JP2007526882A - リンパ球性白血病を治療するためのロスコビチンの使用 - Google Patents

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Abstract

本発明は、慢性リンパ球性白血病を治療する医薬品の調製における、ロスコビチン又は薬剤として許容されるその塩の使用に関する。

Description

本発明は、化合物2−[(1−エチル−2−ヒドロキシエチル)アミノ]−6−ベンジルアミン−9−イソプロピルプリン及び薬剤として許容されるその塩の治療的使用に関する。
サイクリン依存性キナーゼ(CDK)は、細胞周期において決定的な調節の役割を果たすセリン/スレオニンキナーゼである。CDKは、転写因子及び腫瘍抑制タンパク質を含む、DNA複製及び細胞分裂に関与する種々のタンパク質のリン酸化によって細胞周期の進行を調節する。あるCDKはまた、RNAポリメラーゼII(polII)の最大サブユニットのカルボキシ末端ドメイン(CTD)のリン酸化に関与することによってRNA合成の調節において役割を果たす。したがって、CDKが魅力的な治療標的となったことは当然である。その結果、ATP結合部位のために競合することによってCDKの活性を妨げることが可能な多くの新規な薬理学的な薬剤が、臨床試験で現在試験されている
従来技術は、サイクリン依存性キナーゼを阻害することによって細胞周期を調節することが可能ないくつかの化合物を記載している。これらの化合物には、ブチロラクトン、フラボピリドール及び2−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−6−ベンジルアミノ−9−メチルプリン(オロモウシン)がある。オロモウシン及び関連の化合物は、cdc2の阻害剤であることが示されている。cdc2(cdk1としても知られる)は、細胞周期の調節に関与するサイクリン依存性キナーゼのファミリーの酵素サブユニットである。
これらのキナーゼは、少なくとも2つのサブユニット、即ち酵素サブユニット(このcdc2はプロトタイプである)及び調節サブユニット(サイクリン)を含む。cdkは、サイクリンファミリー:サイクリンA(cdc2、CDK2)、サイクリンB1〜B3(cdc2)、サイクリンC(CDK8)、サイクリンD1〜D3(CDK2−CDK4−CDK5−CDK6)、サイクリンE(CDK2)、サイクリンH(CDK7)のメンバーと一過性に会合することによって調節される。
これらの複合体のそれぞれは、細胞周期のある期に関与している。CDK活性は、翻訳後の修飾、他のタンパク質との一過性の会合、及びそれらの細胞内局在化の改変により調節される。CDK調節因子は、活性化物質(サイクリン、CDK7/サイクリンH、cdc25ホスファターゼ)、p9CKS及びp15CDK−BPサブユニット、及び阻害タンパク質(p16INK4A、p15INK4B、p21Cip1、p18,p27Kip1)を含む。
現在、CDK及びそれらの調節タンパク質がヒトの腫瘍の発生において重大な役割を果たしているという仮説には、文献にかなりの支持がある。したがって、多くの腫瘍では、サイクリン依存性キナーゼの一時的な異常発現及びタンパク質阻害剤の主要な調節解除(突然変異、欠失)が観察されている。
ロスコビチンは、サイクリン依存性キナーゼ酵素、特にCDK2の強力な阻害剤であることが立証されている。CDK阻害剤は、細胞周期のG1/S及びG2/M期から細胞が通過するのを阻止すると理解される。ロスコビチンの純粋なR−エナンチオマー、CYC202(R−ロスコビチン)は、種々の腫瘍細胞におけるアポトーシスの強力な誘発物質として最近出現し、既に、乳癌及び非小細胞肺癌を治療するための臨床試験中である。ロスコビチンはまた、網膜芽細胞腫リン酸化の阻害剤であることが示されており、したがってRb陽性腫瘍により強力に作用すると考えられている。
今回、ロスコビチンは、これまで治療が特に難しかったある種の増殖性障害の処置における治療用途を有することが認められた。
本発明の第1の態様は、慢性リンパ球性白血病を治療する医薬品の調製における、ロスコビチン又は薬剤として許容されるその塩の使用に関する。
本発明の第2の態様は、治療有効量のロスコビチン又は薬剤として有効なその塩を投与することを含む、慢性リンパ球性白血病に罹患している患者を治療する方法に関する。
本発明の第3の態様は、慢性リンパ球性白血病細胞の抗アポトーシス遺伝子の発現をダウンレギュレートする方法であって、その細胞をロスコビチン又は薬剤として許容されるその塩と接触させることを含む方法に関する。
本発明の第4の態様は、対象の慢性リンパ球性白血病を治療する方法であって、ロスコビチン又は薬剤として許容されるその塩を対象に、対象の抗アポトーシス遺伝子の発現をダウンレギュレートするのに十分な量で投与することを含む方法に関する。
本発明の第5の態様は、慢性リンパ球性白血病細胞のDNA修復遺伝子の発現をダウンレギュレートする方法であって、その細胞をロスコビチン又は薬剤として許容されるその塩と接触させることを含む方法に関する。
本発明の第6の態様は、対象の慢性リンパ球性白血病を治療する方法であって、ロスコビチン又は薬剤として許容されるその塩を対象に、対象のDNA修復遺伝子の発現をダウンレギュレートするのに十分な量で投与することを含む方法に関する。
本発明の第7の態様は、慢性リンパ球性白血病細胞の転写調節に関与する遺伝子の発現をダウンレギュレートする方法であって、その細胞をロスコビチン又は薬剤として許容されるその塩と接触させることを含む方法に関する。
本発明の第8の態様は、対象の慢性リンパ球性白血病を治療する方法であって、ロスコビチン又は薬剤として許容されるその塩を対象に、対象の転写の調節に関与する遺伝子をダウンレギュレートするのに十分な量で投与することを含む方法に関する。
本発明の第9の態様は、(i)ロスコビチン又は薬剤として許容されるその塩;及び場合により(ii)薬剤として許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む、慢性リンパ球性白血病の治療で使用する薬剤組成物に関する。
上記の通り、本発明は、慢性リンパ球性白血病(CLL)の治療におけるロスコビチンの使用に関する。
ロスコビチン又は2−[(1−エチル−2−ヒドロキシエチル)アミノ]−6−ベンジルアミン−9−イソプロピルプリンは、2−(1−D,L−ヒドロキシメチルプロピルアミノ)−6−ベンジルアミン−9−イソプロピルプリンとしても記載されている。本明細書の使用では、用語「ロスコビチン」は、分割したR及びSエナンチオマー、その混合物及びそのラセミ化合物を包含する。
本明細書の使用では、用語「CYC202」は、ロスコビチンのRエナンチオマー、即ち2−(1−R−ヒドロキシメチルプロピルアミノ)−6−ベンジルアミノ−9−イソプロピルプリンを指し、その構造を以下に示す。
ロスコビチンのin vitro活性を以下に示す。
[表]
抗増殖剤としてのロスコビチンの使用は当技術分野で知られているが、治療が特に難しいことが知られ、従来の治療に対してしばしば抵抗性のCLLの治療に有効であろうという示唆はこれまでなかった。
治療活性
本発明の実施形態すべてについて、ロスコビチンは、Rエナンチオマーの形態、即ち2−(1−R−ヒドロキシメチルプロピルアミノ)−6−ベンジルアミノ−9−イソプロピルプリン(以下、「CYC202」と呼ぶ)であることが好ましい。
慢性リンパ球性白血病(CLL)
慢性リンパ球性白血病(CLL)は、障害の攻撃性に関連する、B細胞及びT細胞の異なる成熟状態を特徴とする不均質な疾患の群である。この障害は、免疫学的に未熟で機能的に不全な小リンパ球のクローン増殖を特徴とする。CLLは、独立した種類に通常分類され、典型的な及び混合タイプのB細胞慢性リンパ球性白血病、B細胞及びT細胞前リンパ球性白血病、有毛状細胞性白血病及び有毛状細胞性変異型、循環する絨毛リンパ球を有する脾リンパ腫、大顆粒リンパ球性白血病、成人T細胞白血病/リンパ腫症候群、並びにB細胞及びT細胞両方の悪性リンパ腫の白血病相がある。
CLLの治療は一般に個別化されている。疾患の進行が遅い老年の患者には、特別な治療は不要である。しかし、疾患がより進行した又は疾患の経過がより速いその他の患者の生存率の中央値は2年未満である。したがって、何らかの治療をすべきである。患者の大部分は中間の予後を有し、数年は治療なしで適度にうまく生活するが、いずれは何らかの治療が必要である。
今日まで、CLLの典型的な治療には、クロラムブシル、化学療法剤の投与が伴ってきた。併用化学療法は一般に、進行した症例にのみ使用されている。放射線療法は、特に脾臓肥大が存在し、骨髄移植が若い患者で成功した場合に効果的に使用されてきた[Foon et al., Leukemia 6 (Supp. 4):26-32, 1992]。米国特許第5455280号は、治療有効量のβカロテンを使用するCLLの治療方法を提案している。より最近では、ヌクレオシドフルダラビン、フッ素化アデニン類似体及び2−クロロデオキシアデノシン、デオキシアデノシン類似体が有効であることが分かった。この類似体は両方とも脱アミノ化に抵抗性である[Keating et al., Leukemia 6 (Supp. 4):140-141, 1992]。これらの療法はすべて、悪性細胞の除去(移植の場合、置換)に焦点をあてている。しかし、CLLは、依然として治療が特に難しい障害である。
B細胞慢性リンパ球性白血病(B−CLL)
好ましい一実施形態では、本発明は、B細胞慢性リンパ球性白血病の治療における、ロスコビチン又は薬剤として許容されるその塩の使用に関する。
B細胞慢性リンパ球性白血病(B−CLL)は、西洋社会で最も普通の白血病であり、今日まで不治である。この疾患の経過は様々であり、ある割合のB−CLLは、共通のDNA損傷反応経路で機能するATM又はTP53遺伝子のいずれかの突然変異のために悪い臨床転帰を有する。
B−CLLは、形態学的には成熟しているが、生物学的には未成熟と思われるBリンパ球の増殖及び蓄積を特徴とする。BCLLは通常、進行が遅い新生物であり、数年の生存率が期待できる。B−CLLは通常、50歳を超えた人に発症する。この障害は西洋諸国の白血病の30%を占め、米国だけで年間10000人の新たな症例が診断されている。
B−CLL細胞の特有の表現型は、CD5の発現、疾患を診断するマーカー、及び少なくとも1種のその他のB細胞マーカー(CD19、CD20又はCD23)、並びに表面免疫グロブリンの低発現を含み、これは臓器浸潤すると、リンパ節の腫脹及び肝脾腫大を引き起こす。疾患の進行した段階では、異常なリンパ球で骨髄が占領されると、骨髄不全を引き起こし、貧血及び血小板減少につながる。
CLLのB細胞は、マウス赤血球の受容体、未熟B細胞のマーカーを有する。この障害では、T細胞の数の増大及びTサプレッサー細胞の数の増大が報告されている。典型的には、Tヘルパー/サプレッサー比が復元し、サプレッサーT細胞が増加し、ヘルパーT細胞が減少する。ナチュラルキラー細胞の絶対数も増大していることがある。染色体を分析すると、B−CLLを有する患者の臨床データによって供給された情報に加えて、総生存率に関する予後情報が得られる。
この疾患の臨床経過は非常に異なるので、一部の患者では長期間安定であるが、その他の患者では、進行はずっと速い。B−CLLの標準的な治療は、クロラムブシルを含み、より最近ではプリン類似体のフルダラビンを含む。しかし、フルダラビンの導入後に総生存率の明らかな増大は観察されておらず、フルダラビンで治療した患者の殆どすべてが結局は再発している
