5では、患者に機器を取り付けて診断方法及び/又は治療方法を実施する。一般的に、機器は、電気的シミュレーションを心臓に対して行なう心臓ペーシング装置と、心臓ペーシング装置により提供される電気的シミュレーションに対する心臓の応答をモニターする心臓モニター装置と、心臓モニター装置が供給する信号を解析する信号処理装置と、を含む。次に信号解析結果を使用して心臓ペーシング装置のプログラム内容を変える、または出力を医師に供給する。この技術分野の当業者であれば、ペーシング機能、モニター機能、及び信号処理機能を実行する種々の装置があることが分かるであろう。例えば、心臓ペーシングは、経静脈ペーシング用カテーテル、植え込み型ペースメーカー(PM:Pacemaker )、植え込み型除細動器(ICD:Implantable Cardioverter Defibrillator)などを使用して行なうことができる。モニター機能は、表面心電図、心内電位図、圧力変換器、心エコー図などを使用して実行することができる。信号処理機能は、コンピューティング機器で動作するソフトウェアにより、またはファームウェアを含む、あるいは含まないアナログ及び/又はデジタル・ハードウェア機器により実行することができる。
ステップ10では、特定のペーシング・パターンが心臓ペーシング装置によって供給され、ペーシング・パターンは連続インパルスであり、このインパルスは心臓による特定の応答を誘発するように設計される一時的変化または振幅変化を有する。特定のペーシング・パターンの例について以下に更に詳細に説明する。ステップ15では、心臓モニター装置が、ステップ10で供給される特定のペーシング・パターンに対する心臓の応答を取得して記録する。ステップ20では、信号処理装置が心臓モニター装置により供給される信号を解析して心臓の再分極信号を検出して、再分極過程を定量化する。この検出の結果、ステップ25でフィードバック信号を生成して心臓に供給するペーシングの設定を変えることができる。例えば、フィードバック信号によって、心臓ペーシング装置から供給されるペーシング・パターンのレート、パターン、または振幅を変えることができる。好ましい心臓の動態が信号解析から得られた場合、この動態を決定プロセスにおいて使用して現在のペーシング・パターンを永続させる、すなわちペーシング・パターンを永久的に、あるいは半永久的に患者に供給して治療効果を患者に還元することができる。好ましくない心臓の動態が信号解析から検出された場合、この動態を決定プロセスにおいて使用してペーシングの平均周期長(CL:Cycle Length)、ペーシング・パターンのCL(周期長)変化の大きさを変える、あるいはペーシングのパターンを変える。一方、信号処理装置は、再分極の検出に基づいて、心臓の電気生理学的安定性を定量化して、ステップ30の結果を医師に提供する。この医師は、結果を解釈して、患者に対するリスクの程度及び心筋症の程度を評価することができる。
方法1の診断部分の基本はT波交互脈(TWA:T-Wave Alternans)の測定であり、このT波交互脈は、患者に心室頻拍/心室細動(VT/VF)が発現するリスクの重要な予測因子として確認されており、電気生理学的研究(EPS: Electrophysiologic Study)において参照される。心筋梗塞発症後の850人の患者に関するプロスペクティブ研究では、9個の他のリスク予測因子に比べると、TWA(T波交互脈)及び左室駆出率(left ventricular ejection fraction)だけがVT/VFの独立予測因子であった。Am J Cardiol., 2002;89:79-82に掲載されたIkeda T., Saito H., Tanno K.他による「心筋梗塞発症後の急性心臓死の予測因子としてのT波交互脈(T-wave alternans as predictor for sudden cardiac death after myocardial infarction)」と題された論文を参照されたい。同様に、電気生理学的研究(EPS:Electrophysiologic Study)の対象となった313人の患者に関する別のプロスペクティブ研究では、TWA(T波交互脈)によって、心室不整脈の予測に関する心室刺激を行なうだけでなくプログラムする。Journal of the American College of Cardiology. 2000; 36: 2247-2253に掲載されたGold MR, Bloomfield DM, Anderson KP 他による「不整脈リスクの層別化に関するT波交互脈、信号平均心電図、及び心室プログラム刺激の比較(A comparison of T-wave alternans, signal averaged electrocardiography, and programmed ventricular stimulation for arrhythmia risk stratification)」と題された論文を参照されたい。左室駆出率が40%未満の542人の患者に関する別のプロスペクティブ研究では、TWAが駆出率に無関係な強力な死亡予測因子及び収縮機能障害の原因であった。American College of Cardiology Late Breaking Clinical Trials, Chicago 2003に掲載されたBloomfield DM による「鬱血性心不全におけるT波交互脈(T-Wave Alternans in Congestive Heart Failure)」と題された論文を参照されたい。TWAはまた、心筋梗塞発症後の左室駆出率の低下に相関する。Journal of Pacing and Clinical Electrophysiology 2001; 24: 957-961 に掲載されたSchwab JO, Webber S, Schmitt H他による「急性心筋梗塞発症後のT波交互脈の発生率及び他の予測パラメータとの相関:プロスペクティブ研究の成果(Incidence of T-wave Alternation After Acute Myocardial Infraction and Correlation with Other Prognostic Parameters: Results of a Prospective Study)」と題された論文を参照されたい。従って、TWAは、心不全における心筋症の程度を評価するのに有用であり、かつTWAの変化を使用して心不全の進行または心不全からの回復を識別することができる。
心臓の各筋細胞は、細胞内電位が負の分極状態で静止している興奮性細胞膜を有する。膜の興奮は、膜の脱分極が生じるとき、すなわち細胞内電位が相対的に正になるときに生じる。膜興奮のプロセスは、隣接細胞から筋細胞群を電気的に接続して合胞体にする細隙結合を通過する脱分極電流の注入及び脱分極イオン電流を通電する心筋細胞膜のイオン・チャネルを介した輸送によって変わる。別の構成として、興奮は、与えられた刺激によって筋細胞の脱分極が生じるとき、すなわち心臓ペーシングを適用するときに生じる。興奮に続いて、追加のイオン・チャネルを介したイオン電流の通電が行なわれて脱分極が維持され、次に他のイオン・チャネルを介した通電により再分極が生じる。更に、細胞内イオン電流が心筋細胞膜イオン電流と相互反応して活動電位持続時間及び活動電位挙動に影響を与える。従って、心臓は興奮媒質として観察することができ、この場合、「興奮し得る(excitable )」とは、筋細胞が分極状態と脱分極状態との間で変化する能力を指し、「媒質(media )」とは、電気的に接続される筋細胞の合胞体から成る心臓を指す。
以下に説明するように、心臓の電気生理学的安定性を低下させる疾患プロセスによって細胞の電気生理が変化し得るので、筋細胞活動電位持続時間が変化し、かつ活動電位挙動が揺れながら変化する現象、例えば交互に繰り返す心拍が変化する現象は再分極相交互現象と呼ばれる。従って、各筋細胞は振動子として機能し得る。幾つかの現象から、細胞内のカルシウム電流の振動が心筋細胞膜イオン電流と大きく相互に反応して活動電位持続時間の変化及び/又は活動電位挙動の揺れを生じさせることが分かる。筋細胞は、細隙結合を通しての隣接筋細胞との電気的な相互依存性を有し、この細隙結合によって局所的な振動が一致して、すなわち同じ振動位相で生じる。筋細胞の間の距離が長くなると、これらの筋細胞の間の電気的な相互依存性が小さくなる。これにより、心臓の異なる領域の筋細胞は一致しない形で振動し得る、すなわち振動が心臓の離れた領域で位相が異なる形で生じ得る。従って、心臓は、興奮媒質の中で接続される複数の振動子を有して、振動子が局所的に相互依存して、かつ離れた位置で独立して運動するものとして観察することができる。
脱分極のタイミングは活動電位持続時間に影響を及ぼすことができるので、以下に更に説明するように、振動位相に影響を与え、かつ振動位相を制御することができる。心臓ペーシングに対する各筋細胞の脱分極タイミングは、興奮媒質の伝導速度及び心臓ペーシングを適用する部位からの筋細胞の距離によって変わる。伝導速度は心拍毎に変化し得る。心臓ペーシングのタイミングの変化が、伝導速度の変化に心臓ペーシングの適用部位からの距離を相乗した値よりも大きい場合、心臓ペーシングのタイミングの変化によって、電気的回復過程を通して興奮媒質中の振動子に均一の影響を与えることができる、すなわち振動子の全てに同じ位相で入力が行なわれる。この原理は図26aに更に示され、この図は、先行する心拍に応答して伝導速度が遅くなる様子を示している。この例では、2つの心拍が1050,1060として示され、この場合、第1心拍1050は標準のCL(周期長)を有し、第2心拍1060は標準のCL(心拍1065は破線で示す)よりも20msだけ早い時点に位置する。伝導速度が遅くなることによって、発生タイミングの早い心拍1060が心臓の遠位領域において10msだけ遅くなるが、刺激のタイミングは依然として前の刺激よりも10msだけ早い。従って、心筋の全ての領域が影響を均一に受ける。第1心拍1070が標準のCLを有し、かつ第2心拍1080が20msだけ早い心拍である第2の例では、図26bは、伝導速度を大きくして心臓の遠位領域に5msの早期化を生じさせることにより、当該遠位領域に前の刺激よりも25msだけ早い刺激のタイミングを生じさせる様子を示している。ここでもまた、心筋の全ての領域が影響を均一に受ける。CL及び伝導速度の変化によって変わるが、CLを変化させることによって、心臓内では空間的に離間しているにも拘らず振動子の全てに対して、均一な影響を与えることができる。従って、心臓ペーシングを使用して興奮媒質の中で接続される複数の振動子を変調させることができる。この理論的枠組みに対する理解は本発明の方法における基本となる。
T波は心室再分極を心電図(ECG:Electrocardiogram )として表わしたものである。TWA(T波交互脈)は、活動電位持続時間及び活動電位挙動の心拍毎の変化を心電図(ECG)として表わしたものである。動物モデルでは、TWAは、瘢痕組織近傍のVF(心室細動)の発症及びVT(心室頻拍)の発症をもたらす機能的ブロックの原因であるとして示されてきた。TWAは、VT/VFの前に患者症状報告及びVT/VFの犬モデルにおける植え込み型除細動器(ICD)記録に報告されてしまう。従って、TWAは、VT/VFの発症に力学が関与し得ることに起因するVT/VFリスクの強力な予測因子となり得ると考えられる。更に、病態を表わすTWAを取得することができる能力を持っているということは、心筋症の程度との電気生理学的相関を行なうことができることを意味し、この能力を利用して心不全を有する患者の心筋症の程度の変化を識別し、定量化することができる。
正常状態のヒトの心臓は安定な系である。この系は電気的に脱分極して機械的収縮を開始し(収縮期)、電気的な再分極過程に入って、各心拍により心室の機械的拡張が可能になる(拡張期)。60心拍/分の平均心拍数を有する人は、65歳になるまでに20億回もの脱分極及び再分極を繰り返す。系としての心臓は、成長、加齢、心拍数の増大及び減少、交感神経ストレス及び副交感神経ストレス、電解質の変化、並びに投薬のような多くの変化に直面しても安定を維持する必要がある。心筋梗塞、高血圧、及び心不全のような共通の疾患プロセスは、これらの同じストレスに対する系の安定性を低下させるように作用し得る。疾患を発症している系の安定性を識別することは、不安定になる可能性のある系を識別するためのアプローチである。心臓の観点からすると、不安定な系に起因する系の不全によってVT/VFが発症し得る。従って、これらの変化によって生命に危険が生じる前に、系の安定性の低下を識別することが非常に望ましい。
系の安定性は、「安定(stable)」から「ぎりぎりの安定(marginally stable )」を経て「不安定(unstable)」に至る連続状態により特徴付けることができる。定常状態にある安定な系では、入力が行なわれない場合には出力の振動がない。定常状態にあるぎりぎりで安定な系では、入力が更に行なわれない場合でも出力の振動が生じる。定常状態にある不安定な系では、出力が際限なく大きくなる。これらの原理を心臓の電気生理学的安定性に適用することができる。安定な心臓は不整脈に対して強いが、ぎりぎりで安定な心臓は不整脈を発現し易く、不安定な心臓は不整脈を直ちに発現する。
定常状態にあり、かつ一定の心拍数で鼓動する心筋細胞が正常な応答を示すことにより、活動電位持続時間及び活動電位挙動が一定に近づく。心臓ペーシングを心臓全体の領域に適用する場合、心臓の各領域における心筋の活動電位は一定の持続時間及び挙動を示すようになる。ECG(心電図)のT波は、全ての心筋活動電位の再分極相の効果の総和である。従って、T波は、定常状態にある安定な心臓においては一定の挙動に近づき、T波には心拍毎の大きな変化、すなわちTWA(T波交互脈)が観察されない。心臓の電気生理学的安定性が低下する結果、定常状態において再分極過程で生じる膜電位振動が観察される。再分極過程で生じる固有の膜電位振動は2心拍毎に生じる。これがTWA(T波交互脈)の出現を示す表面ECG(心電図)に現れる。複数の細胞電気生理学的機構がTWA(T波交互脈)の出現に関与すると説明されている。VT/VFの頻度を高める複数の疾患プロセスは、心不全、心筋虚血/心筋梗塞、高血圧性心疾患、及びQT延長症候群のようなTWA(T波交互脈)の出現を含むと説明されている。定常状態におけるTWA(T波交互脈)の出現により、心臓の電気生理がぎりぎりの安定状態になっていることが確認される。不安定な系が応答すると、振動が連続的に増大する。不安定な系を心臓電気生理学的に解析すると、心室不整脈が生じるまで振動が増大する。
定常状態にある系の安定性をテストすると、系の安定性に関する重要であるが限定された見解が得られる。系の安定性を特徴付ける更に別の方法では、系のインパルス応答及び周波数応答を評価する。相対的安定性は、系が振動を抑制する期間によって推定することができる。定常状態では、振動の抑制を高速に行なう系は、振動を抑制するために長時間を要する系よりも安定である。振動を抑制するために要する時間が長いことにより、ぎりぎりで安定な系を識別することができる。臨床的に、これらの応答は重要である、何故なら、心臓は異なる心拍数、心拍数変動、並びに心房性期外収縮及び心室性期外収縮に対して安定を維持する必要があるからである。
心臓は安定性テストを受ける系であり、この場合の安定性テストでは、入力は心臓ペーシングであり、出力は心臓モニター装置によって測定される、例えば表面ECG(心電図)または心内電位図である。心臓(系)のインパルス応答のテストは、一時的変化または振幅変化を心臓ペーシング(入力)に生じさせ、心電図(出力)の応答を測定することにより行なうことができる。インパルスの振幅は、CL(周期長)の一時的変化または心臓ペーシングの電圧振幅変化により変調させることができる。例えば、大きなインパルスは、代償性休止期を有する発生タイミングの早い心室性収縮(PVC:Premature Ventricular Contraction )とすることができる。小さいインパルスは、正常範囲の心拍数変動の内部に含まれるCLの変化とすることができる。小さいインパルスはまた、心臓ペーシングの電圧の増大とすることができ、この増大によって実効電極が大きくなり、かつ心室の脱分極までの平均心拍間隔が短くなる。インパルスの符号は、発生タイミングの早い心拍によるのではなく心拍を遅らせることにより反転させることができる。ステップ応答は、CLが長くなる、あるいは短くなるようなCLの急峻な変化により評価することができる。
系の周波数応答は、着目周波数の曲線に沿った一連のインパルスによってテストすることができ、この周波数応答を使用して系の位相及び利得を決定する固有の平方根を求めることができる。この操作は、電気回路のBodeプロットの微分に類似する。系の固有振動出力の周波数が既知であるので、当該同一の周波数の振動入力を供給することにより系内部の共振をテストすることができる。臨床的に、R- R間隔が一定の交互脈がTWA(T波交互脈)の出現に関与することが分かっている。これは、系への入力(R- R間隔が一定の交互脈)が系の出力(TWA)と共振するからである。周波数応答テストは、従来のTWAテストよりも系安定性評価のためのより強力なツールとなることができるので、出力と共振する入力は大きな利得を有することができ(振動を増幅する)、かつ出力と共振しない入力は小さな利得しか有することができない(振動を抑制する)。
心拍数変動は通常、交感神経による心拍数の変調及び副交感神経による心拍数の変調により生じる。心拍数変動の減少は、VT/VFリスクの予測因子及び心不全の進行の予測因子として確認されている。副交感神経活動によってVT/VFを抑制することができ、かつ心不全によって副交感神経抑制が生じると考えられている。しかしながら、心拍数変動による心臓への直接的な影響はこれまで、副交感神経活動と切り離して評価されてはいない。
心室頻脈(VT/VF)は普通、心房性頻脈性不整脈及び心室期外収縮のような動的ストレスにより突然起きる。心臓再分極は適応的であり、かつ普通、振動を迅速に小さくすることによってこれらの摂動に直面しても安定状態を維持する(正常な電気生理学的安定性)。心筋症は異常な細胞電気生理を引き起こし、この異常な細胞電気生理が振動を小さくする心臓の能力を弱める(ぎりぎりの電気生理学的安定性)。VT/VFを発現し易い心臓は、期外収縮に応答して振動するように誘発され得る。本発明の例示としての実施形態は、再分極相交互現象に関するテスト方法を含み、この方法は、心臓の電気生理学的安定性の識別を可能にする手段として実行することができるように構成される。例示としての方法は「動的T波交互脈テスト」と呼ばれ、共振原理に基づく。
心臓が再分極相交互現象(ぎりぎりの電気生理学的安定性)を示す可能性がある場合、この現象は再分極相交互現象に共振するパターンに合わせたペーシングにより誘発することができる。一般的に、例示としての動的T波交互脈テストは、(1)系に動的にストレスを与え、(2)ストレスに対する系の電気生理学的応答を測定し、(3)ストレスに対する系の振動応答を定量化する方法である。不規則にプログラムされたCL(または振幅)を有する心臓ペーシングを使用して動的ストレスを生成する。系の電気生理学的応答を表面ECGまたは心内電位図(単極または双極)で測定する。心電図の信号処理により生成される指標を使用してペーシング誘発振動の振幅及び再分極相交互現象を弱める系の能力を定量化する。次に電気生理学的安定性をこれらの指標で定量化する。別の実施形態では、系の周波数応答を使用して安定性をテストすることができる。以下に更に詳細に記載するように、本発明によって、心臓系の時間領域応答及び周波数領域応答をモニターし、かつ制御することができる。心臓の電気生理学的安定性は、時間領域応答または周波数領域応答により生成されるいずれのパラメータを使用しても求めることができる。
正常な心臓は再分極過程で生じる膜電位振動を迅速に抑制する(正常な心臓の電気生理学的安定性)。これは振動の大きな減衰速度として測定することができ、この測定では信号処理装置に搭載される例示としての解析ソフトウェアに組み込まれるデジタル信号処理方法を使用する。ValtはTWAの電圧振幅である。振動の減衰速度は、振動振幅の1次導関数である(dValt/dt)。再分極過程で生じる膜電位振動を起こす可能性のある心臓は、再分極過程で生じる膜電位振動を起こす可能性のない心臓よりも振動の減衰速度が小さい(ぎりぎりの心臓電気生理学的安定性)。従って、振動の減衰速度(dValt/dt)は相対的電気生理学的安定性の識別子である。本発明の例示としての実施形態では、繰り返しパターンのCL(周期長)の不規則性に合わせる。周期長の不規則性のタイミングは、前の心拍の再分極過程で生じる膜電位振動に共振して大きな振幅の振動を、ぎりぎりの電気生理学的安定性を有する心臓に生じさせるように設定される。ぎりぎりの電気生理学的安定性と正常な電気生理学的安定性とを区別する第2の識別子は振動の振幅(Valt)である。電気生理学的安定性の派生的指標は、減衰速度及び振幅振動の両方の指標であり、T波安定性指標(TWSI:T-Wave Stability Index)と命名される。TWSIは、交互脈の減衰速度(dValt/dt)を交互脈の振幅(Valt)で割った値に等しい。両方の識別子を取り入れることにより減衰速度を振動振幅に正規化し、かつ指標によって相対的T波安定性の差別化を最大限に行なう。
図1に戻ってこの図を参照しながら、次の説明においてステップ10の心臓ペーシングについて更に詳細に説明する。動的ペーシング手順は心臓ペーシング法であり、この心臓ペーシング法を使用して振動を誘発し、振動減衰を観察する。振動を制御して誘発する操作は、複数のペーシング・パターンを使用して行なうことができる。この技術分野の当業者であれば、基本パターンの変形を使用して同じ作業を実行することができることが分かるであろう。本発明は全てのペーシング・パターンを含むように構成され、これらのペーシング・パターンは一時的変化または振幅変化にペースが合うように設定され、この一時的変化または振幅変化は振動を誘発し、パターンが繰り返されると前の振動に共振する。本発明ではまた、ペーシング・パターンに、振動の誘発を抑えた期間を取り入れる。
次の説明は例示としてのペーシング・パターンに関するものであり、ペーシング・パターンを変更して振動を誘発することができる。各大文字はペーシングCL(周期長)または振幅を表わす。下線を付した文字は繰り返しパターンを表わす。次のパターンを使用して振動を誘発することができる。
...ABABAB...
...ABCABCABC...
...ABCDABCDABCD...
...ABCDEABCDEABCDE...
...ABCDEFABCDEFABCDEF...
...ABCDEFGABCDEFGABCDEFG...
...ABCDEFGHABCDEFGHABCDEFGH...
上記パターンの全てを使用して振動を誘発するが、幾つかのパターンは相対的T波安定性の測定に対して更に効率的である。第1パターン(AB)は振動減衰が観察される期間が無い振動を誘発する入力を供給する。これは共振ペーシング・パターンの第1例である。パターン(ABC),(ABCDE),及び(ABCDEFG)のペースを、振動を誘発することができ、かつ振動減衰が観察されるパターンに合わせる。しかしながら、繰り返しパターンは、パターンが繰り返されると180°の位相シフトに起因して前のパターンとは共振しない。その結果、これらのペーシング・パターンは再分極過程で生じる短い時間の膜電位振動を誘発し、続いてこの振動はパターンの繰り返しによって抑制することができる。本発明は、一時的変化または振幅変化のペースに合うように構成される全てのペーシング・パターン、すなわち非共振パーシング・パターンを含むようにしており、一時的変化または振幅変化が振動を誘発し、かつパターンの繰り返し時に前の振動とは位相が180°異なる振動を誘発する。これらの非共振ペーシング・パターンの診断上及び治療上の使用について以下に更に説明する。パターン(ABCD),(ABCDEFG)、及び(ABCDEFGH)は振動を誘発し、振動減衰が観察される期間を提供し、パターン繰り返し時に前の振動に共振する振動を誘発する。これらは、共振ペーシング・パターンの更に別の例である。共振ペーシング・パターンはまた、周波数領域において、いかなる一時的ペーシング・パターンとしても定義することができ、この一時的ペーシング・パターンによって、交互脈の出現頻度の高周波数成分が生じる。
...ABCABCABC...
...ABCDABCDABCD...
...ABCDEABCDEABCDE...
...ABCDEFABCDEFABCDEF...
...ABCDEFGABCDEFGABCDEFG...
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上記パターンの全てを使用して振動を誘発するが、幾つかのパターンは相対的T波安定性の測定に対して更に効率的である。第1パターン(AB)は振動減衰が観察される期間が無い振動を誘発する入力を供給する。これは共振ペーシング・パターンの第1例である。パターン(ABC),(ABCDE),及び(ABCDEFG)のペースを、振動を誘発することができ、かつ振動減衰が観察されるパターンに合わせる。しかしながら、繰り返しパターンは、パターンが繰り返されると180°の位相シフトに起因して前のパターンとは共振しない。その結果、これらのペーシング・パターンは再分極過程で生じる短い時間の膜電位振動を誘発し、続いてこの振動はパターンの繰り返しによって抑制することができる。本発明は、一時的変化または振幅変化のペースに合うように構成される全てのペーシング・パターン、すなわち非共振パーシング・パターンを含むようにしており、一時的変化または振幅変化が振動を誘発し、かつパターンの繰り返し時に前の振動とは位相が180°異なる振動を誘発する。これらの非共振ペーシング・パターンの診断上及び治療上の使用について以下に更に説明する。パターン(ABCD),(ABCDEFG)、及び(ABCDEFGH)は振動を誘発し、振動減衰が観察される期間を提供し、パターン繰り返し時に前の振動に共振する振動を誘発する。これらは、共振ペーシング・パターンの更に別の例である。共振ペーシング・パターンはまた、周波数領域において、いかなる一時的ペーシング・パターンとしても定義することができ、この一時的ペーシング・パターンによって、交互脈の出現頻度の高周波数成分が生じる。
図2は、例示としての心臓共振ペーシング・パターン50を示している。共振ペーシングは、高周波数成分のペーシング変化(例えば、周期長または振幅)を心臓の振動子領域にもたらす。以下に更に詳細に説明するように、本発明の例示としての実施形態では、振動領域が0.5周期/心拍領域に位置する例を考察する。従って、本例の共振ペーシング・パターンは、0.5周期/心拍領域内に高周波数成分を有するいずれかのパターンとすることができる。ペーシング・パターン50の一時的パターンでは、周期がわずかに早まった周期長を有するペーシングを、かなり高くなった心拍数の一定基線周期長の内側の偶数番号区間で行なう。このパターンの一時的変化を周波数領域で解析すると、高周波数成分が0.25及び0.5周期/心拍領域で得られる。ペーシング・パターン50の例では、発生タイミングの早い心拍は20msだけ早く、これは普通の生理的範囲の正常な心拍数変動に等しい。特定パターンは上述の(ABCD)パターンの変形であり、この変形パターンでは、周期長(C)及び(D)は(B)に等しいので、パターンは(A,B1,B2,B3)と記載される。ペーシング・パターン50の行54は、行52に示す複数のループの各々に関するA,B1,B2,B3の繰り返しパターンを示している。ループ1...nの各々は、A,B1,B2,B3の同じ繰り返しパターンを有する。例示としてのペーシング・パターン50は、535ms(ミリ秒)の周期長(A)及び555msの周期長(B)を行56に示すように有する。結果として得られる、例示としての全体としての心拍数は109bpmである。この技術分野の当業者であれば、診断テストによって心臓を所定の範囲の心拍数(例えば、80bpm,90bpm,100bpmなど)に渡ってチェックして心臓の電気生理学的安定性を判断することができることが分かるであろう。
図2は、ペーシング・パターン50の3つの完全連続ループを示し、更にペーシング・パターン50が、特定のテスト及び/又はテスト対象患者に基づく任意の個数nのループに渡って延び得ることを示している。図2に示す例示としての繰り返しペーシング・パターン50には、振動を誘発する操作、振動減衰が観察される期間を提供する操作、及びパターンの繰り返し時に前の振動と位相が同じになる(共振する)振動を誘発する操作の3局面を取り入れる。心臓ペーシングは、どのような数の構成においても実行することができる。VT/VFリスクを識別するための好適なペーシング設定は、十分な房室結節機能が観察される場合の心房ペーシングまたは短い房室遅延を有する房室連続ペーシングのいずれかである。VT/VF及び心筋症のリスクをモニターするための好適なペーシング設定は、十分な房室結節機能が観察される場合の心房ペーシングまたは短い房室遅延を有する心房心室連続ペーシングのいずれかである。両心室ペーシング・システムが植え込まれている場合、VT/VF及び心筋症のリスクをモニターするための好適なペーシング設定は、短い房室遅延を有する右心房心室(atrial-right ventricular)連続ペーシングまたは短い房室遅延を有する両心房心室(atrial-bi ventricular )連続ペーシングのいずれかである。
図3a〜dは更に別の例示としての心臓共振ペーシング・パターンを示している。2つの完全ループが例示としての各ペーシング・パターンに関して示され、数字は各心拍の周期長をミリ秒単位で表わしている。図3aはペーシング・パターン60を示し、このペーシング・パターンは、2つの交互する周期長を有する心臓共振ペーシング・パターンである。図3bは、4心拍ペーシング・パターンであるペーシング・パターン70を示し、この4心拍ペーシング・パターンは代償性休止期を含む。従って、ペーシング・パターン70に関しては、535msの心拍Aは発生タイミングの早い心拍であり、575msの心拍Bは、発生タイミングの早い心拍の後の心拍であって、代償性休止期を含む心拍であり、555msの心拍C及びDは基線周期長(CL)の心拍である。図3cは、代償性休止期を含まない6心拍ペーシング・パターンであるペーシング・パターン75を示している。図3dは、ハイブリッド6心拍ペーシング・パターンであるペーシング・パターン80を示している。ペーシング・パターン80に関しては、535msの心拍Aは555msの心拍Fよりも前の発生タイミングの早い心拍であり、活動電位持続時間を短くするように作用する。555msの心拍Dは535msの心拍Cよりも長く、活動電位持続時間を長くするように作用する。従って、周期長(CL)の一時的変化は、前の振動に共振し、かつ再分極過程で生じる膜電位振動を誘発する。
図4a〜gは更に別の例示としての心臓の非共振ペーシング・パターンを示している。2つの完全ループが例示としての各ペーシング・パターンに関して示されている。非共振ペーシングは、低周波数成分のペーシング変化(例えば、周期長または振幅)を心臓の振動子の周波数領域に有する。以下に更に詳細に説明するように、本発明の例示としての実施形態では、振動領域が0.5周期/心拍領域に位置する例を考察する。従って、本例における非共振ペーシング・パターンは、低周波数成分を0.5周期/心拍領域の内側に有する任意のパターンとすることができる。しかしながら、異なる周波数の振動領域を有する他の例があり得る。従って、これらの他の周波数領域に関する非共振ペーシング・パターンは、低周波数成分を、特定の振動に関する着目領域に有するパターンである。上述の非共振ペーシングに関する周波数領域定義は、時間領域と周波数領域との間の双対性原理による時間領域定義として言い換えることができる。時間領域における非共振ペーシング・パターンの例は、周期長またはペーシング振幅(pacing amplitude)が一時的に変化するペーシング・パターンであり、この一時的変化によって低振幅振動が誘発され、続いて次の振動誘発が前の振動誘発とは位相が180度だけ異なるようにペーシング・パターンが繰り返される。
図4aは、代償性休止期を含まない3心拍ペーシング・パターンであるペーシング・パターン85を示している。図4bは、代償性休止期を含む3心拍ペーシング・パターンであるペーシング・パターン90を示している。図4cは、代償性休止期を含まない3心拍ペーシング・パターンであるペーシング・パターン95を示している。図4dは、5心拍ペーシング・パターンであるペーシング・パターン100を示している。図4eは、4心拍ペーシング・パターンであるペーシング・パターン105を示している。図4fは、ハイブリッド5心拍ペーシング・パターンであるペーシング・パターン110を示している。図4gは、ハイブリッド6心拍ペーシング・パターンであるペーシング・パターン115を示している。
この技術分野の当業者であれば、これまでの共振ペーシング・パターン及び非共振ペーシング・パターンが、本発明による診断方法を実施するために使用することができるペーシング・パターンの例として提示されていることが分かるであろう。しかしながら、本発明は、診断方法に関して既に説明した基準を満たすものであればどのような数の共振ペーシング・パターン及び非共振ペーシング・パターンも含むことができる。共振パターン及び非共振パターンに関する更に別の治療上の使用方法について以下に更に詳細に説明する。