本発明の好ましい実施形態では、ロスコビチンの細胞障害作用は、正常リンパ球よりもB−CLL細胞に対して選択的である。
本出願人による研究により、同濃度のCYC202で処置した正常リンパ球も、この薬物の細胞傷害作用に感受性であることが示された。しかし、これらの細胞は、低い細胞傷害反応を示し、これはまた時間の経過と共に遅くなった。したがって、CYC202は、正常B細胞と比較して、B−CLL細胞に対して選択的細胞傷害性を示す。CYC202とのインキュベーション最低6時間後にB−CLL細胞のアポトーシスが誘発される事実を考慮すれば、用量及びCYC202のin vivo投与の間隔を操作することにより、B−CLL細胞と正常リンパ球との間の反応をさらに区別できよう。実際に、この概念の裏付けとして、CYC202の低毒性が臨床で既に報告されている
T細胞慢性リンパ球性白血病
別の好ましい実施形態では、本発明は、T細胞慢性リンパ球性白血病の治療における、ロスコビチン又は薬剤として許容されるその塩の使用に関する。
T細胞慢性リンパ球性白血病(T−CLL)は、CLLの全症例の5%未満であり、2種類ある。1つの種類は、免疫表現型CD3+、CD4−、CD8+、HNK−1Tを有し、大顆粒リンパ球増加症として知られる。T−CLLの第2の形態は、表現型CD3+、CD4+、CD8−を有する[Pathology, Second Edition, Emanual Rubin, John L. Farber, p1067]。
大顆粒リンパ球増加症では、腫瘍細胞は大きく、多数のアズール顆粒を有する中程度の量の細胞質を有する。これらのリンパ球はナチュラルキラー(NK)細胞集団に関係していると考えられる。症例の85%では、大顆粒リンパ球増加症は進行が遅く慢性の障害であるが、攻撃的な臨床障害を有するものが少数ある。この疾患は、循環する大顆粒リンパ球の持続性の増加、脾腫及び好中球減少症(その結果の反復性感染症を伴う)を特徴とし、しばしば関節リウマチを伴う。
CD4+ T−CLLは、若い成人男性で最も多く、末梢血リンパ球数の著しい増加を特徴とする。腫瘍性Tヘルパー細胞は、B−CLLリンパ球と形態学的に区別できないが、核の輪郭は不規則又は脳状であることがある。皮膚の関与(皮膚向性)は共通しており、通常、顕著な肝脾腫大症がある。骨髄及び中枢神経系への浸潤が特徴である。CD4+ T−CLLは攻撃的であり、平均生存率はわずか1年である。
前リンパ球性白血病
別の好ましい実施形態では、本発明は、前リンパ球性白血病の治療における、ロスコビチン又は薬剤として許容されるその塩の使用に関する。
前リンパ球性白血病は、症例の80%がB−CLLの、20%がT−CLLの特徴的な変形である。腫瘍性B前リンパ球は、B−CLL細胞よりも多くの表面膜免疫グロブリンを発現し、免疫学的に未熟と思われる。前リンパ球性白血病は、大きな脾腫及び白血球数の著しい増加(50%を超える前リンパ球)を臨床的に特徴とする。
リンパ節症はB細胞前リンパ球性白血病において目立たないが、中程度のリンパ節症はT細胞前リンパ球性白血病においてしばしば認められる。前リンパ球性白血病は、老年男性で最も多い(4:1男性優勢)。これは攻撃的な疾患であり、平均生存率は2から3年である[Pathology, Second Edition, Emanual Rubin, John L. Farber, p1067]。
T細胞前リンパ球性白血病
特に好ましい一実施形態では、本発明は、T細胞前リンパ球性白血病(T−PLL)の治療における、ロスコビチン又は薬剤として許容されるその塩の使用に関する。
T−PLLは、成熟T細胞に影響を与える珍しい慢性のリンパ球増殖性障害である。この疾患は高齢、典型的には70歳代又は80歳代で発症し、わずかに男性が優勢である。患者はB−PLLと同様の初期症状を示すが、T−PLLは現在、潜行性の発症と不良な転帰を特徴とする、明確な臨床及び検査上の特徴を有する、本来、悪性疾患であると理解されている。T−PLLは、成熟B及びT細胞白血病のわずか3%であるが、前リンパ球性白血病の約20%である。T−PLL症例の20%では、細胞は小さく、電子顕微鏡でのみ確認できる目立たない核を有する。これらの症例は、T−PLLの小細胞変形とされる。
T前リンパ球は、成熟後胸腺リンパ球の以下の表現型を有する:CD1a−、末端デオキシヌクレオチジル転移酵素−TdT−、CD2+、CD3+、CD5+、CD7+。CD4及びCD8発現について、最も多い表現型はCD4+/CD8−である。CD4とCD8の同時発現(二重陽性表現型)は、症例の約25%で見られる。
この疾患は攻撃的であり、急速に進行する。臨床経験では、T−PLLの治療に有効な治療剤の数は限られていることが示されている。生存率は7カ月(治療していない患者)から17.5カ月(治療患者で)まで変化する。今日まで、治療は、クロラムブシル、シクロホスファミド、ドキソルビシン及びビンクリスチンなどの薬剤の投与が中心であり、これは一部成功している。2−デオキシコホルマイシン及びCD52抗体(campath−1H)である程度の成功は認められるが、治療は依然として臨床的に問題であり、より効果的な治療手段が求められている。
CDKの阻害
好ましい一実施形態では、ロスコビチンは少なくとも1種のCDK酵素を阻害するのに十分な量で投与する。
好ましくは、CDK酵素は、CDK1、CDK2、CDK4、CDK7及びCDK9から選択される。
特に好ましい一実施形態では、CDK酵素はCDK2である。
別の特に好ましい実施形態では、CDK酵素はCDK7及びCDK9から選択される。
突然変異ATM及び突然変異TP53腫瘍
以前の研究によれば、B−CLLの最大30%が、ATM遺伝子又はTP53遺伝子のいずれかの突然変異から生じたDNA損傷後のアポトーシスの誘発に関与するp53経路の欠陥による不良な臨床転帰を有することが示されている3、4、22。殆どの現在の抗癌治療は、その作用をp53依存性アポトーシス経路の活性化を介して発揮しているので、そのような突然変異は薬物低抗性の重大な原因である。よって、この重要な遺伝的欠陥を回避することが可能な新規な治療に明らかな関心がもたれており、即ちATM及びTP53突然変異B−CLL腫瘍に対する新規な治療が緊急に求められている。
本発明の好ましい一実施形態では、慢性リンパ球性白血病は突然変異ATMと関係している。
より好ましくは、慢性リンパ球性白血病は突然変異ATMと関係しているB−CLLである。
本発明の別の好ましい実施形態では、慢性リンパ球性白血病は突然変異TP53と関係している。
より好ましくは、慢性リンパ球性白血病は突然変異TP53と関係しているB−CLLである。
本出願人による研究では、ATM及びTP53突然変異腫瘍の一部を含む、計26例のB−CLLに対するCYC202のin vitro活性を調べた。その結果は、イオン化放射線(IR)及びフルダラビンによって誘発された細胞傷害性活性と比較した。
5μg/ml以上の濃度のCYC202で処置したB−CLL細胞は、ATM又はTP53遺伝子の状態に関わらず、処置の24時間以内で高レベルのアポトーシスを示した。よって、驚くべきことに、ATM突然変異体、TP53及び野生型B−CLL腫瘍はCYC202に対する応答が同等である。
これは、応答が遅く且つかなり低く、非応答性であると思われる、即ちフルダラビン誘発性アポトーシスに対して著しいin vivo抵抗性を示唆しているATM突然変異腫瘍をある割合含むフルダラビン処置とは対照的である。この結果は、ATM及びTP53突然変異体の両方が細胞殺傷性において明らかな欠陥を示したIR誘発性アポトーシスとも対照的である。したがって、CYC202は、p53経路の完全性に関わらず、B−CLL腫瘍細胞試料のin vitro処置の24時間以内にアポトーシスを効果的に誘発することが可能である。
作用の様式
本発明の好ましい一実施形態では、ロスコビチンは、抗アポトーシス遺伝子の発現をダウンレギュレートする。
好ましくは、抗アポトーシス遺伝子は、Mcl−1、Bcl−2及びMad3からなる群から選択される少なくとも1種の遺伝子を含む。
本発明の別の好ましい実施形態では、ロスコビチンは、DNA修復遺伝子の発現をダウンレギュレートする。
好ましくは、DNA修復遺伝子はPCNA又はXPAを含む。
本発明のさらに別の好ましい実施形態では、ロスコビチンは、転写調節に関与する遺伝子の発現をダウンレギュレートする。
好ましくは、転写調節に関与する遺伝子は、PolII、eIF−2、4e及びE2Fからなる群から選択される少なくとも1種の遺伝子を含む。
本発明の特に好ましい一実施形態では、ロスコビチン又は薬剤として許容されるその塩は、Mcl−1の発現をダウンレギュレートするのに十分な量である。
本発明の一態様は、B細胞慢性リンパ球性白血病細胞でのMcl−1発現をダウンレギュレートする方法に関し、この方法は、前記細胞をロスコビチン又は薬剤として許容されるその塩と接触させることを含む。
本発明の別の態様は、対象のB細胞慢性リンパ球性白血病を治療する方法に関し、前記方法は、ロスコビチン又は薬剤として許容されるその塩を対象に、前記対象のMcl−1の発現をダウンレギュレートするのに十分な量で投与することを含む。
本発明のさらに別の態様は、B細胞慢性リンパ球性白血病を治療する医薬品の調製における、ロスコビチン又は薬剤として許容されるその塩の使用に関し、ここで、ロスコビチン又は薬剤として許容されるその塩は、Mcl−1の発現をダウンレギュレートするのに十分な量である。
本出願人による研究により、CYC202のB−CLL細胞に対する作用はフルダラビンによって誘発される作用よりも少なくとも24時間先行し、はるかに顕著であったことが示された。フルダラビンは、p53のDNA損傷誘発アップレギュレーション及びp53経路の活性化を介して細胞死を誘発すると考えられる。しかし、現在の研究における、p53突然変異B−CLL腫瘍がフルダラビンにin vitroで反応しやすいという事実は、フルダラビンがp53非依存性殺傷を示し得るという概念を支持する。実際に、Pettittら15は、p53機能不全を伴うB−CLLでのフルダラビンに対する応答を報告した。さらに、フルダラビンの作用機序のいくつかはATM依存性であることが可能である。というのは、フルダラビンに対してin vitroで抵抗性の6つの腫瘍のうち4つはATM突然変異体であることが分かったからである。対照的に、CYC202は、ATM及びTP53突然変異B−CLL腫瘍の両方に対して強い殺傷作用を示し、これは、殺傷機序がATM及びp53機能の両方に非依存性であることを暗示している。
CYC202は、細胞がS期に進むために必要なCDK2−サイクリンEに対して強い阻害作用を示すことが以前に示されている。しかし、B−CLL細胞の主に分裂しない性質は、この薬物の作用の追加的な機序を強く示唆している。本出願人の研究により、多くの遺伝子はCYC202での処置に反応してダウンレギュレートされ、それには、転写及び翻訳調節に関与する遺伝子(RNA pol II、RNA pol III)、抗アポトーシスタンパク質(Mcl−1、Bcl−2)、並びにDNA修復タンパク質(XPA)が含まれることが分かった。したがって、転写のダウンレギュレーションは、CYC202によるB−CLL殺傷の予想される機序として出現した。
転写中、PTEF−b(CDK9/サイクリンT1)及びTFIIH(CDK7/サイクリンH)は、RNAポリメラーゼIIのカルボキシ末端ドメイン(CTD)をセリン2を含む特異的標的残基16でリン酸化し、このリン酸化は転写伸長の開始に先立って生じる17。CDK9及びCDK7キナーゼのリン酸化、並びにRNA pol II CTDのリン酸化を阻害する薬剤は、転写リプレッサーとして作用していることが示唆されている18。CYC202の転写リプレッサーとしての役割と合致して、この薬物で処置したB−CLL細胞において、RNA pol IIのセリン2のリン酸化が急速に減少するのが認められた。さらに、この修飾は転写の全ダウンレギュレーションと共に、B−CLL腫瘍細胞すべてにおけるアポトーシスの誘発に先行することが分かった。
CYC202が仲介した転写の減少の結果の1つには、Bcl−2ファミリーのメンバー、Mcl−1のダウンレギュレーションがある。本出願人の研究により、Bcl−2タンパク質ではなくMcl−1のレベルの低下は、CYC202処置後のアポトーシスの開始と同時に起こることが分かった。さらに、CYC202が誘発したMcl−1の消失は、カスパーゼ3及び7の活性化に時間的に先行しており、これは、Mcl−1ダウンレギュレーションが、B−CLL細胞におけるミトコンドリア経路を介したアポトーシスの誘発にとって重要な事象であり得ることを示唆している。したがって、総合すれば、CYC202とのB−CLL細胞のインキュベーション後の事象の考えられる順序は、以下の通りであろう:a)RNA pol IIのリン酸化及び転写調節遺伝子の両方のダウンレギュレーションによる転写の阻害、b)Mcl−1及びおそらくその他の生存促進因子などの短命のタンパク質の消失、c)ミトコンドリアの活性化及びシトクロームcの放出、d)エフェクターカスパーゼの活性化及びアポトーシスの開始。
要約すれば、ATM及びTP53突然変異B−CLL腫瘍は、一般により不良な予後と結び付いており、in vitroでDNA損傷誘発性アポトーシスの不在を示し、これは、TP53突然変異腫瘍の場合、アポトーシスシグナルの減少、並びに損傷誘発性生存促進応答の増大の両方の結果と思われることは以前に示されていた。本明細書で記載の研究により、CYC202は、ATM又はTP53突然変異を有するものを含むB−CLL細胞におけるアポトーシスの強力な誘導物質であり、転写リプレッサー及び生存シグナルとして働くことが示された。さらに、B−CLL細胞の全体的な遺伝子発現分析により、転写及び翻訳調節に関与する遺伝子のかなりのダウンレギュレーション及びアポトーシスの阻害、並びにDNA修復が示された。さらに、CYC202は、mRNA及びタンパク質レベルの両方でアポトーシスの誘発の前に、RNAポリメラーゼIIのリン酸化の阻害を引き起こし、生存促進因子Mcl−1の急速な消失につながった。
したがって、CYC202は、p53経路の機能的状況に関わらず、B−CLL細胞におけるアポトーシスの強力な誘導物質であると結論することができる。これを考慮し、且つその低い毒性に照らして、CYC202は、抵抗性B−CLLの転帰を向上させ、攻撃的な腫瘍の治療をかなり向上させる強力な治療剤として使用できよう。
薬剤組成物
ロスコビチン(又は薬剤として許容されるその塩、エステル、又は薬剤として許容されるその溶媒和物)は、単独で投与できるが、ヒトの治療の場合、一般に薬剤担体、賦形剤又は希釈剤と混合して投与される。
したがって、本発明の好ましい実施形態は、薬剤として許容される賦形剤、希釈剤又は担体と組み合わせたロスコビチンの投与に関する。
本明細書で記載した種々の異なる形態の薬剤組成物用のそのような適切な賦形剤の例は、Handbook of Pharmaceutical Excipients, 2nd Edition, (1994), Edited by A Wade and PJ Wellerに見い出すことができる。
治療上の使用に許容される担体又は希釈剤は製薬分野でよく知られており、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., (A. R. Gennaro edit. 1985)に記載されている。適切な担体としては、ラクトース、澱粉、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ソルビトールなどがある。適切な希釈剤としては、エタノール、グリセロール及び水がある。
薬剤担体、賦形剤又は希釈剤の選択は、意図する投与経路及び標準的な薬学的慣行に関して選択することができる。薬剤組成物は、担体、賦形剤又は希釈剤として、又はそれらに加えて、任意の適切な結合剤、潤滑剤、懸濁化剤、被覆剤、可溶化剤を含んでもよい。
適切な結合剤には、澱粉、ゼラチン、天然糖、例えばグルコース、無水ラクトース、流動性ラクトース、βラクトース、とうもろこし甘味料、天然及び合成ガム、例えばアカシア、トラガカント又はアルギン酸ナトリウム、カルボキシルメチルセルロース及びポリエチレングリコールがある。
適切な潤滑剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどがある。
保存料、安定化剤、色素及び香味剤も薬剤組成物に入れてよい。保存料としては、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸及びp−ヒドロキシ安息香酸のエステルがある。抗酸化剤及び懸濁化剤も使用してよい。
塩/エステル
本発明の活性剤は、塩又はエステル、特に薬剤として許容される塩又はエステルの形態で存在できる。
本発明の活性剤の薬剤として許容される塩としては、適切なその酸付加塩又は塩基性塩がある。適切な薬用塩の概説は、Berge et al, J Pharm Sci, 66, 1-19 (1977)に見い出すことができる。塩は、例えば鉱酸などの強い無機酸、例えば硫酸、リン酸又はハロゲン化水素酸;置換されていないか置換されている(例えばハロゲンで)炭素原子1から4個のアルカンカルボン酸などの強い有機カルボン酸、例えば酢酸;飽和又は不飽和のジカルボン酸、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸又はテトラフタル酸;ヒドロキシカルボン酸、例えばアスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸又はクエン酸;アミノ酸、例えばアスパラギン酸又はグルタミン酸;安息香酸;或いは置換されていないか置換されている(例えばハロゲンで)(C1〜C4)−アルキル−又はアリール−スルホン酸などの有機スルホン酸、例えばメタンスルホン酸又はp−トルエンスルホン酸と形成される。
エステルは、エステル化される官能基に依存して、有機酸又はアルコール/水酸化物のいずれかを使用して形成される。有機酸としては、置換されていないか置換されている(例えばハロゲンで)炭素原子1から12個のアルカンカルボン酸などのカルボン酸、例えば酢酸;飽和又は不飽和のジカルボン酸、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸又はテトラフタル酸;ヒドロキシカルボン酸、例えばアスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸又はクエン酸;アミノ酸、例えばアスパラギン酸又はグルタミン酸;安息香酸;或いは置換されていないか置換されている(例えばハロゲンで)(C1〜C4)−アルキル−又はアリール−スルホン酸などの有機スルホン酸、例えばメタンスルホン酸又はp−トルエンスルホン酸がある。適切な水酸化物としては、無機水酸化物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムがある。アルコールとしては、置換されていないか置換されていてよい(例えばハロゲンで)炭素原子1から12個のアルカンアルコールがある。
エナンチオマー/互変異性体
本発明はまた、適切な場合は、活性剤のエナンチオマー及び互変異性体のすべてを含む。当業者は、光学的性質(1個又は複数のキラル炭素原子)又は互変異性の特徴を有する化合物が分かるであろう。対応するエナンチオマー及び/又は互変異性体は、当技術分野で知られた方法により単離/調製できる。
立体異性体及び幾何異性体
本発明の活性剤は、異なる立体異性体及び/又は幾何異性体の形態で存在してもよく、例えば1個又は複数の非対称及び/又は幾何学的中心を有していてもよく、したがって2種以上の立体異性体及び/又は幾何異性体の形態で存在してもよい。本発明は、薬剤の個々の立体異性体及び幾何異性体すべて、並びにそれらの混合物の使用を意図する。特許請求の範囲で使用した用語はこれらの形態を含み、但し、前記形態は(必ずしも同程度ではないが)適切な機能活性を保持している。
本発明はまた、活性剤又は薬剤として許容されるその塩の適切な等方変形すべてを含む。本発明の薬剤又は薬剤として許容されるその塩の等方変形は、少なくとも1個の原子が、同じ原子数を有するが天然に通常見られる原子質量とは異なる原子質量を有する原子で置換されているものと定義する。薬剤及び薬剤として許容されるその塩に入れることができる同位体としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、イオウ、フッ素及び塩素の同位体、例えばそれぞれH、H、13C、14C、15N、17O、18O、31P、32P、35S、18F及び36Clがある。薬剤及び薬剤として許容されるその塩のある種の等方変形、例えばH又は14Cなどの放射性同位体が組み込まれているものは、薬剤及び/又は基質の組織分布の研究において有用である。トリチウム、即ちH、及び炭素14、即ち14C同位体が、その調製の容易さ及び検出性のために特に好ましい。さらに、重水素、即ちHなどの同位体での置換により、より大きな代謝安定性、例えば増大したin vivo半減期又は低減した必要用量の結果としてのある種の治療上の利点が得られ、したがってある状況で好ましい場合がある。本発明の薬剤及び薬剤として許容されるその塩の等方変形は一般に、従来の手順で適切な試薬の適切な等方変形を使用して調製することができる。
溶媒和物
本発明はまた、本発明の活性剤の溶媒和物形態を含む。特許請求の範囲で使用した用語はこれらの形態を包含する。
多形
さらに、本発明は、活性剤の種々の結晶形態、多形形態及び(無)水和形態に関する。化合物が、化合物の合成調製で使用する溶媒から、精製及び/又は単離する方法をわずかに変化させることによって任意のそのような形態で単離できることは、製薬産業でよく確立されている。
プロドラッグ
本発明はさらに、プロドラッグ形態の本発明の活性剤を含む。そのようなプロドラッグは一般に、1個又は複数の適切な基が、ヒト又は哺乳動物対象に投与すると復元するように修飾されている化合物である。そのような復元はそのような対象に天然に存在する酵素によって通常行われるが、復元をin vivoで行うために、そのようなプロドラッグと一緒に第2の薬剤を投与することも可能である。そのような修飾としては、エステル(例えば上記で記載されているもののいずれか)があり、その場合、復元はエステラーゼなどで行われてもよい。その他のそのような系は、当業者によく知られているであろう。
投与
本発明の薬剤組成物は、経口、直腸、膣、非経口、筋肉内、腹腔内、動脈内、鞘内、気管支内、皮下、皮内、静脈内、鼻、口腔内又は舌下投与経路に適合させることができる。