図1に戻って同図を再度参照すると、ステップ15で取得する心電図を使用して再分極に関連する信号を検出する。この技術分野の当業者であれば、複数の検出方法を利用することができることが分かるであろう。例えば、心室再分極を表面ECGにより検出する、あるいは心内電極(双極誘導構造または単極誘導構造)を使用して検出することができる。VT/VFリスクを識別するための好適な構成では、表面ECGを記録する。VT/VF及び心筋症のリスクをモニターするための好適な心内電位図記録手段は、心室ペーシングからの遠隔電場電位を単極誘導で記録する心電図である。この例としては、デュアル・チャンバー・ペースメーカーを植え込んだ患者であって、短い房室遅延に連続的に合わせた房室を備える心臓を有する患者に関する心房対ペースメーカー・ジェネレータの心電図、ICDを植え込んだ患者に関する除細動器コイル対ICD(植え込み型除細動器)ジェネレータの心電図を挙げることができる。右心室対右心房の心電図または右心室対ペースメーカー・ジェネレータの心電図のような、遠隔電場電位を単極誘導で記録する他の心電図が右心室双極誘導心電図に好適である。
図5aは、再分極を検出する例示としてのプロセス150を示している。この技術分野の当業者であれば、例示としてのプロセス150は、図1の心電図を取得するステップ(ステップ15)及び心電図を解析するステップ(ステップ20)、または図1のステップの一部を含む。ステップ155では、心電図データは、例えばECG(心電図)を1kHz、1〜2μVの分解能でサンプリングして、0.05〜300Hzの帯域ろ過を行なうことにより得られる。複数の心電図を同時に取得することができる。この技術分野の当業者であれば、これらの値は単なる例示としての値であり、かつ取得及び帯域ろ過は、例えばペースメーカーまたはICD(植え込み型除細動器)による取得、心臓内での取得などのような異なる取得方法において異ならせることができることが分かるであろう。次に、デジタル心電図を電気的に保存し、信号処理装置の解析ソフトウェア・パッケージにインポートする、あるいはペースメーカーまたはICD(植え込み型除細動器)の内部のソフトウェアで解析することができる。
図6a〜eは、種々のペーシング・パターンを適用した結果として得られる患者に関する例示としての心電図を示している。この技術分野の当業者であれば、図6a〜eに示す例示としての心電図は、上述した複数のシナリオの各々に関するペーシング・スパイクに合わせた信号平均ECG(心電図)を示していることが分かるであろう。図6a,bは、副伝導路に対するアブレーション治療を受けたか、あるいは心臓疾患を持たない患者に関する心電図を示している。図6aは、第1患者に関する標準の12誘導ECG(心電図)のV2位置で記録される心電図200を示しており、この心電図は、右心房及び右心室に対して550msの一定周期長(CL)で行われる心尖部ペーシングの結果である。曲線202は、ECG(心電図)誘導のV2位置における心臓の平均心電図を示し、平均心電図は、ペーシング・スパイク変動に合わせた全てのデジタルECG(心電図)信号を平均した結果である。Valtmean曲線206は、TWA(T波交互脈)の最大領域を識別するために使用する方法を実施した結果である。Valtmean曲線を識別し、かつ再分極相交互現象の最大領域を識別する方法について以下に説明する。更に、心電図データ全体を使用する他の方法についても説明する。
心臓疾患の兆候が無いこの例示としての患者においては、曲線206はTWA(T波交互脈)が無いことを暗示している。何故なら、曲線206はゼロ電圧からわずかに変化するだけであり、かつ小さな変化がバックグランド・ノイズの範囲内であると認めることができるからである。TWAの有無に関する正確な判断では、以下に説明する方法全体を利用する。従って、心電図200は安定したペーシングが行なわれる正常な電気生理学的安定性を示唆している。
図6bは、図2を参照しながら記載した4心拍共振ペーシング・パターン50を適用した場合の同じ患者に関する心電図210を示している。ここでもまた、曲線212は、心臓の平均心電図を、ペーシング・スパイク変動に合わせた心臓ペーシングの結果として示している。Valtmean曲線216の領域214は、患者の心臓に関して最大の再分極相交互現象を示すECGの100msセグメントを示している。再分極過程で生じる膜電位振動は、領域214によって更に特徴付けられる。この心電図210から分かるように、共振ペーシング・パターンは、測定可能なTWA(T波交互脈)を引き起こす振動を誘発する。既に説明し、かつ以下に更に詳細に説明するように、心臓の健康度は、これらの誘発振動の振幅及び減衰を観察することにより判断することができる。従って、心電図210に示されるTWAは予期される現象である。何故なら、このTWAはペーシング・パターンによって誘発されたからである。患者の心臓の相対的電気生理学的安定性は、誘発振動を弱める心臓の能力によって決まる。
図6c〜eは、心筋梗塞に起因する冠動脈疾患及び心不全を有する第2患者に関する心電図を示している。図6cは、550msの一定周期長(CL)の心房ペーシング及び心室ペーシングを同時に適用したときの第2患者に関する心電図220を示している。曲線222はペーシング・スパイクに合わせた平均心電図を示し、Valtmean曲線226の領域224は、最大の再分極相交互現象を示す100msセグメントを示している。再分極過程で生じる膜電位振動は、この領域224によって更に特徴付けられる。この特定患者においては、心電図220は、安定したペーシングが行なわれるパターンを適用した場合の曲線226が示すように、TWA(T波交互脈)が出現していることを示唆している。TWAの有無に関する正確な判断では、以下に説明する方法全体を利用する。既に説明したように、安定したペーシングが行なわれるパターンを適用した場合のTWAの出現は、電気生理学的安定性がぎりぎりであることを示している。本発明による診断方法によって相対的電気生理学的安定性を判断することになる。
図6dは、図2を参照しながら既に説明した4心拍共振ペーシング・パターン50を適用した場合の同じ患者に関する心電図230を示している。曲線232は、心臓のペーシング・スパイクに合わせた平均心電図を、心房ペーシング及び心室ペーシングを同時に適用した結果として示し、領域234は、最大の再分極相交互現象を示し、かつValtmean曲線236によって特定される100msセグメントを示している。領域234におけるペーシングにより誘発され、かつ再分極過程で生じる膜電位振動の振幅は、大きな振動が4心拍共振ペーシング・パターンにより誘発されたことを示唆している。TWAの振幅及び挙動に関する正確な判断には、以下に説明する方法全体を利用する。患者2に関する領域234は、患者2の電気生理学的安定性が相対的に低いことに起因して、患者1に関する領域216(図6b)よりも遥かに大きい。
図6eは、図4aを参照しながら既に説明した3心拍非共振ペーシング・パターン85を適用した場合の患者2に関する心電図240を示している。曲線242は、心臓のペーシング・スパイクに合わせた平均ECG(心電図)を、心房ペーシング及び心室ペーシングを同時に適用した結果として示し、領域244は、曲線246の下方に検出され、かつ最大の再分極相交互現象を示す100ms領域を示している。領域244において測定され、かつ曲線246により示されるTWAは、3心拍非共振ペーシング・パターンによって、図6cを参照しながら説明した一定周期長(CL)でペーシングを行なう場合に出現したような患者に固有のTWA(T波交互脈)が小さくなったことを示している。種々のペーシング・パターンを適用する治療方法及び治療効果について以下に更に詳細に説明する。
図5aに戻って同図を参照すると、ステップ160では、所定のスパイク検出アレイ(spike detector array)を使用してペーシング・スパイクを確実に識別する(このアレイはフィデュシャリー(fiduciary )と呼ばれることがある)。ペーシング・スパイクは短い持続時間の高周波数変動であり、この変動は表面ECGに現れてペースメーカー出力が届いたことを示す。このスパイクは、ペースメーカーが心臓を刺激するために生成する電気を単純に放電させることにより生じる。ペーシング・スパイクと同様の周波数成分を有し、かつ心電図の残りの部分とは異なる周波数成分を有するように構成されるアレイを使用してペーシング・スパイクを識別することができる。本例で使用したアレイは、シリーズ[−1,−2,−1,2,4,2,−1,−2,−1]により構成した。このアレイに、ペーシング・スパイクを含むと予測される領域の心電図を数学的に畳み込み、畳み込みの最大絶対値の位置がペーシング・スパイク位置と考えられる。ペーシング・パターンは既知であるので(例えば、535,555,555,555)、ペーシング・スパイクを含むと予測される領域は既知のペーシング・パターンに基づいて求めることができる。
心電図のフィデュシャリーは、心電図を取得する環境によって変わる。VT/VFのリスクを、電気生理学的な分析を行なっている間に判断するための好適なフィデュシャリーは、既に説明したペーシング・スパイクである。VT/VFのリスク及び心筋症の程度をモニターするための好適なフィデュシャリーは、ペーシングが供給される場合の双極誘導心電図上のペーシング・スパイクである。心電図解析は、双極誘導心電図のペーシング・スパイクに合わせた同時取得の単極誘導心電図に対して行なうことができる。心電図が心房ペーシングまたは自然のリズムにより取得される場合、好適なフィデュシャリーは、心室が脱分極を起こすことを示す表示子としてのR波の開始である。
ステップ165では、ファイルを再フォーマットし、フィデュシャリーに合わせる。各心電図チャネルを、1次元アレイ(時間)から2次元アレイ(周期数、時間)にフォーマットし直す。更に、複数のペーシング・スパイクの間のタイミングに基づくペーシング・パターンを求める。各周期数の周期における心電図はペーシング・スパイクの前の100msから始まり、ペーシング・スパイクの後の650msまで続く。従って、各データ・セグメントは750msの期間を含む。例えば、図13は、ペーシング・スパイクに合わせた心電図500を示している。心電図500は基線セグメント領域502を70〜90ms範囲に含み、ペーシング・スパイク504を100ms範囲の近傍に含み、QRS506を130〜250ms範囲に含み、T波508を250〜450ms範囲に含む。続いて心電図500は、次の心拍基線セグメント510を590〜610ms範囲に含み、次の心拍ペーシング・スパイク512を620ms範囲の近傍に含み、約650ms範囲で始まる次の心拍QRSの第1部分を含む。データ・セグメント(例えば、ECG500で示すデータ・セグメント)には周期数が割り当てられ、データ・セグメントを2次元アレイに保存する。この技術分野の当業者であれば、ECG500に関して既に説明した範囲は単なる例示であり、かつおおよその値であり、個別の心電図解析システムのそれぞれはその固有の特性を有することが理解できるであろう。
この技術分野の当業者であればまた、ステップ155で得られる生の心電図データに対して、識別ステップ160の前に所定の事前処理を施すことができることが分かるであろう。事前処理は、心電図データを収集する方法がどのような方法であるかによって変わり得る。例えば、2つの単極誘導心電図の引き算を行なって第3の単極誘導ベクトルを事前処理の一部として生成することができる。
更に、ステップ160及びステップ165は、ペーシング装置がペーシングのタイミング及びペーシング・パターンに合わせた心電図を記録する機能を備える場合には実行しなくて済む。このような記録を行なうことができる場合、フィデュシャリーはペーシングのタイミング及びペーシング・パターン自体となる。従って、心電図は心臓ペーシング及びペーシング・パターンに暗示的に合わせられる。
図5aに戻って同図を参照すると、ステップ170では、正常ではない心拍を識別し、ファイル全体を壊すことがないように取り替える。正常ではない心拍が識別される箇所は、平均化した心拍に対する部分サンプリングを行なうことにより生成されるスパース・アレイにより求めることができる。次に、このアレイを、各個々の心拍の該当するポイントと相関させる。相関係数(R値)が0.8未満の場合、心拍が正常ではないと考えられる。平均心拍と個々の心拍との間の類似の程度に関する別の指標は、正常ではない心拍を識別するために選択することができる。正常ではない心拍の取り替え手順は、入力(ペーシング・パターン)及び出力(T波)の関係が崩れることを回避するように設定される。例えば、患者が4心拍ペーシング・パターンABCDにペースを合わせ、かつ正常ではない心拍が心拍Bである場合、取り替え対象の4心拍は正常ではない心拍Aに先行する心拍、正常ではない心拍B、及び2つの後続の心拍C及びDを含む。Aに関する取り替え心拍は、心拍Aにペースを合わせた結果得られる先行する25個の心電図の平均値または中央値として計算される。このプロセスを、ペーシング・パターンに関係なく、全ての心拍に適用する。正常ではない心拍の数、一時的な位置、及びペーシング・パターンに対する位置をファイルに保存して、正常ではない心拍の周りの電気生理学的状態を求めることができるようにする。例えば、正常ではない心拍が一塊となって一時的に生じる場合、この現象は調査する必要のある特定の患者による反応を示唆することができる。第2スパース・アレイは、正常ではない心拍の取り替え後に、平均化した心拍に対する部分サンプリングを行なうことにより生成されて、正常ではない心拍の取り替えが無事に行なわれたことを再チェックする。このアレイを、各個々の心拍の該当するポイントと相関させ、0.8未満のR値は、(心拍が)正常ではないと考えられる。第2閾値に使用するR値は元のR値よりも高くすることができる。種々のR値は、ユーザが個々の心電図に基づいて設定するか、あるいは調整することができるパラメータとすることができる。
次にプロセスはステップ175に進み、このステップで基線電圧を揃える。図13において、ペーシング・スパイク504の直前に基線セグメント502と印された心電図領域はゼロ電圧を有すると考えられる。ペーシング・スパイクの直前の10〜30ms領域でもある、ポイント70〜90から成る基線セグメントの平均電圧を求め、複数の心拍の間を補間するフィデュシャリー・ポイントとして使用して基線ドリフトを全て取り除く。図13の例では、ECG500は、データポイントを1ms毎に記録することにより生成されるので、各ポイントは1msに等しい。線形補間及び多項式補間のような複数の方法を利用して基線ドリフトを取り除くことができる。本例では、補間多項式を用いたpiecewise cubic Hermit補間公式(P−CHIP:Piecewise Cubic Hermite Interpolating Polynomial)を一連のフィデュシャリー・ポイントに適用して、図14に示すように基線ドリフトを全て取り除いた。図14は、一連の周期の基線セグメントを表わす各ポイント(例えばポイント522)に適用されるP−CHIP曲線520の例を示している。この技術分野の当業者であれば、基線ドリフトが次の周期の電圧を基線ドリフトの振幅の方向(正/負)にずらすように作用することが分かるであろう。基線ドリフトを取り除くことによって、複数の周期に対して信号処理、例えば合計、変換、比較などを更に行なう場合にこれらの周期に関する処理が安定することが保証される。
電圧を揃える操作に関する上記の例では、心電図の特定セグメントを使用して基線ドリフトを取り除いた。しかしながら、電気的に安定な部分であれば心電図のいずれの部分でも、基線ドリフトを取り除くために使用することができる。心内電位図の場合、基線ドリフト補正は使用することができない。例えば、基線セグメントに、着目する領域の交互脈と一致する交互脈がある場合、基線ドリフト補正は望ましくない。何故なら、この補正によって明瞭な交互脈の振幅が小さくなるからである。
ステップ180では、交互脈の位相を同期させる。このステップは、交互脈位相反転が生じることに起因して、大きな交互脈を識別することができない事態を防ぐために重要である。図27は、大きな交互脈が発現した状態におけるPVC(心室性期外収縮)誘発位相反転の例を示している。曲線1100は、0.5周期/心拍での32心拍フーリエ変換の実部の結果を示している。PVC心拍によって、負の9μVから正の9μVへの交互脈位相反転が生じる。曲線1110は、0.5周期/心拍での128心拍フーリエ変換の絶対値の結果を示している。この曲線1110は、交互脈が徐々に小さくなってゼロになり、次に交互脈が徐々に大きくなる様子を示している。従って、この図は交互脈位相反転が生じたときの大きな交互脈の識別できない様子、及び測定可能な交互脈が交互脈位相反転時点付近で小さくなる様子を示している。更に、この図は、非常に短いセグメントのフーリエ変換の実部を使用することにより、交互脈位相反転の位置を識別する感度の高い方法が得られることを示している。