経口投与では、圧縮錠剤、丸剤、錠剤、顆粒剤、ドロップ剤及びカプセル剤が特に使用される。好ましくは、これらの組成物は、1用量当たり活性成分を1から2000mg、より好ましくは50〜1000mg含有する。
その他の投与形態としては、静脈内、動脈内、鞘内、皮下、皮内、腹腔内又は筋肉内注射することができ、滅菌溶液又は滅菌可能な溶液から調製された溶液又はエマルジョンがある。本発明の薬剤組成物はまた、坐薬、ペッサリー、懸濁液、エマルジョン、ローション、軟膏、クリーム、ゲル、スプレー、溶液又は散布剤の形態であってもよい。
経皮投与の代替手段は、皮膚パッチの使用である。例えば、ポリエチレングリコール又は流動パラフィンの水性エマルジョンからなるクリームに活性成分を入れることができる。活性成分はまた、1から10重量%の濃度で、白ろう又は白軟パラフィン基剤、必要によりその安定化剤及び保存料と共になる軟膏に入れることができる。
注射形態は、1用量当たり活性成分10〜1000mg、好ましくは10〜500mg含むことができる。
組成物は、単位剤形、即ち単位用量、又は単位用量の複数単位若しくは部分単位を含有する別個の分量の形態に製剤してもよい。
特に好ましい実施形態では、本発明の組合せ又は薬剤組成物は静脈内投与する。
用量
当業者ならば、不当な実験をすることなく、対象に投与する本発明組成物の1種の適切な用量を容易に決定できる。通常、医師は患者個人に最も適する実際量を決定し、それは、活性剤の活性、薬剤の作用の代謝安定性及び長さ、年齢、体重、全般的健康、性別、食事、投与の様式及び時間、排泄率、複合薬、特定の状態の重篤度、並びに個々に受けている療法を含む種々の要因に依存する。施用の用量及び頻度は通常、患者の全般的な病状、及び引き起こされる副作用の重篤度、特に造血系、肝臓系及び腎臓系に引き起こされる副作用の重篤度に適合させる。本明細書で開示した用量は、平均的な症例の例である。当然のことながら、より高い又はより低い用量範囲が有利な個々の場合があり、それは本発明の範囲内である。
必要に応じ、薬剤は体重1kg当たり0.1から30mg、又は体重1kg当たり2から20mgの用量で投与してもよい。より好ましくは、薬剤は、体重1kg当たり0.1から1mgの用量で投与してもよい。
上記の通り、ロスコビチンは好ましくは、治療有効量で、好ましくは薬剤として許容される量の形態で投与される。この量は当業者にはよく知られている。指針の目的で、ロスコビチンは通常、経口又は静脈内で、約0.05から約5g/日、好ましくは約0.5から約5g/日又は1から約5g/日、さらにより好ましくは、約1から約3g/日投与される。ロスコビチンは好ましくは、錠剤又はカプセル剤で経口投与される。ロスコビチンの総1日量は、1日当たり1回で投与することも、2、3又は4回に分けた用量で投与することもできる。
組合せ
本発明の好ましい一実施形態では、ロスコビチンは1種又は複数のその他の抗増殖剤と組み合わせて投与する。そのような場合、本発明の化合物は、連続的に、同時に又は逐次的に1種又は複数のその他の抗増殖剤と共に投与してもよい。
当技術分野では、多くの薬物は、組み合わせて使用した場合により効果的であることが知られている。特に、併用療法は、大きな毒性、作用機序及び抵抗性機序の重複を回避するために望ましい。さらにまた、殆どの薬物は、最大耐容量で、そのような投与間の最小時間間隔で投与するのが望ましい。薬物を組み合わせる主要な利点は、生化学的相互作用を介して追加的な又は可能性のある相乗効果を高め、またそうしなければ単一剤での最初の治療に対して応答したであろう薬物低抗性の出現を低減し得ることである。
有益な組合せは、特定の障害の治療において価値があることが分かっている又は価値があることが予想される薬剤と一緒の試験化合物の活性を研究することによって示唆されるであろう。この手順はまた、薬剤の投与の順序、即ち送達の前、同時又は後を決定するのにも使用できる。本発明を実施例により、また以下の図を参照してさらに説明する。図のさらなる詳細は実施例の節にある。
[実施例]
別段の定義がない限り、本書で使用される、すべての専門用語及び科学用語は、(例えば、細胞培養液、分子遺伝学、核酸化学、ハイブリッド形成法及び生化学において)当業者によって通常理解されるものと同様の意味を有する。標準的な技術が、分子的、遺伝的及び生化学的方法のために使用される。通常、以下を参照のこと、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d ed. (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. and Ausubel et al., Short Protocols in Molecular Biology (1999) 4th Ed, John Wiley & Sons, Inc.。また、以下も参照のこと、Guthrie et al., Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology, Methods in Enzymology, Vol. 194, Academic Press, Inc., (1991), PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications (Innis, et al. 1990 Academic Press, San Diego, Calif.), McPherson et al., PCR Volume 1, Oxford University Press, (1991), Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique, 2nd Ed. (R. I. Freshney. 1987. Liss, Inc. New York, N.Y.), and Gene Transfer and Expression Protocols, pp. 109-128, ed. E. J. Murray, The Humana Press Inc., Clifton, N.J.)。これらの文献は、本願明細書に援用する。
ロスコビチンの調製
CYC202を、EP0874847B(CNRS)で開示の方法により調製した。
in vitroでのB−CLL細胞に対するロスコビチンの活性
実験は、B細胞慢性リンパ球性白血病において、ロスコビチンがp53依存アポトーシス経路の欠陥を克服することが可能なことを実証するために実施した。
B−CLLは依然として不治であり、新しい治療が緊急に必要とされている。大部分の現行の抗癌治療は、p53依存アポトーシス経路の活性化を通して効果を発揮する。しかし、B−CLL腫瘍の5〜10%は、TP53遺伝子に突然変異を有し、さらに20〜25%はATM遺伝子に突然変異を有する。ATMは、DNA二本鎖切断によって活性化され、リン酸化によりp53を活性化する。TP53遺伝子又はATM遺伝子における突然変異は、p53依存アポトーシス障害につながり、不良な臨床転帰に関連する。
B−CLL細胞に対して、ロスコビチンのin vitroでの活性を検査した。試験は、ロスコビチンがCDK1及びCDK2を調節する細胞周期、並びにCDK7及びCDK9を調節する転写を阻害することを示している。それは、多くの充実性腫瘍細胞系でアポトーシスの原因となり、単剤として、又は化学療法と併用で、異種移植片において腫瘍退縮を誘発する。癌患者を対象とした第I〜II相試験が進行中である。
患者8例はATM突然変異体(7例はATMタンパク質の発現はなく、1例は残余タンパク質を発現した)で、10例はATM/TP53野生型であった。ロスコビチンを1〜25μg/mLの範囲で使用した。アネキシンV測定(アネキシンV/ヨウ化プロピジウム染色法キット、Becton Dickinson Biosciences社製、米国)は、アポトーシスの最初の徴候が、処置の8時間以内に生じることを示した。16時間までに、ATMの状態に関わりなく、早期のアポトーシスで生存度が劇的に減少し、B−CLL細胞の割合が増加したのは明らかであった。すべての患者の細胞は、生存度が少なくとも75%減少した。5μg/mLを超えると、この濃度では、ロスコビチンの効果は既に目ざましかったので、用量依存性はほとんど観察されなかった。ATM突然変異腫瘍及び野生型腫瘍は、照射に対する反応で明らかな相違を示したが、ロスコビチンに対する反応は同等であった。正常なリンパ球は、24時間後、ロスコビチン5μg/mLに対する反応において、毒性が遅延及び減少した。
ロスコビチンの作用機序を調査するために、ウエスタンブロット法[Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d ed. (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. and Ausubel et al., Short Protocols in Molecular Biology (1999) 4th Ed, John Wiley & Sons, Inc.;]を、数種のアポトーシス関連タンパク質に対して実施した。抗アポトーシスタンパク質のMcl−1[J. Biol. Chem., 274: 1801-1813, 1999; J. Cell Biol.,128(6): 1173-1187, 1995; Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 90: 3516-3520, 1993]は、ロスコビチン5μg/mLで処置した細胞においてダウンレギュレートされた。アポトーシスの指標であるPARPの開裂[FASEB Journal 10: 587-597, 1996; Science, 267: 1456-1462, 1995; Biochim. Biophys. Acta, 950:147-160, 1988; J. Biol. Chem, 271(9): 4961-4965, 1996; Nature, 371: 346-347, 1994]が、処置の2時間後に起こった。興味深いことに、p53依存的前アポトーシスタンパク質PUMA[Mol Cell. 2001 Mar; 7(3): 673-82]も、ダウンレギュレートされた。ロスコビチンは、p53経路の機能的状態に関係なく、B−CLL細胞におけるアポトーシスの強力な誘導物質であると結論づける。
より詳細な試験については、下記の実施例2において述べる。
材料及び方法
B−CLL患者
試料を年齢範囲が52〜93歳の患者から得た。患者2例が病期Aoと診断され、患者8例が病期A、患者5例が病期B、患者2例がB/Cであったが、患者10例は病期Cと確認された。すべての患者の以前及び現在の治療と、ATM/TP53突然変異状態、フルダラビン及びCYC202に対する反応を表2に示す。
B−CLL細胞
ATM又はTP53によって特徴づけられるB−CLL患者26例から得られた試料を検査した。7つの腫瘍はATM突然変異体(6例はATMタンパク質の発現はなく、1例は残余ATMタンパク質を発現した)で、15つの腫瘍はATM/TP53野生型で、4つの腫瘍はTP53突然変異体であった。単核細胞を、B−CLL患者から得られた全血の密度遠心によって分離し、90%ウシ胎児血清(FBS)及び10%ジメチルスルホキシド(DMSO)で生存可能な状態で冷凍した。実験のために、細胞を解凍し、1%ウシ血清アルブミン(BSA、Sigma社製、英国ジリンガム)及びグルタミンを含む予熱RPMIで洗浄し、1×10細胞/mLの密度で最低3時間培養した。in vitroの感受性試験では、細胞を、24ウェルプレートを用いて約1×10細胞/mLで、RPMI−1%BSA/グルタミンによって平板培養した。
正常なB細胞の分離
正常なドナーからの単核細胞(MNC)を、前述のように密度遠心により得た。全血を、RosetteSepB細胞強化抗体カクテル(StemCell Technologies社製、英国ロンドン)と混合し、室温で20分間培養し、PBS−2%FBSと1:1で希釈し、Lymphoprepの上に重ねて、遠心した。B細胞を洗浄し、計数し、実験のために平板培養した。
in vitroでのアポトーシス誘導
薬剤
CYC202を、DMSOで再懸濁し、ろ過滅菌し、−20℃で一定分量を冷凍した。実験のために、一定分量を解凍し、培養液で1:10に希釈し、ウェルに加えた。フルダラビンを滅菌水で再懸濁し、4℃に保った。感受性試験のために、各腫瘍試料を2つの一定分量に分け、半分を5Gyで照射し、何の薬剤も加えず培養するか、2つの薬剤のいずれかを別々に加えるか、2つを混合して加えて培養し(使用した濃度は、すべての試料で、フルダラビンが20μM、CYC202が5、10及び25μg/mL)、もう一方の一定量は、照射せず、同様な方法で薬剤なしか、薬剤を加えて処置を行った。洗浄(洗い落とす)試験では、細胞をCYC202の存在下、異なる時間で培養し、洗浄し、新鮮な培地で再び平板培養し、24時間及び48時間後に細胞の生存度を測定した。
照射
腫瘍試料をRPMI−1%BSAで再懸濁し、γ線を放射するPrecisa217線源を使用して(Pantatron Ltd社製、英国ハンプシャー、ゴスポート)5グレイ(Gy)で照射した。
アポトーシス測定
アネキシンVアポトーシスキット(BD Pharimingen社製、英国オックスフォード)を使用して、細胞集団のアポトーシスを測定した。以前に「B−CLL細胞」で記載したように、細胞を平板培養した。B−CLL細胞及び対照細胞を、薬剤で0、4、8、16、24、48、72及び96時間処置した後、採集し、冷却PBSで洗浄した。細胞ペレットを再懸濁し、製造業者より提供された1×緩衝液100μLを各試験管に添加した。次に、アネキシンV5μLとヨウ化プロピジウム(PI)5μLを、対照を除くすべての試験管に添加した。軽く混合した後、試験管を遮光下で15〜45分保存し、その後1×緩衝液500μLを添加し、Coulter Epics XL-MCLフローサイトメーター(Beckman Coulter社製、米国カリフォルニア)を使用して分析した。
ウエスタンブロット法
RPMI−1%BSA+グルタミン入りの無組織培養用処置6ウェルプレートで、細胞を平板培養し、3時間以上培養液で回復させてから、CYC202を添加した。CYC202(又は対照としてDMSO)の添加に続いて、プレートを軽く撹拌し、インキュベーターに戻した。指定した時間で、細胞を収集し、冷却PBSで洗浄し、細胞のペレットを液体窒素で瞬間冷凍し、−80℃で保存した。解凍した細胞ペレットは、プロテイナーゼ阻害剤(DTT、VO、NaF、AEBSF、アプロチニン、ロイペプチン及びペプスタチン)を含む100〜150μLのTGN緩衝液(50mM HCl、150mM NaCl、10%グリセロール、1%Tween−20、0.2%NP−40及び50mMβ−グリセロリン酸)で氷上で溶解した。溶解物を15,000rpm、4℃で、20分間遠心し、上澄みを収集し、一定分量で瞬間冷凍した。タンパク量をブラッドフォード試薬(Bio Rad社製、英国ヘメルヘムステッド)を使用して試薬ごとに測定した。等量のタンパク質を8、10又は12%のアクリルアミドゲル(Bio Rad社製)に広げて、標準ウエスタンブロット法の操作を実施した。Mcl−1及びXPAに対する主要な抗体はBD Pharmingen社(英国オックスフォード)から購入し、Bcl−2、PARP n20及びMad3に対する抗体はSanta Cruz(Autogen Bioclear社製、英国カルン)から、アクチンに対する抗体はSigma-Aldrich社(英国ドーセット)から購入した。抗RNAポリメラーゼII及び抗RNAポリメラーゼIIセリン2はCovance Research Products(Cambridge Bioscience Ltd社製、英国ケンブリッジ)から入手した。二次抗体抗マウスIgGペルオキシダーゼ複合物及び抗ヤギIgGペルオキシダーゼ複合物は、Sigma-Aldrich社から購入した。抗ウサギのHRPは、DAKO社(英国イーリー)から購入した。固定された抗原を、ECLウエスタンブロット検出システム(Amersham Biosciences社製、英国チャルフォントセントジャイルズ)を使用して検出し、X線フィルム(Hyperfilm(商標)、Amersham Biosciences社製)に露光させた。
フローサイトメトリー
CD5−PE(T1−RD1)抗体及びCD19−FITC(B4−FITC)抗体は、Coulter Clone社(英国ハイウィコム)から入手した。染色のために、細胞を、10%FBSを含むPBSにおいて室温で20分間培養し、次に洗浄し、PBS−10%FBSで再懸濁し、遮光下の室温で30分間染色した。培養後、細胞を洗浄し、PBS−1%FBSで再懸濁し、Coulter Epics XL-MCLフローサイトメトリーで分析した。
マイクロアレイ分析
5μg/mLのCYC202による培養前と培養の4時間後に、5つのB−CLL腫瘍、2つのATM突然変異体及び3つのATM/TP53野生型について、マイクロアレイ分析を実施した。さらに20時間をかけて長時間培養した後、各試料の一定分量をCD5及びCD19について染色し、もう1つはアネキシンV染色を使用して、アポトーシスについて検査した。マイクロアレイ分析では、総RNAの抽出、第1鎖及び第2鎖のcDNA合成、in vitroでの転写、並びにチップハイブリッド形成法を、前述のように実施した。培養後、チップを洗浄し、ストレプトアビジン−フィコエリトリンで標識して、得られたシグナルを2回目の染色によって増幅した。洗浄と染色の工程は、流体素子ステーション(Affymetrix社製、ハイウィコム)を使用して実施した。チップは、共焦点アルゴンイオンレーザー(Agilent Technologies社製、米国カリフォルニア)で走査した。
データ収集、規格化、ふるい分け及び統計分析
Affymetrix Microarray Suite 5.0ソフトウェアを使用して、10のハイブリッド形成すべてに対して発現値を得た。データの質は、MAS5.0レポートファイル及びGenespring 5.1 (Silicon Genetics社製、米国サンカルロス)を使用して評価した。GeneSpring 5.1ソフトウェアによる解析では、生データをMAS5.0からエクスポートし、値をアレイごとにシグナル値の中央値へ規準化した。薬物反応を基にした比較では、無処置の試料における遺伝子発現の平均レベルへの更なる基準化を実施した。U95Av2 GeneChipは、対照細菌の遺伝子を含む12,627の転写物を含む。有益な遺伝子のリストを作成するために、Genespring 5.1を使用して、CYC202への曝露前後の腫瘍を比較する実験的解釈を行った。全例において、複製に基づく総合誤差モデルを使用して、分散を判定した。シグナルの強さがバックグラウンド値を有意に超えなかった遺伝子、及び発現が信頼できる検出(Affymetrix MAS5.0の検出値p≦0.1の確率を基にして)で閾値に達しなかった遺伝子を、5つのB−CLL複製のうち少なくとも3つの試料で除外した。最後に、薬剤に対する反応における発現レベルが1.5倍を超えてばらつきのなかった遺伝子も除外した。残る遺伝子は有益と見なし、複製から推察した分散統計による総合誤差モデルを使用して、2つの条件(無処置細胞及び処置細胞)間でパラメトリック(Welch)t−検定を実施した。最後に、偽の差異遺伝子発現の発見を減少させるために、Benjamin-Hochbergの複数検査補正フィルタリング(multiple testing correction filtering)を適用した。
代替法として、マイクロアレイチップの走査像を総分位点の規準化によって分析した。引き続いて、生CELファイルに関する頑健な複数アレイ分析10を、Bioconductor(http://www.biocondutor.org)プロジェクトのAffymetrixパッケージを使用して実施した。差別的に発現したプローブを、SAM11,12を使用して同定した。最後に、遺伝子の階層的クラスター分析を、DNA−チップ分析器及びデフォルト設定を使用して実施した(dChip; Wong Lab, Dept of Biostatistics, Harvard School of Public Health, Dept. of Biostatistical Science, Dana-Farber Cancer Institute; http://www.dchip.org)。
両方のアプローチにより同定されたCYC202反応遺伝子を、さらに考慮に入れた。さらに、CYC202特異的前アポトーシス反応を同定するために、CYC202反応遺伝子のリストを同じ腫瘍試料から得たIR(照射)反応遺伝子のリストと比較した
結果
in vitroにおいて、CYC202は、B−CLL腫瘍におけるアポトーシスの強力な誘導物質である
B−CLL細胞における、毒性誘発のための最適なCYC202量及び培養期間を確立するために、典型的なB−CLL腫瘍試料(1種がATM野生型で、1種がATM突然変異体)を、最初にCYC202量を増加し、培養の4、8、16、24、48及び72時間後にアポトーシスを評価した。図11aが示すように、すべての試料で、1μg/mLの処置は、細胞生存度又はアポトーシス誘発に影響をほとんど及ぼさなかったか、まったく及ぼさなかった一方、2.5μg/mLの処置は、B−CLLのすべての試料には影響は及ぼさなかったものの、一部の試料に影響を及ぼした(図11a)。しかし、5μg/mLのCYC202による24時間以内の処置で、生存可能なB−CLL細胞が劇的に減少し、48時間の処置によって大部分の細胞がアポトーシスを起こした。5μg/mLより上の濃度では、用量依存性はほとんど認められなかった(結果の提示なし)。また、5μg/mLのCYC202による4〜8時間の処置で、最初のアポトーシスの徴候が検出可能で、16時間までに、これら早期の効果が、さらにいっそう顕著になり、生存細胞の割合が非常に減少することが認められた(データに示さず)。
異なる時間でCYC202処置したB−CLL細胞を、薬剤に曝露後、薬剤が含まれない培地で回復させると、薬剤の作用から逃れることができるか確認するために、洗浄試験を実施した。3種の腫瘍の細胞を、5μg/mLのCYC202で、0.5、1、2、3、4、6及び8時間処置した。次に、薬剤を洗浄し、さらに、細胞を24時間培養した。次に、培養物の生存度を、アネキシンV/PI染色法により検査した。CYC202に6時間未満曝露し、続いて培養により回復させることで、測定可能な細胞傷害作用は誘発されなかったが、6時間以上曝露した場合、曝露後の回復時間に関わらず、生存度が大きく低下した。これらの結果は、一貫しており、最低8時間処置したB−CLL培養物をアネキシンVによって測定することにより、早期のアポトーシス細胞の出現が観察され、このことは本剤への最低時間の曝露が、細胞のアポトーシス機構を不可逆的に引き起こすために必要であることを示している。また、B−CLL試料(15のATM野生型腫瘍、7つのATM突然変異腫瘍、4つのTP53突然変異腫瘍)を、CYC202と共に培養した24、48及び72時間後にアネキシンV測定によって検査し、電離放射線及びフルダラビンによる同じ殺腫瘍作用の結果と比較した。これらの比較結果は、図11b(ATM野生型腫瘍)、図11c(ATM突然変異腫瘍)及び図11d(TP53突然変異腫瘍)に示す。