再度ステップ180を参照すると、後続のプロセスは、交互脈の位相がどのようにして同期するのかについて説明している。連続かつ重複する短いセグメントのフーリエ変換を心電図全体に対して4心拍ステップで行なう。上記の例では、32心拍フーリエ変換を選択した。交互脈位相反転は、交互脈の位相が一定であり、振幅が所定の期間の間に大きくなり、次に大きな振幅を有する逆位相への遷移が生じる場合に生じると言われている。例えば、一定の交互脈位相は、一つの位相が6個または8個の重複セグメントに対応し、かつ振幅が閾値よりも大きくなる場合に生じる。交互脈位相反転が生じる場合、位相反転の位置は、一定の交互脈位相が一定の交互脈逆位相、すなわち正から負に、あるいは負から正に変化する位置により求められる。1心拍を交互脈位相反転箇所から取り除く。これにより、交互脈位相反転を取り除くことができる。図28は、交互脈位相反転の位置1120から1心拍を取り除いたときの影響を示している。位相反転の位置1120から1心拍を取り除くことにより、ABABBABABパターン1130がABABABABパターン1140に変換される。この場合、交互脈の成分として、「A」は高いT波を表わし、「B」は低いT波を表わす。次に、心電図全体の長いセグメントに対する連続かつ重複するフーリエ変換を以下に説明するように行なって、TWA(T波交互脈)の挙動及び振幅を電気生理学的安定性の指標として確認する。
ここで、このステップは、共振ペーシング・パターンが通常、位相同期を誘発するという理由により共振ペーシング・パターンが使用されている場合には通常、必要ではないことに留意されたい。共振ペーシング・パターンが小振幅のペーシングの変化を有する場合、共振ペーシング・パターンによって位相同期を生じさせることができない可能性がある。位相同期を制御するための共振ペーシング基準の論理的根拠については、上記文章において、図26a及び図26bを参照しながら説明した。共振ペーシングによって位相同期を生じさせるために必要なペーシングの変化のレベルを使用して相対的な電気生理学的安定性を判断することができる。しかしながら、一定ペーシング・パターン、非共振ペーシング・パターン、または自然のリズムが心電図として記録されている場合、所定の位相の振動が遅いことに起因するか、あるいは期外収縮または他の正常ではない心拍に起因する交互脈位相反転が生じ得る。更に、交互脈位相同期を、奇数の心拍をパターンに有する非共振ペーシング・パターンに適用する場合、取り除かれる心拍の数はペーシング・パターンの心拍の数に等しくする必要がある。このプロセスによって、ペーシング・パターンによる影響が及ばなくなる現象を防止する。
ステップ180の交互脈位相同期に関するフーリエ変換に含まれる心拍の数は交互脈2の平方根、及びペーシング・パターンの心拍数、例えば3,4,5,6などの平方根を含む。これらの平方根を含むセグメント長を選択することにより、ペーシング・パターンの測定に対する影響を最小化しながら交互脈の識別が可能になる。ステップ180の交互脈位相同期に関するフーリエ変換に含まれる好適な心拍の数は、一定速度の4心拍共振ペーシングのペースに合わせるか、あるいは自然のリズムを評価する場合には32である。フーリエ変換に含まれる好適な心拍の数は、3心拍非共振ペーシング・パターンのペースに合わせる場合には36である。
フーリエ変換をステップ180において行なうための別の方法では、偶数の心拍に関する着目領域の電圧振幅の合計を奇数の心拍に関する着目領域の電圧振幅の合計から差し引く。偶数の心拍と奇数の心拍との差の符号により交互脈位相を識別する。この別の方法は計算の回数が少なくて済み、かつVT/VF(心室頻拍/心室細動)または心筋症のリスクを、ペースメーカーまたはICD(植え込み型除細動器)を使用してモニターする好適な方法である。
ここで、交互脈位相同期を行なうステップ180は、正常ではない心拍を識別し、取り替えるステップ170と一緒にすることができることに注目されたい。これは、正常ではない心拍が交互脈位相反転の共通の原因であり、かつ両方のセクションが心拍の変更に関与するからである。ステップ180における交互脈位相同期を行なうタイミングの選択は、呼吸性変動及び他のアーティファクトが基線に及ぼす影響、及びこれらの基線の変化が交互脈の位相を検出する能力にどのように影響を与えるかによって変わる。VT/VF(心室頻拍/心室細動)のリスクを評価する場合に交互脈位相同期を行なう好適な手法では、ステップ170,175を連続して行ない、次にステップ180を行なう。ステップ170及びステップ180を一緒にする操作は、基線ドリフトによって最小限の影響しか交互脈位相に及ばない場合に、VT/VF(心室頻拍/心室細動)及び心筋症のリスクをモニターするために行なうことができる。
図5aに戻って再度同図を参照すると、ステップ180(または共振ペーシング・パターンを使用している場合のステップ175)の最後では、プロセスは、有用なマークとなるペーシングまたは脱分極、ペーシング・パターン、及び交互脈の位相に心電図全体に渡って整合させたデータを供給する。この整合データを使用して心臓ペーシングに対する時間領域応答及び周波数領域応答を求める。ペーシングに対する時間領域応答及び周波数領域応答から、TWA(T波交互脈)の挙動及び振幅を電気生理学的安定性の指標として識別する。次に、これらの電気生理学的安定性の指標を使用してVT/VF(心室頻拍/心室細動)のリスク及び心筋症の程度を判断する。フィデュシャリー、パターン及び交互脈位相に整合させたこのデータを使用して患者に関する最終の時間領域データ及び周波数領域データを直接生成することができる。このデータを直接使用する操作については、以下に更に詳細に説明する。しかしながら、最終の時間領域データ及び周波数領域データを生成するためには、複数の例示としての方法がある。これらの方法のうちの幾つかの方法では、着目領域を心電図データ内部で識別する必要がある。
図5bは、心電図の着目領域を選択する例示としてのプロセス185を示している。ステップ187では、図5aのプロセス150により生成された、フィデュシャリー・パターン及び交互脈位相に整合させたデータを時間領域(心電図データの元の領域)から周波数領域に変換する。この技術分野の当業者であれば、時間領域情報を周波数領域情報に変換する方法には非常に多くの方法、例えばフーリエ変換、高速フーリエ変換などがあることが理解できるであろう。時間領域から周波数領域への変換プロセスでは、整合させた心電図を、10msの複数の平均電圧区分に分割する。次に、連続かつ重複する64心拍フーリエ変換を、複数の10ms区分の各々に関する心拍シリーズ全体に対して16心拍ステップで行なう。既に説明したように、フーリエ変換セグメント及びステップの長さは、交互脈2の平方根、及びペーシング・パターンの心拍数を含む必要がある。従って、3心拍ペーシング・パターンの場合、18心拍ステップで行なう72心拍フーリエ変換を選択する。ステップ187での変換の結果は、連続64心拍セグメントに関する心電図全体に渡る周波数領域データである。
ステップ189では、次に平均複素数周波数領域データを複数の10ms区分の各々において求める。従って、心電図に沿った各10ms区分では、ペーシング・パターンに対する心電図応答の周波数成分を求める。ソース・データをフィデュシャリー・パターン及び交互脈位相に整合させたので、周波数領域データもペーシング・パターン及び交互脈位相に整合させる。ペーシング・パターンまたは交互脈位相に対して固定されない生の心電図の成分、例えば呼吸性アーティファクトまたはランダム・ノイズは、非常に多くの心拍に渡って平均化することにより信号から除去される。何故なら、非定常要素の位相は変化するからである。図29aは、0.25,0.5周期/心拍、0.3〜0.48の範囲の周期/心拍(高周波数範囲)に関する、心電図の周波数成分の振幅の経時変化、及び第2の例示としての患者、すなわち心不全を有し、かつ心筋梗塞の病歴を有する患者を使用してステップ189において得られた平均心電図データを示している。周波数データを心電図全体に渡って平均することにより、複数の周波数を解析して着目領域を求めることができる。
別の構成として、ステップ189では、信号の非定常要素の位置及び影響度を知りたい場合に、周波数領域データの振幅の平均を複数の10ms区分の各々において求める。振幅のみをこの別のプロセスにおいて取得することにより、位相情報が、信号に残留するペーシングに同期しない喪失信号要素になる。これについては、図7bのステップ715及びステップ720の順番を逆にした図を参照しながら以下に更に詳細に説明する。図29bは、0.25,0.5周期/心拍、0.3〜0.48の範囲の周期/心拍(高周波数雑音)に関する、心電図の周波数成分の振幅の経時変化、及び第2の例示としての患者、すなわち心不全を有し、かつ心筋梗の病歴を有する患者から得られた周波数領域の平均心電図データを示している。この図は、非固定成分を含むことにより、図29aと比較した場合に、高周波雑音測定値が著しく大きくなることを示している。
ステップ191では、着目領域を心電図データに関して選択する。この選択は、心電図に沿った各ポジションの平均周波数データの解析に基づく。着目領域は、交互脈の大きな振幅が信号の中に認められる心電図に沿った領域として選択される。再度図29aに戻って同図を参照すると、着目領域の位置は、交互脈の大きな振幅が心電図の再分極範囲の中に認められる心電図の領域、すなわち領域1150として選択される。
図1に戻って同図を参照すると、次のステップでは、ステップ20の心電図解析を完了し、出力結果をステップ30で供給する。再度、これらのステップを、信号処理装置またはコンピューティング機器の内部のソフトウェアを使用して実行することができる。既に説明したように、本発明による診断方法の目標は、心臓の電気生理学的安定性を、繰り返しペーシング・パターン内部の周期長の小さな変化の影響を評価することにより定量化することである。この診断方法では、発生タイミングがわずかに早い心拍によって誘発される再分極の小さな変化を定量化し、ペーシングによって誘発される振動がそれに続いて減衰する現象を定量化する。診断方法が主として注目する点は、心電図データの最終の周波数領域データ及び/又は最終の時間領域データを求めることである。次に、この最終の周波数及び/又は時間領域データを使用して患者に関する複数の安定性指標を生成して、評価して、VT/VFのリスクを評価し、心筋症または他の心臓疾患をモニターする。
図7aは、心臓の電気生理学的安定性を評価する第1の例示としてのプロセス250を示している。既に説明したように、安定性評価は、ペーシング・パターンを使用している場合に行なうか、あるいは患者の生の心臓鼓動に対して行なうことができる。プロセス250の場合、フィデュシャリー・ペーシング・パターン、及び図5aを参照しながら既に説明したプロセス150を使用して生成され、かつ交互脈位相に整合させたデータは、プロセス250が、整合済みデータを取得するステップ255に示すように作用する対象となるデータとして使用することができる。
ステップ260では、着目領域を選択する。着目領域の選択は、図5bを参照しながら既に説明したように行なうことができる。着目領域を選択する別の方法について、図6aの心電図を参照しながら説明する。この方法では、フィデュシャリー・パターンに整合させたデータの減算を偶数心拍数及び奇数心拍数に対して行なう。このプロセスは、連続する16または24心拍セグメントに対して実行する。心電図に沿った複数の時点の各々におけるか、あるいは心電図の特定領域に沿った複数の小さな固定区間における各々における偶数心拍数と奇数心拍数との平均差を求めて短時間スケールの振動(“Valtshort(1)”)を取得する。このプロセスを各連続16または24心拍シリーズに対して繰り返し実行して全体の記録を行ない、Valtshort(2,3,4...n)を識別する。Valtshort(n)の電圧がTWA(T波交互脈)の予測領域の固定ポイント、例えばペーシング・スパイク後の350msで負になる場合、符号が反転する。平均のValt(“Valtmean”)が全てのValtshortの平均として計算される。Valtmean曲線206を使用して、最大の平均交互脈を有する100ms領域である領域204を識別する。これにより、最大の電気的不安定が生じる再分極領域を識別することができる。この技術分野の当業者であれば、心電図内の交互脈の位置は、心電図をどのようにフィルタリング処理するかによって一部変わることが理解できるであろう。従って、相対的に高いフィルタリング・カットオフ周波数を有する心内電位図の場合、明瞭な交互脈の位置は、図6aに示す例示としての領域から変位し得る。この別の方法は計算の回数が少なくて済み、かつVT/VF(心室頻拍/心室細動)または心筋症のリスクを、ペースメーカーまたはICD(植え込み型除細動器)を使用してモニターする好適な方法である。
ステップ265では、パターンにおける各心拍に関する平均心拍を求める。このステップについて、図19を参照しながら更に詳細に説明するが、図19は、例示としての心拍パターン900,910,920、及び平均心拍パターン930を示している。この例では、患者は4心拍パターン・ペーシング、すなわちペーシング・パターンA,B,C,Dのペースに合わせている。種々の共振ペーシング・パターン及び非共振ペーシング・パターンについて既に説明してきた。各心拍パターン900,910,920は、特定の心拍パターンに関する種々の心拍の着目領域における平均電圧を示している、すなわち心拍パターン900は心拍Aの平均電圧901,心拍Bの平均電圧902,心拍Cの平均電圧903,及び心拍Dの平均電圧904を有し、心拍パターン910は心拍Aの平均電圧911,心拍Bの平均電圧912,心拍Cの平均電圧913,及び心拍Dの平均電圧914を有し、心拍パターン920は心拍Aの平均電圧921,心拍Bの平均電圧922,心拍Cの平均電圧923,及び心拍Dの平均電圧924を有する。
この例では、異なる心拍パターン900,910,920における心拍(A,B,C,D)の各々の位相を合わせる。共振型ペーシングを使用している場合には、この操作を行なう必要がある。しかしながら、非共振型ペーシングまたは一定ペーシングの場合においては、心拍の位相が合っていない可能性があるので、種々の心拍の位相を反転させて確実に全ての位相が合うようにする必要がある。この位相反転については、図5aのステップ180を参照しながら既に詳細に説明した。
従って、心拍パターン900,910,920における心拍の各々の位相を平均して、平均心拍パターン930が複数の心拍に関する平均電圧の平均を次のようにして有することになる。心拍Aの平均電圧931,心拍Bの平均電圧932,心拍Cの平均電圧933,及び心拍Dの平均電圧934である。この技術分野の当業者であれば、実際のデータは、重要な統計学的サンプルを取得して平均心拍を求めるために、本例に示す3個よりも多くの心拍パターンを含み得ることが理解できるであろう。
ステップ265におけるこの平均操作によって患者の心電図の最終の時間領域データが提供される。既に説明したように、診断方法の主たる目標は、最終の時間領域データ及び/又は周波数領域データを求めることである。従って、目標を時間領域での作業により達成する場合、ステップ265で求める平均時間データは最終の時間領域データとして使用することができる。ステップ270に示すように、プロセスのユーザは、時間領域及び/又は周波数領域のいずれで作業するかについて選択することができる。ここでもまた既に説明したように、プロセスは、心電図データを収集するペーシング装置に含まれる信号処理装置、または独立した装置を使用して実行することができる。従って、プロセス250のユーザはこれらの装置をプログラムする個人とすることができる。
時間領域での作業が選択される場合、ステップ275では、時間領域安定性指標を求めることができる。最終の時間データから生成することができる利用可能な安定性指標はいくらでもある。これらの指標は、医師が診断またはモニターしようとしている種々の患者または種々の状態によって、異ならせることができる。電気生理学的安定性の例示としての時間領域指標としては、交互脈の全体振幅、CL(周期長)変化に対する応答の振幅、ペーシング・パターンに応答する交互脈の最後の振幅、交互脈減衰速度(dV/dt)、2つの異なる指数関数的減衰速度の合成値としてモデル化される交互脈減衰速度、及びTWSI(T波安定性指標)などと表記される交互脈振幅に対する交互脈減衰速度を挙げることができる。TWSIと表記される例示としての時間領域指標について以下に説明する。この技術分野の当業者であれば、他の指標を時間領域情報に基づいて作成するか、あるいは時間領域情報から確認することができることが分かるであろう。例えば、所定のパターンを、特定のVT/VF(心室頻拍/心室細動)状態になっている全ての患者に関する時間データの中に確認することができる。従って、このようなパターンは特定の状態の表示子として使用することができる。
ユーザが周波数領域で操作を行なうと決めた場合、プロセス250はステップ280に進み、このステップでは、時間領域平均データを時間領域から周波数領域に、例えばフーリエ変換により変換する。この変換により、プロセスの他の目標物、すなわち最終の周波数領域データが提供される。次にプロセスはステップ290に進むことができ、このステップでは、周波数領域安定性指標を生成することができる。時間領域安定性指標と同様に、周波数領域安定性指標は患者及び状態により変化し得る。例示としての周波数領域安定性指標は、重要周波数、例えば0.5,0.33,0.25などにおける系の振幅及び位相応答とすることができる。更に別の周波数領域安定性指標は、重要周波数、例えば0.5及び0.25、または0.5及び0.33の振幅及び位相の組み合わせから生成することができる。この技術分野の当業者であれば、他の指標を周波数領域情報に基づいて作成するか、あるいは周波数領域情報から確認することができることが分かるであろう。
図7bは、例示としてのペーシング・パターンまたは患者の生の鼓動のいずれかにより誘発される心臓の電気生理学的安定性を評価する第2の例示としてのプロセス700を示している。第1ステップ705では、フィデュシャリー・ペーシング・パターン及び位相に整合させ、かつ着目領域データから得られるデータを取得する。着目領域における各心拍に関する平均電圧を取得する。この事前処理された着目領域データは、図5bを参照しながら説明したプロセス185を使用して生成することができる。
次に、プロセスはステップ710に進み、このステップでは、時間領域データを周波数領域データに変換する。この例では、周波数変換は、記録済み心拍の全範囲に渡ってペーシング・パターンに整合させた連続12心拍ステップを有する72心拍セグメントのフーリエ変換を使用して行なわれる。ステップ区間は、パターン長の平方根及び着目周波数を含むように選択される。この例では、12心拍ステップを選択して3心拍または4心拍ペーシング・パターンの解析が可能になるようにした。4心拍パターンの最小心拍ステップは4心拍ステップである。3心拍パターンの最小心拍ステップは、交互脈の出現頻度の解析も可能になるように6、すなわち2×3の心拍ステップである。以下に更に詳細に説明するように、出力のフォーマットによって医師は、ペーシング・パターンの個々の心拍に対する患者の応答の差異を認識することができる。この技術分野の当業者であれば、連続12心拍ステップを有する72心拍セグメントは単なる例示であり、ここに記載する方法は他のセグメント長及び他のステップを使用して実行することができることが分かるであろう。
ステップ720では、周波数領域における平均実部及び虚部を別々に各周波数に関して計算する。実部及び虚部を別々に平均するのは、出力データの非定常変動を取り除くためである。非定常変動は、ペーシング・パターンに対する応答による影響を受けない心電図周波数スペクトルの全ての成分である。心電図信号に影響を及ぼし得る非定常変動の例として、心電図に対する呼吸の影響を挙げることができるが、これは、呼吸がペーシング・パターンに同期しないからである。非定常変動はペーシング・パターンに振幅及び位相の両方に関して同期することがないので、非同期信号の合計にはゼロ近傍に分布する実部及び虚部が含まれ、従ってこれらの成分の合計はゼロに近づき、非同期信号及び他の雑音成分の影響を無くすことができる。
これとは異なり、ペーシング・パターンが誘発する振動は心電図信号の実部及び虚部を有し、FTは同じ位相を有する、すなわちペーシング誘発位相同期が行なわれる。従って、実部及び虚部の平均を確認することにより、ペーシング・パターンの結果である振動の振幅及び位相の解を求めることができる。例えば、図20を参照すると、4つのグラフ750,760,770,780には、例示としての心電図信号の実部が示されている。第1グラフ750は、第1FTセグメント、例えば72心拍セグメントに関する心電図信号の実部を示している。このグラフは、信号の実部はほぼランダムであるが、周波数領域752,754の領域にスパイクを有することを示している。この例では、ペーシング・パターンは周波数領域752,754に結果を生成すると予測される。
同様に、第2グラフ760は、第2FTセグメント、例えば第1セグメントから12心拍ステップだけずれた72心拍セグメントに関する心電図信号の実部を示している。このグラフは、信号の実部はほぼランダムであるが、周波数領域762,764の領域にスパイクを有することを示している。更に、第3グラフ770は、N番目のFTセグメントに関する心電図信号の実部を示している。ここでもまた、このグラフは、信号の実部はほぼランダムであるが、周波数領域772,774の領域にスパイクを有することを示している。
最後に、最後のグラフ780は、全てのFTセグメントに関する実部の合計を示している。既に説明したように、ペーシングの結果ではない周波数スペクトル成分の平均はゼロに近づき、ペーシングの結果である周波数スペクトル成分の平均は、当該ペーシング誘発周波数応答に関する複素平面の真の振幅及び位相に近づく、例えばペーシング・パターンに基づく予測応答を示している図20の周波数782,784に近づくことが予測される。同じ結果が心電図信号の虚部に関して予測される。この技術分野の当業者であれば、着目周波数の近傍にはない信号がゼロに成り易くなることがない例があり得、かつ医師がこのような信号に、これらの信号がペーシング・パターンに関連しない周波数の近傍で非ランダム信号を誘発している他の所定の要素を示唆し得るという理由で注目することが分かるであろう。一つのこのような信号が、例示としての3心拍非共振ペーシング・パターンのような奇数番号のペーシング・パターンのペースに合わせる場合の交互脈信号である。しかしながら、ペーシング・パターンによっては生成されない交互脈は、ペーシング・パターンに拘らず発現する可能性があり、識別することが望ましい。
図7bに戻って同図を参照すると、次にプロセスはステップ720に進み、このステップでは、平均した実部及び虚部の絶対値及び位相を計算する。ステップ715及びステップ720を逆にして、既に説明した信号処理方法により取り除かれる周波数スペクトルの非定常要素を評価することができる。ステップ715及びステップ720を逆にする有用性について以下に説明する。従って、ステップ720の最後では、最終の周波数データを求めている。既に説明したプロセスと同様に、ユーザは時間領域または周波数領域で作業を行なうか否かをステップ725で決めることができる。
ステップ720の別の実施形態を使用すると、周波数領域の非定常成分をモニターすることができる。これらの非定常要素をモニターして、呼吸の影響、信号に含まれる総合雑音、及び心筋虚血のような他の心臓疾患プロセスを評価することが望ましい。特に、心筋虚血になると周波数領域の複雑さが特徴的なパターンで増大する。この別の実施形態では、周波数領域の平均振幅は各周波数で個別に計算される。位相は振幅のみを評価することにより無視されるので、周波数領域に影響を与え、かつペーシングに同期することがない信号を評価することができる。再び戻って、着目領域選択プロセス185によれば、別々の着目領域を選択して非定常成分を含む心電図を、これらの成分の大振幅及び/又は小振幅が一時的に心電図に位置する位置に基づいてモニターすることができる。
ユーザが周波数領域で作業を行なうと決めた場合、プロセスはステップ730に進み、このステップでは、周波数領域安定性指標を求める。これらの指標は、図7aのプロセス250を参照しながら既に説明した指標と同じとすることができる。ユーザが時間領域での作業を希望した場合、プロセスはステップ735に進み、このステップでは、最終の周波数領域データを時間領域に、例えば逆FTを使用して変換する。次に、プロセスはステップ740に進み、このステップでは、時間領域安定性指標を求める。これらの指標は、図7aのプロセス250を参照しながら既に説明した指標と同じとすることができる。
図30a及び図30bは、図7bを参照しながら説明した方法700を使用した場合の、患者に関する例示としての最終の周波数データを示している。特に、実部及び虚部を維持して位相情報が紛失することがないようにする。逆フーリエ変換を使用すると、最終の周波数領域データを最終時間領域データに変換することができる。図21〜23は、図7bを参照しながら説明した方法700を使用した場合の、患者に関する例示としての最終の周波数領域データを示している。これらの例では、患者1及び患者2は既に説明した患者と同じである。図21aは、第1患者、すなわち一定の550msのCL(周期長)ペーシングの結果として心臓疾患の兆候が全くない患者に関するグラフであって、周波数スペクトル曲線801,802を有する例示としてのグラフ800を示している。曲線801は周波数スペクトルの振幅の平均である、すなわちステップ715及びステップ720を逆にしてスペクトルの非定常成分が含まれるようにしている。曲線801は、呼吸によるT波振幅変調の予測結果である、0.14周期/心拍での振動、及び0.14周期/心拍での振動に起因するスペクトル・リークという現象の予測結果である0.28及び0.42周期/心拍での振動を示している。曲線802は、周波数スペクトルの平均実部及び平均虚部の絶対値である。既に説明したように、スペクトルの非定常成分が著しく減少している。呼吸による変調の結果、及び呼吸による変調のスペクトル・リークの結果であるピークが著しく小さくなる。既に説明したように、0.5周期/心拍の周波数における着目領域は、複数の心臓疾患プロセスの結果として生じ、かつ再分極過程で生じる心拍毎の膜電位振動が認められる患者において振幅が大きくなることを示す。この患者は、周波数範囲全体に渡って、特に着目領域においてT波振動の振幅が非常に小さいので、ペーシングによって誘発され、かつ再分極過程で生じる膜電位振動が認められず、心臓の電気生理学的安定性が正常であることを示している。ここで、図21〜23の各々に関して、プロセス700のステップ715及びステップ720を逆にすると破線の曲線が生成され、プロセス700のステップ715及びステップ720を順番通りにすると実線の曲線が生成されることに留意されたい。プロセスを、図7bを参照しながら説明した方法で実行してペーシング誘発振動を解析することが好ましいが、ステップ715及びステップ720を逆にしてペーシング誘発振動及び非定常成分の合計を解析することができる。非定常成分を選択する操作を使用して、信号に含まれる白色雑音のような雑音成分、呼吸が心電図に与える影響、または着目領域における他の心臓疾患プロセスを評価することができる。
図21bは、第2患者、すなわち一定の550msのCL(周期長)ペーシングの結果として心臓疾患の兆候を示す患者に関する周波数スペクトル曲線811,812を有する例示としてのグラフ810を示している。曲線811は周波数スペクトルの振幅の平均であり、曲線812は、周波数スペクトルの平均実部及び平均虚部の絶対値である。この患者においては、曲線811は、スペクトルが0.4周期/心拍に拡散した構成の0.2周期/心拍での呼吸によるT波の顕著な変調を示している。曲線812は、これらの非定常成分が著しく小さくなっている様子を示している。これらの曲線はともに、0.5周期/心拍で振幅が非常に大きくなっている様子を示し、これは、T波交互脈が発現していることを示している。曲線812はまた、非定常成分及び0.5周期/心拍から他の周波数へのスペクトル・リークに起因して雑音が著しく小さくなることを示している。一定ペーシング・パターンの0.5周期/心拍での振動の発生は、所定のレベルの疾患を示しており、この疾患に対して、医師は更に評価を試みようとするか、あるいは途中の段階で調査しようとすることができる。
図22aは、図2を参照しながら説明した4心拍共振ペーシング・パターン50の結果として得られる第1患者に関する周波数スペクトル曲線821,822を有する例示としてのグラフ820を示している。曲線821は周波数スペクトルの振幅の平均であり、曲線822は、周波数スペクトルの平均実部及び平均虚部の絶対値である。グラフは、0.25及び0.5周期/心拍において再分極過程で生じる膜電位振動が発現していることを示している。ペーシング・パターンは、4番目の心拍毎に発生タイミングがわずかに早い心拍を有する4心拍共振ペーシング・パターンであるので、医師は、発生タイミングが早い心拍が4番目の心拍であり、この4番目の心拍が0.25周期/心拍でのT波振動の大きな振幅に影響を及ぼしていると推測することができる。既に説明したように、系の安定性指標は、誘発振動を小さくする心臓の能力である。0.5周期/心拍での振動はT波交互脈の頻度である。最終の周波数領域データから生成される電気生理学的安定性の例示としての指標について以下に説明するが、他の派生的指標を最終の周波数領域データから取得することができる。ペーシング誘発振動を小さくする系の能力は、0.25及び0.5周期/心拍での振動の相対振幅及び絶対振幅により測定することができる。グラフ820が示すように、健康な心臓は振動を著しく小さくして、0.25周期/心拍での大きな振幅に比べて、0.5周期/心拍での振幅が小さくなるようにする能力を有する。
これとは異なり、図22bは、図2を参照しながら説明した4心拍共振ペーシング・パターン50の結果として得られる第2患者に関する周波数スペクトル曲線831,832を有するグラフ830を示している。曲線831は周波数スペクトルの振幅の平均であり、曲線832は、周波数スペクトルの平均実部及び平均虚部の絶対値である。グラフ820と同じように、4周期毎の発生タイミングの早い心拍の影響を表わす0.25周期/心拍、及び進行中の再分極相交互現象の振幅を表わす0.5周期/心拍において周波数スペクトルの振幅が大きくなる。重要なことは、心臓疾患を持たない第1患者と比較すると逆の関係になり、心臓疾患を持つ第2患者の曲線832における0.5周期/心拍での振幅は0.25周期/心拍での振幅よりも遥かに大きいことである。これは、疾患を持つ系としての心臓は、振動を小さくする能力に劣るからである。振動を小さくするのではなく、振動が増大し、かつ0.25周期/心拍に比べて0.5周期/心拍周波数での振動が著しく大きくなり、これは心臓の電気生理学的安定性が相対的に低いことを示している。
図23aは、図4aを参照しながら説明した3心拍非共振ペーシング・パターン85の結果として得られる第1患者に関する周波数スペクトル曲線841,842を有するグラフ840を示している。曲線841は周波数スペクトルの振幅の平均であり、曲線842は、周波数スペクトルの平均実部及び平均虚部の絶対値である。4心拍ペーシング・パターンと同じように、3心拍ペーシング・パターンは、3心拍毎に、すなわち3心拍ペーシング・パターンに関する発生タイミングの早い心拍でT波振動を誘発する。この場合、3心拍毎の信号が0.333周期/心拍の周波数で生じる。セグメント長72は、3の平方根を含み、フーリエ変換によって0.333周期/心拍の周波数における振幅の解が得られるように選択した。着目周波数の平方根をセグメント長に含めるという構成上の特徴は、本発明の例示としての実施形態にとって重要である。3の平方根を含まないセグメント長、例えば64または128では、0.333周期/心拍の周波数における振幅の解が得られない。従って、ここでもまた、医師は、心臓の電気生理学的安定性を、0.333周期/心拍で明白な応答を示す系の能力に基づいて判断することができ、この場合の応答は、系をペーシングにより制御することができることを意味する。グラフ840が示す3心拍ペーシング・パターンは、再分極過程で生じる膜電位振動を0.5周期/心拍の交互脈頻度で誘発することがないようにするために顕著な効果を示す。