26のB−CLLを合わせて見てみると、5μg/mLのCYC202で処置後、平均83.6%の生存度の減少が観察されたが(範囲53〜97%、+/−10.1%、図12a)、無処置のB−CLL細胞では、生存度の減少はわずか8.0%(+/−8.5%)であった。B−CLLを遺伝子型で分けてみると、15のATM野生型腫瘍は、平均83.5%(+/−11.7%)の生存度の減少を示しているが(図12b)、ATM突然変異腫瘍は83.9%(+/−7.4%、図12b)、TP53突然変異腫瘍は85.8%(+/−9.7%、図12b)の生存度の減少を示した。したがって、3つの遺伝子型とも5μg/mLのCYC202に対して抵抗性はなく、3群すべてが本剤に対して同等な反応を示した。
注目すべきことに、5μg/mLのCYC202と比べて、20μMのフルダラビンで処置した細胞は、サブタイプに関わらず、生存度の減少が少なくなり、アポトーシスの増加が減少する(図11b、図11c及び図11d)。この相違は、処置の最初の24時間以内に、上記の自発的アポトーシスの濃度で、細胞において生存度の減少が増加しなかった、ATM突然変異体サブタイプとTP53突然変異体サブタイプで最も顕著であった(図11c及び図11d)。フルダラビンは、すべての腫瘍遺伝子型を合計して、処置の24時間後に生存度が全体的に13.3%(+/−12.1、図12a)減少した。同じ時点での生存度の減少は、ATM野生型腫瘍単独では、14.9%(+/−12.7%、図12b)であり、これに比べてATM突然変異腫瘍では7.9%(+/−7.2%、図12b)、4つのTP53突然変異腫瘍では16.7%(+/−16.0%、図12b)であった。フルダラビン処置の48時間後でさえ、生存度の減少は、CYC202を添加し24時間培養した後に比べて、有意に低かった。全体として、フルダラビン誘発のアポトーシスは、同じ処置時間におけるCYC202誘発のアポトーシスと比べて非常に少なかった(表1の下の部分にて要約)。興味深いことに、6/23の腫瘍はフルダラビンに対して、in vitroで抵抗性を示し、このうち67%(4/6)がATM突然変異体であった。フルダラビン感受性腫瘍の中で、13はATM野生型であり、3つ(19%)はATM突然変異体であった。特に、4つのTP53突然変異腫瘍の試料は、in vitroで、いずれもフルダラビンに対して抵抗性は示さなかったが(表2に要約)、本剤に対する反応は、野生型腫瘍と比べて遅かった。
まとめると、CYC202は、フルダラビンと異なり、照射誘発のアポトーシスにおいて欠陥があることが示されたB−CLL試料も含むすべてのB−CLL試料で高レベルのアポトーシスを誘発することができる。したがって、ATM/TP53遺伝子の状態に関わらず、in vitroでCYC202は、フルダラビンよりはるかに有効なB−CLL細胞に対する殺作用を有する。
CYC202の効果と対照的に、以前の観察と一致して、野生型、ATM突然変異体及びTP53突然変異体の腫瘍は、IRの24時間後にアポトーシスをほとんど示さないか、まったく示さなかった(図11c、図11d及び図12b)。IR誘発アポトーシスは、IRに曝露した72時間後に明白になったが、ATM/TP53野生型配列を有する腫瘍に限られた(図11b)。
3種類の治療法におけるアポトーシス誘発の相乗作用を分析するために、26の腫瘍のうちの25の腫瘍に、IR+フルダラビン、IR+CYC202又はフルダラビン+CYC202を含む併用処置を行った。1つの腫瘍は、薬剤を併用して処置したが、照射は行わなかった。フルダラビン及びIRによる異なる殺腫瘍メカニズムが一致して、照射に対する反応率の増加が、24時間以上フルダラビンで処置した25の腫瘍のうちの20の腫瘍において観察された。対照的に、CYC202処置試料への照射は、細胞傷害性を増加せず、このことはB−CLLを死滅させることにおいて、本剤は単剤として最大の有効性を有することを示唆している。同様に、CYC202処置培養物へのフルダラビンの添加により、CYC202単独で誘発される殺腫瘍レベルを超えるアポトーシスの増加は見られなかった。したがって、フルダラビンの作用は、CYC202の非常に大きな細胞傷害性によって消されてしまった可能性がある。
正常Bリンパ球におけるCYC202のアポトーシス誘発に及ぼす作用
CYC202処置の非白血性Bリンパ球に及ぼす作用を判定するために、対照者5例の細胞を分離し、1〜20μg/mLの濃度範囲で本剤によって処置した。CYC202のB−CLL細胞に及ぼす作用とは対照的に、正常B細胞は、5μg/mLのCYC202に対する毒性が遅延及び減少した。対照者由来の無処置B細胞は、24時間以上で生存度が平均4.4%(+/−1.9%)減少したが、5μg/mLのCYC202で処置したB細胞の生存度は、同じ時間で31.4%(+/−17.1%)減少した。このことは、5μg/mLのCYC202で24時間処置したB−CLL腫瘍における83.6%(+/−10.1%)の生存度のより大きな減少とは対照的である(図13)。48時間後、無処置B細胞の生存度は26.5%(+/−19.3%)減少し、CYC202処置したB細胞の生存度は47.4%(+/−17.2%)減少し、B−CLL腫瘍の生存度は88.3%(+/−8.1%)減少した。唯一、正常B細胞に対するCYC202の細胞傷害性だけが、20μg/mLを使用したときに、B−CLLで観察されたレベルに匹敵しするレベルに達した。したがって、これらのデータから、CYC202が5μg/mLの濃度でB−CLL細胞に対して有意な選択的細胞傷害性を示すと思われる。
CYC202による殺B−CLL作用のメカニズム
a)CYC202のアポトーシス経路及びエフェクターカスパーゼに及ぼす作用
B−CLLは、ゆっくりと循環するリンパ細胞の腫瘍である。CYC202と共に24時間培養する間の、欠陥のあるp53経路も含む全てのB−CLL腫瘍に対する有効な殺腫瘍作用を考慮すると、CYC202による殺B−CLL作用は、細胞周期阻害又はp53依存的転写の活性化以外のメカニズムを伴うという理由は妥当と思われる。実際、ウエスタンブロット法は、CYC202を添加し培養した後、p53活性化がないことを示した(図14a)。ATM野生型B−CLLにおいて、CYC202による処置の3〜6時間後にp53の濃度が多少増加したが、p53反応タンパク質p21のアップレギュレーションの証拠は見られなかった(図14a)。同様に、また予想通りに、ATM又はTP53に突然変異を有する腫瘍において、p53及びp21のCYC202誘発アップレギュレーションの証拠は見られなかった。むしろ、これら2種類の腫瘍は、p53タンパク質の濃度が時間の経過と共に減少し、CYC202と共に18〜24時間培養することで、ほとんど検出できなくなった(図14a)。
下流のアポトーシス経路の活性化について分析した。アポトーシスの誘発と一致して、活性化エフェクターカスパーゼ−3の分解の標的であるPARP1は、3種類のB−CLLサブタイプすべての代表的な腫瘍において、6〜24時間のCYC202処置により開裂(分割)した(図14b)。さらに、直接のカスパーゼ−3活性が、3種類のB−CLLサブタイプのすべてで、プロカスパーゼ−3の開裂及び同時に生じた活性(開裂)カスパーゼ−3の出現によって確認されたのに対して、プロカスパーゼ−7の開裂及び消失はカスパーゼ−7の活性化を示していた(図14b)。CYC202誘発の殺作用は、p53の下流のアポトーシス経路の活性化を含むと結論づけることができる。
b)CYC202の転写に及ぼす作用
B−CLL細胞におけるCYC202の転写に及ぼす影響を調査するために、全体的遺伝子発現プロファイリングを、5μg/mLのCYC202への曝露前と曝露の4時間後に、5種類の代表的試料(3種類のATM/TP53野生型及び2種類のATM突然変異体)で、U95A Affymetrixマイクロアレイチップにより実施した。材料及び方法で記載したように、細胞を収集して、マイクロアレイ分析のために処置した。また、処置した細胞の一定量を、CYC202と共に24時間培養した後に、アネキシンV測定分析によって検査し、アポトーシスが、すべての細胞で誘発されていることを確認した。CYC202処置試料の遺伝子発現の結果を、対応する無処置試料のベースラインの遺伝子発現と比較した。情報価値のない遺伝子のフィルトレーション及び複数検査補正を含む統計的検査後、CYC202への曝露後、1.5倍以上、ダウンレギュレートされた547の遺伝子及び1.5倍以上、アップレギュレートされた135の遺伝子を同定した。アップレギュレートされた遺伝子は、多様な細胞間シグナルを示し、ダウンレギュレートされた遺伝子は、B−CLLにおけるCYC202の前アポトーシス活性を説明することが可能ないくつかの細胞経路を明らかに示した。最初に、TFIIB、TFIID、TFIIS、TFIIEβ、RNAポリメラーゼII及びIII、伸長開始因子eiF−2α、γ及びeiF−4など、転写及び翻訳の開始に関わるタンパク質をコードする遺伝子のスペクトルは、CYC202への曝露後に明らかにダウンレギュレートされた(図15a)。さらに、Mcl−1、Bcl−2(図15a)、Mad3、NFkBサブユニット、タンパク質の熱ショックファミリーのいくつかの要素、インターフェロンサイトカイン及び受容体のファミリーなど、細胞の生存を支援する抗アポトーシス特性を有する遺伝子も、CYC202に反応してダウンレギュレートされた。最後に、PCNA、XP−C及びERCC4を含む多くの修復遺伝子の発現が、本剤への曝露の4時間後に減少した(図15a)。他の重要なダウンレギュレーション経路は、MAPキナーゼ及びこれらのダウンレギュレーションエフェクターを含む。
CYC202の転写反応のプロフィールは、以前に、B−CLL腫瘍の同じ設定でIR後に観察されたものとは著しく異なっていた。IR誘発シグナルと対照的且つCYC202転写反応のp53独立特性と一致して、CYC202は、ATM/TP53野生型腫瘍のp21(図15a)及びPumaなどのp53反応遺伝子のmRNAレベルに有意な変化を誘発しなかった。さらに、前生存因子Mcl−1(図15a)、熱ショックタンパク質及びNFkB遺伝子のダウンレギュレーションは、これら遺伝子が、野生型B−CLL腫瘍ではIR後にアップレギュレートされることが認められていないので、CYC202作用に対して完全に特異的であると思われた。