図23bは、図4aを参照しながら説明した3心拍非共振ペーシング・パターン85の結果として得られる第2患者に関する周波数スペクトル曲線851,852を有する例示としてのグラフ850を示している。曲線851は周波数スペクトルの振幅の平均であり、曲線852は、周波数スペクトルの平均実部及び平均虚部の絶対値である。このグラフから分かるように、3心拍ペーシング・パターンでは、第1患者の曲線842に比べると、曲線852の0.333周期/心拍での振幅が遥かに小さくなる。これは、3心拍パターンが、系をペーシングにより制御する能力に劣ることを示している。更に、0.1666(1/6),0.25(1/4),0.42(5/12),及び0.5(1/2)周期/心拍で振動が小さくなり、これは振動がこれらの周波数で発現するか、あるいはスペクトル・リーク現象によるアーティファクトが生じることを示す。周波数0.5での振幅は、図21b及び図22bに示す第2患者に関するこの周波数での既に示した振幅よりも遥かに小さい。従って、3心拍非共振ペーシング・パターンは、0.5周期/心拍の交互脈頻度における、再分極過程で生じる膜電位振動を抑制している。既に説明した4心拍共振ペーシング・パターンに応答する0.25及び0.5周期/心拍での周波数スペクトルの振幅比と同じように、3心拍非共振ペーシング・パターンに応答する0.333及び0.5周期/心拍での周波数スペクトルの振幅比は、相対的な電気生理学的安定性の指標として使用することができる。心臓ペーシング・パターンの治療上の効果に関する追加の情報について以下に説明する。
図7cは、心臓の電気生理学的安定性を例示としてのペーシング・パターンまたは患者の生の鼓動を使用して評価する例示としての第3プロセス300を示している。図7cのプロセス300は、図5aを参照しながら説明したプロセス150に続くプロセスである、すなわちプロセス300はプロセス150が生成するデータを使用する。
プロセス300について、繰り返しペーシング・パターンを2人のサンプル患者に適用した例を使用して説明する。繰り返しペーシング・パターンは、図2を参照しながら説明した4心拍共振ペーシング・パターン50、すなわち535msの発生タイミングの早い心拍Aと555msの正常な心拍Bとを有するA,B1,B2,B3パターンである。第1サンプル患者は、図6a,bの心電図200,210をそれぞれ参照しながら既に説明した患者、すなわちいかなる心臓疾患の兆候も示すことがない患者である。第2サンプル患者は、図6c〜eの心電図220,230,240をそれぞれ参照しながら既に説明した患者、心筋梗塞後の冠動脈疾患及び心不全を持つ患者である。
プロセス300の第1ステップ305では、フィデュシャリー・ペーシング・パターン及び位相に整合させたデータを、既に説明したプロセス185を使用して生成することができる着目領域データから取得する。ステップ310では、平均T波電圧を着目領域の各心拍に関して計算する。次に、プロセスはステップ315に進み、このステップでは、データ・アレイを再フォーマットして、新規データ・アレイのフーリエ変換によってペーシング・パターン内部の各心拍の影響を識別する。この操作は、平均T波電圧アレイの部分サンプリングを行なって4つのベクトルA−B1,B1−B2,B2−B3,B3−Aを生成することにより行なう。これらの4つのベクトルは、隣接心拍の各々の間のT波電圧変化に対応する。この技術分野の当業者であれば、データを時間領域から周波数領域に変換するためにフーリエ変換を使用する操作は単なる例示に過ぎないことが分かるであろう。信号の周波数成分を識別するためには、他の数学的方法、例えばラプラス変換、高速フーリエ変換、ウェーブレット変換、複素復調などがある。
図15は、心拍T波電圧の部分サンプリングを行なって隣接心拍の各々の間のT波電圧変化に対応するベクトルを生成する例を示している。この例では、ペーシング・パターン50(A,B1,B2,B3)の4つの完全ループを示している。各心拍は、プロセス300のステップ310で計算されるように、心拍に関する平均T波電圧の値を表わす。この例では、ベクトルA−B1に関する計算を行なって心拍A−B1の間のT波電圧の変化を求める。4つの部分サンプル531〜534がベクトルA−B1に関して示される。この技術分野の当業者であれば、部分サンプルが記録済みシリーズ全体を含むことが分かるであろう。同じようにして、ベクトルB1−B2,B2−B3,及びB3−Aも求める。
ステップ320では、時間領域から周波数領域への変換を、ステップ315で生成される4つのベクトルの各々に関する連続かつ重複するセグメントに対して行なう。例示としての方法では、60心拍セグメント長を選択した。例示としての方法では、フーリエ変換(FT)を使用してデータを時間領域から周波数領域に変換した。FTは、周期1〜60から成る60心拍セグメントに対して行なう。FTを次に行なう次のデータ・セグメントは、周期13〜72から成り、このセグメントは12周期だけ進む方向に移動させることにより生成される重複セグメントである。このプロセスは、全ての心拍シリーズを解析するまで繰り返す。この技術分野の当業者であれば、60心拍セグメント及び12心拍ステップを使用する操作は単なる例示に過ぎず、本発明による方法によって、長さが異なるセグメント及びステップを識別することができることが分かるであろう。
図16は、心拍ベクトル・セグメントを時間領域から周波数領域に変換する例を示している。この例では、ベクトルA−B1が74周期シリーズに渡って分布する様子が示されている。周期数は行540に示され、個々の心拍は行542に示されている。従って、最初の60心拍セグメントは周期1〜60を含む。FTをこのセグメントに対して行なうと、周波数領域の結果FT1(544)が得られる。次にプロセスを、12周期だけ進めて次のFT操作を行なうことにより繰り返す。この例では、次のFT操作を周期13〜72に対して行なうと、周波数領域の結果FT2(546)が得られる。次にプロセスを、心拍シリーズ全体が解析されるまで繰り返す。ここでもまた、好適なサンプルは12周期のステップを有する60周期である。しかしながら、他のサンプル・サイズ及びステップ・サイズを使用して本発明の方法を実行することもできる。好適な実施形態では、12周期のステップを有する144周期のサンプルを使用する。
図17は、心拍B3と心拍Aとの間の変化を表わすベクトルを評価するための時間領域と周波数領域との間の関係の例を示している。X軸は部分サンプリング対象の心拍シリーズであって、連続する心拍B3(ポイント551〜553)及び心拍A(ポイント554〜556)から成る心拍シリーズである。Y軸は、最大のT波振動を有するとして識別される100msに渡る平均T波振幅(電圧)である。正弦波曲線550は、0.5周期/部分サンプリング済み心拍(部分サンプリング心拍の間を0.5周期とする正弦波)として表現される。この周波数を使用して心拍B3から心拍Aへのベクトル変化を識別する。正弦波の振幅は、心拍B3から心拍Aに至る100msセグメントに渡る平均T波振幅の絶対値変化の半分である。正弦波の位相によって、心拍B3から心拍Aに移動するときに平均T波振幅が100msセグメントに渡って減少することを確認することができる。ここで、曲線550が180°だけ位相シフトすると、心拍B3から心拍Aに移動するときの電圧減少ではなく電圧増大を確認することができることに注目されたい。正弦波は、フーリエ変換を部分サンプリング済み心拍シリーズに適用し、0.5周期/部分サンプリング済み心拍における振幅及び位相を確認することにより識別される。従って、本方法によって、心拍B3から心拍Aに至る変化を表わすベクトル(振幅及び位相)を識別することができる。
図8aは、第1患者において先行する心拍(心拍B3)から発生タイミングの早い第1心拍(心拍A)が受ける周波数領域の影響を表わす例示としてのグラフ400を示している。このグラフは、水平軸(406)がFT周波数領域の実部を表わす3次元プロットである。主要な着目周波数は、プロットの右側の0.5周期/部分サンプリング済み心拍において生じ、図17に示すような心拍B3から心拍Aに至るベクトル変化を表わす。左側の隣接周波数は、0.4周期/心拍と0.5周期/心拍との間の周波数に限定されており、バックグランド・ノイズに関する指標を与える。しかしながら、バックグランド・ノイズに関するこの指標は本発明の実施形態には必ずしも必要ではない。何故なら、振動の位相はペーシングによって制御され、かつペーシングが与える全体的な影響はバックグランド・ノイズに関係なく評価することができるからである。奥行き軸(404)は、連続かつ重複する各シリーズの結果、すなわちFTを適用した60心拍セグメントの数を表わす。垂直軸(402)は、各周波数の電圧をマイクロボルトで表わす。このグラフは、プロセス300のステップ320において、プロセス300のステップ315で識別される4つのベクトルのうちの最初のベクトルに対して行なうFTの結果を表わす。心拍B3から心拍Aに移動する場合の最後のT波の100msセグメントにおける実際の平均電圧変化は、図17に示すように、周波数領域指標の2倍である。交互脈信号は、心拍B3から心拍Aに移動する結果として、T波振幅全体が20〜40マイクロボルト(既に説明したグラフから観測される10〜20マイクロボルトの2倍)だけ小さくなることを示す。提示する例では、グラフ400は第1患者、及び最後の正常心拍(B3)の後の発生タイミングの早い心拍(A)の結果を表わすベクトルB3−Aに関するものである。
同様に、図8bは、第2患者において先行する心拍(心拍B3)から発生タイミングの早い第1心拍(心拍A)が受ける周波数領域の影響を表わす例示としてのグラフ410を示している。グラフ410はグラフ400と同じようにして得られ、かつグラフ400に関する第1患者について既に説明した情報と同じ情報を第2患者について示している。図9aは、第1患者において発生タイミングの早い心拍(心拍A)から第2心拍(心拍B1)が受ける周波数領域の影響を表わす例示としてのグラフ420を示している。図9bは、第2患者において発生タイミングの早い心拍(心拍A)から第2心拍(心拍B1)が受ける周波数領域の影響を表わす例示としてのグラフ430を示している。図10aは、第1患者において第2心拍(心拍B1)から第3心拍(心拍B2)が受ける周波数領域の影響を表わす例示としてのグラフ440を示している。図10bは、第2患者において第2心拍(心拍B1)から第3心拍(心拍B2)が受ける周波数領域の影響を表わす例示としてのグラフ450を示している。図11aは、第1患者において第3心拍(心拍B2)から第4心拍(心拍B3)が受ける周波数領域の影響を表わす例示としてのグラフ460を示している。図11bは、第2患者において第3心拍(心拍B2)から第4心拍(心拍B3)が受ける周波数領域の影響を表わす例示としてのグラフ470を示している。この技術分野の当業者であれば、グラフ420,430,440,450,460,470の各々が、グラフ400に関して既に説明した方法と同じ方法で生成されることが分かるであろう。各グラフは、確認済みの患者についての部分サンプリング済みの特定の心拍シリーズに関する周波数領域データを表わす。
図7cに戻って同図を参照すると、次のステップ325を使用してパターンに含まれる複数の心拍の各々に関連する交互脈ベクトルを識別する。Valt1,Valt2,Valt3,及びValt4と表記される交互脈ベクトルは、0.5周期/部分サンプリング済み心拍におけるベクトルB3−A,A−B1,B1−B2,及びB2−B3にそれぞれ対応する。従って、Valt1は、周波数領域の0.5周期/部分サンプリング済み心拍において検出される心拍B3から心拍Aまでのフーリエ変換の電圧変化を表わすベクトルである。図8aのグラフ400を参照すると、第1患者に関するValt1が、0.5周期/部分サンプリング済み心拍(軸406)におけるマイクロボルト単位(軸402)の電圧として示される。Valt1は、連続かつ重複する60心拍セグメントの複数の値の各々の平均と考えることができる。この技術分野の当業者であれば、第2患者に関するValt1は、同じ方法によりグラフ410から取得することができることが分かるであろう。
次にプロセスを繰り返してValt2,Valt3,及びValt4の各々を、周波数領域の0.5周期/心拍を、残りのベクトルA−B1,B1−B2,及びB2−B3に関して識別することにより求める。ここでもまた、この技術分野の当業者であれば、グラフ420〜470を使用して、各患者に関するValt2,Valt3,及びValt4のうちの該当するValtを第1患者に関するValt1について既に説明した方法と同じ方法で求めることができることが分かるであろう。
図12aは、交互脈ベクトルを第1患者における4心拍共振ペーシング・パターンに渡って表わす例示としてのグラフ480を示している。上述したようにして求められるValt1,Valt2,Valt3,及びValt4の各々(軸482)は、4心拍共振ペーシング・パターン(軸484)に渡って示すことができる。同様に、図12bは、交互脈ベクトルを第2患者における4心拍共振ペーシング・パターンに渡って表わす例示としてのグラフ490を示している。上述したようにして求められるValt1,Valt2,Valt3,及びValt4の各々(軸492)は、4心拍共振ペーシング・パターン(軸494)に渡って示すことができる。従って、グラフ480及びグラフ490は、発生タイミングがわずかに早い心拍によって誘発される再分極過程で生じる膜電位振動を例示としてのペーシング・パターン50の4心拍に渡って示している。グラフ480及びグラフ490は、Valt1が、心拍B3から発生タイミングの早い心拍Aに至るT波の変化を表わすベクトルであり、この変化は、T波振幅の減少を、特定患者に関して最大振動を有するとして識別された着目領域においてもたらす。
Valt1(交互脈ベクトル)に関してT波振幅の減少をもたらした電気的回復関係は、後続のT波に影響を及ぼす。これについてもまた、先行する拡張期が後続の活動電位持続時間に影響を及ぼす電気的回復関係の観点から説明することができる。ペーシング・パターン及び電気的回復の相互作用について図18を参照しながら説明するが、図18は、Nがパターンのループ数を表わす場合の心拍B3N−1から心拍B3Nまでの例示としての4心拍共振ペーシング・パターンの5心拍を示している。この例示としての図は、ループNの4心拍及びループN−1の最後の心拍を示している。心拍Aの活動電位持続時間(APD:Action Potential Duration )613(309ms)が短くなると、長い拡張期(DI:Diastolic Interval)が心拍Aの後に生じる(246ms)。また、CL(周期長)610が555msに戻ると、拡張期が、先行するCL600(535ms)に渡って10msだけ追加される。これにより、心拍B1後のAPD(活動電位持続時間)623が長くなり(325ms)、最後のT波の振幅が大きくなる。電気的回復関係によって、次の公式を使用して予測APD(活動電位持続時間)を表わすことができる。
APDN≒m*DIN−1+B
上式において、mは回復曲線の傾きであり、Bは回復曲線のy切片である。
この関係は、回復曲線の傾きが大きくなると、患者が心室細動(VF)を発現する確率が高くなるので重要となる。発生タイミングの早い心拍の結果として得られるT波の変化の大きさは回復曲線の傾きを表わす、すなわち回復曲線の傾きが大きくなると、上記公式が示すAPD(活動電位持続時間)が大きく変化することに起因してT波の変化が大きくなる。回復曲線の傾きが大きくなると振動の発現が大きくなり、これにより患者の心室細動(VF)発症の機会が増える。
上式において、mは回復曲線の傾きであり、Bは回復曲線のy切片である。
この関係は、回復曲線の傾きが大きくなると、患者が心室細動(VF)を発現する確率が高くなるので重要となる。発生タイミングの早い心拍の結果として得られるT波の変化の大きさは回復曲線の傾きを表わす、すなわち回復曲線の傾きが大きくなると、上記公式が示すAPD(活動電位持続時間)が大きく変化することに起因してT波の変化が大きくなる。回復曲線の傾きが大きくなると振動の発現が大きくなり、これにより患者の心室細動(VF)発症の機会が増える。
図12のグラフ480及びグラフ490を比較すると、ペーシング・パターンは大きな振動を第2患者(すなわち、心不全及び冠動脈疾患の病歴を有する患者)に誘発することが分かる。更に、グラフ480及びグラフ490はまた、振動減衰が第2患者よりも第1患者(すなわち、いかなる心臓疾患の兆候も示さない患者)において著しく速いことを示している。既に説明したように、振動の振幅及び振動の減衰速度は電気生理学的安定性の指標であり、相対的に大きい減衰速度を有する相対的に小さい振動は系が相対的に安定であることを示す。
先の2つのプロセスと同様に、ユーザは時間領域及び/又は周波数領域で作業を行なうか否かについての選択をステップ330で行なう。ユーザが周波数領域で作業を行なうと決めると、プロセスはステップ335に進み、このステップでは、時間領域データを周波数領域データに逆フーリエ変換のようなプロセスを使用して変換する。プロセスはステップ340に進み、このステップで周波数領域安定性指標を求める。これらの指標は、図7aのプロセス250を参照しながら既に説明した指標と同じとすることができる。ユーザが時間領域で作業を行なうと決めると、プロセスはステップ345に進み、このステップでは、時間領域安定性指標を求める。これらの指標は、図7aのプロセス250を参照しながら既に説明した指標と同じとすることができる。
既に説明した指標について更に詳細に述べると、電気生理学的安定性は、ペーシングに対する応答及び交互脈全体を測定する指標を計算することにより測定することができる。これらの指標は、ペーシングに対する応答の時間領域表示及び周波数領域表示である1次結果から計算される。これらの指標は、総合Valt(T波交互脈電圧振幅),Valt2,Valt4,dValt/dt,及びT波安定性指標(TWSI:T-Wave Stability Index)を含む。これらの指標の各々は、心電図の一成分の振幅に正規化することができる。何故なら、TWA(T波交互脈)の振幅がT波の振幅によって変わることが判明しているからである。既に説明したように、TWSI(T波安定性指標)はペーシングが誘発するバックグランド振動の振幅と比較した場合の振動の減衰速度を表わす指標である。TWSI(T波安定性指標)は患者の心臓の相対的電気生理学的安定性の表示子であり、この場合、相対的に小さいTWSIが、振動の減衰速度がペーシング誘発振動と比較して相対的に遅いことを示す、従って相対的に不安定な系を示す。TWSIを計算する第1ステップでは、振動の減衰速度dValt/dtを求める。dValt/dtを計算する例示としての方法では、ベクトルValt2及びValt4を利用する。Valt2は発生タイミングの早い心拍及び発生タイミングの早い心拍の後の心拍の両方により誘発される振動を表わし、Valt4は振動減衰期間後に生じる振動を表わす。従って、指標dValtは、Valt2−Valt4に等しい。指標dtは、心拍B1から心拍B3までの時間間隔の1110ms、すなわち555ms+555msに等しい。従って、dValt/dtは(Valt2−Valt4)/1.11マイクロボルト/秒に等しくなる。振動の減衰期間後のペーシング誘発振動はValt4として測定することができる。従って、TWSIは(dValt/dt)/Valt4として計算され、この値は(Valt2−Valt4)/(1.11*Valt4)にまで小さくなる。
次の記述は、第1及び第2患者に関するTWSIを、グラフ480(図12a)及びグラフ490(図12b)のそれぞれに示される例示としてのデータを使用して計算した例である。
患者1:
Valt2=20マイクロボルト
Valt4=5マイクロボルト
dValt/dt=(Valt2−Valt4)/1.11マイクロボルト/秒
dValt/dt=(20−5)/1.11=15/1.11=13.5
TWSI=(Valt2−Valt4)/(1.11*Valt4)
TWSI=(20−5)/(1.11*5)=2.7
患者2:
Valt2=32マイクロボルト
Valt4=18マイクロボルト
dValt/dt=(Valt2−Valt4)/1.11マイクロボルト/秒
dValt/dt=(32−18)/1.11=14/1.11=12.6
TWSI=(Valt2−Valt4)/(1.11*Valt4)
TWSI=(32−18)/(1.11*18)=0.7
上記計算から分かるように、第1患者(すなわち、いかなる心臓疾患の兆候も示さない患者)は第2患者(すなわち、冠動脈疾患の病歴を有する患者)よりも遥かに高いTWSI(T波安定性指標)を有する。上記の例では、患者1のTWSI(T波安定性指標)は患者2のTWSI(T波安定性指標)の3.86倍である。従って、心臓内科医がTWSIを本発明による診断方法を使用して受け取ると、心臓内科医は患者の心臓の安定性、VT/VFのような合併症の患者のリスク因子、及び患者の心筋症の程度を判断することができる。TWSIは、例示としての方法によって生成することができる一指標である。これらのデータから生成することもできる予測情報となり得る他の指標は、交互脈の平均振幅、早期心拍に対する応答、Valt2、振動減衰の傾き、最後の振動の振幅、Valt4、T波下の面積に対する振動の振幅である。この技術分野の当業者であれば、安定性を評価するための多くの指標があり、かつTWSI(T波安定性指標)が安定性指標の単なる一つの指標に過ぎないことが分かるであろう。安定性を示す他の例は既に説明した。
Valt2=20マイクロボルト
Valt4=5マイクロボルト
dValt/dt=(Valt2−Valt4)/1.11マイクロボルト/秒
dValt/dt=(20−5)/1.11=15/1.11=13.5
TWSI=(Valt2−Valt4)/(1.11*Valt4)
TWSI=(20−5)/(1.11*5)=2.7
患者2:
Valt2=32マイクロボルト
Valt4=18マイクロボルト
dValt/dt=(Valt2−Valt4)/1.11マイクロボルト/秒
dValt/dt=(32−18)/1.11=14/1.11=12.6
TWSI=(Valt2−Valt4)/(1.11*Valt4)
TWSI=(32−18)/(1.11*18)=0.7
上記計算から分かるように、第1患者(すなわち、いかなる心臓疾患の兆候も示さない患者)は第2患者(すなわち、冠動脈疾患の病歴を有する患者)よりも遥かに高いTWSI(T波安定性指標)を有する。上記の例では、患者1のTWSI(T波安定性指標)は患者2のTWSI(T波安定性指標)の3.86倍である。従って、心臓内科医がTWSIを本発明による診断方法を使用して受け取ると、心臓内科医は患者の心臓の安定性、VT/VFのような合併症の患者のリスク因子、及び患者の心筋症の程度を判断することができる。TWSIは、例示としての方法によって生成することができる一指標である。これらのデータから生成することもできる予測情報となり得る他の指標は、交互脈の平均振幅、早期心拍に対する応答、Valt2、振動減衰の傾き、最後の振動の振幅、Valt4、T波下の面積に対する振動の振幅である。この技術分野の当業者であれば、安定性を評価するための多くの指標があり、かつTWSI(T波安定性指標)が安定性指標の単なる一つの指標に過ぎないことが分かるであろう。安定性を示す他の例は既に説明した。
以下の説明は、安定性指標に関する更に別の例を含んでいる。患者が4心拍共振型ペーシングのペースに合わせる場合、最終の時間データから生成される結果としてのdValt/dt及び最終の周波数データから生成される0.25周期/心拍周波数の振幅は、ペーシング誘発振動の減衰速度の指標である。同様に、時間データから生成されるValt4及び周波数データから生成される0.5周期/心拍周波数の振幅は、ペーシングにより誘発される振動の指標である。既に説明したように、例示としての方法250,300,700の3つの方法の全てを使用して最終の時間データ及び最終の周波数データを生成することができる。時間領域データから生成されるTWSIと同様である周波数領域の安定性指標は、0.25周期/心拍での振幅を0.5周期/心拍での振幅で割った値である。従って上記の例では、この結果、患者1に関しては2.93及び患者2に関しては0.34が得られる。これらの結果の比は8.4:1となる。同様に、最終の周波数領域から生成されるパラメータを使用して正常な電気生理学的安定性をぎりぎりの電気生理学的安定性から区別することができる。この技術分野の当業者であれば、時間領域データ及び周波数領域データを併用する形で使用することができることが分かるであろう。例えば、医師は周波数データを読み取り、電気生理学的安定性が低くなっていることを判断することができる。しかしながら、医師は次に、時間データを見て心拍毎の結果を分析して所見を検証し、現象を完全に理解するか、あるいは患者の治療計画を決定しようとする。
従って、本発明による例示としての診断方法では、ペーシング・パターンを使用して再分極過程で生じる膜電位振動を動的に誘発するので、振動減衰を所定の期間に渡って観測することができる。ペーシング・パターンは、周期長の不規則性のタイミングが以前の心拍の再分極過程で生じる膜電位振動に共振して、ぎりぎりのT波安定性を示す心臓の振動の振幅を大きくし、かつ正常なT波安定性を示す心臓の振動を減衰させるように構成される。ペーシング・パターンの影響は心電図に記録され、次にパターンが信号処理により解析される。次に本方法では、ペーシングに起因する振動の振幅及び振動を抑制する心臓の能力を定量化する。複数の指標を使用して正常な電気生理学的安定性を異常な電気生理学的安定性から最大限に区別し、電気生理学的安定性における少しずつ増大する経時的な変化を識別して電気生理学的安定性をモニターすることができるようにする基準を生成する。
更に、上記の内容はペーシング、更に詳細に言うと、上記において定義したような共振ペーシングに関する説明であったが、本診断方法は共振ペーシングの効果をモニターする方法に限定されない。本診断方法を使用して、非共振ペーシングを使用する場合、一定ペーシングを使用する場合、または生の鼓動をモニターしている場合の心臓系をモニターすることもできる。既に説明したように、共振ペーシングは、心電図の心拍測定に位相反転が生じないという効果をもたらす必要がある。従って、共振ペーシングの場合、ペーシングによる刺激によって全ての位相反転を補正する。これとは異なり、非共振ペーシング、一定ペーシング、及び生の鼓動の場合は結果的に位相反転が生じ得る。従って、これらの場合においては、位相反転を計算方法を使用して補正し、心臓鼓動を解析することになる。位相反転を補正するこの計算方法について、図5aのステップ180を参照しながら更に完全な形で説明する。
既に説明した診断方法の他に、本発明の例示としての実施形態は治療方法も含むことができる。詳細には、既に説明したペーシング・パターンはVT/VFが進行する患者のリスクを小さくするように作用することができる。心拍数変動が相対的に正常な数を示す患者は、心不全が発現した場合の死亡率が相対的に低くなる。心不全を有し、かつ心臓ペーシングを必要とする患者には通常、一定CL(周期長)の心臓ペーシングが行なわれる。この操作により、患者の心拍数変動はほぼゼロに減少する。心拍数変動を、心不全における心臓ペーシングで最小数に低減させる影響は依然として未知であるが、有害となり得るとともにVT/VFのリスクまたは心不全の進行を増大させ得る。従って、既に説明したプログラムされた共振ペーシング・パターン及び非共振ペーシング・パターンは、或る程度の心拍数変動を患者に生じさせ、心臓疾患による死亡のリスクを小さくすることができる。
図24は、患者モニター及びフィードバックを含む例示としての治療方法950を示している。ステップ955では、ペーシング装置をプログラムして患者にとって望ましい種々のペーシング法をペーシング装置に取り込む。図25は、例示としての入力フォーム1000を示しており、この入力フォームを使用してペーシング装置をプログラムすることができる。入力フォーム1000は種々の選択を示しており、これらの選択を医師が行なって本発明のペーシング装置をプログラムすることができる。第1フィールド1010では、医師は患者の特徴付けオプションを選択することができ、このオプションには、定常状態応答、非共振ペーシング、共振ペーシング、及び応答テンプレートが含まれる。患者の特徴付けについて以下に更に詳細に説明する。しかしながら、医師はオプションのいずれか、または全てを選択できることに留意されたい。
第2フィールド1020では、医師はペーシング装置の動作モード及び動作順序を選択することができる。以下に更に詳細に説明するモードはモニター・モード、振幅制御モード、及び位相制御モードを含む。第3フィールド1030によって医師は、最大心拍数及び交互脈モードを設定することができる。最後のフィールド1040は、発生タイミングの早い心拍に対する応答の設定を含む。この技術分野の当業者であれば、フォーム1000は単なる例示に過ぎず、かつペーシング装置に関して設定することができる他の設定があり得ることが分かるであろう。
図24に戻って同図を参照すると、方法はステップ960に進み、このステップでは、患者を特徴付ける。患者の特徴付けステップ960では、患者の生体リズムを、既に説明したフィデュシャリー・ステップ及び位相同期ステップを使用して解析し、種々のペーシング・パターンを患者に供給してこれらのペーシング・パターンに対する患者の応答を求める。次にこれらの種々の応答を応答テンプレートに保存する。第1の特徴付けでは、系をテストして、定常状態応答の振幅及び位相を含む系の定常状態応答を求める。第2の特徴付けでは、系をテストして、応答の振幅及び位相を含む共振ペーシングに対する系の応答を求める。同じプロセスを非共振ペーシングに関して実行する。更に、種々のインパルスを系に供給して、系に対するインパルスの影響を求める。更に詳細には、患者の開ループ・インパルス応答を求めるが、この応答は、ペーシング・パターン、例えば共振ペーシング及び/又は心拍数を変化させ、次に周期長またはペーシング振幅の変化から成るインパルスを心臓に加え、その後一定ペーシングを行なうことにより交互脈の所望の位相及び振幅を取得することにより求める。次に、一定ペーシングの間の振動の位相及び振幅を解析する。このプロセスを繰り返して一連の条件、例えば交互脈の位相及び振幅、及び心拍数の下でのインパルス応答に関する十分な信号を取得する。次にインパルス応答を求める操作を、種々の初期条件に関して行なう。異なるペーシング・パターン及びインパルスに対する種々の応答をテンプレートに保存して次の時点での使用に供する。
次に、プロセスは制御モード965,970,975のうちの一つのモードに医師による選択に基づいて進む。モニター・モード965について最初に説明する。モニター・モードでは、系の定常状態応答をモニターする。交互脈が時間領域データまたは周波数領域データにより測定される定義閾値を超える場合、モニター・モードでは、出力を通して系の状態を表示することができる。このモードではまた、現在のモードを別のモード、例えば振幅制御モード970または位相制御モード975に自動的に変えることができる。モニター・モードではまた、PVC(心室性期外収縮)のような他の状態のモニターを行ない、PVC挙動、例えばPVC前後の心拍に関する交互脈の振幅及び位相などを特徴付ける。これはまた、異なる位相への切り替えをトリガすることもできる。
振幅制御モード970では、ペーシング装置は再分極相交互現象の振幅を制御することができる。振幅が定義閾値を超える場合、ペーシング装置は、ペーシングの周期長を伸ばすか、あるいはテンプレートに保存することができる種々の非共振ペーシング・パターンに対する応答に関する患者の特徴記述に基づいて非共振ペーシング・パターンを供給することができる。ペーシング装置は、現在の振幅及び位相を保存された値と比較して、最も適切な非共振ペーシング・パターンを選択することができる。振幅が閾値を超え続ける場合、ペーシング・パターンを別の非共振ペーシング・パターンに変えるか、あるいは閉ループ制御方式に切り替えて交互脈の振幅を小さくすることができる。この方式では、交互脈の振幅及び位相を求めて、インパルスを供給するが、このインパルスは、周期長変化またはペーシング振幅により構成される。インパルスは応答テンプレートから選択して持続中の交互脈の振幅及び位相を変調させる。インパルスは、持続中の交互脈の大きさがインパルスに比例して減衰する、例えば所与のパルスに関して交互脈の振幅が10〜20%減衰するように選択することができる。次に、交互脈の振幅及び位相の再検出を行なう。インパルスによって期待通りの応答が得られたか否かについて判断する。次に、別のインパルスを交互脈の持続中の振幅及び位相、及び応答テンプレートに基づいて供給する。プロセスを繰り返し、交互脈制御の程度の総合評価を下す。次に、制御方式が無事に行なわれたか否か、かつペーシング・モードまたは他のペーシング・パラメータを予めプログラムしておいたパラメータ及び患者応答の記録に基づいて変更すべきか否かについての決定を行なう。