ウエスタンブロット法は、CYC202に対する主要な反応因子の異なる発現を確認するために使用した。Mcl−1は、リンパ細胞でのアポトーシスの調節にとって重要なBcl−2ファミリーの前生存遺伝子である13。ATM野生型腫瘍、ATM突然変異腫瘍及びTP53突然変異腫瘍において、タンパク質レベルでのMcl−1発現を、CYC202と共に培養した後、様々な時点で調査した。Mcl−1タンパク質濃度の最初の減少が、すべての腫瘍サブタイプにおいて、5μg/mLのCYC202を添加し2時間培養した後観察され、さらに6時間のCYC202処置により劇的なダウンレギュレーションが認められ、このタンパク質が完全に消失した(図15b)。興味深いことに、mRNAが同様にCYC202に反応してダウンレギュレートされる、もう1つの前生存タンパク質Bcl−2の濃度の減少は、Mcl−1に比べて非常にゆるやかに起こる。理論に縛られることは望まないが、このことは、これらタンパク質の半減期の差に反映している可能性があり(Mcl−1の0.5〜3時間に対して、Bcl−2は10〜14時間)、アポトーシスがBcl−2タンパク質の存在下ですら生じる可能性があることを示唆している14
全体的なmRNA及びタンパク質合成のダウンレギュレーション作用に関する証拠として、DNA修復に関与するタンパク質(PCNA及びXP−C)の濃度に加えて、アクチンの濃度も24時間までに減少する。対照的に、対照としてのDMSOによる腫瘍の処置では、Mcl−1タンパク質の発現に作用を及ぼすことはなく、PARP1(図15c)の開裂を誘発することもなかったが、このことは培養条件単独では、これらタンパク質のダウンレギュレーションを誘発しないことを示している。
CYC202が転写を包括的にダウンレギュレートするメカニズムを立証するために試験を実施して、CYC202がRNAポリメラーゼIIの濃度だけでなく、活性化にも影響を及ぼすかどうかを確認した。総RNAポリメラーゼIIタンパク質の濃度を、転写の伸長期と関連する部位のセリン2でリン酸化するRNAポリメラーゼIIの濃度と共に分析した。注目すべきことに、B−CLL腫瘍試料において、リン酸化タンパク質の濃度が、8時間のCYC202処置により有意に減少したが(図16a)、RNAポリメラーゼII総タンパク質量は、同様に劇的には減少しなかった(図16b)。したがって、この結果は、CYC202による転写のダウンレギュレーションが、RNAポリメラーゼIIタンパク質のリン酸化の原因であるキナーゼのサイクリン9及びサイクリン7の直接抑制に関わる可能性があることを示唆している。
ロスコビチンのヒトT前リンパ球性白血病細胞に及ぼす作用
臨床症例研究
症例は66歳の女性患者で、定期的な血液検査で白血球増加が認められたため外来に来院した。末梢血細胞について免疫表現型決定(immunophenotyping)を行い、97%の単核細胞が二重陽性Tリンパ球(TcRα/β+/TcRγ/δ−、CD3+、CD8+、CD4+、CD2+、CD5+及びCD7+)で、部分的に活性化し(CD25+、CD30−、CD38+、CD45RA−、CD45ROCD69−CD71−、HLA−DR−)、多数の接着分子(CD11a+、CD11b+、CD11c+、CD18+、CD28+、CD62L+及びCD86−)を発現したが、CD56、CD34、CD117、又はB細胞若しくはNK細胞マーカーの発現はなかった。本細胞は、胸腺後成熟の起源が確認されたCD1a及びTdTを発現しなかった。T細胞受容体(TcR)遺伝子分析では、クローンTcRγ鎖の転位が認められた。また、TcRα/β+が表面に発現するのが検出された。本細胞は、ヒト白血球抗原B27(HLA−B27)陽性として型を決めたが、自己免疫疾患の特徴は認められなかった。
図1は、TPLL−1細胞(A)及びHLA−B27ヒストグラム(B)のCD8+/CD4+二重陽性免疫表現型を示す。末梢血のフローサイトメトリー分析を、CD4のFITC及びCD8のフィコエリトリンに接合するモノクローナル抗体によるFACScanのフローサイトメーター(Becton Dickinson社製、米国)で実施した(A)。HLA−B27ヒストグラムの左側の矢印は、カットオフ位置を示す(B)。計測器較正は、HLA−B27キット(Becton Dickinson Biosciensies社製、米国)に含まれる較正用ビーズを使用して実施した。右側の矢印は、HLA−B27陽性を示す、患者の試料におけるチャネル値の中央値に相当する。
TPLL−1をコードする細胞を、Ficoll Paque密度勾配に対する遠心によって分離した。これにより、T−PLLの小細胞形態突然変異体のCD8+/CD4+二重陽性細胞が98%以上を占める単核細胞集団が得られた。細胞遺伝学的試験を、分裂促進因子(植物性血球凝集素、アメリカヤマゴボウマイトジェン及びホルボールエステル)による刺激の後に実施したが、分裂中期は確認できなかった。比較ゲノムハイブリッド形成(CGH)分析は、TPLLの症例において普通に見られた(55%)8つの染色体の遺伝子上の過剰を明らかにした。再配列のないc−myc癌原遺伝子の3つの複製及びセントロメア8の2つの複製を、間期核の二色蛍光原位置ハイブリッド形成(FISH)によって検出した。
比較ゲノムハイブリッド形成法
腫瘍DNAのハイブリッド形成をFITCによって検出し、参照のDNAハイブリッド形成をTRITCによって検出した(図2)。参照蛍光強度比に対する緑を基にしたコピー数差の定量化をISIS(Metasystems社製)によって実施した。遺伝子上の不足が6cen−q21、6q26及び11q13−q23qで発見され、一方、遺伝子上の過剰が6p21−p25、7p15−p22、8p、8q、22q13で発見された。これらの結果は、T−PLLで高いゲノムの不安定性を実証した以前のデータと一致していた[Soulier et al, Genes Chromosomes Cancer. 2001 Jul; 31(3): 248-54]。
図3は、TPLL−1細胞でのc−mycの蛍光原位置ハイブリッド形成(FISH)分析を示す。2セットでなく3セットの共存シグナルを検出し、このことは更なるc−myc座の存在を示していた。或いは、標識した(赤又は緑)c−mycフランキング領域プルーブ(flanking probes)をFISH分離測定に使用した。共存する緑及び赤のシグナルだけが、遺伝子再配列なしに完全なc−myc座を示すすべての細胞で同定された。ハイブリッド形成シグナルを、形態学的に完全な200の核で数えた。
図4は、遺伝子のrodamine検出(赤)及びD8Z1染色体8の動原体周囲古典的付随体のFITC検出(緑)からなる二色FISHによるc−mycの3つの複製の検出を示す。
TPLL−1細胞を、様々なキナーゼ阻害剤(PKCアイソフォーム、MAPK及びPI−3Kに対して選択的なものを含む)で処置したが、細胞生存度に対する作用は見られなかった(示さず)。TPLL−1細胞を10μMロスコビチンと共に異なる時間間隔で培養し、アポトーシス細胞の割合をFACScanにより計数した。
図5は、5時間の培養によって、ホルボールエステルにより阻害されなかった、TPLL−1細胞の96%にアポトーシスを生じたことを示す。ロスコビチンを添加し5時間培養すると、ホルボールエステルにより阻害されなかったTPLL−1細胞の96%にアポトーシスを生じた(10nM TPA)。
図6は、10μMのロスコビチンを添加し、18時間培養した結果を示す。大部分の細胞は溶解した。わずかに残るのは、後期のアポトーシスの細胞であった。
サイクリンA、B1、D1及びE発現に関して、TPLL−1細胞を検査した(図7)。サイクリンE発現だけが、抗体HE12(Santa Cruz Biotechnology社製)による免疫ブロットにより検出された。矢印は、MWマーカータンパク質(Gibco社製)の位置を示す。
図8は、TPLL−1細胞でのアポトーシスの阻害因子Bcl−2の発現を示す。c−myc ASO処置及びロスコビチンの両方は、Bcl−2の発現を阻害しなかった。前アポトーシスタンパク質Baxの発現は検出されなかった(示さず)。
レーン1:対照
レーン2:18時間ASO処置
レーン3:20分間10μMロスコビチン
レーン4:5時間10μMロスコビチン
ロスコビチンは、TPLL−1細胞でアポトーシスを選択的に誘発した。ロスコビチン作用には、少なくとも2つの異なるメカニズムがあると考えられている。第1に、Cdk2/サイクリンEの阻害で、次に、PI−3K経路の活性化である。TPLL−1細胞におけるストレスシグナル伝達メカニズム及びPI−3K経路に及ぼすロスコビチンの潜在的作用について調査する研究がなされた。
図9は、TPLL−1の細胞内ストレスシグナル経路に及ぼす10μMのロスコビチンの作用を示す。p38 S51−リン酸化のピークは、20分間の培養で検出した。免疫ブロットを、Stress Signal Sample Pack(BIOSOURCE Int.社製)を使用して実施した。
図10は、ロスコビチンがTPLL−1細胞でPI−3K経路を活性化しなかったことを示す。結果は、Akt/PKB(Ser−473)及びRaf−1(Ser−338)のPI−3K依存的部位によってリン酸化されることに特異的な抗体による免疫ブロットを示している。また、ロスコビチンを添加して培養した後のTyr−508のPI−3Kリン酸化は検出されなかった(示さず)。
結論として、ロスコビチンはヒトCD8+/CD4+T−PLL細胞のアポトーシスを誘発する。ロスコビチンは、PKC−依存的経路によりアポトーシスを誘発する。その作用は、非常に迅速で、T−PLL細胞に対して選択的である。これらの知見についての可能な説明は、T−PLL細胞はin vitroで増殖しないが、Cdk2/サイクリンE活性がその生存度に対して、重要な役割を果たすというものである。また、不明なメカニズムによるp38キナーゼの活性化も、ロスコビチン誘発アポトーシスに関与する可能性がある。したがって、ロスコビチンは、T−PLL処置で、新しい治療のアプローチを提供する。
本発明の範囲及び意図から逸脱しない本発明の様々の修正及び変更は、当業者には明らかである。本発明は、特定の好ましい実施形態と関連して記載しているが、請求される本発明は、そのような実施形態に過度に制限されるべきではないことを理解すべきである。実際に、当業者には明らかな、本発明を実施するために記載した方法の様々な変更は、本発明の範囲に含まれることを意味する。