心臓の非共振ペーシング・パターンの例については図4a〜gを参照しながら説明する。この例では、図4aに示すような例示としての3心拍ペーシング・パターン85について考察する。図4aに示すように、3心拍ペーシング・パターン85は、発生タイミングの早い心拍(心拍A)及び2つの正常心拍(心拍B,C)を含む。再分極相交互現象に共振しない3心拍ペーシング・パターン85(または、いずれかの非共振ペーシング・パターン)は、再分極相交互現象の振幅を小さくするように作用することができる。既に説明したように、再分極相交互現象の振動振幅はリスクの表示子であり、かつVT/VFを直接誘発する可能性がある。従って、これらの振動の振幅を小さくすることにより、再分極相交互現象に関連するリスクを小さくすることができる。心室性不整脈を引き起こす機構は、個体の電気生理学的基盤によって変わり得る。既に説明した共振ペーシング・パターンは空間的に不均一な交互脈の発生を防止するように作用するのに対して、非共振ペーシング・パターンは交互脈の振幅を小さくし、脱分極後に開始するか、あるいは他の機構により開始する不整脈を防止することができる。従って、共振ペーシング・パターン及び非共振ペーシング・パターンはともに、抗不整脈作用によるプレコンディショニング効果を個体の特定の電気生理学的基盤に基づいてもたらす心拍数変動を生じさせる際に重要となり得る。
図6cの心電図220及び図21bの曲線812に戻ってこれらを参照すると、第2患者(すなわち、心不全及び冠動脈疾患の病歴を有する患者)の定常状態ペーシング・パターンに対する反応が示されている。心電図220及び曲線812に示すように、患者は著しいTWAを再分極領域224において示し、かつ再分極の振動を周波数スペクトル曲線812の0.5周期/心拍において示す。従って、心電図220及び曲線812は、2つの異なる方法によって測定されるTWAが発現しているので、患者が心臓に所定の不安定性を有することを示している。しかしながら、図6eの心電図240及び図23bの曲線852を参照すると、同じ患者の3心拍非共振ペーシング・パターン(545ms,555ms,555ms)に対する応答が示されている。心電図240及び曲線852に示すように、再分極領域244におけるTWAの振幅及び曲線852の周波数スペクトルにおける0.5周期/心拍での再分極振動が、心電図220のTWA及び曲線812の0.5周期/心拍での周波数スペクトルから著しく小さくなっている。従って、図6e及び図23bは、非共振ペーシング・パターン、特に3心拍パターンによって、TWAの振幅を再分極領域において小さくすることができるので、TWAの発現に起因する患者のリスクを小さくすることができることを示している。
位相制御モード975では、ペーシング装置は再分極相交互現象の位相を制御することができる。例示としての共振ペーシング・パターンは、図2を参照しながら説明した4心拍共振ペーシング・パターン50である。系への入力は複数の心拍の間の周期長である。系の出力は活動電位であり、この活動電位はT波を再分極の始まりとして心電図に含む。共振ペーシングを一時的に使用することにより、心拍数変動の増大をもたらす。再分極相交互現象は心臓の異なる領域において位相不一致の形で生じ得る、すなわち心尖が長期パターンで振動し、心底が短期パターンで振動する。この現象は空間的に不均一な交互脈(spatially discordant alternans)と呼ばれ、かつ大きな電位勾配を再分極時に生じさせ、再分極時のこのような大きな電位勾配は、機能的ブロックを生じさせる、薬剤による不整脈と考えられ、この不整脈はリエントリー性のVT(心室頻拍)を瘢痕近傍で発現させる(Pastore JM, Rosenbaum DS 「機構としての交互脈誘発リエントリー回路における構造上のバリアの役割(Role of structural barriers in the mechanism of alternans-induced reentry )」 Circulation Research 2000; 87: 1157-1163 )、またはVF(心室細動)の8の字型リエントリー回路を誘発する(Pastore JM, Girouard SD, Laurita KR 他「T波交互脈が心細動発生に至る機構(Mechanism Linking T-Wave Alternans to the Genesis of Cardiac Fibrillation )」 Circulation 1999; 99: 1385-1394)。空間的に均一な交互脈は、心臓の両方の領域が同相で振動している場合に生じると言われている。この現象は、心臓のこれらの領域の間の再分極時の電位勾配が小さいことに起因する、薬剤による相対的に軽度の不整脈状態と考えられる。ペーシング・パターンによって心臓の両方の領域が同相で振動する(空間的に均一な交互脈)場合、再分極時の電位勾配を著しく小さくすることができる。空間的に不均一な交互脈を空間的に均一な交互脈に変換することになるペーシングは、再分極時の電位勾配を小さくすることにより抗不整脈作用を発現させることができる。従って、共振ペーシング・パターンを心臓ペースメーカーに取り込むことにより、効果的な心拍数変動を誘発し、かつVT/VFを引き起こすことが判明している空間的に不均一な交互脈である薬剤による不整脈の進行を抑えることができる。共振ペーシング・パターンの他の例を図3a〜eに提示する。
位相制御モードでは、共振ペーシング・パターンを応答テンプレートに基づいて供給する。応答の振幅及び位相を測定して、ペーシング・パターンが期待通りの応答をもたらしているか否かを判断する。系が期待通りの応答を示す場合、共振ペーシング・パターンを継続する。期待通りの応答が測定されない場合、ペーシング・パターンを、周期長の変化、すなわちインパルスのサイズを変更するか、あるいは別の共振パターンに変更することにより、変更することができる。不整脈または他の好ましくない挙動が検出される場合、ペーシングを長い平均周期長または異なるペーシング方式に変更する。ここでもまた、テンプレートは、種々のペーシング・パターンに対する患者の応答及びインパルス応答を含み、ペーシング装置は最も適切なパターンまたはペーシング方式を適用する。次に本方法では、現在の振幅及び位相を継続的にフィードバックすることができ、かつペーシング・パターン及び/又はインパルスを調整して位相を継続的に制御する。
上記説明から分かるように、これらのモードは、ペーシング装置による制御を調整して患者に対して所望の制御が行なえるように種々のフィードバック・ループを有する。ステップ980では、装置の履歴及び種々の制御モードに対する患者の反応を記録することができる。ステップ985では、患者の特徴付けを定期的に更新してテンプレートを更新済み状態に維持し、正しい入力が患者に対して行なわれるようにすることができる。
これまでの明細書においては、本発明について、本発明の特定の例示としての実施形態を参照しながら説明してきた。しかしながら、種々の変形及び変更をこれらの実施形態に、次の請求項に示す最も広い本発明の技術思想及び技術範囲から逸脱しない範囲で加え得ることが明らかである。従って、明細書及び図は制限的な意味ではなく例示として捉えられるべきである。
Claims (46)
- 共振ペーシング・パターンを心臓に供給するステップを備える方法。
- 請求項1に記載の方法において、心臓は振動を生成する複数の振動子を有し、前記共振ペーシング・パターンの変化が前記複数の振動子の各々と共振することにより、前記複数の振動子の各々の振動の位相を前記共振ペーシング・パターンに同期させる、方法。
- 請求項2に記載の方法において、前記複数の振動子は、交互脈及び再分極相交互現象のうちの一つを生じさせる、方法。
- 請求項1に記載の方法において、前記共振ペーシング・パターンは、2心拍ペーシング・パターン、4心拍ペーシング・パターン、6心拍ペーシング・パターン、8心拍ペーシング・パターン、10心拍ペーシング・パターン、及び12心拍ペーシング・パターンのうちの一つである、方法。
- 請求項2に記載の方法において、前記変化は一時的変化及び振幅変化のうちの一つである、方法。
- 請求項1に記載の方法において、前記共振ペーシング・パターンは、大きな振幅の周波数成分を、心臓の前記複数の振動子の各々の周波数領域に有する、方法。
- 請求項1に記載の方法において、前記共振ペーシング・パターンは、第1の小さな振幅の振動を第1パターン周期に誘発し、次に、第2の小さな振幅の振動を第2パターン周期に誘発し、該第2の小さな振幅の振動は該第1の小さな振幅の振動と位相が同じである、方法。
- 請求項6に記載の方法において、前記共振ペーシング・パターンは、前記複数の振動子の各々の振動の振幅を大きくする、方法。
- 請求項1に記載の方法であって、更に、
前記共振ペーシング・パターンの周期長及びペーシング振幅のうちの一つの変化を変更するステップと、
前記周期長及び前記ペーシング振幅のうちの前記一つの変化に対する心臓の応答を求めるステップと、
を備える方法。 - 心臓ペーシング装置であって、
ペーシング・パルスを生成して心臓に供給するパルス発生器と、
体内に設置され、共振ペーシング・パターンを有するペーシング・パルスを心臓に供給する電極と、
を備える心臓ペーシング装置。 - 非共振ペーシング・パターンを心臓に供給するステップを備える方法。
- 請求項11に記載の方法において、心臓は振動を生成する複数の振動子を有し、前記非共振ペーシング・パターンの変化が前記複数の振動子の各々と共振しないことにより、振動の振幅を小さくする、方法。
- 請求項12に記載の方法において、前記複数の振動子は、交互脈及び再分極相交互現象のうちの一つを生じさせる、方法。
- 請求項12に記載の方法において、前記非共振ペーシング・パターンは、前記複数の振動子の位相を連続的に反転させる、方法。
- 請求項11に記載の方法において、前記非共振ペーシング・パターンは、3心拍ペーシング・パターン、5心拍ペーシング・パターン、7心拍ペーシング・パターン、9心拍ペーシング・パターン、及び11心拍ペーシング・パターンのうちの一つである、方法。
- 請求項12に記載の方法において、前記変化は一時的変化及び振幅変化のうちの一つである、方法。
- 請求項11に記載の方法において、前記非共振ペーシング・パターンは、小さな振幅の周波数成分を、心臓の前記複数の振動子の各々の周波数領域に有する、方法。
- 請求項11に記載の方法において、前記非共振ペーシング・パターンは、第1の小さな振幅の振動を第1パターン周期に誘発し、次に、第2の小さな振幅の振動を第2パターン周期に誘発し、該第2の小さな振幅の振動は該第1の小さな振幅の振動とは位相が180度だけ異なる、方法。
- 請求項11に記載の方法であって、更に、
前記非共振ペーシング・パターンの周期長及びペーシング振幅のうちの一つの変化を変更するステップと、
前記周期長及び前記ペーシング振幅のうちの前記一つの変化に対する心臓の応答を求めるステップと、
を備える方法。 - 心臓ペーシング装置であって、
ペーシング・パルスを生成して心臓に供給するパルス発生器と、
体内に設置され、非共振ペーシング・パターンを有するペーシング・パルスを心臓に供給する電極と、
を備える心臓ペーシング装置。 - 方法であって、
ペーシング・パターンを心臓に供給するステップと、
前記ペーシング・パターンに対する心臓の応答を測定するステップであって、該測定された応答は、前記ペーシング・パターンの複数の心拍を表わす一連の心電図を含む、測定するステップと、
診断データを前記測定された応答から計算するステップであって、該診断データは時間領域及び周波数領域のうちの一つの領域のデータを含む、計算するステップと、
を備える方法。 - 請求項21に記載の方法において、前記ペーシング・パターンは、共振ペーシング・パターン、非共振ペーシング・パターン、及び一定ペーシング・パターンのうちの一つである、方法。
- 請求項21に記載の方法において、前記計算するステップは、前記測定された応答を前記ペーシング・パターンに整合させるサブステップを含む、方法。
- 請求項21に記載の方法において、前記計算するステップは、更に、前記測定された応答の位相を同期させるサブステップを含む、方法。
- 請求項21に記載の方法において、前記計算するステップは、前記測定された応答の着目領域を選択するサブステップを含み、該選択するサブステップは、整合されたデータを周波数領域に変換して、整合されたデータの複数の周波数成分の各々を平均することを含む、方法。
- 請求項21に記載の方法において、前記計算するステップは、更に、前記ペーシング・パターンの各心拍の値を平均するサブステップを含む、方法。
- 請求項21に記載の方法において、前記計算するステップは、
前記応答の着目領域において、周波数領域での実部を求めるサブステップと、
前記応答の着目領域において、周波数領域での虚部を求めるサブステップと、
前記着目領域において、周波数領域の各周波数における前記応答の振幅及び位相のうちの一つを求めるサブステップと、
を含む、方法。 - 請求項21に記載の方法において、前記計算するステップは、
前記応答の着目領域において、各心拍の平均電圧を計算するサブステップと、
前記着目領域におけるデータをベクトル・データに再フォーマットするサブステップと、
前記ベクトル・データを周波数領域に変換するサブステップと、
前記ベクトル・データの各々の電圧を識別するサブステップと、
を含む、方法。 - 請求項21に記載の方法であって、前記診断データが時間領域のデータである場合には、更に、
心臓の時間安定性指標を前記診断データから求めるステップ、
を備える方法。 - 請求項29に記載の方法において、前記時間安定性指標は、交互脈の総合振幅、周期長変化に対する応答の振幅、前記ペーシング・パターンに応答する交互脈の最後の振幅、第1の交互脈減衰速度、及び交互脈振幅に対する第2の交互脈減衰速度のうちの一つである、方法。
- 請求項21に記載の方法において、前記診断データが周波数領域のデータである場合には、更に、
心臓の周波数安定性指標を前記診断データから求めるステップ、
を備える方法。 - 請求項31に記載の方法において、前記周波数安定性指標は、重要周波数における振幅応答及び位相応答のうちの一つである、方法。
- 方法であって、
心臓の複数の応答を測定することにより患者を特徴付けるステップと、
前記特徴付けに関する心臓の複数の応答を保存するステップと、
ペーシング・パターンを心臓に供給するときに患者をモニターするステップと、
心臓の振幅応答及び位相応答のうちの一つを制御するステップと、
を備える方法。 - 請求項33に記載の方法において、前記複数の応答は、ペーシング・パターンに対する複数の応答のうちの一つの応答及び自然のリズムを含む、方法。
- 請求項34に記載の方法において、前記ペーシング・パターンは、一定ペーシング・パターン、共振ペーシング・パターン、非共振ペーシング・パターン、及びインパルスを含む一定ペーシング・パターンのうちの一つである、方法。
- 請求項33に記載の方法において、前記制御するステップは、前記振幅応答を制御する場合には、非共振ペーシング・パターン、及びインパルスを含む一定ペーシング・パターンのうちの一つを供給することを含む、方法。
- 請求項36に記載の方法において、前記非共振ペーシング・パターン、及び前記インパルスを含む一定ペーシング・パターンのうちの前記一つのパターンは、前記保存されている特徴付けに関する複数の応答に基づいて供給される、方法。
- 請求項33に記載の方法において、前記制御するステップは、前記位相応答を制御する場合には、共振ペーシング・パターン、及びインパルスを含む一定ペーシング・パターンのうちの一つを供給することを含む、方法。
- 請求項38に記載の方法において、前記共振ペーシング・パターン、及び前記インパルスを含む一定ペーシング・パターンのうちの前記一つのパターンは、前記保存されている特徴付けに関する複数の応答に基づいて供給される、方法。
- 方法であって、
心臓の複数の応答を収集するステップであって、該複数の応答は心臓の連続かつ重複する心拍群に対応する、収集するステップと、
前記複数の応答の各々の位相を求めるステップと、
前記複数の応答のうちの一つの応答の位相が先行する応答の位相に対して反転している場合に、複数の心拍のうちの一つを取り除くステップと、
を備える方法。 - 請求項40に記載の方法において、前記複数の応答は、心臓の自然のリズムからのものである、方法。
- 請求項40に記載の方法において、前記複数の心拍のうちの前記一つは、反転している位置において取り除かれる、方法。
- 請求項40に記載の方法において、前記複数の応答は、心臓に供給されるペーシング・パターンに対するものである、方法。
- 請求項43に記載の方法において、前記複数の心拍のうちの前記取り除かれた心拍は、ペーシング・パターンに対応する心拍群を含む、方法。
- 請求項40に記載の方法であって、更に、
前記複数の心拍のうちの前記一つを取り除いた後の応答を解析するステップ、を備える方法。 - 請求項45に記載の方法において、前記解析するステップは、前記複数の応答に関する最終の時間領域データ及び最終の周波数領域データのうちの一つを生成する、方法。
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