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TPLL−1細胞(A)及びHLA−B27ヒストグラム(B)のCD8+/CD4+二重陽性免疫表現型を示す図である。 比較ゲノムハイブリッド形成(CGH)を示す図である。腫瘍DNAのハイブリッド形成をFITCで、参照DNAのハイブリッド形成をTRITCで検出した。 TPLL−1細胞でのc−mycの蛍光原位置ハイブリッド形成(FISH)分析を示す図である。 二色FISHによるc−mycの3つの複製の検出を示す図である。 5時間、ロスコビチン(CYC−202)を添加して培養することによって、ホルボールエステルにより阻害されなかった(10nM TPA)、TPLL−1細胞の96%がアポトーシスを生じたことを示す図である。 10μMのロスコビチンを添加し、18時間培養した結果を示す図である。 TPLL−1細胞のサイクリンA、B1、D1及びEの発現に関して検査した結果を示す図である。 TPLL−1細胞でのアポトーシスの阻害因子(遺伝子)Bcl−2の発現を示す図である。 TPLL−1の細胞内ストレスシグナル経路に及ぼす10μMのロスコビチンの作用を示す図である。 Akt/PKB(Ser−473)及びRaf−1(Ser−338)のPI−3K依存的部位によってリン酸化されることに特異的な抗体による免疫ブロットの結果を示す図である。 無処置、照射又は薬剤によるB−CLL腫瘍の時間に伴う細胞生存度を示す図である。a)無処置の26腫瘍中26腫瘍の生存細胞の割合、1μg/mLのCYC202で処置した26腫瘍中24腫瘍の生存細胞の割合、2.5μg/mLのCYC202で処置した26腫瘍中19腫瘍の生存細胞の割合及び5μg/mLのCYC202で処置した26腫瘍中26腫瘍の生存細胞の割合によって示されるB−CLL腫瘍のCYC202に対する用量反応。細胞の生存度及びアポトーシスは、アネキシンV測定により測定した。b)からd)B−CLLを遺伝子型から見た。b)無治療、又は5グレイの照射、20μMのフルタラビン若しくは5μg/mLのCYC202によって処置した15のATM野生型腫瘍。細胞は、a)のようにアネキシンV測定により分析した。c)7つのATM突然変異腫瘍。d)4つのTP53突然変異腫瘍。細胞の生存度及びアポトーシスは、アネキシンV測定により測定した。 a)5μg/mLのCYC202、20μMのフルダラビン、5グレイの照射に曝露、又は無処置の場合の24時間にわたる生存可能なB−CLL細胞の割合の減少(全サブタイプを併せて)の比較、b)5μg/mLのCYC202、20μMのフルダラビン、5グレイの照射に曝露、又は無処置の場合のサブタイプごとのB−CLL細胞における生存度の減少を示す図である。 a)5μg/mLのCYC202を添加して培養したときの、24、48及び72時間後のアネキシンVの分析による、正常B細胞(実線)及びB−CLL細胞(点線)の生存度に及ぼす影響、及びb)in vitroでのCYC202(5μg/mL)に対する正常細胞の反応とB−CLL細胞の反応の比較を示す図である。正常な末梢B細胞において、生存度の減少は著しくなく、CYC202による処置後のアポトーシスの増加は、B−CLL細胞の80%超に比べて、60%未満であった。 5μg/mLのCYC202を添加してB−CLLを培養したときの、a)p53及びp21タンパク質の発現、及びb)PARP1、プロカスパーゼ−3及びプロカスパーゼ−7の開裂の発現に及ぼす影響を示す図である。ATM野生型細胞を0、1、2、3、4、5、6及び24時間処置し、ATM突然変異体細胞を0、2、10及び18時間処置し、TP53突然変異体細胞を0、2、4、6、8、10及び24時間処置し、タンパク質を抽出してp53及びp21の発現に関してウエスタンブロット法により分析した。アクチンを添加対照として使用した。 a)5μg/mLのCYC202で4時間処置した5つのB−CLL腫瘍における、無処置の同じ腫瘍と比べた、ダウンレギュレートされた代表的遺伝子を示すマイクロアレイ分析、b)ウエスタンブロット法による、3種すべてのB−CLLサブタイプのうちのMcl−1及びBcl−2の2種の抗アポトーシスタンパク質の発現減少の確認、c)最長24時間培養したATM野生型B−CLLにおけるMcl−1及びPARP1開裂のダウンレギュレーションの欠如、d)ウエスタンブロット法による、B−CLLにおけるPCNAの発現減少の確認、e)CYC202による処置の前後のB−CLLに関するマイクロアレイ分析を示す図である。 a)RNAポリメラーゼIIのセリン2に対するリン酸特異的抗体によるウエスタンブロット法で示す、2種のATM野生型B−CLLに対するCYC202処置後のRNAポリメラーゼIIリン酸化のダウンレギュレーション、b)24時間のCYC202処置による総RNAポリメラーゼIIタンパク質濃度のダウンレギュレーションを示す図である。

Claims (51)

  1. 慢性リンパ球性白血病を治療する医薬品の調製における、ロスコビチン又は薬剤として許容されるその塩の使用。
  2. 慢性リンパ球性白血病が、T細胞前リンパ球性白血病(T−PLL)である請求項1に記載の使用。
  3. 慢性リンパ球性白血病が、B細胞慢性リンパ球性白血病(B−CLL)である請求項1に記載の使用。
  4. 慢性リンパ球性白血病が、突然変異ATMに関連する請求項1から3のいずれかに記載の使用。
  5. 慢性リンパ球性白血病が、突然変異TP53に関連する請求項1から4のいずれかに記載の使用。
  6. ロスコビチンが、抗アポトーシス遺伝子の発現をダウンレギュレートする請求項1から5のいずれかに記載の使用。
  7. 抗アポトーシス遺伝子が、Mcl−1、Bcl−2及びMad3からなる群から選択される少なくとも1種の遺伝子を含む請求項6に記載の使用。
  8. ロスコビチンが、DNA修復遺伝子の発現をダウンレギュレートする請求項1から7のいずれかに記載の使用。
  9. DNA修復遺伝子が、PCNA又はXPAを含む請求項8に記載の使用。
  10. ロスコビチンが、転写調節に関与する遺伝子の発現をダウンレギュレートする請求項1から9のいずれかに記載の使用。
  11. 転写調節に関与する遺伝子が、PolII、eIF−2、4e及びE2Fからなる群から選択される少なくとも1種の遺伝子を含む請求項10に記載の使用。
  12. ロスコビチン又は薬剤として許容されるその塩が、Mcl−1の発現をダウンレギュレートするのに十分な量である請求項1から11のいずれかに記載の使用。
  13. ロスコビチンが、薬剤として許容される担体、希釈剤又は賦形剤と組み合わせて投与される請求項1から12のいずれかに記載の使用。
  14. ロスコビチンが、1種又は複数のその他の抗増殖剤と組み合わせて投与される請求項1から13のいずれかに記載の使用。
  15. ロスコビチンが、少なくとも1種のCDK酵素を阻害するのに十分な量で投与される請求項1から14のいずれかに記載の使用。
  16. CDK酵素が、CDK1、CDK2、CDK4、CDK7及びCDK9から選択される請求項1から15のいずれかに記載の使用。
  17. CDK酵素が、CDK1及びCDK2から選択される請求項15又は請求項16に記載の使用。
  18. CDK酵素が、CDK7及びCDK9から選択される請求項15又は請求項16に記載の使用。
  19. 治療有効量のロスコビチン又は薬剤として有効なその塩を投与することを含む、慢性リンパ球性白血病(CLL)に罹患している患者を治療する方法。
  20. ロスコビチンが、抗アポトーシス遺伝子の発現をダウンレギュレートする請求項19に記載の方法。
  21. 抗アポトーシス遺伝子が、Mcl−1、Bcl−2及びMad3からなる群から選択される少なくとも1種の遺伝子を含む請求項20に記載の方法。
  22. ロスコビチンが、DNA修復遺伝子の発現をダウンレギュレートする請求項19から21のいずれか一項に記載の方法。
  23. DNA修復遺伝子が、PCNA又はXPAを含む請求項22に記載の方法。
  24. ロスコビチンが、転写調節に関与する遺伝子の発現をダウンレギュレートする請求項19から23のいずれか一項に記載の方法。
  25. 転写調節に関与する遺伝子が、PolII、eIF−2、4e及びE2Fからなる群から選択される少なくとも1種の遺伝子を含む請求項24に記載の方法。
  26. 慢性リンパ球性白血病細胞の抗アポトーシス遺伝子の発現をダウンレギュレートする方法であって、その細胞をロスコビチン又は薬剤として許容されるその塩と接触させることを含む方法。
  27. 対象の慢性リンパ球性白血病を治療する方法であって、ロスコビチン又は薬剤として許容されるその塩を対象に、対象の抗アポトーシス遺伝子の発現をダウンレギュレートするのに十分な量で投与することを含む方法。
  28. 抗アポトーシス遺伝子が、Mcl−1、Bcl−2又はMad3を含む請求項26又は27に記載の方法。
  29. 慢性リンパ球性白血病細胞のDNA修復遺伝子の発現をダウンレギュレートする方法であって、その細胞をロスコビチン又は薬剤として許容されるその塩と接触させることを含む方法。
  30. 対象の慢性リンパ球性白血病を治療する方法であって、ロスコビチン又は薬剤として許容されるその塩を対象に、対象のDNA修復遺伝子の発現をダウンレギュレートするのに十分な量で投与することを含む方法。
  31. DNA修復遺伝子が、PCNA又はXPAを含む請求項29又は30に記載の方法。
  32. 慢性リンパ球性白血病細胞の転写調節に関与する遺伝子の発現をダウンレギュレートする方法であって、その細胞をロスコビチン又は薬剤として許容されるその塩と接触させることを含む方法。
  33. 対象の慢性リンパ球性白血病を治療する方法であって、ロスコビチン又は薬剤として許容されるその塩を対象に、対象の転写の調節に関与する遺伝子をダウンレギュレートするのに十分な量で投与することを含む方法。
  34. 転写の調節に関与する遺伝子が、RNA PolII、eIF−2、4e及びE2Fからなる群から選択される少なくとも1種の遺伝子である請求項32又は33に記載の方法。
  35. 慢性リンパ球性白血病が、T細胞前リンパ球性白血病(T−PLL)である請求項19から34のいずれか一項に記載の方法。
  36. 慢性リンパ球性白血病が、B細胞慢性リンパ球性白血病(B−CLL)である請求項19から34のいずれか一項に記載の方法。
  37. 慢性リンパ球性白血病が、突然変異ATMに関連する請求項19から36のいずれか一項に記載の方法。
  38. 慢性リンパ球性白血病が、突然変異TP53に関連する請求項19から37のいずれか一項に記載の方法。
  39. ロスコビチンが、少なくとも1種のCDK酵素を阻害するのに十分な量で投与される請求項19から38のいずれか一項に記載の方法。
  40. CDK酵素が、CDK1、CDK2、CDK4、CDK7及びCDK9から選択される請求項39に記載の方法。
  41. CDK酵素が、CDK1及びCDK2から選択される請求項39又は請求項40に記載の方法。
  42. CDK酵素が、CDK7及びCDK9から選択される請求項39又は請求項40に記載の方法。
  43. ロスコビチンが、薬剤として許容される担体、希釈剤又は賦形剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤と組み合わせて投与される請求項19から42のいずれか一項に記載の方法。
  44. ロスコビチンが、少なくとも1種の抗増殖剤と組み合わせて投与される請求項19から43のいずれか一項に記載の方法。
  45. ロスコビチン又は薬剤として許容されるその塩、及び薬剤として許容される担体を含む、慢性リンパ球性白血病の治療で使用する薬剤組成物。
  46. 慢性リンパ球性白血病が、T細胞前リンパ球性白血病である請求項45に記載の薬剤組成物。
  47. 慢性リンパ球性白血病が、B細胞慢性リンパ球性白血病である請求項45に記載の薬剤組成物。
  48. 希釈剤又は賦形剤をさらに含む請求項45から47のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
  49. B細胞慢性リンパ球性白血病細胞でのMcl−1の発現をダウンレギュレートする方法であって、前記細胞をロスコビチン又は薬剤として許容されるその塩と接触させることを含む方法。
  50. 対象のB細胞慢性リンパ球性白血病を治療する方法であって、ロスコビチン又は薬剤として許容されるその塩を対象に、前記対象のMcl−1の発現をダウンレギュレートするのに十分な量で投与することを含む方法。
  51. B細胞慢性リンパ球性白血病を治療する医薬品の調製における、ロスコビチン又は薬剤として許容されるその塩の使用であって、ロスコビチン又は薬剤として許容されるその塩が、Mcl−1の発現をダウンレギュレートするのに十分な量である使用。
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